JP2005036322A - 耐油紙素材 - Google Patents

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JP2005036322A
JP2005036322A JP2003196923A JP2003196923A JP2005036322A JP 2005036322 A JP2005036322 A JP 2005036322A JP 2003196923 A JP2003196923 A JP 2003196923A JP 2003196923 A JP2003196923 A JP 2003196923A JP 2005036322 A JP2005036322 A JP 2005036322A
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Yoko Iwamiya
陽子 岩宮
Osamu Yagi
修 八木
Kazumi Suzuki
和参 鈴木
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KAZARIICHI KK
Kazari Ichi Co Ltd
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KAZARIICHI KK
Kazari Ichi Co Ltd
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Abstract

【課題】簡便かつ安価に製造することができ、更には従来提案された耐油紙と比較した場合、良好な均一性を実現しつつ、より高い耐油性を発揮し、しかも使用後の処理の際には通常の紙ゴミと同様に処理することのできる、新たな耐油紙を提供する
【解決手段】平均重合度が3〜4のメチルトリメトキシシラン縮合体(MTM)を主成分としたシラン系コート液を、粘状叩解して作製した紙素材の表面に塗布し、テトラプロポキシチタニウム又はテトラブトキシチタニウムの作用で硬化・固化させて、シロキサン結合のコーティング層を表面に形成することにより、このようなコーティング層を表面に形成していない、粘状叩解して作製した紙素材と比較しておよそ10倍の撥油性(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法NO.41:2000に示された「紙及び板紙―はつ油度試験方法―キット値」による)を付与した、耐油紙により前記課題を解決する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、不織布や布等の布素材、及び、和紙や洋紙に代表される紙素材(以下本明細書においては、これらを包括的に、紙素材といい、これらを素材として製造される耐油性の紙素材を単に耐油紙という)に対して、良好な耐油性(撥油性)を付与した耐油紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
耐油紙は、表面についた油が内部に浸透し、その結果いわゆる裏抜けすることにより、手などが汚れる事を防ぐ機能を持ったものであるが、近年食生活の西洋化が進み、例えば、食品包装材料等として、日常生活のいたるところで幅広く使用されるようになっている。
【0003】
参考までに、日常生活において見受けられる耐油紙のほんの一例を例示しても、ファストフード分野では、フライドポテトやフライドチキン等の包装紙(箱)等として、洋菓子分野では、ドーナッツやケーキ等の包装紙(箱)等として、乳製品分野では、バターやアイスクリーム等の包装紙(箱)等として、スナック菓子分野では、ポテトチップス等の包装紙等、数々の食品の包装用に耐油紙は使用されている。またこのような食品の包装用以外にも、例えば、自動車産業分野でも、自動車等を塗装する時のマスキングシート等としても使用されており、まさに日常生活になくてはならないものとなってきている。
【0004】
ところで、紙素材は、一般的には空隙の多い繊維自体が絡まってできているため、その表面に付着した油は、毛細管現象でその内部に浸透し易い。そこで、前記のような、日常生活において見受けられる撥油紙は、最近になるまで紙素材の表面にフッ素系化合物のコーティング層を形成して耐油性を付与したもの(以下、フッ素系耐油紙という)がほとんどであった。これは、フッ素系化合物からなる耐油処理剤が、紙を製造する際に同時に添加(内添)できることから、フッ素系耐油紙の製造工程は簡便で、結果的に安価に耐油紙を製造できる、という利点に加えて、フッ素系化合物は、それ自体が強い耐油性を示すために、油分の繊維内部への浸透を効率的に阻止でき、従って高い耐油性を有する耐油紙を製造することが可能であるという利点もあったからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
フッ素系耐油紙は、前述の通り、安価に製造可能であり、かつ、耐油性の面でも十分に高い耐油性を発揮するものであったため、最近になるまでは耐油紙の主流であり、日常的にも大量に使用されていた。
【0006】
しかし、最近になって、フッ素系耐油紙についての安全性テストが実施され、その結果、フッ素系耐油紙を高温(180度程度)にまで加熱すると、低分子の蒸発物の発生が認められることが知見された。これによりフッ素系耐油紙については、この蒸発物、すなわち低分子物質の人体に対する安全性が指摘されるようになり、最終的にフッ素系耐油紙はその製造が中止されるに至った。
【0007】
フッ素系耐油紙の製造が中止されるに至り、その代替となり得る耐熱紙の供給が急務となったが、かかる代替耐油紙として、安価かつ安全なシリコーンオイルをその表面に塗布したものを耐油紙として使用したり、いわゆるラミネート紙を耐油紙として使用することが提案されている。
【0008】
ところが、シリコーンオイルをその表面に塗布した耐油紙では、紙素材に耐油性を付与するシリコーンオイルがオイル状化合物であるため、紙素材に塗布しても紙素材上にしっかりとは固定化されず、したがって紙素材に十分な耐油性を付与するためには該オイルの塗布量を増やさざるを得ないという課題があった。この技術的な課題は、実際の工業化の側面では耐油紙の製造コスト高という課題を招くことに他ならない。
【0009】
また、シリコーンオイルが固定化されない、つまり移行性が残存するために、紙素材にシリコーンオイルを塗布した後、これを長時間放置してしまうとオイルが移行してしまい、紙素材表面に形成させたシリコーンオイル膜にムラができて耐油性が不均一になるという課題も生じていた。
【0010】
一方、ラミネート紙は、十分な耐油性を示し、しかも安価に製造することができるが、ラミネート紙は、通常、一定の寸法のものを製造した後、これを用途に応じて適宜裁断して使用することから、実際に耐油紙として使用した際に、裁断面から油が染み込んでしまうという課題や、また使用済のラミネート紙を処理するに際しては、通常の紙ゴミと分別して処理しなければならない等と、使用のし易さにおいてなおも改良されるべき課題が存在している。
その他の方法として、フィルム形成能の高い樹脂の塗工・含浸が行われている。例えば、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが挙げられる。しかしこの方法はラミネート紙同様に、破棄時には通常の紙ゴミと分別して処理しなければならず、大量の使用には不適当であるという課題があった。
【0011】
以上に述べたように、フッ素系耐油紙の製造中止という事態によってその代替となる耐油紙の提供が急務とされているが、これまでに提案されてきた耐油紙にはなおも改良されるべき課題が存在しているのが現状である。そこで本願発明は、簡便かつ安価に製造することができ、更には従来提案された耐油紙と比較した場合、良好な均一性を実現しつつ、より高い耐油性を発揮し、しかも使用後の処理の際には通常の紙ゴミと同様に処理することのできる、新たな耐油紙を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために成された第1の本願発明は、紙素材に、下記式1(以下単に式1という)で示される化合物の1種以上を主成分としたシラン系コート液を塗布し、触媒の作用で硬化・固化させて、シロキサン結合のコーティング層を表面に形成したことを特徴とする耐油紙である。
【式1】
Figure 2005036322
(前記式1において、R、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なっても良い、水素又は炭素数が1〜4のアルキル基であり、n=2〜10である)
また前記目的を達成するために成された第2の本願発明は、紙素材に、式1で示される化合物の1種以上と下記式2(以下単に式2という)で示される化合物の1種以上とを主成分としたシラン系コート液を塗布し、触媒の作用で硬化・固化させて、シロキサン結合のコーティング層を表面に形成したことを特徴とする耐油紙である。
【式2】
Figure 2005036322
(前記式2において、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なっていても良い、水素若しくは炭素数1〜10のアルキル基又はアルケニル基であり、または、RO、RO及びROとSiとの結合はシロキサン結合であり、Rは、その分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでいても良い、炭素数が1〜10のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基である)
そして第3の本願発明は、前記第1又は第2の本願発明に係るものであり、前記シラン系コート液を硬化・固化させる触媒として、加水分解可能な有機金属化合物を使用してシロキサン結合のコーティング層を形成したことを特徴とする。第4の本願発明は、この第3の本願発明に係るものであり、前記加水分解可能な有機金属化合物として、チタン、ジルコン、アルミ及びスズから成る群から選ばれる一種以上の有機金属化合物を使用して、シロキサン結合のコーティング層を形成したことを特徴とする。第5の本願発明は、この第4の本願発明に係るものであり、前記加水分解可能な有機金属化合物として、テトラプロポキシチタニウム又はテトラブトキシチタニウムを使用して、シロキサン結合のコーティング層を形成したことを特徴とする。
【0013】
そして第6の本願発明は、式1で示される化合物である、平均重合度が3〜4のメチルトリメトキシシラン縮合体(MTM)を主成分としたシラン系コート液を、粘状叩解して作製した紙素材の表面に塗布し、テトラプロポキシチタニウム又はテトラブトキシチタニウムの作用で硬化・固化させて、シロキサン結合のコーティング層を表面に形成することにより、撥油性がキット値で8以上(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法NO.41:2000に示された「紙及び板紙―はつ油度試験方法―キット値」による)を付与した、耐油紙である。
そして第7の本願発明は、式1で示される化合物である、平均重合度が3〜4のメチルトリメトキシシラン縮合体(MTM)と、式2で示される化合物とを主成分としたシラン系コート液を、粘状叩解して作製した紙素材の表面に塗布し、テトラプロポキシチタニウム又はテトラブトキシチタニウムの作用で硬化・固化させて、シロキサン結合のコーティング層を表面に形成することにより、このようなコーティング層を表面に形成していない、粘状叩解して作製した紙素材と比較しておよそ7倍の撥油性(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法NO.41:2000に示された「紙及び板紙―はつ油度試験方法―キット値」による)を付与した、耐油紙である。
そして第8の本願発明は、式1で示される化合物である、平均重合度が3〜4のメチルトリメトキシシラン縮合体(MTM)と、式3で示される化合物とを主成分としたシラン系コート液を、粘状叩解して作製した紙素材の表面に塗布し、テトラプロポキシチタニウム又はテトラブトキシチタニウムの作用で硬化・固化させて、シロキサン結合のコーティング層を表面に形成することにより、撥油性がキット値で8以上(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法NO.41:2000に示された「紙及び板紙―はつ油度試験方法―キット値」による)を付与した、耐油紙である。以下、本願の各発明を詳細に説明する。
【式3】
Figure 2005036322
(前記式3において、R及びR11は、それぞれ同一又は異なっていても良い、水素又は炭素数1〜10の、アルキル基又はアルケニル基であり、または、RO及びR11OとSiとの結合はシロキサン結合であり、R10及びR12は、その分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでいても良い、炭素数が1〜10のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基である)。
【0014】
先に述べたように、紙素材は空隙が多いため、付着した油分が毛細管現象により内部に浸透し易い構造になっている。この油分の内部への浸透を防ぐには、毛細管現象が発生しないようにし、又は、毛細管現象の度合いを低減すれば良いのであるが、このためには、毛細管現象を利用して撥油性物質を紙素材の内部に浸透させ、そして浸透した撥油性物質を繊維に結合させて固定化することによって、付着する油分の紙素材内部への浸透が抑制されるようにすれば良い。
【0015】
そこで本願発明では、式1で示されるような、ケイ素原子の4個の置換基のうち、1個が加水分解不可能な置換基で置換されたものを繰り返し単位として含む化合物を主成分としたシラン系コート液を紙素材に塗布し、これを触媒の作用によって硬化・固化させて、シロキサン結合のコーティング層を表面に形成することにより、従来技術に見られる課題を解決したものである。
【0016】
このシラン系コート液の硬化・固化によって形成されるシロキサン結合のコーティング層は、強い撥油性を有するため、紙素材に高い耐油性を付与することが可能なのであるが、その紙素材表面へ塗布する工程や、これを触媒の作用で硬化・固化する工程は、後述するように非常に簡便であり、しかも安価に実施することができる。その一方で、シラン系コート液は、毛細管現象によって紙素材の内部へ容易に浸透してその内部空隙を埋め、しかも形成されるシロキサン結合のコーティング層は、紙素材の内部で繊維にしっかりと結合して固定化されるため、その塗布量を過分に大量とする必要はない。またこのコーティング層は、紙素材の内部で繊維にしっかりと結合して固定化され、シリコーンオイルのような移行性はなく、紙素材表面に形成されるコーティング層にはムラができ難く、言い換えれば耐油性の観点からは均一性に優れる耐油紙を提供できるという効果も達成できる。
【0017】
更に、本願発明に基づくシロキサン結合のコーティング層は柔軟性を保持しており、本願発明が提供する耐油紙は、その柔軟性においてはコーティング層を形成していない紙素材とほぼ同様に折り曲げること等が可能であることに加えて、その使用後には、通常の紙ゴミと同様に消却処分等することも可能である。また更に加えて、本願発明の耐油紙は、ラミネート紙などとは異なり、実質的にはコート液を紙素材表面に塗布する工程のみによって製造することができるため、あらかじめ所定の寸法・形状に裁断した紙素材に対しては、その裁断面にもコート液を塗布してコーティング層を形成することで、裁断面からの油の染み込みも防止することが可能である。
【0018】
式1で示される化合物を主成分とするシラン系コート液は、紙素材に塗布されると、毛細管現象により繊維内部に浸透する。そして、主成分たる式1で示される化合物は、紙素材内部(表面)の水分又は空気中の水分(湿気)により、そのアルコキシ基が加水分解され、重縮合反応を経てシロキサンポリマーを成長させ、紙素材と強く結合する。このことにより形成されたシロキサン結合のコーティング層が、紙素材内部の毛細管現象を抑制し、かつ紙素材の繊維と強く結合することになる。なお、前記シロキサン結合は完全な無機結合であり、代表的な有機物である油分とは正反対の性質を示すため、油と混じり合わない、即ち撥油性を示すことになる。
【0019】
したがって、式1で示される化合物の役割は、一つは、紙素材内部の空隙を埋め、毛細管現象を低減させること、及び、撥油性を示すシロキサン結合のポリマーで紙素材表面をコーティングすることにある。この両者の作用により、紙素材には高い撥油性が付与されるのである。
【0020】
また式1で示される化合物は、隣接するケイ素原子との間で、強固なシロキサン結合の数が1つ足りないが、その分未反応な結合が、いわば「宙ぶらりん」の形で残るため、コーティング層自体柔軟であり、結果的に、かかるコーティング層を表面に形成しても、紙素材の柔軟性は維持できることになる。なお、式1で示される化合物中のRは、式1で示される化合物がその後の加水分解・重縮合反応を受けても、加水分解されないため、それによって形成されるコーティング層に柔軟性を与えることになる。
【0021】
本願発明では、紙、不織布等の紙素材に、式1で示される化合物の1種以上を主成分とするコート液を塗布し、触媒の作用でこれを硬化・固化させるものであるが、式1で示される化合物は、単量体(例えば、メチルトリメトキシシラン)を縮合することにより得ることが出来る。主鎖の繰り返しがn=2〜10、好ましくはn=2〜8、特に好ましくは実施例で詳細に示したようにn=4〜5である。n=1、即ち単量体を用いると、ポリマー化に時間が掛かかり、短時間で十分な強度を持ったコーティング層を形成させることが困難となるからである。その一方でn=11以上となると、逆に、紙素材に塗布した時に、紙素材内部でのポリマー化のためのアルコキシ基等の数が不足して、十分な強度を持ったコーティング層を形成させるのが困難になるからである。
【0022】
なお、一般に単量体から式1で示される化合物のような縮合体を合成する場合、その重合度を正確に制御することは、技術的にいって、事実上不可能である。したがって、本願発明でn=2〜10、好ましくはn=2〜8、特に好ましくはn=3〜4の式1で示される化合物を主成分とする、との意味は、重合度の分布から見て、それぞれ、主としてn=2〜10、n=2〜8又はn=3〜4の式1で示される化合物を含んでいる、ということに他ならず、例えばnが11以上である化合物が含まれていたとしても、それが主でない限りは差し支えない。
【0023】
式1で示される化合物としては、具体的に、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン又はエチルトリプロポキシシラン等の縮合体を例示できる。なお、式1で示される化合物は、上記例示した単量体の1種類のみを縮合したもの等であっても、また上記例示した単量体の2種類以上を縮合したもの等であっても良い。
【0024】
本願発明では、式1で示される化合物の1種以上に加え、式2で示される化合物の1種以上を主成分として含むコート液を使用することもできる。式2で示される化合物は、4個の置換基のうち、3個が加水分解可能な置換基であり、残り1個が加水分解不可能な置換基から成り立つ化合物である。従って、式2で示される化合物を主成分として使用するにより、耐油紙の柔軟性等を向上したり、式2で示される化合物が有する柔軟性等の性質を耐油紙に新たに付与することが可能である。
【0025】
式2で示される化合物としては、具体的に、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン等や、これらの2〜10分子程度の縮合体を例示できる。
【0026】
なお、式2で示される化合物は、かかる単量体の2種以上であっても良い。また式2で示される化合物として、2分子以上の縮合体を使用する場合には、かかる単量体の2種以上を縮合したものであっても良い。
【0027】
本願発明では、既に説明した式1で示される化合物を主成分としたコート液に、又は、式1で示される化合物及び式2で示される化合物の両方を主成分としたコート液に、更に下記式3(以下単に式3という)で示される化合物の1種以上を主成分として添加したコート液を使用することもできる。この、式3で示される化合物は、4個の置換基のうち、2個が加水分解可能な置換基であり、他の2個が加水分解不可能な置換基から成り立つ化合物であるため、主としてシロキサン結合のコーティング層に柔軟性を付与する目的で使用することになるが、これによって、これを使用せずに製造した耐油紙に比べて、式3で示される化合物が有する柔軟性等の性質を新たに付与したり、又は、有機性等の性質を増加することが可能である。
【式3】
Figure 2005036322
(前記式3において、R及びR11は、それぞれ同一又は異なっていても良い、水素又は炭素数1〜10の、アルキル基又はアルケニル基であり、または、RO及びR11OとSiとの結合はシロキサン結合であり、R10及びR12は、その分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでいても良い、炭素数が1〜10のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基である)
【0028】
式3で示される化合物としては、具体的に、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン等や、これらの2〜10分子程度の縮合体を例示できる。なお、式3で示される化合物は、かかる単量体の2種以上であっても良く、また更に2分子以上の縮合体を使用する場合にも、かかる単量体の2種以上の縮合体であっても良い。
【0029】
上記したような、式2で示される化合物又は式3で示される化合物のいずれかを、主成分として式1で示される化合物を含むコート液に添加することで、形成されるシロキサン結合のコーティング層の柔軟性を増加できるが、式2で示される化合物及び式3で示される化合物の両者をコート液に添加すれば、コーティング層の柔軟性を更に向上させるとともに、結果的に、耐油紙の柔軟性等を更に向上できる。
【0030】
式2で示される化合物及び/又は式3で示される化合物を加える場合には、前記式1で示される化合物に対し、一般的には、総量が50%を超えない範囲にて添加することが好ましい。両者の合計添加量がこの範囲を越えると、コート液を紙素材に塗布した時に、主成分である式1で示される化合物との間でうまく結合せず、形成されるシロキサン結合のコーティング層の強度が不十分となる可能性があるからである。したがって、実際に式2で示される化合物及び/又は式3で示される化合物を添加する場合には、添加量に依存してコーティング層の強度が低下することを想定し、添加を最小限に抑えるようにすることが好ましい。
【0031】
なお、式2で示される化合物及び式3で示される化合物における加水分解不可能な置換基(R、R10、R12)の第一義的な役割は、シロキサン結合のコーティング層に柔軟性を与えることにあるが、これらはアルキル基等の有機性置換基であるため、同時にコーティング層(耐油紙)に撥水性を付与することができるという効果を有する。一般に有機性置換基は、炭素数が増える程、有機性すなわち撥水性が増加するが、炭素数があまり大きくなると、立体障害によりコート膜内に歪が生じて膜の強度低下の原因となるので注意が必要である。
【0032】
耐熱性・耐摩耗性の強いシロキサン結合は、一方でいわゆる「硬い」結合でもある。この「硬さ」のため、紙等の紙素材に塗布すると、該素材に耐摩耗性を付与できるのであるが、しかし、紙等の紙素材は柔軟性を有することが特徴であり、耐油紙には、時としてその素材である紙等と同様な柔軟性が求められる。
【0033】
従来から知られている、ゾル・ゲルコート液は、出発原料にテトラアルコキシシラン(Si(OR))やそのオリゴマー体が用いられる。このものを完全に加水分解反応(後述する反応式1における(1)〜(3))させてコーティング層を形成させると、ケイ素原子の4個の結合全てが硬いシロキサン結合のネットワークを形成し、そしてこれはセラミックと同様に硬いが、しかし、柔軟性に欠けた脆いコーティング層となってしまうため、紙等の柔軟性を生かした耐油紙を製造することは事実上不可能である。しかしながら本願発明は、ケイ素原子の4個の置換基のうち、1個が加水分解されない式1で示される化合物をコート液の主成分に用いることで、この課題をも解決するものである。また本願発明では、加水分解されない置換基をそれぞれ1個又は2個有する式2で示される化合物と式3で示される化合物の一方又は両方をコート液に添加することにより、更に柔軟性等を増すことが可能となる。
【0034】
十分な耐油性や柔軟性に加えて、耐摩耗性をも要求される耐油紙を提供するには、式1で示される化合物等のみでは不十分な場合がある。この場合は、下記式4(以下単に式4という)で示されるテトラアルコキシシランやそのオリゴマー体を、式1で示される化合物に加えることにより、耐摩耗性をも向上するためのコート液を得ることができる。
【式4】
Figure 2005036322
(ここでR13は、それぞれ同一又は異なっても良い、水素又は炭素数が1〜4のアルキル基である)
【0035】
このように、本願発明において用いられる化合物は、式1で示される化合物を必須とし、紙素材に求められる柔軟性や耐摩耗性の程度に応じ、式2、式3及び式4で示される化合物を、必要に応じて適宜添加することにより、撥油性や耐油性のみならず、耐摩耗性、撥水性、柔軟性などの、紙素材に求められる実用上の性能を付加・向上させることができる。
【0036】
式1で示される化合物を硬化・固化させる触媒としては、一般に用いられている触媒が特別の制限なしに使用可能である。例えば酸触媒であれば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸又は酢酸等を例示できる。塩基触媒であれば、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化2―ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、エタノールアミン、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミン等が例示できる。これら通常の触媒を用いる場合は、式1で示される化合物を硬化・固化させるため、反応水を共存させる。
【0037】
本願発明が提供するコート液は、より詳細にはこのように、主成分である式1で示される化合物、触媒及び反応水を含むものである。このようなコート液は、例えば調製後、比較的短期間内に使用する場合等には特に問題は生じないが、これを長期保存する場合、反応水によってコート液がゲル化し易い、という課題が生じる。
【0038】
この、長期間の保存中にゲル化し易い、という課題を解決するためには、上記例示したような通常の触媒ではなく、加水分解可能な有機金属化合物を用いる、ことが好ましい。加水分解可能な有機金属化合物を使用すれば、反応水を共存させる必要はなくなるため、これを長期保存してもゲル化するという課題が解決でき、安定的な保存が可能となるからである。
【0039】
本願発明において好ましく用いられる有機金属化合物としては、例えばチタン、ジルコン、アルミ又はスズを含むものを例示できる。より具体的には、テトラプロポキシチタネート、テトラブトキシチタネート、テトラプロポキシジルコネート、テトラブトキシジルコネート、トリプロポキシアルミネート又はアルミニウムアセチルアセトナート等を例示できる。
【0040】
加水分解可能な有機金属化合物を、式1で示される化合物と混合してコート液とし、これを紙等の紙素材に塗布すると、紙素材内部及び表面上の水分又は空気中の水分(湿気)を吸い、有機金属化合物が自ら加水分解するが、この時、式1で示される化合物とネットワークを形成し、式1で示される化合物を硬化・固化する。
【0041】
また本願発明のコート液には、式1で示される化合物、触媒、そして場合により必要となる反応水を均一に混合させるため、有機溶剤を添加することが出来る。この目的で使用される有機溶剤としては、アルコール類を例示できる。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール又はヘキサノール等を例示できる。また、その添加量を制御することによって、コート液の粘度や乾燥速度の調整も可能である。
【0042】
このような調整の目的では、特に、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類、メトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、プロポキシプロパノール又はブトキシプロパノール等のセルソルブ類等の粘度や沸点の高い有機溶剤を単独又は二種以上混合して使用することが好ましい。むろん、上記粘度や沸点の高い有機溶媒の1種以上と共に、上記アルコール類を同時に添加しても良い。なおコート液の粘度や乾燥速度の調整を目的とする場合は、前記有機溶媒のみならず、界面活性剤によっても同様の効果を達成することができる。
【0043】
本願発明による耐油紙の製造方法では、まず、任意の紙素材を、任意の寸法・形状に切断、加工し、これに前記した本願発明のコート液を塗布する。具体的な塗布の方法は、特に制限されないが、例えば、コート液に紙素材を浸漬したり、コート液を紙素材に塗りつけたり、或いはコート液を紙素材に吹き付けたりすることにより行うことが可能である。
【0044】
本願発明では、例えば樹皮の繊維を漉いて乾燥したもの、手漉きによる高級和紙、機械漉きされた普通和紙、洋紙又は友禅紙等、不敷布を用いた繊維、通常の布等を紙素材として、耐油紙素材を製造することができる。これらの紙素材は、コート液の種類や濃度を変えることで、通常制限無しに使用できる。
ところで、低密度の紙は、繊維間隔(空隙)が広いため、繊維間に油が入り込み易くなり、十分な耐油性を付与するには、コート液を多量に塗布する必要がある。そのためより好ましくは、粘状叩解した紙を用いると良い。
【0045】
叩解とは、繊維の長さをカットしたり、繊維を潰すことを意味する。叩解に当たっては、手打ち叩解やビーター叩解等の通常の方法を採用することができ、また、叩解エネルギーを低減するために、 セルラーゼ等の酵素を利用しても良い。粘状叩解した紙は、フィブリル化が進んでいるため、繊維間の空隙が少なくなっており、少量のコート液で十分な耐油性を示すことが可能となる。粘状叩解した紙としては、例えばグラシン紙、トレーシングペーパー、機械処理したパーチメント紙などが挙げられる。
【0046】
粘状叩解の他にも、紙素材に対しては、コート液の塗布に先立ち、所定の前処理を施しておくことで、紙素材表面の空隙を埋め、当該前処理を施さないものと比べて更に毛細管現象を低減させることができる。このような処理としては、カレンダー処理や目止め剤の塗布があげられる。通常の紙素材は、3本ないし4本の鉄ロール間を通過させることによる、いわゆるカレンダー処理により、その表面を平滑化したものが多いが、本願発明で使用する紙素材としては、前処理として、このカレンダー処理を超える、スーパーカレンダー処理を施しておくことが好ましい。
【0047】
スーパーカレンダー処理は、通常、紙素材に平滑性を与えるともに、紙素材を艶出しするために実施するものであるが、カレンダー処理を超える数の鉄ロール間を通過させることによって紙素材の緻密性を高めることができるために、粘状叩解したのと同様の効果を得ることができるからである。なおスーパーカレンダー処理を行う場合、ロール圧力や紙素材のロール通過速度等を紙素材の特性や紙素材に与えようとする緻密性(密度)に基づいて決定したうえで、例えば「中西篤、村井操 共著「製紙工学」 P.436 工学図書株式会社」等の開示を参照して実施すれば良い。これら処理を施すことにより、粘状叩解していない紙素材でも、コート液量を少なくすることが可能である。
【0048】
上記のように、所定の前処理を施した、又は施していない紙素材に、コート液を塗布すると、式1で示される化合物が加水分解し、下記反応式1の(1)〜(3)に示した反応を経て、シロキサン結合(Si−O−Si)が生成する。
【反応式1】
Figure 2005036322
【0049】
このようにして生成したシロキサン結合(Si−O−Si)は、紙素材内部から成長するため、紙素材内部の細かな細孔を埋め、毛細管現象を低減させることが可能となる。またこの時同時に、紙素材内部からのシロキサン結合の成長によるからみ合いが、紙素材との付着強度の向上に寄与する。
【0050】
本願発明のコート液が、触媒として前記した有機金属化合物(例えばテトラブトキシチタニウム等)を含む場合は、コート液中に反応水が含まれなくとも、上記の反応式1における(1)〜(3)の反応が進行するのであるが、この場合の反応は、詳しくは下記反応式2における(4)及び(5)のようになる。
【反応式2】
Figure 2005036322
【0051】
上記のように、Ti−O結合がコーティング層内に導入されることにより、シロキサン結合のみのコーティング層と比べ、紙素材の耐熱性及び耐摩耗性を向上することができる。このように、触媒として有機金属化合物を使用すると、反応水を共存させる必要が無くなり長期間の保存安定性が向上するばかりでなく、コーティング層の耐熱性・耐摩耗性を更に向上させ、そして結果的には耐油紙素材の耐熱性・耐摩耗性をよりいっそう強いものにできるのである。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、実施例はあくまで一例であって、本願発明を限定するものではない。
実施例1
メチルトリメトキシシラン縮合体(MTM)(平均重合度3〜4)(式1で示される化合物)83gをイソプロピルアルコール90gに溶解し、そこにチタンテトラブトキシド(加水分解可能な有機金属化合物)6.2gを加え、十分に攪拌し、コート液を調合した。
【0053】
次に、紙素材として、グラシン紙(日本大昭和板紙(株)製、坪量30.5g/m)を用意し、バーコータを用いて、28.9g/mの塗布量(乾燥前重量)にて前記コート液を塗布し、10分間室温にて乾燥し、アルコールを蒸発させた後、120℃の乾燥機内で10分間加熱し、耐油紙を製造した。
【0054】
このようにして得られた耐油紙についての撥油性テストは、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法NO.41:2000に示された「紙及び板紙―はつ油度試験方法―キット値」に基づいて行った。撥油性テストの実施に際しては、まず、ヒマシ油、トルエン及びヘプタンを所定の割合で混合してキットナンバー1〜12の試験液を調整した。次に、50mm×50mm程度の大きさに切断した耐油紙を試験片として5枚以上用意し、撥油性テストを行った。
【0055】
一方、前記コート液を塗布していない、概ね同一寸法のグラシン紙を用意し、前記同様の撥油性テストを実施した。結果を表2に示す。
【0056】
実施例2〜25
実施例1で用いたメチルトリメトキシシラン縮合体(MTM)を主成分としたコート液を、粘状叩解した紙として、トレーシングペーパー(三菱製紙(株)製、坪量40g/m)、粘状叩解してない紙として、PPC用紙(坪量66.3g/m)、白兎紙(日本大昭和板紙(株)製、坪量35g/m)、WRP紙(巴川製紙(株)製、坪量70g/m)に塗布し、実施例1と同様の処理を行った後、実施例1と同様の操作にて耐油性(撥油性)を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
比較例2〜5
比較のため、本願発明のコート液を塗布していないトレーシングペーパー、PPC用紙、白兎紙、WRP紙、について、実施例1と同一の撥油性テストを行った結果を表2に示す。
【表1】
Figure 2005036322
【表2】
Figure 2005036322
【0058】
表1及び表2から明らかなように、比較のために実施した、コート液を塗布していないグラシン紙、トレーシングペーパー、PPC用紙、白兎紙、WRP紙においては、キット値は1及び1以下であったが、本願発明の耐油紙ではキット値は低いものでもおよそ5程度と、少なくとも5倍の耐油性の向上が確認された。
【0059】
【発明の効果】
本願発明は、式1で示されるケイ素原子の4個の置換基のうち、1個は加水分解が不可能で、化合物同士の重縮合に関与しない置換基R4で置換されたものの縮合体を用いて紙素材をコートすることにより製造した耐油紙である。式1で示される化合物は、紙素材に塗布されると、毛細管現象により繊維内部に浸透する。その後、紙素材内部、表面もしくは空気中の水分(湿気)により、式1で示される化合物のアルコキシ基が加水分解し、重縮合反応を経ることにより成長したシロキサンポリマーが、紙素材と強く結合する。このことにより得られたコーティング層が、紙素材内部の毛細管現象を押さえ、かつ紙素材と強く結合することになる。
【0060】
また、シロキサン結合自身は完全に無機結合であり、代表的な有機物である油分とは正反対の性質を示すため、油と混じり合わない、即ち撥油性を示すことになる。したがって、式1で示される化合物の役割は、一つは、紙素材の内部の空隙を埋め、毛細管現象を低減させることであり、もう一つは、撥油性を示すシロキサン結合のポリマーを紙素材表面にコートすることである。この両者の作用により、紙素材に撥油性を付与するものである。
【0061】
また式1で示される化合物は、隣接するケイ素原子との間で、強固なシロキサン結合の数が1つ足りないが、その分未反応な結合が、いわば「宙ぶらりん」の形で残るため、コート層の柔軟性を維持でき、そして結果的には紙素材の柔軟性を維持できるものである。
【0062】
実際に、日常生活において大量に使用されている紙素材で、本願発明の耐油紙を調製したところ、それらの撥油性は5から12倍程度にまで向上され、耐油紙として十分な性能を有することが明らかである。
【0063】
以上に述べたように、本願発明は、コート液の塗布という工程によって簡便に製造できる耐油紙を提供するものであるが、このコート液は式1で示される安価な化合物を主成分としたシラン系コート液であるため、かかる耐油紙もまた、安価に提供できるものである。このコート液中の主成分は、紙素材の内部に浸透し、繊維と結合するため、シリコーンオイルを用いた耐油紙とは違って均一性の面でも良好で、その柔軟性を維持したまま、耐油性(撥油性)のみならず、必要に応じて耐摩耗性等をも向上することが可能である。またコート液中の主成分が紙素材の隅々にまで浸透しているため、後に耐油紙を所望の寸法・形状に裁断したとしても、その裁断面にも十分な耐油性が付与されている。従ってラミネート等とは違い、裁断後にも裁断面から油が浸透してしまうということはない。そして更には、本願発明の耐油紙は使用後の処理の際、通常の紙ゴミと同様に処理することができる、という効果も達成される。

Claims (8)

  1. 紙素材に、下記式1で示される化合物の1種以上を主成分としたシラン系コート液を塗布し、触媒の作用で硬化・固化させて、シロキサン結合のコーティング層を表面に形成したことを特徴とする耐油紙。
    【式1】
    (前記式1において、R、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なっても良い、水素又は炭素数が1〜4のアルキル基であり、n=2〜10である)
  2. 紙素材に、下記式1で示される化合物の1種以上と下記式2で示される化合物の1種以上とを主成分としたシラン系コート液を塗布し、触媒の作用で硬化・固化させて、シロキサン結合のコーティング層を表面に形成したことを特徴とする耐油紙。
    【式1】
    Figure 2005036322
    【式2】
    Figure 2005036322
    (前記式1において、R、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なっても良い、水素又は炭素数が1〜4のアルキル基であり、n=2〜10である。また前記式2において、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なっていても良い、水素若しくは炭素数1〜10のアルキル基又はアルケニル基であり、または、RO、RO及びROとSiとの結合はシロキサン結合であり、Rは、その分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでいても良い、炭素数が1〜10のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基である。)
  3. 前記シラン系コート液を硬化・固化させる触媒として、加水分解可能な有機金属化合物を使用してシロキサン結合のコーティング層を形成したことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の耐油紙。
  4. 前記加水分解可能な有機金属化合物として、チタン、ジルコン、アルミ及びスズから成る群から選ばれる一種以上の有機金属化合物を使用して、シロキサン結合のコーティング層を形成したことを特徴とする、請求項3記載の耐油紙。
  5. 前記加水分解可能な有機金属化合物として、テトラプロポキシチタニウム又はテトラブトキシチタニウムを使用して、シロキサン結合のコーティング層を形成したことを特徴とする、請求項4記載の耐油紙。
  6. 下記式1で示される化合物である、平均重合度が3〜4のメチルトリメトキシシラン縮合体(MTM)を主成分としたシラン系コート液を、粘状叩解して作製した紙の表面に塗布し、テトラプロポキシチタニウム又はテトラブトキシチタニウムの作用で硬化・固化させて、シロキサン結合のコーティング層を表面に形成することにより、撥油性がキット値で8以上(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法NO.41:2000に示された「紙及び板紙―はつ油度試験方法―キット値」による)を付与した、耐油紙。
    【式1】
    Figure 2005036322
  7. 下記式1で示される化合物である、平均重合度が3〜4のメチルトリメトキシシラン縮合体(MTM)と、下記式2で示される化合物とを主成分としたシラン系コート液を、粘状叩解して作製した紙素材の表面に塗布し、テトラプロポキシチタニウム又はテトラブトキシチタニウムの作用で硬化・固化させて、シロキサン結合のコーティング層を表面に形成することにより、このようなコーティング層を表面に形成していない、粘状叩解して作製した紙素材と比較しておよそ7倍の撥油性(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法NO.41:2000に示された「紙及び板紙―はつ油度試験方法―キット値」による)を付与した、耐油紙。
    【式1】
    Figure 2005036322
    【式2】
    Figure 2005036322
  8. 下記式1で示される化合物である、平均重合度が3〜4のメチルトリメトキシシラン縮合体(MTM)と、下記式3で示される化合物とを主成分としたシラン系コート液を、粘状叩解して作製した紙素材の表面に塗布し、テトラプロポキシチタニウム又はテトラブトキシチタニウムの作用で硬化・固化させて、シロキサン結合のコーティング層を表面に形成することにより、撥油性がキット値で8以上(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法NO.41:2000に示された「紙及び板紙―はつ油度試験方法―キット値」による)を付与した、耐油紙。
    【式1】
    Figure 2005036322
    【式3】
    Figure 2005036322
    (前記式3において、R及びR11は、それぞれ同一又は異なっていても良い、水素又は炭素数1〜10の、アルキル基又はアルケニル基であり、または、RO及びR11OとSiとの結合はシロキサン結合であり、R10及びR12は、その分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでいても良い、炭素数が1〜10のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基である)。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016053142A (ja) * 2014-09-04 2016-04-14 大日精化工業株式会社 耐油剤及び耐油紙
JP2016204531A (ja) * 2015-04-23 2016-12-08 ペガサス・キャンドル株式会社 ローソク

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