JP2010037492A - 木材表面塗工液 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機系塗料及び無機系塗料の問題点を解決し、撥水性・耐水性に優れ、特に木材表面の輪ジミを防止し、安定的で耐久性が高い木材表面塗工膜を提供する。
【解決手段】下記構造式(1)で示されるシラン化合物を主原料とし、更に下記構造式(2)で示されるシラン化合物を共存させ、これらシラン化合物を硬化及び/又は固化させる触媒を含有し、且つ、水および溶媒を添加して成る、木材表面塗工液。
Figure 2010037492

Figure 2010037492

【選択図】なし

Description

本発明は、木材表面に対し良好な撥水性と耐久性、特に輪ジミ防止効果を付与することができる木材表面塗工液に関する。
木は天然素材であり、従来より建築材料や家具等に利用されている。特に、環境に対する関心が高まっている現在、益々その存在意義が高まってきている。
木材を建築材料や家具等に利用する場合、耐久性を高めるために、表面処理(表面塗装)が必要となる。もちろん、表面処理せず、木材そのものの感触を大事にすることはある。しかし、木材の表面に水がかかるといわゆる輪ジミができ、外観が損なわれるばかりでなく、木材の内部に水が浸透して腐食の原因となり、長期使用に耐えられなくなる。
また、水が木材内部に浸透することにより、内部にカビ等が生え、木材の耐久性が低下する原因となることが知られている。そこで、木材の表面処理(表面塗装)が必要となる(非特許文献1)。
このような表面処理剤(塗料)としては、従来ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が用いられている。これらの樹脂は、有機高分子であるため、十分な撥水性を示す。しかし、有機高分子を木材の表面に塗工すると、その表面から自然の風合いが失われてしまう。
また、これらの有機樹脂塗料は表面を全面的に覆うため、木材が本来有している多孔性及び水分(湿気)調整機能を損なうおそれがある。
それだけでなく、有機樹脂塗料は火が近づくと燃え(こげ)、有害なガスが発生する可能性がある。また、ホルムアルデヒドの発生の問題もあり、安全上も問題が多いものである。
このような問題を解決する塗料として、天然物由来の塗料がある。それは、原料に天然物由来の油状物性を使用しているため、自然の風合いを残すことが可能であり、ホルムアルデヒドの発生が無い、環境に優しい塗料である。
しかし、原料の油状物質は木材表面で固定化されていないため、屋外で長時間雨に当たると溶脱してしまい、長期の安定使用に耐えられないことが指摘されている。また、表面が擦られると脱離してしまい、この点からも長期の安定性の悪いことが指摘されている。
このように、有機系塗料は短期間の撥水性・耐水性には優れているが、耐候性が悪く、また長期間の安定性(耐久性)が乏しいという問題が残っている。
一方、耐熱性が高く、長期間の安定性(耐久性)に優れている塗工膜を付与する目的で、耐熱性・耐候性の高いシロキサン結合(≡Si−O−Si≡)をその塗工膜内に含有する、ポリシロキサン系樹脂塗料が開発されてきている。
例えば、湿気硬化型ポリシロキサン樹脂を含有するクリアー塗料を塗布する方法が開示されている(特許文献1)。それは、ポリシロキサン樹脂を含有しているため、これまでの表面を全面的に覆う樹脂塗料と変わらず、木材が本来有している多孔性及び水分(湿気)調整機能を損なうおそれがある。
また、無溶剤の常温硬化型オルガノシロキサン組成分が開示されている(特許文献2)。それは、液状オルガノポリシロキサン、架橋剤及び硬化触媒から成る三成分混合液である。この塗工液は、不燃性・難燃性等耐熱性に優れた塗工膜を提供することを目的にしているため、耐熱性の高いSiO成分を50重量%以上含有していることを必須としている。
そのため、得られた塗工膜は硬いものとなり、木材表面上で長期間存在すると、木材表面の伸縮により塗工膜にひび割れが生じ、耐水性の低下が起こるおそれがある。
その他にも、はしご構造を持つ変性ポリシロキサン系樹脂から成る処理剤を含浸せしめ、次いで硬化処理を行うことにより、無機質基材又は木材表面におけるかびや苔等の発生を防止することを特徴とする、汚染防止方法が開示されている(特許文献3、4)。
この、はしご構造を持つ変性ポリシロキサン系樹脂から成る塗工液は、木材表面等のかびや苔等の発生を防止することに主眼が置かれているため、用いるポリシロキサン系樹脂は、平均重合度が30〜80、もしくは、平均分子量が500〜100000と非常に分子量が大きい、高縮合物の高分子状化合物である。
そのため、それも、これまでの表面を全面的に覆う樹脂塗料と変わらず、木材が本来有している多孔性及び水分(湿気)調整機能を損なうおそれがある。
一方、最近、いわゆるゾル−ゲル法を応用し、熱的に安定であり、即ち、耐久性が高い、シロキサン結合を木材表面に塗布、あるいは、含浸させることにより、木材に難燃性や防蟻性を付与する技術が開発されてきている(非特許文献2)。
この技術は、完全に反応すると最終的に完全に無機化合物となる、テトラアルコキシシラン(Si(OR))を木材表面より浸透させるものである。無機化合物を含浸させるのは、難燃性付与を目的としているためである。そのため、表面の撥水性や耐水性能が十分でないという問題が残っている。
また、コロイド状シリカ(コロイダルシリカ)を木材表面に塗工することにより、同様に難燃性を付与することが行なわれている(非特許文献3)。しかし、その場合においても、表面の撥水性や耐水性能が十分でないという問題が残る。
これら無機系の塗工材料は、難燃性付与の目的としては十分であるが、無機系材料の特徴である撥水性が劣るという問題が残っている。また、無機化合物は柔軟性が無いため、木材が長時間伸縮を繰り返すと、剥げ落ちるという問題が指摘されている。
木材表面の伸縮性に耐え、且つ、水分(湿気)調整機能を有する塗料が開発されてきている。それは、木材表面より内部に浸透して内部の水分と反応することにより、木材表面内部よりシロキサン結合のポリマーが成長し、木材表面との付着性が良く、且つ、そのシロキサン結合のポリマーが多孔性であるために通気性が付与され、その結果、木材が本来有している湿度調整機能を保持可能にした木材表面処理液が開発された(特許文献5)。
それは、木材内部に浸透し、内部の水分を反応水として利用するため、木材内部よりシロキサン結合のポリマーが成長する。そのため、木材表面との付着性が良く、少量の塗工量で充分な撥水性・耐久性を示し、且つ、木材表面が呼吸のできる優れた塗工液であった。
しかし、得られたシロキサンポリマーは多孔性であるため、これを塗布した木材表面に長時間水(水滴)が付着していると、輪ジミが発生するという問題が生ずる。
特開平9−94524号公報 特開平5−247347号公報 特開平9−132733号公報 特開平9−132756号公報 特開2007−145896号公報 第15回木材塗装ゼミナール、予稿集P1、2004年11月1 9日、木材塗装研究会 木材工業、vol.50(No.9)、400(1995) 木材保存、vol.22、254(1996)
本発明は、上述したような従来技術の問題点を改良することを課題としてなされたものであり、有機系塗料及び無機系塗料の問題点を解決し、撥水性・耐水性に優れ、特に木材表面の輪ジミを防止し、安定的で耐久性が高い木材表面塗工膜を提供することを目的にしている。
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、有機溶媒中に下記構造式(1)で示されるシラン化合物を主原料として加え、更に下記構造式(2)で示されるシラン化合物を共存させ、これらを重合させる触媒を加え、更にこれらシラン化合物及び触媒分子内のアルコキシ基を減らす目的で水(添加水)を加えた塗工液を、木材表面に塗布すると、木材表面のみならず、木材内部にまで撥水性及び耐水性が付与され、その結果、輪ジミの発生がほとんどなく、耐水性の高い塗膜を付与し得ることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記の木材表面塗工液を提供する。
[1]下記構造式(1)で示されるシラン化合物を主原料とし、更に下記構造式(2)で示されるシラン化合物を共存させ、これらシラン化合物を硬化及び/又は固化させる触媒を含有し、且つ、水および溶媒を添加して成る、木材表面塗工液。
Figure 2010037492
(構造式(1)において、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なってもよい、水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基であり、Rはこれらの基内にハロゲン原子又はエポキシ基を含んでもよい、炭素数が1〜10のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基であり、nは2〜10である)
Figure 2010037492
(構造式(2)中、R及びRは、それぞれ同一又は異なっていてもよい、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基又はアルケニル基であり、R及びRは、その基内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでいてもよい、炭素数が1〜10のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基である。)
[2]前記触媒はアルコキシ基(RO基)を含有するものであり、前記シラン化合物及び触媒中のアルコキシ基(RO基)に対し、HO/RO値で0.05から0.4の範囲で水を添加してなる、請求項1に記載の木材表面塗工液。
[3]前記触媒はアルコキシ基(RO基)を含有するものであり、前記シラン化合物及び触媒中のアルコキシ基(RO基)に対し、HO/RO値で0.1から0.2の範囲で水を添加してなる、請求項1に記載の木材表面塗工液。
[4]前記シラン系塗工液を硬化及び/又は固化させる触媒が、加水分解可能な有機金属化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の木材表面塗工液。
[5]前記加水分解可能な有機金属化合物が、チタニウム、ジルコニウム及びアルミニウムから成る群から選ばれる一種以上の金属アルコキシドである請求項4に記載の木材表面塗工液。
本発明は、木材表面に良好な撥水性及び耐水性、特に輪ジミ防止機能を付与することができる木材表面塗工液を提供するものである。
即ち、本発明の木材表面塗工液は、造膜性に優れ、木材の撥水性・耐水性を長期間保持でき、その結果、輪ジミ防止が可能な、表面処理液を提供するもので、本発明によれば、木材表面の自然の風合いを損なうことなく、耐久性の高い保護被膜を形成することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態につき、詳細に説明する。
本発明の木材表面塗工液は、上記構造式(1)に示すシラン(ケイ素)化合物(通称3官能シラン化合物と呼ばれている)及び上記構造式(2)に示すシラン(ケイ素)化合物(通称2官能シラン化合物と呼ばれている)、及びシラン化合物を硬化及び/又は固化させる触媒を主成分として含有し、かつ添加水および溶媒を添加して成ることを特徴としている。
これまでに本発明者らは、シラン化合物及び触媒からなる木材用塗工液を開発した(特許文献5)。この液剤は十分に撥水性・耐久性を示すが、長時間水滴がつくと輪ジミができることが分かった。
輪ジミのできる原因は、無垢の木材の場合、通常表面に付いた水やそこから発生した水蒸気が木材内部に浸透する結果、発生するといわれている。
一方、本発明者らが開発した木材用塗工液(特許文献5)の場合、表面に撥水性・耐水性の優れた塗工膜が処理して有るにもかかわらず、長時間水(水滴)が付いた場合輪ジミが発生した。
この輪ジミができる原因を調べた結果、以下のことが分かった。即ち、特許文献5で示された塗工液は、木材表面に塗工されると直ちに毛細管現象で表面内部に浸透する。そして、木材内部及び表面や空気中の水(湿気)と触媒が反応し、直ちに加水分解する。その時加水分解した触媒が、主剤であるシラン化合物と反応し、その結果シロキサン結合のポリマーが木材内部より成長し、木材表面を覆う形で塗工膜ができる。これにより、木材表面に高い耐水性・耐久性を付与することができることになる。
しかし、この水(湿気)との反応が不十分な場合(十分に反応水が無い場合、あるいは、塗工直後でまだ十分に反応が進行していない場合)、未反応のアルコキシ基が塗工膜内部に残存する。この未反応部分ではシロキサン結合のネットワークが完成しないため、この部分だけいわゆる空隙が生じ、撥水性・耐水性が低下した部分として残る。そこに水(水滴)が付くと、その部分から内部に水(湿気)が浸透し、輪ジミの原因となる。
また、未反応のアルコキシ基が存在する部分に水(水滴)が付くと、その場所だけが急激に反応が進行し、その結果、その部分に不均一な膜構造が生じるために水(湿気)が浸透し易くなり、これも輪ジミの原因となった。
即ち、塗工時に木材内部、表面及び空気中に十分な水分が無かったり、また十分に反応する時間が無かったりした場合に、塗工膜内に未反応のアルコキシ基が残り、輪ジミができることが分かった。
したがって、塗工後の未反応のアルコキシ基の残存を防ぐには、塗工液中に含まれているシラン化合物や触媒中のアルコキシ基を、塗工前に水を加え一部加水分解しておけば良いことになる。そこで、塗工液内に事前に一定量の水(添加水)を添加しておくことにより、塗工後の反応水の不足を補い、輪ジミを防止することが可能となる。
ここで加えられる水(添加水)の量は次のようになる。水(添加水)の量が少ないと、十分な輪ジミ防止効果が発揮されず、また一方で、多すぎると塗工液の劣化(ゲル化)が進行し、液剤の保存安定性が損なわれる。
好ましくは、シラン化合物及び触媒(以下に述べる、加水分解可能な有機金属化合物)中のアルコキシ基(RO基)に対し、HO/RO値で0.05から0.4の範囲で水を添加すると、輪ジミ防止効果が発揮できる。
より好ましくは、HO/RO値で0.1から0.2の範囲で水を添加すると、更に良好な輪ジミ防止効果が発揮できる。
通常、シラン化合物を加水分解しポリマー化するいわゆるゾルーゲル法は、大きく分けて2種類の組成の液剤が使用される。以下にその代表的な組成を組成式1として示す。
組成式1;
(1)Si(OR)+xHO+酸(若しくはアルカリ)触媒+溶媒。
(2)Si(OR)+M(OR)+溶媒。
ここで、(1)の組成は一般的なゾルーゲル液の組成である。溶媒中に主剤であるシラン化合物(上記組成(1)でSi(OR)で示す)の他に、反応水(xHO)と触媒(主に酸)を加え十分に撹拌することで得られる。
一方、組成(2)は液剤中に反応水を入れない組成である。この場合、液剤中には反応水が添加されないため、液剤自体は安定である。この液剤を塗工すると、塗工表面の水分若しくは空気中の水分(湿気)と反応し、触媒の金属アルコキシド(上記組成(2)でM(OR)で示す)が分解し、主剤であるシラン化合物(上記組成(2)でSi(OR)で示す)と反応し、ポリマーが成長する。このため、敢えて反応水及び酸触媒を加える必要がない液組成であることが特徴である。
そこで液組成(2)で示される液剤は、主に酸触媒が使えない(酸で劣化しやすい)塗工対象物、例えば紙、木材、大理石等に使用されることが多い。従って、組成(2)は反応水を加えないことが原則であり、この組成に水(添加水)を加えた例は未だかって無かった。本発明が、その最初の事例である。以下に、本発明で用いられるシラン化合物、触媒、有機溶剤及び水(添加水)について説明する。
本発明で必須なシラン化合物は、上記構造式(1)(3官能シラン化合物)及び上記構造式(2)(2官能シラン化合物)で示される。以下順に構造式(1)で示されるシラン化合物及び構造式(2)で示されるシラン化合物を説明する。
上記構造式(1)に示すシラン化合物(1)(3官能シラン化合物)は、具体的には、3個の加水分解可能な置換基(RO、RO及びRO)と、1個の加水分解不可能な置換基(R)をその分子内に有していることを特徴としている。
ここで、3個の加水分解可能な置換基(RO、RO及びRO)の役割は、水と反応し、下記反応式1に示すように、加水分解・縮重合し、強固な3次元のシロキサン結合(≡Si−O−Si≡)のネットワークを形成することである。
反応式1;
(1)≡Si−OR+HO→≡Si−OH+ROH
(2)≡Si−OH+HO−Si≡→≡Si−O−Si≡+H
(3)≡Si−OH+RO−Si≡→≡Si−O−Si≡+ROH
(反応式1中、ORは、OR、OR又はORに相当する。)
ここで得られるシロキサン結合の、結合エネルギーは106kcal/molである。一方、有機化合物の典型的な結合であるC−C結合の結合エネルギーは、82.6kcal/molである。従って、シラン化合物(1)が加水分解・縮重合することによって生成するシロキサン結合を有する塗工膜は、有機化合物由来の塗工膜と比べ、はるかに熱的に安定な塗工膜であることが分かる。この熱的に安定な結合によって形成される塗工膜は、耐熱性・耐摩耗性に優れたものとなり、その結果、耐熱性・耐摩耗性に優れた塗工膜の製造が可能となる。
また、1個の加水分解不可能な置換基(R)の役割は、得られた塗工膜に撥水性を与えることにある。そのためにはRは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基や、アルケニル基、フェニル基等が好ましく、またそれらは基内にハロゲン原子やエポキシ基等の置換基を含んでいてもよい。ハロゲン原子を含有することにより、形成された塗工膜は難燃性を示すという利点を有するが、一方では環境に対して悪影響を及ぼす可能性も有り、その使用は制限される。
このように1個の加水分解不可能な置換基の役割は、得られた塗工膜に撥水性を与えることにあるが、その他に塗工膜に柔軟性を与える効果もある。
ケイ素は4価の元素であるため、通常用いられている、4個の加水分解可能な置換基を有するテトラアルコキシシラン(Si(OR))(通称4官能シラン化合物と呼ばれている)を用いると、4個のシロキサン結合が生じる。この結合は強固であるが故に柔軟性が無く、塗工後に生じる木材の温度差等による収縮・膨張に耐えられず、塗工膜がひび割れることが多く、耐久性の低下の原因となる。
また、このようなテトラアルコキシシランは完全な無機物であるため、有機物である木材との相性が悪く、木材/塗工膜間の付着強度が低く、剥がれが生じ易い。このように、通常用いられている4個の加水分解可能な置換基を有するテトラアルコキシシランを用いると、塗工膜のひび割れや、剥がれが生じ易く、耐久性の高い塗工膜は得られない。
本発明で用いられる、上記シラン化合物(1)(3官能シラン化合物)は、1個の加水分解不可能な置換基(R)をその分子内に有している。即ち、重合した場合に、結合にあずからない部分が、そのネットワーク内に残存することとなる。これにより、隣接するケイ素原子との間で、強固なシロキサン結合の数が1つ足りないことになるが、その分、未反応な結合が、言わば「宙ぶらりん」の形で残るため、塗工膜の柔軟性を維持でき、それにより、得られた塗工膜が柔軟性を示すことになる。この塗工膜の柔軟性が木材の収縮・膨張により生じる応力を緩和し、塗工膜のひび割れ防止の役割を果たす。
従って、本発明で用いられるシラン化合物(1)(3官能シラン化合物)は、3個の加水分解可能な置換基と1個の加水分解不可能な置換基をその分子内に有していることを必要とするのである。
このようなシラン化合物(1)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、β-(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン等、これらの2〜10分子程度の縮合体を例示できる。
なお、シラン化合物(1)は、かかる単量体の1種類のみを縮合したものであっても、また、上記例示した単量体の2種類以上を縮合したものであってもよい。このようなシラン化合物(1)は、単独で使用してもよいし、2種類以上の混合物として使用してもよい。
また、このような縮合体は市販品を使用しても良い。例えば、信越化学工業株式会社製、製品名:KC−89、KC−89S、KR−500などがあげられる。GE東芝シリコーン株式会社製、製品名:XC−96も同様に使用可能である。
ところでシラン化合物は、木材内部への浸透性を勘案すると、単量体(モノマー)が最適であるが、単量体は蒸気圧が高い、即ち、蒸発して飛散し易く、取り扱いが困難となるため、より好ましくはオリゴマー体、即ち、n=2〜10程度のオリゴマー体を用いることが好ましい。
本発明は、このような構造式(1)で示される、いわゆる3官能シランを主剤とするものである。このようなシラン化合物(1)(3官能シラン化合物)を単独で用いた場合、通常の使用条件では十分な撥水性・耐水性を示すことができる。しかし、長時間水と接触した場合、輪ジミが発生することが分かった。この理由として、3官能シランだけでは撥水性が不十分であることが分かった。
また、水分(湿度)や温度の変化で木材表面は伸縮することが多い。もし塗工膜に十分な柔軟性がない場合、木材表面の伸縮時に、その伸縮に追従できず、塗工膜にわずかなひび割れが発生し、その部分から水分や湿気が浸透し、その結果、輪ジミが発生することも分かった。
そのため、このようなシラン化合物(1)(3官能シラン化合物)だけで得られた塗工膜では、撥水性及び柔軟性が足りないことが分かった。
そこで、長時間水と接触しても輪ジミの防止ができるようにするため、更なる柔軟性及び撥水性が必要となる。このような目的で添加するシラン化合物として、シラン化合物(2)(2官能シラン化合物)を必須とする。
シラン化合物(2)は、ケイ素の4個の置換基のうち、2個が加水分解可能な置換基(RO及びRO)であり、他の2個が加水分解不可能な置換基(R及びR)から成り立っている。シラン化合物(2)において、R及びRは、それぞれ同一又は異なっていてもよい、水素若しくは炭素数1〜10のアルキル基又はアルケニル基である。R及びRは、その分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでいてもよい、炭素数が1〜10のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基である。
シラン化合物(2)の具体例としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン等、これらの2〜10分子程度の縮合体を例示できる。なお、シラン化合物(2)は、かかる単量体の2種以上の縮合体であってもよく、また、さらに2分子以上の縮合体を使用する場合にも、かかる単量体の2種以上の縮合体であってもよい。
また、このような縮合体は市販品を使用しても良い。例えば、信越化学工業株式会社製、製品名:KR−212、KR−213、KR−272などがあげられる。GE東芝シリコーン株式会社製、製品名:YF−3800、YF−3804、TSR−160、TSR−165も同様に使用可能である。
シラン化合物(2)を塗工液に添加することで、塗工膜の撥水性や柔軟性又は、木材の有機成分との付着性をさらに高めることができ、結果的に木材の耐久性をさらに向上させることができる。そのため、本発明ではシラン化合物(1)とともに、シラン化合物(2)は必須な化合物である。
シラン化合物(2)は、塗工液の主たるシラン化合物成分であるシラン化合物(1)の100重量部に対し、一般的にはその総量が50重量部を超えない範囲にて、塗工液に添加することが好ましい。その範囲は、好ましくは3〜30重量部、より好ましくは6〜15重量部である。
添加量が50重量部を超えると、塗工液を木材に塗布し加水分解・縮重合を行う過程で、主たるシラン化合物成分であるシラン化合物(1)との間でうまく結合が形成されず、塗工膜の耐水性が不十分となる可能性があるからである。従って、実際にシラン化合物(2)を添加する場合には、添加量に依存して塗工膜の強度が低下することを想定し、目的に応じてその添加を必要最小限に抑えるようにすることが好ましい。
なお、シラン化合物(2)における加水分解不可能な置換基(R、R)の第一義的な役割は、塗工膜に柔軟性を与えることにあるが、これらはアルキル基等の有機性置換基であるため、同時に塗工膜に撥水性を付与する役割をも果たす。一般に有機性置換基は、炭素数が増える程、有機性、即ち、撥水性が増加するが、炭素数があまり大きくなると、立体障害により塗工膜内に歪が生じて膜の強度低下の原因となる。
ところで、耐熱性・耐摩耗性の強いシロキサン結合は、一方でいわゆる「硬い」結合でもある。この「硬さ」のため、塗工液を塗布する素材である木材に塗布することにより、該素材に耐摩耗性を付与できるわけである。しかし、木材表面の塗工膜は柔軟性を有することが必要であり、その素材である木材と同様な柔軟性が求められる。
従来から一般に用いられているゾル−ゲル塗工液には、出発原料にテトラアルコキシシラン(Si(OR)、シラン化合物(3)と記す。4官能シラン化合物)やそのオリゴマー体が用いられる。これを完全に加水分解及び縮重合反応(前記反応式1における(1)〜(3))させて塗工膜を形成させると、ケイ素原子の4個の結合全てが硬いシロキサン結合のネットワークを形成し、セラミックと同様に硬い塗工膜が形成される。しかしながら、柔軟性に欠けた脆い膜となってしまうため、木材の柔軟性を生かした木材表面塗工液を製造することは事実上不可能であった。
これに対し本発明では、ケイ素原子の4個の置換基のうち、1個が加水分解されないシラン化合物(1)を木材表面塗工液の主たるシラン化合物成分として用い、更に、加水分解されない置換基を2個有するシラン化合物(2)を木材表面塗工液に添加することにより、さらに塗工膜の柔軟性等を増すことが可能となった。
次に、本発明で用いられる触媒について説明する。ここで加水分解可能な置換基(RO、RO、RO、RO及びRO)は、水と反応し、上記反応式1の(1)〜(3)に従い、最終的にはシロキサン結合(≡Si−O−Si≡)を生成する。これらの反応のうち、反応式(1)の反応は最も緩やかな反応(律速段階)であり、反応式(1)の反応を素早く進行させることが重要である。反応式(1)の反応を速く進行させるには、通常酸触媒及び反応水(シラン化合物を完全に縮重合させる量以上の反応水)が添加され、かつ高温で処理することが行われている(上記組成式1の(1)参照)。
酸触媒を用いた場合、反応液に水と酸が添加された時点で反応が開始され、木材表面に塗工する時には、すでに塗工液内には微小なコロイド状シリカが生成している。このものは、コロイド状であるため、木材表面内部へ浸透せず、木材表面や表面に近い部分にのみ塗工される。従って、このようなコロイド状のシリカ溶液を用いても、十分に耐久性のある耐水性を有する塗工膜は得られない。
また、反応液内に含有されている酸触媒が、木材の劣化を著しく促進するため、酸を含有した塗工液の使用は制限される。
ところで本発明では、木材表面から内部に浸透し易く、且つ、内部に浸透したシラン化合物(1)及びシラン化合物(2)が内部の水と反応し、その場で縮重合反応を生じ、木材内部よりシロキサン結合のポリマーが成長することを想定している。その結果、木材内部の細部にまでポリマーが満たされることになり、水の浸入を効果的に抑えることができる。
このようなシラン化合物(1)及びシラン化合物(2)は、水と反応してシロキサン結合を形成するが、その反応速度は遅いといわれている。木材用処理剤として使用する本発明では、反応を促進させるための触媒として、上記問題点から、酸触媒を加えることはできない。
そこで本発明においては、酸触媒の代わりに、水と出会うと直ちに、シラン化合物(1)及びシラン化合物(2)の加水分解及び、縮重合反応を進行させることができる触媒を用いている。このような触媒としては、加水分解可能な有機金属化合物が挙げられる(上記組成式1の(2)参照)。
有機金属化合物としては、例えば、金属アルコキシドを用いる。このような目的で使用される金属アルコキシドとしては、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属アルコキシドが挙げられる。
より具体的には、テトラプロポキシチタネート、テトラブトキシチタネート、テトラプロポキシジルコネート、テトラブトキシジルコネート、トリプロポキシアルミネート、アルミニウムアセチルアセトナート等を例示できる。
チタニウムアルコキシドを例に挙げると、シラン化合物(1)及びシラン化合物(2)との反応は以下のように進行する。
反応式2;
(4)≡Ti−OR+HO→≡Ti−OH+ROH
(5)≡Ti−OH+RO−Si≡→≡Ti−O−Si≡+ROH
このように、水と反応し分解し易い金属アルコキシドと、シラン化合物(1)及びシラン化合物(2)を含有する本発明の塗工液を木材表面に塗工すると、木材内部に両液剤が浸透し、内部に存在する水と金属アルコキシドが先ず反応し(反応式2の(4))、さらに分解した金属アルコキシドとシラン化合物(1)及びシラン化合物(2)とが反応し(反応式2の(5))、木材内部よりポリマーが生成する。
本発明の塗工液中の触媒量は、シラン化合物(1)及びシラン化合物(2)の合計量100重量部に対して、3〜20重量部、好ましくは、5〜15重量部とすることができる。これにより木材組織との間に強い付着力を持った膜が、木材表面に得られる。これにより耐水性の高い塗工膜ができる。また一方で、反応にあずからない置換基(R、R及びR)に由来する撥水性及び柔軟性により、塗工膜の耐久性をさらに向上させることができる。
このようにして木材表面に形成された塗工膜は、従来型塗料のような木材表面のみに存在する高分子状のコート層ではなく、実際には表面から木材内部にまで入り込んで存在し、その内部で木材の細孔を埋める役割を果たしている。従って、従来の塗工液とは異なり、木材表面には薄い塗工膜(コート層)が存在するのみであり、その結果、木材の天然の風合いを損なうことなく残すことができる。即ち、木材が本来有している湿度調整機能や風合いを損なうことなく、撥水性や耐久性を付与する表面処理が可能となる。
また、本発明の塗工液には、シラン化合物(1)及びシラン化合物(2)、並びに触媒及び水(添加水)を均一に混合させるため有機溶剤を添加することが必須である。
この目的で使用される有機溶剤としては、アルコール類が好ましい。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール又はヘキサノール等を例示できる。アルコール類以外では、酢酸エチル、キシレン、ジメチルカーボネート等を例示できる。
また、その添加量を制御することによって、塗工液の粘度や乾燥速度の調整も可能である。本発明の塗工液中における有機溶剤の含有量は、通常10〜90重量%、好ましくは25〜80重量%である。有機溶剤の含有量が10重量%より少ないと、塗工液の粘度が高くなりすぎ、木材の内部及び細部に十分に液剤が到達しないおそれがあり、また、均一な塗工膜が得られないおそれがある。一方、90重量%より多いと、塗工液の固形分が低くなり(薄くなり)、十分な性能を発揮できないおそれがある。
次に添加水について説明する。なお、本発明ではシラン化合物と触媒が共存している(均一に分散している)溶液に、水(添加水)を加えることを必須としている。水(添加水)を加えるとシラン化合物及び触媒は共重合し(均一に重合し)、分子量が大きくなる。すなわち、共重合(均一に重合)するためバランスの良い高分子鎖となり、その後の更なるポリマー化反応においてもバランスの良い塗工膜が得られ、結果として輪ジミの無い耐久性の高い塗工膜が得られることとなる。
一方、最初から高分子化したシラン化合物、具体的には構造式(1)及び構造式(2)、特に主剤として用いる構造式(1)で示される化合物で、n=10程度及びそれ以上のオリゴマーもしくはポリマーを原料に用いると、その後の触媒との縮重合過程で、大きなポリマー状のシラン化合物どうしが、あたかも団子どうしが付くように反応するため、得られた高分子鎖は緻密さが足りなくなり、結果として耐水性・耐久性の劣った塗工膜しか得られなくなり、輪ジミの発生を抑えられなくなる。
このような添加水の添加量に対して具体的に説明する。塗工液中には、シラン化合物(1)、シラン化合物(2)及び触媒に由来する、水と反応する置換基(アルコキシ基、RO基)が存在する。このRO基は、上記反応式(1)及び反応式(4)に従って水と反応し、HO基となる。その後、上記反応式(3)及び反応式(5)に示してあるように、生成したHO基は更にRO基と反応するため、結局、水1分子でRO基は2個反応することになる。
従って、水とアルコキシ基の比率(HO/RO)で、HO/RO=0.5を超えた添加水が塗工液中に存在すると、シラン化合物及び触媒内の反応性アルコキシ基は存在しなくなり、塗工時木材表面及び内部での反応する部分が無くなり、付着力の高い塗工膜が得られなくなる。
そのため、添加水とアルコキシ基との比率で、HO/RO=0.5が添加水の上限値となる。
一方、添加水量が少ないと、多くの未反応のアルコキシ基が残り、塗工後にも一部未反応のまま残る確率が高く、結果として、十分な輪ジミ防止効果が発揮されない。好ましくは、HO/RO値で0.05〜0.4の範囲、更に好ましくは、0.1〜0.2の範囲である。
このような範囲で添加水を加え、塗工前にある程度のアルコキシ基を分解しておくと、その後の塗工時に発生する、アルコキシ基の残存を抑えることができ、結果として輪ジミ防止効果が発揮できる。
なお、本発明の塗工液には、本発明の目的を損なわない範囲で、求められる特性に応じて種々の添加剤等の成分を添加することができる。任意に添加しうる成分としては、例えば、着色剤、紫外線防止剤、坑カビ剤、抗菌剤、防蟻剤等が挙げられる。
本液剤の塗工方法は特に制限されず、通常の塗工方法で十分に撥水性・耐久性及び輪ジミ防止効果が発揮される。ただし、本液剤は木材表面及び内部の水分・湿気等で反応が進行することを想定している。そのため、木材表面が雨などで濡れている時は、表面を十分に乾燥してから塗工することが必要である。
このように本発明に係る塗工液は、有機溶媒中に構造式(1)で示されるシラン化合物(3官能シラン化合物)を主原料とし、更に構造式(2)で示されるシラン化合物(2官能シラン化合物)を共存させ、これらを重合させる触媒を加え、更にこれらシラン化合物及び触媒をある程度縮重合させる目的で水(添加水)を加えて成るものである。この塗工液を木材表面に塗布すると、木材表面のみならず、木材内部にまで液剤が浸透し、且つ、未反応のアルコキシ基の残存が無く、結果として、撥水性及び耐水性が付与され、輪ジミの発生がほとんどない耐水性の高い塗膜を付与することができるのである。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、実施例はあくまで一例であって、本発明を何ら限定するものではない。
[塗工液の製造]
実施例1
メチルトリメトキシシラン縮合体(信越化学工業製、KC−89。シラン化合物(1)に相当。重合度n=2.5量体、3官能シラン)532.0g及び、メチルフェニルシラン縮合体(信越化学工業製、KR−212。シラン化合物(2)に相当。2官能シラン。なお本縮合体の反応基は水酸基である)35.6gをイソプロピルアルコール355.1gに溶解し、更にアセチルアセトン17.8gを加え、そこに触媒としてチタンテトラプロポキシド49.5gを加え、十分に攪拌した。そこに反応水10.0gを少しずつ加えさらに十分に撹拌し、塗工液を製造した。
実施例2〜5及び比較例3
基本組成は実施例1に準じ、反応水の添加量を変えたものを、実施例2〜5及び比較例3とした。表1及び表2に示す組成で塗工液を製造した。
実施例6〜8及び比較例4〜5
基本組成は実施例3に準じ、シラン化合物(1)(3官能シラン)とシラン化合物(2)(2官能シラン)の比率を変えたものを、実施例6〜8及び比較例4〜5とし、表1及び表2に示す組成で塗工液を製造した。
比較例1
未塗工の杉材を比較例1とした。
比較例2
基本組成は、実施例1〜5と同様にし、反応水を入れない塗工液を、比較例2とした。
比較例7
メチルトリメトキシシラン縮合体(実施例1と同じ、3官能シラン)557.8gをイソプロピルアルコール360.7gに溶解し、更にアセチルアセトン18.6gを加え、そこに触媒としてチタンテトラプロポキシド51.9gを加え、十分に攪拌した。そこに反応水10.9gを少しずつ加えさらに十分に撹拌し、塗工液を製造した。
比較例6及び比較例8〜9
基本組成は比較例7に準じ、添加水を入れない例を比較例6とし、添加水を入れた例を比較例8〜9とし、表1及び表2に示す組成で塗工液を製造した。
比較例11
メチルトリメトキシシラン縮合体(実施例1と同じ、3官能シラン)347.8gとテトラメトキシシラン縮合体(多摩化学工業製、MS−51。シラン化合物(3)に相当。重合度3.9量体、4官能シラン)298.2gをイソプロピルアルコール261.4gに溶解し、更にアセチルアセトン21.7gを加え、そこに触媒としてチタンテトラプロポキシド60.2gを加え、十分に攪拌した。そこに反応水10.7gを少しずつ加えさらに十分に撹拌し、塗工液を製造した。
比較例10及び比較例12〜13
基本組成は比較例11に準じ、添加水を入れない例を比較例10とし、添加水を入れた例を比較例12〜13とし、表1及び表2に示す組成で塗工液を製造した。
比較例15
テトラメトキシシラン縮合体(比較例11と同じ、4官能シラン)792.9をイソプロピルアルコール96.8gに溶解し、更にアセチルアセトン26.5gを加え、そこに触媒としてチタンテトラプロポキシド73.8gを加え、十分に攪拌した。そこに反応水9.8gを少しずつ加えさらに十分に撹拌し、塗工液を製造した。
比較例14及び比較例16〜17
基本組成は比較例15に準じ、添加水を入れない例を比較例14とし、添加水を入れた例を比較例16〜17とし、表1及び表2に示す組成で塗工液を製造した。
表1
Figure 2010037492













表2
Figure 2010037492
木材サンプル
市販のスギ材を、縦16cm、横9cm、厚さ1.2cmに裁断し、塗工用試験片とした。このスギ材は脱脂処理等の、特別な処理をすることなく、そのまま使用した。なお、各試験片は3枚ずつ処理し、その平均を取った。
塗工処理方法 実施例1〜8及び比較例2〜17で製造した塗工液を用い、塗工用試験片の片側に布に塗工液をしみ込ませ塗工した。塗工後、1時間室温にて放置し、乾燥させた。次にドライヤーを用いて約5分間塗工表面を熱処理した。熱処理後、同様にして再度塗工処理を行った。塗工面の温度が室温に下がるまで放置したのち、塗工面に直径1cm程度の水滴を垂らし、15時間室温で放置した。その後、表面に残った水滴を布で良く拭き取り、輪ジミの有無を観察した。結果を表3に示す。
評価法
比較例6(シラン化合物として3官能シランを用い、添加水無し)で発生した輪ジミを基準とし、これを「評価0」とした。輪ジミが全く発生しない場合を「評価10」とし、目視にて11段階評価をした。なお、「評価0」より大きな輪ジミが発生したサンプルは、「評価<0」として記載した。
評価結果
シラン化合物を3官能シランのみとした場合は(比較例6〜9)、はっきりした輪ジミが発生した。そして少しずつ添加水量を増してゆくと(比較例7〜9)、発生する輪ジミが徐々に薄くなった(比較例9で輪ジミ「評価3」)。しかし、シラン化合物を3官能シランのみとした場合は、十分な輪ジミ防止効果は発揮できなかった。ただし、添加水を加えることで、輪ジミの発生が抑えられることが認められた。
シラン化合物として3官能シランと2官能シランを併用した場合(実施例1〜8及び比較例2〜5)、添加水を加えないと(比較例2)少しの輪ジミが発生したが(輪ジミ「評価5」)、3官能シランのみと比較して、はるかに良好であった。このことから、シラン化合物として2官能シランの添加効果が認められた。
3官能シランと2官能シランを併用した塗工液に添加水を加えて行くと(実施例1〜5)輪ジミの発生が抑えられ、特に実施例3〜5では輪ジミの発生が認められなかった。このことより、HO/RO値で0.18〜0.3が最良の結果を示すことが分かった。
しかし、実施例4及び5で作成した塗工液は、密栓状態で室温放置すると、それぞれ約3か月、約1か月でゲル化した。
また比較例3(HO/RO=0.642)では添加水を加えると白濁し、塗工液とならなかった。
このことより、添加水の最適条件はHO/RO値で0.1〜0.2であることが分かった。
次に、3官能シランと2官能シランの添加比率を検討した(実施例6〜8及び比較例4〜5)。基本組成を実施例3(HO/RO=0.184)とし、2官能シランの添加量を増やした。
実施例3(2官能シラン/3官能シラン=6.7%)では良好な耐水性を示した(評価「10」)が、2官能シランの添加量を増やすと(実施例6=13.5%、実施例7=28.9%、実施例8=39.6%、比較例4=50.0%、比較例5=57.4%)、実施例6〜7では良好な耐水性(評価「9」及び評価「8」)を示したが、その他では添加量を増やすほど、耐水性が低下した。この理由として、2官能シランが増えて行くと、3官能シラン主体の緻密な分子構造が乱れるためと思われる。すなわち、2官能シランを増やすことにより見かけの撥水性は向上するが、全体として膜構造が乱れ、それにより耐水性が低下したものと思われる。
ところで、塗工膜の膜強度を上げるため、いわゆる4官能シランを塗工液に加えることがある。そこで、4官能シランを添加し、その輪ジミ防止効果を調べてみた(比較例10〜17)。
シラン化合物が4官能シランのみでは(比較例14〜17)、いずれの場合でも塗工膜に白色のシリカ状物質の析出が認められ、しかもザラザラした感触となり、かつ大きな輪ジミが発生した。この場合も、添加水量を上げるにつれ輪ジミは減少する傾向にあった。
シラン化合物を3官能シラン及び4官能シランと併用した場合、添加水を加えない時(比較例10)のみ、4官能シランだけの場合と同様に、塗工面が白色を呈し、ザラザラ感が残った。また大きく色の濃い輪ジミが発生した。
このことより、固い結合を生成する4官能シランは、木材用塗工液のシラン化合物としては有効でなかった。
しかし、添加水を加えるにつれ(比較例11−13)、色の濃い輪ジミではあるが少しずつその色が薄くなった。この場合も、添加水量を上げるにつれ、輪ジミは減少する傾向にあった。
表3
Figure 2010037492
以上の試験結果より、輪ジミの発生を抑える塗工液の条件として、以下のことが分かった。
1.シラン化合物は、構造式(1)で示される3官能シランと、構造式(2)で示され
る2官能シランとを併用することが必須である。
2.ただし、2官能シランの添加量を増やしてゆくと、基本となる3官能シランの膜構
造が乱れ、結果として耐水性が低下する傾向にあった。
3.添加水量を多くすると、輪ジミの発生が抑えられる傾向にある。
4.ただし、添加水量がHO/RO値で0.5に近づくにつれ、輪ジミ防止効果が上
がるが、一方で塗工液の保存安定性が失われる傾向にあり、0.5を超えると塗工
液が白濁した。
本発明の木材表面塗工液は、耐水性、撥水性に優れ、特に、輪ジミ防止効果の高い塗工膜を木材表面に与えることができる。

Claims (5)

  1. 下記構造式(1)で示されるシラン化合物を主原料とし、更に下記構造式(2)で示されるシラン化合物を共存させ、これらシラン化合物を硬化及び/又は固化させる触媒を含有し、且つ、水および溶媒を添加してなる、木材表面塗工液。
    Figure 2010037492
    (構造式(1)において、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なってもよい、水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基であり、Rはこれらの基内にハロゲン原子又はエポキシ基を含んでもよい、炭素数が1〜10のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基であり、nは2〜10である)
    Figure 2010037492
    (構造式(2)中、R及びRは、それぞれ同一又は異なっていてもよい、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基又はアルケニル基であり、R及びRは、その基内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでいてもよい、炭素数が1〜10のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基である。)
  2. 前記触媒はアルコキシ基(RO基)を含有するものであり、前記シラン化合物及び触媒中のアルコキシ基(RO基)に対し、HO/RO値で0.05から0.4の範囲で水を添加してなる、請求項1に記載の木材表面塗工液。
  3. 前記触媒はアルコキシ基(RO基)を含有するものであり、前記シラン化合物及び触媒中のアルコキシ基(RO基)に対し、HO/RO値で0.1から0.2の範囲で水を添加してなる、請求項1に記載の木材表面塗工液。
  4. 前記シラン系塗工液を硬化及び/又は固化させる触媒が、加水分解可能な有機金属化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の木材表面塗工液。
  5. 前記加水分解可能な有機金属化合物が、チタニウム、ジルコニウム及びアルミニウムから成る群から選ばれる一種以上の金属アルコキシドである請求項4に記載の木材表面塗工液。
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