JP2000054227A - ポリオレフィン系複合繊維 - Google Patents

ポリオレフィン系複合繊維

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JP2000054227A
JP2000054227A JP10216861A JP21686198A JP2000054227A JP 2000054227 A JP2000054227 A JP 2000054227A JP 10216861 A JP10216861 A JP 10216861A JP 21686198 A JP21686198 A JP 21686198A JP 2000054227 A JP2000054227 A JP 2000054227A
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polyolefin
lactic acid
acid
polymer
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Fumio Matsuoka
文夫 松岡
Yuji Deguchi
裕二 出口
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Unitika Ltd
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Unitika Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 実用的な繊維強力を持ち、張り、腰、反撥
性、ドライ感、嵩高性やドレープ性などが目的により付
与できる多機能性を有し、さらに、生分解性がある重合
体の成分をアルカリ減量することで、廃液処理を含めた
環境に優しいポリオレフィン系複合繊維を提供する。 【解決手段】 ポリオレフィン系重合体(A)と脂肪族
ポリエステル(B)からなる複合繊維であって、複合比
(A/B)が5/95〜95/5であり、かつ、脂肪族
ポリエステル(B)が繊維表面の一部に露出するように
配置されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリオレフィン本
来の繊維物性や特徴を持ち、アルカリ減量特性にも優れ
た、新規機能性を有するポリオレフィン系複合繊維に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリオレフィン系繊維は、汎用素材とし
て産業資材や一般家庭資材、土木、農業資材、衛生材料
などに幅広く用いられている。その理由は、この繊維は
コストが低く、しかも繊維物性にも優れ、何よりも衛生
的であるためである。しかし、染色性が劣ることやアル
カリ減量ができないため、機能性を付与し難く、また、
張り、腰を有しないため衣料素材や、その他の機能性素
材として展開し難いという問題があった。
【0003】一方、近年においては、ポリエステルを中
心とした衣料素材について、より機能性を追求してドレ
ープ性を付与するために異形、異収縮繊維を利用した
り、アルカリ溶解速度に差がある成分を用いた複合繊維
を利用してアルカリ減量処理を施して、限りなく人間に
マッチした方向での審美性を生かした素材や製品の追求
がなされている。そのため、アルカリ減量処理は布帛に
嵩高性やドレープ性を付与するために現状では不可欠な
工程となっているが、今やそのアルカリ処理廃液から排
出される低分子量ポリエステルの処理量も莫大となって
いる。
【0004】また、従来のポリエステル繊維や樹脂は、
自然環境下での分解速度が極めて遅く、また、焼却時の
発熱量が多いため、自然環境保護の見地からの見直しが
迫られている。このため近年では、脂肪族ポリエステル
からなる生分解性繊維が開発されつつあり、環境保護へ
の貢献が期待されている。脂肪族ポリエステルは、優れ
た繊維性能を持ち、新しい特徴のある繊維素材として期
待されるが、一般的に融点が低く、アルカリ処理により
脆弱化するため、実用性に欠けたり、用途が限定される
という問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題
を解決し、張り、腰やドライ感があり、また時には嵩高
性やドレープ性などが付与できる多機能性を有すると共
に、生分解性がある重合体の成分をアルカリ減量するこ
とで、廃液処理を含めた環境に優しいポリオレフィン系
複合繊維を提供することを技術的な課題とするものであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達し
た。すなわち、本発明は、ポリオレフィン系重合体
(A)と脂肪族ポリエステル(B)からなる複合繊維で
あって、複合比(A/B)が5/95〜95/5であ
り、かつ、脂肪族ポリエステル(B)が繊維表面の一部
に露出するように配置されていることを特徴とするポリ
オレフィン系複合繊維を要旨とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。
【0008】まず、本発明に係るポリオレフィン系重合
体(A)と脂肪族ポリエステル(B)について説明す
る。
【0009】本発明におけるポリオレフィン系重合体
(A)としては、繊維形成能があるもので、主成分とし
てポリエチレン、ポリプロピレンなどが採用され、又は
主たる繰り返し単位がエチレン、プロピレン単位である
共重合ポリオレフィンが採用される。後者の共重合ポリ
オレフィンの場合、エチレン単位、プロピレン単位は、
少なくとも85モル%以上であることが好ましい。前者
の共重合成分としては、αオレフィンすなわち、オクテ
ン−1、ブテン−1などの共重合体の線状低密度ポリエ
チレンなど、後者の場合にはエチレンなどのエチレンラ
ンダム共重合ポリプロピレンなどを好適に用いることが
できる。また、ポリエチレンが主体でポリプロピレンと
のブレンド、あるいはポリプロピレンが主体でポリエチ
レンとのブレンドは、高速製糸性が向上するため、特に
好ましい。
【0010】次に、本発明における脂肪族ポリエステル
(B)は、脂肪族ポリエステルを主成分とする重合体で
あり、(1)グリコール酸、乳酸、ヒドロキシブチルカ
ルボン酸などのようなヒドロキシアルキルカルボン酸、
(2)グリコリド、ラクチド、ブチロラクトンなどの脂
肪属ラクトン、(3)エチレングリコール、プロピレン
グリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどの
ような脂肪族ジオール、(4)ジエチレングリコール、
ジヒドロキシエチルブタンなどのようなポリアルキレン
エーテルなどのオリゴマー、ポリエチレングリコール、
ポリプロピレングリコール、ポリブチレンエーテルなど
のポリアルキレングリコール、(5)コハク酸、アジピ
ン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン
ジカルボン酸などの脂肪族カルボン酸など、脂肪族ポリ
エステル重合原料に由来する成分を主成分、すなわち6
0重量%以上とするものであって、脂肪族ポリエステル
のホモポリマー、脂肪族ポリエステルのブロック又はラ
ンダム共重合ポリマー、及び脂肪族ポリエステルに他の
成分、例えば芳香族ポリエステル、ポリエーテル、ポリ
カーボネート、ポリアミド、ポリ尿素、ポリウレタンな
どを40重量%以下共重合したもの及び/又は混合した
ものすべて包含する。
【0011】これらの脂肪族ポリエステル系の重合体の
中でも、ポリ乳酸系重合体であり、ポリ(D−乳酸)
と、ポリ(L−乳酸)と、D−乳酸とL−乳酸又はそれ
らのブレンドによる光学異性体の重合体と、D−乳酸と
ヒドロキシカルボン酸との共重合体と、L−乳酸とヒド
ロキシカルボン酸との共重合体の群から選ばれた重合体
あるいはこれらのブレンド体であることが特に望まし
い。
【0012】この理由は、ポリ乳酸系重合体であると、
軟化点が100℃を超え、それに伴って融点が120℃
を超えたものとすることが可能であり、融点が120℃
を超えたポリ乳酸系重合体からなる繊維は、沸騰水処理
時に風合いが変化したり、溶融、変質したり、収縮斑が
発現するのを防ぐことができるためである。また、他素
材と混繊したり、交編織して布帛を形成した場合の染色
処理時にも、上記の問題が生じるのを防止するためであ
る。上記したポリ乳酸系重合体は融点が比較的高く、ポ
リオレフィン系重合体との融点差が少なく、複合紡糸に
よる製糸安定性に優れており、さらに、安価で、かつ品
質的にも安定したものを得ることができる。
【0013】これらの脂肪族ポリエステル系の重合体
は、加温されたアルカリ溶液により容易に減量しやす
く、この単一重合体による繊維では強度が低下し、実用
性に乏しいものである。また、共重合体とすることや、
光学異性体とのブレンド率が大きいもの程、アルカリ溶
液に対し減量が容易になる傾向を示す。
【0014】ポリ乳酸系重合体の場合、L体に対するD
体のブレンド比率は、耐熱性や生分解性に影響する要因
であり、L体の純度がD体によって純度が低くなると共
に結晶性が低下し、融点降下が大きくなる。また、一般
的に共重合すると、柔軟性や弾性回復性の改良、熱収縮
性増加、分解性やガラス転移温度の制御、他成分との接
着性の改良などができる。
【0015】前記したポリオレフィン系重合体(A)と
脂肪族ポリエステル(B)とは、アルカリ処理における
溶解速度が異なるので、繊維を布帛にした後にアルカリ
処理して布帛を構成する繊維をアルカリ減量すること
で、脂肪族ポリエステル(B)を減量して布帛の嵩密度
を低下させることにより、ふっくらした風合いやドレー
プ性などの機能性を付与することができる。
【0016】このアルカリ減量における溶解速度は、ア
ルカリ溶液の濃度、温度、時間等の条件で幾分異なり、
速い方がコスト的に好ましいが、余りにも速過ぎると、
目標の異形度、減量などの制御ができなくなるので好ま
しくない。また、逆に溶解速度が遅いと、処理時間が長
くかかってコスト的にも問題となる。
【0017】本発明の複合繊維を構成する重合体のアル
カリ減量性は、ポリオレフィン系重合体(A)について
は溶解が殆ど行われず、脂肪族ポリエステル(B)は、
通常用いられているポリエチレンテレフタレートよりも
極めて溶解速度が速いことが特徴である。そして、脂肪
族ポリエステル(B)が繊維表面の一部に露出するよう
に配置されていることが必要である。
【0018】本発明の複合繊維において、脂肪族ポリエ
ステル(B)が繊維表面の一部に露出するように配置す
るのは、アルカリ処理時に容易に減量させるためであ
る。このような複合形態を取ることとアルカリ減量を行
うことで、繊維の異形断面化、極細化、中空化などが容
易となり、布帛形成後のアルカリ処理で布帛の嵩密度を
低下させ、ふっくらした風合いやドレープ性の付与、絹
なりの発現等の機能性を付与することができる。
【0019】脂肪族ポリエステル(B)が少なくとも繊
維表面の一部に露出するように配置させる複合断面形状
としては、例えば図1(a)〜(k)に示すような丸断
面、異形断面、中空断面や芯鞘型、偏心芯鞘型、並列
型、多芯型、放射分割型、点対称分割型など各種の分割
型複合断面の同種あるいは異種の組み合わせが可能であ
る。
【0020】本発明の複合繊維における複合比(重合体
(A)/(B)の重量割合)は、5/95〜95/5の
範囲とすることが必要である。この範囲を外れると製糸
安定性が低下したり、複合断面が崩れること及び/又は
紡糸口金の構造が複雑となってコストが高くなるので好
ましくない。また、ポリオレフィン系重合体(A)の割
合が少なくなると、アルカリ処理後の繊維自体の減量が
大きくなって減量制御ができないことや強度が低下する
ので好ましくない。したがって、より好ましい複合比の
範囲は30/70〜90/10、最も好ましい複合比の
範囲は50/50〜85/15である。
【0021】本発明の複合繊維中における脂肪族ポリエ
ステル(B)は、10〜100%減量されていることが
好ましい。この理由は、上記した様に脂肪族ポリエステ
ル(B)のみがアルカリ減量されることで、アルカリ処
理後の廃液から遊離される低分子量ポリマーやオリゴマ
ー、ダイマーなどの処理を地球環境に優しく廃棄できる
ためである。この減量範囲は、上記複合比とも相まっ
て、例えば複合比が50/50の場合には、繊維自体の
減量率は5〜50%の範囲に相当する。脂肪族ポリエス
テル(B)の減量が、10%未満になると、複合繊維と
してのアルカリ減量効果が少なくなって、機能性が発現
しない。また、100%を超えることはなく、この場合
にはポリオレフィンのみからなる極細繊維素材や、超異
形度を伴った機能性のある繊維素材となる。
【0022】なお、本発明においては、前述したポリオ
レフィン系重合体(A)や脂肪族ポリエステル(B)を
主成分とする重合体に、必要に応じて例えば熱安定剤、
結晶核剤、艶消し剤、顔料、耐光剤、耐候剤、酸化防止
剤、抗菌剤、香料、可塑剤、染料、界面活性剤、表面改
質剤、各種無機及び有機電解質、微粉体、難燃剤等の各
種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加するこ
とができる。
【0023】本発明のポリオレフィン系複合繊維の単繊
維繊度としては、0.5〜50デニ−ルから選ぶことが
好ましい。0.5デニ−ル未満となると、繊維を形成す
る際の固化点の制御、口金孔の精度アップ、吐出量の低
減に伴う生産性の低下、糸切れの発生がしやすくなる、
等の問題が発生するので好ましくない。また、50デニ
ールを超えると、通常の長繊維を生産する工程では紡糸
や延伸が困難で別途特殊な生産設備が必要となり、高コ
ストとなるので好ましくない。
【0024】本発明の複合繊維は、強度が1.0g/d
以上であることが好ましい。強度が1.0g/d未満で
は、実用面で強力不足の問題が生じるおそれがあり、強
度は高い程、実用範囲が広がるので好ましい。また、繊
維の伸度は、特に限定されるものではないが、10〜8
0%が好ましい。伸度が10%未満になると、糸切れが
生じたり、延伸操業性が低下することがある。また、伸
度が80%を超えると、布帛を形成した後の寸法安定性
が低下することがあるので好ましくない。
【0025】本発明の複合繊維は、単独で、又は他の繊
維と混用し、編物、織物や各種複合材料その他の構造物
の製造に用いることができる。他の繊維と混用する場合
には、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊
維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン
繊維などの繊維形成性重合体からなる合成繊維や、レー
ヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ま
た、羊毛、絹、木綿、麻などの天然繊維が採用され、さ
らには合成繊維などとの紡糸混繊も可能である。
【0026】次に、本発明のポリオレフィン系複合繊維
の製法例を説明するが、この方法に限定されるものでは
ない。本発明のオレフィン系複合繊維を製造するために
は、基本的には公知の溶融複合紡糸装置による紡糸方法
と延伸方法を採用することができる。
【0027】まず、前記したポリマーの中から、ポリオ
レフィン系重合体(A)と脂肪族ポリエステル(B)を
選択し、これらの重合体を個別に溶融計量し、脂肪族ポ
リエステル(B)を繊維表面に配するような複合紡糸口
金の装置から繊維を紡出し、冷却した後、油剤を付与し
て巻き取る。
【0028】次いで、巻き取った糸条を熱延伸するか、
又は巻き取らずに引き続き熱延伸することで目的とする
複合繊維を得ることができる。なお、高速で巻き取った
糸条は、必ずしも熱延伸する必要はない。熱延伸とは、
未延伸繊維をガラス転移温度以上、軟化温度以下の温度
で延伸することをいう。
【0029】上記の溶融紡糸としては、捲取速度100
〜2000m/分の低速度紡糸、捲取速度2000〜5
000m/分の高速紡糸、捲取速度5000m/分以上
の超高速紡糸が可能であり、紡糸と延伸を連続して行
う、いわゆるスピンドロー方式も好ましく適用できる。
【0030】本発明の複合繊維の繊維形態は、長繊維だ
けでなく、機械的捲縮などを付与した短繊維としての適
用も可能である。このようにして得られた複合繊維を用
いて布帛を形成する。あるいは、目的に合った仕様とす
るために仮撚り加工を施したり、撚糸を行った後、布帛
を形成してもよい。布帛の形態としては、織物、編物、
不織布、あるいはこの複合繊維からなる繊維構造体とし
ても、形態が保持されたものであればよい。
【0031】さらに、この布帛にアルカリ処理を施せ
ば、脂肪族ポリエステル(B)を10〜100%減量さ
せて請求項2のポリオレフィン系複合繊維となる。アル
カリ処理は、通常、水酸化ナトリウムを10g/l〜5
0g/lの水溶液とし、この水溶液を加温して、温度6
0℃からボイルするまでの温度で、目的とする風合いな
どの機能性が発現するのに要する時間で減量処理され
る。アルカリ減量された布帛は、中和処理された後、染
色、及び仕上げ加工が施されて製品となる。
【0032】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説
明する。なお、実施例における各種特性の測定及び評価
は、次の方法により実施した。 (1) 融点(℃) パ−キンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−2型を用
い、重合体試料約5mg、窒素中、昇温速度10℃/
分、200℃で5分ホールドし、降温速度10℃/分で
20℃まで降温し、再び昇温速度10℃/分で200℃
まで昇温させた時の最大融解発熱ピーク温度を融点とし
た(以下、Tm1と記す。)。 (2) ガラス転移温度(℃) 上記融点を測定する際に得た初期発熱ピーク温度をガラ
ス転移温度とした(以下、Tg と記す。)。 (3) MFR−S(g/10分) ASTM D1238における210℃、2160g荷
重下で測定した値である。 (4) MFR(g/10分) ASTM D1238−Lの処方において測定した値で
ある。 (5) MI(g/10分) ASTM D1238−Eの処方において測定した値で
ある。 (6) 長繊維の強、伸度 JIS L−1013に準じ、掴み間隔30cm、引張
速度30cm/分の条件下で引張した時の最大引張強さ
を繊度で除したものを強度とし、またその時の伸び率か
ら伸度を求めた。 (7) 生分解性 繊維を布帛とした後、水酸化ナトリウム10g/l又は
40g/lの水溶液(温度80℃)中に投入撹拌しなが
ら、任意の処理時間でアルカリ減量処理を施した。次い
で、布帛を取り出した残廃液を冷却した後、塩酸を用い
て中和処理し、遊離した低分子量ポリマーなどの物質を
金網#240メッシュで掬い取ったものを同じ種類の金
網内に挟んでそのまま土中に埋設した。さらに、これを
2年後に取り出し、遊離した低分子量ポリマーなどの物
質が形態を保持して存在しているかどうかを調査し、存
在していない場合を分解性が良好であると評価した。 実施例1 MFRが30g/10分で、融点(Tm1) が161℃のポ
リプロピレンをA成分として220℃で溶融し、光学純
度が99%でMFR−Sが25g/10分であり、融点
(Tm1) 170℃のポリL−乳酸樹脂をB成分として22
0℃で溶融し、紡糸温度も220℃として溶融複合紡糸
を行った。
【0033】すなわち、単軸のエクストルーダー型溶融
押し出し機2台による複合紡糸機を用いて、相当孔径
0.4mm,孔数36の6分割型複合ノズル口金より吐
出量33g/分(複合比A/B=70/30重量比)で
紡出し、空気冷却装置にて冷却、オイリングしながら第
1ローラ速度2600m/分、第2ローラ速度2700
m/分、第2ローラ温度75℃、第3ローラ速度550
0m/分、第3ローラ温度90℃でスピンドロー延伸し
て捲取り、単繊維断面が図1(g)に示すような断面形
状の長繊維75デニール/36フィラメントを得た。得
られた長繊維は密着もなく、強度4.5g/d、伸度3
5%であった。
【0034】この繊維を一本型整経機で整経した後、ウ
オータージェットルーム機にて平織りの組織で製織し
た。この織物の織り密度は経108本/2.54cm、緯92
本/2.54cmのものであり、織物は、張り、腰があり、反
撥性に優れたものであった。この織物を用い、アルカリ
処理を行った。アルカリ処理は、水酸化ナトリウム10
g/l、温度80℃、処理時間10分の条件で施した。
この織物を取り出し、中和処理、水洗し、乾燥して減量
率を測定すると22%の減量率であり、B成分の重合体
の減量率が73%に相当していた。
【0035】アルカリ処理後の単繊維の断面は、あたか
も水車状の超異形糸であり、得られた減量処理後の織物
は、ドライ感が付与された風合いを有するものであっ
た。この織物の緯糸を解きほぐし、繊維の強度を測定す
ると4.1g/dであり、ほとんど強度低下を示さなか
った。さらに、上記アルカリ処理後の廃液から中和処理
して遊離した物質の生分解性を評価したところ、良好な
分解性を示した。 実施例2 実施例1で得られた織物を、アルカリ処理条件のうち、
水酸化ナトリウム濃度を5g/l、処理時間を8分とし
た以外は実施例1と同じ条件でアルカリ減量処理を行っ
た。この織物の減量率は10%であり、B成分の重合体
の減量率が33%に相当していた。得られた織物を分散
染料にて105℃で30分間染色処理したところ、淡色
であるが染色されており、染色性も向上していた。ま
た、JIS−L−1096のバイレック法に従って吸水
特性を調査したところ、吸水性にも優れた織物であるこ
とがわかった。アルカリ減量後の単繊維の断面は、あた
かもギヤー状の鋭い縁を有する異形糸であり、織物の風
合いはドライ感も有するものであった。 実施例3 実施例1で得られれ織物を、アルカリ処理条件のうち、
処理時間を20分とした以外は実施例1と同じ条件でア
ルカリ減量処理を行った。この織物の減量率は30%で
あり、B成分の重合体の減量率が100%に相当してい
た。すなわち、単繊維が0.24デニールの極細ポリプ
ロピレン繊維で形成された織物となった。得られた減量
処理後の織物は、ドレープ性が付与され、極めてソフト
なタッチの風合いを有するものであった。 実施例4 MI値が25g/10分、密度が0.945g/c
3 、融点が126℃のオクテン−1を共重合した線状
低密度ポリエチレンと、MFR値が15g/10、融点
が161℃のポリプロピレンとを85/15重量%でブ
レンドした成分をA成分として230℃で溶融し、ま
た、光学純度が99.5%でMFRが20g/10分で
あり、融点(Tm1) 175℃のポリL−乳酸樹脂をB成分
として220℃で溶融し、複合紡糸温度を220℃とし
て溶融紡糸を行った。
【0036】すなわち、単軸のエクストルーダー型溶融
押し出し機2台による複合紡糸機を用いて、相当孔径
0.4mm,孔数36の特殊芯鞘型複合ノズル口金より
吐出量27g/分(芯/鞘複合比:B/A=60/4
0)(重量比)で紡出し、空気冷却装置にて冷却、オイ
リングしながら紡糸速度1100m/分の速度で巻き取
り、未延伸糸を得た。
【0037】この未延伸糸を用いて、一般的に用いられ
ている熱延伸型2段延伸機を用いて延伸を行った。すな
わち、1段目の延伸倍率と2段目の延伸倍率を1.02
と3.1、第2ローラ温度を70℃とし、他のロールに
は非加熱ロールを用い、第2ローラと第3ローラ間で1
20℃に加熱された接触型ヒータに接触させながら延伸
を行い、75デニール/36フィラメントの長繊維を得
た。得られた長繊維は、図1(e)に示すような特殊芯
鞘形状の断面糸であり、密着、糸切れもなく、強度3.
8g/d、伸度37%の物性を有するものであった。
【0038】この長繊維を用いて、実施例1と同様にし
て織物を製造し、評価を行った。その結果、アルカリ処
理による減量率は40%であり、芯成分の重合体の減量
率が100%に相当していた。
【0039】得られた減量処理後の織物は軽量であり、
JIS−L−1096のバイレック法に従って吸水特性
を調査したところ、吸水性にも優れた織物であることが
わかった。
【0040】この織物の緯糸を解きほぐし、繊維の強度
を測定すると3.4g/dであり、繊維強度は余り低下
していなかった。また、上記アルカリ処理後の廃液を中
和処理して遊離した物質の生分解性を評価したところ、
良好な分解性を示した。 比較例1 光学純度が99%でMFR−Sが25g/10分であ
り、融点(Tm1) 170℃のポリL−乳酸樹脂をのみから
なる重合体を220℃で溶融し紡糸を行った。すなわ
ち、単軸のエクストルーダー型溶融押し出し機1台によ
る一般的な紡糸機を用いて、相当孔径0.4mm,孔数
36のノズル口金より吐出量33g/分で紡出し、空気
冷却装置にて冷却、オイリングしながら紡糸速度110
0m/分で巻き取って未延伸糸を得た。
【0041】この未延伸糸を用いて、第2段目の延伸倍
率を3.1とした以外は実施例4と同様にして延伸を行
い、75デニール/36フィラメントの長繊維を得た。
得られた長繊維は、密着、糸切れもなく、強度3.2g
/d、伸度33%という物性を有するものであった。
【0042】得られた長繊維を用いて、実施例1と同様
にして織物を形成し、評価を行った。その結果、アルカ
リ処理における減量率は40%であり、得られた減量処
理後の織物の緯糸を解きほぐし、繊維の強度を測定する
と1.4g/dしかなく、繊維強度が著しく低下してい
た。減量処理後の織物は、単に繊度が細り、織物の強力
低下があるだけで、特別な機能性が付与されたものでは
なかった。 比較例2 B成分として固有粘度が0.7であり、融点が180℃
のスルフォイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレ
フタレート樹脂を用い、A成分は実施例1と同じポリプ
ロピレン樹脂を用いて、紡糸温度230℃、吐出量41
g/分(複合比A/B=70/30重量比)で紡出し、
空気冷却装置にて冷却、オイリングしながら第1ローラ
速度3600m/分、第2ローラ速度3620m/分、
第3ローラ速度5040m/分、第3ローラ温度130
℃とした以外は実施例1と同じ方法で75デニール/3
6フィラメントの長繊維を得た。得られた長繊維は、密
着もなく、強度4.3g/d、伸度38%という物性を
有するものであった。
【0043】次に、水酸化ナトリウム濃度を実施例1の
2倍の20g/lとして、処理時間を40分とした以外
は実施例1と同様にしてアルカリ処理を行い、23%の
減量率を得た。得られた減量処理後の織物は、実施例1
よりもややドライ感に欠けているが、ほぼ実施例1と同
じような風合いを有するものであった。
【0044】この織物の緯糸を解きほぐし、繊維の強度
を測定すると4.1g/dであり、繊維強度が余り低下
していなかった。しかし、アルカリ処理後の廃液から、
中和処理して遊離した物質の生分解性を評価したとこ
ろ、分解性は全く示さなかった。 比較例3 融点(Tm1) が161℃,MFRが30g/10分である
ポリプロピレンのみからなる重合体を230℃で溶融
し、紡糸を行った。すなわち、単軸のエクストルーダー
型溶融押し出し機1台による一般的な紡糸機を用いて、
相当孔径0.4mm,孔数36のノズル口金より吐出量
33g/分で紡出し、空気冷却装置にて冷却、オイリン
グしながら紡糸速度1200m/分で巻き取って未延伸
糸を得た。
【0045】この未延伸糸を用いて、一般的に用いられ
ている熱延伸型2段延伸機を用いて延伸を行った。すな
わち、1段目の延伸倍率と2段目の延伸倍率を1.02
と3.8、第2ローラ温度を70℃、他のローラは非加
熱ロールを用い、第2ローラと第3ローラ間で120℃
に加熱された接触型ヒータに接触させながら延伸を行
い、75デニール/36フィラメントの長繊維を得た。
得られた長繊維は、密着、糸切れもなく、強度4.2g
/d、伸度34%であった。得られた長繊維を用いて実
施例1のように織物を作成し、評価したところ、ヌメリ
感が強く、しかも張り、腰が少なく、反撥性に欠けるも
のであった。さらに、この織物は、アルカリ減量ができ
ず、染色性にも欠けるものであった。
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、生分解性があり、環境
汚染することが少なく、繊維強力も比較的高く、張り、
腰、反撥性、ドライ感、嵩高性やドレープ性などを目的
により付与できる多機能なポリオレフィン系複合繊維が
提供される。
【0047】本発明のポリオレフィン系複合繊維は、生
分解性がある重合体の成分を容易にアルカリ減量するこ
とで、廃液処理を含めた環境に優しく対応できることが
できる複合繊維であるため、編物、織物、不織布その他
各種繊維構造物、複合構造物などに応用し、減量処理を
施せば、柔らかく、嵩高な製品が得られ、衣料用、家庭
用品などに好適に利用することができる。
【0048】さらに、アルカリ減量処理の廃液中に含ま
れる回収物は、微生物が多数存在する環境、例えば土中
又は水中に放置すると最終的には完全に分解消失するた
め、自然環境保護の観点からも有益であり、あるいは、
例えば堆肥化して肥料とする等、再利用を図ることもで
きるため資源の再利用の観点からも有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(k)は、本発明のポリオレフィン系
複合繊維を構成する単繊維の断面形状例を示す模式図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4L035 AA09 BB32 BB34 BB36 BB89 DD01 EE20 FF10 LA03 4L041 AA07 AA09 AA10 AA15 AA20 BA02 BA03 BA04 BA05 BA09 BA11 BA12 BA21 BA23 BA38 BC02 BC20 BD14 BD20 CA15 CA35 CA36 CA38 DD01 DD05 DD11 DD14 EE06 EE15

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリオレフィン系重合体(A)と脂肪族
    ポリエステル(B)からなる複合繊維であって、複合比
    (A/B)が5/95〜95/5であり、かつ、脂肪族
    ポリエステル(B)が繊維表面の一部に露出するように
    配置されていることを特徴とするポリオレフィン系複合
    繊維。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のポリオレフィン系複合繊
    維から、脂肪族ポリエステル(B)が10〜100%減
    量されているポリオレフィン系複合繊維。
  3. 【請求項3】 脂肪族ポリエステルが、ポリ乳酸系重合
    体であり、ポリ(D−乳酸)と、ポリ(L−乳酸)と、
    D−乳酸とL−乳酸又はそれらのブレンドによる光学異
    性体の重合体と、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との
    共重合体と、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重
    合体の群から選ばれた重合体あるいはこれらのブレンド
    体である請求項1又は2記載のポリオレフィン系複合繊
    維。
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