JP2005013914A - 水性塗料の塗膜形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】自動車ボディのライン塗装において、仕上り性、耐チッピング性、耐水性に優れる水性塗料の塗膜形成方法を見出すこと。
【解決手段】水酸基含有樹脂(A)、ブロックポリイソシアネート化合物及び/又はメラミン樹脂の硬化剤(B)及び偏平状顔料(C)を必須成分として含有する水性塗料を、(1)塗装時の固形分が45〜70重量%で、(2)20℃での塗料粘度がフォードカップ#4にて40〜50秒となるように調整し、塗装ブース温度15〜40℃、塗装ブース湿度60〜90%の条件にて塗装ラインの被塗物に塗装することを特徴とする水性塗料の塗膜形成方法。
【選択図】 なし
【解決手段】水酸基含有樹脂(A)、ブロックポリイソシアネート化合物及び/又はメラミン樹脂の硬化剤(B)及び偏平状顔料(C)を必須成分として含有する水性塗料を、(1)塗装時の固形分が45〜70重量%で、(2)20℃での塗料粘度がフォードカップ#4にて40〜50秒となるように調整し、塗装ブース温度15〜40℃、塗装ブース湿度60〜90%の条件にて塗装ラインの被塗物に塗装することを特徴とする水性塗料の塗膜形成方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水性塗料の塗膜形成方法に関し、詳しくは自動車ボディの外板をライン塗装する際に、本水性塗料を中塗り塗料として使用し、得られた塗膜が、仕上り性、耐チッピング性、耐水性に優れる塗膜を形成する方法に関する。
【0002】
【従来技術及びその課題】
自動車車体の外板部は、防食及び美感の付与を目的として、通常、カチオン電着塗料による下塗り塗膜、中塗り塗膜、及び上塗り塗膜からなる複層塗膜により被覆されている。
従来の塗料は有機溶剤を用いた塗料が主流であったが、有機溶剤を用いた場合には常に火災の危険がつきまとい、さらに使用者の健康への影響、また最近になって特に環境への影響が懸念されており、安全で無害な溶媒を用いた塗料が求められている。
【0003】
このことから、自動車塗料の面でも塗料の水性化が進んできており、耐チッピング性の機能が要求される自動車用の塗料においても水性塗料が開発されている。
最近の水性化の傾向から、自動車メーカーなどのユーザーにおいて水性塗料の材質の承認を受け、塗装ラインにて塗装されるようになってきた。しかし自動車ボディのような複雑形状の被塗物に水性塗料を塗装する場合、塗膜の仕上り性は塗料の固形分、粘度、ブース温度・湿度などの塗装条件によって大きく変動し、外板の外観不良、特に肌荒れや、ワキやタレなどの不具合を生じることがある。その場合の塗膜の補修には大変な手間がかかり、例えば、塗装ライン停止した場合には大きく生産性の低下に影響を及ぼすことを認識するものの、その対策には塗装ラインにおいて試行錯誤を繰り返すばかりであった。
【0004】
特開2003−20441号公報には、ウレタン変性ポリエステル樹脂、ブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂、偏平状顔料粒子を含有した水性塗料に関する発明がある
【特許文献1】。
しかしながら、特開2003−20441号公報には、塗装ラインではなく、鋼板の被塗物に該水性塗料を使用して中塗り塗膜を形成し、さらに上塗り塗膜を形成してなる複層塗膜の耐チッピング性などが向上する旨記載されているが、自動車ボディーのような複雑な形状の被塗物に水性塗料を塗装ラインで塗装して塗膜を形成する場合に生ずる上記した問題点について具体的な記載も、それを示唆する記載もなく、したがって、上記問題点を解決するための具体的な手段についても記載されていない。
【0005】
そこで水性塗料をライン塗装した場合に、自動車ボディの外板のように、複雑な形状を有する被塗物にワキ・タレなどの仕上り性の不具合を生じることなく、かつ耐チッピング性、耐水性に優れる水性塗料の塗膜形成方法が強く求められていた。
【0006】
【特許文献1】
特開2003−20441号公報
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、水性塗料のライン塗装において、被塗物に外観不良や、ワキ・タレなどの不具合を生じることなく、かつ耐チッピング性、耐水性に優れる塗膜の形成方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
1.水酸基含有樹脂(A)、ブロックポリイソシアネート化合物及び/又はメラミン樹脂の硬化剤(B)、偏平状顔料(C)を必須成分として含有する水性塗料を、(1)塗装時の固形分が45〜70重量%で、(2)20℃での塗料粘度がフォードカップ#4にて40〜50秒となるように調整し、塗装ブース温度15〜40℃、塗装ブース湿度60〜90%の条件にて塗装ラインの被塗物に塗装することを特徴とする水性塗料の塗膜形成方法、
2.水性塗料が、さらに水酸基含有樹脂樹脂(A)と硬化剤(B)の固形分合計100重量部に対して、5〜40重量部の水溶性有機溶剤(D)を含んでなる1項に記載の水性塗料の塗膜形成方法、
3.水性塗料の塗装が、ベル回転数20,000〜50,000rpmで、かつ吐出量200〜500ml/分の条件で、静電塗装機によってなされることを特徴とする1項又は2項に記載の水性塗料の塗膜形成方法、
4.水酸基含有樹脂(A)がポリエステル樹脂であって、構成する多塩基酸と多価アルコールの固形分総合計量に対して、脂環式多塩基酸及び/又は脂環式多価アルコールの割合が20〜70重量%であるポリエステル樹脂(a)を含有する請求項1項に記載の水性塗料の塗膜形成方法、
5.1項〜3項のいずれか1項に記載の水性塗料が、自動車用の水性中塗り塗料である水性塗料の塗膜形成方法。
【0009】
6.被塗物が自動車ボディの外板である1項〜4項に記載のいずれか1項に記載の水性塗料の塗膜形成方法。
7.1項〜6項のいずれか1項に記載の水性塗料の塗膜形成方法を用いて得られた塗装物品、に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の水性塗料の塗膜形成方法について詳細に説明する。該水性塗料の塗膜形成方法は、自動車ボディの塗装ラインにおける水性中塗り塗料の塗膜形成方法として好適に用いられるため、自動車ボディの塗装ラインを例にとり説明する。
【0011】
自動車ボディの水性塗料の塗装ラインの一例の概要は、図1のように示される。図1において、自動車ボディ(6)は、準備ゾーン(1)を経て、外板を塗装するゾーン(2)において静電塗装機(4)によって塗装され、次に内板を塗装するゾーン(3)においては、スプレー作業を行う作業員(5)によって内板がスプレー塗装される。
【0012】
自動車ボディの部位は、垂直部や水平部、曲面部、鍵穴、ネジ穴などがあり、塗装された塗膜も水性塗料の性状や塗装されるブースの条件によって、ワキ・タレなどの塗膜欠陥を生じる。本発明は、塗膜欠陥を解消し、仕上り性、耐チッピング性、耐水性に優れる水性塗料の塗膜形成方法に関する。
本発明の水性塗料の塗膜形成方法における塗装条件は、条件(1):水性塗料の塗装時の塗料固形分(注1)が45〜70重量%、好ましくは50〜55重量%の範囲がよい。この範囲の塗料固形分であれば、塗膜がワキ・タレが発生し難い。
【0013】
ここで固形分が45重量%未満では塗膜のタレが発生し易く、塗料固形分が70重量%を越えるとフロー性が低下するため外観不良が発生し易い。塗料固形分がこの範囲にある場合の粘度であれば、自動車ボディの垂直部、特に鍵穴の回りに塗料のワキ・タレが発生し難い。粘度がフォードカップ#4(20℃)にて40秒未満であると塗膜がタレ易く、50秒を越えると外観不良、ワキが発生し易い。
(注1)塗料固形分:塗料固形分の測定は、式(1)に従って求めた。
【0014】
塗料固形分(重量%)=[(X2−X)/(X1−X)]×100…式(1)
(式中、Xは容器の質量、X1は塗料と容器の合計重量、X2は110℃±5℃で60分間乾燥後の塗料と容器の合計重量を表す)
条件(1)に加えて、条件(2)として、水性塗料の粘度がフォードカップ#4にて40〜50秒(20℃)の範囲であることが挙げられる。
【0015】
これらの条件(1)と条件(2)に加えて、条件(3)として塗装ブース温度が15〜40℃、条件(4)として塗装ブース湿度が60〜90%の範囲であることが望まれる。
塗装ブースの温度と湿度が上記の範囲であると、塗装後の溶媒の蒸発が適度に進み、塗膜のワキ・タレの発生がない良好な仕上り性となる。しかし塗装ブースの温度、又は湿度のいずれかが上記の範囲をはずれると塗膜に外観不良、及びワキ・タレなどの不具合を生じることとなる。
【0016】
条件(1)〜条件(4)での水性中塗り塗料の塗装は、ロボットによる静電塗装機(図1の5)によってなされることが好ましく、静電塗装機(例えば、ABB株式会社製、カートリッジ式メタベル機)を用いて、ベル回転数20,000〜40,000rpm、好ましくは25,000〜35,000rpmの範囲、かつ吐出量200〜400ml/分(詳しくは、水平部250〜350ml/分、垂直部300〜400ml/分)の範囲とすることによって、ワキ・タレの発生がなく仕上がり性に優れる塗膜を得ることができる。
【0017】
また静電塗装時の印加電圧としては、−90kV〜−60kVの範囲、吐出圧(SA)は1.0〜2.0kg/cm2の範囲がよい。水性中塗り塗料を塗装する際は、条件(1)〜条件(4)で、かつ上記の静電塗装の条件にて塗装する。この範囲を越えるか、又は未満であると外観不良や、ワキ・タレが発生する。
次に、水性塗料の塗装後は、以下の方法(I)〜方法(III)等の塗膜形成方法によって複層塗膜を形成することができる。
【0018】
方法(I)としては、水性塗料の塗膜の硬化塗膜上に、上塗り塗料(ソリッド色)をエアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装などの方法によって乾燥膜厚が約10〜50μmとなるように塗装し、焼き付け温度として約100〜180℃で約10〜90分間加熱してなる2コート2ベーク方式(2C2B);及び水性塗料のウェット塗膜上に、ウェットオンウエットにて、上塗り塗料(ソリッド色)を塗り重ねてなる2コート1ベーク方式(2C1B)が挙げられる。
方法(II)として、水性塗料の塗膜の硬化塗膜上に、着色ベース塗料をエアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装などの方法によって乾燥膜厚が約10〜50μmとなるように塗装し、ウェットオンウエットにて、又は硬化し、クリア塗料を膜厚が硬化膜厚で約10〜70μmになるように塗装し、焼き付け温度で、約60〜160℃で約10〜90分間加熱してなる3コート2ベーク方式(3C2B)、3コート3ベーク方式(3C3B);及び
【0019】
水性塗料のウェット塗膜上に、ウェットオンウエットにて、着色ベース塗料をエアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装などの方法によって乾燥膜厚が約10〜50μmとなるように塗装し、ウェットオンウエットにて、又は硬化し、クリア塗料を膜厚が硬化膜厚で約10〜70μmになるように塗装し、焼き付け温度で、約60〜160℃で約10〜90分間加熱してなる3コート1ベーク方式(3C1B)、3コート2ベーク方式(3C2B);
【0020】
方法(III)として、水性塗料の塗膜の硬化塗膜上に、着色ベース塗料をエアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装などの方法によって乾燥膜厚が約10〜50μmとなるように塗装し、ウェットオンウエットにて、又は硬化し、第1クリア塗料を膜厚が硬化膜厚で約10〜70μmになるように塗装し、ウェットオンウエットにて、又は硬化し、第2クリヤ塗料を膜厚が硬化膜厚で約10〜70μmになるように塗装し、焼き付け温度で、約60〜160℃で約10〜90分間加熱してなる4コート2ベーク方式(4C2B)、4コート3ベーク方式(4C3B)、4コート4ベーク方式(4C4B);及び
【0021】
水性塗料のウェット塗膜上に、ウェットオンウエットにて、着色上塗ベース塗料をエアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装などの方法によって乾燥膜厚が約10〜50μmとなるように塗装し、ウェットオンウエットにて、又は硬化し、第1クリア塗料を膜厚が硬化膜厚で約10〜70μmになるように塗装し、ウェットオンウエットにて、又は硬化し、第2クリヤ塗料を膜厚が硬化膜厚で約10〜70μmになるように塗装し、焼き付け温度で、約60〜160℃で約10〜90分間加熱してなる4コート2ベーク方式(4C2B)、4コート3ベーク方式(4C3B)などが挙げられる。
【0022】
水性塗料
本発明の水性塗料の塗膜形成方法に用いる水性塗料は、水酸基含有樹脂(A)、ブロックポリイソシアネート化合物及び/又はメラミン樹脂の硬化剤(B)、偏平状顔料(C)を含有する。
水酸基含有樹脂(A)としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ヒドロキシアクリル樹脂等を用いることができる。ポリエステル樹脂については樹脂中の水酸基の一部にポリイソシアネート化合物をウレタン化反応により伸長させ高分子量化したウレタン変性の水酸基含有樹脂を用いてもよい。
例えば、ウレタン変性水酸基含有ポリエステル樹脂は、水酸基含有ポリエステル樹脂中の水酸基の一部にポリイソシアネート化合物をウレタン化反応により伸長させ高分子量化した、1分子中に水酸基及びブロックイソシアネート基が併存する樹脂で、自己架橋性樹脂である。
【0023】
水性塗料が、自動車塗料用の中塗り塗料として用いる場合には、主にポリエステル樹脂、アクリル樹脂が用いられる。
ポリエステル樹脂は、1分子中に2個以上の水酸基を有しており、多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応により調製することができる。 多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4′−ジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸及びその無水物;ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸及びその無水物;アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、アゼライン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸及びその無水物;これらのジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル;トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメット酸、トリメシン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、テトラクロロヘキセントリカルボン酸及びその無水物などの3価以上の多塩基酸などが挙げられる。
【0024】
多価アルコールは、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピヴァリン酸ネオペンチルグリコールエステルなどの2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルジオール類;
【0025】
プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドなどのα−オレフィンエポキシド、カージュラE10[シェル化学社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル]などのモノエポキシ化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニットなどの3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類;1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールA及び水添ビスフェノールFなど脂環族多価アルコールなどが挙げられる。
【0026】
ウレタン変性ポリエステル樹脂は、水酸基含有ポリエステル樹脂中の水酸基の一部に、部分ブロックポリイソシアネート化合物をウレタン化反応せしめることによって得ることができる。 水酸基含有ポリエステル樹脂は1分子中に2個以上の水酸基を有しており、このものは多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応により調製することができる。
【0027】
部分ブロックポリイソシアネート化合物は、ブロックされていない遊離のイソシアネート基及びブロック剤で封鎖されたブロックイソシアネート基が1分子中に併存している化合物であり、例えば、ポリイソシアネート化合物中の遊離イソシアネート基の一部をブロック剤で封鎖することにより得られる。
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に、封鎖されていない遊離のイソシアネート基を2個以上有する化合物である。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族系ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロペンタンジイソシアネートなどの脂環式系ジイソシアネート化合物;
【0028】
キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トルイジンジイソシアネ−ト、ジフェニルエーテルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、ジメチル−ビフェニレンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;
【0029】
トリフェニルメタントリイソシアネート、トリイソシアナトベンゼン、トリイソシアナトトルエン、ジメチルジフェニルメタンテトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネ−ト基を有するポリイソシアネート化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロ−ルプロパンなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;
【0030】
ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などのビューレットタイプ付加物、イソシアレート環タイプ付加物などがあげられる。
【0031】
ブロック剤は、遊離のイソシアネート基を封鎖する化合物である。ブロックされたイソシアネート基は、例えば100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱すると、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基が再生され、水酸基などと容易に反応させることができる。
ブロック剤として、例えば、フェノール、クレゾールなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;
【0032】
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール系;ベンジルアルコール;グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどのグリコール酸エステル;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル;メチロール尿素、ジアセトンアルコールなどのアルコール系;アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;
【0033】
ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系などが挙げられる。
【0034】
ウレタン変性ポリエステル樹脂を調製するにあたり、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基の一部をブロック剤で封鎖して、1分子中に遊離のイソシアネート基及び封鎖されたブロックイソシアネート基を1分子中に1個以上有する部分ブロックポリイソシアネート化合物をあらかじめ準備しておくことが好ましい。ポリイソシアネート化合物とブロック剤との反応は既知の条件で行なうことができる。また、両成分の比率は、得られる部分ブロックポリイソシアネート化合物が、1分子中に、遊離のイソシアネート基及び封鎖されたブロックイソシアネート基をそれぞれ少なくとも1個有している範囲内であれば、特に制限はない。
【0035】
かかる部分ブロックポリイソシアネート化合物を、水酸基含有ポリエステル樹脂中の一部の水酸基に反応せしめることによりウレタン変性ポリエステル樹脂が得られる。部分ブロックポリイソシアネート化合物と水酸基含有ポリエステル樹脂とのウレタン化反応は、通常のウレタン化反応の条件下で行なうことができる。
【0036】
また水酸基含有ポリエステル樹脂中の水酸基の一部に未ブロックのポリイソシアネート化合物の一部のイソシアネート基を反応せしめてなる生成物の残りのイソシアネート基をブロック剤で封鎖することによってもウレタン変性のポリエステル樹脂が得られる。
かくして得られるウレタン変性ポリエステル樹脂は、水酸基価が20〜200mgKOH/g、特に40〜120mgKOH/g、イソシアネート基価が5〜120mgKOH/g、特に10〜50mgKOH/g、酸価が100mgKOH/g以下、特に10〜60mgKOH/g、数平均分子量が1000〜20000、特に1500〜10000の範囲内が好ましい。
【0037】
他に、脂環式多塩基酸及び/又は脂環式多価アルコールを必須成分とし、必要に応じてその他の多塩基酸、その他の多価アルコールを含有してなるポリエステル樹脂(a)も使用することができる。脂環式多塩基酸は、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、及びこれらの無水物などが挙げられる。その他の多塩基酸は、ポリエステル樹脂と同様の多塩基酸を使用することができる。
【0038】
脂環式多価アルコールは、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上の水酸基とを有する化合物であり、例えば、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、スピログリコール、ジヒドロキシメチルトリシクロデカンなどが挙げられる。その他の多価アルコールは、ポリエステル樹脂と同様の多価アルコールを使用することができる。
【0039】
ポリエステル樹脂(a)における脂環式多塩基酸及び/又は脂環式多価アルコールの含有量は、ポリエステル樹脂(a)を構成するモノマーの固形分合計に対し20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%の範囲がよい。脂環式多塩基酸及び/又は脂環式多価アルコールの含有量が20重量%未満では、耐チッピング性の向上に効果がなく、また70重量%を越えると耐候性が低下する。
【0040】
上記、脂環式多塩基酸やその他の多塩基酸、及び/又は脂環式多価アルコールやその他の多価アルコールを反応させてなるポリエステル樹脂(a)の重量平均分子量は1,000〜1000,000、好ましくは2,000〜10,000、水酸基価は30〜200mgKOH/g、好ましくは50〜180mgKOH/gの範囲、酸価は5〜100mgKOH/g、好ましくは10〜60mgKOH/gの範囲内が適している。
【0041】
他に、アクリル樹脂は、水酸基含有モノマー、及びアクリル系モノマーを含有する重合性モノマー成分を通常の条件で共重合することによって製造でき、その数平均分子量は1000〜50000、特に2000〜20000、水酸基価は20〜200mgKOH/g、特に50〜150mgKOH/g、酸価は3〜100mgKOH/g、特に20〜70mgKOH/gが好ましい。
【0042】
水酸基含有モノマーは1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物であり、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの炭素数2〜20のグリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物などがあげられる。
また、アクリル系モノマーは(メタ)アクリル酸と炭素数1〜22の1価アルコールとのモノエステル化物であり、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどが挙げられる。
【0043】
硬化剤(B):架橋成分として用いる硬化剤(B)としては、1分子中に2個以上の遊離のイソシアネ−ト基を有する化合物でポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック剤でブロックしたブロックポリイソシアネート、又はメラミン樹脂を用いることができる。
ブロックポリイソシアネートにおけるポリイソシアネート種としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ−ト、ダイマ−酸ジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−トなどの脂肪族ポリイソシアネ−ト類;及びこれらのポリイソシアネ−トのビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;
【0044】
イソホロンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネ−トのビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;
【0045】
キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4′−トルイジンジイソシアネ−ト、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、(m−又はp−)フェニレンジイソシアネート、4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;及びこれらのポリイソシアネ−トのビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;
【0046】
トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4′−ジメチルジフェニルメタン−2,2′,5,5′−テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネ−ト基を有するポリイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネ−トのビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;
【0047】
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロ−ルプロパン、ヘキサントリオ−ルなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;及びこれらのポリイソシアネ−トのビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;等が挙げられる。
【0048】
ブロック剤は、遊離のイソシアネート基を封鎖するものであり、例えば100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱すると解離し、水酸基と容易に反応することができる。かかるブロック剤として、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;
【0049】
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチルなどのグリコール酸エステル;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレ−ト、2−ヒドロキシエチルメタクリレ−トなどのアルコール系;
【0050】
ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;
マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;
【0051】
ピラゾール;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系などが挙げられる。
【0052】
硬化剤(B)として、メラミン樹脂を併用することもできる。メラミンは、トリアジン核1個あたりメチロール基が平均3個以上メチルエーテル化されたメラミンや、そのメトキシ基の一部を炭素数2個以上のモノアルコールで置換したメラミン樹脂である。
メラミン樹脂としては、メラミンとアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂があげられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等がある。また、このメチロール化アミノ樹脂のメチロール基の一部又は全部をモノアルコールによってエーテル化したものも使用できる。エーテル化に用いられるモノアルコールとしてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。
【0053】
さらにイミノ基を有し、かつ平均縮合度約2以下で1核体の割合が約50重量%以上である親水性メラミンが好適に使用できる。
偏平状顔料(C):偏平状顔料(C)は、うろこのような薄く平らな形状の顔料であり、例えば、タルク、アルミニウムフレーク、雲母フレークなどがあげられ、このうちタルクが好ましい。偏平状顔料(C)の大きさは、厚さは0.1〜2μm、特に0.2〜1.5μm、長手方向寸法は1〜100μm、特に2〜20μmが好ましい。
【0054】
上記の水酸基含有樹脂(A)、硬化剤(B)、偏平状顔料(C)の構成比率は特に制限されず、目的に応じて任意に選択できる。具体的には、水酸基含有樹脂(A)、硬化剤(B)の合計重量を基準に、水酸基含有樹脂(A)は45〜80重量%、特に55〜75重量%、硬化剤(B)は20〜55重量%、特に35〜50重量%の範囲内が好ましい。また偏平状顔料(C)は、水酸基含有樹脂(A)、硬化剤(B)の合計固形分100重量部あたり、5〜50重量部、特に10〜30重量部が適している。
【0055】
また水性塗料には水溶性有機溶剤(D)を添加することによって ヌレ性、ワキ性を向上することもできる。具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。この中でも特に、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
水溶性有機溶剤(D)の含有量としては、水酸基含有樹脂(A)、硬化剤(B)の合計固形分100重量部あたり1〜30重量部、好ましくは10〜25重量部、さらに好ましくは15〜20重量部が適している。
【0056】
水性塗料における水酸基含有樹脂(A)のカルボキシル基を、中和剤で中和することにより水分散することができる。そのような中和剤として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−またはジ−iso −プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミンを挙げることができる。
【0057】
他に、水性塗料は、必要に応じて、水酸基含有ウレタン樹脂、ウレタンエマルション、着色顔料、アルミニウムフレークやマイカなどのメタリック顔料、体質顔料、分散剤、沈降防止剤、有機溶剤、ウレタン化反応促進用触媒(例えば有機スズ化合物など)、水酸基とメラミン樹脂との架橋反応促進用触媒(例えば、酸触媒)、消泡剤、増粘剤、防錆剤、紫外線吸収剤、表面調整剤などを適宜に配合することができる。
【0058】
さらに塗膜の架橋反応を促進するのに硬化触媒を加えることもできる。具体的には、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、モノブチル錫トリオクテート、2−エチルヘキン酸鉛、オクチル酸亜鉛などの有機金属化合物を挙げることできる。
【0059】
硬化触媒の使用量は任意に選択できるが、水酸基含有樹脂(A)、硬化剤(B)の固形分合計あたり0.005〜5重量%、特に0.01〜3重量%の範囲が適している。
【0060】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「部」及び「%」は「重量部」及び「重量%」を示す。
製造例1 ポリエステル樹脂No.1(ウレタン変性ポリエステル樹脂)の製造
トリメチロールプロパン0.2モル、1,6−ヘキサンジオール0.8モル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸0.4モル、及びアジピン酸0.3モルを反応させた後、さらに無水トリメリット酸0.05モルを付加してなるポリエステル樹脂(100部)に、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)2モルとジメチロールプロピオン酸1モルを反応させてなる樹脂溶液(30部)とをメチルエチルケトン中で反応させてなる生成物(130部)に含まれる水酸基の一部に、メチルエチルケトンオキシムと4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)とを等モル比で反応させてなるハーフブロックポリイソシアネート化合物(10部)を反応した。
【0061】
次いで、脱溶剤し、ジメチルエタノールアミンを加えて中和し、水に混合して水分散液とし、固形分60重量%のポリエステル樹脂No.1 を得た。ポリエステル樹脂No.1の水酸基価は90mgKOH/g、酸価は38mgKOH/g、NCO価は10、数平均分子量は2,000であった。
製造例2 ポリエステル樹脂No.2(ウレタン変性ポリエステル樹脂)の製造
製造例1の「4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)」を「テトラメチルキシリレンジイソシアネート」に変更した以外は、製造例1に準じて行なって、水に混合して水分散液とし、固形分60重量%のポリエステル樹脂No.2を得た。ポリエステル樹脂No.2の水酸基価は90mgKOH/g、酸価は38mgKOH/g、NCO価は10、数平均分子量は2,000であった。
【0062】
製造例3 ポリエステル樹脂No.3の製造
ネオペンチルグリコール0.27モル、トリメチロールプロパン0.33モル、ブチルエチルプロパンジオール0.4モル、イソフタル酸0.25モル、アジピン酸0.3モル及びヘキサヒドロ無水フタル酸0.3モルを反応してなる生成物に無水トリメリット酸0.05モルを付加せしめた後、脱溶剤を行ない、ジメチルエタノールアミンで中和してから、水に混合して水分散液とし、固形分60重量%のポリエステル樹脂No.3を得た。ポリエステル樹脂No.3の水酸基価は130mgKOH/g、酸価は25mgKOH/g、数平均分子量は1,800であった。
【0063】
製造例4 ポリエステル樹脂No.4(ポリエステル樹脂(a))の製造
1,3−シクロヘキサンジカルボン酸 0.27モル、アジピン酸0.3モル、トリメチロールプロパン0.33モル、ネオペンチルグリコール0.27モル、及び1,4−シクロヘキサンジメタノール0.19モルを反応せしめてなる生成物に無水トリメリット酸0.05モルを付加せしめた後、脱溶剤を行ない、ジメチルエタノールアミンで中和してから、水に混合して水分散液とし、固形分60重量%のポリエステル樹脂No.4を得た。ポリエステル樹脂No.4は、水酸基価は150mgKOH/g、酸価は35mgKOH/g、数平均分子量は2,000であった。
【0064】
製造例5 硬化剤No.1(ブロックポリイソシアネート)の製造
ヘキサメチレンジイソシアネート50部をメチルケトオキシム40部に40〜60℃で攪拌下に滴下した後、80℃で1時間加熱し、固形分90%の硬化剤No.1を得た。
製造例6 水性中塗り塗料No.1の製造
ポリエステル樹脂No.1 20部(固形分)、タルク(注2)20部、JR−806 60部(注3)、カーボンMA−100(注4) 0.6部、バリタ40部を加えて顔料分散し、さらにポリエステル樹脂No.1 20部(固形分)、ポリエステル樹脂No.3 20部(固形分)、硬化剤No.1 30部(固形分)とサイメル325 (注5)10部、脱イオン水を加えて、フォードカップNo.4によって50秒(20℃)に調製して水性中塗り塗料No.1を得た。
【0065】
製造例7 水性中塗り塗料No.2の製造
表1の配合内容で、フォードカップNo.4によって45秒(20℃)に調製して水性中塗り塗料No.2を得た。
製造例8 水性中塗り塗料No.3の製造
表1の配合内容で、フォードカップNo.4によって48秒(20℃)に調製して水性中塗り塗料No.3を得た。
【0066】
【表1】
【0067】
(注2)タルク(厚さは0.3〜0.9μm、長手方向寸法は5〜10μm、偏平状顔料(C)に相当)
(注3)JR−806:テイカ社製、商品名、チタン白
(注4)カーボンMA−100:三菱化学社製、商品名、カーボンブラック
(注5)サイメル325:三井サイテック社製、商品名、イミノ基含有メラミン樹脂
(注6)水溶性有機溶剤:トリプロピレングリコールモノメチルエーテルを使用
被塗物の調整
1.自動車ボディ:パルボンド#3020(日本パーカライジング株式会社製、商品名、りん酸亜鉛処理)を施した自動車ボディに、エレクロンGT−10LF(関西ペイント株式会社製、商品名、鉛フリーカチオン電着塗料)を電着塗装し焼き付けて、膜厚約20μmの塗膜を得た。
【0068】
2.パネル:自動車ボディのタイヤハウス部分にパネル(100×300×0.8mmの大きさの亜鉛メッキ鋼板)を吊るして、自動車ボディとパネルを同時に化成処理、電着塗装を施した。
実施例1
コンベア速度7.5m/分の塗装ライン上で、以下の塗装条件にて静電塗装機(ABB株式会社製カートリッジ式メタベル機)を用い、被塗物(自動車ボディ、パネル)に水性中塗り塗料No.1を(1)塗装時の固形分を45重量%、(2)塗装粘度を41秒(フォードカップNo.4、20℃)に調整して、1分30秒間の静電塗装を行って塗膜を得た後、80℃−3分間でプレヒート後、150℃−20分間焼き付けて、試験板No.1を得た。
【0069】
その時の(3)塗装ブース温度は18℃、(4)塗装ブース湿度は65%、静電塗装機のベル回転数 は30,000rpm、吐出量 は350ml/分(垂直部)であった。
実施例2〜3
表2のような水性中塗り塗料、及び塗装条件にて、試験板No.2〜No.3を得た。
【0070】
比較例1〜5
表2のような水性中塗り塗料、及び塗装条件にて、試験板No.4〜No.9を得た。
試験結果
上記のようにして形成された塗膜について各種試験を行った試験結果を併せて表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
(注7)塗料固形分(%):注1の方法に従って行った。
(注8)塗料粘度(秒):フォードカップ#4を用い、20℃にて測定した。
(注9)水性中塗塗面の仕上り性:被塗物として自動車ボディを用いて、水性中塗り塗膜面の評価を行った。
◎は、問題なく良好
○は、わずかに肌が荒れるが問題なし
△は、ハダアレが見られる
×は、ハダアレが著しい
(注10)上塗り塗膜面の仕上り性:被塗物としてパネルを用いて、各々の水性塗料を乾燥膜厚30μm塗装して150℃で20分間焼き付けた後、WBC710T(関西ペイント株式会社製、商品名、アクリル・メラミン樹脂系着色上塗ベース塗料)を乾燥膜厚15μm施し、80℃で3分間加熱してから、その塗面にKINO#1200TW(関西ペイント社製、商品名、アクリル・エポキシ樹脂系上塗クリヤ塗料)を乾燥膜厚35μmに塗装し、140℃で20分加熱して複層塗膜を得た。上記の複層塗膜を(注9)の水性中塗塗面の仕上り性試験と同様の基準にて評価した。
(注11)耐水性:(注10)と同様の方法にて複層塗膜を有する試験板を作成し、その試験板を40℃の温水に10日間浸漬した後の塗面を目視観察した結果である。
【0073】
○:ブリスターなどの発生が全く認められない
△:ブリスターなどの発生が少し認められる
×:ブリスターなどの発生が多く認められる
(注12)耐チッピング性:米国 Q−PANEL社製、Q−G−Rグラベロメータ(チッピング試験装置)の試片保持台に試験板を設置し、−20℃において、3kgf/cm2(0.294MPa)の圧縮空気により粒度7号の花崗岩砕石100gを法線方向から30°の角度で塗面に吹き付け、これによる塗膜のキズの発生程度などを目視で観察し評価した。
【0074】
◎:キズの大きさはかなり小さく、本水性塗料の塗膜が露出も少ない
○:キズの大きさは小さく、本水性塗料の塗膜が露出している程度
△:キズの大きさは小さいが、素地の鋼板が露出している
×:キズの大きさはかなり大きく、素地の鋼板も大きく露出している
(注13)タレ性:
水性中塗塗膜のタレ性の評価を行った。
【0075】
○は、タレなく仕上がり性である
△は、わずかにタレがみられる
×は、タレが著しい
【0076】
【発明の効果】
本発明の水性塗料の塗膜形成方法を自動車ボディなどの複雑形状の被塗物に用いる場合においても、仕上がり性、及びワキ、タレ性、などの作業性、及び耐チッピング性、耐水性に優れる塗装物品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車ボディを水性塗料によって塗装する塗装ラインのモデル図である。
【符号の説明】
1 準備ゾーン
2 自動車ボディの外板を塗装するゾーン
3 自動車ボディの内板を塗装するゾーン
4 静電塗装機
5 スプレー塗装を行う作業員
6 自動車ボディ
【発明の属する技術分野】本発明は、水性塗料の塗膜形成方法に関し、詳しくは自動車ボディの外板をライン塗装する際に、本水性塗料を中塗り塗料として使用し、得られた塗膜が、仕上り性、耐チッピング性、耐水性に優れる塗膜を形成する方法に関する。
【0002】
【従来技術及びその課題】
自動車車体の外板部は、防食及び美感の付与を目的として、通常、カチオン電着塗料による下塗り塗膜、中塗り塗膜、及び上塗り塗膜からなる複層塗膜により被覆されている。
従来の塗料は有機溶剤を用いた塗料が主流であったが、有機溶剤を用いた場合には常に火災の危険がつきまとい、さらに使用者の健康への影響、また最近になって特に環境への影響が懸念されており、安全で無害な溶媒を用いた塗料が求められている。
【0003】
このことから、自動車塗料の面でも塗料の水性化が進んできており、耐チッピング性の機能が要求される自動車用の塗料においても水性塗料が開発されている。
最近の水性化の傾向から、自動車メーカーなどのユーザーにおいて水性塗料の材質の承認を受け、塗装ラインにて塗装されるようになってきた。しかし自動車ボディのような複雑形状の被塗物に水性塗料を塗装する場合、塗膜の仕上り性は塗料の固形分、粘度、ブース温度・湿度などの塗装条件によって大きく変動し、外板の外観不良、特に肌荒れや、ワキやタレなどの不具合を生じることがある。その場合の塗膜の補修には大変な手間がかかり、例えば、塗装ライン停止した場合には大きく生産性の低下に影響を及ぼすことを認識するものの、その対策には塗装ラインにおいて試行錯誤を繰り返すばかりであった。
【0004】
特開2003−20441号公報には、ウレタン変性ポリエステル樹脂、ブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂、偏平状顔料粒子を含有した水性塗料に関する発明がある
【特許文献1】。
しかしながら、特開2003−20441号公報には、塗装ラインではなく、鋼板の被塗物に該水性塗料を使用して中塗り塗膜を形成し、さらに上塗り塗膜を形成してなる複層塗膜の耐チッピング性などが向上する旨記載されているが、自動車ボディーのような複雑な形状の被塗物に水性塗料を塗装ラインで塗装して塗膜を形成する場合に生ずる上記した問題点について具体的な記載も、それを示唆する記載もなく、したがって、上記問題点を解決するための具体的な手段についても記載されていない。
【0005】
そこで水性塗料をライン塗装した場合に、自動車ボディの外板のように、複雑な形状を有する被塗物にワキ・タレなどの仕上り性の不具合を生じることなく、かつ耐チッピング性、耐水性に優れる水性塗料の塗膜形成方法が強く求められていた。
【0006】
【特許文献1】
特開2003−20441号公報
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、水性塗料のライン塗装において、被塗物に外観不良や、ワキ・タレなどの不具合を生じることなく、かつ耐チッピング性、耐水性に優れる塗膜の形成方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
1.水酸基含有樹脂(A)、ブロックポリイソシアネート化合物及び/又はメラミン樹脂の硬化剤(B)、偏平状顔料(C)を必須成分として含有する水性塗料を、(1)塗装時の固形分が45〜70重量%で、(2)20℃での塗料粘度がフォードカップ#4にて40〜50秒となるように調整し、塗装ブース温度15〜40℃、塗装ブース湿度60〜90%の条件にて塗装ラインの被塗物に塗装することを特徴とする水性塗料の塗膜形成方法、
2.水性塗料が、さらに水酸基含有樹脂樹脂(A)と硬化剤(B)の固形分合計100重量部に対して、5〜40重量部の水溶性有機溶剤(D)を含んでなる1項に記載の水性塗料の塗膜形成方法、
3.水性塗料の塗装が、ベル回転数20,000〜50,000rpmで、かつ吐出量200〜500ml/分の条件で、静電塗装機によってなされることを特徴とする1項又は2項に記載の水性塗料の塗膜形成方法、
4.水酸基含有樹脂(A)がポリエステル樹脂であって、構成する多塩基酸と多価アルコールの固形分総合計量に対して、脂環式多塩基酸及び/又は脂環式多価アルコールの割合が20〜70重量%であるポリエステル樹脂(a)を含有する請求項1項に記載の水性塗料の塗膜形成方法、
5.1項〜3項のいずれか1項に記載の水性塗料が、自動車用の水性中塗り塗料である水性塗料の塗膜形成方法。
【0009】
6.被塗物が自動車ボディの外板である1項〜4項に記載のいずれか1項に記載の水性塗料の塗膜形成方法。
7.1項〜6項のいずれか1項に記載の水性塗料の塗膜形成方法を用いて得られた塗装物品、に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の水性塗料の塗膜形成方法について詳細に説明する。該水性塗料の塗膜形成方法は、自動車ボディの塗装ラインにおける水性中塗り塗料の塗膜形成方法として好適に用いられるため、自動車ボディの塗装ラインを例にとり説明する。
【0011】
自動車ボディの水性塗料の塗装ラインの一例の概要は、図1のように示される。図1において、自動車ボディ(6)は、準備ゾーン(1)を経て、外板を塗装するゾーン(2)において静電塗装機(4)によって塗装され、次に内板を塗装するゾーン(3)においては、スプレー作業を行う作業員(5)によって内板がスプレー塗装される。
【0012】
自動車ボディの部位は、垂直部や水平部、曲面部、鍵穴、ネジ穴などがあり、塗装された塗膜も水性塗料の性状や塗装されるブースの条件によって、ワキ・タレなどの塗膜欠陥を生じる。本発明は、塗膜欠陥を解消し、仕上り性、耐チッピング性、耐水性に優れる水性塗料の塗膜形成方法に関する。
本発明の水性塗料の塗膜形成方法における塗装条件は、条件(1):水性塗料の塗装時の塗料固形分(注1)が45〜70重量%、好ましくは50〜55重量%の範囲がよい。この範囲の塗料固形分であれば、塗膜がワキ・タレが発生し難い。
【0013】
ここで固形分が45重量%未満では塗膜のタレが発生し易く、塗料固形分が70重量%を越えるとフロー性が低下するため外観不良が発生し易い。塗料固形分がこの範囲にある場合の粘度であれば、自動車ボディの垂直部、特に鍵穴の回りに塗料のワキ・タレが発生し難い。粘度がフォードカップ#4(20℃)にて40秒未満であると塗膜がタレ易く、50秒を越えると外観不良、ワキが発生し易い。
(注1)塗料固形分:塗料固形分の測定は、式(1)に従って求めた。
【0014】
塗料固形分(重量%)=[(X2−X)/(X1−X)]×100…式(1)
(式中、Xは容器の質量、X1は塗料と容器の合計重量、X2は110℃±5℃で60分間乾燥後の塗料と容器の合計重量を表す)
条件(1)に加えて、条件(2)として、水性塗料の粘度がフォードカップ#4にて40〜50秒(20℃)の範囲であることが挙げられる。
【0015】
これらの条件(1)と条件(2)に加えて、条件(3)として塗装ブース温度が15〜40℃、条件(4)として塗装ブース湿度が60〜90%の範囲であることが望まれる。
塗装ブースの温度と湿度が上記の範囲であると、塗装後の溶媒の蒸発が適度に進み、塗膜のワキ・タレの発生がない良好な仕上り性となる。しかし塗装ブースの温度、又は湿度のいずれかが上記の範囲をはずれると塗膜に外観不良、及びワキ・タレなどの不具合を生じることとなる。
【0016】
条件(1)〜条件(4)での水性中塗り塗料の塗装は、ロボットによる静電塗装機(図1の5)によってなされることが好ましく、静電塗装機(例えば、ABB株式会社製、カートリッジ式メタベル機)を用いて、ベル回転数20,000〜40,000rpm、好ましくは25,000〜35,000rpmの範囲、かつ吐出量200〜400ml/分(詳しくは、水平部250〜350ml/分、垂直部300〜400ml/分)の範囲とすることによって、ワキ・タレの発生がなく仕上がり性に優れる塗膜を得ることができる。
【0017】
また静電塗装時の印加電圧としては、−90kV〜−60kVの範囲、吐出圧(SA)は1.0〜2.0kg/cm2の範囲がよい。水性中塗り塗料を塗装する際は、条件(1)〜条件(4)で、かつ上記の静電塗装の条件にて塗装する。この範囲を越えるか、又は未満であると外観不良や、ワキ・タレが発生する。
次に、水性塗料の塗装後は、以下の方法(I)〜方法(III)等の塗膜形成方法によって複層塗膜を形成することができる。
【0018】
方法(I)としては、水性塗料の塗膜の硬化塗膜上に、上塗り塗料(ソリッド色)をエアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装などの方法によって乾燥膜厚が約10〜50μmとなるように塗装し、焼き付け温度として約100〜180℃で約10〜90分間加熱してなる2コート2ベーク方式(2C2B);及び水性塗料のウェット塗膜上に、ウェットオンウエットにて、上塗り塗料(ソリッド色)を塗り重ねてなる2コート1ベーク方式(2C1B)が挙げられる。
方法(II)として、水性塗料の塗膜の硬化塗膜上に、着色ベース塗料をエアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装などの方法によって乾燥膜厚が約10〜50μmとなるように塗装し、ウェットオンウエットにて、又は硬化し、クリア塗料を膜厚が硬化膜厚で約10〜70μmになるように塗装し、焼き付け温度で、約60〜160℃で約10〜90分間加熱してなる3コート2ベーク方式(3C2B)、3コート3ベーク方式(3C3B);及び
【0019】
水性塗料のウェット塗膜上に、ウェットオンウエットにて、着色ベース塗料をエアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装などの方法によって乾燥膜厚が約10〜50μmとなるように塗装し、ウェットオンウエットにて、又は硬化し、クリア塗料を膜厚が硬化膜厚で約10〜70μmになるように塗装し、焼き付け温度で、約60〜160℃で約10〜90分間加熱してなる3コート1ベーク方式(3C1B)、3コート2ベーク方式(3C2B);
【0020】
方法(III)として、水性塗料の塗膜の硬化塗膜上に、着色ベース塗料をエアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装などの方法によって乾燥膜厚が約10〜50μmとなるように塗装し、ウェットオンウエットにて、又は硬化し、第1クリア塗料を膜厚が硬化膜厚で約10〜70μmになるように塗装し、ウェットオンウエットにて、又は硬化し、第2クリヤ塗料を膜厚が硬化膜厚で約10〜70μmになるように塗装し、焼き付け温度で、約60〜160℃で約10〜90分間加熱してなる4コート2ベーク方式(4C2B)、4コート3ベーク方式(4C3B)、4コート4ベーク方式(4C4B);及び
【0021】
水性塗料のウェット塗膜上に、ウェットオンウエットにて、着色上塗ベース塗料をエアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装などの方法によって乾燥膜厚が約10〜50μmとなるように塗装し、ウェットオンウエットにて、又は硬化し、第1クリア塗料を膜厚が硬化膜厚で約10〜70μmになるように塗装し、ウェットオンウエットにて、又は硬化し、第2クリヤ塗料を膜厚が硬化膜厚で約10〜70μmになるように塗装し、焼き付け温度で、約60〜160℃で約10〜90分間加熱してなる4コート2ベーク方式(4C2B)、4コート3ベーク方式(4C3B)などが挙げられる。
【0022】
水性塗料
本発明の水性塗料の塗膜形成方法に用いる水性塗料は、水酸基含有樹脂(A)、ブロックポリイソシアネート化合物及び/又はメラミン樹脂の硬化剤(B)、偏平状顔料(C)を含有する。
水酸基含有樹脂(A)としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ヒドロキシアクリル樹脂等を用いることができる。ポリエステル樹脂については樹脂中の水酸基の一部にポリイソシアネート化合物をウレタン化反応により伸長させ高分子量化したウレタン変性の水酸基含有樹脂を用いてもよい。
例えば、ウレタン変性水酸基含有ポリエステル樹脂は、水酸基含有ポリエステル樹脂中の水酸基の一部にポリイソシアネート化合物をウレタン化反応により伸長させ高分子量化した、1分子中に水酸基及びブロックイソシアネート基が併存する樹脂で、自己架橋性樹脂である。
【0023】
水性塗料が、自動車塗料用の中塗り塗料として用いる場合には、主にポリエステル樹脂、アクリル樹脂が用いられる。
ポリエステル樹脂は、1分子中に2個以上の水酸基を有しており、多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応により調製することができる。 多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4′−ジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸及びその無水物;ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸及びその無水物;アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、アゼライン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸及びその無水物;これらのジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル;トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメット酸、トリメシン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、テトラクロロヘキセントリカルボン酸及びその無水物などの3価以上の多塩基酸などが挙げられる。
【0024】
多価アルコールは、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピヴァリン酸ネオペンチルグリコールエステルなどの2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルジオール類;
【0025】
プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドなどのα−オレフィンエポキシド、カージュラE10[シェル化学社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル]などのモノエポキシ化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニットなどの3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類;1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールA及び水添ビスフェノールFなど脂環族多価アルコールなどが挙げられる。
【0026】
ウレタン変性ポリエステル樹脂は、水酸基含有ポリエステル樹脂中の水酸基の一部に、部分ブロックポリイソシアネート化合物をウレタン化反応せしめることによって得ることができる。 水酸基含有ポリエステル樹脂は1分子中に2個以上の水酸基を有しており、このものは多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応により調製することができる。
【0027】
部分ブロックポリイソシアネート化合物は、ブロックされていない遊離のイソシアネート基及びブロック剤で封鎖されたブロックイソシアネート基が1分子中に併存している化合物であり、例えば、ポリイソシアネート化合物中の遊離イソシアネート基の一部をブロック剤で封鎖することにより得られる。
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に、封鎖されていない遊離のイソシアネート基を2個以上有する化合物である。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族系ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロペンタンジイソシアネートなどの脂環式系ジイソシアネート化合物;
【0028】
キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トルイジンジイソシアネ−ト、ジフェニルエーテルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、ジメチル−ビフェニレンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;
【0029】
トリフェニルメタントリイソシアネート、トリイソシアナトベンゼン、トリイソシアナトトルエン、ジメチルジフェニルメタンテトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネ−ト基を有するポリイソシアネート化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロ−ルプロパンなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;
【0030】
ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などのビューレットタイプ付加物、イソシアレート環タイプ付加物などがあげられる。
【0031】
ブロック剤は、遊離のイソシアネート基を封鎖する化合物である。ブロックされたイソシアネート基は、例えば100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱すると、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基が再生され、水酸基などと容易に反応させることができる。
ブロック剤として、例えば、フェノール、クレゾールなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;
【0032】
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール系;ベンジルアルコール;グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどのグリコール酸エステル;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル;メチロール尿素、ジアセトンアルコールなどのアルコール系;アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;
【0033】
ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系などが挙げられる。
【0034】
ウレタン変性ポリエステル樹脂を調製するにあたり、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基の一部をブロック剤で封鎖して、1分子中に遊離のイソシアネート基及び封鎖されたブロックイソシアネート基を1分子中に1個以上有する部分ブロックポリイソシアネート化合物をあらかじめ準備しておくことが好ましい。ポリイソシアネート化合物とブロック剤との反応は既知の条件で行なうことができる。また、両成分の比率は、得られる部分ブロックポリイソシアネート化合物が、1分子中に、遊離のイソシアネート基及び封鎖されたブロックイソシアネート基をそれぞれ少なくとも1個有している範囲内であれば、特に制限はない。
【0035】
かかる部分ブロックポリイソシアネート化合物を、水酸基含有ポリエステル樹脂中の一部の水酸基に反応せしめることによりウレタン変性ポリエステル樹脂が得られる。部分ブロックポリイソシアネート化合物と水酸基含有ポリエステル樹脂とのウレタン化反応は、通常のウレタン化反応の条件下で行なうことができる。
【0036】
また水酸基含有ポリエステル樹脂中の水酸基の一部に未ブロックのポリイソシアネート化合物の一部のイソシアネート基を反応せしめてなる生成物の残りのイソシアネート基をブロック剤で封鎖することによってもウレタン変性のポリエステル樹脂が得られる。
かくして得られるウレタン変性ポリエステル樹脂は、水酸基価が20〜200mgKOH/g、特に40〜120mgKOH/g、イソシアネート基価が5〜120mgKOH/g、特に10〜50mgKOH/g、酸価が100mgKOH/g以下、特に10〜60mgKOH/g、数平均分子量が1000〜20000、特に1500〜10000の範囲内が好ましい。
【0037】
他に、脂環式多塩基酸及び/又は脂環式多価アルコールを必須成分とし、必要に応じてその他の多塩基酸、その他の多価アルコールを含有してなるポリエステル樹脂(a)も使用することができる。脂環式多塩基酸は、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、及びこれらの無水物などが挙げられる。その他の多塩基酸は、ポリエステル樹脂と同様の多塩基酸を使用することができる。
【0038】
脂環式多価アルコールは、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上の水酸基とを有する化合物であり、例えば、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、スピログリコール、ジヒドロキシメチルトリシクロデカンなどが挙げられる。その他の多価アルコールは、ポリエステル樹脂と同様の多価アルコールを使用することができる。
【0039】
ポリエステル樹脂(a)における脂環式多塩基酸及び/又は脂環式多価アルコールの含有量は、ポリエステル樹脂(a)を構成するモノマーの固形分合計に対し20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%の範囲がよい。脂環式多塩基酸及び/又は脂環式多価アルコールの含有量が20重量%未満では、耐チッピング性の向上に効果がなく、また70重量%を越えると耐候性が低下する。
【0040】
上記、脂環式多塩基酸やその他の多塩基酸、及び/又は脂環式多価アルコールやその他の多価アルコールを反応させてなるポリエステル樹脂(a)の重量平均分子量は1,000〜1000,000、好ましくは2,000〜10,000、水酸基価は30〜200mgKOH/g、好ましくは50〜180mgKOH/gの範囲、酸価は5〜100mgKOH/g、好ましくは10〜60mgKOH/gの範囲内が適している。
【0041】
他に、アクリル樹脂は、水酸基含有モノマー、及びアクリル系モノマーを含有する重合性モノマー成分を通常の条件で共重合することによって製造でき、その数平均分子量は1000〜50000、特に2000〜20000、水酸基価は20〜200mgKOH/g、特に50〜150mgKOH/g、酸価は3〜100mgKOH/g、特に20〜70mgKOH/gが好ましい。
【0042】
水酸基含有モノマーは1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物であり、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの炭素数2〜20のグリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物などがあげられる。
また、アクリル系モノマーは(メタ)アクリル酸と炭素数1〜22の1価アルコールとのモノエステル化物であり、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどが挙げられる。
【0043】
硬化剤(B):架橋成分として用いる硬化剤(B)としては、1分子中に2個以上の遊離のイソシアネ−ト基を有する化合物でポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック剤でブロックしたブロックポリイソシアネート、又はメラミン樹脂を用いることができる。
ブロックポリイソシアネートにおけるポリイソシアネート種としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ−ト、ダイマ−酸ジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−トなどの脂肪族ポリイソシアネ−ト類;及びこれらのポリイソシアネ−トのビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;
【0044】
イソホロンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネ−トのビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;
【0045】
キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4′−トルイジンジイソシアネ−ト、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、(m−又はp−)フェニレンジイソシアネート、4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;及びこれらのポリイソシアネ−トのビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;
【0046】
トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4′−ジメチルジフェニルメタン−2,2′,5,5′−テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネ−ト基を有するポリイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネ−トのビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;
【0047】
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロ−ルプロパン、ヘキサントリオ−ルなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;及びこれらのポリイソシアネ−トのビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;等が挙げられる。
【0048】
ブロック剤は、遊離のイソシアネート基を封鎖するものであり、例えば100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱すると解離し、水酸基と容易に反応することができる。かかるブロック剤として、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;
【0049】
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチルなどのグリコール酸エステル;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレ−ト、2−ヒドロキシエチルメタクリレ−トなどのアルコール系;
【0050】
ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;
マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;
【0051】
ピラゾール;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系などが挙げられる。
【0052】
硬化剤(B)として、メラミン樹脂を併用することもできる。メラミンは、トリアジン核1個あたりメチロール基が平均3個以上メチルエーテル化されたメラミンや、そのメトキシ基の一部を炭素数2個以上のモノアルコールで置換したメラミン樹脂である。
メラミン樹脂としては、メラミンとアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂があげられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等がある。また、このメチロール化アミノ樹脂のメチロール基の一部又は全部をモノアルコールによってエーテル化したものも使用できる。エーテル化に用いられるモノアルコールとしてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。
【0053】
さらにイミノ基を有し、かつ平均縮合度約2以下で1核体の割合が約50重量%以上である親水性メラミンが好適に使用できる。
偏平状顔料(C):偏平状顔料(C)は、うろこのような薄く平らな形状の顔料であり、例えば、タルク、アルミニウムフレーク、雲母フレークなどがあげられ、このうちタルクが好ましい。偏平状顔料(C)の大きさは、厚さは0.1〜2μm、特に0.2〜1.5μm、長手方向寸法は1〜100μm、特に2〜20μmが好ましい。
【0054】
上記の水酸基含有樹脂(A)、硬化剤(B)、偏平状顔料(C)の構成比率は特に制限されず、目的に応じて任意に選択できる。具体的には、水酸基含有樹脂(A)、硬化剤(B)の合計重量を基準に、水酸基含有樹脂(A)は45〜80重量%、特に55〜75重量%、硬化剤(B)は20〜55重量%、特に35〜50重量%の範囲内が好ましい。また偏平状顔料(C)は、水酸基含有樹脂(A)、硬化剤(B)の合計固形分100重量部あたり、5〜50重量部、特に10〜30重量部が適している。
【0055】
また水性塗料には水溶性有機溶剤(D)を添加することによって ヌレ性、ワキ性を向上することもできる。具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。この中でも特に、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
水溶性有機溶剤(D)の含有量としては、水酸基含有樹脂(A)、硬化剤(B)の合計固形分100重量部あたり1〜30重量部、好ましくは10〜25重量部、さらに好ましくは15〜20重量部が適している。
【0056】
水性塗料における水酸基含有樹脂(A)のカルボキシル基を、中和剤で中和することにより水分散することができる。そのような中和剤として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−またはジ−iso −プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミンを挙げることができる。
【0057】
他に、水性塗料は、必要に応じて、水酸基含有ウレタン樹脂、ウレタンエマルション、着色顔料、アルミニウムフレークやマイカなどのメタリック顔料、体質顔料、分散剤、沈降防止剤、有機溶剤、ウレタン化反応促進用触媒(例えば有機スズ化合物など)、水酸基とメラミン樹脂との架橋反応促進用触媒(例えば、酸触媒)、消泡剤、増粘剤、防錆剤、紫外線吸収剤、表面調整剤などを適宜に配合することができる。
【0058】
さらに塗膜の架橋反応を促進するのに硬化触媒を加えることもできる。具体的には、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、モノブチル錫トリオクテート、2−エチルヘキン酸鉛、オクチル酸亜鉛などの有機金属化合物を挙げることできる。
【0059】
硬化触媒の使用量は任意に選択できるが、水酸基含有樹脂(A)、硬化剤(B)の固形分合計あたり0.005〜5重量%、特に0.01〜3重量%の範囲が適している。
【0060】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「部」及び「%」は「重量部」及び「重量%」を示す。
製造例1 ポリエステル樹脂No.1(ウレタン変性ポリエステル樹脂)の製造
トリメチロールプロパン0.2モル、1,6−ヘキサンジオール0.8モル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸0.4モル、及びアジピン酸0.3モルを反応させた後、さらに無水トリメリット酸0.05モルを付加してなるポリエステル樹脂(100部)に、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)2モルとジメチロールプロピオン酸1モルを反応させてなる樹脂溶液(30部)とをメチルエチルケトン中で反応させてなる生成物(130部)に含まれる水酸基の一部に、メチルエチルケトンオキシムと4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)とを等モル比で反応させてなるハーフブロックポリイソシアネート化合物(10部)を反応した。
【0061】
次いで、脱溶剤し、ジメチルエタノールアミンを加えて中和し、水に混合して水分散液とし、固形分60重量%のポリエステル樹脂No.1 を得た。ポリエステル樹脂No.1の水酸基価は90mgKOH/g、酸価は38mgKOH/g、NCO価は10、数平均分子量は2,000であった。
製造例2 ポリエステル樹脂No.2(ウレタン変性ポリエステル樹脂)の製造
製造例1の「4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)」を「テトラメチルキシリレンジイソシアネート」に変更した以外は、製造例1に準じて行なって、水に混合して水分散液とし、固形分60重量%のポリエステル樹脂No.2を得た。ポリエステル樹脂No.2の水酸基価は90mgKOH/g、酸価は38mgKOH/g、NCO価は10、数平均分子量は2,000であった。
【0062】
製造例3 ポリエステル樹脂No.3の製造
ネオペンチルグリコール0.27モル、トリメチロールプロパン0.33モル、ブチルエチルプロパンジオール0.4モル、イソフタル酸0.25モル、アジピン酸0.3モル及びヘキサヒドロ無水フタル酸0.3モルを反応してなる生成物に無水トリメリット酸0.05モルを付加せしめた後、脱溶剤を行ない、ジメチルエタノールアミンで中和してから、水に混合して水分散液とし、固形分60重量%のポリエステル樹脂No.3を得た。ポリエステル樹脂No.3の水酸基価は130mgKOH/g、酸価は25mgKOH/g、数平均分子量は1,800であった。
【0063】
製造例4 ポリエステル樹脂No.4(ポリエステル樹脂(a))の製造
1,3−シクロヘキサンジカルボン酸 0.27モル、アジピン酸0.3モル、トリメチロールプロパン0.33モル、ネオペンチルグリコール0.27モル、及び1,4−シクロヘキサンジメタノール0.19モルを反応せしめてなる生成物に無水トリメリット酸0.05モルを付加せしめた後、脱溶剤を行ない、ジメチルエタノールアミンで中和してから、水に混合して水分散液とし、固形分60重量%のポリエステル樹脂No.4を得た。ポリエステル樹脂No.4は、水酸基価は150mgKOH/g、酸価は35mgKOH/g、数平均分子量は2,000であった。
【0064】
製造例5 硬化剤No.1(ブロックポリイソシアネート)の製造
ヘキサメチレンジイソシアネート50部をメチルケトオキシム40部に40〜60℃で攪拌下に滴下した後、80℃で1時間加熱し、固形分90%の硬化剤No.1を得た。
製造例6 水性中塗り塗料No.1の製造
ポリエステル樹脂No.1 20部(固形分)、タルク(注2)20部、JR−806 60部(注3)、カーボンMA−100(注4) 0.6部、バリタ40部を加えて顔料分散し、さらにポリエステル樹脂No.1 20部(固形分)、ポリエステル樹脂No.3 20部(固形分)、硬化剤No.1 30部(固形分)とサイメル325 (注5)10部、脱イオン水を加えて、フォードカップNo.4によって50秒(20℃)に調製して水性中塗り塗料No.1を得た。
【0065】
製造例7 水性中塗り塗料No.2の製造
表1の配合内容で、フォードカップNo.4によって45秒(20℃)に調製して水性中塗り塗料No.2を得た。
製造例8 水性中塗り塗料No.3の製造
表1の配合内容で、フォードカップNo.4によって48秒(20℃)に調製して水性中塗り塗料No.3を得た。
【0066】
【表1】
【0067】
(注2)タルク(厚さは0.3〜0.9μm、長手方向寸法は5〜10μm、偏平状顔料(C)に相当)
(注3)JR−806:テイカ社製、商品名、チタン白
(注4)カーボンMA−100:三菱化学社製、商品名、カーボンブラック
(注5)サイメル325:三井サイテック社製、商品名、イミノ基含有メラミン樹脂
(注6)水溶性有機溶剤:トリプロピレングリコールモノメチルエーテルを使用
被塗物の調整
1.自動車ボディ:パルボンド#3020(日本パーカライジング株式会社製、商品名、りん酸亜鉛処理)を施した自動車ボディに、エレクロンGT−10LF(関西ペイント株式会社製、商品名、鉛フリーカチオン電着塗料)を電着塗装し焼き付けて、膜厚約20μmの塗膜を得た。
【0068】
2.パネル:自動車ボディのタイヤハウス部分にパネル(100×300×0.8mmの大きさの亜鉛メッキ鋼板)を吊るして、自動車ボディとパネルを同時に化成処理、電着塗装を施した。
実施例1
コンベア速度7.5m/分の塗装ライン上で、以下の塗装条件にて静電塗装機(ABB株式会社製カートリッジ式メタベル機)を用い、被塗物(自動車ボディ、パネル)に水性中塗り塗料No.1を(1)塗装時の固形分を45重量%、(2)塗装粘度を41秒(フォードカップNo.4、20℃)に調整して、1分30秒間の静電塗装を行って塗膜を得た後、80℃−3分間でプレヒート後、150℃−20分間焼き付けて、試験板No.1を得た。
【0069】
その時の(3)塗装ブース温度は18℃、(4)塗装ブース湿度は65%、静電塗装機のベル回転数 は30,000rpm、吐出量 は350ml/分(垂直部)であった。
実施例2〜3
表2のような水性中塗り塗料、及び塗装条件にて、試験板No.2〜No.3を得た。
【0070】
比較例1〜5
表2のような水性中塗り塗料、及び塗装条件にて、試験板No.4〜No.9を得た。
試験結果
上記のようにして形成された塗膜について各種試験を行った試験結果を併せて表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
(注7)塗料固形分(%):注1の方法に従って行った。
(注8)塗料粘度(秒):フォードカップ#4を用い、20℃にて測定した。
(注9)水性中塗塗面の仕上り性:被塗物として自動車ボディを用いて、水性中塗り塗膜面の評価を行った。
◎は、問題なく良好
○は、わずかに肌が荒れるが問題なし
△は、ハダアレが見られる
×は、ハダアレが著しい
(注10)上塗り塗膜面の仕上り性:被塗物としてパネルを用いて、各々の水性塗料を乾燥膜厚30μm塗装して150℃で20分間焼き付けた後、WBC710T(関西ペイント株式会社製、商品名、アクリル・メラミン樹脂系着色上塗ベース塗料)を乾燥膜厚15μm施し、80℃で3分間加熱してから、その塗面にKINO#1200TW(関西ペイント社製、商品名、アクリル・エポキシ樹脂系上塗クリヤ塗料)を乾燥膜厚35μmに塗装し、140℃で20分加熱して複層塗膜を得た。上記の複層塗膜を(注9)の水性中塗塗面の仕上り性試験と同様の基準にて評価した。
(注11)耐水性:(注10)と同様の方法にて複層塗膜を有する試験板を作成し、その試験板を40℃の温水に10日間浸漬した後の塗面を目視観察した結果である。
【0073】
○:ブリスターなどの発生が全く認められない
△:ブリスターなどの発生が少し認められる
×:ブリスターなどの発生が多く認められる
(注12)耐チッピング性:米国 Q−PANEL社製、Q−G−Rグラベロメータ(チッピング試験装置)の試片保持台に試験板を設置し、−20℃において、3kgf/cm2(0.294MPa)の圧縮空気により粒度7号の花崗岩砕石100gを法線方向から30°の角度で塗面に吹き付け、これによる塗膜のキズの発生程度などを目視で観察し評価した。
【0074】
◎:キズの大きさはかなり小さく、本水性塗料の塗膜が露出も少ない
○:キズの大きさは小さく、本水性塗料の塗膜が露出している程度
△:キズの大きさは小さいが、素地の鋼板が露出している
×:キズの大きさはかなり大きく、素地の鋼板も大きく露出している
(注13)タレ性:
水性中塗塗膜のタレ性の評価を行った。
【0075】
○は、タレなく仕上がり性である
△は、わずかにタレがみられる
×は、タレが著しい
【0076】
【発明の効果】
本発明の水性塗料の塗膜形成方法を自動車ボディなどの複雑形状の被塗物に用いる場合においても、仕上がり性、及びワキ、タレ性、などの作業性、及び耐チッピング性、耐水性に優れる塗装物品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車ボディを水性塗料によって塗装する塗装ラインのモデル図である。
【符号の説明】
1 準備ゾーン
2 自動車ボディの外板を塗装するゾーン
3 自動車ボディの内板を塗装するゾーン
4 静電塗装機
5 スプレー塗装を行う作業員
6 自動車ボディ
Claims (7)
- 水酸基含有樹脂(A)、ブロックポリイソシアネート化合物及び/又はメラミン樹脂の硬化剤(B)及び偏平状顔料(C)を必須成分として含有する水性塗料を、(1)塗装時の固形分が45〜70重量%で、(2)20℃での塗料粘度がフォードカップ#4にて40〜50秒となるように調整し、塗装ブース温度15〜40℃、塗装ブース湿度60〜90%の条件にて塗装ラインの被塗物に塗装することを特徴とする水性塗料の塗膜形成方法。
- 水性塗料が、さらに水酸基含有樹脂樹脂(A)と硬化剤(B)の固形分合計100重量部に対して、5〜40重量部の水溶性有機溶剤(D)を含んでなる請求項1に記載の水性塗料の塗膜形成方法。
- 水性塗料の塗装が、ベル回転数20,000〜50,000rpmで、かつ吐出量200〜500ml/分の条件で、静電塗装によってなされることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性塗料の塗膜形成方法。
- 水酸基含有樹脂(A)がポリエステル樹脂であって、構成する多塩基酸と多価アルコールの固形分総合計量に対して、脂環式多塩基酸及び/又は脂環式多価アルコールの割合が20〜70重量%であるポリエステル樹脂(a)を含有する請求項1項に記載の水性塗料の塗膜形成方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性塗料が、自動車用の水性中塗り塗料である水性塗料の塗膜形成方法。
- 被塗物が自動車ボディの外板である請求項1〜4に記載のいずれか1項に記載の水性塗料の塗膜形成方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性塗料の塗膜形成方法を用いて得られた塗装物品。
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