JP2005041905A - ポリラクトン及びその製造方法 - Google Patents

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Hiroshi Miyata
寛 宮田
Shinji Shimozato
伸治 下里
Hiroshi Yamakawa
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Abstract

【課題】本発明は、ハードセグメントに芳香族アミド単位、ソフトセグメントにポリラクトン単位を用いた耐熱性、耐加水分解性、機械特性に優れる熱可塑性エラストマーとして有用な新規なポリラクトン、特にポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエステルアミド系エラストマーの原料として有用なポリラクトン及びその製造方法を提供するものである。
【解決手段】特定の構造を有する新規なポリラクトン、及び特定のジヒドロキシ芳香族アミド化合物の存在下、ラクトン化合物を加熱開環重合するポリラクトンの製造方法。
【選択図】 選択図なし。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂やエラストマーの原料、改質材、あるいは塗料、接着剤等の原料として有用な新規なポリラクトン、特にポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエステルアミド系エラストマーの原料として有用なポリラクトン及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、リサイクル性、省エネルギー性の観点から、熱可塑性エラストマーによる架橋ゴム代替が進んでいる。熱可塑性エラストマーは、ゴム弾性に富むソフトセグメントと分子鎖拘束相となるハードセグメントから構成され、ハードセグメントの種類の異なる各種熱可塑性エラストマーが開発、上市されている。なかでも、ポリアミド系、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは耐熱性、耐油性に優れた熱可塑性エラストマーとして自動車部品、電気・電子部品、工業用部品等に幅広く用いられている。
【0003】
一方、ポリラクトンは樹脂原料、樹脂改質材、粘接着剤、塗料、電子材料、医療材料等、幅広い産業分野で用いられている材料であり、水酸基やアミノ基等の活性水素を有する有機化合物を開始剤とし、触媒の存在下、ラクトン化合物を開環重合することにより製造される。開始剤や触媒を選択することにより、ポリラクトンの分子量分布や結晶性を制御でき、用途に応じた多種多様のポリラクトンを製造することができる。例えば、分子量1万以上のポリラクトンは、樹脂改質材、ホットメルト接着剤、さらにはその生分解性を活かした医療材料、各種成形材料として用いられている。一方、分子量1万未満のポリラクトンは、ポリウレタン、ポリエステル、塗料の原料として用いられており、ポリウレタン系、ポリエステル系エラストマーのソフトセグメントとしても有用である。
【0004】
熱可塑性エラストマーの耐熱性向上の要求に対応して、ポリカプロラクトンをソフトセグメントとする新しいタイプの熱可塑性エラストマーとその製造方法が提案されている。例えば液晶性を示すオリゴマーである4,4’−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニルを開始剤としてε−カプロラクトンの開環重合を行うことによりポリカプロラクトンを製造する方法(例えば特許文献1参照。)、また、該ポリカプロラクトンとビス−2−ヒドロキシエチルアジペートとのエステル交換反応を行うことにより液晶性オリゴマーをハードセグメント、ポリカプロラクトンをソフトセグメントとする低硬度かつ耐熱性に優れた熱可塑性エラストマーを製造する方法(例えば特許文献2参照。)。
【0005】
また、高結晶性、高融点の活性末端芳香族アミド化合物とポリカプロラクトンジオールの反応により、耐熱老化性に優れたエステルアミドブロック共重合体を製造する方法(例えば特許文献3参照。)が提案されている。
【0006】
さらに、4,4’−ジアミノジフェニルメタンのようなアミン化合物によりラクトンを開環重合させた後、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートにより鎖延長、架橋することにより高強度でゴム弾性に優れたポリアミド系エラストマーを製造する方法(例えば特許文献4参照。)が提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平02−311523号公報
【特許文献2】
特開平02−276817号公報
【特許文献3】
特開平08−134210号公報
【特許文献4】
特開2000−302864号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2に提案された方法は、反応温度が非常に高いためポリカプロラクトンの熱分解や解重合を来しやすく、その結果、高分子量体の製造が困難であるばかりかポリカプロラクトンの連鎖長が不均一となるため機械特性の悪化を招く恐れがある。
【0009】
また、特許文献3に提案された方法は、均質な構造をもつ高分子量のエステルアミドブロック共重合体の合成が可能であるが、活性末端アミド化合物の合成ルートが3段階と煩雑であり、その収率も低く製造コストの面で課題を有する。さらに特許文献4に提案された方法で得られるエラストマーは耐熱性の面で課題を有する。
【0010】
以上のように、均質な構造を有する耐熱性、機械特性に優れた熱可塑性エラストマーに対する要望はあるものの、その製造は極めて困難であった。
【0011】
そこで、本発明は、このような事情に鑑み、ポリラクトンをソフトセグメントとする耐熱性に優れた均質な熱可塑性エラストマーの前駆体として特に有用である芳香族アミド単位を含有するポリラクトンを提供することにある。本発明により得られたポリラクトンは、鎖延長剤によりカップリングすることにより、ハードセグメントに芳香族アミド単位、ソフトセグメントにポリラクトン単位を用いた耐熱性、耐加水分解性、機械特性に優れる熱可塑性エラストマーとして有用である。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有するポリラクトンが、耐熱性に優れた熱可塑性エラストマーの前駆体として有用な新規なポリラクトンとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示されることを特徴とするポリラクトン及びその製造方法に関するものである。
【0014】
【化4】
Figure 2005041905
(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の2価の炭化水素基であり、RおよびRはそれぞれ独立して炭素数2〜20の2価の脂肪族炭化水素基であり、p、qはそれぞれ1以上の実数を示す。)
以下に本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明のポリラクトンは、上記一般式(1)で示されるポリラクトンである。ここで、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基であり、該炭化水素基としては直鎖状又は分岐状であってもよく、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、2−メチルヘプタメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、1,4−シクロヘキシレン基、2−ベンジル基、3−ベンジル基、4−ベンジル基、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基等を挙げることができ、なかでもポリラクトンを熱可塑性エラストマーの前駆体とする際にはメチレン基、エチレン基、テトラメチレン基が好ましく、特にエチレン基が好ましい。
【0016】
一般式(1)中のRおよびRは、それぞれ独立して炭素数2〜20の2価の脂肪族炭化水素基であり、該脂肪族炭化水素基としては直鎖状または分岐状であってもよく、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数2〜20のアルキレン基またはこれらにメチル基等のアルキル置換基が1個以上結合したものが挙げられ、なかでもポリラクトンを熱可塑性エラストマーの前駆体とする際にはペンタメチレン基が好ましい。
【0017】
一般式(1)中のp、qは、それぞれ1以上の実数であり、通常1〜5000であり、ポリラクトンを熱可塑性エラストマーの前駆体とする際には2〜100が好ましく、特に4〜50であることが好ましい。
【0018】
本発明のポリラクトンの製造方法としては、該ポリラクトンの製造が可能である限りにおいて如何なる方法を用いてもよく、例えば下記一般式(2)で示されるジヒドロキシ芳香族アミド化合物の存在下、下記一般式(3)で示されるラクトン化合物を加熱開環重合する方法により製造することができる。
【0019】
【化5】
Figure 2005041905
(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
【0020】
【化6】
Figure 2005041905
(ここで、Rは炭素数2〜20の2価の脂肪族炭化水素基を示す。)
上記一般式(2)で示されるジヒドロキシ芳香族アミド化合物を構成するRおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基であり、該炭化水素基としては直鎖状又は分岐状であってもよく、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、2−メチルヘプタメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、1,4−シクロヘキシレン基、2−ベンジル基、3−ベンジル基、4−ベンジル基、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基等を挙げることができ、なかでもメチレン基、エチレン基、テトラメチレン基が好ましく、特にエチレン基が好ましい。該ジヒドロキシ芳香族アミド化合物としては、例えばN,N’−ビス(4−(ヒドロキシメチルカルバモイル)フェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(4−(2−ヒドロキシエチルカルバモイル)フェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(4−(3−ヒドロキシプロピルカルバモイル)フェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(4−(4−ヒドロキシブチルカルバモイル)フェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(4−(5−ヒドロキシペンチルカルバモイル)フェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(4−(6−ヒドロキシヘキシルカルバモイル)フェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(3−(ヒドロキシメチルカルバモイル)フェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(3−(2−ヒドロキシエチルカルバモイル)フェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(3−(3−ヒドロキシプロピルカルバモイル)フェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(3−(4−ヒドロキシブチルカルバモイル)フェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(3−(5−ヒドロキシペンチルカルバモイル)フェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(3−(6−ヒドロキシヘキシルカルバモイル)フェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(4−(ヒドロキシメチルカルバモイル)フェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(4−(2−ヒドロキシエチルカルバモイル)フェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(4−(3−ヒドロキシプロピルカルバモイル)フェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(4−(4−ヒドロキシブチルカルバモイル)フェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(4−(5−ヒドロキシペンチルカルバモイル)フェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(4−(6−ヒドロキシヘキシルカルバモイル)フェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(3−(ヒドロキシメチルカルバモイル)フェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(3−(2−ヒドロキシエチルカルバモイル)フェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(3−(3−ヒドロキシプロピルカルバモイル)フェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(3−(4−ヒドロキシブチルカルバモイル)フェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(3−(5−ヒドロキシペンチルカルバモイル)フェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(3−(6−ヒドロキシヘキシルカルバモイル)フェニル)イソフタルアミド等を挙げることができる。なかでも熱可塑性エラストマーの前駆体となるポリラクトンとする際には、N,N’−ビス(4−(2−ヒドロキシエチルカルバモイル)フェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(4−(2−ヒドロキシエチルカルバモイル)フェニル)テレフタルアミドが好ましい。該ジヒドロキシ芳香族アミド化合物は、例えば特願2003−085773号に記載の製造方法により製造することも可能である。
【0021】
一般式(3)で示されるラクトン化合物を構成するRとしては、炭素数2〜20の2価の脂肪族炭化水素基であり、該脂肪族炭化水素基としては直鎖状または分岐状であってもよく、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数2〜20のアルキレン基またはこれらにメチル基等のアルキル置換基が1個以上結合したものが挙げられ、なかでもポリラクトンを熱可塑性エラストマーの前駆体とする際にはペンタメチレン基が好ましい。該ラクトン化合物としては、例えばβ−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ζ−エナントラクトン、η−カプリロラクトン、またはこれらのラクトンにメチル基等のアルキル基置換基が1個以上結合したものが挙げられ、なかでもε−カプロラクトンが好ましい。これらは単独で使用してもよく、あるいは併用してもよい。
【0022】
ここで、ジヒドロキシ芳香族アミド化合物とラクトン化合物の使用割合は、目的とするポリラクトンの分子量に応じて適宜選択すればよく、目的によりオリゴマーからポリマーまでのポリラクトンを製造することが可能であり、その際のジヒドロキシ芳香族アミド化合物とラクトン化合物のモル比は、通常ジヒドロキシ芳香族アミド化合物:ラクトン化合物=1:1〜1:5000モル比であり、なかでもポリラクトンを熱可塑性エラストマーの前駆体とする際には1:2〜1:100が好ましく、特に1:4〜1:50であることが好ましい。
【0023】
また、ジヒドロキシ芳香族アミド化合物の存在下、ラクトン化合物を開環重合する際には単に加熱開環重合を行うことが可能ではあるが、より反応効率を促進するために開環重合触媒を用いることが好ましく、該開環重合触媒としては、一般にラクトン化合物の開環重合反応で用いられているものを使用でき、例えば無機塩基、無機酸、アルカリ金属触媒、アルカリ土類金属、ランタノイド等の化合物が挙げられ、詳細には、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、コバルト、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、砒素、セリウム、硼素、カドミウム、マンガン、タングステン、モリブデン等の金属の酸化物;これら金属を含む有機金属化合物;これら金属の有機酸塩;これら金属のハロゲン化物;これら金属のアルコキシドが挙げられ、特に低毒性であり、反応性、無着色性、耐安定性のバランスに優れる開環重合触媒であることから有機スズ化合物、有機チタン化合物が好ましい。
【0024】
該有機スズ化合物の具体例としては、スズテトラアセテート、モノブチルスズヒドロキサイドオキサイド、モノブチルスズトリ−2−エチルヘキサノエート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジラウレート、スズジオクタノエート等が挙げられる。また、該有機チタン化合物の具体例としては、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラエチルチタネート等が挙げられる。本発明のポリラクトンを製造する際には、上記開環重合触媒を単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0025】
該開環重合触媒の使用量としては、本発明のポリラクトンが得られる限りにおいて如何なるものでもよく、その中でも特に反応効率に優れ、得られるポリラクトンが色相、熱安定性に優れることからジヒドロキシ芳香族アミド化合物およびラクトン化合物の合計量に対し0.0001〜0.2重量%であることが好ましく、特に0.0005〜0.05重量%であることが好ましい。
【0026】
また、開環重合反応を行う際の反応温度及び反応時間は、任意に選択することが可能であり、特に反応効率に優れ、得られるポリラクトンが色相、熱安定性に優れることから反応温度は、50〜250℃が好ましく、特に80〜200℃の範囲であることが好ましい。
【0027】
開環重合反応を行う際には、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン、メタン等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。また、溶媒中で行うことも可能であり、溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素;N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラメチルホスホルトリアミド、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒を用いることができ、なかでもジヒドロキシ芳香族アミド化合物の溶解性に富む非プロトン性極性溶媒が好ましい。
【0028】
また、開環重合反応は回分式、半連続式、連続式等の方法により行うことができる。また、重合反応装置の形式にも特に制限はなく、攪拌型反応器、ニーダー型反応器、押出機型反応器を使用できる。
【0029】
本発明のポリラクトンは、各種成形品、繊維、フィルム、シート、樹脂やエラストマーの原料、改質材、あるいは塗料、接着剤等の原料として有用である。特に、少なくとも一種の鎖延長剤を用いてカップリングすることにより、芳香族アミド−ポリラクトン系ブロック共重合体を得ることができる。このようにして得られる芳香族アミド−ポリラクトン系ブロック共重合体は、耐熱性に優れた熱可塑性エラストマーとして有用である。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0031】
なお、本発明のポリラクトンの分析に用いた分析機器及び評価方法を以下に示す。
【0032】
〜ポリラクトンの分子量測定〜
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、商品名CP−8000)により、溶離液に20mmol/lに調整した塩化リチウム−N−メチル−2−ピロリドン溶液を用い、カラム温度40℃、流速1.0ml/分で測定した溶出曲線より、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を算出した。
【0033】
〜ポリラクトンの平均連鎖数の測定(H−NMRスペクトル)〜
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM−GSX270型)を用い、重水素化ジメチルスルホキシド中、室温の条件でH−NMRを測定した。
【0034】
得られたH−NMRスペクトルより、アミド基とラクトン単位のメチレン基のピーク強度比より芳香族アミド単位とラクトンのモル比を算出し、ラクトンの平均連鎖数を計算した。
【0035】
合成例1(ジヒドロキシ芳香族アミド化合物の合成)
窒素導入管、温度計および攪拌翼を備えた500mlの4つ口フラスコに、4−アミノ−N−(2−ヒドロキシエチル)ベンズアミド72.1g(0.4モル)及びN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと記す。)200mlを加え撹拌し均一溶液を得た。別途、窒素導入管を備えた200ml滴下ロートに、NMP100ml及びイソフタル酸ジクロライド40.6g(0.2モル)を加え、撹拌し均一溶液とし、この溶液を先の溶液中に1時間かけて滴下した。さらに50℃で2時間反応を行った。
【0036】
得られたスラリーをアセトン2.5リットルに投入し、固形分を吸引濾過により回収した。得られた固体をNMP/トルエン混合溶媒により再結晶を行い、ジヒドロキシ芳香族アミド化合物88gを得た。
【0037】
得られたジヒドロキシ芳香族アミド化合物は、N,N’−ビス(4−(2−ヒドロキシエチルカルバモイル)フェニル)イソフタルアミドであり、その構造式を下記に示す。以下、該ジヒドロキシ芳香族アミド化合物を化合物(a)と記す。
【0038】
【化7】
Figure 2005041905
【0039】
実施例1
窒素導入管、温度計、攪拌翼を備えた300mlの4ツ口フラスコに、化合物(a)14.0g(28.5ミリモル)、ε−カプロラクトン57.1g(500ミリモル)、NMP50gを仕込み、180℃に昇温した後、ジブチルスズジラウレート0.06gを加え、180℃で8時間開環重合を行った。その後、室温まで冷却し、反応液を一部サンプリングし、水に再沈殿、洗浄、乾燥しポリカプロラクトンを得た。
【0040】
得られたポリカプロラクトンは、重量平均分子量(Mw)4200、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)1.45であった。また、ε−カプロラクトンの平均連鎖数は15.8であった。
【0041】
実施例2
化合物(a)に対するε−カプロラクトンの仕込みモル比を9倍モル量とした以外は、実施例1と同様の方法によりポリカプロラクトンの製造を行った。
【0042】
得られたポリカプロラクトンは、重量平均分子量(Mw)1900、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)1.20であった。また、ε−カプロラクトンの平均連鎖数は7.2であった。
【0043】
実施例3
化合物(a)に対するε−カプロラクトンの仕込みモル比を26倍モル量とした以外は、実施例1と同様の方法によりポリカプロラクトンの製造を行った。
【0044】
得られたポリカプロラクトンは、重量平均分子量(Mw)7200、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)1.77であった。また、ε−カプロラクトンの平均連鎖数は24.5であった。
【0045】
実施例4
化合物(a)に対するε−カプロラクトンの仕込みモル比を35倍モル量とした以外は、実施例1と同様の方法によりポリカプロラクトンの製造を行った。
【0046】
得られたポリカプロラクトンは、重量平均分子量(Mw)10300、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)2.00であった。また、ε−カプロラクトンの平均連鎖数は32.8であった。
【0047】
【発明の効果】
本発明のポリラクトンは芳香族アミド単位を有する新規なポリラクトンであり、樹脂やエラストマーの原料、改質材、あるいは塗料、接着剤等の原料として有用である。特に、少なくとも一種の鎖延長剤を用いてカップリングすることにより、熱可塑性エラストマーとしての特性を示す芳香族アミド−ポリラクトン系ブロック共重合体を得ることができる。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)で示されることを特徴とするポリラクトン。
    Figure 2005041905
    (ここで、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の2価の炭化水素基であり、RおよびRはそれぞれ独立して炭素数2〜20の2価の脂肪族炭化水素基であり、p、qはそれぞれ1以上の実数を示す。)
  2. 下記一般式(2)で示されるジヒドロキシ芳香族アミド化合物の存在下、下記一般式(3)で示されるラクトン化合物を加熱開環重合することを特徴とする請求項1に記載のポリラクトンの製造方法。
    Figure 2005041905
    (ここで、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示す。)
    Figure 2005041905
    (ここで、Rは炭素数2〜20の2価の脂肪族炭化水素基を示す。)
  3. 開環重合触媒を用いることを特徴とする請求項2に記載のポリラクトンの製造方法。
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