JP2005015827A - アルミニウム摺動部材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂材料にセラミックス粒子等を複合化した樹脂系複合摺動部材との摺動に用いられるアルミニウム摺動部材において、樹脂系複合摺動部材の摩耗を抑制することができるとともに、アルミニウム摺動部材自身の摩耗も抑制することのできるアルミニウム摺動部材を提供すること。
【解決手段】樹脂系複合摺動部材との摺動に用いられるアルミニウム摺動部材であって、主としてアルミニウムからなる母相と、この母相中に分散された第2相とからなり、前記第2相は金属、金属化合物およびセラミックスの中から選択される少なくとも一種からなり、その平均粒径または平均直径は0.1μm〜100μmであり、前記母相と第2相との合計体積における前記第2相の割合が0.1〜50体積%であるもの。
【選択図】 図1
【解決手段】樹脂系複合摺動部材との摺動に用いられるアルミニウム摺動部材であって、主としてアルミニウムからなる母相と、この母相中に分散された第2相とからなり、前記第2相は金属、金属化合物およびセラミックスの中から選択される少なくとも一種からなり、その平均粒径または平均直径は0.1μm〜100μmであり、前記母相と第2相との合計体積における前記第2相の割合が0.1〜50体積%であるもの。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエネルギー機器、一般の産業機器、OA機器、家電機器、自動車等に用いられるアルミニウム摺動部材およびその製造方法に係り、特に樹脂系複合摺動部材との摺動に好適に用いられるアルミニウム摺動部材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エネルギー機器、一般の産業機器、OA機器、家電機器、自動車等にはふっ素樹脂等の樹脂材料からなる摺動部材が用いられている。近年、このような摺動部材には摺動部分の高速化、高面圧化に伴い、材料特性の向上が求められている。
【0003】
しかし、樹脂材料単体からなる摺動部材ではこのような要求を満たすことは困難であるため、樹脂材料を母材とし、これにセラミックス粉末等を添加して複合摺動部材とし、その機械特性や摩擦、摩耗特性を向上させている。
【0004】
一方、このような樹脂系の複合摺動部材と摺動する相手材としては、これまで鉄系摺動部材が用いられていたが、軽量化等のためにアルミニウムやアルミニウム合金からなる摺動部材が用いられるようになっている。
【0005】
しかし、アルミニウムやアルミニウム合金からなる摺動部材は軟質であるため、上述した樹脂系複合摺動部材と摺動させると、樹脂系複合摺動部材に含まれる硬質なセラミック粒子あるいはセラミック繊維等により激しく摩耗してしまう。
【0006】
このような軟質のアルミニウム摺動部材の摩耗を抑制するために、樹脂系複合摺動部材における樹脂の種類を最適なものとしたり、それに複合化するセラミック粒子等をアルミニウム摺動部材を摩耗させにくいものとすることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−001688
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、樹脂材料単体からなる摺動部材では所定の特性を得ることが困難なため、樹脂材料にセラミックス粒子等を添加して複合摺動部材とすることにより特性を向上させている。そして、軟質なアルミニウム摺動部材を摩耗させないような方法も各種検討されている。
【0009】
しかしながら、樹脂系複合摺動部材における検討だけでは軟質なアルミニウム摺動部材の摩耗を十分に抑制することは難しく、アルミニウム摺動部材自身が樹脂系複合摺動部材との摺動においても摩耗しにくいものであることが望まれる。
【0010】
本発明は上述したような課題を解決するためになされたものであって、樹脂材料にセラミックス粒子等を添加したような樹脂系複合摺動部材との摺動に好適なアルミニウム摺動部材であって、樹脂系複合摺動部材の摩耗を抑制すると共に、アルミニウム摺動部材自身の摩耗も抑制されたアルミニウム摺動部材およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のアルミニウム摺動部材は、樹脂系複合摺動部材との摺動に用いられるアルミニウム摺動部材であって、主としてアルミニウムからなる母相と、この母相中に分散された第2相とからなり、前記第2相は金属、金属化合物およびセラミックスの中から選択される少なくとも一種からなり、その平均粒径または平均直径が0.1μm〜100μmであり、前記母相と第2相との合計体積における前記第2相の割合が0.1〜50体積%であることを特徴とする。
【0012】
前記母相は、アルミニウム単体、または、アルミニウムにリチウム、マグネシウム、ストロンチウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、銅、銀、亜鉛、カドミウム、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、セレン、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の金属を固溶させたアルミニウム合金であることが好ましい。
【0013】
前記第2相を構成する金属または金属合金は、リチウム、マグネシウム、ストロンチウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、銅、銀、亜鉛、カドミウム、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、セレン、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属どうしの金属間化合物もしくはこれらの金属とアルミニウムとの金属間化合物であることが好ましい。
【0014】
前記第2相を構成するセラミックスは、リチウム、マグネシウム、ストロンチウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、銅、銀、亜鉛、カドミウム、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、セレン、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物、窒化物、炭化物もしくは硫化物、または、カーボンブラックもしくはグラファイトであることが好ましく、その形状は例えば粒子、繊維、ウィスカ、ナノチューブ、ナノホーンまたはフラーレン状であることが好ましい。
【0015】
前記アルミニウム摺動部材には表面改質層を形成してもよく、このような表面改質層としては例えば陽極酸化処理皮膜、または、Ib族、IVb族の金属の酸化物、窒化物、炭化物もしくは硫化物またはカーボンブラックもしくはグラファイトを充填した陽極酸化処理皮膜が挙げられる。また、前記表面改質層としては上述したもの以外に物理蒸着、化学蒸着、電解めっきまたは無電解めっきにより形成されるものであってもよい。
【0016】
前記表面改質層は、前記アルミニウム摺動部材との接合強度に優れる下地層を介して形成されていればより好ましい。
【0017】
このような本発明のアルミニウム摺動部材は、例えばふっ素樹脂からなる母材と、この母材中に分散されたセラミックスからなる第2相とからなり、前記母材と第2相との合計体積における前記第2相の割合が0.1〜50体積%である樹脂系複合摺動部材との摺動に好適に用いられるものである。
【0018】
本発明のアルミニウム摺動部材の製造方法は、上述したような樹脂系複合摺動部材との摺動に好適に用いられるアルミニウム摺動部材の製造方法であって、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末に、混合後の全体積における割合が0.1〜50体積%となるように平均粒径または平均直径が0.1μm〜100μmの金属粉末、金属合金粉末およびセラミックス粉末から選択される少なくとも1種の粉末を混合して混合粉末を製造する工程と、前記混合粉末を成形して成形体を作製した後、前記成形体を熱処理してアルミニウム摺動部材を得る工程とからなることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について説明する。
【0020】
図1は、本発明のアルミニウム摺動部材1およびこのアルミニウム摺動部材1と摺動する樹脂系複合摺動部材2を示したものである。本発明のアルミニウム摺動部材1は、図1に示されるような樹脂系複合摺動部材2、すなわち母相3である樹脂材料中に第2相4であるセラミックス粒子5やセラミックス繊維6等が複合化されたものとの摺動に好適に用いられる。
【0021】
このような樹脂系複合摺動部材2との摺動に用いられる本発明のアルミニウム摺動部材1は、主としてアルミニウムからなる母相7と、この母相7中に分散された第2相8とからなるものである。
【0022】
第2相8は、金属もしくは金属合金からなる第2相9またはセラミックスからなる第2相10からなる。第2相8は、これら金属もしくは金属合金からなる第2相9およびセラミックスからなる第2相10のうちいずれか一方のみからなるものであってもよいし、両者からなるものであってもよい。
【0023】
アルミニウム摺動部材1における主としてアルミニウムからなる母相7は、アルミニウム(Al)単体からなるものとしてもよいし、アルミニウム(Al)にリチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、ランタン(La)およびセリウム(Ce)から選ばれる少なくとも1種の金属を固溶させたアルミニウム合金としてもよい。
【0024】
本発明のアルミニウム摺動部材1における母相7としては、アルミニウムに上述した金属を固溶させたアルミニウム合金がより好ましい。特に、上述した金属とアルミニウムとを含む液相を急速冷却させて、上述した金属を多量に強制固溶させた過飽和固溶体とすれば、機械的性質および耐摩耗性を改善できるため好ましい。本発明では、例えば母相7として上述したような金属を0.1〜10重量%程度強制的に固溶させたものが好ましい。
【0025】
アルミニウム摺動部材1の第2相8のうち、金属または金属合金からなる第2相9としては、例えばリチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、ランタン(La)、セリウム(Ce)等の金属またはこれらの金属の金属間化合物もしくはこれらの金属とアルミニウムとの金属間化合物からなるものが挙げられる。
【0026】
また、アルミニウム摺動部材1の第2相8のうち、セラミックスからなる第2相10としては、例えば上述したような各金属の酸化物、窒化物、炭化物もしくは硫化物の他、カーボンブラックもしくはグラファイト等の炭素材料を用いることができる。
【0027】
セラミックスからなる第2相10の形状は特に限定されるものではなく、粒子、繊維、ウィスカ、ナノチューブ、ナノホーンおよびフラーレン状のものを用いることができ、これらは適宜選択して用いることができる。
【0028】
このようなアルミニウム摺動部材1の第2相8は平均粒径または平均直径が0.1μm〜100μmであることが好ましい。そして、第2相8の含有量は、アルミニウム摺動部材1の母相7と第2相8との合計体積において0.1〜50体積%の範囲であることが好ましい。
【0029】
第2相8の平均粒径または平均直径が0.1μm未満であると、相手材となる樹脂系複合摺動部材2の摩耗を抑制することはできるが、アルミニウム摺動部材1自身が摩耗しやすくなる。また、平均粒径または平均直径が100μmを超えると、アルミニウム摺動部材1自身の摩耗を抑制することはできるが、相手材となる樹脂系複合摺動部材2を摩耗させやすくなる。
【0030】
同様に、第2相8の含有量が0.1体積%未満であると、相手材となる樹脂系複合摺動部材2の摩耗を抑制することができるが、アルミニウム摺動部材1自身が摩耗しやすくなる。また、含有量が50体積%を超えると、アルミニウム摺動部材1自身の摩耗を抑制することはできるが、相手材となる樹脂系複合摺動部材2を摩耗させやすくなる。
【0031】
本発明においては、第2相8の平均粒径または平均直径が1μm〜5μmであればより好ましく、母相7と第2相8との合計体積における第2相8の割合が10体積%〜25体積%であればより好ましい。第2相8の平均粒径または平均直径、含有量をこのような範囲とすることにより、相手材である樹脂系複合摺動部材2の摩耗をさらに抑制することができるとともに、アルミニウム摺動部材1自身の摩耗も抑制できるため好ましい。
【0032】
このような本発明のアルミニウム摺動部材1は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、主としてアルミニウムからなる母相7を形成するためのアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末に、混合後の全体積における割合が0.1〜50体積%となるように第2相8を形成するための金属粉末、金属化合物粉末およびセラミックス粉末から選ばれる少なくとも1種の粉末を混合して混合粉末を得る。
【0033】
そして、この混合粉末を所定の形状に成形した後、焼成することによりアルミニウム摺動部材1を得ることができる。この際、第2相8が金属または金属合金からなる第2相9となる場合には、焼成の際に熱処理温度、時間を制御することにより、その平均粒径または平均直径等を制御する。
【0034】
また本発明のアルミニウム摺動部材1は、上述した方法以外にも、例えば第2相8となるセラミックス粉末等で予備成形体を形成した後、これに母相7となるアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を含浸させて製造してもよく、種々の方法を用いて製造することができる。
【0035】
また、本発明のアルミニウム摺動部材1には、例えば図2に示すように、その摺動面に表面改質層11を形成してもよい。アルミニウム摺動部材1の摺動面に表面改質層11を形成することで、アルミニウム摺動部材1の耐摩耗特性等をさらに向上させることができる。
【0036】
このような表面改質層11としては、例えば陽極酸化処理して得られる陽極酸化皮膜が挙げられる。また、この陽極酸化皮膜にはその微細な孔にIb族、IVb族の金属の酸化物、窒化物、炭化物もしくは硫化物またはカーボンブラックもしくはグラファイト等の炭素材料を充填してもよい。このようにすることで、摺動特性を向上させることができる。
【0037】
陽極酸化皮膜を形成する方法としては、電解を行う条件、すなわら電解溶液の組成、濃度、電解条件(電圧、電流密度、電流−電圧波形)等を適宜選択して行う。陽極酸化処理液については、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)から選ばれる1種以上の元素を含有する溶液で電解を行うことが必要であり、例えば、シュウ酸、ギ酸、スルファミン酸、リン酸、亜リン酸、ホウ酸、硝酸あるいはその化合物、フタル酸あるいはその化合物から選ばれる1種以上を含む水溶液を用いて行う。
【0038】
また、表面改質層11は上述した陽極酸化処理により得られる陽極酸化皮膜の他、物理蒸着、化学蒸着、電解めっきまたは無電解めっきにより得られるものであってもよい。このような方法により得られる表面改質層11としては、例えばNi、Ni−P、Ni−B、Ni−W等からなるものが挙げられる。
【0039】
このような陽極酸化処理または物理蒸着、化学蒸着、電解めっきもしくは無電解めっきにより得られる表面改質層11の厚さは、1μm〜100μmとすることが好ましい。厚さが1μm未満である場合、表面改質層11を設けた効果が十分に得られず、また厚さが100μmを超えても摩耗がそれ以上進行せず、また表面改質層の形成時間が長く不経済となる。
【0040】
また、表面改質層11はアルミニウム摺動部材1との接合強度に優れる下地層を介して形成されていることが好ましい。アルミニウム摺動部材1との接合強度に優れる下地層を介して表面改質層11を形成することで、アルミニウム摺動部材1から表面改質層11が剥離することを抑制することができる。
【0041】
以上説明したような本発明のアルミニウム摺動部材1は、図1に示されるような樹脂材料からなる母材3中に第2相4であるセラミックス粒子5やセラミックス繊維6等が複合化された樹脂系複合摺動部材2との摺動に好適である。
【0042】
本発明のアルミニウム摺動部材1をこのような樹脂系複合摺動部材2との摺動に用いることで、樹脂系複合摺動部材2の摩耗を抑制すると共に、アルミニウム摺動部材1自身の摩耗も抑制することができる。
【0043】
本発明のアルミニウム摺動部材1と摺動させる樹脂系複合摺動部材2としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のふっ素樹脂を母材3とし、第2相4として本発明のアルミニウム摺動部材1の第2相8に用いられるようなセラミックスと同様な種類のものを複合化したものが挙げられる。
【0044】
樹脂系複合摺動部材2における第2相4であるセラミックスの平均粒径または平均直径や含有量は特に制限されるものではないが、平均粒径または平均直径を0.1μm〜100μm、全体積に対する割合を0.1〜50体積%とすることが好ましい。例えば、数μm〜数十μmの平均粒径または平均直径のものを用いる場合には、全体積に対する割合を10体積%〜25体積%とすることが好ましい。
【0045】
本発明のアルミニウム摺動部材1と樹脂系複合摺動部材2とは、例えば図1に示されるように、アルミニウム摺動部材1の摺動面と樹脂系複合摺動部材2の摺動面とが対向するように組み合わせて摺動部材構造体として用いることができる。
【0046】
そして、このような摺動部材構造体は、例えばエネルギー機器、一般の産業機器、OA機器、家電機器、自動車等における滑り軸受、ローラー等として好適に用いることができる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明について実施例を参照して具体的に説明する。
【0048】
(実施例1)
液体状態から約106℃/sの冷却速度で急冷擬固した平均粒径10μmのAl−6重量%Si−0.3重量%Fe合金のアトマイズ粉末と、平均粒径3μmのBN粉末とを混合し、粉末冶金プロセスでプレス成形した後焼結を行ない、Al−6重量%Si−0.3重量%Fe合金を母相とし、5体積%のBNを第2相として含有するアルミニウム摺動部材を作製した。そして、このアルミニウム摺動部材の表面に、厚さ10μmの陽極酸化処理を施した。
【0049】
一方、アルミニウム摺動部材に対する摺動相手材となる樹脂系複合摺動部材として、平均粒径20μmのふっ素樹脂粉末と平均直径5μm、平均長さ500μmのガラス繊維とを混合し、圧力50MPaでプレス成形した後、375℃で2時間焼成してふっ素樹脂複合材料を作製した。
【0050】
このようにして得られたアルミニウム摺動部材とふっ素樹脂複合材料とを、面圧4MPa、摺動速度20m/sで10時間の往復摺動摩耗試験を行い、それらの摩耗減量を測定した。その結果、ふっ素樹脂複合材料の摩耗減量は約10μmであり、アルミニウム摺動部材の摩耗減量は測定されなかった。
【0051】
(比較例1)
市販の6061アルミニウム合金(Si:0.6重量%、Fe:0.3重量%、Mg:0.6重量%)板材をアルミニウム摺動部材として用い、これに対する摺動相手材となる樹脂系複合摺動部材として実施例1と同様のふっ素樹脂複合材料を用い、実施例1と同様の条件で往復摺動摩耗試験を行い、それらの摩耗減量を測定した。
【0052】
その結果、ふっ素樹脂複合材料の摩耗減量は実施例1と同程度であったが、アルミニウム摺動部材の表面には激しい凝着摩耗の痕跡が観察され、摩耗減量は著しく増加し、500μmとなった。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、樹脂系複合摺動部材との摺動に用いられるアルミニウム摺動部材を主としてアルミニウムからなる母相と、この母相中に分散された第2相とからなるものとし、第2相を金属、金属化合物およびセラミックスの中から選択される少なくとも一種からなるものとし、その平均粒径または平均直径を0.1μm〜100μmとし、母相と第2相との合計体積における第2相の割合を0.1〜50体積%とすることにより、相手材である樹脂系複合摺動部材の摩耗を抑制すると共に、アルミニウム摺動部材自身の摩耗も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルミニウム摺動部材および樹脂系複合摺動部材からなる摺動部材構造体の一例を示す断面図
【図2】本発明のアルミニウム摺動部材および樹脂系複合摺動部材からなる摺動部材構造体の他の例を示す断面図
【符号の説明】
1…アルミニウム摺動部材、2…樹脂系複合摺動部材、3…樹脂系複合摺動部材の母相、4…樹脂系複合摺動部材の第2相、5…セラミックス粒子、6…セラミックス繊維、7…アルミニウム摺動部材の母相、8…アルミニウム摺動部材の第2相、9…金属または金属合金からなる第2相、10…セラミックスからなる第2相、11…表面改質層
【発明の属する技術分野】
本発明はエネルギー機器、一般の産業機器、OA機器、家電機器、自動車等に用いられるアルミニウム摺動部材およびその製造方法に係り、特に樹脂系複合摺動部材との摺動に好適に用いられるアルミニウム摺動部材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エネルギー機器、一般の産業機器、OA機器、家電機器、自動車等にはふっ素樹脂等の樹脂材料からなる摺動部材が用いられている。近年、このような摺動部材には摺動部分の高速化、高面圧化に伴い、材料特性の向上が求められている。
【0003】
しかし、樹脂材料単体からなる摺動部材ではこのような要求を満たすことは困難であるため、樹脂材料を母材とし、これにセラミックス粉末等を添加して複合摺動部材とし、その機械特性や摩擦、摩耗特性を向上させている。
【0004】
一方、このような樹脂系の複合摺動部材と摺動する相手材としては、これまで鉄系摺動部材が用いられていたが、軽量化等のためにアルミニウムやアルミニウム合金からなる摺動部材が用いられるようになっている。
【0005】
しかし、アルミニウムやアルミニウム合金からなる摺動部材は軟質であるため、上述した樹脂系複合摺動部材と摺動させると、樹脂系複合摺動部材に含まれる硬質なセラミック粒子あるいはセラミック繊維等により激しく摩耗してしまう。
【0006】
このような軟質のアルミニウム摺動部材の摩耗を抑制するために、樹脂系複合摺動部材における樹脂の種類を最適なものとしたり、それに複合化するセラミック粒子等をアルミニウム摺動部材を摩耗させにくいものとすることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−001688
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、樹脂材料単体からなる摺動部材では所定の特性を得ることが困難なため、樹脂材料にセラミックス粒子等を添加して複合摺動部材とすることにより特性を向上させている。そして、軟質なアルミニウム摺動部材を摩耗させないような方法も各種検討されている。
【0009】
しかしながら、樹脂系複合摺動部材における検討だけでは軟質なアルミニウム摺動部材の摩耗を十分に抑制することは難しく、アルミニウム摺動部材自身が樹脂系複合摺動部材との摺動においても摩耗しにくいものであることが望まれる。
【0010】
本発明は上述したような課題を解決するためになされたものであって、樹脂材料にセラミックス粒子等を添加したような樹脂系複合摺動部材との摺動に好適なアルミニウム摺動部材であって、樹脂系複合摺動部材の摩耗を抑制すると共に、アルミニウム摺動部材自身の摩耗も抑制されたアルミニウム摺動部材およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のアルミニウム摺動部材は、樹脂系複合摺動部材との摺動に用いられるアルミニウム摺動部材であって、主としてアルミニウムからなる母相と、この母相中に分散された第2相とからなり、前記第2相は金属、金属化合物およびセラミックスの中から選択される少なくとも一種からなり、その平均粒径または平均直径が0.1μm〜100μmであり、前記母相と第2相との合計体積における前記第2相の割合が0.1〜50体積%であることを特徴とする。
【0012】
前記母相は、アルミニウム単体、または、アルミニウムにリチウム、マグネシウム、ストロンチウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、銅、銀、亜鉛、カドミウム、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、セレン、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の金属を固溶させたアルミニウム合金であることが好ましい。
【0013】
前記第2相を構成する金属または金属合金は、リチウム、マグネシウム、ストロンチウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、銅、銀、亜鉛、カドミウム、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、セレン、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属どうしの金属間化合物もしくはこれらの金属とアルミニウムとの金属間化合物であることが好ましい。
【0014】
前記第2相を構成するセラミックスは、リチウム、マグネシウム、ストロンチウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、銅、銀、亜鉛、カドミウム、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、セレン、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物、窒化物、炭化物もしくは硫化物、または、カーボンブラックもしくはグラファイトであることが好ましく、その形状は例えば粒子、繊維、ウィスカ、ナノチューブ、ナノホーンまたはフラーレン状であることが好ましい。
【0015】
前記アルミニウム摺動部材には表面改質層を形成してもよく、このような表面改質層としては例えば陽極酸化処理皮膜、または、Ib族、IVb族の金属の酸化物、窒化物、炭化物もしくは硫化物またはカーボンブラックもしくはグラファイトを充填した陽極酸化処理皮膜が挙げられる。また、前記表面改質層としては上述したもの以外に物理蒸着、化学蒸着、電解めっきまたは無電解めっきにより形成されるものであってもよい。
【0016】
前記表面改質層は、前記アルミニウム摺動部材との接合強度に優れる下地層を介して形成されていればより好ましい。
【0017】
このような本発明のアルミニウム摺動部材は、例えばふっ素樹脂からなる母材と、この母材中に分散されたセラミックスからなる第2相とからなり、前記母材と第2相との合計体積における前記第2相の割合が0.1〜50体積%である樹脂系複合摺動部材との摺動に好適に用いられるものである。
【0018】
本発明のアルミニウム摺動部材の製造方法は、上述したような樹脂系複合摺動部材との摺動に好適に用いられるアルミニウム摺動部材の製造方法であって、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末に、混合後の全体積における割合が0.1〜50体積%となるように平均粒径または平均直径が0.1μm〜100μmの金属粉末、金属合金粉末およびセラミックス粉末から選択される少なくとも1種の粉末を混合して混合粉末を製造する工程と、前記混合粉末を成形して成形体を作製した後、前記成形体を熱処理してアルミニウム摺動部材を得る工程とからなることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について説明する。
【0020】
図1は、本発明のアルミニウム摺動部材1およびこのアルミニウム摺動部材1と摺動する樹脂系複合摺動部材2を示したものである。本発明のアルミニウム摺動部材1は、図1に示されるような樹脂系複合摺動部材2、すなわち母相3である樹脂材料中に第2相4であるセラミックス粒子5やセラミックス繊維6等が複合化されたものとの摺動に好適に用いられる。
【0021】
このような樹脂系複合摺動部材2との摺動に用いられる本発明のアルミニウム摺動部材1は、主としてアルミニウムからなる母相7と、この母相7中に分散された第2相8とからなるものである。
【0022】
第2相8は、金属もしくは金属合金からなる第2相9またはセラミックスからなる第2相10からなる。第2相8は、これら金属もしくは金属合金からなる第2相9およびセラミックスからなる第2相10のうちいずれか一方のみからなるものであってもよいし、両者からなるものであってもよい。
【0023】
アルミニウム摺動部材1における主としてアルミニウムからなる母相7は、アルミニウム(Al)単体からなるものとしてもよいし、アルミニウム(Al)にリチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、ランタン(La)およびセリウム(Ce)から選ばれる少なくとも1種の金属を固溶させたアルミニウム合金としてもよい。
【0024】
本発明のアルミニウム摺動部材1における母相7としては、アルミニウムに上述した金属を固溶させたアルミニウム合金がより好ましい。特に、上述した金属とアルミニウムとを含む液相を急速冷却させて、上述した金属を多量に強制固溶させた過飽和固溶体とすれば、機械的性質および耐摩耗性を改善できるため好ましい。本発明では、例えば母相7として上述したような金属を0.1〜10重量%程度強制的に固溶させたものが好ましい。
【0025】
アルミニウム摺動部材1の第2相8のうち、金属または金属合金からなる第2相9としては、例えばリチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、ランタン(La)、セリウム(Ce)等の金属またはこれらの金属の金属間化合物もしくはこれらの金属とアルミニウムとの金属間化合物からなるものが挙げられる。
【0026】
また、アルミニウム摺動部材1の第2相8のうち、セラミックスからなる第2相10としては、例えば上述したような各金属の酸化物、窒化物、炭化物もしくは硫化物の他、カーボンブラックもしくはグラファイト等の炭素材料を用いることができる。
【0027】
セラミックスからなる第2相10の形状は特に限定されるものではなく、粒子、繊維、ウィスカ、ナノチューブ、ナノホーンおよびフラーレン状のものを用いることができ、これらは適宜選択して用いることができる。
【0028】
このようなアルミニウム摺動部材1の第2相8は平均粒径または平均直径が0.1μm〜100μmであることが好ましい。そして、第2相8の含有量は、アルミニウム摺動部材1の母相7と第2相8との合計体積において0.1〜50体積%の範囲であることが好ましい。
【0029】
第2相8の平均粒径または平均直径が0.1μm未満であると、相手材となる樹脂系複合摺動部材2の摩耗を抑制することはできるが、アルミニウム摺動部材1自身が摩耗しやすくなる。また、平均粒径または平均直径が100μmを超えると、アルミニウム摺動部材1自身の摩耗を抑制することはできるが、相手材となる樹脂系複合摺動部材2を摩耗させやすくなる。
【0030】
同様に、第2相8の含有量が0.1体積%未満であると、相手材となる樹脂系複合摺動部材2の摩耗を抑制することができるが、アルミニウム摺動部材1自身が摩耗しやすくなる。また、含有量が50体積%を超えると、アルミニウム摺動部材1自身の摩耗を抑制することはできるが、相手材となる樹脂系複合摺動部材2を摩耗させやすくなる。
【0031】
本発明においては、第2相8の平均粒径または平均直径が1μm〜5μmであればより好ましく、母相7と第2相8との合計体積における第2相8の割合が10体積%〜25体積%であればより好ましい。第2相8の平均粒径または平均直径、含有量をこのような範囲とすることにより、相手材である樹脂系複合摺動部材2の摩耗をさらに抑制することができるとともに、アルミニウム摺動部材1自身の摩耗も抑制できるため好ましい。
【0032】
このような本発明のアルミニウム摺動部材1は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、主としてアルミニウムからなる母相7を形成するためのアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末に、混合後の全体積における割合が0.1〜50体積%となるように第2相8を形成するための金属粉末、金属化合物粉末およびセラミックス粉末から選ばれる少なくとも1種の粉末を混合して混合粉末を得る。
【0033】
そして、この混合粉末を所定の形状に成形した後、焼成することによりアルミニウム摺動部材1を得ることができる。この際、第2相8が金属または金属合金からなる第2相9となる場合には、焼成の際に熱処理温度、時間を制御することにより、その平均粒径または平均直径等を制御する。
【0034】
また本発明のアルミニウム摺動部材1は、上述した方法以外にも、例えば第2相8となるセラミックス粉末等で予備成形体を形成した後、これに母相7となるアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を含浸させて製造してもよく、種々の方法を用いて製造することができる。
【0035】
また、本発明のアルミニウム摺動部材1には、例えば図2に示すように、その摺動面に表面改質層11を形成してもよい。アルミニウム摺動部材1の摺動面に表面改質層11を形成することで、アルミニウム摺動部材1の耐摩耗特性等をさらに向上させることができる。
【0036】
このような表面改質層11としては、例えば陽極酸化処理して得られる陽極酸化皮膜が挙げられる。また、この陽極酸化皮膜にはその微細な孔にIb族、IVb族の金属の酸化物、窒化物、炭化物もしくは硫化物またはカーボンブラックもしくはグラファイト等の炭素材料を充填してもよい。このようにすることで、摺動特性を向上させることができる。
【0037】
陽極酸化皮膜を形成する方法としては、電解を行う条件、すなわら電解溶液の組成、濃度、電解条件(電圧、電流密度、電流−電圧波形)等を適宜選択して行う。陽極酸化処理液については、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)から選ばれる1種以上の元素を含有する溶液で電解を行うことが必要であり、例えば、シュウ酸、ギ酸、スルファミン酸、リン酸、亜リン酸、ホウ酸、硝酸あるいはその化合物、フタル酸あるいはその化合物から選ばれる1種以上を含む水溶液を用いて行う。
【0038】
また、表面改質層11は上述した陽極酸化処理により得られる陽極酸化皮膜の他、物理蒸着、化学蒸着、電解めっきまたは無電解めっきにより得られるものであってもよい。このような方法により得られる表面改質層11としては、例えばNi、Ni−P、Ni−B、Ni−W等からなるものが挙げられる。
【0039】
このような陽極酸化処理または物理蒸着、化学蒸着、電解めっきもしくは無電解めっきにより得られる表面改質層11の厚さは、1μm〜100μmとすることが好ましい。厚さが1μm未満である場合、表面改質層11を設けた効果が十分に得られず、また厚さが100μmを超えても摩耗がそれ以上進行せず、また表面改質層の形成時間が長く不経済となる。
【0040】
また、表面改質層11はアルミニウム摺動部材1との接合強度に優れる下地層を介して形成されていることが好ましい。アルミニウム摺動部材1との接合強度に優れる下地層を介して表面改質層11を形成することで、アルミニウム摺動部材1から表面改質層11が剥離することを抑制することができる。
【0041】
以上説明したような本発明のアルミニウム摺動部材1は、図1に示されるような樹脂材料からなる母材3中に第2相4であるセラミックス粒子5やセラミックス繊維6等が複合化された樹脂系複合摺動部材2との摺動に好適である。
【0042】
本発明のアルミニウム摺動部材1をこのような樹脂系複合摺動部材2との摺動に用いることで、樹脂系複合摺動部材2の摩耗を抑制すると共に、アルミニウム摺動部材1自身の摩耗も抑制することができる。
【0043】
本発明のアルミニウム摺動部材1と摺動させる樹脂系複合摺動部材2としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のふっ素樹脂を母材3とし、第2相4として本発明のアルミニウム摺動部材1の第2相8に用いられるようなセラミックスと同様な種類のものを複合化したものが挙げられる。
【0044】
樹脂系複合摺動部材2における第2相4であるセラミックスの平均粒径または平均直径や含有量は特に制限されるものではないが、平均粒径または平均直径を0.1μm〜100μm、全体積に対する割合を0.1〜50体積%とすることが好ましい。例えば、数μm〜数十μmの平均粒径または平均直径のものを用いる場合には、全体積に対する割合を10体積%〜25体積%とすることが好ましい。
【0045】
本発明のアルミニウム摺動部材1と樹脂系複合摺動部材2とは、例えば図1に示されるように、アルミニウム摺動部材1の摺動面と樹脂系複合摺動部材2の摺動面とが対向するように組み合わせて摺動部材構造体として用いることができる。
【0046】
そして、このような摺動部材構造体は、例えばエネルギー機器、一般の産業機器、OA機器、家電機器、自動車等における滑り軸受、ローラー等として好適に用いることができる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明について実施例を参照して具体的に説明する。
【0048】
(実施例1)
液体状態から約106℃/sの冷却速度で急冷擬固した平均粒径10μmのAl−6重量%Si−0.3重量%Fe合金のアトマイズ粉末と、平均粒径3μmのBN粉末とを混合し、粉末冶金プロセスでプレス成形した後焼結を行ない、Al−6重量%Si−0.3重量%Fe合金を母相とし、5体積%のBNを第2相として含有するアルミニウム摺動部材を作製した。そして、このアルミニウム摺動部材の表面に、厚さ10μmの陽極酸化処理を施した。
【0049】
一方、アルミニウム摺動部材に対する摺動相手材となる樹脂系複合摺動部材として、平均粒径20μmのふっ素樹脂粉末と平均直径5μm、平均長さ500μmのガラス繊維とを混合し、圧力50MPaでプレス成形した後、375℃で2時間焼成してふっ素樹脂複合材料を作製した。
【0050】
このようにして得られたアルミニウム摺動部材とふっ素樹脂複合材料とを、面圧4MPa、摺動速度20m/sで10時間の往復摺動摩耗試験を行い、それらの摩耗減量を測定した。その結果、ふっ素樹脂複合材料の摩耗減量は約10μmであり、アルミニウム摺動部材の摩耗減量は測定されなかった。
【0051】
(比較例1)
市販の6061アルミニウム合金(Si:0.6重量%、Fe:0.3重量%、Mg:0.6重量%)板材をアルミニウム摺動部材として用い、これに対する摺動相手材となる樹脂系複合摺動部材として実施例1と同様のふっ素樹脂複合材料を用い、実施例1と同様の条件で往復摺動摩耗試験を行い、それらの摩耗減量を測定した。
【0052】
その結果、ふっ素樹脂複合材料の摩耗減量は実施例1と同程度であったが、アルミニウム摺動部材の表面には激しい凝着摩耗の痕跡が観察され、摩耗減量は著しく増加し、500μmとなった。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、樹脂系複合摺動部材との摺動に用いられるアルミニウム摺動部材を主としてアルミニウムからなる母相と、この母相中に分散された第2相とからなるものとし、第2相を金属、金属化合物およびセラミックスの中から選択される少なくとも一種からなるものとし、その平均粒径または平均直径を0.1μm〜100μmとし、母相と第2相との合計体積における第2相の割合を0.1〜50体積%とすることにより、相手材である樹脂系複合摺動部材の摩耗を抑制すると共に、アルミニウム摺動部材自身の摩耗も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルミニウム摺動部材および樹脂系複合摺動部材からなる摺動部材構造体の一例を示す断面図
【図2】本発明のアルミニウム摺動部材および樹脂系複合摺動部材からなる摺動部材構造体の他の例を示す断面図
【符号の説明】
1…アルミニウム摺動部材、2…樹脂系複合摺動部材、3…樹脂系複合摺動部材の母相、4…樹脂系複合摺動部材の第2相、5…セラミックス粒子、6…セラミックス繊維、7…アルミニウム摺動部材の母相、8…アルミニウム摺動部材の第2相、9…金属または金属合金からなる第2相、10…セラミックスからなる第2相、11…表面改質層
Claims (11)
- 樹脂系複合摺動部材との摺動に用いられるアルミニウム摺動部材であって、主としてアルミニウムからなる母相と、この母相中に分散された第2相とからなり、前記第2相は金属、金属化合物およびセラミックスの中から選択される少なくとも一種からなり、その平均粒径または平均直径が0.1μm〜100μmであり、前記母相と第2相との合計体積における前記第2相の割合が0.1〜50体積%であることを特徴とするアルミニウム摺動部材。
- 前記母相は、アルミニウム単体、または、アルミニウムにリチウム、マグネシウム、ストロンチウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、銅、銀、亜鉛、カドミウム、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、セレン、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の金属を固溶させたアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム摺動部材。
- 前記第2相を構成する金属または金属化合物が、リチウム、マグネシウム、ストロンチウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、銅、銀、亜鉛、カドミウム、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、セレン、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属どうしの金属間化合物もしくはこれらの金属とアルミニウムとの金属間化合物であることを特徴とする請求項1または2記載のアルミニウム摺動部材。
- 前記第2相を構成するセラミックスが、リチウム、マグネシウム、ストロンチウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、銅、銀、亜鉛、カドミウム、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、セレン、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物、窒化物、炭化物もしくは硫化物、または、カーボンブラックもしくはグラファイトであることを特徴とする請求項1または2記載のアルミニウム摺動部材。
- 前記第2相を構成するセラミックスが、粒子、繊維、ウィスカ、ナノチューブ、ナノホーンまたはフラーレン状であることを特徴とする請求項4記載のアルミニウム摺動部材。
- 前記アルミニウム摺動部材には表面改質層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のアルミニウム摺動部材。
- 前記表面改質層は陽極酸化処理皮膜、または、Ib族、IVb族の金属の酸化物、窒化物、炭化物もしくは硫化物またはカーボンブラックもしくはグラファイトを充填した陽極酸化処理皮膜であることを特徴とする請求項6記載のアルミニウム摺動部材。
- 前記表面改質層は物理蒸着、化学蒸着、電解めっきまたは無電解めっきにより形成されたものであることを特徴とする請求項6記載のアルミニウム摺動部材。
- 前記表面改質層は、前記アルミニウム摺動部材との接合強度に優れる下地層を介して形成されていることを特徴とする請求項8記載のアルミニウム摺動部材。
- ふっ素樹脂からなる母材と、この母材中に分散されたセラミックスからなる第2相とからなり、前記母材と第2相との合計体積における前記第2相の割合が0.1〜50体積%である樹脂系複合摺動部材との摺動に用いられることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載のアルミニウム摺動部材。
- 樹脂系複合摺動部材との摺動に用いられるアルミニウム摺動部材の製造方法であって、
アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末に、混合後の全体積における割合が0.1〜50体積%となるように平均粒径または平均直径が0.1μm〜100μmの金属粉末、金属合金粉末およびセラミックス粉末から選択される少なくとも1種の粉末を混合して混合粉末を製造する工程と、
前記混合粉末を成形して成形体を作製した後、前記成形体を熱処理してアルミニウム摺動部材を得る工程と
を具備することを特徴とするアルミニウム摺動部材の製造方法。
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