JP2004154136A - β細胞機能不全改善剤の評価方法 - Google Patents

β細胞機能不全改善剤の評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 糖尿病の病態やその改善、特にβ細胞機能不全改善の指標となる遺伝子を見出し、該遺伝子やその産物を利用することにより、インスリン抵抗性治療薬やインスリン分泌促進剤等のβ細胞機能不全改善剤の新規な評価方法を提供する。あるいは、被験者のβ細胞機能不全の新規な評価方法を提供する。
【解決手段】 被験物質の投与条件下における、検体中の、特定のの塩基配列で示される遺伝子、またはその産物の発現量を指標として、該被験物質のβ細胞機能不全改善効果、あるいは被験者のβ細胞機能不全を評価する方法、および該方法のためのプライマー、プローブ等を含むキット。
【選択図】 なし

Description

本発明は、糖尿病におけるβ細胞機能不全改善の指標となる遺伝子またはその産物を利用したβ細胞機能不全改善剤あるいはβ細胞機能不全の評価のための方法、ならびに該方法のためのキットに関する。
近年、日本では糖尿病患者が急増しており、その数は700万人にのぼると推定され、糖尿病は高血圧症に次いで頻度の高い疾患となっている。特に、日本人の糖尿病患者の95%は2型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病、NIDDM)であり、早期発見、早期治療がその予後の点から重要である。
2型糖尿病は、遺伝的素因や環境因子等、多様な成因により発症する。2型糖尿病におけるインスリン作用不足の原因としては、インスリン感受性機構の異常(インスリン抵抗性)とインスリン分泌の低下が挙げられる。欧米では多くは前者、すなわちインスリン抵抗性が2型糖尿病の主な原因であるが、日本ではインスリン分泌不全が主な原因である場合も少なくない。
膵臓は外分泌系細胞(アミラーゼやリパーゼ等の外分泌酵素を産生する)と内分泌系細胞(インスリン、グルカゴン等を産生する)から構成され、後者は、α細胞(グルカゴンを産生)、β細胞(インスリンを産生)等からなるランゲルハンス氏島とよばれる組織を形成する。このうちβ細胞はランゲルハンス氏島細胞の約90%を占め、インスリンを合成・分泌することにより血糖値を低下させる働きを有しているため、その機能不全はインスリン産生の低下およびインスリン分泌の低下をもたらし、糖尿病を発症させる。
1型糖尿病では、β細胞が免疫系により完全に破壊されて、インスリン産生細胞が欠乏するため、インスリン代償療法が治療に用いられる。一方、2型糖尿病では、グルコース取り込みに対して標的組織がインスリン抵抗性を示すことにより、β細胞の機能が低下し、やがてβ細胞機能不全を生じる。
ところで、β細胞におけるインスリンの分泌は、血中のグルコースが刺激となって生じる。グルコースは、β細胞の膜上に局在するグルコーストランスポーター(GLUT2)を介して細胞内に取り込まれ、グルコキナーゼにより解糖系へ導入される。そして、このグルコースの代謝過程で産生されたATPがβ細胞におけるインスリン分泌シグナルとして機能する。
1984年にCookらにより発見されたATP感受性カリウムチャンネル(KATP)は(例えば、非特許文献1参照)、グルコース代謝により産生された細胞内ATPの濃度増加によって閉鎖し、細胞膜の脱分極を引き起こす。これに引き続いて電位依存性カルシウムチャンネルが開口し、β細胞内へのカルシウムイオンの流入が起こる。細胞内のカルシウムイオン濃度の上昇は、カルシウム依存性のインスリン分泌開口放出反応を活性化する(例えば、非特許文献2参照)。
インスリン分泌を促進する2型糖尿病の治療薬としては、従来よりスルホニル尿素剤が広く用いられている。この薬剤は、β細胞のKATPチャンネルを閉鎖することによりインスリン分泌を促進するが、血糖値とは無関係にインスリン産生や分泌を促進するという欠点がある。そのため、この種の薬剤では、低血糖に注意しながら食物摂取量を制御しなければならない。
これに対し、現在新たな2型糖尿病薬としてGlucagon-like peptide-1 (GLP-1) が開発されつつある。GLP-1は、腸管で preproglucagon から翻訳後修飾により産生されるアミノ酸であるが、スルホニル尿素剤とは異なり、血糖値依存的にインスリン分泌を促進することが報告されている(例えば、非特許文献3参照)。GLP-1は、インスリン分泌を促進するだけでなく、グルカゴンの放出を阻害することによっても、血糖値の正常化を促進する。さらに、GLP-1は、ヘキソキナーゼの遺伝子発現を促進し、インスリンの生合成を増大させることも報告されている(例えば、非特許文献4参照)。
現在のところ、インスリン分泌を促進する薬剤としては、上述したスルホニル尿素およびGLP-1以外には有効な薬剤はない。そのため、2型糖尿病患者のβ細胞機能不全に対する新たな治療薬の開発が望まれている。
一方、インスリン感受性機構を正常化する2型糖尿病の治療薬として、インスリン抵抗性改善剤が開発されてきている。「インスリン抵抗性改善剤」は、インスリン受容体のシグナル伝達を司るチロシンキナーゼの活性を増強することにより、インスリン作用の感受性を高めて、インスリンの作用不足を補い、インスリン抵抗性を改善する薬剤である。そのようなインスリン抵抗性改善剤としては、例えば、トログリタゾン(例えば、特許文献1参照)、ピオグリタゾン(例えば、特許文献2〜4参照)、ロシグリタゾン(例えば、特許文献5〜7参照)、GI−262570(例えば、特許文献8参照)、JTT−501(例えば、特許文献9〜11参照)、AZ−242(例えば、特許文献12〜14参照)、MCC−555(例えば、特許文献15〜17参照)、YM−440(例えば、特許文献18〜20参照)、KRP−297(例えば、特許文献21および22参照)、T−174(例えば、特許文献23〜25参照)、NC−2100(例えば、特許文献26〜28参照)、NN−622(例えば、特許文献29および30参照)、BMS−298585(例えば、特許文献31参照)のようなオキサゾール化合物、オキサジアゾリジン化合物、チアゾリジン化合物またはフェノキサジン化合物等を挙げることができる。
上記のインスリン抵抗性改善剤のうち、トログリタゾン、ロジグリタゾン、およびピオグリタゾンのようなチアゾリジン誘導体は既に臨床の場で用いられている(例えば、非特許文献5〜7、および特許文献32参照)。これらは、基本構造としてチアゾリジン環骨格を有することを特徴としており、核内レセプターであるPPARγを標的分子とし、肝臓、筋肉、および脂肪細胞における遺伝子発現を変化させることにより、2型糖尿病患者のインスリン抵抗性を改善すると考えられている。
近年、分子生物学の進歩により、ディファレンシャル・ディスプレイ法やマイクロアレイ法を用いて、迅速かつ網羅的な遺伝子の発現解析が可能になってきた。2型糖尿病患者のβ細胞機能不全に対する新たな治療薬の開発には、その標的となる遺伝子の同定が必要である。しかしながら、膵β細胞については、培養細胞株を用いて、β細胞の特性や機能に関わる遺伝子の発現解析は行われているものの、糖尿病の発症や改善に関連した遺伝子の網羅的な解析は行われていない。
特開昭60−051189号公報 特開昭61−267580号公報 欧州特許第193,256号明細書 米国特許第4,687,777号明細書 特表平9−512249号公報 国際公開第95/21608号パンフレット 米国特許第5,002,953号明細書 国際公開第00/8002号パンフレット 国際公開第95/18125号パンフレット 欧州公開第684,242号明細書 米国特許第5,728,720号明細書 国際公開第99/62872号明細書 欧州特許出願公開第1,084,103号明細書 米国特許第6,258,850号明細書 特開平6−247945号公報 欧州特許出願公開第604,983号明細書 米国特許第5,594,016号明細書 国際公開第94/25448号パンフレット 欧州特許第696,585号明細書 米国特許第5,643,931号明細書 特開平10−87641号公報 米国特許5,948,803号明細書 特開昭64−56675号公報 欧州特許第283035号明細書 米国特許第4,897,393号明細書 特開平9−100280号公報 欧州特許出願公開第787725号明細書 米国特許第5,693,651号明細書 国際公開第99/19313号パンフレット 米国特許6,054,453号明細書 国際公開第01/21602号パンフレット 特開昭60−051189号公報 「ネイチャー(Nature)」 (1984) 311, p271-273 「フィジオロジー レビュー(Physiological Revue)」 (1981) 61, p914-973 「ダイアベティース(Diabetes)」(1994) Apr., 43(4):535-9 「エンドクリノロジー (Endocrinology)」 (1995) Nov;136(11), p4910-7 「ライフ・サイエンス (Life Science)」 (2000) 67, p2405-2416 「日本臨床」 (2000) 58, p389-404 「ファーマコセラピー (Pharmacotherapy)」 (2001) 21, p1082-1099
本発明は、糖尿病の病態やその改善、特にβ細胞機能不全の改善に関与する遺伝子を特定し、これを利用した糖尿病治療薬または糖尿病の評価系や、該評価系のためのキットを提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、糖尿病患者の膵ランゲルハンス氏島細胞で発現が増加しており、糖尿病治療薬の投与によってその発現量が正常化される遺伝子は、糖尿病の病態やその改善の指標になりうると考えた。そしてこれら遺伝子やその産物の発現量を解析することにより、糖尿病の病態やその改善の評価が可能であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、被験物質の投与条件下における、検体中の、配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子またはその産物(配列番号9〜16)の発現量を指標として、該被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する方法を提供する。
上記方法において、評価は、被験物質の投与および非投与条件下における、前記遺伝子またはその産物の発現量の相違を比較評価するものであってもよい。
一つの実施態様[I]において、本発明の方法は下記の工程を含む。
1)動物を被験物質の投与または非投与条件下で飼育する;
2)上記動物の血液または細胞中における、配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子の発現量を検出する;
3)被験物質の投与および非投与条件下における、上記遺伝子の発現量の相違に基づき、該被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する。
ここで、前記工程2)は、さらに、血液または細胞中より全RNAを抽出する工程を含み、この全RNAより遺伝子の発現量を検出してもよい。
前記遺伝子の発現量は、遺伝子チップ、cDNAアレイ、およびメンブレンフィルターから選ばれる固相化試料を用いた核酸ハイブリダイゼーション法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法、サブトラクション法、ディファレンシャル・ディスプレイ法、ディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法、ならびにクロスハイブリダイゼーション法から選ばれるいずれか一つの方法によって検出することができ、特にRT-PCR法、リアルタイムPCR法が好ましい。
また、別な実施態様[II]において、本発明の方法は下記の工程を含む。
1)動物を被験物質の投与または非投与条件下で飼育する;
2)上記動物の血液または細胞中における、配列番号9〜16のいずれか一つのアミノ酸配列で示されるタンパクを、該タンパクに特異的に結合する抗体を用いて検出する;
3)被験物質の投与および非投与条件下における、上記タンパクの発現量の相違に基づき、該被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する。
ここで、前記タンパクの発現量は、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、およびRIA法から選ばれるいずれか一つの方法によって検出することができ、特にウェスタンブロット法が好ましい。
前記態様[I]および態様[II]において、細胞は膵ランゲルハンス氏島β細胞を用いることが好ましい。
また、動物は2型糖尿病モデル動物、特に2型糖尿病モデルマウスを用いることが好ましい。
さらに、別な実施態様[III]において、本発明の方法は下記の工程を含む。
1)細胞を被検物質の添加または非添加条件下で培養する;
2)上記細胞中の配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子の発現量を検出するか、または、その産物であるタンパク(配列番号9〜16)の発現量を該タンパクに特異的に結合する抗体を用いて検出する;
3)被検物質の添加および非添加条件下における、上記遺伝子またはタンパクの発現量の相違に基づき、該被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する。
前記態様[III]において、細胞は、糖尿病におけるβ細胞機能不全病態を反映し、前記遺伝子やその産物が高発現している細胞が好ましい。
本発明はまた、被験者より単離された血液中における、配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子のヒトオーソログ産物の発現量を測定することにより、該被験者のβ細胞機能不全を評価する方法を提供する。
ここで、前記タンパクの発現量は、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、およびRIA法から選ばれるいずれか一つの方法によって検出することができ、特にウェスタンブロット法が好ましい。
本発明はまた、被験物質のβ細胞機能不全改善効果、または被験者のβ細胞機能不全の評価用のキットを提供する。該キットは、下記のa)〜e)からなる群より選ばれる、少なくとも一つ以上を含む。
a)配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子を特異的に増幅するための、15〜30塩基長の連続したオリゴヌクレオチドプライマー
b)配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子に特異的に結合し、該遺伝子を検出するための20〜1500塩基長の連続したポリヌクレオチドプローブ
c)上記b)記載のポリヌクレオチドプローブが固定された固相化試料
d)配列番号9〜16のいずれか一つのアミノ酸配列で示されるタンパクに特異的に結合し、該タンパクを検出するための抗体
e)上記d)記載の抗体に特異的に結合しうる二次抗体
なお、上記したβ細胞機能不全改善効果を評価する方法、およびそのためのキットにおいて、該β細胞機能不全改善効果はインスリン抵抗性の改善によってもたらされる効果であってもよい。
本発明により、配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子の発現量は、糖尿病におけるβ細胞機能不全やその改善を評価するための新たな指標となりうることが示された。したがって、該遺伝子やその産物の発現量を指標とすれば、インスリン抵抗性改善剤やインスリン分泌促進剤等のβ細胞機能不全改善剤の簡便なスクリーニング、あるいはβ細胞機能不全の診断を行うことができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子、またはその産物(配列番号9〜16)の発現量を指標として、被験物質のβ細胞機能不全改善効果、あるいは被験者のβ細胞機能不全を評価する方法に関する。
1. 標的遺伝子
本発明の方法で用いられる遺伝子(以下、「標的遺伝子」という)は、糖尿病におけるβ細胞機能不全改善の指標となりうる遺伝子である。そのような遺伝子は、糖尿病患者の膵ランゲルハンス氏島において発現が著しく増加しており、かつ、β細胞機能不全が改善することに伴い、当該遺伝子の発現量が正常化される遺伝子として同定することができる。
例えば、前記遺伝子は、以下の工程によって同定することができる。
1)まず、糖尿病患者と健常人、あるいは糖尿病モデル動物と正常動物の、膵ランゲルハンス氏島由来の全RNAを調製する;
2)次いで、上記各全RNAよりcRNAまたはcDNAを調製し、糖尿病患者と健常人の間、あるいは糖尿病モデル動物と正常動物の間で、発現量が有意に異なる遺伝子を抽出する;
3)抽出された遺伝子のうち、β細胞機能不全改善剤(例えば、インスリン抵抗性改善剤やインスリン分泌促進剤等)を投与することにより、β細胞機能不全病態の改善にともなって、その発現量が正常化される遺伝子を標的遺伝子として選択する。
上記工程中、全RNA、cRNAまたはcDNAの調整方法、ならびに遺伝子発現量の解析方法については、次項「2.1 標的遺伝子を指標とした被験物質の評価方法(in vivo系)」において詳細に説明する。
かくして、本発明者らは、配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される以下の8つの遺伝子を、本発明の標的遺伝子として同定した。なお、遺伝子の選択にあたって、糖尿病との関連が既に示唆されている遺伝子は除外した。したがって、本発明の標的遺伝子は、その配列は既に公知であるが、糖尿病との関連性については全く未知のものである。
配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される標的遺伝子は、それぞれ配列番号9〜16のいずれか一つのアミノ酸配列で示されるタンパクをコードする(実施例3の表2参照)。各遺伝子とそのタンパクに関する他の情報は、GenBank、DDBJ等の遺伝子データベースより入手することができる。
本発明では、便宜上、上記標的遺伝子を配列番号1〜8に示される塩基配列で特定するが、該遺伝子はこれらの塩基配列に限定されるものではない。その遺伝子が配列番号1〜8に示される遺伝子と類似の配列を有し、かつ同等の機能を有する限り本発明の標的遺伝子に含まれる。したがって、配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される標的遺伝子には、そのオーソログ(ortholog)が含まれる。ここで「オーソログ」とは、オーソロガス遺伝子(orthologous gene)のことであり、進化的に同じ起源をもち構造と機能が類似した異なる種の遺伝子を意味する。同様に、本発明で用いられるタンパクには、配列番号9〜16で示されるタンパクのほか、前記オーソログによってコードされるタンパクも含むものとする。
以下に示すように、配列番号1〜8で示される遺伝子のヒトオーソログは配列番号49〜56で示される塩基配列を有し、配列番号57〜64で示されるアミノ酸配列を有するタンパクをコードする。ヒトにおけるβ細胞機能不全の診断には、これらヒトオーソログおよびオーソログ産物を利用する。
マウス ヒトオーソログ
GenBank 遺伝子 タンパク GenBank 遺伝子 タンパク
AK005296 配列番号1 配列番号9 BC012531 配列番号49 配列番号57
AK005484 配列番号2 配列番号10 NM_030968.1 配列番号50 配列番号58
NM_021434 配列番号3 配列番号11 NM_180989 配列番号51 配列番号59
AK006207 配列番号4 配列番号12 AF151877 配列番号52 配列番号60
BC010831 配列番号5 配列番号13 NM_018487 配列番号53 配列番号61
AK013996 配列番号6 配列番号14 NM_024006 配列番号54 配列番号62
AF272044 配列番号7 配列番号15 NM_030926 配列番号55 配列番号63
NM_007786 配列番号8 配列番号16 NM_005212 配列番号56 配列番号64
2. β細胞機能不全改善効果の評価方法
本発明の方法は、被験物質の投与条件下における、検体中の、配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子、またはその産物(配列番号9〜16)の発現量を指標として、該被験物質のβ細胞機能不全を評価する方法である。
前記方法は、1つの被験物質について、その投与および非投与条件下における、検体中の標的遺伝子、またはその産物の発現量を比較して評価するものであってもよいし、2つ以上の被験物質について同様な比較評価を行うものであってもよい。あるいは、標的遺伝子、またはその産物の発現量とβ細胞機能不全改善効果の相関が経験的に確立されれば、その関係に基づき、被験物質のβ細胞機能不全改善効果を比較対照なしに絶対評価してもよい。
また、本発明の方法は、8つの標的遺伝子から選ばれる1つの遺伝子、またはその産物の発現量を単独評価するものであってもよいし、8つの標的遺伝子から選ばれる2つ以上の遺伝子、またはそれらの産物の発現量(発現プロファイル)を総体的に評価するものであってもよい。
本発明の評価方法において、β細胞機能不全改善効果は、標的遺伝子の発現量を指標として評価してもよいし、当該遺伝子の産物の発現量を指標として評価しても良い。さらに、評価系は動物を用いたin vivo系であってもよいし、培養細胞を用いたin vitro系であってもよい。
なお、本発明において「β細胞機能不全」とは、膵ランゲルハンス氏島β細胞がその正常な機能を失うことを意味する。具体的には、インスリン感受性機構の異常(いわゆる、インスリン抵抗性)およびインスリン分泌の低下、ならびにこれらによってもたらされる、血糖値の上昇を含む各種糖尿病病態を意味する。
本発明において、「検体」とは、培養細胞やその抽出物、あるいは動物から単離された血液、体液、組織、細胞、排泄物またはそれらの抽出物等、本発明の標的遺伝子が含まれる試料を意味する。特に本発明においては、血液または標的遺伝子やその産物が高発現している細胞が好ましく、したがって、膵ランゲルハンス氏島細胞、特にそのβ細胞が最も好ましい。
また本発明において、被験物質の「投与」とは、生物への“投与”や培養液への“添加”など、被験物質が検体中に存在する状態を作り出すことの全てを含むものとする。
さらに、「遺伝子」という用語は、DNAのみならず、RNA、cDNA、cRNAの全てを含むものとし、2本鎖と1本鎖の両方を含むものとする。
2.1 標的遺伝子を指標とした被験物質の評価方法(in vivo系)
標的遺伝子を指標としたin vivoにおける被験物質のβ細胞機能不全改善効果の評価方法は、下記の工程を含むことが好ましい。
工程1:動物を被験物質の投与または非投与の条件で飼育する。
工程2:上記動物の血液または細胞中における標的遺伝子の発現量を検出する。
工程3:被験物質の投与および非投与条件下における、標的遺伝子の発現量の相違に基づき、該被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する。
工程1:動物の飼育
本発明の方法で用いられる「動物」は特に限定されないが、β細胞機能不全を呈する2型糖尿病モデル動物が好ましい。そのような動物は市販のものであっても、公知の方法にしたがって作製されたものであってもよい。市販の2型糖尿病モデル動物としては、例えば、KKマウス(例えば、KK/Taマウス、KK/Sanマウス等)、KK-Ayマウス(例えば、KK-Ay/Taマウス等)、C57BL/KsJ db/dbマウス、C57BL/6J db/dbマウス、ob/obマウス等の2型糖尿病モデルマウス、およびGKラット等の2型糖尿病モデルラット等を挙げることができる。これらのマウスやラットは、例えば、日本クレア株式会社より購入することができる。
前記動物は、被験物質の投与または非投与条件下で適当な期間飼育を行う。動物への被験物質の投与量は特に限定されず、被験物質の性状や動物の体重に合わせて、適宜設定する。また、動物への被験物質の投与方法および投与期間も特に限定されず、被験物質の性状に合わせて、適宜設定すればよい。
工程2:標的遺伝子の検出
次に、被験物質の投与または非投与条件下で飼育された動物から血液または細胞を単離し、該血液または細胞中の標的遺伝子の発現量を検出する。
検出対象とする細胞としては、標的遺伝子やその産物が高発現している細胞が好ましく、したがって膵ランゲルハンス氏島細胞、特にそのβ細胞が好ましい。
標的遺伝子の検出方法としては、例えば、単離された血液または細胞からまず全RNAを抽出し、該全RNA中における標的遺伝子(mRNA)の発現量を検出する方法を挙げることができる。
(1)全RNAの抽出
全RNAの抽出は、公知の方法にしたがい、単離された血液または細胞よりRNA抽出用溶媒を用いて抽出する。該抽出溶媒としては、例えば、フェノール等のリボヌクレアーゼを不活性化する作用を有する成分を含むもの(例えば、TRIzol試薬:ギブコ・ビーアールエル社製等)が好ましい。RNAの抽出方法は特に限定されず、例えば、チオシアン酸グアニジン・塩化セシウム超遠心法、チオシアン酸グアニジン・ホットフェノール法、グアニジン塩酸法、酸性チオシアン酸グアニジン・フェノール・クロロホルム法(Chomczynski, P. and Sacchi, N., (1987) Anal. Biochem., 162, 156-159)等を採用することができる。なかでも、酸性チオシアン酸グアニジン・フェノール・クロロホルム法が好適である。
抽出された全RNAは、必要に応じてさらにmRNAのみに精製して用いてもよい。精製方法は特に限定されないが、真核細胞の細胞質に存在するmRNAの多くは、その3’末端にポリ(A)配列を持つため、この特徴を利用して、例えば、以下のように実施することができる。まず、抽出した全RNAにビオチン化オリゴ(dT)プローブを加えてポリ(A)RNAを吸着させる。次に、ストレプトアビジンを固定化した常磁性粒子担体を加え、ビオチン/ストレプトアビジン間の結合を利用して、ポリ(A)RNAを捕捉させる。洗浄操作の後、最後にオリゴ(dT)プローブからポリ(A)RNAを溶出する。この方法のほか、オリゴ(dT)セルロースカラムを用いてポリ(A)RNAを吸着させ、これを溶出して精製する方法も採用してもよい。溶出されたポリ(A)RNAは、さらに、ショ糖密度勾配遠心法等により分画してもよい。
(2)標的遺伝子の検出
次に、被験物質の投与または非投与条件下における、全RNA中の標的遺伝子の発現量を検出する。遺伝子の発現量は、得られた全RNAよりcRNAまたはcDNAを調製し、これを適当な標識化合物でラベルすることにより、そのシグナル強度として検出することができる。
以下、遺伝子の発現量の検出方法について、i)固相化試料を用いた解析方法、ii)RT−PCR法(リアルタイムPCR法)、iii)その他の解析方法に分けて、具体的に説明する。
i)固相化試料を用いた解析方法
公知の遺伝子を固定した固相化試料に、被験物質の投与または非投与条件下における標識したcDNAまたはcRNA(以下、「標識プローブ」という。)を、同じ条件で別個に、あるいは混合して同時にハイブリダイズさせる(Brown, P. O. et al. (1999) Nature genet. 21, suppliment、33-37)。前記標識プローブは、標的遺伝子のmRNAクローンでも、発現している全てのmRNAを標識したものでもよい。プローブ作製のための出発材料としては、精製していないmRNAを用いてもよいが、前述の方法で精製したポリ(A)RNAを用いることがより好ましい。固相化試料としては、例えば下記のものを挙げることができる。
a)遺伝子チップ:
本発明で用いられる遺伝子チップは、検出対象である標的遺伝子が固相化されているものであれば、市販のものであっても、公知の方法(Lipshutz, R. J. et al. (1999) Nature genet. 21, suppliment、20-24)に基づき作製されたものであってもよい。例えば、マウスの遺伝子が固定化された市販の遺伝子チップとしては、アフィメトリクス社製マウスMG-U74(U74A,U74B,U74C,U74v2)等を挙げることができる。
遺伝子チップによる検出と解析は、常法にしたがって実施することができる。例えば、アフィメトリクス社製チップを用いる場合であれば、製品に添付されたプロトコールにしたがい、ビオチン標識したcRNAプローブを調製する。次いで、該プロトコールにしたがってハイブリダイゼーションを行い、アビジンによる発光を検出、解析すれば遺伝子の発現量を求めることができる。
b)アレイまたはメンブレンフィルター:
本発明で用いられるアレイまたはメンブレンフィルターは、検出対象である標的遺伝子が固相化されているものであれば、市販のもの(例えば、インテリジーン:宝酒造社製、アトラスシステム:クローンテック社製等)であっても、公知の方法に基づいて作製されたものであってもよい。固相化する遺伝子は、GenBank等の配列情報をもとに作製されたプライマーにより逆転写酵素反応やPCRを行って作製した、クローン化cDNAまたはRT−PCR産物を用いる。
アレイを用いた検出では、逆転写酵素反応でポリ(A)RNAからcDNAを作製する際に、蛍光色素(例えば、Cy3、Cy5等)で標識されたd−UTP等を加えることにより標識プローブを調製する。このとき、被験物質の投与条件下におけるポリ(A)RNAと被験物質の非投与条件下におけるポリ(A)RNAをそれぞれ異なる色素で標識しておけば、後のハイブリダイゼーション時に両者を混合して一度に測定を行うことができる。検出は、例えば、宝酒造社の市販アレイであれば、同社のプロトコールにしたがい、ハイブリダイゼーションおよび洗浄を行い、蛍光シグナル検出機(例えば、GMS418アレイスキャナー:宝酒造社製等)を用いて蛍光シグナルの検出、解析を行う。
メンブレンフィルターを用いた検出では、逆転写酵素反応でポリ(A)RNAからcDNAを作製する際に、放射性同位元素(例えば、32P、33P)で標識されたd−CTP等を加えることにより標識プローブを調製し、常法によりハイブリダイゼーションを行う。例えば、市販のフィルター製マイクロアレイ:アトラスシステム(クローンテック社製)の場合は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄を行った後、解析装置(例えば、アトラスイメージ:クローンテック社製等)を用いて検出、解析を行う。
いずれの固相化試料を用いる場合も、比較する試料(被験物質の投与および非投与条件下)の両プローブをそれぞれハイブリダイズさせ、その遺伝子発現量の相違を検出する。このとき、各プローブのハイブリダイゼーション条件は同じにする。前述したように、蛍光標識プローブの場合は、それぞれのプローブを異なる蛍光色素で標識しておけば一つの固相化試料に両プローブの混合物を一度にハイブリダイズさせて蛍光強度を読み取ることで、遺伝子発現量の相違を検出することができる(Brown, P. O. et al. (1999) Nature genet. 21, suppliment、33-37)。
ii)RT−PCR法(リアルタイムPCR法)
RT−PCR法、およびその1つであるリアルタイムPCR(TaqMan PCR)法は、微量なDNAを高感度かつ定量的に検出できるという点で本発明の評価方法に適している。
リアルタイムPCR(TaqMan PCR)法では、5’端を蛍光色素(レポーター)で、3’端を蛍光色素(クエンチャー)で標識され、目的遺伝子の特定領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブが使用される。該プローブは、通常の状態ではクエンチャーによってレポーターの蛍光が抑制されている。この蛍光プローブを目的遺伝子に完全にハイブリダイズさせた状態で、その外側からTaq DNAポリメラーゼを用いてPCRを行う。Taq DNAポリメラーゼによる伸長反応が進むと、そのエキソヌクレアーゼ活性により蛍光プローブが5’端から加水分解され、レポーター色素が遊離し、蛍光を発する。リアルタイムPCR法は、この蛍光強度をリアルタイムでモニタリングすることにより、鋳型DNAの初期量を正確に定量することができる。
例えば、本発明の場合であれば、標的遺伝子(mRNA)を特異的に増幅するプライマー(例えば、配列番号17〜32に示される塩基配列からなるプライマー)、および標的遺伝子を特異的に検出するためのプローブ(例えば、配列番号33〜40に示される塩基配列からなるプローブ)を設計し、リアルタイムPCR(TaqMan PCR)を行って、標的遺伝子の発現量を検出、解析する。
iii)その他の解析方法
上記以外に、遺伝子発現量を解析する方法としては、例えば、サブトラクション法(Sive, H. L. and John, T. St. (1988) Nucleic Acids Research 16, 10937、Wang, Z., and Brown, D. D. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 88, 11505-11509)、ディファレンシャル・ディスプレイ法(Liang, P., and Pardee, A. B. (1992) Science 257, 967-971、Liang, P., Averboukh, L.,Keyomarsi, K., Sager, R., and Pardee, A. B. (1992) Cancer Research 52, 6966-6968)、ディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法(John, T. St., and Davis, R. W. Cell (1979) 16, 443-452)、また、適当なプローブを用いたクロスハイブリダイゼーション法(”Molecular Cloning, A Laboratory Manual” Maniatis, T., Fritsch, E.F., Sambrook, J. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press)等を挙げることができる。上記方法は、複数の標的遺伝子の発現プロファイルを総体的に評価検討する場合に有用である。
a)サブトラクションクローニング法:
サブトラクションクローニング法とは、特定の細胞に特異的に発現する遺伝子のcDNAを取得し、該cDNAをプローブとしてcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより遺伝子をクローニングする方法である。サブトラクションの方法としては、全RNAから一本鎖cDNAを作製し、これと別の細胞から得られた全RNAをハイブリダイズさせた後、ハイドロキシアパタイトカラムでハイブリダイズしなかった一本鎖DNAを単離し、このcDNAからcDNAライブラリーを作製する方法(バイオマニュアルシリーズ3、遺伝子クローニング実験法、羊土社 (1993)、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー)や、cDNAライブラリーをまず作製し、このライブラリーからヘルパーファージ等を用いて一本鎖DNAを調製し、この一本鎖DNAと別の細胞から得られた全RNAにビオチン標識したものとをハイブリダイズさせた後、アビジンを利用してハイブリダイズしなかった一本鎖DNAを単離し、DNAポリメラーゼによって二本鎖に戻してcDNAライブラリーを作製する方法(Tanaka, H., Yoshimura, Y., Nishina, Y., Nozaki, M., Nojima, H., and Nishimune, Y. (1994) FEBS Lett. 355, 4-10)等が挙げられる。
具体的には、まず被験物質の投与または非投与条件下の検体それぞれについてmRNAまたは全RNAを精製し、投与条件下の検体から精製した全RNAを鋳型として、逆転写酵素でcDNAを合成する。合成時に[α-32P]dNTPを加えることでcDNAを標識することもできる。標識されたcDNAと鋳型となった全RNAは安定な二本鎖DNA-RNAハイブリッドを形成しているが、アルカリ存在下で高温処理することによりRNAのみを分解し、一本鎖cDNAを生成させる。この一本鎖cDNAと、非投与条件下の検体から抽出したRNAとを混合し、適当な条件下で静置すると、ヌクレオチド配列の相補性から安定な二本鎖DNA-RNAハイブリッドが形成される。すなわち、非投与条件下でも発現している全RNAを鋳型とするcDNAはハイブリッドを形成するが、投与条件下でのみ特異的に発現しているRNAを鋳型としたcDNAは一本鎖のままである。次いで、ハイドロキシアパタイトカラムで二本鎖DNA-RNAハイブリッドと一本鎖cDNAとを分離し、一本鎖cDNAのみを精製する。このステップを繰り返すことで目的とした組織に特異的なcDNAを濃縮することができる。濃縮された特異的cDNAは放射性同位元素等で標識されている場合は、cDNAライブラリーをスクリーニングするプローブとして使用することができる。なお、この操作は市販のキット(例えば、PCRセレクトcDNAサブトラクションキット:クローンテック社製等)を利用して行うこともできる。
b)ディファレンシャル・ディスプレイ法:
ディファレンシャル・ディスプレイ法は、Liangらの方法(Science (1992) 257, 967-971)に準じ、例えば、以下のようにして実施することができる。まず、比較する2つの試料(本発明の場合は被験物質の投与および非投与条件下の検体)からmRNAまたは全RNAを抽出し、逆転写酵素を用いてこれを一本鎖cDNAに変換する。次いで、得られた一本鎖cDNAを鋳型として、適当なプライマーを用いてPCRを行う。プライマーとしては、例えば、ランダムプライマー(任意の配列からなる約10〜12merのプライマー)を用いることができる。あるいは、アンカードプライマー(anchored primer)およびアービトラリープライマー(arbitrary primer)各一種ずつを組み合わせて用いてもよい。アンカードプライマーとしては、オリゴd(T)VX[n=11〜12;V=グアニン、アデニンまたはシトシン;X=グアニン、アデニン、チミンまたはシトシン]からなるプライマーを用いることができる。また、アービトラリープライマーとしては、任意の配列からなる約10merのランダムプライマーを用いることができる。このようなPCRを、種々のプライマーを組み合わせて行うことで、広範囲の遺伝子群をスクリーニングすることが可能となる。
続いて、得られたPCR産物をゲル電気泳動し、ゲル上に展開(ディスプレイ)される全RNAの発現パターン(フィンガープリント)を比較解析することにより、いずれかの検体で特異的に発現している遺伝子を単離することができる。なお、この方法は、市販されているキット(例えば、RNAイメージ・キット:ジェンハンター社製等)を用いて行うこともできる。
c)ディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法:
ディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法は、目的の組織の全RNAから作製したcDNAライブラリーを、目的組織および対照組織の全RNAから合成した32P標識cDNAプローブでスクリーニングし、目的組織のプローブとのみハイブリダイズするクローンを選択する方法である。例えば、まず被験物質の非投与条件下の検体から精製した全RNAより、常法にしたがってcDNAライブラリーを作製し、そのライブラリーから2組のレプリカフィルターを作製する。次に、該非投与条件下の検体から精製した全RNAを鋳型として、逆転写酵素でcDNAを合成する。cDNAは、合成時に[α-32P]dNTPを加えることで標識する。標識されたcDNAと鋳型となった全RNAは安定な二本鎖DNA-RNAハイブリッドを形成しているが、アルカリ存在下で高温処理することにより全RNAのみを分解し、一本鎖cDNAを精製することができる。同様に、被験物質の投与条件下の検体から精製した全RNAを鋳型として、32Pで標識された一本鎖cDNAを作製する。これら両方の標識cDNAをそれぞれプローブとして、非投与条件下の検体から作製したフィルターとハイブリダイゼーションを行う。最後に、X線フィルムのオートラジオグラフィー像を比較し、投与または非投与条件下のcDNAプローブの一方にのみハイブリダイズするクローンを選択する。かくして、被験物質の投与によって特異的に発現量が変化する遺伝子をクローニングすることができる。
d)クロスハイブリダイゼーション法:
クロスハイブリダイゼーション法は、被験物質の投与または非投与条件下のいずれかの検体に由来するcDNAライブラリーに対して、適当なDNAをプローブとして、ストリンジェンシーの低い条件でハイブリダイゼーションを行い、一方にのみ発現しているクローンを選択する方法である。すなわち、前記ハイブリダイゼーションにより陽性クローンを得て、この陽性クローンをプローブとして、それぞれの検体に由来する全RNAに対してノーザンハイブリダイゼーションを行い、一方にのみ発現しているクローンを選択する。
こうして得られたcDNAをプローブとして、投与または非投与条件下の検体の全RNAに対してノーザンブロッティングを行うことにより、選択した遺伝子が投与条件下で特異的に発現していることを確認できる。
工程3:β細胞機能不全改善効果の評価
最後に、被験物質の投与および非投与条件下における、標的遺伝子の発現量の相違に基づき、該被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する。
すなわち、被験物質の投与条件下で非投与条件下よりも標的遺伝子の発現量が有意に減少している場合、該被験物質はβ細胞機能不全改善効果を有すると評価できる。ここで、「有意に減少している」とは、例えば、被験物質の投与および非投与条件下での標的遺伝子の発現量に統計的有意差(p<0.05)があることを意味する。
なお、評価は8つの標的遺伝子から選ばれる1つの遺伝子の発現量を単独評価するものであってもよいし、8つの標的遺伝子から選ばれる2つ以上の遺伝子の発現量(発現プロファイル)を総体的に評価するものであってもよい。
2.2 標的遺伝子の産物の発現を指標とした被験物質の評価方法(in vivo)
標的遺伝子の産物であるタンパク(配列番号9〜16)の発現量を指標としたin vivoにおける被験物質のβ細胞機能不全改善効果の評価は、下記の工程を含む方法であることが好ましい。
工程1:動物を被験物質の投与または非投与の条件下で飼育する。
工程2:上記動物の血液または細胞中における、配列番号9〜16のいずれか一つのアミノ酸配列で示されるタンパクを、該タンパクに特異的に結合する抗体を用いて検出する。
工程3:被験物質の投与および非投与における、上記タンパクの発現量の相違に基づき、該被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する。
工程1:動物の飼育
動物は、前項2.1に記載した方法にしたがい、被験物質の投与または非投与の条件下で飼育する。
工程2:タンパクの発現量の検出
次に、被験物質の投与または非投与条件下で飼育された動物から血液または細胞を単離し、該血液または細胞中における配列番号9〜16のいずれか一つのアミノ酸配列で示されるタンパクの発現量を、該タンパクに特異的に結合する抗体を用いて検出する。
(1)試料の調製
検体は、血液または標的遺伝子の産物が高発現している細胞が好ましく、したがって膵ランゲルハンス氏島細胞、特にそのβ細胞が好ましい。
前記血液または細胞(細胞抽出液として使用する)は、必要に応じて高速遠心を行うことにより不溶性の物質を除去した後、以下のようにして、検出用試料として調製する。
固相酵素免疫定量法(ELISA法)や放射性同位元素免疫定量法(RIA法)用の試料は、回収した血清をそのまま使用するか、緩衝液で適宜希釈したものを用いる。ウエスタンブロット法用(電気泳動用)試料は、細胞抽出液をそのまま使用するか、緩衝液で適宜希釈して、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動用の2−メルカトルエタノールを含むサンプル緩衝液(シグマ社製等)と混合したものを用いる。ドット/スロットブロット法用試料は、例えば、回収した細胞抽出液そのもの、または緩衝液で適宜希釈したものを、ブロッティング装置を使用して、直接メンブレンへ吸着させたものを用いる。
(2)試料の固相化
抗体を用いたタンパクの検出にあたっては、まず、検出すべきタンパクが含まれる試料中のポリペプチドをメンブレンあるいは96穴プレートのウェル内底面等に固相化する。
ウエスタンブロット法、およびドット/スロットブロット法では、メンブレンに試料を固相化する。固相化は、試料を一旦ポリアクリルアミドゲル電気泳動した後、展開されたポリペプチドをメンブレンに転写する方法(ウエスタンブロット法)と、直接メンブレンに試料またはその希釈液を染み込ませる方法(ドット/スロットブロット法)を挙げることができる。用いられるメンブレンとしては、ニトロセルロースメンブレン(例えば、バイオラッド社製等)、ナイロンメンブレン(例えば、ハイボンド−ECL(アマシャム・ファルマシア社製)等)、コットンメンブレン(例えば、ブロットアブソーベントフィルター(バイオラッド社製)等)またはポリビニリデン・ジフルオリド(PVDF)メンブレン(例えば、バイオラッド社製等)等を挙げることができる。また、ブロッティング方法としては、ウエット式ブロッティング法(CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY volume 2 ed by J. E. Coligan, A. M. Kruisbeek, D. H. Margulies, E. M. Shevach, W. Strober)、セミドライ式ブロッティング法(上記CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY volume 2 参照)等を挙げることができる。
一方、ELISA法やRIA法では、96穴プレートに試料を固相化する。固相化は、例えば、前記96穴プレート(例えば、イムノプレート・マキシソープ(ヌンク社製)等)に試料またはその希釈液(例えば、0.05% アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水(以下「PBS」という)で希釈したもの)を入れて4℃〜室温で一晩、または37℃で1〜3時間静置して、ウエル底面にポリペプチドを吸着させればよい。
(3)抗体の調製
本工程で用いられる抗体は、常法により(例えば、新生化学実験講座1、タンパク質1、p.389-397、1992)、検出すべきタンパク、あるいはそのアミノ酸配列から選択される任意のポリペプチドを用いて動物を免疫し、該動物生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein, Nature 256, 495-497, 1975、Kennet, R. ed., Monoclonal Antibody p.365-367, 1980, Prenum Press, N.Y.)にしたがって、目的とする抗体を産生する抗体産生細胞をミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを樹立し、このハイブリドーマから得られるモノクローナル抗体を用いてもよい。
抗体作製用の抗原としては、またはその少なくとも6個の連続した部分アミノ酸配列からなるポリペプチド、あるいはこれらに任意のアミノ酸配列や担体を付加した誘導体を用いることができる。特に、検出すべきタンパクのN末端に、キーホールリンペットヘモシアニンを担体として結合させたものが好ましい。
前記抗原ポリペプチドは、遺伝子操作を用いて、適当な宿主細胞に産生させてもよい。例えば、本発明の標的遺伝子の発現可能なベクターを作製し、これを宿主細胞に導入して該遺伝子を発現させればよい。
前記宿主細胞としては、原核細胞であれば、例えば、大腸菌(Escherichia coli)や枯草菌(Bacillus subtilis)等が挙げられる。目的の遺伝子をこれらの宿主細胞内で形質転換させるには、宿主と適合し得る種由来のレプリコンすなわち複製起点と、調節配列を含んでいるプラスミドベクターで宿主細胞を形質転換させる。該ベクターとしては、形質転換細胞に表現形質(表現型)の選択性を付与しうる配列を有するものが好ましい。
例えば、大腸菌であれば、K12株等がよく用いられ、ベクターとしては、一般にpBR322やpUC系のプラスミドが用いられるが、これらに限定されず、公知の各種菌株やベクターを使用できる。また、大腸菌で用いられるプロモーターとしては、例えば、トリプトファン(trp)プロモーター、ラクトース(lac)プロモーター、トリプトファン・ラクトース(tac)プロモーター、リポプロテイン(lpp)プロモーター、ポリペプチド鎖伸張因子Tu(tufB)プロモーター等を挙げることができ、いずれも好適に用いることができる。
また、枯草菌であれば、207−25株が好ましく、ベクターとしてはpTUB228(Ohmura, K. et al. (1984) J. Biochem. 95, 87-93)等が用いられるが、これに限定されるものではない。なお、ベクターに枯草菌のα−アミラーゼのシグナルペプチド配列をコードするDNA配列を連結することにより、菌体外での分泌発現も可能となる。
真核細胞の宿主細胞としては、脊椎動物、昆虫、酵母等の細胞が挙げられる。脊椎動物細胞としては、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman, Y. (1981) Cell 23, 175-182、ATCC CRL−1650)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL−61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub, G. and Chasin, L. A. (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77, 4126-4220)等がよく用いられているが、これらに限定されない。
脊椎動物細胞の発現ベクターとしては、通常発現させようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列等を有するものを使用できる。さらに、これは必要により複製起点を有してもよい。該発現ベクターの例としては、サイトメガロウイルス初期プロモーターを有するpCR3.1(Invitrogen社製)、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr(Subramani, S. et al. (1981) Mol. Cell. Biol. 1, 854-864)等が挙げられるが、これらに限定されない。
宿主細胞として、COS細胞を用いる場合を例に挙げると、発現ベクターとしては、SV40複製起点を有し、COS細胞において自立増殖が可能であり、さらに、転写プロモーター、転写終結シグナル、およびRNAスプライス部位を備えたものを好適に用いることができる。該発現ベクターは、ジエチルアミノエチル(DEAE)−デキストラン法(Luthman, H. and Magnusson, G. (1983) Nucleic Acids Res, 11, 1295-1308)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham, F. L. and van der Eb, A. J. (1973) Virology 52, 456-457)、電気パルス穿孔法(Neumann, E. et al. (1982) EMBO J. 1, 841-845)、およびリポフェクション法(Lopata et al. (1984) Nucl. Acids Res. 12, 5707-5717, Sussman and Milman (1984) Mol. Cell. Biol. 4, 1641-1643)等によりCOS細胞に取り込ませることができ、かくして所望の形質転換細胞を得ることができる。
また、宿主細胞としてCHO細胞を用いる場合には、所望の形質転換細胞を選択するために、導入遺伝子に抗生物質耐性等の選択マーカー(例えば、ネオマイシン(またはG418)耐性遺伝子neo等)を連結してトランスフェクションしたり、あるいは別個に調製した該選択マーカーと導入遺伝子とを同時トランスフェクションすることが好ましい。その後は、該選択マーカーの特性を利用することにより、安定的に形質転換された細胞を選択することができる。
昆虫細胞を宿主細胞として用いる場合には、鱗翅類ヤガ科のSpodoptera frugiperdaの卵巣細胞由来株化細胞(Sf−9またはSf−21)やTrichoplusia niの卵細胞由来High Five細胞(Wickham, T. J. et al, (1992) Biotechnol. Prog.i: 391-396)等が宿主細胞としてよく用いられ、バキュロウイルストランスファーベクターとしてはオートグラファ核多角体ウイルス(AcNPV)のポリヘドリンタンパクのプロモーターを利用したpVL1392/1393がよく用いられる(Kidd,i. M. and V.C. Emery (1993) The use of baculoviruses as expression vectors. Applied Biochemistry and Biotechnology 420, 137-159)。この他にも、バキュロウイルスのP10や同塩基性蛋白質のプロモーターを利用したベクターも使用できる。さらに、AcNPVのエンベロープ表面蛋白質GP67の分泌シグナル配列を目的蛋白質のN末端側に繋げることにより、組換え蛋白質を分泌蛋白質として発現させることも可能である(Zhe-mei Wang, et al. (1998) Biol. Chem., 379, 167-174)。
真核微生物を宿主細胞とした発現系としては、酵母が一般によく知られており、その中でもサッカロミセス属酵母、例えば、パン酵母Saccharomyces cerevisiaeや石油酵母Pichia pastorisが好ましい。該酵母等の真核微生物の発現ベクターとしては、例えば、アルコール脱水素酵素遺伝子のプロモーター(Bennetzen, J. L. and Hall, B. D. (1982) J. Biol. Chem. 257, 3018-3025)や酸性フォスファターゼ遺伝子のプロモーター(Miyanohara, A. et al. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80, 1-5)等を好ましく利用できる。また、分泌型蛋白質として発現させる場合には、分泌シグナル配列と宿主細胞の持つ内在性プロテアーゼあるいは既知のプロテアーゼの切断部位をN末端側に持つ組換え体として発現させることも可能である。例えば、トリプシン型セリンプロテアーゼのヒトマスト細胞トリプターゼを石油酵母で発現させた系では、N末端側に酵母のαファクターの分泌シグナル配列と石油酵母の持つKEX2プロテアーゼの切断部位をつなぎ発現させることにより、活性型トリプターゼが培地中に分泌されることが知られている(Andrew, L. Niles,et al. (1998) Biotechnol.Appl. Biochem. 28, 125-131)。
上記のようにして得られる形質転換体は、常法にしたがって培養することにより、その細胞内、または細胞外に目的のタンパクを産生する。該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種の培地を適宜選択できる。例えば、上記COS細胞であれば、RPMI1640培地やダルベッコ変法イーグル培地(以下「DMEM」という)等の培地に、必要に応じウシ胎児血清等の血清成分を添加したものを使用できる。
上記培養により、形質転換体の細胞内または細胞外に産生された組換えタンパクは、その物理的性質や化学的性質等を利用した公知の分離操作法により、分離・精製することができる。そのような方法としては、例えば、タンパク沈殿剤による処理、限外濾過、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の各種液体クロマトグラフィー、透析法、を単独あるいは組合せて利用できる。また、発現させる組換えタンパクに6残基からなるヒスチジンを繋げれば、ニッケルアフィニティーカラムで効率的に精製することもできる。目的とするタンパクは、以上に記載した方法を適宜組み合わせることにより、容易に高収率、高純度で製造できる。
(4)検出
得られた抗体は、単独、あるいは該抗体を一次抗体とし、これを特異的に認識する(抗体を作製した動物由来の抗体を認識する)標識二次抗体と組み合わせて検出に用いられる。
前記標識の種類として好ましいものは、酵素(アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ)またはビオチン(ただし二次抗体のビオチンにさらに酵素標識ストレプトアビジンを結合させる操作が加わる)であるが、これらに限定されない。標識二次抗体(または標識ストレプトアビジン)としては、予め標識された抗体(またはストレプトアビジン)が、各種市販されている。なお、RIAの場合は125I等の放射性同位元素で標識された抗体を用い、測定は液体シンチレーションカウンター等を用いて行う。
検出すべきタンパクの発現量は、これら標識された酵素等の活性を検出することにより測定される。なお、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼで標識する場合、これら酵素の触媒により発色する基質や発光する基質が市販されている。
発色する基質を用いた場合、ウエスタンブロット法やドット/スロットブロット法を利用すれば目視で検出することができる。ELISA法では、市販のマイクロプレートリーダーを用いて各ウェルの吸光度(測定波長は基質により異なる)を測定し、定量することが好ましい。また上述の抗体作製に使用した抗原の希釈系列を調製し、これを標準抗原試料として他の試料と同時に検出操作を行い、標準抗原濃度と測定値をプロットした標準曲線を作成することにより、他の試料中の抗原濃度を定量することも可能である。
一方、発光する基質を使用した場合は、ウエスタンブロット法やドット/スロットブロット法においては、X線フィルムまたはイメージングプレートを用いたオートラジオグラフィーや、インスタントカメラを用いた写真撮影により検出することができる。また、デンシトメトリーやモレキュラー・イメージャーFxシステム(バイオラッド社製)等を利用した定量も可能である。さらに、ELISA法で発光基質を用いる場合は、発光マイクロプレートリーダー(例えば、バイオラッド社製等)を用いて酵素活性を測定する。
(5)測定操作
a)ウエスタンブロット、ドットブロットまたはスロットブロットの場合
まず、抗体の非特異的吸着を阻止するため、予めメンブレンをそのような非特異的吸着を阻害する物質(スキムミルク、カゼイン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等)を含む緩衝液中に一定時間浸しておく操作(ブロッキング)を行う。ブロッキング溶液の組成は、例えば、5% スキムミルク、0.05〜0.1% ツイーン20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはトリス緩衝生理食塩水(TBS)が用いられる。スキムミルクの代わりに、ブロックエース(大日本製薬)、1〜10%のウシ血清アルブミン、0.5〜3%のゼラチンまたは1%のポリビニルピロリドン等を用いてもよい。ブロッキングの時間は、4℃で16〜24時間、または室温で1〜3時間である。
次に、メンブレンを0.05〜0.1% ツイーン20を含むPBSまたはTBS(以下「洗浄液」という)で洗浄して余分なブロッキング溶液を除去した後、ブロッキング溶液で適宜希釈した溶液中に抗体を一定時間浸して、メンブレン上の抗原に該抗体を結合させる。このときの抗体の希釈倍率は、例えば、前記組換え抗原を段階希釈したものを試料とした予備的なウエスタンブロッティング実験を行って決定することができる。この抗体反応操作は、好ましくは室温で2時間行う。抗体反応操作終了後、メンブレンを洗浄液で洗浄する。ここで、用いた抗体が標識されたものである場合は、ただちに検出操作を行うことができる。未標識の抗体を用いた場合には、引き続き二次抗体反応を行う。標識二次抗体は、例えば、市販のものを使用する場合はブロッキング溶液で2000〜20000倍に希釈して用いる(添付の指示書に好適な希釈倍率が記載されている場合は、その記載にしたがう)。一次抗体を洗浄除去した後のメンブレンを二次抗体溶液に室温で45分〜1時間浸し、洗浄液で洗浄してから、標識方法に合わせた検出操作を行う。洗浄操作は、例えば、まずメンブレンを洗浄液中で15分間振盪してから、洗浄液を新しいものに交換して5分間振盪した後、再度洗浄液を交換して5分間振盪することにより行う。必要に応じてさらに洗浄液を交換して洗浄してもよい。
b)ELISA法/RIA法
まず、試料を固相化させたプレートのウェル内底面への抗体の非特異的吸着を阻止するため、ウエスタンブロットの場合と同様、予めブロッキングを行っておく。ブロッキングの条件については、ウエスタンブロットの項に記載した通りである。
次に、ウェル内を0.05〜0.1% ツイーン20を含むPBSまたはTBS(以下「洗浄液」という)で洗浄して余分なブロッキング溶液を除去した後、洗浄液で適宜希釈した抗体を分注して一定時間インキュベーションし、抗原に該抗体を結合させる。このときの抗体の希釈倍率は、例えば、上記組換え抗原を段階希釈したものを試料とした予備的なELISA実験を行って決定することができる。この抗体反応操作は、好ましくは室温で1時間程度行う。抗体反応操作終了後、ウェル内を洗浄液で洗浄する。ここで、用いた抗体が標識されたものである場合は、ただちに検出操作を行うことができる。未標識の抗体を用いた場合には、引き続き二次抗体反応を行う。標識二次抗体は、例えば、市販のものを使用する場合は洗浄液で2000〜20000倍に希釈して用いる(添付の指示書に好適な希釈倍率が記載されている場合は、その記載にしたがう)。一次抗体を洗浄除去した後のウェルに二次抗体溶液を分注して室温で1〜3時間インキュベーションし、洗浄液で洗浄してから、標識方法に合わせた検出操作を行う。洗浄操作は、例えば、まずウェル内に洗浄液を分注して5分間振盪してから、洗浄液を新しいものに交換して5分間振盪した後、再度洗浄液を交換して5分間振盪することにより行う。必要に応じてさらに洗浄液を交換して洗浄してもよい。
例えば、本発明において、いわゆるサンドイッチ法のELISAは以下に記載する方法により実施することができる。まず、検出すべきタンパクの各アミノ酸配列より、親水性に富む領域をそれぞれ2箇所選択する。次に、各領域中のアミノ酸6残基以上からなる部分ペプチドを合成し、該部分ペプチドを抗原とした2種類の抗体を取得する。このうち一方の抗体を標識しておく。標識しなかった方の抗体は、96穴ELISA用プレートのウェル内底面に固相化する。ブロッキングの後、試料液をウェル内に入れて常温で1時間インキュベーションする。ウェル内を洗浄後、標識した方の抗体希釈液を各ウェルに分注してインキュベーションする。再びウェル内を洗浄後、標識方法に合わせた検出操作を行う。
工程3:β細胞機能不全改善効果の評価
最後に、被験物質の投与および非投与における、配列番号9〜16のいずれか一つのアミノ酸配列で示されるタンパクの発現量の相違に基づき、該被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する。
すなわち、被験物質の投与条件下で非投与条件下よりも前記タンパクの発現量が有意に減少している場合、該被験物質はβ細胞機能不全改善効果を有すると評価できる。ここで、「有意に減少している」とは、例えば、被験物質の投与および非投与条件下での該タンパクの発現量に統計的有意差(p<0.05)があることを意味する。
配列番号9〜16のいずれか一つのアミノ酸配列で示される8種のタンパクのうち、いずれか1のタンパクの発現量を単独評価するものであってもよいし、これらから選ばれる2以上のタンパクの発現量(発現プロファイル)を総体的に評価するものであってもよい。
2.3 標的遺伝子、またはその産物を指標とした被験物質の評価方法(in vitro)
標的遺伝子、またはその産物を指標としたin vitroにおける被験物質のβ細胞機能不全改善効果の評価方法は、下記の工程を含むことが好ましい。
工程1:細胞を被検物質の添加または非添加条件下で培養する。
工程2:上記細胞中の標的遺伝子の発現量を検出するか、または、その産物であるタンパクの発現量を該タンパクに特異的に結合する抗体を用いて検出する。
工程3:被検物質の添加および非添加条件下における、上記標的遺伝子またはその産物であるタンパクの発現量の相違に基づき、該被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する。
工程1:細胞の培養
本発明の評価方法で用いられる細胞は、本発明にかかる標的遺伝子を発現している哺乳動物細胞であれば特に限定されない。好ましくは哺乳動物由来、特に哺乳動物のランゲルハンス氏島由来の培養細胞が好ましく、特にそのβ細胞が好ましい。哺乳動物としては、ヒト、マウス、ラットまたはハムスター等が好ましく、ヒトまたはマウスがより好ましい。
特に、前記細胞は糖尿病におけるβ細胞機能不全病態を反映し、本発明にかかる標的遺伝子を高発現している細胞が好ましい。そのような細胞としては、例えば、2型糖尿病モデル動物(例えば、前述の糖尿病モデルマウス等)由来の初代培養細胞を挙げることができる。また、本発明の標的遺伝子をそのプロモーター領域とともに導入した細胞など、人為的に形質転換された細胞を作製し、使用してもよい。
細胞は、被検物質の添加または非添加条件下で培養する。培養方法は特に限定されず、当該細胞に適した培養方法を適宜選択すればよい。培養細胞への被検物質の添加(投与)方法や添加量も特に限定されず、例えば、被検物質を培養培地に添加して細胞を一定期間培養するなどすればよい。被検物質存在下で培養する期間も適宜設定すればよいが、好ましくは30分〜24時間である。
工程2:標的遺伝子、またはその産物の発現量の検出
次に、被検物質の添加および非添加条件下における、上記細胞中の標的遺伝子の発現量の相違を検出するか、または、その産物であるタンパクの発現量の相違を該タンパクに特異的に結合する抗体を用いて検出する。
標的遺伝子の検出は、基本的に2.1に記載した方法にしたがって行えばよい。また、抗体を用いたタンパクの検出は、2.2に記載した方法にしたがって行えばよい。
上記方法のほか、標的遺伝子のプロモーター支配下に、該プロモーター活性の検出を可能にする遺伝子(以下「レポーター遺伝子」という。)を利用して、間接的に標的遺伝子やその産物の発現を検出することもできる。以下、レポーター遺伝子を利用した検出方法について説明する。
(1)レポーター遺伝子
レポーター遺伝子は、宿主細胞が本試験方法の一連の過程において産生し得る他のいかなるタンパク質とも明確に区別可能な、レポーター蛋白質をコードするものであればよい。好ましくは、形質転換前の細胞が該レポーター蛋白質と同一または類似のタンパク質をコードする遺伝子を持たないようなものがよい。例えば、レポーター蛋白質が該細胞に対して毒性を有するようなものや、該細胞が感受性を有する抗生物質の耐性を付与するものであるような場合でも、レポーター遺伝子の発現の有無は細胞の生存率で判定することが可能である。しかしながら、本発明で用いられるレポーター遺伝子としてより好ましいものは、発現量を特異的かつ定量的に検出することができる(例えば、該レポーター遺伝子にコードされるタンパク質に対する特異的抗体が取得されているような)構造遺伝子である。より好ましくは、外来の基質と特異的に反応することにより定量的測定が容易な代謝産物を生じるような酵素等をコードする遺伝子である。そのようなレポーター遺伝子としては、例えば、以下の酵素やタンパクをコードする遺伝子を例示することができるが、本発明はそれらに限定されない。
a)クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ:
クロラムフェニコールにアセチル基を付加する酵素で、いわゆるCATアッセイ等で検出することができる。プロモーターを組み込むだけでレポーターアッセイ用のベクターを調製できるベクターとして、pCAT3−Basicベクター(プロメガ社製)が市販されている。
b)ホタルルシフェラーゼ:
ルシフェリンを代謝した際に生じる生物発光を測定することにより定量できる。レポーターアッセイ用のベクターとしては、pGL3−Basicベクター(プロメガ社製)が市販されている。
c)β−ガラクトシダーゼ:
呈色反応、蛍光または化学発光でそれぞれ測定可能な基質がある。レポーターアッセイ用のベクターとしては、pβgal−Basic(プロメガ社製)が市販されている。
d)分泌型アルカリホスファターゼ:
呈色反応、生物発光または化学発光でそれぞれ測定可能な基質がある。レポーターアッセイ用のベクターとしては、pSEAP2−Basic(クロンテック社製)が市販されている。
e)緑色蛍光タンパク質(green-fluorescent protein):
酵素ではないが、自らが蛍光を発するので直接定量できる。同じくレポーターアッセイ用のベクターとしてpEGFP−1(クロンテック社製)が市販されている。
(2)レポーター遺伝子の導入
レポーター遺伝子の導入は、公知の方法にしたがい、レポーター遺伝子発現プラスミドと、本発明の標的遺伝子を哺乳類細胞で発現可能にした組換えベクターを作製し、これらを細胞に同時トランスフェクションすればよい。ベクターとしては、pCR3.1(インビトロジェン社製)、pCMV−Script(ストラタジーン社製)等を好適に用いることができるが、これらに限定されない。
細胞に発現プラスミドを導入する方法としては、DEAE−デキストラン法(Luthman, H. and Magnusson, G. (1983) Nucleic Acids Res. 11, 1295-1308)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham, F. L. and van der Eb, A. J. (1973) Virology 52, 456-457)、電気パルス穿孔法(Neumann, E. et al. (1982) EMBO J. 1, 841-845)、リポフェクション法(Lopata et al. (1984) Nucl. Acids Res. 12, 5707-5717, Sussman and Milman (1984) Mol. Cell. Biol. 4, 1641-1643)等を挙げることができるが、これらに限定されず、汎用される任意の方法を採用することができる。ただし、細胞がいわゆる浮遊細胞である場合は、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法以外の方法を用いることが好ましい。いずれの方法においても、用いる細胞に応じて、至適化されたトランスフェクション条件を用いることが必要である。
(3)評価
得られた本発明の標的遺伝子の発現ベクターと、レポーター発現ベクターを同時トランスフェクションした細胞を培養すると、該標的遺伝子の発現依存的にレポーター遺伝子の転写が促進される。したがって、レポーター遺伝子の発現が可能な条件下において、培地中に任意の被検物質を添加した場合と添加しない場合でのレポーター遺伝子の発現変化をみれば、標的遺伝子の発現変化を評価することができる。ここで、「レポーター遺伝子の発現が可能な条件」とは、レポーター発現ベクターによってトランスフェクトされた細胞が生存して、レポーター遺伝子の産物(レポーター蛋白質)の生産が可能な条件であればよい。好ましくは、使用される細胞株に適合した培地(ウシ胎児血清等の血清成分を添加してもよい)で、4〜6%(最も好適には5%)の炭酸ガスを含む空気存在下、34〜40℃(最も好適には37℃)で2〜3日間(最も好適には2日間)培養する。
(4)その他(形質転換細胞株の樹立)
以上のような、一過的な遺伝子導入法を利用した試験方法とは別に、レポーター遺伝子、または本発明の標的遺伝子を含む2つの発現ベクターで、宿主細胞を二重に形質転換した細胞を利用した試験方法も採択可能である。この場合には、pIND(インビトロジェン社製)やpTet−On(クロンテック社製)等の発現ベクターを利用して、本発明の標的遺伝子の発現を誘導する条件下で該レポーター遺伝子の発現が促進されるような細胞株を樹立することが必要となる。このような形質転換細胞では、導入される遺伝子は、宿主細胞の染色体に組み込まれるなどして、宿主細胞の継代を重ねても安定的に保持されることが望ましい。宿主細胞には、所望の形質転換細胞を選択するために、導入遺伝子に抗生物質耐性等の選択マーカー(例えば、ネオマイシン(またはG418)耐性遺伝子neo等)を連結してトランスフェクションしたり、あるいは別個に調製した該選択マーカーと導入遺伝子とを同時トランスフェクションすることが好ましい。その後は、該選択マーカーの特性を利用することにより、安定的に形質転換された細胞を選択することができる。
こうして得られた細胞株を、本発明の標的遺伝子の発現が誘導される条件下におくと、該遺伝子の発現依存的にレポーター遺伝子の転写が促進される。したがって、レポーター遺伝子の発現が可能な条件下において、被検物質を添加した場合と添加しない場合でのレポーター遺伝子の発現量変化をみれば、標的遺伝子の発現量が評価できる。
工程3:β細胞機能不全改善効果の評価
最後に、被験物質の投与および非投与における、標的遺伝子またはその産物の発現量の相違に基づき、該被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する。
すなわち、被験物質の投与条件下で非投与条件下よりも標的遺伝子またはその産物の発現量が有意に減少している場合、該被験物質はβ細胞機能不全改善効果を有すると評価できる。ここで、「有意に減少している」とは、例えば、被験物質の投与および非投与条件下での標的遺伝子またはその産物の発現量に統計的有意差(p<0.05)があることを意味する。
なお、評価は、8つの標的遺伝子から選ばれる1つの遺伝子、またはその産物の発現量を単独評価するものであってもよいし、8つの標的遺伝子から選ばれる2つ以上の遺伝子、またはそれらの産物の発現量(発現プロファイル)を総体的に評価するものであってもよい。
3.β細胞機能不全の評価
本発明にかかる、配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子産物(配列番号9〜16のいずれか一つのアミノ酸配列で示されるタンパク)の発現はβ細胞機能不全の指標となる。したがって、血液中における配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子のヒトオーソログ産物(配列番号57〜64)の発現量を指標として、被験者のβ細胞機能不全(糖尿病の病態)を診断することができる。
すなわち、本発明は、被験者より単離された血液中(検体)における、配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子のヒトオーソログ産物、すなわち、配列番号57〜64のいずれか一つのアミノ酸配列で示されるタンパクの発現量を測定することにより、該被験者のβ細胞機能不全を評価する方法を提供する。
検体中のタンパクの発現量の測定は、前項2.2の工程2にしたがって実施することができる。検体中の当該タンパク質の発現量が正常人に比較して有意に高い場合、該被験者はβ細胞機能不全を生じている可能性が高いと評価することができる。ここで、「有意に高い」とは、例えば、健常人および被験者の血液中における該タンパクの発現量に統計的有意差(p<0.05)があることを意味する。
上記評価は、配列番号57〜64のいずれか一つのアミノ酸配列で示されるタンパクのうちいずれか1のタンパクの発現量を単独評価するものであってもよいし、これらから選ばれる2以上のタンパクの発現量(発現プロファイル)を総体的に評価するものであってもよい。
4.β細胞機能不全改善効果の評価用キット
本発明は、また、本発明の標的遺伝子またはその産物の発現量を指標とした、被験物質のβ細胞機能不全改善効果、または被験者のβ細胞機能不全の評価用のキットを提供する。
前記キットは、以下のa)〜e)からなる群より選ばれる少なくとも1以上を含む。
a)配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子を特異的に増幅するための、15〜30塩基長の連続したオリゴヌクレオチドプライマー
b)配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子に特異的に結合し、該遺伝子を検出するための20〜1500塩基長の連続したポリヌクレオチドプローブ
c)上記b)記載のポリヌクレオチドプローブが固定された固相化試料
d)配列番号9〜16のいずれか一つのアミノ酸配列で示されるタンパクに特異的に結合し、該タンパクを検出するための抗体
e)上記d)記載の抗体に特異的に結合しうる二次抗体
前記a)記載のプライマーは、本発明の標的遺伝子の塩基配列(配列番号1〜8)に基づき、市販のプライマー設計ソフトを用いるなど、常法にしたがい容易に設計し、増幅することができる。このようなプライマーの例としては、例えば配列番号17〜32に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを挙げることができる。
また、前記b)記載のプローブは、本発明の標的遺伝子(配列番号1〜8)に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、20〜1500塩基長程度のものが好ましい。具体的には、ノーザンハイブリダイゼーション法であれば、20塩基長程度の1本鎖オリゴヌクレオチドか2本鎖DNAが好適に用いられる。また、マイクロアレイであれば、100〜1500塩基長程度の2本鎖DNA、または20〜100塩基長程度の1本鎖オリゴヌクレオチドが好適に用いられる。一方、Affimetrix社のGeneChipTMシステムは25塩基長程度の1本鎖オリゴがよい。これらは、特に本発明の標的遺伝子の3’非翻訳領域に存在する配列特異性が高い部分に特異的にハイブリダイズするプローブとして設計することが好ましい。これらのプライマーやプローブは、適当な標識試薬によりラベル(例えば、酵素標識、放射性標識、蛍光標識等)されていてもよく、またビオチン、リン酸、アミン等により修飾されていてもよい。このようなプローブの例としては、配列番号33〜40に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを挙げることができる。
また、前記c)記載の固相化試料は、前記b)記載のプローブをガラス板、ナイロンメンブレン、マイクロビーズ、シリコンチップ等の固相に固定することにより作製される。このような固相化試料とその作製方法については、既に2.1で説明したが、例えば、遺伝子チップ、cDNAアレイ、オリゴアレイ、メンブレンフィルター等を挙げることができる。
前記d)およびe)記載の抗体は、2.2に記載した方法により作製することができる。該抗体は、適当な標識試薬によりラベル(例えば、酵素標識、放射性標識、蛍光標識等)されていてもよいし、ビオチン等により適当に修飾されていてもよい。
本発明のキットは上記した構成要素のほか、必要に応じて、ハイブリダイゼーション、プローブの標識、ラベル体の検出等、本発明にかかる評価方法に必要な他の試薬等を適宜含んでいてもよい。
5.その他
5.1 β細胞機能不全の予測
本発明にかかる標的遺伝子は2型糖尿病モデル動物で高発現している遺伝子である。したがって、該遺伝子の発現量はヒトにおける2型糖尿病の病態を反映して増加する。特に、これら遺伝子は、β細胞機能不全の改善によって発現が正常化されることから、ヒトにおけるβ細胞機能不全を反映するものと思われる。PCR等の増幅法が確立している遺伝子では、微量な発現量の変化を当該遺伝子産物であるタンパクの発現よりも早期に検出することが可能である。
したがって、例えば、被験者の血液や細胞における当該遺伝子(配列番号49〜56)の発現量を測定することにより、該被験者の糖尿病の病態、特にβ細胞機能不全、の改善を予測することも可能である。こうした予測は、標的遺伝子とともに、他のβ細胞機能不全を反映する因子、例えば、TNF-αやアディポネクチン等の遺伝子の発現プロファイルを総体的に解析することにより、より正確に行うことができる。
5.2 β細胞機能不全を有するモデル動物の作製
本発明にかかる標的遺伝子やその産物の発現を人為的に高めることにより、β細胞機能不全を有する動物(例えば、マウス等)を作製することも可能である。例えば、前記標的遺伝子(配列番号1〜8)を高発現するトランスジェニック動物を作製し、ヒト2型糖尿病に代表されるβ細胞機能不全病態が現れれば、該動物を利用してβ細胞機能不全やその改善についての研究を行うことができる。同様に、これらの産物であるタンパク(配列番号9〜16)を直接動物に投与することによって、β細胞機能不全を有するモデル動物を作製することも可能と考えられる。
以下、実施例および参考例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕 C57BL/KsJ db/dbマウスへの薬剤投与および血液生化学値測定
1.投与薬物
インスリン抵抗性改善剤:5−[4−(6−メトキシ−1−メチルベンズイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩(以下、「化合物A」と記載する;化合物Aの製法については、特開平9−295970号公報(米国特許第5886014号明細書、欧州特許出願公開第745600号明細書)、および参考例1参照)
2.動物
糖尿病モデルマウスとして雄性C57BL/KsJ db/dbマウス、および正常マウスとして雄性C57BL/KsJ db/+mマウス(ともに、日本クレア社製)を使用した。マウスは5週齢で購入後、約1週間馴化した後、6週齢で実験に供した。飲水および摂餌(F2、船橋農場製)は、馴化・投与期間中ともに自由摂取とした。飼育および投与期間中の実験は、実験動物管理室により管理されている実験動物エリア内で行った。
3.試験方法
a)処置および実験群
実験前にマウスの体重測定、および尾静脈から採血を行い血糖値を測定した。マウスは、体重および血糖値が群毎にほぼ等しくなるように群分けした。実験群は、1)db/+mマウス対照群、2)db/dbマウス対照群、3)db/dbマウス 化合物A(0.01%)投与群とし、各群7〜10匹ずつを実験に用いた。
b)投与方法および期間
化合物Aの投与は、粉末の餌(F2、船橋農場製)に化合物Aを0.01%の濃度で添加することによって行った(混餌投与)。対照群には、化合物A非添加の餌を与えた。
c)実験期間および採血、解剖、ラ氏島単離
実験期間は、6週齢より投与を開始し、8日後の午前中に採血および体重測定を行い、同日午後解剖を行った。マウスは、断頭後、開腹し、27G-30Gの静脈針を用いて膵管より膵臓にHBSS(Hank’s Balanced Salt Solution : Gibco BRL製 P/N24020-117)またはKRB(Krebs ringer buffer pH 7.4 : 129 mM NaCl, 4.8 mM KCl, 1.2 mM MgSO4, 1.2mM KH2PO4, 2.5mM CaCl2, 5mM NaHCO3, 10mM HEPES pH7.4, 0.2 % BSA)に溶解した4 mg/ml Collagenase Type XI(Sigma製 P/N C7657)を約2.5ml灌流した。その後、膵臓を50mlのファルコンチューブに摘出し、37℃で3分30秒間インキュベートした。次いで、冷却したHBSSまたはKRBを30ml加え、穏やかにピペッティング後、氷上で4分間静置した。上清を約25ml取り除き、再び冷却したHBSSまたはKRBを30ml加え、穏やかにピペッティング後、氷上で3分間静置した。上清を約29ml取り除き(6ml程度残す)、残った懸濁物を茶漉しを使ってBacterial dish 2枚に濾過した。ピペットマン(P-10)を用いて実体顕微鏡下でラ氏島を拾い、回収した。採取したラ氏島は各群1本にまとめた後、Trizole reagent(Gibco BRL製 P/N 15596-018)で溶解し、RNA抽出用とした。
d)血液生化学値の測定(測定項目および測定方法)
測定項目は、血糖値、体重、血中インスリン濃度とした。
血糖値はグルコローダーGXT(A&T社製)を用いて測定した。また血中インスリン濃度は、RAT INSULIN RIA KIT (LINCO Research, Inc.製)を用い、ラジオイムノアッセイ法により測定した。結果を表1および図1(A〜C)に示す。
Figure 2004154136
e)評価
薬効の評価は、血糖値、血漿中インスリン濃度、体重の各項目について行った。
4.結果
図1(A〜C)に示すように、db/dbマウス対照群では、顕著な血糖値の上昇、血漿インスリン濃度の低下といった2型糖尿病に特徴的な症状がみられた。一方、db/dbマウス 化合物A(0.01%)投与群では、血漿インスリン濃度および血糖値の正常化が見られ、インスリン抵抗性の改善によるβ細胞機能の改善が示唆された。
〔実施例2〕 ラ氏島からの全RNAの抽出
実施例1で採集したラ氏島は、Trizole reagent(Gibco BRL製 P/N 15596-018)に溶解後、0.2容量のクロロホルムを加え、15秒間転倒混和した。次いで、室温で10分間静置してから、12,000×g、4℃で15分間遠心分離した。遠心分離後、上層を回収し、0.8容量のリボヌクレアーゼ不含イソプロピルアルコールを加えて混和した。これを室温で10分間静置後、12,000×g、4℃で15分間遠心分離した後、上清を除去してリボヌクレアーゼ不含80%エタノールを加えた。さらに、これを12,000×g、4℃で10分間遠心分離し、上清を除去して、沈殿を乾燥させることにより、全RNAを得た。得られた全RNAは、Agilent 2100バイオアナライライザー(Agilent technologies製)を用いて、28Sおよび18Sの波形を確認することにより精製度を確認した。全RNAは、使用時まで-80℃に保存した。
〔実施例3〕 GeneChipTM解析
1.試験方法
チップ解析は、アフィメトリクス社の発現解析技術マニュアル(Expression Analysis Technical Manual)にしたがって、以下の方法により行った。
a)cDNAの合成
上記実施例2で得られた全RNA各5μgを出発材料として、上記マニュアル記載の方法にしたがってcDNAの合成および精製を行った。
b)cRNAの合成
上記a)で得られたcDNAを鋳型として、上記マニュアル記載の方法にしたがってcRNAの作製を行った。得られたcRNA 10μgは断片化し、プローブ溶液に加えた。
c)プローブ溶液の作製
プローブ溶液に加える各種コントロールcRNA(GeneChipTM Eukaryotic Hybridization Control Kit)はアマシャム・ファルマシア社から購入した。
d)ハイブリダイゼーション
上記c)で得られたプローブとハイブリダイズさせるチップとして、アフィメトリクス社製マウスゲノムU74セット(Murine Genome U74 ver.2 Set:MG-U74Av2、MG-U74Bv2、MG-U74Cv2)を用いた。ハイブリダイゼーションとその後の洗浄操作は上記マニュアル記載にしたがって行った(ハイブリダイゼーション条件は、45℃、16−20時間とした)。
e)解析
上記d)でハイブリダイゼーション操作を行ったチップのデータ解析は、上記マニュアル記載にしたがって、GeneChipTM Microarray Suite 4.0 (Affymetrix社)にて行った。なお、遺伝子の発現レベルは、各遺伝子の相対的発現量を表す「Fold Change値(以下、Fold値という)」で示した。db/+mマウス対照群のデータを基準にして、db/dbマウス対照群およびdb/dbマウス 化合物A投与群で得られたデータを比較検討した。
そして、MG-U74v2チップにおいて、db/+mマウス対照群と比較して、db/dbマウス対照群で発現が高い遺伝子の中でdb/dbマウスに化合物A投与を投与することにより、遺伝子発現が正常化してくる遺伝子を抽出した。なお、抽出にあたって、予め糖尿病との関連が判明している遺伝子は除くこととした。
2.結果
結果として、糖尿病モデルマウス(db/dbマウス対照群)で高発現している遺伝子であって、かつインスリン抵抗性改善剤化合物A投与によってその発現が正常化してくる遺伝子として、表2に示すような8つの遺伝子が新たに特定された。
Figure 2004154136
〔実施例4〕 TaqMan PCRによる遺伝子発現解析
実施例3で特定された8つの遺伝子ついて、さらにTaqMan PCRを用いてその発現量を解析した。
1.試験方法
a)cDNAの合成
(以下の実験には、SuperScript Preamplification System : Gibco BRL製 P/N 18089-011を使用)
上記実施例2で得られた各1μgの全RNAを出発材料として、10 x Reaction buffer 1μl、DNaseI(1U/μl : Gibco BRL P/N 18068-015) 1Uに水を加え全量10μlとし、室温で15分間インキュベートした。次に25mM EDTA 1μlを加え、65℃で15分間インキュベートした後、氷冷した。これにOligo(dT) (0.5μg/μl) 1μl加え、70℃で10分間インキュベートした後、氷冷した。次に、10 x PCR buffer 2μl、25mM MgCl2 2μl、10mM dNTP mix 1μl、0.1M DTT 2μl、SuperScript II RT (200U/μl) 1μlを加え、42℃で50分さらに70℃で15分インキュベートした。これにRNase H 1μl加え37℃で20分間インキュベートし、cDNAを作製した。スタンダード用サンプルについては、水を29μl加え、これを5倍希釈で6段階に希釈した(原液の濃度を625とした)。測定用のサンプルについては、水を229μl加えた。
さらに、比較のために、膵β細胞由来 培養系細胞 MIN6を用いて同様にサンプルを調整した。
b)反応液の調整
Upper primer (100μM) 0.1μl、Lower primer (100μM) 0.1μl、TaqMan Probe (6.5μM) 1.5μl、2 x TaqMan Universal PCR Master Mix(PE ABI P/N 430447) 25μl、水 21.3μlを混ぜた反応液中に上記のa)で作製したcDNA 5μl加えた。プライマーは、Invitrogen社で合成したものを使用し、プローブは、AmershamでFAMラベルで合成したものを使用した。
各Primerおよび Probeの配列を以下に示す。
i) AK005296用プライマーおよびプローブ
Upper Primer: 5’-TACTGACCCGAGAAGCAGCA-3’(配列番号17)
Lower Primer: 5’-CAGCTCTACATCAAATGCCCA-3’(配列番号18)
Probe (FAM label): 5’-CGGACCTTCTCGTCTCTGCACATTGA-3’(配列番号33)

ii) Zsig37 (AF192499)用プライマーおよびプローブ
Upper Primer: 5’-TCCACCCCAGATCAACATCA-3’(配列番号19)
Lower Primer: 5’-TTTTGCCGTACTTCCCCTG-3’(配列番号20)
Probe (FAM label): 5’-CATCCTGAAAGGCGAGAAAGGTGACC-3’ (配列番号34)

iii) hypothetical protein (NM_021434)用プライマーおよびプローブ
Upper Primer: 5’-GACATTGCCTCCCAAATTCA-3’(配列番号21)
Lower Primer: 5’-CATCCGCACTATTGTCCAGC-3’(配列番号22)
Probe (FAM label): 5’-ATGCTGTACCTGCTTCTGAGCCTGTGTATG-3’(配列番号35)

iv) AK006207用プライマーおよびプローブ
Upper Primer: 5’-CCTGTATTTCCAAGCTCTGCG-3’(配列番号23)
Lower Primer: 5’-ATCCCAGAGCAAACACCACA-3’(配列番号24)
Probe (FAM label): 5’-ACATTTGTCCATGAAAGCCCTGCCTT-3’(配列番号36)

v) BC010831用プライマーおよびプローブ
Upper Primer: 5’-CACAACCCACCCACATTGAT-3’(配列番号25)
Lower Primer: 5’-TCCTTAGCAATGAGCATCCG-3’(配列番号26)
Probe (FAM label): 5’-ACCAGGAGTCTGCTCTGGCCAAACTT-3’ (配列番号37)

vi) AK013996用プライマーおよびプローブ
Upper Primer: 5’-ATCCTACTGGTGCTGAGTTCCC-3’(配列番号27)
Lower Primer: 5’-GTGGTAATGCACACAATGCAGA-3’(配列番号28)
Probe (FAM label): 5’-TACCTGGCCTGGATCCTGTTCTTTGTGTT-3’(配列番号38)

vii) BR13 (AF272044)用プライマーおよびプローブ
Upper Primer: 5’-AGGCGGATCAACAAACGTG-3’(配列番号29)
Lower Primer: 5’-TGAGCGTCTCCACCACAAAT-3’(配列番号30)
Probe (FAM label): 5’-ACGCCATCCGCCACTTCGAGAATA-3’ (配列番号39)

viii) κ‐casein (NM_007786)用プライマーおよびプローブ
Upper Primer: 5’-CTGCTGGAGTACCTTATGCCA-3’(配列番号31)
Lower Primer: 5’-GGCGGTGTTATCCTGATTTTC-3’(配列番号32)
Probe (FAM label): 5’-CAAACCCATCCTTTCTTGCCATGCC-3’(配列番号40)
c)反応および測定
前項b)で調整したサンプルを、50℃で2分、95℃で10分反応させた後、95℃で15秒, 60℃で1分を40回繰り返し、1サイクル毎にレポーター色素の発光量ABI PRISM 7700を用いて測定した。
d)解析
ABI PRISM 7700を用いて各遺伝子の相対的な発現量を計算し、それらをβ-actin遺伝子の発現量で補正したものを解析に用いた。結果を表3および図2〜図9に示す。
Figure 2004154136
2.結果
表3および図2〜9より明らかなように、実施例3で特定された8つの遺伝子は、正常マウス(db/+mマウス)群およびβ細胞由来培養系細胞(MIN6)に比較して、糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)群では顕著に高い発現量を示した。一方、化合物A投与群では、これら遺伝子の発現量は、より正常化されていることが確認された。
以上の結果より、配列番号1〜8の塩基配列で示される遺伝子の発現量は、糖尿病の病態やその改善、特にβ細胞機能不全改善の指標となりうることが示された。
〔実施例5〕 C57BL/KsJ db/dbマウス(薬剤非投与)におけるβ細胞機能不全の発症
2型糖尿病モデルマウスの血液生化学値を5週齢〜13週齢の間で測定し、当該マウスにおけるインスリン抵抗性とこれに伴うβ細胞機能不全の発症を観察した。
1.動物
2型糖尿病モデルマウスとして雄性C57BL/KsJ db/dbマウス、および正常マウス(対照)として雄性C57BL/KsJ db/+mマウス(ともに、日本クレア社製)を使用した。マウスは5週齢で購入し、馴化した後、各週齢(5、6、7、8、10、11、12、13週齢)で実験に供した。マウスは、馴化・投与期間中ともに、飲水および摂餌(F2、船橋農場)は自由摂取とした。飼育および投与期間中の実験は、実験動物管理室により管理されている実験動物エリア内で行った。
2.試験方法
a)実験期間および採血
実験は、各週齢の午前中に体重測定を行い、5時間絶食後、採血を行った。各群ともに5〜10匹を測定に用いた。
b)血液生化学値の測定(測定項目および測定方法)
測定項目は血糖値、体重、血中インスリン濃度とし、実施例1と同様の方法で測定を行った(表4)。
c)評価
薬効の評価は、血糖値、血漿中インスリン濃度、体重の各項目について行った。
Figure 2004154136
3.結果
2型糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)において、5週齢で正常であった血糖値は8週齢で急激に上昇し、その後も穏やかに増加した(図10A)。血漿中インスリン濃度は、db/dbマウスにおいては、6〜8週齢で約10ng/mlであったものが10週齢では約3ng/mlに低下し、その後ほぼ一定の値を維持したものの、正常マウス(db/+mマウス)に比較してはるかに高値であった(図10B)。以上の結果より、db/dbマウスは加齢に伴い、インスリン抵抗性を示し、その後、β細胞機能不全を引き起こすことが確認された。
〔実施例6〕 遺伝子のクローニング
1.クローニングする遺伝子
Zsig37(配列番号2)およびκ-casein(配列番号8)
2.方法
Zsig37遺伝子およびκ-casein遺伝子を哺乳類細胞における発現ベクターであるpcDNA3.1 Directional TOPO Expression Kit(Invitrogen、K4900-01)にクローニングした。Zsig37遺伝子特異的プライマー(Primer-1)およびκ-casein遺伝子特異的プライマー(Primer-2)を作製し、実施例3で調整したcDNAを鋳型としてTOYOBO KOD -Plus (東洋紡 KOD-201)を用いてPCR反応により目的の遺伝子を増幅した。プライマーはORF全長を増幅するようにデザインしたものを作製した。
Zsig37遺伝子特異的プライマー(Primer-1)
Upper primer: 5’-GAAGAGACGCCTCCCCGAGAGC-3’(配列番号41)
Lower primer: 5’-TGCCAGGCAAGGAGGTCAGCAGTCC-3’(配列番号42)
κ-casein遺伝子特異的プライマー(Primer-2)
Upper primer: 5’- CCAAATAAAGGTGCAATGATG-3’(配列番号43)
Lower primer: 5’- CTTAGTGTTTTATGCTGCAGT-3’(配列番号44)
PCR反応は、cDNA 2μl 、Upper primer (20μM) 5 μl、Lower primer (20μM) 5μl、10 x KOD Buffer 5μl、dNTP Mixture (each 2.5mM) 5 μl 、MgSO4 2μl、TOYOBO KOD -Plus- Taq (1U) 1 μl、水 25μlを混合した反応液を、95℃、1分間の前熱処理の後、95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間、を1サイクルとしてこれを35回繰り返した。増副産物は、1% アガロースゲルで電気泳動後、UV照射下で増副産物を切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit (250)(QIAGEN 28706)を用いて抽出した。抽出した遺伝子断片 4μl、pCR-Blunt II-TOPO(Invitrogen)1μl、Salt Solution 1μlを混合し、室温で5分間放置することによりライゲーション反応を行った。ライゲーション反応液を大腸菌DH5α株にトランスフォーメーションし、アンピシリン耐性をマーカーとしてクローンを得た(”Molecular Cloning, A Laboratory Manual” Maniatis, T., Fritsch, E.F., Sambrook, J. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press)。得られたクローンの塩基配列の確認はSequencer(ABI PRISM 3700 DNA ANLYZER)を用いた。目的のORFを含むクローンを取得した。次に本クローンを鋳型として、TOYOBO KOD-Plus (東洋紡 KOD-201)を用いてPCR反応により、stopコドン配列を除いた遺伝子を増幅した。stopコドン配列を除く部分を増幅するプライマーとして、Zsig37遺伝子特異的プライマー(Primer-3)、κ-casein遺伝子特異的プライマー(Primer-4)を使用した。
Zsig37遺伝子特異的プライマー(Primer-3)
Upper primer: 5’-CACCATGGGCTCCTGTGCACAGGG-3’(配列番号45)
Lower primer: 5’-GGGCTCAGAGGCTGGCTTGA -3’(配列番号46)
κ-casein遺伝子特異的プライマー(Primer-4)
Upper primer: 5’-CACCATGATGAGGAATTTTATCGTAG-3’(配列番号47)
Lower primer: 5’-TGCTGCAGTTGAGGACACTGGG-3’(配列番号48)
PCR反応は、cDNA 2μl、Forward primer (20μM) 5μl、Reverse primer (20μM) 5μl、10 x KOD Buffer 5μl、dNTP Mixture (each 2.5mM) 5μl 、MgSO4 2μl、TOYOBO KOD -Plus- Taq (1U) 1μl、水 25μlを混合した反応液を、95℃、1分間の前熱処理の後、95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間、を1サイクルとしてこれを35回繰り返した。増副産物は、1% アガロースゲルで電気泳動後、UV照射下で増副産物を切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit (250)(QIAGEN 28706)を用いて抽出した。抽出した遺伝子断片 4μl、pcDNA3.1D/V5-His-TOPOベクター(Invitrogen、K4900-01)1μl、Salt Solution 1 μlを混合し、室温で5分間放置することによりライゲーション反応を行った。ライゲーション反応液を大腸菌DH5α株にトランスフォーメーションし、アンピシリン耐性をマーカーとしてクローンを得た(”Molecular Cloning, A Laboratory Manual” Maniatis, T., Fritsch, E.F., Sambrook, J. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press)。得られたクローンの塩基配列はSequencer(ABI PRISM 3700 DNA ANLYZER)を用いて確認した。かくして、目的のORFを含むクローンを取得した。
〔実施例7〕 分泌確認
1.使用した遺伝子
Zsig37(配列番号2)およびκ-casein(配列番号8)
2.方法
2.1 遺伝子の導入および培養上清の回収
a)1日目
1日目の午前中に、6cmシャーレに、10% FBS/DMEMで懸濁したCOS-1細胞を、翌日サブコンフレントになるように撒き、37℃、5% CO2存在下で培養した。
b)2日目
前日に準備したCOS-1細胞をDMEM・FBS(-)で2回洗浄した後、DMEM・FBS(-) 2mlを加え、lipofetion用の細胞として準備した。
予めエンドフリー プラスミド ミディー キット(QIAGEN)を用いて精製した4.0μgのZsig37発現プラスミドDNA水溶液を、DMEM・FBS(-)で234μlとし、さらにPLUS reagentを16μl添加し混和後、室温で15分インキュベートした。次に、予めDMEM/FBS(-) 226μlにLipofectAMIN 24μlを加えて作製したLipofetAMIN混合液 250μlを加え、混和した後、室温で15分インキュベートすることにより、lipofection用DNA溶液とした。
Lipofection用の細胞にlipofection用DNA溶液をゆっくりと滴下し、37℃、5% CO2存在下で4時間培養した。その後、0% FBS/DMEMに交換して、37℃、5% CO2存在下で3日間培養した。
c)5日目
培養上清を回収した。
2.2タンパクの発現確認
a)培養上清1mlに対して、4mg/ml DOC in TCA 100μlを加え、15秒間転倒混和した。次いで、室温で5分間静置してから、15,000xgで5分間遠心分離した。遠心分離後、沈殿に冷アセトン500μlを加え、15秒間転倒混和した。次いで、15,000xgで5分間遠心分離した。遠心分離後、再度沈殿に冷アセトン500μlを加え、15秒間転倒混和した。次いで、15,000xgで5分間遠心分離した。遠心分離後、上清を除去して沈殿を乾燥させ、1x SDS sample beffer 20μlを加え、100℃で5分間ボイルし、電気泳動用サンプルとした。
b)5-20% gradient gelに電気泳動用サンプルを全量アプライ後、電気泳動バッファー(Tris 15.15g、グリシン 72.05g、蒸留水 5L、SDS 5g)を用いて40mAで40〜50分間電気泳動した。
c)次に、40V、200mAで、ブロティングバッファー(Tris 15.14g、グリシン 72.07g、蒸留水 3L、メタノール 1L)を用いて電気泳動したゲルをnitrocellulose membraneに2時間ブロッティングした。ブロッティング終了後、membraneをTBS-T溶液に浸した。
d)membraneを5% skim milk/TBS-T溶液に移し、室温で1時間、シェーカー上で振盪した。
e)membreneをTBS-T溶液で、5分 x 3回、振盪振盪することにより洗浄した。
f)membraneを一次抗体溶液(anti-V5抗体 2μl、BSA 0.1g、TBS-T 10ml)に移し、室温で1時間、シェーカー上で振盪した。次に、membreneをTBS-T溶液で、5分 x 3回、振盪振盪することにより洗浄した。
g)membraneを二次抗体溶液(anti-mouse抗体 10μl、BSA 0.1g、TBS-T 10ml)に移し、室温で1時間、シェーカー上で振盪した。次に、membreneをTBS-T溶液で、5分 x 3回、振盪振盪することにより洗浄した。
h)membrane上にECL試薬 2mlをのせ、室温で1分間反応させた。
i)ECL試薬を除去したmembraneは、サランラップで包み、X線フィルムに露光後、自動現像機で現像することにより、シグナルを評価した。
3.結果
Zsig37およびκ-caseinをトランスフェクションした細胞の培養上清では、各々のタンパクが分泌されていることが確認された(図11)。
〔参考例1〕 5−[4−(6−メトキシ−1−メチルベンズイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩(化合物A)の製造
特開平9−295970号公報(米国特許第5886014号明細書、欧州特許出願公開第745600号明細書)に記載の方法によって合成した、5−[4−(6−メトキシー1−メチルベンズイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン10.6g、および4規定塩酸−1,4−ジオサキン100mlの混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を濃縮後、酢酸エチルを加え、折出した成績体を濾取し、酢酸エチルで洗浄して、融点275−277℃を有する化合物A11.0gを得た。
1H−核磁気共鳴スペクトル:δ(ppm):重ジメチルスルホキシド中、内部標準にTMS(テトラメチルシラン)を使用して測定した1H−核磁気共鳴スペクトル(400MHz):δ(ppm)は次のとおりである。
3.11(1H,dd,J=14Hzおよび9Hz),3.34(1H,dd,J=14Hzおよび4Hz),3.89(3H,s),3.98(3H,s),4.91(1H,dd,J=9Hzおよび4Hz),5.64(2H,s),7.14(2H,d,J=9Hz),7.15(1H,d,J=9Hz),7.25(2H,d,J=9Hz),7.50(1H,s),7.70(1H,d,9H ),12.04(1H,s,D2O添加により消失)。
本発明にかかる、配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子の発現量は、糖尿病におけるβ細胞機能不全改善を評価するための新たな指標となりうる。したがって、該遺伝子やその産物の発現量を指標として、インスリン抵抗性改善剤やインスリン分泌促進剤等のβ細胞機能不全改善剤の簡便なスクリーニングを行うことができる。
配列番号17〜32−人工配列の説明:プライマー
配列番号33〜40−人工配列の説明:プローブ
配列番号41〜48−人工配列の説明:プライマー
図1は、各群における血液生化学値および体重の測定結果を示すグラフである(A:血糖値、B:血漿中インスリン濃度、C:体重)。 図2は、TaqMan PCRによるAK005296(配列番号1)mRNAの発現解析結果を示すグラフである。 図3は、TaqMan PCRによるZsig37(配列番号2)mRNAの発現解析結果を示すグラフである。 図4は、TaqMan PCRによるhypothetical protein(配列番号3)mRNAの発現解析結果を示すグラフである。 図5は、TaqMan PCRによるAK006207(配列番号4)mRNAの発現解析結果を示すグラフである。 図6は、TaqMan PCRによるBC010831(配列番号5)mRNAの発現解析結果を示すグラフである。 図7は、TaqMan PCRによるAK013996(配列番号6)mRNAの発現解析結果を示すグラフである。 図8は、TaqMan PCRによるBR13(配列番号7)mRNAの発現解析結果を示すグラフである。 図9は、TaqMan PCRによるκ-casein(配列番号8)mRNAの発現解析結果を示すグラフである。 図10は、2型糖尿病モデルマウスおよび正常マウスにおける、血液生化学値および体重の測定結果を示すグラフである(A:血糖値、B:血漿中インスリン濃度、C:体重)。 図11は、Zsig37およびκ-caseinタンパクの分泌確認結果(ウェスタンブロッティング)を示す写真である。

Claims (18)

  1. 被験物質の投与条件下における、検体中の、配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子またはその産物(配列番号9〜16)の発現量を指標として、該被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する方法。
  2. 評価が、被験物質の投与条件下における、検体中の、配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子またはその産物(配列番号9〜16)の発現量と、非投与条件下における当該発現量との相違に基づいて行われることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 下記の工程を含む、被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する方法:
    1)動物を被験物質の投与または非投与条件下で飼育する;
    2)上記動物の血液または細胞中における、配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子の発現量を検出する;
    3)被験物質の投与および非投与条件下における、上記遺伝子の発現量の相違に基づき、該被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する。
  4. 前記方法において、さらに、血液または細胞中より全RNAを抽出する工程を含む、請求項3記載の方法。
  5. 遺伝子の発現量が、遺伝子チップ、cDNAアレイ、およびメンブレンフィルターから選ばれる固相化試料を用いた核酸ハイブリダイゼーション法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法、サブトラクション法、ディファレンシャル・ディスプレイ法、ディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法、ならびにクロスハイブリダイゼーション法から選ばれるいずれか一つの方法によって検出されることを特徴とする、請求項3または4記載の方法。
  6. 遺伝子の発現量が、RT-PCR法またはリアルタイムPCR法によって検出されることを特徴とする、請求項3または4記載の方法。
  7. 下記の工程を含む、被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する方法:
    1)動物を被験物質の投与または非投与条件下で飼育する;
    2)上記動物の血液または細胞中における、配列番号9〜16のいずれか一つのアミノ酸配列で示されるタンパクを、該タンパクに特異的に結合する抗体を用いて検出する;
    3)被験物質の投与および非投与条件下における、上記タンパクの発現量の相違に基づき、該被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する。
  8. タンパクの発現量が、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、およびRIA法から選ばれるいずれか一つの方法によって検出されることを特徴とする、請求項7記載の方法。
  9. タンパクの発現量が、ウェスタンブロット法によって検出されることを特徴とする、請求項7記載の方法。
  10. 細胞が膵ランゲルハンス氏島β細胞である、請求項3〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 動物が2型糖尿病モデル動物である、請求項3〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 動物がマウスである、請求項11記載の方法。
  13. 下記の工程を含む、被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する方法:
    1)細胞を被検物質の添加または非添加条件下で培養する;
    2)上記細胞中の配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子の発現量を検出するか、または、その産物であるタンパク(配列番号9〜16)の発現量を該タンパクに特異的に結合する抗体を用いて検出する;
    3)被検物質の添加および非添加条件下における、上記遺伝子またはタンパクの発現量の相違に基づき、該被験物質のβ細胞機能不全改善効果を評価する。
  14. β細胞機能不全改善効果が、インスリン抵抗性改善効果に基づくものである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 被験者より単離された血液中における、配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子のヒトオーソログ産物の発現量を測定することにより、該被験者のβ細胞機能不全を評価する方法。
  16. タンパクの発現量が、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、およびRIA法から選ばれるいずれか一つの方法によって検出されることを特徴とする、請求項15記載の方法。
  17. タンパクの発現量が、ウェスタンブロット法によって検出されることを特徴とする、請求項15記載の方法。
  18. 下記のa)〜e)からなる群より選ばれる、少なくとも一つ以上を含む、β細胞機能不全改善効果またはβ細胞機能不全の評価用キット。
    a)配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子を特異的に増幅するための、15〜30塩基長の連続したオリゴヌクレオチドプライマー
    b)配列番号1〜8のいずれか一つの塩基配列で示される遺伝子に特異的に結合し、該遺伝子を検出するための20〜1500塩基長の連続したポリヌクレオチドプローブ
    c)上記b)記載のポリヌクレオチドプローブが固定された固相化試料
    d)配列番号9〜16のいずれか一つのアミノ酸配列で示されるタンパクに特異的に結合し、該タンパクを検出するための抗体
    e)上記d)記載の抗体に特異的に結合しうる二次抗体

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