JP2005029623A - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】軸受において水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できる潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】軸受部に用いられる潤滑油組成物であって、該潤滑油組成物が亜硝酸金属塩を含有し、特に亜硝酸金属塩が亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウムおよび亜硝酸カルシウムから選ばれた少なくとも一つの亜硝酸金属塩であり、上記潤滑油組成物のベース油がギアー油、エンジン油または油圧作動油である。
【選択図】 図1
【解決手段】軸受部に用いられる潤滑油組成物であって、該潤滑油組成物が亜硝酸金属塩を含有し、特に亜硝酸金属塩が亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウムおよび亜硝酸カルシウムから選ばれた少なくとも一つの亜硝酸金属塩であり、上記潤滑油組成物のベース油がギアー油、エンジン油または油圧作動油である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧モータや油圧ポンプなどの軸受部に使われる潤滑油に関し、特に軸受の転走面に生じる白色組織変化を伴う早期剥離現象の抑制を図った潤滑油に関する。
【0002】
【従来の技術】
油圧モータや油圧ポンプ、アクスル遊星部には、一般的にギアオイルや油圧作動油で潤滑される軸受が使用されている。これらのオイルには、一般的には鉱油や水−グリコール系作動油が用いられている。
近年、上記軸受の使用条件が高速・高荷重など過酷化するのに伴い、軸受の転走面に白色組織変化を伴った剥離が早期に発生し問題となっている。
このような早期に発生する白色組織変化を伴った特異な剥離は、通常の金属疲労により生じる転走面内部からの剥離と違い、転走面表面の比較的浅い部分から生じる破壊現象であり、水素を原因とする水素脆性であると考えられる。この剥離の原因となる水素は、潤滑油の分解により発生する。潤滑油からの水素の発生は、(1)熱やせん断による分解、(2)摩耗により生成される金属新生面を触媒とする分解反応、の2つの原因が考えられる。このように発生した水素は容易に軸受鋼内部に侵入し、水素脆性による剥離を生じさせる。水素発生に対して上記(1)(2)のどちらの影響が大きいかは軸受の使用条件によると考えられるが、(2)が主原因の場合、摩耗により生成される金属新生面の露呈時間を短くする、すなわち生成した金属新生面をすぐに酸化させ不活性な状態にしてしまう酸化剤の添加が、水素発生の抑制には効果的であることが知られている。
【0003】
従来このような知見に基づく水素脆性剥離の防止対策として、転走面に黒染め処理法を用いて酸化被膜を形成したもの(特許文献1参照)、グリース封入軸受において、転走面に摩耗によって生じる新生面に酸化被膜を形成するため、グリース中に不動態化剤を添加したもの(特許文献2参照)、または、軸受の軌道輪の材料自体にCrなどを含有させることにより、転走面において酸化被膜を形成し剥離を防止するもの(特許文献3参照)などがある。
【0004】
【特許文献1】
実開平6−43349号公報(段落[0008])
【特許文献2】
特開平3−210394号公報(2頁、右上欄、6〜15行目)
【特許文献3】
特許第3009254号公報(段落[0007])
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1では、低温加熱(130〜160℃)の苛性ソーダ水溶液中に軌道輪を浸漬して、軸受転走面に予め四三酸化鉄膜を形成する必要があり手間がかかるという問題がある。また、上記各従来技術において、転走面に形成された酸化被膜が、転動体との摩擦摩耗により剥がれてしまう場合があり、十分な対策であるとはいえないのが現状である。
一方、上記特許文献2および特許文献3のように、その軸受の軌道輪自体、または、封入するグリースに転走面の酸化を促す物質を含有させたものはあるが、軸受に用いる潤滑油に着目した上記剥離に対する対策については、有効な処方が明らかでなく、これまでほとんど行なわれてこなかった。
【0006】
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、軸受において水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できる潤滑油組成物の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、軸受部に用いられる潤滑油組成物であって、該潤滑油組成物が亜硝酸金属塩を含有することを特徴とする。
また、上記亜硝酸金属塩が亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウムおよび亜硝酸カルシウムから選ばれた少なくとも一つの亜硝酸金属塩であることを特徴とする。
また、上記潤滑油組成物がギアー油、エンジン油または油圧作動油に亜硝酸金属塩が配合されてなることを特徴とする。
【0008】
軸受用の潤滑油組成物に、亜硝酸金属塩を添加することにより、軸受の摩擦摩耗面または摩耗により露出した触媒作用のある鉄系金属新生面に対して酸化剤として作用し、軸受転走面を触媒作用のない酸化物膜の状態とする。この酸化物膜が、潤滑油の分解により発生した水素の軸受鋼内への進入を防止し、水素脆性による剥離が抑制される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に使用できる潤滑油組成物のベース油としては、水系潤滑油、非水系潤滑油のいずれでもよく、潤滑油として汎用されているものであれば使用できる。具体的には、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の鉱油、ポリブテン、ポリαオレフィン、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂とポリオールとのエステル油、リン酸エステル、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン、フッ素化油等の非炭化水素系合成油、水−グリコール系作動油等の水系潤滑油を使用できる。
【0010】
特に低摩擦が求められる場合には、エステル油、シリコーン油などを用いることで好ましい結果が得られる。
また、亜硝酸金属塩は水溶性であるため、均一に配合できる水系潤滑油に配合することで水素脆性による剥離を抑制する効果をより発揮することができる。
また、非水系潤滑油を使用する場合では、亜硝酸金属塩を予め微粉化する、または分散剤を配合するなどが好ましい。
【0011】
本発明は、ギアー油、エンジン油または油圧作動油として使用されている潤滑油に亜硝酸金属塩を配合することが摩耗により生成した金属新生面と反応して酸化物膜を生成し易いので好ましい。
油圧作動油としては、水−グリコール系作動油等の水系ベース油を含む。
【0012】
亜硝酸金属塩は、HNO2の金属塩として表され、金属としては1価ないし3価金属を用いることができ、好ましくは1価または2価金属である。具体的には、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、銅、亜鉛、バリウム等が例示できる。
軸受部における摩擦摩耗面または摩耗により露出した鉄系金属新生面において反応して、酸化鉄をより形成しやすい、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムが金属として好ましい。
【0013】
本発明の潤滑油組成物は、上記潤滑油に亜硝酸金属塩を添加することで得られる。亜硝酸金属塩の添加量は、潤滑油組成物全体に対して 0.01 〜 10 重量%、好ましくは 0.05〜 3 重量%である。添加量が 0.01 重量%未満であると水素脆性剥離を抑制することができない。また、10 重量%をこえると、剥離抑制効果が頭打ちになりコストが高くなるとともに、潤滑不良が起こり表面起点型の疲労剥離が生じ易くなる。
【0014】
本発明の潤滑油組成物には、摩擦摩耗面に露出した鉄系金属新生面に形成される酸化膜の生成を害しない範囲で、必要に応じて酸化防止剤、防錆剤、油性剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤などの公知の配合剤を配合できる。
特に水系潤滑油を用いる場合などは、軸受鋼の錆発生を防止するため、防錆剤を適量配合することが好ましい。防錆剤としては、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸塩、アミン、アルケニルこはく酸またはその部分エステル等が挙げられる。
【0015】
本発明の潤滑油組成物が用いられる転がり軸受の一例を図1に示す。図1はシェル型針状ころ軸受の一例を示す斜視図である。
針状ころ軸受1は、鋼板から精密深絞り加工等で作製された外輪2に、保持器4付針状ころ3が組み込まれている。針状ころ軸受1は、軸を直接軌道面にすることができ、潤滑油組成物により潤滑されることが多い。
【0016】
【実施例】
実施例1〜10、比較例1〜7
針状ころ軸受(内輪外径φ 24 mm 、外輪内径φ 32 mm 、幅 20 mm 、コロφ 4×16.8 mm × 14 本)を、表1の示す組成の潤滑油組成物にて潤滑させて、寿命試験を行なった。
寿命試験は、ラジアル荷重 6.76kN、回転数 3000rpm、500rpm、3000rpm、500rpmを順に繰り返す急加減速で、雰囲気温度100℃にて軸受を回転させ、転走面に剥離が発生する時間(剥離発生時間)を測定した。結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
【表2】
【0018】
寿命試験後、各実施例における軸受の転走面には変色が見られたが、各比較例については試験後の転走面に変色が見られなかった。転走面の変色は酸化膜の生成と考えられ、この酸化膜が水素脆性による特異な剥離の発生を抑制しているものと考えられる。
以上の分析結果からも明らかなように、摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面で分解・反応し、酸化鉄膜を形成することにより、この膜が潤滑油による潤滑油の分解により発生した水素の鋼内への進入を防止し、剥離の発生を抑制する結果、剥離発生時間で評価された寿命特性が向上した。
【0019】
【発明の効果】
本発明は、軸受部に用いられる潤滑油組成物であって、該潤滑油組成物が亜硝酸金属塩を含有するので、軸受部における水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できる。特に、亜硝酸金属塩が亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウムおよび亜硝酸カルシウムから選ばれた少なくとも一つの亜硝酸金属塩であるので、上記剥離防止効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】針状ころ軸受の斜視図である。
【符号の説明】
1 針状ころ軸受
2 外輪
3 ころ
4 保持器
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧モータや油圧ポンプなどの軸受部に使われる潤滑油に関し、特に軸受の転走面に生じる白色組織変化を伴う早期剥離現象の抑制を図った潤滑油に関する。
【0002】
【従来の技術】
油圧モータや油圧ポンプ、アクスル遊星部には、一般的にギアオイルや油圧作動油で潤滑される軸受が使用されている。これらのオイルには、一般的には鉱油や水−グリコール系作動油が用いられている。
近年、上記軸受の使用条件が高速・高荷重など過酷化するのに伴い、軸受の転走面に白色組織変化を伴った剥離が早期に発生し問題となっている。
このような早期に発生する白色組織変化を伴った特異な剥離は、通常の金属疲労により生じる転走面内部からの剥離と違い、転走面表面の比較的浅い部分から生じる破壊現象であり、水素を原因とする水素脆性であると考えられる。この剥離の原因となる水素は、潤滑油の分解により発生する。潤滑油からの水素の発生は、(1)熱やせん断による分解、(2)摩耗により生成される金属新生面を触媒とする分解反応、の2つの原因が考えられる。このように発生した水素は容易に軸受鋼内部に侵入し、水素脆性による剥離を生じさせる。水素発生に対して上記(1)(2)のどちらの影響が大きいかは軸受の使用条件によると考えられるが、(2)が主原因の場合、摩耗により生成される金属新生面の露呈時間を短くする、すなわち生成した金属新生面をすぐに酸化させ不活性な状態にしてしまう酸化剤の添加が、水素発生の抑制には効果的であることが知られている。
【0003】
従来このような知見に基づく水素脆性剥離の防止対策として、転走面に黒染め処理法を用いて酸化被膜を形成したもの(特許文献1参照)、グリース封入軸受において、転走面に摩耗によって生じる新生面に酸化被膜を形成するため、グリース中に不動態化剤を添加したもの(特許文献2参照)、または、軸受の軌道輪の材料自体にCrなどを含有させることにより、転走面において酸化被膜を形成し剥離を防止するもの(特許文献3参照)などがある。
【0004】
【特許文献1】
実開平6−43349号公報(段落[0008])
【特許文献2】
特開平3−210394号公報(2頁、右上欄、6〜15行目)
【特許文献3】
特許第3009254号公報(段落[0007])
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1では、低温加熱(130〜160℃)の苛性ソーダ水溶液中に軌道輪を浸漬して、軸受転走面に予め四三酸化鉄膜を形成する必要があり手間がかかるという問題がある。また、上記各従来技術において、転走面に形成された酸化被膜が、転動体との摩擦摩耗により剥がれてしまう場合があり、十分な対策であるとはいえないのが現状である。
一方、上記特許文献2および特許文献3のように、その軸受の軌道輪自体、または、封入するグリースに転走面の酸化を促す物質を含有させたものはあるが、軸受に用いる潤滑油に着目した上記剥離に対する対策については、有効な処方が明らかでなく、これまでほとんど行なわれてこなかった。
【0006】
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、軸受において水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できる潤滑油組成物の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、軸受部に用いられる潤滑油組成物であって、該潤滑油組成物が亜硝酸金属塩を含有することを特徴とする。
また、上記亜硝酸金属塩が亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウムおよび亜硝酸カルシウムから選ばれた少なくとも一つの亜硝酸金属塩であることを特徴とする。
また、上記潤滑油組成物がギアー油、エンジン油または油圧作動油に亜硝酸金属塩が配合されてなることを特徴とする。
【0008】
軸受用の潤滑油組成物に、亜硝酸金属塩を添加することにより、軸受の摩擦摩耗面または摩耗により露出した触媒作用のある鉄系金属新生面に対して酸化剤として作用し、軸受転走面を触媒作用のない酸化物膜の状態とする。この酸化物膜が、潤滑油の分解により発生した水素の軸受鋼内への進入を防止し、水素脆性による剥離が抑制される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に使用できる潤滑油組成物のベース油としては、水系潤滑油、非水系潤滑油のいずれでもよく、潤滑油として汎用されているものであれば使用できる。具体的には、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の鉱油、ポリブテン、ポリαオレフィン、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂とポリオールとのエステル油、リン酸エステル、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン、フッ素化油等の非炭化水素系合成油、水−グリコール系作動油等の水系潤滑油を使用できる。
【0010】
特に低摩擦が求められる場合には、エステル油、シリコーン油などを用いることで好ましい結果が得られる。
また、亜硝酸金属塩は水溶性であるため、均一に配合できる水系潤滑油に配合することで水素脆性による剥離を抑制する効果をより発揮することができる。
また、非水系潤滑油を使用する場合では、亜硝酸金属塩を予め微粉化する、または分散剤を配合するなどが好ましい。
【0011】
本発明は、ギアー油、エンジン油または油圧作動油として使用されている潤滑油に亜硝酸金属塩を配合することが摩耗により生成した金属新生面と反応して酸化物膜を生成し易いので好ましい。
油圧作動油としては、水−グリコール系作動油等の水系ベース油を含む。
【0012】
亜硝酸金属塩は、HNO2の金属塩として表され、金属としては1価ないし3価金属を用いることができ、好ましくは1価または2価金属である。具体的には、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、銅、亜鉛、バリウム等が例示できる。
軸受部における摩擦摩耗面または摩耗により露出した鉄系金属新生面において反応して、酸化鉄をより形成しやすい、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムが金属として好ましい。
【0013】
本発明の潤滑油組成物は、上記潤滑油に亜硝酸金属塩を添加することで得られる。亜硝酸金属塩の添加量は、潤滑油組成物全体に対して 0.01 〜 10 重量%、好ましくは 0.05〜 3 重量%である。添加量が 0.01 重量%未満であると水素脆性剥離を抑制することができない。また、10 重量%をこえると、剥離抑制効果が頭打ちになりコストが高くなるとともに、潤滑不良が起こり表面起点型の疲労剥離が生じ易くなる。
【0014】
本発明の潤滑油組成物には、摩擦摩耗面に露出した鉄系金属新生面に形成される酸化膜の生成を害しない範囲で、必要に応じて酸化防止剤、防錆剤、油性剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤などの公知の配合剤を配合できる。
特に水系潤滑油を用いる場合などは、軸受鋼の錆発生を防止するため、防錆剤を適量配合することが好ましい。防錆剤としては、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸塩、アミン、アルケニルこはく酸またはその部分エステル等が挙げられる。
【0015】
本発明の潤滑油組成物が用いられる転がり軸受の一例を図1に示す。図1はシェル型針状ころ軸受の一例を示す斜視図である。
針状ころ軸受1は、鋼板から精密深絞り加工等で作製された外輪2に、保持器4付針状ころ3が組み込まれている。針状ころ軸受1は、軸を直接軌道面にすることができ、潤滑油組成物により潤滑されることが多い。
【0016】
【実施例】
実施例1〜10、比較例1〜7
針状ころ軸受(内輪外径φ 24 mm 、外輪内径φ 32 mm 、幅 20 mm 、コロφ 4×16.8 mm × 14 本)を、表1の示す組成の潤滑油組成物にて潤滑させて、寿命試験を行なった。
寿命試験は、ラジアル荷重 6.76kN、回転数 3000rpm、500rpm、3000rpm、500rpmを順に繰り返す急加減速で、雰囲気温度100℃にて軸受を回転させ、転走面に剥離が発生する時間(剥離発生時間)を測定した。結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
【表2】
【0018】
寿命試験後、各実施例における軸受の転走面には変色が見られたが、各比較例については試験後の転走面に変色が見られなかった。転走面の変色は酸化膜の生成と考えられ、この酸化膜が水素脆性による特異な剥離の発生を抑制しているものと考えられる。
以上の分析結果からも明らかなように、摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面で分解・反応し、酸化鉄膜を形成することにより、この膜が潤滑油による潤滑油の分解により発生した水素の鋼内への進入を防止し、剥離の発生を抑制する結果、剥離発生時間で評価された寿命特性が向上した。
【0019】
【発明の効果】
本発明は、軸受部に用いられる潤滑油組成物であって、該潤滑油組成物が亜硝酸金属塩を含有するので、軸受部における水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できる。特に、亜硝酸金属塩が亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウムおよび亜硝酸カルシウムから選ばれた少なくとも一つの亜硝酸金属塩であるので、上記剥離防止効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】針状ころ軸受の斜視図である。
【符号の説明】
1 針状ころ軸受
2 外輪
3 ころ
4 保持器
Claims (3)
- 軸受部に用いられる潤滑油組成物であって、該潤滑油組成物は亜硝酸金属塩を含有することを特徴とする潤滑油組成物。
- 前記亜硝酸金属塩が亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウム、および亜硝酸カルシウムから選ばれた少なくとも一つの亜硝酸金属塩であることを特徴とする請求項1記載の潤滑油組成物。
- 前記潤滑油組成物がギアー油、エンジン油または油圧作動油に亜硝酸金属塩が配合されてなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の潤滑油組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003193866A JP2005029623A (ja) | 2003-07-08 | 2003-07-08 | 潤滑油組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003193866A JP2005029623A (ja) | 2003-07-08 | 2003-07-08 | 潤滑油組成物 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005029623A true JP2005029623A (ja) | 2005-02-03 |
Family
ID=34205215
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003193866A Pending JP2005029623A (ja) | 2003-07-08 | 2003-07-08 | 潤滑油組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005029623A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008057602A (ja) * | 2006-08-30 | 2008-03-13 | Ntn Corp | 転がり軸受 |
US7910525B2 (en) | 2005-04-20 | 2011-03-22 | Ntn Corporation | Grease composition, grease-enclosed bearing, and rotation-transmitting apparatus with built-in one way clutch |
-
2003
- 2003-07-08 JP JP2003193866A patent/JP2005029623A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7910525B2 (en) | 2005-04-20 | 2011-03-22 | Ntn Corporation | Grease composition, grease-enclosed bearing, and rotation-transmitting apparatus with built-in one way clutch |
JP2008057602A (ja) * | 2006-08-30 | 2008-03-13 | Ntn Corp | 転がり軸受 |
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