JP2005019298A - 固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期的に撥水性の高いガス拡散層構成部材の撥水性カーボン層を有し、長期間安定して作動する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体を提供する。
【解決手段】触媒層と該触媒層に隣接するガス拡散層とを有するカソード及びアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に前記アノード及び前記カソードの触媒層と隣接して配置されるイオン交換膜とからなる固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体において、前記カソード及び前記アノードの少なくとも一方のガス拡散層として、多孔性炭素質シートからなるガス拡散層基材上に炭素六方層面間距離が0.3354〜0.345nmのカーボンブラックとフッ素樹脂とからなる撥水性カーボン層が形成されたものを使用する。
【選択図】図1
【解決手段】触媒層と該触媒層に隣接するガス拡散層とを有するカソード及びアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に前記アノード及び前記カソードの触媒層と隣接して配置されるイオン交換膜とからなる固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体において、前記カソード及び前記アノードの少なくとも一方のガス拡散層として、多孔性炭素質シートからなるガス拡散層基材上に炭素六方層面間距離が0.3354〜0.345nmのカーボンブラックとフッ素樹脂とからなる撥水性カーボン層が形成されたものを使用する。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高耐久性を有する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
水素・酸素燃料電池は、その反応生成物が原理的に水のみであり、地球環境への悪影響のほとんどない発電システムとして注目されている。なかでも、固体高分子型燃料電池は、きわめて高い出力が期待されている。固体高分子型燃料電池では通常電解質膜の耐久性等の理由から80℃程度の低温で作動させるが、そのため電池反応によりカソードで生成する水が凝縮しやすい。その結果、電極を構成する触媒層やガス拡散層の細孔が閉塞され(フラッディング現象)、燃料ガスが触媒層中の反応サイトに到達できずセル電圧が大きく低下する問題が生じていた。
【0003】
また、通常固体高分子電解質であるイオン交換膜の導電性を保つため、イオン交換膜が乾燥しないように燃料ガスは湿潤して供給されることが多い。この湿潤ガスによっても電極のフラッディングが起こる場合がある。そのため、長期間燃料電池を安定して作動させるには、フラッディングが起こらないように、触媒層にガスを供給するためのガス拡散層に撥水性を付与することが重要である。
【0004】
ガス拡散層としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)等で表面を処理して撥水性を付与したカーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等が使用できることが知られている。しかし、このようなガス拡散層では、表面にカーボン繊維等による毛羽立ちがあるため膜や触媒層を損傷するおそれがある。そのため最近は、膜や触媒層を保護・緩衝する機能及びガス拡散機能を同時に備えるように、ガス拡散層基材の上に撥水剤とカーボンとからなる撥水性カーボン層を形成して触媒層と隣接させる方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
上記方法では、撥水性カーボン層はカーボンの粉末から構成されるため、表面はカーボンペーパー等の基材より緻密であり、触媒層と十分な接触を保つことができ集電にも有利である。さらに、電池反応で生成した水滴状の水を細かく砕いてガス拡散層側に送り出す機能も兼ねており、撥水性カーボン層の存在により水の排出がよりスムーズになる。そのため、高電流密度領域において燃料電池を作動させる場合でもフラッディングが起こりにくく、燃料電池性能は安定する。
【0006】
この撥水性カーボン層としては、従来より、カーボンブラックとフッ素系の撥水剤とからなる撥水性カーボン層が用いられている(例えば特許文献1、2参照。)。撥水性カーボン層は、通常、ガス拡散層基材の上に形成され、撥水性カーボン層が膜・触媒層接合体と接するようにして2枚のガス拡散層で膜・触媒層接合体を挟み込み、押し付けるか又は接合される。従来、撥水性カーボン層のカーボンブラックには、ケッチェンブラックEC(ライオン社製)、バルカンXC−72(キャボット社製)、アセチレンブラック(電気化学工業社製)等が用いられてきた(特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−261421号公報(2頁3〜6行、2頁49〜52行)
【特許文献2】
特開2001−351637号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開2002−270192号公報(3頁9〜13行)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらのカーボンブラックは何れも黒鉛結晶化(グラファイト化)が進んでおらず、結晶性が低い。上記カーボンブラックの炭素六方層面間距離(d002)は、ケッチェンブラックECで約0.359nm、バルカンXC−72で約0.357nm、アセチレンブラックで約0.346nmである。これに対し撥水性の持続性に優れる完全に黒鉛結晶化した黒鉛の炭素六方層面間距離は0.3354nmである。すなわち従来から使用されているカーボンブラックでは結晶性が低く撥水性の持続性に乏しかった。結晶性が低いと撥水性が低い理由は明確でないが、ケッチェンECを担体とする白金担持カーボン触媒Aと、ケッチェンECを3000℃程度で黒鉛化した担体を用いた白金担持カーボン触媒Bについて、70℃の飽和加湿条件で水蒸気吸着量を測定して触媒の単位表面積あたりの水蒸気吸着量を測定すると、触媒Aの水蒸気吸着量は触媒Bの2倍であることを確認している。この事実は黒鉛化して結晶性を高めたカーボンの方が濡れにくいことを示していると考えられる。
【0009】
このため、ガス拡散層の一部である撥水性カーボン層に、PTFE等の撥水剤が含まれていても、長時間燃料電池を作動させるとカーボン撥水層の主成分であるカーボンブラックの撥水性が低下して撥水性カーボン層が濡れ易くなり、フラッディングが生じていた。この結果、長期運転において燃料電池のセル電圧は大きく低下していた。そのため、長期運転で電池特性を安定化させるために撥水性カーボン層の撥水性を持続させる必要があった。
【0010】
そこで本発明は、これらの問題を解決するため、従来のような撥水性カーボン層の機能、すなわち緩衝層としての機能、導電性、ガス拡散性及び初期の撥水性を確保しつつ、かつ撥水性の持続性を大幅に向上させた撥水性カーボン層を有する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、触媒層と該触媒層に隣接するガス拡散層とを有するカソード及びアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に前記アノード及び前記カソードの触媒層と隣接して配置されるイオン交換膜とからなる固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体において、前記カソード及び前記アノードの少なくとも一方のガス拡散層は、多孔性炭素質シートからなるガス拡散層基材上にカーボンブラックとフッ素樹脂とからなる撥水性カーボン層が形成されてなり、前記カーボンブラックは炭素六方層面間距離が0.3354〜0.345nmであることを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の膜・電極接合体は、例えば本発明の1実施態様を示す断面図である図1によりその構成が説明できる。すなわち、本発明における膜電極接合体8は、イオン交換膜4の片面にカソード6が、もう一方の面にアノード7が配置されている。カソード6には空気等の酸素を含むガスが供給され、アノード7には水素を含むガスが供給され、カソード6で水が生成される。
【0013】
カソード6及びアノード7は、触媒層3、3’とガス拡散層5、5’とから構成される。ガス拡散層5、5’は集電体の機能と、通常ガス拡散層の外側に配置されるセパレータから供給される燃料を触媒層3、3’に効率よく供給するためのガス拡散の機能を有するものである。具体的には、カーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルト等をガス拡散層基材1、1’として、その上にカーボンブラックとフッ素樹脂とを含む層からなる撥水性カーボン層2、2’が形成されたものを使用する。
【0014】
撥水性カーボン層2、2’を有すると、ガス拡散層5、5’の撥水性が高まり、またガス拡散層5、5’の表面が平坦化されるため集電機能が高まり、ガス拡散層基材1、1’が直接触媒層3、3’に接触することによって触媒層3、3’の表面を傷つけたり粗面化することも避けられる。
【0015】
ここで撥水性カーボン層2、2’は、その成分がガス拡散層基材1、1’の空孔部にある程度侵入していると、アンカー効果により撥水性カーボン層がガス拡散層基材1、1’上に固定されるため、密着性を高められ好ましい。ガス拡散層基材1、1’には代表的な市販品として、例えば東レ社製のカーボンペーパーTGP−H−120等が使用できる。
【0016】
本発明において撥水性カーボン層2、2’に用いるカーボンブラックは、導電性を有するものであり、炭素六方層面間距離が0.3354〜0.345nmである。本発明におけるカーボンブラックは、通常のカーボンブラックを出発物質として例えば熱処理をすることにより炭素六方層面間距離が上記範囲となったカーボン材料を示し、粒子径は特には限定されない。具体的に例示すると、ケッチェンブラックEC(商品名、ライオン社製)、バルカンXC−72(商品名、キャボット社製)、アセチレンブラック(電気化学工業社製)等を例えば窒素中などの不活性雰囲気中で2000〜3000℃にて加熱処理して黒鉛化(グラファイト化)し、炭素六方層面間距離を0.3354〜0.345nmとしたものを用いる。黒鉛化する前のカーボンブラック材料は上述のものだけでなく特に限定されない。
【0017】
本発明では上記カーボンブラックの炭素六方層面間距離は0.3354〜0.345nmであるが、完全黒鉛の炭素六方層面間距離が0.3354nmであるため、カーボンブラックを黒鉛化しても炭素六方層面間距離が0.3354nm未満となることは物理的にありえない。また炭素六方層面間距離が0.345nmより大きい場合はカーボンブラックは十分に黒鉛化されておらず結晶性が低く撥水性の持続性が不十分であるため好ましくない。カーボンブラックの炭素六方層面間距離のより好ましい範囲は、0.340〜0.344nmである。
【0018】
撥水性カーボン層2、2’中の黒鉛化したカーボンブラックとフッ素樹脂との質量比は、9:1〜4:6であることが好ましい。撥水性カーボン層2、2’中のカーボンブラックの含有量が多すぎると、フッ素樹脂のバインダ力が十分に得られないおそれがある。一方、カーボンブラックの含有量が少なすぎると、撥水性カーボン層2、2’の抵抗が大きくなり、またフッ素樹脂によって撥水性カーボン層2、2’の細孔部分が閉塞されガスの拡散性が低下するため好ましくない。同様の観点から特に、カーボンブラックとフッ素樹脂とは質量比で8:2〜6:4であることが好ましい。なお、上記フッ素樹脂は特に限定されず、PTFE、パーフルオロブテニルビニルエーテルを環化重合した重合体等が使用できる。
【0019】
撥水性カーボン層2、2’は、例えば以下のようにして形成できる。すなわち、PTFE等のフッ素樹脂の分散液に黒鉛化させたカーボンブラックを混合し分散させた液を得て、この液を塗工液としてガス拡散層基材1、1’に塗布し乾燥させることにより撥水性カーボン層2、2’を得る。フッ素樹脂として溶媒に可溶なフッ素樹脂を使用する場合は、当該フッ素樹脂の溶液に黒鉛化したカーボンブラックを分散させて塗工液を得る。塗工液には適宜希釈剤等を添加することもできるし、フッ素樹脂又はカーボンブラックを分散させるための分散剤を添加してもよい。
【0020】
本発明における触媒層3、3’に含まれる触媒としては、アノード7側の触媒層3’には白金ルテニウム合金(Pt−Ru)がカーボンに担持された担持触媒が好ましく、カソード6側の触媒層3には白金がカーボンに担持された担持触媒が好ましいが、特には限定されない。これらの触媒は、触媒中の貴金属がアノード7では0.1〜4mg/cm2となるように含まれることが好ましく、カソード6では0.1〜3mg/cm2となるように含まれることが好ましい。
【0021】
また触媒層3、3’には、スルホン酸基を有する含フッ素重合体が含まれ、特にスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(ただしエーテル結合性の酸素原子等は含んでいてよい)が耐久性等の点から好ましい。具体的には、ナフィオン(商品名、デュポン社製)、フレミオン(商品名、旭硝子社製)等が好ましく使用できるが特には限定されない。
【0022】
本発明におけるイオン交換膜4としては、触媒層に含まれるスルホン酸基を有する含フッ素重合体と同様のイオン交換樹脂からなる膜が使用できるが、特に限定されない。スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜(例えばナフィオン(商品名、デュポン社製)、フレミオン(商品名、旭硝子社製)等)、部分フッ素化された炭化水素系のスルホン酸型イオン交換膜(例えば、ETFEのグラフト重合膜でスルホン酸基を有するもの)、炭化水素系のスルホン酸型イオン交換膜(例えばポリエーテルエーテルケトンからなりスルホン酸基を有する膜)等が使用できる。さらに、メタノールの透過の抑制を目的とし、シリカとイオン交換樹脂を混合したような無機有機ハイブリッド膜も使用できる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例(例1)及び比較例(例2)により説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0024】
[例1(実施例)]
以下の手順で、図1に示すPEFC用膜・電極接合体を作製した。
ガス拡散層基材として、厚さ360μmのカーボンペーパー(商品名:TGP−H−120、東レ社製)をPTFEで撥水処理したものを用いた。PTFEによる撥水処理は以下のようにして行った。PTFE分散液(商品名:AD−1、旭フルオロポリマーズ社製、PTFE固形分濃度(質量比)60%、分散剤:ノニオン系安定剤)を水で希釈し固形分濃度を5%としたものに上記カーボンペーパーを浸漬させ、窒素中350℃にて1時間焼成処理し、PTFE分散液中の分散媒及び分散剤を除去して、PTFEを2.5mg/cm2付着させた。
【0025】
次に基材の撥水処理に用いたものと同じPTFE分散液を蒸留水で希釈して固形分濃度1.3質量%とし、PTFEが2g含まれるように分散液を153.8g秤量した。一方、カーボンブラックであるケッチェンブラックEC(ライオン社製)を約3000℃の不活性雰囲気で焼成処理し黒鉛化し、炭素六方層面間距離(d002)が0.342nmの黒鉛化したカーボンブラックを作製し、これを上記分散液に4.67g添加した。その後充分な撹拌を行い、スラリー状の撥水性カーボン層形成用の分散液を得た。
【0026】
この分散液を、上記の撥水処理したカーボンペーパー上にスクリーン印刷により塗布し、窒素中350℃にて1時間焼成させ、撥水性カーボン層を形成し、約40μmの厚さの撥水性カーボン層を有する、厚さ約400μmのガス拡散層を得た。
【0027】
次にアノード及びカソードの触媒層を作製するために触媒層形成用塗工液を作製した。アノード、カソード両方に同じ塗工液を用い、同じ触媒層を形成した。イオン交換容量1.1ミリ当量/g乾燥樹脂の、テトラフルオロエチレン/CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)2SO3H共重合体と、白金担持カーボン(白金とカーボンが質量比で50:50))とを71.4:28.6の質量比で含み、エタノールと5フッ化プロパノールとの質量比で1:1の混合物を分散媒とする液を触媒層形成用塗工液とした。この塗工液をPt付着量が0.35mg/cm2となるように、PTFEシート上に塗布し、80℃、10分の加熱処理をし、充分に乾燥させて触媒層を形成した。
【0028】
イオン交換膜にはイオン交換容量1.1ミリ当量/g乾燥樹脂のスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜(商品名:フレミオンHR、旭硝子社製、厚さ50μm)を用いた。これを、上記のPTFE上に形成された触媒層2枚で挟み込み、140℃、3MPaにて2分間ホットプレスし、カソード、アノードともに触媒層を膜に転写した。その後、両面のPTFEシートを剥離して、膜・触媒層接合体を作製した。この時、有効電極面積は25cm2とした。その後80℃にて10分加熱処理して乾燥させた。
【0029】
次いで、得られた膜・触媒層接合体の両外側に、撥水性カーボン層が形成されたガス拡散層を撥水性カーボン層側を内側にしてそれぞれ配置し、ガス拡散層を押し当てることにより膜・電極接合体を得た。
【0030】
[例2]
ガス拡散層の撥水性カーボン層に用いるカーボンブラックとして、加熱処理を施していない未処理のケッチェンブラックEC(炭素六方層面間距離3.59Å)を用いた以外は例1と全く同様にして膜・電極接合体を作製した。
【0031】
[電池特性試験]
例1〜2の膜・電極接合体を、両外側にセパレータを配置して測定セルに組み込み、電子負荷装置FK400L(高砂製作所社製)と直流電源装置EX750L(高砂製作所社製)を用いて電流電圧特性の測定試験を行った。測定条件は、水素出口圧力;0.1MPa(常圧)、空気出口圧力;0.1MPa(常圧)、測定セルの作動温度;80℃とし、アノード、カソードとも供給するガス(水素及び空気)の露点を80℃とした。電流密度は0.4A/cm2で維持し、燃料利用率はアノード側を70%、カソード側を40%とした。定電流駆動させたときのセル電圧の経時変化を測定し、これらの各測定セルの試験結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
例1の方がセル特性は安定で、セル電圧の低下は例2に比べて少なかった。これは、撥水性カーボン層内に存在するカーボンブラックが黒鉛化しているために撥水性の持続性が高まり、撥水性カーボン層全体の撥水性が維持されたためと思われる。一方、例2では撥水性カーボン層内に存在するカーボンブラックの撥水性が経時的に低下し、細孔が閉塞しやすくなり、その結果燃料ガスや空気の供給が妨げられて濃度過電圧が増大したため、セル電圧が低下したものと思われる。すなわち、経時的に燃料ガス、空気の触媒層への供給がスムーズに行われ難くなり、セル電圧が低下してきたものと思われる。
【0034】
【発明の効果】
本発明ではガス拡散層の一部である撥水性カーボン層に用いるカーボンブラックとして、高温加熱処理して黒鉛結晶化したカーボンブラックをもちいることで、通常のカーボンブラックに対し、撥水性の持続性に優れる。これにより撥水性カーボン層の撥水性の持続性が向上し、ガス拡散層が長期にわたって濡れにくくなり、結果として膜・電極接合体は耐久性良く安定した発電特性を得ることができる。本発明は上記のような撥水性カーボン層を用いてガス拡散層を形成し、膜・触媒層接合体の外側に配置することにより、長期的に撥水性が高い出力特性の経時劣化の少ない固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体の1実施態様を示す断面図
【符号の説明】
1、1’:ガス拡散層基材
2、2’:カーボン層
3、3’:触媒層
4:イオン交換膜
5、5’:ガス拡散層
6:カソード
7:アノード
8:膜・電極接合体
【発明の属する技術分野】
本発明は、高耐久性を有する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
水素・酸素燃料電池は、その反応生成物が原理的に水のみであり、地球環境への悪影響のほとんどない発電システムとして注目されている。なかでも、固体高分子型燃料電池は、きわめて高い出力が期待されている。固体高分子型燃料電池では通常電解質膜の耐久性等の理由から80℃程度の低温で作動させるが、そのため電池反応によりカソードで生成する水が凝縮しやすい。その結果、電極を構成する触媒層やガス拡散層の細孔が閉塞され(フラッディング現象)、燃料ガスが触媒層中の反応サイトに到達できずセル電圧が大きく低下する問題が生じていた。
【0003】
また、通常固体高分子電解質であるイオン交換膜の導電性を保つため、イオン交換膜が乾燥しないように燃料ガスは湿潤して供給されることが多い。この湿潤ガスによっても電極のフラッディングが起こる場合がある。そのため、長期間燃料電池を安定して作動させるには、フラッディングが起こらないように、触媒層にガスを供給するためのガス拡散層に撥水性を付与することが重要である。
【0004】
ガス拡散層としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)等で表面を処理して撥水性を付与したカーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等が使用できることが知られている。しかし、このようなガス拡散層では、表面にカーボン繊維等による毛羽立ちがあるため膜や触媒層を損傷するおそれがある。そのため最近は、膜や触媒層を保護・緩衝する機能及びガス拡散機能を同時に備えるように、ガス拡散層基材の上に撥水剤とカーボンとからなる撥水性カーボン層を形成して触媒層と隣接させる方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
上記方法では、撥水性カーボン層はカーボンの粉末から構成されるため、表面はカーボンペーパー等の基材より緻密であり、触媒層と十分な接触を保つことができ集電にも有利である。さらに、電池反応で生成した水滴状の水を細かく砕いてガス拡散層側に送り出す機能も兼ねており、撥水性カーボン層の存在により水の排出がよりスムーズになる。そのため、高電流密度領域において燃料電池を作動させる場合でもフラッディングが起こりにくく、燃料電池性能は安定する。
【0006】
この撥水性カーボン層としては、従来より、カーボンブラックとフッ素系の撥水剤とからなる撥水性カーボン層が用いられている(例えば特許文献1、2参照。)。撥水性カーボン層は、通常、ガス拡散層基材の上に形成され、撥水性カーボン層が膜・触媒層接合体と接するようにして2枚のガス拡散層で膜・触媒層接合体を挟み込み、押し付けるか又は接合される。従来、撥水性カーボン層のカーボンブラックには、ケッチェンブラックEC(ライオン社製)、バルカンXC−72(キャボット社製)、アセチレンブラック(電気化学工業社製)等が用いられてきた(特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−261421号公報(2頁3〜6行、2頁49〜52行)
【特許文献2】
特開2001−351637号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開2002−270192号公報(3頁9〜13行)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらのカーボンブラックは何れも黒鉛結晶化(グラファイト化)が進んでおらず、結晶性が低い。上記カーボンブラックの炭素六方層面間距離(d002)は、ケッチェンブラックECで約0.359nm、バルカンXC−72で約0.357nm、アセチレンブラックで約0.346nmである。これに対し撥水性の持続性に優れる完全に黒鉛結晶化した黒鉛の炭素六方層面間距離は0.3354nmである。すなわち従来から使用されているカーボンブラックでは結晶性が低く撥水性の持続性に乏しかった。結晶性が低いと撥水性が低い理由は明確でないが、ケッチェンECを担体とする白金担持カーボン触媒Aと、ケッチェンECを3000℃程度で黒鉛化した担体を用いた白金担持カーボン触媒Bについて、70℃の飽和加湿条件で水蒸気吸着量を測定して触媒の単位表面積あたりの水蒸気吸着量を測定すると、触媒Aの水蒸気吸着量は触媒Bの2倍であることを確認している。この事実は黒鉛化して結晶性を高めたカーボンの方が濡れにくいことを示していると考えられる。
【0009】
このため、ガス拡散層の一部である撥水性カーボン層に、PTFE等の撥水剤が含まれていても、長時間燃料電池を作動させるとカーボン撥水層の主成分であるカーボンブラックの撥水性が低下して撥水性カーボン層が濡れ易くなり、フラッディングが生じていた。この結果、長期運転において燃料電池のセル電圧は大きく低下していた。そのため、長期運転で電池特性を安定化させるために撥水性カーボン層の撥水性を持続させる必要があった。
【0010】
そこで本発明は、これらの問題を解決するため、従来のような撥水性カーボン層の機能、すなわち緩衝層としての機能、導電性、ガス拡散性及び初期の撥水性を確保しつつ、かつ撥水性の持続性を大幅に向上させた撥水性カーボン層を有する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、触媒層と該触媒層に隣接するガス拡散層とを有するカソード及びアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に前記アノード及び前記カソードの触媒層と隣接して配置されるイオン交換膜とからなる固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体において、前記カソード及び前記アノードの少なくとも一方のガス拡散層は、多孔性炭素質シートからなるガス拡散層基材上にカーボンブラックとフッ素樹脂とからなる撥水性カーボン層が形成されてなり、前記カーボンブラックは炭素六方層面間距離が0.3354〜0.345nmであることを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の膜・電極接合体は、例えば本発明の1実施態様を示す断面図である図1によりその構成が説明できる。すなわち、本発明における膜電極接合体8は、イオン交換膜4の片面にカソード6が、もう一方の面にアノード7が配置されている。カソード6には空気等の酸素を含むガスが供給され、アノード7には水素を含むガスが供給され、カソード6で水が生成される。
【0013】
カソード6及びアノード7は、触媒層3、3’とガス拡散層5、5’とから構成される。ガス拡散層5、5’は集電体の機能と、通常ガス拡散層の外側に配置されるセパレータから供給される燃料を触媒層3、3’に効率よく供給するためのガス拡散の機能を有するものである。具体的には、カーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルト等をガス拡散層基材1、1’として、その上にカーボンブラックとフッ素樹脂とを含む層からなる撥水性カーボン層2、2’が形成されたものを使用する。
【0014】
撥水性カーボン層2、2’を有すると、ガス拡散層5、5’の撥水性が高まり、またガス拡散層5、5’の表面が平坦化されるため集電機能が高まり、ガス拡散層基材1、1’が直接触媒層3、3’に接触することによって触媒層3、3’の表面を傷つけたり粗面化することも避けられる。
【0015】
ここで撥水性カーボン層2、2’は、その成分がガス拡散層基材1、1’の空孔部にある程度侵入していると、アンカー効果により撥水性カーボン層がガス拡散層基材1、1’上に固定されるため、密着性を高められ好ましい。ガス拡散層基材1、1’には代表的な市販品として、例えば東レ社製のカーボンペーパーTGP−H−120等が使用できる。
【0016】
本発明において撥水性カーボン層2、2’に用いるカーボンブラックは、導電性を有するものであり、炭素六方層面間距離が0.3354〜0.345nmである。本発明におけるカーボンブラックは、通常のカーボンブラックを出発物質として例えば熱処理をすることにより炭素六方層面間距離が上記範囲となったカーボン材料を示し、粒子径は特には限定されない。具体的に例示すると、ケッチェンブラックEC(商品名、ライオン社製)、バルカンXC−72(商品名、キャボット社製)、アセチレンブラック(電気化学工業社製)等を例えば窒素中などの不活性雰囲気中で2000〜3000℃にて加熱処理して黒鉛化(グラファイト化)し、炭素六方層面間距離を0.3354〜0.345nmとしたものを用いる。黒鉛化する前のカーボンブラック材料は上述のものだけでなく特に限定されない。
【0017】
本発明では上記カーボンブラックの炭素六方層面間距離は0.3354〜0.345nmであるが、完全黒鉛の炭素六方層面間距離が0.3354nmであるため、カーボンブラックを黒鉛化しても炭素六方層面間距離が0.3354nm未満となることは物理的にありえない。また炭素六方層面間距離が0.345nmより大きい場合はカーボンブラックは十分に黒鉛化されておらず結晶性が低く撥水性の持続性が不十分であるため好ましくない。カーボンブラックの炭素六方層面間距離のより好ましい範囲は、0.340〜0.344nmである。
【0018】
撥水性カーボン層2、2’中の黒鉛化したカーボンブラックとフッ素樹脂との質量比は、9:1〜4:6であることが好ましい。撥水性カーボン層2、2’中のカーボンブラックの含有量が多すぎると、フッ素樹脂のバインダ力が十分に得られないおそれがある。一方、カーボンブラックの含有量が少なすぎると、撥水性カーボン層2、2’の抵抗が大きくなり、またフッ素樹脂によって撥水性カーボン層2、2’の細孔部分が閉塞されガスの拡散性が低下するため好ましくない。同様の観点から特に、カーボンブラックとフッ素樹脂とは質量比で8:2〜6:4であることが好ましい。なお、上記フッ素樹脂は特に限定されず、PTFE、パーフルオロブテニルビニルエーテルを環化重合した重合体等が使用できる。
【0019】
撥水性カーボン層2、2’は、例えば以下のようにして形成できる。すなわち、PTFE等のフッ素樹脂の分散液に黒鉛化させたカーボンブラックを混合し分散させた液を得て、この液を塗工液としてガス拡散層基材1、1’に塗布し乾燥させることにより撥水性カーボン層2、2’を得る。フッ素樹脂として溶媒に可溶なフッ素樹脂を使用する場合は、当該フッ素樹脂の溶液に黒鉛化したカーボンブラックを分散させて塗工液を得る。塗工液には適宜希釈剤等を添加することもできるし、フッ素樹脂又はカーボンブラックを分散させるための分散剤を添加してもよい。
【0020】
本発明における触媒層3、3’に含まれる触媒としては、アノード7側の触媒層3’には白金ルテニウム合金(Pt−Ru)がカーボンに担持された担持触媒が好ましく、カソード6側の触媒層3には白金がカーボンに担持された担持触媒が好ましいが、特には限定されない。これらの触媒は、触媒中の貴金属がアノード7では0.1〜4mg/cm2となるように含まれることが好ましく、カソード6では0.1〜3mg/cm2となるように含まれることが好ましい。
【0021】
また触媒層3、3’には、スルホン酸基を有する含フッ素重合体が含まれ、特にスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(ただしエーテル結合性の酸素原子等は含んでいてよい)が耐久性等の点から好ましい。具体的には、ナフィオン(商品名、デュポン社製)、フレミオン(商品名、旭硝子社製)等が好ましく使用できるが特には限定されない。
【0022】
本発明におけるイオン交換膜4としては、触媒層に含まれるスルホン酸基を有する含フッ素重合体と同様のイオン交換樹脂からなる膜が使用できるが、特に限定されない。スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜(例えばナフィオン(商品名、デュポン社製)、フレミオン(商品名、旭硝子社製)等)、部分フッ素化された炭化水素系のスルホン酸型イオン交換膜(例えば、ETFEのグラフト重合膜でスルホン酸基を有するもの)、炭化水素系のスルホン酸型イオン交換膜(例えばポリエーテルエーテルケトンからなりスルホン酸基を有する膜)等が使用できる。さらに、メタノールの透過の抑制を目的とし、シリカとイオン交換樹脂を混合したような無機有機ハイブリッド膜も使用できる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例(例1)及び比較例(例2)により説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0024】
[例1(実施例)]
以下の手順で、図1に示すPEFC用膜・電極接合体を作製した。
ガス拡散層基材として、厚さ360μmのカーボンペーパー(商品名:TGP−H−120、東レ社製)をPTFEで撥水処理したものを用いた。PTFEによる撥水処理は以下のようにして行った。PTFE分散液(商品名:AD−1、旭フルオロポリマーズ社製、PTFE固形分濃度(質量比)60%、分散剤:ノニオン系安定剤)を水で希釈し固形分濃度を5%としたものに上記カーボンペーパーを浸漬させ、窒素中350℃にて1時間焼成処理し、PTFE分散液中の分散媒及び分散剤を除去して、PTFEを2.5mg/cm2付着させた。
【0025】
次に基材の撥水処理に用いたものと同じPTFE分散液を蒸留水で希釈して固形分濃度1.3質量%とし、PTFEが2g含まれるように分散液を153.8g秤量した。一方、カーボンブラックであるケッチェンブラックEC(ライオン社製)を約3000℃の不活性雰囲気で焼成処理し黒鉛化し、炭素六方層面間距離(d002)が0.342nmの黒鉛化したカーボンブラックを作製し、これを上記分散液に4.67g添加した。その後充分な撹拌を行い、スラリー状の撥水性カーボン層形成用の分散液を得た。
【0026】
この分散液を、上記の撥水処理したカーボンペーパー上にスクリーン印刷により塗布し、窒素中350℃にて1時間焼成させ、撥水性カーボン層を形成し、約40μmの厚さの撥水性カーボン層を有する、厚さ約400μmのガス拡散層を得た。
【0027】
次にアノード及びカソードの触媒層を作製するために触媒層形成用塗工液を作製した。アノード、カソード両方に同じ塗工液を用い、同じ触媒層を形成した。イオン交換容量1.1ミリ当量/g乾燥樹脂の、テトラフルオロエチレン/CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)2SO3H共重合体と、白金担持カーボン(白金とカーボンが質量比で50:50))とを71.4:28.6の質量比で含み、エタノールと5フッ化プロパノールとの質量比で1:1の混合物を分散媒とする液を触媒層形成用塗工液とした。この塗工液をPt付着量が0.35mg/cm2となるように、PTFEシート上に塗布し、80℃、10分の加熱処理をし、充分に乾燥させて触媒層を形成した。
【0028】
イオン交換膜にはイオン交換容量1.1ミリ当量/g乾燥樹脂のスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜(商品名:フレミオンHR、旭硝子社製、厚さ50μm)を用いた。これを、上記のPTFE上に形成された触媒層2枚で挟み込み、140℃、3MPaにて2分間ホットプレスし、カソード、アノードともに触媒層を膜に転写した。その後、両面のPTFEシートを剥離して、膜・触媒層接合体を作製した。この時、有効電極面積は25cm2とした。その後80℃にて10分加熱処理して乾燥させた。
【0029】
次いで、得られた膜・触媒層接合体の両外側に、撥水性カーボン層が形成されたガス拡散層を撥水性カーボン層側を内側にしてそれぞれ配置し、ガス拡散層を押し当てることにより膜・電極接合体を得た。
【0030】
[例2]
ガス拡散層の撥水性カーボン層に用いるカーボンブラックとして、加熱処理を施していない未処理のケッチェンブラックEC(炭素六方層面間距離3.59Å)を用いた以外は例1と全く同様にして膜・電極接合体を作製した。
【0031】
[電池特性試験]
例1〜2の膜・電極接合体を、両外側にセパレータを配置して測定セルに組み込み、電子負荷装置FK400L(高砂製作所社製)と直流電源装置EX750L(高砂製作所社製)を用いて電流電圧特性の測定試験を行った。測定条件は、水素出口圧力;0.1MPa(常圧)、空気出口圧力;0.1MPa(常圧)、測定セルの作動温度;80℃とし、アノード、カソードとも供給するガス(水素及び空気)の露点を80℃とした。電流密度は0.4A/cm2で維持し、燃料利用率はアノード側を70%、カソード側を40%とした。定電流駆動させたときのセル電圧の経時変化を測定し、これらの各測定セルの試験結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
例1の方がセル特性は安定で、セル電圧の低下は例2に比べて少なかった。これは、撥水性カーボン層内に存在するカーボンブラックが黒鉛化しているために撥水性の持続性が高まり、撥水性カーボン層全体の撥水性が維持されたためと思われる。一方、例2では撥水性カーボン層内に存在するカーボンブラックの撥水性が経時的に低下し、細孔が閉塞しやすくなり、その結果燃料ガスや空気の供給が妨げられて濃度過電圧が増大したため、セル電圧が低下したものと思われる。すなわち、経時的に燃料ガス、空気の触媒層への供給がスムーズに行われ難くなり、セル電圧が低下してきたものと思われる。
【0034】
【発明の効果】
本発明ではガス拡散層の一部である撥水性カーボン層に用いるカーボンブラックとして、高温加熱処理して黒鉛結晶化したカーボンブラックをもちいることで、通常のカーボンブラックに対し、撥水性の持続性に優れる。これにより撥水性カーボン層の撥水性の持続性が向上し、ガス拡散層が長期にわたって濡れにくくなり、結果として膜・電極接合体は耐久性良く安定した発電特性を得ることができる。本発明は上記のような撥水性カーボン層を用いてガス拡散層を形成し、膜・触媒層接合体の外側に配置することにより、長期的に撥水性が高い出力特性の経時劣化の少ない固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体の1実施態様を示す断面図
【符号の説明】
1、1’:ガス拡散層基材
2、2’:カーボン層
3、3’:触媒層
4:イオン交換膜
5、5’:ガス拡散層
6:カソード
7:アノード
8:膜・電極接合体
Claims (1)
- 触媒層と該触媒層に隣接するガス拡散層とを有するカソード及びアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に前記アノード及び前記カソードの触媒層と隣接して配置されるイオン交換膜とからなる固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体において、前記カソード及び前記アノードの少なくとも一方のガス拡散層は、多孔性炭素質シートからなるガス拡散層基材上にカーボンブラックとフッ素樹脂とからなる撥水性カーボン層が形成されてなり、前記カーボンブラックは炭素六方層面間距離が0.3354〜0.345nmであることを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体。
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