JP2005022319A - 液体吐出装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ノズル面に形成された複数の液体吐出ノズルから所定の液体を吐出する液体吐出ヘッド(20)と、この液体吐出ヘッドのノズル面に対向するように配置され吐出対象物(51)を支持して上記液体吐出ヘッドとの位置関係を規定するプラテン板(55)と、上記液体吐出ヘッドに対する吐出対象物の供給側から排出側へ吐出対象物を搬送する搬送ベルト(57)が所定の経路上に配置された搬送手段(54)と、を有する液体吐出装置において、上記液体吐出ヘッド(20)から所定の液体が吐出される領域内では、搬送手段(54)の搬送ベルト(57)を液体吐出ヘッド(20)に対してプラテン板(55)よりも後方に配置したものである。
【選択図】 図10
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体吐出ヘッドに形成された各液体吐出ノズルから所定の液体を吐出対象物に吐出してドット列又はドットを形成する液体吐出装置に関し、詳しくは、液体吐出ヘッドから所定の液体が吐出される領域内にて吐出対象物を搬送する搬送ベルトが上記吐出される所定の液体で汚染されるのを簡易な構造で防止する液体吐出装置に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクを記録紙に吐出して印画するインクジェット方式のインクジェットプリンタにおいて、吐出対象物としての記録紙をプリントヘッドの給紙側から排紙側へ搬送する手段としては、例えば、キャプスタンローラを用いて記録紙を挟み込んで送る方式や、ゴムプラテンに記録紙を巻き付けてそのゴムプラテンの摩擦を利用して送る方式や、或いは複数のプーリと搬送ベルトで構成されるベルト搬送手段を用いて記録紙を送る方式などが知られており、これらの方式はインクジェットプリンタの仕様に応じてそれぞれ使い分けられている。そして、例えば搬送ベルトを用いて記録紙を送る方式は、特許文献1や特許文献2などに記載されている。
【0003】
一方、最近のインクジェットプリンタにおいては、記録紙の上下左右の余白部をゼロにして印画する、いわゆる縁無し印刷を行う機能が付加されているものが多くなってきた。この場合、インクが記録紙の上下左右の端部を超えてプラテン板側に吐出されるので、搬送ベルト方式において搬送ベルトが記録紙と一緒にプリントヘッドとプラテン板との間を通過する際に、プラテン板上の搬送ベルトがインクで汚染されることがあった。その結果、搬送ベルトに付着したインクで記録紙が汚損されることがあった。
【0004】
これに対して、従来は、縁無し印刷を行う機能が付加されたインクジェットプリンタに、搬送ベルトの表面に付着したインク又は他の汚染物を除去するため、該搬送ベルトをクリーニングするクリーニング装置を備えたものもある(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2003−94744号公報(第4頁、図5)
【特許文献2】
特開2003−94749号公報(第4頁、図5)
【特許文献3】
特開平8−324067号公報(第4頁、図1及び図2)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献3に記載されたインクジェットプリンタにおいては、搬送ベルトをクリーニングするクリーニング装置を備えたことにより、搬送ベルトの表面に付着したインク又は他の汚染物を除去することはできるが、特別にクリーニング装置を備えることで、インクジェットプリンタが大形化すると共に構造が複雑化するものであった。また、搬送ベルトのクリーニングによりインク又は他の汚染物が除去できたか否かを点検するという特別なプロセスが必要となるものであった。さらに、構造が複雑化することから、装置のメインテナンスが煩雑となったり、トラブルが発生する場合もある。また、装置全体が大形化すると共に構造が複雑化することから、コストアップとなるものであった。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、液体吐出ヘッドから所定の液体が吐出される領域内にて吐出対象物を搬送する搬送ベルトが液体吐出ノズルから吐出される所定の液体で汚染されるのを簡易な構造で防止する液体吐出装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による液体吐出装置は、ノズル面に形成された複数の液体吐出ノズルから所定の液体を吐出する液体吐出ヘッドと、この液体吐出ヘッドのノズル面に対向するように配置され吐出対象物を支持して上記液体吐出ヘッドとの位置関係を規定するプラテン板と、上記液体吐出ヘッドに対する吐出対象物の供給側から排出側へ吐出対象物を搬送する搬送ベルトが所定の経路上に配置された搬送手段と、を有する液体吐出装置において、上記液体吐出ヘッドから所定の液体が吐出される領域内では、搬送手段の搬送ベルトを液体吐出ヘッドに対してプラテン板よりも後方に配置したものである。
【0009】
このような構成により、液体吐出ヘッドから所定の液体が吐出される領域内にて吐出対象物を搬送する搬送ベルトが液体吐出ノズルから吐出される所定の液体で汚染されるのを簡易な構造で防止する。
【0010】
また、上記搬送ベルトが液体吐出ヘッドに対してプラテン板よりも後方に配置される箇所には、該搬送ベルトの経路を変更するための経路変更手段を設けたものである。これにより、経路変更手段で搬送ベルトの経路を容易に変更できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明による液体吐出装置の一例としてのインクジェットプリンタの実施形態を示す斜視図であり、図1は上蓋を閉じた状態を示し、図2は上蓋を開いて収納部内にヘッドカートリッジを収納する状態を示している。このインクジェットプリンタ11は、吐出対象物である記録紙の所定位置にインク滴を吐出して画像を形成するものであり、プリンタ本体部12と、ヘッドカートリッジ13(図2参照)と、記録紙トレイ14とを備えている。
【0012】
上記プリンタ本体部12は、装置本体部として記録紙に対して適正に印画を行わせるための記録紙搬送機構部や電気回路部を内部に納めたものであり、上面にはヘッドカートリッジ13を収納する収納部15が開口されており、その上端部には該収納部15を開閉する上蓋16が設けられている。また、プリンタ本体部12の前面下部には、後述の記録紙トレイ14を装着するためのトレイ挿入口17が設けられている。なお、このトレイ挿入口17は記録紙の排紙口も兼ねている。また、このプリンタ本体部12の前面上部には、インクジェットプリンタ11の全体動作の状態を表示する表示パネル18が設けられている。
【0013】
上記プリンタ本体部12の収納部15には、ヘッドカートリッジ13が矢印Zのように収納されて、着脱可能な状態に保持されている。このヘッドカートリッジ13は、イエローY,マゼンタM,シアンC,ブラックKの4色のインクタンク19を備えたプリントヘッド20と、このプリントヘッド20の下面側に装着されたヘッドキャップ21とから構成されている。ここでは、一例として記録紙(例えばA4判)の一辺の幅にわたってノズル部材が長尺に形成されたフルラインタイプのプリントヘッド20を示している。
【0014】
また、上記プリンタ本体部12のトレイ挿入口17には、記録紙トレイ14が着脱可能状態に装着されている。この記録紙トレイ14は、記録紙を重ねて収納するものであり、その上面部にはプリンタ本体部12から排紙される記録紙の排紙受け部14aが設けられている。
【0015】
図3は、上記ヘッドカートリッジ13の構成を示す一部断面側面図である。インクタンク19は、インク(所定の液体)が貯蔵された液体容器となるもので、Y,M,C,Kの4色のインクに対応して四つのタンク19y,19m,19c,19kが着脱可能にセットされている。また、プリントヘッド20は、上記インクタンク19y,19m,19c,19kからインクの供給を受けてインクを吐出する液体吐出ヘッドとなるもので、その下面のノズル面22にはY,M,C,Kの4色のインク吐出ノズル(液体吐出ノズル)23の列が形成されている。
【0016】
また、上記プリントヘッド20の下面側には、ヘッドキャップ21が該プリントヘッド20に対し相対的に移動し且つ着脱可能に装着されている。このヘッドキャップ21は、上記プリントヘッド20のノズル面22を保護するもので、例えば四周に立上り片を有する細長い箱状に形成され、その内側に上記ノズル面22を移動しながら増粘付着したインクかすをワイプするクリーニングローラ24及び上記インク吐出ノズル23から空吐出されたインクを受容する廃液受部25を有している。なお、上記クリーニングローラ24は、弾力性を有すると共に吸湿性を有する部材、例えばスポンジ等から成る。また、上記廃液受部25は、吸湿性を有する部材、例えばスポンジ等から成る。そして、符号26は、上記ヘッドキャップ21内にてプリントヘッド20のノズル面22に近い位置に設けられたノズル封止部材を示している。
【0017】
次に、上記ヘッドキャップ21の移動構造を、図4及び図5を参照して説明する。図4は、図1に示すプリンタ本体部12の外カバーを外して内部構造を示す説明図であり、図5は、ヘッドキャップ開閉機構を示す説明図である。図4において、プリンタ本体部12に対してヘッドカートリッジ13を矢印Z方向に下ろして収納部15に収納した後、ヘッド着脱機構27を約90度前側に倒して、上記ヘッドカートリッジ13をプリンタ本体部12に固定する。このとき、図2に示すヘッドキャップ21が、図4に示すヘッドキャップ開閉機構28と係合するようになっている。
【0018】
図5は、図4に示すヘッドキャップ開閉機構28の詳細を示す側面図である。まず、図3に示すクリーニングローラ24が取り付けられたヘッドキャップ21は、図5に示すように下辺部に直線状のラック29が形成された移動用ラック板40に連結して支持されている。この移動用ラック板40は、上記ヘッドキャップ21を矢印A,B方向に移動させるもので、該移動用ラック板40の内側側面の上部両端に設けられた2本のガイドピン41a,41bを、図4に示すプリンタ本体部12の一方の外側板42に形成された直線状の移動ガイド溝43に係合させ、下辺部に形成されたラック29を、上記一方の外側板42に取り付けられた移動用モータ44の回転軸上のウォームギア45によって回転されるピニオン30に噛み合わせて、支持されている。
【0019】
また、上記ヘッドキャップ21の一方の外側面には、上記移動用ラック板40側に向けて前後2本のキャップガイドピン46a,46bが突出して設けられている。また、前記プリンタ本体部12の一方の外側板42の中間部には、上記ヘッドキャップ21の移動軌跡を形成するため所定形状に湾曲した2本のキャップガイド溝47,48が形成されている。そして、上記ヘッドキャップ21の前後2本のキャップガイドピン46a,46bは、それぞれ上記プリンタ本体部12の外側板42のキャップガイド溝47,48に係合され、更に前部のキャップガイドピン46aだけは上記移動用ラック板40の前端部に縦長に形成されたガイド溝49に係合されている。
【0020】
このような機構により、上記移動用モータ44の駆動によりウォームギア45を介してピニオン30が矢印F,G方向に回転し、これと噛み合うラック29により移動用ラック板40が矢印A,B方向に移動する。このとき、上記ヘッドキャップ21の前部のキャップガイドピン46aが上記移動用ラック板40の前端部のガイド溝49に係合しているので、該ヘッドキャップ21は上記移動用ラック板40と共に矢印A,B方向に移動する。そして、そのときのヘッドキャップ21の移動軌跡は、前後2本のキャップガイドピン46a,46bが係合するキャップガイド溝47,48の形状によって決められる。
【0021】
次に、上記のように構成されたヘッドキャップ開閉機構28によりヘッドキャップ21が移動するときのクリーニング動作について、図6を参照して説明する。まず、図6(a)は、初期状態において、ヘッドキャップ21がプリントヘッド20のノズル面22に対して閉じた位置にあり、ノズル面22のY,M,C,Kの4色のインク吐出ノズル23がノズル封止部材26によって保護されている状態を示している。
【0022】
この状態から、プリンタ起動時又は印画開始時又は使用者の指示等により、プリンタ本体部12にキャップ開トリガー信号が入力されると、図5に示す移動用モータ44が回転駆動されて、図6(b)に示すように、ヘッドキャップ21が矢印A方向に移動し始める。このとき、ヘッドキャップ21の移動に伴って、例えばスポンジ製のクリーニングローラ24がノズル面22を擦りつつ順次回転移動する。そして、この回転移動時に、Y,M,C,Kの4色のインク吐出ノズル23内に固化して増粘したインクのかすが、クリーニングローラ24で拭い取られる。
【0023】
さらに、図示省略の光学式又は機械式等のセンサにより、例えばスポンジ製の廃液受部25がクリーニングローラ24でインクのかすを拭い取った後でインク吐出ノズル23の直下に達したのを検知すると、そのインク吐出ノズル23の目詰まりを防止するためのインクの空吐出が行われる。図6(b)では、Y色のインク吐出ノズル23についてクリーニングローラ24でインクのかすを拭い取った後に、そのY色のインク吐出ノズル23の直下に達した廃液受部25に対してインクを空吐出している状態を示している。また、図6(c)では、K色のインク吐出ノズル23についてクリーニングローラ24でインクのかすを拭い取った後に、そのK色のインク吐出ノズル23の直下に達した廃液受部25に対してインクを空吐出している状態を示している。
【0024】
このようにして、Y,M,C,Kの4色のインク吐出ノズル23の全部について、クリーニングローラ24によるワイプとインクの空吐出が終了した状態で、図6(d)に示すように、ヘッドキャップ21は矢印A方向に一杯に移動してヘッドキャップ退避位置に係留される。この状態で、プリンタ本体部12及びヘッドカートリッジ13は印画可能となる。
【0025】
所定の印画が終了すると、プリンタ本体部12にキャップ閉トリガー信号が入力され、図5に示す移動用モータ44が逆回転されて、図6(e)に示すように、ヘッドキャップ21が上記ヘッドキャップ退避位置から矢印B方向に移動し、往路と同じ軌跡を通って元の位置に復帰動作する。この復路においては、クリーニングローラ24はインク吐出ノズル23のワイプをせず、インクの空吐出もしない。クリーニングローラ24の寿命を長くして、部品交換時期を遅らせるためである。そして、ヘッドキャップ21が矢印B方向に一杯に移動したところで、図6(a)に示す初期状態に戻る。
【0026】
図7は、上記インクジェットプリンタ11の内部構造の具体的な一例を示す断面図であり、ヘッドカートリッジ13が動作を開始する前の停止状態を示す。図8は、プリントヘッド20のノズル面22を密閉保護していたヘッドキャップ21がヘッドキャップ退避位置まで退避し、印画動作が可能となった状態を示す。このインクジェットプリンタ11は、図7に示すように、プリンタ本体部12の前面下部に設けられたトレイ挿入口17に装着された記録紙トレイ14の挿入方向先端部の上部には、ローラから成る給紙手段50が設けられており、記録紙トレイ14に収納された記録紙51が随時供給できるようになっている。また、記録紙51の供給方向には、対向する二つのローラから成る分離手段52が設けられており、重ねて収納された記録紙51を1枚ずつ分離して給紙できるようになっている。さらに、この分離手段52により分離された記録紙51の搬送方向の前方でプリンタ本体部12の上方部位には、記録紙51の搬送方向を反転する反転ローラ53が設けられている。
【0027】
そして、この反転ローラ53で反転された記録紙51の搬送方向の前方には、ベルト搬送手段54及びプラテン板55が設けられている。このベルト搬送手段54は、上記プリントヘッド20に対する記録紙51の供給側から排出側へ記録紙51を搬送するもので、所定の経路上に搬送ベルトが配置されている。また、プラテン板55は、上記プリントヘッド20のノズル面22(図3参照)に対向するように配置され記録紙51を支持してプリントヘッド20との位置関係を規定するもので、上記ベルト搬送手段54を支持する架台を利用して取り付けられ、該ベルト搬送手段54と共にプリントヘッド20に対して下降、又は上昇可能とされている。なお、上記プラテン板55は、プリントヘッド20のインク吐出ノズル23から吐出されるインクを受けるインクリザーバとしても機能するもので、図11に示すように、記録紙51の紙幅(A4判)と同等又はそれより大きい長手方向の幅を有し、周囲に立上り片を有する細長い箱状に形成されている。
【0028】
この場合、図7に示すように、印画停止状態においては、ベルト搬送手段54の先端部が矢印H方向に下がって、プリントヘッド20の下面との間に大きなギャップを形成している。また、図8に示す印画動作状態においては、ベルト搬送手段54の先端部が矢印I方向に上昇して水平状態にされ、プリントヘッド20の下面との間に所定の小さなギャップの記録紙通路を形成するようにされている。
【0029】
また、印画停止状態において、図7に示すように、プリントヘッド20の下面はヘッドキャップ21で閉じられており、インク吐出ノズル23のインクが乾燥して目詰まりするのを防いでいる。なお、ヘッドキャップ21には、クリーニングローラ24が設けられており、印画動作開始前にヘッドキャップ21が所定のヘッドキャップ退避位置(図8参照)に退避する動作に伴って、インク吐出ノズル23をクリーニングするようになっている。また、このように構成されたインクジェットプリンタ11は、図9に示すように、メインテナンス時にプリンタ本体部12を開口させる機構を備えており、用紙詰まりなどに対処できる構造となっている。
【0030】
次に、上記ベルト搬送手段54及びプラテン板55の細部の取付け構造について、図10を参照して説明する。このベルト搬送手段54及びプラテン板55は、図7〜図9に示されるように、プラテン板55がプリントヘッド20のノズル面22(図3参照)に対向するように配置されて、上記プリントヘッド20に対して下降、又は上昇可能とされている。まず、ベルト搬送手段54は、2個のメインプーリ56a,56bの間に搬送ベルト57が掛け回されており、途中に該搬送ベルト57の張り具合を調整するテンションローラ58が配置され、またプリントヘッド20に対する記録紙51の供給側に案内板59とピンチローラ60が対向して配置され、さらに記録紙51の排出側にはハクシャローラ61が配置されて、所定の搬送経路を構成している。
【0031】
第1のメインプーリ56aと第2のメインプーリ56bとで所定の搬送経路の両端部を成しており、第1のメインプーリ56aのメインシャフト62に図示省略の駆動手段としてのモータの回転がギヤを介して伝えられ、第1のメインプーリ56aが駆動側となり第2のメインプーリ56bが従動側となって搬送ベルト57を駆動するようになっている。この搬送ベルト57は、歯付き伝動ベルトであるタイミングベルトから成り、平歯、はす歯又はやま歯等の歯が付けられて、滑りがなく騒音も少ない状態で回転するようになっている。
【0032】
ピンチローラ60とハクシャローラ61とは、上記搬送ベルト57の回転に従動して回転するものである。ピンチローラ60は、案内板59に対し所定の圧力で押圧されており、図10に示すように、記録紙51を搬送ベルト57との間に挟み込んでプリントヘッド20の下方位置に矢印Mのように送り出すようになっている。また、ハクシャローラ61は、第2のメインプーリ56bに対し所定の圧力で押圧されており、プリントヘッド20の位置から下流側に送り出された記録紙51を搬送ベルト57との間に挟み込んで引き出し、排紙口まで搬送するようになっている。
【0033】
ここで、本発明においては、上記プリントヘッド20からインクが吐出される領域内では、ベルト搬送手段54の搬送ベルト57がプリントヘッド20に対してプラテン板55よりも後方(図10において下方側)に配置されている。また、上記搬送ベルト57がプリントヘッド20に対してプラテン板55よりも後方に配置される箇所には、該搬送ベルト57の経路を変更するための経路変更手段(第1のガイドローラ63a及び第1のガイド板64a;第2のガイドローラ63b及び第2のガイド板64b)が設けられている。
【0034】
すなわち、図10に示すように、プラテン板55が上記ベルト搬送手段54を支持する架台を利用して取り付けられている状態において、上記プリントヘッド20の下方位置における搬送ベルト57の搬送経路上にて、プラテン板55に対する記録紙51の供給側端部の近傍に第1のガイドローラ63a及び第1のガイド板64aが設けられ、プラテン板55からの記録紙51の排出側端部の近傍に第2のガイドローラ63b及び第2のガイド板64bが設けられている。そして、上記第1のガイドローラ63a及び第1のガイド板64aの案内により、プラテン板55に対する記録紙51の供給側端部の手前において搬送ベルト57の経路をプラテン板55の後方(下方側)に潜り込ませて変更し、第2のガイドローラ63b及び第2のガイド板64bの案内により、プラテン板55からの記録紙51の排出側端部より後において搬送ベルト57の経路をプラテン板55の上面位置に浮き上がらせるように変更している。
【0035】
したがって、プリントヘッド20からインクが吐出される領域内では、搬送ベルト57はプリントヘッド20に対してプラテン板55よりも後方(下方側)に潜り込んで回転することとなり、上記プリントヘッド20から吐出されたインクが搬送ベルト57に付着しないようにすることができる。
【0036】
そして、上記搬送ベルト57は、図11に示すように、記録紙51の搬送方向Mに対し略直交する方向に所定間隔で複数本設置されている。図11は、プラテン板55の平面図を示しているが、図の左側が第1のガイドローラ63aが設けられている側であり、図の右側が第2のガイドローラ63bが設けられている側であるとし、上記プラテン板55の長手方向に略直交する方向に所定間隔をおいて例えば細幅の4本の搬送ベルト57a,57b,57c,57dが掛け回されている。なお、本発明においては、上記搬送ベルト57は、4本掛け回すものに限られず、他の本数を設置してもよい。また、細幅のものに限られず、記録紙51の紙幅と同等又はそれより広幅の1本の幅広ベルトを設置してもよい。
【0037】
なお、図11において、符号65は、プラテン板55の底面部から所定の間隔で並んで立ち上げられたプラテンリブを示している。このプラテンリブ65は、プラテン板55の上面側を搬送される記録紙51を下から支えることにより、プリントヘッド20のノズル面22と記録紙51との位置関係を規定するものである。
【0038】
次に、このように構成されたインクジェットプリンタ11の動作について説明する。まず、図2に示すように、プリンタ本体部12の上面の上蓋16を開いてプリントヘッド20を収納部15内に矢印Zのように収納する。また、プリンタ本体部12の前面下部に設けられたトレイ挿入口17に記録紙トレイ14を挿入して装着する。このとき、図7に示すように、プリンタ本体部12の内部は、ベルト搬送手段54の先端部が矢印H方向に下がっており、プリントヘッド20の下面がヘッドキャップ21で閉じられて印画停止状態となっている。
【0039】
次に、印画開始の制御信号が入力されると、ヘッドキャップ21が図7の矢印J方向に移動して所定のヘッドキャップ退避位置に退避する。このとき、図6に示すように、ヘッドキャップ21の退避動作に伴って、クリーニングローラ24がプリントヘッド20のノズル面22の表面を摺動してインク吐出ノズル23をクリーニングする。そして、このヘッドキャップ21が所定のヘッドキャップ退避位置に退避すると、ベルト搬送手段54の先端部が図7中の矢印I方向に上昇し、水平状態にてベルト搬送手段54とプリントヘッド20間に所定の小さなギャップの記録紙通路を形成して停止する(図8参照)。
【0040】
図8に示す印画動作状態において、給紙手段50が駆動し、記録紙トレイ14に重ねて収納された記録紙51が矢印K方向に供給される。この際、分離手段52によって記録紙51は1枚ずつに分離されて矢印L方向に随時給紙される。この給紙された記録紙51は、反転ローラ53により搬送方向が反転されてベルト搬送手段54まで送られる。そして、記録紙51は、ベルト搬送手段54によってプリントヘッド20の下方位置まで搬送される。
【0041】
さらに、記録紙51が、プリントヘッド20の下方位置に達すると、印画信号が入力され、該印画信号に応じてプリントヘッド20の所定の発熱抵抗素子が駆動される。そして、一定速度で送られる記録紙51に対して、4色のインクに対応するインク吐出ノズル23の列からインク滴が吐出され、記録紙51上にカラーのプリント画像が形成される。
【0042】
このとき、図10に示すように、上記プリントヘッド20からインクが吐出される領域内では、ベルト搬送手段54の搬送ベルト57がプリントヘッド20に対してプラテン板55よりも後方(下方側)に配置されているので、インク吐出ノズル23の列からインク滴が吐出される状態では、搬送ベルト57はプラテン板55よりも後方(下方側)に潜り込んで回転することとなり、上記プリントヘッド20から吐出されたインク滴は搬送ベルト57に付着しないこととなる。この場合、例えば縁無し印刷を行うときに、記録紙51の上下左右の端部を越えて吐出されたインクにより搬送ベルト57が汚染されることがなくなり、記録紙51の裏面の汚損を防止することができる。
【0043】
このようにして記録紙51への印画が全て終了すると、図8に示すように、記録紙51はプリントヘッド20の下方位置から矢印N方向に搬送され、排紙口を兼ねたトレイ挿入口17から記録紙トレイ14の上面の排紙受け部14aに排紙される。そして、図7に示すように、ベルト搬送手段54の先端部が矢印H方向に下がり、ヘッドキャップ21がプリントヘッド20の下面を閉じて印画停止状態に復帰し、インクジェットプリンタ11の動作が停止する。
【0044】
図12は、他の実施形態におけるベルト搬送手段54の搬送ベルト57とプラテン板55との位置関係を示す説明図である。この実施形態は、搬送ベルト57を掛け回す第1のメインプーリ56aと第2のメインプーリ56bとの間にて、プラテン板55の略中央部の下方位置に1個のガイドローラ66を設け、このガイドローラ66と第1のガイド板64a及び第2のガイド板64bとで搬送ベルト57を上記プラテン板55の下方側に経路を変更したものである。この実施形態の場合は、経路変更手段としてのガイドローラが1個でよいので、図10の場合に比べて構造を更に簡易とすることができる。
【0045】
図13は、更に他の実施形態におけるベルト搬送手段54の搬送ベルト57とプラテン板55との位置関係を示す説明図である。この実施形態は、第1のメインプーリ56aと第2のメインプーリ56bとの間に掛け回される搬送ベルト57の経路はそのままにしておいて、プラテン板55を搬送ベルト57の経路の上方に配置したものである。これにより、図10及び図12に示すと同様に、プリントヘッド20からインクが吐出される領域内では、相対的に搬送ベルト57をプリントヘッド20に対してプラテン板55よりも後方に配置した状態となる。なお、図13において、符号67a,68a;67b,68bは、プラテン板55に対する記録紙51の供給側と排出側とに設けられた用紙ガイドを示しており、これにより上記搬送ベルト57の経路の上方に位置するプラテン板55の上面に記録紙51をスムーズに案内するようになっている。この実施形態の場合は、搬送ベルト57の経路を変更するための経路変更手段としてのガイドローラやガイド板を設けなくてもよいので、図10の場合に比べて構造を更に簡易とすることができる。
【0046】
なお、以上の説明においては、インクジェットプリンタに適用された例について述べたが、本発明はこれに限らず、ノズル面に形成された複数の液体吐出ノズルから所定の液体を吐出するものであればどのようなものでもよい。例えば、記録方式がインクジェット方式のファクシミリ装置や複写機等の画像形成装置についても適用可能である。
【0047】
また、液体吐出ノズルから吐出される液体はインクに限られず、所定の液体を吐出しドット列又はドットを形成するものであるならば、他の液体の吐出装置にも適用することができる。例えば、DNA鑑定などにおいてDNA含有溶液をパレット上に吐出するための液体吐出装置にも適用することができる。
【0048】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されたので、請求項1に係る発明によれば、液体吐出ヘッドから所定の液体が吐出される領域内では、搬送手段の搬送ベルトを液体吐出ヘッドに対してプラテン板よりも後方に配置したことにより、液体吐出ヘッドから所定の液体が吐出される領域内にて吐出対象物を搬送する搬送ベルトが液体吐出ノズルから吐出される所定の液体で汚染されるのを簡易な構造で防止することができる。したがって、搬送ベルトに付着したインク等の所定の液体で記録紙等の吐出対象物を汚損するのを防止することができる。また、構造が簡易となることから、装置のメインテナンスが容易となり、トラブルの発生を減少することができる。さらに、搬送ベルトがプラテン板上に表出していないことから、吐出された液体で汚れたプラテン板の清掃が容易となる。また、装置全体が小形化すると共に構造が簡易化することから、コスト低下を図ることができる。
【0049】
また、請求項2に係る発明によれば、上記搬送ベルトが液体吐出ヘッドに対してプラテン板よりも後方に配置される箇所には、該搬送ベルトの経路を変更するための経路変更手段を設けたことにより、該経路変更手段で搬送ベルトの経路を容易に変更できる。したがって、装置の設計の自由度を増大することができる。
【0050】
さらに、請求項3に係る発明によれば、上記搬送ベルトはタイミングベルトから成ることにより、滑りがなく騒音も少ない状態で駆動して吐出対象物を搬送することができる。
【0051】
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、上記搬送ベルトは吐出対象物の搬送方向に対し略直交する方向に所定間隔で複数本設置されていることにより、細幅の搬送ベルトを使用して各種の装置幅に対応することができる。また、細幅の搬送ベルトを使用することにより、コスト低下を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による液体吐出装置の一例としてのインクジェットプリンタの実施形態を示す斜視図であり、上蓋を閉じた状態を示す図である。
【図2】同じく液体吐出装置の一例としてのインクジェットプリンタの実施形態を示す斜視図であり、上蓋を開いて収納部内にヘッドカートリッジを収納する状態を示す図である。
【図3】上記液体吐出装置におけるヘッドカートリッジの構成を示す一部断面側面図である。
【図4】図1に示すプリンタ本体部の外カバーを外して内部構造を示す説明図である。
【図5】図4に示すヘッドキャップ開閉機構を示す説明図である。
【図6】上記ヘッドキャップ開閉機構によりヘッドキャップが移動するときのクリーニング動作を示す説明図である。
【図7】図1に示すインクジェットプリンタの内部構造を示す断面図であり、ヘッドカートリッジが動作を開始する前の停止状態を示す図である。
【図8】上記ヘッドカートリッジのノズル面を密閉保護していたヘッドキャップがヘッドキャップ退避位置まで退避して印画動作が可能となった状態を示す図である。
【図9】上記インクジェットプリンタのメインテナンス時にプリンタ本体部を開口させた状態を示す図である。
【図10】ベルト搬送手段及びプラテン板の細部の取付け構造を示す要部拡大断面図である。
【図11】プラテン板を示す平面図である。
【図12】他の実施形態におけるベルト搬送手段の搬送ベルトとプラテン板との位置関係を示す説明図である。
【図13】更に他の実施形態におけるベルト搬送手段の搬送ベルトとプラテン板との位置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
11…インクジェットプリンタ
12…プリンタ本体部
13…ヘッドカートリッジ
14…記録紙トレイ
18…表示パネル
19…インクタンク
20…プリントヘッド(液体吐出ヘッド)
21…ヘッドキャップ
22…ノズル面
23…インク吐出ノズル
24…クリーニングローラ
51…記録紙(吐出対象物)
54…ベルト搬送手段
55…プラテン板
56a,56b…メインプーリ
57,57a〜57d…搬送ベルト
60…ピンチローラ
61…ハクシャローラ
63a,63b…ガイドローラ
64a,64b…ガイド板
Claims (4)
- ノズル面に形成された複数の液体吐出ノズルから所定の液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
この液体吐出ヘッドのノズル面に対向するように配置され吐出対象物を支持して上記液体吐出ヘッドとの位置関係を規定するプラテン板と、
上記液体吐出ヘッドに対する吐出対象物の供給側から排出側へ吐出対象物を搬送する搬送ベルトが所定の経路上に配置された搬送手段と、
を有する液体吐出装置において、
上記液体吐出ヘッドから所定の液体が吐出される領域内では、搬送手段の搬送ベルトを液体吐出ヘッドに対してプラテン板よりも後方に配置したことを特徴とする液体吐出装置。 - 上記搬送ベルトが液体吐出ヘッドに対してプラテン板よりも後方に配置される箇所には、該搬送ベルトの経路を変更するための経路変更手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の液体吐出装置。
- 上記搬送ベルトは、タイミングベルトから成ることを特徴とする請求項1記載の液体吐出装置。
- 上記搬送ベルトは、吐出対象物の搬送方向に対し略直交する方向に所定間隔で複数本設置されていることを特徴とする請求項1記載の液体吐出装置。
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-
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