JP2010270407A - ポリ乳酸系潜在捲縮繊維 - Google Patents

ポリ乳酸系潜在捲縮繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、土壌や大気中で生分解し、かつ、捲縮発現性に優れ、伸縮性やソフトで膨らみ感のある風合いを有する繊維集合体を得るのに好適なポリ乳酸系潜在捲縮繊維を提供することを課題とする。
【解決手段】 2種の重合体が貼り合わされてなるサイドバイサイド型複合繊維であり、該サイドバイサイド型複合繊維を構成する一方の重合体がポリ乳酸、他方の重合体がポリアルキレンサクシネートに乳酸が1〜6モル%共重合した重合体であり、該サイドバイサイド型複合繊維は、90℃乾熱処理後に30個/25mm以上のスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮性能を有していることを特徴とするポリ乳酸系潜在捲縮繊維。
【選択図】 なし

Description

本発明は、生分解性を有するポリ乳酸系潜在捲縮繊維に関するものである。
芳香族ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド等から製造される合成繊維のなかで、熱収縮特性の異なる二つのポリマー成分を左右貼り合わせ型(サイドバイサイド)に接合した潜在捲縮繊維を用い、できるだけテンションの少ない状態でサーマルエアスルーなどの熱処理を行うことによってスパイラル捲縮を発現させることにより、容易に伸縮性を有する不織布、織物等の繊維集合体を得る技術が知られており、伸縮性貼布剤基布、紙オムツ部材、あるいは伸縮性を有する衣料など様々な用途に使用されている。
しかし、芳香族ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドからなる合成繊維は、使用後、自然界に放置しても分解されにくく、その為にいろいろな問題が生じるものであった。例えば、これら合成繊維からなる生活資材、農業資材、土木資材等は、分解されにくい為、使用後は土中に埋める、焼却する等の処理が必要となり、土中に埋める場合には廃棄場所に制限があり、また、焼却にあたっては炭酸ガス増加の問題を含むものであった。
上記した合成繊維が有する問題に鑑みて、自然界で分解性を有する、いわゆる生分解性重合体の開発が盛んに行われている。そのなかでも、カーボンニュートラルと言われる植物由来の原料であり、耐熱性、製糸性に優れるポリ乳酸が注目されており、ポリ乳酸を原料とした潜在捲縮繊維についても提案されている(特許文献1)。
特許文献1で提案されている繊維は、分子量が異なる二種類のポリ乳酸をサイドバイサイドに接合した潜在微細捲縮繊維であるが、この繊維を、例えば、ウェブフォーミングして不織布化した後、熱処理を施して捲縮を顕在化させた場合、ポリ乳酸自体がヤング率が高い(硬い)という性質があるため、得られる不織布の風合いはソフト性に欠けるものとなる。
特開2003−342837号公報
本発明は、上記の問題を解決し、生分解性を有し、かつ捲縮発現性に優れ、伸縮性や膨らみ感のある風合いを有し、かつ、よりソフトな風合いを有する繊維集合体を得るために好適な生分解性を有する潜在捲縮繊維を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を達成するため、ポリ乳酸と接合する他方の成分として、ポリ乳酸ではなく、ヤング率の低い、柔らかい生分解性重合体を検討した。そこで、生分解性を有するソフトな重合体としてポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートを他方の成分として用い、サイドバイサイド型複合繊維とすることを考えた。しかしながら、これらの重合体とポリ乳酸とは相溶性が極めて低いため、実用的な強度が得られないばかりか、捲縮を顕在化するための熱処理を施すと接合面で剥がれてしまい、十分にスパイラル捲縮が発現せず、実用的な伸縮性のある繊維集合体を得ることができなかった。そこでさらに検討したところ、ポリアルキレンサクシネートに特定量の乳酸を共重合した重合体を配することにより、捲縮を顕在化するための熱接着を施しても、両成分が剥離せず、また、実用的な伸縮性とソフトさを有する繊維集合体となりうることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、2種の重合体が貼り合わされてなるサイドバイサイド型複合繊維であり、該サイドバイサイド型複合繊維を構成する一方の重合体がポリ乳酸、他方の重合体がポリアルキレンサクシネートに乳酸が1〜6モル%共重合した重合体であり、該サイドバイサイド型複合繊維は、90℃乾熱処理後に30個/25mm以上のスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮性能を有していることを特徴とするポリ乳酸系潜在捲縮繊維を要旨とするものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸系潜在捲縮繊維は、2種の重合体が貼り合わされてなるサイドバイサイド型複合形態を有するものであり、一方の重合体がポリ乳酸で構成される。本発明で用いるポリ乳酸としては、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、L−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリ−D,L−乳酸、あるいは高融点となるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物(ステレオコンプレックス)のいずれでもよい。
本発明で用いるポリ乳酸において、L−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリ−D,L−乳酸を用いる場合のD−乳酸とL−乳酸の共重合比(D−乳酸/L−乳酸)は、100/0〜95/5、5/95〜0/100であるとよい。上記共重合比を外れる共重合体は、融点が低く、また、非晶性が高くなり、繊維製造工程における紡糸時の糸密着やその後の熱処理によって繊維同士に仮融着が生じやすく、結果的に顕在化しうる捲縮を十分に発現できなくなるため、本発明が目的とするソフトで伸縮性に優れた繊維集合体が得られにくい傾向が生じる。
ポリ乳酸の粘度は、ASTM D 1238に記載の方法に準じて、温度210℃、荷重20.2N(2160gf)で測定したメルトフローレート(以下、MFRと略記する。)が10〜80g/10分であることが好ましく、20〜40g/10分であることがより好ましい。MFRが10g/10分未満であると、溶融押出が困難となるだけでなく、繊維の機械的強力が低下する傾向にある。一方、MFRが80g/10分を超えても、溶融押出により良好に繊維化しにくい。
ポリ乳酸は、本発明のポリ乳酸系潜在捲縮繊維の耐久性を向上させる目的で、ポリ乳酸に脂肪族アルコール、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、エポキシ化合物などの末端封鎖剤が添加してもよい。
また、ポリ乳酸には、本発明の目的を損なわない範囲で、ε−カプロラクトン等の環状ラクトン類、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸等のα−オキシ酸類、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類、コハク酸、セバシン酸等のジカルボン酸類が含有されていてもよい。
本発明のポリ乳酸系潜在捲縮繊維は、構成する2種の重合体のうちの他方がポリアルキレンサクシネートに乳酸が1〜6モル%共重合した重合体で構成される。
他方の重合体におけるポリアルキレンサクネートとしては、エチレンサクシネート、ブチレンサクシネート、プロピレンサクシネート等の、エチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール等のアルキレングリコールとコハク酸を重合したものである。また、本発明の目的を損なわない範囲で、上の繰り返し単位に、ε−カプロラクトン等の環状ラクトン類、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸等のα−オキシ酸類、構成成分以外のアルキレングリコール類、アジピン酸、セバシン酸、リンゴ酸等のジカルボン酸類を共重合させてもよいが、これらの共重合量は30モル%以下の範囲であることが好ましい。
他方の重合体は、ポリアルキレンサクシネートに乳酸が1〜6モル%共重合されている。他方の重合体が、乳酸が共重合してなるものとすることによって、潜在捲縮繊維を構成する2種の重合体同士の相溶性が飛躍的に良化する。
潜在捲縮繊維を構成する2種の重合体同士の相溶性が低い場合、サイドバイサイド型に複合した繊維に捲縮を顕在化するための熱処理を施した際、複合した界面で剥離しやすく、スパイラル捲縮を十分に発現しにくくなるという現象が起こり、潜在捲縮性能が低くなる。本発明のポリ乳酸系潜在捲縮繊維では、他方の重合体に乳酸を含有させることで、すなわち、一方を構成するポリ乳酸と共通の成分を含有させることにより、ポリ乳酸と他方の重合体との相溶性が良化し、前述のような界面剥離現象が起こりにくく、潜在捲縮性能を向上させることができる。
他方の重合体において、共重合する乳酸が1モル%未満であると、他方の重合体とポリ乳酸との相溶性が十分に良化せず、上記の効果が得られにくい。また、共重合する乳酸が6モル%を超えると、ポリ乳酸との相溶性はより良好となるが、融点が低くなり結晶性が乏しくなるため低温の熱によっても軟化してしまい、紡糸時に糸密着が起こりやすくなるなど、操業性が悪くなって繊維を生産すること自体が困難となる。また、繊維が得られても、捲縮を顕在化するための熱処理の際に繊維同士の仮融着が生じやすく、結果的に潜在していた捲縮を十分に顕在化させられなくなる。
なお、ポリアルキレンサクシネートに共重合する乳酸は、L−乳酸であっても、D−乳酸でもよい。また、乳酸は、モノマー単位で共重合してなるものを基本とするが、本発明の効果を損なわない範囲でオリゴマー単位(2個〜10個程度)のものが一部含まれていてもよい。
ポリアルキレンサクシネートに乳酸が1〜6モル%共重合した重合体の粘度は、ASTM D 1238に記載の方法に準じて、温度190℃、荷重20.2N(2160gf)で測定したMFRが10〜80g/10分であることが好ましく、20〜40g/10分であることがより好ましい。MFRが10g/10分未満であると、溶融押出が困難となるだけでなく、繊維の機械的強力が低下する傾向にある。また、MFRが80g/10分を超えても、溶融押出により良好に繊維化しにくい。
本発明のポリ乳酸系潜在捲縮繊維の繊度は、生産性、操業安定性、接着性能などを考慮して1〜80デシテックス程度が好ましく、1.7〜50デシテックスがより好ましい。
本発明のポリ乳酸系潜在捲縮繊維において、2種の重合体の複合比率については、特に限定しないが、操業性、潜在捲縮性の面から、容積比で30/70〜70/30が好ましい範囲である。
本発明のポリ乳酸系潜在捲縮繊維において、2種の重合体の好ましい粘度は上記したとおりであるが、2種の重合体を選択する際には、それぞれ上記した方法でのMFRの値の差が30以下のもの、好ましくは10以下の組み合わせとするのが、紡糸口金直下での糸曲がり現象を抑制し、操業性良く紡糸を行うことができる点で好ましい。このようにMFRの値の差を30以下とすることによって、紡糸直下の糸同士の密着による糸切れなどを少なくすることができ、得られる繊維は、90℃乾熱処理により30個/25mm以上のスパイラル捲縮を発現することができる。なお、スパイラル捲縮とは、押し込み型のスタッファボックス内に押し込むことによって繊維を屈曲させて、屈曲形態を繊維に付与させてなる二次元的な機械捲縮とは異なるものであり、三次元的なコイルバネ状の立体捲縮のことをいう。
また、本発明のポリ乳酸系潜在捲縮繊維の形状は、円形断面に限定されるものではなく、一方のポリ乳酸と他方の重合体がサイドバイサイドに複合されたものであればよく、扁平形、多角形、多葉形、ひょうたん形、アルファベット形、その他各種の非円形(異形)などであってもよい。
さらに、本発明のポリ乳酸系潜在捲縮繊維を構成する重合体には、各種顔料、染料、撥水剤、吸水剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属粒子、結晶核剤、滑剤、可塑剤、抗菌剤、香料その他の添加剤を混合、添加してもよい。
次に、本発明のポリ乳酸系潜在捲縮繊維の製法例について説明する。まず、通常のサイドバイサイド型複合繊維用の複合紡糸装置を用いて、ポリ乳酸とポリアルキレンサクシネートに乳酸が特定量共重合した重合体とを溶融して別々の計量孔にて計量し、口金背面でサイドバイサイドになるように合流させ、同一吐出孔から吐出させ、紡出糸条を横吹付装置や環状吹付装置等の公知の冷却装置を用いて吹付風により糸条を冷却した後、油剤を付与し、引取ローラを介して捲取機に捲取る。曳糸性を考慮すると、引取ローラの速度は800〜3500m/分であることが好ましい。次いで、得られた未延伸糸を公知の延伸機にて周速の異なるローラ群間で延伸、必要に応じて緊張下で低温熱処理(熱セット)を行い、目的とするポリ乳酸系潜在捲縮繊維を得る。
本発明のポリ乳酸系潜在捲縮繊維の繊維形態は、特定の繊維長を有する短繊維であっても、連続した長繊維であってもよいが、繊維の形態として長繊維を得たい場合は、延伸機にて延伸後、捲き取り、必要に応じて、撚糸、仮撚加工等の加工を行う。また、短繊維を得たい場合は、延伸後、スタファボックスを用いた押し込み型の捲縮機などで二次元の機械捲縮を付与し、しかるのちECカッターなどのカッタ−で目的とする長さに切断すればよい。
上記の製造法において、溶融紡糸時のポリ乳酸の溶融設定温度は、特に限定されるものではないが、ステレオコンプレックスポリ乳酸以外の場合、ポリ乳酸の融点以上、230℃以下、特にポリ乳酸の融点以上、210℃以下であるであることが望ましい。溶融紡糸時の溶融紡糸温度が230℃を超えると、ラクチドを再生成して熱劣化しやすくなるためである。
本発明のポリ乳酸系潜在捲縮繊維は、緊張させた状態ではなく弛緩状態で熱処理することにより、潜在的に有する捲縮が発現して、スパイラル捲縮を有する微細捲縮繊維となる。捲縮を発現させるための熱処理は、潜在捲縮繊維を構成繊維として所望の繊維集合体の形態とした後に行うとよい。緊張状態でなく熱処理を施す方法としては、サーマルエアスルー熱処理機や、熱風循環機等を通すこと等が挙げられる。
繊維集合体としては、不織布、紡績糸、マルチフィラメント糸、織編物、マットや敷き布団等に用いる固綿、クッション等の中綿等の各種の形態が挙げられる。
本発明のポリ乳酸系潜在捲縮繊維は、それ単独からなる繊維集合体としてもよいが、他の繊維と混用して繊維集合体としてもよい。例えば、他の繊維と混合した混綿ウェブを用いて、不織布としたり、混綿ウェブを紡績して紡績糸としたり、また、他の繊維と混繊、交織、交編して、様々な形態の繊維集合体を得ることもできる。混用する際の他の繊維としては、繊維集合体の用途に応じて適宜選択すればよい。
本発明において、不織布を得る際、カードウェブを作成後、ニードルパンチや水流交絡等の交絡手段を施して不織布化した後に、潜在捲縮を顕在化するための熱処理を施してもよい。得られた不織布は、繊維同士が三次元的に交絡しているため、引張強力や形態安定性に優れたものとなる。また、カード機等によりカードウェブを作成した後に交絡手段を施さずに潜在捲縮を顕在化するための熱処理を施して不織布としてもよい。この場合に、得られた不織布は、繊維同士が三次元的に積極的に交絡するものではなく、カードウェブの形態における繊維同士の抱絡状態が、熱処理によって捲縮発現して収縮することで一体化したものであり、非常に柔軟でソフトな風合いのものを得ることができる。
本発明のポリ乳酸系潜在捲縮繊維により得られる繊維集合体は、伸縮性とソフトな肌触りを有することから、肌に直に接する用途に好ましく用いることができる。例えば、伸縮性を有する貼付剤基布として好適である。また、繊維集合体が不織布であると、使い捨てマスクの部材、特に耳に掛ける部材として良好に使用しうる。
本発明のポリ乳酸系潜在捲縮繊維は、一方がポリ乳酸、他方が柔軟なポリアルキレンサクシネートに特定量の乳酸が共重合してなる重合体により構成されるサイドバイサイド型複合繊維である。そのため、生分解性を有しながら、製糸性が良好であるため製造における生産性が良好となり、また、潜在捲縮性に優れ、かつソフトな風合いを有する潜在捲縮繊維を提供することができる。また、本発明のポリ乳酸系潜在捲縮繊維の潜在捲縮を顕在化させたポリ乳酸系微細捲縮繊維によって繊維集合体を構成することによって、ソフトで膨らみ感と有し、かつ実用的な伸縮性能を有する繊維集合体を得ることができる。
以下、実施例によって本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における特性値等の測定法は、次の通りである。また、2種の重合体のMFRの測定法は上記したとおりである。
(1)融点(℃)
パーキンエルマ社製の示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を融点とした。
(2)単糸繊度(dtex)
JIS L−1015 8.5.1 A法により測定した。
(3)潜在捲縮性能(捲縮数)
JIS L−1015 8.12.1の方法により測定した。なお、試料は、潜在捲縮繊維(単繊維)に荷重をかけない状態で90℃、15分間、熱処理したものを用いた。
(4)不織布の引張強力(cN/25mm幅)
不織布を幅25mm、長さ150mmの短冊状に切断し、試料を作成した。この試料をオリエンテック社製UTM−4型のテンシロンを用いて、つかみ間隔100mm、引張速度100mm/分の条件で伸長切断し、最大強力を読みとった。本発明においては、引張強力1000cN以上を実用的な強力を有するとした。
(5)不織布の剛軟度(cm)
JIS L−1096記載の45度カンチレバー法に準じて、不織布の先端が45度の斜面に接触するまでの移動距離(cm)を測定した。本発明においては、剛軟度(移動距離)が10cm未満を柔軟性が良好とした。
(6)不織布の風合い
不織布を10人のパネラーによる手触りにより、風合いのソフト性を官能評価した。10人中9人以上が風合いがソフトであると評価した場合は〇、5〜8人が風合いがソフトであると評価した場合は△、1〜4人であれば×とした。
実施例1
ポリ乳酸(MFR24g/10分、D−乳酸/L乳酸の共重合比=1.2/98.8、融点170℃)と、L−乳酸を3.2モル%共重合したポリブチレンサクシネート(MFR30g/10分、融点108℃)とを用意し、孔数560孔、円形断面サイドバイサイド複合紡糸口金を用い、2種の重合体の溶融容積比として50/50となるように計量し、紡糸温度230℃、紡糸速度800m/分で溶融紡糸し、ポリ乳酸系複合繊維の未延伸糸を得た。次いで、得られた未延伸糸を延伸温度50℃、延伸倍率3.50倍で延伸を行い、次いで、押し込み式の捲縮機により機械捲縮を付与した後、仕上げ油剤を付与後に、50℃で乾燥させ、繊維長51mmに切断し、繊度が2.2dtexであるポリ乳酸系潜在捲縮繊維を得た。
得られたポリ乳酸系潜在捲縮繊維のみを用いて、カード機にかけ、ランダムウェーバーで平均目付50g/m2のウェブを作成した。このウェブを連続熱処理機に通し、テンションフリーの状態で90℃にて1分間の熱処理を行い、不織布を作成した。得られた不織布を両手で把持し引っ張ると良好な伸縮性を有していた。
実施例2〜3、比較例1〜2
他方の重合体として、ポリブチレンサクシネートに共重合する乳酸の共重合量を表1に示すものを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸系潜在捲縮繊維および不織布を得た。
実施例4
他方の重合体として、L−乳酸を2.7モル%共重合したポリエチレンサクシネート(MFR=27g/10分、融点102℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸系潜在捲縮繊維および不織布を得た。
比較例3
他方の重合体として、ポリ乳酸(MFR(ASTM D 1238に記載の方法に準じ、温度210℃、荷重20.2N(2160gf))が22g/10分、D−乳酸/L乳酸の共重合比=9.2/90.8、融点129℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸系複合バインダー繊維および不織布を得た。
実施例5
実施例1において、得られた平均目付50g/m2のウェブに192本/平方インチのパンチ密度でニードルパンチ加工を行ったこと以外は、実施例1と同様にして不織布を得た。
得られた実施例1〜5、比較例1〜3の不織布の評価結果を表1に示す。
表1より、明らかなように、本発明の要件を満たす実施例1〜5は、不織布の強力も十分高く、また、風合いも非常にソフトであった。特に実施例1〜4の不織布はソフト性に優れ、実施例5の不織布は強力が高かった。
一方、比較例1は、他方の重合体における乳酸の共重合量が少なく、ポリ乳酸との相溶性が十分ではないため、両重合体間の相剥離が起きて潜在捲縮性能が低くなり、不織布は、伸縮性の度合いが低いものであり、また強力も劣るものとなった。
比較例2では、他方の重合体における乳酸の共重合量が多すぎるため、紡糸の際にノズル下での糸密着が起こりまともに繊維を採取することができなかった。
また、他方の重合体に低融点のポリ乳酸を用いた比較例3は、潜在捲縮性能は良好であるが不織布の剛性が高く、風合いもソフト性を欠くものであった。

Claims (3)

  1. 2種の重合体が貼り合わされてなるサイドバイサイド型複合繊維であり、該サイドバイサイド型複合繊維を構成する一方の重合体がポリ乳酸、他方の重合体がポリアルキレンサクシネートに乳酸が1〜6モル%共重合した重合体であり、該サイドバイサイド型複合繊維は、90℃乾熱処理後に30個/25mm以上のスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮性能を有していることを特徴とするポリ乳酸系潜在捲縮繊維。
  2. 請求項1のポリ乳酸系潜在捲縮繊維が熱処理により潜在捲縮が顕在化し、30個/25mm以上のスパイラル捲縮を有することを特徴とするポリ乳酸系捲縮繊維。
  3. 請求項2のポリ乳酸系捲縮繊維によって構成されていることを特徴とする繊維集合体。
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