JP2005016511A - エンジンのバランサ構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】 2軸1次バランサを採用する場合のクランクケースの前後長さを小さくできるエンジンのバランサ構造を提供する。
【解決手段】 クランク軸21のクランクギヤ85で該クランク軸21と平行に配設された第1,第2バランサ軸105,106の各バランサギヤ109,110を回転駆動するようにしたエンジンのバランサ構造において、上記クランク軸21の軸線を含む鉛直面Aを挟んだ前側に上記第1バランサ軸105を,後側に第2バランサ軸106をそれぞれ配設し、該第2バランサ軸106に、上記クランク軸21の回転を変速機構のメイン軸87に伝達するカウンタギヤ111を配設する。
【選択図】 図6
【解決手段】 クランク軸21のクランクギヤ85で該クランク軸21と平行に配設された第1,第2バランサ軸105,106の各バランサギヤ109,110を回転駆動するようにしたエンジンのバランサ構造において、上記クランク軸21の軸線を含む鉛直面Aを挟んだ前側に上記第1バランサ軸105を,後側に第2バランサ軸106をそれぞれ配設し、該第2バランサ軸106に、上記クランク軸21の回転を変速機構のメイン軸87に伝達するカウンタギヤ111を配設する。
【選択図】 図6
Description
本発明は、1本のクランク軸に対して2本のバランサ軸を配設してなるエンジンのバランサ構造に関する。
例えば、自動二輪車に搭載される大排気量エンジンのうち、単気筒,V型2気筒タイプのエンジンは4気筒等の多気筒タイプのエンジンに比べて低回転域で使われることから、1次慣性力による振動が支配的となる。この種のエンジンにおいて、1次慣性力をキャンセルするために、従来、クランクピンの位置に位相差を持たせた位相ピンクランクを採用したり,あるいは2つのバランサ軸を持つ2軸1次バランサを採用したりする場合がある(例えば、特許文献1参照)。なお1つのバランサ軸を持つ1軸1次バランサでは、1次慣性偶力をキャンセルすることができず、特に排気量が大きなエンジンでは振動の低減効果が小さい。
特開平9−250597号公報
ところで、上記位相ピンクランクを採用した場合には、位相の異なるピンを連結することから、ピンの中間にウェブが必要となり、支持点となるクランクジャーナルの間隔が同軸ピンクランクに比べて広くならざるを得ず、クランク軸の強度,剛性にとって不利となる。特に排気量が例えば1000ccを超えるエンジンの場合には、増大するトルク変動に耐え得るような強度を確保するためにウェブ厚を厚くして最小断面積を大きくとる必要があり、結果としてクランク軸が長くなり、それだけクランクケースの幅寸法が大きくなる。
一方、上記2軸1次バランサを採用した場合には、クランクケースの幅寸法は抑えることができるものの、クランク軸の前後にバランサ軸を2軸配置することとなるので、結果的にクランクケースの前後長が大きくなる。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたもので、2軸1次バランサを採用する場合のクランクケースの前後長さの増大を抑制できるエンジンのバランサ構造を提供することを目的としている。
請求項1の発明は、クランク軸と平行に配設された第1,第2バランサ軸の各バランサギヤをクランク軸のクランクギヤで回転駆動するようにしたエンジンのバランサ構造において、上記クランク軸の軸心を含む鉛直面を挟んだ一側に上記第1バランサ軸が、他側に第2バランサ軸がそれぞれ配設され、該第2バランサ軸に、上記クランク軸の回転を変速機構のメイン軸に伝達するカウンタギヤが配設されていることを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1において、上記クランク軸からの大トルクが上記メイン軸に直接伝達されるのを防止するトルクダンパが、クランク軸の駆動力をメイン軸に伝達する駆動力伝達経路における上記第2バランサ軸のバランサギヤよりも下流側に配設されていることを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、上記第2バランサ軸を挟んで上記クランク軸の反対側に上記メイン軸が配設されており、該メイン軸と上記第2バランサ軸との間にシフトドラムが配設されていることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1又は2において、上記クランク軸の軸心を含む水平面を挟んで一側に上記第1バランサ軸が、他側に上記第2バランサ軸がそれぞれ配置されていることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1又は2において、上記エンジンは、前,後気筒をVバンクをなすように配置してなり、上記クランク軸が車幅方向に向くように車体に搭載されるV型2気筒エンジンであり、上記第1バランサ軸は、上記クランク軸の軸心を含む鉛直面より前側でかつ該軸心を含む水平面より上側に配置され、上記第2バランサ軸は、上記鉛直面より後側でかつ上記水平面より下側に配置されており、上記第2バランサ軸の後方でかつ上記水平面付近に変速機構のドライブ軸が配置され、該水平面より上側でかつ上記ドライブ軸と第2バランサ軸との間に上記メイン軸が配置され、シフトドラムは、これの軸心が上記メイン軸,上記ドライブ軸,及び上記第2バランサ軸のそれぞれの軸心で囲まれた領域に位置するように配設されていることを特徴としている。
請求項1の発明では、第2バランサ軸にクランク軸の回転をメイン軸に伝達するカウンタギヤを配設することにより第2バランサ軸をカウンタ軸に兼用したので、カウンタ軸を不要にでき、カウンタ軸の配設スペースの分だけクランクケースのクランク軸と直角方向の長さを短くすることができる。
請求項2の発明では、上記第2バランサ軸にトルクダンパを配設したので、クランク軸のトルク変動がメイン軸に直接伝達されるのを防止して変速歯車等の損傷を防止できる。
そしてこの場合に、上記トルクダンパをクランク軸の回転力をメイン軸に伝達する駆動力伝達経路におけるバランサ軸のバランサギヤより下流側に配設したので、上記トルクダンパの作動時にバランサウエイトの位相がずれるのを防止できる。
請求項3の発明では、第2バランサ軸を挟んでクランク軸の反対側にメイン軸を配置したので、バランサ軸側のカウンタギヤとメイン軸側の減速大ギヤとの噛合部分に比較的大きなスペースが形成され、このスペースを利用してシフトドラムを配置でき、そのためドライブ軸をクランク軸側に近づけて配置することができ、それだけバランサ軸を2本設ける場合のクランクケース前後長の増大を抑制できる。
請求項4の発明では、クランク軸の軸心を含む水平面の一側に第1バランサ軸を、他側に第2バランサ軸を配置したので、第1,第2バランサ軸の水平方向における軸間距離を、該両バランサ軸を上記水平面上に配置した場合に比較して小さくすることができ、この点からもクランクケース前後長の増大を抑制できる。
請求項5の発明では、クランク軸横置きの前,後V型2気筒エンジンに第1,第2バランサ軸を配置する場合に、上記第1バランサ軸を上記クランク軸の前側かつ上側に配置し、上記第2バランサ軸を後側かつ下側に配置したので、該第2バランサ軸の後方かつ上側に比較的大きなスペースを確保でき、該スペースに減速大ギヤを有し、比較的大きな配置スペースを要するメイン軸を、クランクケースの前後長が長くなるのを抑制しつつ配置できる。
また上記メイン軸及び上記ドライブ軸と上記第2バランサ軸とで囲まれた領域は、第2バランサ軸側のギヤとメイン軸側の減速大歯車が噛合していることから比較的大きなスペースとなっており、このスペースを利用することによりシフトドラムを支障なく配置できる。
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図20は、本発明の一実施形態によるエンジンのバランサ構造を説明するための図であり、図1,図2は本実施形態のエンジンが搭載された自動二輪車の左側面図,右側面図、図3,図4はエンジンの断面右側面図、図5はエンジンの断面背面図、図6はエンジンの断面平面図、図7はエンジンの動力伝達部の断面平面図、図8はエンジンの部分水冷システムの全体図、図9は部分水冷システムのウォータポンプ部分の断面側面図、図10は図9のX-X 線断面図、図11はシリンダヘッドの底面図,図12は図11のXII-XII 線断面図,図13は部分水冷システムのブロック図、図14はエンジンの潤滑系を示す断面左側面図、図15はエンジンのオイルポンプ部分の断面側面図、図16は図15のXVI a-XVIa線及びXVI b-XVIb線断面図、図17はクランクケースの油溜まり部分の断面図、図18, 図19は変速機の断面図、図20はエンジンの潤滑油経路を示すブロック図である。ここで、本実施形態でいう前後,左右とは、シートに着座した状態で見た前後,左右を意味する。
図において、1はクルーザタイプの自動二輪車を示している。この自動二輪車1は以下の概略構造を有する。ダブルクレードル型の車体フレーム2の前端に固着されたヘッドパイプ(不図示)によりフロントフォーク3が枢支され、該フロントフォーク3の下端で前輪4が軸支されるとともに、上端に操向ハンドル5が配設されている。また上記車体フレーム2の上部に燃料タンク6,シート7が配設され、さらに車体フレーム2のリヤアームブラケット2bに上下揺動可能に枢支されたリヤアーム8の後端で後輪9がを軸支されている。
上記リヤアーム8と車体フレーム2との間には緩衝器10aとリンク機構10bとからなるリヤサスペンション10が配設されている。また車体フレーム2の左右のダウンチューブ2aの横辺部には乗員の足を支持するフートレストボード11が配置されている。
上記フロントフォーク3には前輪4の上部を覆うフロントフェンダ12が取付けられている。また上記リヤアームブラケット2bの上端部から後方に延びるリヤフレーム(図示せず)には後輪9の略上半部を覆うリヤフェンダ13が取付けられており、該リヤフェンダ13の上面には後部シート14が配設されている。
上記車体フレーム2のクレードル内にエンジン15が搭載されている。このエンジン15は、空冷式4サイクルOHV・V型2気筒エンジンであり、以下の概略構造を有する。クランクケース16の上面に、前側シリンダブロック17,後側シリンダブロック18が車両前後に所定のバンク角をなすように配置され、該前側,後側シリンダブロック17,18の上合面にそれぞれ前側シリンダヘッド19,後側シリンダヘッド20が積層され、ヘッドボルトで結合されている。さらに各シリンダヘッド19,20の上合面にはヘッドカバー24a,24bが装着されている。
上記クランクケース16は、クランク軸21が収容されたクランクケース部16aと、後述する変速機構が収容されたミッションケース部16bとを一体形成した構造を有する。そして上記クランク軸21は車幅方向に水平に向けて配置されており、車両右側方から見て反時計回りに回転するように設定されている(図3の矢印a参照)。また上記クランク軸21は、前後気筒に共通のクランクピン21aと、左右クランクウェブ21b,21b及び左右のクランクジャーナル21c,21cとを有している。
上記前側,後側シリンダブロック17,18はボア径が100mmφを超えるシリンダボアを有しており、各シリンダボア内にはそれぞれピストン22,22が摺動自在に挿入され、各ピストン22はコンロッド23,23を介して上記クランク軸21の前後共通のクランクピン21aに連結されている。
上記前側,後側シリンダヘッド19,20の下合面(シリンダブロック側合面)19f,20fには燃焼室の天壁部を構成する燃焼凹部19a,20aが上記シリンダボアに対向するよう凹設されており、各燃焼凹部19a,20aには3つの点火プラグ25,25,25が車幅方向に間隔をあけて螺挿されている。また各燃焼凹部19a,20aにはそれぞれ2つの吸気弁開口19b,19b,20b,20bと2つの排気弁開口19c,19c,20c20cとが形成されている。
上記各吸気弁開口19b,20bには吸気弁26,26が、各排気弁開口19c,20cには排気弁27,27がそれぞれの開口を開閉可能に、かつコイルスプリング28により閉方向に付勢されて配置されている。この各吸気弁26,排気弁27は、図4,図5に示すように、クランク軸21により回転駆動される前側,後側カム軸31,31で吸気側,排気側プッシュロッド32,33を上下方向に進退駆動し、各ブッシュロッド32,33で吸気側,排気側ロッカアーム34,35を回動させることにより開閉駆動される。なお、上記カム軸31,31はクランクケース16内にクランク軸21と平行に配設され、該クランク軸21によりチェーン29,中間軸(図示せず),タイミングギヤ30を介して回転駆動される。
また上記吸気側,排気側プッシュロッド32,33はそれぞれ前側,後側シリンダブロック17,18の気筒軸に沿って右外側に露出させて配設された円筒状のケーシング36,36内に収容されている。
上記前側,後側シリンダヘッド19,20の各吸気弁開口19b,20bは1つの合流吸気ポート19d,20dによりVバンクの内側壁に導出されている。この前,後の吸気ポート19d,20dには前側,後側吸気管36,36を介してスロットルボディ37,37が軸線を略垂直に向けて接続されており、各スロットルボディ37の空気取込み口37aには共通のエアクリーナ46が接続されている。
上記スロットルボディ37の下流側にはメインスロットル弁38が,これの上流側にはサブスロットル弁39がそれぞれ配設されている。この前,後のメインスロットル弁38の弁軸同士及び前,後のサブスロットル弁39の弁軸同士はそれぞれリンク機構40a,40bにより連結されている。
また上記前,後スロットルボディ37のスロットル弁38の下流側には燃料噴射弁41,41が装着されており、該燃料噴射弁41の噴射口は吸気弁26の弁裏に向けて燃料を噴射するように配置されている。
上記前側,後側シリンダヘッド19,20の各排気弁開口19c,20cは10の合流排気ポート19e,20eによりVバンクの外側壁に導出されている。この前,後の排気ポート19e,20eには、図2に示すように、前,後排気管42,43が接続されている。各排気管42,43は車体右側を後方に延びており、これの下流端には上記後輪9の右側方に配設された前,後マフラ44,45が接続されている。
上記前,後マフラ44,45内にはそれぞれ排気ガスの浄化を行うための触媒44a,45aが配設されている。また上記前排気管42の途中には補助触媒44bが配設されている。この前排気管42は後排気管43より排気管長さが長くなっていることから、暖機運転時に上記触媒44aが活性化するのが遅れがちとなる。このため前排気管42に補助触媒44bを配設することによって、暖機運転時における排気ガス浄化の促進を図るようにしている。
次に、上記空冷式エンジン15の冷却構造を、主として図8ないし図13に基づいて説明する。
上記前側,後側シリンダブロック17,18及び前側,後側シリンダヘッド19,20の外周壁には多数の冷却フィン50,51がボア軸線に対して略直角をなすよう一体形成されている。各シリンダブロック17,18及び各シリンダヘッド19,20に走行風を直接当てることにより、上記冷却フィン50,51を介してエンジンからの熱を放熱し、もってエンジン15が冷却される。
そして上記空冷式エンジン15は、走行風による空冷を主体としつつ冷却水による冷却を行う部分水冷システムを備えており、該部分水冷システムは、以下の構造となっている。なお、本冷却構造は、前側,後側シリンダとも同一の構造であるので、前側シリンダについて説明する。
本実施形態では、上記前側シリンダヘッド19を気筒軸を含みクランク軸21と直角の平面で断面したときの吸気ポート19d又は排気ポート19eの底面を気筒軸回りに旋回させてできる概ね円錐台形状の仮想面と、上死点に位置するピストン22の下端のピストンリング22aを含む気筒軸と直角の平面との間のみに冷却ジャケットが形成されている。
より具体的には、上記前側シリンダヘッド19には、燃焼凹部19aの外周部を囲み、かつ各吸気,排気ポート19d,19eと下合面19fとの間を通る環状で容積が60cc程度の冷却ジャケット52が形成されている。この冷却ジャケット52の吸気弁開口19b,19b間に対応する吸気弁間部分52a及び,排気弁開口19c,19c間に対応する排気弁間部分52bは他の部分より通路面積が大きくなっている。
上記前側シリンダヘッド19の下合面19fの排気ポート19e側には、シリンダブロック17の合面17aから外方にオーバーハングするオーバーハング部19f′が形成されている。そしてこのオーバーハング部19f′には冷却水供給口52cが上記冷却ジャケット52に連通するよう貫通形成されている。また前側シリンダヘッド19のVバンク内側壁の吸気ポート19dの下側には上記冷却ジャケット52に連通する冷却水排出口52dが開口している。この冷却水排出口52dは冷却水供給口52cより高所に位置しており、これにより冷却ジャケット52内に空気溜まりが生じるのを防止している。なお、52eは冷却ジャケット52を鋳造する際の中子砂を抜くための孔であり、これはシリンダブロックとの間に介在されるガスケットにより閉塞される。冷却水供給口52cから供給された冷却水は、まず最も温度の高い排気ポート19e側を冷却しつつ、ここから吸気ポート19d側に流れて冷却水排出口52dから排出される。
上記部分水冷システムは、上記クランク軸21により回転駆動されるメカニカルポンプ53と、上記冷却ジャケット52に供給された冷却水を走行風で冷却するラジエータ54と、エンジン15の運転停止により上記メカニカルポンプ53が停止すると冷却ジャケット52の冷却水を所定時間、ラジエータ54をバイパスするように循環させる電動ポンプ55とを備えている。
上記ラジエータ54は、車体フレーム2の左,右のダウンチューブ2aの縦辺部の前側下端部に配設されており、該ラジエータ54の後側には上記左,右の縦辺部間に位置するよう冷却ファン57が配置されている。このラジエータ54は上,下ヘッダ部54a,54a´を放熱フィンを有するエレメント54eで連結したものであり、上ヘッダ部54aの後面には冷却水入口54bが,下ヘッダ部54a´の後面には冷却水出口54cがそれぞれ形成されており、さらに上ヘッダ部54aの上面には冷却水注入口54dが形成されている。また上記ラジエータ54は、車両前方から見て、上ヘッダ部(上辺部)54aの高さ位置が前側シリンダブロック17の略下端部の高さ位置になるように配置されている。
上記メカニカルポンプ53は、上記ミッションケース部16b内に配設された後述のメイン軸87の上方にポンプ軸53aを該メイン軸87と平行に向けて配置されている。上記ポンプ軸53aに固着されているポンプギヤ53bには、上記メイン軸87に相対回転自在に装着された減速大ギヤ112に一体形成された駆動ギヤ112aが中間ギヤ62を介して噛合している。これによりメカニカルポンプ53は、エンジン運転中はクランク軸21により常時回転駆動される。
上記メカニカルポンプ53の冷却水吸込口53cには冷却ホース65により上記ラジエータ54の冷却水出口54cが接続されている。この冷却ホース65はダウンチューブ2a横辺部の内側に沿って配索されている。
上記メカニカルポンプ53の吐出口53dには供給管66が接続されている。この供給管66は、クランクケース16の左側上壁に沿って配索されたへ字状の主供給管67と、該主供給管67の基部及び先端部にジョイント67a,67bを介して接続され、前側,後側シリンダブロック17,18の気筒軸線に沿って起立する前,後の分岐管68,68とからなり、各分岐管68の上端が上記前側,後側シリンダヘッド19,20の冷却供給口52cに接続されている。この前後分岐管68,68はシリンダブロック17,18の各冷却フィン50を切り欠いて形成された凹部内にその一部が埋設され、残りが外方に露出されるように配置されており、走行風により冷却されるようになっている。
上記前側,後側シリンダヘッド19,20の冷却水排出口52dにはそれぞれ排出管69がジョイント69aを介して接続されており、各排出管69には1つの合流管70が接続されている。この合流管70にはサーモスタット71を介在させて排出ホース72が接続され、該排出ホース72の下流端は上記ラジエータ54の冷却水入口54bに接続されている。上記サーモスタット71は、Vバンク内の燃料タンク6の下方に配設されており、冷却水の温度が設定値に達すると開閉弁71aが開き、もって合流管70と排出ホース72とを連通させるようになっている。
上記電動ポンプ55は、サーモスタット71の近傍に並列配置されており、上記シート7の下方に配設されたバッテリ56を電源としてコントローラ(不図示)により駆動制御される電動モータ(不図示)を備えている。この電動ポンプ55の吸込み口55aはサーモスタット71の開閉弁71aの上流側に接続されており、吐出口55bは循環パイプ73を介してウォータポンプ53の吸込口53cに接続されている。
また上記ラジエータ54の冷却水注入口54dには注入ホース74が接続され、該注入ホース74には燃料タンク6前側のガセット内に配設されたフィラーキャップ75が接続されている。またフィラーキャップ75にはリカバリホース76が接続され、該リカバリホース76はバッテリ56の下方に配設されたリカバリタンク77の底部に接続されている。
このリカバリタンク77にはシート7下側に配設されたリカバリ注水口77aが注水ホース77bを介して接続されている。
本実施形態の部分水冷システムは、以下のように作動する。メインスイッチ(不図示)をオンし、エンジン15を始動させるとクランク軸21が回転し、これに伴ってメカニカルポンプ53が回転する。冷却ジャケット52内の冷却水、より正確にはサーモスタット71内の冷却水が所定温度を超えるとサーモスタット71が開き、冷却ジャケット52とラジエータ54との間で冷却水が循環する。
メインスイッチをオフにすると、エンジン15が停止し、これによりメカニカルポンプ53が停止する。するとバッテリ56により電動ポンプ55が起動し、冷却ジャケット52の冷却水は排出管69,合流管70,循環パイプ73,供給管66を介して、つまり上記ラジエータ54をバイパスして循環し、所定時間経過後に停止する(図8及び図13参照)。
本実施形態の冷却構造によれば、前側,後側シリンダヘッド19,20の吸気ポート19d,20d及び排気ポート19e,20eと下合面19f,20fとの間を通る通路状で、かつ燃焼凹部19a,20aの外周を囲む環状の冷却ジャケット52を形成し、該冷却ジュケット52とラジエ−タ54との間で冷却水を循環させたので、空冷を主体としつつ、熱負荷の特に高い燃焼凹部19a,20a周りを冷却水で部分冷却することができ、これによりボア径が100mmφを超える大排気量の空冷式エンジンに必要なエンジン冷却性能を確保できる。
また上記冷却ジャケット52を燃焼凹部19a,20aの外周部にのみ形成したので、冷却水容量を60cc程度に小さくすることができ、それだけラジエータ54,メカニカルポンプ53を小型化できるとともに軽量化できる。その結果、部分水冷システムを付加したことによるエンジンの大型化及び重量増加を抑制できるとともに、エンジン及び車体デザインの自由度を確保することができる。
本実施形態では、部分水冷システムを、エンジン15により回転駆動されるメカニカルポンプ53と、エンジン停止により該メカニカルポンプ53が停止した時に冷却ジャケット52の冷却水を所定時間循環させる電動ポンプ55とを備えた構成としたので、少ない冷却水により高速回転高負荷運転域で必要な冷却性能を確保しつつ、エンジン停止時の冷却水の沸騰を防止できる。
ここで、エンジン運転時,停止時における冷却水の循環を全て電動ポンプ55により行うことが考えられる。しかしこのようにした場合には、エンジンの高速回転高負荷運転域において必要な冷却水循環量を電動ポンプでまかなうことが必要となり、そのため電動モータも大きく,重くなる。
本実施形態における電動ポンプ55の必要機能は、エンジン停止時に冷却ジャケット52内の冷却水をある程度の時間循環させるだけでよく、小容量の小型ポンプで済む。また本実施形態では、電動ポンプ55を補助的に用いるとともに、ラジエータ54をバイパスするように構成にしたので、これがメイン経路の通水抵抗になることもない。また電動ポンプ側の通路は多くの流量を要求されないので、その通路径を小さく絞ることができ、通常運転時に冷却水が電動ポンプ側にバイパスすることはほとんどない。
なお、上記電動モータ35をラジエータ54を通るメイン経路の途中に直接又はバイパスさせて介在させることも可能である。
また本実施形態では、上記ラジエータ54を、車体フレーム2の左右ダウンチューブ2aの前側に、かつ該ラジエータ54の上ヘッダ54aがシリンダブロック18の下端付近に位置するように配置したので、エンジン15への走行風がラジエータ54によって遮蔽されるのを防止でき、空冷性能を確保できる。
なお、上記実施形態の冷却構造では、冷却ジャケット52を、吸気,排気ポートの下側を通り燃焼凹部の外周部を囲むように形成した場合を例に説明したが、本発明では、図21及び図22に示すように、冷却ジャケット52をシリンダヘッド19の排気ポート19eと下合面19fとの間でかつ排気弁開口19cに対応する部分のみに形成してもよく、このようにしたのが請求項3の発明である。なお、図中、図11及び図12と同一符号は同一又は相当部分を示す。
この場合には、熱負荷の最も高い排気ポート19e部分のみ冷却することによって冷却ジャケット52の容量を35cc程度とさらに小さくすることができ、エンジンの大型化を抑制できるとともに、デザインの自由度を確保できる。
また、図21に示すように、上記シリンダヘッド19の右側壁19gの凹部を埋めるように肉厚部19g′を形成してもよい。これにより吸気側の熱が肉厚部19g′を介して冷却ジャケット52に伝わり易くなり、冷却効率を高めることができる。
上記実施形態では、ラジエータ54を車体フレーム2の前下端部に配置した場合を説明したが、本発明では、図23に示すように、ラジエータ54をシート7の下方に配置し、該ラジエータ54の前側にオイルタンク80,バッテリ56を左右に並列配置し、後側に後輪9及びリヤフェンダ13を配置し、さらに該ラジエータ54の左右に車体フレーム2の左右のリヤアームブラケット2b,2bを位置させてもよい。なお、図中、図1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
このようにラジエータ54をシート7の下方に配置し、該ラジエータ54の前側をオイルタンク80,バッテリ56で、後側を後輪9,リヤフェンダ13で左右をリヤアームブラケット2b,2bで囲むようにしたので、ラジエータ54を目立たない場所に配置できる。つまりラジエータ54の存在を意識させない場所に配置でき、空冷エンジンとしての外観を向上できる。
また上記リヤフェンダ13に内周面に沿ってダクト13aを形成し、該ダクト13aの上流口13cをラジエータ54のファン57に向って開口させるとともに、下流口13bを地面に向かって開口させ、ラジエータ54の冷却ファン57からの冷却風を上記ダクト13aを通って地面に排出するように構成してもよい。このようにした場合には、後輪9により撥ね上げられた撥水を上記ダクト13aから排出された冷却風により抑えることができ、リヤフェンダ13内に泥水が付着するのを防止できる。
上記クランク軸21は左右のクランクジャーナル21cが上記クランクケース部16aの左右側壁に形成されたボス部16cにより支持されている。このクランク軸21の左側端部にはスタータギヤ82を介在させて発電機83が装着されており、右側端部にはクランクギヤ85がキー嵌合により固定されている。
上記変速機構は、クランクケース16のミッションケース部16b内に配設されており、入力ギヤ群89を有するメイン軸87と、該入力ギヤ群89に噛合する出力ギヤ群90を有するドライブ軸88と、上記入力ギヤ群89に係合する入力側シフトフォーク91及び上記出力ギヤ群90に係合する2つの出力側シフトフォーク92,92を案内支持するシフトドラム93とをそれぞれ上記クランク軸21と平行に配設して構成されている。上記入力側シフトフォーク91及び各出力側シフトフォーク92はそれぞれフォーク軸91a,92a,92bにより軸方向に移動可能に支持されている。
足踏み式のシフトレバー94(図8参照)を揺動操作することにより、シフトドラム93が回動するとともに各シフトフォーク91,92が軸方向に移動して入力ギヤ群89,出力ギヤ群90の何れかのギヤをメイン軸87,ドライブ軸88に結合させ、その結果、最低速段から最高速段の間で切り換えが行われる。
上記ドライブ軸88の左側端部はミッションケース部16bから外方に突出しており、この突出したドライブ軸88に装着された不図示の駆動スプロケットが駆動ベルト93を介して上記後輪9の従動スプロケット93aに連結されて(図1参照)。
また上記メイン軸87の右側端部にはクラッチ機構95が配設されている。このクラッチ機構95は、メイン軸87に相対回転自在に装着されたアウタドラム96と、該メイン軸87に共に回転するよう結合されたインナドラム97との間に多数のクラッチ板98を配置した構造のものである。このクラッチ機構95は、メイン軸87の軸心に挿入されたプッシュロッド99を油圧シリンダ部材100の油圧ピストン100aにより進退させることによりメイン軸97へのエンジン動力を伝達又は遮断するようになっている。
次に上記エンジン15のバランサ構造を、主として図3,図4,図6,図7に基づいて説明する。
上記クランク軸21の軸心を含む鉛直面Bの一側(前側)でかつ該軸心を含む水平面Aの一側(上側)には第1バランサ軸105がクランク軸21と平行に配設されている。また上記鉛直面Bの他側(後側)でかつ上記水平面Aの他側(下側)には第2バランサ軸106がクランク軸21と平行に配設されている。この第1,第2バランサ軸105,106にはウェイト105a,106aが一体形成されており、各バランサ軸105,106は上記クランクケース部16aの左,右側壁に形成された各ボス部16cにより軸受107,108を介して支持されている。
上記第1バランサ軸105の右側端部には第1バランサギヤ109が、また第2バランサ軸106の右側端部には第2バランサギヤ110がそれぞれキー嵌合により固着されている。該第1,第2バランサギヤ109,110は上記クランクギヤ85に噛合しており、第1,第2バランサ軸105,106は上記クランク軸21と同速でかつ逆回転する。
上記第2バランサ軸106の右側端部には延長部106bが形成されており、該延長部106bに上記第2バランサギヤ110に延長形成されたボス部110aが嵌合している。このボス部110aの第2バランサギヤ110外側にはこれと同径のカウンタギヤ111が相対回転可能に装着されており、該カウンタギヤ111には上記メイン軸87に相対回転可能に装着された減速大ギヤ112が噛合している。
このようにして上記クランク軸21の回転力を第2バランサ軸106を介してメイン軸87に伝達する回転力伝達経路が構成されている。なお、111aはカウンタギヤ111と減速大ギヤ112との間のバックラッシュを吸収するためのシザーズギヤである。このようにして上記延長部106b,ひいては第2バランサ軸106がカウンタ軸として兼用されている。この減速大ギヤ112はゴムダンパ113を介在させて上記アウタドラム96に結合されている。
上記第2バランサギヤ110のカウンタギヤ111の外側には皿ばね式トルクダンパ115が配設されている。このトルクダンパ115は、図7に示すように、上記回転力伝達経路における上記第2バランサ軸106の第2バランサギヤ110より下流側に配設されている。
上記トルクダンパ115はカウンタギヤ111の凹部111aに係合する凸部116aが形成されたリフタ116の外側に該リフタ116をカウンタギヤ111側に押圧付勢する一対の板ばね117を配設し、該板ばね117の外側にばね受け部材118を配設した構造となっている。
上記リフタ116及びばね受け部材118は、上記第2バランサギヤ110のボス部110aに該第2バランサギヤ110と共に回転し、かつ軸方向に移動可能にスプライン嵌合されている。また上記ばね受け部材118はボス部110aに嵌装されたコッタ119により軸方向外側への移動が規制されている。クランク軸21にトルク変動が生じてカウンタギヤ111に過大トルクが伝達されると、リフタ116が板ばね117の付勢力に抗して軸方向外側に移動し、カウンタギヤ111とボス部110aとの間に滑りが生じ、もってトルク変動が緩衝される。
この場合、上記トルクダンパ115はクランク軸21の回転力伝達経路において上記第2バランサ軸106のバランサギヤ110より下流側に配置されているので、上述の滑りがバランサ軸106の位相角を変化させることはなく、バランサとしての機能を阻害することはない。
次に上記エンジン15のクランク軸21,第1,第2バランサ軸105,106,メイン軸87,ドライブ軸88,シフトドラム93の各軸の配置位置関係を主として図3に基づいて説明する。
上記第1,第2バランサ軸105,106はそれぞれ上述のようにクランク軸21の前側かつ上側,後側かつ下側に配置されている。
また上記メイン軸87は第2バランサ軸106より後側かつ上側に配置されており、ドライブ軸88はメイン軸87の後下側で、かつ略上記水平面A上に配置されている。そして上記シフトドラム93は、第2バランサ軸106、メイン軸87,ドライブ軸88の各軸線で囲まれた領域にその軸線が位置するように配置されている。またシフトドラム93は、メイン軸87の前側で,かつ水平面Aより下側に位置している。
このように本実施形態のバランサ構造によれば、クランク軸21の軸心を通る鉛直面Bの前側に第1バランサ軸105を、後側に第2バランサ軸106をそれぞれ配設し、該第2バランサ軸106の延長部106bにクランク軸21の回転をメイン軸87に伝達するカウンタギヤ111を配設したので、第2バランサ軸106をカウンタ軸として兼用することができ、カウンタ軸を不要にできる分だけクランクケース16の前後長さを短くすることができる。
本実施形態では、第2バランサ軸106に固定された第2バランサギヤ110より回転力伝達経路の下流側にカウンタギヤ111及び皿ばね式トルクダンパ115を配設したので、該トルクダンパ115の作動時に第2バランサ軸106の位相がずれるのを防止できる。
また、第2バランサ軸106を挟んでクランク軸21の反対側にメイン軸87を配置したので、バランサ軸106側のカウンタギヤ110とメイン軸87側の減速大ギヤ112との噛合部分に比較的大きなスペースが形成され、このスペースを利用してシフトドラム93を支障なく配置できる。
また上記第2バランサ軸106の後側かつ上側にメイン軸87を配置し、該メイン軸87と第2バランサ軸106との間,つまり該メイン軸87の前側にシフトドラム93を配置したので、従来の、メイン軸の後側にシフトドラムを配置する場合に比べてドライブ軸88をクランク軸21側に近づけて配置することができ、クランクケース16の前後長さを短くできる。
本実施形態では、クランク軸21の中心を通る水平面Aの上側に第1バランサ軸105を、下側に第2バランサ軸106をそれぞれ配置したので、クランク軸21を挟んだ第1,第2バランサ軸105,106の水平方向軸間距離を小さくすることができ、この点からもクランクケース12の前後長さを短くできる。
次に上記エンジン15の潤滑装置を、主として図14〜図20に基づいて説明する。
本実施形態の潤滑装置は、図20に示すようにオイルタンク80内の潤滑油をオイルフィードポンプ124cで変速機に供給する変速機潤滑系126とエンジンに供給するエンジン潤滑系127とを備えており、該エンジン潤滑系127はカム潤滑系127aとシリンダ潤滑系127bとに分岐される。これらの各潤滑系において各被潤滑部を潤滑した潤滑油はクランクケース16の底部のオイル溜まり部16eに落下し、ここからオイルスカベンジポンプ124a,124bにより吸い上げられて上記オイルタンク80に戻される。
上記変速機潤滑系126では、潤滑油はメイン軸から入力側ギヤ群,クラッチ機構に供給され、さらにミッションシャワーを介してドライブ軸,シフトフォークに供給され、この後,出力側ギヤ群に供給される。
上記カム潤滑系127aでは、潤滑油は右側クランクジャーナルから左側の前,後カムジャーナル,前コンロッド大端部,油圧テンショナにそれぞれ分岐して供給され、左側の前カムジャーナルに供給された潤滑油は前油圧リフタ,右側の前カムジャーナルから前プッシュロッドを経て前ロッカアームに供給される。また左側の後カムジャーナルに供給された潤滑油は後油圧リフタ,右側の後カムジャーナルから後プッシュロッドを経て後ロッカアームに供給される。さらに前コンロッドに供給された潤滑油は前ピストンに供給される。
上記シリンダ潤滑系127bでは、潤滑油は左側クランクジャーナルから前,後シリンダヘッド,ACMコイル,後コンロッド大端部,スタータワンウェイにそれぞれ分岐して供給される。上記前,後シリンダヘッドに供給された潤滑油はそれぞれ前,後バルブステムエンドに供給され、後コンロッドに供給された潤滑油は後ピストンに供給される。そして各被潤滑部を潤滑した潤滑油は不図示の戻り通路等を介してクランクケース16の底部に落下する。
上記クランクケース16の後壁16dの下端部にはオイルフィルタ130が着脱可能に取付けられている。このオイルフィルタ130は、フィルタ室130a内にオイルエレメント131を配設し、該オイルエレメント131によりフィルタ室130aをオイル流入室130bとオイル流出室130cとに区分けした構造となっている。上記オイル流入室130bには上記後壁16dに形成された流入通路16fが連通しており、上記オイル流出室130cには上記後壁16dに形成された流出通路16gが連通している。
上記後壁16dの流出通路16gにはメインギャラリ128が連通接続されている。このメインギャラリ128は左,右のクランクジャーナル21c,21cに連通している。また上記クランクケース16にはメインギャラリ128の上流端に連通するミッション通路129が形成されており、該ミッション通路129はメイン軸87の右側端部を支持するボス部87aに連通している。
上記クランクケース16内のシフトドラム93の下方に上記オイルスカベンジポンプ124a,124b及びオイルフィードポンプ124cとして機能するオイルポンプ125が配設されている。このオイルポンプ125は、クランクケース16の右側壁16hの内側に取付け固定されたハウジング125aと、該ハウジング125a内に回転自在に挿入され,クランク軸21と平行に配置されたポンプ軸125bとを有しており、該ポンプ軸125bのハウジング125aから突出した左側端部にはポンプギヤ133が装着されている。このポンプギヤ133は、図6に示すように、第2バランサ軸106の左端部に装着された駆動ギヤ134に中間ギヤ135を介して噛合しており、これによりクランク軸21の回転によりポンプ軸125bが回転するようになっている。
図16に示すように、上記ハウジンク125a内のポンプ軸125b回りにはオイルスカベンジポンプ124a,124bとして機能する第1,第2ポンプ室136a,136b、オイルフィードポンプ124cとして機能する第3ポンプ室136cがそれぞれ区分けして形成されている。該各ポンプ室136a〜136cには上記ポンプ軸125bに装着された第1,第2,第3ロータ137a,137b,137cが配設されている。
上記ハウジング125aの第3ポンプ室136cの上流側には吸込通路138aが、下流側には吐出通路138bが形成されている。この吸込通路138aには上記オイルタンク80に接続されたオイル給油管132の下流端が接続されている。また上記吐出通路138bには潤滑油の逆流を防止するチェック弁139を介在させて上記オイルフィルタ130のオイル流入室130bが連通接続されている。
上記ハウジング125aの第1,第2ポンプ室136a,136bの上流側にはそれぞれ独立した第1,第2回収通路140a,140bが形成されており、下流側には合流通路140cが形成されている。この合流通路140cにはオイル戻し管141が接続されており、該オイル戻し管141の下流端は上記オイルタンク80に接続されている。
上記クランクケース16の底部には略平坦なオイル溜まり部16eが形成されている。また上記クランクケース16内には上記クランクウェブ21bの回転軌跡の下部を囲む円弧状の仕切り壁16iが形成されており、該仕切り壁16iの前端部には全幅に渡る長さの切欠き部16jが形成されている。上記仕切り壁16iはクランク軸21の回転移動によりオイル溜まり部16e内の潤滑油が撹拌されるのを防止するためのものである。また切り欠き部16jはクランク軸21に撥ね上げられた潤滑油をオイル溜まり部16e内に戻すための開口である。
ここで上述の仕切り壁16iが円弧状に形成されており、これのクランク軸下方部位が該クランクケース16の底面に近接していることから、本実施形態の上記オイル溜まり部16eは、実質的にクランク軸21の軸心を含む鉛直面Bを挟んでこれより前側部分16e′と後側部分16e′′とに画成されていると見ることができる。
そして上記オイル溜まり部16eのクランク軸21を挟んだ前側部分16e′及び後側部分16e′′にはそれぞれ前側,後側吸込口142,143が設けられている。ここでオイル溜まり部16eの前側部分16e′及び後側部分16e′′は、クランク軸21の回転やピストンの往復移動に伴う圧力変動により潤滑油が押し流されて滞留し易い部分となっており、このような部分に上記前,後側吸込口142,143が配置されている。
上記後側吸込口143は、上記オイルポンプ125の第1回収通路140aに一体に連通接続されており、クランクケース底面に近接するよう下向きに拡開している。またこの後側吸込口143には平板上の後ストレーナ143aが配設されている。
上記前側吸込口142はクランクケース16の右側壁16hの仕切り壁16iの下側に形成されている。この前側吸込口142には円筒状の前ストレーナ144が挿入されており、該前ストレーナ144には吸引管145が接続されている。この吸引管145は右側壁16hの外側に前後方向に延びるよう配設され、該吸引管145の下流端は上記オイルポンプ125の第2回収通路140bに連通接続されている。なお、上記吸引管145は、図17に示すように、クランク軸21のクランクウェブ21bより下側で、かつ該クランクウェブ21bからクランク軸方向に偏位した部位に配置されている。
次に本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態の潤滑装置によれば、オイル溜まり部16eのクランク軸21を挟んだ前側部分16e′,後側部分16e′′にそれぞれ吸込口142,143を配置したので、クランク軸21の回転に伴う圧力変動等でで潤滑油がオイル溜まり部16eの前側,後側に分散しても滞留させることなく確実に回収することができる。その結果、クランクケース16の底部を上げることが可能となり、その分だけエンジン高を抑制でき、さらには排気量を例えば1000cc以上と大きくする場合の潤滑油の滞留の問題を解消できる。
本実施形態では、各吸込口142,143をオイル溜まり部16eの前側部分16e′,後側部分16e′′に配置したので、潤滑油が最も滞留し易い箇所に各吸込口142,143を配置したこととなり、潤滑油の回収効率を高めることができる。
本実施形態では、オイルポンプ125のポンプ軸125bに各吸込口142,143から潤滑油を吸い上げる第1,第2ロータ137a,137bを装着するとともに、オイルタンク80の潤滑油を吐出する第3ロータ137cを装着したので、クランクケース16内にオイルポンプ125を1つ配置するだけで2つのスカベンジポンプ124a,124b、1つのオイルフィードポンプ124cとして機能させることができ、潤滑系の大型化を防止できる。
なお、上記実施形態では、オイルタンク80をシート下方に配置した場合を例に説明したが、本発明では、図24に示すように、オイルタンク80をヘッドパイプ(不図示)の後側で、かつガセット2cと燃料タンク9とで囲まれた空間に配置してもよい。なお、この場合には、オイルポンプ125はクランクケース底部の前端に配置すればよい。
このようにした場合には、車体フレーム2の前部の空きスペースを有効利用してオイルタンク80を配置できるとともに、該オイルタンク80とオイルポンプ125との配管距離を上記シート下方に配置する場合に比べて短くすることができ、潤滑経路を簡素化できる。
15 エンジン
21 クランク軸
85 クランクギヤ
87 メイン軸
88 ドライブ軸
93 シフトドラム
105 第1バランサ軸
106 第2バランサ軸
109 第2バランサギヤ
110 第2バランサギヤ
111 カウンタギヤ
115 皿ばね式トルクダンパ
A 水平面
21 クランク軸
85 クランクギヤ
87 メイン軸
88 ドライブ軸
93 シフトドラム
105 第1バランサ軸
106 第2バランサ軸
109 第2バランサギヤ
110 第2バランサギヤ
111 カウンタギヤ
115 皿ばね式トルクダンパ
A 水平面
Claims (5)
- クランク軸と平行に配設された第1,第2バランサ軸の各バランサギヤをクランク軸のクランクギヤで回転駆動するようにしたエンジンのバランサ構造において、上記クランク軸の軸心を含む鉛直面を挟んだ一側に上記第1バランサ軸が、他側に第2バランサ軸がそれぞれ配設され、該第2バランサ軸に、上記クランク軸の回転を変速機構のメイン軸に伝達するカウンタギヤが配設されていることを特徴とするエンジンのバランサ構造。
- 請求項1において、上記クランク軸からの大トルクが上記メイン軸に直接伝達されるのを防止するトルクダンパが、クランク軸の駆動力をメイン軸に伝達する駆動力伝達経路における上記第2バランサ軸のバランサギヤよりも下流側に配設されていることを特徴とするエンジンのバランサ構造。
- 請求項1又は2において、上記第2バランサ軸を挟んで上記クランク軸の反対側に上記メイン軸が配設されており、該メイン軸と上記第2バランサ軸との間にシフトドラムが配設されていることを特徴とするエンジンのバランサ構造。
- 請求項1又は2において、上記クランク軸の軸心を含む水平面を挟んで一側に上記第1バランサ軸が、他側に上記第2バランサ軸がそれぞれ配置されていることを特徴とするエンジンのバランサ構造。
- 請求項1又は2において、上記エンジンは、前,後気筒をVバンクをなすように配置してなり、上記クランク軸が車幅方向に向くように車体に搭載されるV型2気筒エンジンであり、上記第1バランサ軸は、上記クランク軸の軸心を含む鉛直面より前側でかつ該軸心を含む水平面より上側に配置され、上記第2バランサ軸は、上記鉛直面より後側でかつ上記水平面より下側に配置されており、上記第2バランサ軸の後方でかつ上記水平面付近に変速機構のドライブ軸が配置され、該水平面より上側でかつ上記ドライブ軸と第2バランサ軸との間に上記メイン軸が配置され、シフトドラムは、これの軸心が上記メイン軸,上記ドライブ軸,及び上記第2バランサ軸のそれぞれの軸心で囲まれた領域に位置するように配設されていることを特徴とするエンジンのバランサ構造。
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