JP2005030453A - 液圧制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】液圧制御装置において、制御遅れを抑制する。
【解決手段】増圧リニアバルブ、減圧リニアバルブを閉状態から開状態に切り換える際、閉状態から開状態に切り換えるための開弁圧に応じた電流と、目標液圧の変化に応じた電流と、開弁促進用電流との和の電流が供給される。開弁促進電流は、増圧リニアバルブ、減圧リニアバルブが開状態に切り換わる前増加させられる電流である。増圧リニアバルブ、減圧リニアバルブへの供給電流は、開弁促進用電流の増加に伴って急増させられる。増圧リニアバルブ、減圧リニアバルブを速やかに開状態に切り換えることができ、制御遅れを抑制することができる。
【選択図】図8

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、電磁制御弁への供給電流の制御により液圧を制御する液圧制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特許文献1には、電磁制御弁への供給電流の制御によりブレーキシリンダの液圧を制御する液圧制御装置が記載されている。この液圧制御装置は、ブレーキシリンダの目標液圧に基づいて供給電流を制御するフィードフォワード制御部と、目標液圧と実際のブレーキシリンダの液圧との偏差に基づいて供給電流を制御するフィードバック制御部との両方を備えている。また、この液圧制御装置において、電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際、フィードフォワード制御部により、電磁制御弁の開弁圧に対応する電流が供給され、その後、供給電流が目標液圧の変化に伴って増加させられる。
【特許文献1】
特開平10−278764号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題、課題解決手段および効果】
本発明の課題は、液圧制御装置において制御遅れを抑制することにある。上記公報に記載の液圧制御装置においては、フィードフォワード制御部により、開弁圧に対応する電流が供給された場合に電磁制御弁が実際に開状態に切り換えられても切り換えられなくても、目標液圧の変化勾配で決まる勾配で増加させられる。そのため、供給電流の不足により、電磁制御弁が実際に切り換えられなかった場合には、直ちに開状態に切り換えられることがなく、制御遅れが生じる。開弁圧が、予め小さめに設定される場合や、記憶された値と実際の値との間に誤差がある場合があるのである。勿論、電磁制御弁が開状態に切り換えらなかったことに起因して目標液圧と実液圧との偏差が大きくなれば、フィードバック制御部による供給電流が大きくなるが、その場合であっても遅れが生じるのである。
この課題は、液圧制御装置を下記各態様の構成のものとすることによって解決される。各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまで、本明細書に記載の技術の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組み合わせが以下の各項に限定されると解釈されるべきではない。また、1つの項に複数の事項が記載されている場合、常に、すべての事項を一緒に採用しなければならないものではなく、一部の事項のみを取り出して採用することも可能である。
【0004】
以下の各項のうち、(2)項、(8)項、(10)項、(12)項、(13)項、(15)項が、それぞれ、請求項1〜6に対応する。なお、(1)項、(9)項は、本発明が適用される液圧制御装置の一態様である。
【0005】
(1)シーティング弁と、コイルを備えたソレノイドとを含み、前記シーティング弁の高圧側と低圧側との間の差圧に応じた差圧作用力と前記コイルへの供給電流に応じた電磁駆動力との関係に基づいて開閉する電磁制御弁と、
前記コイルへの供給電流を表す制御値を決定する制御値決定部を含み、その制御値決定部によって決定された制御値に応じた電流を前記コイルに供給することによって、前記シーティング弁の前記高圧側と前記低圧側とのいずれか一方の側の液圧を制御する電流制御装置と
を含む液圧制御装置。
電磁制御弁が高圧源と液圧作動装置との間に設けられる場合には、低圧側、すなわち、液圧作動装置の液圧が制御対象液圧とされる。この場合の電磁制御弁は増圧制御弁と称することができる。電磁制御弁が液圧作動装置と低圧源との間に設けられる場合には、高圧側、すなわち、液圧作動装置の液圧が制御対象液圧とされる。この場合の電磁制御弁は減圧制御弁と称することができる。電磁制御弁は、コイルへの供給電流の連続的な変化により、制御対象液圧が連続的に変化するリニア制御弁とすることができる。
電磁制御弁は、例えば、電磁駆動力と差圧作用力との和が設定値より大きい場合に開状態とされ、小さい場合に閉状態とされるものとすることができる。そのため、差圧作用力が一定の場合には、電磁駆動力を大きくすることによって、閉状態から開状態に切り換えることができる。
(2)前記制御値決定部が、前記電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際、前記電磁制御弁が実際に開状態に切り換わるまでの間、予め定められた設定勾配以上でかつ有限の勾配で前記制御値を増加させる制御値急増部を含む(1)項に記載の液圧制御装置。
本項に記載の液圧制御装置においては、電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際、電磁制御弁が実際に開状態に切り換わるまでの間、予め定められた設定勾配以上でかつ有限の勾配で制御値が増加させられる。その結果、電磁制御弁を早急に開状態に切り換えることが可能となり、制御遅れを抑制することができる。
本項に記載の液圧制御装置においては、供給電流をステップ的に増加させた後、急勾配で増加させても、0から急勾配で増加させてもよい。ステップ的に電流が供給される場合には、その電流を小さめの値にすることができる。ステップ的に供給される電流が大き過ぎる場合には、液圧が急に変化して、制御ハンチングが生じるおそれがある。それに対して、小さめにして、その後、急勾配で増加させれば、制御ハンチングを抑制しつつ、制御遅れを抑制することができる。例えば、ステップ的に供給される電流とその後の電流の増加勾配、あるいは供給電流が0から増加させられる場合の増加勾配を、電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える指令が発せられてから所望時間内に実際に開状態に切り換えられる大きさに選定することができるのである。
制御値は、電磁制御弁が実際に開状態にされるまでの間、設定勾配以上でかつ有限の勾配で増加させられる。制御値が時間の経過に伴って増加させられるのであり、その単位時間当たりの増加量で表される勾配が設定勾配以上とされるのである。設定勾配は、電磁制御弁が速やかに開状態に切り換わり得る大きさであり、前述のように、切換え指令が発せられてから所望時間内に実際に開状態に切り換えられる大きさとすることができる。例えば、通常の所要液圧の変化勾配で決まる勾配より大きい値、あるいは、所要液圧の実際にあり得る範囲内で最大の変化勾配で決まる勾配より大きい値に設定することができる。
制御値の増加勾配は、制御値が時間の経過に対して連続的に増加する場合には、その勾配自体であるが、制御値が段階的に増加する場合には、一段階の増加量を一段階分の時間で割った値を増加勾配と見なすことができる。なお、制御値が制御値決定プログラムの実行によって決定される場合において、その実行時間毎に変化させられる場合、その実行時間より短い周期で変化させられる場合等は制御値が連続的に増加させられると考え、実行時間より長い周期で変化させられる場合は段階的に増加させられると考えることとする。
制御値は、設定勾配以上の勾配で増加させられるのであるが、予め決められた設定勾配以上の勾配で増加させられる場合と、結果的に設定勾配以上の勾配で増加させられる場合とがある。例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御とが行われる場合において、制御値が、所要液圧と実液圧との偏差に応じて決まるフィードバック制御値と、設定勾配で増加させられるフィードフォワード制御値との和とされる場合には、フィードバック制御値が加えられることによって、結果的に、勾配が設定勾配以上になる場合があるのである。
制御値は、無限大の勾配で増加、すなわち、ステップ的に増加させられている状態で電磁制御弁が開かれるのではなく、急増ではあるが有限の勾配で増加させられている状態で電磁制御弁が開かれるように決められる。
電磁制御弁が実際に開状態に切り換わったことは、例えば、電磁制御弁の高圧側と低圧側とのいずれか一方の側の液圧に基づいて検出することができる。電磁制御弁が閉状態にある場合には、高圧側と低圧側とのいずれか一方の側の液圧は一定であるが、開状態に切り換わった瞬間に、液圧が増加または減少し始めるのであり、その液圧の変化量の絶対値(増加量または減少量)が設定量以上になった場合に、実際に電磁制御弁が開状態に切り換わったとすることができる。いずれか一方の側の液圧は、制御対象液圧とすることが不可欠ではないが望ましい。電磁制御弁が増圧制御弁である場合の高圧側の液圧、電磁制御弁が減圧制御弁である場合の低圧側の液圧は、一定であることが多いからである。
(3)前記制御値急増部が、前記制御値をステップ的に増加させた後に設定勾配以上かつ有限の勾配で急増加させる(2)項に記載の液圧制御装置。
ステップ的に増加させた後に急勾配で増加させれば、早急に、開状態にすることができる。
また、ステップ的に増加させる制御値の大きさを、シーティング弁の開弁圧より小さめの値とすることができ、それによって、液圧の急激な変化を抑制しつつ、応答性の低下を抑制することができる。
本項に記載の液圧制御装置においては、ステップ的に増加させられた後の増加勾配が設定勾配以上とされるが、制御値の0からの変化勾配(ステップ的に増加した分も含む)を設定勾配以上とすることもできる。
(4)前記電流制御装置が、前記電磁制御弁の高圧側と低圧側とのいずれか一方の液圧を保持する保持モード、増圧する増圧モード、減圧する減圧モードのいずれか1つを選択するモード選択手段を含み、前記制御値急増部が、そのモード選択手段によって選択される制御モードが保持モードから増圧モードまたは減圧モードに変わった場合と、増圧モードと減圧モードとのいずれか一方からいずれか他方に変わった場合との少なくとも一の場合に、前記電磁制御弁が実際に開状態に切り換えられるまでの間、前記制御値を急勾配で増加させるモード切換時急増部を含む(2)項または(3)項のいずれか1つに記載の液圧制御装置。
電磁制御弁が増圧制御弁である場合には、保持モードから増圧モードに切り換わった場合、減圧モードから増圧モードに切り換わった場合に、閉状態から開状態に切り換えられることになる。
電磁制御弁が減圧制御弁である場合には、保持モードから減圧モードに切り換わった場合、増圧モードから減圧モードに切り換わった場合に、閉状態から開状態に切り換えられる。
なお、制御開始時に、増圧モードまたは減圧モードが選択された場合、換言すれば、非制御状態から増圧制御、減圧制御が開始された場合にも同様に適用することができる。また、モード選択手段は、増圧モードと減圧モードとのいずれか一方を選択するものとすることができる。
(5)前記電流制御装置が、前記電磁制御弁の高圧側と低圧側とのいずれか一方の側の液圧の変化を検出する液圧変化検出装置と、その液圧変化検出装置によって検出された前記電磁制御弁が閉状態にある状態からの液圧の変化量の絶対値が設定値以上になった場合に、前記電磁制御弁が実際に開状態に切り換わったと検出する開状態検出部とを含む(2)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の液圧制御装置。
(6)前記電磁制御弁が、高圧源と液圧作動装置との間に設けられた増圧制御弁と、液圧作動装置と低圧源との間に設けられた減圧制御弁とのいずれか一方であり、前記電流制御装置が、前記電磁制御弁への供給電流を制御することにより、前記液圧作動装置の液圧を制御する作動装置液圧制御装置を含む(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の液圧制御装置。
液圧作動装置は、液圧により作動させられるブレーキのブレーキシリンダとすることができる。ブレーキは、車両の車輪の回転を抑制するブレーキとすることができる。
(7)前記制御値決定部が、前記制御値を前記電磁制御弁の高圧側と低圧側とのいずれか一方の側の実際の液圧が所要液圧に近づくように決定するとともに、その制御値を、前記所要液圧の変化状態に基づいて決定するフィードフォワード制御値と、前記所要液圧と実際の液圧との偏差に基づいて決定するフィードバック制御値との和とする(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の液圧制御装置。
電流制御装置において、フィードバック制御とフィードフォワード制御との両方が実行されるようにすれば、ブレーキシリンダの液圧の制御精度を向上させることができる。
なお、フィードバック制御とフィードフォワード制御との両方が行われるようにすることは不可欠ではない。フィードフォワード制御とフィードバック制御とのいずれか一方が行われればよい。
【0006】
(8)前記制御値決定部が、前記電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際、前記電磁制御弁が実際に開状態に切り換わるまでの間、開状態に切り換わった後とは異なる規則で前記制御値を決定する異規則制御値決定部を含む(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の液圧制御装置。
本項に記載の液圧制御装置においては、電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際に、開状態に切り換わるまでの間と開状態に切り換わった後とで異なる規則で制御値が決定される。
例えば、電磁制御弁が開状態に切り換わるまでの間と切り換わった後とのいずれか一方において、制御値を段階的に増加させ、他方において連続的に変化させる規則とすることができる。
また、開状態に切り換わった後に所要液圧の変化状態に基づいて決まる勾配で制御値を変化させ、開状態に切り換わるまでの間、所要液圧の変化状態に基づいて決まる勾配より大きな勾配で増加させる規則とすることができる。
さらに、開状態に切り換わった後に通常制御が行われ、開状態に切り換わるまでの間、開弁前制御が行われるようにすることができる。行われる制御が異なれば、制御値の決定規則も異なることになる。通常制御を、所要液圧に基づいて行われる制御とし、開弁前制御を、所要液圧とは関係なく行われる制御とすることができる。開弁前制御は、例えば、制御値が予め定められた設定勾配で増加させる制御とすることができる。また、通常制御を、フィードバック制御とフィードフォワード制御との少なくとも一方を含む制御とし、開弁前制御を、フィードバック制御を含まない制御とすることができる。
【0007】
(9)シーティング弁と、コイルを備えたソレノイドとを含み、前記シーティング弁の高圧側と低圧側との間の差圧に応じた差圧作用力と前記コイルへの供給電流に応じた電磁駆動力との関係に基づいて開閉する電磁制御弁と、
前記シーティング弁の前記高圧側と前記低圧側とのいずれか一方の液圧が所要液圧に近づくように、前記コイルへの供給電流を表す制御値を決定する制御値決定部を含み、その制御値決定部によって決定された制御値に応じた電流を前記コイルに供給することによって、前記シーティング弁の前記いずれか一方の側の液圧を制御する電流制御装置と
を含む液圧制御装置。
電磁制御弁が、前述のように、供給電流に応じた電磁駆動力と差圧作用力との和が設定値より大きい場合に開状態とされ、小さい場合に閉状態とされるものである場合には、電磁駆動力が大きい場合は差圧が小さくても開状態に保たれるが、電磁駆動力が小さい場合は差圧が小さいと閉状態のままである。差圧は、電磁制御弁が増圧制御弁である場合には、制御対象液圧(低圧側の液圧)が増加して所要液圧に近づくにつれて小さくなり、電磁制御弁が減圧制御弁である場合には制御対象液圧(高圧側の液圧)が減少して所要液圧に近づくにすれて小さくなる。したがって、電磁制御弁が増圧制御弁であっても減圧制御弁であっても、増圧中または減圧中に電磁制御弁を開状態に保つためには、制御対象液圧が所要液圧に近づくにつれて、電磁駆動力を大きくする必要がある。
所要液圧は、制御において要求される液圧であり、電磁制御弁によって液圧が制御される液圧作動装置の種類、その液圧の制御の目的によって異なる。液圧作動装置がブレーキシリンダである場合には、所要液圧は、少なくとも、運転者によるブレーキ操作部材の操作状態に基づいて決まる値とすることができる。運転者によってブレーキ操作部材に加えられる操作力や操作ストロークが大きい場合は小さい場合より所要液圧が大きい値とすることができる。所要液圧は、液圧制御装置を含む制動装置が、液圧制動装置と回生制動装置とを含む場合には、回生制動装置によって出力される回生制動力と液圧制動装置によって出力される液圧制動力との和がブレーキ操作部材の操作状態に基づいて決まる要求制動力となるように決定することができるが、回生制動装置を含まない場合には、所要液圧を、要求制動力に応じた値である目標液圧とすることができる。所要液圧は、また、車輪のスリップ状態に基づいて決まる値とすることもできる。
本項に記載の液圧制御装置には、(1)項ないし(8)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
(10)前記制御値決定部が、前記電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際、前記所要液圧の同じ変化勾配に対して、前記電磁制御弁が実際に開状態に切り換わる前と切り換わった後とで異なる勾配で前記制御値を増加させる制御値急増部を含む(9)項に記載の液圧制御装置。
本項に記載の液圧制御装置においては、電磁制御弁の高圧側と低圧側とのいずれか一方の側の液圧(制御対象液圧)が所要液圧に近づくように制御値が決定されるのであるが、所要液圧が同じ変化勾配で変化する場合であっても、電磁制御弁が実際に開状態に切り換えられるまでの間と実際に開状態に切り換えられた後とで異なる勾配で制御値が増加させられる。例えば、実際に開状態に切り換えられるまでの間の方が大きな勾配とすることができるのであり、それによって、電磁制御弁を早急に開状態に切り換えることができ、制御遅れを抑制することができる。
(11)前記制御値急増部が、前記電磁制御弁が実際に開状態に切り換わるまでの間、切り換わった後より、前記制御値を大きな勾配で増加させるものである(10)項に記載の液圧制御装置。
(12)前記制御値決定部が、前記電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際、前記電磁制御弁が開状態に切り換わるまでの間、前記所要液圧の変化状態で決まる勾配より大きくかつ有限の勾配で前記制御値を増加させる制御値急増部を含む(9)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の液圧制御装置。
本項に記載の液圧制御装置においては、電磁制御弁が開状態に切り換えられるまでの間、所要液圧の変化状態で決まる勾配より大きくかつ有限の勾配で制御値が増加させられる。それによって、電磁制御弁を速やかに開状態に切り換えることができ、制御遅れを抑制することができる。
例えば、開状態に切り換えられるまでの間、制御値が設定勾配で増加させられるようにすることができる。その場合には、設定勾配を、所要液圧の実際にあり得る範囲内での最大の変化勾配で決まる勾配以上の値に設定することができる。
【0008】
(13)前記制御値決定部が、前記電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際、前記制御値を、前記シーティング弁の開状態維持用制御値と、前記所要液圧と前記シーティング弁の高圧側と低圧側とのいずれか一方の側の液圧との偏差に基づいて決まる偏差対応制御値と、前記電磁制御弁が実際に開状態に切り換わるまでの間一定の勾配で増加する開弁促進用制御値とを含む値として決定する複合的制御値決定部を含む(9)項ないし(12)項のいずれか1つに記載の液圧制御装置。
電磁制御弁が、前述のように、高圧側と低圧側との差圧に応じた差圧作用力と電磁駆動力との和の力が、設定値より小さい場合に閉状態とされ設定値より大きい場合に開状態とされるものである場合には、電磁制御弁を開状態に保つためには、差圧作用力が小さくなると電磁駆動力を大きくする必要がある。
開状態維持用制御値は、電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換えて、開状態に保つために必要な電磁駆動力に対応する制御値である。開状態維持用制御値は、電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換えるために必要な開弁圧に対応する制御値と、開状態において、制御対象液圧が所要液圧に近づくことによって差圧が小さくなっても、開状態に保つために必要な制御値とを含む値とすることができる。前者の開弁圧に対応する制御値は、閉状態における差圧に基づいて決まる。後者の制御対象液圧が所要液圧に近づくことによって必要となる制御値は、所要液圧変化対応制御値と称する。所要液圧変化対応制御値は、電磁制御弁が実際に開状態にあるかどうか、実際に制御対象液圧が所要液圧に近づいたかどうかとは関係なく決めることができる。この意味において、開状態維持用制御値は、実際の制御対象液圧が所要液圧に近づくために必要になる制御値であり、フィードフォワード制御値に対応すると考えることができる。
偏差対応制御値は、所要液圧と実際の制御対象液圧との偏差に基づいて決まる値であり、フィードバック制御値に対応すると考えることができる。
開弁促進用制御値は、電磁制御弁が実際に開状態に切り換わるまでの間、一定の勾配で増加する値である。
特許文献1に記載の液圧制御装置におけるように、電磁制御弁に、開状態維持用制御値に対応する供給電流が供給されても、電磁制御弁が直ちに開状態に切り換えられないことがある。開弁圧に対応する制御値が実際の開弁圧に対応する制御値より小さい場合や、開弁圧が、実際の開弁圧より小さい値に設定される場合があるのである。開状態維持用制御値は、所要液圧の変化に伴って増加させられるため、供給電流に応じた電磁駆動力が実際の開弁圧に応じた大きさになれば、電磁制御弁は開状態に切り換えられるが、制御遅れが生じる。また、偏差対応制御値に応じた電流が供給されれば、供給電流の増加勾配は大きくなるが、この場合においても、制御遅れが生じることに変わりはない。
それに対して、本項に記載の液圧制御装置におけるように、開状態に切り換えられるまでの間、開弁促進用制御値が加えられれば、電磁制御弁が開状態に切り換えられるまでの間、供給電流を急勾配で増加させることができる。電磁制御弁を早急に開状態に切り換えることができ、制御遅れを抑制することができる。開弁促進用制御値は、開弁前増加制御値と称することもできる。
なお、開弁促進用制御値は、少なくとも、開弁前に一定の勾配で増加する値であればよいのであり、切り換わった後においては、その切り換わった時点の一定の値に保たれても、その値より小さい値に保たれても、漸減させられてもよい。開状態に切り換えられた後は、フィードフォワード制御部とフィードバック制御部との両方の制御によって、所要液圧を実現することができるからである。また、開弁前において、一定の勾配で増加することは不可欠ではない。ただし、一定の勾配で増加する値とした方が、開弁促進用制御値の演算が簡単となる。さらに、上述のように、開弁促進用制御値と開状態維持用制御値と偏差対応制御値との和が制御値とされると考えることも可能であるが、開状態維持用制御値自体が開弁促進用制御値によって補正されると考えることもできる。また、制御値は、開状態維持用制御値と偏差対応制御値との少なくとも一方と開弁促進用制御値とを含む値とすることもできる。さらに、これら3つとは異なる値を含む値とすることもできる。
(14)前記制御値決定部が、前記電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際、前記制御値を、前記切換え指令が発せられた時点の前記シーティング弁の前記高圧側と前記低圧側との間の差圧で決まる開弁用制御値と、前記所要液圧の前記時点からの変化量に基づいて決まる所要液圧変化量対応制御値と、前記電磁制御弁が実際に開状態に切り換わるまでの間増加する開弁促進用制御値とを含む値として決定する複合的制御値決定部を含む(9)項ないし(13)項のいずれか1つに記載の液圧制御装置。
開弁用制御値と所要液圧変化対応制御値とを含む値を開状態維持用制御値と称することができる。
制御値には、さらに、偏差対応制御値を含ませることもできる。
【0009】
(15)シーティング弁と、コイルを備えたソレノイドとを含み、前記シーティング弁の高圧側と低圧側との間の差圧に応じた差圧作用力と前記コイルへの供給電流に応じた電磁駆動力との関係に基づいて開閉する電磁制御弁と、
前記コイルへの供給電流を、少なくとも所要液圧の変化状態に基づいて制御するフィードフォワード制御部と、前記所要液圧と前記シーティング弁の高圧側と低圧側とのいずれか一方の側の実際の液圧との偏差に基づいて制御するフィードバック制御部とを含み、これらフィードバック制御部とフィードフォワード制御部との少なくとも一方による供給電流の制御によって、前記シーティング弁の前記いずれか一方の側の液圧を制御する電流制御装置と
を含む液圧制御装置であって、
前記フィードフォワード制御部が、前記電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際、前記所要液圧の同じ変化状態に対して、前記電磁制御弁が実際に開状態に切り換わるまでの間、開状態に切り換わった後より大きな勾配で前記供給電流の目標値を増加させる供給電流急増部を含むことを特徴とする液圧制御装置。
本項に記載の液圧制御装置においては、通常、フィードバック制御とフィードフォワード制御との少なくとも一方が行われる。電磁制御弁が閉状態から開状態に切り換えられる際に、開状態に切り換えられるまでの間は、少なくとも、フィードフォワード制御が行われる。フィードフォワード制御において、制御値が大きな勾配で増加させられるのである。この場合には、フィードバック制御も行われるようにしても、フィードバック制御は行われないようにしてもよい。
本項に記載の液圧制御装置には、(1)項ないし(14)項のいずれか1つに記載の特徴を採用することができる。
(16)シーティング弁と、コイルを備えたソレノイドとを含み、前記シーティング弁の高圧側と低圧側との間の差圧に応じた差圧作用力と前記コイルへの供給電流に応じた電磁駆動力との関係に基づいて開閉する電磁制御弁と、
前記コイルへの供給電流を制御することによって、前記電磁制御弁の高圧側と低圧側とのいずれか一方の液圧を制御する電流制御装置と
を含む液圧制御装置であって、
前記電流制御装置が、前記電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際、前記電磁制御弁が実際に開状態に切り換わるまでの間、前記供給電流の目標値を設定勾配で増加させる開弁前制御部を含むことを特徴とする液圧制御装置。
開弁前には、開弁前制御部によって供給電流が制御され、開弁後には、通常制御部によって制御される。
本項に記載の液圧制御装置には、(1)項ないし(15)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
(17)前記電流制御装置が、前記電磁制御弁が実際に開状態に切り換わった際の供給電流の制御値を記憶する制御値記憶部を含む(1)項ないし(16)項のいずれか1つに記載の液圧制御装置。
電磁制御弁が実際に開状態に切り換わった時点に供給された電流に対応する電圧は、実際の開弁圧である。実際の開弁圧を、それ以降の制御において利用すれば、制御遅れを抑制したり、制御ハンチングを抑制したりすることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態である液圧制御装置を含む液圧ブレーキ装置について図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態においては、液圧制御装置がブレーキシリンダの液圧を制御するブレーキ液圧制御装置に適用される。
図1に示すように、液圧ブレーキ装置は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル10と、ポンプ装置12と、マスタシリンダ14と、左右前輪16に設けられたブレーキ18のブレーキシリンダ20と、左右後輪24に設けられたブレーキ26のブレーキシリンダ28と、ブレーキシリンダ20,28各々に対応して設けられたリニアバルブ装置30とを含む。各車輪16,24のブレーキシリンダ20,28には、マスタシリンダ14の液圧が伝達されたり、ポンプ装置12の液圧がリニアバルブ装置30によって制御されて伝達されたりする。この場合には、ブレーキシリンダ20,28の液圧は、リニアバルブ装置30の制御によって別個に制御可能とされる。
【0011】
ポンプ装置12は、アキュムレータ34,ポンプ36,ポンプ36を駆動する電動モータ38,逆止弁39等を含み、ポンプ装置12から供給される作動液の液圧が液圧センサ40によって検出される。液圧センサ40によれば、アキュムレータ34に蓄えられた作動液の液圧を検出することができる。本実施形態においては、アキュムレータ圧が予め定められた設定範囲内に保たれるように、電動モータ38の作動状態が制御されるのであり、それによって、アキュムレータ34にはほぼ設定範囲内の液圧の作動液が蓄えられる。
ポンプ36の吐出側と低圧側とを接続する液通路にはリリーフ弁42が設けられ、ポンプ36から吐出される作動液の液圧が過大になることが回避される。
【0012】
マスタシリンダ14は、2つの加圧ピストンを含むタンデム式のものであり、各加圧ピストンの前方の加圧室には、それぞれ、前輪側のブレーキシリンダ20が液通路50を介して接続されるとともに、後輪側のブレーキシリンダ28が液通路52を介して接続される。液通路50、52にはそれぞれ電磁開閉弁(以下、マスタ遮断弁と称する。)54,56が設けられる。また、前輪側の2つのブレーキシリンダ20、後輪側の2つのブレーキシリンダ28は、それぞれ、連結通路58,60によって接続され、連結通路58,60には電磁開閉弁(以下、前輪側連通弁、後輪側連通弁と称する。)62,64が設けられる。また、液通路50のマスタ遮断弁54より上流側の部分にはストロークシミュレータ66が電磁開閉弁(以下、ストロークシミュレータ用制御弁としてのストロークシミュレータ用開閉弁と称する。)68を介して接続される。これらストロークシミュレータ66,ストロークシミュレータ用開閉弁68等によってストロークシミュレータ装置69が構成される。
【0013】
マスタ遮断弁54,56は、ソレノイドに含まれるコイルに電流が供給された場合に閉状態にされ、ブレーキシリンダ20,28がマスタシリンダ14から遮断されるが、電流が供給されなくなると開状態にされ、ブレーキシリンダ20,28がマスタシリンダ14に連通させられる。マスタ遮断弁52,54および前輪側,後輪側連通弁62,64は常開弁であり、ストロークシミュレータ用開閉弁68は常閉弁である。
電気系統の異常等により、各電磁制御弁等に電流が供給されなくなると、マスタ遮断弁54,56が連通状態に切り換えられるとともに前輪側、後輪側の連通弁62,64が連通状態に切り換えられて、マスタシリンダ14にすべてのブレーキシリンダ20,28が連通させられ、すべてのブレーキ18,26が作動可能とされる。また、ストロークシミュレータ用開閉弁68が閉状態にされるため、マスタシリンダ14の作動液がストロークシミュレータ66に供給されることを防止することができる。
【0014】
ポンプ装置12には、液通路70を介して各ブレーキシリンダ20,28が接続される。液通路70には増圧用リニアバルブ72が設けられ、各ブレーキシリンダ20,28とリザーバ73とを接続する液通路74には減圧用リニアバルブ76が設けられる。これら増圧用リニアバルブ72と減圧用リニアバルブ76とによってリニアバルブ装置30が構成される。増圧用リニアバルブ72,減圧用リニアバルブ76が電磁制御弁に対応する。
【0015】
増圧用リニアバルブ72,減圧用リニアバルブ76は、図2に示すように、いずれも常閉弁であり、コイル88を含むソレノイド89と、スプリング90、弁子92および弁座94を含むシーティング弁95とを含む。
コイル88に電流が供給されない間は、シーティング弁95において、弁子92を弁座94に着座させる方向にスプリング90の付勢力(弾性力)F1が作用するとともに、弁子92を弁座94から離間させる方向に当該リニアバルブの前後の液圧差に応じた差圧作用力F2が作用する。差圧作用力F2がスプリング90の付勢力F1より大きい場合は、弁子92が弁座94から離間させられる。
コイル88に電流が供給されると、弁子92を弁座94から離間させる方向の電磁駆動力F3が作用する。シーティング弁95において、電磁駆動力F3と、スプリング90の付勢力F1と、差圧作用力F2とが作用することになり、弁子92の弁座94に対する相対位置は、これら力の関係によって決まる。電磁駆動力F3は、コイル88への供給電流の増加に伴って増加させられる。
【0016】
シーティング弁95において、差圧作用力F2と電磁駆動力F3との和がスプリング90の付勢力F1より大きくなると、弁子92が弁座94から離間させられる。また、スプリング90の付勢力F1はほぼ一定の値とすることができるため、電磁駆動力F3が大きい場合は小さい場合より、差圧作用力F2が小さくても開状態にされることがわかる。前後の差圧が小さい状態で開状態に維持する場合には、より大きな電流が必要となるのである。
一方、増圧用リニアバルブ72における差圧作用力F2は、ポンプ装置12の液圧(アキュムレータの液圧)とブレーキシリンダ液圧との差に応じた力であり、減圧用リニアバルブ76における差圧作用力F2はリザーバ73の液圧とブレーキシリンダ液圧との差に応じた力である。リザーバ73の液圧は大気圧であるみなすことができるため、差圧作用力F2は、ブレーキシリンダの液圧に応じた大きさになる。増圧リニアバルブ72においては、電磁駆動力F3の制御(コイル88への供給電流の制御)によって、低圧側であるブレーキシリンダの液圧が制御され、減圧リニアバルブ76においては、高圧側であるブレーキシリンダの液圧が制御される。なお、ブレーキシリンダが液圧作動装置に対応する。
【0017】
また、液通路70の増圧用リニアバルブ72とポンプ装置12との間には、液圧センサ96が設けられる。液圧センサ96によって増圧用リニアバルブ72の高圧側の液圧が検出される。液圧センサ40による検出液圧を採用する場合に比較して、ポンプ装置12と増圧用リニアバルブ72との間の圧力損失の影響を除くことができ、増圧リニアバルブ72の制御精度を向上させることができる。
【0018】
本液圧ブレーキ装置においては、マスタシリンダ14の加圧室の液圧をそれぞれ検出する液圧センサ110,111、ブレーキシリンダ20,28の液圧をそれぞれ検出する液圧センサ112〜118、ブレーキペダル10の操作量としてのストロークを検出するストロークセンサ120,121等が設けられる。マスタ圧センサとしての液圧センサ110,111,ストロークセンサ120,121を2つずつ設けることは不可欠ではないが、2つずつ設ければ、信頼性を向上させることができる。本実施形態においては、マスタシリンダの液圧(運転者による操作力に対応)とブレーキペダル10の操作ストロークとに基づいて運転者が要求する要求制動トルクが取得される。
なお、要求制動トルクが、マスタ液圧と操作ストロークとに基づいて取得されるようにすることは不可欠ではない。マスタ圧と操作ストロークとのいずれか一方に基づいて取得されるようにしたり、ブレーキペダル10に加えられる踏力を検出する踏力力センサを設け、その踏力センサによる検出値に基づいて取得されるようにしたりすることもできる。
また、ブレーキペダル10が踏み込まれた状態にあるか否かを検出するストップスイッチ124、各車輪16,24の回転速度を各々検出する車輪速センサ126、車両の走行速度を検出する車速センサ128等が設けられる。
【0019】
本液圧ブレーキ装置は、ブレーキECU150によって制御される。ブレーキECU150は、CPU151,ROM152,RAM153,入・出力部154等を有するコンピュータを主体とするものである。入・出力部154には、前述の液圧センサ110,111,112〜118,40,96、ストロークセンサ120,121、ストップスイッチ124、車輪速センサ126、車速センサ128等が接続されるとともに、各電磁開閉弁52,54,62,64のソレノイドのコイルやリニアバルブ装置30のソレノイドのコイル88が駆動回路(ドライバ)130(図3参照)を介して接続され、電動モータ38が図示しない駆動回路を介して接続される。ROM152には、図4のフローチャートで表されるリニアバルブ制御プログラム、図5のマップで表される制御モード決定テーブル、図6のマップで表される開弁圧決定テーブル等の複数のプログラムやテーブル等が格納されている。
【0020】
以上のように構成された車両制動システムにおける作動について説明する。
通常、マスタ遮断弁52,54が遮断状態とされることにより、ブレーキシリンダ20,28がマスタシリンダ14から遮断されて、ポンプ装置12に連通させられる。ポンプ装置12の液圧がリニアバルブ装置30の制御により制御されて、ブレーキシリンダ20,28に供給され、ブレーキ18,26が作動させられる。
ブレーキECU150において、液圧センサ110,111による検出液圧とストロークシミュレータ120,121による検出値とに基づいて運転者が所望する要求制動トルクが演算により求められる。そして、この要求制動トルクに対応する所要液圧としての目標液圧が求められ、その目標液圧が得られるようにリニアバルブ装置30に含まれる増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76のコイル88への供給電流の目標値である制御値が決定される。
制御値に応じた電流が増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76のコイル88に供給されることにより、ブレーキシリンダ20,28の液圧が制御されるのであり、ブレーキシリンダの液圧が目標液圧に近づけられる。
【0021】
図3は、ブレーキECU150によって実行される液圧制御の概要を示す機能ブロック図である。制御対象としてのリニアバルブ装置30がフィードフォワード制御部200、フィードバック制御部202および開弁促進部204により制御される。また、制御の目標値はブレーキシリンダの目標液圧Pref であり、出力は液圧センサ112〜118によって検出されるブレーキシリンダの液圧Pw である。本実施形態においては、4つのリニアバルブ装置30が、それぞれ別個に制御される。
【0022】
フィードフォワード制御部200は、目標液圧Pref に基づいて増圧リニアバルブ72のコイル88への供給電流の目標値である制御値(フィードフォワード増圧電流IFSLA )および減圧リニアバルブ76のコイル88への供給電流の目標値である制御値(フィードフォワード減圧電流IFSLR )を算出する。
また、フィードバック制御部202は、目標液圧Pref から液圧センサ112〜118によって検出されたブレーキシリンダの液圧Pw を減じた値である偏差errorを0に近づけるための、増圧リニアバルブ72に供給される電流の目標値である制御値(フィードバック増圧電流IBSLA )および減圧リニアバルブ76への供給電流の目標値である制御値(フィードバック減圧電流IBSLR )を算出する。
開弁促進部204は、開弁前は一定の勾配で増加し、開弁後は一定の大きさである開弁促進電流ΔI(開弁促進用制御値に対応する)を算出する。開弁促進電流ΔIは、本実施形態においては、増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76について同じ大きさであるが、増圧リニアバルブと減圧リニアバルブとで、スプリングのセット荷重が異なる場合等には、それぞれ、別個の大きさにすることもできる。開弁促進電流ΔIは、開弁前増加電流と称することもできる。
本実施形態においては、増圧リニアバルブ72の制御値は、フィードフォワード増圧電流、フィードバック増圧電流および開弁促進電流の和の値として決定され、コイル88には、制御値に応じた電流が供給される。減圧リニアバルブ76についても同様であり、制御値が、フィードフォワード減圧電流、フィードバック減圧電流および開弁促進電流の和として求められる。
【0023】
リニアバルブ装置30の増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76各々に対する制御値は、図4のフローチャートで表されるリニアバルブ制御プログラムの実行に従って決定される。本プログラムは、予め定められた制御サイクルタイム(実行時間)毎に実行される。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、目標液圧Pref が決定され、S2において、ブレーキ液圧Pw が検出され、目標液圧Pref からブレーキ液圧Pw を引いた値が偏差error(Pref −Pw )として求められる。そして、S3において、偏差errorに基づいて制御モードが決定され、S4において、増圧リニアバルブ72、減圧リニアバルブ76への制御値が決定される。
【0024】
S3において、制御モードは、図5のマップで表されるテーブルに従って決定される。
偏差error(所要液圧Pref −実際のブレーキシリンダ液圧Pw )が増圧しきい値DPLA より大きくなった場合に増圧モードが設定され、増圧側保持しきい値D0aより小さくなった場合に保持モードに切り換えられる。また、偏差errorが減圧しきい値DPLR より小さくなった場合に減圧モードが設定され、減圧側保持しきい値D0rより大きくなった場合に保持モードに切り換えられる。換言すれば、偏差errorの絶対値が減圧しきい値DPLR の絶対値より大きくなった場合に減圧モードが設定され、偏差errorの絶対値が減圧側保持しきい値D0rの絶対値より小さくなった場合に保持モードに設定されるのである。
なお、アンチロック制御、トラクション制御、ビークルスタビリティ制御が行われる場合にも、増圧モード、減圧モード、保持モードのいずれかに決定される。この場合には、複数の車輪16,24各々のスリップ状態等に基づいて増圧モード、減圧モード、保持モードのいずれかが決定されるとともに、目標液圧が決定される。
【0025】
S4において、決定された制御モードが保持モードである場合には、増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76への制御値がいずれも0とされる。増圧モードである場合には、減圧リニアバルブ76への制御値が0とされ、減圧モードである場合には、増圧リニアバルブ72への制御値が0とされる。
【0026】
増圧リニアバルブ72に対する制御値の決定について説明する。
フィードフォワード制御部200において、増圧リニアバルブ72への供給電流IFSLA が、式
IFSLA =α・dPref +β・Vadj−ap・・・(1)
に従って決定され、フィードバック制御部202においては、供給電流IBSLA が、式
IBSLA =(KP1・PB+KI1・SPB +KD1・dPB )×γ・・・(2)
に従って決定され、開弁促進部204においては、開弁促進電流ΔIが、式
ΔI=ΔI+Is・・・(3)
ΔI=開弁時のΔI・・・(4)
に従って決定される。保持モードから増圧モードに切り換えられた場合の、増圧リニアバルブ72が実際に開状態に切り換わるまでの間、(3)式に従って決定され、実際に開状態に切り換わった後、(4)に従って決定される。開状態に切り換わるまでの間、設定勾配で増加させられ、切り換わった後は、一定の値にされるのであり、開状態に切り換わった時点の値に保持される。
そして、増圧リニアバルブ72への供給電流ISLA は、式
ISLA =IFSLA +IBSLA +ΔI・・・(5)
に従って決定される。
【0027】
フィードフォワード制御部200において決定される供給電流IFSLA は、増圧リニアバルブ72を開状態に維持するための電流(開状態維持用制御値に対応)である。本実施形態においては、増圧リニアバルブ72を閉状態から開状態に切り換えるために必要な開弁圧に対応する開弁電流(開弁用制御値であり、式(1)の第2項に対応する)と、実際のブレーキシリンダの液圧を目標液圧に近づけるために、増圧リニアバルブ72を開状態に維持するために必要になる電流の増加分との和の電流である。後者の電流は、目標液圧の変化に基づいて決まり(目標液圧変化対応制御値)、式(1)の第1項に対応する。
【0028】
電圧Vadj−apは、図6(a)のマップで表される開弁圧決定テーブルに従って決定される開弁圧であり、βは、電圧を電流に変換するための係数である。開弁圧Vadj−apは、閉状態から開状態に切り換える指令が発せられた時点(保持モードから増圧モードに切り換わった時点)の増圧リニアバルブ72の高圧側と低圧側との間の液圧差ΔPに基づいて決まる。ただし、本実施形態においては、図6(a)のテーブル(実線で表す)は、増圧リニアバルブ72の実際の開弁圧(一点鎖線で表す。この値は、実験値や理論値を採用することができる)より小さい値になるように作成された。
【0029】
また、増圧中において、ブレーキシリンダの液圧が増加し、目標液圧に近づくと、液圧差ΔPが小さくなり差圧作用力F2が小さくなる。差圧作用力F2が小さくなっても、増圧リニアバルブ72を開状態に維持し、増圧を続行可能とするためにはより多くの電流が必要となる。この必要となる電流の増加分が目標液圧変化対応電流である。目標液圧変化対応電流は、目標液圧の変化量dPrefに係数αを掛けた値である。目標液圧の変化量dPrefは、今回の目標液圧から増圧モードが最初に選択された場合(保持モードから増圧モードに切り換えられた場合)の目標液圧を引いた値であり、αは、実際のブレーキシリンダの液圧が目標液圧になったと仮定した場合に、増圧リニアバルブ72を開状態に保つために必要な電流増加分に基づいて決定された値である。
【0030】
フィードバック制御部202において決定されるフィードバック制御値IBSLA、IBSLRは、偏差errorを0にするための電流である。前述の(2)式において、KP1,KI1,KD1は係数であり、PBが偏差errorであり、SPBは偏差の積分に関連する値で、DPBが偏差の微分に関連する値である。
【0031】
開弁促進部204において決定される開弁促進電流ΔIは、増圧リニアバルブ72を速やかに開状態に切り換えるための電流である。保持モードから増圧モードに切り換わって、増圧リニアバルブ72のコイル88に電流が供給されたからといって、直ちに、開状態に切り換えられるとは限らない。そこで、本実施形態においては、開状態に切り換えられるまでの間増加させられる開弁促進電流がさらに加えられるのである。開弁促進電流は、開弁前増加電流と称することもできる。
【0032】
減圧リニアバルブ76への供給電流である制御値は、増圧リニアバルブ72における場合と同様に決定される。この場合において、開弁圧Vadj−reは、図6の(b)のマップで表されるテーブル(実線)に従って決定される。
【0033】
制御値の決定について、図7のフローチャートに従って説明する。
S21において、フィードフォワード増圧電流IFSLA、減圧電流IFSLRが決定され、S22において、フィードバック増圧電流IBSLA、減圧電流IBSLRが決定される。
そして、S23において、S3において決定された制御モードが増圧モードであるか減圧モードであるかが判定される。増圧モードでも減圧モードでもない場合は保持モードであるため、S24において、増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76への制御値ISLA,ISLRがいずれも0にされる。
増圧モードまたは減圧モードである場合には、S25において、開弁前フラグがセットされているかどうかが判定される。開弁前フラグがセットされている場合は、増圧モードまたは減圧モードであっても、増圧リニアバルブ72または減圧モード76が閉状態にあることを表している。開弁前フラグがセット状態にない場合には、S26において、前回、保持モードであったかどうかが判定される。前回、保持モードであった場合は、増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76を閉状態から開状態に切り換える指令が出力されたことに対応する。この場合には、増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76は閉状態にあると考えられるため、S27において、開弁前フラグがセットされ、S28において、開弁促進電流ΔIが初期値に設定される。初期値は0にしたり、0より大きい値にしたりすることができる。本実施形態においては、0とされる。
【0034】
S29において、ブレーキシリンダの液圧Pwの変化量が設定量以上であるかどうかが判定される。最初に増圧モードあるいは減圧モードが設定された場合のブレーキシリンダの液圧Pwと今回実行された場合の液圧Pwとの差の絶対値(増加量または減少量)が設定値以上であるかどうかが判定されるのである。本実施形態においては、ブレーキシリンダの液圧の変化量の絶対値が設定値ΔPs以上になった場合に、増圧リニアバルブ72または減圧リニアバルブ76が実際に開状態に切り換わったとされる。
【0035】
最初にS29が実行される場合には、判定はNOとなり、S30において、開弁促進電流が設定圧ΔIsだけ増加させられる。S30において、増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76への制御値が、フィードフォワード電流、フィードバック電流、開弁促進電流の和として決定される。この制御値に応じた電流が、増圧リニアバルブ72、減圧リニアバルブ76のコイル88に供給される。
次にS4が実行される場合には、開弁前フラグがセット状態にあるため、S25の判定がYESとなって、S29において、ブレーキ液圧Pwの変化量の絶対値が設定値より大きいか否かが判定される。設定値より小さい場合には、S30,31が実行される。
増圧モード、減圧モードにあるにもかかわらず、増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76が閉状態にある間、S23,25,29,30,31が繰り返し実行されるのであり、増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76への供給電流が、フィードフォワード電流、フィードバック電流、開弁促進電流の和の値に決定される。供給電流は、開弁促進電流が増加させられるため、急勾配で増加させられる。
【0036】
それに対して、ブレーキシリンダの液圧Pwの変化量の絶対値が設定値以上になると、S29の判定がYESとなって、S31において開弁前フラグがリセットされて、S32において、開弁促進電流のその時の値が一定電流ΔI0とされる。それ以降は、開弁促進部204によって決定される制御値は一定の値ΔI0に保たれるのである。S33において、増圧リニアバルブ72、減圧リニアバルブ76の制御値が、フィードフォワード電流、フィードバック電流、開弁促進電流ΔI0の和として決定され、その制御値に対応する電流が供給されることになる。
次にS4が実行される場合には、開弁前フラグがリセット状態にあり、かつ、前回、保持モードではないため、S26における判定がNOとなって、S33が実行される。この場合には、増圧リニアバルブ72、減圧リニアバルブ76は開状態にある。
【0037】
図8に、フィードフォワード電流と開弁促進電流との和の電流の変化の状態を示す。フィードフォワード電流は、ステップ的に増加させられた後、目標液圧の増加に伴って増加させられるのであるが、開弁促進電流は、増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76が開状態に切り換えられるまでの間、増加させられ、開状態に切りかわった後、一定の大きさにされる。フィードフォワード電流と開弁促進電流との和は、開弁前において、急勾配で増加させられるのであり、増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76への制御値は、開弁前において急勾配で増加させられることになる。したがって、増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76を速やかに開状態に切り換えることができ、制御遅れを抑制することができる。また、ステップ的に増加させられる電流分を小さめにすることができるため、ブレーキシリンダの液圧が急激に変化することを回避し、制御ハンチングが生じることを回避することができる。
【0038】
このように、本実施形態においては、増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76の制御値の増加勾配が、開弁前において開弁後における場合より大きくされる。また、開弁前においては、開弁促進電流の増加勾配は予め決められた勾配とされるため、制御値は、設定勾配以上の勾配で増加させられることになる。さらに、制御値はフィードバック電流、フィードフォワード電流、開弁促進電流の和であるため、制御値の増加勾配は、目標液圧変化対応電流の増加勾配と開弁促進電流の増加勾配との和以上の大きさとなり、目標液圧の変化に応じた勾配より大きな勾配となる。
【0039】
以上のように、本実施形態においては、ブレーキECU150等によって、電流制御装置が構成される。そのうちの、ブレーキECU150のS30,31を記憶する部分、実行する部分、開弁促進部204等により制御値急増部が構成される。制御値急増部は、開弁前制御部、異規則制御値決定部、複合的制御値決定部でもある。
【0040】
なお、上記実施形態においては、開弁促進部204が設けられたが、開弁促進部204を設けることは不可欠ではない。例えば、図9に示す制御ブロック図で表されるように、リニアバルブ装置30がフィードフォワード制御部200,フィードバック制御部202によって制御されるようにすることができる。本実施形態においては、フィードフォワード制御部200によって決定される制御値が、開弁前に急勾配で増加させられるようにされている。本実施形態においては、目標液圧変化対応電流は、上記実施形態における場合と同様な値とされるが、開弁電流が開弁前に増加させられることになる。それによって、フィードフォワード電流が、開弁前は開弁後より急勾配で増加させられることになる。
【0041】
図10のフローチャートにおいて、保持モードから増圧モード、減圧モードに切り換えられた場合には、S41において、前後の差圧に基づいて開弁圧Vadj−ap、Vadj−reが図6(a)または(b)のテーブルに従って求められる。そして、増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76が閉状態にある場合は、S42において、開弁圧Vadj−ap、Vadj−reが設定圧Δvだけ増加させられ、それに基づいて、S43において、フィードフォワード電流が決定される。その後、S44において、フィードバック電流が決定され、S45において、これらの和が増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76への制御値として決定される。
なお、設定圧Δvは、増圧リニアバルブ72における場合と減圧リニアバルブ76における場合とで同じ値としても異なる値としてもよい。
【0042】
次に、S4が実行される場合には、開弁前フラグがセット状態にあるため、S25における判定がYESとなって、S29において、実際に開状態に切り換えられたかどうかが判定される。実際に開状態に切り換えられる前においては、S42〜45が繰り返し実行される。開弁圧Vadj−ap、Vadj−reが増加させられることによって、フィードフォワード電流が急勾配で増加させられ、制御値が急勾配で増加させられる。
増圧リニアバルブ72、減圧リニアバルブ76が実際に開状態になった場合には、S31において、開弁前フラグがリセットされ、S46において、その時点の開弁圧(前回S42において求められた開弁圧)が採用される。S47において、それを利用してフィードフォワード電流が決定され、S48において、フィードバック電流が求められ、S49において、これらの和が制御値として決定される。開弁圧は、増圧モード、減圧モードが設定されている間、一定の値とされる。
【0043】
本実施形態においては、フィードフォワード電流が図11に示すように変化させられる。開状態に切り換えられるまでの間、開弁電流が急増させられることによって、フィードフォワード電流が急増させられ、制御値が急増させられる。それによって、制御遅れを抑制することができる。
【0044】
また、開弁前も開弁後も、フィードフォワード制御とフィードバック制御との両方が行われるようにすることは不可欠ではない。開弁後においてフィードバック制御とフィードフォワード制御との両方が行われ、開弁前においては、フィードバック制御が行われないでフィードフォワード制御が行われるようにすることができる。
さらに、開弁前においては、フィードフォワード制御、フィードバック制御とは別の開弁前制御が行われるようにすることができる。
その一例を図12のフローチャートに基づいて説明する。保持モードから増圧モードまたは減圧モードに切り換えられた場合には、S51において、制御値の初期値I0が設定される。そして、開状態に切り換えられない場合には、S52において、その制御値の初期値I0に設定値ΔIが加えられる。そして、開状態に切り換えられない間、S25,29,52が繰り返し実行されて、制御値I0が急勾配で増加させられるのである。
それに対して、増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76が実際に開状態に切り換えられた後は、S47〜49において、通常制御が行われる。フィードフォワード電流とフィードバック電流との和が制御値とされるのであり、その制御値に応じた電流が供給される。
【0045】
制御値の初期値I0は、0より大きい値としたり、0としたりすることができる。また、初期値は、その時点の前後の差圧で決まる開弁圧(図6参照)に対応する電流値とすることもできる。
図13は、初期値が0より大きい値に設定された場合の制御値の変化状態を示し、図14は0とした場合の変化状態を示す。
いずれの場合においても、増圧リニアバルブ72,減圧リニアバルブ76への供給電流の増加勾配は開状態にされる前は開状態にされた後より大きくされる。それによって、制御遅れを抑制することができる。なお、図13,14において開状態にされた後の制御値の変化状態を直線で表したが、実際には、フィードバック制御の影響により、曲線的に変化することが多い。
【0046】
なお、通常制御において、フィードフォワード制御とフィードバック制御との両方が行われるようにすることは不可欠ではなく、いずれか一方が行われるようにすることができる。また、本発明の液圧制御装置は、駆動源として電動モータを含まない車両に限らず、ハイブリッド車両、電気自動車に適用することができる。これらにおいて、電動モータの回生制動による回生ブレーキ力と液圧ブレーキ力との和が運転者による要求ブレーキ力と等しくなるように、液圧ブレーキ力が制御される回生協調制御が行われる場合にも、適用することができるのである。さらに、液圧制動装置は、上記実施形態におけるそれに限らない。例えば、リニアバルブ装置30は、複数のブレーキシリンダに共通に設けてもよい。
【0047】
その他、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項について記載した態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を施した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である液圧制御装置を含む車両ブレーキ装置の回路図である。
【図2】上記液圧制御装置に含まれるリニアバルブ装置の断面図である。
【図3】上記液圧制御装置のブレーキECUにおける制御の概要を概念的に示すブロック図である。
【図4】上記ブレーキECUのROMに格納されたリニアバルブ制御プログラムを表すフローチャートである。
【図5】上記ブレーキECUのROMに格納された制御モード決定テーブルを表すマップである。
【図6】上記ブレーキECUのROMに格納された開弁圧決定テーブルを表すマップである。
【図7】上記プログラムの一部を示すフローチャートである。
【図8】上記プログラムの実行に従って決定されるフィードフォワード電流の変化状態を示す図である。
【図9】本発明の別の一実施形態である液圧制御装置のブレーキECUにおける制御の概要を概念的に示すブロック図である。
【図10】上記ブレーキECUに格納されたリニアバルブ制御プログラムの一部を表すフローチャートである。
【図11】上記プログラムの実行に従って決定される制御値のフィードフォワード電流の変化状態を示す図である。
【図12】本発明のさらに別の一実施形態である液圧制御装置のブレーキECUに格納されたリニアバルブ制御プログラムの一部を表すフローチャートである。
【図13】上記リニアバルブ制御プログラムの実行に従って決定される制御値の変化の状態を示す図である。
【図14】上述の場合とな別の場合の制御値の変化の状態を示す図である。
【符号の説明】
30:リニアバルブ装置 72:増圧リニアバルブ 76:減圧リニアバルブ 88:コイル 150:ブレーキECU 200:フィードフォワード制御部 202:フィードバック制御部 204:開弁促進部

Claims (6)

  1. シーティング弁と、コイルを備えたソレノイドとを含み、少なくとも、前記シーティング弁の高圧側と低圧側との間の差圧に応じた差圧作用力と前記コイルへの供給電流に応じた電磁駆動力との関係に基づいて開閉する電磁制御弁と、
    前記コイルへの供給電流を表す制御値を決定する制御値決定部を含み、その制御値決定部によって決定された制御値に応じた電流を前記コイルに供給することによって、前記シーティング弁の前記高圧側と前記低圧側とのいずれか一方の側の液圧を制御する電流制御装置と
    を含む液圧制御装置であって、
    前記制御値決定部が、前記電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際、前記電磁制御弁が実際に開状態に切り換わるまでの間、予め定められた設定勾配以上でかつ有限の勾配で前記制御値を増加させる制御値急増部を含むことを特徴とする液圧制御装置。
  2. シーティング弁と、コイルを備えたソレノイドとを含み、少なくとも、前記シーティング弁の高圧側と低圧側との間の差圧に応じた差圧作用力と前記コイルへの供給電流に応じた電磁駆動力との関係に基づいて開閉する電磁制御弁と、
    前記コイルへの供給電流を表す制御値を決定する制御値決定部を含み、その制御値決定部によって決定された制御値に応じた電流を前記コイルに供給することによって、前記シーティング弁の前記高圧側と前記低圧側とのいずれか一方の側の液圧を制御する電流制御装置と
    を含む液圧制御装置であって、
    前記制御値決定部が、前記電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際、前記電磁制御弁が実際に開状態に切り換わるまでの間、開状態に切り換わった後とは異なる規則で前記制御値を決定する異規則制御値決定部を含むことを特徴とする液圧制御装置。
  3. シーティング弁と、コイルを備えたソレノイドとを含み、少なくとも、前記シーティング弁の高圧側と低圧側との間の差圧に応じた差圧作用力と前記コイルへの供給電流に応じた電磁駆動力との関係に基づいて開閉する電磁制御弁と、
    前記シーティング弁の前記高圧側と前記低圧側とのいずれか一方の液圧が所要液圧に近づくように、前記コイルへの供給電流を表す制御値を決定する制御値決定部を含み、その制御値決定部によって決定された制御値に応じた電流を前記コイルに供給することによって、前記シーティング弁の前記いずれか一方の側の液圧を制御する電流制御装置と
    を含む液圧制御装置であって、
    前記制御値決定部が、前記電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際、前記所要液圧の同じ変化勾配に対して、前記電磁制御弁が実際に開状態に切り換わる前と切り換わった後とで異なる勾配で前記制御値を増加させる制御値増加部を含むことを特徴とする液圧制御装置。
  4. シーティング弁と、コイルを備えたソレノイドとを含み、少なくとも、前記シーティング弁の高圧側と低圧側との間の差圧に応じた差圧作用力と前記コイルへの供給電流に応じた電磁駆動力との関係に基づいて開閉する電磁制御弁と、
    前記シーティング弁の前記高圧側と前記低圧側とのいずれか一方の液圧が所要液圧に近づくように、前記コイルへの供給電流を表す制御値を決定する制御値決定部を含み、その制御値決定部によって決定された制御値に応じた電流を前記コイルに供給することによって、前記シーティング弁の前記いずれか一方の側の液圧を制御する電流制御装置と
    を含む液圧制御装置であって、
    前記制御値決定部が、前記電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際、前記電磁制御弁が開状態に切り換わるまでの間、前記所要液圧の変化状態で決まる勾配より大きくかつ有限の勾配で前記制御値を増加させる制御値急増部を含むことを特徴とする液圧制御装置。
  5. シーティング弁と、コイルを備えたソレノイドとを含み、少なくとも、前記シーティング弁の高圧側と低圧側との間の差圧に応じた差圧作用力と前記コイルへの供給電流に応じた電磁駆動力との関係に基づいて開閉する電磁制御弁と、
    前記シーティング弁の前記高圧側と前記低圧側とのいずれか一方の液圧が所要液圧に近づくように、前記コイルへの供給電流を表す制御値を決定する制御値決定部を含み、その制御値決定部によって決定された制御値に応じた電流を前記コイルに供給することによって、前記シーティング弁の前記いずれか一方の側の液圧を制御する電流制御装置と
    を含む液圧制御装置であって、
    前記制御値決定部が、前記電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際、前記制御値を、前記シーティング弁の開弁用制御値と、前記所要液圧と前記シーティング弁の高圧側と低圧側とのいずれか一方の側の液圧との偏差に基づいて決まる偏差対応制御値と、前記電磁制御弁が実際に開状態に切り換わるまでの間一定の勾配で増加する開弁促進用制御値とを含む値として決定する複合的制御値決定部を含むことを特徴とする液圧制御装置。
  6. シーティング弁と、コイルを備えたソレノイドとを含み、少なくとも、前記シーティング弁の高圧側と低圧側との間の差圧に応じた差圧作用力と前記コイルへの供給電流に応じた電磁駆動力との関係に基づいて開閉する電磁制御弁と、
    前記コイルへの供給電流を、少なくとも所要液圧の変化状態に基づいて制御するフィードフォワード制御部と、前記所要液圧と前記シーティング弁の高圧側と低圧側とのいずれか一方の側の実際の液圧との偏差に基づいて制御するフィードバック制御部とを含み、これらフィードバック制御部とフィードフォワード制御部との少なくとも一方による供給電流の制御によって、前記シーティング弁の前記いずれか一方の側の液圧を制御する電流制御装置と
    を含む液圧制御装置であって、
    前記フィードフォワード制御部が、前記電磁制御弁を閉状態から開状態に切り換える際、前記所要液圧の同じ変化状態に対して、前記電磁制御弁が実際に開状態に切り換わるまでの間、開状態に切り換わった後より大きな勾配で前記供給電流の目標値を増加させる供給電流急増部を含むことを特徴とする液圧制御装置。
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