JP2005022893A - メソポーラスシリカ薄膜、金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面平滑性に優れ、長時間にわたって結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜およびその製造方法。
【解決手段】シリコンアルコキシドを酸性溶液中で反応させ、シリコンアルコキシド部分重合体を含む液体を得る部分重合工程と、前記液体に界面活性剤を添加し、前記シリコンアルコキシド部分重合体と前記界面活性剤とからなる複合体を形成せしめる複合体形成工程と、前記複合体を含む液体を薄膜化し加熱乾燥して前記複合体を反応させることにより、前記界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜を形成せしめる薄膜形成工程と、を含むメソポーラスシリカ薄膜の製造方法であって、前記複合体形成工程において溶媒として水とアルコールとの混合溶媒を用い、前記混合溶媒における水の含有量が前記シリコンアルコキシド1molに対して4〜15molであり、かつ、アルコールの含有量が65〜98容量%であるメソポーラスシリカ薄膜の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】シリコンアルコキシドを酸性溶液中で反応させ、シリコンアルコキシド部分重合体を含む液体を得る部分重合工程と、前記液体に界面活性剤を添加し、前記シリコンアルコキシド部分重合体と前記界面活性剤とからなる複合体を形成せしめる複合体形成工程と、前記複合体を含む液体を薄膜化し加熱乾燥して前記複合体を反応させることにより、前記界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜を形成せしめる薄膜形成工程と、を含むメソポーラスシリカ薄膜の製造方法であって、前記複合体形成工程において溶媒として水とアルコールとの混合溶媒を用い、前記混合溶媒における水の含有量が前記シリコンアルコキシド1molに対して4〜15molであり、かつ、アルコールの含有量が65〜98容量%であるメソポーラスシリカ薄膜の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、メソポーラスシリカ薄膜、金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜及びそれらの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、FSM−16、MCM−41、HMM−1等のメソ細孔を有する粉末担体内に金属細線及び金属粒子を鋳型合成し、半導体素子等といった電子機能材料等に応用しようとする研究が盛んに行われている。例えば、特開2002−102698号公報(特許文献1)においては、中心細孔直径が1〜50nmである細孔を有する粉末状のシリカメソ多孔体(メソポーラスシリカ)の細孔内に、平均直径が1〜50nmであり且つ平均アスペクト比が3以上である金属細線を光還元法により形成せしめることが開示されている。
【0003】
しかしながら、特開2002−102698号公報に記載のような光還元法により金属細線を形成せしめた金属細線包接シリカメソ多孔体であっても、得られる金属細線の太さとその均一性の向上、更には結晶性の向上に限界があり、半導体素子等の電子機能材料として十分に機能しない可能性があるという問題があった。
【0004】
また、メソ細孔を有する担体として粉末よりデバイスへの応用が比較的容易なシリカメソ多孔体薄膜(メソポーラスシリカ薄膜)の研究もなされており、例えば、特開2001−130911号公報(特許文献2)においては、界面活性剤を鋳型としてシリコンアルコキシド部分重合体を酸性溶液中で反応させて薄膜化することにより膜厚が1μm以下でかつ中心細孔直径が1〜50nmであるシリカメソ多孔体薄膜を製造する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、特開2001−130911号公報に記載のような方法により得られる従来のシリカメソ多孔体薄膜はいずれも、その表面に比較的大きな凹凸が存在しており、半導体素子といった電子機能材料等への適用が困難であるという問題があった。更に、特開2001−130911号公報に記載のような従来の方法においては、原料として用いるシリコンアルコキシド部分重合体と界面活性剤との複合体を含む酸性溶液(シリカ前駆体溶液)が非常に経時劣化し易く、長時間にわたって結晶性の高いシリカメソ多孔体薄膜を得ることができないという問題もあり、この点も得られるシリカメソ多孔体薄膜の電子機能材料等への適用を阻害する要因であった。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−102698号公報
【特許文献2】
特開2001−130911号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、本発明の第1の目的は、得られるメソポーラスシリカ薄膜が表面平滑性に優れたものであり、しかも長時間にわたって結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜を得ることが可能なメソポーラスシリカ薄膜の製造方法、並びに表面平滑性に優れており電子機能材料等への応用に適したメソポーラスシリカ薄膜を提供することにある。
【0007】
また、本発明の第2の目的は、太くかつ均一性に優れた金属細線を得ることができ、しかも金属細線の結晶性を向上させることも可能な金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法、並びに金属細線の直径均一性に優れており電子機能材料等への応用に適した金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、先ず、前記第1の目的に関して以下の知見を得た。すなわち、メソポーラスシリカ薄膜を得る際に原料として用いるシリカ前駆体溶液として、従来は水か水と有機溶媒との混合溶媒が用いられていた。しかしながら、混合溶媒を用いる場合、水の含有量が多過ぎるとシリコンアルコキシドの加水分解、縮合が進みすぎてシリカ前駆体溶液がゲル化してしまい、他方、有機溶媒の含有量が多過ぎるとシリコンアルコキシドの加水分解、縮合が進み難く、メソポーラスシリカを形成し得ない、或いは形成できた場合でも膜厚が薄くなり過ぎて均一な品質が得られないということが当業者の従来の一般的な認識であった。それに対し、本発明者らは、シリカ前駆体溶液中の特にアルコールの含有量に着目して鋭意研究を重ねた結果、シリカ前駆体溶液において所定量の水と所定量のアルコールとの混合溶媒を用いることにより、驚くべきことに得られるメソポーラスシリカ薄膜の表面平滑性が著しく向上し、しかもシリカ前駆体溶液の経時劣化が抑制されて長時間にわたって結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜を得ることが可能となるということを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
また、本発明者らは、前記第2の目的に関して以下の知見を得た。すなわち、光還元法により金属細線を形成せしめた金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜を更に所定の温度に加熱することにより金属細線が成長し、金属細線が太くなるのみならずその直径均一性が著しく向上し、しかも金属細線の結晶性を向上させることも可能となるということを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法は、
シリコンアルコキシドを酸性溶液中で反応させ、シリコンアルコキシド部分重合体を含む液体を得る部分重合工程と、
前記液体に界面活性剤を添加し、前記シリコンアルコキシド部分重合体と前記界面活性剤とからなる複合体を形成せしめる複合体形成工程と、
前記複合体を含む液体を薄膜化し加熱乾燥して前記複合体を反応させることにより、前記界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜を形成せしめる薄膜形成工程と、
を含むメソポーラスシリカ薄膜の製造方法であって、前記複合体形成工程において溶媒として水とアルコールとの混合溶媒を用い、前記混合溶媒における水の含有量が前記シリコンアルコキシド1molに対して4〜15molであり、かつ、前記混合溶媒におけるアルコールの含有量が65〜98容量%であることを特徴とする、表面の凹凸の平均高さが50nm以下であるという表面平滑性を有しているメソポーラスシリカ薄膜を製造する方法である。
【0011】
更に、本発明のメソポーラスシリカ薄膜は、膜厚が1μm以下でかつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜であって、表面の凹凸の平均高さが50nm以下であるという表面平滑性を有していることを特徴とするものである。
【0012】
なお、本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法によって表面平滑性が著しく向上する理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、シリコンアルコキシドに水と酸を混合することによってシリコンアルコキシドのアルコキシ基は加水分解反応によってアルコールを放出してシラノール基となり、さらにこれが脱水縮合することによってシリコンアルコキシドが鎖状に繋がり、脱水縮合に使用されなかったシラノール基はそのまま存在することになる。かかるシラノール基は親水性であるため、鎖状に繋がったシリコンアルコキシド(以下、「鎖状シリコンアルコキシド」という)は親水性の溶媒に膨潤する。
一方、本発明にかかる混合溶媒に用いる水及びアルコールは両者とも親水性の溶媒であるため鎖状シリコンアルコキシドは両者へ膨潤するが、水及びアルコールへの膨潤率は異なる。そのため、シリカ前駆体溶液を薄膜化して加熱乾燥する際に体積に差が出て従来は表面に凹凸が出来たと考えられる。それに対して、本発明においては、混合溶媒中のアルコールの比率を従来より大幅に増加させて所定の比率とすることにより、水による加水分解反応を妨げることなく表面の凹凸が発生する部位を著しく減少させることができ、表面が平滑なメソポーラスシリカ薄膜が得られると本発明者らは推察する。
【0013】
また、本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法によってシリカ前駆体溶液の経時劣化が抑制される理由も定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明においては、シリカ前駆体溶液に含まれる水の比率を従来より大幅に低下させて所定の比率とすることにより、シリコンアルコキシド部分重合体の縮合の進行を遅らせることができ、ゲル化が十分に抑制される。それによってシリカ前駆体溶液が本来有する性質が長時間にわたって保持され、高水準の結晶性を有するメソポーラスシリカ薄膜が長時間にわたって得られるようになると本発明者らは推察する。
【0014】
更に、本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法は、
膜厚が1μm以下でかつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜と所定の金属のイオンを含有する溶液とを接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属イオンを担持せしめる金属イオン担持工程と、
前記金属イオン担持工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を還元剤の蒸気に接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記還元剤蒸気を導入する還元剤導入工程と、
前記還元剤導入工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜に光を照射して前記金属イオンを還元せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属からなる金属細線を形成せしめる光還元工程と、
前記光還元工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を400〜800℃の温度に加熱し、前記金属細線を成長せしめる焼結工程と、を含むことを特徴とする、全金属細線のうち80%以上のものの直径が平均直径の±20%以内に入るという直径均一性を有している金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜を製造する方法である。
【0015】
また、本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜は、膜厚が1μm以下でかつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜と、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に形成されている平均直径が1〜50nmでかつ平均アスペクト比が10以上である金属細線とを備える金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜であって、全金属細線のうち80%以上のものの直径が平均直径の±20%以内に入るという直径均一性を有していることを特徴とするものである。
【0016】
なお、本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法によって金属細線が成長して直径均一性が著しく向上し、結晶性も向上する理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、光還元により得られた金属細線を所定の温度で加熱処理することにより、いわゆるシンタリング(焼結)効果が得られ、(i)点在する金属粒子が2次元ブラウン運動をしながら薄膜細孔内表面を移動して衝突・結合したり、(ii)金属原子が小粒子(既存短細線)から乖離(蒸発)し、薄膜細孔内表面あるいは気相中を移動して大粒子(既存長細線)に捕捉(凝縮)されたり、あるいは(iii)加熱することによって細孔壁のSi−OHが脱水縮合して壁が収縮し、壁の移動に伴って壁に付着していた金属粒子同士で融合することとなる。それによってかかる加熱処理前よりも金属細線が成長し、細孔内を比較的密に埋めることにより太さも均一となり、同時に結晶性も高くなると本発明者らは推察する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0018】
(メソポーラスシリカ薄膜)
本発明のメソポーラスシリカ薄膜は、膜厚が1μm以下であり、かつ中心細孔直径が1〜50nmであるものである。前記メソポーラスシリカ薄膜とは、メソ孔を有するシリカ多孔体であり、薄膜という場合はその厚さが1μm以下であり、0.1〜0.5μmであることがより好ましく、表面積に対して厚さが無視できるような存在状態をいい、塊上の結晶・固体などの3次元的な広がりを持ちかさばった状態の物質とは異なる意味で用いられる。このようなメソポーラスシリカ薄膜の膜厚が1μmを超える場合、メソポーラスシリカ薄膜の細孔配列の均一性が悪くなり、また焼成時において膜収縮のひずみによりワレが発生しやすくなる傾向にある。しかしながら、1μm以下の膜厚のメソポーラスシリカ薄膜を作製し、再度その上にメソポーラスシリカ薄膜を作製することにより、細孔配列の均一性の高いメソポーラスシリカ薄膜を積層し、そのような積層を繰り返すことにより、積層した薄膜の膜厚が1μm以上であるものを作製することができる。
【0019】
前記中心細孔直径とは、細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径である。なお、細孔径分布曲線は、次に述べる方法により求めることができる。すなわち、メソポーラスシリカ薄膜を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法あるいは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得る。この吸着等温線を用い、Cranston−Inklay法、Pollimore−Heal法、BJH法等の計算法により細孔径分布曲線を求めることができる。本発明に係るメソポーラスシリカ薄膜において、中心細孔直径が1nm未満の場合は金属イオン含有溶液が細孔内に導入されにくくなり、金属イオンの担持が困難となり、他方、中心細孔直径が50nmを超える場合は薄膜の空隙率が過剰に大きくなり、薄膜の強度が不十分となる。
【0020】
更に、本発明のメソポーラスシリカ薄膜においては、表面の凹凸の平均高さが50nm以下、好ましくは30nm以下、という極めて優れた表面平滑性を有している。このような表面平滑性は、後述する本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法によって初めて達成されるものであり、従来のメソポーラスシリカ薄膜のように表面の凹凸の平均高さが50nmを超えていると、半導体素子といった電子機能材料等に用いた場合に加工・接触不良等の原因となり、電子機能材料等への適用が困難である。したがって、本発明のメソポーラスシリカ薄膜は、後述する本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の作製に好適である。なお、メソポーラスシリカ薄膜表面の凹凸の平均高さは、例えば日本真空技術社製触針式表面形状測定器(DEKTAK3ST、垂直方向分解能は最高1オングストローム)を用いて薄膜表面の異なる複数箇所を(好ましくは測定距離1000μm以上で5回)測定し、測定された凹凸の高さの平均値を算出した値である。
【0021】
このようなメソポーラスシリカ薄膜は界面活性剤を鋳型とし、シリコンアルコキシドなどをシリカ源として作製されるものであり、このようなシリカ源としては−Si−O−結合を形成し得る化合物であれば特に限定されない。かかる薄膜は、例えばケイ素酸化物からなり、ケイ素原子が酸素原子を介して結合した骨格−Si−O−を基本とし、高度に架橋した網目構造を有している。このようなケイ素酸化物においては、ケイ素原子の少なくとも一部が有機基の2箇所以上で炭素−ケイ素結合を形成しているものでもよい。このような有機基としては、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、ベンゼン、シクロアルカン等の炭化水素から2以上の水素がとれて生じる2価以上の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、有機基は、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルフォン基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、ビニル基等を有するものであってもよい。また、このようなメソポーラスシリカ薄膜においては、その骨格中に、アルミニウム、チタン、マグネシウム、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、モリブデン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ベリリウム、イットリウム、ランタン、ハフニウム、スズ、鉛、バナジウム、ホウ素等の無機系成分を含んでいてもよい。
【0022】
また、本発明に係るメソポーラスシリカ薄膜は、X線回折測定において1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有することが好ましい。このようなX線回折のピークは、そのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1nm以上の間隔で規則的に配列していることを意味する。
【0023】
また、本発明に係るメソポーラスシリカ薄膜が有する細孔は、薄膜の表面のみならず内部にも形成される。かかる薄膜における細孔の配列状態(細孔配列構造又は構造)は特に制限されないが、2d−ヘキサゴナル構造、3d−ヘキサゴナル構造又はキュービック構造であることが好ましい。また、このような細孔配列構造は、ディスオーダの細孔配列構造を有するものであってもよい。
【0024】
ここで、薄膜がヘキサゴナルの細孔配列構造を有するとは、薄膜の細孔の配置が六方構造であることを意味する(S.Inagaki,et al.,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,680,1993;S.Inagaki,et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,69,1449;1996、Q.Huoetal.,Science,268,1324,1995参照)。また、薄膜がキュービックの細孔配列構造を有するとは、薄膜中の細孔の配置が立方構造であることを意味する(J.C.Vartuli et al.,Chem.Mater.,6,2317,1994;Q.Huoetal.,Nature,368,317,1994参照)。また、薄膜がディスオーダの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が不規則であることを意味する(P.T.Tanev et al.,Science,267,865,1995;S.A.Bagshawet al.,Science,269,1242,1995;R.Ryoo et al.,J.Phys.Chem.,100,17718,1996参照)。また、前記キュービック構造は、Pm−3n、Im−3m又はFm−3m対称性であることが好ましい。なお、前記対称性とは、空間群の表記法に基づいて決定されるものである。
【0025】
なお、薄膜がヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造を有する場合は、細孔の全てがこれらの規則的細孔配列構造である必要はない。すなわち、薄膜は、ヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造とディスオーダの不規則的細孔配列構造の両方を有していてもよい。しかしながら、全ての細孔のうち80%以上がヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造となっていることが好ましい。
【0026】
(メソポーラスシリカ薄膜の製造方法)
本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法は、前述したシリコンアルコキシドをシリカ源として酸性溶媒中で反応せしめシリコンアルコキシド部分重合体を含む液体を得る部分重合工程と、前記シリコンアルコキシド部分重合体と界面活性剤溶液とを接触せしめ、前記シリコンアルコキシド部分重合体と前記界面活性剤とからなる複合体を形成せしめる複合体形成工程と、前記複合体を含む液体を薄膜化し加熱乾燥して前記複合体を反応させることにより界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜を形成せしめる薄膜形成工程と、を含む方法である。そして、本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法においては、前記複合体形成工程において溶媒として水とアルコールとの混合溶媒を用い、前記混合溶媒における水の含有量が前記シリコンアルコキシド1molに対して4〜15molであり、かつ、前記混合溶媒におけるアルコールの含有量が65〜98容量%であることが必要である。以下、上記の各工程について詳述する。
【0027】
前記部分重合工程においては、シリコンアルコキシドを酸性溶媒中で反応せしめることにより、シリコンアルコキシド部分重合体を含む液体が得られる。ここで、シリコンアルコキシドとは下記一般式(2)で表されるものである。
【0028】
A(4−a)−Si−(O−R)a (2)
[式(2)中、Rは炭化水素基を表し、Aは水素原子、ハロゲン原子、水酸基又は炭化水素基を表し、aは1〜4の整数を表す。]
上記一般式(2)中、Rで表される炭化水素基としては、例えば、鎖式、環式、脂環式の炭化水素基を挙げることができる。このような炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜5の鎖式アルキル基であり、より好ましくはメチル基またはエチル基である。また、Aが炭化水素基である場合、その炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜10のアルキル基、炭素数が2〜10のアルケニル基、フェニル基、置換フェニル基を挙げることができる。上記一般式(2)で表されるシリコンアルコキシドは1種のみ用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記一般式(2)で表されるシリコンアルコキシドとしては、結晶性の良好なメソポーラスシリカ薄膜を得ることができることから、Si(OCH3)4で表されるテトラメトキシシラン(TMOS)、及びSi(OC2H5)4で表されるテトラエトキシシラン(TEOS)を用いることが好ましい。
【0030】
上記シリコンアルコキシドが有するアルコキシル基(−O−R)は酸性条件下で加水分解を受け水酸基(−OH)となり、その水酸基部分が縮合して高分子量化する。なお、シリコンアルコキシドがアルコキシル基以外に水酸基やハロゲン原子を有している場合はこれらの官能基が加水分解反応に寄与する場合もありうる。したがって、シリコンアルコキシド部分重合体とは、加水分解反応および縮合反応によって得られる重合体であって、アルコキシル基(−O−R)及び/又は水酸基(−OH)の一部が未反応のまま残存している重合体を意味する。
【0031】
前記シリコンアルコキシド部分重合体は、シリコンアルコキシドを酸性溶媒(塩酸、硝酸等の水溶液又はアルコール溶液等)中で攪拌することにより得ることができる。なお、前記酸性溶媒に含まれる酸としては、上記の酸の他にホウ酸、臭素酸、フッ素酸、硫酸、リン酸が挙げられ、これらのうちの2種以上を混合して用いることもできる。シリコンアルコキシドのアルコキシル基の加水分解反応はpHが低い領域で起こりやすいことから、系のpHを低くすることにより部分重合を促進することが可能である。なお、部分重合工程における反応温度は、例えば、15〜25℃とすることができ、反応時間は30〜90分とすることができる。
【0032】
次に、複合体形成工程においては、前記部分重合工程により得られたシリコンアルコキシド部分重合体と界面活性剤とを接触せしめ、前記シリコンアルコキシド部分重合体と前記界面活性剤とからなる複合体を形成せしめる。
【0033】
このような界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性のうちのいずれであってもよく、具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム、ベンジルアンモニウム等の塩化物、臭化物、ヨウ化物あるいは水酸化物;脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤、一級アルキルアミン等が挙げられる。
【0034】
上記の界面活性剤のうち、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤としては、疎水性成分として炭化水素基、親水性部分としてポリエチレンオキサイドをそれぞれ有するポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤等が挙げられる。このような界面活性剤としては、例えば、一般式CnH2n+1(OCH2CH2)mOHで表され、nが10〜30、mが1〜30であるものが好適に使用できる。
【0035】
また、このような界面活性剤としては、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸とソルビタンとのエステル、あるいはこれらのエステルにポリエチレンオキサイドが付加した化合物を用いることもできる。
【0036】
さらに、このような界面活性剤としては、トリブロックコポリマー型のポリアルキレンオキサイドを用いることもできる。このような界面活性剤としては、ポリエチレンオキサイド(EO)とポリプロピレンオキサイド(PO)からなり、一般式(EO)x(PO)y(EO)xで表されるものが挙げられる。x、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。
【0037】
上記のトリブロックコポリマーとしては、(EO)19(PO)29(EO)19、(EO)13(PO)70(EO)13、(EO)5(PO)70(EO)5、(EO)13(PO)30(EO)13、(EO)20(PO)30(EO)20、(EO)26(PO)39(EO)26、(EO)17(PO)56(EO)17、(EO)17(PO)58(EO)17、(EO)20(PO)70(EO)20、(EO)80(PO)30(EO)80、(EO)106(PO)70(EO)106、(EO)100(PO)39(EO)100、(EO)19(PO)33(EO)19、(EO)26(PO)36(EO)26が挙げられる。これらのトリブロックコポリマーはBASF社、アルドリッチ社等から入手可能であり、また、小規模製造レベルで所望のx値とy値を有するトリブロックコポリマーを得ることができる。上記のトリブロックコポリマーは1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
また、エチレンジアミンの2個の窒素原子にそれぞれ2本のポリエチレンオキサイド(EO)鎖−ポリプロピレンオキサイド(PO)鎖が結合したスターダイブロックコポリマーも使用することができる。このようなスターダイブロックコポリマーとしては、一般式((EO)x(PO)y)2NCH2CH2N((PO)y(EO)x)2で表されるものが挙げられる。ここでx、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。
【0039】
このような界面活性剤の中では、結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜を得ることができることから、アルキルトリメチルアンモニウム[CpH2p+1N(CH3)3]の塩(好ましくはハロゲン化物塩)を用いることが好ましい。また、その場合は、アルキルトリメチルアンモニム中のアルキル基の炭素数は8〜18であることがより好ましい。このようなものとしては、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウムが挙げられる。
【0040】
前記部分重合工程により得られた液体に前記界面活性剤または界面活性剤溶液を添加すると、溶液中で界面活性剤はミセルを形成する。このミセルが超分子鋳型となり、シリコンアルコキシド部分重合体と界面活性剤ミセルとの複合体が形成される。このような界面活性剤ミセルの内部にはシリコンアルコキシド部分重合体が入り込まないため、ミセルの内部は最終生成物であるメソポーラスシリカ薄膜における細孔部分となる。したがって、界面活性剤の分子鎖長を変化させることにより、メソポーラスシリカ薄膜の細孔径を制御することができる。
【0041】
前記シリコンアルコキシド部分重合体と界面活性剤のモル比は、結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜が得られることから、シリコンアルコキシド0.1molに対して界面活性剤は0.005〜0.02molであることが好ましい。また、前記複合体形成工程は、例えば、10〜30℃において30〜90分攪拌することにより行うことができる。
【0042】
本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法においては、前記シリコンアルコキシド部分重合体と上記界面活性剤とを接触せしめる複合体形成工程において、溶媒として水とアルコールとの混合溶媒を用いる必要がある。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられ、中でもメタノール、エタノールが好ましい。
【0043】
そして、本発明においては、前記混合溶媒における水の含有量が前記シリコンアルコキシド1molに対して4〜15molであることが必要である。このような水の含有量が前記下限値未満であるとシリコンアルコキシドが鎖状に縮合することが困難となり、他方、前記上限値を超えると前記複合体を含む液体中のシリコンアルコキシド濃度および溶液の粘度が低下し、前記複合体を含む液体を基板に付着せしめる際にハジキが見られ均一な薄膜が形成しにくくなる。
【0044】
更に、本発明においては、前記混合溶媒におけるアルコールの含有量が65〜98容量%であることが必要であり、70〜85容量%であることが好ましい。
このようなアルコールの含有量が前記下限値未満であると表面の凹凸の平均高さが50nm以下という表面平滑性が達成されず、更にアルコールの含有量が低いとシリカ前駆体溶液が経時劣化して長時間にわたって結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜を得ることができなくなる。他方、このようなアルコールの含有量が前記上限値を超えるとシリコンアルコキシドの加水分解、縮合が進み難く、メソポーラスシリカを形成し得ない、或いは形成できた場合でも膜厚が薄くなり過ぎて均一な品質が得られなくなってしまう。
【0045】
なお、シリカ前駆体溶液にアルコールを添加するタイミングは特に制限されず、界面活性剤と共に添加してもよく、界面活性剤を添加した後に添加してもよい。また、前記シリコンアルコキシド部分重合体を含む液体への界面活性剤を添加する方法も特に制限されず、界面活性剤をそのまま添加してもよく、水、アルコール、水とアルコールとの混合溶媒等に溶かして界面活性剤溶液とした後に添加してもよい。さらに、前記界面活性剤溶液には酸を加えて、好ましい酸性雰囲気としてもよいが、このような酸としては前記酸性溶媒に用いられる酸と同様のものを用いることが可能である。
【0046】
また、前記複合体の組成により、得られるメソポーラスシリカ薄膜の結晶構造を制御することができる。例えば、シリコンアルコキシドとしてテトラメトキシシランを用い、界面活性剤として塩化アルキルトリメチルアンモニウムを用いた場合においては、テトラメトキシシランの物質量を1molとしたときに、塩化アルキルトリメチルアンモニウムの物質量を0.04〜0.15molとすることにより結晶構造をヘキサゴナルとすることが可能となる。一方で、テトラメトキシシランの物質量を1molとしたときに、塩化アルキルトリメチルアンモニウムの物質量を0.15〜0.19molとすることにより結晶構造をキュービックとすることが可能となる。
【0047】
次に、薄膜形成工程を説明する。薄膜形成工程においては、前記複合体を含む液体を薄膜化し加熱乾燥することによりメソポーラスシリカ薄膜を形成せしめる。薄膜化の方法は特に制限はなく、例えば、前記複合体を含む液体を基板上に付着又は塗布せしめることによって厚さの均一な膜の形成が可能となる。このような基板としては、前記複合体を含む液体が付着又は塗布可能なものであれば、形状や材質は特に制限はなく、例えば、金属、樹脂等からなる板状成型物やフィルム等が挙げられる。基板の表面には、ある一定の周期性をもって溝や突起物などが形成されていてもよく、平坦であってもよい。
【0048】
複合体を含む液体を基板に塗布する場合は、その方法は特に制限されず、各種のコーティング方法が採用可能である。例えば、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター等を用いて塗布することができる。また、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング等も可能である。
【0049】
前記複合体を含む液体を基板等に塗布する場合、その塗布厚は、その濃度により適宜選択可能である。熱収縮時のひずみによるワレを防止するために、また塗布後の加熱乾燥を効率的に行うために塗布厚は薄い方が好ましく、例えば、未乾燥状態(複合体を含む液体の状態)で10μm以下であることが好ましい。
【0050】
基板に塗布する等の方法により薄膜化した後、得られた薄膜を風乾及び/又は加熱乾燥して複合体を反応させることにより、界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜を形成させる。加熱乾燥時には、例えば、70〜150℃、より好ましくは100〜120℃の加熱を行い、シリコンアルコキシド部分重合体の縮合反応を進めて三次元的な架橋構造を形成させる。この結果、界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜が得られる。加熱乾燥の時間は、界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜の結晶性を高めるための時間と経済的問題を鑑みて、例えば20〜80分とすることができる。
【0051】
薄膜形成工程において得られる界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜の膜厚は、1μm以下であることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。膜厚が1μmを超える場合はメソポーラスシリカ薄膜の細孔配列の均一性が悪くなる傾向にある。しかしながら、1μm以下の膜厚のメソポーラスシリカ薄膜を作製した後に、再度複合体を含む液体の塗布を行い加熱乾燥することにより、細孔配列の均一性の高いメソポーラスシリカ薄膜を積層し合計で膜厚を1μm以上とすることができる。
【0052】
界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜の中心細孔直径は、高い結晶性及び適度な比表面積を有した薄膜が得られることから、1〜50nmであり、1〜30nmであることがより好ましく、1〜10nmであることが更に好ましい。
【0053】
また、薄膜形成工程の後に、界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜から界面活性剤を除去しメソポーラスシリカ薄膜を得る界面活性剤除去工程を更に含むことが好ましい。界面活性剤を除去する方法としては特に制限はないが、例えば、焼成による方法や水やアルコール等の溶媒で処理する方法を用いることができる。焼成による方法においては、界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜を300〜1000℃、好ましくは300〜600℃で焼成する。加熱時間は30分程度でもよいが、完全に界面活性剤成分を除去するには1時間以上加熱することが好ましい。上記焼成は空気中で行うことが可能であり、窒素等の不活性ガスを導入して行ってもよい。また、上記焼成は酸素濃度0.1%〜25%の酸素含有雰囲気で、かつ、300℃〜600℃で焼成することが好ましい。
【0054】
溶媒を用いて界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜から界面活性剤を除去する場合は、例えば、界面活性剤の溶解性の高い溶媒中に界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜を浸漬する。溶媒としては、水、エタノール、メタノール、アセトン等を使用することができる。
【0055】
陽イオン性の界面活性剤を用いる場合は、少量の塩酸を添加したエタノール又は水中に界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜を浸漬し、50〜70℃で加熱する方法を用いることができる。この方法により、陽イオン界面活性剤を抽出することができる。陰イオン性の界面活性剤を用いる場合は、陰イオンを添加した溶媒中で界面活性剤を抽出することができる。また、非イオン性の界面活性剤を用いた場合は、溶媒のみで抽出することが可能である。なお、抽出時に超音波を印加することも可能である。
【0056】
以上説明したように、界面活性剤が除去されたメソポーラスシリカ薄膜は、後述する金属細線包接薄膜における金属細線形成の鋳型(ホスト材料)として好適である。
【0057】
(金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜)
本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜は、膜厚が1μm以下でかつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜と、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に形成されている平均直径が1〜50nmであり、かつ平均アスペクト比が10以上である金属細線とを備えるものである。前記平均直径は、1〜30nmであることがより好ましく、2〜15nmであることが更に好ましい。また、前記平均アスペクト比は10以上であればよく、このような金属細線の長さとしては30nm以上であることが好ましい。さらにまた、このような金属細線は、薄膜の細孔内において、密につまった状態で細孔内全体に連続的に形成していることがより好ましい。
【0058】
このような金属細線の平均直径が前記下限未満である場合には、量子素子(量子細線)及び触媒として用いた場合に耐久性及び耐熱性が不十分となる傾向にある。他方、金属細線の平均直径が前記上限を超える場合には、金属細線における表面原子の割合が減少して金属細線表面の特異性がマクロな物性として発現しにくくなる。また、金属細線の平均アスペクト比が10未満である場合には、選択的な結晶面があらわれにくくなるために触媒活性向上効果が不十分となり、量子素子等へ応用するためには長さが不十分となる。さらに、金属細線の長さが前記下限値未満の場合には、量子素子等へ応用するためにはその長さが不十分なものとなる傾向にある。
【0059】
なお、本発明に係る金属細線の平均直径及び平均アスペクト比とは、それぞれ透過型電子顕微鏡写真において無作為に抽出される20個の金属細線の直径及びアスペクト比(長さ/直径)の平均値をいう。
【0060】
更に、本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜においては、全金属細線のうち80%以上(本数基準)(好ましくは90%以上(本数基準))のものの直径が平均直径の±20%以内(好ましくは±5%以内)に入るという極めて優れた直径均一性を有している。このような直径均一性は、後述する本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法によって初めて達成されるものであり、従来の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜のように金属細線の均一性が不十分では半導体素子といった電子機能材料等に用いた場合に接触不良等の原因となり、電子機能材料等への適用が困難である。なお、上記金属細線の直径均一性は、例えば透過型電子顕微鏡写真において無作為に抽出される30本の各金属細線の直径(単一の金属細線の太さが不均一の場合はその平均直径)を測定し、得られた各金属細線の直径が全金属細線の平均直径に対してどの程度分散しているかを計算することにより求められる。
【0061】
また、本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜においては、用いるメソポーラスシリカ薄膜が表面凹凸の平均高さが50nm以下である本発明のメソポーラスシリカ薄膜であることが好ましい。このように表面平滑性に優れたメソポーラスシリカ薄膜を用いることにより、電子機能材料等に用いた場合における加工・接触不良等をより確実に防止することが可能となる。
【0062】
前記金属細線を構成する原子としては、金属原子であれば特に制限されないが、8族の金属、9族の金属、10族の金属、11族の金属、クロム(Cr)及びマンガン(Mn)からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属であることがより好ましく、貴金属原子であることが更に好ましい。
【0063】
本発明において、金属細線を形成させる際に用いる原料化合物は特に制限されないが、例えば、上記の金属の金属細線を形成する場合には上記の金属の塩又は錯塩を用いることができる。より具体的には、白金の金属細線の原料化合物として、H2PtCl6、Pt(NO2)2(NH3)2、[Pt(NH3)6]Cl4、H2Pt(OH)6、PtCl2(NH3)2、Pt(NH3)4Cl2、Pt(NH3)4(OH)2、Pt(NH3)4(OH)4、K2PtCl4、PtCl4、PtCl2等が挙げられる。
【0064】
このように本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜においては、十分なアスペクト比を有し、配列が均一で、しかも直径均一性に優れた金属細線を得ることでき、量子素子、触媒等に好適である。このような金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜は、以下に述べる製造方法により作製することができる。
【0065】
(金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法)
本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法は、
膜厚が1μm以下でかつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜と所定の金属のイオンを含有する溶液とを接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属イオンを担持せしめる金属イオン担持工程と、
前記金属イオン担持工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を還元剤の蒸気に接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記還元剤蒸気を導入する還元剤導入工程と、
前記還元剤導入工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜に光を照射して前記金属イオンを還元せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属からなる金属細線を形成せしめる光還元工程と、
前記光還元工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を400〜800℃の温度に加熱し、前記金属細線を成長せしめる焼結工程と、を含むことを特徴とする方法である。以下、上記各工程について詳細に説明する。
【0066】
先ず、金属イオン担持工程について説明する。メソポーラスシリカ薄膜を担体として用い、このような薄膜の細孔内及び細孔外に金属イオンを担持させる方法としては、上記の金属細線の原料化合物をメタノール、エタノール等のアルコール、水、ベンゼン等又はこれらの混合物に溶かし、その溶液(以下、担持液又は金属イオン含有溶液という)にメソポーラスシリカ薄膜を含浸させるなどして、その溶液と薄膜とを接触させることにより、メソポーラスシリカ薄膜の細孔内及び細孔外に所定の金属のイオンを担持させることができる。
【0067】
前記金属イオン含有溶液は、その溶液中における前記原料化合物の濃度が0.1〜50wt%であるものが好ましく、1〜20wt%であるものがより好ましい。このような金属イオン含有溶液の濃度が前記下限値未満である場合は、後述する金属イオン担持工程における金属イオンの担持量が不十分となる傾向があり、他方、前記上限値を超えると、金属イオン含有溶液が更に酸性となりメソポーラスシリカ薄膜の−Si−O−骨格が崩壊することにより、金属細線の形成が困難となる傾向がある。このような金属イオン含有溶液へのメソポーラスシリカ薄膜の含浸時間は、6時間以上であることが好ましく、15〜48時間であることがより好ましい。このような含浸時間が前記下限値未満の場合は、金属イオンの担持が不十分となり、金属細線の形成が困難となる傾向がある。
【0068】
ここで金属イオンとは、原料化合物である金属の塩又は錯塩等が溶液中で解離したものであり、通常、電荷をもつ原子または原子の集団をいい、錯塩が解離すると錯イオンが生じる。また、通常、水溶液において金属イオンは、アクア錯体として存在する。また、担持液が薄膜に接触することにより薄膜の細孔内及び細孔外に付着し溶媒が蒸発又は揮発すると、金属イオンは原料化合物である金属の塩又は錯塩などの安定な状態で存在すると推察される。しかしながら、本発明の製造方法においては、それぞれの製造工程においてそれらの存在状態を明確に判断することが困難であるため、前記金属のイオン、錯イオン、塩及び錯塩などを総称して、金属イオンということとする。
【0069】
また、金属イオン担持工程においては、上記金属イオンの細孔内への担持を促進させるために、薄膜を含浸させている溶液に超音波を印加することも可能である。また、このような方法の他に、固体状の金属細線の原料化合物とメソポーラスシリカ薄膜とを固相で混合し、密閉容器中で加熱した後、過剰の原料化合物を洗浄等により除去する方法、金属アルコキシド等の蒸気を発生するものや昇華しやすいものを原料に用い、それらの蒸気をメソポーラスシリカ薄膜と接触させることにより、その原料化合物をメソポーラスシリカ薄膜の細孔内に導入する方法も可能である。
【0070】
また、前記金属イオン担持工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の表面に前記細孔内と外部とを結ぶ新たな貫通孔を設ける孔形成工程、を更に含んでいてもよい。ここで貫通孔とは、細孔内と外部とを結ぶ穴又は切れ目等であればよく、その形状は特に制限されない。新たな貫通孔(開口部)を設ける方法としては特に制限はないが、例えば、メソポーラスシリカ薄膜の表面をカミソリ等で1mm又は0.5mm程度切れ目を入れるなどの方法が可能である。従来、金属イオンを担持するメソポーラスシリカ(シリカ多孔体)は粉末状のものであり、その粒の表面が外部の空間に接する面積が大きく、シリカ多孔体の細孔が外部の空間に接する面積も広かった。しかし、本発明の金属細線包接薄膜の製造方法に用いるメソポーラスシリカ薄膜は、その薄膜の一部が基板に接している。そのため、細孔がその外部の空間に接する面積が小さい。よって、金属イオンを担持させる際に、前記金属イオンが細孔内に入りにくいことから、このように新たな貫通孔を設けることにより、多量の金属イオンを細孔内に担持させることが可能となる。
【0071】
更に、金属イオン担持工程の少なくとも前工程として、真空排気工程を設けることが好ましい。メソポーラスシリカ薄膜は、空気中に放置すると簡単に水を吸着する。特にヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカ薄膜は極めて細長い孔を有しているので、一度水を物理吸着すると、細孔の奥にある水は簡単には外へ出られない。従って、薄膜の細孔内に水が吸着されている場合、金属イオン含有溶液が細孔内に入るのが困難となり、金属イオンが細孔内に担持されにくくなる傾向がある。
【0072】
次に、還元剤導入工程について説明する。還元剤導入工程においては、前記金属イオン担持工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を還元剤の蒸気に接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記還元剤蒸気を導入する。その際、細孔外に担持された前記金属イオンを除去することなく残存せしめた状態で還元剤の蒸気に接触せしめることが好ましい。このように細孔外に担持された金属イオンを残存せしめた状態で光還元工程を行うことにより、細孔内に金属がより密に詰まった金属細線を得ることができる傾向にある。なお、薄膜表面に析出した金属は、例えばアルコールをしみこませたコットンで軽くふきとることによって簡単に除去できる。
【0073】
このような前記金属イオンを除去することなく残存せしめた状態とは、具体的には、薄膜表面に金属イオン含有溶液が1cm2当たり、0.1〜700μl付着していることが好ましく、1〜500μl付着していることがより好ましい。
このような金属イオン含有溶液の付着量が前記下限値未満の場合は、薄膜表面に金属イオン含有溶液が均一に付着せず、金属イオンを還元せしめる際の薄膜の細孔内への金属イオンの供給量が不連続となり、金属細線の形成が困難となる傾向がある。他方、前記上限値を超えると、薄膜表面に金属イオン含有溶液が留まることができずに薄膜表面からこぼれる傾向がある。なお、前記金属イオン含有溶液の付着量は、マイクロピペットにより測定することが可能である。
【0074】
また、薄膜の細孔内及び細孔外(薄膜全体)に担持された金属イオンの量(μg)は、薄膜全体において1cm2当たり、0.001μg以上担持されていることが好ましく、0.01μg以上担持されていることがより好ましい。このような薄膜全体における金属イオンの担持量が前記下限値未満の場合は、細孔外に担持された金属イオンの細孔内への移動量が不十分となり、金属が細孔内に密に詰まった金属細線が作製できず、金属粒子となる傾向がある。
【0075】
前記還元剤の導入量は、その還元剤の飽和蒸気圧の1/20〜1/3とすることが好ましく、1/15〜1/5とすることがより好ましく、1/12〜1/8とすることが更に好ましい。このような還元剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコールが挙げられ、この中では還元力が強いことからメタノールが好ましい。
【0076】
また、前記還元剤導入工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に水蒸気を導入する水蒸気導入工程、を更に含むことが好ましい。このような水蒸気導入工程を設けることにより、細孔外に存在する金属イオンが水蒸気と共に細孔内に導入されることにより、細孔内により多くの金属が析出することとなると本発明者らは推察する。このような水蒸気の導入量は、飽和蒸気圧まで導入すると細孔内部に導入された水蒸気が液体状になり金属イオンを細孔外へ押し出すと考えられるため好ましくなく、飽和蒸気圧より低いことが好ましく、半分程度とすることがより好ましい。
【0077】
更に、還元剤導入工程の少なくとも前工程として、真空排気工程を設けることが好ましい。メソポーラスシリカ薄膜は、空気中に放置すると簡単に水を吸着する。特にヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカ薄膜は極めて細長い孔を有しているので、一度水を物理吸着すると、細孔の奥にある水は簡単には外へ出られない。このように細孔内に水が吸着され細孔内が濡れた状態になると、還元剤の導入量が減少し、後述の光還元工程において還元が不十分となる傾向がある。そこで、真空装置にメソポーラスシリカ薄膜を入れ真空排気することで、金属イオンの還元を確実に行うことが可能となる。
【0078】
上記還元剤および水の蒸気をメソポーラスシリカ薄膜の細孔内に導入する方法としては、まず、真空装置内にメソポーラスシリカ薄膜を入れ真空状態にする。
そこに上記蒸気圧を有する還元剤および水の蒸気を液ため容器のニードルバルブで圧力をコントロールしながら導入することができる。このような真空装置としては、温度をコントロールできる装置がより好ましい。
【0079】
次に、光還元工程を説明する。光還元工程は、前記還元剤導入工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜に光を照射して金属イオンを還元せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属からなる金属細線を形成せしめる工程である。光照射に用いる光は、特に限定されないが、紫外線であることが好ましい。
このような光照射には、高圧水銀ランプ等を用いることができ、照射時間は金属イオンが還元されればよく、特に限定されない。
【0080】
以下、金属細線形成の機構について説明する。例えば、原料化合物として塩化白金酸を用いた場合、塩化白金酸の化学式はH2PtCl6であり、水溶液中ではH+と(PtCl6)2−のイオンに分かれている。この溶液にメソポーラスシリカ薄膜を含浸させ、金属イオンを細孔内に担持せしめる。その後、薄膜の細孔内にメタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコールを導入すると、カルボニル基が配位した中間体である金属カルボニル[Pt3(CO)6]n 2−となり、更に光照射によりカルボニル基がとれて、白金金属Pt0に還元される。そして、先ず結晶の核が発生し、続いて離散的な粒状の金属細線が形成され、経時的に結晶が集合化して金属細線の形状となる。このような還元のスピード及び集合化のスピードをコントロールすることにより、金属細線又は金属粒子に形状を制御することも可能である。
【0081】
本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法においては、前述の光還元工程の後に、光還元工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を400〜800℃の温度に加熱して前記金属細線を成長せしめる焼結工程が必要である。
このような加熱処理(焼結工程)の温度は、400〜800℃であることが必要であり、500〜700℃であることがより好ましい。このような加熱処理の温度が前記下限値未満の場合は、金属細線の太さ及びその均一性、更には結晶性の向上が十分に達成されず、前述の直径均一性に優れた本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜が得られない。他方、このような加熱処理の温度が前記上限値を超える場合は、金属がメソポーラスシリカ薄膜の細孔から流出してしまう。
【0082】
また、このような加熱処理(焼結工程)の雰囲気としては、酸素濃度が2〜40容量%である酸素含有雰囲気であることが好ましく、酸素以外に窒素、不活性ガス等を含有しているものがより好ましいが、大気中であってもよい。このように酸素を含有する雰囲気中で加熱処理することにより、金属原子が蒸発し易くなる傾向にある。
【0083】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0084】
実施例1
(メソポーラスシリカ薄膜の作製)
テトラメトキシシラン(Si(OCH3)4、以下「TMOS」という)15.22g(0.10mol)にH2O4.0ml及び2N−HCl100μlを静かに添加し、マグネチック・スターラ(回転速度200rpm/min)を用いて1時間攪拌することによりTMOS部分重合体を含む溶液を得た。次に、界面活性剤である塩化セチルトリメチルアンモニウム(以下、「C16TMACl」という)4.16g(0.013mol)及びH2O10mlを混合し、マグネチック・スターラで攪拌しながら50℃に加温し、界面活性剤を溶解させた。その後、室温まで自然に冷まし、2N−HCl水溶液100μlを更に加え、混合することにより界面活性剤溶液を得た。
【0085】
上記TMOS部分重合体を含む溶液に界面活性剤溶液を加えて20分間攪拌した。その後、エタノール(以下、「EtOH」)40mlを加え、マグネチック・スターラの回転速度を300rpm/minに上昇させて20分間攪拌することにより、テトラメトキシシランと界面活性剤とからなる複合体を含むシリカ前駆体溶液(以下「TMOS複合体溶液」という)を調整した。なお、TMOS複合体溶液における水の含有量はTMOS1molに対して8molであり、アルコールの含有量は79容量%である。
【0086】
次に、基板引き上げ装置(SIGMA社製;SG SP 26−100)をビニールBOX内に設置し、ディップコーティング法で薄膜形成工程を行った。前記装置を用いて基板をTMOS複合体溶液中へ20mm/minの速度で浸漬し、溶液内で30秒静置した後20mm/minの速度で引き上げた。基板には、希フッ酸(HF:H2O=1:50)で表面処理を行ったシリコンウェハ(2cm×5cm)を用いた。なお、この薄膜形成工程の相対湿度は30%に固定して行った。次に、TMOS複合体溶液が付着した基板を室温で24時間風乾し、100℃で1時間乾燥した。その後、400℃、1リットル/min大気流通下で4時間焼成(昇温速度100℃/h)することにより、膜厚が0.4μmのメソポーラスシリカ薄膜を得た。
【0087】
(表面平滑性の測定)
本実施例で得られたメソポーラスシリカ薄膜の表面平滑性を、日本真空技術社製触針式表面形状測定器(DEKTAK3ST、垂直方向分解能は最高1オングストローム)を用いて測定した。得られた結果を図1に示す。図1に示した結果から明らかなように、本実施例で得られたメソポーラスシリカ薄膜は、表面の凹凸の平均高さが約20nmのものであり、表面平滑性が非常に高いことが確認された。
【0088】
(X線回折測定)
本実施例で得られたメソポーラスシリカ薄膜のX線回折測定を、リガク社製RINT−2000を用いて行った。その際、線源Cu、X線管電圧40kV、X線管電流30mAという条件とし、入射スリットと受光スリットをDS:0.5、SS:0.5、RS:0.3とした。
【0089】
また、前記シリカ前駆体溶液(TMOS複合体溶液)を室温で18時間放置し、その溶液を用いた以外は上記実施例と同様にしてメソポーラスシリカ薄膜を得た。そして、そのメソポーラスシリカ薄膜についても同様にX線回折測定を行った。
【0090】
このようにして得られたX線回折測定の結果を図2に示す。図2に示した結果から明らかなように、本実施例で得られたシリカ前駆体溶液は経時劣化が十分に抑制され、長時間にわたって結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜を得られることが確認された。また、得られたメソポーラスシリカ薄膜の中心細孔直径は3nmであった。
【0091】
比較例1
TMOS15.22g(0.10mol)にH2O4.0ml及び2N−HCl100μlを静かに添加し、更に加水分解による発熱反応が治まった後に2N−HCl200μlを追加し、マグネチック・スターラ(回転速度200rpm/min)を用いて1時間攪拌することによりTMOS部分重合体を含む溶液を得た。次に、界面活性剤であるアルドリッチ製ポリブロックコポリマーPluronic P123(poly(ethylene oxide)20−poly(propylene oxide)70−poly(ethylene oxide)20)7.20g(0.0012mol)、H2O10.0ml及びエタノール10mlを混合し、マグネチック・スターラで攪拌しながら50℃に加温し、界面活性剤を溶解させた。その後、室温まで自然に冷まし、2N−HCl水溶液100μlを更に加え、混合することにより界面活性剤溶液を得た。
【0092】
上記TMOS部分重合体を含む溶液に界面活性剤溶液を加えて20分間攪拌した。その後、H2O40.0mlを加え、マグネチック・スターラの回転速度を300rpm/minに上昇させて20分間攪拌することにより、シリカ前駆体溶液(TMOS複合体溶液)を調整した。なお、TMOS複合体溶液における水の含有量はTMOS1molに対して30molであり、アルコールの含有量は16容量%である。
【0093】
このようにして得られたTMOS複合体溶液と、その溶液を室温で50分間放置した後のものをそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にしてメソポーラスシリカ薄膜を作製し、それらについてX線回折測定を行った。得られたX線回折測定の結果を図3に示す。図3に示した結果から明らかなように、本比較例で得られたシリカ前駆体溶液は経時劣化が激しく、長時間にわたって結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜を得ることができなかったことが確認された。
【0094】
比較例2
エタノール40mlに代えてエタノール20mlと水20mlの混合溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてシリカ前駆体溶液(TMOS複合体溶液)を調整した。なお、TMOS複合体溶液における水の含有量はTMOS1molに対して19molであり、アルコールの含有量は37容量%である。
【0095】
このようにして得られたTMOS複合体溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてメソポーラスシリカ薄膜を作製し、表面平滑性を測定した。得られた結果を図4に示す。図4に示した結果から明らかなように、本比較例で得られたメソポーラスシリカ薄膜は、表面の凹凸の平均高さが約100nmのものであり、表面平滑性が劣っていることが確認された。
【0096】
実施例2
エタノール40mlに代えてエタノール38mlと水2mlの混合溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてシリカ前駆体溶液(TMOS複合体溶液)を調整した。なお、TMOS複合体溶液における水の含有量はTMOS1molに対して9molであり、アルコールの含有量は70容量%である。
【0097】
このようにして得られたTMOS複合体溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてメソポーラスシリカ薄膜を作製し、表面平滑性を測定したところ、表面の凹凸の平均高さが約20nm程度であり、実施例1で得られたものと同様に表面平滑性に優れていることが確認された。
【0098】
実施例3
エタノール40mlに代えてエタノール35mlと水5mlの混合溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてシリカ前駆体溶液(TMOS複合体溶液)を調整した。なお、TMOS複合体溶液における水の含有量はTMOS1molに対して11molであり、アルコールの含有量は65容量%である。
【0099】
このようにして得られたTMOS複合体溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてメソポーラスシリカ薄膜を作製し、表面平滑性を測定したところ、表面の凹凸の平均高さが約25nm程度であり、実施例1で得られたものと同様に表面平滑性に優れていることが確認された。
【0100】
比較例3
エタノール40mlに代えてエタノール30mlと水10mlの混合溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてシリカ前駆体溶液(TMOS複合体溶液)を調整した。なお、TMOS複合体溶液における水の含有量はTMOS1molに対して13molであり、アルコールの含有量は56容量%である。
【0101】
このようにして得られたTMOS複合体溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてメソポーラスシリカ薄膜を作製し、表面平滑性を測定したところ、表面の凹凸の平均高さは約60nm程度であり、表面平滑性に劣っていることが確認された。
【0102】
実施例4〜6及び比較例4〜5
(メソポーラスシリカ薄膜の作製)
TMOS91.32g(0.6mol)にH2O24.0ml及び2N−HCl100μlを静かに添加し、更に加水分解による発熱反応が治まった後に2N−HCl60μlを追加し、マグネチック・スターラ(回転速度200rpm/min)を用いて1時間攪拌することによりTMOS部分重合体を含む溶液を得た。次に、界面活性剤であるアルドリッチ製ポリブロックコポリマーPluronic P123(poly(ethylene oxide)20−poly(propylene oxide)70−poly(ethylene oxide)20)43.2g(0.00732mol)、H2O60.0ml及びエタノール60mlを混合し、マグネチック・スターラで攪拌しながら50℃に加温し、界面活性剤を溶解させた。その後、室温まで自然に冷まし、2N−HCl水溶液600μlを更に加え、混合することにより界面活性剤溶液を得た。
【0103】
上記TMOS部分重合体を含む溶液に界面活性剤溶液を加えて20分間攪拌した。その後、エタノール120mlと水120mlの混合溶液を加え、マグネチック・スターラの回転速度を300rpm/minに上昇させて20分間攪拌することにより、シリカ前駆体溶液(TMOS複合体溶液)を調整した。なお、TMOS複合体溶液における水の含有量はTMOS1molに対して18molであり、アルコールの含有量は47容量%である。
【0104】
次に、基板引き上げ装置(SIGMA社製;SG SP 26−100)をビニールBOX内に設置し、ディップコーティング法で薄膜形成工程を行った。前記装置を用いて基板をTMOS複合体溶液中へ20mm/minの速度で浸漬し、溶液内で30秒静置した後20mm/minの速度で引き上げた。基板には、希フッ酸(HF:H2O=1:50)で表面処理を行ったシリコンウェハ(2cm×5cm)を用いた。なお、この薄膜形成工程の相対湿度は30%に固定して行った。次に、TMOS複合体溶液が付着した基板を室温で24時間風乾し、100℃で1時間乾燥した。その後、400℃、酸素含有窒素雰囲気(O2:N2=200ml/min:800ml/min)下で4時間焼成(昇温速度100℃/h)することにより、膜厚が0.4μmのメソポーラスシリカ薄膜を得た。
また、得られたメソポーラスシリカ薄膜の中心細孔直径は8nmであった。
【0105】
(金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の作製)
得られたメソポーラスシリカ薄膜に安全カミソリを用いて、配向面に対し斜めに0.5mm間隔程度の新たな貫通孔を設けた。そのメソポーラスシリカ薄膜を温度制御できる真空ポンプ(真空機工製;GVD−050A)を備えた真空装置に入れ、24時間真空排気した。また、田中貴金属社製15wt%H2PtCl6水溶液を用いて、15wt%H2PtCl65cc、水10cc、エタノール10ccを混合することにより金属イオン含有溶液を調製し、この溶液に真空排気したメソポーラスシリカ薄膜を入れ、超音波洗浄機(エスエヌディ製;US−1)中で超音波分散を10分間行い、そのまま24時間含浸させた。メソポーラスシリカ薄膜を引き上げ、薄膜表面に付着した担持液を除去することなく残存せしめた状態で再度真空装置に薄膜を入れ、24時間真空排気した。その後、温度を25℃に設定し、真空装置内に蒸気圧10Torrの水蒸気を導入することにより、蒸気圧10Torrの水蒸気に薄膜を10分間曝し、同様にして蒸気圧10Torrのメタノール(還元剤)の蒸気に薄膜を10分間曝すことにより、還元剤蒸気をメソポーラスシリカ薄膜の細孔内に導入した。
【0106】
次に、還元剤が導入された薄膜に超高圧水銀ランプ(ウシオ電機製、品番UXM−500SX)を用いて、紫外線(波長365nm、光強度13mW/cm2)を72時間照射しPt4+をPt0の金属に還元した。なお、サンプル位置での光の強度は7mW/cm2であった。その後、残留ガスを除去するために室温で6時間真空乾燥した。
【0107】
更に、実施例4〜6においては、上記のようにして得られた細孔内に金属細線を含むメソポーラスシリカ薄膜を反応管に入れ、大気中で500℃(実施例4)、600℃(実施例5)、700℃(実施例6)で3時間加熱した。なお、昇温速度は150℃/hとし、空気の流速は1000ml/minとした。
【0108】
また、比較例5においては、上記のようにして得られた細孔内に金属細線を含むメソポーラスシリカ薄膜を反応管に入れ、水素雰囲気中で400℃で2時間加熱した。なお、昇温速度は200℃/hとし、水素ガスの流速はH2:N2=50ml/min:50ml/minとした。
【0109】
(金属細線の評価)
このようにして得られた細孔内に金属細線を含むメソポーラスシリカ薄膜における金属細線及び金属粒子の状態を日本電子製透過電子顕微鏡(TEM:JEM2000EX)を用いて観察し、金属細線の平均直径、長さ、平均アスペクト比、直径均一性{全金属細線のうち80%以上のものの直径が分布している範囲(平均直径の±X%以内の範囲)}、及び金属粒子の直径を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0110】
なお、観察用サンプルとしては、細孔内にPtワイヤを含むメソポーラスシリカ薄膜を針で削り取り、日新EM製マイクログリッド添付メッシュに乗せて作製したものを用いた。なお、この手法でサンプルを作製した場合は、膜厚が削り取った薄膜の表面積に比べて極小なため、ほとんどの場合薄膜を真上(表面)から観察することになる。
【0111】
また、一部のサンプルのPt形状を詳しく見るために、以下のようにPtワイヤを薄膜から抽出した。すなわち、削り取った薄膜を2mlのサンプルチューブにEtOHで流し込んで集め、室温乾燥させ、そこへメソポーラスシリカを溶かすためのフッ酸1.5wt%とPt同士の接着を防ぐための1−ドデカンチオール2.5wt%を含んだEtOHを少量加え、2分間振り混ぜてメソポーラスシリカを溶かした。サンプルチューブ内の液に日本電子製C膜付きマイクログリッドを浸して試料を付着させ、エタノールで洗浄を行った。
【0112】
【表1】
【0113】
表1に示した結果から明らかなように、500℃大気処理品からは長さが約30〜320nmで均一な太さを有するPt細線および直径約2〜4nmのPt粒子が観察され、加熱処理を行うことによってPt細線が長くなると共に直径均一性が著しく向上し、Pt粒子も大きくなることがわかった。
【0114】
また、600℃大気処理品からは長さ約50〜120nmのPt細線および直径約4〜8nmのPt粒子が観察された。Pt細線は500℃大気処理品と比べて長さが短くなったが太さがより均一になり、Pt粒子は直径が大きくなった。Pt粒子が大きくなった理由は、500℃よりも600℃というより高温で処理することによってPtの運動エネルギーが大きくなり、凝集性が促進されたことが原因と考えられる。また、Pt細線が短くなった理由は、細線よりも表面積が小さくエネルギー的に安定な粒子化に向けて凝集が促進されたが、細孔壁に阻まれたために太い細線になったと考えられる。また、この時にPtが細孔内の隙間を埋め尽くしたため、細線の太さがより均一になったと考えられる。更に、このようにして得られたPt細線には格子像が見られ、欠陥の少ない単結晶性Ptであることが確認された。
【0115】
更に、700℃大気処理品からは長さ約70〜100nmのPt細線および直径約7〜50nmのPt粒子(Pt塊)が観察された。Pt細線は600℃大気処理品と比べて更に長さが短くなったが太さがより均一になり、Pt粒子は更に直径が大きくなった。
【0116】
一方、400℃水素雰囲気処理品からは長さ約20〜120nmのPt細線と直径約1〜4nmのPt粒子が存在することが確認されたが、このPt細線は加熱処理前のものと同様に直径均一性に劣るものであり、Pt粒子の直径は加熱処理前と比べて大小両方に幅が広がっていた。このようになった理由としては、400℃水素雰囲気処理ではPtに十分な運動エネルギーを与えることが出来なかったことが考えられる。また、Pt粒子の直径の幅が広がった原因としては以下のように考えられる。すなわち、加熱処理前には還元が不完全でPtメタルとPt塩が混在していたと思われるが、400℃水素雰囲気は還元性が強く、残存していたPt塩をPtメタルに還元したと考えられる。加熱処理前にPt塩として点在してTEMでは観察できなかったものがPt微粒子として、またTEMで観察できたPt粒子の近辺に存在していたPt塩がPt粒子と結合・還元して大きな粒子になったことが考えられる。
【0117】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法によれば、表面平滑性に優れたメソポーラスシリカ薄膜を得ることができ、しかも長時間にわたって結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜を得ることが可能となる。したがって、本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法により得ることが可能となる本発明のメソポーラスシリカ薄膜は、表面平滑性に優れており電子機能材料等への応用に非常に適したものである。
【0118】
また、本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法によれば、太くかつ均一性に優れた金属細線を得ることができ、しかも金属細線の結晶性を向上させることも可能となる。したがって、本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法により得ることが可能となる本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜は、金属細線の直径均一性に優れており電子機能材料等への応用に非常に適したものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたメソポーラスシリカ薄膜の表面平滑性を示すグラフである。
【図2】実施例1で得られたシリカ前駆体溶液の経時劣化の度合いを示すグラフである。
【図3】比較例1で得られたシリカ前駆体溶液の経時劣化の度合いを示すグラフである。
【図4】比較例2で得られたメソポーラスシリカ薄膜の表面平滑性を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、メソポーラスシリカ薄膜、金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜及びそれらの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、FSM−16、MCM−41、HMM−1等のメソ細孔を有する粉末担体内に金属細線及び金属粒子を鋳型合成し、半導体素子等といった電子機能材料等に応用しようとする研究が盛んに行われている。例えば、特開2002−102698号公報(特許文献1)においては、中心細孔直径が1〜50nmである細孔を有する粉末状のシリカメソ多孔体(メソポーラスシリカ)の細孔内に、平均直径が1〜50nmであり且つ平均アスペクト比が3以上である金属細線を光還元法により形成せしめることが開示されている。
【0003】
しかしながら、特開2002−102698号公報に記載のような光還元法により金属細線を形成せしめた金属細線包接シリカメソ多孔体であっても、得られる金属細線の太さとその均一性の向上、更には結晶性の向上に限界があり、半導体素子等の電子機能材料として十分に機能しない可能性があるという問題があった。
【0004】
また、メソ細孔を有する担体として粉末よりデバイスへの応用が比較的容易なシリカメソ多孔体薄膜(メソポーラスシリカ薄膜)の研究もなされており、例えば、特開2001−130911号公報(特許文献2)においては、界面活性剤を鋳型としてシリコンアルコキシド部分重合体を酸性溶液中で反応させて薄膜化することにより膜厚が1μm以下でかつ中心細孔直径が1〜50nmであるシリカメソ多孔体薄膜を製造する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、特開2001−130911号公報に記載のような方法により得られる従来のシリカメソ多孔体薄膜はいずれも、その表面に比較的大きな凹凸が存在しており、半導体素子といった電子機能材料等への適用が困難であるという問題があった。更に、特開2001−130911号公報に記載のような従来の方法においては、原料として用いるシリコンアルコキシド部分重合体と界面活性剤との複合体を含む酸性溶液(シリカ前駆体溶液)が非常に経時劣化し易く、長時間にわたって結晶性の高いシリカメソ多孔体薄膜を得ることができないという問題もあり、この点も得られるシリカメソ多孔体薄膜の電子機能材料等への適用を阻害する要因であった。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−102698号公報
【特許文献2】
特開2001−130911号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、本発明の第1の目的は、得られるメソポーラスシリカ薄膜が表面平滑性に優れたものであり、しかも長時間にわたって結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜を得ることが可能なメソポーラスシリカ薄膜の製造方法、並びに表面平滑性に優れており電子機能材料等への応用に適したメソポーラスシリカ薄膜を提供することにある。
【0007】
また、本発明の第2の目的は、太くかつ均一性に優れた金属細線を得ることができ、しかも金属細線の結晶性を向上させることも可能な金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法、並びに金属細線の直径均一性に優れており電子機能材料等への応用に適した金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、先ず、前記第1の目的に関して以下の知見を得た。すなわち、メソポーラスシリカ薄膜を得る際に原料として用いるシリカ前駆体溶液として、従来は水か水と有機溶媒との混合溶媒が用いられていた。しかしながら、混合溶媒を用いる場合、水の含有量が多過ぎるとシリコンアルコキシドの加水分解、縮合が進みすぎてシリカ前駆体溶液がゲル化してしまい、他方、有機溶媒の含有量が多過ぎるとシリコンアルコキシドの加水分解、縮合が進み難く、メソポーラスシリカを形成し得ない、或いは形成できた場合でも膜厚が薄くなり過ぎて均一な品質が得られないということが当業者の従来の一般的な認識であった。それに対し、本発明者らは、シリカ前駆体溶液中の特にアルコールの含有量に着目して鋭意研究を重ねた結果、シリカ前駆体溶液において所定量の水と所定量のアルコールとの混合溶媒を用いることにより、驚くべきことに得られるメソポーラスシリカ薄膜の表面平滑性が著しく向上し、しかもシリカ前駆体溶液の経時劣化が抑制されて長時間にわたって結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜を得ることが可能となるということを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
また、本発明者らは、前記第2の目的に関して以下の知見を得た。すなわち、光還元法により金属細線を形成せしめた金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜を更に所定の温度に加熱することにより金属細線が成長し、金属細線が太くなるのみならずその直径均一性が著しく向上し、しかも金属細線の結晶性を向上させることも可能となるということを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法は、
シリコンアルコキシドを酸性溶液中で反応させ、シリコンアルコキシド部分重合体を含む液体を得る部分重合工程と、
前記液体に界面活性剤を添加し、前記シリコンアルコキシド部分重合体と前記界面活性剤とからなる複合体を形成せしめる複合体形成工程と、
前記複合体を含む液体を薄膜化し加熱乾燥して前記複合体を反応させることにより、前記界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜を形成せしめる薄膜形成工程と、
を含むメソポーラスシリカ薄膜の製造方法であって、前記複合体形成工程において溶媒として水とアルコールとの混合溶媒を用い、前記混合溶媒における水の含有量が前記シリコンアルコキシド1molに対して4〜15molであり、かつ、前記混合溶媒におけるアルコールの含有量が65〜98容量%であることを特徴とする、表面の凹凸の平均高さが50nm以下であるという表面平滑性を有しているメソポーラスシリカ薄膜を製造する方法である。
【0011】
更に、本発明のメソポーラスシリカ薄膜は、膜厚が1μm以下でかつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜であって、表面の凹凸の平均高さが50nm以下であるという表面平滑性を有していることを特徴とするものである。
【0012】
なお、本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法によって表面平滑性が著しく向上する理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、シリコンアルコキシドに水と酸を混合することによってシリコンアルコキシドのアルコキシ基は加水分解反応によってアルコールを放出してシラノール基となり、さらにこれが脱水縮合することによってシリコンアルコキシドが鎖状に繋がり、脱水縮合に使用されなかったシラノール基はそのまま存在することになる。かかるシラノール基は親水性であるため、鎖状に繋がったシリコンアルコキシド(以下、「鎖状シリコンアルコキシド」という)は親水性の溶媒に膨潤する。
一方、本発明にかかる混合溶媒に用いる水及びアルコールは両者とも親水性の溶媒であるため鎖状シリコンアルコキシドは両者へ膨潤するが、水及びアルコールへの膨潤率は異なる。そのため、シリカ前駆体溶液を薄膜化して加熱乾燥する際に体積に差が出て従来は表面に凹凸が出来たと考えられる。それに対して、本発明においては、混合溶媒中のアルコールの比率を従来より大幅に増加させて所定の比率とすることにより、水による加水分解反応を妨げることなく表面の凹凸が発生する部位を著しく減少させることができ、表面が平滑なメソポーラスシリカ薄膜が得られると本発明者らは推察する。
【0013】
また、本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法によってシリカ前駆体溶液の経時劣化が抑制される理由も定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明においては、シリカ前駆体溶液に含まれる水の比率を従来より大幅に低下させて所定の比率とすることにより、シリコンアルコキシド部分重合体の縮合の進行を遅らせることができ、ゲル化が十分に抑制される。それによってシリカ前駆体溶液が本来有する性質が長時間にわたって保持され、高水準の結晶性を有するメソポーラスシリカ薄膜が長時間にわたって得られるようになると本発明者らは推察する。
【0014】
更に、本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法は、
膜厚が1μm以下でかつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜と所定の金属のイオンを含有する溶液とを接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属イオンを担持せしめる金属イオン担持工程と、
前記金属イオン担持工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を還元剤の蒸気に接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記還元剤蒸気を導入する還元剤導入工程と、
前記還元剤導入工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜に光を照射して前記金属イオンを還元せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属からなる金属細線を形成せしめる光還元工程と、
前記光還元工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を400〜800℃の温度に加熱し、前記金属細線を成長せしめる焼結工程と、を含むことを特徴とする、全金属細線のうち80%以上のものの直径が平均直径の±20%以内に入るという直径均一性を有している金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜を製造する方法である。
【0015】
また、本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜は、膜厚が1μm以下でかつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜と、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に形成されている平均直径が1〜50nmでかつ平均アスペクト比が10以上である金属細線とを備える金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜であって、全金属細線のうち80%以上のものの直径が平均直径の±20%以内に入るという直径均一性を有していることを特徴とするものである。
【0016】
なお、本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法によって金属細線が成長して直径均一性が著しく向上し、結晶性も向上する理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、光還元により得られた金属細線を所定の温度で加熱処理することにより、いわゆるシンタリング(焼結)効果が得られ、(i)点在する金属粒子が2次元ブラウン運動をしながら薄膜細孔内表面を移動して衝突・結合したり、(ii)金属原子が小粒子(既存短細線)から乖離(蒸発)し、薄膜細孔内表面あるいは気相中を移動して大粒子(既存長細線)に捕捉(凝縮)されたり、あるいは(iii)加熱することによって細孔壁のSi−OHが脱水縮合して壁が収縮し、壁の移動に伴って壁に付着していた金属粒子同士で融合することとなる。それによってかかる加熱処理前よりも金属細線が成長し、細孔内を比較的密に埋めることにより太さも均一となり、同時に結晶性も高くなると本発明者らは推察する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0018】
(メソポーラスシリカ薄膜)
本発明のメソポーラスシリカ薄膜は、膜厚が1μm以下であり、かつ中心細孔直径が1〜50nmであるものである。前記メソポーラスシリカ薄膜とは、メソ孔を有するシリカ多孔体であり、薄膜という場合はその厚さが1μm以下であり、0.1〜0.5μmであることがより好ましく、表面積に対して厚さが無視できるような存在状態をいい、塊上の結晶・固体などの3次元的な広がりを持ちかさばった状態の物質とは異なる意味で用いられる。このようなメソポーラスシリカ薄膜の膜厚が1μmを超える場合、メソポーラスシリカ薄膜の細孔配列の均一性が悪くなり、また焼成時において膜収縮のひずみによりワレが発生しやすくなる傾向にある。しかしながら、1μm以下の膜厚のメソポーラスシリカ薄膜を作製し、再度その上にメソポーラスシリカ薄膜を作製することにより、細孔配列の均一性の高いメソポーラスシリカ薄膜を積層し、そのような積層を繰り返すことにより、積層した薄膜の膜厚が1μm以上であるものを作製することができる。
【0019】
前記中心細孔直径とは、細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径である。なお、細孔径分布曲線は、次に述べる方法により求めることができる。すなわち、メソポーラスシリカ薄膜を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法あるいは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得る。この吸着等温線を用い、Cranston−Inklay法、Pollimore−Heal法、BJH法等の計算法により細孔径分布曲線を求めることができる。本発明に係るメソポーラスシリカ薄膜において、中心細孔直径が1nm未満の場合は金属イオン含有溶液が細孔内に導入されにくくなり、金属イオンの担持が困難となり、他方、中心細孔直径が50nmを超える場合は薄膜の空隙率が過剰に大きくなり、薄膜の強度が不十分となる。
【0020】
更に、本発明のメソポーラスシリカ薄膜においては、表面の凹凸の平均高さが50nm以下、好ましくは30nm以下、という極めて優れた表面平滑性を有している。このような表面平滑性は、後述する本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法によって初めて達成されるものであり、従来のメソポーラスシリカ薄膜のように表面の凹凸の平均高さが50nmを超えていると、半導体素子といった電子機能材料等に用いた場合に加工・接触不良等の原因となり、電子機能材料等への適用が困難である。したがって、本発明のメソポーラスシリカ薄膜は、後述する本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の作製に好適である。なお、メソポーラスシリカ薄膜表面の凹凸の平均高さは、例えば日本真空技術社製触針式表面形状測定器(DEKTAK3ST、垂直方向分解能は最高1オングストローム)を用いて薄膜表面の異なる複数箇所を(好ましくは測定距離1000μm以上で5回)測定し、測定された凹凸の高さの平均値を算出した値である。
【0021】
このようなメソポーラスシリカ薄膜は界面活性剤を鋳型とし、シリコンアルコキシドなどをシリカ源として作製されるものであり、このようなシリカ源としては−Si−O−結合を形成し得る化合物であれば特に限定されない。かかる薄膜は、例えばケイ素酸化物からなり、ケイ素原子が酸素原子を介して結合した骨格−Si−O−を基本とし、高度に架橋した網目構造を有している。このようなケイ素酸化物においては、ケイ素原子の少なくとも一部が有機基の2箇所以上で炭素−ケイ素結合を形成しているものでもよい。このような有機基としては、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、ベンゼン、シクロアルカン等の炭化水素から2以上の水素がとれて生じる2価以上の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、有機基は、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルフォン基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、ビニル基等を有するものであってもよい。また、このようなメソポーラスシリカ薄膜においては、その骨格中に、アルミニウム、チタン、マグネシウム、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、モリブデン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ベリリウム、イットリウム、ランタン、ハフニウム、スズ、鉛、バナジウム、ホウ素等の無機系成分を含んでいてもよい。
【0022】
また、本発明に係るメソポーラスシリカ薄膜は、X線回折測定において1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有することが好ましい。このようなX線回折のピークは、そのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1nm以上の間隔で規則的に配列していることを意味する。
【0023】
また、本発明に係るメソポーラスシリカ薄膜が有する細孔は、薄膜の表面のみならず内部にも形成される。かかる薄膜における細孔の配列状態(細孔配列構造又は構造)は特に制限されないが、2d−ヘキサゴナル構造、3d−ヘキサゴナル構造又はキュービック構造であることが好ましい。また、このような細孔配列構造は、ディスオーダの細孔配列構造を有するものであってもよい。
【0024】
ここで、薄膜がヘキサゴナルの細孔配列構造を有するとは、薄膜の細孔の配置が六方構造であることを意味する(S.Inagaki,et al.,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,680,1993;S.Inagaki,et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,69,1449;1996、Q.Huoetal.,Science,268,1324,1995参照)。また、薄膜がキュービックの細孔配列構造を有するとは、薄膜中の細孔の配置が立方構造であることを意味する(J.C.Vartuli et al.,Chem.Mater.,6,2317,1994;Q.Huoetal.,Nature,368,317,1994参照)。また、薄膜がディスオーダの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が不規則であることを意味する(P.T.Tanev et al.,Science,267,865,1995;S.A.Bagshawet al.,Science,269,1242,1995;R.Ryoo et al.,J.Phys.Chem.,100,17718,1996参照)。また、前記キュービック構造は、Pm−3n、Im−3m又はFm−3m対称性であることが好ましい。なお、前記対称性とは、空間群の表記法に基づいて決定されるものである。
【0025】
なお、薄膜がヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造を有する場合は、細孔の全てがこれらの規則的細孔配列構造である必要はない。すなわち、薄膜は、ヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造とディスオーダの不規則的細孔配列構造の両方を有していてもよい。しかしながら、全ての細孔のうち80%以上がヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造となっていることが好ましい。
【0026】
(メソポーラスシリカ薄膜の製造方法)
本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法は、前述したシリコンアルコキシドをシリカ源として酸性溶媒中で反応せしめシリコンアルコキシド部分重合体を含む液体を得る部分重合工程と、前記シリコンアルコキシド部分重合体と界面活性剤溶液とを接触せしめ、前記シリコンアルコキシド部分重合体と前記界面活性剤とからなる複合体を形成せしめる複合体形成工程と、前記複合体を含む液体を薄膜化し加熱乾燥して前記複合体を反応させることにより界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜を形成せしめる薄膜形成工程と、を含む方法である。そして、本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法においては、前記複合体形成工程において溶媒として水とアルコールとの混合溶媒を用い、前記混合溶媒における水の含有量が前記シリコンアルコキシド1molに対して4〜15molであり、かつ、前記混合溶媒におけるアルコールの含有量が65〜98容量%であることが必要である。以下、上記の各工程について詳述する。
【0027】
前記部分重合工程においては、シリコンアルコキシドを酸性溶媒中で反応せしめることにより、シリコンアルコキシド部分重合体を含む液体が得られる。ここで、シリコンアルコキシドとは下記一般式(2)で表されるものである。
【0028】
A(4−a)−Si−(O−R)a (2)
[式(2)中、Rは炭化水素基を表し、Aは水素原子、ハロゲン原子、水酸基又は炭化水素基を表し、aは1〜4の整数を表す。]
上記一般式(2)中、Rで表される炭化水素基としては、例えば、鎖式、環式、脂環式の炭化水素基を挙げることができる。このような炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜5の鎖式アルキル基であり、より好ましくはメチル基またはエチル基である。また、Aが炭化水素基である場合、その炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜10のアルキル基、炭素数が2〜10のアルケニル基、フェニル基、置換フェニル基を挙げることができる。上記一般式(2)で表されるシリコンアルコキシドは1種のみ用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記一般式(2)で表されるシリコンアルコキシドとしては、結晶性の良好なメソポーラスシリカ薄膜を得ることができることから、Si(OCH3)4で表されるテトラメトキシシラン(TMOS)、及びSi(OC2H5)4で表されるテトラエトキシシラン(TEOS)を用いることが好ましい。
【0030】
上記シリコンアルコキシドが有するアルコキシル基(−O−R)は酸性条件下で加水分解を受け水酸基(−OH)となり、その水酸基部分が縮合して高分子量化する。なお、シリコンアルコキシドがアルコキシル基以外に水酸基やハロゲン原子を有している場合はこれらの官能基が加水分解反応に寄与する場合もありうる。したがって、シリコンアルコキシド部分重合体とは、加水分解反応および縮合反応によって得られる重合体であって、アルコキシル基(−O−R)及び/又は水酸基(−OH)の一部が未反応のまま残存している重合体を意味する。
【0031】
前記シリコンアルコキシド部分重合体は、シリコンアルコキシドを酸性溶媒(塩酸、硝酸等の水溶液又はアルコール溶液等)中で攪拌することにより得ることができる。なお、前記酸性溶媒に含まれる酸としては、上記の酸の他にホウ酸、臭素酸、フッ素酸、硫酸、リン酸が挙げられ、これらのうちの2種以上を混合して用いることもできる。シリコンアルコキシドのアルコキシル基の加水分解反応はpHが低い領域で起こりやすいことから、系のpHを低くすることにより部分重合を促進することが可能である。なお、部分重合工程における反応温度は、例えば、15〜25℃とすることができ、反応時間は30〜90分とすることができる。
【0032】
次に、複合体形成工程においては、前記部分重合工程により得られたシリコンアルコキシド部分重合体と界面活性剤とを接触せしめ、前記シリコンアルコキシド部分重合体と前記界面活性剤とからなる複合体を形成せしめる。
【0033】
このような界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性のうちのいずれであってもよく、具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム、ベンジルアンモニウム等の塩化物、臭化物、ヨウ化物あるいは水酸化物;脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤、一級アルキルアミン等が挙げられる。
【0034】
上記の界面活性剤のうち、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤としては、疎水性成分として炭化水素基、親水性部分としてポリエチレンオキサイドをそれぞれ有するポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤等が挙げられる。このような界面活性剤としては、例えば、一般式CnH2n+1(OCH2CH2)mOHで表され、nが10〜30、mが1〜30であるものが好適に使用できる。
【0035】
また、このような界面活性剤としては、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸とソルビタンとのエステル、あるいはこれらのエステルにポリエチレンオキサイドが付加した化合物を用いることもできる。
【0036】
さらに、このような界面活性剤としては、トリブロックコポリマー型のポリアルキレンオキサイドを用いることもできる。このような界面活性剤としては、ポリエチレンオキサイド(EO)とポリプロピレンオキサイド(PO)からなり、一般式(EO)x(PO)y(EO)xで表されるものが挙げられる。x、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。
【0037】
上記のトリブロックコポリマーとしては、(EO)19(PO)29(EO)19、(EO)13(PO)70(EO)13、(EO)5(PO)70(EO)5、(EO)13(PO)30(EO)13、(EO)20(PO)30(EO)20、(EO)26(PO)39(EO)26、(EO)17(PO)56(EO)17、(EO)17(PO)58(EO)17、(EO)20(PO)70(EO)20、(EO)80(PO)30(EO)80、(EO)106(PO)70(EO)106、(EO)100(PO)39(EO)100、(EO)19(PO)33(EO)19、(EO)26(PO)36(EO)26が挙げられる。これらのトリブロックコポリマーはBASF社、アルドリッチ社等から入手可能であり、また、小規模製造レベルで所望のx値とy値を有するトリブロックコポリマーを得ることができる。上記のトリブロックコポリマーは1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
また、エチレンジアミンの2個の窒素原子にそれぞれ2本のポリエチレンオキサイド(EO)鎖−ポリプロピレンオキサイド(PO)鎖が結合したスターダイブロックコポリマーも使用することができる。このようなスターダイブロックコポリマーとしては、一般式((EO)x(PO)y)2NCH2CH2N((PO)y(EO)x)2で表されるものが挙げられる。ここでx、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。
【0039】
このような界面活性剤の中では、結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜を得ることができることから、アルキルトリメチルアンモニウム[CpH2p+1N(CH3)3]の塩(好ましくはハロゲン化物塩)を用いることが好ましい。また、その場合は、アルキルトリメチルアンモニム中のアルキル基の炭素数は8〜18であることがより好ましい。このようなものとしては、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウムが挙げられる。
【0040】
前記部分重合工程により得られた液体に前記界面活性剤または界面活性剤溶液を添加すると、溶液中で界面活性剤はミセルを形成する。このミセルが超分子鋳型となり、シリコンアルコキシド部分重合体と界面活性剤ミセルとの複合体が形成される。このような界面活性剤ミセルの内部にはシリコンアルコキシド部分重合体が入り込まないため、ミセルの内部は最終生成物であるメソポーラスシリカ薄膜における細孔部分となる。したがって、界面活性剤の分子鎖長を変化させることにより、メソポーラスシリカ薄膜の細孔径を制御することができる。
【0041】
前記シリコンアルコキシド部分重合体と界面活性剤のモル比は、結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜が得られることから、シリコンアルコキシド0.1molに対して界面活性剤は0.005〜0.02molであることが好ましい。また、前記複合体形成工程は、例えば、10〜30℃において30〜90分攪拌することにより行うことができる。
【0042】
本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法においては、前記シリコンアルコキシド部分重合体と上記界面活性剤とを接触せしめる複合体形成工程において、溶媒として水とアルコールとの混合溶媒を用いる必要がある。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられ、中でもメタノール、エタノールが好ましい。
【0043】
そして、本発明においては、前記混合溶媒における水の含有量が前記シリコンアルコキシド1molに対して4〜15molであることが必要である。このような水の含有量が前記下限値未満であるとシリコンアルコキシドが鎖状に縮合することが困難となり、他方、前記上限値を超えると前記複合体を含む液体中のシリコンアルコキシド濃度および溶液の粘度が低下し、前記複合体を含む液体を基板に付着せしめる際にハジキが見られ均一な薄膜が形成しにくくなる。
【0044】
更に、本発明においては、前記混合溶媒におけるアルコールの含有量が65〜98容量%であることが必要であり、70〜85容量%であることが好ましい。
このようなアルコールの含有量が前記下限値未満であると表面の凹凸の平均高さが50nm以下という表面平滑性が達成されず、更にアルコールの含有量が低いとシリカ前駆体溶液が経時劣化して長時間にわたって結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜を得ることができなくなる。他方、このようなアルコールの含有量が前記上限値を超えるとシリコンアルコキシドの加水分解、縮合が進み難く、メソポーラスシリカを形成し得ない、或いは形成できた場合でも膜厚が薄くなり過ぎて均一な品質が得られなくなってしまう。
【0045】
なお、シリカ前駆体溶液にアルコールを添加するタイミングは特に制限されず、界面活性剤と共に添加してもよく、界面活性剤を添加した後に添加してもよい。また、前記シリコンアルコキシド部分重合体を含む液体への界面活性剤を添加する方法も特に制限されず、界面活性剤をそのまま添加してもよく、水、アルコール、水とアルコールとの混合溶媒等に溶かして界面活性剤溶液とした後に添加してもよい。さらに、前記界面活性剤溶液には酸を加えて、好ましい酸性雰囲気としてもよいが、このような酸としては前記酸性溶媒に用いられる酸と同様のものを用いることが可能である。
【0046】
また、前記複合体の組成により、得られるメソポーラスシリカ薄膜の結晶構造を制御することができる。例えば、シリコンアルコキシドとしてテトラメトキシシランを用い、界面活性剤として塩化アルキルトリメチルアンモニウムを用いた場合においては、テトラメトキシシランの物質量を1molとしたときに、塩化アルキルトリメチルアンモニウムの物質量を0.04〜0.15molとすることにより結晶構造をヘキサゴナルとすることが可能となる。一方で、テトラメトキシシランの物質量を1molとしたときに、塩化アルキルトリメチルアンモニウムの物質量を0.15〜0.19molとすることにより結晶構造をキュービックとすることが可能となる。
【0047】
次に、薄膜形成工程を説明する。薄膜形成工程においては、前記複合体を含む液体を薄膜化し加熱乾燥することによりメソポーラスシリカ薄膜を形成せしめる。薄膜化の方法は特に制限はなく、例えば、前記複合体を含む液体を基板上に付着又は塗布せしめることによって厚さの均一な膜の形成が可能となる。このような基板としては、前記複合体を含む液体が付着又は塗布可能なものであれば、形状や材質は特に制限はなく、例えば、金属、樹脂等からなる板状成型物やフィルム等が挙げられる。基板の表面には、ある一定の周期性をもって溝や突起物などが形成されていてもよく、平坦であってもよい。
【0048】
複合体を含む液体を基板に塗布する場合は、その方法は特に制限されず、各種のコーティング方法が採用可能である。例えば、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター等を用いて塗布することができる。また、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング等も可能である。
【0049】
前記複合体を含む液体を基板等に塗布する場合、その塗布厚は、その濃度により適宜選択可能である。熱収縮時のひずみによるワレを防止するために、また塗布後の加熱乾燥を効率的に行うために塗布厚は薄い方が好ましく、例えば、未乾燥状態(複合体を含む液体の状態)で10μm以下であることが好ましい。
【0050】
基板に塗布する等の方法により薄膜化した後、得られた薄膜を風乾及び/又は加熱乾燥して複合体を反応させることにより、界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜を形成させる。加熱乾燥時には、例えば、70〜150℃、より好ましくは100〜120℃の加熱を行い、シリコンアルコキシド部分重合体の縮合反応を進めて三次元的な架橋構造を形成させる。この結果、界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜が得られる。加熱乾燥の時間は、界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜の結晶性を高めるための時間と経済的問題を鑑みて、例えば20〜80分とすることができる。
【0051】
薄膜形成工程において得られる界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜の膜厚は、1μm以下であることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。膜厚が1μmを超える場合はメソポーラスシリカ薄膜の細孔配列の均一性が悪くなる傾向にある。しかしながら、1μm以下の膜厚のメソポーラスシリカ薄膜を作製した後に、再度複合体を含む液体の塗布を行い加熱乾燥することにより、細孔配列の均一性の高いメソポーラスシリカ薄膜を積層し合計で膜厚を1μm以上とすることができる。
【0052】
界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜の中心細孔直径は、高い結晶性及び適度な比表面積を有した薄膜が得られることから、1〜50nmであり、1〜30nmであることがより好ましく、1〜10nmであることが更に好ましい。
【0053】
また、薄膜形成工程の後に、界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜から界面活性剤を除去しメソポーラスシリカ薄膜を得る界面活性剤除去工程を更に含むことが好ましい。界面活性剤を除去する方法としては特に制限はないが、例えば、焼成による方法や水やアルコール等の溶媒で処理する方法を用いることができる。焼成による方法においては、界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜を300〜1000℃、好ましくは300〜600℃で焼成する。加熱時間は30分程度でもよいが、完全に界面活性剤成分を除去するには1時間以上加熱することが好ましい。上記焼成は空気中で行うことが可能であり、窒素等の不活性ガスを導入して行ってもよい。また、上記焼成は酸素濃度0.1%〜25%の酸素含有雰囲気で、かつ、300℃〜600℃で焼成することが好ましい。
【0054】
溶媒を用いて界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜から界面活性剤を除去する場合は、例えば、界面活性剤の溶解性の高い溶媒中に界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜を浸漬する。溶媒としては、水、エタノール、メタノール、アセトン等を使用することができる。
【0055】
陽イオン性の界面活性剤を用いる場合は、少量の塩酸を添加したエタノール又は水中に界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜を浸漬し、50〜70℃で加熱する方法を用いることができる。この方法により、陽イオン界面活性剤を抽出することができる。陰イオン性の界面活性剤を用いる場合は、陰イオンを添加した溶媒中で界面活性剤を抽出することができる。また、非イオン性の界面活性剤を用いた場合は、溶媒のみで抽出することが可能である。なお、抽出時に超音波を印加することも可能である。
【0056】
以上説明したように、界面活性剤が除去されたメソポーラスシリカ薄膜は、後述する金属細線包接薄膜における金属細線形成の鋳型(ホスト材料)として好適である。
【0057】
(金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜)
本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜は、膜厚が1μm以下でかつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜と、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に形成されている平均直径が1〜50nmであり、かつ平均アスペクト比が10以上である金属細線とを備えるものである。前記平均直径は、1〜30nmであることがより好ましく、2〜15nmであることが更に好ましい。また、前記平均アスペクト比は10以上であればよく、このような金属細線の長さとしては30nm以上であることが好ましい。さらにまた、このような金属細線は、薄膜の細孔内において、密につまった状態で細孔内全体に連続的に形成していることがより好ましい。
【0058】
このような金属細線の平均直径が前記下限未満である場合には、量子素子(量子細線)及び触媒として用いた場合に耐久性及び耐熱性が不十分となる傾向にある。他方、金属細線の平均直径が前記上限を超える場合には、金属細線における表面原子の割合が減少して金属細線表面の特異性がマクロな物性として発現しにくくなる。また、金属細線の平均アスペクト比が10未満である場合には、選択的な結晶面があらわれにくくなるために触媒活性向上効果が不十分となり、量子素子等へ応用するためには長さが不十分となる。さらに、金属細線の長さが前記下限値未満の場合には、量子素子等へ応用するためにはその長さが不十分なものとなる傾向にある。
【0059】
なお、本発明に係る金属細線の平均直径及び平均アスペクト比とは、それぞれ透過型電子顕微鏡写真において無作為に抽出される20個の金属細線の直径及びアスペクト比(長さ/直径)の平均値をいう。
【0060】
更に、本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜においては、全金属細線のうち80%以上(本数基準)(好ましくは90%以上(本数基準))のものの直径が平均直径の±20%以内(好ましくは±5%以内)に入るという極めて優れた直径均一性を有している。このような直径均一性は、後述する本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法によって初めて達成されるものであり、従来の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜のように金属細線の均一性が不十分では半導体素子といった電子機能材料等に用いた場合に接触不良等の原因となり、電子機能材料等への適用が困難である。なお、上記金属細線の直径均一性は、例えば透過型電子顕微鏡写真において無作為に抽出される30本の各金属細線の直径(単一の金属細線の太さが不均一の場合はその平均直径)を測定し、得られた各金属細線の直径が全金属細線の平均直径に対してどの程度分散しているかを計算することにより求められる。
【0061】
また、本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜においては、用いるメソポーラスシリカ薄膜が表面凹凸の平均高さが50nm以下である本発明のメソポーラスシリカ薄膜であることが好ましい。このように表面平滑性に優れたメソポーラスシリカ薄膜を用いることにより、電子機能材料等に用いた場合における加工・接触不良等をより確実に防止することが可能となる。
【0062】
前記金属細線を構成する原子としては、金属原子であれば特に制限されないが、8族の金属、9族の金属、10族の金属、11族の金属、クロム(Cr)及びマンガン(Mn)からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属であることがより好ましく、貴金属原子であることが更に好ましい。
【0063】
本発明において、金属細線を形成させる際に用いる原料化合物は特に制限されないが、例えば、上記の金属の金属細線を形成する場合には上記の金属の塩又は錯塩を用いることができる。より具体的には、白金の金属細線の原料化合物として、H2PtCl6、Pt(NO2)2(NH3)2、[Pt(NH3)6]Cl4、H2Pt(OH)6、PtCl2(NH3)2、Pt(NH3)4Cl2、Pt(NH3)4(OH)2、Pt(NH3)4(OH)4、K2PtCl4、PtCl4、PtCl2等が挙げられる。
【0064】
このように本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜においては、十分なアスペクト比を有し、配列が均一で、しかも直径均一性に優れた金属細線を得ることでき、量子素子、触媒等に好適である。このような金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜は、以下に述べる製造方法により作製することができる。
【0065】
(金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法)
本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法は、
膜厚が1μm以下でかつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜と所定の金属のイオンを含有する溶液とを接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属イオンを担持せしめる金属イオン担持工程と、
前記金属イオン担持工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を還元剤の蒸気に接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記還元剤蒸気を導入する還元剤導入工程と、
前記還元剤導入工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜に光を照射して前記金属イオンを還元せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属からなる金属細線を形成せしめる光還元工程と、
前記光還元工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を400〜800℃の温度に加熱し、前記金属細線を成長せしめる焼結工程と、を含むことを特徴とする方法である。以下、上記各工程について詳細に説明する。
【0066】
先ず、金属イオン担持工程について説明する。メソポーラスシリカ薄膜を担体として用い、このような薄膜の細孔内及び細孔外に金属イオンを担持させる方法としては、上記の金属細線の原料化合物をメタノール、エタノール等のアルコール、水、ベンゼン等又はこれらの混合物に溶かし、その溶液(以下、担持液又は金属イオン含有溶液という)にメソポーラスシリカ薄膜を含浸させるなどして、その溶液と薄膜とを接触させることにより、メソポーラスシリカ薄膜の細孔内及び細孔外に所定の金属のイオンを担持させることができる。
【0067】
前記金属イオン含有溶液は、その溶液中における前記原料化合物の濃度が0.1〜50wt%であるものが好ましく、1〜20wt%であるものがより好ましい。このような金属イオン含有溶液の濃度が前記下限値未満である場合は、後述する金属イオン担持工程における金属イオンの担持量が不十分となる傾向があり、他方、前記上限値を超えると、金属イオン含有溶液が更に酸性となりメソポーラスシリカ薄膜の−Si−O−骨格が崩壊することにより、金属細線の形成が困難となる傾向がある。このような金属イオン含有溶液へのメソポーラスシリカ薄膜の含浸時間は、6時間以上であることが好ましく、15〜48時間であることがより好ましい。このような含浸時間が前記下限値未満の場合は、金属イオンの担持が不十分となり、金属細線の形成が困難となる傾向がある。
【0068】
ここで金属イオンとは、原料化合物である金属の塩又は錯塩等が溶液中で解離したものであり、通常、電荷をもつ原子または原子の集団をいい、錯塩が解離すると錯イオンが生じる。また、通常、水溶液において金属イオンは、アクア錯体として存在する。また、担持液が薄膜に接触することにより薄膜の細孔内及び細孔外に付着し溶媒が蒸発又は揮発すると、金属イオンは原料化合物である金属の塩又は錯塩などの安定な状態で存在すると推察される。しかしながら、本発明の製造方法においては、それぞれの製造工程においてそれらの存在状態を明確に判断することが困難であるため、前記金属のイオン、錯イオン、塩及び錯塩などを総称して、金属イオンということとする。
【0069】
また、金属イオン担持工程においては、上記金属イオンの細孔内への担持を促進させるために、薄膜を含浸させている溶液に超音波を印加することも可能である。また、このような方法の他に、固体状の金属細線の原料化合物とメソポーラスシリカ薄膜とを固相で混合し、密閉容器中で加熱した後、過剰の原料化合物を洗浄等により除去する方法、金属アルコキシド等の蒸気を発生するものや昇華しやすいものを原料に用い、それらの蒸気をメソポーラスシリカ薄膜と接触させることにより、その原料化合物をメソポーラスシリカ薄膜の細孔内に導入する方法も可能である。
【0070】
また、前記金属イオン担持工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の表面に前記細孔内と外部とを結ぶ新たな貫通孔を設ける孔形成工程、を更に含んでいてもよい。ここで貫通孔とは、細孔内と外部とを結ぶ穴又は切れ目等であればよく、その形状は特に制限されない。新たな貫通孔(開口部)を設ける方法としては特に制限はないが、例えば、メソポーラスシリカ薄膜の表面をカミソリ等で1mm又は0.5mm程度切れ目を入れるなどの方法が可能である。従来、金属イオンを担持するメソポーラスシリカ(シリカ多孔体)は粉末状のものであり、その粒の表面が外部の空間に接する面積が大きく、シリカ多孔体の細孔が外部の空間に接する面積も広かった。しかし、本発明の金属細線包接薄膜の製造方法に用いるメソポーラスシリカ薄膜は、その薄膜の一部が基板に接している。そのため、細孔がその外部の空間に接する面積が小さい。よって、金属イオンを担持させる際に、前記金属イオンが細孔内に入りにくいことから、このように新たな貫通孔を設けることにより、多量の金属イオンを細孔内に担持させることが可能となる。
【0071】
更に、金属イオン担持工程の少なくとも前工程として、真空排気工程を設けることが好ましい。メソポーラスシリカ薄膜は、空気中に放置すると簡単に水を吸着する。特にヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカ薄膜は極めて細長い孔を有しているので、一度水を物理吸着すると、細孔の奥にある水は簡単には外へ出られない。従って、薄膜の細孔内に水が吸着されている場合、金属イオン含有溶液が細孔内に入るのが困難となり、金属イオンが細孔内に担持されにくくなる傾向がある。
【0072】
次に、還元剤導入工程について説明する。還元剤導入工程においては、前記金属イオン担持工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を還元剤の蒸気に接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記還元剤蒸気を導入する。その際、細孔外に担持された前記金属イオンを除去することなく残存せしめた状態で還元剤の蒸気に接触せしめることが好ましい。このように細孔外に担持された金属イオンを残存せしめた状態で光還元工程を行うことにより、細孔内に金属がより密に詰まった金属細線を得ることができる傾向にある。なお、薄膜表面に析出した金属は、例えばアルコールをしみこませたコットンで軽くふきとることによって簡単に除去できる。
【0073】
このような前記金属イオンを除去することなく残存せしめた状態とは、具体的には、薄膜表面に金属イオン含有溶液が1cm2当たり、0.1〜700μl付着していることが好ましく、1〜500μl付着していることがより好ましい。
このような金属イオン含有溶液の付着量が前記下限値未満の場合は、薄膜表面に金属イオン含有溶液が均一に付着せず、金属イオンを還元せしめる際の薄膜の細孔内への金属イオンの供給量が不連続となり、金属細線の形成が困難となる傾向がある。他方、前記上限値を超えると、薄膜表面に金属イオン含有溶液が留まることができずに薄膜表面からこぼれる傾向がある。なお、前記金属イオン含有溶液の付着量は、マイクロピペットにより測定することが可能である。
【0074】
また、薄膜の細孔内及び細孔外(薄膜全体)に担持された金属イオンの量(μg)は、薄膜全体において1cm2当たり、0.001μg以上担持されていることが好ましく、0.01μg以上担持されていることがより好ましい。このような薄膜全体における金属イオンの担持量が前記下限値未満の場合は、細孔外に担持された金属イオンの細孔内への移動量が不十分となり、金属が細孔内に密に詰まった金属細線が作製できず、金属粒子となる傾向がある。
【0075】
前記還元剤の導入量は、その還元剤の飽和蒸気圧の1/20〜1/3とすることが好ましく、1/15〜1/5とすることがより好ましく、1/12〜1/8とすることが更に好ましい。このような還元剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコールが挙げられ、この中では還元力が強いことからメタノールが好ましい。
【0076】
また、前記還元剤導入工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に水蒸気を導入する水蒸気導入工程、を更に含むことが好ましい。このような水蒸気導入工程を設けることにより、細孔外に存在する金属イオンが水蒸気と共に細孔内に導入されることにより、細孔内により多くの金属が析出することとなると本発明者らは推察する。このような水蒸気の導入量は、飽和蒸気圧まで導入すると細孔内部に導入された水蒸気が液体状になり金属イオンを細孔外へ押し出すと考えられるため好ましくなく、飽和蒸気圧より低いことが好ましく、半分程度とすることがより好ましい。
【0077】
更に、還元剤導入工程の少なくとも前工程として、真空排気工程を設けることが好ましい。メソポーラスシリカ薄膜は、空気中に放置すると簡単に水を吸着する。特にヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカ薄膜は極めて細長い孔を有しているので、一度水を物理吸着すると、細孔の奥にある水は簡単には外へ出られない。このように細孔内に水が吸着され細孔内が濡れた状態になると、還元剤の導入量が減少し、後述の光還元工程において還元が不十分となる傾向がある。そこで、真空装置にメソポーラスシリカ薄膜を入れ真空排気することで、金属イオンの還元を確実に行うことが可能となる。
【0078】
上記還元剤および水の蒸気をメソポーラスシリカ薄膜の細孔内に導入する方法としては、まず、真空装置内にメソポーラスシリカ薄膜を入れ真空状態にする。
そこに上記蒸気圧を有する還元剤および水の蒸気を液ため容器のニードルバルブで圧力をコントロールしながら導入することができる。このような真空装置としては、温度をコントロールできる装置がより好ましい。
【0079】
次に、光還元工程を説明する。光還元工程は、前記還元剤導入工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜に光を照射して金属イオンを還元せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属からなる金属細線を形成せしめる工程である。光照射に用いる光は、特に限定されないが、紫外線であることが好ましい。
このような光照射には、高圧水銀ランプ等を用いることができ、照射時間は金属イオンが還元されればよく、特に限定されない。
【0080】
以下、金属細線形成の機構について説明する。例えば、原料化合物として塩化白金酸を用いた場合、塩化白金酸の化学式はH2PtCl6であり、水溶液中ではH+と(PtCl6)2−のイオンに分かれている。この溶液にメソポーラスシリカ薄膜を含浸させ、金属イオンを細孔内に担持せしめる。その後、薄膜の細孔内にメタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコールを導入すると、カルボニル基が配位した中間体である金属カルボニル[Pt3(CO)6]n 2−となり、更に光照射によりカルボニル基がとれて、白金金属Pt0に還元される。そして、先ず結晶の核が発生し、続いて離散的な粒状の金属細線が形成され、経時的に結晶が集合化して金属細線の形状となる。このような還元のスピード及び集合化のスピードをコントロールすることにより、金属細線又は金属粒子に形状を制御することも可能である。
【0081】
本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法においては、前述の光還元工程の後に、光還元工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を400〜800℃の温度に加熱して前記金属細線を成長せしめる焼結工程が必要である。
このような加熱処理(焼結工程)の温度は、400〜800℃であることが必要であり、500〜700℃であることがより好ましい。このような加熱処理の温度が前記下限値未満の場合は、金属細線の太さ及びその均一性、更には結晶性の向上が十分に達成されず、前述の直径均一性に優れた本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜が得られない。他方、このような加熱処理の温度が前記上限値を超える場合は、金属がメソポーラスシリカ薄膜の細孔から流出してしまう。
【0082】
また、このような加熱処理(焼結工程)の雰囲気としては、酸素濃度が2〜40容量%である酸素含有雰囲気であることが好ましく、酸素以外に窒素、不活性ガス等を含有しているものがより好ましいが、大気中であってもよい。このように酸素を含有する雰囲気中で加熱処理することにより、金属原子が蒸発し易くなる傾向にある。
【0083】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0084】
実施例1
(メソポーラスシリカ薄膜の作製)
テトラメトキシシラン(Si(OCH3)4、以下「TMOS」という)15.22g(0.10mol)にH2O4.0ml及び2N−HCl100μlを静かに添加し、マグネチック・スターラ(回転速度200rpm/min)を用いて1時間攪拌することによりTMOS部分重合体を含む溶液を得た。次に、界面活性剤である塩化セチルトリメチルアンモニウム(以下、「C16TMACl」という)4.16g(0.013mol)及びH2O10mlを混合し、マグネチック・スターラで攪拌しながら50℃に加温し、界面活性剤を溶解させた。その後、室温まで自然に冷まし、2N−HCl水溶液100μlを更に加え、混合することにより界面活性剤溶液を得た。
【0085】
上記TMOS部分重合体を含む溶液に界面活性剤溶液を加えて20分間攪拌した。その後、エタノール(以下、「EtOH」)40mlを加え、マグネチック・スターラの回転速度を300rpm/minに上昇させて20分間攪拌することにより、テトラメトキシシランと界面活性剤とからなる複合体を含むシリカ前駆体溶液(以下「TMOS複合体溶液」という)を調整した。なお、TMOS複合体溶液における水の含有量はTMOS1molに対して8molであり、アルコールの含有量は79容量%である。
【0086】
次に、基板引き上げ装置(SIGMA社製;SG SP 26−100)をビニールBOX内に設置し、ディップコーティング法で薄膜形成工程を行った。前記装置を用いて基板をTMOS複合体溶液中へ20mm/minの速度で浸漬し、溶液内で30秒静置した後20mm/minの速度で引き上げた。基板には、希フッ酸(HF:H2O=1:50)で表面処理を行ったシリコンウェハ(2cm×5cm)を用いた。なお、この薄膜形成工程の相対湿度は30%に固定して行った。次に、TMOS複合体溶液が付着した基板を室温で24時間風乾し、100℃で1時間乾燥した。その後、400℃、1リットル/min大気流通下で4時間焼成(昇温速度100℃/h)することにより、膜厚が0.4μmのメソポーラスシリカ薄膜を得た。
【0087】
(表面平滑性の測定)
本実施例で得られたメソポーラスシリカ薄膜の表面平滑性を、日本真空技術社製触針式表面形状測定器(DEKTAK3ST、垂直方向分解能は最高1オングストローム)を用いて測定した。得られた結果を図1に示す。図1に示した結果から明らかなように、本実施例で得られたメソポーラスシリカ薄膜は、表面の凹凸の平均高さが約20nmのものであり、表面平滑性が非常に高いことが確認された。
【0088】
(X線回折測定)
本実施例で得られたメソポーラスシリカ薄膜のX線回折測定を、リガク社製RINT−2000を用いて行った。その際、線源Cu、X線管電圧40kV、X線管電流30mAという条件とし、入射スリットと受光スリットをDS:0.5、SS:0.5、RS:0.3とした。
【0089】
また、前記シリカ前駆体溶液(TMOS複合体溶液)を室温で18時間放置し、その溶液を用いた以外は上記実施例と同様にしてメソポーラスシリカ薄膜を得た。そして、そのメソポーラスシリカ薄膜についても同様にX線回折測定を行った。
【0090】
このようにして得られたX線回折測定の結果を図2に示す。図2に示した結果から明らかなように、本実施例で得られたシリカ前駆体溶液は経時劣化が十分に抑制され、長時間にわたって結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜を得られることが確認された。また、得られたメソポーラスシリカ薄膜の中心細孔直径は3nmであった。
【0091】
比較例1
TMOS15.22g(0.10mol)にH2O4.0ml及び2N−HCl100μlを静かに添加し、更に加水分解による発熱反応が治まった後に2N−HCl200μlを追加し、マグネチック・スターラ(回転速度200rpm/min)を用いて1時間攪拌することによりTMOS部分重合体を含む溶液を得た。次に、界面活性剤であるアルドリッチ製ポリブロックコポリマーPluronic P123(poly(ethylene oxide)20−poly(propylene oxide)70−poly(ethylene oxide)20)7.20g(0.0012mol)、H2O10.0ml及びエタノール10mlを混合し、マグネチック・スターラで攪拌しながら50℃に加温し、界面活性剤を溶解させた。その後、室温まで自然に冷まし、2N−HCl水溶液100μlを更に加え、混合することにより界面活性剤溶液を得た。
【0092】
上記TMOS部分重合体を含む溶液に界面活性剤溶液を加えて20分間攪拌した。その後、H2O40.0mlを加え、マグネチック・スターラの回転速度を300rpm/minに上昇させて20分間攪拌することにより、シリカ前駆体溶液(TMOS複合体溶液)を調整した。なお、TMOS複合体溶液における水の含有量はTMOS1molに対して30molであり、アルコールの含有量は16容量%である。
【0093】
このようにして得られたTMOS複合体溶液と、その溶液を室温で50分間放置した後のものをそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にしてメソポーラスシリカ薄膜を作製し、それらについてX線回折測定を行った。得られたX線回折測定の結果を図3に示す。図3に示した結果から明らかなように、本比較例で得られたシリカ前駆体溶液は経時劣化が激しく、長時間にわたって結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜を得ることができなかったことが確認された。
【0094】
比較例2
エタノール40mlに代えてエタノール20mlと水20mlの混合溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてシリカ前駆体溶液(TMOS複合体溶液)を調整した。なお、TMOS複合体溶液における水の含有量はTMOS1molに対して19molであり、アルコールの含有量は37容量%である。
【0095】
このようにして得られたTMOS複合体溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてメソポーラスシリカ薄膜を作製し、表面平滑性を測定した。得られた結果を図4に示す。図4に示した結果から明らかなように、本比較例で得られたメソポーラスシリカ薄膜は、表面の凹凸の平均高さが約100nmのものであり、表面平滑性が劣っていることが確認された。
【0096】
実施例2
エタノール40mlに代えてエタノール38mlと水2mlの混合溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてシリカ前駆体溶液(TMOS複合体溶液)を調整した。なお、TMOS複合体溶液における水の含有量はTMOS1molに対して9molであり、アルコールの含有量は70容量%である。
【0097】
このようにして得られたTMOS複合体溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてメソポーラスシリカ薄膜を作製し、表面平滑性を測定したところ、表面の凹凸の平均高さが約20nm程度であり、実施例1で得られたものと同様に表面平滑性に優れていることが確認された。
【0098】
実施例3
エタノール40mlに代えてエタノール35mlと水5mlの混合溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてシリカ前駆体溶液(TMOS複合体溶液)を調整した。なお、TMOS複合体溶液における水の含有量はTMOS1molに対して11molであり、アルコールの含有量は65容量%である。
【0099】
このようにして得られたTMOS複合体溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてメソポーラスシリカ薄膜を作製し、表面平滑性を測定したところ、表面の凹凸の平均高さが約25nm程度であり、実施例1で得られたものと同様に表面平滑性に優れていることが確認された。
【0100】
比較例3
エタノール40mlに代えてエタノール30mlと水10mlの混合溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてシリカ前駆体溶液(TMOS複合体溶液)を調整した。なお、TMOS複合体溶液における水の含有量はTMOS1molに対して13molであり、アルコールの含有量は56容量%である。
【0101】
このようにして得られたTMOS複合体溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてメソポーラスシリカ薄膜を作製し、表面平滑性を測定したところ、表面の凹凸の平均高さは約60nm程度であり、表面平滑性に劣っていることが確認された。
【0102】
実施例4〜6及び比較例4〜5
(メソポーラスシリカ薄膜の作製)
TMOS91.32g(0.6mol)にH2O24.0ml及び2N−HCl100μlを静かに添加し、更に加水分解による発熱反応が治まった後に2N−HCl60μlを追加し、マグネチック・スターラ(回転速度200rpm/min)を用いて1時間攪拌することによりTMOS部分重合体を含む溶液を得た。次に、界面活性剤であるアルドリッチ製ポリブロックコポリマーPluronic P123(poly(ethylene oxide)20−poly(propylene oxide)70−poly(ethylene oxide)20)43.2g(0.00732mol)、H2O60.0ml及びエタノール60mlを混合し、マグネチック・スターラで攪拌しながら50℃に加温し、界面活性剤を溶解させた。その後、室温まで自然に冷まし、2N−HCl水溶液600μlを更に加え、混合することにより界面活性剤溶液を得た。
【0103】
上記TMOS部分重合体を含む溶液に界面活性剤溶液を加えて20分間攪拌した。その後、エタノール120mlと水120mlの混合溶液を加え、マグネチック・スターラの回転速度を300rpm/minに上昇させて20分間攪拌することにより、シリカ前駆体溶液(TMOS複合体溶液)を調整した。なお、TMOS複合体溶液における水の含有量はTMOS1molに対して18molであり、アルコールの含有量は47容量%である。
【0104】
次に、基板引き上げ装置(SIGMA社製;SG SP 26−100)をビニールBOX内に設置し、ディップコーティング法で薄膜形成工程を行った。前記装置を用いて基板をTMOS複合体溶液中へ20mm/minの速度で浸漬し、溶液内で30秒静置した後20mm/minの速度で引き上げた。基板には、希フッ酸(HF:H2O=1:50)で表面処理を行ったシリコンウェハ(2cm×5cm)を用いた。なお、この薄膜形成工程の相対湿度は30%に固定して行った。次に、TMOS複合体溶液が付着した基板を室温で24時間風乾し、100℃で1時間乾燥した。その後、400℃、酸素含有窒素雰囲気(O2:N2=200ml/min:800ml/min)下で4時間焼成(昇温速度100℃/h)することにより、膜厚が0.4μmのメソポーラスシリカ薄膜を得た。
また、得られたメソポーラスシリカ薄膜の中心細孔直径は8nmであった。
【0105】
(金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の作製)
得られたメソポーラスシリカ薄膜に安全カミソリを用いて、配向面に対し斜めに0.5mm間隔程度の新たな貫通孔を設けた。そのメソポーラスシリカ薄膜を温度制御できる真空ポンプ(真空機工製;GVD−050A)を備えた真空装置に入れ、24時間真空排気した。また、田中貴金属社製15wt%H2PtCl6水溶液を用いて、15wt%H2PtCl65cc、水10cc、エタノール10ccを混合することにより金属イオン含有溶液を調製し、この溶液に真空排気したメソポーラスシリカ薄膜を入れ、超音波洗浄機(エスエヌディ製;US−1)中で超音波分散を10分間行い、そのまま24時間含浸させた。メソポーラスシリカ薄膜を引き上げ、薄膜表面に付着した担持液を除去することなく残存せしめた状態で再度真空装置に薄膜を入れ、24時間真空排気した。その後、温度を25℃に設定し、真空装置内に蒸気圧10Torrの水蒸気を導入することにより、蒸気圧10Torrの水蒸気に薄膜を10分間曝し、同様にして蒸気圧10Torrのメタノール(還元剤)の蒸気に薄膜を10分間曝すことにより、還元剤蒸気をメソポーラスシリカ薄膜の細孔内に導入した。
【0106】
次に、還元剤が導入された薄膜に超高圧水銀ランプ(ウシオ電機製、品番UXM−500SX)を用いて、紫外線(波長365nm、光強度13mW/cm2)を72時間照射しPt4+をPt0の金属に還元した。なお、サンプル位置での光の強度は7mW/cm2であった。その後、残留ガスを除去するために室温で6時間真空乾燥した。
【0107】
更に、実施例4〜6においては、上記のようにして得られた細孔内に金属細線を含むメソポーラスシリカ薄膜を反応管に入れ、大気中で500℃(実施例4)、600℃(実施例5)、700℃(実施例6)で3時間加熱した。なお、昇温速度は150℃/hとし、空気の流速は1000ml/minとした。
【0108】
また、比較例5においては、上記のようにして得られた細孔内に金属細線を含むメソポーラスシリカ薄膜を反応管に入れ、水素雰囲気中で400℃で2時間加熱した。なお、昇温速度は200℃/hとし、水素ガスの流速はH2:N2=50ml/min:50ml/minとした。
【0109】
(金属細線の評価)
このようにして得られた細孔内に金属細線を含むメソポーラスシリカ薄膜における金属細線及び金属粒子の状態を日本電子製透過電子顕微鏡(TEM:JEM2000EX)を用いて観察し、金属細線の平均直径、長さ、平均アスペクト比、直径均一性{全金属細線のうち80%以上のものの直径が分布している範囲(平均直径の±X%以内の範囲)}、及び金属粒子の直径を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0110】
なお、観察用サンプルとしては、細孔内にPtワイヤを含むメソポーラスシリカ薄膜を針で削り取り、日新EM製マイクログリッド添付メッシュに乗せて作製したものを用いた。なお、この手法でサンプルを作製した場合は、膜厚が削り取った薄膜の表面積に比べて極小なため、ほとんどの場合薄膜を真上(表面)から観察することになる。
【0111】
また、一部のサンプルのPt形状を詳しく見るために、以下のようにPtワイヤを薄膜から抽出した。すなわち、削り取った薄膜を2mlのサンプルチューブにEtOHで流し込んで集め、室温乾燥させ、そこへメソポーラスシリカを溶かすためのフッ酸1.5wt%とPt同士の接着を防ぐための1−ドデカンチオール2.5wt%を含んだEtOHを少量加え、2分間振り混ぜてメソポーラスシリカを溶かした。サンプルチューブ内の液に日本電子製C膜付きマイクログリッドを浸して試料を付着させ、エタノールで洗浄を行った。
【0112】
【表1】
【0113】
表1に示した結果から明らかなように、500℃大気処理品からは長さが約30〜320nmで均一な太さを有するPt細線および直径約2〜4nmのPt粒子が観察され、加熱処理を行うことによってPt細線が長くなると共に直径均一性が著しく向上し、Pt粒子も大きくなることがわかった。
【0114】
また、600℃大気処理品からは長さ約50〜120nmのPt細線および直径約4〜8nmのPt粒子が観察された。Pt細線は500℃大気処理品と比べて長さが短くなったが太さがより均一になり、Pt粒子は直径が大きくなった。Pt粒子が大きくなった理由は、500℃よりも600℃というより高温で処理することによってPtの運動エネルギーが大きくなり、凝集性が促進されたことが原因と考えられる。また、Pt細線が短くなった理由は、細線よりも表面積が小さくエネルギー的に安定な粒子化に向けて凝集が促進されたが、細孔壁に阻まれたために太い細線になったと考えられる。また、この時にPtが細孔内の隙間を埋め尽くしたため、細線の太さがより均一になったと考えられる。更に、このようにして得られたPt細線には格子像が見られ、欠陥の少ない単結晶性Ptであることが確認された。
【0115】
更に、700℃大気処理品からは長さ約70〜100nmのPt細線および直径約7〜50nmのPt粒子(Pt塊)が観察された。Pt細線は600℃大気処理品と比べて更に長さが短くなったが太さがより均一になり、Pt粒子は更に直径が大きくなった。
【0116】
一方、400℃水素雰囲気処理品からは長さ約20〜120nmのPt細線と直径約1〜4nmのPt粒子が存在することが確認されたが、このPt細線は加熱処理前のものと同様に直径均一性に劣るものであり、Pt粒子の直径は加熱処理前と比べて大小両方に幅が広がっていた。このようになった理由としては、400℃水素雰囲気処理ではPtに十分な運動エネルギーを与えることが出来なかったことが考えられる。また、Pt粒子の直径の幅が広がった原因としては以下のように考えられる。すなわち、加熱処理前には還元が不完全でPtメタルとPt塩が混在していたと思われるが、400℃水素雰囲気は還元性が強く、残存していたPt塩をPtメタルに還元したと考えられる。加熱処理前にPt塩として点在してTEMでは観察できなかったものがPt微粒子として、またTEMで観察できたPt粒子の近辺に存在していたPt塩がPt粒子と結合・還元して大きな粒子になったことが考えられる。
【0117】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法によれば、表面平滑性に優れたメソポーラスシリカ薄膜を得ることができ、しかも長時間にわたって結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜を得ることが可能となる。したがって、本発明のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法により得ることが可能となる本発明のメソポーラスシリカ薄膜は、表面平滑性に優れており電子機能材料等への応用に非常に適したものである。
【0118】
また、本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法によれば、太くかつ均一性に優れた金属細線を得ることができ、しかも金属細線の結晶性を向上させることも可能となる。したがって、本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法により得ることが可能となる本発明の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜は、金属細線の直径均一性に優れており電子機能材料等への応用に非常に適したものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたメソポーラスシリカ薄膜の表面平滑性を示すグラフである。
【図2】実施例1で得られたシリカ前駆体溶液の経時劣化の度合いを示すグラフである。
【図3】比較例1で得られたシリカ前駆体溶液の経時劣化の度合いを示すグラフである。
【図4】比較例2で得られたメソポーラスシリカ薄膜の表面平滑性を示すグラフである。
Claims (7)
- シリコンアルコキシドを酸性溶液中で反応させ、シリコンアルコキシド部分重合体を含む液体を得る部分重合工程と、
前記液体に界面活性剤を添加し、前記シリコンアルコキシド部分重合体と前記界面活性剤とからなる複合体を形成せしめる複合体形成工程と、
前記複合体を含む液体を薄膜化し加熱乾燥して前記複合体を反応させることにより、前記界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜を形成せしめる薄膜形成工程と、を含むメソポーラスシリカ薄膜の製造方法であって、前記複合体形成工程において溶媒として水とアルコールとの混合溶媒を用い、前記混合溶媒における水の含有量が前記シリコンアルコキシド1molに対して4〜15molであり、かつ、前記混合溶媒におけるアルコールの含有量が65〜98容量%であることを特徴とする、表面の凹凸の平均高さが50nm以下であるという表面平滑性を有しているメソポーラスシリカ薄膜の製造方法。 - 前記薄膜形成工程の後に、前記界面活性剤を含有した前記メソポーラスシリカ薄膜から界面活性剤を除去する界面活性剤除去工程を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のメソポーラスシリカ薄膜の製造方法。
- 膜厚が1μm以下でかつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜であって、
表面の凹凸の平均高さが50nm以下であるという表面平滑性を有していることを特徴とするメソポーラスシリカ薄膜。 - 膜厚が1μm以下でかつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜と所定の金属のイオンを含有する溶液とを接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属イオンを担持せしめる金属イオン担持工程と、
前記金属イオン担持工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を還元剤の蒸気に接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記還元剤蒸気を導入する還元剤導入工程と、
前記還元剤導入工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜に光を照射して前記金属イオンを還元せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属からなる金属細線を形成せしめる光還元工程と、
前記光還元工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を400〜800℃の温度に加熱し、前記金属細線を成長せしめる焼結工程と、を含むことを特徴とする、全金属細線のうち80%以上のものの直径が平均直径の±20%以内に入るという直径均一性を有している金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法。 - 前記焼結工程を、酸素濃度が2〜40容量%である酸素含有雰囲気下で行なうことを特徴とする、請求項4に記載の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法。
- 前記メソポーラスシリカ薄膜が、表面の凹凸の平均高さが50nm以下であるという表面平滑性を有していることを特徴とする、請求項4又は5に記載の金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜の製造方法。
- 膜厚が1μm以下でかつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜と、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に形成されている平均直径が1〜50nmでかつ平均アスペクト比が10以上である金属細線とを備える金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜であって、
全金属細線のうち80%以上のものの直径が平均直径の±20%以内に入るという直径均一性を有していることを特徴とする金属細線包接メソポーラスシリカ薄膜。
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