JP2005032527A - 固体電解質型燃料電池用集電体およびそれを用いた固体電解質型燃料電池 - Google Patents
固体電解質型燃料電池用集電体およびそれを用いた固体電解質型燃料電池 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】高温における耐酸化性、耐食性に優れ、かつ導電性およびガス透過性が良好でクッション性に優れた固体電解質型燃料電池用集電体を低コストで提供する。
【解決手段】シリカ、アルミナ、ジルコニアおよびチタニアからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を主成分とする無機繊維の布からなる多孔質基材に貴金属を被覆した固体電解質型燃料電池用集電体。例えばシリカを60質量%以上、またはシリカ及びアルミナの合計を75質量%以上含有する組成を有する繊維の布の表面に銀とパラジウムの合金もしくは銀と白金の合金で被覆し、または銀を被覆しさらにその表面をパラジウムまたは白金で被覆した集電体があげられる。
【選択図】 なし
【解決手段】シリカ、アルミナ、ジルコニアおよびチタニアからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を主成分とする無機繊維の布からなる多孔質基材に貴金属を被覆した固体電解質型燃料電池用集電体。例えばシリカを60質量%以上、またはシリカ及びアルミナの合計を75質量%以上含有する組成を有する繊維の布の表面に銀とパラジウムの合金もしくは銀と白金の合金で被覆し、または銀を被覆しさらにその表面をパラジウムまたは白金で被覆した集電体があげられる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、高温耐熱性、特に酸化雰囲気における高温耐熱性を有する固体電解質型燃料電池用集電体およびそれを用いた固体電解質型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、酸素と水素をそれぞれ、酸化剤および燃料として、燃料が本来持っている化学エネルギーを直接電気エネルギーにする燃料電池が、省資源、環境保護などの観点から注目されており、特に固体電解質型燃料電池は、動作温度が800〜1000℃と高いことから、リン酸型、溶融炭酸塩型の燃料電池に比べて原理的に発電効率が高く、排熱を有効に利用でき、構成材料がすべて固体であり取扱が容易であるなどの多くの利点を有するため、研究・開発が進んできている。
この固体電解質型燃料電池は、酸素イオン導電性の固体電解質を介して燃料極と酸化剤極とが相対向するセルと、ガスを分離するセパレータとを積層させた構造であり、電極とセパレータとの導電性は電極とセパレータとの間に介在される集電体によって構成されている。
【0003】
この固体電解質型燃料電池において、酸化剤極すなわち空気電極は強い酸化性雰囲気に置かれることから、空気極側の集電体においては電子伝導度が高く耐酸化性に優れていることが要求される。また、固体電解質との熱膨張率の差が小さいことなどのほかにガス透過性が要求される。空気電極をペロブスカイト型ランタン系複合酸化物によって形成している。そこで、ストロンチウム、コバルト、カルシウムおよびマグネシウムのうちいずれか一つを含むランタンマンガナイト等の導電性セラミックスのフェルトを用いて、他の構成部材の熱膨張率差を吸収し、単セルの破損を防止することができる集電体(特許文献1)が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、燃料極または空気極とセパレータの間に集電体が介在された構造の固体電解質型燃料電池において、空気極側集電体を、繊維状合金より成るフェルトで構成させ、その繊維表面にペロブスカイト型酸化物を担持させることが提案されている。
【0005】
さらに特許文献3には、多孔質セラミックス例えばアルミナセラミックスの表面を、銀、銀パラジウムまたは銀白金で被覆した空気極側集電体が記載されている。
【特許文献1】
特開平9−306518号公報
【特許文献2】
特開平7−114931号公報
【特許文献3】
特開2002−329509号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ランタンマンガナイト等の導電性セラミックスのフェルトを集電体として用いた場合は、クッション性のある織布または不織布には成型し難く、かつ高価であった。
【0007】
また繊維状金属または合金より成るフェルトは安価であり導電性も良好であるが、固体電解質型燃料電池の空気極のような高温雰囲気下で酸化される環境では酸化物となって急速に導電性が損なわれるという問題点があった。さらに上記特許文献3の方法では、セパレータ・空気極と多孔質アルミナの熱膨張の違いが大きく電池使用時に破損し易くなるという問題点があった。一方、白金や金などの貴金属繊維は高導電性を示し且つ耐酸化性も優れているが非常に高価であり産業用途に適用することは困難であった。
【0008】
本発明は、高温における耐酸化性、耐食性に優れ、かつ導電性およびガス透過性が良好でクッション性に優れた固体電解質型燃料電池用集電体を低コストで提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シリカ、アルミナ、ジルコニアおよびチタニアからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を主成分とする無機繊維の布からなる多孔質基材に貴金属を被覆した固体電解質型燃料電池用集電体である。
【0010】
本発明において、多孔質基材の被覆に使用される貴金属は金、白金、銀、ロジウム、パラジウム、イリジウム、オスミウムおよびルテニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種類の金属、それらの混合物または合金である。銀およびルテニウム、特に銀がコストの面では有利であるが、銀は耐熱性が低く銀単体では燃料電池の使用中に導電性の低下が懸念される。さらに、銀、ルテニウムは燃料電池の使用中に、被覆層の銀またはルテニウムがマイグレーションにより空気電極の中へ移動してウイスカ−となることが懸念される。そこで被覆層として、銀とパラジウムの合金もしくは銀と白金の合金を用いるか、または銀層の上にパラジウム層もしくは白金を積層することが、コストを押さえながら耐熱性およびマイグレーションの抑制効果を高めるために好ましい。銀とパラジウムの合金または銀と白金の合金とする場合、パラジウム濃度または白金濃度が高くなるほ耐熱性の向上とマイグレーションを抑制する効果が表れるが、性能とコストを勘案するとパラジウムもしくは白金の含有率が30重量%〜70重量%であることが好ましい。銀層とパラジウム層または白金層を積層する場合、銀層とパラジウム層または銀層と白金層の合計厚みに対してパラジウム層または白金層の厚みが30〜70%になるように調整することが好ましい。
【0011】
被覆される貴金属の膜厚は5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜5μmであることがより好ましく、コストの観点から50nm〜1μmであることがさらに好ましい。5nm未満であると充分な導電性を得ることができず、10μmを超えると燃料ガスの透過が悪くなると共にコスト的に高くなってしまう。
【0012】
貴金属の被覆方法は特に限定されるものではなく、無電解めっき、蒸着、スパッタ等金属被膜を形成できるどのような方法でも用いることができる。なかでも多孔質材料に均一に被覆し良好な導電性を得たい場合は無電解めっきを用いることが好ましい。この場合、シリカ、アルミナ、ジルコニアおよびチタニアからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を主成分とする無機の繊維の布をめっき液に所定時間浸漬して布の繊維の表面に所定膜厚の貴金属の層を形成させることができる。
【0013】
本発明における多孔質基材はシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)およびチタニア(TiO2)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物を主成分とする無機繊維の布からなる。さらにはシリカの含有量が60質量%以上、またはシリカおよびアルミナの合計含有量が75質量%以上であり、他の成分として必要に応じてTiO2、ZrO2、Cr2O3、CaO、MgO、B2O3などの金属酸化物を含有する無機繊維が好ましく用いられる。
【0014】
反応ガスである酸素を良好に透過することが必要であるため、前記繊維の布からなる多孔質基材に貴金属を被覆した集電体のガス透過性(通気度)は、フラジール法(JIS L 1096)に従い測定した値で10〜100cc/cm2/secであることが好ましい。集電体のガス透過性が10cc/cm2/sec未満であると酸素極に酸素を供給するのに不十分であり、100cc/cm2/secを超えるとクッション性を有する構造が得られない。貴金属を被覆する前の多孔質基材は貴金属を被覆した後の集電体に比して厳密にはわずかに大きいガス透過性を有する。しかし貴金属を被覆する前の多孔質基材も実質的に上記範囲のガス透過性を有することが好ましい。多孔質基材の織布、不織布の繊維直径、目付、貴金属被覆厚みなどを調節することにより上記の集電体のガス透過性が得られる。
【0015】
本発明の多孔質基材は前記金属酸化物を主成分とする無機の繊維の織布または不織布からなる。集電体として高い導電率を得るためには、貴金属被覆繊維同士の接点の数が少なく1本の繊維で導電性を確保できる織布の方がより好ましい。集電体とその両側に位置する酸素極とセパレータとの電気的接触を良好に保つためには集電体が優れたクッション性を有する必要がある。織布の織り方は、朱子織、綾織または模紗織よりも平織が、良好なクッション性が得られるので好ましい。さらに、毛羽立ったバルキーヤーンを用いた平織、タオルやカーペットに用いるパイル織(編)、二種類以上の経糸、緯糸を用いた上下二枚以上の重なり合った織物組織の多重織物、さらに航空機構造体の繊維強化複合材料に用いる経糸、緯糸に加えて斜め、垂直方向に織り込む多軸織物など3次元構造を有する織布が好ましい。
【0016】
織布を形成する際の繊維直径は5μm〜20μmであることが好ましい。5μm未満では繊維強度が弱く、織り難くなると共に織布強度が低下する。一方、20μmを超えると繊維が硬く、織り難くなる。
【0017】
多孔質基材として不織布が用いられる場合、不織布の繊維の平均繊維直径は、0.10〜10μmであることが好ましい。0.1μm未満では、製造コストが極端に高くなる。一方、10μmを超えると、繊維同士の絡みが弱くなって多孔質基材の機械的強度が小さくなる。また、繊維の平均長さは2〜50mmであることが好ましい。2mm未満の場合は、繊維同士の絡みが弱くなって多孔質基材の機械的強度が小さくなる。一方、50mmを超えると、抄紙においてスラリー中での均一分散が難しくなるため、均一な不織布を製造し難くなる。
【0018】
多孔質基材に貴金属を被覆した集電体の圧縮率は10%〜50%であることが好ましい。圧縮率が10%未満であると電解質や電極の膨張を充分に吸収することができず、50%を超えると集電体の空隙が無くなり、ガス透過性が低下することで反応ガスである酸素が充分に供給できなくなるからである。この場合圧縮率とは集電体をその厚さ方向に20kPaで圧縮した際の集電体の厚さ減少割合(%)と定義し、具体的には以下の式で求められる。なお、貴金属を被覆する前の多孔質基材は貴金属を被覆した後の集電体に比して厳密にはわずかに小さい圧縮率を有する。しかし貴金属を被覆する前の多孔質基材も実質的に上記範囲の圧縮率を有することが好ましい。
E=(t1−t2)/t1 x 100
E:圧縮率(%)
t1:無荷重の厚さ
t2:20kPaにて圧縮した時の厚さ
【0019】
また集電体の復元率は50%以上であることが好ましい。50%未満であるとクッション性が低くて電解質や電極が収縮した際に電極と集電体との密着性が悪くなり、集電効率が悪くなるためである。なお、復元率は上記荷重を掛けて圧縮した後に無荷重とした時の集電体の厚さの復元の度合を示し、具体的には以下の式で求めたものとする。なお、貴金属を被覆する前の多孔質基材は貴金属を被覆した後の集電体に比して厳密にはわずかに小さい復元率を有する。しかし貴金属を被覆する前の多孔質基材も実質的に上記範囲の復元率を有することが好ましい。
F=(t3−t2)/(t1−t2) x 100
F:復元率(%)
t1:無荷重の厚さ
t2:20kPaにて圧縮した時の厚さ
t3:20kPaにて圧縮後、再び無荷重にした時の厚さ
【0020】
多孔質基材の厚さ(貴金属を被覆した後の集電体の厚さに実質的に等しい)は0.5〜10mmであることが好ましい。0.5mm未満であると電解質や電極の膨張収縮を緩和するだけの変形量を確保することができず、10mmを超えると電気抵抗が大きくなり発電効率の低下につながる。
【0021】
本発明の固体電解質型燃料電池用集電体は、シリカ、アルミナ、ムライト等の耐熱性を有する無機繊維の布からなる多孔質基材に貴金属を被覆した耐熱性導電材であるため、低コストでかつ高温雰囲気下で酸化されるような環境において高導電率でクッション性の良好な導電材となる。そのため、700℃以上の作動温度を必要とする酸化物固体電解質型燃料電池用に最適である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により、この発明をさらに具体的に説明する。なお、下記の実施例に限定するものではない。多孔質基材を構成する繊維の織布、不織布としては、表1に示すシリカ−アルミナ系、ムライト系、シリカ系の組成の無機繊維からなるものが好ましい。
【0023】
【表1】
【0024】
【実施例】
[実施例1]
多孔質基材は、表1の組成No.6のムライト無機繊維を平織で製織された織布(繊維直径11μm、厚さ0.3mm、目付け288g/m2)を用い、予め400℃で6時間ヒートクリーニング後、次に述べるように、センシタイジング(触媒付与による増感)およびアクチベーティング(触媒活性化)の触媒活性化処理で銀とパラジウムを積層するめっき耐熱性導電材の多孔質基材とした。
【0025】
塩化第一錫(SnCl2 ・2H2 O)1.5g/dm3および希塩酸を用いてpH2〜3に調整した増感液を得た。その液1リットルの浴中に前記織布を常温2分間浸漬することによりセンシタイジング処理を行った。この処理を行った織布を十分に水洗いした後、これを塩化パラジウム(PdCl2・2H2O)0.4g/dm3を含む水溶液1リットルの浴中に常温で2分間浸漬してアクチベーチング処理を行い、さらに浄水で十分に水洗いした。以上のセンシタイジング処理、水洗浄、アクチベーチング処理および水洗浄からなる操作をさらに2回繰返し行って触媒活性化処理とした。
【0026】
上記の触媒活性化を施した多孔質基材に次のように無電解めっき法により銀とその上にパラジウム積層被覆を行った。硝酸銀を15g/dm3、アンモニア水を25ml/dm3、エチレンジアミンを18g/dm3の濃度になるように水、1N―水酸化ナトリウムを加えてpH11に調整しためっき液を得た。このめっき液を20℃に保ちそれに還元剤のブドウ糖を8g/dm3を添加した浴に中に前記触媒活性化処理済みの織布を30分間浸漬してその表面に銀めっきを施した。その後、十分に水洗後、180℃で2時間乾燥した。次に、塩化パラジウム(PdCl2・2H2O)を3g/dm3、濃塩酸を30ml/dm3 、一塩化ヒドラジン
3.6g/dm3の濃度になるように水を加えてめっき液を得た。このめっき液を30℃に保ち浴の中に銀めっき済みの織布を1時間浸漬して表面にパラジウムめっきを積層した耐熱性導電材が得られた。この導電材を空気中の酸素の雰囲気下で950℃で10時間加熱し、3枚重ねて電気抵抗を4端子法で測定したところ、0.04Ω・cmの値を示し、電導度が極めて高いことが分かった。この導電材のムライト繊維の断面を電子顕微鏡で観察したところ、繊維表面の銀めっきの被覆厚みは0.1μmで、パラジウムめっきの被覆厚みは0.03μmであることが確認された。
【0027】
[実施例2]
実施例1で用いた触媒活性化処理を施した織布に、次のように無電解めっき法により銀とその上に白金積層被覆を施して耐熱性導電材の多孔質基材とした。
銀めっきの方法は、実施例1の同一操作で行い。その後、テトラクロロ白金酸アンモニウム((NH4)2[PtCl4] )を3g/dm3、一塩化ヒドラジンを3.6g/dm3の濃度になるように水を加えてめっき液を得た。このめっき液を30℃に保ち浴の中に銀めっき済みの織布を1時間浸漬して表面に白金めっきを積層した耐熱性導電材が得られた。この導電材を空気中の酸素の雰囲気下で950℃で10時間加熱し、3枚重ねて電気抵抗を4端子法で測定したところ、0.02Ω・cmの値を示し、電導度が極めて高いことが分かった。この導電材のムライト繊維の断面を電子顕微鏡で観察したところ、繊維表面の銀めっきの被覆厚みは0.1μmで、白金めっきの被覆厚みは0.03μmあることが確認された。
【0028】
[実施例3]
実施例1で用いた触媒活性化処理を施した織布に、次のように銀・パラジウム合金めっきを施して耐熱性導電材の多孔質基材とした。硝酸銀を15g/dm3、塩化パラジウム・2水和物を15g/dm3、アンモニア水を25ml/dm3、エチレンジアミンを18g/dm3の濃度になるように水、1N―水酸化ナトリウムを加えてpH11に調整しためっき液を得た。このめっき液を20℃に保ちそれに還元剤の一塩化ヒドラジン10g/dm3を添加した浴に中に前記触媒活性化処理済みの織布を浸漬してその表面に銀・パラジウム合金めっきを施して、銀・パラジウム合金めっき耐熱性導電材が得られた。このようにして得られた銀・パラジウム合金めっき耐熱性導電材を空気中の酸素ガスの雰囲気下で950℃で10時間加熱し、3枚重ねて電気抵抗を4端子法で測定したところ、0.10Ω・cmの値を示し、導電度が高いことが分かった。銀・パラジウム合金めっき被覆厚みは、電子顕微鏡で確認したところ0.05μmで、銀・パラジウムの合金比率は7対3であった。
【0029】
[実施例4]
実施例1で用いたムライト繊維織布に代えて、表1の組成No.7のシリカ繊維の不織布(繊維直径9μm、厚さ3.0mm、目付け230g/m2)を用いて、実施例1と同様に触媒活性化処理および銀・パラジウム積層めっきを施して、銀・パラジウム積層被覆の耐熱性導電材を作製した。
このようにして得られた銀・パラジウム積層めっき耐熱性導電材を実施例1と同様に空気中の酸素ガスの雰囲気下で950℃で10時間加熱し、電気抵抗を4端子法で測定したところ、0.08Ω・cmの値を示した。銀・パラジウム積層めっき被覆厚みは、電子顕微鏡で確認したところ繊維表面の銀めっきの被覆厚みは0.1μmで、パラジウムめっきの被覆厚みは0.03μmあることが確認された。
【0030】
[比較例1]
繊維状インコネル合金(繊維直径20μm)をフェルト(厚さ3.0mm、目付け2500g/m2)に加工して導電材を得た。このようにして得られた合金をフェルトを空気中の酸素ガスの雰囲気下で950℃で10時間加熱し、電気抵抗を4端子法で測定したところ、無限大の値を示し、繊維状インコネル合金は酸化され導電度が低いことが分かった。
【0031】
[比較例2]
繊維直径0.8μmの綿状になったEガラス組成(SiO2 53.3、Al2O3 15.5、CaO 21.6、MgO 0.6、B2O3 7.9、Na2O+K2O 0.4 各質量%)の繊維20gを、塩化第一錫(SnCl2 ・2H2O)40g/リットルおよび塩酸20cc/リットルを含む触媒処理液1リットル中で、常温で2分間処理しセンシタイジング処理を行った。尚、この時に、予めスクリューによる機械的攪拌によって綿状のガラス繊維を分散させておき、その後に処理液槽の下に側面に穴の開いたパイプを張りめぐらせ空気を吹き込むことによりバブリングを起こし、繊維と液の接触効率を高めた。綿状Eガラス繊維を液から引き上げて水洗浄した。塩化パラジウム(PdCl2 ・2H2O)0.2g/リットルおよび塩酸5g/リットルを含む活性化処理液1リットル中で、前記センシタイジング処理済みの綿状繊維を常温で2分間浸漬してアクチベーチング処理を行った。尚、バブリングは前記工程と同様に行った。次に、硫酸ニッケル(NiSO4 )30g/リットル、次亜リン酸ナトリウム20g/リットル、酢酸ナトリウム14g/リットル、クエン酸ナトリウム24g/リットルおよび塩化アンモニウム5g/リットルの組成液1リットル中に液温60℃で前記触媒活性化済み綿状繊維を5分間浸漬し、ニッケル無電解めっきを施した。尚、各工程間には水洗工程を介在させた。更に、このめっきしたガラス繊維を水中分散させた状態で、メッシュ80程度の金網により、いわゆる湿式抄造法によりニッケルめっきガラス繊維シート(厚さ2.0mm、目付け200g/m2)を形成した。このようにして得られたEガラス繊維金属めっきのフェルトを空気中の酸素ガスの雰囲気下で950℃で10時間加熱すると、脆くフェルト形状を留めず実用上使用できるものが得られなかった。
【0032】
[比較例3]
ランタンマンガナイト等の導電性セラミックスのフェルトを以下の要領にて、作製を試みた。まず、La2O3とSrO2とMnO2 の各粉末をモル比で0.425:0.15:1.0となる割合で混合し、エタノールを加えてスラリとし、該スラリを乾燥した後、1500℃で5時間焼成し、冷却したのち粉砕して、平均粒径1.0μmのLa0.85(Sr0.15)MnO3 (ストロンチウム−ランタンマンガナイト)を得た。このストロンチウム−ランタンマンガナイトの粉末100gに対して、アルコール系バインダとして、ポビニルブチラール20gを添加してスラリとし、このスラリを押出し成形機、口金90μmにより、圧力2.0kg/cm2 の条件で押出してファイバー状に成形した。次に、このファイバー状成形体を1000〜1300℃で5.0時間焼成し、さらに結合剤、ポリビニルアルコールと混合し、鋳込み成形してフェルト状に成形を試みたが、脆く実用上使用できるものが得られなかった。
【0033】
[比較例4]
多孔質アルミナセラミックス(厚さ1.5mm、空孔径0.8mm、気孔率75%)に比較例1と同様方法で銀めっきを施して導電材を得た。この導電材のクッション性を20kPaの荷重で測定したところ、圧縮率0.5%、復元率0.1%で極めて少ないものであった。
【0034】
多孔質基材に貴金属を被覆した集電体(ただし比較例1,3は被覆なし)について測定したガス透過性、圧縮率、復元率および空気中の酸素ガスの雰囲気下で950℃加熱10時間後に測定した電気抵抗(体積固有抵抗率(Ω・cm))の結果を表2に示す。なお、比較例2については、ガス透過性、圧縮率、復元率の値の記載を省略した。また貴金属を被覆する前の多孔質基材(ただし比較例1,3を除く)のガス透過性、圧縮率および復元率は貴金属被覆後の集電材のそれとそれぞれ同一値であった。
【0035】
【表2】
【0036】
【発明の効果】
この発明の固体電解質型燃料電池用集電体は、シリカ、アルミナ、ムライト等の無機繊維の布からなる多孔質基材に貴金属を被覆しているため、高温雰囲気下で酸化されるような環境において耐久性があり、高導電率を実現することができる。また、集電体のガス透過性が10〜200cc/cm2/secを有する多孔質材であるために燃料ガスを良好に透過することができる。さらには貴金属として銀とパラジウムの合金、銀と白金の合金または銀の表面をパラジウムもしくは白金で被覆したものを用いた場合、低コストで作製することができる。また、集電体が圧縮率が10%〜50%であって、その復元率が50%以上であるためクッション性にも優れ、従って700℃以上の作動温度を必要とする酸化物固体電解質型燃料電池に用いることでにより燃料電池の性能を飛躍的に向上させることができる。
【発明の属する技術分野】
この発明は、高温耐熱性、特に酸化雰囲気における高温耐熱性を有する固体電解質型燃料電池用集電体およびそれを用いた固体電解質型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、酸素と水素をそれぞれ、酸化剤および燃料として、燃料が本来持っている化学エネルギーを直接電気エネルギーにする燃料電池が、省資源、環境保護などの観点から注目されており、特に固体電解質型燃料電池は、動作温度が800〜1000℃と高いことから、リン酸型、溶融炭酸塩型の燃料電池に比べて原理的に発電効率が高く、排熱を有効に利用でき、構成材料がすべて固体であり取扱が容易であるなどの多くの利点を有するため、研究・開発が進んできている。
この固体電解質型燃料電池は、酸素イオン導電性の固体電解質を介して燃料極と酸化剤極とが相対向するセルと、ガスを分離するセパレータとを積層させた構造であり、電極とセパレータとの導電性は電極とセパレータとの間に介在される集電体によって構成されている。
【0003】
この固体電解質型燃料電池において、酸化剤極すなわち空気電極は強い酸化性雰囲気に置かれることから、空気極側の集電体においては電子伝導度が高く耐酸化性に優れていることが要求される。また、固体電解質との熱膨張率の差が小さいことなどのほかにガス透過性が要求される。空気電極をペロブスカイト型ランタン系複合酸化物によって形成している。そこで、ストロンチウム、コバルト、カルシウムおよびマグネシウムのうちいずれか一つを含むランタンマンガナイト等の導電性セラミックスのフェルトを用いて、他の構成部材の熱膨張率差を吸収し、単セルの破損を防止することができる集電体(特許文献1)が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、燃料極または空気極とセパレータの間に集電体が介在された構造の固体電解質型燃料電池において、空気極側集電体を、繊維状合金より成るフェルトで構成させ、その繊維表面にペロブスカイト型酸化物を担持させることが提案されている。
【0005】
さらに特許文献3には、多孔質セラミックス例えばアルミナセラミックスの表面を、銀、銀パラジウムまたは銀白金で被覆した空気極側集電体が記載されている。
【特許文献1】
特開平9−306518号公報
【特許文献2】
特開平7−114931号公報
【特許文献3】
特開2002−329509号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ランタンマンガナイト等の導電性セラミックスのフェルトを集電体として用いた場合は、クッション性のある織布または不織布には成型し難く、かつ高価であった。
【0007】
また繊維状金属または合金より成るフェルトは安価であり導電性も良好であるが、固体電解質型燃料電池の空気極のような高温雰囲気下で酸化される環境では酸化物となって急速に導電性が損なわれるという問題点があった。さらに上記特許文献3の方法では、セパレータ・空気極と多孔質アルミナの熱膨張の違いが大きく電池使用時に破損し易くなるという問題点があった。一方、白金や金などの貴金属繊維は高導電性を示し且つ耐酸化性も優れているが非常に高価であり産業用途に適用することは困難であった。
【0008】
本発明は、高温における耐酸化性、耐食性に優れ、かつ導電性およびガス透過性が良好でクッション性に優れた固体電解質型燃料電池用集電体を低コストで提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シリカ、アルミナ、ジルコニアおよびチタニアからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を主成分とする無機繊維の布からなる多孔質基材に貴金属を被覆した固体電解質型燃料電池用集電体である。
【0010】
本発明において、多孔質基材の被覆に使用される貴金属は金、白金、銀、ロジウム、パラジウム、イリジウム、オスミウムおよびルテニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種類の金属、それらの混合物または合金である。銀およびルテニウム、特に銀がコストの面では有利であるが、銀は耐熱性が低く銀単体では燃料電池の使用中に導電性の低下が懸念される。さらに、銀、ルテニウムは燃料電池の使用中に、被覆層の銀またはルテニウムがマイグレーションにより空気電極の中へ移動してウイスカ−となることが懸念される。そこで被覆層として、銀とパラジウムの合金もしくは銀と白金の合金を用いるか、または銀層の上にパラジウム層もしくは白金を積層することが、コストを押さえながら耐熱性およびマイグレーションの抑制効果を高めるために好ましい。銀とパラジウムの合金または銀と白金の合金とする場合、パラジウム濃度または白金濃度が高くなるほ耐熱性の向上とマイグレーションを抑制する効果が表れるが、性能とコストを勘案するとパラジウムもしくは白金の含有率が30重量%〜70重量%であることが好ましい。銀層とパラジウム層または白金層を積層する場合、銀層とパラジウム層または銀層と白金層の合計厚みに対してパラジウム層または白金層の厚みが30〜70%になるように調整することが好ましい。
【0011】
被覆される貴金属の膜厚は5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜5μmであることがより好ましく、コストの観点から50nm〜1μmであることがさらに好ましい。5nm未満であると充分な導電性を得ることができず、10μmを超えると燃料ガスの透過が悪くなると共にコスト的に高くなってしまう。
【0012】
貴金属の被覆方法は特に限定されるものではなく、無電解めっき、蒸着、スパッタ等金属被膜を形成できるどのような方法でも用いることができる。なかでも多孔質材料に均一に被覆し良好な導電性を得たい場合は無電解めっきを用いることが好ましい。この場合、シリカ、アルミナ、ジルコニアおよびチタニアからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を主成分とする無機の繊維の布をめっき液に所定時間浸漬して布の繊維の表面に所定膜厚の貴金属の層を形成させることができる。
【0013】
本発明における多孔質基材はシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)およびチタニア(TiO2)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物を主成分とする無機繊維の布からなる。さらにはシリカの含有量が60質量%以上、またはシリカおよびアルミナの合計含有量が75質量%以上であり、他の成分として必要に応じてTiO2、ZrO2、Cr2O3、CaO、MgO、B2O3などの金属酸化物を含有する無機繊維が好ましく用いられる。
【0014】
反応ガスである酸素を良好に透過することが必要であるため、前記繊維の布からなる多孔質基材に貴金属を被覆した集電体のガス透過性(通気度)は、フラジール法(JIS L 1096)に従い測定した値で10〜100cc/cm2/secであることが好ましい。集電体のガス透過性が10cc/cm2/sec未満であると酸素極に酸素を供給するのに不十分であり、100cc/cm2/secを超えるとクッション性を有する構造が得られない。貴金属を被覆する前の多孔質基材は貴金属を被覆した後の集電体に比して厳密にはわずかに大きいガス透過性を有する。しかし貴金属を被覆する前の多孔質基材も実質的に上記範囲のガス透過性を有することが好ましい。多孔質基材の織布、不織布の繊維直径、目付、貴金属被覆厚みなどを調節することにより上記の集電体のガス透過性が得られる。
【0015】
本発明の多孔質基材は前記金属酸化物を主成分とする無機の繊維の織布または不織布からなる。集電体として高い導電率を得るためには、貴金属被覆繊維同士の接点の数が少なく1本の繊維で導電性を確保できる織布の方がより好ましい。集電体とその両側に位置する酸素極とセパレータとの電気的接触を良好に保つためには集電体が優れたクッション性を有する必要がある。織布の織り方は、朱子織、綾織または模紗織よりも平織が、良好なクッション性が得られるので好ましい。さらに、毛羽立ったバルキーヤーンを用いた平織、タオルやカーペットに用いるパイル織(編)、二種類以上の経糸、緯糸を用いた上下二枚以上の重なり合った織物組織の多重織物、さらに航空機構造体の繊維強化複合材料に用いる経糸、緯糸に加えて斜め、垂直方向に織り込む多軸織物など3次元構造を有する織布が好ましい。
【0016】
織布を形成する際の繊維直径は5μm〜20μmであることが好ましい。5μm未満では繊維強度が弱く、織り難くなると共に織布強度が低下する。一方、20μmを超えると繊維が硬く、織り難くなる。
【0017】
多孔質基材として不織布が用いられる場合、不織布の繊維の平均繊維直径は、0.10〜10μmであることが好ましい。0.1μm未満では、製造コストが極端に高くなる。一方、10μmを超えると、繊維同士の絡みが弱くなって多孔質基材の機械的強度が小さくなる。また、繊維の平均長さは2〜50mmであることが好ましい。2mm未満の場合は、繊維同士の絡みが弱くなって多孔質基材の機械的強度が小さくなる。一方、50mmを超えると、抄紙においてスラリー中での均一分散が難しくなるため、均一な不織布を製造し難くなる。
【0018】
多孔質基材に貴金属を被覆した集電体の圧縮率は10%〜50%であることが好ましい。圧縮率が10%未満であると電解質や電極の膨張を充分に吸収することができず、50%を超えると集電体の空隙が無くなり、ガス透過性が低下することで反応ガスである酸素が充分に供給できなくなるからである。この場合圧縮率とは集電体をその厚さ方向に20kPaで圧縮した際の集電体の厚さ減少割合(%)と定義し、具体的には以下の式で求められる。なお、貴金属を被覆する前の多孔質基材は貴金属を被覆した後の集電体に比して厳密にはわずかに小さい圧縮率を有する。しかし貴金属を被覆する前の多孔質基材も実質的に上記範囲の圧縮率を有することが好ましい。
E=(t1−t2)/t1 x 100
E:圧縮率(%)
t1:無荷重の厚さ
t2:20kPaにて圧縮した時の厚さ
【0019】
また集電体の復元率は50%以上であることが好ましい。50%未満であるとクッション性が低くて電解質や電極が収縮した際に電極と集電体との密着性が悪くなり、集電効率が悪くなるためである。なお、復元率は上記荷重を掛けて圧縮した後に無荷重とした時の集電体の厚さの復元の度合を示し、具体的には以下の式で求めたものとする。なお、貴金属を被覆する前の多孔質基材は貴金属を被覆した後の集電体に比して厳密にはわずかに小さい復元率を有する。しかし貴金属を被覆する前の多孔質基材も実質的に上記範囲の復元率を有することが好ましい。
F=(t3−t2)/(t1−t2) x 100
F:復元率(%)
t1:無荷重の厚さ
t2:20kPaにて圧縮した時の厚さ
t3:20kPaにて圧縮後、再び無荷重にした時の厚さ
【0020】
多孔質基材の厚さ(貴金属を被覆した後の集電体の厚さに実質的に等しい)は0.5〜10mmであることが好ましい。0.5mm未満であると電解質や電極の膨張収縮を緩和するだけの変形量を確保することができず、10mmを超えると電気抵抗が大きくなり発電効率の低下につながる。
【0021】
本発明の固体電解質型燃料電池用集電体は、シリカ、アルミナ、ムライト等の耐熱性を有する無機繊維の布からなる多孔質基材に貴金属を被覆した耐熱性導電材であるため、低コストでかつ高温雰囲気下で酸化されるような環境において高導電率でクッション性の良好な導電材となる。そのため、700℃以上の作動温度を必要とする酸化物固体電解質型燃料電池用に最適である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により、この発明をさらに具体的に説明する。なお、下記の実施例に限定するものではない。多孔質基材を構成する繊維の織布、不織布としては、表1に示すシリカ−アルミナ系、ムライト系、シリカ系の組成の無機繊維からなるものが好ましい。
【0023】
【表1】
【0024】
【実施例】
[実施例1]
多孔質基材は、表1の組成No.6のムライト無機繊維を平織で製織された織布(繊維直径11μm、厚さ0.3mm、目付け288g/m2)を用い、予め400℃で6時間ヒートクリーニング後、次に述べるように、センシタイジング(触媒付与による増感)およびアクチベーティング(触媒活性化)の触媒活性化処理で銀とパラジウムを積層するめっき耐熱性導電材の多孔質基材とした。
【0025】
塩化第一錫(SnCl2 ・2H2 O)1.5g/dm3および希塩酸を用いてpH2〜3に調整した増感液を得た。その液1リットルの浴中に前記織布を常温2分間浸漬することによりセンシタイジング処理を行った。この処理を行った織布を十分に水洗いした後、これを塩化パラジウム(PdCl2・2H2O)0.4g/dm3を含む水溶液1リットルの浴中に常温で2分間浸漬してアクチベーチング処理を行い、さらに浄水で十分に水洗いした。以上のセンシタイジング処理、水洗浄、アクチベーチング処理および水洗浄からなる操作をさらに2回繰返し行って触媒活性化処理とした。
【0026】
上記の触媒活性化を施した多孔質基材に次のように無電解めっき法により銀とその上にパラジウム積層被覆を行った。硝酸銀を15g/dm3、アンモニア水を25ml/dm3、エチレンジアミンを18g/dm3の濃度になるように水、1N―水酸化ナトリウムを加えてpH11に調整しためっき液を得た。このめっき液を20℃に保ちそれに還元剤のブドウ糖を8g/dm3を添加した浴に中に前記触媒活性化処理済みの織布を30分間浸漬してその表面に銀めっきを施した。その後、十分に水洗後、180℃で2時間乾燥した。次に、塩化パラジウム(PdCl2・2H2O)を3g/dm3、濃塩酸を30ml/dm3 、一塩化ヒドラジン
3.6g/dm3の濃度になるように水を加えてめっき液を得た。このめっき液を30℃に保ち浴の中に銀めっき済みの織布を1時間浸漬して表面にパラジウムめっきを積層した耐熱性導電材が得られた。この導電材を空気中の酸素の雰囲気下で950℃で10時間加熱し、3枚重ねて電気抵抗を4端子法で測定したところ、0.04Ω・cmの値を示し、電導度が極めて高いことが分かった。この導電材のムライト繊維の断面を電子顕微鏡で観察したところ、繊維表面の銀めっきの被覆厚みは0.1μmで、パラジウムめっきの被覆厚みは0.03μmであることが確認された。
【0027】
[実施例2]
実施例1で用いた触媒活性化処理を施した織布に、次のように無電解めっき法により銀とその上に白金積層被覆を施して耐熱性導電材の多孔質基材とした。
銀めっきの方法は、実施例1の同一操作で行い。その後、テトラクロロ白金酸アンモニウム((NH4)2[PtCl4] )を3g/dm3、一塩化ヒドラジンを3.6g/dm3の濃度になるように水を加えてめっき液を得た。このめっき液を30℃に保ち浴の中に銀めっき済みの織布を1時間浸漬して表面に白金めっきを積層した耐熱性導電材が得られた。この導電材を空気中の酸素の雰囲気下で950℃で10時間加熱し、3枚重ねて電気抵抗を4端子法で測定したところ、0.02Ω・cmの値を示し、電導度が極めて高いことが分かった。この導電材のムライト繊維の断面を電子顕微鏡で観察したところ、繊維表面の銀めっきの被覆厚みは0.1μmで、白金めっきの被覆厚みは0.03μmあることが確認された。
【0028】
[実施例3]
実施例1で用いた触媒活性化処理を施した織布に、次のように銀・パラジウム合金めっきを施して耐熱性導電材の多孔質基材とした。硝酸銀を15g/dm3、塩化パラジウム・2水和物を15g/dm3、アンモニア水を25ml/dm3、エチレンジアミンを18g/dm3の濃度になるように水、1N―水酸化ナトリウムを加えてpH11に調整しためっき液を得た。このめっき液を20℃に保ちそれに還元剤の一塩化ヒドラジン10g/dm3を添加した浴に中に前記触媒活性化処理済みの織布を浸漬してその表面に銀・パラジウム合金めっきを施して、銀・パラジウム合金めっき耐熱性導電材が得られた。このようにして得られた銀・パラジウム合金めっき耐熱性導電材を空気中の酸素ガスの雰囲気下で950℃で10時間加熱し、3枚重ねて電気抵抗を4端子法で測定したところ、0.10Ω・cmの値を示し、導電度が高いことが分かった。銀・パラジウム合金めっき被覆厚みは、電子顕微鏡で確認したところ0.05μmで、銀・パラジウムの合金比率は7対3であった。
【0029】
[実施例4]
実施例1で用いたムライト繊維織布に代えて、表1の組成No.7のシリカ繊維の不織布(繊維直径9μm、厚さ3.0mm、目付け230g/m2)を用いて、実施例1と同様に触媒活性化処理および銀・パラジウム積層めっきを施して、銀・パラジウム積層被覆の耐熱性導電材を作製した。
このようにして得られた銀・パラジウム積層めっき耐熱性導電材を実施例1と同様に空気中の酸素ガスの雰囲気下で950℃で10時間加熱し、電気抵抗を4端子法で測定したところ、0.08Ω・cmの値を示した。銀・パラジウム積層めっき被覆厚みは、電子顕微鏡で確認したところ繊維表面の銀めっきの被覆厚みは0.1μmで、パラジウムめっきの被覆厚みは0.03μmあることが確認された。
【0030】
[比較例1]
繊維状インコネル合金(繊維直径20μm)をフェルト(厚さ3.0mm、目付け2500g/m2)に加工して導電材を得た。このようにして得られた合金をフェルトを空気中の酸素ガスの雰囲気下で950℃で10時間加熱し、電気抵抗を4端子法で測定したところ、無限大の値を示し、繊維状インコネル合金は酸化され導電度が低いことが分かった。
【0031】
[比較例2]
繊維直径0.8μmの綿状になったEガラス組成(SiO2 53.3、Al2O3 15.5、CaO 21.6、MgO 0.6、B2O3 7.9、Na2O+K2O 0.4 各質量%)の繊維20gを、塩化第一錫(SnCl2 ・2H2O)40g/リットルおよび塩酸20cc/リットルを含む触媒処理液1リットル中で、常温で2分間処理しセンシタイジング処理を行った。尚、この時に、予めスクリューによる機械的攪拌によって綿状のガラス繊維を分散させておき、その後に処理液槽の下に側面に穴の開いたパイプを張りめぐらせ空気を吹き込むことによりバブリングを起こし、繊維と液の接触効率を高めた。綿状Eガラス繊維を液から引き上げて水洗浄した。塩化パラジウム(PdCl2 ・2H2O)0.2g/リットルおよび塩酸5g/リットルを含む活性化処理液1リットル中で、前記センシタイジング処理済みの綿状繊維を常温で2分間浸漬してアクチベーチング処理を行った。尚、バブリングは前記工程と同様に行った。次に、硫酸ニッケル(NiSO4 )30g/リットル、次亜リン酸ナトリウム20g/リットル、酢酸ナトリウム14g/リットル、クエン酸ナトリウム24g/リットルおよび塩化アンモニウム5g/リットルの組成液1リットル中に液温60℃で前記触媒活性化済み綿状繊維を5分間浸漬し、ニッケル無電解めっきを施した。尚、各工程間には水洗工程を介在させた。更に、このめっきしたガラス繊維を水中分散させた状態で、メッシュ80程度の金網により、いわゆる湿式抄造法によりニッケルめっきガラス繊維シート(厚さ2.0mm、目付け200g/m2)を形成した。このようにして得られたEガラス繊維金属めっきのフェルトを空気中の酸素ガスの雰囲気下で950℃で10時間加熱すると、脆くフェルト形状を留めず実用上使用できるものが得られなかった。
【0032】
[比較例3]
ランタンマンガナイト等の導電性セラミックスのフェルトを以下の要領にて、作製を試みた。まず、La2O3とSrO2とMnO2 の各粉末をモル比で0.425:0.15:1.0となる割合で混合し、エタノールを加えてスラリとし、該スラリを乾燥した後、1500℃で5時間焼成し、冷却したのち粉砕して、平均粒径1.0μmのLa0.85(Sr0.15)MnO3 (ストロンチウム−ランタンマンガナイト)を得た。このストロンチウム−ランタンマンガナイトの粉末100gに対して、アルコール系バインダとして、ポビニルブチラール20gを添加してスラリとし、このスラリを押出し成形機、口金90μmにより、圧力2.0kg/cm2 の条件で押出してファイバー状に成形した。次に、このファイバー状成形体を1000〜1300℃で5.0時間焼成し、さらに結合剤、ポリビニルアルコールと混合し、鋳込み成形してフェルト状に成形を試みたが、脆く実用上使用できるものが得られなかった。
【0033】
[比較例4]
多孔質アルミナセラミックス(厚さ1.5mm、空孔径0.8mm、気孔率75%)に比較例1と同様方法で銀めっきを施して導電材を得た。この導電材のクッション性を20kPaの荷重で測定したところ、圧縮率0.5%、復元率0.1%で極めて少ないものであった。
【0034】
多孔質基材に貴金属を被覆した集電体(ただし比較例1,3は被覆なし)について測定したガス透過性、圧縮率、復元率および空気中の酸素ガスの雰囲気下で950℃加熱10時間後に測定した電気抵抗(体積固有抵抗率(Ω・cm))の結果を表2に示す。なお、比較例2については、ガス透過性、圧縮率、復元率の値の記載を省略した。また貴金属を被覆する前の多孔質基材(ただし比較例1,3を除く)のガス透過性、圧縮率および復元率は貴金属被覆後の集電材のそれとそれぞれ同一値であった。
【0035】
【表2】
【0036】
【発明の効果】
この発明の固体電解質型燃料電池用集電体は、シリカ、アルミナ、ムライト等の無機繊維の布からなる多孔質基材に貴金属を被覆しているため、高温雰囲気下で酸化されるような環境において耐久性があり、高導電率を実現することができる。また、集電体のガス透過性が10〜200cc/cm2/secを有する多孔質材であるために燃料ガスを良好に透過することができる。さらには貴金属として銀とパラジウムの合金、銀と白金の合金または銀の表面をパラジウムもしくは白金で被覆したものを用いた場合、低コストで作製することができる。また、集電体が圧縮率が10%〜50%であって、その復元率が50%以上であるためクッション性にも優れ、従って700℃以上の作動温度を必要とする酸化物固体電解質型燃料電池に用いることでにより燃料電池の性能を飛躍的に向上させることができる。
Claims (8)
- シリカ、アルミナ、ジルコニアおよびチタニアからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を主成分とする無機繊維の布からなる多孔質基材に貴金属を被覆した固体電解質型燃料電池用集電体。
- 前記繊維の布は0.10〜20μmの直径を有する繊維の織布または不織布である請求項1に記載の固体電解質型燃料電池用集電体。
- 10〜100cc/cm2/secのガス透過性を有する請求項1または2に記載の固体電解質型燃料電池用集電体。
- 10〜50%の圧縮率および50%以上の復元率を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体電解質型燃料電池用集電体。
- 前記繊維はシリカを60質量%以上、またはシリカ及びアルミナの合計を75質量%以上含有する組成を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体電解質型燃料電池用集電体。
- 前記貴金属が金、白金、銀、ロジウム、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種類の金属およびその混合物または合金からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質型燃料電池用集電体。
- 前記被覆は銀とパラジウムの合金もしくは銀と白金の合金の被覆、または銀を被覆しさらにその表面をパラジウムもしくは白金で被覆したものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体電解質型燃料電池用集電体。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の集電体を用いた固体電解質型燃料電池。
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