JP2005019617A - ソレノイド制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ソレノイド制御装置において、コイル電流の振幅に影響を与える条件が変化しても、ソレノイドの制御性能を確保することができるようにする。
【解決手段】電磁弁のコイル(弁体を動かすソレノイドのコイル)Lに直列に接続された出力トランジスタTr1をデューティ信号で駆動して、コイルLの電流I3を制御するECU1では、コイルLにフライバック電流を環流させるダイオードD1と並列にトランジスタTr2に設けられている。更に、このECU1では、温度検出回路35で検出される本ECU内の温度が判定温度以上になると、出力トランジスタTr1の駆動周波数を低くして発熱を抑えるが、その際、出力トランジスタTr1のオフ期間の途中から該オフ期間が終わるまでトランジスタTr2をオンさせることで、コイルLに流れるフライバック電流の減衰速度を小さくし、コイル電流I3の振幅が一定の範囲内となるようにする。
【選択図】 図1
【解決手段】電磁弁のコイル(弁体を動かすソレノイドのコイル)Lに直列に接続された出力トランジスタTr1をデューティ信号で駆動して、コイルLの電流I3を制御するECU1では、コイルLにフライバック電流を環流させるダイオードD1と並列にトランジスタTr2に設けられている。更に、このECU1では、温度検出回路35で検出される本ECU内の温度が判定温度以上になると、出力トランジスタTr1の駆動周波数を低くして発熱を抑えるが、その際、出力トランジスタTr1のオフ期間の途中から該オフ期間が終わるまでトランジスタTr2をオンさせることで、コイルLに流れるフライバック電流の減衰速度を小さくし、コイル電流I3の振幅が一定の範囲内となるようにする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ソレノイドを制御する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えばモータや電磁弁(詳しくは、その電磁弁のソレノイド)等の誘導性負荷を制御する装置においては、電源電圧と基準電圧(<電源電圧)との間に、制御対象負荷のコイルと出力トランジスタとを直列に接続すると共に、そのコイルと並列に、該コイルのフライバックエネルギーを消弧させるためのフライホイールダイオードを接続し、そのコイルの電気的時定数よりも十分短いパルス幅の駆動信号(一般に、PWM信号或いはデューティ信号と呼ばれる)で出力トランジスタをオン/オフさせることにより、コイルへの通電電流を上記駆動信号のデューティ比に応じた値に制御するようにしている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
次に、上記技術が適用された電磁弁制御装置の構成例について、図10及び図11を用いて説明する。
まず図10に例示する電磁弁制御装置では、ハイサイド駆動形態であるため、電磁弁のソレノイド(即ち、電磁弁の弁体を動かすソレノイドであり、以下、電磁弁ソレノイドともいう)のコイルLの一端が、基準電圧としてのグランド(GND:接地電位=0V)に当該装置内の電流検出用抵抗17を介して常時接続されている。
【0004】
そして、この電磁弁制御装置は、電磁弁を制御するための各種処理を行うマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)11と、そのマイコン11からの駆動信号SDに応じて電磁弁ソレノイドを駆動する駆動回路12とを備えている。
また、駆動回路12は、ソースが電源電圧VBに接続され、ドレインがコイルLのグランド側とは反対側の端部に接続された出力トランジスタ(この例ではPチャネル型MOSFET)Tr1と、マイコン11からの駆動信号SDが入力され、該信号SDがハイレベルの時に出力トランジスタTr1をオンさせる反転回路(インバータ)13と、その反転回路13の出力端子と出力トランジスタTr1のゲートとの間に接続された抵抗15と、アノードがグランドに接続されると共に、カソードが出力トランジスタTr1のドレインに接続されたフライホイールダイオードD1と、前述の電流検出用抵抗17と、電流検出用抵抗17の両端の電圧が抵抗19,21を介してそれぞれ入力され、その2つの入力電圧の差に比例した電圧を出力する差動増幅回路23と、差動増幅回路23の出力から高周波成分を除去してマイコン11に入力させる抵抗25,27及びコンデンサ29からなるローパスフィルタ回路31とを備えている。
【0005】
そして、この駆動回路12では、マイコン11からの駆動信号SDがハイレベルのときに、反転回路13から出力トランジスタTr1のゲートへの信号がアクティブレベルとしてのローレベルになって出力トランジスタTr1がオンし、その出力トランジスタTr1からコイルLに電流を流すこととなる。つまり、この例では、マイコン11からの駆動信号SDが、反転回路13によりレベル反転されて、出力トランジスタTr1のゲートへローアクティブの駆動信号として供給される。
【0006】
以上の構成を有する電磁弁制御装置では、図11に示すように、マイコン11が、コイルLへの通電を制御して電磁弁を作動させようとする制御期間の開始タイミングから一定時間の間(K1の期間)、駆動信号SDをハイレベルにして出力トランジスタTr1をオンさせ、更に、その一定時間の終了時から制御期間が終了するまでの期間(K2の期間)の間は、駆動信号SDを、所定の周波数で且つコイルLに流したい電流に応じたデューティ比の信号(以下、デューティ信号という)にして出力する。
【0007】
尚、上記一定時間は、出力トランジスタTr1をオンさせてコイルLへの通電を開始してから電磁弁が確実に開弁すると見なされる時間に設定されており、この一定時間の期間(K1の期間)は、過励磁期間とも呼ばれる。また、図10及び図11における「Vo」は、出力トランジスタTr1のドレイン電圧(換言すれば、コイルLのグランド側とは反対側の端子電圧)を表している。
【0008】
このため、まず、制御期間の開始時から上記一定時間の間は、出力トランジスタTr1が継続的にオンして、コイルLに流れる電流(コイル電流)I3が零から徐々に増加し、その結果、電磁弁が閉弁状態から開弁状態に移行する。尚、出力トランジスタTr1のオン中は、その出力トランジスタTr1に流れる電流I1が、コイル電流I3となる。
【0009】
そして、上記一定時間の終了時から制御期間が終了するまでの間は、マイコン11からのデューティ信号としての駆動信号SDにより、出力トランジスタTr1が繰り返しオン/オフされることとなる。
また、制御期間中において、出力トランジスタTr1がオフされた時には、コイルLの逆起電力によるフライバック電流I2が、グランド側からダイオードD1を通してコイルLに環流され、この電流I2が流れることにより、コイルLに蓄積されていた電気エネルギー(フライバックエネルギー)が消弧(放電)される。そして、出力トランジスタTr1のオフ中は、図11の如く徐々に減衰するフライバック電流I2が、コイル電流I3となる。
【0010】
尚、このようなフライバック電流I2は、消弧回生電流あるいは単に回生電流とも呼ばれる。また、図11に示すように、出力トランジスタTr1のオフ時のVoは、グランドよりもダイオードD1の順方向電圧降下Vf(一般に0.7V程度)の分だけ低い電圧となる。
【0011】
このため、上記一定時間の終了時から制御期間が終了するまでの間は、マイコン11からの駆動信号DSのデューティ比に応じた電流がコイルLに平均的に流れることとなる。そして、マイコン11は、ローパスフィルタ回路31を介して入力される差動増幅回路23の出力電圧を内部のA/D変換器(ADC)11aによりA/D変換して、そのA/D変換値からコイル電流I3を検出し、その検出値が、電磁弁の開弁量を目標開弁量にするためや電磁弁を開弁状態に保持するための目標値となるように、駆動信号SDのデューティ比を調節する。
【0012】
ここで、上記のような電磁弁制御装置において、コイル電流I3は、出力トランジスタTr1のオン/オフに伴い脈動することとなる。そして、そのコイル電流I3の増加時の時定数は、コイルLのインピーダンス(主にインダクタンス成分及び抵抗成分)と、出力トランジスタTr1のオン抵抗と、電流検出用抵抗17の抵抗値との各要素によって決まり、コイル電流I3の減少時の時定数(即ち、フライバック電流I2の放電時定数)は、フライホイールダイオードD1での電圧降下Vfと、電流検出用抵抗17の抵抗値と、コイルLに蓄積されたエネルギーとの各要素によって決まる。
【0013】
このため、脈動するコイル電流I3の振幅は、上記各要素と、出力トランジスタTr1の駆動周波数(出力トランジスタTr1をオン/オフさせる周波数であり、駆動信号SDの周波数)とによって決まることとなる。尚、本明細書では、コイル電流I3の変化幅(山のピーク値から谷のピーク値までの幅)のことを振幅と言っている。
【0014】
また、コイル電流I3の振幅(以下、電流振幅ともいう)は、小さすぎても大きすぎても不具合がある。つまり、電流振幅が小さすぎると、ソレノイドの可動部(プランジャ)が完全に制止状態となるため、その可動部を動かそうとした際の摩擦が大きくなることによるヒステリシスの増大を招いてしてしまい、また、電流振幅が大きすぎると、ソレノイドの可動部の位置が必要以上にばたついて電磁弁の動作の安定性が低下してしまう。
【0015】
よって、従来より、出力トランジスタTr1の駆動周波数は、コイルLのインピーダンスやフライホイールダイオードD1の電圧降下Vf等、コイル電流I3の増加及び減少の時定数に関わる上記各要素を加味して、電流振幅が電磁弁の制御性能を満たすことができる一定の範囲内となるように設定されていた。
【0016】
一方、上記フライホイールダイオードD1での損失を低減するための技術として、非特許文献1には、MOSFETの寄生ダイオードをフライホイールダイオードとして用い、その寄生ダイオードにフライバック電流(回生電流)が流れる期間だけ、そのMOSFETにゲート電圧を印加して上記寄生ダイオードの順方向電圧降下を小さくすることも記載されている。
【0017】
【非特許文献1】
日本電気株式会社「半導体技術資料TEP−512 パワーMOSFETを用いたDCモータ駆動回路について、1987年、第1−2頁、第4−5頁」
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の電磁弁制御装置では、例えば、電磁弁の制御中に駆動周波数を低くして出力トランジスタTr1のスイッチング損失による発熱を抑えるといった具合に、駆動周波数を動作中に変える制御を実施したくても、そのような可変制御を十分に実施することができないという問題がある。
【0019】
つまり、例えば図11における時刻t1よりも右側の部分は、駆動周波数を設計上の最適な周波数f1から、それよりも低い周波数f2に変更した場合を表しているが、その部分に示すように、駆動周波数を大きく下げると、電流振幅が最適範囲よりも大きくなってしまうため、出力トランジスタTr1のスイッチング損失は小さくすることができるものの、電磁弁の弁体にバタツキが生じて安定性が悪化してしまう。
【0020】
このように従来の装置では、駆動周波数など、コイル電流の振幅に影響を与える条件が変化すると、電磁弁の制御性能が悪化してしまうという問題があった。そして、こうした問題は、電磁弁制御装置に限らず、ソレノイドを制御する装置に共通することである。
【0021】
そこで、本発明は、ソレノイド制御装置において、コイル電流の振幅に影響を与える条件が変化しても、ソレノイドの制御性能を確保することができるようにすることを目的としている。
【0022】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載のソレノイド制御装置は、ソレノイドのコイルに接続されると共に、そのコイルにオンすることで電流を流す出力トランジスタと、コイルに対して並列に設けられ、出力トランジスタがオフされた時にコイルの逆起電力によるフライバック電流を該コイルに環流させる消弧手段と、コイルへの通電を制御すべき制御期間の間、出力トランジスタをオン/オフさせることにより、コイルに流れる電流を制御する制御手段とを備えている。
【0023】
そして特に、このソレノイド制御装置には、電流減衰速度調節手段が設けられており、その電流減衰速度調節手段は、コイルに流れる電流(コイル電流)の振幅を変化させる特定の条件に応じて、そのコイル電流の振幅が一定の範囲内となるように、出力トランジスタがオフされているときのフライバック電流の減衰速度を変化させる。つまり、本装置では、コイル電流の振幅が一定の範囲内となるように、コイルに流れるフライバック電流の減衰時定数をアクティブに変えるようになっている。
【0024】
このような請求項1のソレノイド制御装置によれば、コイル電流の振幅に影響を与える特定の条件が変化しても、コイル電流の振幅が一定の範囲内に保たれるため、ソレノイドの良好な制御性能を確保することができる。コイル電流の振幅が小さすぎるようになって動作ヒステリシスが増大したり、コイル電流の振幅が大きすぎるようになってソレノイドの動作安定性が低下してしまう、といった不具合が防止されるからである。
【0025】
ところで、コイル電流の振幅に影響を与える特定の条件としては、例えば出力トランジスタの駆動周波数(出力トランジスタをオン/オフさせる周波数)が考えられる。
そこで、請求項2に記載のソレノイド制御装置では、制御手段が、出力トランジスタの駆動周波数を特定の状況に応じて変更するように構成されており、電流減衰速度調節手段は、その制御手段によって変更される出力トランジスタの駆動周波数に応じて、コイル電流の振幅が一定の範囲内となるように、出力トランジスタがオフされているときのフライバック電流の減衰速度を変化させるようになっている。
【0026】
このような請求項2のソレノイド制御装置によれば、出力トランジスタの駆動周波数が特定の状況に応じて変更されても、コイル電流の振幅が一定の範囲内に保たれるため、駆動周波数の状況に応じた可変制御とソレノイドの制御性能とを、高い次元で両立させることができる。
【0027】
尚、この請求項2のソレノイド制御装置において、制御手段が駆動周波数を変更する特定の状況としては、例えば請求項3〜5に記載のようなものが考えられる。
まず、請求項3に記載の如く、制御手段は、当該ソレノイド制御装置の内部温度あるいは出力トランジスタの温度が所定値以上になった場合に、出力トランジスタの駆動周波数を下げるように構成することができる。
【0028】
そして、この請求項3の構成によれば、ソレノイドの制御中において当該ソレノイド制御装置の内部温度あるいは出力トランジスタの温度が所定値以上になった場合に、駆動周波数を低くして出力トランジスタのスイッチング損失による発熱を抑える、といった過熱防止用の駆動周波数可変制御を、ソレノイドの制御性能を悪化させることなく実施することができる。更に、このため、特別な放熱手段や放熱構造を追加したり、発熱量が少ない高性能な素子を使用する必要が無くなり、熱対策のためのコストを抑えることもできる。
【0029】
次に、請求項4に記載の如く、ソレノイドが、流体経路内の流体の圧力を制御するための電磁弁の弁体を動かすものであるならば、制御手段は、駆動周波数によって流体の圧力脈動振幅が増幅、あるいはオーバーシュート等の乱れが予測、判断される制御条件では、駆動周波数を流体の圧力脈動周波数とは異なる値に変更するように構成することができる。
【0030】
そして、この請求項4の構成によれば、流体経路内の流体とソレノイドの可動部とが共振して圧力制御に支障が生じることを駆動周波数の変更により回避する制御を、ソレノイドの制御性能を悪化させることなく実施することができる。
また、請求項5に記載の如く、制御手段は、出力トランジスタのオン/オフに伴う放射ノイズが他の機器に影響を与える場合に、出力トランジスタの駆動周波数を変更するように構成することができる。
【0031】
そして、この請求項5の構成によれば、出力トランジスタのスイッチングに伴う放射ノイズがラジオ等の他の機器に影響してしまうことを駆動周波数の変更により回避する制御を、ソレノイドの制御性能を悪化させることなく実施することができる。
【0032】
一方、コイル電流の振幅に影響を与える特定の条件としては、出力トランジスタの駆動周波数以外にも、例えばコイルのインピーダンスが考えられる。そして、コイルのインピーダンスは、コイルの温度によって変化する。
そこで、請求項6に記載のソレノイド制御装置では、請求項1のソレノイド制御装置において、電流減衰速度調節手段は、コイルの温度を検出し、その検出温度に応じて、コイル電流の振幅が一定の範囲内となるように、出力トランジスタがオフされているときのフライバック電流の減衰速度を変化させるようになっている。
【0033】
そして、このような請求項6のソレノイド制御装置によれば、コイルのインピーダンスが温度によって変化しても、コイル電流の振幅が一定の範囲内に保たれるため、ソレノイドの良好な制御性能を広い温度範囲で実現することができる。
尚、この場合、電流減衰速度調節手段は、コイルの温度として、必ずしもコイル自体の温度を検出する必要はなく、コイルと温度が同じであると考えらるものの温度(例えば、ソレノイドの何れかの部分の温度や、ソレノイドの周囲の温度)を、コイルの温度として検出するように構成することができる。
【0034】
次に、請求項7に記載のソレノイド制御装置は、請求項1のソレノイド制御装置と同様の、出力トランジスタ、消弧手段、及び制御手段を備えている。
そして更に、この請求項7のソレノイド制御装置にも、電流減衰速度調節手段が設けられているが、その電流減衰速度調節手段は、コイル電流の振幅を検出し、その振幅が一定の範囲内となるように、出力トランジスタがオフされているときのフライバック電流の減衰速度を変化させる。
【0035】
このような請求項7のソレノイド制御装置によれば、コイル電流の振幅に影響を与える様々な条件が変化しても、コイル電流の振幅が一定の範囲内に保たれることとなるため、ソレノイドの良好な制御性能を常に確保することができる。
一方、上記請求項1〜7のソレノイド制御装置において、フライバック電流の減衰速度をアクティブに変化させる構成としては、例えば請求項8に記載のような構成を採ることができる。
【0036】
即ち、請求項8のソレノイド制御装置では、消弧手段が、フライバック電流をコイルに環流させる際の当該消弧手段での電圧降下を変えることができるように構成されており、電流減衰速度調節手段は、その消弧手段での電圧降下を変えることで、フライバック電流の減衰速度を変化させるようになっている。
【0037】
そして、この構成によれば、フライバック電流の減衰速度を簡単な構成で可変にすることができる。消弧手段での電圧降下が変われば、コイルLに蓄積されていたエネルギーが消費されて減少していく速度が変わるからである。
より具体的な構成例としては、請求項9に記載のように、消弧手段は、フライバック電流をコイルに環流させるダイオード(即ち、フライホイールダイオード)と、そのダイオードに対して並列に設けられた電圧降下変更用トランジスタとから構成することができる。そして、このような消弧手段では、電圧降下変更用トランジスタをオンさせれば、当該消弧手段での電圧降下が小さくなる。よって、電流減衰速度調節手段は、出力トランジスタがオフされている期間中の前記電圧降下変更用トランジスタのオン/オフ状態を制御することで、フライバック電流の減衰速度を変化させるように構成することができる。
【0038】
尚、電圧降下変更用トランジスタとしては、フライホイールダイオードとは別のトランジスタを用いても良いが、その電圧降下変更用トランジスタとしてFETを用いた場合には、そのFETの寄生ダイオードを、フライホイールダイオードとして用いることもできる。つまり、この場合には、ドレインとソース間に寄生ダイオードを有したFETが、フライホイールダイオードと電圧降下変更用トランジスタとの両方として機能することとなる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明が適用された実施形態のソレノイド制御装置としての電子制御装置について、図面を用いて説明する。尚、本実施形態の電子制御装置(以下、ECUという)は、車両の自動変速機の油圧経路に設けられた電磁弁(詳しくは、その電磁弁の弁体を動かすソレノイド)を駆動制御して、その油圧経路の油圧を制御することにより、該自動変速機の変速やロックアップ/非ロックアップの切り替えなどを行うものである。また、以下では説明を簡略化するため、1つの電磁弁を制御する部分について述べる。
【0040】
[第1実施形態]
まず図1は、第1実施形態のECU1の構成を表す構成図であり、図2は、そのECU1の作用を表すタイムチャートである。尚、図1及び図2において、前述した図10及び図11と同様の構成要素,信号,電圧,電流及び期間などについては、同一の符号を付しているため、詳細な説明は省略する。
【0041】
まず、図1に示すように、第1実施形態のECU1では、図10に例示した電磁弁制御装置と同様に、ハイサイド駆動形態であるため、電磁弁ソレノイド(電磁弁のソレノイド)のコイルLの一端が、グランドに当該ECU1内の電流検出用抵抗17を介して常時接続されている。
【0042】
そして、本ECU1は、自動変速機を制御するための各種処理を行うマイコン11と、そのマイコン11からの駆動信号SDに応じて電磁弁ソレノイドを駆動する駆動回路3と、電源電圧VB、上記油圧経路の油温を検出する油温センサからの油温センサ信号、上記油圧経路の油圧を検出する油圧センサからの油圧センサ信号、及び電磁弁の温度(以下、バルブ温度という)を検出するバルブ温センサからのバルブ温センサ信号等、自動変速機の制御に必要な各種アナログ信号をマイコン11に入力させる入力処理回路33とを備えている。
【0043】
尚、マイコン11は、CPU、ROM及びRAM等に加え、A/D変換器11aも備えている。また、図示は省略しているが、マイコン11には、シフトレバーの操作位置(シフト位置)を示すシフト位置信号やオーバードライブスイッチのオン/オフを示すODスイッチ信号等、自動変速機の制御に必要な各種デジタル信号も入力されている。また更に、本実施形態において、電源電圧VBは、車載バッテリのプラス端子の電圧(バッテリ電圧)である。
【0044】
ここで、駆動回路3は、図10に例示した電磁弁制御装置の駆動回路12と比較すると、下記の点が異なっている。
即ち、フライホイールダイオードD1と並列にトランジスタ(この例ではNチャネル型MOSFET)Tr2が接続されており、そのトランジスタTr2は、マイコン11から抵抗31を介してゲートに供給される制御信号SCがアクティブレベル(この例ではハイレベル)のときに、オンするようになっている。尚、トランジスタTr2は、そのドレインがダイオードD1のカソードに接続され、そのソースがダイオードD1のアノード及びグランドに接続されている。
【0045】
そして更に、本ECU1には、温度検出回路35が設けられている。
この温度検出回路35は、本ECU1内の温度(ECU1の内部温度)を示す検出信号をマイコン11へ出力するものであり、図示は省略しているが、例えば出力トランジスタTr1の近傍に設けられた温度検出用ダイオードと、その温度検出用ダイオードに一定電流を流す定電流回路と、上記温度検出用ダイオードの順方向の両端電位差を増幅し、その増幅した電圧信号を上記検出信号として出力する増幅回路とから構成されている。つまり、この温度検出回路35では、温度が高いほどダイオードの順方向電圧降下が小さくなることを利用して、出力トランジスタTr1の近傍に設けられた温度検出用ダイオードの温度を、本ECU1内の温度として検出している。また、温度検出用ダイオードを出力トランジスタTr1の近傍に設けているため、出力トランジスタTr1の温度を、本ECU1内の温度として検出しているとも言える。
【0046】
以上のような構成を有する本第1実施形態のECU1において、マイコン11は、入力処理回路33からの各種アナログ信号の電圧値を、内部のA/D変換器11aによりA/D変換して取得すると共に、その各種アナログ信号の電圧値と前述の各種デジタル信号とに基づいて、電磁弁の制御期間を設定する。
【0047】
そして、マイコン11は、基本的には、図10の電磁弁制御装置と同様の手順の出力処理で駆動信号SDを出力する。
つまり、図2に示すように、マイコン11は、制御期間の開始タイミングから一定時間の間(K1の期間)、駆動信号SDをハイレベルにして出力トランジスタTr1をオンさせ、その一定時間の終了時から制御期間が終了するまでの期間(K2の期間)は、駆動信号SDを、所定の周波数で且つ電磁弁ソレノイドのコイルLに流したい電流に応じたデューティ比の信号(デューティ信号)にして出力する。更に、このとき、マイコン11は、ローパスフィルタ回路31を介して入力される差動増幅回路23の出力電圧を内部のA/D変換器11aによりA/D変換して、そのA/D変換値からコイル電流I3を検出し、その検出値が電磁弁の開弁量を目標開弁量にするための目標値となるように駆動信号SDのデューティ比を調節する、いわゆる電流フィードバック制御を行う。
【0048】
また、マイコン11は、温度検出回路35からの検出信号を内部のA/D変換器11aによりA/D変換して、そのA/D変換値から本ECU1内の温度を検出する温度検出処理を、例えば一定時間毎に実行している。
そして更に、マイコン11は、電磁弁の制御期間の間、上記のような駆動信号SDの出力処理と並行して、図3の処理を駆動信号SDの立ち上がりタイミング毎に実行することにより、出力トランジスタTr1の駆動周波数(駆動信号SDの周波数)の変更制御と、トランジスタTr2の制御とを行っている。
【0049】
ここで、マイコン11が、図3の処理の実行を開始すると、まずS110にて、上記温度検出処理により現在検出されている本ECU1内の最新の温度を、当該マイコン11内のRAMから読み込む。
次に、S120にて、上記S110で読み込んだ温度が所定の判定温度Tth以上であるか否かを判定し、判定温度Tth以上ではないと否定判定したならば、S130に進んで、出力トランジスタTr1の駆動周波数を通常周波数f1に設定する。そして、続くS140にて、トランジスタTr2をオフしたままにし(つまり、制御信号SCをローレベルのままにし)、その後、本図3の処理を終了する。
【0050】
尚、判定温度Tthは、本ECU1内の素子(特に出力トランジスタTr1)が熱破壊に至る温度よりも低い温度に設定されている。また、上記通常周波数f1は、制御期間中において、出力トランジスタTr1がオフされた時のコイルLの逆起電力によるフライバック電流がダイオードD1を通してコイルLに環流する場合(つまり、トランジスタTr2がオフされている場合)に、コイル電流I3の振幅が電磁弁の制御性能を満たすことのできる一定の範囲内となるように決定された駆動信号SDの最適な周波数である。
【0051】
一方、S120にて、上記S110で読み込んだ温度が判定温度Tth以上であると肯定判定した場合には、S150に移行して、出力トランジスタTr1の駆動周波数を、通常周波数f1よりも低い周波数f2に設定する。
よって、例えば、前回のS120で否定判定していて、今回のS120で肯定判定した場合には、図2の時刻t2よりも右側に示すように、駆動周波数が、それまでの通常周波数f1よりも低い周波数f2に変更されることとなる。尚、図2において、tf1は通常周波数f1の周期を表しており、tf2は周波数f2の周期を表している。
【0052】
そして、続くS160にて、その低く設定された駆動周波数(この場合は周波数f2)に応じたトランジスタTr2のオフ時間taとオン時間tbとを、当該マイコン11内のROMから読み込む。
尚、図2に示すように、オフ時間taは、駆動信号SDをローレベルにして出力トランジスタTr1をオフさせるタイミングから、トランジスタTr2をオンさせるまでの待ち時間であり、オン時間tbは、出力トランジスタTr1のオフ期間中にトランジスタTr2をオンさせる時間であって、出力トランジスタTr1のオフ時間toffから上記オフ時間taを引いた時間(=toff−ta)である。そして、このようなオフ時間taとオン時間tbは、駆動信号SDの様々なデューティ比毎に対応した値がROMに予め格納されており、S160では、現在の駆動信号SDのデューティ比に対応するオフ時間taとオン時間tbとをROMから読み込む。
【0053】
そして、次のS170にて、上記S160で読み込んだオフ時間ta及びオン時間tbに基づいてトランジスタTr2がオン/オフされるように、制御信号SCを出力するための内部タイマを設定する。つまり、駆動信号SDがローレベルになってから上記オフ時間ta(>0)が経過すると、その時点から上記オン時間tbだけ制御信号SCがハイレベルになってトランジスタTr2がオンされるように、内部タイマを設定する。そして、その後、本図3の処理を終了する。
【0054】
尚、前回のS120で肯定判定していて、今回のS120で否定判定したことにより、S130の処理が行われた場合には、駆動周波数がそれまでの周波数f2から通常周波数f1に戻ると共に、トランジスタTr2がオフされたままとなる。
【0055】
以上のような処理が実行されるECU1において、温度検出回路35により検出される本ECU1内の温度が判定温度Tth未満である場合には(S120:NO)、図2の時刻t2よりも左側に示すように、出力トランジスタTr1の駆動周波数が通常周波数f1に設定される(S130)。そして更に、この場合には、トランジスタTr2がオフされたままになるため(S140)、出力トランジスタTr1のオフ中は、グランド側からダイオードD1を通してコイルLに環流されるフライバック電流Idが、コイル電流I3となる。尚、出力トランジスタTr1のオン中は、その出力トランジスタTr1に流れる電流I1がコイル電流I3となる。
【0056】
これに対して、温度検出回路35により検出される本ECU1内の温度が判定温度Tth以上となった場合には(S120:YES)、図2の時刻t2よりも右側に示すように、出力トランジスタTr1の駆動周波数が通常周波数f1よりも低い周波数f2に設定される(S150)。
【0057】
そして更に、この場合には、図3のS170の処理により、出力トランジスタTr1のオフタイミングから上記オフ時間taが経過した時点から、出力トランジスタTr1のオフ期間が終了するタイミングまでの上記オン時間tbの間、トランジスタTr2がオンされる。
【0058】
よって、この場合には、駆動周波数が通常周波数f1である場合よりも、出力トランジスタTr1のオフ期間中にコイルLに流れるフライバック電流の減衰速度(即ち、コイル電流I3の減衰速度)がトータル的に小さくなる。
つまり、図2の時刻t2よりも右側に示されているように、出力トランジスタTr1のオフ期間の途中でトランジスタTr2がオンされると、その時点から出力トランジスタTr1のオフ期間が終了するまでは、グランド側からトランジスタTr2を通してコイルLに環流されるフライバック電流Itが、コイル電流I3となる。そして、この場合、そのトランジスタTr2での電圧降下Vtは、ダイオードD1の電圧降下Vfよりも小さいため、コイルLに蓄積されていたエネルギーの消費速度が遅くなり、その結果、コイルLに流れるフライバック電流の減衰が緩くなるからである。
【0059】
そして、本第1実施形態では、このように駆動周波数を通常周波数f1よりも低く変更した場合に、出力トランジスタTr1のオフ期間におけるフライバック電流の減衰速度を、駆動周波数が通常周波数f1である場合よりも小さくなるように変化させることにより、コイル電流I3の振幅が依然として電磁弁の制御性能を満たすことのできる一定の範囲内に収まるようにしている。尚、図2において、駆動信号SDのデューティ比が、時刻t2の左側よりも右側の方が小さくなっているのは、コイル電流I3を目標値にしようとする電流フィードバック制御が実施されているためである。
【0060】
よって、このような本第1実施形態のECU1によれば、出力トランジスタTr1の駆動周波数が変更されても、電磁弁の良好な制御性能を確保することができる。
特に、電磁弁の制御期間中において温度検出回路35により検出される本ECU1の内部温度(本第1実施形態では、出力トランジスタTr1の温度でもある)が判定温度Vth以上になった場合に、駆動周波数を低くして出力トランジスタTr1のスイッチング損失による発熱を抑える、といった過熱防止用の駆動周波数可変制御を、電磁弁の制御性能を悪化させることなく実施することができる。図2の時刻t2よりも右側に示すように、駆動周波数が低い周波数f2に変更されても、コイル電流I3の振幅が大きくならず一定となり、電磁弁の弁体位置が必要以上にばたついてしまうことが防止されるからである。
【0061】
そして更に、このため、特別な放熱手段や放熱構造を追加したり、発熱量が少ない高性能な素子を使用する必要が無くなり、熱対策のためのコストを抑えることもできる。
尚、本第1実施形態では、マイコン11が、制御手段と電流減衰速度調節手段との両方に相当しているが、特に、前述した駆動信号SDの出力処理と、図3のS110〜S130及びS150の処理とが、制御手段としての処理に相当しており、図3のS140、S160及びS170の処理が、電流減衰速度調節手段としての処理に相当している。そして、ダイオードD1とトランジスタTr2とが、消弧手段(特に、電圧降下が可変の消弧手段)に相当しており、そのうちで、トランジスタTr2が、電圧降下変更用トランジスタに相当している。また、本第1実施形態では、判定温度Tthが、請求項3に記載の所定値に相当している。
【0062】
一方、上記第1実施形態において、温度検出回路35の温度検出用ダイオードは、ECU1の内部温度を検出するという面では、必ずしも出力トランジスタTr1の近傍に設ける必要はない。但し、出力トランジスタTr1の駆動周波数を低くして発熱を抑えるようにすることから考えると、その出力トランジスタTr1の温度を検出する構成、即ち、上記温度検出用ダイオードを出力トランジスタTr1の近傍に設ける構成の方が好ましい。
【0063】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のECUについて説明する。
第2実施形態のECUは、第1実施形態のECU1と比較すると、ハードウェアの面においては、温度検出回路35が設けられていない点のみ異なっている。このため、以下の説明において、ECUの各構成要素や信号、電圧、電流及び時間等については、第1実施形態と同じ符号を用いる。尚、このことは、後述する他の実施形態についても同様である。
【0064】
また、本第2実施形態のECUは、第1実施形態のECU1と比較すると、ソフトウェアの面においては、マイコン11が、電磁弁の制御期間の間、駆動信号SDの立ち上がりタイミング毎に、図3の処理に代えて、図4の処理を実行する点が異なっている。
【0065】
そして、マイコン11が図4の処理の実行を開始すると、まずS210にて、駆動制御対象の電磁弁が設けられた油圧経路の油圧(即ち、電磁弁によって制御される油圧経路内の油の圧力であり、以下、AT油圧という)が共振しているか否か(即ち、AT油圧がある周波数で脈動しているか否か)と、そのAT油圧の共振周波数(換言すれば、脈動周波数)Kとを表すAT油圧共振情報を、当該マイコン11内のRAMから読み込む。尚、マイコン11は、一定時間毎に、油圧センサ信号からAT油圧を検出する油圧検出処理と、その油圧検出処理によって順次検出されているAT油圧を分析して、そのAT油圧が共振しているか否かを判定すると共に、AT油圧が共振していると判定した場合には、そのAT油圧の共振周波数Kを算出する、といった共振分析処理とを実行している。そして、このS210では、上記共振分析処理で求められている判定結果及び共振周波数Kを、AT油圧共振情報としてRAMから読み込む。
【0066】
次に、S220にて、上記S210で読み込んだAT油圧共振情報から、AT油圧が共振しているか否かを判定し、AT油圧が共振していると判定した場合には、S230に進んで、AT油圧共振情報が表しているAT油圧の共振周波数Kと、出力トランジスタTr1の現在の駆動周波数とが、同じであるか否かを判定する。尚、このS230では、AT油圧の共振周波数Kと出力トランジスタTr1の現在の駆動周波数とを比較して、その差が0又は所定の範囲内であれば、両周波数が同じであると肯定判定する。
【0067】
そして、上記S230で肯定判定した場合には(S230:YES)、S240に進み、出力トランジスタTr1の駆動周波数をAT油圧の共振周波数Kとは異なる周波数に変更する。すると、駆動周波数は、例えば駆動信号SDの今回の1周期から、それまでの周波数とは違う周波数に変わることとなる。
【0068】
そして更に、続くS250にて、現在の駆動周波数に応じたトランジスタTr2のオフ時間taとオン時間tbとを、当該マイコン11内のROMに格納されている駆動周波数対オン/オフ時間データマップから読み込む。
ここで、図5に示すように、駆動周波数対オン/オフ時間データマップは、駆動周波数と、コイル電流I3の振幅を一定の範囲内にするためのトランジスタTr2のオフ時間ta及びオン時間tbとの関係を表したものであり、駆動周波数が低いほど、出力トランジスタTr1のオフ時間(消弧時間)toffにおけるトランジスタTr2のオン時間tbの割合が大きくなるように設定されている。換言すれば、駆動周波数が低い場合ほど、出力トランジスタTr1のオフ時におけるフライバック電流(コイル電流I3)の減衰速度が小さくなるように設定されている。尚、図5におけるfLは、トランジスタTr2のオン時間tbを出力トランジスタTr1のオフ時間toffと同じに設定する場合の駆動周波数であり、図5におけるfHは、トランジスタTr2のオン時間tbを0に設定する場合の駆動周波数である。また、図示は省略しているが、この駆動周波数対オン/オフ時間データマップは、駆動信号SDの様々なデューティ比毎に用意されている。
【0069】
このため、S250では、現在の駆動信号SDのデューティ比に該当する駆動周波数対オン/オフ時間データマップを選択し、その選択したデータマップから、現在の駆動周波数に対応するオフ時間taとオン時間tbとを読み込む。
そして、続くS260にて、図3のS170と同様に、上記S250で読み込んだオフ時間ta及びオン時間tbに基づいてトランジスタTr2がオン/オフされるように、制御信号SCを出力するための内部タイマを設定し、その後、本図4の処理を終了する。
【0070】
一方、上記S220にてAT油圧が共振していないと判定した場合、あるいは、上記S230にて否定判定した場合(即ち、AT油圧の共振周波数Kと出力トランジスタTr1の駆動周波数とが同じではないと判定した場合)には、S240の処理を行うことなく、そのままS250に移行する。
【0071】
つまり、本第2実施形態のECUでは、S220とS230との両方で肯定判定した場合に、出力トランジスタTr1の駆動周波数によってAT油圧の脈動振幅が増幅あるいは乱れると予測、判断される制御条件が成立したとして、出力トランジスタTr1の駆動周波数をAT油圧の共振周波数K(流体の圧力脈動周波数に相当)とは異なる値に変更するようにしており(S240)、更に、そのように変更される駆動周波数に応じて、コイル電流I3の振幅が一定の範囲内となるように、出力トランジスタTr1のオフ期間中におけるトランジスタTr2のオンタイミング(即ち、オフ時間ta)及びオン時間tbを制御して、出力トランジスタTr1のオフ時におけるコイル電流I3の減衰速度を変化させるようにしている(S250,S260)。
【0072】
よって、このような第2実施形態のECUによれば、AT油圧と電磁弁の弁体とが共振して電磁弁の動作が不安定になってしまいAT油圧の制御に支障が生じることを駆動周波数の変更によって回避する制御を、電磁弁の制御性能を悪化させることなく実施することができる。
【0073】
尚、本第2実施形態においても、マイコン11が、制御手段と電流減衰速度調節手段との両方に相当しているが、特に、前述した駆動信号SDの出力処理と、図4のS210〜S240の処理とが、制御手段としての処理に相当しており、図4のS250及びS260の処理が、電流減衰速度調節手段としての処理に相当している。
【0074】
一方、上記第2実施形態は、以下のように変形しても良い。
電磁弁の制御に伴って発生する放射ノイズがラジオに悪影響する条件、例えばユーザーに不快感を与える度合いの高いエンジン停止中または車両停止中では、通常走行中と異なった制御(例えば駆動周波数を変える)にする事により、放射ノイズによる特定のラジオ周波数への影響を回避できる。
【0075】
そこで、まず、ラジオにノイズが入っているか否かを判定して、ノイズが入っていると判定したならばフラグをセットするノイズ判定処理を実行する。
そして、図4の処理では、S210〜S240の処理に代えて、上記フラグがセットされているか否かを判定し、フラグがセットされていれば、出力トランジスタTr1のオン/オフに伴う放射ノイズが他の機器としてのラジオに影響を与えていると判断して、出力トランジスタTr1の駆動周波数を変更する(例えば、所定値だけ増加又は減少させる)処理を行った後、S250に進み、また、上記フラグがセットされていなければ、駆動周波数を変更することなく、そのままS250に進むようにする。
【0076】
このように構成すれば、出力トランジスタTr1のスイッチングに伴う放射ノイズがラジオに影響してしまうことを回避するために、駆動周波数を変更する制御を、電磁弁の制御性能を悪化させることなく実施することができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態のECUについて説明する。
【0077】
第3実施形態のECUも、ハードウェア面においては、第1実施形態のECU1に対して、温度検出回路35が設けられていない点のみ異なっている。
また、本第3実施形態のECUは、第1実施形態のECU1と比較すると、ソフトウェアの面においては、出力トランジスタTr1の駆動周波数が前述の通常周波数f1に固定されていると共に、マイコン11が、電磁弁の制御期間の間、駆動信号SDの立ち上がりタイミング毎に、図3の処理に代えて、図6の処理を実行する点が異なっている。
【0078】
そして、マイコン11が図6の処理の実行を開始すると、まずS310にて、現在検出している最新のバルブ温度を読み込む。尚、マイコン11は、バルブ温センサ信号からバルブ温度を検出するバルブ温検出処理を一定時間毎に実行している。そして、このS310では、上記バルブ温検出処理で検出されている最新のバルブ温度を当該マイコン11内のRAMから読み込む。
【0079】
次に、S320にて、上記読み込んだバルブ温度に基づいて、トランジスタTr2のオフ時間taとオン時間tbとを設定する。
具体的に説明すると、まず、マイコン11内のROMには、図7に示すようなバルブ温度対オン/オフ時間データマップが予め格納されている。そして、このバルブ温度対オン/オフ時間データマップは、バルブ温度と、コイル電流I3の振幅を一定の範囲内にするためのトランジスタTr2のオフ時間taとオン時間tbとの比H(ここでは、H=ta/(ta+tb))との関係を表したものであり、バルブ温度が低いほど、オフ時間taに対してオン時間tbが長くなるように設定されている。
【0080】
つまり、バルブ温度はコイルLの温度と同じであると見なすことができ、また、コイルLの温度が低いほど、そのコイルLのインピーダンスが小さくなって、コイル電流I3の脈動時の増減度合いが急になるため、バルブ温度が低い場合ほど、出力トランジスタTr1のオフ期間におけるトランジスタTr2のオン時間tbが長くなるようにして、出力トランジスタTr1のオフ時におけるフライバック電流(コイル電流I3)の減衰速度が小さくなるように設定されている。尚、図7におけるTLは、トランジスタTr2のオン時間tbを出力トランジスタTr1のオフ時間toffと同じに設定する場合のバルブ温度であり、図7におけるTHは、トランジスタTr2のオン時間tbを0に設定する場合のバルブ温度である。
【0081】
このため、S320では、現在の駆動信号SDのデューティ比から出力トランジスタTr1のオフ時間toffを求めると共に、図7のバルブ温対オン/オフ時間データマップから現在のバルブ温に対応するオフ時間taとオン時間tbとの比Hを読み込み、その比Hと上記求めた出力トランジスタTr1のオフ時間toffとから、トランジスタTr2のオフ時間taとオン時間tbとを設定する。尚、オフ時間taは「H×toff」の式で求められ、オン時間tbは「(1−H)×toff」の式で求められる。
【0082】
そして、続くS330にて、図3のS170と同様に、上記S320で設定したオフ時間ta及びオン時間tbに基づいてトランジスタTr2がオン/オフされるように、制御信号SCを出力するための内部タイマを設定し、その後、本図6の処理を終了する。
【0083】
つまり、本第3実施形態のECUでは、バルブ温度をコイルLの温度として検出し、その検出温度に応じて、コイル電流I3の振幅が一定の範囲内となるように、出力トランジスタTr1のオフ期間中におけるトランジスタTr2のオンタイミング(即ち、オフ時間ta)及びオン時間tbを制御して、出力トランジスタTr1のオフ時におけるコイル電流I3の減衰速度を変化させるようにしている(S320,S330)。
【0084】
そして、このような第3実施形態のECUによれば、コイルLのインピーダンスが温度によって変化しても、コイル電流I3の振幅が一定の範囲内に保たれ、その結果、電磁弁の良好な制御性能を広い温度範囲で実現することができる。
尚、本第3実施形態においても、マイコン11が、制御手段と電流減衰速度調節手段との両方に相当しているが、特に、前述した駆動信号SDの出力処理が、制御手段としての処理に相当しており、前述したバルブ温検出処理と図6の処理とが、電流減衰速度調節手段としての処理に相当している。
【0085】
一方、上記第3実施形態では、バルブ温度をコイルLの温度として検出したが、コイルLの温度と同じであると考えられる他のものの温度を検出するようにしても良い。例えば、油圧経路の油温をコイルLの温度として検出するように構成することができる。また、電磁弁ソレノイド内におけるコイルLの近傍に温度センサを設けて、コイルL自体の温度を検出するようにしても良い。
【0086】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態のECUについて説明する。
第4実施形態のECUは、第3実施形態のECUと比較すると、マイコン11が、電磁弁の制御期間の間、駆動信号SDの立ち上がりタイミング毎に、図6の処理に代えて、図8の処理を実行する点が異なっている。
【0087】
そして、マイコン11が図8の処理の実行を開始すると、まずS410にて、現在検出している最新の電流振幅(コイル電流I3の振幅)を読み込む。尚、マイコン11は、差動増幅回路23の出力電圧から電流振幅を検出する振幅検出処理を一定時間毎に実行している。そして、このS310では、上記振幅検出処理で検出されている最新の電流振幅を当該マイコン11内のRAMから読み込む。
【0088】
次に、S420にて、上記読み込んだ電流振幅に基づいて、トランジスタTr2のオフ時間taとオン時間tbとを設定する。
具体的に説明すると、まず、マイコン11内のROMには、図9に示すような電流振幅対オン/オフ時間データマップが予め格納されている。そして、この電流振幅対オン/オフ時間データマップは、電流振幅と、その電流振幅を一定の範囲内に入れるためのトランジスタTr2のオフ時間taとオン時間tbとの比H(ここでは、H=ta/(ta+tb))との関係を表したものであり、電流振幅が大きいほど、オフ時間taに対してオン時間tbが長くなるように設定されている。つまり、電流振幅が大きい場合ほど、出力トランジスタTr1のオフ期間におけるトランジスタTr2のオン時間tbが長くなるようにして、出力トランジスタTr1のオフ時におけるフライバック電流(コイル電流I3)の減衰速度が小さくなるように設定されている。尚、図9におけるWHは、トランジスタTr2のオン時間tbを出力トランジスタTr1のオフ時間toffと同じに設定する場合の電流振幅であり、図9におけるWLは、トランジスタTr2のオン時間tbを0に設定する場合の電流振幅である。
【0089】
このため、S420では、現在の駆動信号SDのデューティ比から出力トランジスタTr1のオフ時間toffを求めると共に、図9の電流振幅対オン/オフ時間データマップから、現在検出している電流振幅に対応したオフ時間taとオン時間tbとの比Hを読み込み、その比Hと上記求めた出力トランジスタTr1のオフ時間toffとから、トランジスタTr2のオフ時間taとオン時間tbとを設定する。尚、前述した第3実施形態と同様に、オフ時間taは「H×toff」の式で求められ、オン時間tbは「(1−H)×toff」の式で求められる。
【0090】
そして、続くS430にて、図3のS170と同様に、上記S420で設定したオフ時間ta及びオン時間tbに基づいてトランジスタTr2がオン/オフされるように、制御信号SCを出力するための内部タイマを設定し、その後、本図8の処理を終了する。
【0091】
つまり、本第4実施形態のECUでは、電流振幅を検出し、その電流振幅が一定の範囲内となるように、出力トランジスタTr1のオフ期間中におけるトランジスタTr2のオンタイミング(即ち、オフ時間ta)及びオン時間tbを制御して、出力トランジスタTr1のオフ時におけるコイル電流I3の減衰速度を変化させるようにしている(S420,S430)。
【0092】
このような第4実施形態のECUによれば、電流振幅に影響を与える様々な条件が変化しても、電流振幅が一定の範囲内に保たれることとなるため、電磁弁の良好な制御性能を常に確保することができる。
尚、マイコン11のA/D変換器11aに入力される差動増幅回路23の出力電圧の脈動の振幅が、ローパスフィルタ回路31の作用によって実際の電流振幅よりも小さくなる場合には、その分を加味して、図9の電流振幅対オン/オフ時間データマップを設定しておくことにより、十分な効果を得ることができる。
【0093】
また、本第4実施形態においても、マイコン11が、制御手段と電流減衰速度調節手段との両方に相当しているが、特に、前述した駆動信号SDの出力処理が、制御手段としての処理に相当しており、前述した振幅検出処理と図8の処理とが、電流減衰速度調節手段としての処理に相当している。
【0094】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
例えば、上記各実施形態では、フライホイールダイオードD1と電圧降下変更用のトランジスタTr2とが別々の素子であったが、トランジスタTr2のソース・ドレイン間の寄生ダイオードを、フライホイールダイオードD1として用いることもできる。
【0095】
また、上記各実施形態では、出力トランジスタTr1のオフ期間の途中でトランジスタTr2をオンさせるようにしたが、それとは逆に、トランジスタTr2を、出力トランジスタTr1のオフ期間の開始時からオンさせ、そのオフ期間内の所望のタイミングでトランジスタTr2をオフさせることにより、コイル電流I3の減衰速度を変えるようにしても良い。
【0096】
また更に、消弧手段としては、ダイオードD1及びトランジスタTr2の構成に限らず、例えば、図1のダイオードD1と直列に1個以上のダイオードを設けると共に、その複数のダイオードのうちの何れかをバイパスさせるスイッチ素子を設けるようにしても良い。そして、このようなスイッチ素子及び複数のダイオードからなる消弧手段でも、上記スイッチ素子をオン/オフさせることで、当該消弧手段での電圧降下を変えることができる。
【0097】
一方、電源電圧VBに応じて、コイル電流I3の振幅が一定の範囲内となるように、コイル電流I3の減衰速度を変化させるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のECU(電子制御装置)の構成を表す構成図である。
【図2】第1実施形態のECUの作用を表すタイムチャートである。
【図3】第1実施形態のECUのマイコンが実行する処理を表すフローチャートである。
【図4】第2実施形態のECUのマイコンが実行する処理を表すフローチャートである。
【図5】図4の処理で参照される駆動周波数対オン/オフ時間データマップを説明する説明図である。
【図6】第3実施形態のECUのマイコンが実行する処理を表すフローチャートである。
【図7】図6の処理で参照されるバルブ温度対オン/オフ時間データマップを説明する説明図である。
【図8】第4実施形態のECUのマイコンが実行する処理を表すフローチャートである。
【図9】図8の処理で参照される電流振幅対オン/オフ時間データマップを説明する説明図である。
【図10】従来の電磁弁制御装置の構成例を表す構成図である。
【図11】図10の電磁弁制御装置の作用及び従来技術の問題を表すタイムチャートである。
【符号の説明】
1…ECU(電子制御装置)、3…駆動回路、11…マイコン、11a…A/D変換器、13…反転回路、15,19,21,25,27,31…抵抗、17…電流検出用抵抗、23…差動増幅回路、29…コンデンサ、31…ローパスフィルタ回路、33…入力処理回路、35…温度検出回路、D1…フライホイールダイオード、L…電磁弁のソレノイドのコイル、Tr1…出力トランジスタ、Tr2…電圧降下変更用のトランジスタ
【発明の属する技術分野】
本発明は、ソレノイドを制御する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えばモータや電磁弁(詳しくは、その電磁弁のソレノイド)等の誘導性負荷を制御する装置においては、電源電圧と基準電圧(<電源電圧)との間に、制御対象負荷のコイルと出力トランジスタとを直列に接続すると共に、そのコイルと並列に、該コイルのフライバックエネルギーを消弧させるためのフライホイールダイオードを接続し、そのコイルの電気的時定数よりも十分短いパルス幅の駆動信号(一般に、PWM信号或いはデューティ信号と呼ばれる)で出力トランジスタをオン/オフさせることにより、コイルへの通電電流を上記駆動信号のデューティ比に応じた値に制御するようにしている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
次に、上記技術が適用された電磁弁制御装置の構成例について、図10及び図11を用いて説明する。
まず図10に例示する電磁弁制御装置では、ハイサイド駆動形態であるため、電磁弁のソレノイド(即ち、電磁弁の弁体を動かすソレノイドであり、以下、電磁弁ソレノイドともいう)のコイルLの一端が、基準電圧としてのグランド(GND:接地電位=0V)に当該装置内の電流検出用抵抗17を介して常時接続されている。
【0004】
そして、この電磁弁制御装置は、電磁弁を制御するための各種処理を行うマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)11と、そのマイコン11からの駆動信号SDに応じて電磁弁ソレノイドを駆動する駆動回路12とを備えている。
また、駆動回路12は、ソースが電源電圧VBに接続され、ドレインがコイルLのグランド側とは反対側の端部に接続された出力トランジスタ(この例ではPチャネル型MOSFET)Tr1と、マイコン11からの駆動信号SDが入力され、該信号SDがハイレベルの時に出力トランジスタTr1をオンさせる反転回路(インバータ)13と、その反転回路13の出力端子と出力トランジスタTr1のゲートとの間に接続された抵抗15と、アノードがグランドに接続されると共に、カソードが出力トランジスタTr1のドレインに接続されたフライホイールダイオードD1と、前述の電流検出用抵抗17と、電流検出用抵抗17の両端の電圧が抵抗19,21を介してそれぞれ入力され、その2つの入力電圧の差に比例した電圧を出力する差動増幅回路23と、差動増幅回路23の出力から高周波成分を除去してマイコン11に入力させる抵抗25,27及びコンデンサ29からなるローパスフィルタ回路31とを備えている。
【0005】
そして、この駆動回路12では、マイコン11からの駆動信号SDがハイレベルのときに、反転回路13から出力トランジスタTr1のゲートへの信号がアクティブレベルとしてのローレベルになって出力トランジスタTr1がオンし、その出力トランジスタTr1からコイルLに電流を流すこととなる。つまり、この例では、マイコン11からの駆動信号SDが、反転回路13によりレベル反転されて、出力トランジスタTr1のゲートへローアクティブの駆動信号として供給される。
【0006】
以上の構成を有する電磁弁制御装置では、図11に示すように、マイコン11が、コイルLへの通電を制御して電磁弁を作動させようとする制御期間の開始タイミングから一定時間の間(K1の期間)、駆動信号SDをハイレベルにして出力トランジスタTr1をオンさせ、更に、その一定時間の終了時から制御期間が終了するまでの期間(K2の期間)の間は、駆動信号SDを、所定の周波数で且つコイルLに流したい電流に応じたデューティ比の信号(以下、デューティ信号という)にして出力する。
【0007】
尚、上記一定時間は、出力トランジスタTr1をオンさせてコイルLへの通電を開始してから電磁弁が確実に開弁すると見なされる時間に設定されており、この一定時間の期間(K1の期間)は、過励磁期間とも呼ばれる。また、図10及び図11における「Vo」は、出力トランジスタTr1のドレイン電圧(換言すれば、コイルLのグランド側とは反対側の端子電圧)を表している。
【0008】
このため、まず、制御期間の開始時から上記一定時間の間は、出力トランジスタTr1が継続的にオンして、コイルLに流れる電流(コイル電流)I3が零から徐々に増加し、その結果、電磁弁が閉弁状態から開弁状態に移行する。尚、出力トランジスタTr1のオン中は、その出力トランジスタTr1に流れる電流I1が、コイル電流I3となる。
【0009】
そして、上記一定時間の終了時から制御期間が終了するまでの間は、マイコン11からのデューティ信号としての駆動信号SDにより、出力トランジスタTr1が繰り返しオン/オフされることとなる。
また、制御期間中において、出力トランジスタTr1がオフされた時には、コイルLの逆起電力によるフライバック電流I2が、グランド側からダイオードD1を通してコイルLに環流され、この電流I2が流れることにより、コイルLに蓄積されていた電気エネルギー(フライバックエネルギー)が消弧(放電)される。そして、出力トランジスタTr1のオフ中は、図11の如く徐々に減衰するフライバック電流I2が、コイル電流I3となる。
【0010】
尚、このようなフライバック電流I2は、消弧回生電流あるいは単に回生電流とも呼ばれる。また、図11に示すように、出力トランジスタTr1のオフ時のVoは、グランドよりもダイオードD1の順方向電圧降下Vf(一般に0.7V程度)の分だけ低い電圧となる。
【0011】
このため、上記一定時間の終了時から制御期間が終了するまでの間は、マイコン11からの駆動信号DSのデューティ比に応じた電流がコイルLに平均的に流れることとなる。そして、マイコン11は、ローパスフィルタ回路31を介して入力される差動増幅回路23の出力電圧を内部のA/D変換器(ADC)11aによりA/D変換して、そのA/D変換値からコイル電流I3を検出し、その検出値が、電磁弁の開弁量を目標開弁量にするためや電磁弁を開弁状態に保持するための目標値となるように、駆動信号SDのデューティ比を調節する。
【0012】
ここで、上記のような電磁弁制御装置において、コイル電流I3は、出力トランジスタTr1のオン/オフに伴い脈動することとなる。そして、そのコイル電流I3の増加時の時定数は、コイルLのインピーダンス(主にインダクタンス成分及び抵抗成分)と、出力トランジスタTr1のオン抵抗と、電流検出用抵抗17の抵抗値との各要素によって決まり、コイル電流I3の減少時の時定数(即ち、フライバック電流I2の放電時定数)は、フライホイールダイオードD1での電圧降下Vfと、電流検出用抵抗17の抵抗値と、コイルLに蓄積されたエネルギーとの各要素によって決まる。
【0013】
このため、脈動するコイル電流I3の振幅は、上記各要素と、出力トランジスタTr1の駆動周波数(出力トランジスタTr1をオン/オフさせる周波数であり、駆動信号SDの周波数)とによって決まることとなる。尚、本明細書では、コイル電流I3の変化幅(山のピーク値から谷のピーク値までの幅)のことを振幅と言っている。
【0014】
また、コイル電流I3の振幅(以下、電流振幅ともいう)は、小さすぎても大きすぎても不具合がある。つまり、電流振幅が小さすぎると、ソレノイドの可動部(プランジャ)が完全に制止状態となるため、その可動部を動かそうとした際の摩擦が大きくなることによるヒステリシスの増大を招いてしてしまい、また、電流振幅が大きすぎると、ソレノイドの可動部の位置が必要以上にばたついて電磁弁の動作の安定性が低下してしまう。
【0015】
よって、従来より、出力トランジスタTr1の駆動周波数は、コイルLのインピーダンスやフライホイールダイオードD1の電圧降下Vf等、コイル電流I3の増加及び減少の時定数に関わる上記各要素を加味して、電流振幅が電磁弁の制御性能を満たすことができる一定の範囲内となるように設定されていた。
【0016】
一方、上記フライホイールダイオードD1での損失を低減するための技術として、非特許文献1には、MOSFETの寄生ダイオードをフライホイールダイオードとして用い、その寄生ダイオードにフライバック電流(回生電流)が流れる期間だけ、そのMOSFETにゲート電圧を印加して上記寄生ダイオードの順方向電圧降下を小さくすることも記載されている。
【0017】
【非特許文献1】
日本電気株式会社「半導体技術資料TEP−512 パワーMOSFETを用いたDCモータ駆動回路について、1987年、第1−2頁、第4−5頁」
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の電磁弁制御装置では、例えば、電磁弁の制御中に駆動周波数を低くして出力トランジスタTr1のスイッチング損失による発熱を抑えるといった具合に、駆動周波数を動作中に変える制御を実施したくても、そのような可変制御を十分に実施することができないという問題がある。
【0019】
つまり、例えば図11における時刻t1よりも右側の部分は、駆動周波数を設計上の最適な周波数f1から、それよりも低い周波数f2に変更した場合を表しているが、その部分に示すように、駆動周波数を大きく下げると、電流振幅が最適範囲よりも大きくなってしまうため、出力トランジスタTr1のスイッチング損失は小さくすることができるものの、電磁弁の弁体にバタツキが生じて安定性が悪化してしまう。
【0020】
このように従来の装置では、駆動周波数など、コイル電流の振幅に影響を与える条件が変化すると、電磁弁の制御性能が悪化してしまうという問題があった。そして、こうした問題は、電磁弁制御装置に限らず、ソレノイドを制御する装置に共通することである。
【0021】
そこで、本発明は、ソレノイド制御装置において、コイル電流の振幅に影響を与える条件が変化しても、ソレノイドの制御性能を確保することができるようにすることを目的としている。
【0022】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載のソレノイド制御装置は、ソレノイドのコイルに接続されると共に、そのコイルにオンすることで電流を流す出力トランジスタと、コイルに対して並列に設けられ、出力トランジスタがオフされた時にコイルの逆起電力によるフライバック電流を該コイルに環流させる消弧手段と、コイルへの通電を制御すべき制御期間の間、出力トランジスタをオン/オフさせることにより、コイルに流れる電流を制御する制御手段とを備えている。
【0023】
そして特に、このソレノイド制御装置には、電流減衰速度調節手段が設けられており、その電流減衰速度調節手段は、コイルに流れる電流(コイル電流)の振幅を変化させる特定の条件に応じて、そのコイル電流の振幅が一定の範囲内となるように、出力トランジスタがオフされているときのフライバック電流の減衰速度を変化させる。つまり、本装置では、コイル電流の振幅が一定の範囲内となるように、コイルに流れるフライバック電流の減衰時定数をアクティブに変えるようになっている。
【0024】
このような請求項1のソレノイド制御装置によれば、コイル電流の振幅に影響を与える特定の条件が変化しても、コイル電流の振幅が一定の範囲内に保たれるため、ソレノイドの良好な制御性能を確保することができる。コイル電流の振幅が小さすぎるようになって動作ヒステリシスが増大したり、コイル電流の振幅が大きすぎるようになってソレノイドの動作安定性が低下してしまう、といった不具合が防止されるからである。
【0025】
ところで、コイル電流の振幅に影響を与える特定の条件としては、例えば出力トランジスタの駆動周波数(出力トランジスタをオン/オフさせる周波数)が考えられる。
そこで、請求項2に記載のソレノイド制御装置では、制御手段が、出力トランジスタの駆動周波数を特定の状況に応じて変更するように構成されており、電流減衰速度調節手段は、その制御手段によって変更される出力トランジスタの駆動周波数に応じて、コイル電流の振幅が一定の範囲内となるように、出力トランジスタがオフされているときのフライバック電流の減衰速度を変化させるようになっている。
【0026】
このような請求項2のソレノイド制御装置によれば、出力トランジスタの駆動周波数が特定の状況に応じて変更されても、コイル電流の振幅が一定の範囲内に保たれるため、駆動周波数の状況に応じた可変制御とソレノイドの制御性能とを、高い次元で両立させることができる。
【0027】
尚、この請求項2のソレノイド制御装置において、制御手段が駆動周波数を変更する特定の状況としては、例えば請求項3〜5に記載のようなものが考えられる。
まず、請求項3に記載の如く、制御手段は、当該ソレノイド制御装置の内部温度あるいは出力トランジスタの温度が所定値以上になった場合に、出力トランジスタの駆動周波数を下げるように構成することができる。
【0028】
そして、この請求項3の構成によれば、ソレノイドの制御中において当該ソレノイド制御装置の内部温度あるいは出力トランジスタの温度が所定値以上になった場合に、駆動周波数を低くして出力トランジスタのスイッチング損失による発熱を抑える、といった過熱防止用の駆動周波数可変制御を、ソレノイドの制御性能を悪化させることなく実施することができる。更に、このため、特別な放熱手段や放熱構造を追加したり、発熱量が少ない高性能な素子を使用する必要が無くなり、熱対策のためのコストを抑えることもできる。
【0029】
次に、請求項4に記載の如く、ソレノイドが、流体経路内の流体の圧力を制御するための電磁弁の弁体を動かすものであるならば、制御手段は、駆動周波数によって流体の圧力脈動振幅が増幅、あるいはオーバーシュート等の乱れが予測、判断される制御条件では、駆動周波数を流体の圧力脈動周波数とは異なる値に変更するように構成することができる。
【0030】
そして、この請求項4の構成によれば、流体経路内の流体とソレノイドの可動部とが共振して圧力制御に支障が生じることを駆動周波数の変更により回避する制御を、ソレノイドの制御性能を悪化させることなく実施することができる。
また、請求項5に記載の如く、制御手段は、出力トランジスタのオン/オフに伴う放射ノイズが他の機器に影響を与える場合に、出力トランジスタの駆動周波数を変更するように構成することができる。
【0031】
そして、この請求項5の構成によれば、出力トランジスタのスイッチングに伴う放射ノイズがラジオ等の他の機器に影響してしまうことを駆動周波数の変更により回避する制御を、ソレノイドの制御性能を悪化させることなく実施することができる。
【0032】
一方、コイル電流の振幅に影響を与える特定の条件としては、出力トランジスタの駆動周波数以外にも、例えばコイルのインピーダンスが考えられる。そして、コイルのインピーダンスは、コイルの温度によって変化する。
そこで、請求項6に記載のソレノイド制御装置では、請求項1のソレノイド制御装置において、電流減衰速度調節手段は、コイルの温度を検出し、その検出温度に応じて、コイル電流の振幅が一定の範囲内となるように、出力トランジスタがオフされているときのフライバック電流の減衰速度を変化させるようになっている。
【0033】
そして、このような請求項6のソレノイド制御装置によれば、コイルのインピーダンスが温度によって変化しても、コイル電流の振幅が一定の範囲内に保たれるため、ソレノイドの良好な制御性能を広い温度範囲で実現することができる。
尚、この場合、電流減衰速度調節手段は、コイルの温度として、必ずしもコイル自体の温度を検出する必要はなく、コイルと温度が同じであると考えらるものの温度(例えば、ソレノイドの何れかの部分の温度や、ソレノイドの周囲の温度)を、コイルの温度として検出するように構成することができる。
【0034】
次に、請求項7に記載のソレノイド制御装置は、請求項1のソレノイド制御装置と同様の、出力トランジスタ、消弧手段、及び制御手段を備えている。
そして更に、この請求項7のソレノイド制御装置にも、電流減衰速度調節手段が設けられているが、その電流減衰速度調節手段は、コイル電流の振幅を検出し、その振幅が一定の範囲内となるように、出力トランジスタがオフされているときのフライバック電流の減衰速度を変化させる。
【0035】
このような請求項7のソレノイド制御装置によれば、コイル電流の振幅に影響を与える様々な条件が変化しても、コイル電流の振幅が一定の範囲内に保たれることとなるため、ソレノイドの良好な制御性能を常に確保することができる。
一方、上記請求項1〜7のソレノイド制御装置において、フライバック電流の減衰速度をアクティブに変化させる構成としては、例えば請求項8に記載のような構成を採ることができる。
【0036】
即ち、請求項8のソレノイド制御装置では、消弧手段が、フライバック電流をコイルに環流させる際の当該消弧手段での電圧降下を変えることができるように構成されており、電流減衰速度調節手段は、その消弧手段での電圧降下を変えることで、フライバック電流の減衰速度を変化させるようになっている。
【0037】
そして、この構成によれば、フライバック電流の減衰速度を簡単な構成で可変にすることができる。消弧手段での電圧降下が変われば、コイルLに蓄積されていたエネルギーが消費されて減少していく速度が変わるからである。
より具体的な構成例としては、請求項9に記載のように、消弧手段は、フライバック電流をコイルに環流させるダイオード(即ち、フライホイールダイオード)と、そのダイオードに対して並列に設けられた電圧降下変更用トランジスタとから構成することができる。そして、このような消弧手段では、電圧降下変更用トランジスタをオンさせれば、当該消弧手段での電圧降下が小さくなる。よって、電流減衰速度調節手段は、出力トランジスタがオフされている期間中の前記電圧降下変更用トランジスタのオン/オフ状態を制御することで、フライバック電流の減衰速度を変化させるように構成することができる。
【0038】
尚、電圧降下変更用トランジスタとしては、フライホイールダイオードとは別のトランジスタを用いても良いが、その電圧降下変更用トランジスタとしてFETを用いた場合には、そのFETの寄生ダイオードを、フライホイールダイオードとして用いることもできる。つまり、この場合には、ドレインとソース間に寄生ダイオードを有したFETが、フライホイールダイオードと電圧降下変更用トランジスタとの両方として機能することとなる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明が適用された実施形態のソレノイド制御装置としての電子制御装置について、図面を用いて説明する。尚、本実施形態の電子制御装置(以下、ECUという)は、車両の自動変速機の油圧経路に設けられた電磁弁(詳しくは、その電磁弁の弁体を動かすソレノイド)を駆動制御して、その油圧経路の油圧を制御することにより、該自動変速機の変速やロックアップ/非ロックアップの切り替えなどを行うものである。また、以下では説明を簡略化するため、1つの電磁弁を制御する部分について述べる。
【0040】
[第1実施形態]
まず図1は、第1実施形態のECU1の構成を表す構成図であり、図2は、そのECU1の作用を表すタイムチャートである。尚、図1及び図2において、前述した図10及び図11と同様の構成要素,信号,電圧,電流及び期間などについては、同一の符号を付しているため、詳細な説明は省略する。
【0041】
まず、図1に示すように、第1実施形態のECU1では、図10に例示した電磁弁制御装置と同様に、ハイサイド駆動形態であるため、電磁弁ソレノイド(電磁弁のソレノイド)のコイルLの一端が、グランドに当該ECU1内の電流検出用抵抗17を介して常時接続されている。
【0042】
そして、本ECU1は、自動変速機を制御するための各種処理を行うマイコン11と、そのマイコン11からの駆動信号SDに応じて電磁弁ソレノイドを駆動する駆動回路3と、電源電圧VB、上記油圧経路の油温を検出する油温センサからの油温センサ信号、上記油圧経路の油圧を検出する油圧センサからの油圧センサ信号、及び電磁弁の温度(以下、バルブ温度という)を検出するバルブ温センサからのバルブ温センサ信号等、自動変速機の制御に必要な各種アナログ信号をマイコン11に入力させる入力処理回路33とを備えている。
【0043】
尚、マイコン11は、CPU、ROM及びRAM等に加え、A/D変換器11aも備えている。また、図示は省略しているが、マイコン11には、シフトレバーの操作位置(シフト位置)を示すシフト位置信号やオーバードライブスイッチのオン/オフを示すODスイッチ信号等、自動変速機の制御に必要な各種デジタル信号も入力されている。また更に、本実施形態において、電源電圧VBは、車載バッテリのプラス端子の電圧(バッテリ電圧)である。
【0044】
ここで、駆動回路3は、図10に例示した電磁弁制御装置の駆動回路12と比較すると、下記の点が異なっている。
即ち、フライホイールダイオードD1と並列にトランジスタ(この例ではNチャネル型MOSFET)Tr2が接続されており、そのトランジスタTr2は、マイコン11から抵抗31を介してゲートに供給される制御信号SCがアクティブレベル(この例ではハイレベル)のときに、オンするようになっている。尚、トランジスタTr2は、そのドレインがダイオードD1のカソードに接続され、そのソースがダイオードD1のアノード及びグランドに接続されている。
【0045】
そして更に、本ECU1には、温度検出回路35が設けられている。
この温度検出回路35は、本ECU1内の温度(ECU1の内部温度)を示す検出信号をマイコン11へ出力するものであり、図示は省略しているが、例えば出力トランジスタTr1の近傍に設けられた温度検出用ダイオードと、その温度検出用ダイオードに一定電流を流す定電流回路と、上記温度検出用ダイオードの順方向の両端電位差を増幅し、その増幅した電圧信号を上記検出信号として出力する増幅回路とから構成されている。つまり、この温度検出回路35では、温度が高いほどダイオードの順方向電圧降下が小さくなることを利用して、出力トランジスタTr1の近傍に設けられた温度検出用ダイオードの温度を、本ECU1内の温度として検出している。また、温度検出用ダイオードを出力トランジスタTr1の近傍に設けているため、出力トランジスタTr1の温度を、本ECU1内の温度として検出しているとも言える。
【0046】
以上のような構成を有する本第1実施形態のECU1において、マイコン11は、入力処理回路33からの各種アナログ信号の電圧値を、内部のA/D変換器11aによりA/D変換して取得すると共に、その各種アナログ信号の電圧値と前述の各種デジタル信号とに基づいて、電磁弁の制御期間を設定する。
【0047】
そして、マイコン11は、基本的には、図10の電磁弁制御装置と同様の手順の出力処理で駆動信号SDを出力する。
つまり、図2に示すように、マイコン11は、制御期間の開始タイミングから一定時間の間(K1の期間)、駆動信号SDをハイレベルにして出力トランジスタTr1をオンさせ、その一定時間の終了時から制御期間が終了するまでの期間(K2の期間)は、駆動信号SDを、所定の周波数で且つ電磁弁ソレノイドのコイルLに流したい電流に応じたデューティ比の信号(デューティ信号)にして出力する。更に、このとき、マイコン11は、ローパスフィルタ回路31を介して入力される差動増幅回路23の出力電圧を内部のA/D変換器11aによりA/D変換して、そのA/D変換値からコイル電流I3を検出し、その検出値が電磁弁の開弁量を目標開弁量にするための目標値となるように駆動信号SDのデューティ比を調節する、いわゆる電流フィードバック制御を行う。
【0048】
また、マイコン11は、温度検出回路35からの検出信号を内部のA/D変換器11aによりA/D変換して、そのA/D変換値から本ECU1内の温度を検出する温度検出処理を、例えば一定時間毎に実行している。
そして更に、マイコン11は、電磁弁の制御期間の間、上記のような駆動信号SDの出力処理と並行して、図3の処理を駆動信号SDの立ち上がりタイミング毎に実行することにより、出力トランジスタTr1の駆動周波数(駆動信号SDの周波数)の変更制御と、トランジスタTr2の制御とを行っている。
【0049】
ここで、マイコン11が、図3の処理の実行を開始すると、まずS110にて、上記温度検出処理により現在検出されている本ECU1内の最新の温度を、当該マイコン11内のRAMから読み込む。
次に、S120にて、上記S110で読み込んだ温度が所定の判定温度Tth以上であるか否かを判定し、判定温度Tth以上ではないと否定判定したならば、S130に進んで、出力トランジスタTr1の駆動周波数を通常周波数f1に設定する。そして、続くS140にて、トランジスタTr2をオフしたままにし(つまり、制御信号SCをローレベルのままにし)、その後、本図3の処理を終了する。
【0050】
尚、判定温度Tthは、本ECU1内の素子(特に出力トランジスタTr1)が熱破壊に至る温度よりも低い温度に設定されている。また、上記通常周波数f1は、制御期間中において、出力トランジスタTr1がオフされた時のコイルLの逆起電力によるフライバック電流がダイオードD1を通してコイルLに環流する場合(つまり、トランジスタTr2がオフされている場合)に、コイル電流I3の振幅が電磁弁の制御性能を満たすことのできる一定の範囲内となるように決定された駆動信号SDの最適な周波数である。
【0051】
一方、S120にて、上記S110で読み込んだ温度が判定温度Tth以上であると肯定判定した場合には、S150に移行して、出力トランジスタTr1の駆動周波数を、通常周波数f1よりも低い周波数f2に設定する。
よって、例えば、前回のS120で否定判定していて、今回のS120で肯定判定した場合には、図2の時刻t2よりも右側に示すように、駆動周波数が、それまでの通常周波数f1よりも低い周波数f2に変更されることとなる。尚、図2において、tf1は通常周波数f1の周期を表しており、tf2は周波数f2の周期を表している。
【0052】
そして、続くS160にて、その低く設定された駆動周波数(この場合は周波数f2)に応じたトランジスタTr2のオフ時間taとオン時間tbとを、当該マイコン11内のROMから読み込む。
尚、図2に示すように、オフ時間taは、駆動信号SDをローレベルにして出力トランジスタTr1をオフさせるタイミングから、トランジスタTr2をオンさせるまでの待ち時間であり、オン時間tbは、出力トランジスタTr1のオフ期間中にトランジスタTr2をオンさせる時間であって、出力トランジスタTr1のオフ時間toffから上記オフ時間taを引いた時間(=toff−ta)である。そして、このようなオフ時間taとオン時間tbは、駆動信号SDの様々なデューティ比毎に対応した値がROMに予め格納されており、S160では、現在の駆動信号SDのデューティ比に対応するオフ時間taとオン時間tbとをROMから読み込む。
【0053】
そして、次のS170にて、上記S160で読み込んだオフ時間ta及びオン時間tbに基づいてトランジスタTr2がオン/オフされるように、制御信号SCを出力するための内部タイマを設定する。つまり、駆動信号SDがローレベルになってから上記オフ時間ta(>0)が経過すると、その時点から上記オン時間tbだけ制御信号SCがハイレベルになってトランジスタTr2がオンされるように、内部タイマを設定する。そして、その後、本図3の処理を終了する。
【0054】
尚、前回のS120で肯定判定していて、今回のS120で否定判定したことにより、S130の処理が行われた場合には、駆動周波数がそれまでの周波数f2から通常周波数f1に戻ると共に、トランジスタTr2がオフされたままとなる。
【0055】
以上のような処理が実行されるECU1において、温度検出回路35により検出される本ECU1内の温度が判定温度Tth未満である場合には(S120:NO)、図2の時刻t2よりも左側に示すように、出力トランジスタTr1の駆動周波数が通常周波数f1に設定される(S130)。そして更に、この場合には、トランジスタTr2がオフされたままになるため(S140)、出力トランジスタTr1のオフ中は、グランド側からダイオードD1を通してコイルLに環流されるフライバック電流Idが、コイル電流I3となる。尚、出力トランジスタTr1のオン中は、その出力トランジスタTr1に流れる電流I1がコイル電流I3となる。
【0056】
これに対して、温度検出回路35により検出される本ECU1内の温度が判定温度Tth以上となった場合には(S120:YES)、図2の時刻t2よりも右側に示すように、出力トランジスタTr1の駆動周波数が通常周波数f1よりも低い周波数f2に設定される(S150)。
【0057】
そして更に、この場合には、図3のS170の処理により、出力トランジスタTr1のオフタイミングから上記オフ時間taが経過した時点から、出力トランジスタTr1のオフ期間が終了するタイミングまでの上記オン時間tbの間、トランジスタTr2がオンされる。
【0058】
よって、この場合には、駆動周波数が通常周波数f1である場合よりも、出力トランジスタTr1のオフ期間中にコイルLに流れるフライバック電流の減衰速度(即ち、コイル電流I3の減衰速度)がトータル的に小さくなる。
つまり、図2の時刻t2よりも右側に示されているように、出力トランジスタTr1のオフ期間の途中でトランジスタTr2がオンされると、その時点から出力トランジスタTr1のオフ期間が終了するまでは、グランド側からトランジスタTr2を通してコイルLに環流されるフライバック電流Itが、コイル電流I3となる。そして、この場合、そのトランジスタTr2での電圧降下Vtは、ダイオードD1の電圧降下Vfよりも小さいため、コイルLに蓄積されていたエネルギーの消費速度が遅くなり、その結果、コイルLに流れるフライバック電流の減衰が緩くなるからである。
【0059】
そして、本第1実施形態では、このように駆動周波数を通常周波数f1よりも低く変更した場合に、出力トランジスタTr1のオフ期間におけるフライバック電流の減衰速度を、駆動周波数が通常周波数f1である場合よりも小さくなるように変化させることにより、コイル電流I3の振幅が依然として電磁弁の制御性能を満たすことのできる一定の範囲内に収まるようにしている。尚、図2において、駆動信号SDのデューティ比が、時刻t2の左側よりも右側の方が小さくなっているのは、コイル電流I3を目標値にしようとする電流フィードバック制御が実施されているためである。
【0060】
よって、このような本第1実施形態のECU1によれば、出力トランジスタTr1の駆動周波数が変更されても、電磁弁の良好な制御性能を確保することができる。
特に、電磁弁の制御期間中において温度検出回路35により検出される本ECU1の内部温度(本第1実施形態では、出力トランジスタTr1の温度でもある)が判定温度Vth以上になった場合に、駆動周波数を低くして出力トランジスタTr1のスイッチング損失による発熱を抑える、といった過熱防止用の駆動周波数可変制御を、電磁弁の制御性能を悪化させることなく実施することができる。図2の時刻t2よりも右側に示すように、駆動周波数が低い周波数f2に変更されても、コイル電流I3の振幅が大きくならず一定となり、電磁弁の弁体位置が必要以上にばたついてしまうことが防止されるからである。
【0061】
そして更に、このため、特別な放熱手段や放熱構造を追加したり、発熱量が少ない高性能な素子を使用する必要が無くなり、熱対策のためのコストを抑えることもできる。
尚、本第1実施形態では、マイコン11が、制御手段と電流減衰速度調節手段との両方に相当しているが、特に、前述した駆動信号SDの出力処理と、図3のS110〜S130及びS150の処理とが、制御手段としての処理に相当しており、図3のS140、S160及びS170の処理が、電流減衰速度調節手段としての処理に相当している。そして、ダイオードD1とトランジスタTr2とが、消弧手段(特に、電圧降下が可変の消弧手段)に相当しており、そのうちで、トランジスタTr2が、電圧降下変更用トランジスタに相当している。また、本第1実施形態では、判定温度Tthが、請求項3に記載の所定値に相当している。
【0062】
一方、上記第1実施形態において、温度検出回路35の温度検出用ダイオードは、ECU1の内部温度を検出するという面では、必ずしも出力トランジスタTr1の近傍に設ける必要はない。但し、出力トランジスタTr1の駆動周波数を低くして発熱を抑えるようにすることから考えると、その出力トランジスタTr1の温度を検出する構成、即ち、上記温度検出用ダイオードを出力トランジスタTr1の近傍に設ける構成の方が好ましい。
【0063】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のECUについて説明する。
第2実施形態のECUは、第1実施形態のECU1と比較すると、ハードウェアの面においては、温度検出回路35が設けられていない点のみ異なっている。このため、以下の説明において、ECUの各構成要素や信号、電圧、電流及び時間等については、第1実施形態と同じ符号を用いる。尚、このことは、後述する他の実施形態についても同様である。
【0064】
また、本第2実施形態のECUは、第1実施形態のECU1と比較すると、ソフトウェアの面においては、マイコン11が、電磁弁の制御期間の間、駆動信号SDの立ち上がりタイミング毎に、図3の処理に代えて、図4の処理を実行する点が異なっている。
【0065】
そして、マイコン11が図4の処理の実行を開始すると、まずS210にて、駆動制御対象の電磁弁が設けられた油圧経路の油圧(即ち、電磁弁によって制御される油圧経路内の油の圧力であり、以下、AT油圧という)が共振しているか否か(即ち、AT油圧がある周波数で脈動しているか否か)と、そのAT油圧の共振周波数(換言すれば、脈動周波数)Kとを表すAT油圧共振情報を、当該マイコン11内のRAMから読み込む。尚、マイコン11は、一定時間毎に、油圧センサ信号からAT油圧を検出する油圧検出処理と、その油圧検出処理によって順次検出されているAT油圧を分析して、そのAT油圧が共振しているか否かを判定すると共に、AT油圧が共振していると判定した場合には、そのAT油圧の共振周波数Kを算出する、といった共振分析処理とを実行している。そして、このS210では、上記共振分析処理で求められている判定結果及び共振周波数Kを、AT油圧共振情報としてRAMから読み込む。
【0066】
次に、S220にて、上記S210で読み込んだAT油圧共振情報から、AT油圧が共振しているか否かを判定し、AT油圧が共振していると判定した場合には、S230に進んで、AT油圧共振情報が表しているAT油圧の共振周波数Kと、出力トランジスタTr1の現在の駆動周波数とが、同じであるか否かを判定する。尚、このS230では、AT油圧の共振周波数Kと出力トランジスタTr1の現在の駆動周波数とを比較して、その差が0又は所定の範囲内であれば、両周波数が同じであると肯定判定する。
【0067】
そして、上記S230で肯定判定した場合には(S230:YES)、S240に進み、出力トランジスタTr1の駆動周波数をAT油圧の共振周波数Kとは異なる周波数に変更する。すると、駆動周波数は、例えば駆動信号SDの今回の1周期から、それまでの周波数とは違う周波数に変わることとなる。
【0068】
そして更に、続くS250にて、現在の駆動周波数に応じたトランジスタTr2のオフ時間taとオン時間tbとを、当該マイコン11内のROMに格納されている駆動周波数対オン/オフ時間データマップから読み込む。
ここで、図5に示すように、駆動周波数対オン/オフ時間データマップは、駆動周波数と、コイル電流I3の振幅を一定の範囲内にするためのトランジスタTr2のオフ時間ta及びオン時間tbとの関係を表したものであり、駆動周波数が低いほど、出力トランジスタTr1のオフ時間(消弧時間)toffにおけるトランジスタTr2のオン時間tbの割合が大きくなるように設定されている。換言すれば、駆動周波数が低い場合ほど、出力トランジスタTr1のオフ時におけるフライバック電流(コイル電流I3)の減衰速度が小さくなるように設定されている。尚、図5におけるfLは、トランジスタTr2のオン時間tbを出力トランジスタTr1のオフ時間toffと同じに設定する場合の駆動周波数であり、図5におけるfHは、トランジスタTr2のオン時間tbを0に設定する場合の駆動周波数である。また、図示は省略しているが、この駆動周波数対オン/オフ時間データマップは、駆動信号SDの様々なデューティ比毎に用意されている。
【0069】
このため、S250では、現在の駆動信号SDのデューティ比に該当する駆動周波数対オン/オフ時間データマップを選択し、その選択したデータマップから、現在の駆動周波数に対応するオフ時間taとオン時間tbとを読み込む。
そして、続くS260にて、図3のS170と同様に、上記S250で読み込んだオフ時間ta及びオン時間tbに基づいてトランジスタTr2がオン/オフされるように、制御信号SCを出力するための内部タイマを設定し、その後、本図4の処理を終了する。
【0070】
一方、上記S220にてAT油圧が共振していないと判定した場合、あるいは、上記S230にて否定判定した場合(即ち、AT油圧の共振周波数Kと出力トランジスタTr1の駆動周波数とが同じではないと判定した場合)には、S240の処理を行うことなく、そのままS250に移行する。
【0071】
つまり、本第2実施形態のECUでは、S220とS230との両方で肯定判定した場合に、出力トランジスタTr1の駆動周波数によってAT油圧の脈動振幅が増幅あるいは乱れると予測、判断される制御条件が成立したとして、出力トランジスタTr1の駆動周波数をAT油圧の共振周波数K(流体の圧力脈動周波数に相当)とは異なる値に変更するようにしており(S240)、更に、そのように変更される駆動周波数に応じて、コイル電流I3の振幅が一定の範囲内となるように、出力トランジスタTr1のオフ期間中におけるトランジスタTr2のオンタイミング(即ち、オフ時間ta)及びオン時間tbを制御して、出力トランジスタTr1のオフ時におけるコイル電流I3の減衰速度を変化させるようにしている(S250,S260)。
【0072】
よって、このような第2実施形態のECUによれば、AT油圧と電磁弁の弁体とが共振して電磁弁の動作が不安定になってしまいAT油圧の制御に支障が生じることを駆動周波数の変更によって回避する制御を、電磁弁の制御性能を悪化させることなく実施することができる。
【0073】
尚、本第2実施形態においても、マイコン11が、制御手段と電流減衰速度調節手段との両方に相当しているが、特に、前述した駆動信号SDの出力処理と、図4のS210〜S240の処理とが、制御手段としての処理に相当しており、図4のS250及びS260の処理が、電流減衰速度調節手段としての処理に相当している。
【0074】
一方、上記第2実施形態は、以下のように変形しても良い。
電磁弁の制御に伴って発生する放射ノイズがラジオに悪影響する条件、例えばユーザーに不快感を与える度合いの高いエンジン停止中または車両停止中では、通常走行中と異なった制御(例えば駆動周波数を変える)にする事により、放射ノイズによる特定のラジオ周波数への影響を回避できる。
【0075】
そこで、まず、ラジオにノイズが入っているか否かを判定して、ノイズが入っていると判定したならばフラグをセットするノイズ判定処理を実行する。
そして、図4の処理では、S210〜S240の処理に代えて、上記フラグがセットされているか否かを判定し、フラグがセットされていれば、出力トランジスタTr1のオン/オフに伴う放射ノイズが他の機器としてのラジオに影響を与えていると判断して、出力トランジスタTr1の駆動周波数を変更する(例えば、所定値だけ増加又は減少させる)処理を行った後、S250に進み、また、上記フラグがセットされていなければ、駆動周波数を変更することなく、そのままS250に進むようにする。
【0076】
このように構成すれば、出力トランジスタTr1のスイッチングに伴う放射ノイズがラジオに影響してしまうことを回避するために、駆動周波数を変更する制御を、電磁弁の制御性能を悪化させることなく実施することができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態のECUについて説明する。
【0077】
第3実施形態のECUも、ハードウェア面においては、第1実施形態のECU1に対して、温度検出回路35が設けられていない点のみ異なっている。
また、本第3実施形態のECUは、第1実施形態のECU1と比較すると、ソフトウェアの面においては、出力トランジスタTr1の駆動周波数が前述の通常周波数f1に固定されていると共に、マイコン11が、電磁弁の制御期間の間、駆動信号SDの立ち上がりタイミング毎に、図3の処理に代えて、図6の処理を実行する点が異なっている。
【0078】
そして、マイコン11が図6の処理の実行を開始すると、まずS310にて、現在検出している最新のバルブ温度を読み込む。尚、マイコン11は、バルブ温センサ信号からバルブ温度を検出するバルブ温検出処理を一定時間毎に実行している。そして、このS310では、上記バルブ温検出処理で検出されている最新のバルブ温度を当該マイコン11内のRAMから読み込む。
【0079】
次に、S320にて、上記読み込んだバルブ温度に基づいて、トランジスタTr2のオフ時間taとオン時間tbとを設定する。
具体的に説明すると、まず、マイコン11内のROMには、図7に示すようなバルブ温度対オン/オフ時間データマップが予め格納されている。そして、このバルブ温度対オン/オフ時間データマップは、バルブ温度と、コイル電流I3の振幅を一定の範囲内にするためのトランジスタTr2のオフ時間taとオン時間tbとの比H(ここでは、H=ta/(ta+tb))との関係を表したものであり、バルブ温度が低いほど、オフ時間taに対してオン時間tbが長くなるように設定されている。
【0080】
つまり、バルブ温度はコイルLの温度と同じであると見なすことができ、また、コイルLの温度が低いほど、そのコイルLのインピーダンスが小さくなって、コイル電流I3の脈動時の増減度合いが急になるため、バルブ温度が低い場合ほど、出力トランジスタTr1のオフ期間におけるトランジスタTr2のオン時間tbが長くなるようにして、出力トランジスタTr1のオフ時におけるフライバック電流(コイル電流I3)の減衰速度が小さくなるように設定されている。尚、図7におけるTLは、トランジスタTr2のオン時間tbを出力トランジスタTr1のオフ時間toffと同じに設定する場合のバルブ温度であり、図7におけるTHは、トランジスタTr2のオン時間tbを0に設定する場合のバルブ温度である。
【0081】
このため、S320では、現在の駆動信号SDのデューティ比から出力トランジスタTr1のオフ時間toffを求めると共に、図7のバルブ温対オン/オフ時間データマップから現在のバルブ温に対応するオフ時間taとオン時間tbとの比Hを読み込み、その比Hと上記求めた出力トランジスタTr1のオフ時間toffとから、トランジスタTr2のオフ時間taとオン時間tbとを設定する。尚、オフ時間taは「H×toff」の式で求められ、オン時間tbは「(1−H)×toff」の式で求められる。
【0082】
そして、続くS330にて、図3のS170と同様に、上記S320で設定したオフ時間ta及びオン時間tbに基づいてトランジスタTr2がオン/オフされるように、制御信号SCを出力するための内部タイマを設定し、その後、本図6の処理を終了する。
【0083】
つまり、本第3実施形態のECUでは、バルブ温度をコイルLの温度として検出し、その検出温度に応じて、コイル電流I3の振幅が一定の範囲内となるように、出力トランジスタTr1のオフ期間中におけるトランジスタTr2のオンタイミング(即ち、オフ時間ta)及びオン時間tbを制御して、出力トランジスタTr1のオフ時におけるコイル電流I3の減衰速度を変化させるようにしている(S320,S330)。
【0084】
そして、このような第3実施形態のECUによれば、コイルLのインピーダンスが温度によって変化しても、コイル電流I3の振幅が一定の範囲内に保たれ、その結果、電磁弁の良好な制御性能を広い温度範囲で実現することができる。
尚、本第3実施形態においても、マイコン11が、制御手段と電流減衰速度調節手段との両方に相当しているが、特に、前述した駆動信号SDの出力処理が、制御手段としての処理に相当しており、前述したバルブ温検出処理と図6の処理とが、電流減衰速度調節手段としての処理に相当している。
【0085】
一方、上記第3実施形態では、バルブ温度をコイルLの温度として検出したが、コイルLの温度と同じであると考えられる他のものの温度を検出するようにしても良い。例えば、油圧経路の油温をコイルLの温度として検出するように構成することができる。また、電磁弁ソレノイド内におけるコイルLの近傍に温度センサを設けて、コイルL自体の温度を検出するようにしても良い。
【0086】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態のECUについて説明する。
第4実施形態のECUは、第3実施形態のECUと比較すると、マイコン11が、電磁弁の制御期間の間、駆動信号SDの立ち上がりタイミング毎に、図6の処理に代えて、図8の処理を実行する点が異なっている。
【0087】
そして、マイコン11が図8の処理の実行を開始すると、まずS410にて、現在検出している最新の電流振幅(コイル電流I3の振幅)を読み込む。尚、マイコン11は、差動増幅回路23の出力電圧から電流振幅を検出する振幅検出処理を一定時間毎に実行している。そして、このS310では、上記振幅検出処理で検出されている最新の電流振幅を当該マイコン11内のRAMから読み込む。
【0088】
次に、S420にて、上記読み込んだ電流振幅に基づいて、トランジスタTr2のオフ時間taとオン時間tbとを設定する。
具体的に説明すると、まず、マイコン11内のROMには、図9に示すような電流振幅対オン/オフ時間データマップが予め格納されている。そして、この電流振幅対オン/オフ時間データマップは、電流振幅と、その電流振幅を一定の範囲内に入れるためのトランジスタTr2のオフ時間taとオン時間tbとの比H(ここでは、H=ta/(ta+tb))との関係を表したものであり、電流振幅が大きいほど、オフ時間taに対してオン時間tbが長くなるように設定されている。つまり、電流振幅が大きい場合ほど、出力トランジスタTr1のオフ期間におけるトランジスタTr2のオン時間tbが長くなるようにして、出力トランジスタTr1のオフ時におけるフライバック電流(コイル電流I3)の減衰速度が小さくなるように設定されている。尚、図9におけるWHは、トランジスタTr2のオン時間tbを出力トランジスタTr1のオフ時間toffと同じに設定する場合の電流振幅であり、図9におけるWLは、トランジスタTr2のオン時間tbを0に設定する場合の電流振幅である。
【0089】
このため、S420では、現在の駆動信号SDのデューティ比から出力トランジスタTr1のオフ時間toffを求めると共に、図9の電流振幅対オン/オフ時間データマップから、現在検出している電流振幅に対応したオフ時間taとオン時間tbとの比Hを読み込み、その比Hと上記求めた出力トランジスタTr1のオフ時間toffとから、トランジスタTr2のオフ時間taとオン時間tbとを設定する。尚、前述した第3実施形態と同様に、オフ時間taは「H×toff」の式で求められ、オン時間tbは「(1−H)×toff」の式で求められる。
【0090】
そして、続くS430にて、図3のS170と同様に、上記S420で設定したオフ時間ta及びオン時間tbに基づいてトランジスタTr2がオン/オフされるように、制御信号SCを出力するための内部タイマを設定し、その後、本図8の処理を終了する。
【0091】
つまり、本第4実施形態のECUでは、電流振幅を検出し、その電流振幅が一定の範囲内となるように、出力トランジスタTr1のオフ期間中におけるトランジスタTr2のオンタイミング(即ち、オフ時間ta)及びオン時間tbを制御して、出力トランジスタTr1のオフ時におけるコイル電流I3の減衰速度を変化させるようにしている(S420,S430)。
【0092】
このような第4実施形態のECUによれば、電流振幅に影響を与える様々な条件が変化しても、電流振幅が一定の範囲内に保たれることとなるため、電磁弁の良好な制御性能を常に確保することができる。
尚、マイコン11のA/D変換器11aに入力される差動増幅回路23の出力電圧の脈動の振幅が、ローパスフィルタ回路31の作用によって実際の電流振幅よりも小さくなる場合には、その分を加味して、図9の電流振幅対オン/オフ時間データマップを設定しておくことにより、十分な効果を得ることができる。
【0093】
また、本第4実施形態においても、マイコン11が、制御手段と電流減衰速度調節手段との両方に相当しているが、特に、前述した駆動信号SDの出力処理が、制御手段としての処理に相当しており、前述した振幅検出処理と図8の処理とが、電流減衰速度調節手段としての処理に相当している。
【0094】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
例えば、上記各実施形態では、フライホイールダイオードD1と電圧降下変更用のトランジスタTr2とが別々の素子であったが、トランジスタTr2のソース・ドレイン間の寄生ダイオードを、フライホイールダイオードD1として用いることもできる。
【0095】
また、上記各実施形態では、出力トランジスタTr1のオフ期間の途中でトランジスタTr2をオンさせるようにしたが、それとは逆に、トランジスタTr2を、出力トランジスタTr1のオフ期間の開始時からオンさせ、そのオフ期間内の所望のタイミングでトランジスタTr2をオフさせることにより、コイル電流I3の減衰速度を変えるようにしても良い。
【0096】
また更に、消弧手段としては、ダイオードD1及びトランジスタTr2の構成に限らず、例えば、図1のダイオードD1と直列に1個以上のダイオードを設けると共に、その複数のダイオードのうちの何れかをバイパスさせるスイッチ素子を設けるようにしても良い。そして、このようなスイッチ素子及び複数のダイオードからなる消弧手段でも、上記スイッチ素子をオン/オフさせることで、当該消弧手段での電圧降下を変えることができる。
【0097】
一方、電源電圧VBに応じて、コイル電流I3の振幅が一定の範囲内となるように、コイル電流I3の減衰速度を変化させるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のECU(電子制御装置)の構成を表す構成図である。
【図2】第1実施形態のECUの作用を表すタイムチャートである。
【図3】第1実施形態のECUのマイコンが実行する処理を表すフローチャートである。
【図4】第2実施形態のECUのマイコンが実行する処理を表すフローチャートである。
【図5】図4の処理で参照される駆動周波数対オン/オフ時間データマップを説明する説明図である。
【図6】第3実施形態のECUのマイコンが実行する処理を表すフローチャートである。
【図7】図6の処理で参照されるバルブ温度対オン/オフ時間データマップを説明する説明図である。
【図8】第4実施形態のECUのマイコンが実行する処理を表すフローチャートである。
【図9】図8の処理で参照される電流振幅対オン/オフ時間データマップを説明する説明図である。
【図10】従来の電磁弁制御装置の構成例を表す構成図である。
【図11】図10の電磁弁制御装置の作用及び従来技術の問題を表すタイムチャートである。
【符号の説明】
1…ECU(電子制御装置)、3…駆動回路、11…マイコン、11a…A/D変換器、13…反転回路、15,19,21,25,27,31…抵抗、17…電流検出用抵抗、23…差動増幅回路、29…コンデンサ、31…ローパスフィルタ回路、33…入力処理回路、35…温度検出回路、D1…フライホイールダイオード、L…電磁弁のソレノイドのコイル、Tr1…出力トランジスタ、Tr2…電圧降下変更用のトランジスタ
Claims (9)
- ソレノイドのコイルに接続されると共に、オンすることで前記コイルに電流を流す出力トランジスタと、
前記コイルに対して並列に設けられ、前記出力トランジスタがオフされた時に前記コイルの逆起電力によるフライバック電流を該コイルに環流させる消弧手段と、
前記コイルへの通電を制御すべき制御期間の間、前記出力トランジスタをオン/オフさせることにより、前記コイルに流れる電流を制御する制御手段と、
を備えたソレノイド制御装置において、
前記コイルに流れる電流の振幅を変化させる特定の条件に応じて、前記振幅が一定の範囲内となるように、前記出力トランジスタがオフされているときの前記フライバック電流の減衰速度を変化させる電流減衰速度調節手段を備えていること、
を特徴とするソレノイド制御装置。 - 請求項1に記載のソレノイド制御装置において、
前記制御手段は、前記出力トランジスタをオン/オフさせる周波数(以下、駆動周波数という)を、特定の状況に応じて変更するように構成されており、
前記電流減衰速度調節手段は、前記駆動周波数に応じて、前記振幅が一定の範囲内となるように、前記出力トランジスタがオフされているときの前記フライバック電流の減衰速度を変化させること、
を特徴とするソレノイド制御装置。 - 請求項2に記載のソレノイド制御装置において、
前記制御手段は、
当該ソレノイド制御装置の内部温度あるいは前記出力トランジスタの温度が所定値以上になった場合に、前記駆動周波数を下げるように構成されていること、
を特徴とするソレノイド制御装置。 - 請求項2に記載のソレノイド制御装置において、
前記ソレノイドは、流体経路内の流体の圧力を制御するための電磁弁の弁体を動かすものであり、
前記制御手段は、前記駆動周波数によって前記流体の圧力脈動振幅が増幅、あるいはオーバーシュート等の乱れが予測、判断される制御条件では、前記駆動周波数を前記流体の圧力脈動周波数とは異なる値に変更すること、
を特徴とするソレノイド制御装置。 - 請求項2に記載のソレノイド制御装置において、
前記制御手段は、前記出力トランジスタのオン/オフに伴う放射ノイズが他の機器に影響を与える場合に、前記駆動周波数を変更すること、
を特徴とするソレノイド制御装置。 - 請求項1に記載のソレノイド制御装置において、
前記電流減衰速度調節手段は、
前記コイルの温度を検出し、その検出温度に応じて、前記振幅が一定の範囲内となるように、前記出力トランジスタがオフされているときの前記フライバック電流の減衰速度を変化させること、
を特徴とするソレノイド制御装置。 - ソレノイドのコイルに接続されると共に、オンすることで前記コイルに電流を流す出力トランジスタと、
前記コイルに対して並列に設けられ、前記出力トランジスタがオフされた時に前記コイルの逆起電力によるフライバック電流を該コイルに環流させる消弧手段と、
前記コイルへの通電を制御すべき制御期間の間、前記出力トランジスタをオン/オフさせることにより、前記コイルに流れる電流を制御する制御手段と、
を備えたソレノイド制御装置において、
前記コイルに流れる電流の振幅を検出し、その振幅が一定の範囲内となるように、前記出力トランジスタがオフされているときの前記フライバック電流の減衰速度を変化させる電流減衰速度調節手段を備えていること、
を特徴とするソレノイド制御装置。 - 請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載のソレノイド制御装置において、
前記消弧手段は、前記フライバック電流を前記コイルに環流させる際の当該消弧手段での電圧降下が可変に構成されており、
前記電流減衰速度調節手段は、前記消弧手段での電圧降下を変えることにより、前記フライバック電流の減衰速度を変化させること、
を特徴とするソレノイド制御装置。 - 請求項8に記載のソレノイド制御装置において、
前記消弧手段は、前記フライバック電流を前記コイルに環流させるダイオードと、該ダイオードに対して並列に設けられた電圧降下変更用トランジスタとからなり、
前記電流減衰速度調節手段は、前記出力トランジスタがオフされている期間中の前記電圧降下変更用トランジスタのオン/オフ状態を制御することで、前記フライバック電流の減衰速度を変化させること、
を特徴とするソレノイド制御装置。
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