JP2005026455A - 処理方法及び処理装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数の材料(Pb,Zr,Ti)の各々を溶媒に溶解して所定の異なる濃度の複数の液体材料を準備する。複数の液体材料を略等しい流量で気化器40,46,52に供給する。複数の液体材料の各々は、等しい流量で供給されることにより、単位時間当たりに処理室22に供給する複数の材料の物質量が処理に要求される所定の比率となるような混合比で混合される。気化した材料をシャワーヘッド24を介して処理チャンバ22に供給してPZT膜を生成する。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は処理方法及び処理装置に係わり、特に複数種類の液体原料を気化して処理装置に供給しながら基体を処理する処理方法及び処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プレーナスタック型FeRAMのメモリキャパシタ材としてPZT膜の使用が注目されており、高品質なPZT膜を短時間で生成する技術の開発が進められている。
【0003】
多元系金属酸化物薄膜であるPZT膜は、Pb(Zr1−xTix)O3のペロブスカイト構造の結晶膜である。PZT膜は、一般に、有機金属材料のガスと酸化剤として例えばNO2とをCVD装置により反応させて基体上に堆積させることにより生成される。有機金属材料としては、例えばPb(DPM)2、Zr(O−i−Pr)2(DPM)2又はZr(O−i−Pr)(DPM)3又はZr(DPM)4、及びTi(O−i−Pr)2(DPM)2の組合せが用いられる。
【0004】
有機金属材料は気体の状態でCVD装置に供給されるが、材料そのものとしては室温において固体である。したがって、有機金属材料をCVD装置に供給するためには、有機金属材料を気体に変換する必要がある。有機金属材料を気体に変換する方法として、固体昇華法と溶液気化法がある。
【0005】
固体昇華法は、固体状態の有機金属材料を加熱して昇華により気体状態の有機金属材料を得る方法である。一方、溶液気化法は、有機金属材料を溶媒で溶かして液体原料を準備し、この液体原料を気化器により気化させて気体状態の有機金属材料を得る方法である(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
図1は溶液気化法を用いたガス供給装置の概略構成図である。図1に示すガス供給装置は、PZT膜をウェハ上に堆積させるためのCVD装置のシャワーヘッドに気化した原料を供給するための装置である。
【0007】
PZT膜を生成するには、上述のように、Pb(DPM)2(以下Pb原料と称する)のガス、Zr(O−i−Pr)2(DPM)2又はZr(O−i−Pr)(DPM)3又はZr(DPM)4(以下Zr原料と称する)のガス、及びTi(O−i−Pr)2(DPM)2(以下Ti原料と称する)のガスをCVD装置の処理チャンバに設けられたシャワーヘッドに供給する。上記原料ガスは、酢酸ブチルのような溶媒に溶解された溶液としてのPb原料、Zr原料、Ti原料を気化器10に供給することにより気化して原料混合ガスとして生成され、CVD装置に供給される。
【0008】
すなわち、溶液としてのPb原料はPb原料タンク2Aに貯蔵され、供給配管4Aを介して気化器10に供給される。供給配管4Aには、液体流量制御器である液体マスフローコントローラ(LMFC)6Aが設けられる。溶液としてのZr原料はZr原料タンク2Bに貯蔵され、供給配管4Bを介して気化器10に供給される。供給配管4Bには、液体流量制御器である液体マスフローコントローラ(LMFC)6Bが設けられる。溶液としてのTi原料はTi原料タンク2Cに貯蔵され、供給配管4Cを介して気化器10に供給される。供給配管4Cには、液体流量制御器である液体マスフローコントローラ(LMFC)6Cが設けられる。
【0009】
原料タンク2A,2B,2Cから気化器10に個別に供給されたPb原料、Zr原料、Ti原料は、気化器10内で気化され且つ混合される。また、気化器10には原料の搬送用ガスとして、HeやAr等の不活性ガスも供給される。
【0010】
気化器10内は200℃程度の温度に維持されており、気化器10内に噴霧された原料溶液は気化器10内で気化し、原料ガス供給配管12を介してCVD装置のシャワーヘッドへ供給される。また、気化器10からCVD装置の排気系へ直接接続されるバイパス配管14が気化器10の出口付近に接続される。
【0011】
ここで、Pb原料、Zr原料、Ti原料は、各々同じ濃度(例えば0.5mol/L)の溶液として、Pb原料タンク2A、Zr原料タンク2B、Ti原料タンク2Cに貯蔵されている。液体原料の比率が被処理体への成膜処理に要求される所定の比率となるように液体マスフローコントローラ6A,6B,6Cにより液体原料の流量を制御する。
【0012】
なお、Pb原料、Zr原料、Ti原料のうち、一つの原料(Pb原料)の溶液を気化してシャワーヘッドに供給する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0013】
【特許文献1】
特開2001−68465号公報
【0014】
【特許文献2】
特開2000−260766号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
PZT膜を上述のようなガス供給装置を有する成膜装置で生成する場合、混合液体原料を気化して生成した処理ガス中の原料の混合比は、生成されたPZT膜の電気的特性に大きく影響を及ぼす。したがって、処理に要求される所定の比率になるように液体原料の流量を精度よく制御する必要がある。
【0016】
上述のPZT成膜処理において、電気特性の良好なPZT膜を生成するための混合比を得ることのできる液体原料の流量は、例えばPb原料が0.15ml/min、Zr原料が0.10ml/min、Ti原料が0.20ml/minである。ここで、使用した液体原料の濃度は、Pb原料、Zr原料、Ti原料ともに、0.50mol/Lである。
【0017】
液体マスフローコントローラ6A,6B,6Cのフルスケール(最大流量)は全て等しく、例えば0.5ml/minである。フルスケールが0.5ml/minの液体マスフローコントローラの最小制御流量は、通常0.01ml/minである。
【0018】
したがって、Zr原料に関してみると、Zr原料の流量0.10ml/minは、液体マスフローコントローラのフルスケールの5分の1である。すなわち、Zr原料の設定流量を上述のように0.10ml/minとすると、液体マスフローコントローラの最小制御流量0.01ml/minは10%に相当し、Zr原料の流量は設定流量に対して10%程度の大きな変動があることとなる。したがって、Zr原料の流量が0.01ml/min変動すると、PZT膜の組成が変化し、電気的特性が劣化してしまうという問題がある。
【0019】
また、上述の3つの原料の原料タンクは同じ容量のものが使用されており、原料の使用量(流量)の違いにより、原料タンクの交換時期に違いがある。すなわち、原料タンクの各々が空になるまでの時間はまちまちで、一つの原料タンクが空になった時点(又は空になる直前)で交換する必要があり、そのたびに装置の運転を停止しなければならない。
【0020】
また、最も使用量の多い原料(ここではTi原料)の容器を頻繁に交換しなければならず、逆に使用量の少ない原料(ここではZr原料)の容器は交換時期が長いため、原料が経時劣化を起こすおそれがある。
【0021】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、混合比を所定の値に維持したまま複数の原料の流量を一定とすることができ、且つ流量制御器の最小制御流量での流量変動が生成物の組成に大きな影響を与えないような処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0023】
請求項1記載の発明は、複数の材料を気体の状態で処理室内へ供給して被処理体を処理する処理方法であって、複数の材料の各々を溶媒に溶解して所定の異なる濃度の複数の液体材料を準備し、該複数の液体材料の各々について、単位時間当たりに処理室に供給する複数の材料の物質量が、処理に要求される所定の比率となるように、前記複数の液体材料の各々をほぼ同じ流量で供給して気化し、気化により生成した複数の材料を前記処理室に供給することを特徴とするものである。
【0024】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の処理方法であって、前記複数の液体材料の各々を同じ流量で供給することを特徴とするものである。
【0025】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の処理方法であって、前記液体材料の流量を液体流量制御器により一定に制御し、前記液体材料の流量を、該液体流量制御器の流量制御範囲の最大値に対して72%〜100%に設定することを特徴とするものである。
【0026】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の処理方法であって、前記複数の材料は3種類以上の金属元素を含むことを特徴とするものである。
【0027】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の処理方法であって、前記複数の材料は、Pb原料、Zr原料及びTi原料であり、前記被処理体上にPZT膜を生成することを特徴とするものである。
【0028】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の処理方法であって、前記複数の材料の少なくとも一つは、2種類以上の金属元素を混合した混合原料であることを特徴とするものである。
【0029】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の処理方法であって、前記複数の材料は、Pb原料とTi原料の混合原料と、Pb原料とZr原料とTi原料の混合原料とを含み、前記被処理体上にPZT膜を生成することを特徴とするものである。
【0030】
請求項8記載の発明は、請求項1記載の処理方法であって、前記複数の材料は有機金属原料であり、前記溶媒は酢酸ブチル、テトラヒドラフラン(THF)、オクタン、ヘキサン、アルコールよりなる群から選定され、有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いて前記被処理体上に膜を形成することを特徴とするものである。
【0031】
請求項9記載の発明は、複数の材料を気体の状態で処理室内へ供給して被処理体を処理する処理装置であって、複数の材料の各々を溶媒に溶解して生成した複数の液体材料が貯蔵される複数の液体材料貯蔵タンクと、該液体材料貯蔵タンクの各々の下流に配置され、前記液体材料の各々がほぼ同じ流量になるように流量制御する液体流量制御器と、前記液体材料を気化する気化器と、該気化器から供給された気体状の材料により被処理体を処理する処理室とを有し、前記複数の液体材料貯蔵タンクに貯蔵される前記複数の液体材料の濃度は、処理に要求される所定の比率となるように予め設定されていることを特徴とするものである。
【0032】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の処理装置であって、前記複数の液体流量制御器は等しい流量制御範囲を有することを特徴とするものである。
【0033】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の処理装置であって、前記複数の液体材料貯蔵タンクは等しい容積を有することを特徴とするものである。
【0034】
請求項12記載の発明は、請求項11記載の処理装置であって、前記複数の液体流量制御器と前記複数の液体材料貯蔵タンクの対が3対以上設けられたことを特徴とするものである。
【0035】
請求項13記載の発明は、請求項9記載の処理装置であって、前記複数の材料は、Pb原料、Zr原料及びTi原料であり、前記被処理体上にPZT膜を生成することを特徴とするものである。
【0036】
請求項14記載の発明は、請求項9記載の処理装置であって、前記複数の材料は有機金属原料であり、前記溶媒は有機溶媒であることを特徴とするものである。
【0037】
請求項15記載の発明は、請求項14記載の処理装置であって、有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いて前記被処理体上に膜を形成することを特徴とするものである。
【0038】
上述の本発明によれば、各液体材料の流量を略等しい値とし、処理に要求される所定の比率となるよう、予め各液体材料タンクに貯蔵されている液体材料の濃度を所定の値としておく。すなわち、従来のように等しい濃度の液体材料の流量を調節することにより所望の混合比を得るのではなく、予め各液体材料の濃度を調整しておき、各液体材料が互いに略等しい流量で供給されたときに所定の最適な混合比を得る。これにより、液体材料の各々の流量を制御する液体流量制御器の各々のフルスケール(流量制御範囲の最大値)を等しくしても、フルスケールに対して設定流量が大幅に小さくなることはなく、設定流量を流量制御精度の高い範囲とすることができる。したがって、液体材料の混合比を精度よく制御することができ、高品質の処理を行うことができる。
【0039】
また、複数の液体材料の各々の使用量が等しくなるため、複数の液体材料貯蔵タンクの交換(液体材料の補充)を同時に行うことができ、処理装置の運転を停止する回数が低減する。したがって、処理装置の稼動率を改善することができる。
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0040】
図2は本発明による処理方法を用いてPZT膜を生成するためのPZT成膜装置の全体構成図である。図2に示すPZT成膜装置は、処理チャンバ22、シャワーヘッド24、排気トラップ26、真空ポンプ28及びガス供給装置30を有する。
【0041】
処理チャンバ22内にはウェハWを載置するための載置台22aが設けられる。載置台22aにはヒータが埋め込まれており、載置台22aに載置されたウェハWを所定の処理温度に加熱する。処理チャンバ22は排気配管22bを介して排気トラップ26に接続され、さらに真空ポンプ28に接続されている。排気トラップ26及び真空ポンプ28により処理チャンバ22内のガスを排気して所定の真空度に維持する。
【0042】
シャワーヘッド24は、載置台22aに対向した状態で処理チャンバ22の上部に設けられており、処理ガスとして原料ガス及び酸化ガスを混合して処理チャンバ22内に供給する。なお、図2において酸化ガスの供給系路は省略されている。
【0043】
図2に示すガス供給装置30は、シャワーヘッド24に原料ガスを供給するための装置である。ガス供給装置30は、溶媒に溶解されたPb原料(材料)を貯蔵するPb溶液原料タンク32と、溶媒に溶解されたZr原料(材料)を貯蔵するZr溶液原料タンク34と、溶媒に溶解されたTi原料(材料)を貯蔵するTi溶液原料タンク36とを有する。本実施例では溶媒として酢酸ブチルが用いられる。ここで、Pb溶液原料はPb原料を溶媒である酢酸ブチルに溶解して生成された液体材料であり、Zr溶液原料はZr原料を溶媒である酢酸ブチルに溶解して生成された液体材料であり、Ti溶液原料はTi原料を溶媒である酢酸ブチルに溶解して生成された液体材料である。
【0044】
Pb溶液原料タンク32にはHeやAr等の不活性ガスよりなる圧送ガスが供給され、その圧力によりPb溶液を液体用マスフローコントローラ(LMFC)38を介してPb用気化器40に供給する。Pb用気化器40にはマスフローコントローラ(MFC)42を介してHeやAr等の不活性ガスよりなるキャリアガスが供給される。Pb用気化器40に供給されたPb溶液は、Pb用気化器40内でキャリアガスにより気化され、気体となったPb原料がシャワーヘッド24に供給される。
【0045】
Zr溶液原料タンク34には圧送ガスが供給され、その圧力によりZr溶液を液体用マスフローコントローラ(LMFC)を44介してZr用気化器46に供給する。Zr用気化器46にはマスフローコントローラ(MFC)48を介してキャリアガスが供給される。Zr用気化器46に供給されたZr溶液は、Zr用気化器46内でキャリアガスにより気化され、気体となったZr原料がシャワーヘッド24に供給される。
【0046】
Ti溶液原料タンク36には圧送ガスが供給され、その圧力によりTi溶液を液体用マスフローコントローラ(LMFC)を50介してTi用気化器52に供給する。Ti用気化器52にはマスフローコントローラ(MFC)54を介してキャリアガスが供給される。Ti用気化器52に供給されたTi溶液は、Ti用気化器52内でキャリアガスにより気化され、気体となったTi原料がシャワーヘッド24に供給される。
【0047】
ここで、Pb溶液原料タンク32、Zr溶液原料タンク34、Ti溶液原料タンク36に貯蔵されているPb溶液原料、Zr溶液原料、Ti溶液原料は、同じ流量で供給したときにシャワーヘッド24内において処理に要求される所定の混合比となるように、予め決められた濃度に調整されている。本実施例では、液体用マスフローコントローラ38,44,50が全て0.40ml/minの流量となるように設定される。このように、Pb溶液原料、Zr溶液原料、Ti溶液原料を全て同じ流量とする場合、Pb溶液原料タンク32に貯蔵されるPb溶液原料の濃度は0.1875mol/Lであり、Zr溶液原料タンク34に貯蔵されるZr溶液原料の濃度は0.125mol/Lであり、Ti溶液原料タンク36に貯蔵されるTi溶液原料の濃度は0.25mol/Lである。
【0048】
気化器40,46,52に供給された各溶液原料は、気化室内に噴霧される。気化室は200℃程度の温度に維持されており、噴霧された溶液原料は気化室内で気化して原料ガスとなる。原料ガスは、原料ガス供給配管41,47,53を介してシャワーヘッド24に供給され、PZT膜の生成処理に用いられる。
【0049】
原料ガス供給配管の途中には、バイパス配管56が接続され、気化器40,46,52で生成した原料ガスを使用しないときに、シャワーヘッド24及び処理チャンバ22を迂回して直接排気トラップ26に原料ガスを排気する。原料ガス供給配管41,47,53とバイパス配管56との切り替えは、原料ガス供給配管41,47,53に設けられた開閉弁41a,47a,53aとバイパス配管56に設けられた開閉弁56aとにより制御される。
【0050】
以上のような構成のPZT成膜処理装置において、液体マスフローコントローラ38,44,50及びその他の構成部品は、コンピュータ等よりなる制御器(図示せず)から供給されるCVD制御信号により制御され、PZTの成膜処理が行われる。
【0051】
図3は本発明による処理方法を用いてPZT膜を生成するためのPZT成膜装置の他の例を示す全体構成図である。図3に示すCVD装置はPZT膜をウェハ上に堆積させるための装置であり、ガス供給装置以外の基本的な構成は図2に示すCVD装置と同様であり、その説明は省略する。
【0052】
図3に示すガス供給装置60は、図2に示すガス供給装置30と同様に、溶媒に溶解されたPb原料を貯蔵するPb溶液原料タンク32と、溶媒に溶解されたZr原料を貯蔵するZr溶液原料タンク34と、溶媒に溶解されたTi原料を貯蔵するTi溶液原料タンク36とを有する。
【0053】
Pb溶液原料タンク32には圧送ガスが供給され、その圧力によりPb溶液を液体用マスフローコントローラ(LMFC)38を介して気化器62に供給する。また、Zr溶液原料タンク34には圧送ガスが供給され、その圧力によりZr溶液を液体用マスフローコントローラ(LMFC)44を介して気化器62に供給する。さらに、Ti溶液原料タンク36には圧送ガスが供給され、その圧力によりTi溶液を液体用マスフローコントローラ(LMFC)50を介して気化器62に供給する。すなわち、Pb溶液、Zr溶液及びTi溶液は、全て一つの気化器62に供給される。
【0054】
気化器62にはマスフローコントローラ(MFC)64を介してキャリアガスが供給される。気化器62に供給されたPb溶液、Zr溶液及びTi溶液は、気化器62内でキャリアガスにより気化され、気体となったPb原料、Zr原料及びTi原料が混合原料ガスとしてガス供給配管66を介してシャワーヘッド24に供給される。
【0055】
ここで、本実施の形態では、上述のように各溶液原料の流量を略等しい値とし、ガス供給装置30,60から供給される原料ガスが処理に要求される所定の混合比となるよう、予め各溶液原料タンクに貯蔵されている溶液原料の濃度を所定の値としておく。すなわち、従来のように等しい濃度の溶液原料の流量を調節することにより所定の最適な混合比を得るのではなく、予め各溶液原料の濃度を調整しておき、各溶液原料が互いに略等しい流量で供給されたときに所定の最適な混合比を得る。
【0056】
また、本実施の形態では、各溶液原料の流量を、液体マスフローコントローラのフルスケール(流量制御範囲の最大値)である0.5ml/minに近い値の0.4ml/minに設定する。これにより、設定流量(0.4ml/min)に対する液体マスフローコントローラの最小制御流量(0.01ml/min)は2.5%となり、流量変動の値を相対的に小さくすることができる。
【0057】
ここで、液体マスフローコントローラのフルスケールと設定流量の上限・下限値との関係に関して考察する。
【0058】
上述のように、液体マスフローコントローラのフルスケールが0.5ml/minであるとし、また、市販の液体マスフローコントローラの流量制御精度は、メーカーカタログ値を参考にすると、通常±2%である。このように、フルスケールが、0.5ml/minで精度が±2%の液体マスフローコントローラでは、±0.01ml/minの流量誤差(あるいは流量変動)が生じると考えられる。図4は設定流量に対する流量誤差をプロットしたグラフである。図4に示すように、設定流量をフルスケールの0.5ml/minとした場合は、流量誤差の0.01ml/minは2%に相当する。また、設定流量をフルスケールの半分の0.25ml/minとした場合は、流量誤差の0.01ml/minは4%に相当する。さらに、設定流量をフルスケールの1/5の0.1ml/minとした場合は、流量誤差の0.01ml/minは10%に達する。
【0059】
ここで、実際にTi溶液原料の流量を0.25ml/min付近で変化させた場合に、生成されるPZT膜の電気的特性の変化に関して説明する。PZT成膜に用いる3種類の溶液原料のうち、Ti原料の比率が変化するとPZT膜の電気的特性に影響を及ぼすことが知られている。図5はTi溶液原料の流量を0.25ml/min付近で変化させた場合に、生成されるPZT膜の電気的特性の変化を示すグラフである。ここで、PZT膜の電気的特性を表す値として、電圧値5Vのときの2Pr(μC/cm2)の値を用いている。図5のグラフから、2Prの変化量を±5%以内に抑えるためには、Ti溶液原料の流量制御精度を±0.007ml/min以内としなければならないことがわかる。この流量±0.007ml/minは、0.25ml/minに対して±2.8%に相当する。
【0060】
そこで、±2.8%の流量誤差が生じるときの設定流量を図4に示すグラフにより求める。図6は図4に示すグラフに2.8%の流量誤差を追記したグラフである。図6に示すように、2.8%の流量誤差が生じる設定流量は0.357ml/minである。
【0061】
したがって、設定流量を0.36ml/min以上とすれば流量誤差は±2.8%以内に収まることとなる。言い換えると、流量誤差を±2.8%以内とするには、設定流量を0.36ml/min〜0.5ml/min(フルスケール)とすればよいこととなる。0.36ml/minの設定流量はフルスケールの72%に相当する。よって、設定流量をフルスケールの72%〜100%とすれば、流量誤差を2.8%以下に抑えることができ、したがって、生成されるPZT膜の電気的特性の変化量(劣化)を±5%の許容範囲内に抑えることができる。
【0062】
なお、上述の実施例では、Pb原料、Zr原料、Ti原料を個別に供給して気化する構成に関して説明したが、2種類以上の液体原料を混合した液体混合原料(カクテル原料と称される)を用いることもできる。例えば、Pb原料とTi原料の混合原料と、Pb原料とZr原料とTi原料の混合原料とを用い、PTO核付けの際には、Pb原料とTi原料の混合原料を用い、PZT成膜の際にはPb原料とZr原料とTi原料の混合原料を用いる。
【0063】
また、本発明はPZT成膜に限ることなく、例えばSr原料、Bi原料、Ta原料を混合して処理するSBT成膜にも適用することができる。
さらに、本発明は 複数の有機金属原料と有機溶媒を用い、有機金属化学気相成長法(MOCVD)により膜を生成する処理装置にも適用することができる。用いる有機溶媒としては、酢酸ブチル、テトラヒドラフラン(THF)、オクタン、ヘキサン、アルコール等が挙げられるが、これ等以外の有機溶媒を用いることもできる。
【発明の効果】
上述の如く本発明によれば、混合比を所定の値に維持したまま複数の原料の流量を一定とすることができ、且つ流量制御器の最小制御流量での流量変動が生成物の組成に大きな影響を与えないような処理方法及び処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶液気化法を用いたガス供給装置の概略構成図である。
【図2】本発明による処理方法を用いてPZT膜を生成するためのPZT成膜装置の全体構成図である。
【図3】本発明による処理方法を用いてPZT膜を生成するためのPZT成膜装置の別の例を示す全体構成図である。
【図4】設定流量に対する流量誤差をプロットしたグラフである。
【図5】Ti溶液原料の流量を0.25ml/min付近で変化させた場合に、生成されるPZT膜の電気的特性の変化を示すグラフである。
【図6】図4に示すグラフに2.8%の流量誤差を追記したグラフである。
【符号の説明】
22 処理チャンバ
24 シャワーヘッド
26 排気トラップ
28 真空ポンプ
30,60 ガス供給装置
32 Pb溶液原料タンク
34 Zr溶液原料タンク
36 Ti溶液原料タンク
38,44,50 液体用マスフローコントローラ
42,48,54,64 マスフローコントローラ
40,46,52,62 気化器
Claims (15)
- 複数の材料を気体の状態で処理室内へ供給して被処理体を処理する処理方法であって、
複数の材料の各々を溶媒に溶解して所定の異なる濃度の複数の液体材料を準備し、
該複数の液体材料の各々について、単位時間当たりに処理室に供給する複数の材料の物質量が、処理に要求される所定の比率となるように、前記複数の液体材料の各々をほぼ同じ流量で供給して気化し、
気化により生成した複数の材料を前記処理室に供給することを特徴とする処理方法。 - 請求項1記載の処理方法であって、
前記複数の液体材料の各々を同じ流量で供給することを特徴とする処理方法。 - 請求項1記載の処理方法であって、
前記液体材料の流量を液体流量制御器により一定に制御し、
前記液体材料の流量を、該液体流量制御器の流量制御範囲の最大値に対して72%〜100%に設定することを特徴とする処理方法。 - 請求項1記載の処理方法であって、
前記複数の材料は3種類以上の金属元素を含むことを特徴とする処理方法。 - 請求項4記載の処理方法であって、
前記複数の材料は、Pb原料、Zr原料及びTi原料であり、前記被処理体上にPZT膜を生成することを特徴とする処理方法。 - 請求項1記載の処理方法であって、
前記複数の材料の少なくとも一つは、2種類以上の金属元素を混合した混合原料であることを特徴とする処理方法。 - 請求項6記載の処理方法であって、
前記複数の材料は、Pb原料とTi原料の混合原料と、Pb原料とZr原料とTi原料の混合原料とを含み、前記被処理体上にPZT膜を生成することを特徴とする処理方法。 - 請求項1記載の処理方法であって、
前記複数の材料は有機金属原料であり、前記溶媒は酢酸ブチル、テトラヒドラフラン(THF)、オクタン、ヘキサン、アルコールよりなる群から選定され、有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いて前記被処理体上に膜を形成することを特徴とする処理方法。 - 複数の材料を気体の状態で処理室内へ供給して被処理体を処理する処理装置であって、
複数の材料の各々を溶媒に溶解して生成した複数の液体材料が貯蔵される複数の液体材料貯蔵タンクと、
該液体材料貯蔵タンクの各々の下流に配置され、前記液体材料の各々がほぼ同じ流量になるように流量制御する液体流量制御器と、
前記液体材料を気化する気化器と、
該気化器から供給された気体状の材料により被処理体を処理する処理室と
を有し、
前記複数の液体材料貯蔵タンクに貯蔵される前記複数の液体材料の濃度は、処理に要求される所定の比率となるように予め設定されていることを特徴とする処理装置。 - 請求項9記載の処理装置であって、
前記複数の液体流量制御器は等しい流量制御範囲を有することを特徴とする処理装置。 - 請求項10記載の処理装置であって、
前記複数の液体材料貯蔵タンクは等しい容積を有することを特徴とする処理装置。 - 請求項11記載の処理装置であって、
前記複数の液体流量制御器と前記複数の液体材料貯蔵タンクの対が3対以上設けられたことを特徴とする処理装置。 - 請求項9記載の処理装置であって、
前記複数の材料は、Pb原料、Zr原料及びTi原料であり、前記被処理体上にPZT膜を生成することを特徴とする処理装置。 - 請求項9記載の処理装置であって、
前記複数の材料は有機金属原料であり、前記溶媒は有機溶媒であることを特徴とする処理装置。 - 請求項14記載の処理装置であって、
有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いて前記被処理体上に膜を形成することを特徴とする処理装置。
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