JP2005015679A - 電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物及びその成形体 - Google Patents

電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物及びその成形体 Download PDF

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Abstract

【解決手段】(a)分子鎖両末端にのみアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン
(b)電磁波吸収性充填剤
(c)熱伝導性充填剤
(d)分子鎖両末端にのみケイ素原子に直接結合した水素原子をもつオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(e)白金族系付加反応触媒を含有する電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物、及びこの組成物をシート状に成形させたシート体からなる電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体。
【効果】本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体は、非弾性体であり、圧縮後の残留応力が小さいにもかかわらず、剛性が高いため、取り扱い性が良好である。従って、本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体を電子機器内部に装着することで、電子機器要素に残留応力による悪影響を与えずに、放熱の問題とノイズ電磁波の問題を同時に解決できる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に熱伝導による電子部品の放熱のために、発熱性電子部品の熱境界面とヒートシンク又は回路基板などの熱放散部材との間に介装し得る熱伝達材料であると同時に、電子部品、回路基板などから空間に放出されるノイズ電磁波を抑制・吸収する電磁波吸収材料でもある電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物及びその成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピューター、携帯電話等の内部に配置されたCPU、MPU、LSI等の電子機器要素の高密度化、高集積化、及びプリント配線基板への電子機器要素の高密度実装化が進み、ノイズ電磁波が機器内部に放射されることに伴い、そのノイズ電磁波が機器内部で反射、充満して、機器自身から発生した電磁波による内部電磁干渉の問題が起きている。
【0003】
従来、これらの電磁干渉障害対策を行う場合には、ノイズ対策の専門知識と経験が必要であり、その対策には多くの時間が必要とされる上、対策部品の実装スペースを事前に確保することなど難点があった。こうした問題点を解決するため、電磁波を吸収することにより反射波及び透過波を低減する電磁波吸収体が使用されている。
【0004】
更に、CPU、MPU、LSI等の電子機器要素の高密度化、高集積化に伴い、発熱量が大きくなり、冷却を効率よく行わなければ、熱暴走により誤動作してしまうという問題も同時にある。従来、発熱を外部に効率よく放出する手段として、熱伝導性粉体を充填したシリコーングリースやシリコーンゴムをCPU、MPU、LSI等とヒートシンクの間に設置して、接触熱抵抗を小さくする方法がある。しかし、この方式では前記機器内部の電磁干渉の問題を回避することは不可能である。
【0005】
このような市場の要求を受けて、電子機器内部の、特にCPU、MPU、LSI等の電子機器要素の高密度化、高集積化された部位に対しては、電磁波吸収性能及び熱伝導性能を兼ね備えた部材が提案されている(特開2001−294752号公報:特許文献1)。
【0006】
しかし、電子機器要素から発生する熱をヒートシンクに効率よく伝えるために、ヒートシンクを発熱部材に密着させる必要があるが、各電子機器要素の高さの違いや組み付け加工による公差があるため、熱伝導性シート又は電磁波吸収性熱伝導性シートには、シートを押しつぶすように強い応力をかけることが多く、従来の弾性体シートではその残留応力が大きく、電子機器要素に悪影響を及ぼすことがある。
【0007】
そこで、特開2002−33427号公報(特許文献2)には、シート成形時にオルガノハイドロジェンシロキサンをフィルムに塗布し、そのフィルムで挟み込み、加熱成形せしめることにより、シート上下両面表層部をゴム状に硬化させた薄膜補強層を持ち、その間に未加硫の組成物層が存在する放熱シートが開示されている。しかしながら、このシートでは中間部分が未加硫組成物のままであるため、シートの剛性が不足し、取り扱い性が悪い場合がある。また、このシートでは、ノイズ電磁波を抑制・吸収することはできない。
【0008】
また、特願2002−346964号では、液状の熱伝導性組成物のベースオイルを鎖長延長させることでパテ化せしめて、取り扱いを可能にさせているが、圧縮時のピーク荷重を低くするため、パテをより柔らかくした場合、所望のサイズにカットした後、使用するまでの間に隣接するシートと再固着してしまうおそれがある。また、このシートもノイズ電磁波を抑制・吸収することはできない。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−294752号公報
【特許文献2】
特開2002−33427号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、非弾性体であり、圧縮後の残留応力が小さく、取り扱いが容易であり、電磁波吸収性能及び熱伝導性能を兼ね備えた電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物、及びその成形体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、(a)分子鎖両末端にのみアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンを100質量部、(b)電磁波吸収性充填剤を100〜4,000質量部、(c)(b)成分以外の熱伝導性充填剤を0〜2,000質量部(但し、(b)成分と(c)成分の合計量は100〜4,000質量部である。)、(d)分子鎖両末端にのみケイ素原子に直接結合した水素原子をもつオルガノハイドロジェンポリシロキサンをケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が(a)成分中のアルケニル基のモル数の0.1〜5.0倍量となる量、(e)白金族系付加反応触媒を(a)成分に対して白金族元素換算で0.1〜500ppm含有する電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物を用いることにより、非弾性体であり、圧縮後の残留応力が小さく、取り扱いが容易であり、電磁波吸収性能及び熱伝導性能を兼ね備えた電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
従って、本発明は、下記に示す電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物、及びその成形体を提供する。
〔1〕(a)分子鎖両末端にのみアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン 100質量部
(b)電磁波吸収性充填剤 100〜4,000質量部
(c)(b)成分以外の熱伝導性充填剤 0〜2,000質量部
(但し、(b)成分と(c)成分の合計量は100〜4,000質量部である。)
(d)分子鎖両末端にのみケイ素原子に直接結合した水素原子をもつオルガノハイドロジェンポリシロキサン ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が(a)成分中のアルケニル基のモル数の0.1〜5.0倍量となる量
(e)白金族系付加反応触媒 (a)成分に対して白金族元素換算で0.1〜500ppmを含有する電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物。
〔2〕更に、(f)分子側鎖にケイ素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを、ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が(d)成分のケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数の0.1〜10%となる量で配合したことを特徴とする〔1〕記載の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物。
〔3〕(b)電磁波吸収性充填剤が、鉄元素を15質量%以上含む軟磁性合金及び/又はフェライトであることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物。
〔4〕〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物をシート状に成形させたシート体からなる電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体。
〔5〕〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物をシート状に成形させた2枚のシートの間に、ガラスクロス又は有機高分子フィルムを介装したシート体からなる電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体。
〔6〕更に、〔4〕又は〔5〕記載のシート体の片面又は両面に、分子側鎖にケイ素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、シリコーン組成物中の(a)成分との付加反応体からなる表面保護層を形成せしめたことを特徴とする電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体。
〔7〕更に、〔4〕又は〔5〕記載のシート体の片面又は両面に、該電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物とは異なる組成の熱伝導層、電磁波吸収層、及び電磁波吸収熱伝導層から選ばれる少なくとも一層を積層したことを特徴とする電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体。
〔8〕更に、〔4〕又は〔5〕記載のシート体の片面又は両面に、厚さ50μm以下の高分子層を積層したことを特徴とする電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体。
〔9〕シート体の熱伝導率が、0.7W/mK以上であることを特徴とする〔4〕〜〔8〕のいずれかに記載の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体。
〔10〕シート体の厚さが、0.1〜10mmであることを特徴とする〔4〕〜〔9〕のいずれかに記載の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体。
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物は、(a)分子鎖両末端にのみアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、(b)電磁波吸収性充填剤、(c)熱伝導性充填剤、(d)分子鎖両末端にのみケイ素原子に直接結合した水素原子をもつオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び(f)白金族系付加反応触媒を含有するものである。
【0014】
(a)成分であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、分子鎖の両末端にそれぞれ1個、合計2個のアルケニル基を含有するもので、通常は、主鎖部分が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなるものが好ましい。
【0015】
(a)成分として具体的には、下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【化1】
Figure 2005015679
(式中、Rは独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、Xはアルケニル基であり、nは0以上の整数である。)
【0016】
上記式中、Rの脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基及びビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基及びメチルベンジル基等のアラルキル基、並びにこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基及び3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等が挙げられ、代表的なものは炭素原子数が1〜10、特に代表的なものは炭素原子数が1〜6のものであり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の非置換又は置換のアルキル基及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基である。また、Rは全てが同一であっても、異なっていてもよい。
【0017】
また、Xのアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等の通常炭素原子数2〜8程度のものが挙げられ、中でもビニル基、アリル基等の低級アルケニル基が好ましく、特に好ましくはビニル基である。
【0018】
式中、nは0以上の整数であり、10≦n≦10,000を満たす整数であることが好ましく、より好ましくは50≦n≦2,000を満足する整数であり、更に好ましくは100≦n≦1,000を満足する整数である。
【0019】
このオルガノポリシロキサンは、1種を単独で使用しても、複数の異なる粘度のものを併用しても構わない。
【0020】
(b)成分である電磁波吸収性充填剤としては、カーボン粉末を代表とする誘電損失性電磁波吸収材やフェライト、軟磁性金属粉を代表とする磁性損失性電磁波吸収材などを適用することができるが、本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体は、近傍電磁界におけるノイズ電磁波抑制・吸収体として機能させるため、磁界が支配的な近傍電磁界ノイズに有効な磁性損失材料である軟磁性合金及び/又はフェライトを使用することが好ましい。
【0021】
軟磁性合金粉末としては、供給安定性、価格などの面から鉄元素を含むものが好ましく、特には鉄元素を15質量%以上含むものが好ましい。このような軟磁性合金粉末としては、例えば、カルボニル鉄、電解鉄、Fe−Cr系合金、Fe−Si系合金、Fe−Ni系合金、Fe−Al系合金、Fe−Co系合金、Fe−Al−Si系合金、Fe−Cr−Si系合金、Fe−Cr−Al系合金、Fe−Si−Ni系合金、Fe−Si−Cr−Ni系合金などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの軟磁性金属粉末は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。軟磁性合金粉末の形状は、扁平状、粒子状のどちらかを単独で用いてもよいし、両者を併用してもよい。
【0022】
フェライト粉末として、具体的には、Mg−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Zn系フェライトなどのスピネル型フェライト、BaCoFe1222、BaNiFe1222、BaZnFe1222、BaMnFe1222、BaMgFe1222、BaCuFe1222、BaCoFe2441などのフェロクスプレーナー(Y型、Z型)型六方晶フェライト、BaFe1219、SrFe1219及び/又はBaFe1219、SrFe1219のFe元素をTi、Co、Mn、Cu、Zn、Ni、Mgで置換したものを基本組成とするマグネプランバイト(M型)型六方晶フェライト等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらのフェライト粉末は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明の電磁波吸収性充填剤は、軟磁性合金粉末とフェライト粉末のどちらか一方を使用してもよいし、両者を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
上記電磁波吸収性充填剤の平均粒子径は、0.1μm以上100μm以下であることが好ましく、特には1μm以上50μm以下のものを用いることが好ましい。平均粒子径が0.1μm未満の場合には、粒子の比表面積が大きくなりすぎて高充填化が困難となるおそれがある。また、平均粒子径が100μmを超える場合には、シート表面に微小な凹凸が現れ、接触熱抵抗が大きくなってしまうおそれがある。
【0025】
電磁波吸収性充填剤の配合量は、(a)成分100質量部に対して100〜4,000質量部であり、好ましくは200〜2,500質量部である。100質量部より少ないと成形体の電磁波吸収性能が十分ではなく、4,000質量部を超えると組成物が硬くなり、成形体圧縮時の残留応力が極端に大きくなる。
【0026】
(c)成分の熱伝導性充填剤は、(b)成分以外の非磁性の銅、アルミニウム等の金属、アルミナ、シリカ、マグネシア、ベンガラ、ベリリア、チタニア、ジルコニア等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化硼素等の金属窒化物、人工ダイヤモンドあるいは炭化珪素等、一般に熱伝導性充填剤とされる物質を用いることができる。
【0027】
これら熱伝導性充填剤は、平均粒径が0.1〜100μm、望ましくは0.5〜50μm、更に望ましくは0.5〜30μmのものを用いることができる。平均粒径が0.1μm未満であると粒子の比表面積が大きくなりすぎて高充填化が困難となるおそれがあり、100μmを超えるとシート表面に微小な凹凸が現れ、接触面積が大きくなるおそれがある。
【0028】
熱伝導性充填剤は、1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。また、平均粒径の異なる粒子を2種以上用いることも可能である。
【0029】
熱伝導性充填剤の配合量は、(a)成分100質量部に対して0〜2,000質量部であるが、好ましくは100〜1,500質量部である。2,000質量部を超えると組成物が硬くなり、成形体圧縮時の残留応力が極端に大きくなる。
【0030】
本発明において、電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物中の(b)成分と(c)成分の合計配合量は、(a)成分100質量部に対して100〜4,000質量部であり、好ましくは200〜3,000質量部である。100質量部未満であると熱伝導性能と電磁波吸収性能が十分でない。また、4,000質量部を超えると組成物が硬くなり、成形体圧縮時の残留応力が極端に大きくなる。
【0031】
(d)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子鎖の両末端にのみケイ素原子に直接結合する水素原子(すなわち、Si−H基)を有するものである。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、具体的には、下記平均構造式(2)で表されるものが挙げられる。
【化2】
Figure 2005015679
(式中、Rは独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基である。mは0又は0を超える正数である。)
【0032】
上記式(2)中、Rの脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基、並びにこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等が挙げられ、代表的なものは炭素原子数が1〜10、特に代表的なものは炭素原子数が1〜6のものであり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の非置換又は置換のアルキル基及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基である。また、Rは全てが同一であっても、異なっていてもよい。
【0033】
また、式(2)中のmは、0又は0を超える正数であり、好ましくは3〜1,000の正数、より好ましくは5〜500の正数である。
【0034】
これら(d)成分の添加量は、(d)成分のSi−H基が(a)成分中のアルケニル基1モルに対して0.1〜5.0モルとなる量、望ましくは0.3〜3.0モルとなる量、更に望ましくは0.5〜2.0モルとなる量である。(d)成分のSi−H基の量が(a)成分中のアルケニル基1モルに対して0.1モル未満、又は5.0モルを超える量では、所望のシートを得ることができない。
【0035】
(e)成分の白金族系付加反応触媒は、(a)成分中のアルケニル基と、(d)成分及び後述する(f)成分や表面保護層の形成に用いるオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSi−H基との付加反応を促進するための触媒であり、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として周知の触媒が挙げられる。その具体例としては、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体、HPtCl・nHO、HPtCl・nHO、NaHPtCl・nHO、KHPtCl・nHO、NaPtCl・nHO、KPtCl・nHO、PtCl・nHO、PtCl、NaHPtCl・nHO(但し、式中、nは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩、アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照)、塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照)、白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの、ロジウム−オレフィンコンプレックス、クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒)、塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックスなどが挙げられる。
【0036】
(e)成分の使用量は、所謂触媒量でよく、通常、成分(a)に対する白金族金属元素の質量換算で、0.1〜500ppm、望ましくは0.5〜200ppm、更に望ましくは1.0〜100ppm程度がよい。
【0037】
本発明においては、更に(f)分子側鎖にケイ素原子に直接結合した水素原子(Si−H基)を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを配合することが好ましい。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均構造式(3)〜(5)で表されるものが例示され、これらは単独で又は混合物として用いることができる。
【化3】
Figure 2005015679
(各式中、Rは独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基である。またaは0又は0を超える正数であり、b,c,dは0を超える正数である。)
【0038】
上記式(3)〜(5)中、Rの脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基、並びにこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等が挙げられ、代表的なものは炭素原子数が1〜10、特に代表的なものは炭素原子数が1〜6のものであり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の非置換又は置換のアルキル基及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基である。また、Rは全てが同一であっても、異なっていてもよい。
【0039】
また、式(3)〜(5)中のaは0又は0を超える正数であり、b,c,dは0を超える正数、望ましくは1以上の正数、更に望ましくは2以上の正数である。なお、b,c,dの上限は通常500以下、特に100以下である。更に、この(f)成分の25℃における粘度は、1〜10,000mm/s、特に5〜1,000mm/s、とりわけ10〜500mm/sであることが好ましい。
【0040】
(f)成分の添加量は、(d)成分のSi−H基量に対して(f)成分のSi−H基量が0.1〜10モル%、望ましくは0.2〜5モル%となる量であることが好ましい。添加量が0.1モル%未満では、シート状成形物の形状維持が困難となるおそれがあり、また10モル%を超える量では、シート状成形物の弾性が強くなり、シートを押しつぶして装着した場合に、その残留応力が大きく、電子機器等に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0041】
なお、(f)成分を配合した場合、(d)、(f)成分の合計Si−H基が(a)成分中のアルケニル基1モルに対して0.1〜5モル、望ましくは0.3〜3モル、更に望ましくは0.5〜2モルとなる量であることが好ましい。
【0042】
本発明のシリコーン組成物には、この他に、電磁波吸収性充填剤及び熱伝導性充填剤の表面処理剤、硬化速度を調整するための反応抑制剤、着色のための顔料・染料、難燃性付与剤、金型やセパレーターフィルムからの型離れをよくするための内添離型剤、混合時の粘度や硬化時の硬さを調整するためのジメチルポリシロキサン等、機能を向上させるための様々な添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0043】
本発明のシリコーン組成物は、上記成分を常法に準じて混合することにより製造することができる。このシリコーン組成物は、流動性があり、容易に連続成形可能なものである。
【0044】
本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物をシート状に成形する際の成形方法としては、プレス成形、コーティング成形、押し出し成形など、通常の成形方法を適応することができ、成形方法は特に限定されるものではない。また、この際の付加反応条件としては、公知の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物と同様の反応条件を採用することができ、常温でも十分シート化が可能であるが、必要に応じて加熱してもよい。ここで、加熱を行う場合の加熱条件としては、10〜200℃で、1〜60分間とすることが好ましい。
【0045】
上記電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物のシート状成形体は、そのままでも電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体として用いることができるが、取り扱い性向上のため、更に該シート状成形体の片面又は両面に、分子側鎖にケイ素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと上記組成物中の(a)成分との付加反応体からなる表面保護層を形成したもの、上記シート状成形体以外の組成の熱伝導層、電磁波吸収層、又は電磁波吸収熱伝導層を積層したもの、あるいは厚さ50μm以下の高分子層を積層したものとすることや、上記シート状成形体中にガラスクロス又は有機高分子フィルムを介在させたものとすることができ、これらを組み合わせたものとすることもできる。
【0046】
本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体は、取り扱い性向上のため、組成物のシート状成形体の片面又は両面に、分子側鎖にケイ素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、上記シート状成形体中に残存する(a)成分との付加反応により、架橋・硬化した表面保護層を形成したものとすることができる。
【0047】
この分子側鎖にケイ素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子側鎖にSi−H基を2個以上、特に3〜200個有するものであり、下記平均構造式(6)〜(8)で表されるものが例示され、これらは単独で又は混合物として用いることができる。
【化4】
Figure 2005015679
(各式中、Rは独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基である。eは0又は0を超える正数であり、f,g,hは2以上の正数である。)
【0048】
上記式(6)〜(8)中、Rの脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基、並びにこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等が挙げられ、代表的なものは炭素原子数が1〜10、特に代表的なものは炭素原子数が1〜6のものであり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の非置換又は置換のアルキル基及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基である。また、Rは全てが同一であっても、異なっていてもよい。
【0049】
また、式(6)〜(8)中のeは0又は0を超える正数であり、f,g,hは2以上、望ましくは3〜200、更に望ましくは10〜100の正数である。なお、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は、1〜10,000mm/s、特に5〜1,000mm/s、とりわけ10〜500mm/sであることが好ましい。
【0050】
表面保護層は、本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物のシート状成形体表面に、上記の分子側鎖にケイ素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを0.001〜10g/m、特に0.005〜5g/mとなる量塗布し、該オルガノハイドロジェンポリシロキサンのSi−H基とシート状成形体中に残存する(a)成分のアルケニル基とを反応させ、架橋・硬化することにより得ることができる。
【0051】
なおこの場合、(a)成分中のアルケニル基モル量に対し、(d)成分(及び(f)成分)の合計Si−H基モル量が過剰である場合も、上記シリコーン組成物の硬化物中に未反応のアルケニル基が残存するためと推定されるが、上記式(6)〜(8)の成分中のSi−H基が反応するものである。従って、(a)成分中のアルケニル基モル量を(d)成分(及び(f)成分)の合計Si−H基モル量より少なくても差し支えないが、より好ましくは、アルケニル基モル量は(d)成分(及び(f)成分)の合計Si−H基モル量と同じかそれ以上であることが好ましい。
【0052】
表面保護層形成の反応条件は、室温でもよいし、必要に応じて加熱してもよい。ここで、加熱を行う場合の加熱条件としては、30〜200℃で、1〜60分間とすることが好ましい。
【0053】
表面保護層の形成方法としては、シリコーン組成物の付加反応前のシート状成形体表面及び該オルガノハイドロジェンポリシロキサンを反応させる方法と、シリコーン組成物の付加反応後のシート状成形体表面及び該オルガノハイドロジェンポリシロキサンを反応させる方法とがあるが、どちらの方法でもよい。具体的には、該オルガノハイドロジェンポリシロキサンを塗布した2枚のPETフィルムで付加反応前の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物を挟んで加熱プレス成形する方法や、電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物をプレス成形、コーティング成形などで付加反応させたシート状成形体表面に該オルガノハイドロジェンポリシロキサンをスプレー塗布、転写塗布、刷毛塗りなどの方法で塗布し、室温放置又は加熱して表面保護層を形成する方法などが挙げられる。なお、該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、他のオルガノポリシロキサンや有機溶媒など他の成分との混合物として使用しても構わない。
【0054】
また、本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体は、取り扱い性向上のため、電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物のシート状成形体の片面又は両面に、該電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物とは異なる組成の熱伝導層、電磁波吸収層及び電磁波吸収熱伝導層の一層又は二層以上を積層したものとすることができる。
【0055】
本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物からなるシート状成形体に積層する該電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物とは異なる組成の熱伝導層、電磁波吸収層、電磁波吸収熱伝導層は、アスカーC硬度で20以上、更には40以上であることが好ましい。アスカーC硬度が20未満では、補強層としての役割が十分ではなく、積層構造である本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物からなるシート状成形体の取り扱い性が十分ではなくなる場合がある。
【0056】
積層方法としては、本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物とは組成の異なる既にシート状に成形された熱伝導性シート、電磁波吸収性シート又は電磁波吸収性熱伝導性シート上に、本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物をプレス成形、コーティング成形、押し出し成形などで成形する方法や、既に成形硬化した本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物のシート状成形体上に別の熱伝導層、電磁波吸収層又は電磁波吸収熱伝導層を成形する方法や、既に成形硬化した本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物のシート状成形体と既にシート状に成形された熱伝導性シート、電磁波吸収性シート、又は電磁波吸収性熱伝導性シートとを接着成分あるいは粘着成分により貼りあわせる方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物からなるシート状成形体に積層する該電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物とは異なる組成の熱伝導層、電磁波吸収層、電磁波吸収熱伝導層の厚さが全シート厚さにしめる割合は、50%以下、更には30%以下であることが好ましい。その割合が50%を超えると、シートを圧縮したときの残留応力が大きくなるおそれがある。
【0058】
更に、本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体は、組成物のシート状成形体の片面又は両面に、厚さ50μm以下の高分子層を積層したものとすることができる。
【0059】
高分子層の材質としては、層状に形成できる高分子材料であれば特に制限はなく、公知の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を使用することができる。ただし、本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体の使用温度によって、高分子層の材質を考慮する必要がある。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂などが例示される。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリイミド樹脂、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ブタジエンゴム、ニトリルゴムなどが例示される。
【0060】
一般の高分子物質の熱伝導率は0.2W/mK前後と小さいため、高分子層の厚さは、本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物のシート状成形体の厚さ方向の熱伝導性能を極力損なわないように、50μm以下であることが好ましいが、更には30μm以下であることが好ましい。なお、高分子層の厚さの下限としては、1μm以上であることが好ましい。
【0061】
高分子層の積層方法としては、既にシート状に成形された高分子シート上に本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物をプレス成形、コーティング成形、押し出し成形などで成形する方法や、既に成形硬化した本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物のシート状成形体上に高分子層を成形する方法や、既に成形硬化した本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物のシート状成形体と既にシート状に成形された高分子シートとを接着成分あるいは粘着成分により貼りあわせる方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体は、取り扱い性を向上させるため、組成物のシート状成形体中に、ガラスクロス又は有機高分子フィルムを補強材として介在させることもできる。
【0063】
有機高分子フィルムの材質としては、フィルム状に形成できる高分子材料であれば特に制限はなく、公知の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を使用することができる。ただし、本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物の成形体の使用温度によって、高分子層の材質を考慮する必要がある。
【0064】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂などが例示される。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリイミド樹脂、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ブタジエンゴム、ニトリルゴムなどを使用することができる。
【0065】
ガラスクロス又は有機高分子フィルムの厚さは、熱伝導率の面から薄い方が好ましく、0.005〜1.0mm、特に0.01〜0.5mmであることが好ましい。
【0066】
これらガラスクロス又は有機高分子フィルムの位置は、電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物のシート状成形体の内部に含まれていればよく、特に限定されるものではない。
【0067】
本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物をシート状に成形させたシート体の熱伝導率は、0.7W/mK以上、特には1W/mK以上が好ましい。熱伝導率が0.7W/mK未満では、放熱性能が十分ではない場合がある。
【0068】
また、本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物をシート状に成形させたシート体の厚さは、0.1〜10mm、特には0.3〜5mmであることが好ましい。0.1mmよりも薄いと、該シート体の装着箇所の寸法公差を十分に吸収できないおそれがあり、10mmより厚いと、所望のサイズにカットした後、使用するまでの間に隣接するシートと再固着してしまい、実使用時に変形し、取扱いが困難になるおそれがある。
【0069】
更に、本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物をシート状に成形させたシート体は、その一辺が10mmの正方形状とし、これを厚さ方向に該シート体が圧縮されたときにその平面からはみ出さないような面積の平行な二つの平面に、該シート体が圧縮されたときに該平面からはみ出さないような位置にセットし、圧縮速度0.5mm/分で、シートの初期厚さの50%まで圧縮し、該平行な二つの平面の位置をそのまま保持して圧縮終了後1時間経過したときに、その位置を保持するための力が5kgf以下、特には2kgf以下であることが好ましい。位置を保持するための力が5kgfより大きいと、装着した素子に大きな応力がかかり、その素子に悪影響を与えるおそれがある。
【0070】
このように本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物は、分子鎖両末端にのみアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンと分子鎖両末端にのみケイ素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを付加反応させることにより、非弾性体であり、圧縮後の残留応力が小さいにもかかわらず、取り扱い性が良好であり、良好な電磁波吸収性能及び熱伝導性能を兼ね備えたシート状の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体となり得る。従って、本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体を、電子機器内部に装着することで、ノイズ電磁波の問題と放熱の問題を同時に解決できる。また、各電子機器要素の高さの違いやヒートシンクの組み付け加工による公差を吸収するために、電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体の圧縮率を大きくしても、残留応力を小さく抑えることができるため、電子機器要素に悪影響を及ぼすことがない。
【0071】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において粘度は25℃における粘度であり、式中のMeはメチル基である。
【0072】
[実施例1]
600mm/sの粘度をもつ分子末端をビニル基で封止したジメチルオルガノポリシロキサン450gと、充填粉末の表面処理剤である分子末端にケイ素原子結合トリメトキシ基を含有する30mm/sの粘度のジメチルオルガノポリシロキサン50gと、平均粒径10μmの球状のFe−12%Cr−3%Si軟磁性金属粉末6,000gと、熱伝導性粉末である平均粒径1μmの粒状アルミナ粉末1,500gを品川式万能攪拌機に仕込み、室温にて攪拌混合後、更に攪拌しながら120℃、1時間の熱処理を行った。その後、室温まで冷却し、本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物のベース組成物を作製した。
【0073】
このベース組成物1,600gに2%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液0.2gと、50%エチニルシクロヘキサノールトルエン溶液0.2gを添加して均一に混合した。更に下記平均分子式
【化5】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを12g(ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が、分子末端をビニル基で封止したジメチルオルガノポリシロキサンのビニル基のモル数の1.1倍量)添加して均一に混合し、電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物aを得た。
【0074】
調製した組成物aを、下記平均分子式
【化6】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを均一に1g/m塗布したPETフィルム2枚で挟み、プレス成形にて120℃、10分間加熱硬化させ、両面に電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物aと上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの反応硬化物である表面保護層が形成された1.0mm厚のシート形状の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体を得た。
【0075】
[実施例2]
実施例1で調製した電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物のベース組成物1,600gに、2%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液0.2gと、50%エチニルシクロヘキサノールトルエン溶液0.2gを添加して均一に混合した。更に下記平均分子式
【化7】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを11.4gと、下記平均構造式
【化8】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを0.6g(ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数の合計が、分子末端をビニル基で封止したジメチルオルガノポリシロキサンのビニル基のモル数の1.1倍量)添加して均一に混合し、電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物bを得た。
【0076】
調製した組成物bを、下記平均分子式
【化9】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを均一に1g/m塗布したPETフィルム2枚で挟み、プレス成形にて120℃、10分間加熱硬化させ、両面に電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物bと上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの反応硬化物である表面保護層が形成された1.0mm厚のシート形状の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体を得た。
【0077】
[実施例3]
実施例2で調製した電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物bを、PETフィルム上に成形された熱伝導性シリコーンゴムシート:信越化学工業製TC−10E(厚さ0.1mm)上に0.9mmの厚さでプレス成形にて120℃、10分間加熱硬化させ、全体の厚さが1.0mm厚で片面に0.1mmの熱伝導性シリコーンシートが積層されたシート形状の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体を得た。
【0078】
[実施例4]
メチルビニルシロキサン単位0.15モル%からなる平均重合度7,000のジメチルビニル生ゴム440gと、表面処理剤である分子末端にケイ素原子結合トリメトキシ基を含有する30mm/sの粘度のジメチルオルガノポリシロキサンを60gと、電磁波吸収性充填剤として平均粒径30μmの扁平形状のFe−5.5%Si軟磁性合金粉2,500gをニーダー内に仕込み、均一になるまで混合し、電磁波吸収シートのベース組成物を作製した。
【0079】
このベース組成物600gに対して、有機過酸化物であるジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド0.8gとトルエン50gをホモミキサーにて攪拌混合した後、PETフィルム上にコーティングした。更に、トルエンを除去するため40℃で5分間、80℃で5分間と段階的に加熱工程を設けた後、150℃で5分間の条件でコーティングシートを架橋・硬化させ、PET基材上に厚さ0.1mmの電磁波吸収シートを得た。
【0080】
実施例2で調製した本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物bを、上記PETフィルム上に成形された電磁波吸収シートと、下記平均分子式
【化10】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを均一に1g/m塗布したPETフィルムで挟み、プレス成形にて120℃、10分間加熱硬化させ、片面に0.1mm厚の電磁波吸収シートが積層され、もう一方の面に電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物bと上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの反応硬化物である表面保護層が形成された全体の厚さが2.0mm厚のシート形状の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体を得た。
【0081】
[実施例5]
実施例1で調製した電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物a中の下記平均分子式
【化11】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量を13g(ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が、分子末端をビニル基で封止したジメチルオルガノポリシロキサンのビニル基のモル数の1.2倍量)にした以外はすべて実施例1と同じとして、電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物cを得た。
【0082】
調製した組成物cをPETフィルムをライナーとして、プレス成形にて120℃、10分間加熱硬化させ、2.0mm厚の単層シート形状の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体を得た。
【0083】
[実施例6]
600mm/sの粘度をもつ分子末端をビニル基で封止したジメチルオルガノポリシロキサン450gと、充填粉末の表面処理剤である分子末端にケイ素原子結合トリメトキシ基を含有する30mm/sの粘度のジメチルオルガノポリシロキサン50gと、電磁波吸収性充填剤として平均粒径10μmの粒状のMn−Znフェライト粉末3,000gを品川式万能攪拌機に仕込み、室温にて攪拌混合後、更に攪拌しながら120℃、1時間の熱処理を行った。その後、室温まで冷却し、電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物のベース組成物を作製した。
【0084】
このベース組成物600gに、2%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液0.2gと、50%エチニルシクロヘキサノールトルエン溶液0.2gを添加して均一に混合した。更に下記平均分子式
【化12】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを13g(ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が、分子末端をビニル基で封止したジメチルオルガノポリシロキサンのビニル基のモル数の1.2倍量)添加して均一に混合し、電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物dを得た。
【0085】
調製した組成物dをPETフィルム上に1.0mmの厚さでコーティングし、120℃、10分間加熱硬化させ、1.0mm厚の単層シート形状の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体を得た。
【0086】
[実施例7]
600mm/sの粘度をもつ分子末端をビニル基で封止したジメチルオルガノポリシロキサン450gと、充填粉末の表面処理剤である分子末端にケイ素原子結合トリメトキシ基を含有する30mm/sの粘度のジメチルオルガノポリシロキサン50gと、平均粒径30μmの扁平形状のセンダスト軟磁性合金粉末2,500gを品川式万能攪拌機に仕込み、室温にて攪拌混合後、更に攪拌しながら120℃、1時間の熱処理を行った。その後、室温まで冷却し、電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物のベース組成物を作製した。
【0087】
このベース組成物600gに、2%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液0.2gと、50%エチニルシクロヘキサノールトルエン溶液0.2gを添加して均一に混合した。更に下記平均分子式
【化13】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを12g(ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が、分子末端をビニル基で封止したジメチルオルガノポリシロキサンのビニル基のモル数の1.1倍量)添加して均一に混合し、電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物eを得た。
【0088】
調製した組成物eを、25μm厚のポリイミドフィルムと、下記平均分子式
【化14】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを均一に1g/m塗布したPETフィルムで挟み、プレス成形にて120℃、10分間加熱硬化させ、片面に25μm厚のポリイミドフィルムが積層され、もう一方の面に電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物eと上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの反応硬化物である表面保護層が形成された全体の厚さが2.0mm厚のシート形状の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体を得た。
【0089】
[実施例8]
600mm/sの粘度をもつ分子末端をビニル基で封止したジメチルオルガノポリシロキサン450gと、充填粉末の表面処理剤である分子末端にケイ素原子結合トリメトキシ基を含有する30mm/sの粘度のジメチルオルガノポリシロキサン50gと、平均粒径18μmの粒状のセンダスト軟磁性合金粉末3,500gを品川式万能攪拌機に仕込み、室温にて攪拌混合後、更に攪拌しながら120℃、1時間の熱処理を行った。その後、室温まで冷却し、電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物のベース組成物を作製した。
【0090】
このベース組成物800gに、2%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液0.2gと、50%エチニルシクロヘキサノールトルエン溶液0.2gを添加して均一に混合した。更に下記平均分子式
【化15】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを13g(ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が、分子末端をビニル基で封止したジメチルオルガノポリシロキサンのビニル基のモル数の1.2倍量)添加して均一に混合し、電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物fを得た。
【0091】
調製した組成物fをPETフィルム上に1.0mmの厚さでコーティングし、120℃、10分間加熱硬化させ、1.0mm厚の単層シート形状の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体を得た。両面に下記平均分子式
【化16】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを均一に0.3g/m塗布した50μmのガラスクロスを、組成物fの1.0mm厚の硬化シート2枚で挟み、120℃、5分間の条件でプレス成形して、中心に50μmのガラスクロスが介在した、全体の厚さが2.0mm厚のシート形状の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体を得た。
【0092】
[比較例1]
実施例1で調製した本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物のベース組成物1,600gに、2%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液0.2gと、50%エチニルシクロヘキサノールトルエン溶液0.2gを添加して均一に混合した。更に下記平均分子式
【化17】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを4g(ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が、分子末端をビニル基で封止したジメチルオルガノポリシロキサンのビニル基のモル数の1.1倍量)添加して均一に混合し、シリコーン組成物gを得た。
【0093】
調製した組成物gをPETフィルムをライナーとして、プレス成形にて120℃、10分間加熱硬化させ、1.0mm厚の単層シート形状の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体を得た。
【0094】
[比較例2]
実施例1で調製した電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物aにオルガノハイドロジェンポリシロキサンを添加しないこと以外は同じとして、シリコーン組成物hを得た。
【0095】
調製した組成物hを、下記平均分子式
【化18】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを均一に1g/m塗布したPETフィルム2枚で挟み、120℃、10分間の条件でプレス成形し、両面に電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物hと上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの反応硬化物である表面保護層が形成された1.0mm厚の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体を得た。
【0096】
[比較例3]
600mm/sの粘度をもつ分子末端をビニル基で封止したジメチルオルガノポリシロキサン450gと、充填粉末の表面処理剤である分子末端にケイ素原子結合トリメトキシ基を含有する30mm/sの粘度のジメチルオルガノポリシロキサン50gと、平均粒径4μmの粒状のアルミナ粉末3,000gと、平均粒径1μmの粒状アルミナ粉末1,000gを品川式万能攪拌機に仕込み、室温にて攪拌混合後、更に攪拌しながら120℃、1時間の熱処理を行った。その後、室温まで冷却し、ベース組成物を作製した。
【0097】
このベース組成物900gに、2%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液0.2gと、50%エチニルシクロヘキサノールトルエン溶液0.2gを添加して均一に混合し、シリコーン組成物iを得た。
【0098】
調製した組成物iを、下記平均分子式
【化19】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを均一に1g/m塗布したPETフィルム2枚で挟み、120℃、10分間の条件でプレス成形し、両面に電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物iと上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの反応硬化物である表面保護層が形成された1.0mm厚のシート形状の熱伝導性シリコーン成形体を得た。
【0099】
[比較例4]
600mm/sの粘度をもつ分子末端をビニル基で封止したジメチルオルガノポリシロキサン450gと、充填粉末の表面処理剤である分子末端にケイ素原子結合トリメトキシ基を含有する30mm/sの粘度のジメチルオルガノポリシロキサン50gと、平均粒径4μmの粒状のアルミナ粉末2,000gを品川式万能攪拌機に仕込み、室温にて攪拌混合後、更に攪拌しながら120℃、1時間の熱処理を行った。その後、室温まで冷却し、ベース組成物を作製した。
【0100】
このベース組成物500gに、2%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液0.2gと、50%エチニルシクロヘキサノールトルエン溶液0.2gを添加して均一に混合した。更に下記平均分子式
【化20】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを12g(ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が、分子末端をビニル基で封止したジメチルオルガノポリシロキサンのビニル基のモル数の1.1倍量)添加して均一に混合し、シリコーン組成物jを得た。
【0101】
調製した組成物jを、PETフィルム上に成形された熱伝導性シリコーンゴムシート:信越化学工業製TC−10E(厚さ0.1mm)と、下記平均分子式
【化21】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを均一に1g/m塗布したPETフィルムで挟み、プレス成形にて120℃、10分間加熱硬化させ、片面に0.1mm厚の熱伝導性シートが積層され、もう一方の面に電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物jと上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの反応硬化物である表面保護層が形成された1.0mm厚のシート形状の熱伝導性シリコーン成形体を得た。
【0102】
[比較例5]
比較例4のベース組成物500gに、2%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液0.2gと、50%エチニルシクロヘキサノールトルエン溶液0.2gを添加して均一に混合した。更に下記平均分子式
【化22】
Figure 2005015679
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを13g(ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が、分子末端をビニル基で封止したジメチルオルガノポリシロキサンのビニル基のモル数の1.2倍量)添加して均一に混合し、シリコーン組成物kを得た。
【0103】
調製した組成物kを、PETフィルム上に1.0mmの厚さでコーティングし、120℃、10分間加熱硬化させ、2.0mm厚の単層シート形状の熱伝導性シリコーン成形体を得た。
【0104】
実施例1〜8、比較例1〜5にて得られたシートの圧縮時の残留応力、電磁波吸収特性として放射電磁波減衰量、熱伝導率、熱抵抗、取り扱い性を下記に示す方法にて評価し、結果を表1に示した。
【0105】
《圧縮時の残留応力》
圧縮時の残留応力は、島津製作所製オートグラフAG−Iを用いて、図1に示すように、50mm□のステンレス製治具1の二平面の間に、10mm□にカットしたシート2を圧縮後に治具平面からはみ出さないように該治具平面中央部にセットし、0.5mm/分の速度で初期シート厚の50%まで圧縮を行い、そのままの位置を保持し、圧縮終了から1時間経過後のその位置を保持するための力の値を読み取った。
【0106】
《放射電磁波減衰量》
放射電磁波減衰量を評価する方法を図2に示す。まず、電波暗室3内において、被測定シートを、周波数2GHzの電磁波を発生するダイポールアンテナ4に巻きつけ、そのダイポールアンテナ4より3m離れた位置に受信アンテナ5を設置した。すなわち、これはFCC準拠の3m法に合致するものである。次いで、発生した電磁波を受信アンテナ5と接続したシールドルーム6内のEMIレシーバー(スペクトラムアナライザ)7により測定した。なお、図1中8はシグナルジェネレーターである。この測定結果と測定シートを設置しない場合の電磁波発生量との差を放射電磁波減衰量とした。
【0107】
《熱伝導率》
電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物の成形体層の部分の熱伝導率を、ASTM E1530に基づき測定した。
【0108】
《熱抵抗》
放熱特性の評価として熱抵抗の測定を行なった。アルミニウムのケースの中にヒーターを埋め込んだモデルヒーターを使用した。サンプルシートをヒートシンクとモデルヒーター(シートとの接触面積7cm)の間に挟み、300gfの力で加圧・接触させてモデルヒーターに28Wの電力をかけた。5分後のモデルヒーターとヒートシンクの温度を測定し、次の式により熱抵抗を算出した。
熱抵抗(℃/W)=(T1:モデルヒーターの温度(℃)−T2:ヒートシンクの温度(℃))/印加電力(28(W))
【0109】
《取り扱い性》
シートを20mm□にカットし、100kgf/mの荷重をかけて1日放置し、その後の取り扱い性を確認し、下記基準で評価した。
取り扱い性・総合評価:
◎:全く問題なし
○:気をつければ問題なし
△:場合によっては問題になる
×:問題になる
【0110】
【表1】
Figure 2005015679
【0111】
【発明の効果】
本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体は、非弾性体であり、圧縮後の残留応力が小さいにもかかわらず、剛性が高いため、取り扱い性が良好である。従って、本発明の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体を電子機器内部に装着することで、電子機器要素に残留応力による悪影響を与えずに、放熱の問題とノイズ電磁波の問題を同時に解決できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧縮時の残留応力測定の説明図であり、(a)は圧縮前、(b)は圧縮後の上面図及び側面図である。
【図2】放射電磁波減衰量測定方法を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 ステンレス製治具
2 電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物
3 電波暗室
4 ダイポールアンテナ
5 受信アンテナ
6 シールドルーム
7 EMIレシーバー
8 シグナルジェネレーター

Claims (10)

  1. (a)分子鎖両末端にのみアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン 100質量部
    (b)電磁波吸収性充填剤 100〜4,000質量部
    (c)(b)成分以外の熱伝導性充填剤 0〜2,000質量部
    (但し、(b)成分と(c)成分の合計量は100〜4,000質量部である。)
    (d)分子鎖両末端にのみケイ素原子に直接結合した水素原子をもつオルガノハイドロジェンポリシロキサン ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が(a)成分中のアルケニル基のモル数の0.1〜5.0倍量となる量
    (e)白金族系付加反応触媒 (a)成分に対して白金族元素換算で0.1〜500ppmを含有する電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物。
  2. 更に、(f)分子側鎖にケイ素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを、ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が(d)成分のケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数の0.1〜10%となる量で配合したことを特徴とする請求項1記載の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物。
  3. (b)電磁波吸収性充填剤が、鉄元素を15質量%以上含む軟磁性合金及び/又はフェライトであることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物。
  4. 請求項1,2又は3記載の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物をシート状に成形させたシート体からなる電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体。
  5. 請求項1,2又は3記載の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物をシート状に成形させた2枚のシートの間に、ガラスクロス又は有機高分子フィルムを介装したシート体からなる電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体。
  6. 更に、請求項4又は5記載のシート体の片面又は両面に、分子側鎖にケイ素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、シリコーン組成物中の(a)成分との付加反応体からなる表面保護層を形成せしめたことを特徴とする電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体。
  7. 更に、請求項4又は5記載のシート体の片面又は両面に、該電磁波吸収性熱伝導性シリコーン組成物とは異なる組成の熱伝導層、電磁波吸収層、及び電磁波吸収熱伝導層から選ばれる少なくとも一層を積層したことを特徴とする電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体。
  8. 更に、請求項4又は5記載のシート体の片面又は両面に、厚さ50μm以下の高分子層を積層したことを特徴とする電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体。
  9. シート体の熱伝導率が、0.7W/mK以上であることを特徴とする請求項4乃至8のいずれか1項記載の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体。
  10. シート体の厚さが、0.1〜10mmであることを特徴とする請求項4乃至9のいずれか1項記載の電磁波吸収性熱伝導性シリコーン成形体。
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