JP2005037428A - 電子写真感光体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導電性支持体上に電荷発生物質、電荷輸送物質を構成成分として含む感光層を有する電子写真感光体において、電荷輸送物質として特定構造を有する化合物を2種類以上含むことを特徴とする電子写真感光体。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真感光体に関し、詳しくは特定の化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真方式の利用は複写機の分野に限らず印刷版材、スライドフィルム、マイクロフィルム等の従来では写真技術が使われていた分野へ広がり、またレーザーやLED、CRTを光源とする高速プリンターへの応用も検討されている。従って電子写真感光体に対する要求も高度で幅広いものになりつつある。これまで電子写真方式の感光体としては無機系の光導電性物質、例えばセレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛、シリコンなどが知られており、広く研究され、かつ実用化されている。これらの無機物質は多くの長所を持っているのと同時に、種々の欠点をも有している。例えばセレンには製造条件が難しく、熱や機械的衝撃で結晶化しやすいという欠点があり、硫化カドミウムや酸化亜鉛は耐湿性、耐久性に難がある。シリコンについては帯電性の不足や製造上の困難さが指摘されている。更に、セレンや硫化カドミウムには毒性の問題もある。
【0003】
これに対し、有機系の光導電性物質は成膜性がよく、可撓性も優れていて、軽量であり、透明性もよく、適当な増感方法により広範囲の波長域に対する感光体の設計が容易であるなどの利点を有していることから、次第にその実用化が注目を浴びている。
【0004】
ところで、電子写真技術に於て使用される感光体は、一般的に基本的な性質として次のような事が要求される。即ち、(1) 暗所におけるコロナ放電に対して帯電性が高いこと、(2) 得られた帯電電荷の暗所での漏洩(暗減衰)が少ないこと、(3) 光の照射によって帯電電荷の散逸(光減衰)が速やかであること、(4) 光照射後の残留電荷が少ないことなどである。
【0005】
しかしながら、今日まで有機系光導電性物質としてポリビニルカルバゾールを始めとする光導電性ポリマーに関して多くの研究がなされてきたが、これらは必ずしも皮膜性、可撓性、接着性が十分でなく、また上述の感光体としての基本的な性質を十分に具備しているとはいい難い。
【0006】
一方、有機系の低分子光導電性化合物については、感光体形成に用いる結着剤などを選択することにより、皮膜性や接着性、可撓性など機械的強度に優れた感光体を得ることができ得るものの、高感度の特性を保持し得るのに適した化合物を見出すことは困難である。
【0007】
このような点を改良するために電荷発生機能と電荷輸送機能とを異なる物質に分担させ、より高感度の特性を有する有機感光体が開発されている。機能分離型と称されているこのような感光体の特徴はそれぞれの機能に適した材料を広い範囲から選択できることであり、任意の性能を有する感光体を容易に作製し得ることから多くの研究が進められてきた。
【0008】
このうち、電荷発生機能を担当する物質としては、フタロシアニン顔料、スクエアリウム色素、アゾ顔料、ペリレン顔料等の多種の物質が検討され、中でもアゾ顔料は多様な分子構造が可能であり、また、高い電荷発生効率が期待できることから広く研究され、実用化も進んでいる。しかしながら、このアゾ顔料においては、分子構造と電荷発生効率の関係はいまだに明らかになっていない。膨大な合成研究を積み重ねて、最適の構造を探索しているのが実情であるが、先に掲げた感光体として求められている基本的な性質や高い耐久性などを十分に満足するものは、未だ得られていない。
【0009】
一方、電荷輸送機能を担当する物質には正孔輸送物質と電子輸送物質がある。正孔輸送物質としてはブタジエン化合物やトリフェニルアミン化合物など、電子輸送性物質としては2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、ジフェノキノン誘導体など多種の物質が検討され、実用化も進んでいるが、こちらも膨大な合成研究を積み重ねて最適の構造を探索しているのが実情である。正孔輸送物質としては種々の化合物が提案されており、既に公知となっている例が多い(例えば、特許文献1〜3参照。)。しかし、これらの物質を使用しても、先に掲げた感光体として求められている基本的な性質や高い耐久性などを十分に満足するものは、未だ得られていない。
【0010】
以上述べたように電子写真感光体の作製には種々の改良が成されてきたが、先に掲げた感光体として要求される基本的な性質や高い耐久性などを十分に満足するものは未だ得られていないのが現状である。
【0011】
【特許文献1】
特許第3228624号公報
【特許文献2】
特許第2551495号公報
【特許文献3】
特許第3181799号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、帯電電位が高く高感度で、繰り返し使用しても諸特性が変化せず安定した性能を発揮できる電子写真感光体を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく研究を行った結果、下記一般式(1)で示される化合物から選ばれる少なくとも一種を下記一般式(2)〜(5)で示される化合物から選ばれる少なくとも一種と組み合わせることによって、極めて良好な感度、耐久性を有する感光体が得られることを見出し、本発明に至った。
【0014】
【化6】
【0015】
一般式(1)において、R1、R2は同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、あるいは複素環基を示し、共同で環を形成していてもよい。R3はアルキル基、アラルキル基、あるいはアリール基を示す。R4、R5は同一であっても異なっていてもよく、アルキル基、アラルキル基、あるいはアリール基を示す。R1〜R5は置換基を有していてもよい。R6は水素原子、アルキル基、アルコキシ基あるいはハロゲン原子を示す。
【0016】
【化7】
【0017】
一般式(2)において、R7はアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、フェニル基あるいはハロゲン原子を示し、R8は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、フェニル基あるいはハロゲン原子を示し、R9は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基あるいはハロゲン原子を示し、R10は水素原子、メチル基あるいはメトキシ基を示す。
【0018】
【化8】
【0019】
一般式(3)において、Ar1〜Ar4は同一または異なってもよく、それぞれフェニル基、p−ジ低級アルキルアミノフェニル基、p−ジフェニルアミノフェニル基あるいはp−ジベンジルアミノフェニル基を示す。但し、アミノ置換フェニル基の数は1または2である。
【0020】
【化9】
【0021】
一般式(4)において、R11及びR12は同一または異なってもよく、それぞれ低級アルキル基、フェニル基あるいはベンジル基を示し、R13は水素原子、低級アルキル基あるいはアルコキシ基を示す。R14及びR15は同一または異なってもよく、それぞれ低級アルキル基、フェニル基、ベンジル基あるいはナフチル基を示す。
【0022】
【化10】
【0023】
一般式(5)において、R16〜R20はそれぞれ同一または異なってもよく、水素原子、低級アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子あるいは置換基を有していてもよいアリール基を示し、nは0または1を示す。
【0024】
【発明の実施の形態】
一般式(1)において、R1、R2の具体例としては、例えば水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、ビニル基等のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基、ピリジル基、フリル基、チエニル基等の複素環基を挙げることができる。R3の具体例としては、例えばベンジル基、2−フェニルエチル基、1−ナフチルメチル基等のアラルキル基、上述したアルキル基、アリール基を挙げることができる。R4、R5の具体例としては、水素原子、上述のアルキル基、アラルキル基、アリール基を挙げることができる。R1〜R5は置換基を有していてもよく、その具体例としては例えばフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のアミノ基、水酸基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基等のアルコキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基、フェニルチオ基等のアリールチオ基、上述のアルキル基、アルケニル基、アリール基等を挙げることができる。R6の具体例としては、例えば水素原子、上述のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等を挙げることができる。
【0025】
本発明にかかわる一般式(1)で示される化合物の具体例を以下に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0026】
【化11】
【0027】
【化12】
【0028】
【化13】
【0029】
【化14】
【0030】
【化15】
【0031】
【化16】
【0032】
【化17】
【0033】
【化18】
【0034】
【化19】
【0035】
【化20】
【0036】
【化21】
【0037】
【化22】
【0038】
一般式(2)において、R7の具体例としてはメチル基、メトキシ基、塩素原子等を挙げることができる。R8の具体例としては水素原子、メチル基、メトキシ基、塩素原子等を挙げることができる。R9の具体例としては水素原子、メチル基等を挙げることができる。
【0039】
本発明にかかわる一般式(2)で示される化合物の具体例を以下に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0040】
【化23】
【0041】
【化24】
【0042】
一般式(3)において、Ar1〜Ar4で示されるp−ジ低級アルキルアミノフェニル基の低級アルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基等を挙げることができる。
【0043】
本発明にかかわる一般式(3)で示される化合物の具体例を以下に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0044】
【化25】
【0045】
【化26】
【0046】
【化27】
【0047】
一般式(4)において、R11〜R15で示される低級アルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜5の直鎖または分岐アルキル基等を挙げることができる。R13で示されるアルコキシ基の具体例としてはメトキシ基、エトキシ基等を挙げることができる。
【0048】
本発明にかかわる一般式(4)で示される化合物の具体例を以下に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0049】
【化28】
【0050】
【化29】
【0051】
一般式(5)において、R16〜R20で示される低級アルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜4の直鎖または分岐アルキル基等を挙げることができる。R16〜R20で示されるアルコキシ基の具体例としてはメトキシ基、エトキシ基等を挙げることができる。R16〜R20で示されるハロゲン原子の具体例としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
【0052】
本発明にかかわる一般式(5)で示される化合物の具体例を以下に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0053】
【化30】
【0054】
【化31】
【0055】
本発明において用いられる前記一般式(2)〜(5)で示される化合物は前記一般式(1)に対して10〜500質量%が好ましく、30〜300質量%がより好ましい。
【0056】
感光体の形態としては種々のものがあるが、そのいずれにも用いることができる。例えば、導電性支持体上に電荷発生物質、電荷輸送物質、バインダー(フィルム形成性結着剤樹脂)からなる感光層を設けた単層型感光体、導電性支持体上に電荷発生物質とバインダーからなる電荷発生層と、電荷輸送物質とバインダーからなる電荷輸送層を設けた積層型の感光体が挙げられる。電荷発生層と電荷輸送層はどちらが上層となっても構わない。また、必要に応じて導電性支持体と感光層の間に下引き層を、感光体表面にオーバーコート層を、積層型感光体の場合は電荷発生層と電荷輸送層との間に中間層を設けることもできる。本発明の化合物を用いて感光体を作製する支持体としては金属製ドラム、金属板、導電性加工を施した紙、プラスチックフィルムのシート状、ドラム状あるいはベルト状の支持体等が使用される。
【0057】
本発明で用いられる電荷発生物質には無機系電荷発生物質と有機系電荷発生物質がある。無機系電荷発生物質の例としては、セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、硫化カドミウム、酸化亜鉛、アモルファスシリコン等が挙げられる。有機系電荷発生物質の例としては、メチルバイオレット、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット等のトリフェニルメタン系染料、メチレンブルーなどのチアジン染料、キニザリン等のキノン染料、シアニン染料、アクリジン染料、ピリリウム色素、チアピリリウム色素、スクエアリウム色素、ペリノン系顔料、アントラキノン系顔料、金属含有あるいは無金属のフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料等が挙げられ、また、アゾ顔料も用いられる。
【0058】
それらの支持体上へ感光層を形成するために用いるフィルム形成性結着剤樹脂としては利用分野に応じて種々のものが挙げられる。例えば複写用感光体の用途ではポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢ビ・クロトン酸共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリレート樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂等は感光体としての電位特性に優れている。また、これらの樹脂は、単独あるいは共重合体として1種または2種以上を混合して用いることができる。これら結着剤樹脂の光導電性化合物に対して加える量は、20〜1000質量%が好ましく、50〜500質量%がより好ましい。
【0059】
単層型感光体の場合、感光層に含有されるこれらの樹脂は電荷輸送物質に対して20〜1000質量%が好ましく、50〜500質量%がより好ましい。
【0060】
積層型感光体の場合、電荷発生層に含有されるこれらの樹脂は、電荷発生物質に対して10〜500質量%が好ましく、50〜150質量%がより好ましい。樹脂の比率が高くなりすぎると電荷発生効率が低下し、また樹脂の比率が低くなりすぎると成膜性に問題が生じる。また、電荷輸送層に含有されるこれらの樹脂は、電荷輸送物質に対して20〜1000質量%が好ましく、50〜500質量%がより好ましい。樹脂の比率が高すぎると感度が低下し、また、樹脂の比率が低くなりすぎると繰り返し特性の悪化や塗膜の欠損を招くおそれがある。
【0061】
これらの樹脂の中には、引っ張り、曲げ、圧縮等の機械的強度に弱いものがある。この性質を改良するために、可塑性を与える物質を加えることができる。具体的には、フタル酸エステル(例えばDOP、DBP等)、リン酸エステル(例えばTCP、TOP等)、セバシン酸エステル、アジピン酸エステル、ニトリルゴム、塩素化炭化水素等が挙げられる。これらの物質は、必要以上に添加すると電子写真特性の悪影響を及ぼすので、その割合は結着剤樹脂に対し20%以下が好ましい。
【0062】
一般式(1)〜(5)で示される化合物は更に他の電荷輸送物質と組み合わせて用いることができる。電荷輸送物質には正孔輸送物質と電子輸送物質がある。前者の例としては、例えば特公昭34−5466号公報等に示されているオキサジアゾール類、特公昭45−555号公報等に示されているトリフェニルメタン類、特公昭52−4188号公報等に示されているピラゾリン類、特公昭55−42380号公報等に示されているヒドラゾン類、特開昭56−123544号公報等に示されているオキサジアゾール類等をあげることができる。一方、電子輸送物質としては、例えばクロラニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシドなどがある。これらの電荷輸送物質は単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0063】
また、一般式(1)で示される化合物と電荷移動錯体を形成し、更に増感効果を増大させる増感剤としてある種の電子吸引性化合物を添加することもできる。この電子吸引性化合物としては例えば、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、1−ニトロアントラキノン、1−クロロ−5−ニトロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類、4−ニトロベンズアルデヒド等のアルデヒド類、9−ベンゾイルアントラセン、インダンジオン、3,5−ジニトロベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラニトロベンゾフェノン等のケトン類、無水フタル酸、4−クロロナフタル酸無水物等の酸無水物、テレフタラルマロノニトリル、9−アントリルメチリデンマロノニトリル、4−ニトロベンザルマロノニトリル、4−(p−ニトロベンゾイルオキシ)ベンザルマロノニトリル等のシアノ化合物、3−ベンザルフタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)フタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等のフタリド類等を挙げることができる。
【0064】
その他、感光体中への添加物として酸化防止剤やカール防止剤等、塗工性の改良のためレベリング剤等を必要に応じて添加することができる。
【0065】
電荷発生物質及び電荷輸送物質は、感光体の形態に応じて種々の添加物質と共に適当な溶剤中に溶解または分散し、その塗布液を先に述べた導電性支持体上に塗布し、乾燥して感光体を製造することができる。
【0066】
塗布溶剤としてはクロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、蟻酸メチル、メチルセロソルブアセテート等のエステル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤及びアルコール系溶剤等を挙げることができる。これらの溶剤は単独または2種以上の混合溶剤として使用することができる。
【0067】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0068】
実施例1
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学製;BM−1)1.0gを1,3−ジオキソラン100gに溶解させ、それに電荷発生物質として、チタニルオキシフタロシアニン(山陽色素製;T−22S)1.5gを混合し、レッドデビル社製のペイントコンディショナー装置により直径1mmの低アルカリガラスビーズと共に4時間分散した。こうして得た分散液を、アプリケーターにて金属アルミニウム薄板(JIS規格 #1050)上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。次に、例示化合物(1−7)で示される電荷輸送物質5g、例示化合物(2−3)で示される電荷輸送物質5g、ポリカーボネート(帝人化成製;パンライトK−1300)10g、tert−ブチルハイドロキノン0.2gをテトラヒドロフラン200gに溶解させ、この溶液をアプリケーターにて前記電荷発生層上に塗布して乾燥し、膜厚約20μmの電荷輸送層を形成した。
【0069】
この様にして作製した積層型感光体について、静電記録試験装置(川口電機製;EPA−8200)を用いて電子写真特性の評価を行った。
測定条件:印加電圧−6kV、スタティックNo.3(ターンテーブルの回転スピードモード:10m/min)。その結果、帯電電位(Vo)が−790V、残留電位(Vr)が−5V、半減露光量(E1/2)が0.8ルックス・秒と高感度の値を示した。
【0070】
更に同装置を用いて、帯電−除電(除電光:白色光で400ルックス×1秒照射)を1サイクルとする繰り返し使用に対する特性評価を行った。5000回での繰り返しによる帯電電位及び残留電位の変化を求めたところ、1回目の帯電電位(Vo)−790V、残留電位(Vr)−5Vに対し、5000回目の帯電電位(Vo)は−770V、残留電位(Vr)は−13Vであり、繰り返しによる電位の変化がなく安定した特性を示した。また、1回目の半減露光量(E1/2)0.8ルックス・秒に対して5000回目の半減露光量(E1/2)は0.8ルックス・秒と変化がなく、優れた特性を示した。
【0071】
実施例2〜21
実施例1の例示化合物(1−7)で示される電荷輸送物質、例示化合物(2−3)で示される電荷輸送物質の代わりに、それぞれ表1〜2に示す電荷輸送物質A、電荷輸送物質Bを用いた他は、実施例1と同様にして感光体を作製してその特性を評価した。結果を表3〜4に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
*:(ルックス・秒)
【0075】
【表4】
*:(ルックス・秒)
【0076】
実施例22
無金属フタロシアニン(東洋インキ製造製;TPA−891)1gとテトラヒドロフラン40gを、レッドデビル社製のペイントコンディショナー装置により直径1mmの低アルカリガラスビーズと共に4時間分散処理した。こうして得た分散液に、例示化合物(1−7)で示される電荷輸送物質1.5g、例示化合物(2−3)で示される電荷輸送物質1.0g、ポリカーボネート樹脂(三菱瓦斯化学製;PCZ−200)10g、テトラヒドロフラン60gを加え、さらにペイントコンディショナー装置で30分間分散処理を行った後、アプリケーターにてアルミ蒸着ポリエステル上に塗布して乾燥し、膜厚約15μmの感光体を形成した。この感光体の電子写真特性を、実施例1と同様にして評価した。ただし、印加電圧のみ+5kVに変更した。その結果、1回目の帯電電位(Vo)+400V、残留電位(Vr)+8V、半減露光量(E1/2)1.3ルックス・秒、5000回繰り返し後の帯電電位(Vo)+380V、残留電位(Vr)+15V、半減露光量(E1/2)1.3ルックス・秒と、高感度でしかも変化の少ない、優れた特性を示した。
【0077】
実施例23〜42
実施例23の例示化合物(1−7)で示される電荷輸送物質、例示化合物(2−3)で示される電荷輸送物質の代わりに、それぞれ表1〜2に示す電荷輸送物質A、電荷輸送物質Bを用いた他は、実施例22と同様にして感光体を作製してその特性を評価した。結果を表5〜6に示す。
【0078】
【表5】
*:(ルックス・秒)
【0079】
【表6】
*:(ルックス・秒)
【0080】
比較例1
電荷輸送物質として例示化合物(2−3)の代わりに下記に示す比較化合物(6)を用いた他は、実施例1と同様に感光体を作製してその特性を評価した。その結果、1回目の帯電電位(Vo)は−740V、残留電位(Vr)は−85V、半減露光量(E1/2)は4.1ルックス・秒と感度が低く、また5000回目の帯電電位(Vo)は−480V、残留電位(Vr)は−137V、半減露光量(E1/2)が4.5ルックス・秒であり、繰り返しによる大幅な電位の変化がみられた。
【0081】
【化32】
【0082】
比較例2
電荷輸送物質として例示化合物(2−3)の代わりに下記に示す比較化合物(7)を用いた他は、実施例1と同様に感光体を作製してその特性を評価した。その結果、1回目の帯電電位(Vo)は−765V、残留電位(Vr)は−55V、半減露光量(E1/2)は1.7ルックス・秒と比較的良好な結果であったが、5000回目の帯電電位(Vo)は−385V、残留電位(Vr)は−96V、半減露光量(E1/2)が2.4ルックス・秒であり、繰り返しによる大幅な電位の変化がみられた。
【0083】
【化33】
【0084】
比較例3
電荷輸送物質として例示化合物(2−3)の代わりに下記に示す比較化合物(8)を用いた他は、実施例1と同様に感光体を作製してその特性を評価した。その結果帯電電位(Vo)が−780V、残留電位(Vr)が−132V、半減露光量(E1/2)が4.4ルックス・秒と感度不足であった。
【0085】
【化34】
【0086】
比較例4
電荷輸送物質として例示化合物(2−3)の代わりに下記に示す比較化合物(9)を用いた他は、実施例1と同様に感光体を作製してその特性を評価した。その結果、1回目の帯電電位(Vo)は−755V、残留電位(Vr)は−40V、半減露光量(E1/2)は2.0ルックス・秒と比較的良好な結果であったが、5000回目の帯電電位(Vo)は−390V、残留電位(Vr)は−98V、半減露光量(E1/2)が2.5ルックス・秒であり、繰り返しによる大幅な電位の変化がみられた。
【0087】
【化35】
【0088】
比較例5
電荷輸送物質として例示化合物(2−3)の代わりに比較化合物(6)を用いた他は、実施例22と同様に感光体を作製してその特性を評価した。その結果、1回目の帯電電位(Vo)は+300V、残留電位(Vr)は+75V、半減露光量(E1/2)は3.8ルックス・秒と感度が低く、また5000回目の帯電電位(Vo)は+185V、残留電位(Vr)は+145V、半減露光量(E1/2)4.2ルックス・秒であり、繰り返しによる大幅な電位の変化がみられた。
【0089】
比較例6
電荷輸送物質として例示化合物(2−3)の代わりに比較化合物(7)を用いた他は、実施例22と同様に感光体を作製してその特性を評価した。その結果、1回目の帯電電位(Vo)は+355V、残留電位(Vr)は+39V、半減露光量(E1/2)は2.1ルックス・秒と比較的良好な結果であったが、5000回目の帯電電位(Vo)は+190V、残留電位(Vr)は+142V、半減露光量(E1/2)が3.2ルックス・秒であり、繰り返しによる大幅な電位の変化、及び感度の低下がみられた。
【0090】
比較例7
電荷輸送物質として例示化合物(2−3)の代わりに比較化合物(8)を用いた他は、実施例22と同様にして感光体を作製してその特性を評価した。その結果帯電電位(Vo)が+315V、残留電位(Vr)が+140V、半減露光量(E1/2)が4.4ルックス・秒と感度不足であった。
【0091】
比較例8
電荷輸送物質として例示化合物(2−3)の代わりに比較化合物(9)を用いた他は、実施例22と同様にして感光体を作製してその特性を評価した。その結果帯電電位(Vo)が+290V、残留電位(Vr)が+150V、半減露光量(E1/2)が4.6ルックス・秒と感度不足であった。
【0092】
これらの結果から、電荷輸送物質に一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)〜(5)で示される化合物から選ばれる少なくとも一種を同時に用いると高感度、高耐久性の電子写真感光体が得られることが判明した。
【0093】
【発明の効果】
以上から明らかなように、本発明によれば、帯電電位が高く高感度で、繰り返し使用しても諸特性が変化せず安定した性能を発揮できる電子写真感光体を提供することができる。
Claims (2)
- 導電性支持体上に電荷発生物質、電荷輸送物質を構成成分として含む感光層を有する電子写真感光体において、電荷輸送物質として下記一般式(1)で示される化合物から選ばれる少なくとも一種及び下記一般式(2)〜(5)で示される化合物から選ばれる少なくとも一種を同時に含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層からなる感光層を有する電子写真感光体において、該電荷輸送層が電荷輸送物質として前記一般式(1)で示される化合物から選ばれる少なくとも一種及び前記一般式(2)〜(5)で示される化合物から選ばれる少なくとも一種を同時に含有することを特徴とする電子写真感光体。
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