JP2005014332A - 積層体とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】少なくとも2層からなる積層体において、CNT成分が極めて均一に微分散されたマトリックス層を有する積層体を提供すること。
【解決手段】少なくともA層とB層の2層で構成され、該A層が少なくとも多糖類とカーボンナノチューブを含む積層体であり、多糖類としてはヘミセルロース類等のセルロース系多糖類が好ましく用いられ、また、B層には基材フィルムとして熱可塑性樹脂フィルムが好ましく用いられる。この積層体は、多糖類とカーボンナノチューブを含む塗液を、熱可塑性樹脂フィルムの上に塗布し乾燥することにより製造することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくともA層とB層の2層で構成され、該A層が少なくとも多糖類とカーボンナノチューブを含む積層体であり、多糖類としてはヘミセルロース類等のセルロース系多糖類が好ましく用いられ、また、B層には基材フィルムとして熱可塑性樹脂フィルムが好ましく用いられる。この積層体は、多糖類とカーボンナノチューブを含む塗液を、熱可塑性樹脂フィルムの上に塗布し乾燥することにより製造することができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーボンナノチューブ(以下、CNTと略す。)を用いてなる積層体に関するものであり、更に詳しくは、本発明は、マトリックス中にCNT成分が良好に微分散された層を有する積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、CNTを含有する材料を用いて、帯電防止性、導電性、熱伝導性および電磁波シールド性等の機能を有する材料の開発が盛んに行われている。例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルまたはポリイミド等の有機ポリマー、あるいはガラスやセラミックス材料等の無機ポリマーなどをマトリックスとして用い、これらのマトリックス中にCNTを分散させることによって、帯電防止性、導電性、熱伝導性および電磁波シールド性等の機能を有する複合材およびこの複合材料を積層した積層体に関する検討が数多く行われている。
【0003】
カーボンナノチューブには、1つのグラフェン層からなる単層ナノチューブや、複数のグラフェン層から構成される多層ナノチューブなどがあるが、アスペクト比が極めて大きく、極めて直径が細いという構造上の特性を生かすためには、マトリックス中に極めて高いレベルで微分散、究極的には単分散させる必要がある。これによってマトリックス中への添加量が極めて少ない場合でも高い機能を発現することが期待される。
【0004】
マトリックス中にCNTを微分散させるためには、1)溶融混練によるマトリックス樹脂への分散、2)各種バインダーポリマーあるいは分散剤を用いた溶液への分散、3)CNT合成段階での凝集抑制、などの方法があるが、未だCNTをマトリックス中に十分に微分散させた材料用いた積層体および、CNTを十分に微分散させたコーティング剤組成物は提案されていない。
【0005】
例えば、熱可塑性樹脂中に導電性粒子とCNTを分散してなる500mΩ・cm以下の体積抵抗値を有する導電性樹脂組成物が提案されているが(特許文献1参照。)、熱可塑性樹脂中でのCNT分散性は必ずしも高くなく導電性は導電性粒子の存在により達成されている。
【0006】
また、オルガノシロキサン、セラミックス粒子、ペルヒドロポリシラザン、あるいは金属酸化物+エポキシ樹脂などを含む溶液にCNTを分散させることも提案されているが(特許文献2参照。)、分散状態は必ずしも良好なものではない。
【0007】
また、低粘度の分散媒にCNTを分散させた高粘度分散液から、前記分散媒を除去することで、CNTの凝集をコントロールしてネットワークを形成させることを特徴とするCNT構造体の製造方法が提案されているが(特許文献3参照。)、この製造方法でもCNTの分散状態は必ずしも十分ではない。
【0008】
【特許文献1】
特開2003−034751号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2000−26760号公報
【0010】
【特許文献3】
特開2002−346996号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、このような従来技術の欠点を改良し、CNT成分が微分散されたマトリックス層を有する積層体を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、CNT成分が極めて均一に微分散されたマトリックス層を有する積層体について鋭意検討した結果、少なくともA層とB層の2層で構成され、該A層が少なくとも多糖類とカーボンナノチューブを含むことを特徴とする積層体を発明するに至った。
【0013】
本発明の積層体において、B層としては、ポリエステルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムが好適に用いられる。
【0014】
また、本発明の積層体は、多糖類とカーボンナノチューブを含む塗液を熱可塑性樹脂フィルムの上に塗布し乾燥することにより製造することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の積層体について詳しく説明する。
【0016】
本発明の積層体は、少なくともA層とB層の2層から構成され、B層の上に少なくとも多糖類とカーボンナノチューブを含むA層が設けられた基本構成を有している。
【0017】
本発明においてB層に用いられる材料は特に限定されるものではないが、加工性の観点から熱可塑性樹脂フィルムを用いることが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムおよびポリフェニレンスルフィドフィルムなどが挙げられるが、その中でも機械的特性、寸法安定性、耐熱性、透明性および電気絶縁性などに優れた性質を有するポリエステルフィルムが特に好ましく用いられる。
【0018】
好ましいポリエステルとしては、特に限定しないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリプロピレンナフタレートなどが挙げられ、これらの2種以上が混合されたものであってもよい。また、これらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたものであってもよいが、この場合は結晶配向が完了したポリエステルフィルムにおいて、その結晶化度が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上のものが好ましい。結晶化度が25%未満の場合には、寸法安定性や機械的強度が不十分となりやすい。 また、ポリエステルフィルムは、内層と表層の2層以上の複合体フィルムであっても良い。複合体フィルムとしては、例えば、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有させた層を設けた複合体フィルム、内層部に粗大粒子を有し、表層部に微細粒子を含有させた積層体フィルム、および内層部が微細な気泡を含有した層であって表層部は実質的に気泡を含有しない複合体フィルムなどが挙げられる。また、上記複合体フィルムは、内層部と表層部が異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。
【0019】
上述したポリエステルを使用する場合には、その極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gである。
【0020】
本発明においてB層として用いられる熱可塑性樹脂フィルムは、その上にA層が設けられた状態では二軸配向されたものが好ましい。二軸配向しているとは、未延伸すなわち結晶配向が完了する前の熱可塑性フィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ2.5〜5.0倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0021】
熱可塑性フィルムが二軸配向していない場合には、積層体の熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が不十分であったり、平面性の悪いものとなるので好ましくない。
【0022】
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは特に限定されるものではなく、本発明の積層体が使用される用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは1〜500μm、より好ましくは5〜300μm、更に好ましくは20〜300μmである。また、得られた積層体を各種の方法で貼り合わせて用いることもできる。
【0023】
本発明の積層体において、A層ではCNT分散成分として多糖類が用いられる。CNTの分散成分として多糖類を用いることによって、A層中でのCNTの分散性を飛躍的に向上させることができる。
【0024】
多糖類としては、水あるいは有機溶剤に溶解可能なものが好ましく適用される。多糖類としては、例えば、セルロース系多糖類、でんぷん類および天然ガム類などを挙げることができる。セルロース系多糖類としては セルロースを修飾して可溶化したものの他、植物より抽出される各種ヘミセルロース類を挙げることができる。また、でんぷん類としては、各種植物より抽出されるでんぷん類の他、アミロースおよびアミロペクチンなどを例示することができる。
【0025】
具体的な例としては、でんぷん類では、デンプン(小麦デンプン、コーンスターチ、ばれいしょデンプン、かんしょデンプン、タピオカデンプン、小麦粉デンプンなど)、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン燐酸エステルナトリウム、酢酸デンプン、燐酸デンプン、カルボキシメチルスターチ、カルボキシエチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ、シアノエチル化デンプンおよびアミロース、アミロペクチンなどがあり、セルロース系多糖類では、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、各種ヘミセルロース(分岐構造を有するセルロース。植物の主要成分のひとつであり、例えばトロロアオイ、ノリウツギなどから抽出される粘液に含まれる)などの他、アルギン酸、アルギン酸ソーダ、ローカストビーンガム、グアルガム、カラニンゲル、寒天ゲル、アラビアガム、トラガントガム、カラギーナン、フコイダン、フノリ、ラミナラン、グルコマンナンなどの植物系多糖類、アエロモナスガム、キサンタンガム、デキストラン、納豆菌ガム、プルラン、ラムザンガムおよびレバンなどの微生物系多糖類などを挙げることができる。
【0026】
このような多糖類の中でもメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒトロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよび各種ヘミセルロース(トロロアオイ、ノリウツギ由来成分などに含まれる分岐型セルロース)などのセルロース系多糖類が好ましい例として挙げられ、更に各種ヘミセルロースが特に好ましいものとして例示することができる。
【0027】
本発明における多糖類の使用割合は、もうひとつのA層必須成分であるCNT成分100重量部に対して10〜100,000重量部が好ましく、より好ましくは50〜10,000重量部、更に好ましくは100〜10,000重量部である。 上記多糖類の使用割合が10重量部未満の場合には、CNTの分散性が満足でないレベルとなる場合があり、また、その量が100,000重量部を超えても分散効果の向上が見られない。
【0028】
本発明の積層体のA層中には必須成分としてCNT成分が含まれる。
【0029】
CNTは、繊維直径(D)が1〜1,000nm程度、長さ(L)が0.1〜1,000μm程度、L/Dが10〜1,000程度という大きなアスペクト比を有する径の細長い炭素からなるチューブ状の炭素化合物であり、種々の方法によって製造される。
【0030】
CNTの製法としては、アーク放電法、レーザー蒸着法および触媒化学気相法(CVD)法などが知られており、非特許文献(「カーボンナノチューブの基礎」、コロナ社発行、斎藤弥八、板東俊治共著)などに詳細が記載されている。特に限定されないが、その中でも、CVD法、特に熱CVD法が気相で連続生産できるため工程がスムーズに進むので好ましい製法である。その場合、600℃〜1,200℃の高温で触媒と炭素源を接触させる方法で触媒を連続的に供給すれば、連続的にCNTを回収することが出来る。
【0031】
CNTには、単層CNTと多層CNTの2種類がある。単層CNTは、1枚のグラフェン(単原子層の炭素六角網面)が円筒状に閉じた単原子層厚さの単層チューブである。本発明に用いる場合、単層チューブの方がカーボン繊維本数が1014本/gと多く、少量で種々の機能が発現できる可能性があることから好ましい態様である。
【0032】
具体的なCNTとしては、ハイペリオン(Hyperion)社製の(登録商標)グラファイト フィブリル(Graphite fibril)、昭和電工(株)社製の(登録商標)ベイパー グロウン カーボン ファイバー(VaporGrown Carbon Fiber)、更には、ASISH社製の(商品名)ピログラフ III(Pyrograf III)などがある。
【0033】
単層CNTは、種々の方法で溶液中に分散させたり溶解させたりすることができるが、本発明では多糖類を含む溶液中での極めて優れた分散性を発現させるために、CNT表面を修飾することが好ましい。しかしながら、単層CNT表面の修飾の程度を過度に上げた場合、抵抗値などの電気特性や機械特性を損なうことがあるため、この点を考慮すると修飾の程度は最小限にするのが好ましい。本発明ではCNT分散性に優れる多糖類を用いているため、修飾の程度の低いCNTを比較的良好に微分散させることができる。
【0034】
また、多層CNTは表面修飾程度を上げて極めて良好な微分散性を保ちつつ、CNTとしての種々の特性を発現することが出来る好ましい態様である。多層CNTは最表面の修飾の程度が高くても内部のグラファイト層はそのまま残っており、また電子はグラファイトの層間を飛び越えながら移動できるため、抵抗値などの電気特性を良好に維持することができる。また、機械強度も表面修飾の影響を受けにくい。
【0035】
表面修飾したCNTとして、CNT外表面に少なくとも1種類以上の官能基を有するCNTが例示される。官能基の種類は特に限定されないが、例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホン基およびエーテル基などを例示することができる。CNTを表面修飾する方法として、例えば、プラズマ処理が好ましく例示される。プラズマ処理方法は特に限定されないが、例えば、公知の低温プラズマ処理があり、これは処理空間内にCNTと処理するガスを供給した状態で高電圧を印加して発生するプラズマによりCNTを処理する方法である。プラズマ発生ガスは特に限定されないが、有機ガスと無機ガスが目的に応じ単独あるいは混合されて用いられる。プラズマ発生ガスとしては、例えば、酸素、窒素、水素、アンモニア、メタン、エチレンおよび四フッ化炭素など挙げられる。また、処理装置は特に限定されるものではなく、公知の内部電極方式または外部電極方式の処理装置を使用することができるが、電極の汚染のない点から外部電極方式の処理装置が好ましい。処理圧力、電源周波数および処理能力などの条件は特に限定されるものではなく、目的に応じ好ましく選定すればよい。
【0036】
本発明では、プラズマ処理のうち、酸素ガスプラズマ処理が好ましく適用できる。この理由は明らかでないが、以下のような現象が発生していると推測される。プラズマとは、荷電粒子を含む気体で、荷電粒子がCNTと衝突することにより炭素−炭素の結合が切れることによって処理される、あるいは炭化水素がデポジットされることにより処理される。プラズマ処理により、炭素−炭素結合が切れた場合には、酸素と接触することによりその部分にカルボキシル基などの官能基が生成すると考えられる。CNT表面にカルボキシル基が存在することで、隣接するこれと別のCNT表面に存在するCNTと反発し合うようになり、絡まっていたCNTが解れ、マトリックス成分への分散性が更に良好になると考えられる。 また、酸素ガスプラズマ処理が好ましいもうひとつの理由は、通常のCNTはアモルファスカーボンなどが表面に付着しており、そのアモルファスカーボン成分を酸化して二酸化炭素にして除去することができ、CNTの親水化などの修飾だけでなく、同時に精製もできるからである。
【0037】
酸素ガスプラズマ処理の条件は、装置や放電形態によって異なるが、外部放電方式の場合、5〜100Paが好ましい。また、プラズマ処理中に、CNTをかき混ぜることがより好ましい。CNTは、通常CNT同士で絡まり合った固まりで構成された粉末である。粉末試料を静置状態でプラズマ処理する場合、粉末全体にプラズマが行き渡らない欠点があるが、プラズマ処理中にCNTをかき混ぜることによってCNT全体にプラズマ処理ができるため、かき混ぜるのは好ましい態様である。かき混ぜるとは、ひっくり返したり攪拌したりすることを言い、均一にプラズマ処理するために処理中に材料を動かすことを指す。最も簡単には、プラズマ処理した後、一度取り出してかき混ぜて再度プラズマ処理をする。好ましくは、かき混ぜながらプラズマ処理する。
【0038】
本発明において、A層へのCNTの添加量は、通常A層総重量に対して0.001〜50重量%添加され、好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.1〜10重量%添加される。添加量が0.001重量%より少ない場合、CNTの添加効果が得られ難く、また50重量%より多い場合CNTの微分散性が悪化する他、経済的見地からしても好ましくない。
【0039】
本発明の積層体のA層中に、他の成分を配合することができる。例えば、本発明の積層体のA層中に、公知の接着成分を添加することによって、A層とB層との接着性を極めて優れたものにすることができる。このような接着成分としては特に限定されるものではなく、メラミン系化合物、エポキシ系化合物および尿素系化合物などを用いることが可能である。
【0040】
メラミン系化合物としては、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコールあるいはイソプロピルアルコール等を反応させてエーテル化した化合物およびそれらの混合物が好ましい。メチロールメアミン誘導体としては、例えば、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミンおよびヘキサメチロールメラミンなどが挙げられる。
【0041】
また、エポキシ系化合物としては、具体的にはポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物およびモノエポキシ化合物などが挙げられ、ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトトール、ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテルおよびトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなどが挙げられ、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられ、さらにモノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルおよびフェニルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0042】
また、尿素系化合物としては、例えば、ジメチロール尿素、ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールプロピレン尿素、テトラメチロールアセチレン尿素および4−メトキシ−5−ジメチルプロピレン尿素ジメチロールなどが挙げられる。
【0043】
本発明の効果が損なわれない範囲で各種接着成分を配合することができるが、A層総重量に対して0.1〜10重量%程度が好ましい添加量である。
【0044】
本発明のA層にはマトリックス成分として各種ポリマーを添加することができる。このようなポリマーは、A層に機械強度、耐薬品性、耐候性、基材への密着性およびその他の機能を付与するものであり、例えば、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系およびアクリル系などの汎用ポリマーを用いることができる。
【0045】
その他のA層の改質剤として、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、染料、顔料および安定剤などを用いることができ、これらは本発明の効果を損なわない範囲内でA層を構成する塗布層の組成物成分として使用され、用途に応じてA層の特性を改良することができる。
【0046】
本発明におけるA層の厚さは用途に応じて決定すればよいが、通常0.01μm〜1,000μmが好ましく、より好ましくは0.05μm〜100μmであり、更に好ましくは0.05〜20μmである。A層の厚さが0.01μm未満の場合には、A層の機能が十分に発現しにくく、A層の強度面でも問題があり、1000μmを超える場合には経済的見地から好ましくない。また、B層の厚みは用途によって決定されるものであるが、通常1〜500μm程度であることがこのましい。
【0047】
本発明の積層体の構成は少なくともA層とB層から構成されるものであるが、このような2層構成(A/B)に限定されるものではなく、例えば、A/B/A、B/A/Bのような3層構成、あるいは4層以上の複数層構成を適用することができる。
【0048】
また、本発明の積層体を、A層を設けたのとは反対面に各種粘着剤を用いて相手材と貼り合わせ、該相手材にA層の各種機能を付与して用いることもできる。このとき用いられる粘着剤としては、2つの物体をその粘着作用により接着させる接着剤であれば特に限定されず、ゴム系、アクリル系、シリコーン系およびポリビニルエーテル系などからなる接着剤を用いることができる。中でも、ゴム系の接着剤が一般的であり、シリコーン系接着剤は耐熱性がよく、フッ素樹脂などにも粘着するが価格が高いという欠点がある。アクリル系接着剤は耐熱性もあり、粘着力も大きく、ゴム系のような酸化劣化がなく好ましく用いられる。
【0049】
次に、本発明の積層体の製造方法に関し、B層としての熱可塑性樹脂フィルムに、A層としてCNTと多糖類を含む塗液をコーティングする製造プロセスについて説明する。
【0050】
本発明では、延伸処理により結晶化したフィルムにCNT成分を含む塗剤を塗布してA層を設けるオフラインコーティングを適用することもできるが、結晶化前のフィルムにCNT成分を含む塗液を塗布し、フィルムを延伸して結晶化した後、塗液の乾燥をさせる方法(所謂インラインコーティング)が好ましく適用される。
【0051】
オフライン製造プロセスは、公知の方法で製造した熱可塑性樹脂フィルムに、CNTと多糖類を含む塗液を塗布し溶媒乾燥を行うことにより、本発明の積層体を得ることができる。
【0052】
CNT成分をを含む塗液の塗布手段としては、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法およびスプレーコート法などを用いることができる。各々の方式にはそれぞれ特徴があるので、積層体の要求特性や使用用途などにより、塗布方法を適宜選択するとよい。
【0053】
インライン製造プロセスの一例を挙げると次のようになる。公知の方法で製造された熱可塑性樹脂原料を押出機に供給して溶融混練し、スリット状の口金から押出してシート状に成形し、未延伸のフィルムを作製する。次に、該未延伸フィルムを加熱したロール群に導き、長手方向に延伸して1軸延伸フィルムを得る。次いで、この1軸延伸フィルムの表面に、CNT成分をを含む塗液を上記に示した方法により塗布する。続いて長手方向に延伸した1軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、加熱雰囲気中で長手方向に垂直な方向に横延伸する。このようして得られた二軸延伸フィルムに必要に応じてを熱処理を行ない、均一に徐冷することにより積層体を得ることができる。
【0054】
本発明におけるA層を形成するために用いられるCNT成分を含有する塗液に用いる溶媒は特に限定されるものではなく、水溶液、水系溶媒および有機系溶媒のいずれも用いることができる。
【0055】
有機溶剤としては、沸点が50〜250℃の有機溶剤が、塗工時の作業性や硬化前後の乾燥性の点から用いやすい。具体的な溶剤の例としては、メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトンなどのケトン系溶剤、N−メチル−2−ピロリドンなど双極性非プロトン溶剤などを用いることができる。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0056】
本発明のA層を形成するためのCNTと多糖類を含む塗液の調製方法は特に限定されるものではなく、機械的分散方法や超音波法のような通常の方法を用いて行うことができる。
【0057】
機械的分散方法としては、CNT及び多糖類を含有する溶液をホモミキサー、ボールミル、振動ミル、ヘンシェルミキサーおよびオープンロールミキサーなどの通常の分散機で分散することができる。
【0058】
最後に、本発明の積層体の製造方法について、基材フィルム;ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称する)の場合を例にして具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
押出機に基材フィルムの原料としてポリエステル樹脂(PET)チップを十分に真空乾燥したものを供給し、PET樹脂が溶融する温度以上で、PET樹脂が分解する温度以下の温度で溶融押出し、スリット状の口金から押出してシート状に成形する。この溶融押出しされたシート状物を、表面温度10〜60℃に冷却されたドラム上で静電気で密着冷却固化し未延伸のフィルムを作製する。次に、該未延伸フィルムを60〜120℃に加熱したロール群に導き、長手方向に2〜5倍延伸し、20〜30℃のロール群で冷却する。次いで、この1軸延伸フィルムの表面に、CNT成分含有塗液を塗布する。続いて長手方向に延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、90〜140℃に加熱した雰囲気中で長手方向に垂直な方向に横延伸する。延伸倍率は、縦、横それぞれ2〜5倍程度に延伸する。このようして得られた二軸延伸フィルムに、平面性と寸法安定性を付与するために、テンター内で150〜240℃で0〜10%弛緩を与えつつ1〜60秒間の熱固定を行ない、均一に徐冷することによりCNT含有層を積層した積層体を得ることができる。
【0060】
このようにして得られた積層体は、CNTの分散性に極めて優れ、CNT添加量を微少にしても帯電防止効果、電磁波遮蔽効果などの添加効果を発現させることができるため、広範な用途に使用することができる。用途としては、例えば、タッチパネル、フィルム、ガラスや金属板に貼合わせるディスプレイ用(例えば、反射防止フィルムや電子ペーパーなど)、電子白板やホワイトボードなどの表示用、ラベル、シール、OHP用、カード、宅配便伝票、プリンタ用受像紙、電子部品の搬送、保管、実装に使用されるキャリアテープおよびトレーなどに好適に用いることができる。
【0061】
<特性の測定方法および効果の評価方法>
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
(CNT分散性の評価)
CNT含有塗布層を有する積層体の顕微鏡写真を観察することにより、塗布層中のCNTの分散性を評価した。
【0062】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0063】
<用いたCNT>
下記のCNTを用いた。
【0064】
気相法炭素繊維 ”VGCF”(登録商標)(昭和電工(株)社製の多層CNT)
<塗剤の調製>
(塗剤1)
精製水95重量部、上述のCNTを0.1重量部、メチルヒドロキシプロピルセルロース5重量部を混合し、ホモミキサー(T.Kホモミクサー model M;特殊機化工業(株)社製;混合条件 5000rpm×5min)にて混合して、塗剤1を調製した。
【0065】
(塗剤2)
精製水95重量部、上述のCNTを0.1重量部、ヒドロキシエチルセルロース5重量部を混合し、塗剤1と同様にしてホモミキサーにて混合して、塗剤2を調製した。
【0066】
(塗剤3)
精製水95重量部、上述のCNTを0.1重量部、カルボキシメチルセルロース5重量部を混合し、塗剤1と同様にしてホモミキサーにて混合して、塗剤3を調製した。
【0067】
(塗剤4)
上述のCNTを0.1重量部、トロロアオイ水溶液(トロロアオイを精製水に3日間浸せき後、固形分4重量%に調製したもの)100重量部を混合し、塗剤1と同様にしてホモミキサーにて混合して、塗剤4を調製した。
【0068】
(塗剤5)
上述のCNTを0.1重量部、ノリウツギ水溶液(ノリウツギを精製水に3日間浸せき後、固形分4重量%に調製したもの)100重量部を混合し、塗剤1と同様にしてホモミキサーにて混合して、塗剤5を調製した。
【0069】
(塗剤6)
上述のCNTを0.1重量部、ポリアクリル酸ナトリウム水溶液(”アクアリック”(登録商標)DL40、固形分40wt%、日本触媒(株)社製)10重量部、精製水90重量部を混合し、塗剤1と同様にしてホモミキサーにて混合
して、塗剤6を調製した。
【0070】
(塗剤7)
上述のCNTを0.1重量部、精製水100重量部を混合し、塗剤1と同様にしてホモミキサーにて混合して、塗剤7を調製した。
【0071】
(実施例1〜5)
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%、平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005重量%含有するポリエチレンテレフタレート(以下PETという)(極限粘度0.63dl/g)チップを180℃で十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、常法により285℃で溶融してTダイ複層口金に導入して得られた未延伸積層シートを、90℃に加熱したロール群で長手方向に3.5倍延伸し、1軸延伸フィルムを得た。この1軸延伸フィルムの片面に、上記のようにして調整した塗剤1〜5を、それぞれメイヤーバー方式で5μm厚に塗布した。塗剤を塗布された1軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しつつ90℃の予熱ゾーンに導き、引き続き100℃の加熱ゾーンで幅方向に3.3倍延伸した。更に連続的に210℃の熱処理ゾーンで5秒間の熱処理を施し、基材フィルムであるPETフィルムの結晶配向を完了させることによって、PETフィルム上にCNT含有層を有する積層体を得た。これら積層フィルム(積層体)は、厚みが約50μm、CNT含有層厚みが約0.2μmの透明性に優れたものであった。この積層体は優れたCNT分散性を示した。結果を表1と図1〜5に示す。
【0072】
(比較例1〜2)
実施例1の塗剤1〜5の代わりに、上記のようにして調整した塗剤6〜7を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて積層フィルム(積層体)を得た。表1および図6〜7に示したように、これらの積層体のCNT分散性は不良であった。
【0073】
【表1】
【0074】
【発明の効果】
本発明により、CNT成分が極めて均一に微分散されたマトリックス層を有する積層体が得られる。本発明を用いることによって少量のCNT成分の添加により積層体の電気特性(帯電防止性、導電性、熱伝導性および電磁波シールド性等)、機械特性(弾性率、表面硬度など)などを向上させることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で得られた積層体のCNT含有塗布層の顕微鏡写真である。
【図2】図2は、実施例2で得られた積層体のCNT含有塗布層の顕微鏡写真である。
【図3】図3は、実施例3で得られた積層体のCNT含有塗布層の顕微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例4で得られた積層体のCNT含有塗布層の顕微鏡写真である。
【図5】図5は、実施例5で得られた積層体のCNT含有塗布層の顕微鏡写真である。
【図6】図6は、比較例1で得られた積層体のCNT含有塗布層の顕微鏡写真である。
【図7】図7は、比較例2で得られた積層体のCNT含有塗布層の顕微鏡写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーボンナノチューブ(以下、CNTと略す。)を用いてなる積層体に関するものであり、更に詳しくは、本発明は、マトリックス中にCNT成分が良好に微分散された層を有する積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、CNTを含有する材料を用いて、帯電防止性、導電性、熱伝導性および電磁波シールド性等の機能を有する材料の開発が盛んに行われている。例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルまたはポリイミド等の有機ポリマー、あるいはガラスやセラミックス材料等の無機ポリマーなどをマトリックスとして用い、これらのマトリックス中にCNTを分散させることによって、帯電防止性、導電性、熱伝導性および電磁波シールド性等の機能を有する複合材およびこの複合材料を積層した積層体に関する検討が数多く行われている。
【0003】
カーボンナノチューブには、1つのグラフェン層からなる単層ナノチューブや、複数のグラフェン層から構成される多層ナノチューブなどがあるが、アスペクト比が極めて大きく、極めて直径が細いという構造上の特性を生かすためには、マトリックス中に極めて高いレベルで微分散、究極的には単分散させる必要がある。これによってマトリックス中への添加量が極めて少ない場合でも高い機能を発現することが期待される。
【0004】
マトリックス中にCNTを微分散させるためには、1)溶融混練によるマトリックス樹脂への分散、2)各種バインダーポリマーあるいは分散剤を用いた溶液への分散、3)CNT合成段階での凝集抑制、などの方法があるが、未だCNTをマトリックス中に十分に微分散させた材料用いた積層体および、CNTを十分に微分散させたコーティング剤組成物は提案されていない。
【0005】
例えば、熱可塑性樹脂中に導電性粒子とCNTを分散してなる500mΩ・cm以下の体積抵抗値を有する導電性樹脂組成物が提案されているが(特許文献1参照。)、熱可塑性樹脂中でのCNT分散性は必ずしも高くなく導電性は導電性粒子の存在により達成されている。
【0006】
また、オルガノシロキサン、セラミックス粒子、ペルヒドロポリシラザン、あるいは金属酸化物+エポキシ樹脂などを含む溶液にCNTを分散させることも提案されているが(特許文献2参照。)、分散状態は必ずしも良好なものではない。
【0007】
また、低粘度の分散媒にCNTを分散させた高粘度分散液から、前記分散媒を除去することで、CNTの凝集をコントロールしてネットワークを形成させることを特徴とするCNT構造体の製造方法が提案されているが(特許文献3参照。)、この製造方法でもCNTの分散状態は必ずしも十分ではない。
【0008】
【特許文献1】
特開2003−034751号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2000−26760号公報
【0010】
【特許文献3】
特開2002−346996号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、このような従来技術の欠点を改良し、CNT成分が微分散されたマトリックス層を有する積層体を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、CNT成分が極めて均一に微分散されたマトリックス層を有する積層体について鋭意検討した結果、少なくともA層とB層の2層で構成され、該A層が少なくとも多糖類とカーボンナノチューブを含むことを特徴とする積層体を発明するに至った。
【0013】
本発明の積層体において、B層としては、ポリエステルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムが好適に用いられる。
【0014】
また、本発明の積層体は、多糖類とカーボンナノチューブを含む塗液を熱可塑性樹脂フィルムの上に塗布し乾燥することにより製造することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の積層体について詳しく説明する。
【0016】
本発明の積層体は、少なくともA層とB層の2層から構成され、B層の上に少なくとも多糖類とカーボンナノチューブを含むA層が設けられた基本構成を有している。
【0017】
本発明においてB層に用いられる材料は特に限定されるものではないが、加工性の観点から熱可塑性樹脂フィルムを用いることが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムおよびポリフェニレンスルフィドフィルムなどが挙げられるが、その中でも機械的特性、寸法安定性、耐熱性、透明性および電気絶縁性などに優れた性質を有するポリエステルフィルムが特に好ましく用いられる。
【0018】
好ましいポリエステルとしては、特に限定しないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリプロピレンナフタレートなどが挙げられ、これらの2種以上が混合されたものであってもよい。また、これらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたものであってもよいが、この場合は結晶配向が完了したポリエステルフィルムにおいて、その結晶化度が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上のものが好ましい。結晶化度が25%未満の場合には、寸法安定性や機械的強度が不十分となりやすい。 また、ポリエステルフィルムは、内層と表層の2層以上の複合体フィルムであっても良い。複合体フィルムとしては、例えば、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有させた層を設けた複合体フィルム、内層部に粗大粒子を有し、表層部に微細粒子を含有させた積層体フィルム、および内層部が微細な気泡を含有した層であって表層部は実質的に気泡を含有しない複合体フィルムなどが挙げられる。また、上記複合体フィルムは、内層部と表層部が異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。
【0019】
上述したポリエステルを使用する場合には、その極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gである。
【0020】
本発明においてB層として用いられる熱可塑性樹脂フィルムは、その上にA層が設けられた状態では二軸配向されたものが好ましい。二軸配向しているとは、未延伸すなわち結晶配向が完了する前の熱可塑性フィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ2.5〜5.0倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0021】
熱可塑性フィルムが二軸配向していない場合には、積層体の熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が不十分であったり、平面性の悪いものとなるので好ましくない。
【0022】
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは特に限定されるものではなく、本発明の積層体が使用される用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは1〜500μm、より好ましくは5〜300μm、更に好ましくは20〜300μmである。また、得られた積層体を各種の方法で貼り合わせて用いることもできる。
【0023】
本発明の積層体において、A層ではCNT分散成分として多糖類が用いられる。CNTの分散成分として多糖類を用いることによって、A層中でのCNTの分散性を飛躍的に向上させることができる。
【0024】
多糖類としては、水あるいは有機溶剤に溶解可能なものが好ましく適用される。多糖類としては、例えば、セルロース系多糖類、でんぷん類および天然ガム類などを挙げることができる。セルロース系多糖類としては セルロースを修飾して可溶化したものの他、植物より抽出される各種ヘミセルロース類を挙げることができる。また、でんぷん類としては、各種植物より抽出されるでんぷん類の他、アミロースおよびアミロペクチンなどを例示することができる。
【0025】
具体的な例としては、でんぷん類では、デンプン(小麦デンプン、コーンスターチ、ばれいしょデンプン、かんしょデンプン、タピオカデンプン、小麦粉デンプンなど)、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン燐酸エステルナトリウム、酢酸デンプン、燐酸デンプン、カルボキシメチルスターチ、カルボキシエチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ、シアノエチル化デンプンおよびアミロース、アミロペクチンなどがあり、セルロース系多糖類では、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、各種ヘミセルロース(分岐構造を有するセルロース。植物の主要成分のひとつであり、例えばトロロアオイ、ノリウツギなどから抽出される粘液に含まれる)などの他、アルギン酸、アルギン酸ソーダ、ローカストビーンガム、グアルガム、カラニンゲル、寒天ゲル、アラビアガム、トラガントガム、カラギーナン、フコイダン、フノリ、ラミナラン、グルコマンナンなどの植物系多糖類、アエロモナスガム、キサンタンガム、デキストラン、納豆菌ガム、プルラン、ラムザンガムおよびレバンなどの微生物系多糖類などを挙げることができる。
【0026】
このような多糖類の中でもメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒトロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよび各種ヘミセルロース(トロロアオイ、ノリウツギ由来成分などに含まれる分岐型セルロース)などのセルロース系多糖類が好ましい例として挙げられ、更に各種ヘミセルロースが特に好ましいものとして例示することができる。
【0027】
本発明における多糖類の使用割合は、もうひとつのA層必須成分であるCNT成分100重量部に対して10〜100,000重量部が好ましく、より好ましくは50〜10,000重量部、更に好ましくは100〜10,000重量部である。 上記多糖類の使用割合が10重量部未満の場合には、CNTの分散性が満足でないレベルとなる場合があり、また、その量が100,000重量部を超えても分散効果の向上が見られない。
【0028】
本発明の積層体のA層中には必須成分としてCNT成分が含まれる。
【0029】
CNTは、繊維直径(D)が1〜1,000nm程度、長さ(L)が0.1〜1,000μm程度、L/Dが10〜1,000程度という大きなアスペクト比を有する径の細長い炭素からなるチューブ状の炭素化合物であり、種々の方法によって製造される。
【0030】
CNTの製法としては、アーク放電法、レーザー蒸着法および触媒化学気相法(CVD)法などが知られており、非特許文献(「カーボンナノチューブの基礎」、コロナ社発行、斎藤弥八、板東俊治共著)などに詳細が記載されている。特に限定されないが、その中でも、CVD法、特に熱CVD法が気相で連続生産できるため工程がスムーズに進むので好ましい製法である。その場合、600℃〜1,200℃の高温で触媒と炭素源を接触させる方法で触媒を連続的に供給すれば、連続的にCNTを回収することが出来る。
【0031】
CNTには、単層CNTと多層CNTの2種類がある。単層CNTは、1枚のグラフェン(単原子層の炭素六角網面)が円筒状に閉じた単原子層厚さの単層チューブである。本発明に用いる場合、単層チューブの方がカーボン繊維本数が1014本/gと多く、少量で種々の機能が発現できる可能性があることから好ましい態様である。
【0032】
具体的なCNTとしては、ハイペリオン(Hyperion)社製の(登録商標)グラファイト フィブリル(Graphite fibril)、昭和電工(株)社製の(登録商標)ベイパー グロウン カーボン ファイバー(VaporGrown Carbon Fiber)、更には、ASISH社製の(商品名)ピログラフ III(Pyrograf III)などがある。
【0033】
単層CNTは、種々の方法で溶液中に分散させたり溶解させたりすることができるが、本発明では多糖類を含む溶液中での極めて優れた分散性を発現させるために、CNT表面を修飾することが好ましい。しかしながら、単層CNT表面の修飾の程度を過度に上げた場合、抵抗値などの電気特性や機械特性を損なうことがあるため、この点を考慮すると修飾の程度は最小限にするのが好ましい。本発明ではCNT分散性に優れる多糖類を用いているため、修飾の程度の低いCNTを比較的良好に微分散させることができる。
【0034】
また、多層CNTは表面修飾程度を上げて極めて良好な微分散性を保ちつつ、CNTとしての種々の特性を発現することが出来る好ましい態様である。多層CNTは最表面の修飾の程度が高くても内部のグラファイト層はそのまま残っており、また電子はグラファイトの層間を飛び越えながら移動できるため、抵抗値などの電気特性を良好に維持することができる。また、機械強度も表面修飾の影響を受けにくい。
【0035】
表面修飾したCNTとして、CNT外表面に少なくとも1種類以上の官能基を有するCNTが例示される。官能基の種類は特に限定されないが、例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホン基およびエーテル基などを例示することができる。CNTを表面修飾する方法として、例えば、プラズマ処理が好ましく例示される。プラズマ処理方法は特に限定されないが、例えば、公知の低温プラズマ処理があり、これは処理空間内にCNTと処理するガスを供給した状態で高電圧を印加して発生するプラズマによりCNTを処理する方法である。プラズマ発生ガスは特に限定されないが、有機ガスと無機ガスが目的に応じ単独あるいは混合されて用いられる。プラズマ発生ガスとしては、例えば、酸素、窒素、水素、アンモニア、メタン、エチレンおよび四フッ化炭素など挙げられる。また、処理装置は特に限定されるものではなく、公知の内部電極方式または外部電極方式の処理装置を使用することができるが、電極の汚染のない点から外部電極方式の処理装置が好ましい。処理圧力、電源周波数および処理能力などの条件は特に限定されるものではなく、目的に応じ好ましく選定すればよい。
【0036】
本発明では、プラズマ処理のうち、酸素ガスプラズマ処理が好ましく適用できる。この理由は明らかでないが、以下のような現象が発生していると推測される。プラズマとは、荷電粒子を含む気体で、荷電粒子がCNTと衝突することにより炭素−炭素の結合が切れることによって処理される、あるいは炭化水素がデポジットされることにより処理される。プラズマ処理により、炭素−炭素結合が切れた場合には、酸素と接触することによりその部分にカルボキシル基などの官能基が生成すると考えられる。CNT表面にカルボキシル基が存在することで、隣接するこれと別のCNT表面に存在するCNTと反発し合うようになり、絡まっていたCNTが解れ、マトリックス成分への分散性が更に良好になると考えられる。 また、酸素ガスプラズマ処理が好ましいもうひとつの理由は、通常のCNTはアモルファスカーボンなどが表面に付着しており、そのアモルファスカーボン成分を酸化して二酸化炭素にして除去することができ、CNTの親水化などの修飾だけでなく、同時に精製もできるからである。
【0037】
酸素ガスプラズマ処理の条件は、装置や放電形態によって異なるが、外部放電方式の場合、5〜100Paが好ましい。また、プラズマ処理中に、CNTをかき混ぜることがより好ましい。CNTは、通常CNT同士で絡まり合った固まりで構成された粉末である。粉末試料を静置状態でプラズマ処理する場合、粉末全体にプラズマが行き渡らない欠点があるが、プラズマ処理中にCNTをかき混ぜることによってCNT全体にプラズマ処理ができるため、かき混ぜるのは好ましい態様である。かき混ぜるとは、ひっくり返したり攪拌したりすることを言い、均一にプラズマ処理するために処理中に材料を動かすことを指す。最も簡単には、プラズマ処理した後、一度取り出してかき混ぜて再度プラズマ処理をする。好ましくは、かき混ぜながらプラズマ処理する。
【0038】
本発明において、A層へのCNTの添加量は、通常A層総重量に対して0.001〜50重量%添加され、好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.1〜10重量%添加される。添加量が0.001重量%より少ない場合、CNTの添加効果が得られ難く、また50重量%より多い場合CNTの微分散性が悪化する他、経済的見地からしても好ましくない。
【0039】
本発明の積層体のA層中に、他の成分を配合することができる。例えば、本発明の積層体のA層中に、公知の接着成分を添加することによって、A層とB層との接着性を極めて優れたものにすることができる。このような接着成分としては特に限定されるものではなく、メラミン系化合物、エポキシ系化合物および尿素系化合物などを用いることが可能である。
【0040】
メラミン系化合物としては、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコールあるいはイソプロピルアルコール等を反応させてエーテル化した化合物およびそれらの混合物が好ましい。メチロールメアミン誘導体としては、例えば、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミンおよびヘキサメチロールメラミンなどが挙げられる。
【0041】
また、エポキシ系化合物としては、具体的にはポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物およびモノエポキシ化合物などが挙げられ、ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトトール、ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテルおよびトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなどが挙げられ、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられ、さらにモノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルおよびフェニルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0042】
また、尿素系化合物としては、例えば、ジメチロール尿素、ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールプロピレン尿素、テトラメチロールアセチレン尿素および4−メトキシ−5−ジメチルプロピレン尿素ジメチロールなどが挙げられる。
【0043】
本発明の効果が損なわれない範囲で各種接着成分を配合することができるが、A層総重量に対して0.1〜10重量%程度が好ましい添加量である。
【0044】
本発明のA層にはマトリックス成分として各種ポリマーを添加することができる。このようなポリマーは、A層に機械強度、耐薬品性、耐候性、基材への密着性およびその他の機能を付与するものであり、例えば、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系およびアクリル系などの汎用ポリマーを用いることができる。
【0045】
その他のA層の改質剤として、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、染料、顔料および安定剤などを用いることができ、これらは本発明の効果を損なわない範囲内でA層を構成する塗布層の組成物成分として使用され、用途に応じてA層の特性を改良することができる。
【0046】
本発明におけるA層の厚さは用途に応じて決定すればよいが、通常0.01μm〜1,000μmが好ましく、より好ましくは0.05μm〜100μmであり、更に好ましくは0.05〜20μmである。A層の厚さが0.01μm未満の場合には、A層の機能が十分に発現しにくく、A層の強度面でも問題があり、1000μmを超える場合には経済的見地から好ましくない。また、B層の厚みは用途によって決定されるものであるが、通常1〜500μm程度であることがこのましい。
【0047】
本発明の積層体の構成は少なくともA層とB層から構成されるものであるが、このような2層構成(A/B)に限定されるものではなく、例えば、A/B/A、B/A/Bのような3層構成、あるいは4層以上の複数層構成を適用することができる。
【0048】
また、本発明の積層体を、A層を設けたのとは反対面に各種粘着剤を用いて相手材と貼り合わせ、該相手材にA層の各種機能を付与して用いることもできる。このとき用いられる粘着剤としては、2つの物体をその粘着作用により接着させる接着剤であれば特に限定されず、ゴム系、アクリル系、シリコーン系およびポリビニルエーテル系などからなる接着剤を用いることができる。中でも、ゴム系の接着剤が一般的であり、シリコーン系接着剤は耐熱性がよく、フッ素樹脂などにも粘着するが価格が高いという欠点がある。アクリル系接着剤は耐熱性もあり、粘着力も大きく、ゴム系のような酸化劣化がなく好ましく用いられる。
【0049】
次に、本発明の積層体の製造方法に関し、B層としての熱可塑性樹脂フィルムに、A層としてCNTと多糖類を含む塗液をコーティングする製造プロセスについて説明する。
【0050】
本発明では、延伸処理により結晶化したフィルムにCNT成分を含む塗剤を塗布してA層を設けるオフラインコーティングを適用することもできるが、結晶化前のフィルムにCNT成分を含む塗液を塗布し、フィルムを延伸して結晶化した後、塗液の乾燥をさせる方法(所謂インラインコーティング)が好ましく適用される。
【0051】
オフライン製造プロセスは、公知の方法で製造した熱可塑性樹脂フィルムに、CNTと多糖類を含む塗液を塗布し溶媒乾燥を行うことにより、本発明の積層体を得ることができる。
【0052】
CNT成分をを含む塗液の塗布手段としては、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法およびスプレーコート法などを用いることができる。各々の方式にはそれぞれ特徴があるので、積層体の要求特性や使用用途などにより、塗布方法を適宜選択するとよい。
【0053】
インライン製造プロセスの一例を挙げると次のようになる。公知の方法で製造された熱可塑性樹脂原料を押出機に供給して溶融混練し、スリット状の口金から押出してシート状に成形し、未延伸のフィルムを作製する。次に、該未延伸フィルムを加熱したロール群に導き、長手方向に延伸して1軸延伸フィルムを得る。次いで、この1軸延伸フィルムの表面に、CNT成分をを含む塗液を上記に示した方法により塗布する。続いて長手方向に延伸した1軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、加熱雰囲気中で長手方向に垂直な方向に横延伸する。このようして得られた二軸延伸フィルムに必要に応じてを熱処理を行ない、均一に徐冷することにより積層体を得ることができる。
【0054】
本発明におけるA層を形成するために用いられるCNT成分を含有する塗液に用いる溶媒は特に限定されるものではなく、水溶液、水系溶媒および有機系溶媒のいずれも用いることができる。
【0055】
有機溶剤としては、沸点が50〜250℃の有機溶剤が、塗工時の作業性や硬化前後の乾燥性の点から用いやすい。具体的な溶剤の例としては、メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトンなどのケトン系溶剤、N−メチル−2−ピロリドンなど双極性非プロトン溶剤などを用いることができる。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0056】
本発明のA層を形成するためのCNTと多糖類を含む塗液の調製方法は特に限定されるものではなく、機械的分散方法や超音波法のような通常の方法を用いて行うことができる。
【0057】
機械的分散方法としては、CNT及び多糖類を含有する溶液をホモミキサー、ボールミル、振動ミル、ヘンシェルミキサーおよびオープンロールミキサーなどの通常の分散機で分散することができる。
【0058】
最後に、本発明の積層体の製造方法について、基材フィルム;ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称する)の場合を例にして具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
押出機に基材フィルムの原料としてポリエステル樹脂(PET)チップを十分に真空乾燥したものを供給し、PET樹脂が溶融する温度以上で、PET樹脂が分解する温度以下の温度で溶融押出し、スリット状の口金から押出してシート状に成形する。この溶融押出しされたシート状物を、表面温度10〜60℃に冷却されたドラム上で静電気で密着冷却固化し未延伸のフィルムを作製する。次に、該未延伸フィルムを60〜120℃に加熱したロール群に導き、長手方向に2〜5倍延伸し、20〜30℃のロール群で冷却する。次いで、この1軸延伸フィルムの表面に、CNT成分含有塗液を塗布する。続いて長手方向に延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、90〜140℃に加熱した雰囲気中で長手方向に垂直な方向に横延伸する。延伸倍率は、縦、横それぞれ2〜5倍程度に延伸する。このようして得られた二軸延伸フィルムに、平面性と寸法安定性を付与するために、テンター内で150〜240℃で0〜10%弛緩を与えつつ1〜60秒間の熱固定を行ない、均一に徐冷することによりCNT含有層を積層した積層体を得ることができる。
【0060】
このようにして得られた積層体は、CNTの分散性に極めて優れ、CNT添加量を微少にしても帯電防止効果、電磁波遮蔽効果などの添加効果を発現させることができるため、広範な用途に使用することができる。用途としては、例えば、タッチパネル、フィルム、ガラスや金属板に貼合わせるディスプレイ用(例えば、反射防止フィルムや電子ペーパーなど)、電子白板やホワイトボードなどの表示用、ラベル、シール、OHP用、カード、宅配便伝票、プリンタ用受像紙、電子部品の搬送、保管、実装に使用されるキャリアテープおよびトレーなどに好適に用いることができる。
【0061】
<特性の測定方法および効果の評価方法>
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
(CNT分散性の評価)
CNT含有塗布層を有する積層体の顕微鏡写真を観察することにより、塗布層中のCNTの分散性を評価した。
【0062】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0063】
<用いたCNT>
下記のCNTを用いた。
【0064】
気相法炭素繊維 ”VGCF”(登録商標)(昭和電工(株)社製の多層CNT)
<塗剤の調製>
(塗剤1)
精製水95重量部、上述のCNTを0.1重量部、メチルヒドロキシプロピルセルロース5重量部を混合し、ホモミキサー(T.Kホモミクサー model M;特殊機化工業(株)社製;混合条件 5000rpm×5min)にて混合して、塗剤1を調製した。
【0065】
(塗剤2)
精製水95重量部、上述のCNTを0.1重量部、ヒドロキシエチルセルロース5重量部を混合し、塗剤1と同様にしてホモミキサーにて混合して、塗剤2を調製した。
【0066】
(塗剤3)
精製水95重量部、上述のCNTを0.1重量部、カルボキシメチルセルロース5重量部を混合し、塗剤1と同様にしてホモミキサーにて混合して、塗剤3を調製した。
【0067】
(塗剤4)
上述のCNTを0.1重量部、トロロアオイ水溶液(トロロアオイを精製水に3日間浸せき後、固形分4重量%に調製したもの)100重量部を混合し、塗剤1と同様にしてホモミキサーにて混合して、塗剤4を調製した。
【0068】
(塗剤5)
上述のCNTを0.1重量部、ノリウツギ水溶液(ノリウツギを精製水に3日間浸せき後、固形分4重量%に調製したもの)100重量部を混合し、塗剤1と同様にしてホモミキサーにて混合して、塗剤5を調製した。
【0069】
(塗剤6)
上述のCNTを0.1重量部、ポリアクリル酸ナトリウム水溶液(”アクアリック”(登録商標)DL40、固形分40wt%、日本触媒(株)社製)10重量部、精製水90重量部を混合し、塗剤1と同様にしてホモミキサーにて混合
して、塗剤6を調製した。
【0070】
(塗剤7)
上述のCNTを0.1重量部、精製水100重量部を混合し、塗剤1と同様にしてホモミキサーにて混合して、塗剤7を調製した。
【0071】
(実施例1〜5)
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%、平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005重量%含有するポリエチレンテレフタレート(以下PETという)(極限粘度0.63dl/g)チップを180℃で十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、常法により285℃で溶融してTダイ複層口金に導入して得られた未延伸積層シートを、90℃に加熱したロール群で長手方向に3.5倍延伸し、1軸延伸フィルムを得た。この1軸延伸フィルムの片面に、上記のようにして調整した塗剤1〜5を、それぞれメイヤーバー方式で5μm厚に塗布した。塗剤を塗布された1軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しつつ90℃の予熱ゾーンに導き、引き続き100℃の加熱ゾーンで幅方向に3.3倍延伸した。更に連続的に210℃の熱処理ゾーンで5秒間の熱処理を施し、基材フィルムであるPETフィルムの結晶配向を完了させることによって、PETフィルム上にCNT含有層を有する積層体を得た。これら積層フィルム(積層体)は、厚みが約50μm、CNT含有層厚みが約0.2μmの透明性に優れたものであった。この積層体は優れたCNT分散性を示した。結果を表1と図1〜5に示す。
【0072】
(比較例1〜2)
実施例1の塗剤1〜5の代わりに、上記のようにして調整した塗剤6〜7を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて積層フィルム(積層体)を得た。表1および図6〜7に示したように、これらの積層体のCNT分散性は不良であった。
【0073】
【表1】
【0074】
【発明の効果】
本発明により、CNT成分が極めて均一に微分散されたマトリックス層を有する積層体が得られる。本発明を用いることによって少量のCNT成分の添加により積層体の電気特性(帯電防止性、導電性、熱伝導性および電磁波シールド性等)、機械特性(弾性率、表面硬度など)などを向上させることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で得られた積層体のCNT含有塗布層の顕微鏡写真である。
【図2】図2は、実施例2で得られた積層体のCNT含有塗布層の顕微鏡写真である。
【図3】図3は、実施例3で得られた積層体のCNT含有塗布層の顕微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例4で得られた積層体のCNT含有塗布層の顕微鏡写真である。
【図5】図5は、実施例5で得られた積層体のCNT含有塗布層の顕微鏡写真である。
【図6】図6は、比較例1で得られた積層体のCNT含有塗布層の顕微鏡写真である。
【図7】図7は、比較例2で得られた積層体のCNT含有塗布層の顕微鏡写真である。
Claims (7)
- 少なくともA層とB層の2層で構成され、該A層が少なくとも多糖類とカーボンナノチューブを含むことを特徴とする積層体。
- 多糖類がセルロース系多糖類である請求項1記載の積層体。
- セルロース系多糖類がヘミセルロース類である請求項2記載の積層体。
- ヘミセルロース類がトロロアオイまたはノリウツギから抽出される成分である請求項3記載の積層体。
- B層が熱可塑性樹脂フィルムである請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
- 熱可塑性樹脂フィルムがポリエステルフィルムである請求項5記載の積層体。
- 多糖類とカーボンナノチューブを含む塗液を、熱可塑性樹脂フィルムの上に塗布し乾燥することを特徴とする積層体の製造方法。
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