JP2005035942A - ヨードアリール基を有するステロイド化合物 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、ヨードアリール基を部分構造として含むステロイド化合物に関する。この化合物はリポソームの膜構成成分として利用することができ、このリポソームはX線造影剤として用いることができる。
ヨード化合物を用いたX線血管造影の分野では、水溶性のヨード造影剤を投与することにより血液の流れを造影し、その流れが滞っている箇所をみつける技術がある。この方法は、ヨード造影剤が血流中にあり、血管内部の血流の変化を検出する方法であるところから、ヨード造影剤が病巣細胞に局在する場合に比べて正常組織との区別がつけにくい。このため、通常この方法では狭窄が50%以上進んだ病巣しか検出することができず、虚血性疾患の発作が発症する前に病巣を検出することは困難である。
これとは別に、疎水性ヨード造影剤もしくは親水性造影剤を製剤化し、目的とする疾患部位に選択的に集積させる試みが報告されている。例えば、疎水性化合物であるCholesteryl Iopanoateの油滴分散液を注射することにより、該ヨード化合物が実験動物の動脈硬化部位に集積することが開示されている(非特許文献1参照)。また、Cholesteryl IopanoateをアセチルLDLに取り込ませて投与することによって該ヨード化合物が実験動物の動脈硬化部位に集積することが開示されている(非特許文献2参照)。
また、Cholesteryl Iopanoateの油滴分散液を注射することによる肝臓や脾臓のX線造影の例や、diatrizoic acidのエステル体をリポソームに封入し、肝臓や脾臓の選択的造影を行う方法、血管プールやリンパ系をイメージ化するための造影剤が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、これらの製剤方法は、血管疾患を選択的に造影する目的のためには、効率および選択性ともに十分でなく、X線照射により血管疾患を画像化した例も報告されていない。
さらに、疎水性、かつ加水分解抵抗性の放射性ヨード造影剤をマイクロエマルジョン製剤化、もしくはアセチルLDLに取り込ませて実験動物に投与して、動脈硬化巣部位を放射性造影する例が開示されている(特許文献2参照)。また、上述のCholesteryl Iopanoateを用いて動脈硬化巣部位をX線造影する例が開示されているが、この化合物は生体内で分解されず、生体臓器、特に肝臓に蓄積することが報告されている(例えば、非特許文献3参照)。このような化合物の性質は生体内に長期留まることを示しており、例えば、X線造影剤のような診断への用途を考えた場合には好ましい性質とはいえない。
化合物の観点からは、2,4,6-トリヨード安息香酸とコレステロールが無置換のメチレンアセタール構造を介して結合した化合物が知られている(特許文献3)が、この化合物は生体内で加水分解されたときに毒性の高いホルムアルデヒドを生成するため、本発明の様な診断への用途を考えた場合には好ましい性質とはいえない。また、diatrizoic acidとコレステロールからなるアセタール化合物が生体分解性の造影剤として開示されている(特許文献4参照)。
米国特許第4567034号
国際公開WO01/93918
特願2003-12692
国際公開WO95/19186
Pharmaceutical Research, 6(12), 1011, 1989
Pharmaceutical Research, 16(3), 420, 1999
Journal of Medicinal Chemistry, 25, 1500, 1982
本発明の課題は、病巣選択的造影のためのリポソーム化ヨード造影剤に適したヨード化合物を提供することにある。
本発明者等は上記の課題を解決すべく研究を行った結果、ヨードアリール基を含むカルボン酸とステロイド化合物がメチル基を置換基に有するメチレンアセタール構造を介して結合した化合物がX線造影剤のためのリポソームの膜構成成分として、また毒性の観点からも優れた性質を有しており、この化合物を含むリポソームを用いてX線造影を行うことによって血管疾患の病巣を選択的に造影できることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
すなわち、本発明は、下記の一般式(I):
別の観点からは、本発明により、上記の化合物又はその塩を膜構成成分として含むリポソームが提供され、その好ましい態様によれば、ホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンを膜構成成分として含む上記リポソームが提供される。
また、本発明により、上記のリポソームを含むX線造影剤が提供される。この発明の好ましい態様によれば、血管疾患の造影に用いる上記X線造影剤;泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる上記X線造影剤;マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影に用いる上記のX線造影剤;マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる上記のX線造影剤が提供される。
また、本発明により、上記のリポソームを含むX線造影剤が提供される。この発明の好ましい態様によれば、血管疾患の造影に用いる上記X線造影剤;泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる上記X線造影剤;マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影に用いる上記のX線造影剤;マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる上記のX線造影剤が提供される。
また、上記X線造影剤の製造のための上記の化合物又はその塩の使用;X線造影法であって、上記の化合物を膜構成成分として含むリポソームをヒトを含む哺乳類動物に投与した後にX線を照射する工程を含む方法;血管疾患の病巣の造影方法であって、上記の化合物を膜構成成分として含むリポソームをヒトを含む哺乳類動物に投与した後にX線を照射する工程を含む方法が本発明により提供される。
さらに、少なくとも1つのヨード原子が放射性同位体である上記の化合物又はその塩を膜構成成分として含むリポソーム、及び該リポソームを含むシンチグラフィー造影剤が本発明により提供される。この発明の好ましい態様によれば、泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる上記のシンチグラフィー造影剤;マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影に用いる上記のシンチグラフィー造影剤;造影対象の組織が血管、肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる上記のシンチグラフィー造影剤;腫瘍、動脈硬化巣、炎症部位、及び感染部位からなる群から選ばれる疾患部位の造影に用いる上記のシンチグラフィー造影剤が提供される。
また、上記シンチグラフィー造影剤の製造のための上記の化合物又はその塩の使用;シンチグラフィー造影法であって、上記の化合物を膜構成成分として含むリポソームをヒトを含む哺乳類動物に投与した後に該リポソームが発生する放射線を検出する工程を含む方法;血管疾患の病巣の造影方法であって、上記の化合物を膜構成成分として含むリポソームをヒトを含む哺乳類動物に投与した後に該リポソームが発生する放射線を検出する工程を含む方法が本発明により提供される。
本発明の化合物は、X線造影剤のためのリポソームの構成脂質として優れた性質を有しており、この化合物を含むリポソームを用いてX線造影することにより血管の病巣を選択的に造影できる。
本明細書において、Arは少なくとも1個のヨウ素原子で置換されたアリール基を表す。該アリール基の種類は特に限定されず、単環性又は多環性のアリール基のいずれであってもよい。例えば、アントラセン基、ナフタレン基、又はフェニル基が好ましく、フェニル基が最も好ましい(本明細書中で言及する他のアリール基についても同様である)。アリール基の環上に置換するヨウ素原子の個数は1個以上であれば特に限定されないが、3個以上である場合が特に好ましい。Arが示すアリール基の環上に存在するヨウ素原子の置換位置は特に限定されず、環上の任意の位置に存在することが可能である。例えば、Arがトリヨードフェニル基を表す場合には、芳香環上における3個のヨウ素原子の置換位置は特に規定されないが、「2,4,6位」、「2,3,5位」、「3,4,5位」置換が好ましく、より好ましくは「2,4,6位」、「2,3,5位」置換であり、なかでも「2,4,6位」置換が最も好ましい。
本明細書において、ある官能基について「置換または無置換」又は「置換基を有していてもよい」という場合には、その官能基が1又は2以上の置換基を有する場合があることを示しているが、特に言及しない場合には、結合する置換基の個数、置換位置、および種類は特に限定されない。ある官能基が2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。本明細書において、ある官能基が置換基を有する場合、置換基の例としては、ハロゲン原子(本明細書において「ハロゲン原子」という場合にはフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素のいずれでもよい)、アルキル基(本明細書において「アルキル基」という場合には、直鎖状、分岐鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのいずれでもよく、環状アルキル基にはビシクロアルキル基などの多環性アルキル基を含む。アルキル部分を含む他の置換基のアルキル部分についても同様である)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
Arが示すアリール基がヨウ素以外の置換基を有する場合、その置換基の種類、個数、及び置換位置は特に限定されない。アリール基が有する好ましい置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子からなる群から選ばれるハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又はカルバモイル基が挙げられる。また、アリール基がヨウ素原子以外の置換基を有しない場合も好ましい。また、Arがトリヨードフェニル基を示す場合、該トリヨードフェニル基はヨウ素原子以外の置換基を有していてもよい。該トリヨードフェニル基が置換基を有する場合、その好ましい置換基の例としては、Arが示すアリール基について例示した置換基と同様のものが挙げられる。Arが3個のヨウ素原子以外に置換基を有しない場合も好ましい。
本明細書においてSte基が示す「ステロイド残基」とはステロイド化合物(シクロペンタノヒドロフェナントレイン骨格を有する化合物)の残基を意味する。ステロイド残基は、一価の残基であってもよいが、二価以上の残基であってもよい。本明細書においてステロイド残基という場合には、置換又は無置換のステロイド残基のいずれであってもよい。また、ステロイド残基は任意の個数の二重結合を有していてもよい。ステロイド残基は一般に1個以上の不斉炭素を有するが、不斉炭素の配置はそれぞれ独立にR又はS配置のいずれか、あるいは両者の混合物であってもよい。
上記ステロイド残基を構成するステロイド化合物の例としては、コレステロール、コレスタノール、コール酸、デヒドロコール酸、アンドロステロン、ディジトキシゲニン、ディゴキシゲニン、リトコール酸、スティグマスタノール、テトラヒドロコルチソン、ブファリン、5α−アンドロスタン−3β ,17β−ジオール、デヒドロエピアンドロステロン、5−アンドロステン−3β,17β−ジオール、プレグネノロン、5−コレステン−3β,20α−ジオール、スチグマステロン、β−シトステロール、5−コレステン−3β−オール−7−オン、カンペステロール、22−ヒドロキシコレステロール、17α−アセトキシプレグネノロン、ヂオスゲニン、メチルアンドロステンジオール、5−アンドロステン−3β−オール−17β−カルボン酸、17α−ヒドロキシプレグネノロン、21−アセトキシプレグレノロン、16β−メチル−16α、17α−エポキシプレグネノロン、フコステロール、ソラソジン、5−プレグネン−6−メチル−3β,17−ジオール−20−オン、6−メチルプレグネノロン、21−ヒドロキシプレグネノロン、5−プレグネン−3β,20α−ジオール、19−ヨードコレステロール、16α−メチルプレグネノロン、5−アンドロステン−3β,17β−ジオール−17−ベンゾエート、5−アンドロステン−3β,16α−ジオール−17−オン、3β,11β,17α,21−テトラヒドロプレグ−5−ネン−20−オン、5−プレグネン−3β,16α−ジオール−20−オン、5−コレステン酸−3β−オールメチルエステル、デスモステロール、5−コレステン−3β−オル−22−オン、プレグ−5−ネン−3β,17α,20α−トリオール、19−ヒドロキシコレステロール、ソラニジン、25−ヒドロキシコレステロール、7β−ヒドロキシコレステロール、19−ヒドロキシプレグネノロン、17α−ヒドロキシ−16β−メチルプレグネノロン、16,17−エポキシ−21−アセトキシプレグネノロン、5−プレグネン−6、16α−ジメチル−3β−オール−20−オン、5−コレステン酸−3β−オール、アンドロスト−5−ネン−3β,16β,17β−トリオール、5−コレステン−3β,22−ジオール、プレグ−5−ネン−3β,17α,20β−トリオール、21−ヒドロキシプレグネノロン−21−サルフェートカリウム塩、5−プレグネン−3β−オール−20−オン−16α−カルボニトリル、16α,17α−エポキシプレグネノロン、Δ7−シグマステロール等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ステロイド残基としては、環構造中に1以上の二重結合を含むステロイド残基か、コレスタナール基が好ましく、なかでもコレステロール基、β−シトステロール基、Δ7−シグマステロールがより好ましい。
Lは単結合又は二価の連結基を表し、より好ましくは二価の連結基を表す。Lが二価の連結基を表す場合、二価の連結基の主鎖を構成する原子数は特に規定されないが、20個以下である場合が好ましく、より好ましくは15個以下であり、10個以下である場合が最も好ましい。本明細書において、「主鎖」とはArと−CO−O−で表される基の左端の炭素原子との間を最小個数で結ぶ原子群を意味する。該連結基は飽和の基であってもよいが、不飽和結合を含んでいてもよい。
合成上の観点、また生体毒性の優位性から、Lが表す2価の連結基は主鎖中に1個以上のヘテロ原子(本明細書において「ヘテロ原子」という場合には、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などの炭素原子以外の任意の原子を意味する)を含んでいてもよく、その場合がより好ましい。主鎖中にヘテロ原子を含む場合、その個数は特に規定されないが、5個以下であることが好ましく、より好ましくは3個以下であり、1個であるときが最も好ましい。主鎖中のヘテロ原子の位置についても特に規定されないが、ヘテロ原子の個数が1個であるときは、Ar基から5原子以内の位置にヘテロ原子が存在していることが好ましく、Ar基に隣接している位置にヘテロ原子が存在する場合が最も好ましい。該連結基は、ヘテロ原子と隣接する炭素原子を含む官能基を部分構造として含んでいてもよい。連結基中に含まれる不飽和部分及び/又はヘテロ原子を含む官能基としては、例えば、アルケニル基、アルキニル基、エステル基(カルボン酸エステル、炭酸エステル、スルホン酸エステル、スルフィン酸エステルを含む)、アミド基(カルボン酸アミド、ウレタン、スルホン酸アミド、スルフィン酸アミドを含む)、エーテル基、チオエーテル基、ジスルフィド基、アミノ基、又はイミド基などがあげられる。上記の官能基はさらに置換基を有していてもよく、これらの置換基はLにそれぞれ複数個存在してもよい。複数個の置換基が存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
Lで表される二価の連結基の部分構造として、好ましくはアルケニル基、エステル基、アミド基、エーテル基、チオエーテル基、ジスルフィド基、又はアミノ基を挙げることができ、さらに好ましくはアルケニル基、エステル基、アミド基、又はエーテル基である。主鎖中に含まれるへテロ原子としては、酸素原子又は窒素原子が好ましく、酸素原子が最も好ましい。Lは置換基を有していてもよい。置換基を有する場合、置換基の存在位置、個数、及び種類は特に限定されないが、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、又は水酸基が好ましい。また、Lが無置換の場合も好ましい。
本発明の化合物は1以上の不斉中心を有する場合があるが、この場合、不斉中心に基づく光学活性体またはジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する。純粋な形態の任意の立体異性体、任意の立体異性体の混合物、ラセミ体などは、いずれも本発明の範囲に包含される。また、本発明の化合物はオレフィン性の二重結合を有する場合があるが、その配置はE又はZのいずれであってもよく、両者の混合物として存在していてもよい。本発明の化合物は互変異性体として存在する場合もあるが、任意の互変異性体、またはそれらの混合物は本発明の範囲に包含される。さらに本発明の化合物は置換基の種類によっては塩を形成する場合があり、遊離形態の化合物又は塩の形態の化合物が水和物又は溶媒和物を形成する場合もあるが、このような場合も本発明の範囲に包含される。塩の種類は特に限定されず、酸付加塩又は塩基付加塩のいずれであってもよい。
以下に本発明の化合物の好ましい例を示すが、本発明の化合物はこれらの例に限定されることはない。
上記のトリヨードフェニル誘導体をアルキルカルボン酸誘導体と反応させることによって、本発明の化合物の製造に適したカルボン酸誘導体に変換できる。例えば、2,4,6-トリヨードフェノールとハライドを有するアルキルカルボン酸またはそのエステルを反応させることによって、エーテル結合を介して連結したヨードフェニル基を有するカルボン酸誘導体を合成できる。このようなエーテル連結の他にも、原料に用いるトリヨードフェニル誘導体またはアルキルカルボン酸の種類によって、エステル連結、アミド連結、又はアミン連結等が利用できる。これらのエステル連結、アミド連結、エーテル連結、又はアミン連結を介した縮合反応としては、例えばRichard C. Larock著、Comprehensive organic transformations(VCH)に記載の方法を用いることができる。反応に用いる化合物がその他にも官能基を有する場合には、一時的にこれらの官能基を保護する必要が生じる場合がある。この場合の保護基としては、例えば、T. W. Green & P. G. M. Wuts著、Protecting groups in organic synthesis(John Wiley & Sons, Inc.)に記載のものを用いることができる。
本発明の化合物において用いられるステロイド残基としては、通常市販されているものを使用しても良く、あるいは用途に応じて適宜合成しても良い。これらのステロイド化合物を、例えばJ. Org. Chem. 62, 1560 (1997)やSyn. Lett. 12, 1962 (2001)に記載の方法でアリルエーテル化合物へと誘導し、さらに上記のヨードアリールカルボン酸と、例えば酸触媒下で縮合することによって本発明の化合物を合成できる。しかし、これらの方法は単なる例示であり、これらに限定されるものではない。
本発明の化合物又はその塩はリポソームの膜構成成分として用いることができる。本発明の化合物又はその塩を用いてリポソームを調製する場合、本発明の化合物又はその塩の使用量は、膜構成成分の全質量に対して10から90質量%程度、好ましくは10から80質量%、さらに好ましくは20から80質量%である。本発明の化合物は膜構成成分として1種類を用いてもよいが、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
リポソームの他の膜構成成分としては、リポソームの製造に通常用いられている脂質化合物をいずれも用いることが可能である。例えば、Biochim. Biophys. Acta 150(4), 44 (1982)、Adv. In Lipid. Res. 16(1), 1 (1978)、RESEARCH IN LIPOSOMES (P. Machy, L. Leserman著、John Libbey EUROTEXT社)、「リポソーム」(野島、砂本、井上編、南江堂)等に記載されている脂質化合物を用いることができる。脂質化合物としてはリン脂質が好ましく、特に好ましいのはホスファチジルコリン(PC)類である。ホスファチジルコリン類の好ましい例としては、eggPC、ジミリストイルPC(DMPC)、ジパルミトイルPC(DPPC)、ジステアロイルPC(DSPC)、ジオレイルPC(DOPC)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の好ましい態様では、リポソームの膜構成成分として、ホスファチジルコリンとホスファチジルセリン(PS)とを組合せて用いることができる。ホスファチジルセリンとしては、ホスファチジルコリンの好ましい例として挙げたリン脂質と同様の脂質部位を有する化合物が挙げられる。ホスファチジルコリンとホスファチジルセリンを組合せて用いる場合、PCとPSの好ましい使用モル比はPC:PS=90:10から10:90の間であり、さらに好ましくは、30:70から70:30の間である。
本発明のリポソームの別の好ましい態様として、膜構成成分として、ホスファチジルコリンとホスファチジルセリンを含み、さらにリン酸ジアルキルエステルを含むリポソームが挙げられる。リン酸ジアルキルエステルのジアルキルエステルを構成する2個のアルキル基は同一であることが好ましく、それぞれのアルキル基の炭素数は6以上であり、10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。好ましいリン酸ジアルキルエステルの例としては、ジラウリルフォスフェート、ジミリスチルフォスフェート、ジセチルフォスフェート等が挙げられるが、これに限定されることはない。この態様において、ホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンの合計質量に対するリン酸ジアルキルエステルの好ましい使用量は1から50質量%までであり、好ましくは1から30質量%であり、さらに好ましくは1から20質量%である。
ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、リン酸ジアルキルエステ及び本発明の化合物を膜構成成分として含むリポソームにおいて、上記成分の好ましい質量比は、PC:PS:リン酸ジアルキルエステル:本発明の化合物が5〜40質量%:5〜40質量%:1〜10質量%:15〜80質量%の間で選択することができる。
本発明のリポソームの構成成分は上記4者に限定されず、他の1又は2以上の成分を加えることができる。その例としては、コレステロール、コレステロールエステル、スフィンゴエミリン、FEBS Lett. 223, 42 (1987); Proc. Natl. Acad. Sci., USA 85, 6949 (1988)等に記載のモノシアルガングリオキシドGM1誘導体、Chem. Lett. 2145 (1989); Biochim. Biophys. Acta 1148, 77 (1992)等に記載のグルクロン酸誘導体、Biochim. Biophys. Acta 1029, 91 (1990); FEBS Lett. 268, 235 (1990)等に記載のポリエチレングリコール誘導体が挙げられるが、これに限られるものではない。
本発明のリポソームは、当業者が利用可能ないかなる方法で製造してもよい。製造方法の例としては、先に挙げたリポソームの総説成書類の他、Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9, 467 (1980)、"Liposomes" (M. J. Ostro編、MARCELL DEKKER、INC.)等に記載されている。具体例としては、超音波処理法、エタノール注入法、フレンチプレス法、エーテル注入法、コール酸法、カルシウム融合法、凍結融解法、逆相蒸発法等が挙げられるが、これに限られるものではない。本発明のリポソームのサイズは、上記の方法で作成できるサイズのいずれであっても構わないが、通常は平均が400 nm以下であり、200 nm以下が好ましい。リポソームの構造は特に限定されず、ユニラメラ又はマルチラメラなどのいずれの形態でもよい。また、リポソームの内部に適宜の薬物や他の造影剤の1種又は2種以上を配合することも可能である。
本発明のリポソームを造影剤として用いる場合には、好ましくは非経口的に投与することができ、より好ましくは静脈内投与することができる。例えば、注射剤や点滴剤などの形態の製剤を凍結乾燥形態の粉末状組成物として提供し、用時に水又は他の適当な媒体(例えば生理食塩水、ブドウ等輸液、緩衝液など)に溶解ないし再懸濁して用いることができる。本発明のリポソームを造影剤として用いる場合、投与量はリポソームのヨード含有量が従来のヨード造影剤のヨード含有量と同程度になるように適宜決定することが可能である。
いかなる特定の理論に拘泥するわけではないが、動脈硬化、もしくはPTCA後の再狭窄等の血管疾患においては、血管の中膜を形成する血管平滑筋細胞が異常増殖を起こすと同時に内膜に遊走し、血流路を狭くすることが知られている。正常の血管平滑筋細胞が異常増殖を始めるトリガーはまだ完全に明らかにされていないが、マクロファージの内膜への遊走と泡沫化が重要な要因であることが知られており、その後に血管平滑筋細胞がフェノタイプ変換(収縮型から合成型)をおこすことが報告されている。
本発明のリポソームを用いると、泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋に対して疎水性ヨード化合物を選択的に取り込ませることができる。その結果、病巣と非疾患部位とをコントラストをつけて造影することが可能である。従って、本発明の造影剤は、特に血管疾患のX線造影に好適に使用でき、例えば、動脈硬化巣やPTCA後の再狭窄等の造影を行うことができる。
また、例えばJ. Biol. Chem., 265, 5226 (1990)に記載されているように、リン脂質よりなるリポソーム、特にPCとPSから形成されるリポソームが、スカベンジャーレセプターを介してマクロファージに集積しやすいことが知られている。従って本発明のリポソームを使用することにより、本発明のヨード化合物をマクロファージが局在化している組織又は疾患部位に集積させることができる。本発明のリポソームを用いると、公知のサスペンジョン又はオイルエマルジョンを用いる場合に比べて、より多くのヨード化合物をマクロファージに集積させることが可能である。
マクロファージの局在化が認められ、本発明の方法で好適に造影可能な組織としては、例えば、血管、肝臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、腎臓上皮を挙げることができる。また、ある種の疾患においては、疾患部位にはマクロファージが集積していることが知られている。こうした疾患としては、腫瘍、動脈硬化、炎症、感染等を挙げることができる。従って、本発明のリポソームを用いることにより、これらの疾患部位を特定することができる。特に、アテローム性動脈硬化病変の初期過程において、スカベンジャーレセプターを介して変性LDLを大量に取り込んだ泡沫化マクロファージが集積していることが知られており(Am. J. Pathol., 103, 181(1981)、Annu. Rev. Biochem., 52, 223(1983))、このマクロファージに本発明のリポソームを集積化させてX線造影をすることにより、他の手段では困難な動脈硬化初期病変の位置を特定することが可能である。
本発明のリポソームを用いた造影方法は特に限定されない。例えば、通常のX線造影剤を用いた造影方法と同様にしてX線を照射することにより造影を行うことができる。また、ヨードの放射線同位体を含む本発明の化合物を用いてリポソームを形成し、該リポソームをシンチグラフィー用造影剤として用いることにより、核医学的方法による造影を行うことも可能である。ヨードの放射性同位体は特に限定されないが、好ましい例としては122I、123I、125Iおよび131Iを挙げることができ、特に好ましい例としては123Iおよび125Iを挙げることができる。放射性ラベル化合物の合成は対応する非ラベル化合物を合成した後に、Appl. Radiat. Isot., 37(8), 907 (1986)等に記載されている既知の方法で実施することができる。疎水性化合物がトリヨードベンゼン誘導体である場合、同一ベンゼン環上の3個のヨード原子のうち少なくとも1個が放射線同位体化されている化合物が好ましい。好ましくは2個以上が放射線同位体化されている化合物であり、最も好ましいのは3個が同一の放射線同位体でラベル化されている化合物である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。なお、下記の実施例中の化合物番号は上記に示した化合物例の番号に対応している。また、実施例中の化合物の構造はNMRスペクトルにより確認した。
例1
コレステロールとエチルビニルエーテルを用い、J. Org. Chem., 62, 1560 (1997)に記載の方法に準じて、コレステリルビニルエーテルを収率72%で得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ : 6.31 (1H, dd) 5.38-5.33 (1H, m) 4.28 (1H, dd) 3.99 (1H, dd) 3.70-3.56 (1H, m) 2.40-0.80 (40H, m) 0.66 (3H, s)
上記コレステリルビニルエーテル0.40gとヨードパン酸0.65gをトルエン5mLに溶かし、2時間還流した。放冷後、ジクロロメタンを加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液と水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。除媒後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製して化合物3−1を0.50g(収率52%)得た。
化合物3−1:
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ : 8.08-8.02 (1H, m) 6.06 (1H, q) 5.42-5.28 (1H, m) 4.83 (2H, bs) 3.51-3.20 (3H, m) 2.83-2.64 (1H, m) 2.40-0.80 (45H, m) 0.66 (3H, s)
トリヨードフェノール56.4gと5-ブロモペンタン酸エチル25.0gをジメチルスルホキシド500mLに溶かし、炭酸カリウム17.4gを加え、50℃で4時間30分撹拌した。放冷後、酢酸エチルを加え、有機層を水と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。除媒後、再結晶(酢酸エチル-ヘキサン)を行い、無色結晶58.1g(収率81%)を得た。
上記結晶58.1gにメタノール100mL、アセトニトリル100mL、1規定水酸化ナトリウム水溶液500mLを加え、90℃で3時間撹拌した。放冷後、1規定塩酸600mLを加えて生じた結晶を濾別し、メタノールで洗浄して5-トリヨードフェノキシペンタン酸52.1g(収率94%)を得た。
コレステリルビニルエーテルと5-トリヨードフェノキシペンタン酸を用い、化合物3−1と同様の方法で、化合物4−2(収率14%)を得た。
化合物4−2:
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ : 8.03 (2H, s) 6.06 (1H, q) 5.42-5.28 (1H, m) 3.98 (2H, t) 3.68-3.54 (1H, m) 2.58-0.80 (49H, m) 0.66 (3H, s)
コレステロールとエチルビニルエーテルを用い、J. Org. Chem., 62, 1560 (1997)に記載の方法に準じて、コレステリルビニルエーテルを収率72%で得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ : 6.31 (1H, dd) 5.38-5.33 (1H, m) 4.28 (1H, dd) 3.99 (1H, dd) 3.70-3.56 (1H, m) 2.40-0.80 (40H, m) 0.66 (3H, s)
上記コレステリルビニルエーテル0.40gとヨードパン酸0.65gをトルエン5mLに溶かし、2時間還流した。放冷後、ジクロロメタンを加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液と水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。除媒後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製して化合物3−1を0.50g(収率52%)得た。
化合物3−1:
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ : 8.08-8.02 (1H, m) 6.06 (1H, q) 5.42-5.28 (1H, m) 4.83 (2H, bs) 3.51-3.20 (3H, m) 2.83-2.64 (1H, m) 2.40-0.80 (45H, m) 0.66 (3H, s)
トリヨードフェノール56.4gと5-ブロモペンタン酸エチル25.0gをジメチルスルホキシド500mLに溶かし、炭酸カリウム17.4gを加え、50℃で4時間30分撹拌した。放冷後、酢酸エチルを加え、有機層を水と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。除媒後、再結晶(酢酸エチル-ヘキサン)を行い、無色結晶58.1g(収率81%)を得た。
上記結晶58.1gにメタノール100mL、アセトニトリル100mL、1規定水酸化ナトリウム水溶液500mLを加え、90℃で3時間撹拌した。放冷後、1規定塩酸600mLを加えて生じた結晶を濾別し、メタノールで洗浄して5-トリヨードフェノキシペンタン酸52.1g(収率94%)を得た。
コレステリルビニルエーテルと5-トリヨードフェノキシペンタン酸を用い、化合物3−1と同様の方法で、化合物4−2(収率14%)を得た。
化合物4−2:
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ : 8.03 (2H, s) 6.06 (1H, q) 5.42-5.28 (1H, m) 3.98 (2H, t) 3.68-3.54 (1H, m) 2.58-0.80 (49H, m) 0.66 (3H, s)
試験例1:血管平滑筋細胞におけるヨード原子の取り込み量
下記に示した割合でジ・パルミトイル PC(フナコシ社製、No.1201-41-0225)、ジ・パルミトイル PS(フナコシ社製、No.1201-42-0237)をJ. Med. Chem., 25(12), 1500 (1982)記載の方法で、本発明のヨード化合物とナス型フラスコ内でクロロホルムに溶解して均一溶液とした後、溶媒を減圧で留去してフラスコ底面に薄膜を形成した。この薄膜を真空で乾燥後、0.9%生理食塩水(光製薬社製、No512)を適当量加え、超音波照射(Branson社製、No.3542プローブ型発振器、0.1mW)を氷冷下5分実施することにより、均一なリポソーム分散液を得た。得られた分散液の粒径をWBCアナライザー(日本光電社製、A-1042)で測定した結果、粒子径は40から65 nmであった。この方法により調製した下記リポソーム製剤をWO 01/82977に記載の血管平滑筋細胞とマクロファージとの混合培養系に添加し、37℃、5%CO2で24時間培養した後、血管平滑筋細胞に取り込まれたヨード化合物を定量した。本発明の化合物は効率よく血管平滑筋細胞に取り込ませることができ、X線造影剤のためのリポソームの構成脂質として優れた性質を有することが明らかである。
取り込み量
PC 50nmol + PS 50nmol + 化合物3−1 150nmol 59nmol/mg protein
PC 50nmol + PS 50nmol + 化合物4−2 150nmol 46nmol/mg protein
下記に示した割合でジ・パルミトイル PC(フナコシ社製、No.1201-41-0225)、ジ・パルミトイル PS(フナコシ社製、No.1201-42-0237)をJ. Med. Chem., 25(12), 1500 (1982)記載の方法で、本発明のヨード化合物とナス型フラスコ内でクロロホルムに溶解して均一溶液とした後、溶媒を減圧で留去してフラスコ底面に薄膜を形成した。この薄膜を真空で乾燥後、0.9%生理食塩水(光製薬社製、No512)を適当量加え、超音波照射(Branson社製、No.3542プローブ型発振器、0.1mW)を氷冷下5分実施することにより、均一なリポソーム分散液を得た。得られた分散液の粒径をWBCアナライザー(日本光電社製、A-1042)で測定した結果、粒子径は40から65 nmであった。この方法により調製した下記リポソーム製剤をWO 01/82977に記載の血管平滑筋細胞とマクロファージとの混合培養系に添加し、37℃、5%CO2で24時間培養した後、血管平滑筋細胞に取り込まれたヨード化合物を定量した。本発明の化合物は効率よく血管平滑筋細胞に取り込ませることができ、X線造影剤のためのリポソームの構成脂質として優れた性質を有することが明らかである。
取り込み量
PC 50nmol + PS 50nmol + 化合物3−1 150nmol 59nmol/mg protein
PC 50nmol + PS 50nmol + 化合物4−2 150nmol 46nmol/mg protein
試験例2
SDラット雄6週齢(日本チャールスリバー社製)を購入し1週間馴化した。1週間馴化後、体重を測定し、断頭放血した。肝臓を摘出し、冷却した0.15M KClで3回洗浄した。洗浄後、肝臓の湿重量を測定し、その重量の3倍の冷却した0.15M KClを加え、ホモジナイザーに移した。氷冷中でホモジネイトし、その後、ホモジネイトを9000gで10分間冷却遠心した。この上清をS9と呼び、−80℃以下で保存した。
保存してあるS9を流水中で溶解した。溶解したS9 0.1mlに、0.4M MgCl2 0.02ml、1.65M KCl 0.02ml、0.2M Naりん酸緩衝液(pH 7.4) 0.5mlを加え、グルコース6りん酸(オリエンタル酵母社製)、NADPH(オリエンタル酵母社製)、NADH(オリエンタル酵母社製)を4μMになる様に添加し蒸留水を加え、全量を1mlとした(これをS9Mixと呼ぶ)。S9Mix 1mlに被験物質を5μg/mlになる様に添加し、37℃で往復振盪した。S9Mix中の被験物質量(未変化体)を経時でHPLCを用い測定した。被験物質はDMSO(和光純薬社製)にて予め溶解した。下記に示す結果は、S9Mixに添加直後の未変化体量を100とし、30分後の未変化体量をその百分率に直して表記した。
化合物4−2:78% 比較化合物1:47%
このように、本発明の化合物はS9分解試験において、生体分解性を有するとされる下記の比較化合物1(国際公開WO95/19186に記載の化合物)に比して、より効率的に分解されることが明らかであり、X線造影剤のためのリポソームの構成脂質として優れた性質を有することが明らかである。
SDラット雄6週齢(日本チャールスリバー社製)を購入し1週間馴化した。1週間馴化後、体重を測定し、断頭放血した。肝臓を摘出し、冷却した0.15M KClで3回洗浄した。洗浄後、肝臓の湿重量を測定し、その重量の3倍の冷却した0.15M KClを加え、ホモジナイザーに移した。氷冷中でホモジネイトし、その後、ホモジネイトを9000gで10分間冷却遠心した。この上清をS9と呼び、−80℃以下で保存した。
保存してあるS9を流水中で溶解した。溶解したS9 0.1mlに、0.4M MgCl2 0.02ml、1.65M KCl 0.02ml、0.2M Naりん酸緩衝液(pH 7.4) 0.5mlを加え、グルコース6りん酸(オリエンタル酵母社製)、NADPH(オリエンタル酵母社製)、NADH(オリエンタル酵母社製)を4μMになる様に添加し蒸留水を加え、全量を1mlとした(これをS9Mixと呼ぶ)。S9Mix 1mlに被験物質を5μg/mlになる様に添加し、37℃で往復振盪した。S9Mix中の被験物質量(未変化体)を経時でHPLCを用い測定した。被験物質はDMSO(和光純薬社製)にて予め溶解した。下記に示す結果は、S9Mixに添加直後の未変化体量を100とし、30分後の未変化体量をその百分率に直して表記した。
化合物4−2:78% 比較化合物1:47%
このように、本発明の化合物はS9分解試験において、生体分解性を有するとされる下記の比較化合物1(国際公開WO95/19186に記載の化合物)に比して、より効率的に分解されることが明らかであり、X線造影剤のためのリポソームの構成脂質として優れた性質を有することが明らかである。
試験例3
ICRマウス雄6週齢(日本チャールスリバー)を購入し、1週間の検疫期間の後、クリーン動物舎内(空調:へパフィルター クラス1000、室温:20〜24℃ 湿度:35%〜60%)で1週間馴化した。その後、MTD値を求めるため、尾静脈よりリポソーム製剤を投与した。リポソーム製剤は、生理食塩水(光製薬社製)又はグルコース溶液(大塚製薬社製)のいずれかを溶媒として投与した。
化合物:MTD(mg/kg)
化合物3−1:400mg/kg 化合物4−2:800mg/kg
比較化合物1:100mg/kg
次に求められたMTD値をもとに、その1/2量を3日間、尾静脈より3日間連続で投与した(n=3匹とする)。症状観察は各投与後6時間までとし、投与終了後剖検を行ない、主要臓器について所見を取った。血球検査として白血球数・赤血球・血小板数を測定し、血液生化学検査としては、GOT・GPT・BUN・Creを測定した(測定:保健科学株式会社、本社:神奈川県横浜市)。本発明の化合物の投与では、主要臓器及び血液所見に異常は認められなかった。このように、本発明の化合物は、生体分解性を有するとされる比較化合物1に比して非常に毒性の低い化合物であり、X線造影剤のためのリポソームの構成脂質として優れた性質を有することが明らかである。
ICRマウス雄6週齢(日本チャールスリバー)を購入し、1週間の検疫期間の後、クリーン動物舎内(空調:へパフィルター クラス1000、室温:20〜24℃ 湿度:35%〜60%)で1週間馴化した。その後、MTD値を求めるため、尾静脈よりリポソーム製剤を投与した。リポソーム製剤は、生理食塩水(光製薬社製)又はグルコース溶液(大塚製薬社製)のいずれかを溶媒として投与した。
化合物:MTD(mg/kg)
化合物3−1:400mg/kg 化合物4−2:800mg/kg
比較化合物1:100mg/kg
次に求められたMTD値をもとに、その1/2量を3日間、尾静脈より3日間連続で投与した(n=3匹とする)。症状観察は各投与後6時間までとし、投与終了後剖検を行ない、主要臓器について所見を取った。血球検査として白血球数・赤血球・血小板数を測定し、血液生化学検査としては、GOT・GPT・BUN・Creを測定した(測定:保健科学株式会社、本社:神奈川県横浜市)。本発明の化合物の投与では、主要臓器及び血液所見に異常は認められなかった。このように、本発明の化合物は、生体分解性を有するとされる比較化合物1に比して非常に毒性の低い化合物であり、X線造影剤のためのリポソームの構成脂質として優れた性質を有することが明らかである。
Claims (16)
- Arが少なくとも3個のヨウ素原子を置換基として有するフェニル基(該フェニル基はヨウ素原子以外の置換基を有していてもよい)である請求項1に記載の化合物又はその塩。
- 請求項1又は2に記載の化合物又はその塩を膜構成成分として含むリポソーム。
- ホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンを膜構成成分として含む請求項3に記載のリポソーム。
- 請求項3又は4に記載のリポソームを含むX線造影剤。
- 血管疾患の造影に用いるための請求項5に記載のX線造影剤。
- 泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる請求項5に記載のX線造影剤。
- マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影のための請求項5に記載のX線造影剤。
- マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる請求項5に記載のX線造影剤。
- マクロファージが局在化する疾患部位が腫瘍、炎症部位、及び感染部位からなる群から選ばれる請求項5に記載のX線造影剤。
- 少なくとも1つのヨード原子が放射性同位体である請求項1又は2に記載の化合物又はその塩を膜構成成分として含むリポソーム。
- 請求項11に記載のリポソームを含むシンチグラフィー造影剤。
- 泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる請求項12に記載のシンチグラフィー造影剤。
- マクロファージが局在化している組織又は疾患部位の造影に用いるための請求項12に記載のシンチグラフィー造影剤。
- 対象とする組織が血管、肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる請求項12に記載のシンチグラフィー造影剤。
- 腫瘍、動脈硬化、炎症、及び感染からなる群から選ばれる疾患部位の造影に用いるための請求項12に記載のシンチグラフィー造影剤。
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Cited By (1)
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JP2008074715A (ja) * | 2006-09-19 | 2008-04-03 | Fujifilm Corp | 末端にフッ素を有するアルキル脂肪酸のステロイドエステル化合物 |
-
2003
- 2003-07-16 JP JP2003275434A patent/JP2005035942A/ja active Pending
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