JP2005017233A - 生化学反応体の検出方法とバイオチップ - Google Patents

生化学反応体の検出方法とバイオチップ Download PDF

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忠顕 藪林
Hiroaki Misawa
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Abstract

【課題】検出工程を再現性よく簡素化でき、測定者に過度の技量を要求することがなく、ハイブリダイゼーション並びに標識の修飾工程におけるそれぞれの施術並びに効率の精度を高め、最終的に目的検体の検出精度の向上が可能となる生化学反応体の検出方法。
【解決手段】DNAチップの表面にプローブを固定した後、疎水性の表面処理剤にて表面処理して、チップ基板表面を疎水性とすることで、ハイブリダイゼーシヨンを行なう際に目的検体とプローブが反応し易くなり、またハイブリダイゼーシヨンの前後にかかわらず、プローブへの標識の修飾確率が向上し、いずれの検出方法でもその検出感度が著しく向上する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、バイオチップを用いた生化学検体の検出方法の改良に係り、バイオチップのプローブ核酸が配列された基板に、表面処理剤を用いた表面処理によって疎水性又は電荷あるいはその両方を付与することで、プローブ核酸と生化学検体とのハイブリダイゼーションや標識の修飾の工程における処理自体の確実性が大きく向上し、目的の生化学検体の検出が容易に高感度、高精度化できる生化学反応体の検出方法とバイオチップに関する。
【0002】
【従来の技術】
バイオチップによる遺伝子検出の基本原理は、DNAが相補的な二重螺旋構造を形成することを利用するものである。A(アデニン)とT(チミン)、C(シトシン)とG(グアニン)が対をなすことから、例えば、AGGTTAC(5’→3’)のDNA配列を持つ遺伝子を検出するには、プローブとしてTCCAATG(3’→5’)の配列を持つDNAを作成し、サンプリング検体遺伝子中に目的遺伝子が存在すると、DNAハイブリダイゼーションによって、プローブDNAの配列にAGGTTACの配列が結合して二重螺旋構造を取るため、これを検出することで目的DNAを容易に選別できることになる。
【0003】
二重螺旋構造のDNAを検出する方法として、検体DNA(サンプリング遺伝子DNA)に蛍光標識の修飾を施しておき、プローブDNAと前記のDNAハイブリダイゼーション操作を行い、二重螺旋構造を呈したDNA、すなわち蛍光シグナルを発するものを検出する、蛍光法が知られている。
【0004】
蛍光標識としては、蛍光色素そのものの他、蛍光色素により直接染色された染色体、糖蛋白や糖脂質から切り出された糖鎖体に修飾したイオン性蛍光物質、あるいはタンパク質、核酸、酵素、細胞等を蛍光色素でタグ化するなど、種々方法並びに物質で蛍光を発する標識が提案されている。
【0005】
蛍光標識を用いるDNAマクロアレイなどにおいて、蛍光検出におけるバックグラウンドノイズを低減し、検出感度と再現性を向上させるため、蛍光色素のクエンチング特性(蛍光分子が他の分子(消光剤)と衝突すると励起エネルギーが散逸して蛍光が消光する)を利用して、非特異吸着した蛍光色素誘導体のバックグラウンドノイズを軽減する方法が提案(特開2003−84002)されている。
【0006】
また、プローブDNAの配列された基板表面に近接して光学的に各種標識を検出・識別する方法として、上記の蛍光検知法のほか、光散乱法、SPR分光法、化学発色法、顕微鏡法、イメージング処理法などが提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−84002
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述のDNAを初めとして検出対象となる生化学検体には、RNA及び核酸類似構造物などの多種多様の構造物が想定される。これらの生化学検体を効率よく検出するには、プローブとして機能する所要の塩基配列を有するDNAやRNA構造体、PNA構造体を所要のガラス基板などの基板上に配列してチップ化し、かかるバイオチップを基本単位として生化学検体とのハイブリダイゼーション操作を施し、当該ハイブリダイゼーションを完了した目的のプローブと生化学検体との複合体(生化学反応体)を確実に検出する必要がある。
【0009】
検体側に蛍光標識を施す蛍光法を用い、前記バイオチップにハイブリダイゼーションを行いハイブリダイズしたDNAを検出する方法では、蛍光標識の修飾操作が煩雑であること、また、施術者の技量によって前記ハイブリダイゼーション並びに標識の修飾効率が異なること、さらに種々条件で蛍光色素の光消失が発生すること、未反応吸着物によるバックグラウンドノイズの上昇で検出精度が低下すること等の問題が指摘されている。
【0010】
この発明は、前記バイオチップを用いた生化学検体の検出方法の問題に鑑み、検出工程を再現性よく簡素化でき、測定者に過度の技量を要求することがなく、ハイブリダイゼーション並びに標識の修飾工程におけるそれぞれの施術並びに効率の精度を高め、最終的に目的検体の検出精度の向上が可能となる生化学反応体の検出方法とバイオチップの提供を目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、目的の生化学検体の検出において、容易に高感度、高精度化を実現できる生化学反応体の検出方法とバイオチップを目的に、プローブ核酸と生化学検体とのハイブリダイゼーションや標識の修飾の工程における前記処理自体を確実に実施し得る条件や方法について種々検討したところ、DNAチップ上のプローブは、2次元的に配置されているのではなく、3次元的に配置されており、この3次元構造がDNAチップの検出感度に大きな影響を及ぼすものと考えた。
【0012】
発明者らは、DNAチップの表面にプローブを固定すると、短いプローブの場合は起きている状態であるが、長いプローブの場合は、基板に沿つて寝たような形になると推測し、基板に表面処理を施すことにより、DNAプローブが基板上に対して寝ないようにすることに着目した。
【0013】
そこで、発明者らは、DNAチップの表面にプローブを固定した後、疎水性の表面処理剤にて表面処理して、チップ基板表面を疎水性としたところ、ハイブリダイゼーシヨンを行なう際、目的検体とプローブが反応し易くなり、いずれの種の検出方法でもその検出感度が著しく向上することを知見した。
【0014】
さらに、発明者らは、前記表面処理によって、ハイブリダイゼーシヨンの前後にかかわらず、プローブへの標識の修飾確率が向上して、これも検出感度が向上すること、また、プローブと基板の間に間隔を設けるために脚部、スペーサーを導入する場合も前記の表面処理が有効に機能して前記と同様の作用効果が得られることを知見し、この発明を完成した。
【0015】
すなわち、この発明は、基板又はその類似物表面にプローブ核酸を有するバイオチップを用いて生化学反応体を検出する方法において、プローブ核酸が配置される表面に表面処理剤を用いた表面処理によって疎水性(撥水性)又は電荷あるいはその両方を付与したバイオチップを用い、該チップのプローブ核酸に生化学検体をハイブリダイゼーションする工程か、あるいは前記ハイブリダイゼーションする工程とその後プローブ核酸又は生化学検体あるいはその両方に標識を修飾する工程を施すことを特徴とする生化学反応体の検出方法である。
【0016】
また、この発明は、基板又はその類似物表面にプローブ核酸を有するバイオチップを用いて生化学反応体を検出する方法において、プローブ核酸が配置される表面に表面処理剤を用いた表面処理によって疎水性又は電荷あるいはその両方を付与したバイオチップを用い、該チップのプローブ核酸に標識を修飾する工程を有し、さらに該プローブ核酸に生化学検体をハイブリダイゼーションする工程か、あるいは前記ハイブリダイゼーションする工程とその後プローブ核酸又は生化学検体あるいはその両方に別の標識を修飾する工程を施すことを特徴とする生化学反応体の検出方法である。
【0017】
さらに、発明者らは、上記構成の発明において、
プローブ核酸がスペーサーを介して基板又はその類似物表面に配置される構成、
表面処理剤を用いた表面処理が、バイオチップを表面処理剤溶液に浸漬する構成、
表面処理剤を用いた表面処理が、表面処理剤溶液をバイオチップ表面に滴下又は噴霧した後に飽和水蒸気雰囲気で保持する構成、
表面処理剤が、直鎖アルキル化合物誘導体または芳香族化合物誘導体である構成、
表面処理剤が、ET(Ethanethiol)、HT(Hexanetiol)、ODT(n−Octadecanethiol)、MH(Mercaptohaxanol)、TT(α−Toluenthiol)のいずれかの溶液である構成、の各生化学反応体の検出方法を併せて提案する。
【0018】
【発明の実施の形態】
この発明の表面処理による生化学反応体の検出において、検出感度の増強効果が得られる機構の概念は、図1に示すとおりである。バイオチップの表面にプローブを固定することを想定すると、30mer以下の短いプローブでは図1Bの表面処理済の例と同様に立っている(起きている)状態であるが、例えば50〜60mer以上の長いプローブの場合は、図1Aに示すようにチップの表面に沿って寝たような形になると推測される。
【0019】
バイオチップの表面にプローブを固定した後、図1Bに示すように疎水性の表面処理剤を用いて表面処理することにより、チップ表面に疎水性を付与すると、該表面とプローブとの分子間力により当該プローブが起きた状態になるものと考えられる。その結果、ハイブリダイゼーションを行なう際、サンプリング検体遺伝子中に目的遺伝子(Target)が存在すると、ターゲットとプローブが反応し易くなり、目的検体の検出感度がよくなるものと考えられる。従って、より低濃度のサンプリング検体とのハイブリダイゼーションでも検出強度が増大し、高感度な検出が可能になる。
【0020】
また、実施例に示すSPR分光法を採用する場合、ハイブリダイゼーション前に金コロイド修飾をする際は、表面処理によりプローブが起きているため、同様に金コロイドとプローブの金コロイド修飾部位との反応が起こり易くなり、金コロイド修飾量の増大により、高感度な検出が可能となると考えられる。従って、前記ハイブリダイゼーションと修飾量の各増大効果に加えてこれらの相乗効果によって、より高感度、高精度の検出が可能となる。
【0021】
さらに、前記バイオチップの構成で、プローブとチップ表面の間に脚部(スペーサー)を導入することにより、プローブ部分がより一層目的遺伝子と反応し易くなるものと想定したバイオチップの構成の場合、これに前記表面処理を施すと、図1Bに示す作用効果が同様に発揮され、スペーサーを配置したことが極めて効果的に作用して高感度、高精度の検出に著しい向上が得られる。なお、脚部、スペーサーは、生化学検体と相補的に結合する主要部位とは無縁であり、適宜の長さとすることから、必ずしも塩基等の配列である必要はなく、公知の核酸類似構造物としたり、前記の基板との隙間を設けるために他の分子と置換したり、種々構成を採用できる。
【0022】
この発明による生化学反応体の検出方法は、バイオチップのプローブ核酸が配置される表面に表面処理剤を用いた表面処理を行った後、該チップのプローブ核酸に生化学検体をハイブリダイゼーションする工程を実施することで上述の検出感度の増強効果が得られる。また、前記ハイブリダイゼーションする工程と、その後にプローブ核酸又は生化学検体あるいはその両方に標識を修飾する工程を施すことにより、上述の検出感度の増強効果が得られる。
【0023】
また、この発明による生化学反応体の検出方法は、同様に表面処理を行った後、該チップのプローブ核酸に標識を修飾する工程を実施し、さらに該プローブ核酸に生化学検体をハイブリダイゼーションする工程を実施することで上述の検出感度の増強効果が得られる。また、前記ハイブリダイゼーションする工程と、その後にプローブ核酸又は生化学検体あるいはその両方に別の標識を修飾する工程を施すことにより、上述の検出感度の増強効果が得られる。
【0024】
発明者らは、表面処理剤としては、実施例には、エタンチオール(Ethanethiol)、ヘキサンチオール(Hexanetiol)、メルカプトヘキサノール(Mercaptohaxanol)、ベンジルメルカプタン(Benzyl Mercaptan)、オクトデカンチオール(Octadecanethiol)の5種類を示すが、ET、HT、ODTのように同様基で炭素鎖長の異なるもの、水酸基が導入された構成など、溶液としてバイオチップの基板表面に疎水性(撥水性)又は電荷あるいはその両方を付与できるものであれば、これらに限定されることなく、直鎖アルキル化合物誘導体または芳香族化合物誘導体に属する材料より、適宜選択、利用可能であることを確認した。
【0025】
詳述すると表面処理剤は、後述の実施例で明らかにするように検出感度の増強に、炭素鎖が増えるほど増強効果があり、また、OH基により効果が増強される傾向にある。例えば、他の表面処理剤には、ブタンチオール(1−Butanetthiol)、デカンチオール(1−Decanethiol)、1−10 Decanedithiol、ニトロベンゼンチオール(Nitrobenzenethiol)、アミノエタンチオール(Aminoethanethiol)、メルカプトプロピオン酸(Mercaptopropionic acid)、メトキシベンゼンチオール(Methoxybenzenethiol)、アミノチオフェノール(Aminothiophenol)などがある。
【0026】
この発明において、生化学検体はDNAとRNA及び核酸類似構造物をいい、核酸類似構造物は、文字どおりの核酸に類似した構造物であり、例えば核酸のリボースあるいはリン酸ジエステル部位を修飾した分子やリボース−リン酸骨格をアミド結合に置き換えたペプチド核酸(PNA)等がある。
【0027】
この発明において、プローブ核酸は、DNAとRNA及び核酸類似構造物をいい、例えば、核酸類似構造物としては、上記と同様である。塩基数は特に限定しないが、比較的長鎖の構成を有するものが望ましく、例えば本来的に標識が修飾し難い塩基数が50あるいは60以上のものが検出精度の向上や検出時のノイズの低減に望ましく、さらに塩基数が100を超えたり、1000程度の場合であってもこの発明を適用できる。
【0028】
この発明において、プローブ核酸の構成は、公知のいずれの形態であっても採用できる。また、検出精度を高めるためにプローブに立体的な構造を与え、あえてハイブリダイズし難くするループ構造を取らせることが可能で、プローブDNAやRNAにループ構造を与えるには、その製造過程中又は製造後にループ構造を形成していて基板に配列されるか、基板に配列する際にループ構造を形成するか、基板に配列後にループ構造を形成するように構成するか、いずれの構成、形成方法も採用できる。
【0029】
この発明において、バイオチップを形成するための基板又はその類似物には、純然たる板の基板の他、エッチングなどで溝や凹部などを形成して所要の凹部又は凸部を使用する基板構成や、基板などにピン等の突起物を形成した構成、棒や立方体などの表面等を利用する形態、構成など、それらの表面の所要箇所に電極を形成でき、プローブの配列やハイブリダイゼーションが可能であれば、採用する標識などの検出・識別方法等に応じて、種々の形態を採用することが可能である。
【0030】
この発明において、基板としては、ガラス基板、樹脂基板、シリコン基板等の硬質材料の他、メンブラン(例えばニトロセルロースなど)等の材料も採用可能で、また積層基板などプローブ核酸の配列が実施可能な基板であればいずれの材質、構成の基板も採用できる。また、基板に電極など種々の薄膜を成膜する場合は、その表面粗度はできるだけ平坦なものが好ましい。
【0031】
バイオチップの基板等の電極や表面にプローブ核酸を配列する工程は、特に限定されるものでなく、公知のいずれの方法も採用でき、例えば電極膜上を酸や純水で洗浄後、プローブ核酸と緩衝液を用いて飽和水蒸気雰囲気中で配列させることができる。
【0032】
緩衝液としては、例えばKHPOとKHPOを配合して所要pHにした溶液が採用できる。他には、PBSや、NaClとTris−HCl、NaClとTris−HClとEDTAを用いるなど、所要pHにするため公知の薬液を選定配合した溶液等も採用できる。
【0033】
バイオチップのプローブ核酸が配置される表面に、表面処理剤を用いた表面処理によって疎水性又は電荷あるいはその両方を付与するが、処理方法としては、バイオチップの構成や形態に応じて種々の方法が適宜採用でき、例えば、バイオチップを表面処理剤溶液に浸漬したり、該溶液をバイオチップ表面に滴下又は噴霧した後に飽和水蒸気雰囲気で保持する等の手段が採用できる。
【0034】
また、表面処理剤は、上述のように浸漬、滴下、噴霧方法などで利用するために溶液として利用され、溶媒としては、水、エタノールなどがあり、濃度としては、特に限定しないが、50μM〜1mMが望ましい。
【0035】
この発明において、プローブ核酸に生化学検体をハイブリダイゼーションする工程は、特に限定されるものでなく、公知のいずれの方法も採用でき、例えば基板の洗浄後に生化学検体と緩衝溶液を用いてハイブリダイゼーションさせることができる。前記の緩衝溶液としては、例えばNaClとTris−HClとEDTAを配合して所要pHに保持した溶液が採用できる。
【0036】
ハイブリダイゼーションの実行中又は実行後に2本鎖を形成したプローブ核酸又は生化学検体あるいはその両方に標識を修飾する工程は、文字どおり2本鎖を形成したところのプローブ核酸か生化学検体、あるいはそれぞれに所要の標識を修飾するもので、2本鎖を形成して複合体となっている両者の結合部に選択的に入り込むようなインターカレーターを採用したり、前記標識と共に用いたりすることも可能である。
【0037】
この発明において、前記標識には、Siを含む金属粒子、磁性体粒子、セラミックス粒子、蛍光標識、蛍光色素、色素、化学発色体、半導体あるいは生化学検体の検出に利用されている染色体、糖鎖体、タンパク質、核酸、酵素、細胞など、プローブ核酸又は生化学検体に修飾できるもの、さらに前記の各種標識で再修飾できればいずれのものも利用できる。
【0038】
この発明において、上述の各種標識をプローブ核酸に修飾する方法としては、例えば金属微粒子等の粒子自体の性質を利用したり、公知の蛍光標識を修飾する方法などのように抗原−抗体反応を利用して修飾するなど、公知のいずれの方法も採用できる。また、中性のコロイダル液のごとく、微粒子を均一分散させた溶液の形態を利用することで修飾が容易になる。
【0039】
また、プローブ核酸の末端にビオチンを修飾しておき、ストレプトアビジンをコートした金属やセラミックス等の微粒子をビオチン−アビジンの高い結合能力を利用して標識となすことができる。さらに、プローブ核酸の末端にIgGや抗プロテイン物質を付加することで、タンパクをコートした前記微粒子等を抗原−抗体反応を利用して修飾することが可能である。
【0040】
さらに、生化学検体に前記各種の標識を修飾することも可能であり、修飾方法は、当該検体の所要箇所を適宜標識化できればよく、上述の公知のいずれの方法も採用でき、特に末端を修飾するには上述の方法などいずれの方法も採用できる。もちろん、生化学検体に標識を修飾しない場合もある。
【0041】
生化学反応体の検出方法としては、ハイブリダイゼーション後に2本鎖を形成したプローブ核酸と生化学検体との複合体で、プローブ核酸又は生化学検体あるいはその両方に予めあるいはハイブリダイゼーション後に修飾された標識を有した該複合体を検出するが、公知の電気的、磁気的、光学的手法のいずれもを採用できる。例えば、光学的な方法には、光散乱法、SPR分光法、化学発色法、蛍光検知法、顕微鏡法、イメージング処理法などがある。
【0042】
光散乱法は、金属粒子やセラミックス微粒子標識において、微粒子が反射する光で特定波長光を発したり、レーザー光による散乱光の検知を可能にするもので、一般的な構成例を説明すると、例えばこの発明による金薄膜を設けた検出チップ基板をプリズム上に載置し、He−Neレーザー光をプリズムの一方側より基板裏面に入射してプリズムの他方側へこれを全反射させるように条件設定することで、検出チップ基板を上面から観察するCCDカメラ側に散乱光を検出することができる。
【0043】
SPR分光法は、貴金属薄膜表面における屈折率変化を検出するもので、例えばガラス基板上に金電極を形成し、金薄膜電極上にプローブ核酸を固定化し、プローブ核酸が検体中の目的RNAなどの核酸類とのハイブリダイゼーションにより二本鎖を形成すると、金薄膜電極上の屈折率が変化するためにSPR角(反射率が最小となる入射角度)がシフトするが、SPR角のシフトはハイブリダイゼーションした目的検体の量と対応するために、SPR測定によって目的検体の定量的な解析が可能となる。
【0044】
化学発色法は、免疫組織染色方法が応用できる。これは予め4つの結合部位をもつアビジンと複数箇所でビオチン化されたペルオキシダーゼ(HRP)を適当な割合で混合し、多数のHRPを含み一部にアビジンのビオチン結合部位を残す複合体(ABC)を形成させて、この複合体(ABC)と予め組織中の標的抗原と結合したビオチン化抗体とを反応させて標的抗原を検出するもので、例えばプローブにビオチンで修飾した箇所を用意することで容易に適用できる。また、APR法など公知の免疫組織染色方法も応用できる。
【0045】
蛍光検知法は、種々の蛍光色素自体をプローブ核酸又は標識の所要部位に着設したり、又は蛍光色素によりタグ化された染色体、糖鎖体、タンパク質、核酸、酵素、細胞、微粒子等を標識自体の性質を利用したり前述のごとく抗原−抗体反応を利用してプローブ核酸、生化学検体に修飾させたものを検出するが、顕微鏡とCCDカメラを組み合せた蛍光イメージング検出システム、共焦点顕微鏡システム等、また種々の光学装置やイメージング装置を併用した検出方法が提案されており、前記蛍光標識の種類やその蛍光自体の性状等、条件に応じて公知の検出方法や装置を適宜選定するとよい。また、蛍光でない色素も同様に検知できる。
【0046】
顕微鏡観察法は、公知の蛍光や散乱光などの検出システムとして、顕微鏡とCCDカメラを組み合せたイメージング検出システム、共焦点顕微鏡システム、金属顕微鏡等、また種々の光学装置やイメージング装置を併用した検出方法が提案されているが、これらをそのまま利用することが可能である。
【0047】
イメージング処理法は、カメラ又は顕微鏡にてスキャニングした画像をディスプレイで目視で確認できるように拡大、鮮鋭化、着色化等、各種の公知の画像処理を施したり、あるいはコントラストや特定形状、寸法の粒子をソフトウェアー的に検出するために公知の画像処理を施すなどの方法である。
【0048】
【実施例】
実施例1
バイオチップを作製するための基板にガラス基板を用い、これをアセトン、メタノール、超純水中で超音波洗浄した後、10%フッ酸で表面のエッチングを行ない、さらに、アセトン、メタノール、超純水中で超音波洗浄した後、窒素ガスで乾燥させた。その後、所要パターンでレジスト層を設けた後スパッタ装置(ULVAC)を用いガラス基板にまず約1nm厚みのCr層を設け、次いで約50nm厚みのAu層を設けた。
【0049】
前記ガラス基板を濃硫酸中に1時間程度浸漬した後、超純水で洗浄した。その後、プローブDNAの3’端側をSH(チオール)基で、5’端側をビオチン基で修飾したプローブDNA(Probe04、5μM溶液、日清紡製)を用いたプローブDNA−D−BFR溶液(KHPO、KHPO、pH 7.0)を前記基板上に滴下し、飽和水蒸気中で約15時間放置し、プローブDNAをガラス基板のAu膜に付着させてバイオチップとなした。
【0050】
プローブDNAを固定したバイオチップを、R−BFR(10mM NaCl、5mM Tris−HCl、pH 7.4)で洗浄後、穏やかに乾燥した後、ET(50μM)を約5μl滴下し、飽和水蒸気中で約15時間放置して、ETによる表面処理を施した。
【0051】
ハイブリダイゼーションは、R−BFR溶液とH−BFR溶液(1M NaCl、10mM Tris−HCl、1mM EDTA、pH 7.4)で洗浄後に、所要濃度(10μM溶液)からなる検体DNAのH−BFR溶液を最終濃度が約10μMとなるように滴下し、約3時間放置して実施した。
【0052】
ハイブリダイゼーションを完了したチップを、R−BFRで洗浄後、窒素ガスでおだやかに乾燥させて、金コロイド(BBIneternational製)を滴下し、1〜3時間飽和水蒸気中で放置して、金コロイド修飾を行った。
【0053】
次に、検出チップを、R−BFR溶液、超純水の順に洗浄した後、窒素ガスで乾燥して速やかにSPR測定を行なった。
【0054】
以上の▲1▼ガラス基板への金薄膜の形成、▲2▼プローブの固定、▲3▼表面処理、▲4▼ハイブリダイゼーション、▲5▼金コロイド修飾、▲6▼SPR測定の工程を行うが、まず、表面処理剤がSPR強度に及ぼす影響を調べるために、目的検体がなく(▲4▼工程でH−BFR溶液の滴下のみ)でかつ金コロイド修飾を行わず、表面処理しない場合の比較例1(▲1▼▲2▼▲6▼)、表面処理した場合の実施例A(▲1▼▲2▼▲3▼▲6▼)を実施した。
【0055】
次に、表面処理の有無によるSPR強度の増強効果を調べるために、目的検体があり、表面処理しないでハイブリダイゼーションし金コロイド修飾しない場合の比較例2(▲1▼▲2▼▲4▼▲6▼)、さらに金コロイド修飾した場合の比較例3(▲1▼▲2▼▲4▼▲5▼▲6▼)を実施した。また、表面処理を行った処理例で、金コロイド修飾しない場合の実施例B(▲1▼▲2▼▲3▼▲4▼▲6▼)、さらに金コロイド修飾した場合の実施例C(▲1▼▲2▼▲3▼▲4▼▲5▼▲6▼)を実施した。
【0056】
目的検体のない場合、表面処理を行ってもSPR強度は増加しなかった(実施例Aと比較例1の対比)。しかしながら、目的検体がある場合、表面処理により、SPR強度は比較例2(表面処理無)が120〜128a.u.で、実施例B(表面処理有)が190〜208a.u.と著しく増加した。
【0057】
また、目的検体の存在特、金コロイド修飾しない場合、表面処理により1.6倍以上のSPR強度の増強が得られた(非処理の比較例2と表面処理を行う実施例Bの対比)。また、金コロイド修飾する場合、表面処理により1.8倍以上のSPR強度の増強が得られた(非処理の比較例3と表面処理を行う実施例Cの対比)。
【0058】
この発明による表面処理により、目的検体がある場合、SPR強度の増強が見られることが分かる。また、この増強は単にプローブに表面処理しただけでは、SPR強度の増強が見られず、金コロイドの修飾の有無に依らず、SPR強度の増強が見られ、金コロイド修飾した場合の増幅率の方が大きいことから、この発明による表面処理によるSPR強度の増強は、ハイブリダイゼーション効率の上昇とともに金コロイド修飾量の増大があったことによると推測できる。
【0059】
実施例2
表面処理剤の種類による検出強度の変化を比較するため、下記の5種類の表面処理剤を選択し、それぞれ実施例1の実施例Cと同様の工程で処理し、SPR測定を実施した。Ethanethiol(ET n=2)、Hexanetiol(HT n=6)、Mercaptohaxanol(MH n=6)、Benzyl Mercaptan(α−Toluenthiol:TT)、n−Octadecanethiol(n=18:ODT)。以上の実施例D1〜5(▲1▼▲2▼▲3▼▲4▼▲5▼▲6▼)。
【0060】
表面処理を行わない実施例1の比較例3と同様工程の比較例4のSPR強度を1とした場合、TTが1.770、ETが2.108、HTが2.266、MHが2.665、ODTが5.306の強度比が得られた。
【0061】
従って、直鎖(炭素鎖数)が大きくなるほど、表面処理剤の効果が大きくなることが示された。これは、炭素数が大きいほど疎水性になり、プローブを起こす力が大きいためと思われる。また、MHとHTは、炭素数が等しいが、MHでは、OH基があるため、溶液中でマイナスに荷電しているプローブとの電気的反発力により、より効果が高かったものと推測される。
【0062】
実施例3
実施例1は、いずれもハイブリダイゼーション後に金コロイド修飾を行う工程における本発明の表面処理の影響を検討した。ここではハイブリダイゼーション前に金コロイド修飾を行う場合の実施例E(▲1▼▲2▼▲3▼▲5▼▲4▼▲6▼)を実施例1の条件に準じて実施した。
【0063】
なお、プローブには、プローブPTPGPT配列品(日清紡製)を用い、これと完全相補の配列を有するTGTをハイブリダイゼーションのターゲットとして使用した。また、表面処理剤としては、実施例2のMHを使用した。
【0064】
上述のこの発明の表面処理を行わない以外は同じ検出工程の比較例5のSPR強度を1とした場合、この発明の実施例Eは、2.743倍のSPR強度の増強が見られた。すなわち、ハイブリダイゼーション前に金コロイド修飾を行う場合もこの表面処理が有効であることが示された。
【0065】
実施例4
実施例3と同様条件下で表面処理剤がSPR強度の定量性に及ぼす影響を検討した。検出工程は、実施例3のMHを使用し、ハイブリダイゼーション前に金コロイド修飾を行う実施例Eの工程であり、プローブとターゲットの組合せには、実施例F(▲1▼▲2▼▲3▼▲5▼▲4▼▲6▼)がPTPGPT用とTGT、実施例G(▲1▼▲2▼▲3▼▲5▼▲4▼▲6▼)がProbe60Cと0−19 Target60を用いた。
【0066】
SPR測定結果を、ハイブリダイゼーション時のターゲット濃度とSPR強度比(ターゲット濃度が10μMの時のSPR強度を1とする)との関係を示すグラフに示す。図2Aと図2Bは、実施例Fの場合であり、図中の黒四角が表面処理された場合、白色四角が表面処理なしの場合である。また、図2Aはハイブリダイゼーション時のターゲット濃度が0〜10μMの場合、図2Bはより低濃度の1μMまでの場合を示す。
【0067】
また、図3Aと図3Bは、実施例Gの場合であり、図中の黒四角が表面処理された場合、白色四角が表面処理なしの場合である。また、図3Aはハイブリダイゼーション時のターゲット濃度が0〜10μMの場合、図3Bはより低濃度の1μMまでの場合を示す。
【0068】
プローブが異なる実施例F、実施例Gの両方とも同傾向を示したことから、この発明の表面処理による作用効果は、DNAプローブの塩基配列に依存しないことが示された。また、グラフに示すように定量性の立ち上がりが速いということは、より低濃度で強い強度が得られ、高感度な測定が可能であることを示しており、この表面処理がSPRによる核酸検出に極めて効果的であることが確認された。
【0069】
実施例5
表面処理剤としてET 1mMを用い、ハイブリダイゼーション後に金コロイド修飾を行う実施例1の実施例Cと同様の工程で処理し、SPR測定に換えて原子間力顕微鏡(AFM、JOEL製)による観察▲7▼を行なった(実施例H(▲1▼▲2▼▲3▼▲4▼▲5▼▲7▼))。金コロイド数の計測は、AFMで3箇所撮影した写真(1000nm×l000nm)を用いて計測し、データ化した。なお、プローブには、プローブPTPGPT配列品を用い、これと完全相補の配列を有するTGTをハイブリダイゼーションのターゲットとして使用した。
【0070】
表面処理を施したサンプルのAFMで撮影した写真を図4Aに、非処理のサンプルを図4Bに示すように、表面処理を施すと金コロイドの修飾量が増加することが明らかであり、カウントした金コロイド量(個/μm)は、表面処理を行うと880〜895で、非処理の800〜840に対し約10%の増量効果があることが分かった。
【0071】
従って、表面処理剤によるSPR強度の増強に、金コロイド修飾量の増加が寄与していることが明らかである。
【0072】
実施例6
表面処理剤としてMH 1mMを用い、ハイブリダイゼーション前に金コロイド修飾を行う実施例3の実施例Eと同様の工程で処理し、SPR測定に換えてAFMによる観察▲7▼を行なった(実施例I(▲1▼▲2▼▲3▼▲5▼▲4▼▲7▼))。金コロイド数の計測は、AFMで3箇所撮影した写真(1000nm×l000nm)を用いて計測し、データ化した。なお、プローブには、プローブPTPGPT配列品を用い、これと完全相補の配列を有するTGTをハイブリダイゼーションのターゲットとして使用した。
【0073】
表面処理を施したサンプルのAFMで撮影した写真を図5Aに、非処理のサンプルを図5Bに示すように、表面処理を施すと金コロイドの修飾量が一様にかつ高効率で増加することが明らかであり、カウントした金コロイド量(個/μm)は、表面処理を行うと850〜855で、非処理の700〜740に対し20%以上の増量効果があることが分かった。
【0074】
ハイブリダイゼーション前に金コロイド修飾を行った場合も、この発明の表面処理により金コロイド修飾量の増加が観察されたことから、表面処理には、金コロイド修飾効率の向上作用があることが示された。
【0075】
以上を総括すると、実施例5の実施例Hより、表面処理によるSPRの増強の一因が、プローブの基板表面での構造変化による金コロイド修飾効率の増加であることが示される。また、表面処理剤はETよりMHの方が効果が大きいにもかかわらず、ハイブリダイゼーション後の金コロイド修飾(ET処理)の方が、ハイブリダイゼーション前の金コロイド修飾(MH処理)と比べ、金コロイド修飾量が多かったことから、この発明の表面処理には、ハイブリダイゼーション効率向上効果もあると考えられる。
【0076】
よって、この発明の表面処理によるSPR測定強度の増強効果は、金コロイド修飾量の増加とハイブリダイゼーション効率の向上の2つの効果の組み合わせによるものと考えられる。
【0077】
実施例7
以上、ガラス基板表面に金薄膜を設けたバイオチップに表面処理を施したが、ガラス基板に金薄膜を成膜することなくガラスに直接プローブを固定する場合におけるこの発明の表面処理の有効性を検討した。
【0078】
まず、ガラス基板表面を、アセトン、メタノール、超純水中で超音波洗浄した後、10%フッ酸で表面エッチングを行い、さらに、アセトン、メタノール、超純水中で超音波洗浄した後、窒素ガスで乾燥させた。次に、アミノ基修飾した後、無水マレイン酸と一定時間反応させた。
【0079】
その後、チオール基を有する実施例1と同じ核酸プローブとマレイミドを用いて一定時間反応させ、結合固定した。これを超純水で洗浄後、1mMのHTとマレイミドを用いて同様に一定時間反応させた後、超純水で洗浄し、窒素ガスで乾爆させた。
【0080】
次に、実施例1に準じて、ハイブリダイゼーション、金コロイドの修飾、SPR測定を行ない、これを実施例J(▲2▼▲3▼▲4▼▲5▼▲6▼)とした。比較として、上記核醸プローブの固定後、表面処理を行なわない比較例5(▲2▼▲4▼▲5▼▲6▼)を実施した。
【0081】
その結果、比較例5のSPR強度を1とした場合、HTによる表面処理を行なうことにより、実施例JのSPR強度は1.52となり、SPR強度が約1.5倍増強されたことを確認した。
【0082】
実施例8
以上には、ガラス基板表面に金薄膜を設けるかそのまま使用したバイオチップに表面処理を施した例を示したが、ここではチップ基板に半導体シリコン基板を用いた場合の表面処理の有効性を検討した。
【0083】
シリコン基板に直接、実施例7と同様の処理を施し乾燥させた後、チオール基を有する実施例1と同じ核酸プローブとマレイミドを用いて一定時間反応させ、結合固定した。これを超純水で洗浄後、1mMのHTとマレイミドを用いて同様に一定時間反応させた後、超純水で洗浄し、窒素ガスで乾爆させた。
【0084】
このように、実施例1に準じて、プローブの固定、表面処理、ハイブリダイゼーションを行なった後、金コロイドの換わりにストレプトアビジンをコートした蛍光色素を用い、プローブ核酸を蛍光修飾(▲8▼)した後、蛍光イメージング装置で、蛍光強度を測定(▲9▼)した。これを実施例K(▲2▼▲3▼▲4▼▲8▼▲9▼)とし、比較として、表面処理を行なわない比較例6(▲2▼▲4▼▲8▼▲9▼)を実施した。比較例6の蛍光強度を1とした場合、実施例Kの蛍光強度は2.1となり、蛍光強度が約2倍増強された。
【0085】
また、シリコン基板を、実施例1の方法に準じて金薄膜を形成、プローブの固定、表面処理、ハイブリダイゼーションを行なった後、金コロイドの換わりにストレプトアビジンをコートした蛍光色素を用い、プローブ核酸を蛍光修飾後、蛍光イメージング装置で蛍光強度を測定した。これを実施例L(▲1▼▲2▼▲3▼▲4▼▲8▼▲9▼)とし、比較として、表面処理を行なわない比較例7(▲1▼▲2▼▲4▼▲8▼▲9▼)を実施した。比較例7の蛍光強度を1とした場合、実施例Lの蛍光強度は2.2となり、蛍光強度が約2倍増強された。
【0086】
【発明の効果】
発明者らは、実施例1により、ETによる表面処理がSPR測定強度の増強に有効であることを示した。また、実施例2では、各種表面処理剤を検討した結果、炭素直鎖数が大きいほど表面処理効果が大きいことを示した。実施例3では、表面処理効果がハイブリダイゼーション後の金コロイド修飾のみならず、ハイブリダイゼーション前の金コロイド修飾でも有効であることを示した。実施例5〜実施例8で、この発明の表面処理がSPRのみならず、他の検出技術でも有効であることを示した。実施例4では、SPR測定の定量曲線に及ぼす影響を示すことにより、この表面処理が高感度化に有効であることを証明した。以上の実施例より明らかなように、この表面処理によるSPR測定強度の増強効果は、従来法の2〜6倍であり、他の測定方法でも同様の効果が得られている。
【0087】
また、発明者らは、実施例7、実施例8において、ガラス基板や半導体シリコン基板に直接、プローブを固定して表面処理を施し、蛍光修飾を施した場合も同様に、測定強度の増強が明確に現れることを立証しており、この発明の表面処理方法が、チップ基板材質や表面の薄膜の有無にかかわらず、有効であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】バイオチップの表面のプローブと目的検体(ターゲット)とのハイブリダイゼーションを行なう際の機構を示す概念説明図であり、Aは表面処理がない場合、Bは表面処理を行った場合を示す。
【図2】A,Bは、ハイブリダイゼーション時のターゲット濃度とSPR強度比との関係を示すグラフである。
【図3】A,Bは、ハイブリダイゼーション時のターゲット濃度とSPR強度比との関係を示すグラフである。
【図4】AFMで撮影したバイオチップの表面写真の模式図であり、Aは表面処理された場合、Bは表面処理しない場合を示す。
【図5】AFMで撮影したバイオチップの表面写真の模式図であり、Aは表面処理された場合、Bは表面処理しない場合を示す。
【符号の説明】
1 基板
2 プローブ
3 ターゲット

Claims (10)

  1. 基板又はその類似物表面にプローブ核酸を有するバイオチップを用いて生化学反応体を検出する方法において、プローブ核酸が配置される表面に表面処理剤を用いた表面処理によって疎水性又は電荷あるいはその両方を付与し、その後、該チップのプローブ核酸に生化学検体をハイブリダイゼーションする工程か、あるいは前記ハイブリダイゼーションする工程とその後プローブ核酸又は生化学検体あるいはその両方に標識を修飾する工程を施す生化学反応体の検出方法。
  2. 基板又はその類似物表面にプローブ核酸を有するバイオチップを用いて生化学反応体を検出する方法において、プローブ核酸が配置される表面に表面処理剤を用いた表面処理によって疎水性又は電荷あるいはその両方を付与し、その後、該チップのプローブ核酸に標識を修飾する工程を有し、さらに該プローブ核酸に生化学検体をハイブリダイゼーションする工程か、あるいは前記ハイブリダイゼーションする工程とその後プローブ核酸又は生化学検体あるいはその両方に別の標識を修飾する工程を施す生化学反応体の検出方法。
  3. プローブ核酸がスペーサーを介して基板又はその類似物表面に配置される請求項1又は請求項2に記載の生化学反応体の検出方法。
  4. 表面処理剤を用いた表面処理が、バイオチップを表面処理剤溶液に浸漬する請求項1又は請求項2に記載の生化学反応体の検出方法。
  5. 表面処理剤を用いた表面処理が、表面処理剤溶液をバイオチップ表面に滴下又は噴霧した後に飽和水蒸気雰囲気で保持する請求項1又は請求項2に記載の生化学反応体の検出方法。
  6. 表面処理剤が、直鎖アルキル化合物誘導体または芳香族化合物誘導体である請求項1又は請求項2に記載の生化学反応体の検出方法。
  7. 表面処理剤が、ET、HT、ODT、MH、TTのいずれかの溶液である請求項6に記載の生化学反応体の検出方法。
  8. 基板又はその類似物表面にプローブ核酸を有し、プローブ核酸が配置される表面が、表面処理剤を用いた表面処理により疎水性又は電荷あるいはその両方を具備したバイオチップ。
  9. プローブ核酸がスペーサーを介して基板又はその類似物表面に配置される請求項8に記載のバイオチップ。
  10. 表面処理剤を用いた表面処理が、ET、HT、ODT、MH、TTのいずれかの溶液を用い、バイオチップを該溶液に浸漬するか、バイオチップ表面に該溶液を滴下又は噴霧した後に飽和水蒸気雰囲気で保持する請求項8に記載のバイオチップ。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011128060A (ja) * 2009-12-18 2011-06-30 Konica Minolta Holdings Inc プラズモン励起センサ、並びにこれを用いた核酸検出装置および核酸検出方法
JP4907514B2 (ja) * 2005-01-28 2012-03-28 株式会社リバース・プロテオミクス研究所 効率的にターゲット分子を探索する方法
TWI768560B (zh) * 2020-11-25 2022-06-21 五鼎生物技術股份有限公司 生化試片

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