JP2005029903A - 潜在捲縮性ポリ乳酸複合繊維 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光学純度の異なるポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bとをサイドバイサイド型に配した複合繊維であって、ポリ乳酸樹脂Aの光学純度が98%以上、ポリ乳酸樹脂Bの光学純度が93〜96%であり、かつ140℃乾熱処理後に50個/25mm以上のスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮能を有する。また、遮光性(透け防止性)を付与するために、無機粒子を複合繊維全体に対して0.10質量%以上含有することが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、伸縮性に優れ、かつ土壌や大気中で生分解し、好ましくは遮光性(透け防止性)を有する、あるいは原着された布帛を得るのに好適な潜在捲縮性ポリ乳酸複合繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル繊維は、力学的性質、熱安定性、ウォッシャブル性等に優れており、衣料用、産業資材用、インテリア用等極めて広い分野に使用されている。その中で、スポーツ衣料等の織編物あるいはハップ材基布用等の不織布には、機能性やフィット性等の性能を満足させるために伸縮性を持つものが要求されており、織編物や不織布に伸縮性を付与する方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、伸縮性を有する布帛を得る方法として、潜在捲縮能を有するポリエステル複合繊維を用いる方法が知られている。伸縮性布帛用に適する繊維として、特許文献1には、実質的にエチレンテレフタレート単位よりなるポリエステルとイソフタル酸と2,2−ビス〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパンとを共重合したエチレンテレフタレート単位主体の共重合ポリエステルとからなる潜在捲縮性複合繊維が開示されている。
【0004】
しかし、ポリエステル繊維を含め、ポリオレフィン、ポリアミド等の合成繊維は、使用後自然界に放置されても分解され難く、そのために種々の問題が生じるものであった。例えば、これらの生活資材、農業資材、土木資材等は、使用後は土中に埋める、焼却する等の処理が必要となり、土中に埋めても生分解性が低いため、その廃棄には制限があった。
【0005】
このような問題を解決するために、土中又は水中で分解される素材を用いることが考えられてきたが、充分なものは得られていない。
従来の生分解性ポリマーとしては、セルロース、セルロース誘導体、キチン、キトサン等の多糖類、タンパク質、ポリ3−ヒドロキシブチレートや3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシバリレートの共重合体等の微生物により作られるポリマー、ポリグリコリド、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステルが知られている。主に使用されているセルロース系のコットン、再生セルロースは安価であるが、熱可塑性でないためバインダーを必要とし、バインダー繊維としてポリオレフィン、ポリエステル繊維等を用いるため、生分解され難いという問題があった。微生物により作られるポリ3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシバリレートの共重合体等は、高価であるため用途が限定され、また強度が低いという問題があった。
【0006】
また、ポリカプロラクトンやポリブチレンサシサクシネートは、溶融紡糸可能な熱可塑性である生分解性ポリマーであるが、融点が低く、耐熱性という点で問題があった。
さらに、同様に熱可塑性樹脂であるポリ乳酸は、溶融紡糸が容易で、耐熱性もあるが、ソフト性、風合いなどの面で不満足な点があり、その改善が望まれている。
【0007】
これらの問題を解決するために、特許文献2では溶融時の吸熱量が異なる脂肪族ポリエステルを単繊維内で偏心的に接合された自発捲縮複合繊維が提案されている。しかし、この繊維は、結晶性の低い樹脂を用いているため、耐熱性において問題があり、製糸工程において熱セットを行った後に、不織布の加工工程での熱処理により捲縮が発現する潜在捲縮タイプの複合繊維を得ることができない。また、ポリ乳酸にポリエチレングリコール等を共重合するため、重合コストが高く、さらに、原綿の伸縮性も十分なレベルではなかった。
また、繊維製品の多様化とコストダウンの要求により、目付の小さい薄地の布帛とすることが多いが、薄地とすると遮光性が低下し、透けて見えるようになるという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開平9−157955号公報
【特許文献2】特開平9−209216号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決し、土壌や大気中で生分解性を示し、製糸性よく製造することができ、かつ、この繊維を使用した製品に優れた伸縮性を付与することができ、さらには、遮光性を有したり、原着された布帛を得るのに好適な潜在捲縮性ポリ乳酸複合繊維と不織布を提供することを技術的な課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、光学純度の異なるポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bとをサイドバイサイド型に配した複合繊維であって、ポリ乳酸樹脂Aの光学純度が98%以上、ポリ乳酸樹脂Bの光学純度が93〜96%であり、かつ140℃乾熱処理後に50個/25mm以上のスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮能を有することを特徴とする潜在捲縮性ポリ乳酸複合繊維を要旨とするものである。
【0011】
また、本発明においては、上記の潜在捲縮性ポリ乳酸複合繊維に遮光性(透け防止性)を付与するために、無機粒子を複合繊維全体に対して0.10質量%以上含有することも好ましい態様として含まれる。
さらに、本発明においては、原着された布帛を得るために、ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bのうち、少なくとも一方の成分が着色剤を含有してなる原着ポリ乳酸であり、複合繊維全体に対して、着色剤を0.1〜3.0質量%含有することも好ましい態様として含まれる。
本発明には、上記したいずれかの潜在捲縮性ポリ乳酸複合繊維を使用した不織布も含まれる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸複合繊維は、光学純度の異なるポリ乳酸樹脂Aと、ポリ乳酸樹脂Bとをサイドバイサイド型に配した複合繊維である。
【0013】
本発明でいうポリ乳酸樹脂とは、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする共重合物である。ポリ乳酸を製造するための乳酸としては、D体のみ、L体のみ、D体とL体の混合物のいずれでもよい。ポリ乳酸を主体とする共重合物としては、乳酸(D体のみ、L体のみ、D体とL体の混合物のいずれでもよい。)と、例えばε−カプロラクトン等の環状ラクトン類、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸等のα−オキシ酸類、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類、コハク酸、セバシン酸等のジカルボン酸類から選ばれるモノマーの一種又は二種以上とを共重合したものが挙げられる。共重合の割合としては、10質量%以下が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0014】
上述したように、本発明のポリ乳酸複合繊維は、光学純度の異なるポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bとを、サイドバイサイド型に配した複合繊維であるが、光学純度の高いポリ乳酸樹脂Aが低収縮成分、光学純度の低いポリ乳酸樹脂Bが高収縮成分となり、熱処理時の収縮率差を利用して、スパイラル状の捲縮を発現させるものである。
【0015】
本発明で言うポリ乳酸樹脂の光学純度とは、ポリ乳酸樹脂を構成する乳酸がL−乳酸を主体とする場合には、全乳酸におけるL−乳酸の含有率で表し、ポリ乳酸樹脂を構成する乳酸がD−乳酸を主体とする場合には、全乳酸におけるD−乳酸の含有率で表す。例えば、ポリ乳酸がL−乳酸95%、D−乳酸5%からなる場合には、このポリ乳酸樹脂の光学純度は95%となる。
【0016】
まず、低収縮成分であるポリ乳酸樹脂Aの光学純度は98%以上であることが必要である。ポリ乳酸樹脂Aの光学純度が98%未満になると、熱処理時の収縮が大きく、低収縮成分、高収縮成分の両者が収縮してしまうため不安定であり、均一な捲縮が得られず、この繊維から得られる不織布の地合が悪くなる。
【0017】
また、ポリ乳酸樹脂Bの光学純度は93〜96%であることが必要である。ポリ乳酸樹脂Bの光学純度が96%より高いと、ポリ乳酸樹脂Aとの間に十分な収縮差がなく、捲縮の発現性が悪くなる。また、93%未満になると融点が低くて耐熱性が悪くなり、延伸工程での熱セット時に単糸の融着が起こる。
【0018】
上記したポリ乳酸樹脂の数平均分子量(Mn)は特に限定されるものではないが、60000以上、90000以下が好ましい。ポリ乳酸樹脂のMnが60000より小さい場合、溶融時に低粘度で製糸性が悪くなりやすい。また、ポリ乳酸樹脂の数平均分子量が90000より大きいと溶融時に高粘度となり、製糸性が悪くなりやすい。
【0019】
次に、本発明の複合繊維は、140℃における自由収縮熱処理で50個/25mm以上のスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮能を有することが必要である。伸縮性を有する不織布を得るためには、捲縮を発現させた時、不織布を構成する繊維が30個/25mm以上、好ましくは40個/25mm以上のスパイラル捲縮を有することが好ましく、そのためには原綿状態で50個/25mm以上、好ましくは60個/25mm以上、さらに好ましくは70〜150個/25mmのスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮能を有することが必要であり、150個/25mmを超えると、捲縮が小さくて不織布の伸縮性が低くなりやすい。
【0020】
また、本発明の複合繊維を短繊維として用いる場合、梳綿工程でネップや未開繊部の発生しない原綿とすることが必要である。一般にネップや未開繊部の発生は、捲縮数、捲縮形態と密接な関係にあり、機械捲縮の場合、捲縮数が8個/25mm未満では未開繊部が発生しやすく、18個/25mmを超えるとネップが発生しやすい。また、梳綿工程以前でスパイラル捲縮を発現させた場合、ネップが発生しやすく、ウエブの均斉度が悪くなるほか、ウエブの素抜けが発生しやすい。したがって、50個/25mm以上のスパイラル捲縮発現能を有する潜在捲縮性複合繊維に8〜18個/25mmの機械捲縮を付与すると好ましい原綿となる。
機械捲縮を付与する方法としては、スタッフィングボックス式、加熱ギヤ式等が採用できるが、一般にスタッフィングボックス式が採用される。
【0021】
また、本発明においては、複合繊維に遮光性を付与することを目的として、無機粒子を含有させることができる。本発明の複合繊維に無機粒子を含有させる場合には、ポリ乳酸樹脂Aのみ、ポリ乳酸樹脂Bのみ、又はポリ乳酸樹脂AとBの両方に含有させてよい。
【0022】
遮光性を付与するための無機粒子としては、二酸化チタン、シリカ粒子、酸化ジリコニウム、酸化アルミナ等であり、好ましくはコスト、安定性、艶消し効果等の点で二酸化チタンである。無機粒子の形状も特に限定されるものではないが、大きさは通常0.1〜1.0μm、好ましくは0.3〜0.7μmである。
【0023】
無機粒子の含有量は、複合繊維中において、0.10質量%以上、好ましくは0.20質量%以上とする。複合繊維中の無機粒子含有量が0.10質量%未満であると遮光効果が不十分となる。また、片側成分の無機粒子の含有量が4.0質量%を超えると、製糸性が悪化するため好ましくない。
【0024】
さらに、本発明の複合繊維は、用途によっては繊維の段階で着色されていることが好ましく、ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bのうち、少なくとも一方の成分が着色剤を含有してなる原着ポリ乳酸であり、かつ、複合繊維全体に対して、着色剤を0.1〜3.0質量%含有しているポリ乳酸複合繊維であることも好ましい。
【0025】
本発明のポリ乳酸複合繊維は、自由収縮熱処理により三次元捲縮を発現するものであるので、ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bとにおいて、少なくとも一方の成分に着色剤が含有しているだけでも、不織布にした場合にチラツキ感や色目斑が発生しないため、着色の効果を十分に発揮することができる。着色剤の含有量は、複合繊維全体に対して0.1質量%未満であると、着色の効果を十分に発揮することができず、一方、3.0質量%を超えると、溶融紡糸を円滑に行い難くなる。
【0026】
着色剤としては、カーボンブラック、弁柄、群青等の無機系顔料、シアニン系、ポリアゾ系、アンスラキノン系等の有機系顔料、染料等が挙げられる。用途等に応じて、目的とする色を得るために、これらの着色剤を適宜選択し、単独又はブレンドして使用すればよい。ただし、繊維が生分解性を有しているために、使用する着色剤も植物由来の顔料を使用することが好ましい。
【0027】
着色剤の添加方法については、ポリ乳酸の重合段階から複合繊維の製糸段階までの過程で行えばよいが、設備の汚染を制御することができ、また取り扱いの容易性から製糸段階で添加することが好ましい。添加方法としては、マスターバッチ方式、リキッドカラー方式等が挙げられるが、溶融紡糸時の製糸安定性、着色剤の取り扱い容易性等から、マスターバッチ方式が好ましい。
【0028】
マスターバッチ方式で複合繊維を得る場合、原料ペレットに計量混合して溶融紡糸する方法、別々に溶融させたポリマーに計量混合して溶融紡糸する方法等がある。
マスターバッチ方式において、着色剤を練り込むベースポリマーは、製糸性、潜在捲縮性能等から、着色する側のポリマーと同じ組成のポリマーを使用することが好ましい。
【0029】
本発明のポリ乳酸複合繊維の形態は、長繊維、短繊維のいずれでもよいが、短繊維として伸縮性が要求される不織布用途に用いれば、繊維の特徴を最大限に発揮させることができる。
また、複合繊維の断面は、円形、長円形、ひょうたん形、多角形、多葉形、アルファベット形その他各種の非円形(異形)、中空形など任意に選択することができる。繊度も同様に使用目的に応じて任意に選択できるが、通常の不織布用途には、単糸繊度0.1〜50dtex程度の範囲、特に1〜20dtexの範囲が好ましく用いられる。
【0030】
本発明の複合繊維には、各種顔料、染料、撥水剤、吸水剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属粒子、結晶核剤、滑剤、可塑剤、抗菌剤、香料その他の添加剤を混合することができる。
【0031】
本発明の不織布は、上記したいずれかの潜在捲縮性ポリ乳酸複合繊維を使用した不織布であり、伸縮性や地合が良好なものである。この不織布は、少なくとも一部に本発明の潜在捲縮性ポリ乳酸複合繊維を使用したものであるが、伸縮性や地合を向上させるためには、全ての繊維に本発明の複合繊維を使用したものが好ましい。
【0032】
次に、本発明のポリ乳酸複合繊維を短繊維とする場合の製法例について説明する。
まず、通常のサイドバイサイド型複合繊維用の複合紡糸装置を用いて、光学純度の異なるポリ乳酸樹脂AとBとを溶融して別々の計量孔にて計量し、口金背面でサイドバイサイドになるように合流させ、同一吐出孔から吐出させ、紡出糸条を横吹付装置や環状吹付装置等の公知の冷却装置を用いて吹付風により糸条を冷却した後、油剤を付与し、引取ローラを介して捲取機に捲取る。曳糸性を考慮すると、引取ローラの速度は500〜2000m/分であることが好ましい。
【0033】
次いで、得られた未延伸糸を延伸後のトウ繊度が40万〜130万dtexになるように引き揃え、公知の延伸機にて周速の異なるローラ群間で延伸、緊張熱処理を行う。引き続き、延伸、熱処理後のトウに油剤を付与した後、所定の繊維長に切断して目的とする潜在捲縮性ポリ乳酸複合繊維を得る。
【0034】
上記の製造法において、溶融紡糸時のポリ乳酸樹脂の温度は、特に限定されるものではないが、ポリ乳酸樹脂の融点以上、230℃以下、特にポリ乳酸樹脂の融点以上、210℃以下であることが好ましい。溶融紡糸時のポリ乳酸樹脂の温度が230℃を超えると、ラクチドを再生成して熱劣化しやすくなる。
【0035】
また、ポリ乳酸複合繊維に、140℃乾熱処理後に50個/25mm以上のスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮能を付与するためには、延伸時の緊張熱処理温度を80〜130℃とすることが好ましく、90〜120℃とすることがより好ましい。上記温度が80℃未満になると、140℃の乾熱処理時にポリ乳酸樹脂A、Bが共に大きく収縮するため、捲縮の発現性が悪くなる。また、130℃を超えると、熱処理時の高収縮成分であるポリ乳酸樹脂Bの収縮が小さく、捲縮の発現性が悪くなる。
【0036】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例における特性値等の測定法は次の通りである。
(1)相対粘度(ηR)
フェノール/四塩化エタンの等質量混合溶液を溶媒とし、ウベローデ粘度計を使用して、温度20℃で測定した。
(2)数平均分子量
テトラヒドロフランを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。充填剤として、waters社製のStyragel HR #54460、および#44225、Ultrastyragel#10571の3種類を使用し、屈折率計を使用して測定した。
(3)光学純度(%)
超純水と1Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液の等質量混合溶液を溶媒とし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定した。カラムにはsumichiral OA6100を使用し、UV吸収測定装置により検出した。
(4)単糸繊度(dtex)
JIS L−1015 7−5−1−1Aの方法により測定した。
(5)繊維強度(cN/dtex)
JIS L−1015 7−7−1の方法により測定した。
(6)耐熱性
延伸時に110℃で熱セットを行った際に、単糸の融着、密着がない場合の耐熱性を○、単糸の融着、密着がある場合の耐熱性を×とした。
(7)捲縮数(個/25mm)
JIS L−1015 7−12−1の方法により測定した。なお、熱処理後の捲縮数は、短繊維を140℃で15分間自由収縮可能な条件で熱処理することによって行った。
(8)伸張率
不織布を幅5cmに切断し、30g荷重時の長さL0と240g荷重時の長さL1を測定し、次式より伸張率を算出した。
伸張率(%)=〔(L1−L0)/L0〕×100
本発明では100%以上を合格とした。
(9)不織布の地合
不織布を10cm×10cmの大きさに切断した試料について、5人のパネラーが不織布の地合を触感で評価し、地合の斑、ゴアゴア感について、次の3段階で判定した。
良好(○)、悪い(△)、非常に悪い(×)
(10)遮光率
東京光学機械社製の光電池照度計SIP−5型を用いて測定した。本発明では遮光率80%以上を合格とした。
(11)製糸性
2錘で7日間紡糸し、1日1錘当たりの糸切れ回数が3回以下を合格(○)とし、糸切れ回数が3回を超えるものを不合格(×)とした。
【0037】
実施例1
光学純度が98.7%であり、数平均分子量88200、[ηR]=1.870であるL−乳酸を主体とするポリ乳酸樹脂Aと、光学純度が94.7%であり、数平均分子量82000、[ηR]=1.820であるL−乳酸を主体とするポリ乳酸樹脂Bを、孔数が713である通常のサイドバイサイド型の繊維用のノズルを用いて、複合比率50:50、吐出量430g/分、220℃にて紡糸し、引取速度1100m/分で引き取り、未延伸糸を得た。この時、紡糸断糸はなく、工程調子は良好であった。
【0038】
得られた未延伸糸を集束して糸条束とし、延伸温度60℃、延伸速度100m/分で3.00倍に延伸後、110℃で緊張熱処理を行い、次いで、スタッフィングボックスで機械捲縮を付与した後、カット長51mmに切断して、繊度2.2dtexの短繊維を得た。
次に、この短繊維をローラカードを用いて、速度20m/分で開繊してウエブを形成し、ニードルパンチ処理を施した後、熱風通過式熱処理機を用い、140℃で3分間熱処理して、目付150g/m2の不織布を作成した。
【0039】
実施例2〜3、比較例1〜3
ポリ乳酸樹脂光学純度を変更し、その他は実施例1の方法と同様にして、ポリ乳酸複合繊維を得た。
実施例1〜3と比較例1〜3で得られた原綿と不織布の評価結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1から明らかなように、実施例1〜3では、光学純度が異なるポリ乳酸を使用することにより、本発明の要件を満たす、伸縮性が良好なポリ乳酸複合繊維が得られた。
【0042】
一方、比較例1は、ポリ乳酸樹脂Aの光学純度が低いため、熱処理時の収縮が大きく、ポリ乳酸樹脂A、Bが共に収縮するため、均一な捲縮が得られず、不織布の地合が悪くなった。また、比較例2は、ポリ乳酸樹脂Bの光学純度が低いため、耐熱性が悪く、延伸工程での熱セットにおいて単糸の融着が見られた。さらに、比較例3は、ポリ乳酸樹脂Bの光学純度高くて、ポリ乳酸樹脂A、Bの光学純度の差が小さいため、発現するスパイラル捲縮が少なく、伸張率も低くなり、本発明の要件を満たすものではなかった。
【0043】
実施例4〜7
二酸化チタンの含有量を表2のように変更した以外は、実施例1と同様の方法で原綿と不織布を得た。
得られた原綿と不織布の特性値等を併せて表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表2から明らかなように、実施例4、5は、遮光性のよい複合繊維が得られ、紡糸性、捲縮発現性能も良好であった。また、実施例6では、二酸化チタンの含有量が高いため、紡糸操業性はやや悪かったが、遮光性と捲縮発現性は良好であった。
一方、二酸化チタン量の少ない実施例7で得られた複合繊維は、遮光性と捲縮発現性は良好であったが、遮光性が劣るものであった。
【0046】
実施例8〜11、参考例1〜2
ポリ乳酸樹脂Aをベースポリマーとして着色剤(弁柄)を練り込んだマスターバッチを紡糸直前でチップブレンドして、着色剤含有量を表3のように調整した以外は、実施例1と同様の方法で原綿と不織布を得た。
得られた原綿と不織布の特性値等を併せて表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
表3から明らかなように、実施例8〜11では、製糸性も良好であり、捲縮性能、不織布の地合も良好な原着されたポリ乳酸潜在捲縮繊維を得ることができた。
一方、着色剤の含有量が本発明の要件を満たさない参考例1〜2では、捲縮性能、不織布の地合等は実施例8〜11と遜色のないものであったが、製糸性が悪かった。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、土壌や大気中で生分解性を示し、製糸性よく製造することができ、かつ、この繊維を使用した製品に優れた伸縮性を付与することができる潜在捲縮性ポリ乳酸複合繊維や、前記特長に加えて、遮光性(透け防止性)を有したり、さらには原着された布帛を得るのに好適な潜在捲縮性ポリ乳酸複合繊維が提供される。
Claims (4)
- 光学純度の異なるポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bとをサイドバイサイド型に配した複合繊維であって、ポリ乳酸樹脂Aの光学純度が98%以上、ポリ乳酸樹脂Bの光学純度が93〜96%であり、かつ140℃乾熱処理後に50個/25mm以上のスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮能を有することを特徴とする潜在捲縮性ポリ乳酸複合繊維。
- 無機粒子を複合繊維全体に対して0.10質量%以上含有することを特徴とする請求項1記載の潜在捲縮性ポリ乳酸複合繊維。
- ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bのうち、少なくとも一方の成分が着色剤を含有してなる原着ポリ乳酸であり、複合繊維全体に対して、着色剤を0.1〜3.0質量%含有することを特徴とする請求項1記載の潜在捲縮性ポリ乳酸複合繊維。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の潜在捲縮性ポリ乳酸複合繊維を使用した不織布。
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