JP2005015245A - 熱線反射合わせガラスおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】70%以上の可視光線透過率を保持し、透明で視認性に優れ、かつ、波長800〜2100nmの近赤外線反射率が30%以上の特性を有し、熱線を効率的に反射するものであることから、窓からの侵入熱量を大幅に減少することができ、また、合わせガラスにおける密着性や耐久性等の性能にも優れた経済性の良い、合わせガラスとすることができる。
【解決手段】2枚の単板ガラスを接着させる合わせガラスであり、単板ガラス間に、Agを樹脂フィルムに定着してなる熱線反射層と中間接着層とを介在させ、可視光線透過率は70%以上、波長800〜2100nmの近赤外線反射率が30%以上とする。
【選択図】 なし
【解決手段】2枚の単板ガラスを接着させる合わせガラスであり、単板ガラス間に、Agを樹脂フィルムに定着してなる熱線反射層と中間接着層とを介在させ、可視光線透過率は70%以上、波長800〜2100nmの近赤外線反射率が30%以上とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、住宅用窓、ビル用窓、車輌用窓、船舶用窓、航空機用窓等に有効な熱線反射合わせガラスおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用のガラスとしては、強度や割れた際の安全性の観点から合わせガラスが通常使用されているが、この合わせガラスを通して日光等による熱が自動車車内に侵入することにより、車内温度が上昇する。自動車車内の温度上昇を抑えるために車内は空調され、そのときの冷房負荷を低減するために、自動車用の合わせガラスは、熱線遮断性のガラスが用いられており、特に自動車のフロントガラスにおいては、視認性を確保する上で可視光線透過率が70%以上の合わせガラスであることが要求される。
【0003】
自動車用の合わせガラスとしては、一般的には2枚のガラス板間に熱線吸収膜を介在せしめたものがあり、車外側のガラス板の内側面に、ZnO、TiO2 、ITO又はSnO2 膜等の熱線吸収膜を形成し、この熱線吸収膜が形成された面と車内側のガラス板の内側面とを中間膜を介して積層しているものが知られている。
【0004】
特開平1−63419号公報には、酸化インジウム被膜や酸化錫被膜からなる熱線反射膜が形成されてなる透明性の外板ガラスと、着色された透明性のフィルム及び/又は透明性の内板ガラスとを配すことにより可視光線透過率が外板の可視光線透過率より低くなるようにし、可視光線透過率が約2%と低く、熱線平均反射率が約27%と高い自動車用窓ガラスが開示されているが、可視光線透過率が低いために視認性という観点で安全性に問題がある。
【0005】
また、合わせガラスにおけるポリビニルブチラール等からなる接着用中間膜において、膜中に熱線吸収剤を分散する方法により赤外線透過率を低くしようとする試みもなされているが、膜中での熱線吸収剤の分散性が悪く、可視光線透過率が低いために視認性に問題があり、また、熱線吸収剤の使用量が多くなることにより製造コストが高くなる。
【0006】
特開平10−120946号公報には、錫塩及びインジウム塩の溶液に温度を30℃以下に保持しながらアルカリ水溶液を添加して得られた酸化錫及び酸化インジウムの水和物を不活性ガス雰囲気下又は還元性ガス雰囲気下加熱処理して得られた錫含有酸化インジウム微粉末、塗料バインダー及び溶媒を含有する赤外線遮蔽材が開示されている。
【0007】
前記赤外線遮蔽材は、スパッタリング法や真空蒸着法ではなく塗布法により赤外線遮蔽膜を得ることができるため製造コストの面で有利であり、赤外線遮蔽材に含有される錫含有酸化インジウム微粉末は粗大粒子を含まない均一な粒度を有するものであるため、得られる塗膜は透明性及び赤外線遮蔽性に優れたものであるが、塗料中のバインダーについて検討されておらず、密着性や耐久性等の性能の向上が望まれていた。
【0008】
特開平8−259279号公報には、少なくとも2枚の透明ガラス板状体の間に中間膜層を有する合せガラスにおいて、該中間膜層の中に粒径が0.2 μm以下の機能性超微粒子を分散せしめてなるものとした合せガラスが示されており、前記機能性超微粒子が、Sn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W 、V 、Moの金属、酸化物、窒化物、硫化物あるいはSbやF のドープ物の各単独物、もしくはこれらの中から少なくとも2種以上を選択してなる複合物、またはさらに当該各単独物もしくは複合物に有機樹脂物を含む混合物または有機樹脂物を被覆した被膜物であるとする。
【0009】
この機能性超微粒子としては、例えばSnO2−10wt%Sb2O3 、In2O3−5wt%SnO2(ITO) 〔三菱マテリアル社製〕等の複合物であるとされる。
【0010】
特開平8−259279号公報の合せガラスによれば、従来から使用されている合せガラス用中間膜層に影響を与えることなく、中間膜層に機能性超微粒子を適宜分散し含有せしめることで、電波透過性能を確保しつつ赤外線を遮蔽することができるとされる。
【0011】
しかし、この合わせガラスの中間膜には機能性微粒子が分散配合されているので、外観の不具合が生じる場合がある。例えば自動車用窓ガラスに充分な赤外線遮蔽性能等の性能を与えようとすると、相応の微粒子の存在によって、作製された中間膜のヘイズが大きくなる。すなわち、高い赤外線遮蔽性能を得るためには多量の微粒子を分散配合させる必要がある。多量の微粒子が分散配合されることによって、作成される中間膜のヘイズが大きくなる。結果として、合わせガラスのヘイズが大きくなる。
【0012】
そこで、特開2001−151539号公報では、複数枚のガラス板と、粒径が0.2μm以下の赤外線遮蔽性微粒子が分散配合された中間膜とを有し、前記複数枚のガラス板間に前記中間膜が介在された合わせガラスにおいて、前記複数枚のガラス板のうちの少なくとも1枚のガラス板が、質量百分率表示でFe2 O3 換算した全鉄0.3〜1%を含有する、ソーダライムシリカガラスからなることを特徴とする合わせガラスが提案されている。
【0013】
前記赤外線遮蔽性微粒子が、錫がドープされた酸化インジウムからなることも示されている。
【0014】
この特開2001−151539号公報では、粒径が0.2μm以下の赤外線遮蔽性微粒子が分散配合された中間膜を用いた合わせガラスに、鉄を含有するソーダライムシリカガラスからなるガラス板を用いており、この鉄の含有量を適宜調整しているので、所望の赤外線遮蔽性能が付与された合わせガラスが得られる。この場合、赤外線遮蔽性微粒子の配合割合を少なく抑えて赤外線遮蔽性微粒子の分散配合による外観の不具合の発生を防止しつつ、所望の赤外線遮蔽性能を得ることができるとされる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
前記種々の従来例では、塗布効率が悪くコスト高となったり、樹脂との分散性が悪くヘイズ率が大きなものとなる。
【0016】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、可視光線透過率が高く、熱線である赤外線透過率が低い特性を有するとともに、合わせガラスにおける密着性や耐久性等の性能にも優れた熱線反射合わせガラス及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するため、熱線吸収合わせガラスとしては、第1に、2枚の単板ガラスを接着させる合わせガラスであり、単板ガラス間に、Agをを樹脂フィルムに定着してなる熱線反射層と中間接着層とを介在させたこと、および、合わせガラスの波長350〜800nmにおけ全可視光線透過率は70%以上、及び波長800〜2100nmの近赤外線反射率30%以上であることを要旨とするものである。
【0018】
熱線反射合わせガラスの製造方法としては、Agを定着させた樹脂フィルムを両面に中間接着層を介在させて2枚の単板ガラスに挟み込むことを要旨とするものである。
【0019】
本発明によれば、接着用中間膜を介して張り合わせるガラス基板内側に形成するAgを定着させた樹脂フィルム層により、波長350〜800nmにおいて70%以上の高い全可視光線透過率を発揮できて透明で視認性に優れ、波長800〜2100nmの近赤外線反射率30%以上にして太陽光の熱線を反射することにより、窓からの侵入熱量を大幅に減少することができる。
【0020】
すなわち、本発明の熱線反射合わせガラスを自動車のフロントウインドウに用いた場合、赤外線を吸収し易い黒色ダッシュボード、ハンドルの昇温を抑え、黒色ダッシュボード、ハンドルからの室内への輻射熱を減少することができ、又、熱線吸収機能による遮蔽では無い為、ガラスに吸収したエネルギーが内部へ再放射する量も大幅に減少される。
【0021】
また、2枚の単板ガラスを接着させる合わせガラスであり、単板ガラスと中間接着層との間に熱線反射樹脂フィルム層、を有するものであるので、これにより単板ガラスと熱線反射樹脂フィルムとの密着性が向上し、得られる熱線反射合わせガラスの密着性も優れたものとすることができる。また、単板ガラスに塗布するよりも樹脂フィルムに定着する方が作業も容易となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の熱線反射合わせガラスは、2枚の単板ガラスを接着させる合わせガラスであり、第1の透明ガラス板および第2の透明ガラス板からなる単板ガラス間に、熱線反射樹脂フィルムと中間接着層とを介在させた。
【0023】
第1の透明ガラス板、中間接着層、熱線反射樹脂フィルム層、中間接着層及び第2の透明ガラス板をこの順に積層させる。前記熱線反射合わせガラスは、前記第1の透明ガラス板、前記中間接着層、前記熱線反射樹脂フィルム層、前記中間接着層及び前記第2の透明ガラス板のみからなるものであってもよく、更に、他の層を有するものであってもよい。即ち、前記第1の透明ガラス板と前記中間接着層との間や、前記熱線反射樹脂フィルム層と前記中間接着層との間や、前記中間接着層と前記第2の透明ガラス板との間に他の層を有するものであってもよい。
【0024】
本発明の熱線反射合わせガラスは、前記熱線反射層は樹脂フィルムを有するものであり、これにより、前記第1の透明ガラス板と前記樹脂フィルムとの密着性を向上し、得られる熱線吸収合わせガラスの密着性を優れたものとすることができる。また、第1の透明ガラス板に塗布するよりも前記樹脂フィルムに定着する方が容易となる。
【0025】
そして、本発明は前記熱線反射樹脂フィルム層を有することにより、自動車の車外から車内へ入射する赤外線(熱線)が反射されることになり、得られる熱線反射合わせガラスの日射透過率が70%以下を示すものとすることができる。これにより、車内の温度上昇を抑制することができ、冷房負荷を低減することが可能となる。また、前記熱線反射層により本発明の合わせガラスは可視光線透過率が70%以上と高い値を示すことから視認性を阻害することもない。
【0026】
前記樹脂フィルムとしては、適当な形状保持性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等を挙げることができる。
前記樹脂フィルムの厚さとしては特に限定されず、例えば、5μm乃至100μm、好ましい下限は5μm、好ましい上限は50μmである。
【0027】
前記熱線吸収層は、前記第1の透明ガラス板と前記中間接着層との間に位置するものである。前記熱線吸収層の好ましい位置は、熱線吸収層の第1の透明ガラス板及び中間接着層への密着性が大きいことから、前記第1の透明ガラス板及び前記中間接着層に接する位置である。
【0028】
前記熱線反射層は、Au、Ag、Cu、Al等の金属、金属物質としてSn02やIn203(ITO)ある。これらの中、可視光線の吸収がほとんど無いAgが特に好ましい。
【0029】
熱線反射層の形成方法としては気相成長法が好ましく、さらに真空蒸着法、スパッタ法またはプラズマCVD法が好ましい。
【0030】
熱線反射層の厚みは5〜1000nmの範囲か好ましい。厚みが5nm以下では熱線反射に十分な効果が出ない。
【0031】
前記接着剤としては特に限定されないが、前記第1及び第2の透明ガラス板の屈折率とほぼ同じである樹脂が好ましく、例えば、ポリビニルアルコール(ポバール)、ポリビニルブチラール等を挙げることができる。なかでも、透明ガラス板との接着力が大きく、耐侯性が優れている点から、ポリビニルアルコール(ポバール)、ポリビニルブチラールがより好ましい。
【0032】
前記塗膜(中間接着層)の乾燥膜厚としては特に限定されず、得られる熱線反射合わせガラスの可視光線透過率、赤外線透過率、外観色調を考慮して定めることができ、自動車、住宅の窓ガラスとして可視光線透過率70%以上を確保するためには、下限が0.1mm、上限が2mm、好ましい下限が0.3mm、好ましい上限が1.5mmである。
前記乾燥は、20〜100℃において、10分〜5時間放置又は加熱することによって行うことができる。
【0033】
前記中間接着層と前記第2の透明ガラス板との間に、更に別の熱線反射層を有するものであることが好ましい。更に別の熱線反射層を有することにより、本発明の熱線反射合わせガラスは、熱線反射層を2層有するものとなることから、熱線反射率がより高くなり、結果として赤外線透過率をより低くすることができる。また、熱線反射層を2層有するものであっても可視光線透過率は70%以上と高い値を示し、視認性が阻害されることはない。
【0034】
本発明における前記第1の透明ガラス板及び前記第2の透明ガラス板としては特に限定されず、例えば、着色剤を添加しない透明フロート板ガラスや適当な着色剤によりブロンズ、グレー、ブルー等に着色した熱線吸収フロート板ガラス等を用いることができる。これらの透明ガラス板の屈折率は、約1.52である。このような透明ガラス板を用いることにより、本発明の熱線反射合わせガラスの可視光線透過率を高くすることができる。また前記透明ガラス板は、予め、中性洗剤、水、イソプロピルアルコール等のアルコール等で洗浄したものであることが好ましい。
【0035】
前記第1の透明ガラス板は、前記第1の透明ガラス板の片面(熱線反射合わせガラスの外側面)上に何も形成されていない場合には、本発明の熱線反射合わせガラスにおいて、熱線反射層の外側に位置することになる。前記第1の透明ガラス板の好ましい位置は、熱線反射層との密着性の点から、熱線反射層に接する位置である。
【0036】
前記第2の透明ガラス板は、前記第2の透明ガラス板の片面(熱線反射合わせガラスの外側面)上に何も形成されていない場合には、本発明の熱線反射合わせガラスにおいて、前記中間接着層の外側に位置することになる。前記第2の透明ガラス板の好ましい位置は、前記中間接着層と前記第2の透明ガラス板との間に更に別の熱線反射層を有する場合に、前記別の熱線反射層に接する位置である。前記第2の透明ガラス板は、前記別の熱線反射層への密着性も大きいものであり、また、2層の熱線反射層を有するものとなることから、熱線反射率がより高くなり、結果として赤外線透過率をより低くすることができる。
【0037】
本発明の熱線吸収合わせガラスの製造方法は、熱線反射樹脂フィルムを両面に中間接着層を介在させて2枚の単板ガラスに挟み込むものであり、具体的には予め樹脂フィルム面上に熱線反射金属層が形成されている樹脂フィルムを第1の透明ガラス板の内側に塗膜面が内側になるように貼り付ける工程を第1の工程とし、前記貼り付ける工程で得られた樹脂フィルム面上に接着剤を塗布する工程を第2の工程とし、前記接着剤を塗布する工程で得られた接着剤層に第2の透明ガラス板を貼り合わせる工程を第3の工程として行うものである。
【0038】
前記製造方法における第1の工程は、予め樹脂フィルム面上に熱線反射金属層が形成されている樹脂フィルムを第1の透明ガラス板の内側に塗膜面が内側になるように貼り付ける工程であり、具体的には、以下(1)、(2)により行うことができる。
【0039】
(1)先ず樹脂フィルムの片面上に熱線反射金属層を形成し、これにより得られたもの(形成された熱線反射金属層を片面に有する樹脂フィルム)の形成されていない樹脂フィルム面を、第1の透明ガラス板の片面又は両面上に貼り付ける(第1の透明ガラス板の片面上に貼り付ける場合には、形成された熱線反射金属層が熱線反射合わせガラスの内側に位置するように貼り付ける)こと、(2)先ず樹脂フィルムの両面上に熱線反射金属層を形成し、これにより得られたもの(形成された熱線反射金属層を両面に有する樹脂フィルム)の片面の塗膜面が第1の透明ガラス板に接するように、前記第1の透明ガラス板の片面又は両面上に貼り付ける(第1の透明ガラス板の片面上に貼り付ける場合には、形成された塗膜が熱線反射合わせガラスの内側に位置するように貼り付ける)ことにより行うことができる。
【0040】
前記製造方法における第2の工程は、前記第1の工程で得られた樹脂フィルム面(樹脂フィルムに形成された熱線反射金属面)上に接着剤を塗布する工程であり、具体的には、前記第1の工程で得られた樹脂フィルムに形成されている熱線反射金属面〔前記第1の工程で前記第1の透明ガラス板の両面上に樹脂フィルムを貼り付ける場合には、その片面上の樹脂フィルムに形成されている熱線反射金属面(熱線反射合わせガラスにおける透明ガラス板の内側に位置する熱線反射金属面)〕上に接着剤を塗布することにより行うことができる。前記接着剤は、前記中間接着層において述べたものを用いることができ、塗布方法も前記中間接着層において述べた方法により行うことができる。
また、塗布後に、更に乾燥、加熱処理を行うことが好ましい。塗布後の乾燥、加熱処理は前記中間接着層において述べた方法により行うことができる。また、乾燥膜厚も前記中間接着層の乾燥膜厚と同様とすることが好ましい。
【0041】
前記製造方法における第3の工程は、前記第2の工程で得られた接着剤層に第2の透明ガラス板を貼り合わせる工程であり、前記第1の製造方法における第3の工程と同様に行うことができる。
【0042】
前記製造方法は、第1の工程において予め樹脂フィルム熱線反射金属層を形成したものを用いることから、特に樹脂フィルムの片面上に熱線反射金属層を形成場合には、第1の透明ガラス板への密着性が大きくなり、また、更に、片面上に熱線反射金属層を形成した樹脂フィルムを透明ガラス板の両面に貼り付けた場合には、別の熱線熱線層を有するものとなることから、熱線反射合わせガラスの熱線反射率をより高くすることができる。
【0043】
本発明の熱線吸収合わせガラスは、第1の透明ガラス板、熱線反射層、中間接着層及び第2の透明ガラス板をこの順に積層してなるものであり、得られる熱線反射合わせガラスは、熱線反射率が高く、結果として赤外線透過率が65%以下となるものであり、また、前記中間接着層を有することにより密着性が優れるものであり、更に前記熱線反射層及び前記中間接着層は共に可視光線透過率を阻害するものでなく、得られる熱線反射合わせガラスの可視光線透過率は70%以上を示すものである。従って、本発明の熱線反射合わせガラスは、可視光線透過率が70%以上と高い値を示し、赤外線透過率が65%以下と低い値を示すとともに、熱線反射層の密着性や耐久性等の性能にも優れるものであることから、自動車用、住宅用のガラス、特にフロントガラスに好適に用いられるものであり、これを用いることにより、自動車の車内温度の上昇を抑制し、冷房負荷を低減することができる。
【0044】
【実施例】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
実施例1
先ず、厚さ25μmのPET樹脂フィルム(100mm×150mm×2.0mm)面の片面上に、熱線反射層の厚みを10nmに(スパッタ法)形成した熱線反射Ag層樹脂フィルムを作成し、中性洗剤、水、イソプロピルアルコールで順次表面を洗浄した第1の透明ガラス板(100mm×150mm×2.0mm)の片面に貼り付けた。次に、第1の透明ガラス板に貼り付けられた樹脂フィルム上に接着剤としてポリビニルブチラールを塗布し、30分間、60℃で乾燥し、乾燥膜厚0.7mmの接着剤層を形成し、更に中性洗剤、水、イソプロピルアルコールで順次表面を洗浄した第2の透明ガラス板(100mm×150mm×2.0mm)を得られた接着剤層に加熱接着して熱線反射合わせガラス1を得た。
【0046】
実施例2
熱線反射層の厚みを20nmに(スパッタ法)形成した熱線反射Ag層樹脂フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして熱線吸収合わせガラス2を得た。
【0047】
比較例
透明ガラス板(100mm×150mm×2.0mm)の片面に接着剤としてポリビニルブチラールを塗布し、30分間、60℃で乾燥し、乾燥膜厚0.7mmの接着剤層を形成した。次に、中性洗剤、水、イソプロピルアルコールで順次表面を洗浄した第2の透明ガラス板(100mm×150mm×2.0mm)を得られた接着剤層に加熱接着して比較ガラスを得た。
【0048】
実施例1,2及び比較例で得られたガラス試験片を用いて、下記方法に従って評価した。結果を表1に示した。
1.赤外線吸収試験
図1のガラス試験片について、図2に示す、発泡スチロール内部に厚さ150μmのブラック塩化ビニルシート5を貼り付けブラックボックスにした試験装置8を用いて熱遮断性を評価した。図2に示すように、試験片1を発泡スチロール箱2の上面に設置し、試験片1の上方に設けた白熱灯3により試験片1を照射し、10分後と30分後の温度を測定した。温度の測定は、試験片1の裏面温度、及び、発泡スチロール箱2の内部温度(蓋4から7cmの位置)の2点で行い、それぞれ設置された温度センサー9及び10により温度を測定し、記録計で測定温度を記録した。
【0049】
前記発泡スチロール箱2としては、厚さが25mmで、寸法(外寸)が200mm×170mm×170mmのものを用いた。前記蓋4は、厚さが7mmで、80mm×130mmの穴が中央部に開いたものを用い、その穴の中央部に試験片1を設置した。また、試験片1と白熱灯3との距離7を150mmとした。
【0050】
前記記録計としては、サーモレコーダーRT−10(タバイエスペック社製)を用い、白熱灯3は、電源6により点灯させることができる東芝レフランプ 150W(室内用;東芝社製)を用いた。また、試験は20℃の恒温室で無風の状態で実施した。赤外線反射試験結果を表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
2.分光透過率の測定
実施例1、2及び比較例で得られたガラス試験片を用いて、分光透過率を測定した。測定は、分光光度計(日立製作所社製、U−3500スペクトロフォトメーター)を用いて、スキャンスピード:600nm/分、サンプリング間隔:自動設定、スリット(可視):固定2mm、スリット(近赤外700〜2100nm):自動制御、Pbs感度:2、ホトマル電圧:自動制御、標準板:硫酸バリウムの条件で行った。
分光透過率の結果を図2に示した。
【0053】
前記表1より、実施例においては、比較例よりガラス試験片は温度が上昇し、吸熱していた。また、実施例では、試験箱内部の温度は明らかに低下した。これは、図2より、実施例で得られるガラス試験片が、赤外線領域の光を良好に反射したために、試験箱内部の温度が低下したことがわかる。また図2より、実施例で得られた試験片は可視光線透過率が高いことも明らかとなった。
【0054】
【発明の効果】
波長350〜800nmにおける全可視光線透過率が70%以上及び波長800〜2100nmの近赤外線反射率30%以上である請求項1記載の熱線反射合わせガラス。
以上の述べたように本発明の熱線吸収合わせガラスおよびその製造方法は、上述した構成よりなるので、波長350〜800nmにおける全可視光線透過率が70%以上を保持し、透明で視認性に優れ、かつ、波長800〜2100nmの近赤外線反射率30%以上を有し、熱線を効率的に反射するものであることから、窓からの侵入熱量を大幅に減少することができ、自動車、住宅用の合わせガラス、に好適に用いられるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例で得られたガラス試験片の概略断面図である。
【図2】実施例及び比較例で得られたガラス試験片の熱線反射性能を評価するための装置の概略断面図である。
【図3】実施例1及び比較例で得られたガラス試験片の波長350〜2100nmにおける分光透過率のグラフである。
【符号の説明】
1…ガラス試験片
2…発泡スチロール箱
3…白熱灯
4…発泡スチロール箱の蓋
5…ブラック塩化ビニルシート
6…電源
7…ガラス試験片と白熱灯との距離
8…遮熱性試験装置
9、10…温度センサー
【発明が属する技術分野】
本発明は、住宅用窓、ビル用窓、車輌用窓、船舶用窓、航空機用窓等に有効な熱線反射合わせガラスおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用のガラスとしては、強度や割れた際の安全性の観点から合わせガラスが通常使用されているが、この合わせガラスを通して日光等による熱が自動車車内に侵入することにより、車内温度が上昇する。自動車車内の温度上昇を抑えるために車内は空調され、そのときの冷房負荷を低減するために、自動車用の合わせガラスは、熱線遮断性のガラスが用いられており、特に自動車のフロントガラスにおいては、視認性を確保する上で可視光線透過率が70%以上の合わせガラスであることが要求される。
【0003】
自動車用の合わせガラスとしては、一般的には2枚のガラス板間に熱線吸収膜を介在せしめたものがあり、車外側のガラス板の内側面に、ZnO、TiO2 、ITO又はSnO2 膜等の熱線吸収膜を形成し、この熱線吸収膜が形成された面と車内側のガラス板の内側面とを中間膜を介して積層しているものが知られている。
【0004】
特開平1−63419号公報には、酸化インジウム被膜や酸化錫被膜からなる熱線反射膜が形成されてなる透明性の外板ガラスと、着色された透明性のフィルム及び/又は透明性の内板ガラスとを配すことにより可視光線透過率が外板の可視光線透過率より低くなるようにし、可視光線透過率が約2%と低く、熱線平均反射率が約27%と高い自動車用窓ガラスが開示されているが、可視光線透過率が低いために視認性という観点で安全性に問題がある。
【0005】
また、合わせガラスにおけるポリビニルブチラール等からなる接着用中間膜において、膜中に熱線吸収剤を分散する方法により赤外線透過率を低くしようとする試みもなされているが、膜中での熱線吸収剤の分散性が悪く、可視光線透過率が低いために視認性に問題があり、また、熱線吸収剤の使用量が多くなることにより製造コストが高くなる。
【0006】
特開平10−120946号公報には、錫塩及びインジウム塩の溶液に温度を30℃以下に保持しながらアルカリ水溶液を添加して得られた酸化錫及び酸化インジウムの水和物を不活性ガス雰囲気下又は還元性ガス雰囲気下加熱処理して得られた錫含有酸化インジウム微粉末、塗料バインダー及び溶媒を含有する赤外線遮蔽材が開示されている。
【0007】
前記赤外線遮蔽材は、スパッタリング法や真空蒸着法ではなく塗布法により赤外線遮蔽膜を得ることができるため製造コストの面で有利であり、赤外線遮蔽材に含有される錫含有酸化インジウム微粉末は粗大粒子を含まない均一な粒度を有するものであるため、得られる塗膜は透明性及び赤外線遮蔽性に優れたものであるが、塗料中のバインダーについて検討されておらず、密着性や耐久性等の性能の向上が望まれていた。
【0008】
特開平8−259279号公報には、少なくとも2枚の透明ガラス板状体の間に中間膜層を有する合せガラスにおいて、該中間膜層の中に粒径が0.2 μm以下の機能性超微粒子を分散せしめてなるものとした合せガラスが示されており、前記機能性超微粒子が、Sn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W 、V 、Moの金属、酸化物、窒化物、硫化物あるいはSbやF のドープ物の各単独物、もしくはこれらの中から少なくとも2種以上を選択してなる複合物、またはさらに当該各単独物もしくは複合物に有機樹脂物を含む混合物または有機樹脂物を被覆した被膜物であるとする。
【0009】
この機能性超微粒子としては、例えばSnO2−10wt%Sb2O3 、In2O3−5wt%SnO2(ITO) 〔三菱マテリアル社製〕等の複合物であるとされる。
【0010】
特開平8−259279号公報の合せガラスによれば、従来から使用されている合せガラス用中間膜層に影響を与えることなく、中間膜層に機能性超微粒子を適宜分散し含有せしめることで、電波透過性能を確保しつつ赤外線を遮蔽することができるとされる。
【0011】
しかし、この合わせガラスの中間膜には機能性微粒子が分散配合されているので、外観の不具合が生じる場合がある。例えば自動車用窓ガラスに充分な赤外線遮蔽性能等の性能を与えようとすると、相応の微粒子の存在によって、作製された中間膜のヘイズが大きくなる。すなわち、高い赤外線遮蔽性能を得るためには多量の微粒子を分散配合させる必要がある。多量の微粒子が分散配合されることによって、作成される中間膜のヘイズが大きくなる。結果として、合わせガラスのヘイズが大きくなる。
【0012】
そこで、特開2001−151539号公報では、複数枚のガラス板と、粒径が0.2μm以下の赤外線遮蔽性微粒子が分散配合された中間膜とを有し、前記複数枚のガラス板間に前記中間膜が介在された合わせガラスにおいて、前記複数枚のガラス板のうちの少なくとも1枚のガラス板が、質量百分率表示でFe2 O3 換算した全鉄0.3〜1%を含有する、ソーダライムシリカガラスからなることを特徴とする合わせガラスが提案されている。
【0013】
前記赤外線遮蔽性微粒子が、錫がドープされた酸化インジウムからなることも示されている。
【0014】
この特開2001−151539号公報では、粒径が0.2μm以下の赤外線遮蔽性微粒子が分散配合された中間膜を用いた合わせガラスに、鉄を含有するソーダライムシリカガラスからなるガラス板を用いており、この鉄の含有量を適宜調整しているので、所望の赤外線遮蔽性能が付与された合わせガラスが得られる。この場合、赤外線遮蔽性微粒子の配合割合を少なく抑えて赤外線遮蔽性微粒子の分散配合による外観の不具合の発生を防止しつつ、所望の赤外線遮蔽性能を得ることができるとされる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
前記種々の従来例では、塗布効率が悪くコスト高となったり、樹脂との分散性が悪くヘイズ率が大きなものとなる。
【0016】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、可視光線透過率が高く、熱線である赤外線透過率が低い特性を有するとともに、合わせガラスにおける密着性や耐久性等の性能にも優れた熱線反射合わせガラス及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するため、熱線吸収合わせガラスとしては、第1に、2枚の単板ガラスを接着させる合わせガラスであり、単板ガラス間に、Agをを樹脂フィルムに定着してなる熱線反射層と中間接着層とを介在させたこと、および、合わせガラスの波長350〜800nmにおけ全可視光線透過率は70%以上、及び波長800〜2100nmの近赤外線反射率30%以上であることを要旨とするものである。
【0018】
熱線反射合わせガラスの製造方法としては、Agを定着させた樹脂フィルムを両面に中間接着層を介在させて2枚の単板ガラスに挟み込むことを要旨とするものである。
【0019】
本発明によれば、接着用中間膜を介して張り合わせるガラス基板内側に形成するAgを定着させた樹脂フィルム層により、波長350〜800nmにおいて70%以上の高い全可視光線透過率を発揮できて透明で視認性に優れ、波長800〜2100nmの近赤外線反射率30%以上にして太陽光の熱線を反射することにより、窓からの侵入熱量を大幅に減少することができる。
【0020】
すなわち、本発明の熱線反射合わせガラスを自動車のフロントウインドウに用いた場合、赤外線を吸収し易い黒色ダッシュボード、ハンドルの昇温を抑え、黒色ダッシュボード、ハンドルからの室内への輻射熱を減少することができ、又、熱線吸収機能による遮蔽では無い為、ガラスに吸収したエネルギーが内部へ再放射する量も大幅に減少される。
【0021】
また、2枚の単板ガラスを接着させる合わせガラスであり、単板ガラスと中間接着層との間に熱線反射樹脂フィルム層、を有するものであるので、これにより単板ガラスと熱線反射樹脂フィルムとの密着性が向上し、得られる熱線反射合わせガラスの密着性も優れたものとすることができる。また、単板ガラスに塗布するよりも樹脂フィルムに定着する方が作業も容易となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の熱線反射合わせガラスは、2枚の単板ガラスを接着させる合わせガラスであり、第1の透明ガラス板および第2の透明ガラス板からなる単板ガラス間に、熱線反射樹脂フィルムと中間接着層とを介在させた。
【0023】
第1の透明ガラス板、中間接着層、熱線反射樹脂フィルム層、中間接着層及び第2の透明ガラス板をこの順に積層させる。前記熱線反射合わせガラスは、前記第1の透明ガラス板、前記中間接着層、前記熱線反射樹脂フィルム層、前記中間接着層及び前記第2の透明ガラス板のみからなるものであってもよく、更に、他の層を有するものであってもよい。即ち、前記第1の透明ガラス板と前記中間接着層との間や、前記熱線反射樹脂フィルム層と前記中間接着層との間や、前記中間接着層と前記第2の透明ガラス板との間に他の層を有するものであってもよい。
【0024】
本発明の熱線反射合わせガラスは、前記熱線反射層は樹脂フィルムを有するものであり、これにより、前記第1の透明ガラス板と前記樹脂フィルムとの密着性を向上し、得られる熱線吸収合わせガラスの密着性を優れたものとすることができる。また、第1の透明ガラス板に塗布するよりも前記樹脂フィルムに定着する方が容易となる。
【0025】
そして、本発明は前記熱線反射樹脂フィルム層を有することにより、自動車の車外から車内へ入射する赤外線(熱線)が反射されることになり、得られる熱線反射合わせガラスの日射透過率が70%以下を示すものとすることができる。これにより、車内の温度上昇を抑制することができ、冷房負荷を低減することが可能となる。また、前記熱線反射層により本発明の合わせガラスは可視光線透過率が70%以上と高い値を示すことから視認性を阻害することもない。
【0026】
前記樹脂フィルムとしては、適当な形状保持性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等を挙げることができる。
前記樹脂フィルムの厚さとしては特に限定されず、例えば、5μm乃至100μm、好ましい下限は5μm、好ましい上限は50μmである。
【0027】
前記熱線吸収層は、前記第1の透明ガラス板と前記中間接着層との間に位置するものである。前記熱線吸収層の好ましい位置は、熱線吸収層の第1の透明ガラス板及び中間接着層への密着性が大きいことから、前記第1の透明ガラス板及び前記中間接着層に接する位置である。
【0028】
前記熱線反射層は、Au、Ag、Cu、Al等の金属、金属物質としてSn02やIn203(ITO)ある。これらの中、可視光線の吸収がほとんど無いAgが特に好ましい。
【0029】
熱線反射層の形成方法としては気相成長法が好ましく、さらに真空蒸着法、スパッタ法またはプラズマCVD法が好ましい。
【0030】
熱線反射層の厚みは5〜1000nmの範囲か好ましい。厚みが5nm以下では熱線反射に十分な効果が出ない。
【0031】
前記接着剤としては特に限定されないが、前記第1及び第2の透明ガラス板の屈折率とほぼ同じである樹脂が好ましく、例えば、ポリビニルアルコール(ポバール)、ポリビニルブチラール等を挙げることができる。なかでも、透明ガラス板との接着力が大きく、耐侯性が優れている点から、ポリビニルアルコール(ポバール)、ポリビニルブチラールがより好ましい。
【0032】
前記塗膜(中間接着層)の乾燥膜厚としては特に限定されず、得られる熱線反射合わせガラスの可視光線透過率、赤外線透過率、外観色調を考慮して定めることができ、自動車、住宅の窓ガラスとして可視光線透過率70%以上を確保するためには、下限が0.1mm、上限が2mm、好ましい下限が0.3mm、好ましい上限が1.5mmである。
前記乾燥は、20〜100℃において、10分〜5時間放置又は加熱することによって行うことができる。
【0033】
前記中間接着層と前記第2の透明ガラス板との間に、更に別の熱線反射層を有するものであることが好ましい。更に別の熱線反射層を有することにより、本発明の熱線反射合わせガラスは、熱線反射層を2層有するものとなることから、熱線反射率がより高くなり、結果として赤外線透過率をより低くすることができる。また、熱線反射層を2層有するものであっても可視光線透過率は70%以上と高い値を示し、視認性が阻害されることはない。
【0034】
本発明における前記第1の透明ガラス板及び前記第2の透明ガラス板としては特に限定されず、例えば、着色剤を添加しない透明フロート板ガラスや適当な着色剤によりブロンズ、グレー、ブルー等に着色した熱線吸収フロート板ガラス等を用いることができる。これらの透明ガラス板の屈折率は、約1.52である。このような透明ガラス板を用いることにより、本発明の熱線反射合わせガラスの可視光線透過率を高くすることができる。また前記透明ガラス板は、予め、中性洗剤、水、イソプロピルアルコール等のアルコール等で洗浄したものであることが好ましい。
【0035】
前記第1の透明ガラス板は、前記第1の透明ガラス板の片面(熱線反射合わせガラスの外側面)上に何も形成されていない場合には、本発明の熱線反射合わせガラスにおいて、熱線反射層の外側に位置することになる。前記第1の透明ガラス板の好ましい位置は、熱線反射層との密着性の点から、熱線反射層に接する位置である。
【0036】
前記第2の透明ガラス板は、前記第2の透明ガラス板の片面(熱線反射合わせガラスの外側面)上に何も形成されていない場合には、本発明の熱線反射合わせガラスにおいて、前記中間接着層の外側に位置することになる。前記第2の透明ガラス板の好ましい位置は、前記中間接着層と前記第2の透明ガラス板との間に更に別の熱線反射層を有する場合に、前記別の熱線反射層に接する位置である。前記第2の透明ガラス板は、前記別の熱線反射層への密着性も大きいものであり、また、2層の熱線反射層を有するものとなることから、熱線反射率がより高くなり、結果として赤外線透過率をより低くすることができる。
【0037】
本発明の熱線吸収合わせガラスの製造方法は、熱線反射樹脂フィルムを両面に中間接着層を介在させて2枚の単板ガラスに挟み込むものであり、具体的には予め樹脂フィルム面上に熱線反射金属層が形成されている樹脂フィルムを第1の透明ガラス板の内側に塗膜面が内側になるように貼り付ける工程を第1の工程とし、前記貼り付ける工程で得られた樹脂フィルム面上に接着剤を塗布する工程を第2の工程とし、前記接着剤を塗布する工程で得られた接着剤層に第2の透明ガラス板を貼り合わせる工程を第3の工程として行うものである。
【0038】
前記製造方法における第1の工程は、予め樹脂フィルム面上に熱線反射金属層が形成されている樹脂フィルムを第1の透明ガラス板の内側に塗膜面が内側になるように貼り付ける工程であり、具体的には、以下(1)、(2)により行うことができる。
【0039】
(1)先ず樹脂フィルムの片面上に熱線反射金属層を形成し、これにより得られたもの(形成された熱線反射金属層を片面に有する樹脂フィルム)の形成されていない樹脂フィルム面を、第1の透明ガラス板の片面又は両面上に貼り付ける(第1の透明ガラス板の片面上に貼り付ける場合には、形成された熱線反射金属層が熱線反射合わせガラスの内側に位置するように貼り付ける)こと、(2)先ず樹脂フィルムの両面上に熱線反射金属層を形成し、これにより得られたもの(形成された熱線反射金属層を両面に有する樹脂フィルム)の片面の塗膜面が第1の透明ガラス板に接するように、前記第1の透明ガラス板の片面又は両面上に貼り付ける(第1の透明ガラス板の片面上に貼り付ける場合には、形成された塗膜が熱線反射合わせガラスの内側に位置するように貼り付ける)ことにより行うことができる。
【0040】
前記製造方法における第2の工程は、前記第1の工程で得られた樹脂フィルム面(樹脂フィルムに形成された熱線反射金属面)上に接着剤を塗布する工程であり、具体的には、前記第1の工程で得られた樹脂フィルムに形成されている熱線反射金属面〔前記第1の工程で前記第1の透明ガラス板の両面上に樹脂フィルムを貼り付ける場合には、その片面上の樹脂フィルムに形成されている熱線反射金属面(熱線反射合わせガラスにおける透明ガラス板の内側に位置する熱線反射金属面)〕上に接着剤を塗布することにより行うことができる。前記接着剤は、前記中間接着層において述べたものを用いることができ、塗布方法も前記中間接着層において述べた方法により行うことができる。
また、塗布後に、更に乾燥、加熱処理を行うことが好ましい。塗布後の乾燥、加熱処理は前記中間接着層において述べた方法により行うことができる。また、乾燥膜厚も前記中間接着層の乾燥膜厚と同様とすることが好ましい。
【0041】
前記製造方法における第3の工程は、前記第2の工程で得られた接着剤層に第2の透明ガラス板を貼り合わせる工程であり、前記第1の製造方法における第3の工程と同様に行うことができる。
【0042】
前記製造方法は、第1の工程において予め樹脂フィルム熱線反射金属層を形成したものを用いることから、特に樹脂フィルムの片面上に熱線反射金属層を形成場合には、第1の透明ガラス板への密着性が大きくなり、また、更に、片面上に熱線反射金属層を形成した樹脂フィルムを透明ガラス板の両面に貼り付けた場合には、別の熱線熱線層を有するものとなることから、熱線反射合わせガラスの熱線反射率をより高くすることができる。
【0043】
本発明の熱線吸収合わせガラスは、第1の透明ガラス板、熱線反射層、中間接着層及び第2の透明ガラス板をこの順に積層してなるものであり、得られる熱線反射合わせガラスは、熱線反射率が高く、結果として赤外線透過率が65%以下となるものであり、また、前記中間接着層を有することにより密着性が優れるものであり、更に前記熱線反射層及び前記中間接着層は共に可視光線透過率を阻害するものでなく、得られる熱線反射合わせガラスの可視光線透過率は70%以上を示すものである。従って、本発明の熱線反射合わせガラスは、可視光線透過率が70%以上と高い値を示し、赤外線透過率が65%以下と低い値を示すとともに、熱線反射層の密着性や耐久性等の性能にも優れるものであることから、自動車用、住宅用のガラス、特にフロントガラスに好適に用いられるものであり、これを用いることにより、自動車の車内温度の上昇を抑制し、冷房負荷を低減することができる。
【0044】
【実施例】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
実施例1
先ず、厚さ25μmのPET樹脂フィルム(100mm×150mm×2.0mm)面の片面上に、熱線反射層の厚みを10nmに(スパッタ法)形成した熱線反射Ag層樹脂フィルムを作成し、中性洗剤、水、イソプロピルアルコールで順次表面を洗浄した第1の透明ガラス板(100mm×150mm×2.0mm)の片面に貼り付けた。次に、第1の透明ガラス板に貼り付けられた樹脂フィルム上に接着剤としてポリビニルブチラールを塗布し、30分間、60℃で乾燥し、乾燥膜厚0.7mmの接着剤層を形成し、更に中性洗剤、水、イソプロピルアルコールで順次表面を洗浄した第2の透明ガラス板(100mm×150mm×2.0mm)を得られた接着剤層に加熱接着して熱線反射合わせガラス1を得た。
【0046】
実施例2
熱線反射層の厚みを20nmに(スパッタ法)形成した熱線反射Ag層樹脂フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして熱線吸収合わせガラス2を得た。
【0047】
比較例
透明ガラス板(100mm×150mm×2.0mm)の片面に接着剤としてポリビニルブチラールを塗布し、30分間、60℃で乾燥し、乾燥膜厚0.7mmの接着剤層を形成した。次に、中性洗剤、水、イソプロピルアルコールで順次表面を洗浄した第2の透明ガラス板(100mm×150mm×2.0mm)を得られた接着剤層に加熱接着して比較ガラスを得た。
【0048】
実施例1,2及び比較例で得られたガラス試験片を用いて、下記方法に従って評価した。結果を表1に示した。
1.赤外線吸収試験
図1のガラス試験片について、図2に示す、発泡スチロール内部に厚さ150μmのブラック塩化ビニルシート5を貼り付けブラックボックスにした試験装置8を用いて熱遮断性を評価した。図2に示すように、試験片1を発泡スチロール箱2の上面に設置し、試験片1の上方に設けた白熱灯3により試験片1を照射し、10分後と30分後の温度を測定した。温度の測定は、試験片1の裏面温度、及び、発泡スチロール箱2の内部温度(蓋4から7cmの位置)の2点で行い、それぞれ設置された温度センサー9及び10により温度を測定し、記録計で測定温度を記録した。
【0049】
前記発泡スチロール箱2としては、厚さが25mmで、寸法(外寸)が200mm×170mm×170mmのものを用いた。前記蓋4は、厚さが7mmで、80mm×130mmの穴が中央部に開いたものを用い、その穴の中央部に試験片1を設置した。また、試験片1と白熱灯3との距離7を150mmとした。
【0050】
前記記録計としては、サーモレコーダーRT−10(タバイエスペック社製)を用い、白熱灯3は、電源6により点灯させることができる東芝レフランプ 150W(室内用;東芝社製)を用いた。また、試験は20℃の恒温室で無風の状態で実施した。赤外線反射試験結果を表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
2.分光透過率の測定
実施例1、2及び比較例で得られたガラス試験片を用いて、分光透過率を測定した。測定は、分光光度計(日立製作所社製、U−3500スペクトロフォトメーター)を用いて、スキャンスピード:600nm/分、サンプリング間隔:自動設定、スリット(可視):固定2mm、スリット(近赤外700〜2100nm):自動制御、Pbs感度:2、ホトマル電圧:自動制御、標準板:硫酸バリウムの条件で行った。
分光透過率の結果を図2に示した。
【0053】
前記表1より、実施例においては、比較例よりガラス試験片は温度が上昇し、吸熱していた。また、実施例では、試験箱内部の温度は明らかに低下した。これは、図2より、実施例で得られるガラス試験片が、赤外線領域の光を良好に反射したために、試験箱内部の温度が低下したことがわかる。また図2より、実施例で得られた試験片は可視光線透過率が高いことも明らかとなった。
【0054】
【発明の効果】
波長350〜800nmにおける全可視光線透過率が70%以上及び波長800〜2100nmの近赤外線反射率30%以上である請求項1記載の熱線反射合わせガラス。
以上の述べたように本発明の熱線吸収合わせガラスおよびその製造方法は、上述した構成よりなるので、波長350〜800nmにおける全可視光線透過率が70%以上を保持し、透明で視認性に優れ、かつ、波長800〜2100nmの近赤外線反射率30%以上を有し、熱線を効率的に反射するものであることから、窓からの侵入熱量を大幅に減少することができ、自動車、住宅用の合わせガラス、に好適に用いられるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例で得られたガラス試験片の概略断面図である。
【図2】実施例及び比較例で得られたガラス試験片の熱線反射性能を評価するための装置の概略断面図である。
【図3】実施例1及び比較例で得られたガラス試験片の波長350〜2100nmにおける分光透過率のグラフである。
【符号の説明】
1…ガラス試験片
2…発泡スチロール箱
3…白熱灯
4…発泡スチロール箱の蓋
5…ブラック塩化ビニルシート
6…電源
7…ガラス試験片と白熱灯との距離
8…遮熱性試験装置
9、10…温度センサー
Claims (3)
- 2枚の単板ガラスを接着させる合わせガラスであり、単板ガラス間に、Agを樹脂フィルムに定着してなる熱線反射層と中間接着層とを介在させたことを特徴とする熱線反射合わせガラス。
- 合わせガラスは、波長350〜800nmにおける全可視光線透過率が70%以上及び波長800〜2100nmの近赤外線反射率30%以上である請求項1記載の熱線反射合わせガラス。
- 熱線反射樹脂フィルムに定着させる金属の厚みは、5〜1000nmである請求項1または請求項2に記載の熱線反射合わせガラス。
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-
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- 2003-06-23 JP JP2003178588A patent/JP2005015245A/ja active Pending
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