JP2005023336A - プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】亜鉛系めっき表面にリン酸亜鉛を主体とするリン酸塩皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板において、前記リン酸塩皮膜は、該皮膜を構成するリン酸亜鉛を主体とするリン酸塩結晶が存在する部分の面積は全表面の30〜80%である。リン酸塩結晶を微視的な領域に不連続に存在させることにより、不連続に存在したリン酸塩結晶間に十分なスペースができ、潤滑油保持能を高めることができる。またリン酸塩結晶が微視的な領域に不連続に存在していることによってプレス成形時の結晶個々の変形に対する自由度が高くなり、リン酸塩皮膜の破壊が生じにくくなる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車車体等の用途に使用されるプレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来鋼板をプレス成形する際には、プレス油、またはワックス等を含有した比較的粘度の高い潤滑油が広く一般的に使用されている。又、防錆性を高めるために鋼板表面に亜鉛含有金属のめっきを施した鋼板(以下、亜鉛系めっき鋼板と称する)をプレス等により成形したのち使用される場合が増加しつつある。
【0003】
ところが亜鉛系めっき鋼板はめっき層に含有される亜鉛が比較的柔らかく且つ融点も低いため、プレス成形の際に金型に亜鉛が凝着し易い性質を有しており、通常のプレス油等による潤滑では鋼板上のめっきと金型とのかじりを防止することが困難である。
【0004】
近年、自動車車体等の製造工程においては、生産性を向上し、製造コストを低減するために、従来になく高速でプレス加工が行われている。また、複雑な形状の部品を一体プレスで成形することにより、組み立て工程を簡略化し、製造コストの低減を計るといったニーズが強まり、ますますプレス油、潤滑油などの従来技術による潤滑方法のみでは前述のプレス成形への対応が困難となっている。
【0005】
一方、自動車車体等の防錆性を高めることを目的として亜鉛系めっき鋼板の自動車車体などに対する使用比率はますます増加する傾向にあり、前述の複雑な形状の部品(以下、難成形部品)等のプレス成形性の改良が重要となっている。その改善方法として、亜鉛めっき上にリン酸亜鉛を主体とするリン酸塩皮膜を形成させる技術が知られているが、特許文献1には、リン酸亜鉛皮膜に、さらに鉄、コバルト、ニッケル、カルシウム、マグネシウム、マンガンの内の1種以上を含有させるリン酸亜鉛複合皮膜とすることで、結晶水の脱水による吸熱ピーク温度を高温側にシフトさせてリン酸亜鉛複合皮膜の耐熱性を向上させることにより、高速プレス成形性に優れた亜鉛含有めっき鋼板複合体が得られることが開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1に開示されるリン酸亜鉛複合皮膜では、難成形部品のプレス成形における高面圧、曲げ戻し変形条件下では、金型による強いせん断変形によってリン酸亜鉛複合皮膜(リン酸塩皮膜)の剥離が生じ、皮膜特性が発現されない場合が多い。
【0007】
以下に先行技術文献情報について記載する。
【0008】
【特許文献1】
特開平07−138764号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板、特に難成形部品へのプレス成形に対応しうるプレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこれらの諸問題を解決すべくリン酸塩結晶中の成分や存在形態など鋭意検討を重ねた結果、亜鉛系めっき鋼板の表面にリン酸塩結晶を微視的な領域に不連続に存在させることにより、著しくプレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づくものである。
【0011】
上記課題を解決する本発明の手段は以下の通りである。
【0012】
(1)亜鉛系めっき表面にリン酸亜鉛を主体とするリン酸塩皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板において、前記リン酸塩皮膜は、該皮膜を構成するリン酸亜鉛を主体とするリン酸塩結晶が存在する部分の面積は全表面の30〜80%であることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板。
【0013】
(2)前記リン酸塩皮膜の付着量は0.2〜3g/m2であることを特徴とする(1)記載の亜鉛系めっき鋼板。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
リン酸塩皮膜の潤滑作用自体は公知である。亜鉛系めっき鋼板にリン酸と亜鉛からなる単純なリン酸亜鉛皮膜を形成することで、通常のプレス成型性を評価する単純な形状の成形を行う深絞り試験においては、リン酸亜鉛皮膜の潤滑作用によって十分実用に耐えうるプレス成形性を発現できる。
【0015】
しかし、従来の前記リン酸亜鉛皮膜では、難成形部品の特に面圧の高いビード部で、かじりが生じ材料の流入が阻害され、プレス割れとなる場合があった。この理由は次のように考えられる。
【0016】
亜鉛系めっき鋼板、例えば電気亜鉛めっき鋼板にリン酸亜鉛皮膜を形成させ、高い面圧でプレス成形した場合、強いせん断力が発生する。ここで、軟質な純亜鉛めっき層は容易に変形するが、リン酸亜鉛皮膜はその変形に追随できない。そのためリン酸亜鉛皮膜が破壊されることにより、リン酸亜鉛皮膜本来の潤滑性が損なわれるだけではなく、破壊されたリン酸亜鉛皮膜が摺動により凝集してさらなる抵抗が発生する、あるいは皮膜が破壊された部位において亜鉛と金型の直接接触による亜鉛の凝着などにより、カジリが発生し、ついにはプレス割れに至るものと考えられる。
【0017】
特に、難成形部品のプレス成形においては、ビード部が高面圧となっており、発生する多量の熱により、材料表面温度は高温になりやすい。このとき、潤滑油の粘度が低下し、潤滑油本来の効果が得られにくくなる。さらに高面圧条件下では、強いせん断力が発生するため、リン酸塩皮膜の破壊が起こりやすい。
【0018】
本発明では、亜鉛系めっき鋼板の表面にリン酸亜鉛を主体とするリン酸塩皮膜を不均一に形成させ、リン酸亜鉛を主体とするリン酸塩結晶を微視的な領域に不連続に存在させることが特徴である。前述のリン酸塩結晶を微視的な領域に不連続に存在させることにより、不連続に存在したリン酸塩結晶間に十分なスペースができ、潤滑油保持能を高めることができる。この結果、金型とプレス成形されるめっき鋼板界面に保持できる油量が多くなり、潤滑油本来の性能を発揮することができる。さらに前述のリン酸塩結晶が微視的な領域に不連続に存在していることによってプレス成形時の結晶個々の変形に対する自由度が高くなり、リン酸塩皮膜の破壊が生じにくくなる。その結果、従来技術では達成し得なかった高面圧成形に耐え得るプレス成形性に優れたリン酸塩皮膜を得ることができるものと推定される。
【0019】
リン酸塩結晶と亜鉛結晶は結晶形態が異なるので、走査型電子顕微鏡による表面観察で、リン酸塩結晶が存在する部分、またその面積率を容易に求めることができる。表面観察で、リン酸塩結晶が存在しない部分には亜鉛系めっき結晶が観察される。高面圧で曲げ戻し変形が行われる難成形部品のプレス成形において優れたプレス成形性が発現されるには、リン酸亜鉛を主体とするリン酸塩結晶が存在する部分の面積は全表面の30〜80%の範囲内にあることが必要である。表面観察で、残部表面には亜鉛系めっき結晶が観察される。
【0020】
前述のリン酸塩結晶が存在する部分の面積が30%未満になると、個々のリン酸塩結晶間に十分なスペースができないため、個々のリン酸塩結晶の変形能が低くなり、リン酸塩皮膜の破壊が起こりやすくなるとともに潤滑油保持能が低くなるため、潤滑油本来の性能を発揮できなくなる。また前記面積が80%を超えるとリン酸塩結晶に強いせん断力が負荷され、リン酸塩皮膜の破壊が起こりやすくなる。
【0021】
リン酸塩結晶が不連続であっても、微視的な領域で不連続でないと、リン酸塩結晶が存在する部分でリン酸塩結晶の破壊が起こりやすくなり、またリン酸塩結晶が存在しない部分でプレス金型とめっき皮膜が接触しカジリが発生しやすくなるため、優れたプレス成形性が発現されない。本発明者らは、50μm四方の領域において、リン酸塩結晶が存在する部分が前記で記載した範囲内にあると、優れたプレス成形性が発現されることを確認した。
【0022】
50μm四方の領域において、リン酸塩結晶が存在する部分の面積を30〜80%の範囲内にするには、リン酸塩結晶の成長核となる物質の亜鉛系めっき鋼板表面への吸着を抑制することによって、前記成長核を核として成長したリン酸塩結晶を表面に点在させるのがよい。ここで、「点在する」とは、前記成長核を核として成長したリン酸塩結晶が互いに離間して存在しているものだけでなく、前記成長核を核として成長したリン酸塩結晶結晶同士が部分的に結合して存在しているものを含んでおり、リン酸塩結晶は微視的な領域で不連続状に存在していることを意味している。
【0023】
本発明において基体として用いられる亜鉛系めっき鋼板は、亜鉛、又は亜鉛と他の金属、例えばニッケル、鉄、アルミニウム、マンガン、クロム、鉛、アンチモン等の内から選ばれる少なくとも一種の金属との合金、及び不可避不純物によりめっきされた鋼板から選ばれる。めっき方法にも格別の制限は無く、溶融めっき法、電気めっき法、蒸着めっき法などいずれの方法でもよく、めっき量についても格別の制限も無い。
【0024】
本発明におけるリン酸塩皮膜は、亜鉛以外の金属として鉄、コバルト、ニッケル、カルシウム、マグネシウム、及びマンガンなどを含んでいても良い。
【0025】
前記リン酸塩皮膜の付着量には特に制限はないが、0.2〜3g/m2の付着量で前記亜鉛系めっき鋼板上に形成させることが好ましい。リン酸塩皮膜の付着量が0.2g/m2未満ではプレス成形性が不十分になることがあり、その付着量が3g/m2を超えるとプレス成形時にプレス型内に破壊されたリン酸塩皮膜が堆積し、異物として亜鉛系めっき鋼板表面に押し込まれるため、プレス傷が発生しやすくなることがある。
【0026】
また、リン酸塩皮膜の付着量が前記範囲内にあると、塗膜密着性、塗膜鮮映性、塗装後耐食性などの塗膜品質を損なうことがなく、塗装性に優れるので、塗装用途への使用にも適する。
【0027】
亜鉛系めっき鋼板表面に前記リン酸亜鉛を主体とするリン酸塩皮膜を形成した後、更にその上に潤滑油の層を形成させることが好ましい。潤滑油の付着量が0.2〜2g/m2の塗布量で塗布形成させることが好ましい。塗布される潤滑油の種類には特に制限は無いが、比較的低融点の鉱油、天然油脂、合成エステル油及びワックスの内から選ばれることが好ましい。尚、これらの潤滑油には防錆添加剤、極圧添加剤等の各種添加剤を含んだものも使用できる。潤滑油の塗布量が0.2g/m2未満ではプレス成形性能が不十分になることがあり、2g/m2を超えるとプレス成形性能が飽和に達し、経済的に不利になることがある。
【0028】
本発明で規定するリン酸塩皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造するに際しては、後記するように、表調処理における処理時間の短縮、処理液濃度の低下、処理液スプレー圧の低下等を行うことで、リン酸塩結晶を微視的な領域に不連続に存在させることができるので、短時間で効率的にリン酸塩皮膜を形成でき、製造コストを低減する点からも利点がある。
【0029】
次に、基体である亜鉛系めっき鋼板の表面にリン酸塩結晶を微視的な領域に不連続に存在させる方法について説明する。本発明におけるリン酸塩結晶を微視的な領域に不連続に存在させるための処理方法としては特に制限されるものではないが、好ましい方法としては、亜鉛系めっき鋼板表面へリン酸塩皮膜を形成する工程の前に表調処理を行い、その処理条件をコントロールする方法である。ここで、表調処理とは、リン酸塩処理におけるリン酸亜鉛結晶の成長核となる物質を亜鉛系めっき鋼板表面に吸着させる処理を示している。
【0030】
表調処理により、亜鉛系めっき鋼板表面にリン酸亜鉛結晶の成長核となる物質を吸着させる処理方法としては特に制限するものではないが、具体的には、(イ)表調処理時間を短くする方法、(ロ)表調処理液濃度を低めに調整する方法、(ハ)表調処理時におけるスプレー式処理を行う際のスプレー圧を低めに調整する方法などのリン酸塩結晶の成長核となる物質の亜鉛系めっき鋼板表面への吸着を抑制する方法が挙げられる。
【0031】
前述の方法によって、リン酸塩結晶の成長核となる物質の亜鉛系めっき鋼板表面への吸着が抑制され、リン酸塩結晶は、前記成長核を核として成長したリン酸塩結晶が点在するようになる。
【0032】
亜鉛系めっき鋼板に表調処理を行う際の処理液には特に制限は無いが、リン酸塩結晶の成長核となる物質として、具体的にはチタンコロイドや、リン酸亜鉛などを含む市販の表調液を用いることが出来る。
【0033】
リン酸塩結晶を安定して微視的な領域で不連続に存在させる観点からは、表調処理の前に基体である亜鉛系めっき鋼板の表面を清浄にする清浄工程を行うことがさらに好ましい。清浄工程としては、溶剤脱脂工程、水洗工程等を例示できる。
【0034】
清浄な亜鉛系めっき鋼板表面に前述の表調処理を施した後、リン酸塩皮膜形成用の処理液で亜鉛系めっき鋼板表面を処理することにより、0.2〜3g/m2の付着量のリン酸亜鉛を主体とするリン酸塩皮膜を形成する。リン酸塩結晶の成長核となる物質のめっき表面への吸着を抑制した後、リン酸塩皮膜を形成することで、リン酸亜鉛を主体とするリン酸塩皮膜が表面に微視的な領域に不連続に形成される。
【0035】
本発明における亜鉛系めっき鋼板を基体としてその表面にリン酸塩皮膜を形成するための処理液には特に制限はなく、市販のリン酸亜鉛系処理液を用いることができる。前記処理液は、プレス成形性や塗装密着性を向上させる目的から、鉄、コバルト、ニッケル、カルシウム、マグネシウム、及びマンガンなどを含んでいても良い。処理方法は、常法でよく、スプレー法、浸漬法のいずれでも良い。
【0036】
【実施例】
下記実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により特に限定されるものではない。
【0037】
1.基体(亜鉛系めっき鋼板)
市販の板厚0.8mmの両面電気亜鉛めっき鋼板(目付量50g/m2)を基体として使用した。
【0038】
2.リン酸塩皮膜形成処理
2−1.基体表面の清浄化
前記基体を用い、予め溶剤超音波脱脂を行った。溶剤にはトルエンを用い、処理時間は3分行うことにより基体表面に存在する油を完全に除去した。
【0039】
2−2.表調処理
(発明例1)
基体を市販の表調処理液プレパレンX(日本パーカライジング株式会社製)を3g/リットルの濃度に水で希釈し、処理温度30℃、処理時間5秒間で、スプレー圧1kgf/cm2の条件でスプレー処理を行った。
(比較例1)
基体を市販のチタンコロイドである表調処理液プレパレンZN(日本パーカライジング株式会社製)を3g/リットルの濃度に水で希釈し、処理温度40℃、処理時間10秒間で、スプレー圧1kgf/cm2の条件でスプレー処理を行った。
(比較例2)
基体を市販の表調処理液プレパレンX(日本パーカライジング株式会社製)を3g/リットルの濃度に水で希釈し、処理温度30℃、処理時間5秒間、スプレー圧を0.3kgf/cm2、3.0kgf/cm2の条件でスプレー処理を行った。
【0040】
2−3.リン酸塩皮膜形成処理
前記発明例1及び比較例1の表調処理を施したそれぞれの基体を市販のPB−PP100(日本パーカライジング株式会社製)を50g/リットルの濃度に水で希釈し、処理温度57℃、処理時間5秒間、10秒間、30秒間のスプレー法にてリン酸塩皮膜形成処理を行い、また、比較例2の表調処理を施した基体を前記リン酸塩皮膜成形処理の処理時間を10秒のみにする以外は同一の条件で処理し、リン酸塩の付着量とリン酸塩結晶が存在する部分の面積率が異なるめっき鋼板を作成した。
【0041】
3.評価試験方法
亜鉛系めっき鋼板のリン酸塩皮膜、プレス成形性、塗装品質の評価を下記の様に行った。
3−1.リン酸塩皮膜
3−1−1.リン酸塩皮膜重量
リン酸塩皮膜重量は下記に示す方法で求めた。
(1)予め試験片を精密天秤にて重量(W1:g)を測定し、この試験片を重クロム酸アンモニウム20g/リットル、25%アンモニア水490g/リットルを含む脱イオン水溶液に常温で15分間浸漬し、リン酸塩結晶を溶解した。
(2)これに水洗を施して試験片に残存している重クロム酸アンモニウム水溶液を除去し、乾燥した。
(3)再度、精密天秤にて試験片の重量(W2:g)を測定し、その重量差(W1−W2)より単位面積あたりの皮膜重量を算出した。
3−1−2.リン酸塩結晶分布
走査型電子顕微鏡を用いて処理された亜鉛系めっき鋼板表面を観察し、50μm四方が観察できる最適な倍率に設定し、電子顕微鏡像を得た。前記で得た電子顕微鏡像に基き、リン酸塩結晶部分と亜鉛めっき結晶部分とを弁別し、さらにリン酸塩結晶が観察される部分を観察し、その面積率(P)の測定を行った。
【0042】
3−2.プレス成形性
処理された亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性は、高面圧で曲げ戻し変形のあるプレス成形を模した試験である下記に示す条件の試験を行い評価した。
3−2−1.ドロービード試験
30mm×250mmの試験片に、鉱油を主成分とする潤滑油を1.5g/m2塗布し、ビード先端半径5mm、ビード高さ3mm、押し付け力2000kgf、引抜速度200mm/分でドロービードテストを行い、引き抜き抵抗(R)を求めた。結果を表1及び図1に示した。
3−2−2.加工後摺動性
前記ドロービード試験を押し付け力1000kgfに変えた以外は同一の条件で試験を行い、得られた試験片のビードにより摺動を受けた面を対象面として、平板摺動試験(ビード:3×10mm、押し付け圧:130.4Mpa、引抜速度1.0m/分)を行い、そのときの引き抜き力(F)を測定し、摩擦係数(μ=F/N)(F:引き抜き力、N:押し付け力)を測定した。結果を表1及び図2に示した。
【0043】
結果を表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1、図1及び図2から明らかなように、本発明で規定するリン酸塩皮膜が形成された発明例1は、引き抜き抵抗R及びドロービード後摩擦係数μの両方が小さく、プレス成形性に良好な結果を示していた。一方、本発明で規定するリン酸塩皮膜が形成されていない比較例1、2は、引き抜き抵抗R及びドロービード後摩擦係数μの両方が大きく、プレス成形性の評価結果は発明例1に比べてかなり劣っていた。
【0046】
発明例1について塗装品質として、自動車用カチオン電着塗装20μm後、▲1▼1mm碁盤目カットしてテープ剥離で塗料密着性を評価し、▲2▼クロスカット塩水噴霧での塗膜膨れ幅を測定し、塗装後耐食性を評価したところ、通常のリン酸塩皮膜が形成された亜鉛めっき鋼板と同等の品質であった。
【0047】
【発明の効果】
本発明に係る亜鉛系めっき鋼板は、亜鉛系めっき鋼板上に形成されるリン酸塩皮膜を所定の面積率で不連続状に存在させることで、高面圧で、曲げ戻し変形のあるプレス成形であっても、リン酸塩皮膜の剥離が抑制され、優れたプレス成形性が発現される。
【0048】
本発明に係る亜鉛系めっき鋼板は、従来のプレス油、潤滑油、リン酸塩皮膜の技術では対応しきれないプレス成形用途への適用が可能となり、近年のプレス事情、例えば複雑な形状の一体成形化などを行う難成形部品への適用が可能であり、これによって、プレス成形の低コスト化を図りながら、高品質のプレス成形品が得られ、生産性の向上を図ることが可能となる。
【0049】
また、本発明に係る亜鉛系めっき鋼板は、塗装品質も良好であるので、プレス成形を施した後、またはプレス成形を施すことなく、塗装用途にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基体上においてリン酸塩結晶が存在する部分の面積率(P)とドロービード引き抜き抵抗(R)との関係を示す図である。
【図2】基体上においてリン酸塩結晶が存在する部分の面積率(P)とドロービード後摩擦係数(μ)との関係を示す図である。
Claims (2)
- 亜鉛系めっき表面にリン酸亜鉛を主体とするリン酸塩皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板において、前記リン酸塩皮膜は、該皮膜を構成するリン酸亜鉛を主体とするリン酸塩結晶が存在する部分の面積は全表面の30〜80%であることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板。
- 前記リン酸塩皮膜の付着量は0.2〜3g/m2であることを特徴とする請求項1記載の亜鉛系めっき鋼板。
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