JP2005014523A - ダイレクトオフセット印刷用原版 - Google Patents

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Yuko Suzuki
祐子 鈴木
Takayuki Sanada
隆幸 真田
Koji Takano
弘二 高野
Tomoya Terauchi
知哉 寺内
Tetsuhiro Koide
哲裕 小出
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Abstract

【課題】レーザー照射部が親水性から親油性に変化する感光層を有し、明室で取り扱うことができ、現像や拭き取り操作が不要で、感度、解像度に優れるダイレクトオフセット印刷用原版を提供するとともに、それにより形成され、印刷時、非画像部にインクが付着しにくく地汚れしない、印刷特性に優れたダイレクトオフセット印刷版を提供する。
【解決手段】本発明のダイレクトオフセット印刷用原版は、基板上に直接又は他の層を介して感光性樹脂層が形成されたオフセット印刷版において、その感光性樹脂層表面が、XPS法により測定されるフッ素原子を0.5原子%以上有している。感光性樹脂層は、親水性ポリマー、エマルションを形成したポリマー、波長700〜1200nmの範囲内に吸収を持つ光吸収剤、架橋剤及び親水性添加剤を混合して得られる感光性樹脂組成物からなり、少なくともその表面が親水性であることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイレクトオフセット印刷用原版及びそれを用いたダイレクトオフセット印刷版に関する。さらに詳しくは、明室でも取り扱うことができ、版に直接レーザー光で描画でき、感度に優れ、且つ現像や拭き取り等の操作が不要なダイレクトオフセット印刷用原版、およびそれを用いて形成される印刷特性に優れたダイレクトオフセット印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近の情報デジタル化技術の進歩とレーザーの高出力化に伴い、レーザーを走査して直接刷版に描画して製版する、CTP(Computer to Plate)対応の印刷版が実用化されている。特に近赤外レーザーを用いたシステムは明室で印刷版の取り扱いができるため近年着実に広がってきた。
【0003】
すでに市販されている近赤外レーザー対応CTP用印刷版は、従来のPS版のようにアルカリ現像を必要とするものが多い。しかし、近赤外レーザーはレーザーパワーを上げることができるため、アルカリ現像によりレーザー照射部あるいは未照射部を溶出し取り除くことを要しない新しいメカニズムで製版することが可能である。
【0004】
エチレン−無水マレイン酸コポリマーを用いた現像工程を必要としない版が報告されている(特許文献1参照)。これはレーザー照射部分で熱が発生し、その熱でメラノフォビック(疎油性)のポリマー中の環状無水物部分が分解することによってメラノフィリック(親油性)になる。非画像部は中性または酸性域pH溶液との接触によってメラノフォビックになる。しかし、この版の画像部で印刷できる程度の親油性までに極性を変化させるには、高いレーザーエネルギーを必要とする。また、そのエネルギーで環状無水物以外の部分が分解すると膜強度が低下してしまう恐れがある。さらにレーザー照射後中性または酸性域pH溶液との接触時の条件によっては十分に疎油性(親水性)にならないことがあるため、地汚れを引き起こす可能性がある。
【0005】
また、まったく現像工程を必要としない版として、熱により画像部に転換するマイクロカプセル化された親油性成分と親水性バインダーポリマーと光反応開始剤とを含有する親水層および支持体とから構成される平版印刷版が開発されている(特許文献2参照)。この版は、明室でも取り扱うことができ、現像処理は不要である。近赤外レーザーの照射によりマイクロカプセルが熱破壊し、マイクロカプセル中の親油性成分が外部に染み出し、親水性バインダーポリマーの官能基と反応し画像部が形成される。しかし画像部が十分に親油化されにくいことや非画像部が親水性バインダーポリマーだけでは十分な親水性を維持することが難しい。そのため親油性/親水性のコントラストが小さく、最適印刷条件の幅が小さい。また、印刷枚数が増えると親水層中のマイクロカプセルが壊れてしまい、印刷に欠陥が生じるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】
特表2002−501848号公報
【特許文献2】
特許第3206297号明細書
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように従来のCTP用の印刷版では、レーザー照射部や未照射部の除去の際、取り残しやゴミの発生によるトラブル、親油性/親水性のコントラスト不足による画質の低下等種々の問題点を抱えており、これらの問題点を改良したCTP用の版の開発が望まれる。
【0008】
そこで本発明の課題は、レーザー照射部が親水性から親油性に変化する感光層を有し、明室で取り扱うことができ、現像や拭き取り操作が不要で、感度、解像度に優れるダイレクトオフセット印刷用原版を提供するとともに、それにより形成され、印刷時、非画像部にインクが付着しにくく地汚れしない、印刷特性に優れたダイレクトオフセット印刷版を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記した課題を解決するために鋭意検討を行った結果、基板上に形成された感光性の親水性樹脂層表面のX線光電子分光分析法(X−ray Photoelectron Spectoroscopy, XPS)による測定したフッ素原子が0.5原子%以上である版を用いると地汚れしにくいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のダイレクトオフセット印刷用原版は、基板上に直接又は他の層を介して感光性樹脂層が形成されたオフセット印刷版において、その感光性樹脂層表面が、XPS法により測定されるフッ素原子を0.5原子%以上有していることを特徴とする。
【0011】
前記の感光性樹脂層は、親水性ポリマー、エマルションを形成したポリマー、波長700〜1200nmの範囲内に吸収を持つ光吸収剤、架橋剤及び親水性添加剤を混合して得られる感光性樹脂組成物からなり、少なくともその表面が親水性であることが好ましい。
【0012】
また、前記の感光性の親水性樹脂層には、パーフルオロ基を持つフッ素系添加剤が含有されていることが好ましい。
【0013】
前記感光性樹脂層の親水性は、波長700〜1200nmの範囲内のレーザー照射によって親油性に変化することが、本発明のダイレクトオフセット印刷用原版の好適な態様である。
【0014】
本発明のダイレクトオフセット印刷版は、前記のダイレクトオフセット印刷用原版の感光性樹脂層に、波長700〜1200nmの範囲内のレーザーを照射後、現像を行うことなく画像部と非画像部が形成されたものであることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明におけるダイレクトオフセット印刷用原版は、基板上に直接又は他の層を介して、水に不溶な感光性樹脂層を有するものである。
【0016】
まず、本発明の印刷用原版の感光性樹脂層を形成する感光性樹脂組成物について説明する。
感光性樹脂組成物は、親水性ポリマー、エマルションを形成したポリマー、波長700〜1200nmの範囲内に吸収をもつ光吸収剤、架橋剤及び親水性添加剤を混合して得られる。ここでいう親水性ポリマーとは、水に完全に溶解するものだけでなく、水と任意の比率に均一に混合できる有機溶剤に溶解できるものでその溶液も水に溶解することが可能なもの、水を吸着するもの、水を吸収して膨潤するものも含む。親水性ポリマーの例としては、「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(シーエムシー出版、1988年)などに記載のものが使用できる。
【0017】
親水性ポリマーとして具体的には、アミド基、カルボキシル基及びそのアルカリ金属又はアミン塩、水酸基、スルホン酸基及びその塩、アミノ基及びその塩、ホスホン酸基及びその塩、スルホンアミド基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等の親水性置換基を側鎖に有するポリマー、更にポリオキシエチレン系ポリマー、ポリオキシプロピレン系ポリマー、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン系ポリマー、セルロース系ポリマー、ゼラチン等が挙げられる。
【0018】
本発明においては、これらの親水性ポリマーの中でも、感光性樹脂組成物を刷版の感光層に用いた場合、感光層に求められる耐水性、例えば架橋等により水に不溶化させ易さなどの点から、アミド基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基及び水酸基から選ばれる親水性置換基を1種又は2種以上側鎖に有するポリマー、例えば、前記した親水性置換基を側鎖に有する不飽和モノマーを1種又は2種以上重合したポリマーやポリビニルアルコール系ポリマー、セルロース系ポリマー、ゼラチン等が好ましい。
【0019】
前記した親水性置換基を側鎖に有する不飽和モノマーを1種又は2種以上重合したポリマーに於いて用いられる不飽和モノマーの具体例を説明する。アミド基を側鎖に有する不飽和モノマーとしては、無置換又は置換の(メタ)アクリルアミド、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等の二塩基酸のアミド化モノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0020】
無置換又は置換(メタ)アクリルアミドのより具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、スルホン酸プロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。また、前記イタコン酸等の二塩基酸アミド化モノマーの場合は、一方のカルボキシル基がアミド化されたモノアミド、両方のカルボキシル基がアミド化されたジアミド、更に一方のカルボキシル基がアミド化され、他方のカルボキシル基がエステル化されたアミドエステルであってもよい。
【0021】
カルボキシル基を側鎖に有する不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸及びその無水物等の二塩基不飽和酸やこれら二塩基不飽和酸のモノエステル、モノアミド等のカルボキシル基含有不飽和モノマー等が挙げられる。これらのカルボキシル基を有するモノマーに於いては、該カルボキシル基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基やアンモニアやアミン類で中和されていても良い。又、重合してから中和しても良い。
【0022】
スルホン酸基を側鎖に有する不飽和モノマーとしては、ビニルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ビニルメチルスルホン酸、イソプロぺニルメチルスルホン酸、(メタ)アクリル酸にエチレンオキシド、又はプロピレンオキシドを付加したアルコールの硫酸エステル(例えば、三洋化成工業(株)のエレミノール(登録商標)RS−30)、(メタ)アクリロイロキシエチルスルホン酸、モノアルキルスルホ琥珀酸エステルとアリル基を有する化合物とのエステル(例えば、三洋化成工業(株)のエレミノール(登録商標)JS2、花王(株)のラテムル(登録商標)S−180、又はS180A)、モノアルキルスルホ琥珀酸エステルとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、及び日本乳化剤(株)のAntox(登録商標)MS60等が挙げられる。これらのスルホン酸基を有するモノマーに於いては、該スルホン酸基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基やアンモニアやアミン類で中和されていても良い。又、重合してから中和しても良い。
【0023】
ホスホン酸基を側鎖に有する不飽和モノマーとしては、ビニルリン酸、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート、リン酸モノアルキルエステルのモノ(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのホスホン酸基を有するモノマーに於いては、該ホスホン酸基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基やアンモニアやアミン類で中和されていても良い。又、重合してから中和しても良い。
【0024】
また、水酸基を有する不飽和モノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び、これらの(メタ)アクリレートにエチレンオキシド、プロピレンオキシドを付加したモノマー、メチロール(メタ)アクリルアミドや該メチロール(メタ)アクリルアミドとメチルアルコールやブチルアルコールとの縮合物であるメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0025】
尚、本発明に於ける前記「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクロイル」等の記載はそれぞれアクリルまたはメタクリル、アクリレートまたはメタアクリレート、アクリロイルまたはメタアクリロイルを意味する。
【0026】
ポリビニルアルコール系ポリマーを更に詳細に説明すると、酢酸ビニルやプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニルモノマーのホモポリマーやコポリマーを完全又は部分加水分解して得られるポリマー、及びこのポリマーの部分ホルマール化、アセタール化、ブチラール化ポリマー等が挙げられる。
【0027】
本発明に於ける印刷用原版は、基板上に親水性ポリマーなどからなる感光性樹脂組成物を含有してなる水に不溶の感光層を有する。感光層を水に不溶にするには、通常は架橋剤を用いて親水性ポリマーを三次元架橋する。架橋するためには、一般的に親水性ポリマーに架橋剤と反応する架橋性官能基を導入することがおこなわれる。
【0028】
架橋性官能基の具体例としては、用いる架橋剤の種類により異なるが、例えば、水酸基、カルボキシル基及びそのアルカリ金属やアミン塩、スルホン酸基及びそのアルカリ金属やアミン塩、リン酸基及びそのアルカリ金属やアミン塩、アミド基、アミノ基、イソシアナート基、グリシジル基、オキサゾリン基等が挙げられる。これらの架橋性官能基を導入するには、これらの官能基を有する不飽和モノマー、例えば前記した水酸基を有する不飽和モノマー、カルボキシル基を有する不飽和モノマー、またスルホン酸基を有する不飽和モノマーを、更にはグリシジル基を有する不飽和モノマーとしてグリシジル(メタ)アクリレート等を他の(メタ)アクリレートモノマーと共重合すればよい。
【0029】
さらに、本発明で用いる親水性ポリマーは、前記親水性置換基を有する不飽和モノマー、架橋性官能基を有する不飽和モノマー以外に、本発明の効果をさらに向上させるために、その他の共重合可能な不飽和モノマーを共重合することもできる。その他の共重合可能な不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシ(C1〜C50)エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソポロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0030】
親水性ポリマーを架橋するのに用いられる架橋剤としては、前記親水性ポリマーと架橋反応して親水性ポリマーを水に不溶性にすることにより感光層の耐水性を向上させるものであれば特に限定されない。架橋剤と官能基の組み合わせについては、「架橋剤ハンドブック」(金子東助、山下晋三編、大成社、昭和56年)に記載の反応から選ぶことができる。例えば、架橋剤として親水性ポリマー中の架橋性官能基であるカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、グリシジル基、場合によってはアミド基と反応する公知の多価アルコール化合物類、多価カルボン酸化合物やその無水物類、多価グリシジル化合物(エポキシ樹脂)類、多価アミン化合物類、ポリアミド樹脂類、多価イソシアナート化合物類(ブロックイソシアナート類を含む)、オキサゾリン樹脂、アミノ樹脂、グリオキザール等が挙げられる。
【0031】
本発明においては前記した架橋剤の中でも、硬化速度と感光性組成物の安定性や感光層の親水性と耐水性のバランス等から、公知の種々の多価グリシジル化合物(エポキシ樹脂)、オキサゾリン樹脂、アミノ樹脂、多価アミン化合物やポリアミド樹脂等のエポキシ樹脂用の硬化剤や、グリオキザールが好ましい。アミノ樹脂としては、公知のメラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコールウリル樹脂等や、これら樹脂の変性樹脂、例えばカルボキシ変性メラミン樹脂等が挙げられる。
【0032】
また、架橋反応を促進するために、前記したグリシジル化合物を用いる際には3級アミン類を、アミノ樹脂を用いる場合はパラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、塩化アンモニウム等の酸性化合物を併用しても良い。
【0033】
感光性樹脂組成物を塗布後室温で乾燥、または加熱することで、これらの架橋剤が反応して感光層が水に不溶化する。
【0034】
本発明の感光性樹脂組成物の調製に用いられるエマルションを形成したポリマーは、水に分散したポリマー微粒子を指し、エマルション中のポリマー微粒子の割合は60wt%以下、望ましくは40wt%以下である。エマルションは自己乳化型のものでも強制乳化型のものでもよい。これは乳化重合、懸濁重合、グラフト重合等で作られる。例えばウレタン系、(メタ)アクリル樹脂系、共役ジエン系ブタジエンゴム系などの親油性ポリマーからなるエマルション、スチレン系、酢酸ビニル系、塩化ビニリデン系モノマーを用いて得られるエマルション等が挙げられる。
【0035】
これらのエマルションを形成したポリマーが持つ官能基、例えばカルボン酸やスルホン酸をアミン化合物によって中和して使用する。ここで用いられるのは、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、エタノールアミン、モノイソプロパノ−ルアミン等の1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、エチルエタノールアミン、エチルイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等の2級アミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルトリエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの3級アミンが挙げられる。窒素原子に結合する置換基には、水素、アルキル基、アルキル基に官能基が置換したもの、ベンゼン環、複素環またそれらに官能基が置換したものを用いることができるが、親水性が高いものが望ましい。
また、アミン以外にも水酸化ナトリウムのようなアルカリ性化合物で中和をしてもよい。
【0036】
これらのポリマーに用いられるモノマーは1種類だけでなく2種類以上を用いてもよい。また、これらのポリマーエマルション由来のポリマーを添加した樹脂組成物からなる感光層では、そのポリマーが、乾燥後、架橋した親水性ポリマー相と相分離する親油性ポリマー相となる。
【0037】
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる光吸収剤としては、明室での取り扱いを可能にするために、波長700〜1200nmの範囲、特に市場に供されている高出力半導体レーザーの発振波長である800〜860nmに吸収域を有する光吸収剤が好ましく、特に感度、分解特性等に優れる点から有機色素が望ましい。有機色素としては、シアニン系化合物、ポリメチン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、アントラシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、アゾ系化合物、ベンゾキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ジチオール金属錯体類、ジアミンの金属錯体類等が挙げられる。これらは1種類単独でも、2種類以上を混合してもよい。さらにカーボンブラック等の無機光吸収剤と併用してもよい。
【0038】
本発明において、光吸収剤はレーザー光を吸収すると多量の発熱を伴いながら急激に分解を起こす。その熱によって感光層のエマルションに由来のポリマーを溶融したり、親水性ポリマーの親水性置換基や主鎖の一部の分解が起り、感光層の親水性を親油(インク)性に変えることができる。そのため分解物の堆積が少なく、画像部の機械的強度も低下することがない。
【0039】
本発明に用いられる光吸収剤が、使用する親水性ポリマーに不溶性の場合、光吸収剤を親水性ポリマーに分散させて用い感光性樹脂組成物とすることが可能である。分散した際の光吸収化合物の粒子径は、刷版の感光層の膜厚、解像度にもよるが、通常は平均で0.5μm以下が好ましい。分散する方法としては、例えばサンドミル、ペイントシェーカー、3本ロールなどを用いる方法、スラリーを加圧下に高速で衝突させる方法等をあげることができる。
【0040】
本発明に用いられる親水性添加剤としては、水や有機溶媒に溶解するものが望ましい。親水性添加剤の添加によって印刷版表面の親水性を高め、印刷開始後すぐに湿し水が表面に付くような作用をするものであればどのような化合物でも使用し得るが、特に界面活性剤や表面改質剤と呼ばれているものが好ましい。現在さまざまな親水性添加剤が入手できるが、例えば「特殊機能界面活性剤」(シーエムシー出版、1986年)に記載の親水性界面活性剤を使用可能なものとしてあげることができる。
【0041】
親水性添加剤の具体例では、非イオン性界面活性剤として、ポリエチレングリコール型、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等や、多価アルコール型例えばアルキルアルカノールアミド、、グリセリン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、やし油やひまし油を原料とした界面活性剤、ポリエチレングリコール、アルキルフェニルエーテルやアルキルエーテル、アルキルアリルエーテル、ラウリルエーテル系の界面活性剤等があげられる。
【0042】
また陽イオン系界面活性剤としては、第1級アミン塩系、第2級アミン塩系、第3級アミン塩系、第4級アンモニウム塩系、四級ピリジニウム塩系、ラウリルイミダゾリン系、アルキルアミン系等があげられる。
【0043】
両性界面活性剤としてはアルキルベタイン系、アミノ酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、りん酸エステル型、アミンオキシド型、ポリオキシエチレンアルキルアミン型、ポリアルキレンポリアミン型、ポリエチレンイミン型、カルボン酸型、硫酸エステル型等の両イオン性のものが使用可能である。
【0044】
さらに陰イオン系界面活性剤としては、スルホン酸塩系、例えばアルキルフェニルスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物のナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ジアルキルスルホ琥珀酸エステルナトリウムやジアルキルスルホ琥珀酸エステルナトリウム等があげられる。また、カルボン酸塩系、例えばジアルキル琥珀酸エステルナトリウム、モノアルキルコハク酸エステルナトリウム、ポリカルボン酸等があげられる。硫酸エステル塩系として、例えばアルキルジフェニル硫酸オキシド、アルキル硫酸エステル、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エーテルナトリウムまたはアンモニウム等が挙げられる。また、りん酸エステル塩系、例えばアルキルエーテルりん酸エステルナトリウムやアルコールりん酸エステルナトリウム等が使用できる。特にジアルキルスルホ琥珀酸エステルナトリウムやモノアルキルスルホ琥珀酸エステルナトリウム系は感光層表面が水に濡れても溶出しにくいため好ましい。
これらの親水性添加剤は、2種類以上を同時に用いてもよい。
【0045】
本発明のダイレクトオフセット印刷用原版の感光性樹脂層は、その表面をX線光電子分光分析法により測定したとき、フッ素原子が0.5原子%以上存在するものであり、好ましくは0.5原子%以上30原子%以下、より好ましくは1.0原子%以上30原子%以下存在するものである。フッ素原子が30原子%を越えて多くなり過ぎた場合、画像情報記録時の感度が低下することがあるため好ましくない。
【0046】
感光性樹脂層の表面にフッ素原子を0.5原子%以上存在させるためには、上記の感光性樹脂組成物にフッ素系化合物を加えることが好ましい。この親水性の高い感光性樹脂組成物を基板に塗布すると、形成される感光層の表面にフッ素系化合物が局在化するため印刷版の表面にインクがつきにくくなる。また、一旦表面に付着したインクが水ロールによって取れやすくなり、印刷再スタート時のヤレ紙枚数を少なくできる。
【0047】
このフッ素系化合物には複数のフッ素原子を持つ化合物が好ましく、フッ素原子が多いほど非画像部のインク汚れが取れやすいことから特にパーフルオロアルキル基を持つものが望ましい。また、この化合物にはフッ素原子の他に水酸基、カルボン酸基、カルボン酸塩、エステル結合、エーテル結合、不飽和二重結合、エポキシ基、(メタ)アクリル基、アミノ基、トリメチルアンモニウム塩、ベタイン、アミンオキシド、アンモニウムヨウ化塩、エチレンオキシド、リン酸基、リン酸塩、スルホン酸基、スルホン酸塩等を有する構造のものであってもよい。さらには、フッ素原子を有するオリゴマーでもよい。
【0048】
このフッ素系化合物として、感光液物性調整用や塗布膜欠陥改良剤として使用される含フッ素系化合物も使用できる。例えば、Schwego Fluor(Bernd Schwegmann社製)、AC1000(Algin Chemie社製)、Fluorad(3M社製)、MEGAFAC(大日本インキ化学工業株式会社製)、サーフロン(セイミケミカル社製)などが挙げられる。
【0049】
このような含フッ素化合物は通常水や有機溶剤に溶解しにくいため、分子量の小さい化合物が望ましい。パーフルオロオクタン酸やパーフルオロオクタデシル−1,2−エポキシプロパンのような、フッ素が結合している炭素の数が12個以下のものを用いると感光性樹脂組成物への混合が容易である。
【0050】
また、含フッ素化合物を感光性樹脂組成物へ添加するとき、その化合物が溶解または懸濁し、感光性樹脂組成物から分離や析出を生じない溶媒を用いて希釈して使用する。
【0051】
この含フッ素化合物は感光性組成物を塗布したときにその表面に徐々にブリードしてくる。そのため、親水性感光層の表面をXPSで測定すると感光性樹脂組成物に添加した際の固形分中のフッ素元素含有量よりも多い割合のatom%と測定される。通常、フッ素系化合物の添加量は、感光層組成物の固形分100重量部に対し不揮発分で0.005〜5.0重量部、さらに望ましいのは0.01〜1.0重量部であるが、分子構造によってブリードのしやすさが変わるので、親水性感光層の表面のXPSでのフッ素元素測定値に合わせて添加量を調整する必要がある。なお、フッ素系化合物が5.0重量部以下であれば親水性感光層表面の親水性を損なうことはない。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物において、親水性ポリマー、エマルションを形成したポリマー、架橋剤、光吸収剤及び親水性添加剤の混合割合は、刷版の感光層の親水性と耐水性のバランスや種々の印刷特性の点から、固形分として、親水性ポリマー97〜10重量部、エマルションを形成したポリマー80〜10重量部、架橋剤3〜50重量部、及び光吸収剤と親水性添加剤は前記親水性ポリマー、エマルションを形成したポリマーと架橋剤の固形分の合計100重量部に対し、それぞれ2〜20重量部、0.01〜5重量部が好ましい。さらには、固形分として、親水性添加剤親水性ポリマー50〜20重量部、エマルションを形成したポリマー70〜20重量部、架橋剤5〜40部、及び光吸収剤と親水性添加剤は前記親水性ポリマー、エマルションを形成したポリマーと架橋剤の固形分の合計100重量部に対し、それぞれ5〜15重量部、0.1〜4重量部が好ましい。光吸収剤が上記の範囲であれば感度が適当で、経済的にも有利である。また、親水性添加剤が上記の範囲内であれば、感光性樹脂組成物からなる感光層表面の親水性が良好で、感光性樹脂組成物の架橋に悪影響を与えることがない。
【0053】
本発明においては、刷版の感光層露光部の親水性と耐水性のバランス、エマルションを形成したポリマーとの混ざりやすさや種々の印刷特性の点から、親水性ポリマーとしては、アミド基を有する不飽和モノマー由来の繰り返し単位の部分が20〜100重量%、水酸基のような架橋性官能基を有する不飽和モノマーの部分が0〜60重量%、及びその他の不飽和モノマー由来の繰り返し単位の部分が0〜50重量%であるポリマーが好ましく、更には、アミド基を有する不飽和モノマー由来の繰り返し単位の部分が40〜95重量%、架橋性官能基を有する不飽和モノマー由来の繰り返し単位の部分が5〜40重量%、及びその他の不飽和モノマー由来の繰り返し単位の部分が0〜50重量%であるポリマーが好ましい。
【0054】
なお、アミド基、水酸基を有する不飽和モノマーは、親水性置換基を有する不飽和モノマーであるとともに、架橋性官能基を有する不飽和モノマーでもあるが、前記の親水性ポリマーの組成においては、アミド基、カルボキシル基、水酸基、及びスルホン酸基を有する不飽和モノマーは親水性置換基を有する不飽和モノマーとみなし、架橋性官能基を有する不飽和モノマーとしては算入しないものとする。
【0055】
本発明の印刷用原版においては基板上に直接または他の層を介して前記した感光性樹脂組成物を含有する水に不溶性の感光層を設けてなるが、この際用いられる基板の具体例としてはアルミ板、鋼板、ステンレス板、銅板等の金属板やこれらの金属の合金板、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS樹脂、酢酸セルロース等のプラスチックフィルムや紙、アルミ箔をラミネートした紙、金属蒸着紙、プラスチックフィルムラミネート紙等が挙げられる。これらの基板の厚さは特に制限はないが通常100〜500μm程度である。また、これらの基板には、密着性の改良等のために酸化処理、リン酸亜鉛処理、サンドブラスト処理、コロナ放電処理等の表面処理を施してもよい。これらの中では、特に取り扱いが容易であり、さびにくく安価であるアルミ板が望ましい。さらにアルミ板を用いると長時間印刷を行っても基板が伸びることがないので4色以上のカラー印刷に適している。
【0056】
また、感光層との密着性を改良したり、熱の拡散を防止したりするために、ポリマーの下地層を用いてもよい。これに用いられるポリマーは、基板と感光層との密着性及び機械的強度のあるポリマーならば特に制限なく使用できる。また、このポリマーの中にフィラーを添加してプライマーとしてポリマー表面に凹凸を作り感光層との接触面積を大きくすることでさらに密着性及び機械的強度を上げることができる。下地層は架橋してもよいし架橋しなくてもよい。下地層の形成は、有機溶媒に溶解して塗布する方法などにより行うことができる。
【0057】
前記基板に感光層を設けるには、本発明の感光性樹脂組成物を含有する溶液を基板に塗布し、乾燥、硬化すればよい。この感光性樹脂組成物の溶剤は親水性ポリマーやエマルション状ポリマーに含まれる水や水に溶解するアルコール系有機溶剤のほか、均一に混合できるものであれば特に制限はない。また、粘度調整や塗布作業性等を改善するために感光性樹脂組成物調製後塗布直前に加えても良い。塗布する方法としては、塗布する溶液の粘度や塗布速度等によって異なるが、通常例えば、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンフローコーター、ダイコーター、ディップコーターやスプレー法等を用いれば良い。
【0058】
その際、塗布溶液の消泡のためや、塗布膜の平滑化のために塗布溶液に消泡剤、レベリング剤、ハジキ防止剤、カップリング剤等の各種添加剤を用いても良い。
また、感光層の耐水性等の特性を改良するために有機や無機のフィラーを添加してもよい。これらのフィラーは感光性樹脂組成物に混合して凝集等を起こさなければ形状や材質に制限はない。
【0059】
感光性樹脂組成物の溶液を塗布した後、加熱して乾燥及び架橋する。加熱温度は通常50〜200℃程度である。それにより形成された感光層の膜厚は特に制限はないが、通常0.5〜10μm程度が好ましい。
【0060】
本発明の印刷用原版においては、その感光層を保護するためにその上にフィルムを積層しても良い。それによって輸送やハンドリングによる印刷版表面の傷を防ぐことができる。このフィルムはレーザー照射前に剥離してから使用する。
【0061】
本発明においてはレーザー照射により照射された部分の感光層は親水性から親油(インク)性に変化する。これは、レーザー照射により感光層内で部分的にポリマーエマルション由来の親油性ポリマーが溶融、融着したり、親水性ポリマー、架橋剤、親水性添加剤の親水性置換基が分解したりして、親油(インク)性に変化するものと推定される。従って、レーザー照射後には現像や拭き取り等の操作を必要としない。又、感光層が部分的に分解した際に、ガスを発生して感光層が発泡することもあり、それにより露光部の感光層が未露光部よりも隆起することがある。感光層が発泡により隆起している場合でも、印刷を開始すると印圧によりその隆起部は低くなったり、無くなったりするため印刷物への影響はない。
【0062】
本発明で印刷用原版のレーザー照射に用いられる光の波長は、700〜1200nmの範囲内であり、この波長域の中で、光吸収剤の吸収波長域に合致する光を用いればよい。光源としては、使用しやすく高出力の光源が適しており、この点から、700〜1200nmの波長域に発振波長を有するレーザーが好ましく、例えば830nmの高出力半導体レーザーや1064nmのYAGレーザーが好ましい。これらのレーザーを搭載した露光機はサーマル用プレートセッター(露光機)として既に市販されている。
【0063】
このようにして形成される本発明のダイレクトオフセット印刷用原版は、すでに市販されている露光機で使用可能であり、現像工程が不要である。
【0064】
【実施例】
以下、実験例により本発明を詳細に示すが、本発明はこれらの実験例のみに限定されるものではない。
【0065】
<親水性ポリマーA−1の合成>
1000mlのフラスコに水400gを入れ、窒素をバブリングして溶存酸素を除去した後、80℃に昇温した。窒素ガスをフラスコに流しながら、アクリルアミド90g、ヒドロキシエチルアクリレート10g、水67gからなるモノマー溶液と過硫酸カリ0.5gを水50gに溶解した開始剤の水溶液を、内温を80℃に維持しながら、別々に3時間に渡り連続滴下した。滴下終了後80℃で2時間重合を続けた後、更に90℃で2時間重合した。最後に水150 g加え親水性ポリマーA−1の水溶液を得た。このポリマーの水溶液は粘度が6000mPa・s、固形分は15重量%であった。
【0066】
<感光性樹脂組成物B−1の調製>
次に前記親水性ポリマーA−1(NV=15%)を固形分として40重量部、ウレタン系エマルジョン(第一工業製薬製スーパーフレックス(登録商標)750、NV=40%)を固形分として40重量部、架橋剤としてメチル化メラミン樹脂(三井サイテック(株)製サイメル(登録商標)350、NV=80%)を固形分として20重量部、水100重量部に溶解したシアニン色素(アクロス製IR125)5重量部、親水性添加剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(第一工業製薬(株)製ネオゲンR、NV=60%)の不揮発分として3重量部、含フッ素化合物(パーフルオロアルキルアミンオキシド、セイミケミカル社製サーフロンS141、NV=30%)の10%メタノール溶液3重量部を混合し、均一になるまでディスパーでかき混ぜて感光性樹脂組成物B−1を含む溶液を得た。
【0067】
<感光性樹脂組成物B−2の調製>
含フッ素化合物の添加量を0.08重量部にした以外は感光性組成物B−1と同じ組成、比率で混合し、感光性樹脂組成物B−2を含む溶液を得た。
【0068】
[実験例1]
(印刷用原版の作成)
厚み188mmのポリエステルフィルムに上記で得られた感光性樹脂組成物B−1を含む溶液を、ワイヤーバー#10を用いて均一に塗布した後、120℃で1時間乾燥し、約2μmの膜厚の感光層を成膜した。
【0069】
[実験例2]
(印刷用原版の作成)
実施例1と同様に感光性樹脂組成物B−2を含む溶液を、ワイヤーバー#10を用いて均一に塗布した後、120℃で1時間乾燥し、約2μmの膜厚の乾燥層を成膜した。
【0070】
(印刷評価)
印刷特性を評価するために、印刷用原版に830nmの半導体レザー光を集光した光を走査して情報の記録を行った。レーザー光を照射した部分は緑色から灰色に変色した。レーザー照射パワーを5mJ/cm刻みに上げながら照射した。実験例1、2の原版とも約350mJ/cmで画像部が白く変化した。この露光した版を湿し水を用いるオフセット印刷機(シナノケンシ(株)製カード印刷機プレクスター(登録商標)ARX010、印刷インク:エコピュア(登録商標)HP墨(サカタインクス株式会社製)、湿し水添加剤:アストロマーク3(登録商標)(日研化学株式会社(株)製)1.5%添加)にセットしてコート紙を用いて印刷を行った。1000枚印刷した後、印刷機を止めて20分放置した。その後、再度印刷を開始しヤレ紙の枚数を比較した。実験例1、2ともに印刷開始直後は非画像部にインクが付着した。実験例1では印刷枚数15枚で非画像部の地汚れがほぼ解消し、綺麗な印刷ができた。また、175線で網点、細線がきれいに印刷できた。実験例2では非画像部の地汚れがなかなか取れず40枚ヤレ紙の印刷を要した。
【0071】
(表面分析)
実験例1、2で作成した印刷用原版の感光層を5mm角に切り取り、VG社製ESCALAB220iXLで表面を測定した。検出された各元素は検出感度が異なるので、各ピーク面積に相対感度係数を掛けた。その後、全元素ピーク面積全体を100atom%とし、F原子のピーク面積との比率を求めた。その結果、実験例1の表面のF原子は3.9atom%であったのに対し、実験例2の表面のF原子は0.4atom%であった。
【0072】
<感光性樹脂組成物B−3〜6の調製>
次に上記親水性ポリマーA−1を固形分として30重量部、ウレタン系エマルジョン(三井化学(株)製ウレタン系エマルジョンUD500、NV=38%)固形分として50重量部、架橋剤としてメチル化メラミン樹脂(三井サイテック(株)製サイメル(登録商標)350)を固形分として20重量部、水100重量部に溶解したフタロシアニン色素5重量部、親水性添加剤として(花王(株)製デモール(登録商標)N、NV=100%)2重量部を混合し均一になるまでディスパーでかき混ぜた。その溶液を4等分にした後、含フッ素化合物(パーフルオロアルキルカルボン酸塩、セイミケミカル社製サーフロンS111、NV=30%)の10%メタノール溶液をそれぞれ0.05、0.1、1.0、3.0重量部加え、感光性樹脂組成物B−3〜6を含む溶液を得た。
【0073】
[実験例3〜6]
(印刷用原版の作成)
次に0.24mm厚のアルミ板の表面をアセトンで脱脂した後、接着性向上のために予めプライマーとして2μmの厚さのウレタン系エマルジョン(三井化学(株)製ウレタン系エマルジョンUD500)を塗布し120℃5分間加熱した。さらにその上に感光性樹脂組成物B−3〜6の感光性樹脂組成物を含む溶液をそれぞれ塗布し、120℃で20分乾燥し、3μmの厚さの実験例3〜6の感光層を成膜した。
【0074】
(評価)
実験例1と同様に印刷評価、表面のXPS測定を行った。どの印刷版も地汚れすることなく印刷が可能だったが、一旦印刷を止めて放置した後のヤレ紙は感光性樹脂組成物B−3、4、5、6から得られた実験例3、4、5、6の感光層について、それぞれ100枚、20枚、15枚、14枚であった。また、非画像部表面のF原子はそれぞれ0.3atom%、0.5atom%、1.9atom%、4.2atom%であった。
【0075】
【発明の効果】
本発明のダイレクトオフセット印刷用原版を用いることにより、非画像部が地汚れしにくく、再印刷時のヤレ紙が少ない印刷版が得られる。また、印刷時にアルカリ現像や湿し水現像をする必要が全くないため、取り扱いの容易な印刷版とすることができる。

Claims (5)

  1. 基板上に直接又は他の層を介して感光性樹脂層が形成されたオフセット印刷版において、該感光性樹脂層表面が、X線光電子分光分析法により測定されるフッ素原子を0.5原子%以上有していることを特徴とするダイレクトオフセット印刷用原版。
  2. 前記感光性樹脂層が、親水性ポリマー、エマルションを形成したポリマー、波長700〜1200nmの範囲内に吸収を持つ光吸収剤、架橋剤及び親水性添加剤を混合して得られる感光性樹脂組成物からなり、少なくともその表面が親水性であることを特徴とする請求項1に記載のダイレクトオフセット印刷用原版。
  3. 前記の感光性樹脂層がパーフルオロアルキル基を持つ添加剤を含有することを特徴とする請求項2に記載のダイレクトオフセット印刷用原版。
  4. 波長700〜1200nmの範囲内のレーザー照射によって感光性樹脂層の親水性が親油性に変化することを特徴とする請求項2又は3に記載のダイレクトオフセット印刷用原版。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のダイレクトオフセット印刷用原版の感光性樹脂層に、波長700〜1200nmの範囲内のレーザーを照射後、現像を行うことなく画像部と非画像部を形成したダイレクトオフセット印刷版。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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