JP2018203969A - 電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液、及び電磁波遮蔽材料 - Google Patents

電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液、及び電磁波遮蔽材料 Download PDF

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Abstract

【課題】電磁波遮蔽性及び耐熱性に優れる電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を提供する。【解決手段】電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液は、カーボンナノチューブと、有機酸溶液とを含む。有機酸の分子量は、500〜1000000であってもよい。カーボンナノチューブと有機酸溶液とを含む電磁波遮蔽材料が提供される。該電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液が形成された電磁波遮蔽材料が提供される。電磁波遮蔽性及び耐熱性に優れる電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液及び電磁波遮蔽材料を提供することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液、電磁波遮蔽材料、及び電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液の製造方法に関する。
電磁波が及ぼす人体へ種々の悪影響を避けるため、およびデバイスなどの安定動作のため、種々の電磁波から対象物を守る電磁波遮蔽材は多くの分野で広く用いられている。そのため、電磁波遮蔽能を有する金属を中心にさまざまな電磁波遮蔽材料が作製されている。しかし、金属を用いた電磁波遮蔽材料は薄膜化しにくいこと、フレキシブル性に劣ること、接着性に劣ること、塗布性に劣ること、耐熱性に劣ることなど様々な問題があった。これらの問題を解決する方法として、電気伝導性の高い電磁波遮蔽能の高いナノ材料であるカーボンナノチューブ(以下、CNTとも称す)をゴムや高分子に複合化する方法が提案されている。
たとえば、特許文献1には、「(A)強磁性物質をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブ及びアモルファスナノスケールカーボンチューブからなる群から選ばれる少なくとも1種、(B)樹脂及び(C)有機溶媒を含有する電磁波吸収用塗料」が記載されている。
特許文献2には、「基材と、前記基材上に形成された導電膜を有する導電性フィルムにおいて、前記導電膜が、平均直径(Av)と直径の標準偏差(σ)とが特定の関係式を満たすカーボンナノチューブ、および側鎖に酸性基を有する高分子化合物を含有する酸性水分散液を用いて得られたものである導電性フィルムは、優れた導電性と透明性に加え、導電膜と基材との密着性にも優れる」こと及び「平均直径(Av)と直径の標準偏差(σ)が、関係式:0.60>3σ/Av>0.20を満たすカーボンナノチューブ(A)、および側鎖に酸性基を有する高分子化合物(B)を含有するカーボンナノチューブ含有酸性水分散液」が記載されている。
また、特許文献3には、「カーボンナノチューブ0.5〜20重量%および導電性繊維5〜50重量%を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる電磁波シールド材料」が記載されている。
特開2004−162052号公報 特開2014−152296号公報 特開2016−111341号公報
現在までに実用化、作成されている電磁波遮蔽性材料は、5.8GHzにおいて電磁波遮蔽性が10dB/10μm程度であり、実用化を考えると、99%以上の遮蔽効果(20dB/10μm以上)の材料が求められ、さらなる向上が望まれる。また、その他の特性の高い電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液が望まれる。
本発明は、ゴムや高分子に複合化する以外の手法による、電磁波遮蔽性及び耐熱性に優れる電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液、電磁波遮蔽材料、及び電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液の製造方法を提供する。
本発明の一実施形態によると、カーボンナノチューブと有機酸溶液とを含む電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液が提供される。
前記有機酸の分子量が500以上1000000以下であってもよい。
前記溶液の溶媒は、水又は有機物質であってもよい。
前記電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液中の前記カーボンナノチューブの濃度は、該塗布液に対して1重量%以下であってもよい。
前記塗布液に対する前記有機酸の濃度は、前記塗布液に対する前記カーボンナノチューブ濃度の0.1倍以上100倍以下であってもよい。前記塗布液に対する前記有機酸の濃度は、前記塗布液に対する前記カーボンナノチューブ濃度の1倍以上50倍以下であってもよい。前記塗布液に対する前記有機酸の濃度は、前記塗布液に対する前記カーボンナノチューブ濃度の2倍以上5倍以下であってもよい。
前記有機酸は、ポリアクリル酸又はパラフェニルスルホン酸であってもよい。
本発明の一実施形態によると、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を用いて形成される電磁波遮蔽材料が提供される。
本発明の一実施形態によると、解繊したカーボンナノチューブによる物理的な接触による連続なネットワーク構造を有機酸溶液中に構築させる電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液の製造方法が提供される。
前記有機酸の分子量が500以上1000000以下であってもよい。
前記溶液の溶媒は、水又は有機物質であってもよい。
前記電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液中の前記カーボンナノチューブの濃度は、該塗布液に対して1重量%以下であってもよい。
前記塗布液に対する前記有機酸の濃度は、前記塗布液に対する前記カーボンナノチューブ濃度の2倍以上5倍以下であってもよい。
前記有機酸は、特に限定されず、ポリアクリル酸又はパラフェニルスルホン酸などであってもよい。
本発明の一実施形態によると、上記電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液をバーコータ、スプレーコータ、またはディップコータにより塗布する電磁波遮蔽材料の製造方法が提供される。
本発明によれば、電磁波遮蔽性及び耐熱性に優れる電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液、電磁波遮蔽材料、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液の製造方法及び電磁波遮蔽材料の製造方法を提供することが可能である。
本発明の一実施形態に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜の模式図である。 本発明の一実施形態に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜中のカーボンナノチューブ構造体の一部を拡大した連続ネットワークを示す模式図である。 比較例に係る銀系塗料の遮蔽膜の顕微鏡写真(倍率100倍)である。なお図中でひび割れが生じた箇所に矢印を付した。 本発明の一実施例に係る電磁波遮蔽膜の顕微鏡写真(倍率100倍)である。
以下、図面を参照して本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液、電磁波遮蔽材料、及び電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液の製造方法について説明する。なお、本発明の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液、電磁波遮蔽材料、及び電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液の製造方法は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び後述する実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液(以下、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液ともいう)は、水や有機溶剤などに、有機酸とカーボンナノチューブとを含有した流体(液体)である。
また、本発明に係る電磁波遮蔽材料は、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を、基材に塗布し乾燥させたものである。かかる電磁波遮蔽材料において、電磁波遮蔽能をもたらすカーボンナノチューブは直径がnmオーダーの材料であるため、本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を薄く塗布して製造した電磁波遮蔽材料は薄膜化しても、単位膜厚あたりの電磁波遮蔽能が低下せず、電磁波遮蔽材料として機能する。
本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液は、有機酸とカーボンナノチューブとを、水や有機系の溶媒などに分散してなる。そして、本発明ではカーボンナノチューブを分散させる先を「有機酸溶液」とすることによって顕著な効果を奏するのである。すなわち、本発明では、有機酸溶液に分散させることで、有機酸が導電性を向上させるためのドーピング剤としての役割と、カーボンナノチューブ同士を接続させるバインダー(接着剤)としての役割と、水中での分散性を高める役割と、を果たすことができる。
塗布液とは、被塗布物上に塗布する一切の流体を意味する。
上記の有機酸は、分子量500以上1000000以下であることが好ましい。
有機酸溶液とは、有機酸の水溶液や有機酸を有機溶媒に溶解させたものが挙げられるが、特に限定されるものではない。
有機酸としては、たとえばポリアクリル酸、パラフェニルスルホン酸、スルファニル酸、5−スルホイソフタル酸、N−エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸、アミド硫酸、p−フェノールスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、ポリ(p−スチレンスルホン酸などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
また、用いられる有機酸は、形成される遮蔽塗布膜の強度の観点から、高分子量のものが好ましく、ドーピングの効果の観点から低分子量が好ましい。ゆえに、分子量500以上1000000以下であることが好ましい。さらに好ましくは、3000以上50000以下である。最も好ましくは、1000以上30000以下である。
本塗布液には、カーボンナノチューブ、有機酸、溶媒以外に、強化材、改質材、難燃剤、充填剤、着色剤などを添加しても良い。
強化材としては、ガラス繊維、ガラス布、紙基材、ガラス不織布などが挙げられる。
改質剤としては、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及びこれらの水素化物などのエラストマーなど、が挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、リン系、アミン系などの各種のプラスチック・ゴム用酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸化防止剤は単独で用いてもよいが、二種以上を組合せて用いることが好ましい。
難燃剤としては、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物系難燃剤、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物、などが挙げられる。難燃剤は単独で用いてもよいが、二種以上を組合せて用いることが好ましい。
カーボンナノチューブ以外の充填剤としては、ガラス粉末、セラミック粉末、シリカなどが挙げられる。これら充填剤は、二種類以上を併用してもよい。また、充填剤として、シランカップリング剤等で表面処理したものを用いることもできる。充填剤の量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対し、好ましくは0重量部〜600重量部、より好ましくは0重量部〜300重量部、特に好ましくは0重量部〜100重量部である。
着色剤としては、染料、顔料などが用いられる。染料の種類は多様であり、公知のものを適宜選択して使用すればよい。
電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液中のCNTの濃度は、塗布液に対して1重量%以下であることが好ましい。
塗布液に対する有機酸の濃度は、塗布液に対するCNT濃度の0.1倍以上100倍以下であり、好ましくは1倍以上50倍以下、さらに好ましくは1.5倍以上10倍以下である。
ところで、図1は、本発明の一実施形態に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜の模式図である。電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜は、カーボンナノチューブ10と有機酸とを含み、カーボンナノチューブ10が高度に解繊し、相互に接触しながら構成される連続ネットワークを備える。
図2を参照する。本発明の一実施形態に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜に含まれるカーボンナノチューブ10は、カーボンナノチューブ10の束(バンドル)からカーボンナノチューブ10が解繊した構造を有する。電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜において、カーボンナノチューブ10同士が互いに物理的に絡み合っており、高度に発達した連続ネットワークを形成する。
材料が入射した電磁波を透過させず、遮蔽するメカニズムとしては、表面での渦電流発生による反射損と、材料内で電磁波のエネルギーをジュール熱に変える吸収損がある。電磁波の波長よりも厚さが短い、導電性フィラー(カーボンナノチューブ)を充填した遮蔽材の場合、反射損が主要な電磁遮蔽のメカニズムである。試料に垂直に入射する電磁波に対して反射損を向上させる、すなわち遮蔽能を向上させるためには、面内の導電率を上げることが重要である。導電率を上げるためには、カーボンナノチューブが3次元的に導電ネットワークを形成することが重要である。
また電磁波の吸収損を向上させるためには、フィラーが電磁波を吸収し、それを熱エネルギーに変換することが必要である。そのためには、カーボンナノチューブが電磁波との相互作用をする必要がある。カーボンナノチューブと電磁波が最も大きく相互作用する点は、電磁波の電場の振幅が最も大きい点となる。吸収対象となる電磁波は波長や位相が様々な白色電磁波であるので、電磁波の振幅の最大となる点は様々である。シート中に構築された緻密なカーボンナノチューブの3次元ネットワーク構造は、白色電磁波と効率よく相互作用するため、電磁波の吸収損も大きくなると考えられる。
また、このようなカーボンナノチューブ10の連続ネットワークを構築可能な塗布液(電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液)は、力学的に頑強になり、化学的に安定になり、高引き裂き特性等の優れた特性も示す。
カーボンナノチューブ10は、バンドルではなく、ばらばらに解繊することによって、物理的に接触しやすくなり、導電パスを形成しやすくなる。カーボンナノチューブ10は物理的に接触している、もしくは非常に近接しているため、カーボンナノチューブ10同士の物理的な接触点15がカーボンナノチューブ10の収縮を抑制し構造体としての形態を保持することができる。走査型電子顕微鏡(SEM)により観察されるカーボンナノチューブ10の物理的な接触点15の間隔は1μm以上100μm以下程度である。カーボンナノチューブ10の物理的な接触点15の間隔を測定する方法として、例えば、動的機械特性測定装置(DMA)がある。本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜に対して、室温で周波数を0.001Hz〜100Hzまで変化させたとき、周波数に依存しない弾性率領域が現れる(プラトー領域)。プラトー領域における電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜の貯蔵弾性率は103Pa以上106Pa以下である。本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜において、弾性率から物理な接触点15間の距離は推定可能である。一般的に、よく発達したカーボンナノチューブネットワークにおいては、接触点15間の推定距離は100nm〜100μmの範囲である。
(カーボンナノチューブの構造体の細孔分布)
電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜は、500℃において窒素雰囲気下で6時間以上保持したときに、残留したカーボンナノチューブ構造体50の空孔分布が0.5μmから10μmの範囲において、dV/dlog(d)の値が0.6以下である。また、細孔径が1nm以上100μm以下、好ましくは1nm以上20μm以下、より好ましくは1nm以上10μm以下の範囲に1つ以上のピークを有する。
ここで、空孔分布は、水銀圧入式のポロシメーターで計測することができる。ピークとは微分細孔容積が0になる点であり、かつ微分細孔容積が負から正になる点である。空孔径はカーボンナノチューブ10とカーボンナノチューブ10との距離に対応しており、このようなピークを有する電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜は空孔径が小さく、カーボンナノチューブ10の連続ネットワークが形成されているため、薄膜化してもカーボンナノチューブ10のネットワーク構造が保持され、電磁波の反射損が大きい状態が保たれるために、遮蔽能が低下しない。また、カーボンナノチューブ間隔か緻密であることから、材料をすり抜けて透過する電磁波がほとんどなく、良好で、信頼性の高い電磁波遮蔽材料を作製することが可能となる。
(電磁波遮蔽能)
本明細書において、電磁波遮蔽能は、ASTM−D4935により評価するものとする。電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜は、カーボンナノチューブ10として、後述する本発明者らが以前に報告した単層カーボンナノチューブを用いた場合、100MHz(同軸線路治具)および1GHz(同軸線路治具)及び10GHz(X−band導波管治具)における電磁波遮蔽能が、0.1×10-1dB/μm以上、好ましくは0.2×10-1dB/μm以上、より好ましくは0.5×10-1dB/μm以上である。ただし、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100の膜厚は0.1μm以上105μm以下とする。一般に膜厚に比例して電磁波遮蔽能は低下するが、100μm以下の薄膜では単位厚さあたりの電磁波遮蔽能は低下する。これは、電磁波を遮蔽するために必要な構造が薄膜化することにより壊れてしまうことに起因する。
これに対して本発明においては、5.8GHzにおける、膜厚10μmで規格化した電磁波遮蔽能が、10dB/10μm以上、好ましくは20dB/10μm以上、より好ましくは30dB/10μm以上である。
本発明において、カーボンナノチューブ10は微細な構造であるため、100μm以下の膜厚である10μmまで薄膜化しても電磁波遮蔽に必要な構造、すなわち連続なネットワーク構造が維持できることから、上記膜厚あたりの電磁波遮蔽能を維持できる。この特徴によって、本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜は、塗布材料などの薄膜電磁波遮蔽材料として使用することが可能となる。
(カーボンナノチューブの比表面積)
電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜に含まれるカーボンナノチューブ10の比表面積は、特に限定されないが、通常100m2/g以上、好ましくは300m2/g以上、より好ましくは600m2/g以上であり、2000m2/g以下である。このような大きな比表面積を有するカーボンナノチューブ10は、連続ネットワークを形成するために必要なカーボンナノチューブ同士の接触点が多くなるため、連続ネットワークを形成しやすく、好適である。また、比表面積が大きいカーボンナノチューブ10は電磁波の照射に対して反射損が大きくなることから電磁波を反射遮蔽しやすくなるため、好適である。
(カーボンナノチューブの直径)
図1に示したように、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜に含まれるカーボンナノチューブ10は、カーボンナノチューブ10が複数のカーボンナノチューブ10と交差し、ファンデルワールス力により点で結合したネットワーク構造を有する。カーボンナノチューブ10の直径は特に限定されないが、10000nm以下、好ましくは1000nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは10nm以下であり、1nm以上である。このような小さな直径を有するカーボンナノチューブ10は、比表面積が大きくなるため、連続ネットワークを形成するために必要なカーボンナノチューブ同士の接触点が多くなるため、連続ネットワークを形成しやすく、好適である。
また、カーボンナノチューブ10の直径が小さくなるほどカーボンナノチューブ10の比表面積は増加する傾向にあり、より電磁波を吸収しやすくなる。また、1.0nm以下の直径のカーボンナノチューブ10では金属型と半導体型のカーボンナノチューブが明確に分かれてしまい、半導体型のカーボンナノチューブが電磁波の反射に寄与しなくなるため、1.0nm以上のカーボンナノチューブであることが望ましい。
(カーボンナノチューブの層数)
また、カーボンナノチューブ10としては、多層カーボンナノチューブであってもよいし、単層カーボンナノチューブであってもよい。カーボンナノチューブの層数は10層以下、好ましくは5層以下、より好ましくは2層以下、最も好ましくは単層である。ここで、カーボンナノチューブの層数とは透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した100本のカーボンナノチューブの層数の平均であり、二層カーボンナノチューブとは全体の半分本以上が二層のカーボンナノチューブであるもの、単層カーボンナノチューブとは全体の半分以上が単層カーボンナノチューブであるものをいう。層数が少ないほど、カーボンナノチューブ10はフレキシブルで連続ネットワークを構築しやすいため、層数が少ないほど連続ネットワークを形成するために必要なカーボンナノチューブ同士の接触点が多くなるため、連続ネットワークを形成しやすく、好適である。
このような層数を有するカーボンナノチューブ10は、より広い領域を電磁波により励起された電子が移動でき、より効果的に電磁波のエネルギーを反射もしくは吸収することができる。また、層数が少ないほど、カーボンナノチューブ10は有機酸溶液との間に多くの界面を持つことから、電磁波に対してより電子を励起しやすくなり、効率よく電磁波のエネルギーを反射もしくは吸収することが可能である。
(カーボンナノチューブの長さ)
また、カーボンナノチューブ10の長さは、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。このような長尺なカーボンナノチューブ10は、カーボンナノチューブ間の結合点が多いため、形状保持性に優れたネットワーク構造を形成することを可能とする。なお、本発明においては、このような長尺なカーボンナノチューブを含むものであればよく、その製造方法等は特に限定されない。なお、上述した物性を備えた単層カーボンナノチューブは、国際公開第2006/011655号に記載された方法により製造することができる。また、多層カーボンナノチューブは、国際公開第2012/060454号、特表2004−526660号公報に開示された方法により製造することができる。
(カーボンナノチューブの含有量)
一実施形態において、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜は、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜の総重量に対して、カーボンナノチューブを1重量部以下含むことが好ましい。カーボンナノチューブの含有量が0.1重量部より少ないと、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜に十分に発達した連続ネットワークを形成することはできない。
(電磁波遮蔽材料)
本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を塗布して形成された電磁波遮蔽膜は、薄く、十分な電磁波遮蔽能を有する電磁波遮蔽材料として好適に用いることができる。本発明に電磁波遮蔽材料は、基材の変形などに対してある程度の電磁波遮蔽能の安定性を有する。また、カーボンナノチューブの連続ネットワーク構造は、電磁波遮蔽材料の伸縮、変形、膨張に対して、基材の変形に追従し、壊れにくい。
本発明に係るカーボンナノチューブと有機酸溶液とを含む、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液電磁波は、遮蔽性及び耐熱性に優れる。
なお、本明細書において耐熱性は、180℃で24時間保持した条件で加熱処理した後、ひび割れが生じているか目視によって確認することで評価する。
[製造方法]
上述した本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液の製造方法について説明する。なお、以下に説明する製造方法は一例であって、本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液の製造方法は、これらに限定されるものではない。
[工程のあらまし]
本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液の製造方法は、カーボンナノチューブの製造工程、製造したカーボンナノチューブの繊維を解す工程(「解繊」工程)、カーボンナノチューブを有機酸溶液に分散させる工程を有する。
[カーボンナノチューブの製造工程]
本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液の製造に用いるカーボンナノチューブは、例えば、国際公開第2006/011655号(単層カーボンナノチューブ)、国際公開第2012/060454号(多層カーボンナノチューブ)、特表2004−526660号公報(多層カーボンナノチューブ)に開示された方法により製造することができるがこれに限定されるものではない。このような製造方法により製造されたカーボンナノチューブは、直径が小さく、層数が少ないため、非常に大きな比表面積を有する。このため、連続ネットワークを形成するために必要なカーボンナノチューブ同士の接触点が多くなるため、連続ネットワークを形成しやすくなり、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液の電磁波遮蔽能や引き裂き強度を向上させることができ、好適である。
[カーボンナノチューブ乾燥工程]
カーボンナノチューブは集合体として製造されるが、水分が吸着した状態では、水の表面張力により、カーボンナノチューブ同士がくっついているため、カーボンナノチューブが非常にほどけにくくなり、有機酸中での良好な分散性が得られない。カーボンナノチューブを180℃、好ましくは200℃以上に加熱し、10Pa以下、好ましくは1Pa以下で24時間以上、好ましくは72時間以上保持して、カーボンナノチューブの表面に付着した水を除去する。カーボンナノチューブ表面の水分を除去することで、次工程での溶剤とのぬれ性を高め、解繊を容易にすることができる。これにより、カーボンナノチューブの連続ネットワークを形成しやすくなる。
[分級工程]
カーボンナノチューブ集合体の大きさを所定の範囲にすることで、均一なサイズのカーボンナノチューブ集合体とすることが好ましい。カーボンナノチューブ集合体は、サイズの大きな塊状の合成品も含まれる。これらのサイズの大きな塊状のカーボンナノチューブ集合体は分散性が異なるため、全体としての分散性が低下する。そこで、網、フィルター、メッシュ等を通過した、大きな塊状のカーボンナノチューブ集合体を除外したカーボンナノチューブ集合体だけを以後の工程に用いると、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液中でのカーボンナノチューブの分散性を高めることができる。
[プレ分散工程]
カーボンナノチューブを大きい凝集塊のまま分散機に投入すると詰まりの原因となるため、乾燥させたカーボンナノチューブに有機溶媒を加え、カーボンナノチューブを10μm程度以下のバンドルまで解繊することにより、分散工程における歩留まりを改善することができる。プレ分散工程は、例えば、有機溶媒に添加した約0.1重量部のカーボンナノチューブをクロスヘッドスターラーで500rpm以上、8h以上攪拌することで実施することができる。カーボンナノチューブを分散させる有機溶媒としては、例えば、有機酸溶液を用いることができる。プレ分散工程を行うことにより、次工程である解繊工程において、より解繊が容易に進むようになる。解繊が進むことにより、連続ネットワークを有機酸中に構築することができる。
[カーボンナノチューブ解繊工程]
本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液において、カーボンナノチューブのバンドルが解繊により解されている点が重要である。「解す」とは、カーボンナノチューブがガス吸着法で測定可能な表面をバンドルから露出することを意味する。
カーボンナノチューブを有機酸溶液のような有機溶媒中で解繊する。既存の分散方法を採用できるが、特にジェットミルなどの乱流状のせん断力により分散する装置ではカーボンナノチューブへのダメージを低減して解繊することができる。特に、湿式ジェットミルは、溶媒中の混合物を高速流として、耐圧容器内に密閉状態で配置されたノズルから圧送するものである。耐圧容器内で対向流同士の衝突、容器壁との衝突、高速流によって生じる乱流、剪断流などによりカーボンナノチューブを分散させる。湿式ジェットミルとして、例えば、株式会社常光のナノジェットパル(JN10、JN100、JN1000)を用いた場合、分散工程における処理圧力は、10MPa以上150MPa以下の範囲内の値が好ましい。一方で、超音波ホモジナイザーを用いることもできる。
ジェットミル法、超音波ホモジナイザー法のいずれの方法においても、有機酸の熱劣化を抑制するために、解繊処理時の温度上昇を抑制することが好ましい。解繊処理時の保持温度としては、通常200℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。一方で、温度を下げ過ぎると、溶媒が固化してしまうため、溶媒の融点以上で撹拌することが好ましい。
これ以上高い圧力でせん断力を加えた場合、カーボンナノチューブは繊維軸方向に切断される。このことはカーボンナノチューブの欠陥を評価するラマン分光法により確かめられている。また10MPa以下の圧力では、カーボンナノチューブを効率良く解繊することが出来ない。すなわち10MPa〜150Mpaの圧力を加えることによりカーボンナノチューブは切断よりも解繊がより進み、より高いアスペクト比を有するようになる。この高いアスペクト比はカーボンナノチューブが高度に発達した連続したネットワーク構造を構築するために必要である。また、本実施形態において、カーボンナノチューブ集合体の分散工程には、スギノマシン社製のジェットミル(HJP−17007)を用いてもよい。
カーボンナノチューブのバンドルを100nm以下程度の太さまで解繊することにより、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液中でのカーボンナノチューブと有機酸との界面の面積を増やすことができる。比表面積が大きいほど、連続ネットワークを形成するために必要なカーボンナノチューブ同士の接触点が多くなるため、連続ネットワークを形成しやすくなり、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液の電磁波遮蔽能が向上する。
[有機酸との混練工程]
得られたカーボンナノチューブに、有機酸溶液を適量加えて分散液とする。混練工程は、例えば、カーボンナノチューブに有機酸溶液を加え、ビーカー中で円錐状のマグネット攪拌子を用いて混合することにより行っても良い。この場合、室温で、100rpm以上、好ましくは500rpm以上、さらに好ましくは1000rpm以上12時間以上混合して、解繊したカーボンナノチューブと有機酸を混練することが望ましい。その後、上記に示した通り、ジェットミルや超音波ホモジナイザーを用いて、カーボンナノチューブの解繊処理を行うことが好ましい。カーボンナノチューブ及び有機酸に親和性の高い(溶解度パラメーターが近い)溶媒(有機溶媒等が挙げられる)を用いることにより、カーボンナノチューブと有機酸が均等に分配される。この結果、連続ネットワークを形成しやすくなり、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液の電磁波遮蔽能を向上させることができる。
また、本発明において、カーボンナノチューブが一カ所に固まって居らず、有機酸中に均一に分布していること重要である。電磁波に励起された電子が電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液内を移動するためには、カーボンナノチューブが有機酸中に均一に分布していることが必要である。またカーボンナノチューブ同士が互いに物理的に接触していることによって、連続な導電ネットワークが形成され、電磁波の反射損が大きくなり電磁波が遮蔽され、電磁波遮蔽能が向上する。
[塗布について]
本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液は、基材に吹き付けることにより製膜し、電磁波遮蔽材料として使用可能である。有機酸溶液/カーボンナノチューブ溶液をバーコータ、スプレーコータ、ディップコーティング、その他溶液コーティング法によって成膜した際に、カーボンナノチューブの連続なネットワーク構造が構築され、更に導電性が発現し、優れた電磁波遮蔽性を付与することができる。
[工業化・量産化について]
また、本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液は、上述したように、二軸混練機などの連続・大量生産に適した手法により製造可能であり、各種溶液成膜法での成膜が可能であるため、電磁波遮蔽材料の大面積化が容易に実現される。
(実施例1)
国際公開第O2006/011655号に記載した方法により製造した単層カーボンナノチューブ(以下、SG−SWNTとも称する)と、有機酸として分子量5000のポリアクリル酸(和光純薬社製)を用い、実施例1の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を製造した。
用いた単層カーボンナノチューブは、TEMによる観察から、長さが100μm、平均直径が4.0nm、層数は1層であった。また、50mgの塊を取り出し、これをBELSORP−MINI(株式会社日本ベル製)を用いて77Kで液体窒素の吸脱着等温線を計測した(吸着平衡時間は600秒とした)。この吸脱着等温線からBrunauer、Emmett、Tellerの方法で比表面積を計測したところ、約1000m2/gであった。
単層カーボンナノチューブは、目開き0.8mmの網の一方にカーボンナノチューブ集合体を置き、網を介して掃除機で吸引し、通過したものを回収して、カーボンナノチューブ集合体から、サイズの大きな塊状のカーボンナノチューブ集合体を取り除き、分級を行った(分級工程)。
実施形態に記載の手法で、カーボンナノチューブを解繊し、有機酸である分子量5000のポリアクリル酸溶液に実施形態に記載の手法で、水に分散させ、カーボンナノチューブとポリアクリル酸とを含む水性塗料を作製した。CNTの濃度は0.4重量%濃度、ポリアクリル酸の濃度は0.8量%濃度とした。
得られた分散液をスプレーコータによって塗布し、乾燥させて、膜厚、5.8GHzにおける電磁波遮蔽性、耐熱性(180℃で24時間の加熱処理後にひび割れが目視できるか否か)を確認した。
(実施例2)
実施例2においては、実施例1と同じSG−SWNT、ポリアクリル酸を用いたが、塗布方法はバーコータに変更した。その余は実施例1と同じである。
(実施例3)
実施例3においては、実施例1と同じSG−SWNTを用い、ポリアクリル酸の分子量を1800とした。実施例2同様、塗布はバーコータにより行った。
(実施例4)
実施例4においては、実施例1と同じSG−SWNTを用い、ポリアクリル酸の分子量を25000とした。実施例2同様、塗布はバーコータにより行った。
(実施例5)
実施例5においては、実施例1と同じSG−SWNTを用い、ポリアクリル酸の分子量を100000とした。実施例2同様、塗布はバーコータにより行った。
(実施例6)
実施例6においては、実施例1と同じSG−SWNTを用い、分子量100000のパラフェノールスルホン酸を用いた。実施例2同様、塗布はバーコータにより行った。
(比較例1)
比較例1として、市販品のカーボンブラックを主成分とする電磁波遮蔽塗料(日本黒鉛商事(株)製 バニーバイトFCP−1005)を塗布、乾燥して膜を作製し、評価した。
(比較例2)
比較例2として、市販品の銀を成分とする電磁波遮蔽塗料(藤倉化成(株)製 XA9015)より作製した膜を用いた。
(比較例3)
CNTに有機酸を加えず、バーコータによって塗布し、比較例1の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液を作製した。
(カーボンナノチューブ充填量の測定)
実施例1の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液について、カーボンナノチューブ充填量を以下の方法により測定した。示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA、STA7000、Hitachiハイテク)を用いて測定した。一次昇温は、窒素200ml/minを供給し、1℃/minで、室温から800℃まで昇温させた。一次昇温においては、エラストマーのみ昇華し、残留成分がカーボンナノチューブである。カーボンナノチューブ以外の炭素フィラーなどが含まれる場合には、二次昇温を行った。二次昇温は、純空気200ml/minを供給し、1℃/minで、室温から800℃まで昇温させた。純空気中ではカーボンナノチューブ、および炭素フィラーは既知の温度において燃焼し、重量減少を生じた。重量減少から、カーボンナノチューブ充填量を算出した。
(カーボンナノチューブ構造体の体積測定)
実施例及び比較例の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液について、カーボンナノチューブ体積を以下の方法により測定した。熱処理前の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液の縦(H)の長さ(mm)、横(W)の長さ(mm)及び厚み(D)(mm)をマイクロメーターにより測定した。試料を管状炉にセットし、これを窒素雰囲気下、30℃〜400℃もしくは600℃までおおよそ20℃/分で昇温し、400℃以上、好ましくは600℃以上6時間熱処理することによりマトリックス成分を熱分解により除去した。カーボンナノチューブ構造体の体積は、シート上の試料を縦(H')の長さ(mm)、横(W')の長さ(mm)及び厚み(D')(mm)をマイクロメーターにより測定し、これを乗じることにより体積を求めた。
(カーボンナノチューブ構造体の空孔分布)
実施例及び比較例の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液について、カーボンナノチューブ構造体の空孔分布を以下の方法により測定した。試料を管状炉にセットし、これを窒素雰囲気下、30℃〜600℃まで20℃/分で昇温し、600℃で1.5時間時間熱処理することによりマトリックス成分を熱分解により除去した。得られたカーボンナノチューブ残留物の空孔径の分布を水銀ポロシメーター(Quantachrome社製 PoreMaster 60GT)により測定を行った。測定はWashburn法に準拠し、水銀圧は1.6 kPa〜420 MPaまで変化させた。
(電磁波遮蔽測定)
ASTM規格(ASTM D4935−10)に基づき、同軸導波管を対向させて、接合部に実施例又は比較例の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液の試料を挿入し、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)を用いて、試料挿入時と非挿入時のレベル差から透過損失(S21パラメータ)を求め、S21から遮蔽量を計算した。冶具に試料を封入した際のS21と封入していない空の状態のS21をそれぞれ測定し、dBで表した両者の振幅の差から遮蔽量を定義する。1MHz〜4.5GHzにおいては同軸線路冶具を用い、VNAはアジレント・テクノロジーズ社のE5071Cを用いて測定した。それより高い周波数においては(上限周波数:110GHz)、導波管線路冶具を用い、VNAとしてアジレント・テクノロジーズ社のN5222Aと周波数拡張モジュールを用いて、同様に測定を行った。単位厚さあたりの遮蔽量を算出するに当たっては、マイクロメーターを用いて5点試料の膜厚を測定し、その平均値を「試料の膜厚」とした。実施例及び比較例には約10μmの膜厚の試料を用いた。
耐熱性は、180℃で24時間の条件で加熱処理した後、ひび割れが生じているかをデジタルマイクロスコープにより、目視によって確認することで評価した。
表1及び表2に、実施例1〜6及び比較例1〜3に係る、膜厚、5.8GHzにおける電磁波遮蔽性、耐熱性(加熱処理後にひび割れが目視できるか否か)を確認した結果を記す。
また、図3は、比較例2に係る銀系塗料の遮蔽膜の耐熱試験後の顕微鏡写真(倍率100倍)であり、図4は実施例2に係る電磁波遮蔽膜中のカーボンナノチューブ系遮蔽膜の耐熱試験後の顕微鏡写真(倍率100倍)である。
上記の結果を参照する。比較例1のCB(カーボンブラック)を用いた膜は、「ひび割れ無し」と、熱に強いものの、遮蔽性が7dB/10μmと難がある。比較例2の従来のAg系遮蔽膜は、遮蔽性には大変優れるものの、図3で示した通り、熱で割れてしまったことから、耐熱性に難がある。比較例3のCNTを用いた膜は熱に強いものの、遮蔽性が12dB/10μmと難がある。これに対して、実施例1〜6に記載の膜、すなわち、カーボンナノチューブと有機酸とを含む本発明に係る膜は、図4に示した通り、耐熱試験後にもひび割れが無く、熱にも強く、遮蔽能も優れることが分かる。以上により、カーボンナノチューブと有機酸溶液とを含む、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液電磁波は、遮蔽性及び耐熱性に優れることが判明した。特に、遮蔽性及び耐熱性という観点では、少なくとも有機酸の分子量が1800以上1000000以下である場合に、比較例1〜3に比して好ましい結果となることを見出した。これにより、本発明によって遮蔽性及び耐熱性に優れる電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液、電磁波遮蔽材料、及び電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液の製造方法を提供することができると判明した。
10:カーボンナノチューブ
15:接触点
50:カーボンナノチューブ構造体
100:電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液

Claims (3)

  1. カーボンナノチューブと有機酸溶液とを含む、
    電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液。
  2. 前記有機酸の分子量が500以上1000000以下である、請求項1に記載の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ塗布液。
  3. カーボンナノチューブと有機酸溶液とを含む、
    電磁波遮蔽材料。
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