JP2005017767A - 帯電ローラ - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な帯電性を有し、かつ環境依存性およびブルームが低減された帯電ローラを提供する。
【解決手段】導電性芯材および該導電性芯材の外周を覆う円筒状の樹脂層を備えるローラであって、前記樹脂層が熱可塑性樹脂と、金属塩と、カーボンブラックとを含有するものであることを特徴とする帯電ローラ。
【選択図】 なし
【解決手段】導電性芯材および該導電性芯材の外周を覆う円筒状の樹脂層を備えるローラであって、前記樹脂層が熱可塑性樹脂と、金属塩と、カーボンブラックとを含有するものであることを特徴とする帯電ローラ。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機およびプリンタに用いられる安定した電気特性を有する帯電ローラに関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機やプリンタなどの電子写真装置における画像形成では、感光ドラムを均一に帯電させる帯電工程と、帯電された感光ドラムに露光して感光ドラム表面に静電潜像を形成する露光工程と、静電潜像の形成された感光ドラムにトナーを付着させ、それを転写ローラにて紙上に転写してトナー像を形成する転写工程と、加熱・加圧を施して紙上にトナー像を定着させる定着工程とを、基本的に含有する。これらの工程を経た後、感光体はブレードなどにより残存した廃トナーを除去するクリーニングを施され、除電されて、繰り返し帯電工程に供される。従来、上記帯電工程における感光ドラムの帯電はコロナ放電により行われているのが一般的であったが、コロナ放電では発生するオゾンが周囲に悪影響を及ぼすため、近年では、感光ドラムに接触させる接触型の帯電ローラを使用する方式(接触帯電方式)が採用されるようになってきた。この帯電ローラとしては、導電性芯材の外周にゴム材料や熱可塑性エラストマーのような弾性の大きな材料が使用されてきた。
【0003】
しかし上記接触帯電方式では、▲1▼帯電ローラの構成物質が帯電ローラから染み出して(ブリードアウト)、感光ドラムの表面に付着し、この付着が進行すると感光ドラム表面に帯電ローラの跡が残る、▲2▼帯電ローラに交流電圧を印加した際に、感光ドラムが接触している帯電ローラが振動して帯電音が発生する、▲3▼感光ドラム表面のトナーが帯電ローラに付着して帯電性能が低下する、▲4▼感光ドラムを長期間駆動しないと帯電ローラに永久変形が生じる、などの問題が生じており、たとえば、ブリードアウトに対しては、表面にブリードアウトを防止する最外層を設けることで対応してきた。このため最近では、感光ドラムに接触させずに近接させる近接帯電方式が検討され、採用されている。この近接帯電方式では、帯電ローラが感光ドラムに近すぎると感光ドラムと接触してしまう虞があり、また帯電ローラが感光ドラムから遠すぎると帯電効率が悪くなる虞があることから、帯電ローラと感光ドラムとの間の最近接距離は、通常、0.005mm〜3mmとなるように調整されている。
【0004】
上記近接帯電方式では、帯電ローラと感光ドラムとを接触させずにその近接距離を制御すべく、帯電ローラと感光ドラムとの間にスペーサが設けられる。このため、帯電ローラが弾性の大きい材料である場合、わずかな外力や歪みによって変形してしまって感光ドラムとの間を一定に維持することが困難となり、特に、近接帯電方式用の帯電ローラとしての使用には適していなかった。そこで、具体的な帯電ローラ(特には、近接帯電方式用の帯電ローラ)の構成材料として、ゴム材料などの弾性の大きい材料の代替として検討されているのが、弾性の小さい(変形し難い)熱可塑性樹脂である。しかしながら、帯電ローラは、帯電させるため半導電性(体積抵抗率が1×108Ω・cm未満)であることを要するため、上記熱可塑性樹脂に導電性の添加剤を配合する必要がある。しかし、従来より帯電ローラに一般に添加されていたカーボンブラックに代表される導電性顔料は、熱可塑性樹脂に均一に分散させるのが困難であり、良好な帯電性を均一に有する帯電ローラを得ることができない。
【0005】
このためカーボンブラックなどに代替し得る帯電ローラ用の導電剤が種々検討されている。
その一つとして、過塩素酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、ヨウ化リチウムなどの電解質塩をイオン導電剤として熱可塑性樹脂中に分散させる手法が試みられており、かかる電解質塩によれば熱可塑性樹脂中への分散性も良好であることが判っている。しかしながら、上記電解質塩は特性が環境に左右され易く、高温高湿になるほど体積抵抗率が下がり、低温低湿になるほど体積抵抗率が上がることから、それにより製造されたローラの特性が不安定である現象が指摘されている。また上記電解質塩を用いると、使用中に帯電ローラ表面にブルームする性質があり、感光ドラムを汚染してしまうという欠点も併せもっている。そのためイオン導電剤として上記電解質塩を配合してなる帯電ローラを使用する場合には、イオン導電剤を含まない最外層を設けてなる積層構造として、環境依存性およびブルームを防止する方式を採る必要があるが、このような積層構造の帯電ローラは、製造が煩雑であるとともに、寸法安定性が悪い(特に、近接帯電方式には重要な要件)、各層間の密着力が不安定である、などといった問題がある。
【0006】
また、ポリアルキレンオキシドなどのポリエーテル基を有するノニオン性高分子型導電剤を熱可塑性樹脂に分散させる手法も検討されている。かかるノニオン性高分子型導電剤を用いれば、熱可塑性樹脂中への分散性も良好であり、上記のイオン導電剤を用いた場合のような帯電ローラ表面へのブリードアウトは起こりにくい。しかし、ノニオン性高分子型導電剤は、上記イオン導電剤と比較して抵抗値を抑える効果が小さく、1×108Ω・cm以上の抵抗値しか得られないため、感光ドラムを良好に帯電させる帯電ローラを実現することができない。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−132014号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、良好な帯電性を有し、かつ環境依存性およびブルームが低減された帯電ローラを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下のとおりである。
(1)導電性芯材および該導電性芯材の外周を覆う円筒状の樹脂層を備えるローラであって、
前記樹脂層が熱可塑性樹脂と、金属塩と、カーボンブラックとを含有するものであることを特徴とする帯電ローラ。
(2)カーボンブラックの配合量が熱可塑性樹脂100重量部に対して5重量部〜40重量部である上記(1)に記載の帯電ローラ。
(3)熱可塑性樹脂が、極性基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂混合物である、上記(1)または(2)に記載の帯電ローラ。
(4)金属塩が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であるカチオンおよびイオン解離可能なアニオンとによって構成される上記(1)〜(3)のいずれかに記載の帯電ローラ。
(5)さらに、−[O(AO)n]−基(Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜7の整数を示す)を有し、かつ分子鎖末端がCH3基および/またはCH2基である有機化合物を含有する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の帯電ローラ。
(6)体積抵抗率が1×108Ω・cm未満である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の帯電ローラ。
(7)近接帯電方式で帯電させる工程に使用されるものである、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の帯電ローラ。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の帯電ローラは、導電性芯材および該導電性芯材の外周を覆う円筒状の樹脂層を備える帯電ローラであって、当該樹脂層が、熱可塑性樹脂と、金属塩と、カーボンブラックとを含有するものであることを特徴とする。本発明においては、上記樹脂層を有することで、ブリードアウトを抑制することが可能となり、良好な帯電性を有し、環境依存性およびブルームが防止された帯電ローラを実現することができる。
【0011】
ここで「良好な帯電性」とは、樹脂層の体積抵抗率が1×108Ω・cm未満(好適には1×104Ω・cm〜1×107Ω・cm)であることを指す。体積抵抗率が108Ω・cm以上であると、帯電効率が悪くなり良好な帯電性が得られない。該体積抵抗率は、たとえば、帯電ローラに金属箔を巻きつけ、帯電ローラの導電性芯材より直流電流を印加し、直列に接続した電流計の値の読みから計算して抵抗値を求め、金属箔の面積、ローラ被覆厚(樹脂層の肉厚)から、体積抵抗率を換算する。
【0012】
また、本発明の構成とすることで、長時間(1000時間〜10000時間程度)使用してもブリードアウトする物質もなく、またスペーサに接触する部分の永久変形も生じにくい。さらに、本発明の帯電ローラは、環境依存性に優れ、高温高湿(50℃×80%RH:HH)と低温低湿(10℃×15%RH:LL)での体積抵抗率の比(LL/HH)が30以下(好ましくは15以下)で、安定した帯電特性を得ることができる。このため、ブルームを防止するための層や環境から保護するための層を設ける必要がなく、1層という簡略な構成にて帯電ローラを実現することも可能である。このように導電性芯材と該導電性芯材の外周に隣接してこれを覆う単層の樹脂層という形態にて実現すると、製造工程を最小限に抑えつつも高品位な帯電ローラを形成することができるため、好ましい。
【0013】
本発明に使用される熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、従来公知の種々の熱可塑性樹脂を使用できるが、帯電性の観点からは、極性基を有する熱可塑性樹脂(以下、「成分(a)」ということがある。)を含有する樹脂混合物であるのが好ましい。
上記成分(a)としては、分子構造内に極性基を有するものであれば特に制限されない。極性基としては、たとえば、アミド基、エステル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基などが挙げられる。成分(a)としては、具体的には、ポリエーテルエステルアミド樹脂(PEEA樹脂)、ポリエステルエラストマー、脂肪族ポリエステル、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマーなどが例示され、中でも熱可塑性エラストマーであるポリエーテルエステルアミド樹脂、ポリエステルエラストマー、脂肪族ポリエステル、ポリウレタンエラストマーまたはポリアミドエラストマーが好ましく、ポリエーテルエステルアミド樹脂が特に好ましい。本発明において成分(a)として使用できるポリエーテルエステルアミド樹脂、ポリエステルエラストマー、脂肪族ポリエステル、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマーとしては、たとえば特開2002−309097号公報に記載されたものをそれぞれ好適に使用することができる。
【0014】
上述したように本発明における樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は、上記成分(a)を含有する樹脂混合物であるのが好ましいが、かかる樹脂混合物における成分(a)以外の熱可塑性樹脂(以下、「成分(b)」という)としては、成分(a)として上述した中で採用した以外の熱可塑性樹脂(極性基の有無を問わない)であれば、特に制限されるものではない。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの(メタ)アクリル酸エステル重合体、(メタ)アクリル酸重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのビニルモノマー重合体または共重合体;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1などのポリα−オレフィン;プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体などのα−オレフィン同士もしくはα−オレフィンと他のモノマーとの共重合体;ナイロン6、ナイロン4,6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリフェニレンオキシドなどの芳香族ポリエーテル;ポリカーボネート;ポリイミド;ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのスルホン系ポリマーなどから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。中でも耐衝撃性、耐クリープ性、温熱安定性、易成形性などの物性に優れることから、ABS樹脂を用いるのが好ましい。
【0015】
本発明の成分(a)と成分(b)の好ましい組み合わせとしては、例えば、ポリエーテルエステルアミド、ポリエステルエラストマー、脂肪族ポリエステル、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマーより選ばれた1種類以上と、ABS樹脂との組み合わせが挙げられる。
【0016】
樹脂混合物において、(a)成分と(b)成分との混合割合は特に制限されるものではないが、(a)成分:(b)成分=3〜25:75〜97(重量比)であるのが好ましい。
【0017】
本発明の樹脂層に含有される金属塩としては、カチオン成分として金属(好ましくは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属)を用いたものが好ましい。かかるカチオン成分としては、たとえば、Li、Na、K、Mg、Caなどが挙げられる。カチオンとしては、導電性が得られ易いことから、イオン半径の小さいLi+、Na+、K+が好ましい。
また本発明における金属塩は、上記アルカリ金属またはアルカリ土類金属であるカチオンおよびイオン解離可能なアニオンとによって構成されるのが好ましい。上記アニオン成分としては、たとえば、Cl−、Br−、F−、I−、NO3 −、SCN−、ClO4 −、CF3SO3 −、BF4 −、(CF3SO2)2N−、(CF3SO2)3C−などが挙げられ、中でもClO4 −、CF3SO3 −、BF4 −、(CF3SO2)2N−、(CF3SO2)3C−が好ましい。
上記カチオン成分およびアニオン成分によって構成される金属塩としては、具体的には、LiClO4、NaClO4、Mg(ClO4)2、KClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、NaN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、NaC(CF3SO2)3が挙げられ、中でも体積抵抗率を制御し易い点から、LiClO4、LiCF3SO3、LiC(CF3SO2)3が好ましい。なお本発明においては、上述した中から選ばれる2種以上の金属塩を用いてよい。
【0018】
上記金属塩の配合量に制限はなく、用いる熱可塑性樹脂、カーボンブラックの種類や上記カチオン成分およびアニオン成分の組み合わせによって適宜選択すればよいが、熱可塑性樹脂100重量部に対し0.01重量部〜20重量部であるのが好ましく、5重量部〜10重量部であるのがより好ましい。金属塩が熱可塑性樹脂100重量部に対し0.01重量部未満であると、導電性の効果が得られにくくなる傾向にあり、また熱可塑性樹脂100重量部に対し20重量部を超えても、飽和状態となって導電性の効果が得られにくくなる傾向にあるためである。
【0019】
本発明に使用されるカーボンブラックとしては、一般に使用されるものであれば特には限定はない。カーボンブラックの例としては、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラックなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、単独又は2種以上組み合わせて用いられる。上記中でも、比較的少量の配合量(熱可塑性樹脂100重量部に対して、5重量部〜15重量部)であっても1×108Ω・cm未満の上記体積抵抗率を達成できることからアセチレンブラックが好ましい。少量の配合の場合、成形が良好に行われる。
【0020】
上記カーボンブラックの配合量に制限はなく、用いる熱可塑性樹脂、金属塩、カーボンブラックの組み合わせによって適宜選択すればよいが、熱可塑性樹脂100重量部に対し5重量部〜40重量部であるのが好ましく、15重量部〜20重量部であるのがより好ましい。カーボンブラックの配合量が熱可塑性樹脂100重量部に対し5重量部未満であると、体積抵抗率が充分に低下しない虞がある。また、カーボンブラックの配合量が熱可塑性樹脂100重量部に対し40重量部を超えると、環境特性が悪化したり、成形性が低下し、歩留りや生産効率が低下する傾向がある。
【0021】
本発明の帯電ローラにおいては、上述したような熱可塑性樹脂、金属塩およびカーボンブラックを少なくとも含有する組成物を、導電性芯材の外周を覆う円筒状の樹脂層として成形する。ここで、「導電性芯材の外周を覆う」とは、樹脂層が導電性芯材の外周面に隣接してこれを被覆するように形成されていてもよく、導電性芯材との間に他の層を介在したかたちで導電性芯材を覆うように形成されていてもよいことを指すが、製造工程を簡略化できることから、導電性芯材に隣接してこれを覆う単層の樹脂層として形成されるのが好ましい。なお、上記「円筒状」は、その軸線方向におけるいずれの断面もが略合同な円形である中空の形状をいう。
【0022】
本発明の帯電ローラに使用される導電性芯材の形成材料としては、当分野において金属芯材として従来から使用されている鉄、鉄合金、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などを特に制限なく用いることができる。中でも、強度、コスト、加工性の観点から、鉄または鉄合金(具体的には、炭素鋼、ステンレス鋼)製の導電性芯材を使用するのが好ましい。
【0023】
本発明の帯電ローラの製造方法に特に制限はなく、当分野において従来公知の手法にて製造することができる。たとえば、熱可塑性樹脂と、金属塩と、カーボンブラックとを少なくとも含有する組成物を、バンバリミキサ、ロール混練機などの公知の混練機を用いて混練した後、公知の射出成形機にて導電性芯材の外周を覆う樹脂層として射出成形することで、製造することができる。なお上述のように導電性芯材の外周に隣接して単層の樹脂層を形成することで、製造工程を最小限で実施することができ、製造コストも低く抑えることができるという利点もある。
【0024】
本発明における金属塩の良好な分散性を実現し得る観点からは、予め、熱可塑性樹脂と上記金属塩と上記カーボンブラックとからなるマスターバッチを作製しておき、該マスターバッチを熱可塑性樹脂と混合させると、金属塩の分散性が向上するため、好ましい。
また、射出成形の条件に特に制限はないが、通常、200℃〜250℃の成形温度、50mm/秒〜150mm/秒の射出速度の各範囲内で成形を行う。
【0025】
また本発明における樹脂層は、−{O(AO)n}−基(Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜7の整数を示す)を有し、かつ分子鎖末端がCH3基および/またはCH2基である有機化合物(特に好適には、上記−{O(AO)n}−基を有し、かつ全ての分子鎖末端がCH3基である有機化合物)を、さらに含有しているのが好ましい。
具体的には、以下の一般式(1)〜(3)で表される少なくともいずれかの有機化合物が好適である。
【0026】
【化1】
【0027】
【化2】
【0028】
【化3】
【0029】
[上記一般式(1)〜(3)中、R1は、炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基、および、炭素数2〜9の直鎖または分岐のアシル基のうちいずれか一種を示し、同一でも異なっていてもよい。Aは同一または異なる炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは同一または異なる1〜7の整数である。また、Xは炭素数2〜10からなる、アルキレン基、芳香族基を含む炭化水素基、または脂環式炭化水素基、Yは炭素数6〜10からなる、芳香族基を含む炭化水素基である。]
中でも特に、トリエチレングリコールジアセチルまたはアジピン酸ジブトキシエトキシエチルが好適である。
【0030】
また上記有機化合物の配合量についても特に制限はないが、熱可塑性樹脂100重量部に対し0.03重量部〜15重量部であるのが好ましく、0.5重量部〜10重量部であるのがより好ましい。上記有機化合物が熱可塑性樹脂100重量部に対し0.03重量部未満であると、金属塩のブリードアウト抑制の効果が低減する傾向にあるためであり、また上記有機化合物が熱可塑性樹脂100重量部に対し15重量部を超えても、上記ブリードアウト抑制の効果が低減する傾向にあるためである。
【0031】
また、本発明の帯電ローラを形成するための組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で無機充填剤、酸化防止剤、相溶化剤などの適宜の添加剤が配合されていてもよい。
【0032】
本発明の帯電ローラは、その長さ、ロール径(外径)、シャフト径(内径)などに特に制限はなく、適用する複写機などに応じて適宜選択すればよい。
【0033】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
実施例1
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部、LiClO45重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル3重量部、アセチレンブラック5重量部を混合した組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0034】
実施例2
アセチレンブラックの配合量を15重量部とした以外は実施例1と同様にして、帯電ローラのサンプルを作製した。
【0035】
実施例3
アセチレンブラックの配合量を20重量部とした以外は実施例1と同様にして、帯電ローラのサンプルを作製した。
【0036】
実施例4
アセチレンブラックの配合量を40重量部とした以外は実施例1と同様にして、帯電ローラのサンプルを作製した。
【0037】
実施例5
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部、LiCF3SO37重量部、トリエチレングリコールジアセチル5重量部、ケッチェンブラック15重量部を混合した組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0038】
実施例6
ポリエチレン85重量部、PEEA樹脂15重量部、LiCF3SO37重量部、トリエチレングリコールジアセチル5重量部、アセチレンブラック20重量部を混合した組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0039】
実施例7
ABS樹脂95重量部、PEEA樹脂5重量部、LiClO45重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル3重量部、アセチレンブラック20重量部を混合した組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0040】
実施例8
ABS樹脂の配合量を78重量部、PEEA樹脂の配合量を22重量部とした以外は実施例1と同様にして、帯電ローラのサンプルを作製した。
【0041】
実施例9
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部、LiClO43重量部、LiCF3SO32重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル3重量部、アセチレンブラック20重量部を混合した組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0042】
実施例10
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部、LiClO45重量部、アセチレンブラック15重量部、ケッチェンブラック5重量部を混合した組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0043】
実施例11
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部、LiClO43重量部、LiCF3SO32重量部、トリエチレングリコールジアセチル1重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル3重量部、アセチレンブラック20重量部を混合した組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0044】
比較例1
ABS樹脂100重量部のみからなる組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0045】
比較例2
ABS樹脂100重量部、LiClO415重量部のみからなる組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0046】
比較例3
ABS樹脂100重量部、LiClO45重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル3重量部のみからなる組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0047】
〔評価試験〕
上記で作製した実施例1〜11、比較例1〜3のサンプルについて、下記の手順にて測定した(1)〜(4)全ての基準を満足するものを合格とし、いずれか1つでも満足しないものを不合格と総合判定した。
(1)体積抵抗率
各サンプルに金属箔を巻きつけ、金属芯から100Vの直流電圧を印加し、直列に接続した電流計の値の読みから計算して抵抗値を求め、金属箔の面積、ローラ被覆厚から体積抵抗率を換算した。1.0×108Ω・cm未満であったものを合格とした。
(2)ブリードアウト
各ローラサンプルを、40℃×90%RH雰囲気中に7日間放置し、目視によりローラ表面のブリードアウトの有無を判定した。
(3)耐環境性
LL(低温低湿=10℃×15%RH)およびHH(高温高湿=50℃×80%RH)雰囲気でのローラの体積抵抗率(Ω・cm)を測定(方法は上記と同じ)する。LL/HHを求め、その値が0.033〜30のものを合格とした。
結果を、表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、良好な帯電性を有し、かつ環境依存性およびブルームが低減された帯電ローラを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機およびプリンタに用いられる安定した電気特性を有する帯電ローラに関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機やプリンタなどの電子写真装置における画像形成では、感光ドラムを均一に帯電させる帯電工程と、帯電された感光ドラムに露光して感光ドラム表面に静電潜像を形成する露光工程と、静電潜像の形成された感光ドラムにトナーを付着させ、それを転写ローラにて紙上に転写してトナー像を形成する転写工程と、加熱・加圧を施して紙上にトナー像を定着させる定着工程とを、基本的に含有する。これらの工程を経た後、感光体はブレードなどにより残存した廃トナーを除去するクリーニングを施され、除電されて、繰り返し帯電工程に供される。従来、上記帯電工程における感光ドラムの帯電はコロナ放電により行われているのが一般的であったが、コロナ放電では発生するオゾンが周囲に悪影響を及ぼすため、近年では、感光ドラムに接触させる接触型の帯電ローラを使用する方式(接触帯電方式)が採用されるようになってきた。この帯電ローラとしては、導電性芯材の外周にゴム材料や熱可塑性エラストマーのような弾性の大きな材料が使用されてきた。
【0003】
しかし上記接触帯電方式では、▲1▼帯電ローラの構成物質が帯電ローラから染み出して(ブリードアウト)、感光ドラムの表面に付着し、この付着が進行すると感光ドラム表面に帯電ローラの跡が残る、▲2▼帯電ローラに交流電圧を印加した際に、感光ドラムが接触している帯電ローラが振動して帯電音が発生する、▲3▼感光ドラム表面のトナーが帯電ローラに付着して帯電性能が低下する、▲4▼感光ドラムを長期間駆動しないと帯電ローラに永久変形が生じる、などの問題が生じており、たとえば、ブリードアウトに対しては、表面にブリードアウトを防止する最外層を設けることで対応してきた。このため最近では、感光ドラムに接触させずに近接させる近接帯電方式が検討され、採用されている。この近接帯電方式では、帯電ローラが感光ドラムに近すぎると感光ドラムと接触してしまう虞があり、また帯電ローラが感光ドラムから遠すぎると帯電効率が悪くなる虞があることから、帯電ローラと感光ドラムとの間の最近接距離は、通常、0.005mm〜3mmとなるように調整されている。
【0004】
上記近接帯電方式では、帯電ローラと感光ドラムとを接触させずにその近接距離を制御すべく、帯電ローラと感光ドラムとの間にスペーサが設けられる。このため、帯電ローラが弾性の大きい材料である場合、わずかな外力や歪みによって変形してしまって感光ドラムとの間を一定に維持することが困難となり、特に、近接帯電方式用の帯電ローラとしての使用には適していなかった。そこで、具体的な帯電ローラ(特には、近接帯電方式用の帯電ローラ)の構成材料として、ゴム材料などの弾性の大きい材料の代替として検討されているのが、弾性の小さい(変形し難い)熱可塑性樹脂である。しかしながら、帯電ローラは、帯電させるため半導電性(体積抵抗率が1×108Ω・cm未満)であることを要するため、上記熱可塑性樹脂に導電性の添加剤を配合する必要がある。しかし、従来より帯電ローラに一般に添加されていたカーボンブラックに代表される導電性顔料は、熱可塑性樹脂に均一に分散させるのが困難であり、良好な帯電性を均一に有する帯電ローラを得ることができない。
【0005】
このためカーボンブラックなどに代替し得る帯電ローラ用の導電剤が種々検討されている。
その一つとして、過塩素酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、ヨウ化リチウムなどの電解質塩をイオン導電剤として熱可塑性樹脂中に分散させる手法が試みられており、かかる電解質塩によれば熱可塑性樹脂中への分散性も良好であることが判っている。しかしながら、上記電解質塩は特性が環境に左右され易く、高温高湿になるほど体積抵抗率が下がり、低温低湿になるほど体積抵抗率が上がることから、それにより製造されたローラの特性が不安定である現象が指摘されている。また上記電解質塩を用いると、使用中に帯電ローラ表面にブルームする性質があり、感光ドラムを汚染してしまうという欠点も併せもっている。そのためイオン導電剤として上記電解質塩を配合してなる帯電ローラを使用する場合には、イオン導電剤を含まない最外層を設けてなる積層構造として、環境依存性およびブルームを防止する方式を採る必要があるが、このような積層構造の帯電ローラは、製造が煩雑であるとともに、寸法安定性が悪い(特に、近接帯電方式には重要な要件)、各層間の密着力が不安定である、などといった問題がある。
【0006】
また、ポリアルキレンオキシドなどのポリエーテル基を有するノニオン性高分子型導電剤を熱可塑性樹脂に分散させる手法も検討されている。かかるノニオン性高分子型導電剤を用いれば、熱可塑性樹脂中への分散性も良好であり、上記のイオン導電剤を用いた場合のような帯電ローラ表面へのブリードアウトは起こりにくい。しかし、ノニオン性高分子型導電剤は、上記イオン導電剤と比較して抵抗値を抑える効果が小さく、1×108Ω・cm以上の抵抗値しか得られないため、感光ドラムを良好に帯電させる帯電ローラを実現することができない。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−132014号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、良好な帯電性を有し、かつ環境依存性およびブルームが低減された帯電ローラを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下のとおりである。
(1)導電性芯材および該導電性芯材の外周を覆う円筒状の樹脂層を備えるローラであって、
前記樹脂層が熱可塑性樹脂と、金属塩と、カーボンブラックとを含有するものであることを特徴とする帯電ローラ。
(2)カーボンブラックの配合量が熱可塑性樹脂100重量部に対して5重量部〜40重量部である上記(1)に記載の帯電ローラ。
(3)熱可塑性樹脂が、極性基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂混合物である、上記(1)または(2)に記載の帯電ローラ。
(4)金属塩が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であるカチオンおよびイオン解離可能なアニオンとによって構成される上記(1)〜(3)のいずれかに記載の帯電ローラ。
(5)さらに、−[O(AO)n]−基(Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜7の整数を示す)を有し、かつ分子鎖末端がCH3基および/またはCH2基である有機化合物を含有する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の帯電ローラ。
(6)体積抵抗率が1×108Ω・cm未満である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の帯電ローラ。
(7)近接帯電方式で帯電させる工程に使用されるものである、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の帯電ローラ。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の帯電ローラは、導電性芯材および該導電性芯材の外周を覆う円筒状の樹脂層を備える帯電ローラであって、当該樹脂層が、熱可塑性樹脂と、金属塩と、カーボンブラックとを含有するものであることを特徴とする。本発明においては、上記樹脂層を有することで、ブリードアウトを抑制することが可能となり、良好な帯電性を有し、環境依存性およびブルームが防止された帯電ローラを実現することができる。
【0011】
ここで「良好な帯電性」とは、樹脂層の体積抵抗率が1×108Ω・cm未満(好適には1×104Ω・cm〜1×107Ω・cm)であることを指す。体積抵抗率が108Ω・cm以上であると、帯電効率が悪くなり良好な帯電性が得られない。該体積抵抗率は、たとえば、帯電ローラに金属箔を巻きつけ、帯電ローラの導電性芯材より直流電流を印加し、直列に接続した電流計の値の読みから計算して抵抗値を求め、金属箔の面積、ローラ被覆厚(樹脂層の肉厚)から、体積抵抗率を換算する。
【0012】
また、本発明の構成とすることで、長時間(1000時間〜10000時間程度)使用してもブリードアウトする物質もなく、またスペーサに接触する部分の永久変形も生じにくい。さらに、本発明の帯電ローラは、環境依存性に優れ、高温高湿(50℃×80%RH:HH)と低温低湿(10℃×15%RH:LL)での体積抵抗率の比(LL/HH)が30以下(好ましくは15以下)で、安定した帯電特性を得ることができる。このため、ブルームを防止するための層や環境から保護するための層を設ける必要がなく、1層という簡略な構成にて帯電ローラを実現することも可能である。このように導電性芯材と該導電性芯材の外周に隣接してこれを覆う単層の樹脂層という形態にて実現すると、製造工程を最小限に抑えつつも高品位な帯電ローラを形成することができるため、好ましい。
【0013】
本発明に使用される熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、従来公知の種々の熱可塑性樹脂を使用できるが、帯電性の観点からは、極性基を有する熱可塑性樹脂(以下、「成分(a)」ということがある。)を含有する樹脂混合物であるのが好ましい。
上記成分(a)としては、分子構造内に極性基を有するものであれば特に制限されない。極性基としては、たとえば、アミド基、エステル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基などが挙げられる。成分(a)としては、具体的には、ポリエーテルエステルアミド樹脂(PEEA樹脂)、ポリエステルエラストマー、脂肪族ポリエステル、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマーなどが例示され、中でも熱可塑性エラストマーであるポリエーテルエステルアミド樹脂、ポリエステルエラストマー、脂肪族ポリエステル、ポリウレタンエラストマーまたはポリアミドエラストマーが好ましく、ポリエーテルエステルアミド樹脂が特に好ましい。本発明において成分(a)として使用できるポリエーテルエステルアミド樹脂、ポリエステルエラストマー、脂肪族ポリエステル、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマーとしては、たとえば特開2002−309097号公報に記載されたものをそれぞれ好適に使用することができる。
【0014】
上述したように本発明における樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は、上記成分(a)を含有する樹脂混合物であるのが好ましいが、かかる樹脂混合物における成分(a)以外の熱可塑性樹脂(以下、「成分(b)」という)としては、成分(a)として上述した中で採用した以外の熱可塑性樹脂(極性基の有無を問わない)であれば、特に制限されるものではない。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの(メタ)アクリル酸エステル重合体、(メタ)アクリル酸重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのビニルモノマー重合体または共重合体;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1などのポリα−オレフィン;プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体などのα−オレフィン同士もしくはα−オレフィンと他のモノマーとの共重合体;ナイロン6、ナイロン4,6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリフェニレンオキシドなどの芳香族ポリエーテル;ポリカーボネート;ポリイミド;ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのスルホン系ポリマーなどから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。中でも耐衝撃性、耐クリープ性、温熱安定性、易成形性などの物性に優れることから、ABS樹脂を用いるのが好ましい。
【0015】
本発明の成分(a)と成分(b)の好ましい組み合わせとしては、例えば、ポリエーテルエステルアミド、ポリエステルエラストマー、脂肪族ポリエステル、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマーより選ばれた1種類以上と、ABS樹脂との組み合わせが挙げられる。
【0016】
樹脂混合物において、(a)成分と(b)成分との混合割合は特に制限されるものではないが、(a)成分:(b)成分=3〜25:75〜97(重量比)であるのが好ましい。
【0017】
本発明の樹脂層に含有される金属塩としては、カチオン成分として金属(好ましくは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属)を用いたものが好ましい。かかるカチオン成分としては、たとえば、Li、Na、K、Mg、Caなどが挙げられる。カチオンとしては、導電性が得られ易いことから、イオン半径の小さいLi+、Na+、K+が好ましい。
また本発明における金属塩は、上記アルカリ金属またはアルカリ土類金属であるカチオンおよびイオン解離可能なアニオンとによって構成されるのが好ましい。上記アニオン成分としては、たとえば、Cl−、Br−、F−、I−、NO3 −、SCN−、ClO4 −、CF3SO3 −、BF4 −、(CF3SO2)2N−、(CF3SO2)3C−などが挙げられ、中でもClO4 −、CF3SO3 −、BF4 −、(CF3SO2)2N−、(CF3SO2)3C−が好ましい。
上記カチオン成分およびアニオン成分によって構成される金属塩としては、具体的には、LiClO4、NaClO4、Mg(ClO4)2、KClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、NaN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、NaC(CF3SO2)3が挙げられ、中でも体積抵抗率を制御し易い点から、LiClO4、LiCF3SO3、LiC(CF3SO2)3が好ましい。なお本発明においては、上述した中から選ばれる2種以上の金属塩を用いてよい。
【0018】
上記金属塩の配合量に制限はなく、用いる熱可塑性樹脂、カーボンブラックの種類や上記カチオン成分およびアニオン成分の組み合わせによって適宜選択すればよいが、熱可塑性樹脂100重量部に対し0.01重量部〜20重量部であるのが好ましく、5重量部〜10重量部であるのがより好ましい。金属塩が熱可塑性樹脂100重量部に対し0.01重量部未満であると、導電性の効果が得られにくくなる傾向にあり、また熱可塑性樹脂100重量部に対し20重量部を超えても、飽和状態となって導電性の効果が得られにくくなる傾向にあるためである。
【0019】
本発明に使用されるカーボンブラックとしては、一般に使用されるものであれば特には限定はない。カーボンブラックの例としては、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラックなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、単独又は2種以上組み合わせて用いられる。上記中でも、比較的少量の配合量(熱可塑性樹脂100重量部に対して、5重量部〜15重量部)であっても1×108Ω・cm未満の上記体積抵抗率を達成できることからアセチレンブラックが好ましい。少量の配合の場合、成形が良好に行われる。
【0020】
上記カーボンブラックの配合量に制限はなく、用いる熱可塑性樹脂、金属塩、カーボンブラックの組み合わせによって適宜選択すればよいが、熱可塑性樹脂100重量部に対し5重量部〜40重量部であるのが好ましく、15重量部〜20重量部であるのがより好ましい。カーボンブラックの配合量が熱可塑性樹脂100重量部に対し5重量部未満であると、体積抵抗率が充分に低下しない虞がある。また、カーボンブラックの配合量が熱可塑性樹脂100重量部に対し40重量部を超えると、環境特性が悪化したり、成形性が低下し、歩留りや生産効率が低下する傾向がある。
【0021】
本発明の帯電ローラにおいては、上述したような熱可塑性樹脂、金属塩およびカーボンブラックを少なくとも含有する組成物を、導電性芯材の外周を覆う円筒状の樹脂層として成形する。ここで、「導電性芯材の外周を覆う」とは、樹脂層が導電性芯材の外周面に隣接してこれを被覆するように形成されていてもよく、導電性芯材との間に他の層を介在したかたちで導電性芯材を覆うように形成されていてもよいことを指すが、製造工程を簡略化できることから、導電性芯材に隣接してこれを覆う単層の樹脂層として形成されるのが好ましい。なお、上記「円筒状」は、その軸線方向におけるいずれの断面もが略合同な円形である中空の形状をいう。
【0022】
本発明の帯電ローラに使用される導電性芯材の形成材料としては、当分野において金属芯材として従来から使用されている鉄、鉄合金、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などを特に制限なく用いることができる。中でも、強度、コスト、加工性の観点から、鉄または鉄合金(具体的には、炭素鋼、ステンレス鋼)製の導電性芯材を使用するのが好ましい。
【0023】
本発明の帯電ローラの製造方法に特に制限はなく、当分野において従来公知の手法にて製造することができる。たとえば、熱可塑性樹脂と、金属塩と、カーボンブラックとを少なくとも含有する組成物を、バンバリミキサ、ロール混練機などの公知の混練機を用いて混練した後、公知の射出成形機にて導電性芯材の外周を覆う樹脂層として射出成形することで、製造することができる。なお上述のように導電性芯材の外周に隣接して単層の樹脂層を形成することで、製造工程を最小限で実施することができ、製造コストも低く抑えることができるという利点もある。
【0024】
本発明における金属塩の良好な分散性を実現し得る観点からは、予め、熱可塑性樹脂と上記金属塩と上記カーボンブラックとからなるマスターバッチを作製しておき、該マスターバッチを熱可塑性樹脂と混合させると、金属塩の分散性が向上するため、好ましい。
また、射出成形の条件に特に制限はないが、通常、200℃〜250℃の成形温度、50mm/秒〜150mm/秒の射出速度の各範囲内で成形を行う。
【0025】
また本発明における樹脂層は、−{O(AO)n}−基(Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜7の整数を示す)を有し、かつ分子鎖末端がCH3基および/またはCH2基である有機化合物(特に好適には、上記−{O(AO)n}−基を有し、かつ全ての分子鎖末端がCH3基である有機化合物)を、さらに含有しているのが好ましい。
具体的には、以下の一般式(1)〜(3)で表される少なくともいずれかの有機化合物が好適である。
【0026】
【化1】
【0027】
【化2】
【0028】
【化3】
【0029】
[上記一般式(1)〜(3)中、R1は、炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基、および、炭素数2〜9の直鎖または分岐のアシル基のうちいずれか一種を示し、同一でも異なっていてもよい。Aは同一または異なる炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは同一または異なる1〜7の整数である。また、Xは炭素数2〜10からなる、アルキレン基、芳香族基を含む炭化水素基、または脂環式炭化水素基、Yは炭素数6〜10からなる、芳香族基を含む炭化水素基である。]
中でも特に、トリエチレングリコールジアセチルまたはアジピン酸ジブトキシエトキシエチルが好適である。
【0030】
また上記有機化合物の配合量についても特に制限はないが、熱可塑性樹脂100重量部に対し0.03重量部〜15重量部であるのが好ましく、0.5重量部〜10重量部であるのがより好ましい。上記有機化合物が熱可塑性樹脂100重量部に対し0.03重量部未満であると、金属塩のブリードアウト抑制の効果が低減する傾向にあるためであり、また上記有機化合物が熱可塑性樹脂100重量部に対し15重量部を超えても、上記ブリードアウト抑制の効果が低減する傾向にあるためである。
【0031】
また、本発明の帯電ローラを形成するための組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で無機充填剤、酸化防止剤、相溶化剤などの適宜の添加剤が配合されていてもよい。
【0032】
本発明の帯電ローラは、その長さ、ロール径(外径)、シャフト径(内径)などに特に制限はなく、適用する複写機などに応じて適宜選択すればよい。
【0033】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
実施例1
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部、LiClO45重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル3重量部、アセチレンブラック5重量部を混合した組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0034】
実施例2
アセチレンブラックの配合量を15重量部とした以外は実施例1と同様にして、帯電ローラのサンプルを作製した。
【0035】
実施例3
アセチレンブラックの配合量を20重量部とした以外は実施例1と同様にして、帯電ローラのサンプルを作製した。
【0036】
実施例4
アセチレンブラックの配合量を40重量部とした以外は実施例1と同様にして、帯電ローラのサンプルを作製した。
【0037】
実施例5
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部、LiCF3SO37重量部、トリエチレングリコールジアセチル5重量部、ケッチェンブラック15重量部を混合した組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0038】
実施例6
ポリエチレン85重量部、PEEA樹脂15重量部、LiCF3SO37重量部、トリエチレングリコールジアセチル5重量部、アセチレンブラック20重量部を混合した組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0039】
実施例7
ABS樹脂95重量部、PEEA樹脂5重量部、LiClO45重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル3重量部、アセチレンブラック20重量部を混合した組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0040】
実施例8
ABS樹脂の配合量を78重量部、PEEA樹脂の配合量を22重量部とした以外は実施例1と同様にして、帯電ローラのサンプルを作製した。
【0041】
実施例9
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部、LiClO43重量部、LiCF3SO32重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル3重量部、アセチレンブラック20重量部を混合した組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0042】
実施例10
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部、LiClO45重量部、アセチレンブラック15重量部、ケッチェンブラック5重量部を混合した組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0043】
実施例11
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部、LiClO43重量部、LiCF3SO32重量部、トリエチレングリコールジアセチル1重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル3重量部、アセチレンブラック20重量部を混合した組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0044】
比較例1
ABS樹脂100重量部のみからなる組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0045】
比較例2
ABS樹脂100重量部、LiClO415重量部のみからなる組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0046】
比較例3
ABS樹脂100重量部、LiClO45重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル3重量部のみからなる組成物を、バンバリミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm)、長さ350mmの帯電ローラのサンプルを作製した。
【0047】
〔評価試験〕
上記で作製した実施例1〜11、比較例1〜3のサンプルについて、下記の手順にて測定した(1)〜(4)全ての基準を満足するものを合格とし、いずれか1つでも満足しないものを不合格と総合判定した。
(1)体積抵抗率
各サンプルに金属箔を巻きつけ、金属芯から100Vの直流電圧を印加し、直列に接続した電流計の値の読みから計算して抵抗値を求め、金属箔の面積、ローラ被覆厚から体積抵抗率を換算した。1.0×108Ω・cm未満であったものを合格とした。
(2)ブリードアウト
各ローラサンプルを、40℃×90%RH雰囲気中に7日間放置し、目視によりローラ表面のブリードアウトの有無を判定した。
(3)耐環境性
LL(低温低湿=10℃×15%RH)およびHH(高温高湿=50℃×80%RH)雰囲気でのローラの体積抵抗率(Ω・cm)を測定(方法は上記と同じ)する。LL/HHを求め、その値が0.033〜30のものを合格とした。
結果を、表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、良好な帯電性を有し、かつ環境依存性およびブルームが低減された帯電ローラを提供することができる。
Claims (7)
- 導電性芯材および該導電性芯材の外周を覆う円筒状の樹脂層を備えるローラであって、
前記樹脂層が熱可塑性樹脂と、金属塩と、カーボンブラックとを含有するものであることを特徴とする帯電ローラ。 - カーボンブラックの配合量が熱可塑性樹脂100重量部に対して5重量部〜40重量部である請求項1に記載の帯電ローラ。
- 熱可塑性樹脂が、極性基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂混合物である、請求項1または2に記載の帯電ローラ。
- 金属塩が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であるカチオンおよびイオン解離可能なアニオンとによって構成される請求項1〜3のいずれかに記載の帯電ローラ。
- さらに、−[O(AO)n]−基(Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜7の整数を示す)を有し、かつ分子鎖末端がCH3基および/またはCH2基である有機化合物を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の帯電ローラ。
- 体積抵抗率が1×108Ω・cm未満である、請求項1〜5のいずれかに記載の帯電ローラ。
- 近接帯電方式で帯電させる工程に使用されるものである、請求項1〜6のいずれかに記載の帯電ローラ。
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JP (1) | JP2005017767A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007193110A (ja) * | 2006-01-19 | 2007-08-02 | Ricoh Co Ltd | 導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置 |
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2003
- 2003-06-26 JP JP2003183307A patent/JP2005017767A/ja active Pending
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