JP3556089B2 - 生分解性長繊維不織布およびその製造方法 - Google Patents
生分解性長繊維不織布およびその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械的強力に優れ、柔軟性に富み地合が良好で、しかも生分解性を有してその生分解性を制御可能な生分解性長繊維不織布およびその製造方法に関し、特に、医療・衛生材料、拭き取り布や包装材料や家庭・業務用の生ごみ捕集用袋などの一般生活関連材、あるいは農業・園芸用や土木用に代表される産業資材などの各素材として好適に使用できる生分解性長繊維不織布およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、上述の医療・衛生材料や一般生活関連材や産業資材として、廃棄処理が容易でしかも生活・自然環境を保護できる、生分解性を有する不織布の利用が進められている。
【0003】
このような生分解性不織布としては、例えば、乾式法あるいは溶液浸漬法により得られるビスコースレーヨン短繊維不織布、湿式法により得られるキュプラレーヨン長繊維不織布やビスコースレーヨン長繊維不織布、キチンやコラーゲンのような天然物の再生繊維からなる不織布、コットンからなるスパンレース不織布などが知られている。しかしこれらの不織布は機械的強力にやや劣り、また親水性であるため吸水・湿潤時には著しく機械的強力が低下し、また、非熱可塑性であることから熱成形性を有さず、加工性に劣るという問題があった。
【0004】
そのため、吸水・湿潤時の機械的強力の低下を防止し、不織布に熱成形性を付与する目的で、生分解性を有する熱可塑性重合体を溶融紡糸したスパンボンド不織布が提案されている。生分解性を有する熱可塑性重合体としては、脂肪族ポリエステルが好適に用いられ、例えば、ポリ−β−ヒドロキシアルカノエートや、ポリカプロラクトンに代表されるポリ−ω−ヒドロキシアルカノエートや、ポリブチレンサクシネートのようなグリコールとジカルボン酸との重縮合体からなるポリアルキレンジカルボキシレートまたはこれらの共重合体が挙げられる。しかしこれらの熱可塑性重合体は、一般に生分解性に優れるものほど融点や結晶化温度が低く、結晶化速度も遅いという傾向にある。融点や結晶化温度が低くなり、結晶化速度が遅くなると、紡出糸条の冷却性や開繊性が悪くなり紡出糸条が密着しやすくなる。従って、生分解性の良い重合体ほど製糸性に劣り、場合によっては不織布とすることができないものや、不織布化はできても機械的強力や地合いに極めて劣ったものになる。また、糸条の密着が生じると、本来期待される生分解性能を十分に発揮することができなくなる。さらに、不織布の形態を保持するために熱接着処理を施すと、重合体の融点が低いため全面的に熱融着が施され、柔軟性の高い不織布が得られないという問題もあった。
【0005】
近年では、高重合度のポリマーを効率的に製造しうる新しい重合法が開発され、ポリ−L−乳酸に代表されるようなポリ−α−オキシ酸の繊維化ならびに不織布化が種々検討されている。中でもポリ乳酸系重合体は前記の熱可塑性重合体に比べ融点や結晶化温度が比較的高く、結晶化速度も速いため、紡出糸条の冷却性や開繊性に優れ製糸性が良く機械的強力に優れた不織布が得られ、この不織布に熱接着処理を施しても全面融着することがなく、柔軟性を兼ね備えた不織布とすることができる。また、前記ポリ乳酸系重合体を用いた長繊維不織布として、例えば、芯部を融点が低く生分解性のよいポリアルキレンアルカノエートのような重合体にて形成し、鞘部を比較的融点が高く製糸性に優れたポリ乳酸系重合体にて形成した芯鞘型複合長繊維からなる不織布が考えられる。このような芯鞘型複合長繊維によっても、紡出糸条の冷却性や開繊性が良くなり、機械的強力と柔軟性とを兼ね備えた長繊維不織布を得ることが可能である。しかし、このようなポリ乳酸系重合体を用いた長繊維不織布は、他の重合体を用いたものに比べ生分解性能が低下するため長期間不織布の形態を保つ目的のものにしか使用できず、利用分野が限られることになる。
【0006】
上記の芯鞘型複合長繊維からなる生分解性不織布は、使用する重合体の種類や繊度などを変更することにより生分解性の制御を行っていたが、製糸性と生分解性とのバランスが取り難く、また芯鞘型複合長繊維であるため、芯部に生分解性に優れた重合体であるポリアルキレンアルカノエートを配置しても外部すなわち繊維表面の鞘部には生分解性に劣る重合体であるポリ乳酸系重合体が芯部を覆って配置されており、このため微妙な生分解性の制御を行うことは困難であった。
【0007】
このように、適度な機械的強力と柔軟性とを兼ね備え、しかも生分解性を制御可能な不織布は得られていないのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点を解決し、優れた機械的強力と柔軟性とを兼ね備え、しかも生分解性を制御可能な生分解性長繊維不織布およびその製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、本発明に至ったものである。すなわち本発明は生分解性多葉型複合長繊維にて形成された不織布であって、前記生分解性多葉型複合長繊維がポリアルキレンアルカノエートとポリ乳酸系重合体とから形成される複合長繊維であり、この複合長繊維の繊維断面においてポリアルキレンアルカノエートが芯部を形成し、ポリ乳酸系重合体が前記ポリアルキレンアルカノエートの円周方向に独立した突起部を形成し、前記突起部の数が4〜10であり、しかも前記ポリアルキレンアルカノエート成分はポリ乳酸系重合体成分によって分断されることなく連続しており、かつポリアルキレンアルカノエート成分及びポリ乳酸系重合体成分が共に繊維軸方向に連続するとともに繊維表面において交互に露出してなり、前記生分解性多葉型複合長繊維からなる不織ウエブが、2000m/分以上の牽引速度にて牽引細化して開繊された長繊維からなり、部分的に熱圧接されて所定の形態を保持されていることを特徴とする生分解性長繊維不織布を要旨とするものである。
【0010】
本発明によれば、不織布を構成する長繊維を多葉型複合長繊維とし、その芯部を不織布とした際に機械的強力が得られないポリアルキレンアルカノエートにて形成したにもかかわらず、4〜10個の突起部をポリ乳酸系重合体にて形成するとともに2000m/分以上の牽引速度にて牽引細化して開繊された長繊維からなることで、得られた不織布は優れた機械的強力を有するものとなる。また、融点の高いポリ乳酸系重合体を突起部に配置することで、融点の低いポリアルキレンアルカノエートからなる芯部を利用した部分的熱圧接が可能となり、不織布は柔軟性を有するものとなる。さらに、芯部を生分解性に優れたポリアルキレンアルカノエートにて形成し、突起部を生分解性にやや劣るポリ乳酸系重合体にて形成したため、繊維横断面における芯部と突起部との割合を適宜に調整することで生分解性を制御可能な生分解性長繊維不織布を提供することができる。
【0011】
また、本発明は、ポリアルキレンアルカノエートとポリ乳酸系重合体とを用いて、それぞれを個別に溶融し、繊維横断面において、ポリアルキレンアルカノエートが芯部を形成し、ポリ乳酸系重合体が前記ポリアルキレンアルカノエートの円周方向に独立した突起部を4〜10個形成し、しかも前記ポリアルキレンアルカノエート成分はポリ乳酸系重合体成分によって分断されることなく連続しており、かつポリアルキレンアルカノエート成分及びポリ乳酸系重合体成分が共に繊維軸方向に連続するとともに繊維表面において交互に露出するように形成可能な多葉型複合紡糸口金を介して溶融紡糸し、前記口金より紡出した紡出糸条を冷却し、2000m/分以上の牽引速度にて牽引細化して開繊し、得られた長繊維を堆積させて不織ウエブを形成し、前記不織ウエブに熱圧接を施して不織布を形成することを特徴とする生分解性長繊維不織布の製造方法を要旨とするものである。
【0012】
本発明によれば、不織布を形成する複合長繊維を溶融紡糸する際の牽引速度を2000m/分以上とすることで、紡出糸条の冷却性・可紡性や開繊性を良好にし、得られる不織布の機械的強力や寸法安定性を向上させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の生分解性長繊維不織布は、芯部がポリアルキレンアルカノエートにて形成され突起部がポリ乳酸系重合体にて形成された生分解性多葉型複合長繊維にて形成される必要がある。ポリアルキレンアルカノエートは、融点が低く生分解性に優れた重合体であり、ポリ乳酸系重合体は、融点が高く紡出糸条の冷却性や開繊性などの製糸性に優れた重合体である。このように、生分解性に優れたポリアルキレンアルカノエートにて芯部を形成することで、不織布に良好な生分解性が付与され、4〜10個の突起部をポリ乳酸系重合体にて形成することで、不織布の機械的強力が維持され、低融点のポリ乳酸系重合体からなる芯成分を利用して長繊維ウエブに部分熱圧接を施す際にも高融点のポリ乳酸系重合体からなる突起部は溶融しないために全融着することがなくなり不織布に柔軟性を付与することができる。さらに、多葉型複合長繊維とすることで、互いに生分解性が相違する芯部と突起部との配合割合の調整が行いやすくなり、生分解性が制御可能となる。
【0014】
詳しくは図1〜図3に示すように、本発明の多葉型複合長繊維1は、その繊維横断面において、ポリアルキレンアルカノエートからなる芯部2と、芯部2の円周方向に独立して形成されたポリ乳酸系重合体からなる複数の突起部3とが繊維表面において交互に露出し、また芯部2は突起部3によって分断されることなく連続するように構成される必要がある。芯部2と突起部3とが繊維表面において交互に露出することで、紡出糸条の冷却性や開繊性が良くなり、また芯部2が突起部3によって分断されることなく連続することで良好な生分解性が付与される。また、芯部2および突起部3は共に繊維軸方向に連続していることが必要である。芯部2および突起部3のいずれもが繊維軸方向に連続するよう構成することで、繊維横断面の安定性や製糸性や繊維の機械的特性を向上させることができる。すなわち、このような繊維横断面形状を有する長繊維を適用することにより、芯部2を形成するポリアルキレンアルカノエートが冷却性及び開繊性に劣る重合体であるにもかかわらず、突起部3に配設するポリ乳酸系重合体成分により糸条間の凝集が防止され紡出糸条の冷却性及び開繊性が向上し、また、ポリ乳酸系重合体成分が生分解性能に劣る重合体であるにもかかわらず、ポリアルキレンアルカノエートの生分解性能が優れるため、経時的にポリ乳酸系重合体成分が小片として取り残される状態となり、この小片の繊度が極めて細かいことから、不織布としての生分解性能には優れる結果となる。
【0015】
なお、芯部2の円周方向に独立した突起部3の配設形態は、上記の繊維横断面形状を満足するものであれば特に限定されるものではないが、突起部3が繊維横断面の外周上に各々等間隔に位置していることが好ましい。突起部3が繊維横断面の外周上に各々片寄りをもって位置すると、紡糸工程において紡出糸条がニーリングを発生すると共に、ウエブを熱圧接する際に繊維同士が接着しにくくなり、突起部3と芯部2との接着点が均一に付与できず不織布の強力にむらが生じやすくなる。さらに、各突起部3はすべて同じ割合で芯部2に埋没するように配設されていることが好ましい。突起部3が各々異なる割合で芯部2の中に埋没すると、ウエブを熱圧接する際に繊維同士が接着しにくく、突起部3と芯部2との接着点が均一に付与できないため不織布の強力にむらが生じやすくなる。
【0016】
また、突起部3の各セグメントがどのような割合で芯部2のなかに埋没するように配設されているかについては、以下のようなものが挙げられる。例えば図1に示すように、各突起部3の中心4が芯部2の円周より外側にあるように配置され、突起部3の円周占有率が大きい場合や、図2に示すように、突起部3の中心4が芯部2の円周より内側にあるように配設されて、芯部2の円周占有率が大きい場合など、任意の形態を適用できる。しかし少なくとも、突起部3の各セグメントが製糸・製反工程において剥離しない程度に芯部2と重なり合っていること、ならびに芯部2が内部に埋没した突起部3によって分断されていないことが必要である。特にウエブを熱圧接する際の繊維同士の接着し易さを考慮すると、例えば、図3に示すように、各突起部3の中心4が芯部2の円周上にあるような配設形態が良い。
【0017】
突起部3を形成するポリ乳酸系重合体は、上述のように融点が高く、紡出糸条の冷却性及び開繊性には優れるが、結晶化度が高いため生分解性にやや劣るものである。本発明においては、ポリ乳酸系重合体として、ポリ(D−乳酸)と、ポリ(L−乳酸)と、D−乳酸とL−乳酸との共重合体と、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体と、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体とから選ばれるいずれかの重合体、あるいは前記重合体のブレンド体であって、かつ前記重合体あるいはブレンド体の融点が100℃以上であるものが好ましい。
【0018】
ポリ乳酸系重合体としてポリ(D−乳酸)やポリ(L−乳酸)のようなホモポリマーを用いる場合には、特に、製糸工程での製糸性の改善や得られる繊維並びに不織布の柔軟性の向上を考慮すると、可塑剤を添加することが望ましい。可塑剤としては、トリアセチン、乳酸オリゴマー、ジオクチルフタレート等が用いられ、その添加量は1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の範囲とするのが良い。
【0019】
また、乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体を作成する際のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等が挙げられるが、これらの中でも特に、ヒドロキシカプロン酸やグリコール酸が分解性能や低コスト化の点から好ましい。
【0020】
本発明においては、不織布の構成繊維の耐熱温度が100℃以上であることが、得られた不織布の耐熱性等の観点から好ましく、従って、多葉型複合長繊維1の突起部3を形成するポリ乳酸系重合体の融点が100℃以上であることが重要である。一般に、ポリ乳酸のホモポリマーであるポリ(L−乳酸)やポリ(D−乳酸)の融点は約170℃であるが、ポリ乳酸系重合体として、D−乳酸とL−乳酸との共重合体や、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体や、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体や、あるいは前記重合体のブレンド体を用いる場合には、各成分の共重合比や配合割合によって共重合体やブレンド体の融点が100℃未満となったり、重合体が非晶性ポリマーとなることがあり、このような場合には、製糸時の冷却性が低下するとともに、得られた不織布の耐熱性が損なわれるためその使用用途が制限されることとなり好ましくない。
【0021】
芯部を形成するポリアルキレンアルカノエートは、紡出糸条の冷却性及び開繊性には劣るものの、結晶化度が低いため生分解性には優れるものである。本発明のポリアルキレンアルカノエートとしては、グリコールとジカルボン酸の縮重合体からなる、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリネオペンチルオキサレートや、これらの共重合体が挙げられるが、なかでもポリエチレンサクシネートやポリブチレンサクシネートやポリブチレンアジペートやポリブチレンセバケートを主繰り返し単位とする共重合ポリエステルが製糸性や生分解性能の点から好適に使用でき、特にブチレンサクシネートを主たる繰り返し単位とする重合体、ポリブチレンサクシネートとポリエチレンサクシネートとの共重合モル比が(ポリブチレンサクシネート)/(ポリエチレンサクシネート)=90/10〜70/30の範囲である共重合体、またはポリブチレンサクシネートとポリブチレンアジペートの共重合モル比が(ポリブチレンサクシネート)/(ポリブチレンアジペート)=90/10〜70/30の範囲である共重合体が好適に使用できる。ポリブチレンサクシネートとポリエチレンサクシネートとの共重合体においては、ブチレンサクシネートの共重合比が上記範囲よりも少なくなると、生分解性能には優れるものの紡出糸条の冷却性および開繊性に劣り、目的とする長繊維不織布が得られないこととなる。逆に、ブチレンサクシネートの共重合量比が上記範囲よりも多くなると、冷却性及び開繊性には優れるものの、生分解性に劣ることとなる。
【0022】
多葉型複合長繊維を形成するポリアルキレンアルカノエートとポリ乳酸系重合体との複合比は、重量比で、(ポリアルキレンアルカノエート)/(ポリ乳酸系重合体)=1/3〜3/1の範囲であることが好ましい。ポリアルキレンアルカノエートの配合割合が上記範囲より多くなると、生分解性能には優れるものの、紡出糸条の冷却性や開繊性に劣り、繊維横断面形状の不安定さを誘発することとなり、ポリアルキレンアルカノエートの配合割合が上記範囲より少なくなると、紡出糸条の冷却性や開繊性には優れるものの、生分解性能には劣る結果となる。従って本発明においては、ポリアルキレンアルカノエートとポリ乳酸系重合体との複合比を、重量比で、(ポリアルキレンアルカノエート)/(ポリ乳酸系重合体)=1/2〜2/1の範囲とすることがより好ましい。
【0023】
なお、ポリ乳酸系重合体成分が生分解性能に劣る重合体であれば、ポリアルキレンアルカノエートの複合比を上げることにより生分解速度を促進させることができる。
【0024】
上記の成分からなる多葉型複合長繊維1の単糸繊度は、1.5〜10デニールであることが好ましい。単糸繊度が1.5デニール未満となると、紡糸口金が複雑化するため製糸工程における糸切れが増大し生産量が低下したり、繊維横断面形状の不安定化などを生じるため好ましくない。逆に、単糸繊度が10デニールを超えると、紡出糸条の冷却生に劣るとともに生分解性能にもおとることとなる。これらの理由により、単糸繊度は、さらに好ましくは2〜8デニールが良い。
【0025】
上記のような単糸繊度を有する多葉型複合長繊維において、ポリ乳酸系重合体の突起部数は、4〜10であることが必要である。また、ポリ乳酸系重合体成分の個々に独立した各セグメント繊度は0.05〜2デニールであることが好ましい。ここでポリ乳酸系重合体成分のセグメント繊度とは、繊維横断面においてポリ乳酸系重合体成分が占める最小構成単位部分の繊度のことである。
【0026】
ポリ乳酸系重合体成分の突起部数が4より少なくなると、繊維表面におけるポリ乳酸系重合体成分の円周方向に占める割合が少なくなり、生分解性には優れるものの紡出糸条の冷却性や開繊性には劣るものとなる。また、これを回避するためにポリ乳酸系重合体成分の複合比を上げると、個々に独立したポリ乳酸系重合体成分のセグメント繊度、すなわち繊維横断面においてポリ乳酸系重合体成分が占める最小構成単位部分の度が大きくなり、必然的に不織布の生分解性には劣ることとなる。逆に、ポリ乳酸系重合体成分の突起部数が10を超えると、ポリ乳酸系重合体成分の各セグメントを個々に独立させることが困難となる。
【0027】
また、ポリ乳酸系重合体成分の各セグメント繊度が0.05デニール未満となると、紡糸口金が複雑化するため上記と同様に生産量の低下や繊維横断面形状の不安定などが生じることとなる。逆に、ポリ乳酸系重合体成分の各セグメント繊度が2デニールを超えると、紡出糸条の冷却性、開繊性に劣るとともに生分解性能にも劣る結果となる。これらの理由により、ポリ乳酸系重合体成分の各セグメント繊度は、さらに好ましくは0.1〜1デニールが良い。
【0028】
なお、この時の芯部2を形成するポリアルキレンアルカノエート成分の単糸繊度は1〜4デニールであることが好ましい。ポリアルキレンアルカノエート成分の単糸繊度が1デニール未満となると、生分解性に劣り、単糸繊度が4デニールを超えると製糸性に劣るものとなる。
【0029】
また、多葉型複合長繊維の繊維横断面におけるポリ乳酸系重合体とポリアルキレンアルカノエートとの周長比、すなわち繊維横断面の外周において各成分の占める周長合計の比は、(ポリ乳酸系重合体)/(ポリアルキレンアルカノエート)=90/10〜40/60の範囲であることが好ましい。例えば、繊維横断面の外周におけるポリ乳酸系重合体成分の円周占有率が大きくなると、それにつれて突起部3が大きくなり、芯部2の円周占有率が小さくなるため、この芯部2を溶融させてウエブを熱圧接する際に熱圧接が十分に施されず機械的強力に劣る不織布となる。また、個々に独立した突起部3のセグメント繊度も大きくなることから、不織布の生分解性能も低下する傾向になる。逆に繊維横断面の外周におけるポリアルキレンアルカノエートの円周占有率が大きくなると、紡出糸条が冷却されにくくなり、延伸・開繊工程において融着を生じやすくなる。
【0030】
なお、突起部を構成する高融点のポリ乳酸系重合体成分と芯部を構成する低融点のポリアルキレンアルカノエートとの融点差は5℃以上とすることが好ましく、さらに好ましくは10℃以上とする。ポリ乳酸系重合体成分とポリアルキレンアルカノエートとの融点差が5℃未満であると、熱接着を施した際に繊維横断面が単相の場合のような全融タイプに近づくため、ポリアルキレンアルカノエートのみならずポリ乳酸系重合体が熱的なダメージを生じることとなり、得られる不織布は機械的特性と柔軟性とを併せ持つことができにくくなる。
【0031】
本発明の生分解性長繊維からなる不織布の目付は、使用目的により選択されるため、特に限定されるものではないが、一般的には10〜150g/m2の範囲が好ましく、より好ましくは15〜70g/m2の範囲である。目付が10g/m2未満では柔軟性及び生分解速度には優れるものの機械的強力に劣り実用的ではない。逆に、目付が150g/m2を超えると不織布が硬い風合のものとなり柔軟性に劣るものとなる。
【0032】
上記のように構成された生分解性長繊維不織布の製造方法を以下に説明する。
本発明の生分解性多葉型複合長繊維不織布は、通常の複合紡糸装置を用いて行うことができる。まず、ポリアルキレンアルカノエートとポリ乳酸系重合体とを用いて、それぞれを個別に溶融する。そして、ポリアルキレンアルカノエートとポリ乳酸系重合体とを個別に計量した後、上述のようにポリアルキレンアルカノエートが芯部2を形成し、ポリ乳酸系重合体が突起部3を4〜10個形成する多葉型複合紡糸口金を介して溶融紡糸し、前記口金より紡出した紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却する。
【0033】
溶融紡糸する際の紡糸温度は、用いる重合体によって異なるものの、少なくとも重合体のメルトフローレート値と繊維形成性すなわち製糸性とを勘案して適宜設定する。通常は、用いる重合体のうち融点の高い方の重合体すなわちポリ乳酸系重合体の融点をTm℃としたときに(Tm+15)℃〜(Tm+50)℃の範囲の温度で溶融することが好ましい。紡糸温度が(Tm+15)℃より低いと、高速気流による曳糸・引取性に劣りやすくなる。逆に(Tm+50)℃を超えると、冷却過程での結晶化が遅れてフィラメント間で融着を生じたり開繊性に劣ったりするばかりでなく、ポリマー自体の熱分解も進行するため柔軟で均一な地合の不織布を得ることが困難となる。
【0034】
次いで、エアーサッカーなどの引取手段を用いて牽引し開繊する。その際の牽引速度は2000m/分以上であることが必要であり、2500m/分以上とすると不織布の寸法安定性が向上するため好ましい。牽引速度が2000m/分未満であると、紡出糸条の冷却性・可紡性および開繊性に劣り、さらに得られる不織布の機械的強力および寸法安定性に劣ることとなる。
【0035】
牽引細化した複合長繊維は公知の開繊器具にて開繊した後、スクリーンコンベアなどの移動式捕集面上に開繊堆積させて不織ウエブを形成する。
その後、この不織ウエブに熱圧接装置を用いて部分的熱圧接を施して長繊維不織布を形成する。不織ウエブに部分的な熱圧接処理を施すに際しては、加熱されたエンボスロールと表面が平滑な金属ロールとを用いて不織ウエブに点状融着区域を形成する方法が採用される。この点状融着区域の形状は、丸型、楕円型、菱型、三角型、T字型、井型などの任意の形状でよいが、0.1〜1.0mm2 の面積を有し、かつその密度すなわち圧接点密度が2〜80点/cm2 好ましくは、4〜60点/cm2 となるように熱圧接を施すことが好ましい。圧接点密度が2点/cm2 未満であると、不織布の機械的特性や形態保持特性が向上せず、逆に圧接点密度が80点/cm2 を超えると、柔軟性と嵩高性が得られない。また、ウエブの全表面積に対する全熱圧接領域の面積比、すなわち圧接面積率は2〜3%の範囲であることが好ましい。圧接面積率が2%より小さくなると熱圧接後のウエブの寸法安定性に劣り、圧接面積率が3%を超えると得られた不織布の柔軟性および嵩高性を損なうとともに生分解性能にも劣ることとなる。
【0036】
熱圧接を施す際の加工温度、すなわちエンボスロールの表面温度は、芯部2を構成する融点の低い方の重合体すなわちポリアルキレンアルカノエートの融点を基準としその融点以下の温度とすることが好ましい。加工温度が芯部2を形成するポリアルキレンアルカノエートの融点を超えると、熱圧接装置に重合体が固着して操業性を著しく損なうばかりか、不織布の風合が硬くなったり、不織布が得られないこともある。
【0037】
【実施例】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における各種物性値の測定は以下の方法により実施した。
【0038】
(1)メルトフローレート値(g/10分):ASTM−D−1238(E)に記載の方法に準じて温度190℃で測定した。(以降、MFR値と記す)
【0039】
(2)融点(℃):示差走査型熱量計(パーキンエルマ社製、DSC−2型)を用いて、試料重量を5mg、昇温速度を20℃/分で測定し、得られた融解吸熱曲線の最大値を与える温度を融点(℃)とした。
【0040】
(3)結晶化温度(℃):示差走査型熱量計(パーキンエルマ社製、DSC−2型)を用いて、試料重量を5mg、昇温速度を20℃/分で測定し、得られた固化発熱曲線の最大値を与える温度を結晶化温度(℃)とした。
【0041】
(4)冷却性:紡出糸条を目視して下記の3段階にて評価した。
○:密着糸が認められなかった。
△:密着糸がわずかであるが認められた。
【0042】
×:大部分が密着し、開繊不可能であった。
【0043】
(5)開繊性:開繊器具より吐出した紡出糸条にて形成された不織ウエッブを目視にて下記の3段階にて評価した。
○:構成繊維の大部分が分繊され、密着糸及び収束糸が認められなかった。
【0044】
△:密着糸及び収束糸がわずかであるが認められた。
×:構成繊維の大部分が密着し、開繊性が不良であった。
【0045】
(6)目付(g/m2):標準状態の試料から試料長が10cm、試料幅が5cmの試料片10点を作成し、平衡水分にした後、各試料片の重量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積あたりに換算し、目付(g/m2)とした。
【0046】
(7)引張強力(kg/5cm幅):JIS−L−1096Aに記載の方法に準じて測定した。すなわち、試料長が20cm、試料幅が5cmの試料片10点を作成し、試料片毎に不織布の縦方向について、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロンUTM−4−1−100)を用いて、引張速度10cm/分で伸長し、得られた切断時荷重値の平均値を引張強力(kg/5cm幅)とした。
【0047】
(8)不織布の圧縮剛軟度(g):試料長が10cm、試料幅が5cmの試料片5点を作成し、各試料毎に横方向に曲げて円筒状物とし、各々その端部を接合したものを圧縮剛軟度測定用試料とした。次いで、各測定試料毎にその軸方向について、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUTM−4−1−100)を用い、圧縮速度5cm/分で圧縮し、得られた最大荷重値(g)の平均値を圧縮剛軟度(g)とした。なお、この圧縮剛軟度とは値が小さいほど柔軟性が優れていることを意味するものである。
【0048】
(9)生分解性能:不織布を土中に埋没して、6ヶ月後に取り出し、下記のように評価した。
○:不織布がその形態を保持しておらず、埋没後の強力が測定不可能であった。
【0049】
△:不織布はその形態を保持しているが、埋没後の強力は埋没前の強力初期値に対して50%以下に低下していた。
×:不織布の埋没後の強力が埋没前の強力初期値に対して50%を超えていた。
【0050】
実施例1
生分解性多葉型長繊維不織布をスパンボンド法にて作成した。
まず、多葉型長繊維を形成するために、ポリアルキレンアルカノエートとして融点が114℃、結晶化温度が75℃、MFR値が50g/10分のポリブチレンサクシネートを用い、また、ポリ乳酸系重合体として、融点が169℃、結晶化温度が123℃、MFR値が27g/10分であり、かつL−乳酸とD−乳酸との共重合比がモル比で(L−乳酸)/(D−乳酸)=99/1である共重合体を用いた。そして、ポリアルキレンアルカノエートとポリ乳酸系共重合体との複合比が重量比で1:1となるように個別に計量した後、それぞれを個別のエクストルーダ型溶融押し出し機を用いて温度200℃で溶融し、図3に示すように6つの突起部3を有し突起部3の中心4が芯部2の円周上に配置されるような繊維横断面となる紡糸口金を用いて、ポリアルキレンアルカノエートが芯部2となりポリ乳酸系共重合体が突起部3となるように単孔吐出量1.2g/分の条件下で溶融紡糸した。
【0051】
紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアーサッカーにて牽引速度3600m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウエブとして捕集堆積させた。なお、堆積させた複合長繊維の単糸繊度は3.4デニールであり、突起部3のセグメント繊度は0.28デニール、芯部2のセグメント繊度は1.7デニールであった。
【0052】
次いで、このウエブをロール温度を96℃としたエンボスロールからなる部分熱圧接装置に通して部分的に熱圧接し、目付が30g/m2である生分解性長繊維不織布を得た。なお、エンボスロールとしては、面積が0.6mm2の彫刻模様で圧接点密度が20点/cm2、圧接面積率が15%で配設されたエンボスロールと表面が平滑な金属ロールとを用いた。
【0053】
不織布を形成する際の操業性、得られた不織布の物性、生分解性能等を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
実施例2
ポリアルキレンアルカノエートとポリ乳酸系共重合体との複合比が重量比で2:1となるようにして芯部2の周長比を長くした。また、紡出糸条を牽引細化する際の牽引速度を3400m/分として堆積させた複合長繊維の単糸繊度を3.7デニール、突起部3のセグメント繊度を0.21デニール、芯部2のセグメント繊度を2.47デニールとした。そしてそれ以外は実施例1と同様にして長繊維不織布を作成した。
【0056】
不織布を形成する際の操業性、得られた不織布の物性、生分解性能等を表1に示す。
【0057】
実施例3
ポリアルキレンアルカノエートとポリ乳酸系共重合体との複合比が重量比で1:2となるようにして芯部2の周長比を小さくした。また、紡出糸条を牽引細化する際の牽引速度を3800m/分として堆積させた複合長繊維の単糸繊度を3.2デニール、突起部3のセグメント繊度を0.36デニール、芯部2のセグメント繊度を1.10デニールとした。そしてそれ以外は実施例1と同様にして長繊維不織布を作成した。
【0058】
不織布を形成する際の操業性、得られた不織布の物性、生分解性能等を表1に示す。
【0059】
実施例4
ポリ乳酸系重合体として、融点が170℃、結晶化温度が126℃で、MFR値が44g/10分と低粘度の、L−乳酸とD−乳酸との共重合体を用いた。また、紡出糸条を牽引細化する際の牽引速度を3800m/分として、堆積させた複合長繊維の単糸繊度を3.2デニール、突起部3のセグメント繊度を0.25デニール、芯部2のセグメント繊度を1.50デニールとした。そしてそれ以外は実施例1と同様にして長繊維不織布を作成した。
【0060】
不織布を形成する際の操業性、得られた不織布の物性、生分解性能等を表1に示す。
【0061】
実施例5
多葉型複合長繊維の突起部3の数を6個から10個へと増やした。なお突起部3の配置は実施例1と同様に突起部3の中心4が芯部2の円周上に配置されるようにした。また、紡出糸条を牽引細化する際の牽引速度を3700m/分として、堆積させた複合長繊維の単糸繊度を3.3デニール、突起部3のセグメント繊度を0.165デニール、芯部2のセグメント繊度を1.65デニールとした。そしてそれ以外は実施例1と同様にして長繊維不織布を作成した。
【0062】
不織布を形成する際の操業性、得られた不織布の物性、生分解性能等を表1に示す。
【0063】
実施例6
多葉型複合長繊維の突起部3の数を6個から4個へ減らした。なお突起部3の配置は実施例1と同様に突起部3の中心4が芯部2の円周上に配置されるようにした。また、紡出糸条を牽引細化する際の牽引速度を3500m/分として、堆積させた複合長繊維の単糸繊度を3.5デニール、突起部3のセグメント繊度を0.44デニール、芯部2のセグメント繊度を1.75デニールとした。そしてそれ以外は実施例1と同様にして長繊維不織布を作成した。
【0064】
不織布を形成する際の操業性、得られた不織布の物性、生分解性能等を表1に示す。
【0065】
実施例7
多葉型複合長繊維の突起部3の配置を、図3に示す配置から図1に示すように突起部3の中心4が芯部2の円周より外側にある配置にした。また、紡出糸条を牽引細化する際の牽引速度を3200m/分として、堆積させた複合長繊維の単糸繊度を3.8デニール、突起部6のセグメント繊度を0.32デニール、芯部2のセグメント繊度を1.90デニールとした。そしてそれ以外は実施例1と同様にして長繊維不織布を作成した。
【0066】
不織布を形成する際の操業性、得られた不織布の物性、生分解性能等を表1に示す。
【0067】
実施例8
ポリアルキレンアルカノエートとして融点が169℃、結晶化温度が123℃、MFR値が27g/10分のポリブチレンサクシネートを用いた。また、紡出糸条を牽引細化する際の牽引速度を2100m/分と低くして、堆積させた複合長繊維の単糸繊度を7.2デニール、突起部3のセグメント繊度を0.6デニール、芯部2のセグメント繊度を3.60デニールと太くした。そしてそれ以外は実施例1と同様にして長繊維不織布を作成した。
不織布を形成する際の操業性、得られた不織布の物性、生分解性能等を表1に示す。
【0068】
実施例1〜8は、いずれも多葉型複合長繊維の突起部3がポリ乳酸系重合体にて形成されていたため、紡出糸条の冷却性や開繊性の良いものが得られた。また熱圧接を施しても全融着することなく柔軟性の良いものが得られた。また、芯部2はポリアルキレンアルカノエートにて形成し、芯部2と突起部3の配合割合および単糸繊度や繊維の断面形状等を本発明の範囲としたため、得られた不織布は生分解性に優れたものとなった。さらに、多葉型複合長繊維を溶融紡出する際の牽引速度を本発明の範囲としたため、不織布の機械的特性や寸法安定性にも優れたものが得られた。
【0069】
また、実施例2は、実施例1よりもポリアルキレンアルカノエートの割合を多くしたため芯部2の周長比が大きくなり、紡出糸条の冷却性にやや劣るものとなったが、開繊性も良く実使用に何ら障害のでるものではなかった。
【0070】
実施例6は、実施例1よりも突起部3の数を少なくしたため、芯部2の周長比が大きくポリアルキレンアルカノエートの繊維表面における露出部分が多くなり、実施例1よりもやや紡出糸条の冷却性に劣るものとなったが、開繊性も良好であり、機械的特性にも優れるものであった。
【0071】
実施例8は、実施例1よりも単糸繊度の大きい複合長繊維を紡出したため紡出糸条の冷却性にやや劣るものとなったが、開繊性も良く実使用に何ら障害のでるものではなかった。
【0072】
比較例1
不織布を構成する長繊維を実施例1と同一のポリアルキレンアルカノエートのみで作成した。すなわち、ポリアルキレンアルカノエートとして融点が114℃、結晶化温度が75℃、MFR値が50g/10分のポリブチレンサクシネートのみを用いて、温度200℃で溶融し、繊維横断面が単相型になる口金を介して単相型長繊維を単孔吐出量1.2g/分の条件下で溶融紡糸した。そして紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアーサッカーにて牽引速度3200m/分で長繊維の単糸繊度が3.6デニールとなるように牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウエブとして捕集堆積させた。
【0073】
しかし、後述の理由により長繊維不織布を得ることができなかった。
【0074】
【表2】
【0075】
比較例2
多葉型複合長繊維の突起部3の数を本発明の範囲よりも少なく3個とし、紡出糸条を牽引細化する際の牽引速度を3300m/分とした。そしてそれ以外は実施例1と同様にして、堆積させた複合長繊維の単糸繊度が3.5デニール、突起部3のセグメント繊度が0.58デニール、芯部2のセグメント繊度が1.75デニールとなるように溶融紡出した。
【0076】
しかし、後述の理由により長繊維不織布を得ることができなかった。
【0077】
比較例3
多葉型複合長繊維の突起部3の数を本発明の範囲よりも多く12個とし、紡出糸条を牽引細化する際の牽引速度を3700m/分とした。そしてそれ以外は実施例1と同様にして、堆積させた複合長繊維の単糸繊度が3.3デニール、突起部3のセグメント繊度が0.14デニール、芯部2のセグメント繊度が1.65デニールとなるように溶融紡出した。
【0078】
不織布を形成する際の操業性、得られた不織布の物性、生分解性能等を表2に示す。
【0079】
比較例4
ポリアルキレンアルカノエートとポリ乳酸系共重合体との複合比が重量比で4:1となるようにして、ポリアルキレンアルカノエートの配合割合が本発明の範囲よりも多くなるようにし、紡出糸条を牽引細化する際の牽引速度を2900m/分とした。そしてそれ以外は実施例1と同様にして、堆積させた複合長繊維の単糸繊度が4.0デニール、突起部3のセグメント繊度が0.13デニール、芯部2のセグメント繊度が3.2デニールとなるように溶融紡出した。
【0080】
しかし、後述の理由により長繊維不織布を得ることができなかった。
【0081】
比較例5
ポリアルキレンアルカノエートとポリ乳酸系共重合体との複合比が重量比で1:4となるようにして、ポリ乳酸系共重合体の配合割合が本発明の範囲よりも多くなるようにし、紡出糸条を牽引細化する際の牽引速度を3800m/分とした。そしてそれ以外は実施例1と同様にして、堆積させた複合長繊維の単糸繊度が3.3デニール、突起部3のセグメント繊度が0.44デニール、芯部2のセグメント繊度が0.66デニールとなるように溶融紡出した。
【0082】
不織布を形成する際の操業性、得られた不織布の物性、生分解性能等を表2に示す。
【0083】
比較例6
紡出糸条を牽引細化する際の牽引速度を本発明の範囲よりも遅く1800m/分とした。そしてそれ以外は実施例1と同様にして、堆積させた複合長繊維の単糸繊度が9.5デニール、突起部3のセグメント繊度が0.79デニール、芯部2のセグメント繊度が4.80デニールとなるように溶融紡出した。
【0084】
不織布を形成する際の操業性、得られた不織布の物性、生分解性能等を表2に示す。
【0085】
比較例7
紡出糸条を牽引細化する際の牽引速度を3500m/分とした。そしてそれ以外は実施例1と同様にして、堆積させた複合長繊維の単糸繊度が3.4デニール、突起部3のセグメント繊度が0.32デニール、芯部2のセグメント繊度が1.7デニールとなるように溶融紡出し、長繊維ウエブを作成した。この長繊維ウエブに芯部2を形成するポリアルキレンアルカノエートの融点114℃よりも高い116℃の温度にて部分的熱圧接を施した。
【0086】
しかし、後述の理由により長繊維不織布を得ることができなかった。
【0087】
比較例1は、融点の低いポリアルキレンアルカノエート単相の長繊維で不織布を作成しようとしたため、糸条を紡出する際の冷却性や開繊性に劣り、目的とする生分解性不織布が得られなかった。
【0088】
比較例2は、複合長繊維を形成する突起部の数を本発明の範囲よりも少なくしたため、融点の低いポリアルキレンアルカノエートの繊維表面における露出部分が多すぎ、紡出糸条の冷却性や開繊性に劣り、目的とする生分解性不織布が得られなかった。
【0089】
比較例3は、突起部3の数を本発明の範囲よりも多くしたため、冷却性や開繊性が良く、強力や柔軟性にも優れた不織布が得られるものの、芯部2を形成するポリアルキレンアルカノエートの繊維表面における露出部分が少なすぎるため、生分解性に乏しい不織布となった。
【0090】
比較例4は、複合長繊維を形成するポリアルキレンアルカノエートの複合比を本発明の範囲よりも多くしたため、融点の低いポリアルキレンアルカノエートの繊維表面における露出部分が多すぎ、紡出糸条の冷却性や開繊性に劣り、目的とする生分解性不織布が得られなかった。
【0091】
比較例5は、融点の高いポリ乳酸系重合体の複合比を本発明の範囲よりも多くしたため、冷却性や開繊性が良く、強力や柔軟性にも優れた不織布が得られるものの、芯部2を形成するポリアルキレンアルカノエートの繊維表面における露出部分が少なすぎるため、生分解性に乏しい不織布となった。
【0092】
比較例6は、紡出糸条の牽引速度が低すぎたため、紡出糸条の冷却性や開繊性に劣り、また、得られた不織布は機械的強力や寸法安定性に劣るものであった。比較例7は、長繊維ウエブに部分熱圧接を施す際の加工温度が芯部を形成するポリアルキレンアルカノエートの融点よりも高かったため、熱圧接装置にポリアルキレンアルカノエートが固着して、目的とする生分解性不織布が得られなかった。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、冷却性および開繊性に優れた融点の高いポリ乳酸系重合体を細分化し繊維外周部に突起部として位置させ、この突起部を4〜10個形成するとともに、生分解性能に優れた融点の低いポリアルキレンアルカノエートを芯部に位置させることにより、冷却性や開繊性が良く製糸性に優れ、しかも強力や地合いに優れた長繊維不織布とすることができる。また、部分熱圧接が可能となり柔軟性に優れた不織布とすることができる。さらに突起部と芯部との割合が容易に調整できることから生分解性の制御が可能となる。
【0094】
また、本発明の生分解性長繊維不織布を製造するに際し、牽引速度を2000m/分以上とすることで、不織布の強力や寸法安定性に優れた長繊維不織布とすることができる。
【0095】
本発明の不織布は、おむつや生理用品その他の医療・衛生材料素材、使い捨ておしぼりやワイピングクロスなどの拭き取り布、使い捨て包装材、家庭・業務用の生ゴミ捕集用袋その他廃棄物処理材などの生活関連素材、あるいは、農業・園芸・土木用に代表される産業用資材の各素材として好適に使用できる。しかも、この不織布は、生分解性を有し使用後には完全に分解消失するため、自然保護の観点からも有益であり、さらに、例えば堆肥化して肥料とするなど再利用を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多葉型複合長繊維の繊維横断面を示す図である。
【図2】本発明の多葉型複合長繊維の繊維横断面を示す図である。
【図3】本発明の多葉型複合長繊維の繊維横断面を示す図である。
【符号の説明】
1 多葉型複合長繊維
2 芯部
3 突起部
Claims (9)
- 生分解性多葉型複合長繊維にて形成された不織布であって、前記生分解性多葉型複合長繊維がポリアルキレンアルカノエートとポリ乳酸系重合体とから形成される複合長繊維であり、この複合長繊維の繊維断面においてポリアルキレンアルカノエートが芯部を形成し、ポリ乳酸系重合体が前記ポリアルキレンアルカノエートの円周方向に独立した突起部を形成し、前記突起部の数が4〜10であり、しかも前記ポリアルキレンアルカノエート成分はポリ乳酸系重合体成分によって分断されることなく連続しており、かつポリアルキレンアルカノエート成分及びポリ乳酸系重合体成分が共に繊維軸方向に連続するとともに繊維表面において交互に露出してなり、前記生分解性多葉型複合長繊維からなる不織ウエブが、2000m/分以上の牽引速度にて牽引細化して開繊された長繊維からなり、部分的に熱圧接されて所定の形態を保持されていることを特徴とする生分解性長繊維不織布。
- ポリ乳酸系重合体が、ポリ(D−乳酸)と、ポリ(L−乳酸)と、D−乳酸とL−乳酸との共重合体と、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体と、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体とから選ばれるいずれかの重合体、あるいは前記重合体のブレンド体であって、かつ前記重合体あるいはブレンド体の融点が100℃以上であることを特徴とする請求項1記載の生分解性長繊維不織布。
- ポリアルキレンアルカノエートが、ブチレンサクシネートを主たる繰り返し単位とする重合体、ポリブチレンサクシネートとポリエチレンサクシネートとの共重合モル比が(ポリブチレンサクシネート)/(ポリエチレンサクシネート)=90/10〜70/30の範囲である共重合体、またはポリブチレンサクシネートとポリブチレンアジペートの共重合モル比が(ポリブチレンサクシネート)/(ポリブチレンアジペート)=90/10〜70/30の範囲である共重合体であることを特徴とする請求項1または2記載の生分解性長繊維不織布。
- ポリアルキレンアルカノエート成分とポリ乳酸系重合体成分との複合比が、重量比で、(ポリアルキレンアルカノエート)/(ポリ乳酸系重合体)=1/3〜3/1の範囲であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の生分解性長繊維不織布。
- 多葉型複合長繊維の単糸繊度が1.5〜10デニールであることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の生分解性長繊維不織布。
- ポリ乳酸系重合体成分の個々に独立した各セグメント繊度が0.05〜2デニールであることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の生分解性長繊維不織布。
- ポリアルキレンアルカノエート成分の単糸繊度が1〜4デニールであることを特徴とする請求項6記載の生分解性長繊維不織布。
- 多葉型複合長繊維の繊維横断面の外周におけるポリ乳酸系重合体とポリアルキレンアルカノエートとの占める周長合計の比が、(ポリ乳酸系重合体)/(ポリアルキレンアルカノエート)=90/10〜40/60の範囲であることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の生分解性長繊維不織布。
- ポリアルキレンアルカノエートとポリ乳酸系重合体とを用いて、それぞれを個別に溶融し、繊維横断面において、ポリアルキレンアルカノエートが芯部を形成し、ポリ乳酸系重合体が前記ポリアルキレンアルカノエートの円周方向に独立した突起部を4〜10個形成し、しかも前記ポリアルキレンアルカノエート成分はポリ乳酸系重合体成分によって分断されることなく連続しており、かつポリアルキレンアルカノエート成分及びポリ乳酸系重合体成分が共に繊維軸方向に連続するとともに繊維表面において交互に露出するように形成可能な多葉型複合紡糸口金を介して溶融紡糸し、前記口金より紡出した紡出糸条を冷却し、2000m/分以上の牽引速度にて牽引細化して開繊し、得られた長繊維を堆積させて不織ウエブを形成し、前記不織ウエブに熱圧接を施して不織布を形成することを特徴とする生分解性長繊維不織布の製造方法。
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