上記したように、従来の技術では、〔A〕シアン処理により、(1)絶縁膜と半導体界面の界面準位密度を低減させたり(上記特許文献1、2)、(2)非晶質シリコンの光照射による光伝導度の低下を防止するための処理を行ったり(上記特許文献3)、低温で良好なヘテロ特性を得るヘテロ接合の形成処理を行ったり(上記特許文献4)、〔B〕液媒体中に金属付着防止剤として錯化剤を含有する表面処理組成物において、その錯化剤は、(A群)分子構造中に環状骨格を有し、且つその環の構成する炭素原子に結合したOH基及び/又はO- 基を一つ以上有する錯化剤、及び(B群)分子構造中にドナー原子である窒化原子を1つ以上有する錯化剤の各群から各々少なくとも1種選ばれるようにしている(上記特許文献5)。更に、キレート剤添加APM(APM:アンモニアと過酸化水素の混合液)を用いた微小なパーティクルの除去(非特許文献1)についても提案されている。
しかしながら、上記した従来の処理方法では、ダマシン法による大量の導電金属である残留CuやCMP(化学機械研磨)に用いた残留研磨剤スラリーを的確に除去するには、十分ではないといった問題があった。
本発明は、上記した状況に鑑み、ダマシン工程で用いる金属を含む半導体装置の表面や裏面および/または端面、さらには半導体装置の製造装置の内面および半導体装置製造用機器の面などに残留している汚染金属やCMPに用いた研磨剤スラリーを的確に除去することができる、半導体装置の洗浄方法、洗浄溶液の製造方法ならびに半導体装置製造用機器の洗浄方法および洗浄装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕半導体装置の洗浄方法において、半導体装置をシアン化合物を溶解させたシアン化合物含有溶液に接触させ、表面領域の重金属を除去する工程と、その後、前記半導体装置を洗浄処理する工程とを施すことを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕記載の半導体装置の洗浄方法において、前記半導体装置が、ダマシン工程で用いる金属を含むことを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載の半導体装置の洗浄方法において、前記半導体装置が、汚染されたニッケル系の金属を含むことを特徴とする。
〔4〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の半導体装置の洗浄方法において、前記半導体装置が、シリコン(Si)、シリコン−オン−インシュレータ(SOI)、シリコン−ゲルマニウム(Si−Ge)、炭化シリコン(SiC)およびIII −V族化合物から選ばれる少なくとも1つの材料からなることを特徴とする。
〔5〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の半導体装置の洗浄方法において、前記シアン化合物が、シアン化水素、ジシアン、シアン化アンモニウムから選ばれる少なくとも1つの非金属シアン化合物であることを特徴とする。
〔6〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の半導体装置の洗浄方法において、前記シアン化合物が、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、シアン化ルビジウムまたはシアン化セシウムから選ばれる少なくとも1つの金属シアン化合物であることを特徴とする。
〔7〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の半導体装置の洗浄方法において、前記シアン化合物含有溶液がアルコール系溶液にシアン化合物を溶解させたものであることを特徴とする。
〔8〕上記〔7〕記載の半導体装置の洗浄方法において、前記アルコール系溶液が、メタノール、エタノールおよびプロパノールから選ばれる少なくとも1つの溶液であることを特徴とする。
〔9〕上記〔7〕記載の半導体装置の洗浄方法において、前記アルコール系溶液が、溶媒として水と共存することを特徴とする。
〔10〕上記〔7〕記載の半導体装置の洗浄方法において、前記シアン化合物含有溶液が、ケトン、ニトリル、芳香族炭化水素、四塩化炭素、エーテル、および脂肪族アルカンから選ばれる少なくとも1つを溶媒として共存することを特徴とする。
〔11〕半導体装置の洗浄方法において、金属シアン化合物と酸性液との反応で生成したシアン化水素を溶媒に溶解させて、pH5〜12の範囲に調整された所定濃度のシアン化水素に調製し、前記シアン化水素溶液を半導体に作用させることを特徴とする。
〔12〕上記〔11〕記載の半導体装置の洗浄方法において、前記シアン化水素溶液が、pH8〜11の範囲であることを特徴とする。
〔13〕半導体処理用シアン化水素溶液の製造方法において、金属シアン化合物と酸性液との反応で生成したシアン化水素を溶媒または溶液に溶解させて所定濃度のシアン化水素溶液に調製することを特徴とする。
〔14〕半導体処理用シアン化水素溶液の製造方法において、固体の金属シアン化合物と強酸性液との反応で生成したシアン化水素を溶媒に溶解させて所定濃度のシアン化水素溶液に調製する過程を施すことを特徴とする。
〔15〕上記〔13〕又は〔14〕記載の半導体処理用シアン化水素溶液の製造方法において、前記酸性液または前記強酸性液が、硫酸、硝酸、および過塩素酸の群から選ばれる少なくとも1つである。
〔16〕上記〔13〕又は〔14〕記載の半導体処理用シアン化水素溶液の製造方法において、前記金属シアン化合物が、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、シアン化ルビジウム,シアン化セシウムの群から選ばれる少なくとも1つである。
〔17〕上記〔13〕、〔14〕又は〔15〕のうち何れか一項記載の半導体処理用シアン化水素の製造方法において、前記溶媒が、純水または超純水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、四塩化炭素、エーテル系溶媒、脂肪族アルカン系溶媒、またはこれらの混合溶媒の群から選ばれる少なくとも1つである。
〔18〕上記〔17〕記載の半導体処理用シアン化水素の製造方法において、前記溶媒に、希フッ酸水溶液、バッファードフッ酸水溶液、過酸化水素水溶液、及びアンモニア水溶液の群から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする。
〔19〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の半導体装置の洗浄方法において、前記半導体装置が、半導体、サファイア、ガラスおよびプラスチックから選ばれる少なくとも1つの材料からなる基板であることを特徴とする。
〔20〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の半導体装置の洗浄方法において、前記半導体装置の表面、裏面および端面から選ばれる少なくとも1つの面を処理することを特徴とする。
〔21〕上記〔1〕〜〔20〕の何れか1項記載の半導体装置の洗浄方法において、前記半導体装置の前記溶液との接触工程および前記半導体装置の洗浄処理工程の少なくとも1つの工程で、前記半導体装置の表面部から汚染金属を除去するとともに前記半導体装置の表面部の欠陥を消滅させる処理を施すことを特徴とする。
〔22〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の半導体装置の洗浄方法において、該半導体装置を形成する工程の前、途中または後に施すことを特徴とする。
〔23〕半導体装置製造用機器の洗浄方法において、半導体装置製造用機器の表面をシアン化合物を溶解させたシアン化合物含有溶液に接触させる工程と、その後、前記半導体装置製造用機器の表面を洗浄処理する工程とを施すことを特徴とする。
〔24〕半導体装置製造用機器の洗浄方法において、半導体装置製造用機器の表面をシアン化合物含有アルコール系溶液に接触させる工程と、その後、前記半導体装置製造用機器の表面を洗浄処理する工程とを施すことを特徴とする。
〔25〕上記〔23〕又は〔24〕記載の半導体装置製造用機器の洗浄方法において、前記シアン化合物が、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、シアン化ルビジウムおよびシアン化セシウムから選ばれる少なくとも1つのシアン化合物であり、前記アルコール系溶液が、メタノール、エタノールおよびプロパノールから選ばれる少なくとも1つの溶液であることを特徴とする。
〔26〕上記〔24〕記載の半導体装置製造用機器の洗浄方法において、前記アルコール系溶液が、ケトン、ニトリル、芳香族炭化水素、四塩化炭素、エーテル、および脂肪族アルカンから選ばれる少なくとも1つと溶媒として共存することを特徴とする。
〔27〕洗浄装置において、半導体装置または半導体装置製造用機器の表面をシアン化合物から選ばれるシアン化合物含有溶液に接触させる手段と、その後、前記半導体装置または前記半導体装置製造用機器の表面を洗浄処理する手段と、さらに、前記洗浄処理後の洗浄液をオゾン、または紫外光照射併用オゾンで処理して、残余の前記シアン化合物含有溶液中のシアン成分を分解除去する手段とを備えたことを特徴とする。
〔28〕洗浄装置において、半導体装置または半導体装置製造用機器の表面をシアン化合物から選ばれるシアン化合物含有溶液に接触させる手段と、その後、前記半導体装置または前記半導体装置製造用機器の表面を洗浄処理する手段と、さらに、前記洗浄処理後の洗浄液を次亜塩素酸溶液で処理して、残余の前記シアン化合物含有溶液中のシアン成分を分解除去する手段とを備えたことを特徴とする。
〔29〕洗浄装置において、半導体装置または半導体装置製造用機器の表面をシアン化合物含有アルコール系溶液に接触させる手段と、その後、前記半導体装置または前記半導体装置製造用機器の表面を洗浄処理する手段と、さらに、前記洗浄処理後の洗浄液をオゾン、または紫外光照射併用オゾンで処理して、残余の前記シアン化合物含有溶液中のシアン成分を分解除去する手段とを備えたことを特徴とする。
〔30〕洗浄装置において、半導体装置または半導体装置製造用機器の表面をシアン化合物含有アルコール系溶液に接触させる手段と、その後、前記半導体装置または前記半導体装置製造用機器の表面を洗浄処理する手段と、さらに、前記洗浄処理後の洗浄液を次亜塩素酸溶液で処理して、残余の前記シアン化合物含有アルコール系溶液中のシアン成分を分解除去する手段とを備えたことを特徴とする。
〔31〕洗浄装置において、上記〔21〕記載の半導体装置の洗浄方法を施すことができる機能を備えた。
また、本発明の半導体装置の洗浄方法は、半導体装置をシアン化合物を溶解させたシアン化合物含有溶液に接触させ、表面領域の重金属を除去する工程と、その後、前記半導体装置を洗浄処理する工程とを備えたことにより、前記半導体装置上に付着した金属を、溶液中のシアン化合物あるいはシアン化合物イオンとの錯体化によって、ないしはアルコール系溶液中に溶存させ、その液体と共に除去することができる。
さらに、本発明の半導体装置の洗浄方法は、前記半導体装置の前記溶液との接触工程および前記半導体装置の洗浄処理工程の少なくとも1つの工程で、前記半導体装置の表面部から汚染金属等を除去する処理および前記半導体装置の表面部の欠陥を消滅させる欠陥修復処理を行うものである。これにより、前記半導体装置の表面部における清浄度の向上ならびにこれにより形成される半導体装置の性能を高めることができる。
本発明の半導体装置の洗浄方法は、前記半導体装置を形成する工程の前、途中または後に、半導体装置を非金属シアン化合物から選ばれるシアン化合物含有溶液に接触させる工程と、その後、前記半導体装置を洗浄処理する工程とを備えたことにより、前記半導体装置上に付着した金属を、溶液中のシアン化合物あるいはシアン化合物イオンとの錯体化によって、その溶液と共に除去することができる。
また、本発明の半導体装置の洗浄方法は、前記半導体装置を形成する工程の前、途中または後に、前記半導体装置を形成する基板を、シアン化合物含有アルコール系溶液に接触させる工程と、その後、前記半導体装置を洗浄処理する工程とを備えたことにより、前記半導体装置上に付着した金属を、溶液中のシアン化合物あるいはシアン化合物イオンとの錯体化によって、その溶液と共に除去することができる。
さらに、本発明の半導体装置の洗浄方法は、前記半導体装置を形成する工程の前、途中または後に、前記半導体装置を形成する基板の前記溶液との接触工程および前記基板の洗浄処理工程の少なくとも1つの工程で、前記半導体装置の表面部から汚染金属等を除去する処理および前記基板の表面部の欠陥を消滅させる欠陥修復処理を行うものである。これにより、前記基板の表面部における清浄度の向上ならびにこれにより形成される半導体装置の性能を高めることができる。
また、本発明の半導体処理用シアン化水素の製造方法は、金属シアン化合物と酸性液、例えば、硫酸、硝酸、および過塩素酸の群から選ばれる少なくとも1つでなる酸との反応で生成したシアン化水素を溶媒に溶解させて、pH5〜12の範囲に調整された所定濃度のシアン化水素の溶液に調製するものであり、これにより、取り扱いの容易なシアン化水素溶液が高純度を維持して実現される。
上記溶媒が水のシアン化水素水溶液の場合、溶液中の水素イオン濃度、いわゆる水溶液のpH値を5〜12に増加させ、好ましくはpH8〜11の範囲に調整しておくと、半導体面の汚染金属の除去作用が顕著に向上する。
本発明の半導体装置の洗浄方法は、金属シアン化合物と酸性液、例えば、硫酸,硝酸,塩酸および過塩素酸の群から選ばれる少なくとも1つでなる酸との反応で生成したシアン化水素を溶媒に溶解させて、pH5〜12の範囲に調整された所定濃度のシアン化水素溶液に調製し、前記シアン化水素を半導体に作用させる機能を備えたことで、重金属等の汚染金属を除去し、半導体表面領域における欠陥や表面準位、界面準位の少ない半導体を形成し、この半導体を基体として製造された半導体装置の特性向上が実現できる。
特に、その溶媒がアンモニアを含む水溶液で、そのpH値を5〜12程度にpH調整されたものでは、銅などの汚染金属の除去効果が顕著に向上する。
また、ニッケルなどの汚染金属の除去効果が顕著に向上する。
本発明の半導体装置製造用機器の洗浄方法は、ダマシン工程で用いる金属を含む半導体装置製造用機器の表面を非金属シアン化合物から選ばれるシアン化合物イオン含有溶液に接触させる工程と、その後、前記半導体装置を洗浄処理する工程とを備えたことにより、半導体装置製造用機器の面上に付着した金属を、シアン化合物あるいはシアン化合物イオンとの錯体化によって、溶液中に溶存させ、その溶液と共に除去することができる。
本発明の半導体装置製造用機器の洗浄方法は、半導体装置製造用機器の表面をシアン化合物含有アルコール系溶液に接触させる工程と、その後、前記基板を洗浄処理する工程とを備えたことにより、前記半導体装置製造用機器の面上に付着した金属を、溶液中のシアン化合物あるいはシアン化合物イオンとの錯体化によって、ないしはアルコール系溶液中に溶存させ、その液体と共に除去することができる。
本発明の洗浄装置は、半導体装置または半導体装置製造用機器の表面を、非金属シアン化合物から選ばれるシアン化合物含有溶液に接触させる工程と、その後、前記半導体装置または半導体装置製造用機器の表面を洗浄処理する工程とを備えたことにより、前記半導体装置または前記半導体装置製造用機器の表面に付着した金属を、溶液中のシアン化合物あるいはシアン化合物イオンとの錯体化によって、その溶液と共に除去することができる。
本発明の洗浄装置は、半導体装置または半導体装置製造用機器の表面を、シアン化合物含有アルコール系溶液に接触させ、その後、前記半導体装置または半導体装置製造用機器の表面を洗浄処理する機能を備えたことにより、前記半導体装置または前記半導体装置製造用機器の表面に付着した金属を、溶液中のシアン化合物あるいはシアン化合物イオンとの錯体化によって、ないしはアルコール系溶液中に溶存させ、その溶液と共に除去することができる。
本発明の洗浄装置は、半導体装置または半導体装置製造用機器の表面を、非金属シアン化合物から選ばれるシアン化合物含有溶液に接触させ、その後、前記半導体装置または半導体装置製造用機器の表面を洗浄液で洗浄処理し、さらに前記洗浄処理後の洗浄液をオゾン、または紫外光照射併用オゾンで処理する、もしくは前記洗浄処理後の洗浄液を次亜塩素酸溶液で薬液処理する。これにより、前記洗浄液中に残る前記シアン化合物中のシアン成分(CN)を分解する機能によって、前記半導体装置製造用機器の面上に付着した金属の除去とともに、前記洗浄処理後の洗浄液に残るシアン化合物あるいはシアン化合物イオン中のシアン成分(CN)をも完全に分解除去される。
本発明の洗浄装置は、半導体装置または半導体装置製造用機器の表面を、シアン化合物含有アルコール系溶液に接触させ、その後、前記半導体装置または半導体装置製造用機器の表面を洗浄処理し、さらに前記洗浄処理後の洗浄液をオゾン、または紫外光照射併用オゾンで処理するもしくは前記洗浄処理後の洗浄液を次亜塩素酸溶液で薬液処理する。これにより、前記洗浄液中に残る前記シアン化合物中のシアン成分(CN)を分解除去する機能によって、前記半導体装置または半導体装置製造用機器の表面上に付着した金属の除去とともに、前記洗浄処理後の洗浄液に残るシアン化合物あるいはシアン化合物イオン中のシアン成分(CN)をも完全に分解除去される。
本発明の洗浄装置は、さらに、前記半導体装置の前記溶液との接触過程および前記半導体装置の洗浄処理過程の少なくとも1つの過程で、前記半導体装置の表面部から汚染金属等を除去する処理および前記半導体装置の表面部の欠陥を消滅させる欠陥修復処理を行う機能を備えたものである。これにより、前記半導体装置の表面部における清浄度の向上ならびにこれにより形成される半導体装置の性能を高めることができる。
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
(A)半導体装置をシアン化合物含有のアルコール系溶液または非金属シアン化合物を溶解させたシアン化合物含有溶液に接触させ、表面領域の重金属を除去する工程と、その後、前記基板を洗浄処理する工程とを備えたことにより、前記半導体装置製造用基板上に付着した銅などの金属あるいはこれらの金属を含む汚染物質を、シアンとの化合物あるいはシアン化合物との錯体にして溶媒のアルコール系溶液または水溶液による洗浄液とともに除去することができる。これにより、前記半導体装置製造用基板の表面をエッチングすることなく同表面の清浄化ならびに安定化が容易に達成できるとともに、シリコンやシリコンを含む半導体ではその表面層で、上記汚染物質が付着した表面領域で生じた、多くの未結合手(ダングリングボンド)やそれらの複合体などの欠陥が、シアン(CN)による未結合手(ダングリングボンド)の終端で消滅するという欠陥修復作用によって、格段に高性能な半導体装置を実現できる。
(B)また、本発明の半導体装置の洗浄方法によれば、半導体を含む基板をシアン化合物含有のアルコール系溶液または非金属シアン化合物を溶解させたシアン化合物含有溶液に接触させる工程と、その後、前記基板を洗浄処理する工程とを備えたことにより、前記基板上に付着した汚染金属をシアンとの化合物あるいは汚染金属とシアン化合物との錯体にしてアルコール系溶液または水溶液と共に除去することで、前記基板の表面をエッチングすることなく同表面の清浄化ならびに安定化が容易に達成できる。特に、シリコンやシリコンを含む半導体では、銅などの金属あるいはこれらの金属を含む汚染物質が付着した表面領域に多くの未結合手(ダングリングボンド)やそれらの複合体などの欠陥が生じるが、シアン化合物含有溶液で処理することで、上記汚染物質を取り除くとともに、上記欠陥もシアン(CN)による未結合手(ダングリングボンド)の終端で消滅するという欠陥修復作用によって、高性能な半導体装置を実現できる。
(C)また、本発明によれば、金属シアン化合物と酸性液、例えば、硫酸,硝酸,塩酸および過塩素酸の群から選ばれる少なくとも1つでなる酸との反応で生成したシアン化水素を溶媒に溶解させて、pH5〜12の範囲に調整された所定濃度のシアン化水素溶液に調製することによって、HCNの電離が促進され、CN- イオンの濃度が増加し、その結果、銅汚染が銅シアノ錯体を形成することによって除去されるため、この錯体を形成する能力の優れたCN- イオンの濃度が増加することによって洗浄能力が向上する。
(D)さらに、本発明の半導体処理用シアン化水素の製造方法によれば、金属シアン化合物と酸性液、例えば、硫酸、硝酸、塩酸および過塩素酸の群から選ばれる少なくとも1つでなる酸との反応で生成したシアン化水素を溶媒に溶解させることにより、高純度が維持され、且つその取り扱いや濃度制御の容易な液体化または固体化が実現される。本発明では、とりわけ、固体の金属シアン化合物と濃硫酸との反応で生成したシアン化水素を液化または固化して、溶媒に溶解させる過程をそなえることにより、半導体処理用として高純度が維持され、且つその取り扱いの容易な液体化や固体化が実現される。
また、本発明では、前記シアン化合物が、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、シアン化ルビジウム、シアン化セシウムの群から選ばれ、前記溶媒が、純水または超純水,アルコール系溶媒およびケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、四塩化炭素、エーテル系溶媒、脂肪族アルカン系溶媒、またはこれらの混合溶媒の群から選ばれる少なくとも1つを用いることにより、または、前記溶媒として、希フッ酸水溶液、バッファードフッ酸水溶液、アンモニア水溶液、過酸化水素水溶液を用いることにより、高純度に維持されたシアン化水素処理溶液が実現され、半導体処理用シアン化水素として、利用性が高いものとなる。
本発明によれば、金属シアン化合物と酸性液との反応で生成したシアン化水素を液化または固化して、溶媒に溶解させた処理液を半導体に接触させる過程を備えたことにより、生成されたシアン化水素の,半導体処理に適する高純度が維持され、且つその取り扱いの容易な液体化ないし固体化が実現される。
また、本発明によれば、金属シアン化合物と濃硫酸との反応で生成されたシアン化水素ガスを液化または固化して、溶媒に溶解させた処理液を半導体に接触させる過程および前記半導体を溶液で洗浄する過程をそなえたことにより、これにより調整されたシアン化水素含有溶液は、前記半導体の表面を清浄化するとともに、前記半導体の表面領域の欠陥消滅を実現して、製造される半導体装置の性能向上、ならびに特性の安定性を高めることができる。
(E)本発明の半導体装置製造用機器の洗浄方法によれば、半導体装置製造用機器の表面をシアン化合物含有のアルコール系溶液または非金属シアン化合物を溶解させたシアン化合物含有溶液に接触させる工程と、その後、前記基板を洗浄処理する工程とを備えたことにより、前記半導体装置製造用機器の面上に付着した汚染金属をシアンとの化合物あるいは汚染金属とシアン化合物との錯体にしてアルコール系溶液または水溶液と共に除去することで前記半導体装置製造用機器の表面をエッチングすることなく同表面の清浄化ならびに安定化が容易に達成できる。
(F)本発明の半導体装置の洗浄装置によると、基板等または半導体装置製造用機器の表面に、シアン化合物含有のアルコール系溶液または非金属シアン化合物を溶解させたシアン化合物含有溶液を接触させ、その後、前記機器の表面を洗浄処理することにより、前記基板等または半導体装置製造用機器の面上に付着した汚染金属をシアンとの化合物あるいはシアンとの錯体によってアルコール系溶液または水溶液と共に除去することで、前記基板等または半導体装置製造用機器の表面をエッチングすることなく同表面の清浄化ならびに安定化が容易に達成できる。また、前記基板等では、銅などの金属あるいはこれらの金属を含む汚染物質が付着した表面領域に多くの未結合手(ダングリングボンド)やそれらの複合体などの欠陥が生じるが、シアン化合物含有溶液で処理することで、上記汚染物質を取り除くとともに、上記欠陥もシアン(CN)による未結合手(ダングリングボンド)の終端で消滅するという欠陥修復作用によって、高性能な半導体装置を実現できる。加えて、前記基板等または半導体装置製造用機器を洗浄(リンス)した後の、いわゆるリンス廃液は、オゾン処理装置内に導入して、上記リンス廃液にオゾンまたは紫外線照射併用オゾンを作用させることにより、あるいは次亜塩素酸溶液で薬液処理することにより、上記リンス廃液中に残るシアン成分(CN)を分解除去して、そのリンス廃液とともに、洗浄廃液回収部に排出することで、シアン成分を含まないリンス廃液にすることができる。
本発明のダマシン工程で用いる金属を含む半導体装置の洗浄方法について一例を説明する。なお、ここで、半導体装置とは、基板、又は基板に形成される半導体層、絶縁層、重金属層およびそれらの集積された層の少なくとも1つの層を含む。
まず、ダマシン工程で用いる金属を含む半導体装置の表面および裏面に、シアン(CN)化合物を含むアルコール主体の溶液(以下、シアン化合物イオン含有溶液という場合がある)を接触させることによって、基板等の表面に存在する、例えば銅などの金属あるいはこれらの金属を含む汚染物質とシアン化合物イオンとの錯体を形成する。なお、基板等の表面は、予め、あるいは上記シアン化合物含有溶液に接触させる前に、洗浄しておいても良く、その洗浄には、半導体装置の洗浄に一般的に使用されている、例えばRCA洗浄方法などの従来技術を適用することができる。
半導体層としては、特に限定はしないが、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンなどのシリコン(Si)、シリコン−オン−インシュレータ(SOI)、シリコン−ゲルマニウム(Si−Ge)、炭化シリコン(SiC)、III −V族化合物半導体層などが使用できる。また、III −V族化合物半導体層としては、例えば、砒化ガリウム(GaAs)やリン化インジウム(InP)などの層が挙げられる。
また、半導体装置は、単に半導体層のみからなる基板でもよいし、半導体の基板上に酸化膜や窒化膜などの絶縁膜が形成されているもの、具体的には、例えば、シリコン基板上に二酸化シリコン(SiO2 )、四窒素化三シリコン(Si3 N4 )、シリコンオキシナイトライド(SiOX NY )、三酸化二アルミニウム(Al2 O3 )、二酸化チタン(TiO2 )、二酸化ハフニウム(HfO2 )、二酸化ジルコニウム(ZrO2 )などが単独あるいは積層で形成されたものでもよい。
また、半導体基板の一部に不純物の添加された、いわゆる不純物ドーパント領域を持つものでもよく、さらに、半導体以外の基板(例えば、ガラス基板やサファイア基板)あるいはその基板の上に半導体素子形成用の半導体層が形成されたものでもよい。
シアン化合物を含む溶液としては、溶媒中に、例えばシアン化水素(HCN)、ジシアン〔(CN)2 〕、シアン化アンモニウム(NH4 CN)などの非金属シアン化合物、あるいはシアン化カリウム(KCN)、シアン化ナトリウム(NaCN)、シアン化ルビジウム(RbCN)、シアン化セシウム(CsCN)などの金属シアン化合物の1つを溶質として含む溶液が使用可能である。
溶媒は、上記溶質を溶解させることのできる親水性アルコール主体の溶液、例えば、メタノール(メチルアルコール)、エタノール(エチルアルコール)およびプロパノール(プロピルアルコール、特にイソプロピルアルコール)といったアルコール類が適当である。あるいはこれらのアルコール類に付加して、アセトンなどのケトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素、四塩化炭素、テトラヒドロフランやジオキサンなどのエーテル類、ヘキサンやペンタンなどの脂肪族アルカン類、またはこれらの混合液を用いることができる。具体的には、例えば、メタノール主体溶液を用いることが好適である。
なお、基板等がシリコンの場合、溶媒にメタノールを用いることによって、基板のエッチングを防止できる。
溶媒に水を付加して用いると、溶液中でシアン化合物ないしはシアン化合物イオンに対して、水分子が溶媒和として作用し、シアン化合物ないしはシアン化合物イオンの活性を抑制する。
また、溶媒に水のみを用いると、シリコン基板の表面エッチングを生じる場合がある。よって、これらの作用を利用して、溶媒中の水の混合量を加減して、シリコン基板のエッチングの程度を制御すること、あるいは銅などの金属あるいはこれらの金属を含む汚染物質の除去に加えて、基板等の表面に付着したパーティクルを有効に除去することも可能である。
シアン化合物含有溶液中のシアン化合物ないしはシアン化合物イオンの好ましい濃度は、汚染金属の量や、用いる溶液の量によっても異なるが、基板等の表面に存在する汚染金属(例えば銅)のすべてを錯体化することができる濃度であればよい。そのためには、汚染金属の量に対して、それを上回る量のシアン化合物イオンが溶液中に存在していればよい。例えば、汚染物質が銅(Cu)である場合、このシアン化合物イオンと結合し、[Cu(CN)4 ]3-や[Cu(CN)3 ]2-、[Cu(CN)2 ]-といった錯体を形成して溶液中に保存されると見られ、実験結果によっても、この錯体形成後のシアン化合物イオン含有溶液からの銅(Cu)による再汚染は認められなかった。
また、溶媒のメタノール(CH3 OH)は、シアン化合物がシアン化カリウム(KCN)の如き金属シアン化合物の場合であっても、溶質中のカリウム(K)などのイオン(K+ )を不活性な(CH3 OK)の形で溶液中に分子として固定するので、溶液と共に除去することができ、溶液からのカリウムなどの金属汚染は全く起こらない。
本実施形態では、シアン化合物含有溶液からなる処理液に、基板等を浸漬することによって、その基板等の表面処理を行う。上記処理液の温度は、60℃以下で十分機能し、通常は室温(25℃)、一般的には20〜30℃の範囲で良い。
基板等の表面からシアン化合物含有溶液(処理液)を除去するのは、上記処理液から基板等を取り出して、その基板等の表面に存在する上記処理液を、溶媒のみを用いて、洗い流す(いわゆる、リンスする)ことで行う。例えば、上記処理液の溶媒がアルコール主体の水溶液の場合には、そのアルコールまたはそのアルコールを含む水溶液を洗浄液(リンス液)として用いることができる。基板等の表面に残存する上記処理液の量は少量であるから、洗浄液を噴射して洗い落とせば容易に洗浄が可能である。この基板等の表面に残存する上記処理液の除去処理は、洗浄液を用いて何段階かに分けて実施してもよい。その後、必要に応じて基板等を乾燥させて、基板等の表面に付着した洗浄液を気化除去する。このようにして、基板等の表面に付着した金属等の汚染物質を取り除くことができる。
この方法によれば、基板等の表面に残存する銅などの金属あるいはこれらの金属を含む汚染物質は、検査測定器による金属原子の測定下限値(3×10-9原子/cm2 )以下になっており、確実に除去されていることが分かった。
また、基板等に含まれる半導体材料がシリコンである場合、シアン化合物含有溶液で処理した際に、シリコンの表面近傍に存在する未結合手(ダングリングボンド)がシアン(CN)で終端されて消滅する、という効果が得られる。特に、シリコンやシリコンを含む半導体ではその表面層で、銅などの金属あるいはこれらの金属を含む汚染物質が付着した表面領域には多くの未結合手(ダングリングボンド)やそれらの複合体などの欠陥が生じるが、シアン化合物含有溶液で処理することで、上記汚染物質が取り除かれるとともに、上記欠陥もシアン(CN)による未結合手(ダングリングボンド)の終端で消滅するという、いわゆる欠陥修復作用がある。
加えて、基板等の表面からシアン化合物含有溶液(処理液)を除去するのに使用した洗浄液(いわゆるリンス廃液)中には、希釈されてはいるものの、シアン化合物またはシアノ基ないしはシアン化合物イオンとして、いわゆるシアン(CN)成分が残存する可能性があるので、さらに、前記洗浄処理後のリンス廃液をオゾンまたは紫外光照射併用オゾン中で処理して、リンス廃液中に残る上記シアン成分を分解除去する。これによって、リンス廃液中に上記シアン成分が残存することはなくなる。
また、前記洗浄処理後の洗浄液(リンス廃液)を次亜塩素酸塩(例えば、次亜塩素酸ソーダ)を含む、いわゆる次亜塩素酸溶液で薬液処理することにより、前記リンス廃液中のシアン成分を分解除去することもできる。この場合の次亜塩素酸溶液の濃度および処理温度は、前記リンス液中の上記シアン成分の残量を見積もって、適宜設定すればよい。
上述のように、基板等の表面を、シアン化合物含有溶液に接触させる工程および前記基板等の表面からのシアン化合物含有溶液を除去する処理工程、さらに、上記リンス廃液中のシアン成分を分解する処理工程という各工程におけるそれぞれの機能を備えたことにより、前記基板等の表面上に付着した銅などの金属あるいはこれらの金属を含む汚染物質の除去とともに、前記洗浄処理後の上記リンス廃液中に残るシアン成分をも完全に分解除去することができる。
本実施形態で述べた、シアン化合物含有溶液による洗浄方法は、半導体装置製造用基板等を含む半導体装置の洗浄方法に適用できる。その場合には、上述の基板等が、半導体装置の製造過程にある基板(すなわち、半導体素子を構成する絶縁膜やドーピング領域や配線の形成された基板)や、製造完了した半導体装置自体であっても、それらに対して同様の処理を行う。つまり、本発明は、半導体を含む基板を用いて半導体素子を形成する工程を含み、前記工程の前、途中および後のいずれかの時点において、シアン化合物含有溶液による洗浄処理を行う半導体装置の製造方法に適用可能である。
これにより、前記半導体装置の表面に付着した、銅などの金属あるいはこれらの金属を含む汚染物質を、シアン化合物またはシアン化合物イオンの錯体にしてあるいはアルコール系溶液中に残存した状態で、その液体と共に除去することができる。さらに、前記基板の表面をエッチングすることなく、同表面の清浄化および安定化が容易に達成できる。
本実施形態は、とりわけ、銅を含む金属等の導電層(ゲート電極や配線など)を形成する工程を含む場合に有効であり、具体的には、銅を含む金属配線が形成された半導体装置(例えば、LSIなど)等の洗浄方法に適用して有効である。
また、電荷結合素子(CCD)などの半導体素子では、半導体能動層への銅などの金属による汚染物質の影響が大きいので、その汚染物質の除去に、この洗浄過程が有効である。
さらに、シリコンを含む基板を用いた半導体装置では、基板の表面に存在する未結合手(ダングリングボンド)がシアン(CN)で終端されて消滅することによって、半導体装置の特性が格段に向上するという効果が得られる。したがって、この洗浄方法を、LSIやCCDの製造以外に、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)などの半導体装置やC−MOSセンサー、太陽電池など、さまざまな半導体装置の製造に適用することで、銅などの金属あるいはこれらの金属を含む汚染物質の除去とともに、その汚染物質が付着した表面領域に生じた未結合手(ダングリングボンド)やそれらの複合体などの欠陥をシアン(CN)による未結合手(ダングリングボンド)の終端で消滅させる欠陥修復作用が起こり、高性能な半導体装置を実現することができる。
次に、ダマシン工程で用いる金属を含む半導体装置の洗浄方法(実施形態1と同様)について、本発明の他の実施形態を説明する。
本実施形態では、基板等の表面から銅などの汚染金属を除去するために、シアン化水素、ジシアンおよびシアン化アンモニウム等の非金属シアン化合物から選ばれるシアン化合物を溶媒(例えば、純水またはアルコール系溶液)で希釈して用いる。まず、基板等の表面を上記非金属シアン化合物から形成されるシアン化合物含有溶液に接触させる(以下、工程Iという)。この工程Iで、基板等の表面に存在する金属はシアンとの化合物、あるいはシアノ基ないしはシアン化合物イオンとの錯体を形成する。
この工程Iでは、液体の上記非金属シアン化合物に、直接、基板等を浸漬することによって行うこともできる。
また、この工程Iでは、基板等の表面を気体の上記非金属シアン化合物に接触させることによって行うこともできる。
次に、上記基板等の表面をリンスする(以下、工程IIという)。すなわち、この工程IIでは、上記基板等の表面を、純水または上記実施形態1で説明したアルコール系溶液などの溶媒を用いて洗い流す。このリンスによって、基板等の表面に存在する銅などの汚染金属とシアノ基ないしはシアン化合物イオンとの錯体が、上記基板等の表面に付着残存するシアン化合物等とともに、その基板等の表面から除去される。その後、必要に応じて、基板等の表面から溶媒などを除去するための乾燥処理を行う。このようにして、基板等の表面は銅などの汚染金属が除去された状態になる。
この方法によれば、実施形態1の場合と同様に、基板等の表面に残存する銅などの汚染金属は、検査測定器による金属原子の測定下限値(3×10-9原子/cm2 )以下になっており、確実に除去されていることがわかった。
また、基板等に含まれる半導体材料がシリコンである場合、シアン化合物含有溶液で処理した際にシリコンの表面に存在する未結合手(ダングリングボンド)がシアン(CN)で終端されて消滅する、という効果が得られる。特に、シリコンやシリコンを含む半導体では、銅などの金属あるいはこれらの金属を含む汚染物質が付着した表面領域に多くの未結合手(ダングリングボンド)やそれらの複合体などの欠陥が生じるが、シアン化合物含有溶液で処理することで、上記汚染物質が取り除かれるとともに、上記欠陥もシアン(CN)による未結合手(ダングリングボンド)の終端で消滅するという欠陥修復作用を奏する。
加えて、上記基板等の表面をリンスする工程IIでは、処理後のリンス液中にシアノ基ないしはシアン化合物イオンまたはシアン化合物(いわゆるシアン成分)で残存する可能性があるので、さらに、前記洗浄処理後の洗浄液(リンス廃液)をオゾンまたは紫外光照射併用オゾン中で処理して、リンス廃液中に残る上記シアン成分を分解除去する。これによって、工程で生じたリンス廃液中に上記シアン成分が残存することがなくなる。
また、前記洗浄処理後の洗浄液(リンス廃液)を次亜塩素酸塩(例えば、次亜塩素酸ソーダ)を含む、次亜塩素酸溶液で薬液処理することにより、前記リンス廃液中に残る上記シアン成分を分解除去することもできる。この場合の次亜塩素酸溶液の濃度および処理温度は、前記リンス廃液中の上記シアン成分の残量を見積もって、適宜設定すればよい。
上記工程Iおよび工程II、さらに、上記リンス廃液中の残存シアン成分の分解処理という各機能を備えたことにより、前記基板等の表面上に付着した金属の除去とともに、前記洗浄処理後の前記リンス廃液中に残るシアン成分をも完全に分解除去することができる。
本発明のダマシン工程で用いる金属を含む半導体装置製造用機器の洗浄方法について説明する。この洗浄方法は、実施形態1または実施形態2の洗浄方法で説明したシアン化合物含有溶液への接触過程および洗浄過程を半導体装置製造用機器の洗浄に適用するものであり、半導体装置製造用機器の表面(特に製造装置の内部の表面)をシアン化合物含有溶液に接触させる工程(以下、工程iという)と、上記半導体装置製造用機器の表面から前記シアン化合物含有溶液等を除去する工程(以下、工程iiという)とを施す。上記工程iでは上記半導体装置製造用機器の表面に付着した銅などの汚染金属とシアンとの化合物あるいは汚染金属とシアノ基ないしはシアン化合物イオンとの錯体を形成すること、および上記工程iiでは上記半導体装置製造用機器の表面をリンスすることで、目的を達成する。
このとき、工程iでは、製造装置の内部が広大な場合、例えば、シアン化合物含有溶液を製造装置の内部に吹き付けることで行い、工程iiでは、それを溶媒などの液体を用いて洗い流し、残余の上記シアン化合物含有溶液等を製造装置の表面から除去すればよい。
なお、上記工程iおよび上記工程iiは、それぞれ、上記実施形態1で説明した各工程で使用の溶液および溶媒を用いて実施することができるので、重複する説明は省略する。
また、実施形態2と同様の方法を用いる場合は、半導体装置製造用機器、例えば、半導体装置の製造装置の表面(製造装置の内面や露出面)を、非金属シアン化合物、例えばシアン化水素、ジシアンあるいはシアン化アンモニウム等のシアン化合物含有溶液(例えば、水溶液)に接触させることによって、上記半導体装置製造用機器の表面に存在する銅などの汚染金属とシアンとの化合物あるいは汚染金属とシアノ基ないしはシアン化合物イオンとの錯体を形成する。次いで、上記半導体装置製造用機器の表面を、純水または実施形態1で説明した溶媒などの溶液を用いて洗い流し、上記半導体装置製造用機器、例えば、半導体装置製造装置の表面から残余のシアン化合物含有溶液等を除去すればよい。
なお、上記半導体装置の製造装置の表面(製造装置の内面や露出面)を非金属シアン化合物、例えばシアン化水素、ジシアンあるいはシアン化アンモニウム等のシアン化合物に接触させる際、上記非金属シアン化合物あるいはそのシアン化合物含有溶液を蒸気でその製造装置内に充填して行うこともできる。
この洗浄方法によれば、半導体装置製造用機器、例えば、半導体装置の製造装置の表面に付着した銅などの汚染金属だけでなく、その製造装置自体の材料であるステンレスなどから排出される汚染金属をも除去できる。これによって、その半導体装置製造用機器により製造される半導体装置内に金属の汚染が広がることを防止できる。
加えて、上記工程iiでは、処理後のリンス液中にシアノ基ないしはシアン化合物イオンまたはシアン化合物(いわゆるシアン成分)が残存する可能性があるので、さらに、前記洗浄処理後の洗浄液(いわゆるリンス廃液)をオゾンまたは紫外光照射併用オゾン中で処理して、前記リンス廃液中に残るシアン成分を分解除去することができる。これによって、工程で生じたリンス廃液中にシアン成分が残存することはなくなる。
また、前記洗浄処理後の洗浄液(リンス廃液)を次亜塩素酸塩(例えば、次亜塩素酸ソーダ)、いわゆる次亜塩素酸溶液で薬液処理することにより、残余の前記リンス液中のシアン成分を分解除去することもできる。この場合の上記次亜塩素酸溶液の濃度および処理温度は、前記リンス液中のシアン成分の残量を見積もって、適宜設定すればよい。
上記工程iおよび工程ii、さらに、上記リンス廃液中のシアン成分の分解処理という各機能を備えたことにより、前記半導体装置製造用機器の表面上に付着した金属の除去とともに、前記洗浄処理後の洗浄液に残るシアン成分をも完全に分解除去することができる。
以上に、半導体装置製造用機器の洗浄方法について説明したが、この洗浄に用いる装置は別の観点から見れば、洗浄機能を備えた製造装置でもある。すなわち、この洗浄装置は、例えば、半導体装置の製造装置自体に、その内部をシアン化合物含有溶液で洗浄する機能ないしは手段と、その機器内面に残存するシアン化合物含有溶液を所定の溶液で洗い流す(リンス)機能ないしは手段、および上記リンス後の廃液中のシアン成分を分解除去するという機能ないしは手段とを備えることによって実現可能である。
〔実施例〕
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。この実施例では、シリコン基板上に付着した銅の除去を行った場合について説明する。
まず、本実施例に用いた、銅により汚染されたシリコン基板の作製方法について説明する。
ボロン(B)をドープしたp型シリコン(100)基板(比抵抗:約10Ωcm)を用いて、まず、RCA洗浄方法で基板表面を洗浄した。
次いで、このシリコン基板の表面に、熱酸化によって厚さ6.1nmの二酸化シリコン(SiO2 )層を形成した。そして、この基板(SiO2 /Si構造)を、濃度が0.1モル(M)の塩化第二銅(CuCl2 )の水溶液に30分間浸漬した。その後、室温(25℃)の超純水でリンスし、次に、メタノールを用いて3分間洗浄した。このようにして、全面に、意図的に銅を付着させたSiO2 /Si構造の基板を準備した。
図1は本発明の実施例を示すダマシン工程で用いる金属を含む半導体装置の洗浄装置の概略断面図である。
まず、容器1内の溶質KCNと溶媒メタノールとで形成されたシアン化合物イオン含有メタノール溶液(処理溶液)2に上記SiO2 /Si構造の基板3を浸漬することによって、その基板3の表面処理を行う。上記処理溶液2の温度は、60℃以下で十分機能し、通常は室温(25℃)、一般的には20〜30℃の範囲で良い。
次に、上記処理溶液2から基板3を取り出して、その基板3の周囲に存在する上記処理溶液2の付着物を除去する。この時、上記処理溶液2に用いた溶媒のみを用いて、上記基板3の表面から上記処理溶液2を洗い流す(いわゆる、リンスする)。例えば、上記処理溶液2の溶媒がメタノール主体の水溶液の場合には、そのメタノールまたはその水溶液を洗浄液(リンス液)として用いることができる。
また、この処理溶液2として、非金属シアン化合物、例えばシアン化水素、ジシアンあるいはシアン化アンモニウム等のシアン化合物の溶質と水(超純水)の溶媒とで形成されたシアン化合物イオン含有の水溶液を用いる場合には、超純水を用いて洗浄(リンス)することができる。
上記基板3の表面に残存する上記処理溶液2の付着物の量は少量であるから、洗浄液を噴射して洗い落とせば容易に洗浄が可能である。この処理溶液2の付着物の除去処理は、洗浄液を用いて何段階かに分けて実施してもよい。
図2は先に準備した、意図的に銅を付着させた上記SiO2 /Si構造の基板3の全面をメタノールのみで洗浄した直後のSiO2 面から得られた全反射蛍光エックス(X)線スペクトル特性図(比較例)であり、横軸はエネルギー(keV)、縦軸は強度(cps)である。
この測定は、測定装置として、テクノス社製TREX610を用いて行った。図2の全反射蛍光X線スペクトル特性図から、銅のKα線によるピークの積分強度を基にして、銅の付着量を算定したところ、2.4×1014cm-2(原子数)であった。
これに対して、上記SiO2 /Si構造の基板と同様の基板3を用いて、本発明にかかる洗浄方法を行う。
まず、この基板3を、図1に示す、予め準備した、濃度0.1MのKCN含有メタノール溶液(処理溶液)2に室温で10分間浸漬し、ついで、この基板3を取り出して、室温で、超純水とメタノールとの混合液を用いて3分間洗浄(リンス)した。
図3はこうして得た上記基板3におけるSiO2 面から観測された全反射蛍光エックス(X)線スペクトル特性図(本発明)であり、横軸はエネルギー(keV)、縦軸は強度(cps)である。
図3から分かるように、銅のKα線によるピークは観測されず、銅の存在は検出できない。このときの測定装置による銅の検出限界は、3×109 cm-2(原子数)であることから、上記基板3に残る銅の付着量(汚染)はこの検出限界に満たないことがわかる。
この結果から、銅による基板表面の汚染は、本発明にかかる洗浄方法、つまり、KCN含有メタノール溶液に浸漬し、次いで、この基板を取り出して、室温で、超純水とメタノールとの混合液を用いて洗浄(リンス)することにより、有効に除去できることが分かる。
また、上記SiO2 /Si構造の基板と同様の基板3を、図1に示す予め準備した濃度0.1MのKCN含有メタノール溶液(処理溶液)2に、さらに1mMの塩化第二銅(CuCl2 )を付加して、室温で30分間浸漬し、次いで、この基板3を取り出して、室温で、超純水とメタノールとの混合液を用いて3分間洗浄(リンス)した。
こうして得た上記基板3におけるSiO2 面から観測された全反射蛍光X線スペクトル特性を観測した結果、この場合も、図3と同様に、銅のKα線によるピークは観測されず、銅の存在は、検出限界の3×109 cm-2(原子数)未満で、全く検出できなかった。
この結果は、シアノ基を含む処理溶液自体が相当量の金属によって汚染されている場合でも、その処理能力が低減しないことを示している。つまり、処理溶液の反復利用が可能であることを示すものである。汚染原因の金属等はシアノ基を含む処理溶液中で安定なシアノ錯体となって存在するため、その金属等の再付着は生じない。そのため、処理溶液中に汚染原因の金属等が含まれていても、処理溶液自体の処理能力は維持されることが分かった。
さらに、上記SiO2 /Si構造の基板と同様の基板3を用いて、図1中の処理溶液2として予め準備した、1容量%(濃度)のHCN水溶液2に室温で30分間浸漬し、ついで、この基板3を取り出して、室温で、超純水で3分間洗浄(リンス)した。
こうして得た上記基板3におけるSiO2 面から観測された全反射蛍光X線スペクトル特性を観測した結果、この場合も、図3と同様に、銅のKα線によるピークは観測されず、銅の存在は、検出限界の3×109 cm-2(原子数)未満で、全く検出できなかった。
次に、上記と同様のp型シリコン(100)基板の表面に熱酸化によって厚さ6.1nmの二酸化シリコン(SiO2 )層を形成したSiO2 /Si構造の基板を用いて、そのSiO2 層の表面がエッチングされるかどうかについて検証した。
図4は、X線光電子分光(XPS)スペクトル特性図であり、横軸は結合エネルギー(eV)、縦軸は強度(相対単位)を示している。この図中(a)は上記基板を従来のRCA洗浄方法で洗浄処理した直後のSiO2 層表面におけるスペクトル特性であり、(b)は同様の上記基板をRCA洗浄方法で洗浄処理した直後に濃度0.1MのKCN含有メタノール溶液に室温で30分間浸漬し、この基板を、室温で、超純水とメタノールとの混合液を用いて洗浄(リンス)したもののSiO2 層表面におけるスペクトル特性である。この特性で、一方のピーク(ピーク1)は、SiO2 層中のSi原子の2p軌道から放出される電子によるものであり、他方のピーク(ピーク2)は、基板結晶中のSi原子の2p軌道から放出される電子によるものである。
スペクトル(a)の場合、ピーク1とピーク2との面積強度比から、SiO2 層の厚さは、約6.1nmと見積もることができた。
これに対して、スペクトル(b)の場合は、ピーク1とピーク2との面積強度比がスペクトル(a)とほとんど変わらず、SiO2 層の厚さは、約6.2nmと見積もられた。この結果から、本発明の洗浄方法に用いるKCN含有メタノール溶液によってSiO2 層がエッチングされることはないと判断される。
なお、本実施例では、汚染金属の例として、銅について検証したが、本発明は、銅に限らず、他の金属元素、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、銀、タングステン、チタンなどの金属元素、いわゆる、重金属を基板等の表面から除去するのにも有効である。
また、上記実施例では、KCN含有メタノール溶液を用いた場合、基板の表面にカリウム(K)元素が付着ないしは残留することはないかと調べたところ、すべての試験結果において、基板の表面にカリウム元素の残留した試験例は見出せなかった。この事実から、KCN含有メタノール溶液中で、Cu等の除去に作用したCN- イオンの対側のK+ イオンは、メタノールに作用して、CH3 OH+K+ →CH3 OK+H+ の互換を生じ、これによって、この溶液中にK+ イオンが活性のまま存在するようなことはないものと見られる。
次いで、上記基板を上記処理溶液に浸漬し、この基板を室温で、超純水とメタノールとの混合液を用いて洗浄(リンス)した後のリンス廃液を、オゾン処理装置内に導入してオゾン処理する方法を示す。
図5は本発明の実施例を示すダマシン工程で用いる金属を有する半導体装置の洗浄についての説明図である。
まず、図5(a)に示すように、基板21上に半導体層22を形成して、この半導体層22中に半導体素子(図示なし)を形成する。その上に層間絶縁膜23を形成して、その層間絶縁膜23にホトリソエッチングによりコンタクトホール24を形成し、そのコンタクトホール24を埋めるようにCuめっきをしてCu配線層となるCu膜25を形成する。
次に、図5(b)に示すように、そのCu膜25の不要部をCMPによりすべて削り取る。
すると、Cu−CMP後に大量のCuとCMPによる研磨剤スラリーが半導体装置26表面に付着する。
そこで、図5(c)に示すように、本発明の処理溶液(例えば、溶質KCNと溶媒メタノールとで形成されたシアン化合物イオン含有メタノール溶液)28の入った容器27内に半導体装置26を浸して、その半導体装置26の表面処理を行う。
次いで、図示しないがその半導体装置を洗浄(リンス)処理する。
すると、Cu配線、層間絶縁膜23を腐食することなく、汚染を除去することができる。
その後、後続するその半導体装置の製造工程の次の工程に進んで、その製造工程が完了すると、同様に本発明の半導体装置の洗浄を行い、半導体装置の最終的製造を完成する。
図6は本発明の実施例を示すpH(水素イオン濃度)調整したHCN水溶液で洗浄前後の試料表面の銅濃度特性図、図7はそのシリコン上にSiO2 を形成して得たX線光電子分光(XPS)スペクトル図である。
図6は、2×1013原子/cm2 の銅汚染を含む試料としてのシリコン基板を、アンモニア水によってpHを調整した濃度0.078%のHCN水溶液に25℃で10秒間浸漬して、その後、超純水で1分間リンスした後に全反射蛍光X線スペクトルを観測することによって求めたシリコン基板表面の銅濃度である。なお、比較例としてHCN水溶液での洗浄前のシリコン基板表面の銅濃度も示している。アンモニアを添加しないHCN水溶液のpH値は4であった。このHCN水溶液を用いてシリコン基板を10秒間洗浄した場合、シリコン基板表面に残留する銅の濃度は3×1011原子/cm2 であった。アンモニアを添加することによってpHを6と8に調整したHCN水溶液を用いてシリコン基板を10秒間洗浄した場合、シリコン基板表面に残留する銅の濃度はそれぞれ8×1010原子/cm2 及び8×109 原子/cm2 であった。pH値を10に調製したHCN水溶液を用いて10秒間洗浄した場合、全反射蛍光X線スペクトル中には銅のピークは観測されず、表面に残留する銅の濃度は3×109 原子/cm2 以下であることが分かった。これらの結果は、pHを増加することによってHCN水溶液の洗浄能力が向上することを示している。
pHの増加によるHCN水溶液の洗浄能力の向上は、以下の様に説明できる。すなわち、HCN水溶液は弱酸性であり、電離式は以下の様に表される。
HCN→H+ +CN-
ここで、HCNのpKa は9.3である。
log{[HCN]/[H+ ][CN- ]}=9.3
したがって、濃度比[CN- ]/[HCN]は、pHを用いて以下の式で表される。
log{[CN- ]/[HCN]}=pH−pKa
この式を用いて、pHが4、6、8、10の際に[CN- ]/[HCN]は、それぞれ5×10-6、5×10-4、0.05、5.00となる。つまり、pHを増加することによってHCNの電離が促進され、CN- イオンの濃度が増加し、その結果、洗浄能力が向上することが分かる。図3に示したように、銅汚染は銅シアノ錯体を形成することによって除去されるため、この錯体を形成する能力の優れたCN- イオンの濃度が増加することによって洗浄能力が向上すると考えられる。
図7はシリコン基板上に二酸化シリコン(SiO2 )膜を形成した試料のX線光電子分光(XPS)スペクトル図である(なお、XPSスペクトル値はVG(社)製ESCALAB 220i−XL分光装置を用いて観測した値である)。この場合、X線源に単色化したAl−Kα線を用いて、試料から放出される光電子を表面垂直方向で観測した。二本の鋭いピークはシリコン基板中のSi原子の2p軌道から放出される光電子によるもの、高エネルギー側の幅の広いピークはSiO2 膜中のSi原子の2p軌道から放出される光電子によるものである。これらのピークの面積強度比から洗浄前のSiO2 膜の膜厚は、8.3nmと見積られた。この試料を0.078%のHCN水溶液に20時間浸漬して洗浄した後に観測したXPSスペクトルは、その洗浄前のものと全く変化せず、よって、SiO2 膜の膜厚は、洗浄前と変らず、8.3nmと見積られた。この結果は、HCN水溶液を用いての洗浄がエッチングを起こさないことを示すものである。
次に、半導体処理用シアン化水素の製造方法について説明する。
図8は、本発明の実施の形態としての、シアン化水素製造のフロー図であり、以下、図8のフロー図に従い、工程順に説明する。
なお、図中の(G)は気体(gas)、(L)は液体(liquid)、(S)は固体(solid)を示す。
まず、ステップS1では、外気との気密性の高い容器内でシアン化ナトリウム(NaCN)と濃硫酸(H2 SO4 )とを反応させて、シアン化水素(HCN)をガスで発生させる。このガス化により、使用材料中に含まれる金属等の汚染物質を排除できる。シアン化水素の生成反応は
2NaCN+H2 SO4 →2HCN↑+NaSO4
で表される反応式に従うと見られる。ここで、上記式内の矢印(↑)は気体(ガス)で生成されることを表す。
次に、ステップS2においてこのシアン化水素(HCN)を、液化または固化する分溜器に導入する。分溜器を25.7℃以下に冷却しておけば、シアン化水素が液体で生成され、また、このシアン化水素は、例えば、固体炭酸(ドライアイス)を用いて−13.3℃以下に冷却する、あるいは液体窒素で冷却することで固化して、固体で保存することもでき、さらには、ペルチェ効果を用いた素子により冷却すれば、その温度を適宜設定して、液体あるいは固体で生成し、保存できる。
このシアン化水素を生成する際に使用するシアン化ナトリウム(NaCN)は、これをシアン化カリウム(KCN)、シアン化ルビジウム(RbCN)、あるいはシアン化セシウム(CeCN)に置き換えても同様の働きが認められる。
ついで、ステップS3で、この液体または固体のシアン化水素を処理槽内の溶媒(ここではH2 O)中に導き、ここで、半導体処理に適合した所定濃度の処理液として調製する。半導体用処理液では、溶媒に純水または超純水、アルコール系溶媒およびケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、四塩化炭素、エーテル系溶媒、脂肪族アルカン系溶媒、またはこれらの混合溶媒の群から選ばれる少なくとも1つが用いられ、また、溶液中のシアン化水素の濃度は0.01〜1モル程度に選ばれる。ここでのアルコール系溶液は、メチルアルコール、エチルアルコールおよびイソプロピルアルコールを含むプロピルアルコールの群から選定するのがよく、さらに、これに溶解可能な有機溶剤、例えば、アセトンなどのケトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素、四塩化炭素、テトラヒドロフランやジオキサンなどのエーテル類、ヘキサンやペンタンなどの脂肪族アルカン類、またはこれらの混合溶媒の少なくとも1つの溶媒を用いてもよい。
なお、前記溶媒として、希フッ酸水溶液、バッファードフッ酸水溶液、アンモニア水溶液あるいは過酸化水素水溶液を使用しても良い。
図9は、試料としての比抵抗10Ωcmのシリコン(100)基板を公知のRCA洗浄法を用いて洗浄後、100ppmの銅イオン(Cu2+)を含む温度55℃、濃度3%の過酸化水素水溶液に30分間浸漬し、その後に、超純水で10分間リンスした後で観測した全反射蛍光X線スペクトル図(比較例)である。
この図では、Cu−Kα線に起因するピークが観測され、このピークの強度から表面の銅の濃度を2×1013原子/cm2 と見積った。
図10は、図9で用いた方法によって作成した2×1013原子/cm2 の銅汚染を含むシリコン基板を濃度0.078%のHCN水溶液に25℃で2分間浸漬し、その後超純水で1分間リンスして、その後に観測した全反射蛍光X線スペクトル図である。図9では存在したCu−Kα線のピークは観測されず、したがってシリコン基板表面上の銅の濃度は全反射蛍光X線の検出感度である3×109 原子/cm2 以下であることがわかる。この実験結果は、25℃のHCN水溶液で2分間シリコン基板を洗浄した場合、銅汚染がほぼ完全に除去できることを示すものである。
図11は、HCN水溶液の紫外光(UV)スペクトル図である。
この図において、スペクトル(a)は、濃度0.78%のHCN水溶液のものであり、銅シアン錯体のピークは観測されていない。スペクトル(b)はこのHCN水溶液を用いて図9で用いた方法で2×1013原子/cm2 の銅汚染を起こしたシリコン基板を洗浄した後に観測したものである。銅シアノ錯体に起因する2本のピークが観測されている。図11の結果は、銅汚染はシアノ錯体として除去されることを示している。
上述した図8のステップS1〜S3によって調製した所定濃度の処理液で行う半導体処理の終了後、この被処理体の半導体を洗浄処理する。この工程は前記処理液に被処理体の半導体を浸漬した後に実施する洗浄装置内での洗浄工程であり、通常は前記処理液に用いた溶媒で前記被処理体の半導体を洗浄する。あるいは、この洗浄には、純水洗浄と親水性アルコール等の揮発性溶媒との組み合わせ洗浄が用いられる。
本実施の形態で述べたステップS1からステップS3の各工程は、それらを一体の装置にすれば、実用に適した半導体製造装置を実現できる。すなわち、この半導体装置には、金属シアン化合物と濃硫酸との反応でシアン化水素を生成するステップS1、シアン化水素を液化または固化するステップS2、前記シアン化水素を溶媒に溶解した処理液を半導体に接触させるステップS3を備えている。そして、実用上は、前記半導体を所定洗浄溶液で洗浄する工程および前記洗浄後の前記洗浄廃液をオゾン処理もしくは次亜塩素酸処理して分解する工程をすべて達成できる系統手段を備えればよい。これにより、前記系統手段の各部を、それぞれ、適宜適切な条件設定のもとで操作使用することにより、被処理体の前記半導体表面の清浄化と安定性の向上を図るとともに、洗浄後の前記洗浄廃液中シアノ基(CN)分解をも達成して、その廃液処理もまた容易になる。また、ステップS1,S2,S3で使用する部品や材料は汚染を避けるため、例えば、石英ガラス等の非金属系部材を用いるのが最適である。
図12は本発明の実施例を示すダマシン工程で用いる金属を含む半導体装置の洗浄装置の概要図である。
この図に示すように、洗浄装置本体10は、基板3を処理溶液2に浸漬する処理部11、次いで、この基板3を取り出して、室温で、超純水とメタノールとの混合液を洗浄液に用いて洗浄(リンス)する洗浄部12、および洗浄(リンス)した後のリンス廃液を導入してオゾン処理する廃液処理部13を備えたものである。そして、処理部11には上記処理溶液2の供給および排出機能を持った処理溶液供給部14を有し、また、洗浄部12には洗浄液供給部15を有する。
上記廃液処理部13は、紫外線発生源およびオゾン発生源を含み、上記リンス廃液に紫外線照射およびオゾンを作用させることにより、上記リンス廃液中に残るシアン成分(CN)を分解して、そのリンス廃液とともに、洗浄廃液回収部16に排出することで、シアン成分を含まないリンス廃液にすることができる。
なお、非金属シアン化合物、例えばシアン化水素、ジシアンおよびシアン化アンモニウム等のシアン化合物から形成されるシアン化合物含有水溶液を処理溶液として用いる場合には、超純水を用いて洗浄(リンス)を行うのでリンス廃液は、上記シアン化合物含有量の希薄な水溶液である。そこで、このリンス廃液も上記廃液処理部13に導入して、ここで上記リンス廃液に紫外線照射およびオゾンを作用させることにより、上記リンス廃液中に残るシアン成分(CN)を分解して、そのリンス廃液とともに、洗浄廃液回収部16に排出することで、シアン成分を含まないリンス廃液にすることができる。
なお、上記した本発明の実施例を示す概要図では、基板3を洗浄装置10内へ入れ、さらに洗浄装置10の外へ取り出すための搬送機構ならびに乾燥手段は、洗浄装置内外の気相遮断に配慮すれば従来技術で十分対応できるので、省略した。
以上、本発明を、実施形態および実施例により例を挙げて説明したが、本発明は、勿論、他の実施形態、例えば基板等として、耐熱ガラス、プラスチックなどを用いるもの、また半導体装置製造用機器として、基板等を配するトレー、キャリア、ホルダーなどを用いるものにもその技術的思想に基づいて、広く適用することが可能である。
上記実施例では、主に半導体装置又は半導体装置製造用機器の洗浄において、銅の除去について述べたが、Niの除去も行うことができるので、以下に詳細に説明する。
ところで、半導体デバイス、特に大規模集積回路(LSI)において、1010原子/cm2 の極微量汚染物質が、デバイス特性を悪化させることは明らかである。洗浄プロセスで用いられている代表的な洗浄法は、1970年に開発されたRCA洗浄法であるが、このRCA洗浄法では、強酸やアルカリを用い、材料のエッチングを伴い汚染金属を除去するため、LSIプロセスを非常に複雑にしている。また洗浄溶液中に金属が含まれると、材料表面へ再付着がするため、残留金属量を次世代デバイスで要求されている109 原子/cm2 以下にすることは困難になっている。本発明では、HCN水溶液を用いることにより、109 原子/cm2 オーダー以下にニッケル汚染が除去できるようにしたものである。
例えば、Si試料を硝酸ニッケルで強制汚染した後に、観測した全反射蛍光X線スペクトルには1014原子/cm2 オーダーのニッケル汚染が確認された。その試料を室温で0.05MのHCN水溶液に10分間浸漬した。図13に示すようにHCN水溶液の洗浄効果はpHの増加と共に向上し、pH9の場合はニッケル汚染が全反射蛍光X線の検出感度(〜4×109 原子/cm2 )以下に除去されたことが分かった。さらに、6ppmのニッケルイオンを含むHCN水溶液(1014原子/cm2 のニッケル汚染のある試料を、10万回以上洗浄した際の溶液汚染に相当)を用いて同様の洗浄を行った場合、1014/cm2 オーダーのニッケル汚染が〜4×109 原子/cm2 )以下にまで除去された。これは、HCN水溶液中でニッケルがシアノ錯体を形成して、再付着が起こらないためであると考えられる。この結果は、HCN洗浄液の反復使用が可能であることを示す。
SiO2 (6nm)/Si試料を同じ実験を行い、エリプソメトリー(Ellipsometry)で観察したところ洗浄前後のSiO2 膜厚は変化しないことが分かった。この結果は、シアン洗浄が材料のエッチングを起こさず、CN- イオンがニッケルと直接反応してシアノ錯体を形成することによって除去されることを示している。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。