JP2005031004A - Ak006207を利用した2型糖尿病治療薬の評価方法 - Google Patents

Ak006207を利用した2型糖尿病治療薬の評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 糖尿病の病態やその改善に関与する遺伝子やその遺伝子産物を特定し、これを利用した2型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病,NIDDM)治療薬の新たな評価系を提供する。
【解決手段】 特定のアミノ酸配列を有する蛋白質を安定的に発現する組み換え膵β細胞を有するマウスを用い、特定のアミノ酸配列に対する作用を指標として、被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、7回膜貫通蛋白質(配列番号2または10)を利用した2型糖尿病治療薬の評価方法、ならびに該方法に用いられる細胞および動物に関する。
近年、日本において糖尿病患者は急増しており、その数は現在700万人にのぼると推定され、糖尿病は高血圧症に次いで頻度の高い疾患となっている。特に日本人の糖尿病患者の95%は、2型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病、NIDDM)であり、早期発見、早期治療がその予後の点からも重要である。
2型糖尿病は、遺伝的素因や環境因子等、多様な因子により発症する。2型糖尿病におけるインスリン作用不足の原因として、インスリン感受性機構の異常(インスリン抵抗性)とインスリン分泌の低下が挙げられる。欧米では多くは前者、すなわちインスリン抵抗性が2型糖尿病の主な原因であるが、日本ではインスリン分泌不全が主な原因である場合も少なくない。
膵臓は、外分泌系細胞(アミラーゼやリパーゼ等の外分泌酵素を産生する)と内分泌系細胞(インスリン、グルカゴン等を産生する)から構成され、後者は、α細胞(グルカゴンを産生)、β細胞(インスリンを産生)等からなるランゲルハンス氏島とよばれる組織を形成する。このうちβ細胞はランゲルハンス氏島細胞の約90%を占め、インスリンを合成・分泌することにより血糖値を低下させる働きを有している。そのため、β細胞の機能不全はインスリン産生低下およびインスリン分泌の低下をもたらし、糖尿病を発症させる。
1型糖尿病では、β細胞が免疫系により完全に破壊されて、インスリン産生細胞が欠乏するため、インスリン代償療法が治療に用いられている。一方、2型糖尿病では、グルコース取り込みに対する標的組織がインスリン抵抗性を示すことにより、β細胞の機能が低下し、やがてβ細胞機能不全を生じる。
β細胞におけるインスリンの分泌は、血中のグルコースが刺激となり生じる。グルコースは、β細胞の膜上に局在するグルコーストランスポーター(GLUT2)を介して細胞内に取り込まれ、グルコキナーゼにより解糖系へ導入されるが、このグルコースの代謝過程で産生されたATPがインスリン分泌シグナルとして機能している。
1984年にCookらにより発見されたATP感受性カリウムチャンネル(KATP)は(例えば、非特許文献1参照)、グルコース代謝により産生された細胞内ATPの濃度増加により閉鎖し、細胞膜の脱分極を引き起こす。これに引き続いて電位依存性カルシウムチャンネルが開口し、β細胞内へのカルシウムイオンの流入が起こる。細胞内のカルシウムイオン濃度の上昇は、カルシウム依存性のインスリン分泌開口放出反応を活性化する(例えば、非特許文献2参照)。
インスリン分泌を促進する2型糖尿病の治療薬としては、従来よりスルホニル尿素剤が広く用いられている。この薬剤は、膵β細胞のKATPチャンネルを閉鎖することによりインスリン分泌を促進するが、血糖値とは無関係にインスリン産生や分泌を促進するという欠点がある。そのため、この種の薬剤では、低血糖に注意しながら食物摂取量を制御しなければならない。
これに対し、現在新たな2型糖尿病薬としてGlucagon-like peptide-1 (GLP-1) が開発されつつある。GLP-1は、腸管で preproglucagon から翻訳後修飾により産生されるアミノ酸であるが、スルホニル尿素剤とは異なり、血糖値依存的にインスリン分泌を促進することが報告されている(例えば、非特許文献3参照)。GLP-1は、インスリン分泌を促進するだけでなく、グルカゴンの放出を阻害することによっても、血糖値の正常化を促進する。さらに、GLP-1は、ヘキソキナーゼの遺伝子発現を促進し、インスリン生合成を増大させることも報告されている(例えば、非特許文献4参照)。
現在のところ、インスリン分泌を促進する薬剤としては、上述したスルホニル尿素およびGLP-1以外には有効な薬剤がない。そのため、2型糖尿病患者のβ細胞機能不全に対する新たな治療薬の開発が望まれている。
ところで、これまでに開発された医薬品の約45%は受容体に作用する薬剤であり、そのほとんどはG蛋白質共役型受容体(G-Protein Coupled Receptor:GPCR)に作用する。つまり、GPCRは最も医薬品に結びつきやすい創薬標的である。
GPCRは、7回膜貫通型受容体で、神経伝達物質受容体、ホルモン受容体、オータコイド受容体からケモカイン受容体にいたる多くの種類の受容体が存在し、生体の多様かつ重要な機能に関与している。7回膜貫通型受容体の多くは分子量4〜5万の一本鎖蛋白質であり、モノマーとして機能することが多いが、最近ではホモオリゴマーあるいはヘテロオリゴマーを形成することも知られている。また、N末端が細胞外に出て、C末端が細胞内にとどまるという共通した構造を持つ。
一方、シグナル伝達の点では、GPCRはGTP結合蛋白質を介してアデニル酸シクラーゼ、ホスホリパーゼC、イオンチャンネルなどのエフェクターに情報を伝える。GPCRは、いずれも内在性リガンドを含む多くの物質によって厳密な機能調節を受けており、アゴニストとなる生理活性物質が結合することにより特異的な生理機能を発現する。近年、大規模なDNA配列情報に基づいて多くのGPCRが単離されている。このようにして見出されたGPCRは、しばしば結合するリガンドが不明なためオーファン受容体と呼ばれている。ヒトのGPCRの約1/3はオーファン受容体であり、これらオーファン受容体の研究は、生理現象の調節機構の解明と薬剤開発にあらたな手がかりを与えてくれる。
膵β細胞で発現しているGPCRとして、GLP-1レセプターおよびGIPレセプターが知られている。前者に結合するGLP-1は血糖値依存的にインスリン分泌を促進する。後者に結合するGIPもまたGLP-1と同様の作用を有する。これらの因子は各々のレセプターを介して、細胞内のcAMP濃度を増加させ、その後Ca2+チャネルを開いてインスリン分泌を増加させたり、グルコース感受性を増加させることが知られている。しかし、上記以外に膵β細胞で発現しているGPCRについて、インスリン分泌との関連を示唆する知見は未だ知られていない。
「ネイチャー(Nature)」 1984 311:p271-273 「フィジオロジカル レビュー(Physiological Reviews)」 1981 61:p914-973 「ダイアベティース(Diabetes)」 1994 Apr;43(4):p535-539 「エンドクリノロジー(Endocrinology)」 1995 Nov;136(11):p4910-4917
本発明は、糖尿病の病態やその改善に関与する遺伝子やその遺伝子産物を特定し、これを利用した2型糖尿病治療薬の新たな評価系を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、糖尿病患者の膵臓ランゲルハンス氏島細胞で発現が増加しており、糖尿病治療薬の投与によってその発現量が正常化される遺伝子は、糖尿病の病態やその改善の指標になりうると考えた。そして、配列番号1に示される塩基配列で特定される遺伝子が糖尿病の病態に伴って高発現すること、さらに該遺伝子によってコードされる蛋白質(配列番号2に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質)が膵β細胞のインスリン分泌に関与していることを確認した。
すなわち、本発明は、配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質に対する被験物質の作用に基づいて、該被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する方法に関する。
前記方法において、被験物質は配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質の機能に対する促進的効果に基づいて評価される。例えば、前記蛋白質のアゴニストとなる物質は、2型糖尿病治療薬として有用である。こうしたアゴニスト作用は、例えば、配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質を介したインスリン値、血糖値、細胞内cAMP濃度、細胞内Ca2+濃度の変化によって評価することができる。
例えば、配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質の機能に基づいて評価を行う場合、本発明の方法は下記の工程により実施することができる:
1)配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質を安定的に発現する膵β細胞由来細胞、あるいは該細胞を有するランゲルハンス氏島を被検物質の添加または非添加条件下で培養する;
2)上記細胞からのインスリン分泌量を検出する;
3)被検物質の添加および非添加条件下における、上記インスリン分泌量の相違に基づき、該被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する。
あるいはまた、下記の工程により実施することができる:
1)配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質を安定的に発現する細胞を被検物質の添加または非添加条件下で培養する;
2)上記細胞内におけるcAMP濃度および/またはCa2+濃度を測定する;
3)被検物質の添加および非添加条件下における、上記cAMP濃度および/またはCa2+濃度の相違に基づき、該被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する。
あるいはまた、下記の工程により実施することができる:
1)配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質を安定的に発現する膵β細胞を有する動物を被検物質の投与または非投与条件下で飼育する;
2)上記動物の血中インスリン値および/または血糖値を測定する;
3)被験物質の投与および非投与条件下における、上記血中インスリン値および/または血糖値の相違に基づき、該被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する。
前記方法で用いられる動物は、例えば、内因性膵β細胞を破壊されたSCIDマウスに配列番号1または9に示される塩基配列で特定される遺伝子を導入した膵β細胞由来細胞を移植することにより得ることができる。
本発明はまた、2型糖尿病治療薬としての効果を評価するための細胞を提供する。そのような細胞としては、例えば、配列番号1または9に示される塩基配列で特定される遺伝子を導入され、配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質を安定的に発現する組換え細胞を挙げることができる。あるいは、配列番号1または9に示される塩基配列で特定される遺伝子とGq遺伝子を導入され、配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質とGqとの融合蛋白質を発現する組換え細胞を挙げることができる。
また、本発明は2型糖尿病治療薬としての効果を評価するための動物を提供する。そのような動物としては、例えば、配列番号1または9に示される塩基配列で特定される遺伝子を導入され、配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質を安定的に発現する組換え膵β細胞を有するマウスを挙げることができる。
本発明によれば、被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を迅速かつ簡便に評価することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
1. 本発明の遺伝子
本発明にかかる遺伝子(以下、「本発明の遺伝子」という。)は、マウスゲノム中より見出された遺伝子で、その配列の特徴から、7回膜貫通型蛋白質であることが推定されている。本発明の遺伝子のmRNAは717塩基からなり、238アミノ酸からなる蛋白質をコードする。この塩基配列およびアミノ酸配列は、それぞれAccession No. AK006207.1(配列番号1)およびProtein ID. BAB24458.1(配列番号2)としてGenBankに登録されている。一方、上記AK006207遺伝子にはヒトオーソログとしてCGI-119遺伝子が存在し、その塩基配列は、Accession No. AF151877(配列番号9)としてGenBankに登録されている。
現在のところ、これらAK006207遺伝子やそのオーソログ、ならびに該遺伝子によってコードされる蛋白質の機能やリガンドに関して具体的な報告はない。
本発明は、マウスAK006207遺伝子(配列番号1)とそのヒトオーソログ(配列番号9)にコードされる蛋白質を利用した2型糖尿病の評価方法を提供する。以下、これらのAK006207遺伝子およびそのオーソログを「本発明の遺伝子」と記載し、配列番号1または9に示される塩基配列により特定する。しかしながら、本発明の遺伝子は、それが配列番号1または9で示される塩基配列と同様の蛋白質をコードする限り、これらの配列を有するものに限定されるものではない。なお、遺伝子という用語には、mRNA、cDNA、ゲノムDNAの全てを含むものとする。
本発明にかかる蛋白質(以下、「本発明の蛋白質」という。)は、配列番号1または9で示される塩基配列で特定される遺伝子によってコードされる蛋白質であり、配列番号2または10で示されるアミノ酸配列で特定される。本発明の蛋白質のアミノ酸配列も、配列番号2または10で示されるアミノ酸配列に限定されず、それが配列番号2または10で示される蛋白質と同じ機能を有する限り、これらの配列において数個のアミノ酸が欠失、置換あるいは付加したアミノ酸配列であってもよい。
2.本発明の蛋白質の機能
本発明の蛋白質は、リガンドや機能が未知の蛋白質である。本発明者らは、糖尿病モデル動物の膵臓ランゲルハンス氏島で該遺伝子の発現が有意に増加しており、その発現量はβ細胞機能不全が改善することに伴って正常化されることを確認した。そして、該遺伝子によってコードされる蛋白質を安定的に発現する組換え膵β細胞由来細胞を作製して、該蛋白質の機能について検討した。
この組換え細胞は、in vitroにおけるインスリン分泌促進剤やグルコースに応答したインスリン分泌に関しては、野性型細胞(非組換え細胞)と違いは認められなかった。しかしながら、内因性膵β細胞が破壊されたマウスにこの組換え細胞を移植すると、野性型細胞を移植した場合に比較して、良好な血糖値の改善効果(正常化)がみられることが確認された。さらに、本発明の蛋白質のシグナル伝達経路を調べた結果、該蛋白質のシグナル伝達にはGq蛋白質が介在していることが推定された。
これらの事実から、本発明の蛋白質は、主としてGq蛋白質と共役することにより、膵β細胞の機能(インスリン分泌作用等)に対して促進的にはたらくものと考えられた。
3. 本発明の遺伝子または本発明の蛋白質を利用した2型糖尿病治療薬の評価方法。
本発明にかかる蛋白質は膵β細胞の機能(インスリン分泌、血糖値低下等)に対して促進的に作用する。したがって、該蛋白質の機能に対して促進的効果を有する物質(例えば、該蛋白質のアゴニスト)は、2型糖尿病治療薬候補として利用できる。そのような物質は、この蛋白質のリガンドが未知であっても、該蛋白質を介した応答によってスクリーニングすることができる。
すなわち、本発明は、本発明の蛋白質に対する被験物質の作用に基づいて、該被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する方法を提供する。
本発明の方法は、1つの被験物質について、その存在下および非存在下における、本発明の蛋白質の機能を比較して、評価するものであってもよいし、2つ以上の被験物質(一方がコントロールとなる)について同様な比較評価を行うものであってもよい。あるいは、本発明の蛋白質の機能に対する作用と2型糖尿病治療薬としての効果との相関関係が経験的に確立されれば、被験物質の効果を比較対照なしに絶対評価してもよい。
本発明の方法は、動物を用いたin vivo系であっても、培養細胞を用いたin vitro系であってもよい。本発明の遺伝子は糖尿病モデルマウスの膵β細胞で高発現しているが、該遺伝子によってコードされる蛋白質の機能(活性)を指標として被験物質を評価する場合には、本発明の蛋白質が安定的に高発現している細胞や動物を用いることが好ましい。あるいは、本発明の蛋白質はG蛋白質(Gq)と共役していると考えられるため、本発明の蛋白質とGqとの融合蛋白質を一過性に発現する細胞を用いて評価してもよい。そのような細胞については、「6.本発明の蛋白質の安定発現細胞」および「7.本発明の蛋白質とGqとの融合蛋白質を発現する細胞」で詳述する。
3.1 インスリン分泌を指標としたin vitro評価系
本発明の蛋白質は、インスリン分泌に対して促進的に作用する。したがって、インスリン分泌量を指標として被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価することができる。評価には、本発明の蛋白質が安定的に高発現している細胞、あるいはそのような細胞を有するランゲルハンス氏島を用いることが望ましい。
例えば、培養細胞を用いた前記評価系は、下記の工程を含む。
1)配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質を安定的に発現する細胞、あるいは該細胞を有するランゲルハンス氏島を被検物質の添加または非添加条件下で培養する;
2)上記細胞からのインスリン分泌量を検出する;
3)被検物質の添加および非添加条件下における、上記インスリン分泌量の相違に基づき、該被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する。
3.2 細胞内cAMP濃度および/またはCa2+濃度を指標としたin vitro評価系
本発明の蛋白質の活性化は細胞内cAMP濃度および/またはCa2+濃度を変化させ、インスリン分泌促進等を起こすと考えられる。したがって、細胞内cAMP濃度および/またはCa2+濃度を指標として被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価することができる評価には、本発明の蛋白質を安定的に高発現している細胞を用いてもよいし、本発明の蛋白質とGqとの融合蛋白質を一過性に発現する細胞を用いてもよい。
なお、細胞内cAMP濃度は、例えば、抗cAMP抗体を用いた競合的ELISA等により測定することができる。そのような方法は当該技術分野で周知であり、そのためのキット(HitHunterTM EFC cAMP Assay(Applied Biosystems)等)も市販されている。
また、細胞内Ca2+濃度変化の測定は、例えばFLIPR(Fluorometric Imaging Plate Reader、Molecular Device)を利用して行うことができる。FLIPRは細胞内Ca2+濃度の変化を96穴または384穴プレート上でハイスループットに測定可能な装置である。蛍光試薬(Fluo3)を取り込ませた細胞にリガンド刺激した際に上昇する蛍光強度を測定することによって、その物質が細胞内Ca2+濃度に及ぼす影響を調べることができる。この技術は、オーファン受容体のリガンドスクリーニングや新規アゴニスト、アンタゴニストの探索に汎用されている技術である。
本発明の蛋白質は特定のリガンドが未知のオーファン受容体である。もし、該蛋白質のリガンドが見つかれば、該リガンドを用いたリガンド結合アッセイにより、本発明の蛋白質に対するアゴニスト作用を評価することもできる。
培養細胞を用いた前記評価系は、例えば下記の工程を含む。
1)配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質を安定的に発現する細胞を被検物質の添加または非添加条件下で培養する;
2)上記細胞内におけるcAMP濃度および/またはCa2+濃度を測定する;
3)被検物質の添加および非添加条件下における、上記cAMP濃度および/またはCa2+濃度の相違に基づき、該被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する。
3.3 血中インスリン値や血糖値を指標としたin vivo 評価系
動物を用いて、本発明の蛋白質の活性化による血中インスリン値の上昇や血糖値の低下を測定することにより、被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価することができる。
そのような動物としては、例えば、本発明の蛋白質の安定発現細胞株を移植したSTZマウスや本発明の蛋白質を安定的に発現する膵β細胞を有するトランスジェニックマウス等を挙げることができる。被験物質の本発明の蛋白質に対する作用によって、β細胞機能不全が改善されインスリン分泌や血糖値の正常化が見られれば、該被験物質は2型糖尿病治療薬として有用と判定することができる。
動物を用いた前記評価系は、例えば下記の工程を含む。
1)配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質を安定的に発現する膵β細胞を有する動物を被検物質の投与または非投与条件下で飼育する;
2)上記動物の血中インスリン値および/または血糖値を測定する;
3)被験物質の投与および非投与条件下における、上記血中インスリン値および/または血糖値の相違に基づき、該被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する。
3.4 本発明の遺伝子の発現を指標としたin vivo評価系
動物を用いたin vivoにおける評価系は、例えば下記の工程を含む。
1)動物を被験物質の投与または非投与条件下で飼育する;
2)上記動物のランゲルハンス氏島における、配列番号1または9に示される塩基配列で特定される遺伝子の発現量を検出する;
3)被験物質の投与および非投与条件下における、上記発現量の相違に基づき、該被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する。
前記方法で用いられる「動物」は特に限定されないが、2型糖尿病モデル動物が好ましい。そのような動物は市販のものであっても、公知の方法にしたがって作製されたものであってもよい。市販の2型糖尿病モデル動物としては、例えば、KKマウス(例えば、KK/Taマウス、KK/Snkマウス等)、KK-Ayマウス(例えば、KK-Ay/Taマウス等)、C57BL/KsJ db/dbマウス、C57BL/6J db/dbマウス、ob/obマウス、高脂肪食負荷マウス等の2型糖尿病モデルマウス、およびGKラット、高脂肪食負荷ラット等の2型糖尿病モデルラット等を挙げることができる。これらのマウスやラットは、例えば、日本クレア株式会社より購入することができる。
前記動物は、被験物質の投与または非投与条件下で適当な期間飼育を行う。動物への被験物質の投与量は特に限定されず、被験物質の性状や動物の体重に合わせて、適宜設定する。また、動物への被験物質の投与方法や投与期間も特に限定されず、被験物質の性状に合わせて、適宜設定する。
次いで、前記動物から常法にしたがってランゲルハンス氏島を単離し、本発明の遺伝子(mRNA)の発現量を検出する。なお、遺伝子の検出方法については、「4.遺伝子の検出方法」で詳述する。
評価は、被験物質の投与および非投与条件下における、本発明の遺伝子の発現量の相違に基づいて行う。具体的には、被験物質の投与条件下で非投与条件下よりも本発明の遺伝子の発現量が有意に変動している場合、該被験物質は2型糖尿病治療薬として有用であると評価できる。ここで、「有意に変動している」とは、例えば、被験物質の投与および非投与条件下での本発明の遺伝子の発現量に統計的有意差(p<0.05)があることを意味する。
3.5 本発明の遺伝子の発現を指標としたin vitro評価系
培養細胞を用いたin vitroにおける評価系は、例えば以下の工程を含む。
1)膵β細胞由来細胞を被験物質の添加または非添加条件下で培養する;
2)上記細胞中における、配列番号1または9に示される塩基配列で特定される遺伝子の発現量を検出する;
3)被験物質の添加または非添加条件下における、上記発現量の相違に基づき、該被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する。
上記方法で用いられる細胞は、本発明の遺伝子を発現している膵β細胞由来培養細胞であれば特に限定されないが、ヒト、マウス、ラットまたはハムスター由来の細胞が好ましく、ヒトまたはマウス由来の細胞がより好ましい。そのような細胞としては、例えばMIN6細胞、HIT細胞、INS-1細胞等を挙げることができる。特に、本発明の遺伝子を高発現している細胞が好ましく、そのような細胞は、本発明の遺伝子をそのプロモーター領域とともに導入した組換え細胞など、人為的に作製された細胞であってもよい。
細胞は、被検物質の添加または非添加条件下で培養する。培養方法は特に限定されず、当該細胞に適した培養方法を適宜選択すればよい。培養細胞への被検物質の添加(投与)方法や添加量も特に限定されず、例えば、被検物質を培地に添加して細胞を一定期間培養すればよい。被検物質存在下での培養期間も適宜設定すればよいが、好ましくは30分〜24時間である。
次いで、前記細胞より全RNAを抽出し、該細胞における本発明の遺伝子(mRNA)の発現量を検出する。なお、遺伝子の検出方法については、「4.遺伝子の検出方法」で詳述する。
評価は、被験物質の添加および非添加条件下における、本発明の遺伝子の発現量の相違に基づいて行う。具体的には、被験物質の添加条件下で非添加条件下よりも本発明の遺伝子の発現量が有意に変動している場合、該被験物質は2型糖尿病治療薬として有用であると評価できる。ここで、「有意に変動している」とは、例えば、被験物質の添加条件下で非添加条件下での本発明の遺伝子の発現量に統計的有意差(p<0.05)があることを意味する。
3.6 本発明の蛋白質の発現を指標としたin vivo評価系
動物を用いたin vivoにおける評価系は、例えば以下の工程を含む。
1)動物を被験物質の投与または非投与条件下で飼育する;
2)上記動物の膵β細胞における、配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質の発現量を、該蛋白質に特異的に結合する抗体を用いて検出する;
3)被験物質の投与および非投与条件下における、上記蛋白質の発現量の相違に基づき、該被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する。
動物の選択や飼育は、3.5に準じて行う。次いで、前記動物から常法にしたがって膵β細胞を単離し、該細胞中における本発明の蛋白質の発現量を、該蛋白質に特異的に結合する抗体を用いて免疫学的に定量する。なお、蛋白質の検出については、「5.抗体を用いた蛋白質の検出方法」で詳述する。
評価は、被験物質の投与および非投与条件下における、本発明の蛋白質の発現量の相違に基づいて行う。具体的には、被験物質の投与条件下で非投与条件下よりも本発明の蛋白質の発現量が有意に変動している場合、該被験物質は2型糖尿病治療薬として有用であると評価できる。ここで、「有意に変動している」とは、例えば、被験物質の投与および非投与条件下での本発明の遺伝子の発現量に統計的有意差(p<0.05)があることを意味する。
3.7 本発明の蛋白質の発現を指標としたin vitro評価系
培養細胞を用いたin vitroにおける評価系は、例えば以下の工程を含む。
1)膵β細胞由来細胞を被験物質の添加または非添加条件下で培養する;
2)上記細胞中における、配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質の発現量を、該蛋白質に特異的に結合する抗体を用いて検出する;
3)被験物質の添加および非添加条件下における、上記蛋白質の発現量の相違に基づき、該被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する。
細胞の選択や培養は、3.6に準じて行う。次いで、前記細胞中の本発明の蛋白質の発現量を、該蛋白質に特異的に結合する抗体を用いて免疫学的に定量する。なお、蛋白質の検出については、「5.抗体を用いた蛋白質の検出方法」で詳述する。
評価は、被験物質の添加および非添加条件下における、本発明の蛋白質の発現量の相違に基づいて行う。具体的には、被験物質の添加条件下で非添加条件下よりも本発明の蛋白質の発現量が有意に変動している場合、該被験物質は2型糖尿病治療薬として有用であると評価できる。ここで、「有意に変動している」とは、例えば、被験物質の投与および非投与条件下での本発明の遺伝子の発現量に統計的有意差(p<0.05)があることを意味する。
4. 遺伝子の検出方法
本発明の評価方法において、標的遺伝子(本発明の遺伝子)の検出は、単離された細胞から全RNAを抽出し、該全RNA中における標的遺伝子(mRNA)の発現量を検出することにより実施できる。
(1)全RNAの抽出
全RNAの抽出は、公知の方法にしたがい、単離された血液または細胞よりRNA抽出用溶媒を用いて抽出する。該抽出溶媒としては、例えば、フェノール等のリボヌクレアーゼを不活性化する作用を有する成分を含むもの(例えば、TRIzol試薬:ギブコ・ビーアールエル社製等)が好ましい。RNAの抽出方法は特に限定されず、例えば、チオシアン酸グアニジン・塩化セシウム超遠心法、チオシアン酸グアニジン・ホットフェノール法、グアニジン塩酸法、酸性チオシアン酸グアニジン・フェノール・クロロホルム法(Chomczynski, P. and Sacchi, N., (1987) Anal. Biochem., 162, 156-159)等を採用することができる。なかでも、酸性チオシアン酸グアニジン・フェノール・クロロホルム法が好適である。
抽出された全RNAは、必要に応じてさらにmRNAのみに精製して用いてもよい。精製方法は特に限定されないが、真核細胞の細胞質に存在するmRNAの多くは、その3’末端にポリ(A)配列を持つため、この特徴を利用して、例えば、以下のように実施することができる。まず、抽出した全RNAにビオチン化オリゴ(dT)プローブを加えてポリ(A)+RNAを吸着させる。次に、ストレプトアビジンを固定化した常磁性粒子担体を加え、ビオチン/ストレプトアビジン間の結合を利用して、ポリ(A)+RNAを捕捉させる。洗浄操作の後、最後にオリゴ(dT)プローブからポリ(A)+RNAを溶出する。この方法のほか、オリゴ(dT)セルロースカラムを用いてポリ(A)+RNAを吸着させ、これを溶出して精製する方法も採用してもよい。溶出されたポリ(A)+RNAは、さらに、ショ糖密度勾配遠心法等により分画してもよい。
(2)遺伝子の検出
次に、被験物質の投与または非投与条件下における、全RNA中の本発明の遺伝子の発現量を検出する。遺伝子の発現量は、得られた全RNAよりcRNAまたはcDNAを調製し、これを適当な標識化合物でラベルすることにより、そのシグナル強度として検出することができる。具体的には、例えば以下のような検出方法が挙げられる。
i)固相化試料を用いた解析方法
公知の遺伝子を固定した固相化試料に、被験物質の投与または非投与条件下における標識したcDNAまたはcRNA(以下、「標識プローブ」という。)を、同じ条件で別個に、あるいは混合して同時にハイブリダイズさせる(Brown, P. O. et al. (1999) Nature genet. 21, suppliment、33-37)。前記標識プローブは、標的遺伝子のmRNAクローンでも、発現している全てのmRNAを標識したものでもよい。プローブ作製のための出発材料としては、精製していないmRNAを用いてもよいが、前述の方法で精製したポリ(A)+RNAを用いることがより好ましい。固相化試料としては、例えば遺伝子チップ、アレイ、メンブレンフィルター等が挙げられる。
前記遺伝子チップは、検出対象である本発明の遺伝子が固相化されているものであれば、市販のものであっても、公知の方法(Lipshutz, R. J. et al. (1999) Nature genet. 21, suppliment、20-24)に基づき作製されたものであってもよい。例えば、マウスの遺伝子が固定化された市販の遺伝子チップとしては、アフィメトリクス社製GeneChipTMマウスMG-U74(U74A,U74B,U74C,U74v2)等を挙げることができる。遺伝子チップによる検出と解析は、常法にしたがって実施することができ、例えば、アフィメトリクス社製GeneChipTMであれば、製品に添付されたプロトコールにしたがい、ビオチン標識したcRNAプローブを調製し、ハイブリダイゼーションを行い、アビジンによる発光を検出・解析すればよい。
前記アレイまたはメンブレンフィルターは、検出対象である標的遺伝子が固相化されているものであれば、市販のもの(例えば、インテリジーン:宝酒造社製、アトラスシステム:クローンテック社製等)であっても、公知の方法に基づいて作製されたものであってもよい。固相化する遺伝子は、GenBank等の配列情報をもとに作製されたプライマーにより逆転写酵素反応やPCRを行って作製した、クローン化cDNAまたはRT-PCR産物を用いる。
アレイやメンブレンフィルターによる検出と解析は常法にしたがって実施することができる。例えば、市販のアレイであれば、製品添付のプロトコールにしたがい、Cy3、Cy5等で標識したcDNAを作製し、ハイブリダイゼーションおよび洗浄を行い、蛍光シグナル検出機(例えば、GMS418アレイスキャナー:宝酒造社製等)を用いて検出・解析を行う。また、市販のフィルター製マイクロアレイ:アトラスシステム(クローンテック社製)の場合は、逆転写酵素反応でポリ(A)+RNAからcDNAを作製する際に、放射性同位元素(例えば、32P、33P)で標識されたd-CTPなどを加えることにより標識プローブを調製し、ハイブリダイゼーションおよび洗浄を行った後、解析装置(例えば、アトラスイメージ:クローンテック社製等)を用いて検出・解析を行う。
いずれの固相化試料を用いる場合も、比較する試料(被験物質の投与および非投与条件下)の両プローブをそれぞれハイブリダイズさせ、その遺伝子発現量の相違を検出する。このとき、各プローブのハイブリダイゼーション条件は同じにする。前述したように、蛍光標識プローブの場合は、それぞれのプローブを異なる蛍光色素で標識しておけば一つの固相化試料に両プローブの混合物を一度にハイブリダイズさせて蛍光強度を読み取ることで、遺伝子発現量の相違を検出することができる(Brown, P. O. et al. (1999) Nature genet. 21, suppliment、33-37)。
ii)RT-PCR法(リアルタイムPCR法)
RT-PCR法、およびその1つであるリアルタイムPCR(TaqMan PCR)法は、微量なDNAを高感度かつ定量的に検出できるという点で本発明の評価方法に適している。
リアルタイムPCR(TaqMan PCR)法では、5’端を蛍光色素(レポーター)で、3’端を蛍光色素(クエンチャー)で標識され、目的遺伝子の特定領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブが使用される。該プローブは、通常の状態ではクエンチャーによってレポーターの蛍光が抑制されている。この蛍光プローブを目的遺伝子に完全にハイブリダイズさせた状態で、その外側からTaq DNAポリメラーゼを用いてPCRを行う。Taq DNAポリメラーゼによる伸長反応が進むと、そのエキソヌクレアーゼ活性により蛍光プローブが5’端から加水分解され、レポーター色素が遊離し、蛍光を発する。リアルタイムPCR法は、この蛍光強度をリアルタイムでモニタリングすることにより、鋳型DNAの初期量を正確に定量することができる。
iii)その他の解析方法
上記以外に、遺伝子発現量を解析する方法としては、例えば、サブトラクション法(Sive, H. L. and John, T. St. (1988) Nucleic Acids Research 16, 10937、Wang, Z., and Brown, D. D. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 88, 11505-11509)、ディファレンシャル・ディスプレイ法(Liang, P., and Pardee, A. B. (1992) Science 257, 967-971、Liang, P., Averboukh, L.,Keyomarsi, K., Sager, R., and Pardee, A. B. (1992) Cancer Research 52, 6966-6968)、ディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法(John, T. St., and Davis, R. W. Cell (1979) 16, 443-452)、また、適当なプローブを用いたクロスハイブリダイゼーション法("Molecular Cloning, A Laboratory Manual" Maniatis, T., Fritsch, E.F., Sambrook, J. (1982) Cold Spring Harbor Laboratory Press)等を挙げることができる。上記方法は、複数の標的遺伝子の発現プロファイルを総体的に評価検討する場合に有用である。
a)サブトラクションクローニング法:
サブトラクションクローニング法とは、特定の細胞に特異的に発現する遺伝子のcDNAを取得し、該cDNAをプローブとしてcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより遺伝子をクローニングする方法である。サブトラクションの方法としては、全RNAから一本鎖cDNAを作製し、これと別の細胞から得られた全RNAをハイブリダイズさせた後、ハイドロキシアパタイトカラムでハイブリダイズしなかった一本鎖DNAを単離し、このcDNAからcDNAライブラリーを作製する方法(バイオマニュアルシリーズ3、遺伝子クローニング実験法、羊土社 (1993)、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー)や、cDNAライブラリーをまず作製し、このライブラリーからヘルパーファージ等を用いて一本鎖DNAを調製し、この一本鎖DNAと別の細胞から得られた全RNAにビオチン標識したものとをハイブリダイズさせた後、アビジンを利用してハイブリダイズしなかった一本鎖DNAを単離し、DNAポリメラーゼによって二本鎖に戻してcDNAライブラリーを作製する方法(Tanaka, H., Yoshimura, Y., Nishina, Y., Nozaki, M., Nojima, H., and Nishimune, Y. (1994) FEBS Lett. 355, 4-10)等が挙げられる。
具体的には、まず被験物質の投与または非投与条件下の検体それぞれについてmRNAまたは全RNAを精製し、投与条件下の検体から精製した全RNAを鋳型として、逆転写酵素でcDNAを合成する。合成時に[α-32P]dNTPを加えることでcDNAを標識することもできる。標識されたcDNAと鋳型となった全RNAは安定な二本鎖DNA-RNAハイブリッドを形成しているが、アルカリ存在下で高温処理することによりRNAのみを分解し、一本鎖cDNAを生成させる。この一本鎖cDNAと、非投与条件下の検体から抽出したRNAとを混合し、適当な条件下で静置すると、ヌクレオチド配列の相補性から安定な二本鎖DNA-RNAハイブリッドが形成される。すなわち、非投与条件下でも発現している全RNAを鋳型とするcDNAはハイブリッドを形成するが、投与条件下でのみ特異的に発現しているRNAを鋳型としたcDNAは一本鎖のままである。次いで、ハイドロキシアパタイトカラムで二本鎖DNA-RNAハイブリッドと一本鎖cDNAとを分離し、一本鎖cDNAのみを精製する。このステップを繰り返すことで目的とした組織に特異的なcDNAを濃縮することができる。濃縮された特異的cDNAは放射性同位元素等で標識されている場合は、cDNAライブラリーをスクリーニングするプローブとして使用することができる。なお、この操作は市販のキット(例えば、PCRセレクトcDNAサブトラクションキット:クローンテック社製等)を利用して行うこともできる。
b)ディファレンシャル・ディスプレイ法:
ディファレンシャル・ディスプレイ法は、Liangらの方法(Science (1992) 257, 967-971)に準じ、例えば、以下のようにして実施することができる。まず、比較する2つの試料(本発明の場合は被験物質の投与および非投与条件下の検体)からmRNAまたは全RNAを抽出し、逆転写酵素を用いてこれを一本鎖cDNAに変換する。次いで、得られた一本鎖cDNAを鋳型として、適当なプライマーを用いてPCRを行う。プライマーとしては、例えば、ランダムプライマー(任意の配列からなる約10〜12merのプライマー)を用いることができる。あるいは、アンカードプライマー(anchored primer)およびアービトラリープライマー(arbitrary primer)各一種ずつを組み合わせて用いてもよい。アンカードプライマーとしては、オリゴd(t)nVX[n=11〜12;V=グアニン、アデニンまたはシトシン;X=グアニン、アデニン、チミンまたはシトシン]からなるプライマーを用いることができる。また、アービトラリープライマーとしては、任意の配列からなる約10merのランダムプライマーを用いることができる。このようなPCRを、種々のプライマーを組み合わせて行うことで、広範囲の遺伝子群をスクリーニングすることが可能となる。
続いて、得られたPCR産物をゲル電気泳動し、ゲル上に展開(ディスプレイ)される全RNAの発現パターン(フィンガープリント)を比較解析することにより、いずれかの検体で特異的に発現している遺伝子を単離することができる。なお、この方法は、市販されているキット(例えば、RNAイメージ・キット:ジェンハンター社製等)を用いて行うこともできる。
c)ディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法:
ディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法は、目的の組織の全RNAから作製したcDNAライブラリーを、目的組織および対照組織の全RNAから合成した32P標識cDNAプローブでスクリーニングし、目的組織のプローブとのみハイブリダイズするクローンを選択する方法である。例えば、まず被験物質の非投与条件下の検体から精製した全RNAより、常法にしたがってcDNAライブラリーを作製し、そのライブラリーから2組のレプリカフィルターを作製する。次に、該非投与条件下の検体から精製した全RNAを鋳型として、逆転写酵素でcDNAを合成する。cDNAは、合成時に[α-32P]dNTPを加えることで標識する。標識されたcDNAと鋳型となった全RNAは安定な二本鎖DNA-RNAハイブリッドを形成しているが、アルカリ存在下で高温処理することにより全RNAのみを分解し、一本鎖cDNAを精製することができる。同様に、被験物質の投与条件下の検体から精製した全RNAを鋳型として、32Pで標識された一本鎖cDNAを作製する。これら両方の標識cDNAをそれぞれプローブとして、非投与条件下の検体から作製したフィルターとハイブリダイゼーションを行う。最後に、X線フィルムのオートラジオグラフィー像を比較し、投与または非投与条件下のcDNAプローブの一方にのみハイブリダイズするクローンを選択する。かくして、被験物質の投与によって特異的に発現量が変化する遺伝子をクローニングすることができる。
d)クロスハイブリダイゼーション法:
クロスハイブリダイゼーション法は、被験物質の投与または非投与条件下のいずれかの検体に由来するcDNAライブラリーに対して、適当なDNAをプローブとして、ストリンジェンシーの低い条件でハイブリダイゼーションを行い、一方にのみ発現しているクローンを選択する方法である。すなわち、前記ハイブリダイゼーションにより陽性クローンを得て、この陽性クローンをプローブとして、それぞれの検体に由来する全RNAに対してノーザンハイブリダイゼーションを行い、一方にのみ発現しているクローンを選択する。
こうして得られたcDNAをプローブとして、投与または非投与条件下の検体の全RNAに対してノーザンブロッティングを行うことにより、選択した遺伝子が投与条件下で特異的に発現していることを確認できる。
5. 抗体を用いた蛋白質の検出方法
本発明の評価方法において、標的蛋白質(本発明の蛋白質)の検出は、該蛋白質に特異的に結合する抗体を用いて免疫学的に行う。
(1)試料の調製
細胞(細胞抽出液として使用する)は、必要に応じて高速遠心を行うことにより不溶性の物質を除去した後、以下のようにして、検出用試料として調製する。
固相酵素免疫定量法(ELISA法)や放射性同位元素免疫定量法(RIA法)用の試料は、回収した血清をそのまま使用するか、緩衝液で適宜希釈したものを用いる。ウエスタンブロット法用(電気泳動用)試料は、細胞抽出液をそのまま使用するか、緩衝液で適宜希釈して、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動用の2−メルカトルエタノールを含むサンプル緩衝液(シグマ社製等)と混合したものを用いる。ドット/スロットブロット法用試料は、例えば、回収した細胞抽出液そのもの、または緩衝液で適宜希釈したものを、ブロッティング装置を使用して、直接メンブレンへ吸着させたものを用いる。
(2)試料の固相化
抗体を用いた蛋白質の検出にあたっては、まず、検出すべき蛋白質が含まれる試料中のポリペプチドをメンブレンあるいは96穴プレートのウェル内底面等に固相化する。
ウエスタンブロット法、およびドット/スロットブロット法では、メンブレンに試料を固相化する。固相化は、試料を一旦ポリアクリルアミドゲル電気泳動した後、展開されたポリペプチドをメンブレンに転写する方法(ウエスタンブロット法)と、直接メンブレンに試料またはその希釈液を染み込ませる方法(ドット/スロットブロット法)を挙げることができる。用いられるメンブレンとしては、ニトロセルロースメンブレン(例えば、バイオラッド社製等)、ナイロンメンブレン(例えば、ハイボンド-ECL(アマシャム・ファルマシア社製)等)、コットンメンブレン(例えば、ブロットアブソーベントフィルター(バイオラッド社製)等)またはポリビニリデン・ジフルオリド(PVDF)メンブレン(例えば、バイオラッド社製等)等を挙げることができる。また、ブロッティング方法としては、ウエット式ブロッティング法(CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY volume 2 ed by J. E. Coligan, A. M. Kruisbeek, D. H. Margulies, E. M. Shevach, W. Strober)、セミドライ式ブロッティング法(上記CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY volume 2 参照)等を挙げることができる。
一方、ELISA法やRIA法では、96穴プレートに試料を固相化する。固相化は、例えば、前記96穴プレート(例えば、イムノプレート・マキシソープ(ヌンク社製)等)に試料またはその希釈液(例えば、0.05% アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水(以下「PBS」という)で希釈したもの)を入れて4℃〜室温で一晩、または37℃で1〜3時間静置して、ウエル底面にポリペプチドを吸着させればよい。
(3)抗体の調製
本工程で用いられる抗体は、常法により(例えば、新生化学実験講座1、タンパク質1、p.389-397、1992)、検出すべき蛋白質、あるいはそのアミノ酸配列から選択される任意のポリペプチドを用いて動物を免疫し、該動物生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein, Nature 256, 495-497, 1975、Kennet, R. ed., Monoclonal Antibody p.365-367, 1980, Prenum Press, N.Y.)にしたがって、目的とする抗体を産生する抗体産生細胞をミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを樹立し、このハイブリドーマから得られるモノクローナル抗体を用いてもよい。
抗体作製用の抗原としては、またはその少なくとも6個の連続した部分アミノ酸配列からなるポリペプチド、あるいはこれらに任意のアミノ酸配列や担体を付加した誘導体を用いることができる。特に、検出すべき蛋白質のN末端に、キーホールリンペットヘモシアニンを担体として結合させたものが好ましい。
前記抗原ポリペプチドは、遺伝子操作を用いて、適当な宿主細胞に産生させてもよい。例えば、本発明の標的遺伝子の発現可能なベクターを作製し、これを宿主細胞に導入して該遺伝子を発現させればよい。
前記宿主細胞としては、原核細胞であれば、例えば、大腸菌(Escherichia coli)や枯草菌(Bacillus subtilis)等が挙げられる。目的の遺伝子をこれらの宿主細胞内で形質転換させるには、宿主と適合し得る種由来のレプリコンすなわち複製起点と、調節配列を含んでいるプラスミドベクターで宿主細胞を形質転換させる。該ベクターとしては、形質転換細胞に表現形質(表現型)の選択性を付与しうる配列を有するものが好ましい。
例えば、大腸菌であれば、K12株等がよく用いられ、ベクターとしては、一般にpBR322やpUC系のプラスミドが用いられるが、これらに限定されず、公知の各種菌株やベクターを使用できる。また、大腸菌で用いられるプロモーターとしては、例えば、トリプトファン(trp)プロモーター、ラクトース(lac)プロモーター、トリプトファン・ラクトース(tac)プロモーター、リポプロテイン(lpp)プロモーター、ポリペプチド鎖伸張因子Tu(tufB)プロモーター等を挙げることができ、いずれも好適に用いることができる。
また、枯草菌であれば、207-25株が好ましく、ベクターとしてはpTUB228(Ohmura, K. et al. (1984) J. Biochem. 95, 87-93)等が用いられるが、これに限定されるものではない。なお、ベクターに枯草菌のα−アミラーゼのシグナルペプチド配列をコードするDNA配列を連結することにより、菌体外での分泌発現も可能となる。
真核細胞の宿主細胞としては、脊椎動物、昆虫、酵母等の細胞が挙げられる。脊椎動物細胞としては、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman, Y. (1981) Cell 23, 175-182、ATCC CRL-1650)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL-61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub, G. and Chasin, L. A. (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77, 4126-4220)等がよく用いられているが、これらに限定されない。
脊椎動物細胞の発現ベクターとしては、通常発現させようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列等を有するものを使用できる。さらに、これは必要により複製起点を有してもよい。該発現ベクターの例としては、サイトメガロウイルス初期プロモーターを有するPCR3.1(Invitrogen社製)、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr(Subramani, S. et al. (1981) Mol. Cell. Biol. 1, 854-864)等が挙げられるが、これらに限定されない。
宿主細胞として、COS細胞を用いる場合を例に挙げると、発現ベクターとしては、SV40複製起点を有し、COS細胞において自立増殖が可能であり、さらに、転写プロモーター、転写終結シグナル、およびRNAスプライス部位を備えたものを好適に用いることができる。該発現ベクターは、ジエチルアミノエチル(DEAE)−デキストラン法(Luthman, H. and Magnusson, G. (1983) Nucleic Acids Res, 11, 1295-1308)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham, F. L. and van der Eb, A. J. (1973) Virology 52, 456-457)、および電気パルス穿孔法(Neumann, E. et al. (1982) EMBO J. 1, 841-845)等によりCOS細胞に取り込ませることができ、かくして所望の形質転換細胞を得ることができる。
また、宿主細胞としてCHO細胞や293細胞を用いる場合には、発現ベクターと共に、抗生物質G418耐性マーカーとして機能するneo遺伝子を発現し得るベクター、例えば、pRSVneo(Sambrook, J. et al. (1989) : "Molecular Cloning A Laboratory Manual" Cold Spring Harbor Laboratory, NY)やpSV2neo(Southern, P. J. and Berg, P. (1982) J. Mol. Appl. Genet. 1, 327-341)等をコ・トランスフェクトし、G418耐性のコロニーを選択することにより、目的のポリペプチドを安定に産生する形質転換細胞を得ることができる。
昆虫細胞を宿主細胞として用いる場合には、鱗翅類ヤガ科のSpodoptera frugiperdaの卵巣細胞由来株化細胞(Sf-9またはSf-21)やTrichoplusia niの卵細胞由来High Five細胞(Wickham, T. J. et al, (1992) Biotechnol. Prog.i: 391-396)等が宿主細胞としてよく用いられ、バキュロウイルストランスファーベクターとしてはオートグラファ核多角体ウイルス(AcNPV)のポリヘドリン蛋白質のプロモーターを利用したpVL1392/1393がよく用いられる(Kidd,i. M. and V.C. Emery (1993) The use of baculoviruses as expression vectors. Applied Biochemistry and Biotechnology 420, 137-159)。この他にも、バキュロウイルスのP10や同塩基性蛋白質のプロモーターを利用したベクターも使用できる。さらに、AcNPVのエンベロープ表面蛋白質GP67の分泌シグナル配列を目的蛋白質のN末端側に繋げることにより、組換え蛋白質を分泌蛋白質として発現させることも可能である(Zhe-mei Wang, et al. (1998) Biol. Chem., 379, 167-174)。
真核微生物を宿主細胞とした発現系としては、酵母が一般によく知られており、その中でもサッカロミセス属酵母、例えば、パン酵母Saccharomyces cerevisiaeや石油酵母Pichia pastorisが好ましい。該酵母等の真核微生物の発現ベクターとしては、例えば、アルコール脱水素酵素遺伝子のプロモーター(Bennetzen, J. L. and Hall, B. D. (1982) J. Biol. Chem. 257, 3018-3025)や酸性フォスファターゼ遺伝子のプロモーター(Miyanohara, A. et al. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80, 1-5)等を好ましく利用できる。また、分泌型蛋白質として発現させる場合には、分泌シグナル配列と宿主細胞の持つ内在性プロテアーゼあるいは既知のプロテアーゼの切断部位をN末端側に持つ組換え体として発現させることも可能である。例えば、トリプシン型セリンプロテアーゼのヒトマスト細胞トリプターゼを石油酵母で発現させた系では、N末端側に酵母のαファクターの分泌シグナル配列と石油酵母の持つKEX2プロテアーゼの切断部位をつなぎ発現させることにより、活性型トリプターゼが培地中に分泌されることが知られている(Andrew, L. Niles,et al. (1998) Biotechnol.Appl. Biochem. 28, 125-131)。
上記のようにして得られる形質転換体は、常法にしたがって培養することにより、その細胞内、または細胞外に目的の蛋白質を産生する。該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種の培地を適宜選択できる。例えば、上記COS細胞であれば、RPMI1640培地やダルベッコ変法イーグル培地(以下「DMEM」という)等の培地に、必要に応じウシ胎児血清等の血清成分を添加したものを使用できる。
上記培養により、形質転換体の細胞内または細胞外に産生された組換え蛋白質は、その物理的性質や化学的性質等を利用した公知の分離操作法により、分離・精製することができる。そのような方法としては、例えば、蛋白質沈殿剤による処理、限外濾過、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の各種液体クロマトグラフィー、透析法、を単独あるいは組合せて利用できる。また、発現させる組換え蛋白質に6残基からなるヒスチジンを繋げれば、ニッケルアフィニティーカラムで効率的に精製することもできる。目的とする蛋白質は、以上に記載した方法を適宜組み合わせることにより、容易に高収率、高純度で製造できる。
(4)検出
得られた抗体は、単独、あるいは該抗体を一次抗体とし、これを特異的に認識する(抗体を作製した動物由来の抗体を認識する)標識二次抗体と組み合わせて検出に用いられる。
前記標識の種類として好ましいものは、酵素(アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ)またはビオチン(ただし二次抗体のビオチンにさらに酵素標識ストレプトアビジンを結合させる操作が加わる)であるが、これらに限定されない。標識二次抗体(または標識ストレプトアビジン)としては、予め標識された抗体(またはストレプトアビジン)が、各種市販されている。なお、RIAの場合は125I等の放射性同位元素で標識された抗体を用い、測定は液体シンチレーションカウンター等を用いて行う。
検出すべき蛋白質の発現量は、これら標識された酵素等の活性を検出することにより測定される。なお、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼで標識する場合、これら酵素の触媒により発色する基質や発光する基質が市販されている。
発色する基質を用いた場合、ウエスタンブロット法やドット/スロットブロット法を利用すれば目視で検出することができる。ELISA法では、市販のマイクロプレートリーダーを用いて各ウェルの吸光度(測定波長は基質により異なる)を測定し、定量することが好ましい。また上述の抗体作製に使用した抗原の希釈系列を調製し、これを標準抗原試料として他の試料と同時に検出操作を行い、標準抗原濃度と測定値をプロットした標準曲線を作成することにより、他の試料中の抗原濃度を定量することも可能である。
一方、発光する基質を使用した場合は、ウエスタンブロット法やドット/スロットブロット法においては、X線フィルムまたはイメージングプレートを用いたオートラジオグラフィーや、インスタントカメラを用いた写真撮影により検出することができる。また、デンシトメトリーやモレキュラー・イメージャーFxシステム(バイオラッド社製)等を利用した定量も可能である。さらに、ELISA法で発光基質を用いる場合は、発光マイクロプレートリーダー(例えば、バイオラッド社製等)を用いて酵素活性を測定する。
(5)測定操作
a)ウエスタンブロット、ドットブロットまたはスロットブロットの場合
まず、抗体の非特異的吸着を阻止するため、予めメンブレンをそのような非特異的吸着を阻害する物質(スキムミルク、カゼイン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等)を含む緩衝液中に一定時間浸しておく操作(ブロッキング)を行う。ブロッキング溶液の組成は、例えば、5% スキムミルク、0.05〜0.1% Tween20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはトリス緩衝生理食塩水(TBS)が用いられる。スキムミルクの代わりに、ブロックエース(大日本製薬)、1〜10%のウシ血清アルブミン、0.5〜3%のゼラチンまたは1%のポリビニルピロリドン等を用いてもよい。ブロッキングの時間は、4℃で16〜24時間、または室温で1〜3時間である。
次に、メンブレンを0.05〜0.1% Tween20を含むPBSまたはTBS(以下「洗浄液」という)で洗浄して余分なブロッキング溶液を除去した後、ブロッキング溶液で適宜希釈した溶液中に抗体を一定時間浸して、メンブレン上の抗原に該抗体を結合させる。このときの抗体の希釈倍率は、例えば、前記組換え抗原を段階希釈したものを試料とした予備的なウエスタンブロッティング実験を行って決定することができる。この抗体反応操作は、好ましくは室温で2時間行う。抗体反応操作終了後、メンブレンを洗浄液で洗浄する。ここで、用いた抗体が標識されたものである場合は、ただちに検出操作を行うことができる。未標識の抗体を用いた場合には、引き続き二次抗体反応を行う。標識二次抗体は、例えば、市販のものを使用する場合はブロッキング溶液で2000〜20000倍に希釈して用いる(添付の指示書に好適な希釈倍率が記載されている場合は、その記載にしたがう)。一次抗体を洗浄除去した後のメンブレンを二次抗体溶液に室温で45分〜1時間浸し、洗浄液で洗浄してから、標識方法に合わせた検出操作を行う。洗浄操作は、例えば、まずメンブレンを洗浄液中で15分間振盪してから、洗浄液を新しいものに交換して5分間振盪した後、再度洗浄液を交換して5分間振盪することにより行う。必要に応じてさらに洗浄液を交換して洗浄してもよい。
b)ELISA法/RIA法
まず、試料を固相化させたプレートのウェル内底面への抗体の非特異的吸着を阻止するため、ウエスタンブロットの場合と同様、予めブロッキングを行っておく。ブロッキングの条件については、ウエスタンブロットの項に記載した通りである。
次に、ウェル内を0.05〜0.1% Tween20を含むPBSまたはTBS(以下「洗浄液」という)で洗浄して余分なブロッキング溶液を除去した後、洗浄液で適宜希釈した抗体を分注して一定時間インキュベーションし、抗原に該抗体を結合させる。このときの抗体の希釈倍率は、例えば、上記組換え抗原を段階希釈したものを試料とした予備的なELISA実験を行って決定することができる。この抗体反応操作は、好ましくは室温で1時間程度行う。抗体反応操作終了後、ウェル内を洗浄液で洗浄する。ここで、用いた抗体が標識されたものである場合は、ただちに検出操作を行うことができる。未標識の抗体を用いた場合には、引き続き二次抗体反応を行う。標識二次抗体は、例えば、市販のものを使用する場合は洗浄液で2000〜20000倍に希釈して用いる(添付の指示書に好適な希釈倍率が記載されている場合は、その記載にしたがう)。一次抗体を洗浄除去した後のウェルに二次抗体溶液を分注して室温で1〜3時間インキュベーションし、洗浄液で洗浄してから、標識方法に合わせた検出操作を行う。洗浄操作は、例えば、まずウェル内に洗浄液を分注して5分間振盪してから、洗浄液を新しいものに交換して5分間振盪した後、再度洗浄液を交換して5分間振盪することにより行う。必要に応じてさらに洗浄液を交換して洗浄してもよい。
例えば、本発明において、いわゆるサンドイッチ法のELISAは以下に記載する方法により実施することができる。まず、検出すべき蛋白質の各アミノ酸配列より、親水性に富む領域をそれぞれ2箇所選択する。次に、各領域中のアミノ酸6残基以上からなる部分ペプチドを合成し、該部分ペプチドを抗原とした2種類の抗体を取得する。このうち一方の抗体を標識しておく。標識しなかった方の抗体は、96穴ELISA用プレートのウェル内底面に固相化する。ブロッキングの後、試料液をウェル内に入れて常温で1時間インキュベーションする。ウェル内を洗浄後、標識した方の抗体希釈液を各ウェルに分注してインキュベーションする。再びウェル内を洗浄後、標識方法に合わせた検出操作を行う。
6. 本発明の蛋白質の安定発現細胞
本発明は、2型糖尿病治療薬としての効果を評価するための、本発明の蛋白質を安定的に発現する組換え細胞を提供する。
なお、本発明において「安定的に発現する」とは、本発明の蛋白質に対する被験物質の作用が十分評価できる程度に該蛋白質が恒常的に高レベルで発現していることを意味する。
前記組換え細胞は、常法に従い(例えば、(Molecular Cloning, A Laboratory Manual" Maniatis, T., Fritsch, E.F., Sambrook, J. (1982) Cold Spring Harbor Laboratory Press 参照)、クローニングされた本発明の遺伝子のcDNA(例えば、配列番号1または9)を、適当なベクターを用いて宿主細胞に導入することにより作製される。
宿主細胞は、哺乳動物の遺伝子を発現しうる細胞であれば特に限定されず、脊椎動物、昆虫、酵母等の細胞等を用いることができる。例えば、脊椎動物細胞であれば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman, Y. (1981) Cell 23, 175-182、ATCC CRL-1650)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL-61)のほか、膵β細胞由来の培養細胞株(例えば、MIN6細胞)を好適に用いることができる。但し、インスリン分泌を指標とした評価系では、宿主細胞として哺乳動物の膵β細胞由来細胞を用いる必要がある。昆虫細胞であれば、鱗翅類ヤガ科のSpodoptera frugiperdaの卵巣細胞由来株化細胞(Sf-9またはSf-21)やTrichoplusia niの卵細胞由来High Five細胞(Wickham, T. J. et al, (1992) Biotechnol. Prog.i: 391-396)等を用いることができる。
ベクターは、発現させようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列等を有するものを前記宿主細胞に応じて適宜選択して使用する。例えば、レトロウィルスベクターpLCNX(Clontech, K1060-1)等を好適に用いることができる。その他、組換え細胞の作製方法は、「5.抗体を用いた蛋白質の検出方法」に記載した抗体の作製方法を参照して実施できる。
本発明の組換え細胞の一例としては、例えば、マウス膵β細胞由来培養細胞株MIN6細胞にマウス本発明の遺伝子(配列番号1)を導入した本発明の蛋白質の安定的高発現株を挙げることができる。
7. 本発明の蛋白質とGqとの融合蛋白質を発現する細胞
本発明はまた、本発明の蛋白質とGqとの融合蛋白質を発現する組換え細胞を提供する。
前記組換え細胞は、常法に従い(例えば、(Molecular Cloning, A Laboratory Manual" Maniatis, T., Fritsch, E.F., Sambrook, J. (1982) Cold Spring Harbor Laboratory Press 参照)、PCR等によりクローニングされた本発明の遺伝子のcDNA(例えば、配列番号1または9)の下流にGq遺伝子のcDNA(配列番号8)を連結し、適当なベクターを用いて、宿主細胞に導入することにより、前項と同様にして作製することができる。
このような細胞の一例としては、例えば、本発明の遺伝子(配列番号1または9)にGq遺伝子を連結して導入したMIN6細胞、あるいは、本発明の遺伝子(配列番号1または9)の下流にGq遺伝子のcDNA(配列番号8)を連結して導入した昆虫細胞等を挙げることができる。
8. 本発明の蛋白質を安定的に発現する膵β細胞を有する動物
本発明は、2型糖尿病治療薬としての効果を評価するための動物を提供する。前記動物は、本発明の蛋白質を安定的に発現する膵β細胞を有する動物である。そのような動物の好適な例としては、例えば、内因性膵β細胞を破壊された動物に本発明の遺伝子を導入した膵β細胞由来細胞を移植して得られる動物や、本発明の蛋白質を安定的に発現する膵β細胞を有するトランスジェニック動物を挙げることができる。
用いる動物は非ヒト哺乳動物であれば特に限定されないが、齧歯動物、特にマウスが好ましい。例えば、本発明の動物の好適な例として、内因性膵β細胞を破壊されたSCIDマウスに本発明の遺伝子を導入した膵β細胞由来細胞を移植して得られるマウスを挙げることができる。内因性膵β細胞の破壊は、例えば、マウスにストレプトゾトシンを投与することにより生じさせることができる。本発明の蛋白質を安定的に発現する膵β細胞(例えば、本発明の遺伝子(配列番号1または9)を導入した膵β細胞由来培養細胞(MIN6細胞など))は、既に説明した方法により作製することができる。該細胞は、例えば脾臓に注入するなどしてマウスに導入される。
以下、実施例および参考例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕 C57BL/KsJ db/dbマウスへの薬剤投与および血液生化学値測定
1.投与薬物
インスリン抵抗性改善剤:5−[4−(6−メトキシ−1−メチルベンズイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩(以下、「化合物A」と記載する;化合物Aの製法については、特開平9−295970号公報(米国特許第5886014号明細書、欧州特許出願公開第745600号明細書)、および参考例1参照)
2.動物
糖尿病モデルマウスとして雄性C57BL/KsJ db/dbマウス、および正常マウスとして雄性C57BL/KsJ db/+mマウス(ともに、日本クレア社)を使用した。マウスは5週齢で購入後、約1週間馴化した後、6週齢で実験に供した。飲水および摂餌(F2、船橋農場)は、馴化・投与期間中ともに自由摂取とした。飼育および投与期間中の実験は、実験動物管理室により管理されている実験動物エリア内で行った。
3.試験方法
a)処置および実験群
実験前にマウスの体重測定、および尾静脈から採血を行い血糖値を測定した。マウスは、体重および血糖値が群毎にほぼ等しくなるように群分けした。実験群は、(1)db/+mマウス対照群、(2)db/dbマウス対照群、(3)db/dbマウス 化合物A(0.01%)投与群とし、各群7〜10匹ずつを実験に用いた。
b)投与方法および期間
化合物Aの投与は、粉末の餌(F2、船橋農場)に化合物Aを0.01%の濃度で添加することによって行った(混餌投与)。対照群には、化合物A非添加の餌を与えた。
c)実験期間および採血、解剖、ラ氏島単離
実験期間は、6週齢より投与を開始し、8日後の午前中に採血および体重測定を行い、同日午後解剖を行った。マウスは、断頭後、開腹し、27G-30Gの静脈針を用いて膵管より膵臓にHBSS(Hank's Balanced Salt Solution : Gibco BRL製 P/N24020-117)またはKRB(Krebs ringer buffer pH 7.4 : 129 mM NaCl, 4.8 mM KCl, 1.2 mM MgSO4, 1.2mM KH2PO4, 2.5mM CaCl2, 5mM NaHCO3, 10mM HEPES pH7.4, 0.2 % BSA)に溶解した4 mg/ml Collagenase Type XI(Sigma製 P/N C7657)を約2.5ml灌流した。その後、膵臓を50mlのファルコンチューブに摘出し、37℃で3分30秒間インキュベートした。次いで、冷却したHBSSまたはKRBを30ml加え、穏やかにピペッティング後、氷上で4分間静置した。上清を約25ml取り除き、再び冷却したHBSSまたはKRBを30ml加え、穏やかにピペッティング後、氷上で3分間静置した。上清を約29ml取り除き(6ml程度残す)、残った懸濁物を茶漉しを使ってBacterial dish 2枚に濾過した。ピペットマン(P-10)を用いて実体顕微鏡下でラ氏島を拾い、回収した。採取したラ氏島は各群1本にまとめた後、Torizol reagent(Gibco BRL製 P/N 15596-018)で溶解し、RNA抽出用とした。
d)血液生化学値の測定(測定項目および測定方法)
測定項目は、血糖値、血中インスリン濃度とした。
血糖値はグルコローダーGXT(A&T社製)を用いて測定した。また血中インスリン濃度は、RAT INSULIN RIA KIT (LINCO Research, Inc.製)を用い、ラジオイムノアッセイ法により測定した。
e)評価
薬効の評価は、血糖値、体重、血中インスリン濃度の各項目について行った。
4.結果
結果を図1(A〜C)および下表1に示す。図1に示すように、db/dbマウス対照群では、顕著な血糖値の上昇、血漿インスリン値の低下といった2型糖尿病に特徴的な症状がみられた。一方、db/dbマウス 化合物A(0.01%)投与群では、血漿インスリン濃度および血糖値の正常化がみられ、インスリン抵抗性改善によるβ細胞機能の改善が示唆された。
Figure 2005031004
実施例2:ラ氏島からの全RNAの抽出
実施例1で採集したラ氏島は、Torizol reagentで溶解後、0.2容量のクロロホルムを加え、15秒間転倒混和した。また、MIN6細胞をPBSで洗浄後、Trizol reagentで溶解し、チューブに回収後、0.2容量のクロロホルムを加え、15秒間転倒混和した。次に、前記ラ氏島およびMIN6細胞由来サンプルは、室温で10分間静置してから、12,000 x g、4℃で15分間遠心分離した。遠心分離後、上層を回収し、0.8容量のリボヌクレアーゼ不含イソプロピルアルコールを加えて混和した。これを室温で10分間静置後、12,000 x g、4℃で15分間遠心分離した後、上清を除去してリボヌクレアーゼ不含80%エタノールを加えた。これを12,000 x g、4℃で10分間遠心分離し、上清を除去して、沈殿を乾燥させることにより、全RNAを得た。この全RNAの質は、Agilent 2100バイオアナライライザー(Agilent technologies社)を用いて、28Sおよび18Sの波形を確認することにより判断した。全RNAは、使用時まで-80℃に保存した。
実施例3:GeneChipTM解析
1.試験方法
チップ解析は、アフィメトリクス社の発現解析技術マニュアル(Expression Analysis Technical Manual)に従って、以下に記載した方法により行った。
a)cDNAの合成
上記実施例2記載の方法で得られた各5 μgの全RNAを出発材料として、上記マニュアル記載に従ってcDNAの合成および精製を行った。
b)cRNAの合成
上記a)で得られたcDNAを鋳型として、上記マニュアル記載に従ってcRNAの作製を行った。次にcRNA 10 μgを断片化し、プローブ溶液に加えた。
c)プローブ溶液の作製
プローブ溶液に加える各種コントロールcRNA(GeneChipTM Eukaryotic Hybridization Control Kit)はアマシャム・ファルマシア社から購入した。
d)ハイブリダイゼーション
上記c)で得られたプローブとハイブリダイズさせるチップとして、アフィメトリクス社製マウスゲノムU74セット(Murine Genome U74 ver.2 Set:MG-U74Av2、MG-U74Bv2、MG-U74Cv2)を用いた。ハイブリダイゼーションとその後の洗浄操作は上記マニュアル記載に従って行った(ハイブリダイゼーション条件は、45℃、16−20時間とした)。
e)解析
上記d)でハイブリダイゼーション操作を行ったチップのデータ解析は、上記マニュアル記載に従って、GeneChipTM Microarray Suite 4.0 (Affymetrix社)にて行った。なお、遺伝子の発現レベルは遺伝子の発現量を表す「Average difference値」、および遺伝子の有無は「Absolute call」で評価した。
そして、MG-U74v2チップにおいて、7回膜貫通蛋白質に分類され、db/+mおよびdb/dbマウスのいずれかのラ氏島で発現している遺伝子を抽出した。なお、抽出にあたって、予め糖尿病との関連が判明している遺伝子は除くこととした。
2.結果
結果として、糖尿病モデルマウス(db/dbマウス対照群)で高発現している遺伝子であって、かつインスリン抵抗性改善剤:化合物A投与によってその発現が正常化してくる遺伝子として、AK006207遺伝子が特定された。
Figure 2005031004
実施例4:TaqMan PCRによる遺伝子発現解析
実施例3で特定されたAK006207遺伝子について、さらにTaqMan PCRを用いてその発現量を解析した。
1.試験方法
a)cDNAの合成
(以下の実験には、SuperScript Preamplification System: Gibco BRL P/N 18089-011を使用)
実施例2で得られた各1 μgの全RNAを出発材料として、10 x Reaction buffer 1 μl、DNaseI(1 U/μl : Gibco BRL P/N 18068-015) 1Uに水を加えて全量10 μlとし、室温で15分間インキュベートした。次に25mM EDTA 1 μlを加え、65℃で15分間インキュベートした後、氷冷した。これにOligo(dT) (0.5 μg/μl) 1 μl加え、70℃で10分間インキュベートした後、氷冷した。次に、10 x PCR buffer 2 μl、25 mM MgCl2 2 μl、10 mM dNTP mix 1μl、0.1 M DTT 2μl、SuperScript II RT (200U/μl) 1 μlを加え、42℃で50分さらに70℃で15分インキュベートした。これにRNase H 1 μl加え37℃で20分間インキュベートし、cDNAを作製した。スタンダード用サンプルについては、水を29 μl加え、これを5倍希釈で6段階に希釈した(原液の濃度を625とした)。測定用のサンプルについては、水を229 μl加えた。
さらに、比較のために、膵β細胞由来培養系細胞 MIN6を用いて同様にサンプルを調製した。
b)反応液の調製
Upper primer (100μM) 0.1 μl、Lower primer (100 μM) 0.1 μl、TaqMan Probe (6.5 μM) 1.5 μl、2 x TaqMan Universal PCR Master Mix(PE ABI P/N 430447) 25 μl、水 21.3 μlを混ぜた反応液中に上記のa)で作製したcDNA 5 μl加えた。Primerは、Invitrogen社で合成したものを使用し、Probeは、AmershamでFAMラベルで合成したものを使用した。使用したPrimerおよびProbeの配列は以下のとおりである。
Upper Primer:5'-CCTGTATTTCCAAGCTCTGCG-3'(配列番号3)
Lower Primer:5'-ATCCCAGAGCAAACACCACA-3'(配列番号4)
Probe(FAM label):5'-ACATTTGTCCATGAAAGCCCTGCCTT-3'(配列番号5)
c)反応および測定
前項b)で調製したサンプルを、50℃で2分、95℃で10分反応させた後、95℃で15秒、60℃で1分を40回繰り返し、1サイクル毎にレポーター色素の発光量をABI PRISM 7700(Applied Biosystems社)で測定した。
d)解析
ABI PRISM 7700を用いて各遺伝子の相対的な発現量を計算し、それらをβ-actin遺伝子の発現で補正したものを解析に用いた。
2.結果
表3および図2に示すように、実施例3で特定されたAK006207遺伝子は、正常マウス(db/+mマウス)群およびβ細胞由来培養系細胞(MIN6)に比較して、糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)群では顕著に高い発現量を示した。一方、化合物A投与群では、AK006207遺伝子の発現量は、減少し正常レベルに近づいたことが確認された。
Figure 2005031004
以上の結果より、AK006207遺伝子の発現量は、2型糖尿病の病態やその改善、特にβ細胞機能不全改善の指標となりうることが示された。
実施例5:AK006207遺伝子のクローニング
1.クローニングする遺伝子
AK006207(配列番号1)
2.方法
AK006207遺伝子(配列番号1)を哺乳類細胞における発現ベクターであるpcDNA3.1 Directional TOPO Expression Kit(Invitrogen, K4900-01)にクローニングした。
まず、以下に示すAK006207特異的プライマーを作製し、実施例3で調製したcDNAを鋳型としてTOYOBO KOD -Plus (東洋紡, KOD-201)を用いてPCR反応を行った。なお、プライマーはAK006207のORF全長を増幅するようにデザインした。
Upper Primer: 5'-CACCACATGGCCGACACGGACC-3'(配列番号6)
Lower Primer: 5'-GCCTCTGAACACTGCTCGGTTAC-3'(配列番号7)
PCR反応は、cDNA 2 μl 、Forward primer (20 μM) 5 μl、Reverse primer (20 μM) 5 μl、10 x KOD Buffer 5 μl、dNTP Mixture (each 2.5 mM) 5 μl 、MgSO4 2 μl、TOYOBO KOD -Plus- Taq (1 U) 1 μl、水 25 μlを混合した反応液を、95℃、1分間の前熱処理の後、95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間、を1サイクルとして、これを35回繰り返した。増副産物を1% アガロースゲルを用いて泳動後、UV照射下にて増副産物のバンドを切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit (250)(QIAGEN社、#28706)を用いて抽出を行った。抽出した遺伝子断片 4 μl、pcDNA3.1D/V5-His-TOPOベクター(Invitrogen, K4900-01)1 μl、Salt Solution 1 μlを混合し、室温において5分放置することによりライゲーション反応を行った。ライゲーション反応液を大腸菌DH5α株にトランスフォーメーションし、アンピシリン耐性をマーカーとしてクローンを得た(Molecular Cloning, A Laboratory Manual" Maniatis, T., Fritsch, E.F., Sambrook, J. (1982) Cold Spring Harbor Laboratory Press 参照)。得られたクローンの塩基配列をSequencer(ABI PRISM 3700 DNA ANLYZER: Applied Biosystems)を用いて確認し、目的のORFを含むクローンを取得した。
実施例6:レトロウィルスベクターの作製
実施例5により得られたクローンからレトロウィルスベクターへのサブクローニングを行った。
まず、上記クローンより制限酵素サイトを用いて目的遺伝子を切り出し、これをレトロウィルスベクターpLNCX(Clontech、No.6344-1)のHind IIIおよびHpaIサイトに挿入した。ライゲーション反応にはTaKaRa Ligation Kit Ver I(Takara)を用い、反応液を大腸菌DH5α株にトランスフォーメーションし、アンピシリン耐性をマーカーに目的のクローンを得た(Molecular Cloning(前掲)参照)。得られたクローンの塩基配列をSequencer(ABI PRISM 3700 DNA ANLYZER: Applied Biosystems)により確認し、目的のORFを含むレトロウィルスベクターpLNCXを得た。
実施例7:レトロウィルスの作製およびこれを用いた安定発現株の作製
実施例6で作製したレトロウィルスベクターを用いてAK006207を導入したレトロウィルスを作製し、これをMIN6細胞株へ感染させて、安定発現株を得た。方法は以下に示すとおりである。
1.安定発現株の作製方法
a)1日目
10 cmコラーゲンコートシャーレ(IWAKI, No.4020-010)に、10 % FBS/DMEM(抗生物質無添加)で懸濁した293-10A1細胞(IMAGENEX 10048C)を2x106 cell撒き、37℃、5 % CO2存在下で一晩培養した。
b)2日目
10 μg のレトロウィルスベクターと500 μlのOPTI-MEMの混合液および20 μlのLipofectamin 2000(Invitrogen, No.11668-019)と480 μlのOPTI-MEMの混合液を混合後、室温で20分静置し、トランスフェクション用混合液とした。1日目に準備した293-10A1細胞をOPTI-MEMで洗浄し、3 mlのOPTI-MEMを添加した。これにトランスフェクション用混合液を静かに加え、37℃、5% CO2存在下で4時間培養した。次に20% FBS/DMEM(抗生物質無添加)を6 ml加え、一晩培養した。
次にT-75培養フラスコ(FALCON, No.3810)に、15% FBS/DMEM(抗生物質無添加)で懸濁したMIN6細胞を2 x 106 cell撒き、37℃、5% CO2存在下で一晩培養した。
c)3日目
293-10A1細胞の培地を20% FBS/DMEM(抗生物質無添加)8 mlに交換した。
d)4日目および5日目
293-10A1細胞の培養上清(8 ml)を回収し、0.45 μm蛋白非吸着フィルターでろ過したろ液に、等量の20% FBS/DMEM(8 ml)およびHexadimethrine Bromide(SIGMA, No.H9268: 最終濃度8 μg/ml)を添加した。これを穏やかに混合後、予め培地を除去したMIN6細胞に添加した。293-10A1細胞には、さらに新たな20% FBS/DMEM(抗生物質無添加)8 mlを添加し、12時間ごとに合計4回、上記の操作を繰り返した。
e)8日目
培地をG418(Gibco, No.10131-027: 最終濃度500 μg /ml)を含む15% FBS/DMEM培地に交換し、約2週間薬剤選択することにより安定発現株を作製した。
2.安定発現株からの全RNA抽出
安定発現株をトリプシンを用いて培養ディッシュより回収した後、Torizol reagentで溶解後、0.2容量のクロロホルムを加え、15秒間転倒混和した。以後の操作は、実施例3の方法に従った。
3.TaqMan PCRによる目的遺伝子の発現確認
a)cDNAの合成
上記2.の方法で得られた各1 μgの全RNAを出発材料として、実施例4に従い、cDNAの合成を行った。
b)反応液の調製
Upper primer (100μM) 0.1 μl、Lower primer (100 μM) 0.1 μl、TaqMan Probe (6.5 μM) 1.5 μl、2 x TaqMan Universal PCR Master Mix(PE ABI P/N 430447) 25 μl、水 21.3 μlを混ぜた反応液中に上記のa)で作製したcDNA 5 μl加えた。実施例4と同様に、Primerは、Invitrogen社で合成したものを使用し、Probeは、AmershamでFAMラベルで合成したものを使用した。
c)反応および測定
b)で調製したサンプルを、50℃で2分、95℃で10分反応させた後、95℃で15秒、60℃で1分を40回繰り返し、ABI PRISM 7700で測定した。
d)解析
b)で調製したサンプルを、50℃で2分、95℃で10分反応させた後、95℃で15秒、60℃で1分を40回繰り返し、1サイクル毎にレポーター色素の発光量をABI PRISM 7700で測定した。
4.結果
表4および図3に示すとおり、得られた安定発現株は、コントロールのMIN6細胞と比較してAK006207を過剰発現していることが確認された。
Figure 2005031004
実施例8:安定発現株を用いたインスリン分泌実験
実施例7で作製した安定発現株とMIN6細胞を用いて、インスリン分泌促進剤:Glibenclamide刺激によるインスリン分泌量について検討した。
1.細胞
MIN6細胞および実施例7で作製した安定発現株を使用した。
2.方法
インスリン分泌実験は以下のように行った。15% FBSを含むDMEMに懸濁したMIN6細胞および安定発現株を、24 well plate(Becton Dickinson, P/N 35-6414, BioCoat Poly_D_Lysine Cellware 24 well Plate)に1 x 105 cell / well撒き、37℃、5 % CO2存在下で2日間培養した。KRB(Krebs ringer buffer pH 7.4 : 129 mM NaCl, 4.8 mM KCl, 1.2 mM MgSO4, 1.2 mM KH2PO4, 2.5 mM CaCl2, 5 mM NaHCO3, 10 mM HEPES pH 7.4, 0.2 % BSA)にKRB-LG (KRB、1 mg/ mlグルコース) 1 ml を用いて細胞を洗浄した後、KRB-LG 500 μlに置換し、5 % CO2、37℃において30分インキュベーションした。KRB-LG、KRB-HG (KRB、4 mg/ mlグルコース)500 μlおよびKRB-GA(KRB、50 μM Glibenclamide)に置換し、37℃、5 % CO2存在下で1時間保温した。次に上清中に分泌されたインスリン濃度をモリナガ超高感度インスリン測定キット(森永, P/N 200717)を用いて測定した。
3.結果
安定発現株はコントロールのMIN6細胞と比較して、1 mg/ml glucose、4 mg/ml glucoseおよび、50 μM Glibenclamide刺激によるインスリン分泌量に有意な差は認められなかった。
実施例9:AK006207遺伝子によってコードされる蛋白質を介した下流のGPCRシグナル探索
GPCRである可能性もしくは、GPCR様のシグナルが入る可能性を期待して、GPCRシグナル探索を検討した。GPCRは細胞外のリガンド刺激を受けた後、生体膜上でGα, β, γから構成されるヘテロ三量体G蛋白質と結合し、シグナルを細胞内へ伝達する。GPCRは共役するGαの違いにより、下流のシグナル伝達系路が異なることが明らかにされている(Trends Pharmacol. Sci. 22(7) 368-378, 2001)。シグナル伝達がいずれの経路であるか検討するためには、各G蛋白質のシグナル伝達により転写活性化される代表的な遺伝子のエンハンサーエレメント(Gq→NFAT、Gs→CRE、Gi→Elk)をルシフェラーゼ遺伝子の上流に結合し、レポーターアッセイを行う実験系が用いられる。目的のGPCRを細胞に過剰発現させると、リガンド無添加の場合でもある程度シグナル伝達が起こることを利用し、AK006207遺伝子にコードされる蛋白質が共役するGαの推定を行った(Diversity of G proteins in signal transduction. Simon MI, Strathmann MP, Gautam N. Science. 1991 May 10;252(5007):802-8. Review. )。
1.使用した遺伝子
a)AK006207
実施例5においてpcDNA3.1(-)(Invitrogen, P/N K4900-01)にクローニングしたAK006207プラスミドを使用。コントロールとしては、遺伝子がクローニングされていないpcDNA3.1(-)を使用。
b)各エンハンサーエレメントを上流に持つ、以下のFireflyルシフェラーゼ遺伝子(全てSTRATAGENE社)
pNFAT-Luci plasmid (P/N #219094)
pCRE-Luci plasmid (P/N #219075)
pNFAT-Luci plasmid (P/N #219094)
pFA2-Elk1 plasmidおよびpFR-Luci plasmid (P/N #219094)
c)Gα蛋白質発現プラスミド
pcDNA3.1ベクターに以下の3種類のGαを導入したプラスミドを使用
Gq (NM_002068)
Gi (X04828)
Gs (X07036)
d)補正に用いたRenillaルシフェラーゼ遺伝子
pRL-TK plasmid, Promega, P/N E2241
2.試験方法
HEK293細胞に、AK006207、各エンハンサーエレメント(NFAT、CRE、Elk)を上流に持つFireflyルシフェラーゼ遺伝子および補正に用いるRenillaルシフェラーゼ遺伝子を導入した。なお、目的のGPCR遺伝子のみを発現した場合には弱いシグナルしか得られないが、共役するG蛋白質を共発現させることにより強いシグナルに変換しうることがある。そのため、各エンハンサーエレメントに対応したG蛋白質を共発現させたアッセイ系(NFAT+Gq, CRE+Gs, Elk+Gi)についても検討した。
a)遺伝子導入の前日にHEK293細胞を抗生物質無添加の10 % FBS(Fetal Bovine Serum: Hyclone, P/N SH30070.03)、DMEM(Dalbecco’s Modified Eagle Medium: Gibco BRL, P/N 11966-025) High - Glucose mediumに懸濁し、96 well Cell Culture Cluster Flat Bottom with Lid Tissue Culture Treated Non-Pyrogenic Polystyrene 1/Pack Sterile(Corning, P/N 3596)plateに2 x 104 cell/well撒き込み、37℃、5 % CO2において一晩培養の後、Opti-MEM I Reduced-Serum Medium(Invitrogen, P/N 31985-070)50 μlに培地を置換した。
b)表5に従い、1 wellあたり遺伝子の総量が100 ng/1 μlとなるように混合し、Opti-MEMを9 μl添加した。実験をn=3で行うため、実際には4 wellに対して必要な試薬をまとめて調製した(以下同様)。
c)b)に1 μlのPLUS Reagent(Invitrogen, P/N 11514-015)を添加し、15分室温放置した。
d)10 μl Opti-MEMに0.5 μl のLipofectamine Reagent(Invitrogen, P/N 18324-012)を添加し、これとc) を混合し、15分室温放置した。
e)HEK293細胞の各Wellに対し、d)の混合液20 μlを添加した。
f)3時間後に200 μlの抗生物質無添加の10% FBS-DMEMを添加した。
g)24時間培養の後に細胞をDual-Luciferase Reporter Assay Syatem (Promega, P/N E1960)に含まれるLysis Bufferを用いて抽出物を得て、同アッセイシステムを用いてレポーター活性の測定を行った。検出は、Wallac 1420 ARVOsx(Amersham pharmacia biotech)を用いた。
Figure 2005031004
3.結果
解析の結果、表6に示したようにNFAT単独またはこれにGqを添加した場合とElkによるレポーターアッセイ系において弱いながらもシグナルの上昇が認められた。これにより、当該遺伝子の下流シグナルがCa2+上昇である可能性と、これを利用してFLIPR等でリガンド探索が行える可能性が示唆された。
Figure 2005031004
実施例10:STZマウス(SCID)の作製
ストレプトゾトシン(STZ)により内因性のβ細胞が破壊されたSCIDマウスを以下のようにして作製した。
1.投与薬物
Streoptozotocin(Sigma、S-0130、以下STZと略す)
2.動物
雄性Scid/Scidマウス(日本チャールスリバー)を使用した。マウスは5〜10週齢で購入し、約1週間馴化した後、6〜11週齢で実験に供した。飲水および摂餌(F2、船橋農場)は、馴化・投与期間中ともに自由摂取とした。飼育および投与期間中の実験は、実験動物管理室により管理されている実験動物エリア内で行なった。
3.方法
a)処置および実験群
前日の夕方より、一晩絶食をした。絶食中は、飲水のみ自由摂取とした。薬物投与直前に、マウスの体重測定、および尾静脈より血糖値を測定した。実験群は、(1) STZ未投与群(5〜10匹)、(2) STZ投与群(5〜40匹)とした。
b)投与方法および期間
STZ 40 mgに対して生理食塩水を50 μl加え懸濁後、さらにpH 4.5の0.05 M クエン酸溶液(ナカライテスク株式会社、No.091-06)を50 μl加え溶解した。次に生理食塩水1900 μlを加えて全量2.0 ml にすることにより、20 mg/mlのSTZ溶液を作製した。マウス10 g当たりSTZ溶液(20 mg/ml) 0.1 ml腹腔内に投与した(STZの投与量は、200 mg/kgとした)。
c)実験期間および採血
STZ投与1週間後、非絶食下で朝9時に血糖値および体重を測定した。
d)測定方法
血糖値はグルテストPRO(アークレイ株式会社、No.GT-1660)を用いて測定した。
e)評価
薬効の評価は以下の項目について行った。
血糖値
体重
4.結果
血糖値が300 mg/dl以上のマウスをSTZマウスとして、実施例11の細胞移植実験に使用した。
実施例11:STZマウス(SCID)への細胞移植実験
1.移植用の細胞
実施例8で作製した安定発現株を使用した。
2.動物
実施例10で作製したSTZマウス(SCID)を使用した。飲水および摂餌(F2、船橋農場)は、実験期間中自由摂取とした。実験は、実験動物管理室により管理されている実験動物エリア内で行なった。
3.方法
a)移植用の細胞
移植用の細胞は、培養フラスコからトリプシンで剥がした後、直径100mmのbacterial dishに4 x 106 cells/dish ずつまき、一晩培養することにより細胞塊を形成させた。次に細胞塊を遠心分離により回収後、1 x 104 cells/μlの濃度になるようにRPMI 1640/10 % FBSに懸濁し、1匹あたり1 x 106 cells移植した。
b)STZマウスへの細胞移植方法
実験群として、(1)コントロール群(RPMI 1640/10% FBS移植群)、(2)細胞移植群、(3)STZ未投与群(以下、未処置群)とした。エーテル麻酔下開腹後、脾臓に27Gの注射針を用いて、細胞懸濁液を100μlずつ移植し、閉腹した。
c)実験期間および採血
細胞移植後、経日的に非絶食下で朝9時に血糖値および血中インスリン値を測定した。
d)測定方法
尾静脈よりキャピラリー管を用いた採血と同時に、グルテストPROを用いて血糖値を測定した。キャピラリー管は、室温で30分間インキュベーション後、5300 rpm, 15分間遠心することにより、血清を採取した。血清中のインスリン濃度は、インスリン測定キット(モリナガ超高感度ラットインスリン測定キット)を用いて測定した。
e)評価
移植した細胞の評価は以下の項目について行った。
血糖値
血中インスリン値
4.結果
コントロールのMIN6細胞移植群と比較して、安定発現株移植群群では移植7日目の血糖値および血中インスリン値の改善効果が良好であった(図4A〜C)。
参考例1:5−[4−(6−メトキシ−1−メチルベンズイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩(化合物A)の製造
特開平9−295970号公報(米国特許第5886014号明細書、欧州特許出願公開第745600号明細書)に記載の方法によって合成した、5−[4−(6−メトキシー1−メチルベンズイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン10.6g、および4規定塩酸−1,4−ジオサキン100mlの混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を濃縮後、酢酸エチルを加え、折出した成績体を濾取し、酢酸エチルで洗浄して、融点275−277℃を有する化合物A11.0gを得た。
1H−核磁気共鳴スペクトル:δ(ppm):重ジメチルスルホキシド中、内部標準にTMS(テトラメチルシラン)を使用して測定した1H−核磁気共鳴スペクトル(400MHz):δ(ppm)は次のとおりである。
3.11(1H,dd,J=14Hzおよび9Hz),3.34(1H,dd,J=14Hzおよび4Hz),3.89(3H,s),3.98(3H,s),4.91(1H,dd,J=9Hzおよび4Hz),5.64(2H,s),7.14(2H,d,J=9Hz),7.15(1H,d,J=9Hz),7.25(2H,d,J=9Hz),7.50(1H,s),7.70(1H,d,9H ),12.04(1H,s,D2O添加により消失)。
本発明によれば、被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を迅速かつ簡便に評価することができる。
図1は、各群における血液生化学値および体重の測定結果を示すグラフである(A:血糖値、B:血漿中インスリン濃度、C:体重)。 図2は、各群におけるTaqMan PCRによる本発明の遺伝子(AK006207)の発現解析結果を示すグラフである。 図3は、安定発現株とMIN6細胞における本発明の遺伝子(AK006207)の発現量を比較したグラフである。 図4は、安定発現株を移植したSTZマウス(SCID)における血糖値(A)および血中インスリン値(BおよびC)の変化を示すグラフである。
配列番号3−人工配列の説明:上流プライマー
配列番号4−人工配列の説明:下流プライマー
配列番号5−人工配列の説明:プローブ
配列番号6−人工配列の説明:上流プライマー
配列番号7−人工配列の説明:下流プライマー

Claims (10)

  1. 配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質に対する被験物質の作用に基づいて、該被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する方法。
  2. 配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質の機能に対する促進的効果に基づいて、被験物質を評価することを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質に対するアゴニスト作用に基づいて、被験物質を評価することを特徴とする、請求項1記載の方法。
  4. 下記の工程を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法:
    1)配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質を安定的に発現する膵β細胞由来細胞、あるいは該細胞を有するランゲルハンス氏島を被検物質の添加または非添加条件下で培養する;
    2)上記細胞からのインスリン分泌量を検出する;
    3)被検物質の添加および非添加条件下における、上記インスリン分泌量の相違に基づき、該被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する。
  5. 下記の工程を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法:
    1)配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質を安定的に発現する細胞を被検物質の添加または非添加条件下で培養する;
    2)上記細胞内におけるcAMP濃度および/またはCa2+濃度を測定する;
    3)被検物質の添加および非添加条件下における、上記cAMP濃度および/またはCa2+濃度の相違に基づき、該被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する。
  6. 下記の工程を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法:
    1)配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質を安定的に発現する膵β細胞を有する動物を被検物質の投与または非投与条件下で飼育する;
    2)上記動物の血中インスリン値および/または血糖値を測定する;
    3)被験物質の投与および非投与条件下における、上記血中インスリン値および/または血糖値の相違に基づき、該被験物質の2型糖尿病治療薬としての効果を評価する。
  7. 動物が、内因性膵β細胞を破壊されたSCIDマウスに配列番号1または9に示される塩基配列で特定される遺伝子を導入した膵β細胞由来細胞を移植して得られるマウスである、請求項6記載の方法。
  8. 配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質を安定的に発現する組換え細胞。
  9. 配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質とGqとの融合蛋白質を発現する組換え細胞。
  10. 配列番号2または10に示されるアミノ酸配列で特定される蛋白質を安定的に発現する組換え膵β細胞を有するマウス。
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