JP2005015354A - 気管支喘息の治療および/または予防剤 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、含酸素複素環化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する気管支喘息(例えば、抗原誘発喘息、運動誘発喘息、冷気誘発喘息、アスピリン喘息、有害物質誘発喘息など)の治療および/または予防剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
気管支喘息は、気管支平滑筋の異常収縮、気道分泌の亢進による気道狭窄、気管支炎症、気道過敏性、気道リモデリングなどの症状を特徴とし、これらが複合した症状を伴う。気管支喘息の薬物療法としては、気管支平滑筋弛緩作用を有する吸入β受容体刺激剤や抗炎症作用を有する吸入ステロイド剤などの投与が広く用いられている。しかしながら、吸入β受容体刺激剤の投与では効果は著明であるが、長期服用による作用の減弱、および心悸亢進、動悸などを招く可能性があることが報告されている[「呼吸」、1999年、18巻、p.147]。また、吸入ステロイド剤も、強力な抗炎症作用を示し、優れた薬剤であるが、口腔咽頭、骨代謝への悪影響、小児での成長障害などの重篤な副作用が報告されている[「アメリカン・ジャーナル・オブ・レスピラトリー・アンド・クリティカル・ケアー・メディシン(Am.J.Respir.Crit.Care Med.)」、1998年、157巻、p.S1]。
【0003】
アデノシン3’,5’−サイクリンモノフホスフェート(cAMP)は好酸球、好中球、リンパ球、肥満細胞、マクローファージなどの炎症細胞において、炎症反応の制御に重要な役割を果たしている[「アメリカン・ジャーナル・オブ・レスピラトリー・アンド・クリティカル・ケアー・メディシン(Am.J.Respir.Crit.Care Med.)」、1998年、157巻、p.351]。ホスホジエステラーゼ(PDE)は、cAMPを分解し、その細胞内濃度を調整しており、特にPDEのアイソザイムの1つであるPDE−IVは、炎症細胞や気管支平滑筋におけるcAMP濃度を調整している[「アメリカン・ジャーナル・オブ・レスピラトリー・アンド・クリティカル・ケアー・メディシン(Am.J.Respir.Crit.Care Med.)」、1998年、157巻、p.351]。炎症細胞ではPDE−IVを阻害することにより細胞内cAMPが上昇し、炎症性サイトカインや活性酸素の産生、接着分子の発現が抑制される[「イムノファーマコロジィー(Immunopharmacology)」、2000年、47巻、p.127]。また、気管支平滑筋ではPDE−IVの阻害により、気管支平滑筋の収縮反応が抑制される[「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジィー(Br.J.Pharmacol.)」、1991年、104巻、p.471]。すなわち、PDE−IVを阻害することで、気管支喘息の特徴である炎症反応および気道収縮反応が抑制され、さらには気道分泌の亢進、気道過敏性、気道リモデリングなども抑制され、気管支喘息の治療および/または予防に繋がるものと期待されている。
【0004】
従来、PDE−IV阻害作用を有する含酸素複素環化合物またはその薬理学的に許容される塩が知られている(特許文献1、2参照)。
一方、アイソザイム選択的なPDE−IV阻害剤が、炎症の治療において、また気管支拡張薬として有用であることが知られているが、これまでに知られているPDE−IV阻害剤は、例えば、抗鬱作用や催吐作用をも発現すると報告されている[CNS ドラッグ・レビューズ(CNS Drug Reviews)、2001年、第7巻、p.387;カレント・ファーマシューティカル・デザイン(Current Pharmaceutical Design)、2002年、第8巻、p.1255]。PDE−IVは、炎症性細胞や気管支平滑筋のみならず、中枢神経系においても分布することが知られていることから[ジーン(Gene)、1994年、第149巻、p.237]、これらPDE−IV阻害剤の多様な薬理作用は、中枢のまたは末梢のPDE−IVを阻害することにより、発現したと考えられる。
【0005】
末梢における疾患の治療を目的とする薬物にとっては、中枢神経系に対する薬理作用は、少なからず副作用に繋がる懸念があり、末梢選択的なPDE−IV阻害剤が望まれる。
【0006】
【特許文献1】
国際公開第98/22455号パンフレット
【0007】
【特許文献2】
国際公開第00/14085号パンフレット
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、含酸素複素環化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する気管支喘息(例えば、抗原誘発喘息、運動誘発喘息、冷気誘発喘息、アスピリン喘息、有害物質誘発喘息など)の治療および/または予防剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の(1)〜(9)に関する。
(1) 一般式(I)
【0010】
【化3】
【0011】
{式中、mは0〜4の整数を表し、R1、R2、R3およびR4は同一または異なって、水素原子、低級アルキル、シクロアルキル、低級アルケニル、シクロアルケニル、アリールまたはアラルキルを表すか、R1、R2、R3およびR4の中で同一炭素原子上に存在する2つの基がその炭素原子と一緒になってスピロ飽和炭素環を形成するか、R1、R2、R3およびR4の中で隣接する炭素原子上に存在する2つの基が該隣接する2つの炭素原子と一緒になって飽和炭素環を形成するか、R1、R2、R3およびR4の中で隣接する炭素原子上に存在する2つの基が一緒になって結合を表し(既に存在する結合と一緒になって二重結合を形成する)、R5は非置換またはハロゲン置換の低級アルコキシを表し、R6は水素原子またはハロゲンを表し、Yは式(II)
【0012】
【化4】
【0013】
[式中、R7はシアノ、エチニルまたはカルバモイルを表し、R8は水素原子を表すか、またはR7とR8が一緒になって結合を表し(既に存在する結合と一緒になって二重結合を形成する)]または4−カルボキシフェニルを表す}で表される含酸素複素環化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する気管支喘息の治療および/または予防剤。
(2) mが0〜2の整数であり、R1、R2、R3およびR4が水素原子であるか、R1、R2、R3およびR4の中で同一炭素原子上に存在する2つの基がその炭素原子と一緒になってスピロ飽和炭素環を形成し、R6が水素原子である(1)記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
(3) mが1であり、R1、R2、R3およびR4が水素原子である(1)または(2)記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
(4) R5がメトキシである(1)〜(3)のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
(5) Yが式(II)である(1)〜(4)のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
(6) Yが4−カルボキシフェニルである(1)〜(4)のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
(7) R7がシアノであり、R8が水素原子である(1)〜(5)のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
(8) 気管支喘息が抗原誘発喘息、運動誘発喘息、冷気誘発喘息、アスピリン喘息および有害物質誘発喘息からなる群より選ばれる喘息である(1)〜(7)のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
(9) 吸入剤である(1)〜(8)のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
【0014】
以下、一般式(I)で表される化合物を化合物(I)という。
【0015】
【発明の実施の形態】
一般式(I)の各基の定義において、低級アルキルおよび低級アルコキシの低級アルキル部分としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数1〜8のアルキル、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどがあげられる。
【0016】
シクロアルキルとしては、例えば炭素数3〜10のシクロアルキル、具体的にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルなどがあげられる。
低級アルケニルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜8のアルケニル、具体的にはビニル、1−プロペニル、アリル、メタクリル、1−ブテニル、クロチル、ペンテニル、イソプレニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニルなどがあげられる。
【0017】
シクロアルケニルとしては、例えば炭素数4〜10のシクロアルケニル、具体的にはシクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、シクロノネニル、シクロデセニルなどがあげられる。
アリールとしては、例えば炭素数6〜18のアリール、具体的にはフェニル、ナフチル、アントラニルなどがあげられ、アラルキルとしては、例えば炭素数7〜15のアラルキル、具体的にはベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、ナフチルメチルなどがあげられる。
【0018】
同一炭素原子上に存在する2つの基がその炭素原子と一緒になって形成するスピロ飽和炭素環および隣接する炭素原子上に存在する2つの基が該隣接する2つの炭素原子と一緒になって形成する飽和炭素環としては、例えば炭素数3〜10の飽和炭素環、具体的にはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカンなどがあげられる。
【0019】
ハロゲンおよびハロゲン置換の低級アルコキシにおけるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を意味する。
化合物(I)の薬理学的に許容される塩は、薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩などを包含する。
化合物(I)の薬理学的に許容される酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩などの有機酸塩があげられ、薬理学的に許容される金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩などがあげられ、薬理学的に許容されるアンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウムなどの塩があげられ、薬理学的に許容される有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジンなどの付加塩があげられ、薬理学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸などの付加塩があげられる。
【0020】
次に、化合物(I)の製造方法について説明する。
化合物(I)は、国際公開第98/22455号パンフレットもしくは国際公開第00/14085号パンフレットに記載の方法またはそれらに準じて製造することができる。
化合物(I)には、互変異性体などの立体異性体が存在し得るが、本発明の気管支喘息の治療および/または予防剤には、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物を使用することができる。
【0021】
化合物(I)の塩を取得したいとき、化合物(I)が塩の形で得られるときはそのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られるときは、化合物(I)を適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えて単離、精製すればよい。
また、化合物(I)およびその薬理学的に許容される塩は、水または各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これらの付加物も本発明の気管支喘息の治療および/または予防剤に使用することができる。
【0022】
化合物(I)の具体例を第1表に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
次に、化合物(I)の薬理作用について試験例により具体的に説明する。
試験例1:中枢移行性試験
9週齢のSD系雄性ラット(日本チャールス・リバー、神奈川)を試験に供した。試験は非絶食下で行い、例数はn=2とした。
化合物2を0.5重量/容量%メチルセルロース水溶液 400(メチルセルロース400cP、和光純薬工業、大阪)に3mg/mLの濃度になるよう懸濁させ、10mL/kgの用量で直接ラットの胃内に投与した(投与量:30mg/kg)。
【0025】
投与後0.5、1および2時間の各時点にラット尾静脈を剃刀で切傷後、ヘパリン処理したキャピラリーチューブ(Drummond ScientificCo.、Broomall、PA、USA)を用いて約300μLの血液を採取した。血液を遠心分離(9,170xg、10分、4℃)することで血漿を得、得られた血漿サンプルを測定まで−20℃で冷凍保存した。
【0026】
最終採血時点での採血終了後、ラット大腿部動静脈を切開し、ヘパリンを少量添加したポリプロピレン製テストチューブに血液を採取してラットを放血死させた後、脳を摘出した。摘出した脳は生理食塩水で洗浄し、分析時まで−80℃で冷凍保存した。
各時点で得られた血漿サンプル100μLにそれぞれ内部標準物質を含むメタノール溶液200μLを加えて攪拌し、氷中で20分間放置後、遠心分離(20,600xg、10分、4℃)して、上清をLC/MSに注入し、化合物2の血漿中濃度を求めた。その結果、化合物2は、投与後2時間まで、持続的な血漿中濃度推移を示した。
【0027】
摘出した脳を秤量後、脳重量と等量(1mL/g脳)の精製水を添加し、ホモジナイザー[約1000rpmで約3分間(5〜6回)粉砕、ホモジナイザー攪拌装置(16−80、池本理化学工業、東京)]を用いて氷冷下でホモジナイズした。さらに、内部標準物質を含む脳重量の2倍量(2mL/g脳)のメタノール溶液を添加して再度氷冷下ホモジナイズし、脳のホモジネート液とした。得られた脳のホモジネート液を氷中で20分間放置後、その400μLをマイクロチューブに分注し遠心分離(20,600xg、10分、4℃)して、上清をLC/MSに注入し、化合物2の脳中濃度を求めた。
【0028】
投与後2時間時点での化合物2の脳中濃度は189ng/mL(平均値、n=2)、血漿中濃度は6790mg/mL(平均値、n=2)であった。これより化合物2の脳中濃度/血漿中濃度の比は0.0281(2.8%)と算出された。脳の血管容積が脳の全組織量の約2%を占めることを考慮すれば、化合物2の脳内移行量は、無視できるレベルにあると考えられる(杉山 雄一 編集、ファーマコキネティクス研究の方法と技術 −前臨床から臨床第1相へ−、1993年、p.227、日本薬物動態学会)。
試験例2:抗原抗体反応により誘発される肺胞内への好酸球浸潤および好中球浸潤に対する抑制作用
(1)抗原暴露前に化合物2で処置した場合(好酸球浸潤および好中球浸潤に対する化合物2による予防効果)
6週齢のBNラット(雄性;日本チャールスリバー、神奈川)を試験に用いた。少なくとも1週間の検疫・馴化の後、体重増加が順調、かつ外見上に異常が認められない個体を用い、7週齢で試験を開始した。動物は室温19〜25℃、湿度30〜70%、一日12時間照明(午前7時〜午後7時)の飼育環境条件下で飼育した。
【0029】
7週齢雄性BNラットに、卵白アルブミン(OVA;Sigma、St.Louis、MO、USA)1mgおよび水酸化アルミニウム(和光純薬工業、大阪)100mgを含む生理食塩水溶液1mLを腹腔内投与し、さらに2日後に同様に腹腔内投与することによりラットを感作した。1回目の感作後14日目に、感作したラットを噴霧用プラスチックケージに入れ、超音波ネブライザー(NE−U12、オムロン、東京)を用いて1重量/容量%のOVA生理食塩水溶液を25分間噴霧することにより反応を惹起した。化合物2は、ミキサーおよびソニケーターを用いて0.5重量/容量%メチルセルロース400(MC)水溶液に懸濁し、2mg/mLおよび0.6mg/mLの濃度の溶液として調製し(化合物2懸濁液)、OVA生理食塩水溶液の噴霧1時間前にそれぞれを5mL/kg経口投与した(化合物2投与群)。また、溶媒投与群として、化合物2懸濁液の代わりに0.5重量/容量%MC水溶液を5mL/kg経口投与した群を設けた。一方、非抗原投与群として、OVA生理食塩水溶液の代わりに生理食塩水溶液のみを同様に噴霧し、溶媒投与群と同様に0.5重量/容量%MC水溶液を5mL/kg経口投与した群を設けた。OVA生理食塩水溶液または生理食塩水溶液噴霧24時間後に気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。すなわち、ラットをペントバルビタール・ナトリウム(pentbarbital sodium;ネンブタール注射液、ダイナボット、大阪)50mg/kgを腹腔内投与することにより麻酔した後、気管カニューレを介して0.01重量/容量%のエチレンジアミン四酢酸−2ナトリウム塩(EDTA−2Na)を含むハンクス液(Hanksblanced salt solutiona(HBSS、Life Technologies、ニューヨーク、USA)を4mL注入し、約15秒後に回収した。この操作を計2回繰り返して、気管支肺胞洗浄液(BALF)とした。BALFを遠心(毎分950回転(200x g)、10分間、4℃)した後、取得した細胞を上記のハンクス液(0.5mL)に懸濁した。BALF中の総白血球数を自動血球カウンター(Celltacα MEK−6158、日本光電、東京)を用いて計数した。また、サイトスピンIII(Cytospin III;Shandon,Oittsburgh,PA,USA)を用いて塗抹標本を作製し、ライト染色を行い、光学顕微鏡にて細胞300個を観察し、この中の好酸球数および好中球数を計数した。
【0030】
BALF中の好酸球数および好中球数は次の計算式で求めた。
【0031】
【数1】
【0032】
【数2】
【0033】
化合物2による肺胞内への好酸球浸潤の抑制率(%)および好中球浸潤の抑制率(%)は次の計算式から算出した。
好酸球浸潤抑制率
【0034】
【数3】
【0035】
好中球浸潤抑制率
【0036】
【数4】
【0037】
結果を第2表に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
(2)抗原暴露後に化合物2で処置した場合(好酸球浸潤および好中球浸潤に対する化合物2による治療効果)
上記(1)と同様にして、7週齢雄性BNラットに、卵白アルブミン(OVA;Sigma、St.Louis、MO、USA)1mgおよび水酸化アルミニウム(和光純薬工業、大阪)100mgを含む生理食塩水溶液1mLを腹腔内に投与し、さらに2日後に同様に腹腔内投与することによりラットを感作した。1回目の感作後14日目に、感作したラットを噴霧用プラスチックケージに入れ、超音波ネブライザー(NE−U12、オムロン、東京)を用いて1重量/容量%のOVA生理食塩水溶液を25分間噴霧することにより反応を惹起した。また、非抗原投与群として、OVA生理食塩水溶液の代わりに生理食塩水溶液のみを同様に噴霧した群を設けた。化合物2は、ミキサーおよびソニケーターを用いて0.5重量/容量%メチルセルロース400(MC)水溶液に懸濁し、2mg/mLの濃度の溶液として調製し(化合物2懸濁液)、OVA生理食塩水溶液の噴霧6時間後に5mL/kg経口投与した(化合物2投与群)。また、溶媒投与群として、化合物2の代わりに0.5重量/容量%MC水溶液を5mL/kg経口投与した群を設けた。さらに、非抗原投与群にも同様に0.5重量/容量%MC水溶液を5mL/kg経口投与した。OVA生理食塩水溶液または生理食塩水溶液噴霧24時間後に気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。すなわち、ラットをペントバルビタール・ナトリウム(pentbarbital sodium;ネンブタール注射液、ダイナボット、大阪)50mg/kgを腹腔内投与することにより麻酔した後、気管カニューレを介して0.01重量/容量%のエチレンジアミン四酢酸−2ナトリウム塩(EDTA−2Na)を含むハンクス液(Hanks blanced salt solutiona(HBSS、Life Technologies、ニューヨーク、USA)を4mL注入し、約15秒後に回収した。この操作を計2回繰り返して、気管支肺胞洗浄液(BALF)とした。BALFを遠心(毎分950回転(200x g)、10分間、4℃)した後、取得した細胞を上記のハンクス液(0.5mL)に懸濁した。得られたBALF中の好酸球数および好中球数を上記(1)と同様に計数し、化合物2による肺胞内への好酸球浸潤の抑制率(%)および好中球浸潤の抑制率(%)を上記(1)と同様に算出した。結果を第3表に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
以上より、抗原の暴露前であっても暴露後であっても、化合物2の投与により、抗原により惹起される肺胞内への好酸球の浸潤および好中球の浸潤が抑制できることが示された。
試験例3:抗原抗体反応により誘発される気道収縮に対する抑制作用
6週齢のBNラット(雄性;日本チャールスリバー、神奈川)を試験に用いた。少なくとも1週間の検疫・馴化の後、体重増加が順調、かつ外見上に異常が認められない個体を用い、7週齢で試験を開始した。動物は室温19〜25℃、湿度30〜70%、一日12時間照明(午前7時〜午後7時)の飼育環境条件下で飼育した。
【0042】
7週齢雄性BNラットに、卵白アルブミン(OVA;Sigma、St.Louis、MO、USA)1mgおよび水酸化アルミニウム(和光純薬工業、大阪)100mgを含む生理食塩水溶液1mLを腹腔内投与し、さらに翌日および2日後に同様に腹腔内投与することによりラットを感作した。
初回の感作後14日目〜16日目に、ペントバルビタール・ナトリウム(pentobarbital sodium;ネンブタール注射液、ダイナボット、大阪)80mg/kgを腹腔内投与することによりラットを麻酔し、頸部を切開して気管および頸静脈を露出後、臭化パンクロニウム(pancronium bromide;Sigma、MO、USA)の0.2mg/mL生理食塩水溶液を1mL静脈内投与した。自発呼吸停止後、直ちに気管カニューレを装着して、人工呼吸器(TYPE7025、Ugo Basile、Varese、Italy)による定流量呼吸(70回/分、1mL/体重100g)を施した。気道抵抗の指標として、気道内圧(cmH2O)を人工呼吸の回路から分岐して接続した差圧トランスデューサー(TP−603T、日本光電、東京)により測定した。気道内圧は、プリアンプ(呼吸用アンプ:AR−601G、日本光電)を介してレコーダー(WT−687G、日本光電)に記録した。化合物2は0.5重量/容量%メチルセルロース400(MC)水溶液に2mg/mLおよび0.6mg/mLの濃度になるように懸濁させ、気道内圧が安定した後、それぞれ5mL/kg経口投与した。化合物2投与1時間後に抗原であるOVAの10mg/mL生理食塩水溶液を1mL/kg頸静脈内投与し、気道内圧の変化を5分間観察した(化合物2投与群)。同様に、化合物2の代わりに0.5重量/容量%MC水溶液を5mL/kg投与した群を設けた(抗原投与群)。
【0043】
気道収縮は、抗原静脈内投与後5分間の気道内圧変化の曲線下面積(AUC0−5分)で表した。化合物2による気道収縮反応の抑制率(%)は、次式より算出した。
【0044】
【数5】
【0045】
結果を第4表に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
上記の試験により、化合物2の投与により、抗原により惹起される気道収縮反応が抑制されることが示された。
上記試験の結果は、化合物(I)を投与することにより気管支喘息に伴う肺胞内への炎症性細胞(好酸球、好中球)の浸潤、および気道収縮反応を抑制できることを示唆している。一方、気管支喘息は好酸球性の気道炎症を特徴とした疾患であり[クリニカル・エクスペリメンタル・アラージー(Clin.Exp.All.)、2002年、32巻、p.162]、肺組織およびBALFへの著明な好酸球浸潤が認められることが知られている。また、アスピリンなどの非ステロイド抗炎症剤、ディーゼル排気などの有害物質、抗原、運動、冷気などが、喘息における炎症などの症状を誘発または増悪させる因子であると考えられている[グローバル・イニシアチブ・フォー・アズマ(Global Initiative for Asthma (GINA))著、GINAガイドライン(Global Strategy for Astma Management and Prevention)、2002年、p.39]。
【0048】
以上のことから、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩は、気管支喘息(例えば、抗原誘発喘息、運動誘発喘息、冷気誘発喘息、アスピリン喘息、有害物質誘発喘息など)の治療および/または予防剤として有用であると考えられた。
化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩は、そのまま単独で投与することも可能であるが、通常各種の医薬製剤として提供するのが望ましい。また、それら医薬製剤は、動物および人に使用されるものである。
【0049】
本発明に係わる医薬製剤は、活性成分として化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩を単独で、あるいは任意の他の治療のための有効成分との混合物として含有することができる。また、それら医薬製剤は、活性成分を薬理学的に許容される一種もしくはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造される。
【0050】
投与経路としては、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口または、例えば静脈内、気管内、経皮などの非経口をあげることができる。
投与形態としては、例えば錠剤、注射剤、吸入剤、外用剤などがあげられる。徐放的な適応もまた利用できる。
経口投与に適当な、例えば錠剤などは、乳糖、マンニットなどの賦形剤、澱粉などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、グリセリンなどの可塑剤、安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤などを用いて製造できる。
【0051】
非経口投与に適当な、例えば注射剤は、好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物を含む滅菌水性剤からなり、例えば、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩水とブドウ糖溶液の混合物からなる担体などを用いて注射用の溶液を調製する。
吸入剤は、活性成分を粉末または液状にして、吸入噴霧剤または担体中に配合し、例えば、定量噴霧式吸入器、ドライパウダー吸入器などの吸入容器に充填することにより製造される。吸入噴射剤としては、従来公知のものを広く使用することができ、例えばフロン−11、フロン−12、フロン−21、フロン−22、フロン−113、フロン−114、フロン−123、フロン−142c、フロン−134a、フロン−227、フロン−C318、1,1,1,2−テトラフルオロエタンなどのフロン系ガス、HFA−227、HFA−134aなどの代替フロンガス、プロパン、イソブタン、n−ブタンなどの炭化水素系ガス、ジエチルエーテル、窒素ガス、炭酸ガスなどがあげられる。担体としては、従来公知のものを広く使用でき、例えば糖類、糖アルコール類、アミノ酸類などがあげられ、乳糖、D−マンニトールなどが好ましい。
【0052】
外用剤としては、特に限定されるものではないが、例えば基剤に活性成分を溶解または混合分散しクリーム状、ペースト状、ゼリー状、ゲル状、乳液状、液状などの形状になされたもの(軟膏剤、ローション剤など)、基剤に活性成分および経皮吸収促進剤を溶解または混合分散させたものを例えばポリエチレンなどの支持体上に展延したもの(パップ剤、テープ剤など)などがあげられる。上記基剤としては、薬理学的に許容しうるものであればいずれでもよく、軟膏剤、リニメント剤、ローションなどの基剤として従来公知のものを用いることができ、例えば、アルギン酸ナトリウム;ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、メチルセルロース、キサンタンガム、デキストリン、ポリビニルアルコールなどのポリマー;オリーブ油、ラノリンなどの油脂類;白色ワセリン;パラフィン;ステアリン酸などの高級脂肪酸;セチルアルコールなどの高級アルコール;ポリエチレングリコール;水などがあげられる。上記経皮吸収促進剤としては、薬理学的に許容しうるものであればいずれでもよく、例えばエタノール、ジエチレングリコールなどのアルコール類;ドデシルピロリドンなどの極性溶剤;尿素;ラウリル酸エチル;エイゾン;オリーブ油などがあげられる。さらに必要に応じて、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、酸化チタンなどの無機充填剤;粘度調節剤;老化防止剤;pH調節剤;グリセリン、プロピレングリコールなどの保湿剤などを添加してもよい。
【0053】
また、これら非経口剤においても、経口剤で例示した賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤、防腐剤などから選択される1種もしくはそれ以上の補助成分を添加することもできる。
化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩の投与量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、治療すべき症状の性質もしくは重篤度などにより異なるが、通常経口の場合、成人一人当り0.01mg〜1g、好ましくは0.05〜50mgを一日1回ないし数回投与する。静脈内投与などの非経口投与の場合、成人一人当り0.001〜100mg 、好ましくは0.01〜50mgを一日1回ないし数回投与する。気管内投与(吸入剤)の場合、成人一人当たり、0.001mg〜1g、好ましくは0.01〜100mg、より好ましくは0.5mg〜20mgを一日1回ないし数回投与する。しかしながら、これら投与量および投与回数に関しては、前述の種々の条件により変動する。
【0054】
以下に、本発明の態様を実施例で説明する。
【0055】
【実施例】
実施例1:錠剤(化合物1)
常法により、次の組成からなる錠剤を調製する。化合物1 40g、乳糖286.8gおよび馬鈴薯澱粉60gを混合し、これにヒドロキシプロピルセルロースの10%水溶液120gを加える。この混合物を常法により練合し、造粒して乾燥させた後、整粒し打錠用顆粒とする。これにステアリン酸マグネシウム1.2gを加えて混合し、径8mmの杵をもった打錠機(菊水社製RT−15型)で打錠を行って、錠剤(1錠あたり活性成分20mgを含有する)を得る。
実施例2:錠剤(化合物2)
化合物2 40gを用い、実施例1と同様にして、標記錠剤(1錠あたり活性成分20mgを含有する)を得る。
実施例3:注射剤(化合物3)
常法により、次の組成からなる注射剤を調製する。化合物3 1gおよびD−マンニトール5gを注射用蒸留水に添加して混合し、さらに塩酸水溶液および水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6に調整した後、注射用蒸留水で全量を1000mLとする。得られた混合液をガラスバイアルに2mLずつ無菌的に充填して、注射剤(1バイアルあたり活性成分2mgを含有する)を得る。
実施例4:ドライパウダー吸入剤(化合物4)
ジェットミル(A−0JET;セイシン企業)を用いて、化合物4 10gを空気圧5kg/cm2で1.5g/分間の送り速度で粉砕する。得られる化合物4の粉砕物と乳糖(Pharmatose325M;DMV社製)とを重量比1:5で混合し、ドライパウダー製剤を得る。
【0056】
【発明の効果】
本発明により、含酸素複素環化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する気管支喘息(例えば、抗原誘発喘息、運動誘発喘息、冷気誘発喘息、アスピリン喘息、有害物質誘発喘息など)の治療および/または予防剤が提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、含酸素複素環化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する気管支喘息(例えば、抗原誘発喘息、運動誘発喘息、冷気誘発喘息、アスピリン喘息、有害物質誘発喘息など)の治療および/または予防剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
気管支喘息は、気管支平滑筋の異常収縮、気道分泌の亢進による気道狭窄、気管支炎症、気道過敏性、気道リモデリングなどの症状を特徴とし、これらが複合した症状を伴う。気管支喘息の薬物療法としては、気管支平滑筋弛緩作用を有する吸入β受容体刺激剤や抗炎症作用を有する吸入ステロイド剤などの投与が広く用いられている。しかしながら、吸入β受容体刺激剤の投与では効果は著明であるが、長期服用による作用の減弱、および心悸亢進、動悸などを招く可能性があることが報告されている[「呼吸」、1999年、18巻、p.147]。また、吸入ステロイド剤も、強力な抗炎症作用を示し、優れた薬剤であるが、口腔咽頭、骨代謝への悪影響、小児での成長障害などの重篤な副作用が報告されている[「アメリカン・ジャーナル・オブ・レスピラトリー・アンド・クリティカル・ケアー・メディシン(Am.J.Respir.Crit.Care Med.)」、1998年、157巻、p.S1]。
【0003】
アデノシン3’,5’−サイクリンモノフホスフェート(cAMP)は好酸球、好中球、リンパ球、肥満細胞、マクローファージなどの炎症細胞において、炎症反応の制御に重要な役割を果たしている[「アメリカン・ジャーナル・オブ・レスピラトリー・アンド・クリティカル・ケアー・メディシン(Am.J.Respir.Crit.Care Med.)」、1998年、157巻、p.351]。ホスホジエステラーゼ(PDE)は、cAMPを分解し、その細胞内濃度を調整しており、特にPDEのアイソザイムの1つであるPDE−IVは、炎症細胞や気管支平滑筋におけるcAMP濃度を調整している[「アメリカン・ジャーナル・オブ・レスピラトリー・アンド・クリティカル・ケアー・メディシン(Am.J.Respir.Crit.Care Med.)」、1998年、157巻、p.351]。炎症細胞ではPDE−IVを阻害することにより細胞内cAMPが上昇し、炎症性サイトカインや活性酸素の産生、接着分子の発現が抑制される[「イムノファーマコロジィー(Immunopharmacology)」、2000年、47巻、p.127]。また、気管支平滑筋ではPDE−IVの阻害により、気管支平滑筋の収縮反応が抑制される[「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジィー(Br.J.Pharmacol.)」、1991年、104巻、p.471]。すなわち、PDE−IVを阻害することで、気管支喘息の特徴である炎症反応および気道収縮反応が抑制され、さらには気道分泌の亢進、気道過敏性、気道リモデリングなども抑制され、気管支喘息の治療および/または予防に繋がるものと期待されている。
【0004】
従来、PDE−IV阻害作用を有する含酸素複素環化合物またはその薬理学的に許容される塩が知られている(特許文献1、2参照)。
一方、アイソザイム選択的なPDE−IV阻害剤が、炎症の治療において、また気管支拡張薬として有用であることが知られているが、これまでに知られているPDE−IV阻害剤は、例えば、抗鬱作用や催吐作用をも発現すると報告されている[CNS ドラッグ・レビューズ(CNS Drug Reviews)、2001年、第7巻、p.387;カレント・ファーマシューティカル・デザイン(Current Pharmaceutical Design)、2002年、第8巻、p.1255]。PDE−IVは、炎症性細胞や気管支平滑筋のみならず、中枢神経系においても分布することが知られていることから[ジーン(Gene)、1994年、第149巻、p.237]、これらPDE−IV阻害剤の多様な薬理作用は、中枢のまたは末梢のPDE−IVを阻害することにより、発現したと考えられる。
【0005】
末梢における疾患の治療を目的とする薬物にとっては、中枢神経系に対する薬理作用は、少なからず副作用に繋がる懸念があり、末梢選択的なPDE−IV阻害剤が望まれる。
【0006】
【特許文献1】
国際公開第98/22455号パンフレット
【0007】
【特許文献2】
国際公開第00/14085号パンフレット
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、含酸素複素環化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する気管支喘息(例えば、抗原誘発喘息、運動誘発喘息、冷気誘発喘息、アスピリン喘息、有害物質誘発喘息など)の治療および/または予防剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の(1)〜(9)に関する。
(1) 一般式(I)
【0010】
【化3】
【0011】
{式中、mは0〜4の整数を表し、R1、R2、R3およびR4は同一または異なって、水素原子、低級アルキル、シクロアルキル、低級アルケニル、シクロアルケニル、アリールまたはアラルキルを表すか、R1、R2、R3およびR4の中で同一炭素原子上に存在する2つの基がその炭素原子と一緒になってスピロ飽和炭素環を形成するか、R1、R2、R3およびR4の中で隣接する炭素原子上に存在する2つの基が該隣接する2つの炭素原子と一緒になって飽和炭素環を形成するか、R1、R2、R3およびR4の中で隣接する炭素原子上に存在する2つの基が一緒になって結合を表し(既に存在する結合と一緒になって二重結合を形成する)、R5は非置換またはハロゲン置換の低級アルコキシを表し、R6は水素原子またはハロゲンを表し、Yは式(II)
【0012】
【化4】
【0013】
[式中、R7はシアノ、エチニルまたはカルバモイルを表し、R8は水素原子を表すか、またはR7とR8が一緒になって結合を表し(既に存在する結合と一緒になって二重結合を形成する)]または4−カルボキシフェニルを表す}で表される含酸素複素環化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する気管支喘息の治療および/または予防剤。
(2) mが0〜2の整数であり、R1、R2、R3およびR4が水素原子であるか、R1、R2、R3およびR4の中で同一炭素原子上に存在する2つの基がその炭素原子と一緒になってスピロ飽和炭素環を形成し、R6が水素原子である(1)記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
(3) mが1であり、R1、R2、R3およびR4が水素原子である(1)または(2)記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
(4) R5がメトキシである(1)〜(3)のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
(5) Yが式(II)である(1)〜(4)のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
(6) Yが4−カルボキシフェニルである(1)〜(4)のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
(7) R7がシアノであり、R8が水素原子である(1)〜(5)のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
(8) 気管支喘息が抗原誘発喘息、運動誘発喘息、冷気誘発喘息、アスピリン喘息および有害物質誘発喘息からなる群より選ばれる喘息である(1)〜(7)のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
(9) 吸入剤である(1)〜(8)のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
【0014】
以下、一般式(I)で表される化合物を化合物(I)という。
【0015】
【発明の実施の形態】
一般式(I)の各基の定義において、低級アルキルおよび低級アルコキシの低級アルキル部分としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数1〜8のアルキル、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどがあげられる。
【0016】
シクロアルキルとしては、例えば炭素数3〜10のシクロアルキル、具体的にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルなどがあげられる。
低級アルケニルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜8のアルケニル、具体的にはビニル、1−プロペニル、アリル、メタクリル、1−ブテニル、クロチル、ペンテニル、イソプレニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニルなどがあげられる。
【0017】
シクロアルケニルとしては、例えば炭素数4〜10のシクロアルケニル、具体的にはシクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、シクロノネニル、シクロデセニルなどがあげられる。
アリールとしては、例えば炭素数6〜18のアリール、具体的にはフェニル、ナフチル、アントラニルなどがあげられ、アラルキルとしては、例えば炭素数7〜15のアラルキル、具体的にはベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、ナフチルメチルなどがあげられる。
【0018】
同一炭素原子上に存在する2つの基がその炭素原子と一緒になって形成するスピロ飽和炭素環および隣接する炭素原子上に存在する2つの基が該隣接する2つの炭素原子と一緒になって形成する飽和炭素環としては、例えば炭素数3〜10の飽和炭素環、具体的にはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカンなどがあげられる。
【0019】
ハロゲンおよびハロゲン置換の低級アルコキシにおけるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を意味する。
化合物(I)の薬理学的に許容される塩は、薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩などを包含する。
化合物(I)の薬理学的に許容される酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩などの有機酸塩があげられ、薬理学的に許容される金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩などがあげられ、薬理学的に許容されるアンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウムなどの塩があげられ、薬理学的に許容される有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジンなどの付加塩があげられ、薬理学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸などの付加塩があげられる。
【0020】
次に、化合物(I)の製造方法について説明する。
化合物(I)は、国際公開第98/22455号パンフレットもしくは国際公開第00/14085号パンフレットに記載の方法またはそれらに準じて製造することができる。
化合物(I)には、互変異性体などの立体異性体が存在し得るが、本発明の気管支喘息の治療および/または予防剤には、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物を使用することができる。
【0021】
化合物(I)の塩を取得したいとき、化合物(I)が塩の形で得られるときはそのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られるときは、化合物(I)を適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えて単離、精製すればよい。
また、化合物(I)およびその薬理学的に許容される塩は、水または各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これらの付加物も本発明の気管支喘息の治療および/または予防剤に使用することができる。
【0022】
化合物(I)の具体例を第1表に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
次に、化合物(I)の薬理作用について試験例により具体的に説明する。
試験例1:中枢移行性試験
9週齢のSD系雄性ラット(日本チャールス・リバー、神奈川)を試験に供した。試験は非絶食下で行い、例数はn=2とした。
化合物2を0.5重量/容量%メチルセルロース水溶液 400(メチルセルロース400cP、和光純薬工業、大阪)に3mg/mLの濃度になるよう懸濁させ、10mL/kgの用量で直接ラットの胃内に投与した(投与量:30mg/kg)。
【0025】
投与後0.5、1および2時間の各時点にラット尾静脈を剃刀で切傷後、ヘパリン処理したキャピラリーチューブ(Drummond ScientificCo.、Broomall、PA、USA)を用いて約300μLの血液を採取した。血液を遠心分離(9,170xg、10分、4℃)することで血漿を得、得られた血漿サンプルを測定まで−20℃で冷凍保存した。
【0026】
最終採血時点での採血終了後、ラット大腿部動静脈を切開し、ヘパリンを少量添加したポリプロピレン製テストチューブに血液を採取してラットを放血死させた後、脳を摘出した。摘出した脳は生理食塩水で洗浄し、分析時まで−80℃で冷凍保存した。
各時点で得られた血漿サンプル100μLにそれぞれ内部標準物質を含むメタノール溶液200μLを加えて攪拌し、氷中で20分間放置後、遠心分離(20,600xg、10分、4℃)して、上清をLC/MSに注入し、化合物2の血漿中濃度を求めた。その結果、化合物2は、投与後2時間まで、持続的な血漿中濃度推移を示した。
【0027】
摘出した脳を秤量後、脳重量と等量(1mL/g脳)の精製水を添加し、ホモジナイザー[約1000rpmで約3分間(5〜6回)粉砕、ホモジナイザー攪拌装置(16−80、池本理化学工業、東京)]を用いて氷冷下でホモジナイズした。さらに、内部標準物質を含む脳重量の2倍量(2mL/g脳)のメタノール溶液を添加して再度氷冷下ホモジナイズし、脳のホモジネート液とした。得られた脳のホモジネート液を氷中で20分間放置後、その400μLをマイクロチューブに分注し遠心分離(20,600xg、10分、4℃)して、上清をLC/MSに注入し、化合物2の脳中濃度を求めた。
【0028】
投与後2時間時点での化合物2の脳中濃度は189ng/mL(平均値、n=2)、血漿中濃度は6790mg/mL(平均値、n=2)であった。これより化合物2の脳中濃度/血漿中濃度の比は0.0281(2.8%)と算出された。脳の血管容積が脳の全組織量の約2%を占めることを考慮すれば、化合物2の脳内移行量は、無視できるレベルにあると考えられる(杉山 雄一 編集、ファーマコキネティクス研究の方法と技術 −前臨床から臨床第1相へ−、1993年、p.227、日本薬物動態学会)。
試験例2:抗原抗体反応により誘発される肺胞内への好酸球浸潤および好中球浸潤に対する抑制作用
(1)抗原暴露前に化合物2で処置した場合(好酸球浸潤および好中球浸潤に対する化合物2による予防効果)
6週齢のBNラット(雄性;日本チャールスリバー、神奈川)を試験に用いた。少なくとも1週間の検疫・馴化の後、体重増加が順調、かつ外見上に異常が認められない個体を用い、7週齢で試験を開始した。動物は室温19〜25℃、湿度30〜70%、一日12時間照明(午前7時〜午後7時)の飼育環境条件下で飼育した。
【0029】
7週齢雄性BNラットに、卵白アルブミン(OVA;Sigma、St.Louis、MO、USA)1mgおよび水酸化アルミニウム(和光純薬工業、大阪)100mgを含む生理食塩水溶液1mLを腹腔内投与し、さらに2日後に同様に腹腔内投与することによりラットを感作した。1回目の感作後14日目に、感作したラットを噴霧用プラスチックケージに入れ、超音波ネブライザー(NE−U12、オムロン、東京)を用いて1重量/容量%のOVA生理食塩水溶液を25分間噴霧することにより反応を惹起した。化合物2は、ミキサーおよびソニケーターを用いて0.5重量/容量%メチルセルロース400(MC)水溶液に懸濁し、2mg/mLおよび0.6mg/mLの濃度の溶液として調製し(化合物2懸濁液)、OVA生理食塩水溶液の噴霧1時間前にそれぞれを5mL/kg経口投与した(化合物2投与群)。また、溶媒投与群として、化合物2懸濁液の代わりに0.5重量/容量%MC水溶液を5mL/kg経口投与した群を設けた。一方、非抗原投与群として、OVA生理食塩水溶液の代わりに生理食塩水溶液のみを同様に噴霧し、溶媒投与群と同様に0.5重量/容量%MC水溶液を5mL/kg経口投与した群を設けた。OVA生理食塩水溶液または生理食塩水溶液噴霧24時間後に気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。すなわち、ラットをペントバルビタール・ナトリウム(pentbarbital sodium;ネンブタール注射液、ダイナボット、大阪)50mg/kgを腹腔内投与することにより麻酔した後、気管カニューレを介して0.01重量/容量%のエチレンジアミン四酢酸−2ナトリウム塩(EDTA−2Na)を含むハンクス液(Hanksblanced salt solutiona(HBSS、Life Technologies、ニューヨーク、USA)を4mL注入し、約15秒後に回収した。この操作を計2回繰り返して、気管支肺胞洗浄液(BALF)とした。BALFを遠心(毎分950回転(200x g)、10分間、4℃)した後、取得した細胞を上記のハンクス液(0.5mL)に懸濁した。BALF中の総白血球数を自動血球カウンター(Celltacα MEK−6158、日本光電、東京)を用いて計数した。また、サイトスピンIII(Cytospin III;Shandon,Oittsburgh,PA,USA)を用いて塗抹標本を作製し、ライト染色を行い、光学顕微鏡にて細胞300個を観察し、この中の好酸球数および好中球数を計数した。
【0030】
BALF中の好酸球数および好中球数は次の計算式で求めた。
【0031】
【数1】
【0032】
【数2】
【0033】
化合物2による肺胞内への好酸球浸潤の抑制率(%)および好中球浸潤の抑制率(%)は次の計算式から算出した。
好酸球浸潤抑制率
【0034】
【数3】
【0035】
好中球浸潤抑制率
【0036】
【数4】
【0037】
結果を第2表に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
(2)抗原暴露後に化合物2で処置した場合(好酸球浸潤および好中球浸潤に対する化合物2による治療効果)
上記(1)と同様にして、7週齢雄性BNラットに、卵白アルブミン(OVA;Sigma、St.Louis、MO、USA)1mgおよび水酸化アルミニウム(和光純薬工業、大阪)100mgを含む生理食塩水溶液1mLを腹腔内に投与し、さらに2日後に同様に腹腔内投与することによりラットを感作した。1回目の感作後14日目に、感作したラットを噴霧用プラスチックケージに入れ、超音波ネブライザー(NE−U12、オムロン、東京)を用いて1重量/容量%のOVA生理食塩水溶液を25分間噴霧することにより反応を惹起した。また、非抗原投与群として、OVA生理食塩水溶液の代わりに生理食塩水溶液のみを同様に噴霧した群を設けた。化合物2は、ミキサーおよびソニケーターを用いて0.5重量/容量%メチルセルロース400(MC)水溶液に懸濁し、2mg/mLの濃度の溶液として調製し(化合物2懸濁液)、OVA生理食塩水溶液の噴霧6時間後に5mL/kg経口投与した(化合物2投与群)。また、溶媒投与群として、化合物2の代わりに0.5重量/容量%MC水溶液を5mL/kg経口投与した群を設けた。さらに、非抗原投与群にも同様に0.5重量/容量%MC水溶液を5mL/kg経口投与した。OVA生理食塩水溶液または生理食塩水溶液噴霧24時間後に気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。すなわち、ラットをペントバルビタール・ナトリウム(pentbarbital sodium;ネンブタール注射液、ダイナボット、大阪)50mg/kgを腹腔内投与することにより麻酔した後、気管カニューレを介して0.01重量/容量%のエチレンジアミン四酢酸−2ナトリウム塩(EDTA−2Na)を含むハンクス液(Hanks blanced salt solutiona(HBSS、Life Technologies、ニューヨーク、USA)を4mL注入し、約15秒後に回収した。この操作を計2回繰り返して、気管支肺胞洗浄液(BALF)とした。BALFを遠心(毎分950回転(200x g)、10分間、4℃)した後、取得した細胞を上記のハンクス液(0.5mL)に懸濁した。得られたBALF中の好酸球数および好中球数を上記(1)と同様に計数し、化合物2による肺胞内への好酸球浸潤の抑制率(%)および好中球浸潤の抑制率(%)を上記(1)と同様に算出した。結果を第3表に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
以上より、抗原の暴露前であっても暴露後であっても、化合物2の投与により、抗原により惹起される肺胞内への好酸球の浸潤および好中球の浸潤が抑制できることが示された。
試験例3:抗原抗体反応により誘発される気道収縮に対する抑制作用
6週齢のBNラット(雄性;日本チャールスリバー、神奈川)を試験に用いた。少なくとも1週間の検疫・馴化の後、体重増加が順調、かつ外見上に異常が認められない個体を用い、7週齢で試験を開始した。動物は室温19〜25℃、湿度30〜70%、一日12時間照明(午前7時〜午後7時)の飼育環境条件下で飼育した。
【0042】
7週齢雄性BNラットに、卵白アルブミン(OVA;Sigma、St.Louis、MO、USA)1mgおよび水酸化アルミニウム(和光純薬工業、大阪)100mgを含む生理食塩水溶液1mLを腹腔内投与し、さらに翌日および2日後に同様に腹腔内投与することによりラットを感作した。
初回の感作後14日目〜16日目に、ペントバルビタール・ナトリウム(pentobarbital sodium;ネンブタール注射液、ダイナボット、大阪)80mg/kgを腹腔内投与することによりラットを麻酔し、頸部を切開して気管および頸静脈を露出後、臭化パンクロニウム(pancronium bromide;Sigma、MO、USA)の0.2mg/mL生理食塩水溶液を1mL静脈内投与した。自発呼吸停止後、直ちに気管カニューレを装着して、人工呼吸器(TYPE7025、Ugo Basile、Varese、Italy)による定流量呼吸(70回/分、1mL/体重100g)を施した。気道抵抗の指標として、気道内圧(cmH2O)を人工呼吸の回路から分岐して接続した差圧トランスデューサー(TP−603T、日本光電、東京)により測定した。気道内圧は、プリアンプ(呼吸用アンプ:AR−601G、日本光電)を介してレコーダー(WT−687G、日本光電)に記録した。化合物2は0.5重量/容量%メチルセルロース400(MC)水溶液に2mg/mLおよび0.6mg/mLの濃度になるように懸濁させ、気道内圧が安定した後、それぞれ5mL/kg経口投与した。化合物2投与1時間後に抗原であるOVAの10mg/mL生理食塩水溶液を1mL/kg頸静脈内投与し、気道内圧の変化を5分間観察した(化合物2投与群)。同様に、化合物2の代わりに0.5重量/容量%MC水溶液を5mL/kg投与した群を設けた(抗原投与群)。
【0043】
気道収縮は、抗原静脈内投与後5分間の気道内圧変化の曲線下面積(AUC0−5分)で表した。化合物2による気道収縮反応の抑制率(%)は、次式より算出した。
【0044】
【数5】
【0045】
結果を第4表に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
上記の試験により、化合物2の投与により、抗原により惹起される気道収縮反応が抑制されることが示された。
上記試験の結果は、化合物(I)を投与することにより気管支喘息に伴う肺胞内への炎症性細胞(好酸球、好中球)の浸潤、および気道収縮反応を抑制できることを示唆している。一方、気管支喘息は好酸球性の気道炎症を特徴とした疾患であり[クリニカル・エクスペリメンタル・アラージー(Clin.Exp.All.)、2002年、32巻、p.162]、肺組織およびBALFへの著明な好酸球浸潤が認められることが知られている。また、アスピリンなどの非ステロイド抗炎症剤、ディーゼル排気などの有害物質、抗原、運動、冷気などが、喘息における炎症などの症状を誘発または増悪させる因子であると考えられている[グローバル・イニシアチブ・フォー・アズマ(Global Initiative for Asthma (GINA))著、GINAガイドライン(Global Strategy for Astma Management and Prevention)、2002年、p.39]。
【0048】
以上のことから、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩は、気管支喘息(例えば、抗原誘発喘息、運動誘発喘息、冷気誘発喘息、アスピリン喘息、有害物質誘発喘息など)の治療および/または予防剤として有用であると考えられた。
化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩は、そのまま単独で投与することも可能であるが、通常各種の医薬製剤として提供するのが望ましい。また、それら医薬製剤は、動物および人に使用されるものである。
【0049】
本発明に係わる医薬製剤は、活性成分として化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩を単独で、あるいは任意の他の治療のための有効成分との混合物として含有することができる。また、それら医薬製剤は、活性成分を薬理学的に許容される一種もしくはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造される。
【0050】
投与経路としては、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口または、例えば静脈内、気管内、経皮などの非経口をあげることができる。
投与形態としては、例えば錠剤、注射剤、吸入剤、外用剤などがあげられる。徐放的な適応もまた利用できる。
経口投与に適当な、例えば錠剤などは、乳糖、マンニットなどの賦形剤、澱粉などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、グリセリンなどの可塑剤、安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤などを用いて製造できる。
【0051】
非経口投与に適当な、例えば注射剤は、好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物を含む滅菌水性剤からなり、例えば、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩水とブドウ糖溶液の混合物からなる担体などを用いて注射用の溶液を調製する。
吸入剤は、活性成分を粉末または液状にして、吸入噴霧剤または担体中に配合し、例えば、定量噴霧式吸入器、ドライパウダー吸入器などの吸入容器に充填することにより製造される。吸入噴射剤としては、従来公知のものを広く使用することができ、例えばフロン−11、フロン−12、フロン−21、フロン−22、フロン−113、フロン−114、フロン−123、フロン−142c、フロン−134a、フロン−227、フロン−C318、1,1,1,2−テトラフルオロエタンなどのフロン系ガス、HFA−227、HFA−134aなどの代替フロンガス、プロパン、イソブタン、n−ブタンなどの炭化水素系ガス、ジエチルエーテル、窒素ガス、炭酸ガスなどがあげられる。担体としては、従来公知のものを広く使用でき、例えば糖類、糖アルコール類、アミノ酸類などがあげられ、乳糖、D−マンニトールなどが好ましい。
【0052】
外用剤としては、特に限定されるものではないが、例えば基剤に活性成分を溶解または混合分散しクリーム状、ペースト状、ゼリー状、ゲル状、乳液状、液状などの形状になされたもの(軟膏剤、ローション剤など)、基剤に活性成分および経皮吸収促進剤を溶解または混合分散させたものを例えばポリエチレンなどの支持体上に展延したもの(パップ剤、テープ剤など)などがあげられる。上記基剤としては、薬理学的に許容しうるものであればいずれでもよく、軟膏剤、リニメント剤、ローションなどの基剤として従来公知のものを用いることができ、例えば、アルギン酸ナトリウム;ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、メチルセルロース、キサンタンガム、デキストリン、ポリビニルアルコールなどのポリマー;オリーブ油、ラノリンなどの油脂類;白色ワセリン;パラフィン;ステアリン酸などの高級脂肪酸;セチルアルコールなどの高級アルコール;ポリエチレングリコール;水などがあげられる。上記経皮吸収促進剤としては、薬理学的に許容しうるものであればいずれでもよく、例えばエタノール、ジエチレングリコールなどのアルコール類;ドデシルピロリドンなどの極性溶剤;尿素;ラウリル酸エチル;エイゾン;オリーブ油などがあげられる。さらに必要に応じて、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、酸化チタンなどの無機充填剤;粘度調節剤;老化防止剤;pH調節剤;グリセリン、プロピレングリコールなどの保湿剤などを添加してもよい。
【0053】
また、これら非経口剤においても、経口剤で例示した賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤、防腐剤などから選択される1種もしくはそれ以上の補助成分を添加することもできる。
化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩の投与量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、治療すべき症状の性質もしくは重篤度などにより異なるが、通常経口の場合、成人一人当り0.01mg〜1g、好ましくは0.05〜50mgを一日1回ないし数回投与する。静脈内投与などの非経口投与の場合、成人一人当り0.001〜100mg 、好ましくは0.01〜50mgを一日1回ないし数回投与する。気管内投与(吸入剤)の場合、成人一人当たり、0.001mg〜1g、好ましくは0.01〜100mg、より好ましくは0.5mg〜20mgを一日1回ないし数回投与する。しかしながら、これら投与量および投与回数に関しては、前述の種々の条件により変動する。
【0054】
以下に、本発明の態様を実施例で説明する。
【0055】
【実施例】
実施例1:錠剤(化合物1)
常法により、次の組成からなる錠剤を調製する。化合物1 40g、乳糖286.8gおよび馬鈴薯澱粉60gを混合し、これにヒドロキシプロピルセルロースの10%水溶液120gを加える。この混合物を常法により練合し、造粒して乾燥させた後、整粒し打錠用顆粒とする。これにステアリン酸マグネシウム1.2gを加えて混合し、径8mmの杵をもった打錠機(菊水社製RT−15型)で打錠を行って、錠剤(1錠あたり活性成分20mgを含有する)を得る。
実施例2:錠剤(化合物2)
化合物2 40gを用い、実施例1と同様にして、標記錠剤(1錠あたり活性成分20mgを含有する)を得る。
実施例3:注射剤(化合物3)
常法により、次の組成からなる注射剤を調製する。化合物3 1gおよびD−マンニトール5gを注射用蒸留水に添加して混合し、さらに塩酸水溶液および水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6に調整した後、注射用蒸留水で全量を1000mLとする。得られた混合液をガラスバイアルに2mLずつ無菌的に充填して、注射剤(1バイアルあたり活性成分2mgを含有する)を得る。
実施例4:ドライパウダー吸入剤(化合物4)
ジェットミル(A−0JET;セイシン企業)を用いて、化合物4 10gを空気圧5kg/cm2で1.5g/分間の送り速度で粉砕する。得られる化合物4の粉砕物と乳糖(Pharmatose325M;DMV社製)とを重量比1:5で混合し、ドライパウダー製剤を得る。
【0056】
【発明の効果】
本発明により、含酸素複素環化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する気管支喘息(例えば、抗原誘発喘息、運動誘発喘息、冷気誘発喘息、アスピリン喘息、有害物質誘発喘息など)の治療および/または予防剤が提供される。
Claims (9)
- 一般式(I)
- mが0〜2の整数であり、R1、R2、R3およびR4が水素原子であるか、R1、R2、R3およびR4の中で同一炭素原子上に存在する2つの基がその炭素原子と一緒になってスピロ飽和炭素環を形成し、R6が水素原子である請求項1記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
- mが1であり、R1、R2、R3およびR4が水素原子である請求項1または2記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
- R5がメトキシである請求項1〜3のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
- Yが式(II)である請求項1〜4のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
- Yが4−カルボキシフェニルである請求項1〜4のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
- R7がシアノであり、R8が水素原子である請求項1〜5のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
- 気管支喘息が抗原誘発喘息、運動誘発喘息、冷気誘発喘息、アスピリン喘息および有害物質誘発喘息からなる群より選ばれる喘息である請求項1〜7のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
- 吸入剤である請求項1〜8のいずれかに記載の気管支喘息の治療および/または予防剤。
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