JP2005029580A - ポリエステル樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエステル樹脂及びポリエステル樹脂100重量部に対し0.1〜10重量部の層状複水酸化物からなる組成物の製造方法において、エチレングリコールにより膨潤した層状複水酸化物をポリエステル樹脂の重合工程において重縮合が完了するまでの任意の段階で配合した後、ポリエステル樹脂の重縮合を完了せしめることを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法及び上記方法により製造されたポリエステル樹脂組成物である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は機械的強度、硬度、剛性、ガスバリア性等が改善されたポリエステル樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
代表的なポリエステルであるポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートは優れた機械的強度、耐熱性、衛生性等から繊維、フィルム、ボトル、成型材料等の分野で使われている。それらポリエステルを高度化する要求に対して、フィラーと樹脂を組み合わせて種々の機能を付与することが行われている。たとえば、耐候性、難燃性、帯電防止性、着色性、摺動性、表面特性、抗菌性、結晶性、透明性、耐衝撃性、耐ブロッキング性、導電性、ガスバリア性等の機能の向上を図ってフィラーとの配合がなされている。
【0003】
近年、層状化合物へのインターカレーションを利用したナイロン/クレー(モンモリロナイト等)ハイブリッドが盛んに検討され、ナノコンポジットとして自動車部品等に実用化されている。このナノコンポジットにより、フィラーがわずか数%の充填率であっても、高い弾性率、耐熱性の向上あるいはガスバリア性の向上等の効果が得られている。このナノコンポジットにおいて用いられるフィラーはモンモリロナイト、サポナイト等のスメクタイト族やカオリナイト等のカオリン族等の粘土鉱物、ケイ酸塩化合物等が挙げられる。
【0004】
このような層状無機粒子としてハイドロタルサイトに代表される層状複水酸化物が知られている。層状複水酸化物あるいはハイドロタルサイト類の化合物は層間にアニオンを有する層状構造を持った粒子であり、ポリ塩化ビニルの熱安定剤等として使われている。また、蓄熱効果を有するためにオレフィンフィルムに添加して農業用フィルムに使われたり、酸に溶けてPH調節機能を有することから医薬用の制酸剤にも使われている。WO01/42335ではハイドロタルサイト類のポリエステル重合触媒としての利用が開示されている。また、特公表2002−500253及び特公表2002−500254ではアニオンの少なくとも20%が高分子マトリックスと相溶性及び/又は反応性を有するものを使用するナノ複合材料が開示されている。
ポリエステル樹脂でも層状無機粒子との複合系が検討されているが、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂では満足できる特性を有するものは得られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ポリエステル樹脂と層状無機粒子との複合系において、機械的強度、硬度、剛性、ガスバリア性等が改善されたポリエステル樹脂組成物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題に対して鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は以下のポリエステル樹脂組成物の製造方法とその方法により製造されたポリエステル樹脂組成物である。
(1)ポリエステル樹脂及びポリエステル樹脂100重量部に対し0.1〜10重量部の層状複水酸化物からなる組成物の製造方法において、エチレングリコールにより膨潤した層状複水酸化物をポリエステル樹脂の重合工程において重縮合が完了するまでの任意の段階で配合した後、ポリエステル樹脂の重縮合を完了せしめることを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(2)(1)記載の方法により製造されたポリエステル樹脂組成物。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる層状複水酸化物は、一般式が[M2+ 1−xM3+ x(OH)2][An− x/n・zH2O]で表される層状化合物で、二価金属(M2+)が三価金属(M3+)により置換されることにより、層がプラスに荷電し、アニオン(An−)が層間に存在する構造を形成する。二価の金属としてはマグネシウム、ニッケル、亜鉛等が、三価の金属としてはアルミニウム、鉄、クロムが挙げられる(nは1〜3の整数、xは0.15〜0.5の数値、zは5以下の数値である)。二価と三価の金属以外に、リチウム等の一価金属やチタン等の四価金属を含んでも良い。
本発明に用いる層状複水酸化物を製造する方法は特に限定されないが、例えばS.Miyata,Clays Clay Miner., vol.28 , 50ページ(1980年発行)記載の方法が簡便で好ましい。
層状複水酸化物は300〜800℃の範囲で焼成したものを用いても良い。
【0008】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、エチレングリコールで膨潤させた層状複水酸化物をポリエステルの重合工程において重縮合が完了するまでの任意の段階で配合した後、重縮合を完了せしめることによって得られる。層状複水酸化物の分散、層剥離を充分に行うためには、層状複水酸化物をエステル化反応あるいはエステル交換反応の反応前あるいは反応の途中に投入することが望ましい。
【0009】
ポリエステルの重合工程において重縮合が完了するまでの任意の段階で層状複水酸化物を配合する際、層状複水酸化物をエチレングリコールにより膨潤させ層間隔を広げておくことが本発明の目的を達成するために必須である。エチレングリコールによる層状複水酸化物の膨潤はエチレングリコール中で加熱することによって行う。温度は50℃以上200℃以下の温度、より好ましくは100℃から180℃の温度が適している。層状複水酸化物のエチレングリコールによる膨潤はポリエステルの重合工程でも、あるいは事前に行っても良い。層状複水酸化物のエチレングリコールによる膨潤時にポリエステル原料の二塩基酸が存在してもかまわない。
【0010】
エチレングリコールで膨潤させた層状複水酸化物用いることにより、ポリエステル樹脂中に層状複水酸化物を効率よく分散し、層剥離を促進することができ、その結果としてナノメータサイズでの分子補強ができ、本発明の目的が達せられると考えられる。
【0011】
本発明に用いる層状複水酸化物の表面積は5〜200m2/gのものが好ましい。表面積が5m2/g未満であると樹脂自身の透明性が低下することがある。
また200m2/gを越えると重合時の溶融粘度が急激に上昇するため、目的の分子量の樹脂を得られない場合がある。
【0012】
本発明において層状複水酸化物はポリエステル樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部配合する。10重量部を超えると溶融粘度が高くなり過ぎ、ポリエステル樹脂の分子量を高くすることが困難になり、得られた組成物は非常に脆くなることがある。また、0.1重量部以下では層状複水酸化物の添加効果が少なくなる。
【0013】
本発明で使用するポリエステル樹脂の二塩基酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニールジカルボン酸、ジフェニールエーテルジカルボン酸等の芳香族二塩基酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸を挙げることができる。
【0014】
グリコール成分としてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物あるいはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルグリコール等を挙げることができる。
【0015】
さらに、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類やp−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸もポリエステル樹脂の原料として挙げられる。また、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、無水トリメリット酸等の三官能以上の成分を併用してもかまわない。
【0016】
層状複水酸化物の分散性や層剥離性の改善のために、スルホン酸金属塩基をポリエステル樹脂中に導入することが好ましい。ポリエステル樹脂にスルホン酸金属塩を導入するための原料としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、ナトリウムスルホテレフタル酸、2−ナトリウムスルホ−1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−ナトリウムスルホ−2,5−ヘキサンジオール等のジカルボン酸あるいはグリコールが挙げられ、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸が特に好ましい。
スルホン酸金属塩基のポリエステル樹脂中に導入する量は、全ジカルボン酸成分の0.5モル%〜20モル%が好ましい。0.5モル%未満では層状複水酸化物の分散性や層剥離性の改善の効果が顕著に得られなく、20モル%以上ではポリエステル樹脂の熱安定性が悪くなる傾向があり好ましくない。
【0017】
ポリエステル樹脂の製造には通常の高分子量ポリエステルの重合方法を用いることができる。すなわち、グリコールが過剰の条件下で、二塩基酸とグリコールをエステル化反応させるか二塩基酸のメチルエステル化合物とグリコールをエステル交換反応させた後、アンチモンや、チタン、ゲルマニウム等の金属触媒の存在下、高温高真空下で脱グリコールする溶融重合法や樹脂の融点以下の高真空で重合する固相重合法が挙げられる。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に例示する。実施例中に単に部とあるのは重量部を示す。本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例中で示される特性は、以下の方法で測定・評価したものである。
【0019】
(還元粘度)
還元粘度はフェノール/テトラクロロエタン(6/4重量比)を溶媒とし、0.4g/dlの組成物濃度で、30℃で測定した。
(ガラス転移温度;Tg)
試料を下記条件でDSC測定し、ガラス転移温度TmgをJIS K 7121に準拠して求めた。
装置名 : セイコーインスツルメンツ(株)製DSC6200
パン : アルミパン(非気密型)
試料重量 : 5 mg
昇温開始温度 : −100 ℃
昇温速度 : 20 ℃/min.
雰囲気ガス : 窒素
【0020】
(層状複水酸化物の層間距離)
層間距離はX線回析装置リガク(株)ガイガーフレックスRAD−II型によって粉末X線回析法で測定した。
【0021】
(ポリエステル樹脂の組成)
ポリエステルの組成は1H−NMRによって下記条件で測定した。
装置名 : 核磁気共鳴装置(BRUKER製AVANCE500)
測定溶媒: 重水素化クロロホルム/トリフルオロ酢酸=9/1(v/v)
共鳴周波数: 500MHz
積算回数: 512回
測定温度: 室温
【0022】
(50%モジュラス)
50%伸張時の弾性率を下記条件で測定した。
装置名 :東洋ボールドウィン社製UYM−I−2500
測定温湿度:20℃、50%RH
引っ張り速度:200mm/分
試料の形状:15mm×30mmの短冊状(厚み;約25μm)
【0023】
(保存弾性率)
−10℃での動的保存弾性率を下記条件で測定した。
装置名 :アイティー計測制御社製DVA−200
昇温開始温度 : −100℃
昇温速度 : 20℃/min.
雰囲気ガス : 窒素
測定周波数: 110Hz
測定様式: 引張り変形
【0024】
(ハイドロタルサイトの分散度:溶液安定性)
ハイドロタルサイトの分散度を調べるために得られたポリエステル樹脂組成物をメチルエチルケトン/トルエン(=1/1重量比)に固形分濃度10%で溶解し室温保存1週間後の溶液安定性を観察し、ハイドロタルサイトの沈降がないものを○、沈降するものを×として評価した。
【0025】
(水蒸気バリア性)
内径2cmの100ccの円筒状ガラス瓶に水を30cc入れ、実施例及び比較例のフィルム(厚み約25μm)で瓶の入口を密閉して、20℃、50%RHの雰囲気中に一日放置後、水の重量減少を測定した。比較例1の層状複水酸化物を含まないフィルムでの水の減少量を標準とし、その割合を示した。数値が小さいほど水蒸気バリア性が良好なことを示す。
【0026】
(酸素バリア性)
25μmフィルムの酸素透過量について、層状複水酸化物を含有しない同組成のポリエステル樹脂の酸素透過量を1としたときの割合を計算し評価した。数字が小さいほどバリア性が高い。酸素透過量はJIS K7126に準じて測定した。
測定温湿度:20℃、50%RH
【0027】
(実施例1)
攪拌装置つきガラス製反応容器に層状複水酸化物としてハイドロタルサイト(戸田工業社製ハイドロタルサイト、平均粒子サイズ0.15μm、Mg/Alモル比2.7、BET表面積18m2/g)20部、エチレングリコール80部を入れ内容物を130℃で10分間加熱した。ハイドロタルサイトを含むエチレングリコール溶液は高粘度のペースト状になった。また、ハイドロタルサイトの層間距離はX線回析による測定によると、エチレングリコール中で加熱することにより7.5Åから8.4Åに広がっていた。
【0028】
温度計、攪拌機、留出用冷却管を具備した反応容器にイソフタル酸ジメチル194部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール236部と上記のハイドロタルサイト/エチレングリコール溶液(2/8重量比)24.8部、反応触媒としてテトラブチルチタネート0.068部を仕込み、180℃まで昇温した。エステル交換反応によるメタノールの溜出を続けながら、230℃まで昇温する間にエステル交換反応を終了した。その後、系内を徐々に減圧し、最終的に0.3mmHgに達した。その時の温度は260℃を保持させた。このようにして、ハイドロタルサイトを2重量%含有するポリエステル樹脂組成物を得た。
【0029】
ポリエステルの組成を1H−NMRにより分析した。得られた組成物をフェノール/テトラクロロエタン(6/4重量比)に溶解し、還元粘度を測定した。また、得られた組成物をメチルエチルケトン/トルエン(=1/1重量比)に溶解し、二軸延伸ポリプロピレンフィルム上に塗布および乾燥し、プロピレンフィルムより剥がし取り、樹脂組成物自身の塗膜を得た。塗膜の還元粘度、ガラス転移温度、50%モジュラス、保存弾性率、溶液安定性、水蒸気バリア性を評価した。結果を表1に示す。
【0030】
(実施例2)
実施例1と同様に、ただし、実施例1で用いたハイドロタルサイト/エチレングリコール(2/8)溶液6.2部とエチレングリコール15部を用いてハイドロタルサイトを0.5重量%含有するポリエステル樹脂組成物を得た。実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0031】
(実施例3)
温度計、攪拌機、留出用冷却管を具備した反応容器に実施例1で用いたハイドロタルサイト19.8部とエチレングリコール40部を仕込み、150℃で10分間攪拌した。更にイソフタル酸ジメチル194部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール236部、反応触媒としてテトラブチルチタネート0.068部を仕込み、実施例1と同様にエステル交換反応、重縮合反応を行い8重量%のハイドロタルサイトを含有するポリエステル組成物を得た。実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0032】
(比較例1)
ハイドロタルサイトを用いることなく実施例1と同様の組成を有するポリエステル樹脂を得た。実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
【0033】
(比較例2)
比較例1のポリエステル樹脂溶液(溶媒:メチルエチルケトン/トルエン=1/1重量比)にハイドロタルサイトを固形比で100対2の割合で混合し、ガラスビーズを添加しペイントシェーカーで6時間振盪分散を行った。この分散液から実施例1と同様に乾燥塗膜を得た。実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
【0034】
(比較例3、4)
実施例1と同様に、ただし、ハイドロタルサイト/エチレングリコール分散物の濃度を変更してハイドロタルサイトの含有量の異なるポリエステル組成物を得た。比較例3と4はハイドロタルサイトの含有量が本発明の範囲外になる。実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。比較例4は得られた塗膜が非常に脆く、50%モジュラスと水蒸気バリア性を測定することが出来なかった。
【0035】
(比較例5)
温度計、攪拌機、留出用冷却管を具備した反応容器に実施例1で用いたハイドロタルサイト19.8部と3−メチル−1,5−ペンタンジオール40部を仕込み、150℃で10分間攪拌した。更にイソフタル酸ジメチル194部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール236部、反応触媒としてテトラブチルチタネート0.068部を仕込み、実施例1と同様にエステル交換反応、重縮合反応を行い2重量%のハイドロタルサイトを含有するポリエステル組成物を得た。
実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
(実施例4、5、6)
表2に記載した層状複水酸化物2部、エチレングリコール124部、テレフタル酸166部、反応触媒としてテトラブチルチタネート0.068部を、温度計、攪拌機、留出用冷却管を具備した反応容器に仕込み、加圧下でエステル化反応を実施した。その間に温度は230℃まで上げた。温度が200℃を越える頃から溶融物は透明になった。その後系内を徐々に減圧し、最終的に0.5mmHgに達した。その時の温度は270℃を保持させた。このようにして層状複水酸化物を1重量%含有する高粘度のポリエチレンテレフタレート(PET)組成物を得た。
【0038】
得られた組成物をフェノール/テトラクロロエタンに溶解し、還元粘度を測定した。また、熱プレス法(ヒートプレスでポリエステル樹脂組成物を280℃に加熱溶融し、0.2mm厚のフッ素系樹脂フィルムの間で圧力をかけて薄くした後、水で急冷固化し厚み約25μmのフィルム状樹脂組成物を得る方法)によって得られたフィルムの酸素バリア性を測定した。層状複水酸化物による酸素バリア効果を、層状複水酸化物含有による酸素透過量の減少比として表2に記載した。
【0039】
(比較例6、7、8)
表2に記載した層状複水酸化物2部、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート254部、反応触媒としてテトラブチルチタネート0.068部を、温度計、攪拌機、留出用冷却管を具備した反応容器に仕込み、系内の温度を230℃まで上げた。その後系内を徐々に減圧し、最終的に0.5mmHgに達した。その時の温度は270℃を保持させた。このようにして層状複水酸化物を1%含有する高粘度のポリエチレンテレフタレート(PET)組成物を得た。ただし、層状複水酸化物は分散不良で、肉眼でも観察できる塊になっていた。実施例4と同様に評価した。結果を表2に示す。なお、実施例5と比較例6、実施例6と比較例7、実施例7と比較例8はそれぞれ同じ層状複水酸化物を用いた。
【0040】
【表2】
【0041】
表1、2より明らかなように、ポリエステルの重縮合時に層状複水酸化物を添加した実施例1〜6は、層状複水酸化物を含まない比較例1や重縮合が終了してから単に配合しただけの比較例2、層状複水酸化物含有量が特許請求の範囲外の比較例3、4、エチレングリコールを使わない比較例5、6、7、8に比べて、外観、強度、弾性率、ガスバリア性が飛躍的に向上していることがわかる。
【0042】
【発明の効果】
本発明により機械的強度、硬度、剛性、ガスバリア性等が改善されたポリエステル樹脂組成物を得ることが出来る。この組成物は、ガスバリア性が向上し、包装材料として使用できる。また硬化剤と配合し、剛性を増すことにより、接着性に優れた接着剤を得ることができる。また、硬化剤と配合し鋼板へ塗布すれば、硬度が増すことにより耐擦傷性等に優れた塗装鋼板を得ることが出来る。
Claims (2)
- ポリエステル樹脂及びポリエステル樹脂100重量部に対し0.1〜10重量部の層状複水酸化物からなる組成物の製造方法において、エチレングリコールにより膨潤した層状複水酸化物をポリエステル樹脂の重合工程において重縮合が完了するまでの任意の段階で配合した後、ポリエステル樹脂の重縮合を完了せしめることを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1記載の方法により製造されたポリエステル樹脂組成物。
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