JP4279505B2 - ヨードベンゼン化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヨードベンゼン化合物に関する。この化合物はリポソームの構成脂質として利用することができ、このリポソームはX線造影剤およびシンチグラフィー造影剤として用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
ヨード化合物を用いたX線造影、例えばX線血管造影の分野では、水溶性のヨード造影剤を投与することにより血液の流れを造影し、その流れが滞っている箇所をみつける技術がある。しかしこの方法は、ヨード造影剤は血流中にあって血管内部の血流の変化を検出する方法であり、ヨード造影剤が病巣細胞にある場合に比べて正常組織との区別がつけにくいために、通常狭窄が50%以上進んだ病巣しか検出することができず、虚血性疾患の発作が発症する前に病巣を検出することは困難である。
【0003】
これとは別に、疎水性ヨード造影剤若しくは親水性造影剤を製剤化し、目的とする疾患部位に選択的に集積させる試みが報告されている(国際公開WO95/19186、同WO95/21631、同WO89/00812、英国特許第867650号、国際公開WO96/00089、同WO94/19025、同WO96/40615、同WO95/2295、同 WO98/41239、同WO98/23297、同WO99/02193、同 WO97/06132、米国特許第4192859号明細書、同4567034号明細書、同4925649号明細書、 Pharm. Res., 6(12), 1011 (1989), Pharm. Res., 16(3), 420 (1999), J. Pharm. Sci., 72(8), 898 (1983), Invest. Radiol., 18(3), 275 (1983))。例えばPharm. Res., 6(12), 1011 (1989)には、疎水性化合物であるCholesteryl Iopanoateの油滴分散液を注射することにより、該ヨード化合物が実験動物の動脈硬化部位に集積することが開示されている。また、Pharm. Res., 16(3), 420 (1999)には、Cholesteryl IopanoateをアセチルLDLに取り込ませて投与することによって該ヨード化合物が実験動物の動脈硬化部位に集積することが開示されている。
【0004】
また、J. Pharm. Sci. 72(8), 898 (1983)には、Cholesteryl Iopanoateの油滴分散液を注射することによる肝臓や脾臓のX線造影の例が開示されている。米国特許第4567034号明細書には、diatrizoic acid のエステル体をリポソームに封入し、肝臓や脾臓の選択的造影を行う方法が報告されている。国際公開WO96/28414、同WO96/00089には血管プールやリンパ系をイメージ化するための造影剤が開示されている。しかしながら、これらの造影剤及び造影方法は、血管疾患を選択的に造影する目的のためには効率及び選択性ともに十分ではなく、X線照射により血管疾患を画像化した例も報告されていない。
【0005】
国際公開WO01/93918においては、疎水性、かつ加水分解抵抗性の放射性ヨード造影剤をマイクロエマルジョン製剤化、もしくはアセチルLDLに取り込ませて実験動物に投与して、動脈硬化巣部位を放射性造影する例が開示されている。また、リポソーム製剤に関する記載もあるが、その構成組成および造影に関する例はなんら開示されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段】
本発明の課題は、病巣を選択的に造影することができるリポソームを用いたX線造影剤に適した化合物を提供することにある。本発明者らは上記の課題を解決すべく研究を行った結果、ステロイド残基とトリヨードフェニル基とを有する化合物が、X線造影剤のためのリポソームの構成脂質として優れた性質を有していることを見出した。さらに、この化合物を含み、ホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンを膜構成成分として含むリポソームがX線造影による血管疾患の病巣の選択的造影に適していることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の一般式(I):
A−L1−O−Ste (I)
(式中、Aは、
下記一般式(II):
【化4】
〔式中、Z1は水素原子又はアミノ基(ただし該アミノ基は無置換である)を示す〕、
で表されるA1、
下記一般式(III):
【化5】
〔式中、Z2はアミノ基(ただし該アミノ基はモノ若しくはジ置換である)、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族基、非芳香族ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、アミド基、エステル基、カルバモイル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、又はハロゲン原子を示す〕
で表されるA2、又は
下記一般式(IV):
【化6】
(式中、Z3及びZ4はそれぞれ独立にアミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族基、非芳香族ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、アミド基、エステル基、カルバモイル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、又はハロゲン原子を示す)
で表されるA3を示し;
L1は、下記一般式(V):
−X−Y−
〔式中、Xは−C(R1)(R2)−、−CO−、−N(R1)−、−O−、−S−、−SO−、又は−SO2−(R1及びR2はそれぞれ独立に水素、C1-10脂肪族基、又はC6-20芳香族基を示す)を示し、Yは−C(R3)(R4)−、−CO−、−SO−、又は−SO2−(R3及びR4はそれぞれ独立に水素、C1-10脂肪族基、又はC6-20芳香族基を示す)を示す〕で表される基、
L3(L3は主鎖が3個の炭素原子からなる2価の連結基を示す)、
L4(L4は主鎖が3個の原子からなり、該原子のうちの少なくとも1個の原子ヘテロ原子である2価の連結基を示す。ただし、−CO−O−CO−である場合を除く。好ましくはL4は主鎖が3個の原子からなり、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、エーテル基、オキシアルキルカルボニル基、アミン、及びアミノアルキルカルボニル基からなる群から選ばれる基で構成される2価の連結基を示す)、又は
下記一般式(VI):
−La−Lb−Lc−
(式中、La及びLcはそれぞれ独立に単結合を示すか、又は主鎖が1〜9個の原子からなり、主鎖に1個以上のヘテロ原子及び/又は1個以上の不飽和結合を含んでもよい2価の連結基を示し、好ましくはLa及びLcはそれぞれ独立に単結合を示すか、又は主鎖が1〜9個の原子からなり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルカルボニル基、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、エーテル基、アミノ基、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる基で構成される2価の連結基を示し、Lbは−CH2−CH2−基、−CH=CH−基、−C≡C−基、又は−CO−CH2−基、−CH2−CO−基(これらの基は置換基を有していてもよい)を示し、ただし−La−Lb−Lc−の主鎖の原子数は4〜11である)で表されるL5を示し;
Steは、
Ste1(Ste1はコレステロール、デヒドロエピアンドロステロン、及びプレグネノロンからなる群から選ばれるステロイド残基を示す)、又はSte2(Ste2はコレスタノール、コール酸、デヒドロコール酸、アンドロステロン、ディジトキシゲニン、ディゴキシゲニン、リトコール酸、スティグマスタノール、テトラヒドロコルチソン、ブファリン、5α−アンドロスタン−3β、17β−ジオール、5−アンドロステン−3β、17β−ジオール、5−コレステン−3β、20α−ジオール、スチグマステロン、β−シトステロール、5−コレステン−3β−オル−7−オン、カンペステロール、22−ヒドロキシコレステロール、17α−アセトキシプレグネノロン、ヂオスゲニン、メチルアンドロステンジオール、5−アンドロステン−3β−オル−17β−カルボン酸、17α−ヒドロキシプレグネノロン、21−アセトキシプレグレノロン、16β−メチル−16α、17α−エポキシプレグネノロン、フコステロール、ソラソジン、5−プレグネン−6−メチル−3β、17−ジオール−20−オン、6−メチルプレグネノロン、21−ヒドロキシプレグネノロン、5−プレグネン−3β、20α−ジオール、19−ヨードコレステロール、16α−メチルプレグネノロン、5−アンドロステン−3β、17β−ジオール−17−ベンゾエート、5−アンドロステン−3β、16α−ジオール−17−オン、3β、11β、17α、21−テトラヒドロプレグ−5−ネン−20−オン、5−プレグネン−3β、16α−ジオール−20−オン、5−コレステン酸−3β−オルメチルエステル、デスモステロール、5−コレステン−3β−オル−22−オン、プレグ−5−ネン−3β、17α、20α−トリオール、19−ヒドロキシコレステロール、ソラニジン、25−ヒドロキシコレステロール、7β−ヒドロキシコレステロール、19−ヒドロキシプレグネノロン、17α−ヒドロキシ−16β−メチルプレグネノロン、16,17−エポキシ−21−アセトキシプレグネノロン、5−プレグネン−6、16α−ジメチル−3β−オル−20−オン、5−コレステン酸−3β−オル、アンドロスト−5−ネン−3β、16β、17β−トリオール、5−コレステン−3β、22−ジオール、プレグ−5−ネン−3β、17α、20β−トリオール、21−ヒドロキシプレグネノロン−21−サルフェートカリウム塩、5−プレグネン−3β−オル−20−オン−16α−カルボニトリル、16α、17α、及びエポキシプレグネノロンからなる群から選ばれるステロイド残基を示す)を示し、ただし、AがA1であり、LがL3であり、かつSteがSte1であることはない)
で表わされるヨードベンゼン化合物を提供するものである。
【0008】
別の観点からは、上記の化合物を膜構成成分として含むリポソームが本発明により提供される。この発明の好ましい態様によれば、ホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンからなる群から選ばれる脂質を膜構成成分として含む上記リポソームが提供される。また、リポソームの製造のための上記化合物の使用も本発明により提供される。
【0009】
また、本発明により、上記のリポソームを含むX線造影剤が提供される。この発明の好ましい態様によれば、血管疾患の造影に用いる上記のX線造影剤;泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる上記のX線造影剤;マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影に用いる上記のX線造影剤;マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる上記のX線造影剤;及びマクロファージが局在化する疾患部位が腫瘍、炎症部位、及び感染部位からなる群から選ばれる上記のX線造影剤が提供される。
【0010】
また、上記X線造影剤の製造のための上記の化合物又はその塩の使用;X線造影法であって、上記の化合物を膜構成成分として含むリポソームをヒトを含む哺乳類動物に投与した後にX線を照射する工程を含む方法;血管疾患の病巣の造影方法であって、上記の化合物を膜構成成分として含むリポソームをヒトを含む哺乳類動物に投与した後にX線を照射する工程を含む方法が本発明により提供される。
【0011】
さらに、少なくとも1つのヨード原子が放射性同位体である上記の化合物又はその塩を膜構成成分として含むリポソーム、及び該リポソームを含むシンチグラフィー造影剤が本発明により提供される。この発明の好ましい態様によれば、泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる上記のシンチグラフィー造影剤;マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影に用いる上記のシンチグラフィー造影剤;造影対象の組織が血管、肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる上記のシンチグラフィー造影剤;腫瘍、動脈硬化巣、炎症部位、及び感染部位からなる群から選ばれる疾患部位の造影に用いる上記のシンチグラフィー造影剤が提供される。
【0012】
また、上記シンチグラフィー造影剤の製造のための上記の化合物又はその塩の使用;シンチグラフィー造影法であって、上記の化合物を膜構成成分として含むリポソームをヒトを含む哺乳類動物に投与した後に該リポソームが発生する放射線を検出する工程を含む方法;血管疾患の病巣の造影方法であって、上記の化合物を膜構成成分として含むリポソームをヒトを含む哺乳類動物に投与した後に該リポソームが発生する放射線を検出する工程を含む方法が本発明により提供される
【0013】
【発明の実施の形態】
本明細書において、ある官能基について「置換又は無置換」又は「置換基を有していてもよい」という場合には、その官能基が1又は2以上の置換基を有する場合があることを示しているが、特に言及しない場合には、結合する置換基の個数、置換位置、及び種類は特に限定されない。ある官能基が2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。本明細書において、ある官能基が置換基を有する場合、置換基の例としては、ハロゲン原子(本明細書において「ハロゲン原子」という場合にはフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素のいずれでもよい)、アルキル基(本明細書において「アルキル基」という場合には直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのいずれでもよく、環状アルキル基にはビシクロアルキル基などの多環性アルキル基を含む。アルキル部分を含む他の置換基のアルキル部分についても同様である)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
【0014】
本明細書において、アミノ基についてモノ又はジ置換という場合には、アミノ基が上記の置換基、好ましくはアルキル基などを1個又は2個有することを意味しており、2個の置換基を有する場合にはそれらは同一でも異なっていてもよい。「芳香族基」とは、芳香族炭化水素基(アリール基)および芳香族ヘテロ環基を含む概念である。アリール部分を含む置換基におけるアリール部分としては、フェニル基、ナフチル基などの6〜14員環の単環または縮合環のアリール基を用いることができる。
【0015】
A1、A2、及びA3が示すトリヨードフェニル基における3個のヨウ素原子の置換位置は特に規定されないが、「2,4,6位」、「3,4,5位」、「2,3,5位」置換が好ましく、より好ましくは「2,4,6位」、「2,3,5位」置換であり、「2,4,6位」置換がより好ましい。
【0016】
Z2、Z3、又はZ4がアルキル基を示す場合、炭素数1〜20、より好ましくは1〜10のアルキル基を用いることができる。該アルキル基は置換基を有していてもよい。Z2、Z3、又はZ4がアルケニル基である場合、炭素数1〜20、より好ましくは1〜10のアルケニル基を用いることができる。該アルケニル基は置換基を有していてもよい。Z2、Z3、又はZ4がアルキニル基である場合、炭素数1〜20、より好ましくは1〜10のアルキニル基を用いることができる。該アルキニル基は置換基を有していてもよい。
【0017】
Z2、Z3、又はZ4が置換アミノ基である場合、炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12のアミノ基を用いることができ、モノアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基であることが好ましい。ジアルキルアミノ基である場合には2個のアルキル基は同一でも異なっていてもよい。アミノ基上のアルキル基はさらに置換基を有していてもよい。
【0018】
Z2、Z3、又はZ4が芳香族基である場合、具体的には芳香族基を構成する環はベンゼン環、ピリジン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ピリミジン環、トリアジン環、テトラゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環であることが好ましく、これらの基にさらに縮合環が結合した芳香族基も好ましい。より好ましくはベンゼン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環から構成される芳香族基であり、ベンゼン環を含む芳香族基又はフェニル基が最も好ましい。これらの芳香族環は置換基を有していてもよい。
【0019】
Z2、Z3、又はZ4が非芳香族ヘテロ環基である場合、炭素数1〜20のヘテロ環基が好ましく、1〜12のヘテロ環基がより好ましい。非芳香族ヘテロ環基を構成するヘテロ環の例としては、例えば、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環の部分または完全飽和環のほか、これらの環が他の環(例えばベンゼン環やピリジン環などの芳香族環や非芳香族環など)と縮環したものを挙げることができる。これらの非芳香族ヘテロ環はさらに置換基を有していてもよい。
【0020】
Z2、Z3、又はZ4がアルコキシ基である場合、炭素数1〜20のアルコキシ基が好ましく、1〜12のアルコキシ基がさらに好ましい。該アルコキシ基は置換基を有していてもよい。Z2、Z3、又はZ4がアリールオキシ基である場合、炭素数6〜20のアリールオキシ基が好ましく、6〜12のアリールオキシ基がさらに好ましい。該アリールオキシ基は置換基を有していてもよい。Z2、Z3、又はZ4がカルボニル基である場合、炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10のカルボニル基を用いることができる。該カルボニル基は置換基を有していてもよい。
【0021】
Z2、Z3、又はZ4がアミド基である場合、該アミド基にはカルボアミド基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ウレイド基が含まれる。該アミド基は炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜12がさらに好ましい。具体的な例としては、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、メタンスルホニルアミノ基、3,3−ジメチルウレイド基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、ベンジルオキシカルボニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基、トリフルオロアセチルアミノ基などが挙げられる。該アミド基は置換基を有していてもよい。
【0022】
Z2、Z3、又はZ4がエステル基である場合、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、炭酸エステル基が含まれる。炭素数は1〜20が好ましく、1〜12がさらに好ましい。具体的な例としては、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、メトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、メトキシスルホニル、t−ブトキシカルボニルオキシ基、ベンジルオキシカルボニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基などが挙げられる。Z2、Z3、又はZ4がハロゲン原子である場合、ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれであってもよいが、フッ素、塩素又はヨウ素が最も好ましい。
【0023】
Z2、Z3、Z4としては、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、又はカルバモイル基が好ましく、ヒドロキシル基、アルコキシ基、又はアミノ基がより好ましい。また、A1が示すトリヨードフェニル基においてZ1が水素原子である場合も好ましい。
【0024】
本明細書において「ステロイド残基」とはステロイド化合物(シクロペンタノヒドロフェナントレイン骨格を有する化合物)の残基を意味する。ステロイド残基は、一価の残基であってもよいが、二価以上の残基であってもよい。本明細書においてステロイド残基という場合には、置換又は無置換のステロイド残基のいずれであってもよい。また、ステロイド残基は任意の個数の二重結合を有していてもよい。ステロイド残基は一般に1個以上の不斉炭素を有するが、不斉炭素の配置はそれぞれ独立にR又はS配置のいずれか、あるいは両者の混合物であってもよい。
【0025】
上記ステロイド残基を構成するステロイド化合物の例としては、特に言及しない場合には、コレステロール、コレスタノール、コール酸、デヒドロコール酸、アンドロステロン、ディジトキシゲニン、ディゴキシゲニン、リトコール酸、スティグマスタノール、テトラヒドロコルチソン、ブファリン、5α−アンドロスタン−3β、17β−ジオール、デヒドロエピアンドロステロン、5−アンドロステン−3β、17β−ジオール、プレグネノロン、5−コレステン−3β、20α−ジオール、スチグマステロン、β−シトステロール、5−コレステン−3β−オル−7−オン、カンペステロール、22−ヒドロキシコレステロール、17α−アセトキシプレグネノロン、ヂオスゲニン、メチルアンドロステンジオール、5−アンドロステン−3β−オル−17β−カルボン酸、17α−ヒドロキシプレグネノロン、21−アセトキシプレグレノロン、16β−メチル−16α、17α−エポキシプレグネノロン、フコステロール、ソラソジン、5−プレグネン−6−メチル−3β、17−ジオール−20−オン、6−メチルプレグネノロン、21−ヒドロキシプレグネノロン、5−プレグネン−3β、20α−ジオール、19−ヨードコレステロール、16α−メチルプレグネノロン、5−アンドロステン−3β、17β−ジオール−17−ベンゾエート、5−アンドロステン−3β、16α−ジオール−17−オン、3β、11β、17α、21−テトラヒドロプレグ−5−ネン−20−オン、5−プレグネン−3β、16α−ジオール−20−オン、5−コレステン酸−3β−オルメチルエステル、デスモステロール、5−コレステン−3β−オル−22−オン、プレグ−5−ネン−3β、17α、20α−トリオール、19−ヒドロキシコレステロール、ソラニジン、25−ヒドロキシコレステロール、7β−ヒドロキシコレステロール、19−ヒドロキシプレグネノロン、17α−ヒドロキシ−16β−メチルプレグネノロン、16,17−エポキシ−21−アセトキシプレグネノロン、5−プレグネン−6、16α−ジメチル−3β−オル−20−オン、5−コレステン酸−3β−オル、アンドロスト−5−ネン−3β、16β、17β−トリオール、5−コレステン−3β、22−ジオール、プレグ−5−ネン−3β、17α、20β−トリオール、21−ヒドロキシプレグネノロン−21−サルフェートカリウム塩、5−プレグネン−3β−オル−20−オン−16α−カルボニトリル、16α、17α、エポキシプレグネノロン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ステロイド残基としては、環構造中に1以上の二重結合を含むステロイド残基か、又はコレスタナール基が好ましく、なかでもコレステロール基がより好ましい。
【0026】
ステロイド残基に置換可能な置換基の種類は特に限定されないが、例えば、炭素数1〜15の脂肪族基(アルキル基、アルキニル基、アルケニル基)、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、アミド基、カルバモイル基、シアノ基、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボニル基、カルボキシル基等があげられるが、これらに限定されるものではなく、また、これら置換基はさらに置換基を有していてもよい。
【0027】
L2で表される連結基において、Xとしては−C(R1)(R)2−、−CO−、−N(R1)−、−O−、又は−S−が好ましく、−C(R1)(R2)−、−CO−、−O−がより好ましい。YとしてはC(R3)(R4)又は−CO−が好ましく、−CO−がより好ましい。本明細書において「脂肪族」または脂肪族を含む置換基とは飽和または不飽和の炭化水素鎖を表し、その炭化水素鎖部分は、直鎖状、分枝鎖状、環状、またはそれらの組み合わせのいずれでもよい。上記R1、R2、R3、R4が表すC1-10脂肪族の例としては、例えば、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル)、シクロアルキル基(例えばシクロヘキシル、シクロペンチル、シクロブチル、シクロプロピル)、ビシクロアルキル基、アルケニル基(例えばビニル、アリル、プレニル)、シクロアルケニル基(例えば2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基、アルキニル基(例えばエチニル、プロパルギル、)等が挙げられる。上記R1、R2、R3、R4が表すC6-20芳香族基の例としては、例えば、アリール基(例えばフェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)等があげられる。上記R1、R2、R3、R4は水素又はC1-6アルキル基であることが好ましく、水素又はC1-3アルキル基であることが最も好ましい。
【0028】
L3で表される2価の連結基は、置換基を有していてもよく、また、不飽和結合を有していてもよい。なかでも、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルカルボニル基又はアルケニルカルボニル基が好ましく、より好ましくはアルキルカルボニル基である。本明細書において、連結基における「主鎖」とは、A−と−O−Steで表される基の酸素原子との間を最小個数で結ぶ原子群を意味する。
【0029】
L4は主鎖が3個の原子からなり、該原子のうちの少なくとも1個の原子がヘテロ原子(本明細書において「ヘテロ原子」とは炭素原子以外の原子を意味する)である2価の連結基を示す。連結基の主鎖に含まれるヘテロ種類は特に限定されないが、窒素原子、酸素原子、イオウ原子などを挙げることができる。例えば、主鎖に−N(R11)−、−O−、又は−S−などの構成単位を含むことが好ましい(R11は水素原子又は置換基を示し、好ましくはアルキル基などであり、より好ましくは炭素原子数1〜6個のアルキル基、さらに好ましくは炭素原子数1〜3個のアルキル基である)。連続した2個の炭素原子を含む場合には、炭素原子環に不飽和結合が存在していてもよい。ただし、L4が−CO−O−CO−である場合は本発明の範囲から除かれる。
【0030】
L4の主鎖に含まれる炭素原子及び/又はヘテロ原子は置換基を有していてもよい。炭素原子が置換基を有する場合、置換基の例としてはアルキル基、オキソ基などを挙げることができ、オキソ基が好ましく用いられる。例えば、L4の主鎖がエステル基、炭酸エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、エーテル基、オキシアルキルカルボニル基、アミノ基、及びアミノアルキルカルボニル基からなる群から選ばれる基で構成されることが好ましい。さらに具体的には、L4として−N(R11)−CH2−CO−、−O−CO−CH2−、−O−CH2−CO−、−CH2−O−CO−、−CO−NH−CO−、−CO−O−CH2−などを例示することができる(いずれも連結基の左側にAが結合する。本明細書における他の連結基の記載についても同様である)。
【0031】
L5が示す−La−Lb−Lc−において、La及びLcはそれぞれ独立に単結合を示すか、又は主鎖が1〜9個の原子からなり、主鎖に1個以上のヘテロ原子及び/又は1個以上の不飽和結合を含んでもよい2価の連結基を示す。La及びLcが示す連結基の主鎖がヘテロ原子を含む場合には、例えば−N(R11)−、−O−、又は−S−などの単位を含むことが好ましい(R11は水素原子又は置換基を示し、好ましくはアルキル基などであり、より好ましくは炭素原子数1〜6個のアルキル基、さらに好ましくは炭素原子数1〜3個のアルキル基である)。La及びLcの主鎖がすべてへテロ原子で構成されていてもよい。また、La及びLcの主鎖が炭素原子を含む場合には、該炭素原子は置換基を有していてもよく、例えば、置換基としてアルキル基又はオキソ基などを有していてもよい。La及びLcが2価の連結基を示す場合、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルカルボニル基、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、エーテル基、アミノ基、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる基で構成される2価の連結基であることが好ましい。
【0032】
Laの主鎖の構成単位としては、−C(R12)(R13)−、−N(R14)−、−CO−、−O−、又は−S−が好ましく(式中、R11、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を示し、好ましくはアルキル基などであり、より好ましくは炭素原子数1〜6個のアルキル基、さらに好ましくは炭素原子数1〜3個のアルキル基である)を含むことが好ましく、−O−を含むことがより好ましい。Laの主鎖が−O−を含み、かつ該酸素原子がAに直接結合することが好ましい。
【0033】
Lcの主鎖の構成単位としては、−C(R12)(R13)−、−N(R14)−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO2−が好ましく(式中、R11、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を示し、好ましくはアルキル基などであり、より好ましくは炭素原子数1〜6個のアルキル基、さらに好ましくは炭素原子数1〜3個のアルキル基である)を含むことが好ましく、−C(R12)(R13)−、−N(R14)−、−CO−、−O−、又は−S−を含むことがより好ましく、−C(R12)(R13)−、−N(R14)−、−CO−、又は−O−を含むことがさらに好ましい。Lcの主鎖が−CO−を含み、該カルボニル基が−O−Steに直接結合することが好ましい。Lcが単結合である場合も好ましい。
【0034】
Laの主鎖に−O−を含み、かつLcが−CO−であることが特に好ましく、この場合において、Laに含まれる該酸素原子がAに直接結合することが好ましい。また、La及び/又はLcの主鎖に−CO−N(R14)−または−N(R14)−CO−で表される部分構造が1個以上含まれることが好ましい。Laの主鎖を構成する原子数及びLcの主鎖を構成する原子数の合計は2〜7であることが好ましく、2〜5であることが特に好ましい。Lbが示す−CH2−CH2−基、−CH=CH−基、−C≡C−基、又は−CO−CH2−基、又は−CH2−CO−基は置換基を有していてもよい。Lbは−CH2−CH2−基、−CH=CH−基、−CH2−CO−基であることが好ましい。なお、L5が示す−La−Lb−Lc−の主鎖が炭素原子のみからなる場合も好ましい。
【0035】
本発明の化合物は1以上の不斉炭素を有しており、不斉炭素に基づく光学活性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する。純粋な形態の任意の立体異性体、任意の立体異性体の混合物、ラセミ体などは、いずれも本発明の範囲に包含される。また、本発明の化合物はオレフィン性の二重結合を有する場合があるが、その配置はE又はZのいずれであってもよく、両者の混合物として存在していてもよい。本発明の化合物は互変異性体として存在する場合もあるが、任意の互変異性体、またはそれらの混合物は本発明の範囲に包含される。さらに、本発明の化合物は置換基の種類によっては塩を形成する場合があり、遊離形態の化合物又は塩の形態の化合物が水和物又は溶媒和物を形成する場合もあるが、このような物質も本発明の範囲に包含される。
【0036】
以下、本発明の化合物の好ましい例を示すが、本発明の化合物はこれらの例に限定されることはない。
【0037】
【化7】
【0038】
【化8】
【0039】
【化9】
【0040】
【化10】
【0041】
【化11】
【0042】
【化12】
【0043】
【化13】
【0044】
以下に本発明の化合物の一般的な合成法について説明するが、本発明の化合物の合成法はこれらに限定されるものではない。本発明の化合物において用いられるトリヨードフェニル基に関する合成原料としては、通常市販されているものを使用してもよく、あるいは用途に応じて適宜合成してもよい。市販品としては、例えば2,4,6-トリヨードフェノールや安息香酸誘導体(例えば、3-amino-2,4,6-triiodobenzoic acid, acetrizoic acid, iodipamide, diatrizoic acid,histodenz, 5-amino-2,4,6-triiodoisophthalic acid, 2,3,5-triiodobenzoic acid, tetraiodo-2-sulfobenzoic acid)、ヨードパン酸(iopanoic acid)、iophenoxic acidなどを用いることができる。合成により入手する場合には、例えばRichard C. Larock著、Comprehensive organic transformations(VCH) に記載の方法により、芳香環上にヨード原子を導入し、原料として用いることができる。
【0045】
上記のトリヨードフェニル誘導体は、通常、部分構造として水酸基やアミノ基、カルボキシル基を含有するため、これらの官能基と、カルボン酸、アルコール、アミン、ハライドなどの官能基を2つ以上有する化合物と、エステル連結、アミド連結、エーテル連結、又はアミン連結などを介して縮合し、トリヨードフェニルの部分構造とそれに続く連結基の部分構造として用いることもできる。これら、2つ以上の官能基を有する化合物は、次の工程でさらに他の化合物と連結できるように、保護または無保護の水酸基、アミノ基、カルボキシル基等を有していることが好ましい。この場合の保護基としては、例えば、T. W. Green & P. G. M. Wuts著、Protecting groups in organic synthesis(John Wiley & sonc, inc.)に記載のものを用いることができる。
【0046】
上記のエステル連結、アミド連結、エーテル連結、又はアミン連結を介した縮合反応としては、例えばRichard C. Larock著、Comprehensive organic transformations(VCH)に記載の方法を用いることができる。得られたこれらのヨードベンゼン化合物は、保護基の脱保護などによって生じた官能基を用いて、同様の反応を行うことにより、さらに別のトリヨードフェニル基とそれに連なる連結基を有する合成中間体を得ることが可能である。これらの中間体はステロイド残基を有する合成中間体と、例えば、Richard C. Larock著、Comprehensive organic transformations(VCH)に記載の方法でエステル連結、アミド連結等を介して結合し、必要に応じて脱保護などを行うことによって本発明の化合物を合成できる。
【0047】
本発明の化合物はリポソームの膜構成成分として用いることができる。本発明の化合物を用いてリポソームを調製する場合、本発明の化合物の使用量は、膜構成成分の全質量に対して10から90質量%程度、好ましくは10から80質量%、さらに好ましくは20から80質量%である。本発明の化合物は膜構成成分として1種類を用いてもよいが、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
リポソームの他の膜構成成分としては、リポソームの製造に通常用いられている脂質化合物をいずれも用いることが可能である。例えば、Biochim. Biophys. Acta 150(4), 44 (1982)、Adv. in Lipid. Res. 16(1) 1 (1978)、"RESEARCH IN LIPOSOMES"(P.Machy, L.Leserman著、John Libbey EUROTEXT社)、「リポソーム」(野島、砂本、井上編、南江堂)等に記載されている。脂質化合物としてはリン脂質が好ましく、特に好ましいのはホスファチルジルコリン(PC)類である。ホスファチジルコリン類の好ましい例としては、eggPC、ジミリストリルPC(DMPC)、ジパルミトイルPC(DPPC)、ジステアロイルPC(DSPC)、ジオレイルPC(DOPC)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
本発明の好ましい態様では、リポソームの膜構成成分として、ホスファチジルコリンとホスファチジルセリン(PS)を組み合わせて用いることができる。ホスファチジルセリンとしては、ホスファチジルコリンの好ましい例として挙げたリン脂質と同様の脂質部位を有する化合物が挙げられる。ホスファチジルコリンとホスファチジルセリンを組み合わせて用いる場合、PCとPSの好ましい使用モル比はPC:PS=90:10から10:90の間であり、さらに好ましくは、30:70から70:30の間である。
【0050】
本発明のリポソームの別の好ましい態様によると、膜構成成分として、ホスファチジルコリンとホスファチジルセリンを含み、さらにリン酸ジアルキルエステルを含むリポソームが挙げられる。リン酸ジアルキルエステルのジアルキルエステルを構成する2個のアルキル基は同一であることが好ましく、それぞれのアルキル基の炭素数は6以上であり、10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。好ましいリン酸ジアルキルエステルの例としては、ジラウリルフォスフェート、ジミリスチルフォスフェート、ジセチルフォスフェート等が挙げられるが、これに限定されることはない。この態様において、ホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンの合計質量に対するリン酸ジアルキルエステルの好ましい使用量は1から50質量%までであり、好ましくは1から30質量%であり、さらに好ましくは1から20質量%である。
【0051】
ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、リン酸ジアルキルエステル、及び本発明の化合物を膜構成成分として含むリポソームにおいて、上記成分の好ましい質量比はPC:PS:リン酸ジアルキルエステル:本発明の化合物が5〜40質量%:5〜40質量%:1〜10質量%:15〜80質量%の間で選択することができる。
【0052】
本発明のリポソームの構成成分は上記4者に限定されず、他の成分を加えることができる。その例としては、コレステロール、コレステロールエステル、スフィンゴミエリン、FEBS Lett. 223, 42 (1987); Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 85, 6949 (1988)等に記載のモノシアルガングリオシドGM1誘導体、Chem. Lett., 2145 (1989); Biochim. Biophys. Acta, 1148, 77 (1992)等に記載のグルクロン酸誘導体、Biochim. Biophys. Acta, 1029, 91 (1990); FEBS Lett., 268, 235 (1990)等に記載のポリエチレングリコール誘導体が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0053】
本発明のリポソームは、当該分野で公知のいかなる方法でもっても作成できる。作成法の例としては、先に挙げたリポソームの総説成書類の他、Ann. Rev. Biophys. Bioeng., 9, 467 (1980) 、"Liopsomes"(M.J.Ostro編、MARCELL DEKKER, INC.)等に記載されている。具体例としては、超音波処理法、エタノール注入法、フレンチプレス法、エーテル注入法、コール酸法、カルシウム融合法、凍結融解法、逆相蒸発法等が挙げられるが、これに限られるものではない。本発明のリポソームのサイズは、上記の方法で作成できるサイズのいずれであっても構わないが、通常は平均が400 nm以下であり、200 nm以下が好ましい。リポソームの構造は特に限定されず、ユニラメラ又はマルチラメラなどのいずれの形態でもよい。また、リポソームの内部に適宜の薬物や他の造影剤の1種又は2種以上を配合することも可能である。
【0054】
本発明のリポソームを造影剤として用いる場合には、好ましくは非経口的に投与することができ、より好ましくは静脈内投与することができる。例えば、注射剤や点滴剤などの形態の製剤を凍結乾燥形態の粉末状組成物として提供し、用時に水又は他の適当な媒体(例えば生理食塩水、ブドウ糖輸液、緩衝液など)に溶解ないし再懸濁して用いることができる。本発明のリポソームを造影剤として用いる場合、投与量はリポソームのヨード含有量が従来のヨード造影剤のヨード含有量と同程度になるように適宜決定することが可能である。
【0055】
いかなる特定の理論に拘泥するわけではないが、動脈硬化、もしくはPTCA後の再狭窄等の血管疾患においては、血管の中膜を形成する血管平滑筋細胞が異常増殖をおこすと同時に内膜に遊走し、血流路を狭くすることが知られている。正常の血管平滑筋細胞が異常増殖を始めるトリガーはまだ完全に明らかにされていないが、マクロファージの内膜への遊走と泡沫化が重要な要因であることが知られており、その後に血管平滑細胞がフェノタイプ変換(収縮型から合成型)をおこすことが報告されている。
【0056】
本発明のリポソームを用いると、泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋に対して疎水性ヨード化合物を選択的に取りこませることができる。その結果、公知技術であるサスペンジョン又はオイルエマルジョンを用いる場合と比べて、より多くのヨード化合物を血管平滑筋細胞に集積させることが可能である。この結果、本発明のリポソ-ムを用いると、病巣と非疾患部位の血管平滑筋細胞との間でコントラストの高いX線造影が可能である。従って、本発明の造影剤は、特に血管疾患の造影に好適に使用でき、例えば、動脈硬化巣やPTCA後の再狭窄等の造影を行うことができる。
【0057】
また、例えばJ. Biol. Chem., 265, 5226 (1990)に記載されているように、リン脂質よりなるリポソーム、特にホスファチジルコリンとホスファチジルセリンから形成されるリポソームが、スカベンジャーレセプターを介してマクロファージに集積しやすいことが知られている。従って本発明のリポソームを使用することにより、本発明のヨード化合物をマクロファージが局在化している組織又は疾患部位に集積させることができる。本発明のリポソームを用いると、公知技術であるサスペンジョン又はオイルエマルジョンを用いる場合に比べて、より多くのヨード化合物をマクロファージに集積させることが可能である。
【0058】
マクロファージの局在化が認められ、本発明の方法で好適に造影可能な組織としては、例えば、血管、肝臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、腎臓上皮を挙げることができる。また、ある種の疾患においては、疾患部位にはマクロファージが集積していることが知られている。こうした疾患としては、腫瘍、動脈硬化、炎症、感染等を挙げることができる。従って、本発明のリポソームを用いることにより、これらの疾患部位を特定することができる。特に、アテローム性動脈硬化病変の初期過程において、スカベンジャーレセプターを介して変性LDLを大量に取り込んだ泡沫化マクロファージが集積していることが知られており(Am. J. Pathol., 103, 181(1981)、Annu. Rev. Biochem., 52, 223(1983))、このマクロファージに本発明のリポソームを集積化させてX線造影をすることにより、他の手段では困難な動脈硬化初期病変の位置を特定することが可能である。
【0059】
本発明のリポソームを用いた造影方法は特に限定されない。例えば、通常のX線造影剤を用いた造影方法と同様にしてX線を照射することにより造影を行うことができる。また、ヨードの放射線同位体を含む本発明の化合物を用いてリポソームを形成し、該リポソームをシンチグラフィー用造影剤として用いることにより、核医学的方法による造影を行うことも可能である。ヨードの放射性同位体は特に限定されないが、好ましい例としては122I、123I、125Iおよび131Iが挙げられ、特に好ましい例としては123Iおよび125Iを挙げることができる。放射性ラベル化合物の合成は、対応する非ラベル化合物を合成した後に、Appl. Radiat. Isot., 37(8), 907 (1986)等に記載されている既知の方法で実施することができる。疎水性化合物がトリヨードベンゼン誘導体である場合、同一ベンゼン環上の3個のヨード原子のうち少なくとも1個が放射線同位体化されていることが好ましい。好ましくは2個以上が放射線同位体化されていることであり、最も好ましいのは3個が同一の放射線同位体でラベル化されていることである。
【0060】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。なお、下記の実施例中の化合物番号は上記に示した化合物例の番号に対応している。また、実施例中の化合物の構造はNMRスペクトルにより確認した。
【0061】
化合物I−1
2,4,6−トリヨードフェノール0.51gとクロロ蟻酸コレステロール0.48gを10mlのジクロロメタンに加え、さらに0.17gのピリジンを滴下した。室温で12時間攪拌した後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。無色アモルファス状結晶を0.94g(収率98%)得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.08(2H,s),5.44(1H,d),4.63(1H,dt),2.48−2.60(2H,m),0.60−2.10(m)
【0062】
化合物II−1
2,4,6−トリヨードフェノール0.49gとクロロ酢酸コレステロール0.46gを5mlのジメチルホルムアミドに溶解し、さらに0.23gの炭酸カリウムを加えた。60℃で4時間攪拌した後、ジクロロメタンと飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて2度抽出し、得られた有機層を水で洗浄した。さらに、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。無色結晶を0.58g(収率65%)得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.05(2H,s),5.41(1H,d),4.76−4.90(1H,m),4.53(2H,s),2.41(2H,d),0.60−2.10(m)
【0063】
化合物V−1
α−エチル−3−ヒドロキシ−2,4,6−トリヨードハイドロケイヒ酸5.08gとトリメチルシリルエトキシメチルクロリド1.86gを100mlのジクロロメタンに加え、さらに1.62gのジイソプロピルエチルアミンを滴下した。室温で攪拌した後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。フェノール保護体である中間体V−1−Aを2.52g得た(収率40%)。
【0064】
上記中間体V−1−A 1.01gとコレステロール0.57gを25mlのジクロロメタンに加え、さらに15mgのジメチルアミノピリジンと0.36gの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を加えた。室温で2日間攪拌した後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。中間体V−1−B 0.38gを得た(収率25%)。
【0065】
上記中間体V−1−B 0.28gを5mlのテトラヒドロフランに溶解し、1mlの1.0Mテトラブチルアンモニウム/テトラヒドロフラン溶液を加えて、室温で7時間攪拌した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、無色アモルファス状結晶を0.13g(収率53%)得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.18(1H,s),5.97(1H,s),5.39(1H,d),4.55−4.70(1H,m),3.41(1H,dd),3.29(1H,dd),2.68−2.80(1H,m),0.60−2.40(m)
【0066】
化合物VI−1
25−ヒドロキシコレステロール94mgとα−エチル−3−アミノ−2,4,6−トリヨードハイドロケイヒ酸133mgを5mlのジクロロメタンに加え、さらに4mgのジメチルアミノピリジンと61mgの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を加えた。室温で2日間攪拌した後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、無色アモルファス状結晶を0.16g(収率73%)得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.05(1H,s),5.38(1H,d),4.84(2H,bs),4.52−4.68(1H,m),3.38(1H,dd),3.25(1H,dd),2.65−2.80(1H,m),0.60−2.40(m)
【0067】
化合物VI−2〜VI−6
それぞれ対応するステロイド化合物を用い、化合物VI−1と同様の方法で合成した。
化合物VI−2
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.11(1H,s),5.40(1H,d),4.88(2H,bs),4.55−4.70(1H,m),3.40(1H,dd),3.29(1H,dd),2.68−2.82(1H,m),0.60−2.40(m)
【0068】
化合物VI−3
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.09(1H,s),4.86(2H,bs),4.64−4.80(1H,m),3.40(1H,dd),3.28(1H,dd),2.66−2.82(1H,m),0.60−2.00(m)
化合物VI−4
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.08(1H,s),5.38(1H,d),4.83(2H,bs),4.51−4.68(1H,m),4.41(1H,dd),3.48(1H,bd),3.32−3.43(2H,m),3.26(1H,dd),2.67−2.80(1H,m),0.60−2.40(m)
【0069】
化合物VI−5
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.08(1H,s),5.39(1H,bs),4.84(2H,bs),4.52−4.68(1H,m),3.38(1H,dd),3.27(1H,dd),2.66−2.80(1H,m),0.60−2.40(m)
化合物VI−6
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.09(1H,s),5.38(1H,d),5.15(1H,dd),5.01(1H,dd),4.84(2H,bs),4.52−4.69(1H,m),3.38(1H,dd),3.26(1H,dd),2.66−2.79(1H,m),0.60−2.40(m)
【0070】
化合物VII−1
化合物(VII−1)は下記スキーム1に従い合成した。
【化14】
【0071】
Eur. J. Med. Chem.誌33巻879頁(1998)の記載に従い、中間体(VII−1A)を合成した。中間体(VII−1A)2.7gを塩化メチレン8mlに溶解し、トリフルオロ酢酸8mlを加えて室温で1時間撹拌した。減圧で溶媒を留去後、残留物に酢酸エチルとn-ヘキサンの混合溶媒(4/1)を加え、析出した結晶を濾取して中間体(VII−1B)のトリフルオロ酢酸塩2.06gを得た。(収率74%)
【0072】
イオパノン酸1.14g、カルボニルジイミダゾール340mgを含む乾燥THF溶液10mlを10分間還流した後、中間体(VII−1B)トリフルオロ酢酸塩1.12g、トリエチルアミン0.28mlを加えて氷冷下1時間、室温で12時間撹拌した。減圧で溶媒を留去後残留物をクロロホルムに溶解し、水、次いで食塩水で洗浄した。有機層を分液後濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:n-ヘキサン=5:1)で精製し、薄黄色固体の化合物(VII−1)0.99gを得た。(収率50%)
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.08(1H,s),5.91(1H,bs),5.39(1H,d),4.87(2H,bs),4.58−4.79(1H,m),4.08(1H,dd),3.97(1H,dd),3.30(2H,d),2.34−2.57(1H,m),2.32(2H,d),0.60−2.10(m)
【0073】
化合物VII−3
化合物(VII−3)はスキーム2に従い合成した。
【化15】
Synthesis誌259頁(1988)記載の方法に従い、6-aminocaproic acidをN-t-Boc化した中間体(VII−3A)を合成した。中間体VII−1Aの合成におけるN-t-Boc-グリシンの代わりに中間体(VII−3A)を用いて同様にコレステロールとの縮合反応を行い、中間体(VII−3B)を得た。
【0074】
中間体(VII−3B)1.9gのジオキサン溶液(8ml)に6規定HClジオキサン溶液8mlを加え室温で3時間撹拌した。反応中に結晶が析出した。終了後エーテルを20mlを加え、析出物を濾取して中間体(VII−3C)の塩酸塩1.62gを得た。(収率95%)
VII−1の合成における中間体(VII−1B)の代わりに中間体(VII−3C)を用いてイオパノン酸との縮合反応を行い、化合物(VII−3)を得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.08(1H,s),5.34−5.48(2H,m),4.88(2H,bs),4.52−4.73(1H,m),3.13−3.40(4H,m),0.60−2.40(m)
【0075】
化合物VII−2
化合物VII−3合成における6-aminocaproic acidの代わりに4-aminobutyric acidを用いて同様の操作を行い、化合物(VII−2)を得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.09(1H,s),5.59(1H,t),5.37(1H,d),4.86(2H,bs),4.50−4.72(1H,m),3.18−3.38(4H,m),0.60−2.40(m)
【0076】
化合物VII−4
化合物VII−3合成における6-aminocaproic acidの代わりに8-aminocaprylic acidを用いて同様の操作を行い、化合物(VII−4)を得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.08(1H,s),5.28−5.44(2H,m),4.85(2H,bs),4.50−4.75(1H,m),3.10−3.38(4H,m),0.60−2.40(m)
【0077】
化合物VII−5
J. Org. Chem.誌5巻508頁(1940)記載の方法に従い、2,3,5-トリヨード安息香酸クロリドを合成した。中間体(VII−1B)トリフルオロ酢酸塩560mg、2,3,5-トリヨード安息香酸クロリド520mgを塩化メチレン10mlに溶解し、氷冷下でトリエチルアミン0.3mlを加えた。氷冷下で10分、室温で1時間撹拌した後に反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、化合物(VII−5)750mgを得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.27(1H,d),7.58(1H,d),6.32(1H,t),5.38(1H,d),4.62−4.76(1H,m),4.19(2H,d),2.38(2H,d),0.60−2.10(m)
【0078】
化合物VII−6
化合物VII−4の合成例におけるアミノ中間体と2,4,5-トリヨード安息香酸クロリドを化合物VII−5の合成例記載の方法に準じて縮合し、化合物(VII−6)を得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.22(1H,d),7.52(1H,d),5.72(1H,t),5.35(1H,d),4.48−4.70(1H,m),3.30−3.48(2H,m),0.60−2.40(m)
【0079】
化合物VII−7
化合物VII−7はスキーム3に従い合成した。
【化16】
【0080】
VII−1合成の例(スキーム1)におけるN-t-Boc-グリシンの代わりに中間体N-t-Boc-L-アラニンを用いて同様にコレステロールとの縮合反応を行い、中間体(VII−7A)を得た。
【0081】
VII−3合成の例(スキーム2)における中間体(VII−3B)の代わりに中間体(VII−7A)を用いて同様に脱保護反応を行い、中間体(VII−7B)塩酸塩を得た。VII−5合成の例における中間体(VII−1B)トリフルオロ酢酸塩の代わりに中間体(VII−7B)塩酸塩を用いて同様に2,3,5-トリヨード安息香酸との縮合反応を行い、化合物(VII−7)を得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.28(1H,d),7.58(1H,d),6.37(1H,d),5.40(1H,bs),4.58−4.80(2H,m),3.32(2H,d),0.60−2.10(m)
【0082】
化合物VII−8
化合物VII−8はスキーム4に従い合成した。
【化17】
【0083】
化合物VII−1の合成例(スキーム1)におけるN-t-Boc-グリシンの代わりに中間体N-t-Boc-L-バリンを用いて同様にコレステロールとの縮合反応を行い、中間体(VII−8A)を得た。化合物VII−3の合成例(スキーム2)における中間体(VII−3B)の代わりに中間体(VII−8A)を用いて同様に脱保護反応を行い、中間体(VII−8B)塩酸塩を得た。化合物VII−5の合成例における中間体(VII−1B)トリフルオロ酢酸塩の代わりに中間体(VII−8B)塩酸塩を用いて同様に2,3,5-トリヨード安息香酸との縮合反応を行い、化合物(VII−8)を得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.26(1H,d),7.55(1H,d),6.28(1H,d),5.38(1H,d),4.62−4.85(2H,m),2.26−2.50(3H,m),0.60−2.20(m)
【0084】
化合物VII−10
化合物VII−2の合成例におけるアミノ中間体と2,4,5-トリヨード安息香酸クロリドをVII−5の合成例に記載の方法に準じて縮合し、化合物VII−10を得た。
【0085】
化合物VII−11
化合物(VII−11)はスキーム5に従い合成した。
【化18】
【0086】
中間体(VII−1B)塩酸塩1.92g、t-Boc-L-アラニン833mg、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール1水和物614mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン520mg、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)920mgを塩化メチレン(20ml)とDMAc(10ml)の混合溶媒に溶解させ、氷冷下1時間、室温で終夜撹拌した。減圧で塩化メチレンを留去した後酢酸エチルを加え、析出した尿素誘導体を濾別した。濾液を炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで食塩水で洗浄して有機層を分液した。減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製して中間体(VII−11A)2.27gを得た。(収率92%)
【0087】
中間体(VII−11A)1.94gのジオキサン溶液(15ml)に6規定HClジオキサン溶液15mlを加え室温で2時間撹拌した。反応中に結晶が析出した。終了後減圧で溶媒を留去し、残留物にエーテルを加え、析出物を濾取して中間体(VII−11B)の塩酸塩1.62gを得た。(収率93%) 中間体(VII−11B)塩酸塩552mgを含むクロロホルム溶液(10ml)を水冷し、トリエチルアミン0.28mlと2,3,5-トリヨード安息香酸クロリド520mgを加えた。すぐに新しい結晶が析出した。室温で1時間撹拌し、減圧でクロロホルムを留去した後、メタノール20mlを加えて析出物を濾取した。こうして得られた粗結晶をクロロホルムとメタノールの混合溶媒から再結晶して、化合物(VII−11)673mgを得た。(収率68%)
【0088】
化合物VII−9
化合物VII−11の合成例(スキーム5)に準じて、ペプチド合成、脱保護、2,4,5-トリヨード安息香酸クロリドとの縮合反応の工程で合成した。合成において用いた原料は、中間体(VII−8B)塩酸塩、N-t-Boc-L-バリンである。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.25(1H,d),7.70(1H,d),7.55(1H,d),7.18(1H,d),5.40(1H,d),4.55−4.78(1H,m),4.39−4.55(2H,m),0.60−2.70(m)
【0089】
化合物VII−12,13
化合物VII−11の合成例(スキーム5)に準じて、ペプチド合成、脱保護、2,4,5-トリヨード安息香酸クロリドとの縮合反応の工程で合成した。それぞれの合成において用いた原料を以下に記す。
化合物(VII−12):中間体(VII−1B)塩酸塩、N-t-Noc-L-バリン
化合物(VII−13):中間体(VII−7B)塩酸塩、N-t-Noc-L-バリン
【0090】
化合物VII−14
コレステロール15.1gと6.12gのピリジンを60mlのクロロホルムに加え、さらに5.0mlの4−ブロモ酪酸クロリドを滴下した。0℃で2時間、さらに室温で20時間攪拌した後、クロロホルムと1規定塩酸水溶液を加えて抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体VII−14−A 17.4g(収率65%)を得た。
【0091】
上記中間体VII−14−A 8.00gとビス(2−ヒドロキシエチル)アミン4.08gを30mlのジメチルホルムアミドに溶解し、さらに3.17gの炭酸カリウムと触媒量のよう化ナトリウムを加えた。65℃で6時間攪拌した後、クロロホルムと水を加えて2度抽出し、得られた有機層を水で洗浄した。さらに、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。中間体VII−14−Bを5.60g(収率67%)得た。
【0092】
上記中間体VII−14−Bと3−アミノ−2,4,6−トリヨードハイドロケイヒ酸(J. Med. Chem., 1995, 38, 639記載)を用い、上記VI−1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.05(1H,s),5.37(1H,d),4.81(2H,bs),4.52−4.66(1H,m),4.22(2H,t),3.58(2H,t),3.35−3.43(2H,m),2.81(2H,t),2.70(2H,t),2.50−2.66(4H,m),2.25−2.39(4H,m),0.60−2.05(m)
【0093】
化合物VII−15
5−(3−アミノ−2,4,6−トリヨードフェニル)ペンタン酸(J. Med. Chem., 1995, 38, 639記載)とコレステロールを用い、上記VI−1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.03(1H,s),5.39(1H,bs),4.80(2H,bs),4.58−4.64(1H,m),3.00−3.12(2H,m),2.29−2.48(4H,m),0.60−2.10(m)
【0094】
化合物VII−16
7−(3−アミノ−2,4,6−トリヨードフェニル)ヘプタン酸(J. Med. Chem., 1995, 38, 639記載)とコレステロールを用い、上記VI−1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.03(1H,s),5.38(1H,d),4.80(2H,bs),4.55−4.69(1H,m),2.95−3.06(2H,m),2.27−2.36(4H,m),0.60−2.10(m)
【0095】
化合物VII−17
2,4,6−トリヨードフェノールとコハク酸水素コレステロールを用い、上記VI−1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.08(2H,s),5.40(1H,bd),4.61−4.76(1H,m),3.05(2H,t),2.79(2H,t),2.37(2H,d),0.60−2.10(m)
【0096】
化合物VII−18
上記中間体VII−14−Aと2,4,6−トリヨードフェノールを用い、上記II−1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.03(2H,s),5.38(1H,d),4.59−4.72(1H,m),3.99(2H,t),2.64(2H,t),2.33(2H,d),2.21(2H,quin),0.60−2.10(m)
【0097】
化合物VII−19
2,4,6−トリヨードフェノールとフマル酸水素コレステロール(J. Am. Chem. Soc., 1996, 118, 5351記載)を用い、上記VI−1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ;8.10(2H,s),7.13(1H,d),7.05(1H,d),5.41(1H,bd),4.70−4.83(1H,m),2.41(1H,d),0.60−2.10(m)
【0098】
試験例:リポソームの安定性
下記に示した割合でジ・パルミトイル PC(フナコシ社製、No.1201-41-0225)、ジ・パルミトイル PS(フナコシ社製、No.1201-42-0237)をJ. Med. Chem., 25(12), 1500 (1982)記載の方法で、既存化合物であるCholesterol Iopanoate(以下、C.I.と記載)又は本発明の化合物とそれぞれナス型フラスコ内でクロロホルムに溶解して均一溶液とした後、溶媒を減圧で留去してフラスコ底面に薄膜を形成した。この薄膜を真空で乾燥後、0.9%生理食塩水(光製薬社製、No512)を適当量加え、超音波照射(Branson社製、No.3542プローブ型発振器、0.1mW)を氷冷下5分実施することにより、均一なリポソーム分散液を得た。得られた分散液の粒径をWBCアナライザー(日本光電社製、A-1042)で測定した結果、粒子径は40から65nmであった。この溶液を試験管に移し、室温で24時間放置し、形成したリポソームの安定性を調べた。結果を表1に示す(表中、○は安定、×は不安定を示す)。
【0099】
【表1】
【0100】
既存化合物であるCholesterol Iopanoateはこのリポソーム組成で150nmolまでしか安定なリポソームを形成しないが、本発明の化合物(I−2、II−1、V−4、VI−3、VII−1,2,5,7,8)は200nmolまで安定なリポソームを形成することから、その効果の差は明らかである。
【0101】
【発明の効果】
本発明の化合物は、X線造影剤及びシンチグラフィー造影剤のためのリポソームの構成脂質として優れた性質を有しており、この化合物を含むリポソームを用いてX線造影することにより血管疾患の病巣を選択的に造影できる。
Claims (15)
- 請求項1に記載の化合物を膜構成成分として含むリポソーム。
- ホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンからなる群から選ばれる脂質を膜構成成分として含む請求項2に記載のリポソーム。
- 請求項2又は3に記載のリポソームを含むX線造影剤。
- 血管疾患の造影に用いる請求項4に記載のX線造影剤。
- 泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる請求項4に記載のX線造影剤。
- マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影に用いる請求項4に記載のX線造影剤。
- マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる請求項7に記載のX線造影剤。
- マクロファージが局在化する疾患部位が腫瘍、炎症部位、及び感染部位からなる群から選ばれる請求項7に記載のX線造影剤。
- 少なくとも1つのヨード原子が放射性同位体である請求項1に記載の化合物又はその塩を膜構成成分として含むリポソーム。
- 請求項10に記載のリポソームを含むシンチグラフィー造影剤。
- 泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる請求項11に記載のシンチグラフィー造影剤。
- マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影に用いる請求項11に記載のシンチグラフィー造影剤。
- 造影対象の組織が血管、肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる請求項11に記載のシンチグラフィー造影剤。
- 腫瘍、動脈硬化巣、炎症部位、及び感染部位からなる群から選ばれる疾患部位の造影に用いる請求項11に記載のシンチグラフィー造影剤。
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