JP2005010001A - 免疫測定法 - Google Patents
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Abstract
【課題】被検試料中の被検物質を広い濃度範囲に渡って解析することができる免疫測定法用の試験片、及び該試験片を使用する免疫測定法を提供する。
【解決手段】被検物質を含む被検試料と、該被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質と標識物質とを含有してなる標識複合体とを接触させ、被検物質と標識複合体により免疫複合体を形成させ、該免疫複合体を吸水性基材上で捕捉し、捕捉された免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルを検出し、該シグナルが検出された場合に被検試料中に被検物質が存在すると判定する免疫測定法用の試験片であって、吸水性基材上に、免疫複合体を、物理的吸着により捕捉しうる第1捕捉相と、免疫学的吸着により捕捉しうる第2捕捉相とを設けてなる試験片、並びに前記試験片を使用する免疫測定法。
【選択図】 なし
【解決手段】被検物質を含む被検試料と、該被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質と標識物質とを含有してなる標識複合体とを接触させ、被検物質と標識複合体により免疫複合体を形成させ、該免疫複合体を吸水性基材上で捕捉し、捕捉された免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルを検出し、該シグナルが検出された場合に被検試料中に被検物質が存在すると判定する免疫測定法用の試験片であって、吸水性基材上に、免疫複合体を、物理的吸着により捕捉しうる第1捕捉相と、免疫学的吸着により捕捉しうる第2捕捉相とを設けてなる試験片、並びに前記試験片を使用する免疫測定法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、免疫測定法用の試験片及び該試験片を使用する免疫測定法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体試料の免疫学的解析方法において、迅速かつ簡便に該試料の解析を行いうる方法としては、吸水性基材を試験片として使用する免疫クロマトグラフ法が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。当該方法は、例えば、以下の行程で行われる。即ち、被検試料中の被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質(i)を固定化した試験片上の固定相において、該被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質(ii)と標識物質とを固定化した標識複合体と該被検物質とからなる免疫複合体を特異的結合物質(i)により捕捉する。次いで固定相に捕捉された免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルを検出することにより、間接的に被検試料中の被検物質の存在を検出する。
【0003】
例えば、標識物質として着色粒子を使用した場合、シグナルの検出は、該粒子に基づく発色を観察することにより行うことができる。さらに、固定相に適当な波長の光照射を行い、発色に基づく反射光を光学的手法により測定することで、被検試料中の被検物質の濃度を定量することができる。
【0004】
しかしながら、前記方法によると、被検試料中に高濃度で被検物質が含まれる場合には、被検物質と、標識複合体の特異的結合物質(ii)とが多数結合して凝集し、また、固定相においては被検物質と特異的結合物質(i)とが多数結合し、その結果、固定相で免疫複合体が捕捉されにくくなり、発色強度が弱くなる、いわゆるプロゾーン現象が生じる。それゆえ、特に光学的手法により被検試料中の被検物質の濃度を定量する場合、測定可能な被検物質濃度の範囲が限られるという問題がある。
【0005】
【非特許文献1】
Kevin D. Jones、“Troubleshooting protein binding in nitrocellulose membranes”、〔online〕、〔平成15年2月5日検索〕インターネット<URL: http://www.devicelink.com/ivdt/archive/99 /03/009.html>
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、被検試料中の被検物質を広い濃度範囲に渡って解析することができる免疫測定法用の試験片、及び該試験片を使用する免疫測定法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、
〔1〕 被検物質を含む被検試料と、該被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質と標識物質とを含有してなる標識複合体とを接触させ、被検物質と標識複合体により免疫複合体を形成させ、該免疫複合体を吸水性基材上で捕捉し、捕捉された免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルを検出し、該シグナルが検出された場合に被検試料中に被検物質が存在すると判定する免疫測定法用の試験片であって、吸水性基材上に、免疫複合体を、物理的吸着により捕捉しうる第1捕捉相と、免疫学的吸着により捕捉しうる第2捕捉相とを設けてなる試験片、
〔2〕 吸水性基材上、第1捕捉相が第2捕捉相よりも上流側にある前記〔1〕記載の試験片、
〔3〕 第2捕捉相が、被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質を吸水性基材上に直接的に又は間接的に固定化してなるものである、前記〔1〕又は〔2〕記載の試験片、並びに
〔4〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の試験片を使用する免疫測定法であって、
(1)被検試料液と、被検試料中の被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質と標識物質とを含有してなる標識複合体とを接触させる工程、
(2)工程(1)により形成される、被検物質と標識複合体とからなる免疫複合体を、第1捕捉相及び/又は第2捕捉相で捕捉する工程、並びに
(3)捕捉された免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルを検出する工程、を含み、該シグナルが検出された場合に被検試料中に被検物質が存在すると判定する免疫測定法、
に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の試験片は、被検物質を含む被検試料と、該被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質と標識物質とを含有してなる標識複合体とを接触させ、被検物質と標識複合体により免疫複合体を形成させ、該免疫複合体を吸水性基材上で捕捉し、捕捉された免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルを検出し、該シグナルが検出された場合に被検試料中に被検物質が存在すると判定する免疫測定法に使用される試験片であって、吸水性基材上に、免疫複合体を、物理的吸着により捕捉しうる第1捕捉相と、免疫学的吸着により捕捉しうる第2捕捉相とを設けてなることを大きな1つの特徴とする。
【0009】
前記免疫測定法では、通常、試験片の一端に被検試料液(被検試料を含む水性液体)を滴下し、毛細管現象による自然展開の形で免疫複合体が捕捉されうる領域側に向かって該試料液を試験片上で展開する。本明細書においては、被検試料液を滴下する試験片の一端側を「上流」と、反対の一端側を「下流」という。
【0010】
本発明の試験片の一端に被検試料液を滴下すると、滴下された被検試料液は同様にして試験片上で展開される。その際、被検試料液と標識複合体とを予め混合して被検試料と標識複合体とを接触させておけば、被検試料中に被検物質が存在する場合、当該物質と標識複合体とが免疫複合体を形成し、被検試料中の被検物質は、当該複合体の状態で展開される。一方、被検試料液が展開される際に通過する位置に標識複合体を、例えば、水との接触により試験片から脱離するように保持させておけば、被検試料液の通過に伴って標識複合体が試験片から脱離し、被検物質と標識複合体とが免疫複合体を形成し、被検試料中の被検物質は同様に免疫複合体の状態で展開される。
【0011】
展開が進むと前記免疫複合体は捕捉相に至る。第1捕捉相においては、主として被検試料中に被検物質が高濃度で含まれる場合に発生する免疫複合体の凝集物(免疫凝集反応により生ずる沈澱物)が捕捉される。一方、第2捕捉相においては、免疫複合体が、被検物質に対する免疫学的な吸着力により捕捉される(通常の免疫クロマトグラフ法における免疫複合体の捕捉)。このように、本発明の試験片によれば、通常の免疫クロマトグラフ法と同様な免疫複合体の捕捉が行われることに加え、特に被検物質を高濃度に含む被検試料を用いる場合に生ずる、これまでの免疫測定法用の試験片では捕捉することが困難であった前記凝集物の捕捉が行われる。
【0012】
最終的に、第1捕捉相及び第2捕捉相にて免疫複合体中の標識物質を検出し、標識物質が検出された場合に被検試料中に被検物質が存在すると判定される。
【0013】
従って、本発明の試験片によれば、被検物質を高濃度に含む被検試料を用いる場合でも、プロゾーン現象による免疫測定法の感度低下の問題はなく、被検試料中の被検物質を広い濃度範囲に渡って高感度に解析することができる。
【0014】
本発明の試験片に用いられる吸水性基材としては、水性の液体を吸収可能な性質を有する基材であれば特に限定されるものではない。本発明においては、例えば、被検試料液が捕捉相に至る前における免疫複合体の充分な形成や、免疫複合体の第2捕捉相における充分な免疫学的吸着に要する時間を確保できるような適度な吸水性を有する吸水性基材が好ましい。吸水性基材の吸水性の程度は、例えば、厚さ1mm×幅5mm×長さ100mmの吸水性基材の片端部を水に4分間浸漬した場合に、水に浸漬された部分とされない部分との境界位置からの吸水距離が75〜230mm程度であるのが好ましい。
【0015】
吸水性基材の好ましい具体例としては、例えば、不織布、濾紙、ガラス繊維布、ガラスフィルター、ニトロセルロース膜、ナイロン膜、酢酸セルロース膜等が挙げられる。
【0016】
また、吸水性の程度は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース等の親水性重合体を、例えば、吸水性基材の表面に被覆する、若しくは吸水性基材に含浸させることにより適宜調整することもできる。
【0017】
吸水性基材の形状は、被検試料液等の展開対象成分を展開できる形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、矩形のシート状(片状)やロッド状等の形状が好ましい。例えば、片状である場合、そのサイズは、通常、厚さ0.1〜0.2mm、縦20〜100mm、横2〜10mm程度であるのが好適である。
【0018】
第1捕捉相は免疫複合体を物理的吸着により捕捉しうる試験片の領域部分であるが、ここで「物理的吸着」とは、第1捕捉相に至った、主として免疫複合体の凝集物の平均粒径が該相を構成する材料に存在する空隙の孔径と同等以上であることから生ずる、凝集物と材料との物理的構造に基づく吸着をいう。
【0019】
免疫複合体の凝集物の平均粒径は、通常、3〜50μm程度であるので、第1捕捉相に充分な凝集物の吸着性を発揮させる観点から、該相を構成する材料としては、凝集物の平均粒径と同等以下の孔径を有する空隙が存在する材料が好ましい。例えば、空隙率80〜90%程度の材料が好適である。空隙率は、例えば、該材料の重量や比率により求めることができる。
【0020】
第1捕捉相は、吸水性基材自体の一定領域からなるものであってもよいが、例えば、吸水性基材と同等若しくはそれ以下の展開速度を有する基材等を任意の接着手段により吸水性基材上に接着して、若しくはそれらを適宜吸水性基材と連結して形成してもよい。なお、吸水性基材自体の一定領域を第1捕捉相とする場合、展開対象成分が通過する部分は全て第1捕捉相と同等の吸着性を有することになり、免疫複合体の凝集物が第1捕捉相以外の部分にも吸着される可能性がある。そこで、該凝集物を第1捕捉相で充分に捕捉する観点から、吸水性基材上に後述する標識相を第1捕捉相の上流側に形成しておくのが好適である。かかる態様においては、被検試料液が展開されて標識相に至ると、該試料液との接触により標識複合体が吸水性基材から脱離し、ここで初めて免疫複合体が形成されることになるため、被検試料液が第1捕捉相に至る前に吸水性基材に凝集物が吸着されるのを防ぐことができる。
【0021】
第1捕捉相は吸水性基材上の一定領域に任意の形状で形成されておればよいが、被検試料液の展開方向に対し垂直となる方向の該吸水性基材の幅と同様の幅で形成されるのが好ましい。また、その吸水性基材上での占有面積は、使用する吸水性基材の面積の3〜35%程度であるのが好ましい。例えば、厚さ0.1mm×幅10mm×長さ30mmの吸水性基材を試験片として用いる場合、第1捕捉相は幅10mm×長さ5mmで形成するのが好ましい。
【0022】
第2捕捉相は、免疫複合体を免疫学的吸着により捕捉しうる試験片の領域部分である。該捕捉相は、後述する、例えば、抗原、ハプテン、抗体等の、被検物質に対する特異的結合物質を、試験片として使用する吸水性基材上に直接的に又は間接的に固定化することにより形成することができる。
【0023】
第2捕捉相は吸水性基材上の所望の位置に、各成分の展開方向に対し垂直となる方向の当該吸水性基材の幅と同様の幅で形成されるのが好ましい。また、吸水性基材上での占有面積は吸水性基材の面積の0.2〜10%程度であるのが好ましい。たとえば、厚さ0.1mm×幅10mm×長さ30mmの吸水性基材を試験片として用いる場合、第2捕捉相は幅10mm×長さ1mmで形成するのが好ましい。
【0024】
また、第2捕捉相としては、免疫複合体を充分に捕捉できる量以上で特異的結合物質が固定化されてなるものが好ましい。該捕捉相における特異的結合物質の固定化量は、例えば、予想される被検試料中の被検物質量及び用いる特異的結合物質の種類により適宜決定され得、一概には決定できないが、通常、特異的結合物質を好ましくは0.005〜10mg/cm2 の範囲で均一に固定化して第2捕捉相を形成するのが好ましい。
【0025】
特異的結合物質の固定化方法としては、例えば、公知の物理的吸着法、共有結合法等が挙げられる。例えば、特異的結合物質を吸水性基材上に直接的に固定化する場合、特異的結合物質を含む任意の溶液を吸水性基材上の所望の範囲に塗布した後、適宜乾燥させることにより、若しくは特異的結合物質と親水性重合体とを含む溶液を吸水性基材上の所望の範囲に塗布した後、該親水性重合体を凝固させる凝固溶剤に当該吸水性基材を浸漬することにより、該捕捉相を形成することができる。なお、親水性重合体としては前記例示のものが挙げられ、凝固溶剤としては、アセトン、エタノール、メタノール、エーテル等が挙げられる。また、間接的に固定化する場合は、例えば、前記するようにして同様に特異的結合物質を固定化した、所望の形状を有する基材等を吸水性基材上の所望の位置に任意の接着手段により接着することにより、該捕捉相を形成することができる。
【0026】
なお、第2捕捉相を形成した吸水性基材は、被検対象でないタンパク質の当該基材上への非特異的な吸着の防止、展開の容易性、並びに固定化した特異的結合物質の保存安定性の観点から、公知の方法に従ってブロッキング剤、界面活性剤及び所望により糖を含有する溶液(以下、処理液という)に浸漬し、乾燥して用いるのが好ましい。ここで、使用するブロッキング剤としては、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、スキムミルク、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の吸水性基材に対し吸着性を有する物質が挙げられる。界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。糖としては、サッカロース、トレハロース等が挙げられる。なお、前記処理液中のブロッキング剤の含有量は、好ましくは0.1〜10重量%である。前記処理液中の界面活性剤の含有量は、好ましくは0.01〜1重量%である。前記処理液中の糖の含有量は、好ましくは0.1〜10重量%である。また、上記操作の実施は、吸水性基材に対し第2捕捉相を形成した後であれば、吸水性基材に対し任意に設けられる、後述の被検試料液滴下部等のその他の部分の形成の前であっても後であってもよく、前であるのが好ましい。
【0027】
前記第1捕捉相と第2捕捉相とは、吸水性基材上、その領域が一部重なる位置に、若しくは全く重なりあわない位置に形成される。また、第1捕捉相と第2捕捉相とは、いずれが上流側であっても、下流側であってもよい。解析感度の向上の観点より、通常、第1捕捉相がより上流側に形成されるのが好適である。
【0028】
第1捕捉相と第2捕捉相で免疫複合体を充分に捕捉して免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルの検出を容易にし、また、測定時間を短縮する観点から、被検試料液の滴下位置から、より下流側にある捕捉相までの距離(展開移動距離)としては、通常、5〜50mm程度であるのが好適である。
【0029】
試験片には、前記第1捕捉相及び第2捕捉相の他、さらに被検試料液滴下部(被検試料液を滴下するための部分)、標識複合体受領部〔標識複合体含有液(標識複合体を含有する水性液体)を滴下するための部分〕、洗浄液滴下部(洗浄液を滴下するための部分)等を任意に設けてもよい。これらは、吸水性基材上に直接的に又は間接的に設けることができる。それらの形状は、本発明の所望の効果の発現が阻害されない限り特に限定されるものではない。直接的に設ける場合は、吸水性基材の一定領域を任意に前記各部とすればよい。一方、間接的に設ける場合は、例えば、所望のサイズを有する、不織布、濾紙、ガラス繊維濾紙等、被検試料液や標識複合体含有液等を保持、放出できる材料を任意の接着手段により接着して形成する。
【0030】
また、標識複合体を水との接触により展開可能に保持させてなる標識相を試験片上に形成し、例えば、被検試料液の展開に伴って標識複合体を共に展開させてもよい。
【0031】
標識相は、標識複合体を、水との接触によって吸水性基材から脱離するように保持させた領域部分であり、吸水性基材上に直接的に又は間接的に設けることができる。
【0032】
標識相としては、被検試料液中に含まれる被検物質との免疫複合体を形成するのに充分な量の標識複合体を保持してなるものが好ましい。標識相に保持させる標識複合体の量は、被検試料液中に含まれる被検物質の予想量に応じて適宜決定することができる。標識相の形状は、本発明の所望の効果が得られれば特に限定されるものではない。直接的に設ける場合、吸水性基材の一定領域に標識複合体を保持させて形成すればよい。一方、間接的に設ける場合、所望の形状を有する、吸水性基材に使用される前記例示した材料を任意の接着手段により吸水性基材上に接着して形成すればよい。
【0033】
標識相の形成方法としては、吸水性基材上に直接的に設ける場合、例えば、水溶性重合体及び/又は糖類溶液中に標識複合体を分散させ、得られた分散液を吸水性基材上に塗布して乾操させる方法が挙げられる。一方、間接的に設ける場合、前記所望の形状を有する前記材料を該分散液中に浸漬後、乾操させ、次いで吸水性基材上に接着する方法が挙げられる。
【0034】
前記水溶性重合体としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、セルロースエステル等が好適である。また、糖類としては、例えば、サッカロース、ラフィノース、トレハロース等が好適である。また、所望により、分散液に界面活性剤を添加、混合しておいてもよい。
【0035】
洗浄液滴下部は被検試料液滴下部と同じ位置に(即ち、1つの滴下部を兼用する)、若しくはより上流側に、標識複合体受領部及び標識相は、被検試料液滴下部と同じ位置に若しくは該滴下部と捕捉相との間に形成するのが好適である。
【0036】
また、吸水性基材の下流側の末端部分に、被検試料液等の展開対象成分を吸収し、該成分が移動する部分の洗浄効果を発揮し、バックグラウンドを低下させて免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルの検出を容易化する手段である吸水パッド部を設けてもよい。吸水パッド部に使用する吸水パッドとしては水性液体の吸収性に優れる材料が好適であり、例えば、不織布、濾紙、ガラス繊維濾紙等を使用することができる。
【0037】
以上により、本発明の試験片が得られる。かかる試験片は、以下に説明する本発明の免疫測定法に好適に使用される。該試験片としては、例えば、図1のものが例示される。
【0038】
本発明の免疫測定法は、本発明の前記試験片を用いて行われるが、該測定法は、具体的には、
(1)被検試料液と、被検試料中の被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質と標識物質とを含有してなる標識複合体とを接触させる工程、
(2)工程(1)により形成される、被検物質と標識複合体とからなる免疫複合体を、第1捕捉相及び/又は第2捕捉相で捕捉する工程、並びに
(3)捕捉された免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルを検出する工程、を含み、該シグナルが検出された場合に被検試料中に被検物質が存在すると判定する免疫測定法である。
【0039】
本発明の免疫測定法の一例を、図1に示す試験片を用いて説明する。図1の試験片は、吸水性基材A上に、被検試料液滴下部1、第1捕捉相2、第2捕捉相3、標識相4及び吸水パッド部5を設けてなる。吸水パッド部5により、試験片に滴下された展開対象成分の展開が促進され得る。
【0040】
被検試料液滴下部1に被検試料液を滴下して展開する。滴下は、例えば、一定量(3〜30μl程度)の被検試料液をキャピラリーやピペットに採り、それを用いて行うことができる。展開された被検試料液が標識相4に到達すると被検試料液と標識複合体とが接触し(工程(1))、それにより、被検試料液中の水と標識複合体とが接触し、標識複合体が吸水性基材Aから脱離する。被検試料中に被検物質が存在する場合、当該被検物質は特異的結合物質との結合を介して標識複合体と結合し、〔標識複合体−被検物質〕からなる免疫複合体を形成する。被検試料中に被検物質が高濃度に含まれる場合には、さらに免疫複合体の凝集物が形成される。
【0041】
展開の進行に伴って免疫複合体又は凝集物は捕捉相に到達し、捕捉される(工程(2))。まず、第1捕捉相2では、主として免疫複合体の凝集物が捕捉される。次いで、第1捕捉相2を通過した免疫複合体は、第2捕捉相3に達する。当該捕捉相では、該捕捉相に固定化されている特異的結合物質と免疫複合体中の被検物質とが結合して、〔免疫複合体−特異的結合物質〕からなる複合体を形成し、免疫複合体が第2捕捉相3に捕捉される。
【0042】
ここで、試験片の展開対象成分が移動した部分を洗浄することを目的として、例えば、被検試料液滴下部1に洗浄液を滴下して展開させてもよい。
【0043】
洗浄液としては、例えば、pH8程度のホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液、塩化アンモニウム緩衝液、グッドの緩衝液等が用いられる。また、洗浄液には、検出操作後の試験片の保存安定性を高める観点から塩化ナトリウムやアジ化ナトリウム等の防腐剤を添加しておいてもよい。
【0044】
さらに、この後、標識物質として酵素を用いている場合は、酵素基質液を、例えば、被検試料液滴下部1に滴下し、展開させる。
【0045】
最終的に、第1捕捉相2及び第2捕捉相3に捕捉された免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルを、例えば、該物質として着色粒子を使用した場合は該粒子が発する色を、酵素を使用した場合は基質との酵素反応により生じる発色を、また、蛍光物質を使用した場合は蛍光を肉眼観察することにより、又は光学的手法による測定を行うことにより検出し(工程(3))、該シグナルが検出された場合に被検試料中に被検物質が存在すると判定する。標識物質に基づく発色等を光学的手法により測定した場合、例えば、予め検量線を作成しておけば、被検試料中の被検物質の濃度を定量することができる。本発明の免疫測定法においては、例えば、免疫複合体の凝集物由来の発色と、通常の免疫クロマトグラフ法における免疫複合体由来の発色とを同時に測定することになるため、測定値は、両測定値の総和となる。前記光学的手法としては、例えば、クロマトスキャナ(島津製作所製)等が好適に使用される。
【0046】
本発明の免疫測定法により検出されうる被検物質としては、免疫学的反応(すなわち抗原抗体反応)により、いわゆるサンドイッチ型の免疫複合体を形成しうるものであれば特に制限されない。例えば、細菌及びその構成成分、細菌が産生する毒素、タンパク質、ウイルス抗原及び抗体並びにマイコプラズマ等の生物由来成分、及び内分泌撹乱物質、農薬、医薬品などの化学物質が挙げられる。細菌及びその構成成分としては、大腸菌O157、サルモネラ菌、ブドウ球菌溶連菌、カンピロバクター菌、ウェルシュ菌、腸炎ビブリオ菌、ヘリコバクター・ピロリ菌、クラミジア・トラコマイス菌及びその構成成分等が挙げられる。細菌が産生する毒素としては、例えば、ベロトキシン、ストレプトリジンO、エンテロトキシン等が挙げられる。タンパク質としては、例えば、ヒトトランスフェリン、ヒトアルブミン、ヒト免疫グロブリン、マイクログロブリン及びC反応性タンパク質などが挙げられる。ウイルス抗原及び抗体としては、B型肝炎ウイルスのHBc、HBe及びHbs抗原並びに抗体、C型肝炎ウイルス抗原及び抗体、ヒト免疫不全ウイルス抗原及び抗体、ロタウイルス抗原及び抗体並びにアデノウイルス抗原及び抗体等が挙げられる。
【0047】
被検試料液とは前記被検物質の存在について試験するための被検試料を含む水性の液体であり、特に限定されるものではない。たとえば、食品抽出液、培養液、血液、血漿、血清、尿、便、汗、唾液等が挙げられる。また、それらを適切な希釈溶媒(例えば、任意の緩衝液等)によって希釈した希釈液であってもよい。被検試料は液体試料であっても、固体試料であってもよい。固体試料の場合、たとえば、該固体試料を適宜粉砕し、任意の緩衝液に溶解または希釈することにより被検試料液を調製することができる。緩衝液としては、特に限定されるものではないが、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液等が好適に使用される。
【0048】
第2捕捉相および標識複合体の形成に使用される特異的結合物質は被検物質に特異的に結合し得る物質であればよく、被検物質に応じてサンドイッチ型の酵素免疫測定法において汎用される公知の物質から選択され、特に限定されるものではない。たとえば、ウサギ、ヤギ、ヒツジ等に由来するポリクローナル抗体や、マウス、ラット等に由来するモノクローナル抗体を挙げることができる。また、抗体を酵素等で処理して得られるF(ab)2、Fab、H鎖、L鎖を使用しても良い。被検物質が抗体の場合は、被検物質と特異的に結合する抗原又はハプテンを用いればよく、抗原としては、タンパク質、ペプチドを、ハプテンとしては抗原決定基を有するもの等を挙げることができる。
【0049】
第2捕捉相と標識複合体の特異的結合物質は同一でも異なっていてもよいが、本発明の所望の効果の発現の観点から、以下のような組み合わせで用いるのが好適である。たとえば、第2捕捉相の特異的結合物質が抗体の場合、標識複合体の特異的結合物質としては同じ抗体または当該抗体に対する抗原の別の抗原決定基を認識する抗体を使用する。第2捕捉相の特異的結合物質が抗原またはハプテンの場合、標識複合体の特異的結合物質としては同じ抗原またはハプテン、あるいは第2捕捉相の特異的結合物質とは異なるが被検物質と特異的に結合しうる抗原、抗体、ハプテン等を使用する。
【0050】
本発明で使用する標識複合体とは、標識物質と、被検試料中の被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質とを含有してなる複合体である。
【0051】
前記標識物質としては、免疫測定分野で用いられる公知の物質、例えば、着色粒子、酵素、蛍光物質等が挙げられるが、測定操作、検出の簡便性から着色粒子が特に好ましい。
【0052】
着色粒子としては、その表面上に特異的結合物質を結合することができ、肉眼で色が検出可能であるか、若しくは光学的に測定することが可能なものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、金コロイド粒子等の金属コロイド粒子;スダンブルー、スダンレッドIV、スダンIII 、オイルオレンジ、キニザリングリーン等に代表される染料、顔料等でラテックス粒子を着色した着色ラテックス粒子等が挙げられる。着色粒子としては、着色ラテックスが好適に使用される。着色粒子の平均粒径は、分散性、凝集性、保存安定性や調製の容易性の観点から、好ましくは0.1〜1μm、より好ましくは0.1〜0.5μmである。平均粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定することができる。
【0053】
酵素としては、例えば、ペルオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、エステラーゼ、β−D−グルクロニダーゼ等が挙げられる。より高感度で安定な検出を達成することが可能なペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼが好ましい。
【0054】
また、蛍光物質としては、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、フルオレセイン、ローダミン等が挙げられる。
【0055】
さらに、本発明においては、前記標識複合体は、所定の担体に、標識物質(好適には前記酵素または蛍光物質)と特異的結合物質とを固定化した複合体であってもよい。該担体としては、例えば、水分散型高分子粒子、シリコーン粒子、シリカ粒子、ガラスケイソウ土粒子等が挙げられる。中でも、免疫複合体の凝集性を高め、第1捕捉相における効率的な吸着を確保する観点から、担体としては、その表面に−COOH基が少ない若しくは存在しないものが好ましい。また、前記した金属コロイド粒子も所望により担体として使用することができる。
【0056】
前記水分散型高分子粒子としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の種々のスチレン共重合体からなるエマルジョン等のスチレンまたはその誘導体を単量体成分とする単独重合体や共重合体のエマルジョン;(メタ)アクリル酸の長鎖アルキルエステルまたはその誘導体を単量体成分とする単独重合体、該単量体成分と(メタ)アクリル酸メチルや(メタ)アクリル酸エチル、グリシジル(メタ)アクリレート等との共重合体;前記したスチレンまたはその誘導体と、(メタ)アクリレートエステルやその誘導体との共重合体;ゴム、ナイロン、ポリウレタン、微結晶質セルロース等が挙げられる。
【0057】
標識複合体は、例えば、共有結合法、物理的吸着法、イオン結合法等の慣用の方法により、特異的結合物質と標識物質とを結合させることにより、又は特異的結合物質及び標識物質と担体とを結合させることにより作製されうる。結合後に特異的結合物質の脱離がなく、より安定に結合を形成させ得る観点から、共有結合法によるのが好ましい。
【0058】
また、例えば、担体が水分散型高分子粒子である場合、標識複合体の安定性並びに特異的結合物質および/または標識物質の当該水分散型高分子粒子上での自由度を高める観点から、担体と特異的結合物質および/または標識物質の間にスペーサーを介在させてもよい。スペーサーを構成するスペーサー基として用い得る化合物としては少なくとも二官能性の有機化合物であればよく、特に炭素数l〜12の炭素鎖基を有する二官能性の有機化合物が好ましい。スペーサー基を介在させる方法は特に限定されるものではなく、スペーサー基の介在は慣用の方法により行うことができる。
【0059】
標識複合体における特異的結合物質量は、本発明の所望の効果が得られれば特に限定されるものではないが、通常、解析感度の向上及び経済性の観点から、乾燥重量として、標識複合体の乾燥重量1g当たり好ましくは1〜20mg程度が好適である。
【0060】
標識複合体は、作製後、例えば、膜分離法や濾過、遠心分離法等の慣用の分離法によって、例えば、固定化を行った反応場である溶媒等から分離精製することにより得られる。標識複合体の保存は、水中に浸漬して、又は凍結乾燥して行うことができる。標識複合体含有液としては、得られた標識複合体を、例えば、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液等に懸濁してなるものが好適である。また、免疫学的反応を阻害しないpH及び塩濃度の緩衝液を適宜使用する。標識複合体含有液中の標識複合体の濃度(固形分濃度)は、好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.01〜1.25重量%である。
【0061】
標識物質に酵素を用いる場合の該酵素の基質としては、反応産物の検出が可能であれば特に限定されないが、迅速、簡便に基質の酵素反応産物の検出を行う観点から発色性基質が好ましい。かかる発色性基質は、使用する酵素に応じ、公知の酵素免疫測定法において用いられる発色性基質から適宜選択することができる。
【0062】
発色性基質としては、例えば、酵素がペルオキシダーゼの場合、ペルオキシダーゼと過酸化水素との組み合わせにより反応して発色しうる基質であればよく、例えば、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン)−6−スルホン酸、o−フェニレンジアミン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(以下、TMBという) 、o−ジアニジジン、3,3’−ジアミノベンジジン、3−アミノ−9−エチルカルバゾール、4−クロロ−1−ナフトール等が挙げられ、発色性および無毒性という観点からTMBが好ましい。酵素基質液としては、発色性基質を、たとえば、クエン酸緩衝液に溶解してなるものが好適である。
【0063】
該酵素基質液には、酵素反応に適する条件を得、酵素反応により生じた発色を沈着させる目的で、任意の緩衝剤、および硫酸デキストランナトリウム等の化学物質を含有させてもよい。緩衝剤は、用いる酵素に最適のpHその他の条件を満たすように適宜選択することができる。また、酵素基質液には、使用する酵素に応じ、基質以外の所望の物質を含有させてもよい。例えば、ペルオキシダーゼを酵素として用いる場合、酵素基質液は、過酸化水素をさらに含有することが好ましい。かかる場合の、酵素基質液における過酸化水素の含有量としては、0.001〜0.05重量%が好ましく、0.005〜0.015重量%がより好ましい。
【0064】
酵素反応に要する時間は、使用する酵素、基質、反応条件等に依存するため、特に限定されるものではない。例えば、本発明の好適な態様において、発色性基質を用いた場合、試験片上で観察される当該発色(シグナル)は、捕捉相において捕捉された免疫複合体中の標識物質である酵素による酵素反応で発色性基質から生じた発色性産物に基づく。
【0065】
さらに、本発明の別の態様として、免疫測定法用キットが提供される。かかるキットとしては、少なくとも本発明の前記試験片を含むキットが挙げられる。これらのキットは、さらに標識複合体、酵素の基質、被検試料等の希釈溶媒等を含んでいてもよい。
【0066】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0067】
実施例1 試験片の作製
図1に示す試験片と同様の構成を有する試験片を以下の手順に従って作製した。なお、吸水性基材としてニトロセルロースメンブレンフィルター(厚さ0.13mm×幅4mm×長さ35mm)を使用した。
【0068】
1)第1捕捉相の形成
吸水性基材上、図1に示すような所定の範囲を第1捕捉相(幅4mm×長さ5mm)とした。
【0069】
2)第2捕捉相の形成
抗ヒトCRP(ウサギIgG)抗体(イムノプローブ社製)を0.1M リン酸緩衝液(pH7.4)にて希釈し、最終濃度1mg/mLの水溶液を調製した。この水溶液を吸水性基材の下流側の末端から10mmの位置にディスペンサーで2μL/cmの割合で塗布した後、37℃で1時間静置して乾燥し、吸水性基材上に第2捕捉相を形成した。その後、0.1%ウシ血清アルブミン及び0.1%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを含む処理液で1時間浸漬処理を行った。
【0070】
3)標識相の形成
▲1▼標識複合体含有液の調製
水分散型高分子粒子として、平均粒径0.2μmのカルボキシル化ポリスチレン粒子を使用した。当該粒子は単位表面積当り7μmol/m2のカルボキシル基を有する。
【0071】
スダンブルー0.2gをトルエン20mLに溶解し、これにドデシル硫酸ナトリウム0.2g、及び蒸留水100mLを加え、超音波分散機でこの混合液を乳化した。得られた乳化液に前記水分散型高分子粒子を含む粒子水分散液30mLを加え、室温で24時間撹拌した。次いでエバポレータにてトルエンを除去した後、緩衝液(0.01M ホウ酸緩衝液、pH8.2)にて遠心分離洗浄を行い、固形分濃度が5重量%になるように調整し、粒子分散液を得た。
【0072】
粒子分散液3mLに、水溶性カルボジイミド〔1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、10mg/mL、0.01M ホウ酸緩衝液、pH8.2〕0.5mL、マウス抗CRPポリクローナル抗体(イムノプローブ社製)2mLを加えて、10℃で3時間反応させた後、洗浄液として0.01M ホウ酸緩衝液、pH8.2を用いて遠心分離洗浄を行い、同緩衝液で固形分濃度0.1重量%に調整し、標識複合体含有液を得た。
【0073】
▲2▼標識相の形成
前記▲1▼で得られた標識複合体含有液3μLと10重量%のサッカロース水溶液12μLとを混合して得られた混合液を、吸水性基材上の所定の位置にライン状(幅4mm×長さ2mm)に1μL塗布した。次いで37℃で12時間乾燥し、吸水性基材上に標識相を形成した。
【0074】
4)試験片の作製
第1捕捉相、第2捕捉相及び標識相を設けた吸水性基材の上流側の末端部に不織布(厚さ2mm×幅4mm×長さ10mm)を適宜接着して被検試料液滴下部を、また、下流側の末端部に濾紙(厚さ2mm×幅4mm×長さ10mm)を適宜接着して吸水パッドを形成し、試験片を得た。
【0075】
実施例2 免疫測定試験
ヒト血清でヒトCRP抗原を種々の濃度に希釈した被検試料液10μLを実施例1の試験片の被検試料液滴下部に滴下して展開し、10分後、第1捕捉相及び第2捕捉相における発色をクロマトスキャナーCS9000(島津製作所製)を用いて測定した。測定条件は以下の通りである。なお、測定では、測定値が4000以上であるものを有効数値とみなした。
【0076】
【0077】
図2に測定結果を示す。縦軸は測定値(任意単位)を、横軸はヒトCRP抗原の濃度(CRP濃度)を示す。
【0078】
比較例1 免疫測定試験
第1捕捉相を形成しないこと以外は実施例1と同様にして試験片を得た。当該試験片を用いて、実施例2と同様にして免疫測定試験を行った。結果を図2に示す。
【0079】
図2に示すように、実施例2ではCRP濃度30mg/dL程度まで(具体的には0.7〜30mg/dLの範囲)測定値はCRP濃度に比例したが、比較例1ではCRP濃度10mg/dL程度まで(具体的には1.3〜12.4mg/dLの範囲)しか測定値はCRP濃度に比例しなかった。このことから、本発明の免疫測定法によれば、従来に比し、被検試料中の被検物質を広い濃度範囲に渡って解析可能であることが分かる。
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、被検試料中の被検物質を広い濃度範囲に渡って解析することができる免疫測定法用の試験片、及び該試験片を使用する免疫測定法を提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の試験片の一例を示す概略図である。上は表面図、下は側面図である。
【図2】図2は、免疫測定試験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
A 吸水性基材
1 被検試料液滴下部
2 第1捕捉相
3 第2捕捉相
4 標識相
5 吸水パッド部
【発明の属する技術分野】
本発明は、免疫測定法用の試験片及び該試験片を使用する免疫測定法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体試料の免疫学的解析方法において、迅速かつ簡便に該試料の解析を行いうる方法としては、吸水性基材を試験片として使用する免疫クロマトグラフ法が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。当該方法は、例えば、以下の行程で行われる。即ち、被検試料中の被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質(i)を固定化した試験片上の固定相において、該被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質(ii)と標識物質とを固定化した標識複合体と該被検物質とからなる免疫複合体を特異的結合物質(i)により捕捉する。次いで固定相に捕捉された免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルを検出することにより、間接的に被検試料中の被検物質の存在を検出する。
【0003】
例えば、標識物質として着色粒子を使用した場合、シグナルの検出は、該粒子に基づく発色を観察することにより行うことができる。さらに、固定相に適当な波長の光照射を行い、発色に基づく反射光を光学的手法により測定することで、被検試料中の被検物質の濃度を定量することができる。
【0004】
しかしながら、前記方法によると、被検試料中に高濃度で被検物質が含まれる場合には、被検物質と、標識複合体の特異的結合物質(ii)とが多数結合して凝集し、また、固定相においては被検物質と特異的結合物質(i)とが多数結合し、その結果、固定相で免疫複合体が捕捉されにくくなり、発色強度が弱くなる、いわゆるプロゾーン現象が生じる。それゆえ、特に光学的手法により被検試料中の被検物質の濃度を定量する場合、測定可能な被検物質濃度の範囲が限られるという問題がある。
【0005】
【非特許文献1】
Kevin D. Jones、“Troubleshooting protein binding in nitrocellulose membranes”、〔online〕、〔平成15年2月5日検索〕インターネット<URL: http://www.devicelink.com/ivdt/archive/99 /03/009.html>
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、被検試料中の被検物質を広い濃度範囲に渡って解析することができる免疫測定法用の試験片、及び該試験片を使用する免疫測定法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、
〔1〕 被検物質を含む被検試料と、該被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質と標識物質とを含有してなる標識複合体とを接触させ、被検物質と標識複合体により免疫複合体を形成させ、該免疫複合体を吸水性基材上で捕捉し、捕捉された免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルを検出し、該シグナルが検出された場合に被検試料中に被検物質が存在すると判定する免疫測定法用の試験片であって、吸水性基材上に、免疫複合体を、物理的吸着により捕捉しうる第1捕捉相と、免疫学的吸着により捕捉しうる第2捕捉相とを設けてなる試験片、
〔2〕 吸水性基材上、第1捕捉相が第2捕捉相よりも上流側にある前記〔1〕記載の試験片、
〔3〕 第2捕捉相が、被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質を吸水性基材上に直接的に又は間接的に固定化してなるものである、前記〔1〕又は〔2〕記載の試験片、並びに
〔4〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の試験片を使用する免疫測定法であって、
(1)被検試料液と、被検試料中の被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質と標識物質とを含有してなる標識複合体とを接触させる工程、
(2)工程(1)により形成される、被検物質と標識複合体とからなる免疫複合体を、第1捕捉相及び/又は第2捕捉相で捕捉する工程、並びに
(3)捕捉された免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルを検出する工程、を含み、該シグナルが検出された場合に被検試料中に被検物質が存在すると判定する免疫測定法、
に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の試験片は、被検物質を含む被検試料と、該被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質と標識物質とを含有してなる標識複合体とを接触させ、被検物質と標識複合体により免疫複合体を形成させ、該免疫複合体を吸水性基材上で捕捉し、捕捉された免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルを検出し、該シグナルが検出された場合に被検試料中に被検物質が存在すると判定する免疫測定法に使用される試験片であって、吸水性基材上に、免疫複合体を、物理的吸着により捕捉しうる第1捕捉相と、免疫学的吸着により捕捉しうる第2捕捉相とを設けてなることを大きな1つの特徴とする。
【0009】
前記免疫測定法では、通常、試験片の一端に被検試料液(被検試料を含む水性液体)を滴下し、毛細管現象による自然展開の形で免疫複合体が捕捉されうる領域側に向かって該試料液を試験片上で展開する。本明細書においては、被検試料液を滴下する試験片の一端側を「上流」と、反対の一端側を「下流」という。
【0010】
本発明の試験片の一端に被検試料液を滴下すると、滴下された被検試料液は同様にして試験片上で展開される。その際、被検試料液と標識複合体とを予め混合して被検試料と標識複合体とを接触させておけば、被検試料中に被検物質が存在する場合、当該物質と標識複合体とが免疫複合体を形成し、被検試料中の被検物質は、当該複合体の状態で展開される。一方、被検試料液が展開される際に通過する位置に標識複合体を、例えば、水との接触により試験片から脱離するように保持させておけば、被検試料液の通過に伴って標識複合体が試験片から脱離し、被検物質と標識複合体とが免疫複合体を形成し、被検試料中の被検物質は同様に免疫複合体の状態で展開される。
【0011】
展開が進むと前記免疫複合体は捕捉相に至る。第1捕捉相においては、主として被検試料中に被検物質が高濃度で含まれる場合に発生する免疫複合体の凝集物(免疫凝集反応により生ずる沈澱物)が捕捉される。一方、第2捕捉相においては、免疫複合体が、被検物質に対する免疫学的な吸着力により捕捉される(通常の免疫クロマトグラフ法における免疫複合体の捕捉)。このように、本発明の試験片によれば、通常の免疫クロマトグラフ法と同様な免疫複合体の捕捉が行われることに加え、特に被検物質を高濃度に含む被検試料を用いる場合に生ずる、これまでの免疫測定法用の試験片では捕捉することが困難であった前記凝集物の捕捉が行われる。
【0012】
最終的に、第1捕捉相及び第2捕捉相にて免疫複合体中の標識物質を検出し、標識物質が検出された場合に被検試料中に被検物質が存在すると判定される。
【0013】
従って、本発明の試験片によれば、被検物質を高濃度に含む被検試料を用いる場合でも、プロゾーン現象による免疫測定法の感度低下の問題はなく、被検試料中の被検物質を広い濃度範囲に渡って高感度に解析することができる。
【0014】
本発明の試験片に用いられる吸水性基材としては、水性の液体を吸収可能な性質を有する基材であれば特に限定されるものではない。本発明においては、例えば、被検試料液が捕捉相に至る前における免疫複合体の充分な形成や、免疫複合体の第2捕捉相における充分な免疫学的吸着に要する時間を確保できるような適度な吸水性を有する吸水性基材が好ましい。吸水性基材の吸水性の程度は、例えば、厚さ1mm×幅5mm×長さ100mmの吸水性基材の片端部を水に4分間浸漬した場合に、水に浸漬された部分とされない部分との境界位置からの吸水距離が75〜230mm程度であるのが好ましい。
【0015】
吸水性基材の好ましい具体例としては、例えば、不織布、濾紙、ガラス繊維布、ガラスフィルター、ニトロセルロース膜、ナイロン膜、酢酸セルロース膜等が挙げられる。
【0016】
また、吸水性の程度は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース等の親水性重合体を、例えば、吸水性基材の表面に被覆する、若しくは吸水性基材に含浸させることにより適宜調整することもできる。
【0017】
吸水性基材の形状は、被検試料液等の展開対象成分を展開できる形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、矩形のシート状(片状)やロッド状等の形状が好ましい。例えば、片状である場合、そのサイズは、通常、厚さ0.1〜0.2mm、縦20〜100mm、横2〜10mm程度であるのが好適である。
【0018】
第1捕捉相は免疫複合体を物理的吸着により捕捉しうる試験片の領域部分であるが、ここで「物理的吸着」とは、第1捕捉相に至った、主として免疫複合体の凝集物の平均粒径が該相を構成する材料に存在する空隙の孔径と同等以上であることから生ずる、凝集物と材料との物理的構造に基づく吸着をいう。
【0019】
免疫複合体の凝集物の平均粒径は、通常、3〜50μm程度であるので、第1捕捉相に充分な凝集物の吸着性を発揮させる観点から、該相を構成する材料としては、凝集物の平均粒径と同等以下の孔径を有する空隙が存在する材料が好ましい。例えば、空隙率80〜90%程度の材料が好適である。空隙率は、例えば、該材料の重量や比率により求めることができる。
【0020】
第1捕捉相は、吸水性基材自体の一定領域からなるものであってもよいが、例えば、吸水性基材と同等若しくはそれ以下の展開速度を有する基材等を任意の接着手段により吸水性基材上に接着して、若しくはそれらを適宜吸水性基材と連結して形成してもよい。なお、吸水性基材自体の一定領域を第1捕捉相とする場合、展開対象成分が通過する部分は全て第1捕捉相と同等の吸着性を有することになり、免疫複合体の凝集物が第1捕捉相以外の部分にも吸着される可能性がある。そこで、該凝集物を第1捕捉相で充分に捕捉する観点から、吸水性基材上に後述する標識相を第1捕捉相の上流側に形成しておくのが好適である。かかる態様においては、被検試料液が展開されて標識相に至ると、該試料液との接触により標識複合体が吸水性基材から脱離し、ここで初めて免疫複合体が形成されることになるため、被検試料液が第1捕捉相に至る前に吸水性基材に凝集物が吸着されるのを防ぐことができる。
【0021】
第1捕捉相は吸水性基材上の一定領域に任意の形状で形成されておればよいが、被検試料液の展開方向に対し垂直となる方向の該吸水性基材の幅と同様の幅で形成されるのが好ましい。また、その吸水性基材上での占有面積は、使用する吸水性基材の面積の3〜35%程度であるのが好ましい。例えば、厚さ0.1mm×幅10mm×長さ30mmの吸水性基材を試験片として用いる場合、第1捕捉相は幅10mm×長さ5mmで形成するのが好ましい。
【0022】
第2捕捉相は、免疫複合体を免疫学的吸着により捕捉しうる試験片の領域部分である。該捕捉相は、後述する、例えば、抗原、ハプテン、抗体等の、被検物質に対する特異的結合物質を、試験片として使用する吸水性基材上に直接的に又は間接的に固定化することにより形成することができる。
【0023】
第2捕捉相は吸水性基材上の所望の位置に、各成分の展開方向に対し垂直となる方向の当該吸水性基材の幅と同様の幅で形成されるのが好ましい。また、吸水性基材上での占有面積は吸水性基材の面積の0.2〜10%程度であるのが好ましい。たとえば、厚さ0.1mm×幅10mm×長さ30mmの吸水性基材を試験片として用いる場合、第2捕捉相は幅10mm×長さ1mmで形成するのが好ましい。
【0024】
また、第2捕捉相としては、免疫複合体を充分に捕捉できる量以上で特異的結合物質が固定化されてなるものが好ましい。該捕捉相における特異的結合物質の固定化量は、例えば、予想される被検試料中の被検物質量及び用いる特異的結合物質の種類により適宜決定され得、一概には決定できないが、通常、特異的結合物質を好ましくは0.005〜10mg/cm2 の範囲で均一に固定化して第2捕捉相を形成するのが好ましい。
【0025】
特異的結合物質の固定化方法としては、例えば、公知の物理的吸着法、共有結合法等が挙げられる。例えば、特異的結合物質を吸水性基材上に直接的に固定化する場合、特異的結合物質を含む任意の溶液を吸水性基材上の所望の範囲に塗布した後、適宜乾燥させることにより、若しくは特異的結合物質と親水性重合体とを含む溶液を吸水性基材上の所望の範囲に塗布した後、該親水性重合体を凝固させる凝固溶剤に当該吸水性基材を浸漬することにより、該捕捉相を形成することができる。なお、親水性重合体としては前記例示のものが挙げられ、凝固溶剤としては、アセトン、エタノール、メタノール、エーテル等が挙げられる。また、間接的に固定化する場合は、例えば、前記するようにして同様に特異的結合物質を固定化した、所望の形状を有する基材等を吸水性基材上の所望の位置に任意の接着手段により接着することにより、該捕捉相を形成することができる。
【0026】
なお、第2捕捉相を形成した吸水性基材は、被検対象でないタンパク質の当該基材上への非特異的な吸着の防止、展開の容易性、並びに固定化した特異的結合物質の保存安定性の観点から、公知の方法に従ってブロッキング剤、界面活性剤及び所望により糖を含有する溶液(以下、処理液という)に浸漬し、乾燥して用いるのが好ましい。ここで、使用するブロッキング剤としては、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、スキムミルク、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の吸水性基材に対し吸着性を有する物質が挙げられる。界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。糖としては、サッカロース、トレハロース等が挙げられる。なお、前記処理液中のブロッキング剤の含有量は、好ましくは0.1〜10重量%である。前記処理液中の界面活性剤の含有量は、好ましくは0.01〜1重量%である。前記処理液中の糖の含有量は、好ましくは0.1〜10重量%である。また、上記操作の実施は、吸水性基材に対し第2捕捉相を形成した後であれば、吸水性基材に対し任意に設けられる、後述の被検試料液滴下部等のその他の部分の形成の前であっても後であってもよく、前であるのが好ましい。
【0027】
前記第1捕捉相と第2捕捉相とは、吸水性基材上、その領域が一部重なる位置に、若しくは全く重なりあわない位置に形成される。また、第1捕捉相と第2捕捉相とは、いずれが上流側であっても、下流側であってもよい。解析感度の向上の観点より、通常、第1捕捉相がより上流側に形成されるのが好適である。
【0028】
第1捕捉相と第2捕捉相で免疫複合体を充分に捕捉して免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルの検出を容易にし、また、測定時間を短縮する観点から、被検試料液の滴下位置から、より下流側にある捕捉相までの距離(展開移動距離)としては、通常、5〜50mm程度であるのが好適である。
【0029】
試験片には、前記第1捕捉相及び第2捕捉相の他、さらに被検試料液滴下部(被検試料液を滴下するための部分)、標識複合体受領部〔標識複合体含有液(標識複合体を含有する水性液体)を滴下するための部分〕、洗浄液滴下部(洗浄液を滴下するための部分)等を任意に設けてもよい。これらは、吸水性基材上に直接的に又は間接的に設けることができる。それらの形状は、本発明の所望の効果の発現が阻害されない限り特に限定されるものではない。直接的に設ける場合は、吸水性基材の一定領域を任意に前記各部とすればよい。一方、間接的に設ける場合は、例えば、所望のサイズを有する、不織布、濾紙、ガラス繊維濾紙等、被検試料液や標識複合体含有液等を保持、放出できる材料を任意の接着手段により接着して形成する。
【0030】
また、標識複合体を水との接触により展開可能に保持させてなる標識相を試験片上に形成し、例えば、被検試料液の展開に伴って標識複合体を共に展開させてもよい。
【0031】
標識相は、標識複合体を、水との接触によって吸水性基材から脱離するように保持させた領域部分であり、吸水性基材上に直接的に又は間接的に設けることができる。
【0032】
標識相としては、被検試料液中に含まれる被検物質との免疫複合体を形成するのに充分な量の標識複合体を保持してなるものが好ましい。標識相に保持させる標識複合体の量は、被検試料液中に含まれる被検物質の予想量に応じて適宜決定することができる。標識相の形状は、本発明の所望の効果が得られれば特に限定されるものではない。直接的に設ける場合、吸水性基材の一定領域に標識複合体を保持させて形成すればよい。一方、間接的に設ける場合、所望の形状を有する、吸水性基材に使用される前記例示した材料を任意の接着手段により吸水性基材上に接着して形成すればよい。
【0033】
標識相の形成方法としては、吸水性基材上に直接的に設ける場合、例えば、水溶性重合体及び/又は糖類溶液中に標識複合体を分散させ、得られた分散液を吸水性基材上に塗布して乾操させる方法が挙げられる。一方、間接的に設ける場合、前記所望の形状を有する前記材料を該分散液中に浸漬後、乾操させ、次いで吸水性基材上に接着する方法が挙げられる。
【0034】
前記水溶性重合体としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、セルロースエステル等が好適である。また、糖類としては、例えば、サッカロース、ラフィノース、トレハロース等が好適である。また、所望により、分散液に界面活性剤を添加、混合しておいてもよい。
【0035】
洗浄液滴下部は被検試料液滴下部と同じ位置に(即ち、1つの滴下部を兼用する)、若しくはより上流側に、標識複合体受領部及び標識相は、被検試料液滴下部と同じ位置に若しくは該滴下部と捕捉相との間に形成するのが好適である。
【0036】
また、吸水性基材の下流側の末端部分に、被検試料液等の展開対象成分を吸収し、該成分が移動する部分の洗浄効果を発揮し、バックグラウンドを低下させて免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルの検出を容易化する手段である吸水パッド部を設けてもよい。吸水パッド部に使用する吸水パッドとしては水性液体の吸収性に優れる材料が好適であり、例えば、不織布、濾紙、ガラス繊維濾紙等を使用することができる。
【0037】
以上により、本発明の試験片が得られる。かかる試験片は、以下に説明する本発明の免疫測定法に好適に使用される。該試験片としては、例えば、図1のものが例示される。
【0038】
本発明の免疫測定法は、本発明の前記試験片を用いて行われるが、該測定法は、具体的には、
(1)被検試料液と、被検試料中の被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質と標識物質とを含有してなる標識複合体とを接触させる工程、
(2)工程(1)により形成される、被検物質と標識複合体とからなる免疫複合体を、第1捕捉相及び/又は第2捕捉相で捕捉する工程、並びに
(3)捕捉された免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルを検出する工程、を含み、該シグナルが検出された場合に被検試料中に被検物質が存在すると判定する免疫測定法である。
【0039】
本発明の免疫測定法の一例を、図1に示す試験片を用いて説明する。図1の試験片は、吸水性基材A上に、被検試料液滴下部1、第1捕捉相2、第2捕捉相3、標識相4及び吸水パッド部5を設けてなる。吸水パッド部5により、試験片に滴下された展開対象成分の展開が促進され得る。
【0040】
被検試料液滴下部1に被検試料液を滴下して展開する。滴下は、例えば、一定量(3〜30μl程度)の被検試料液をキャピラリーやピペットに採り、それを用いて行うことができる。展開された被検試料液が標識相4に到達すると被検試料液と標識複合体とが接触し(工程(1))、それにより、被検試料液中の水と標識複合体とが接触し、標識複合体が吸水性基材Aから脱離する。被検試料中に被検物質が存在する場合、当該被検物質は特異的結合物質との結合を介して標識複合体と結合し、〔標識複合体−被検物質〕からなる免疫複合体を形成する。被検試料中に被検物質が高濃度に含まれる場合には、さらに免疫複合体の凝集物が形成される。
【0041】
展開の進行に伴って免疫複合体又は凝集物は捕捉相に到達し、捕捉される(工程(2))。まず、第1捕捉相2では、主として免疫複合体の凝集物が捕捉される。次いで、第1捕捉相2を通過した免疫複合体は、第2捕捉相3に達する。当該捕捉相では、該捕捉相に固定化されている特異的結合物質と免疫複合体中の被検物質とが結合して、〔免疫複合体−特異的結合物質〕からなる複合体を形成し、免疫複合体が第2捕捉相3に捕捉される。
【0042】
ここで、試験片の展開対象成分が移動した部分を洗浄することを目的として、例えば、被検試料液滴下部1に洗浄液を滴下して展開させてもよい。
【0043】
洗浄液としては、例えば、pH8程度のホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液、塩化アンモニウム緩衝液、グッドの緩衝液等が用いられる。また、洗浄液には、検出操作後の試験片の保存安定性を高める観点から塩化ナトリウムやアジ化ナトリウム等の防腐剤を添加しておいてもよい。
【0044】
さらに、この後、標識物質として酵素を用いている場合は、酵素基質液を、例えば、被検試料液滴下部1に滴下し、展開させる。
【0045】
最終的に、第1捕捉相2及び第2捕捉相3に捕捉された免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルを、例えば、該物質として着色粒子を使用した場合は該粒子が発する色を、酵素を使用した場合は基質との酵素反応により生じる発色を、また、蛍光物質を使用した場合は蛍光を肉眼観察することにより、又は光学的手法による測定を行うことにより検出し(工程(3))、該シグナルが検出された場合に被検試料中に被検物質が存在すると判定する。標識物質に基づく発色等を光学的手法により測定した場合、例えば、予め検量線を作成しておけば、被検試料中の被検物質の濃度を定量することができる。本発明の免疫測定法においては、例えば、免疫複合体の凝集物由来の発色と、通常の免疫クロマトグラフ法における免疫複合体由来の発色とを同時に測定することになるため、測定値は、両測定値の総和となる。前記光学的手法としては、例えば、クロマトスキャナ(島津製作所製)等が好適に使用される。
【0046】
本発明の免疫測定法により検出されうる被検物質としては、免疫学的反応(すなわち抗原抗体反応)により、いわゆるサンドイッチ型の免疫複合体を形成しうるものであれば特に制限されない。例えば、細菌及びその構成成分、細菌が産生する毒素、タンパク質、ウイルス抗原及び抗体並びにマイコプラズマ等の生物由来成分、及び内分泌撹乱物質、農薬、医薬品などの化学物質が挙げられる。細菌及びその構成成分としては、大腸菌O157、サルモネラ菌、ブドウ球菌溶連菌、カンピロバクター菌、ウェルシュ菌、腸炎ビブリオ菌、ヘリコバクター・ピロリ菌、クラミジア・トラコマイス菌及びその構成成分等が挙げられる。細菌が産生する毒素としては、例えば、ベロトキシン、ストレプトリジンO、エンテロトキシン等が挙げられる。タンパク質としては、例えば、ヒトトランスフェリン、ヒトアルブミン、ヒト免疫グロブリン、マイクログロブリン及びC反応性タンパク質などが挙げられる。ウイルス抗原及び抗体としては、B型肝炎ウイルスのHBc、HBe及びHbs抗原並びに抗体、C型肝炎ウイルス抗原及び抗体、ヒト免疫不全ウイルス抗原及び抗体、ロタウイルス抗原及び抗体並びにアデノウイルス抗原及び抗体等が挙げられる。
【0047】
被検試料液とは前記被検物質の存在について試験するための被検試料を含む水性の液体であり、特に限定されるものではない。たとえば、食品抽出液、培養液、血液、血漿、血清、尿、便、汗、唾液等が挙げられる。また、それらを適切な希釈溶媒(例えば、任意の緩衝液等)によって希釈した希釈液であってもよい。被検試料は液体試料であっても、固体試料であってもよい。固体試料の場合、たとえば、該固体試料を適宜粉砕し、任意の緩衝液に溶解または希釈することにより被検試料液を調製することができる。緩衝液としては、特に限定されるものではないが、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液等が好適に使用される。
【0048】
第2捕捉相および標識複合体の形成に使用される特異的結合物質は被検物質に特異的に結合し得る物質であればよく、被検物質に応じてサンドイッチ型の酵素免疫測定法において汎用される公知の物質から選択され、特に限定されるものではない。たとえば、ウサギ、ヤギ、ヒツジ等に由来するポリクローナル抗体や、マウス、ラット等に由来するモノクローナル抗体を挙げることができる。また、抗体を酵素等で処理して得られるF(ab)2、Fab、H鎖、L鎖を使用しても良い。被検物質が抗体の場合は、被検物質と特異的に結合する抗原又はハプテンを用いればよく、抗原としては、タンパク質、ペプチドを、ハプテンとしては抗原決定基を有するもの等を挙げることができる。
【0049】
第2捕捉相と標識複合体の特異的結合物質は同一でも異なっていてもよいが、本発明の所望の効果の発現の観点から、以下のような組み合わせで用いるのが好適である。たとえば、第2捕捉相の特異的結合物質が抗体の場合、標識複合体の特異的結合物質としては同じ抗体または当該抗体に対する抗原の別の抗原決定基を認識する抗体を使用する。第2捕捉相の特異的結合物質が抗原またはハプテンの場合、標識複合体の特異的結合物質としては同じ抗原またはハプテン、あるいは第2捕捉相の特異的結合物質とは異なるが被検物質と特異的に結合しうる抗原、抗体、ハプテン等を使用する。
【0050】
本発明で使用する標識複合体とは、標識物質と、被検試料中の被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質とを含有してなる複合体である。
【0051】
前記標識物質としては、免疫測定分野で用いられる公知の物質、例えば、着色粒子、酵素、蛍光物質等が挙げられるが、測定操作、検出の簡便性から着色粒子が特に好ましい。
【0052】
着色粒子としては、その表面上に特異的結合物質を結合することができ、肉眼で色が検出可能であるか、若しくは光学的に測定することが可能なものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、金コロイド粒子等の金属コロイド粒子;スダンブルー、スダンレッドIV、スダンIII 、オイルオレンジ、キニザリングリーン等に代表される染料、顔料等でラテックス粒子を着色した着色ラテックス粒子等が挙げられる。着色粒子としては、着色ラテックスが好適に使用される。着色粒子の平均粒径は、分散性、凝集性、保存安定性や調製の容易性の観点から、好ましくは0.1〜1μm、より好ましくは0.1〜0.5μmである。平均粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定することができる。
【0053】
酵素としては、例えば、ペルオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、エステラーゼ、β−D−グルクロニダーゼ等が挙げられる。より高感度で安定な検出を達成することが可能なペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼが好ましい。
【0054】
また、蛍光物質としては、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、フルオレセイン、ローダミン等が挙げられる。
【0055】
さらに、本発明においては、前記標識複合体は、所定の担体に、標識物質(好適には前記酵素または蛍光物質)と特異的結合物質とを固定化した複合体であってもよい。該担体としては、例えば、水分散型高分子粒子、シリコーン粒子、シリカ粒子、ガラスケイソウ土粒子等が挙げられる。中でも、免疫複合体の凝集性を高め、第1捕捉相における効率的な吸着を確保する観点から、担体としては、その表面に−COOH基が少ない若しくは存在しないものが好ましい。また、前記した金属コロイド粒子も所望により担体として使用することができる。
【0056】
前記水分散型高分子粒子としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の種々のスチレン共重合体からなるエマルジョン等のスチレンまたはその誘導体を単量体成分とする単独重合体や共重合体のエマルジョン;(メタ)アクリル酸の長鎖アルキルエステルまたはその誘導体を単量体成分とする単独重合体、該単量体成分と(メタ)アクリル酸メチルや(メタ)アクリル酸エチル、グリシジル(メタ)アクリレート等との共重合体;前記したスチレンまたはその誘導体と、(メタ)アクリレートエステルやその誘導体との共重合体;ゴム、ナイロン、ポリウレタン、微結晶質セルロース等が挙げられる。
【0057】
標識複合体は、例えば、共有結合法、物理的吸着法、イオン結合法等の慣用の方法により、特異的結合物質と標識物質とを結合させることにより、又は特異的結合物質及び標識物質と担体とを結合させることにより作製されうる。結合後に特異的結合物質の脱離がなく、より安定に結合を形成させ得る観点から、共有結合法によるのが好ましい。
【0058】
また、例えば、担体が水分散型高分子粒子である場合、標識複合体の安定性並びに特異的結合物質および/または標識物質の当該水分散型高分子粒子上での自由度を高める観点から、担体と特異的結合物質および/または標識物質の間にスペーサーを介在させてもよい。スペーサーを構成するスペーサー基として用い得る化合物としては少なくとも二官能性の有機化合物であればよく、特に炭素数l〜12の炭素鎖基を有する二官能性の有機化合物が好ましい。スペーサー基を介在させる方法は特に限定されるものではなく、スペーサー基の介在は慣用の方法により行うことができる。
【0059】
標識複合体における特異的結合物質量は、本発明の所望の効果が得られれば特に限定されるものではないが、通常、解析感度の向上及び経済性の観点から、乾燥重量として、標識複合体の乾燥重量1g当たり好ましくは1〜20mg程度が好適である。
【0060】
標識複合体は、作製後、例えば、膜分離法や濾過、遠心分離法等の慣用の分離法によって、例えば、固定化を行った反応場である溶媒等から分離精製することにより得られる。標識複合体の保存は、水中に浸漬して、又は凍結乾燥して行うことができる。標識複合体含有液としては、得られた標識複合体を、例えば、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液等に懸濁してなるものが好適である。また、免疫学的反応を阻害しないpH及び塩濃度の緩衝液を適宜使用する。標識複合体含有液中の標識複合体の濃度(固形分濃度)は、好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.01〜1.25重量%である。
【0061】
標識物質に酵素を用いる場合の該酵素の基質としては、反応産物の検出が可能であれば特に限定されないが、迅速、簡便に基質の酵素反応産物の検出を行う観点から発色性基質が好ましい。かかる発色性基質は、使用する酵素に応じ、公知の酵素免疫測定法において用いられる発色性基質から適宜選択することができる。
【0062】
発色性基質としては、例えば、酵素がペルオキシダーゼの場合、ペルオキシダーゼと過酸化水素との組み合わせにより反応して発色しうる基質であればよく、例えば、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン)−6−スルホン酸、o−フェニレンジアミン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(以下、TMBという) 、o−ジアニジジン、3,3’−ジアミノベンジジン、3−アミノ−9−エチルカルバゾール、4−クロロ−1−ナフトール等が挙げられ、発色性および無毒性という観点からTMBが好ましい。酵素基質液としては、発色性基質を、たとえば、クエン酸緩衝液に溶解してなるものが好適である。
【0063】
該酵素基質液には、酵素反応に適する条件を得、酵素反応により生じた発色を沈着させる目的で、任意の緩衝剤、および硫酸デキストランナトリウム等の化学物質を含有させてもよい。緩衝剤は、用いる酵素に最適のpHその他の条件を満たすように適宜選択することができる。また、酵素基質液には、使用する酵素に応じ、基質以外の所望の物質を含有させてもよい。例えば、ペルオキシダーゼを酵素として用いる場合、酵素基質液は、過酸化水素をさらに含有することが好ましい。かかる場合の、酵素基質液における過酸化水素の含有量としては、0.001〜0.05重量%が好ましく、0.005〜0.015重量%がより好ましい。
【0064】
酵素反応に要する時間は、使用する酵素、基質、反応条件等に依存するため、特に限定されるものではない。例えば、本発明の好適な態様において、発色性基質を用いた場合、試験片上で観察される当該発色(シグナル)は、捕捉相において捕捉された免疫複合体中の標識物質である酵素による酵素反応で発色性基質から生じた発色性産物に基づく。
【0065】
さらに、本発明の別の態様として、免疫測定法用キットが提供される。かかるキットとしては、少なくとも本発明の前記試験片を含むキットが挙げられる。これらのキットは、さらに標識複合体、酵素の基質、被検試料等の希釈溶媒等を含んでいてもよい。
【0066】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0067】
実施例1 試験片の作製
図1に示す試験片と同様の構成を有する試験片を以下の手順に従って作製した。なお、吸水性基材としてニトロセルロースメンブレンフィルター(厚さ0.13mm×幅4mm×長さ35mm)を使用した。
【0068】
1)第1捕捉相の形成
吸水性基材上、図1に示すような所定の範囲を第1捕捉相(幅4mm×長さ5mm)とした。
【0069】
2)第2捕捉相の形成
抗ヒトCRP(ウサギIgG)抗体(イムノプローブ社製)を0.1M リン酸緩衝液(pH7.4)にて希釈し、最終濃度1mg/mLの水溶液を調製した。この水溶液を吸水性基材の下流側の末端から10mmの位置にディスペンサーで2μL/cmの割合で塗布した後、37℃で1時間静置して乾燥し、吸水性基材上に第2捕捉相を形成した。その後、0.1%ウシ血清アルブミン及び0.1%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを含む処理液で1時間浸漬処理を行った。
【0070】
3)標識相の形成
▲1▼標識複合体含有液の調製
水分散型高分子粒子として、平均粒径0.2μmのカルボキシル化ポリスチレン粒子を使用した。当該粒子は単位表面積当り7μmol/m2のカルボキシル基を有する。
【0071】
スダンブルー0.2gをトルエン20mLに溶解し、これにドデシル硫酸ナトリウム0.2g、及び蒸留水100mLを加え、超音波分散機でこの混合液を乳化した。得られた乳化液に前記水分散型高分子粒子を含む粒子水分散液30mLを加え、室温で24時間撹拌した。次いでエバポレータにてトルエンを除去した後、緩衝液(0.01M ホウ酸緩衝液、pH8.2)にて遠心分離洗浄を行い、固形分濃度が5重量%になるように調整し、粒子分散液を得た。
【0072】
粒子分散液3mLに、水溶性カルボジイミド〔1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、10mg/mL、0.01M ホウ酸緩衝液、pH8.2〕0.5mL、マウス抗CRPポリクローナル抗体(イムノプローブ社製)2mLを加えて、10℃で3時間反応させた後、洗浄液として0.01M ホウ酸緩衝液、pH8.2を用いて遠心分離洗浄を行い、同緩衝液で固形分濃度0.1重量%に調整し、標識複合体含有液を得た。
【0073】
▲2▼標識相の形成
前記▲1▼で得られた標識複合体含有液3μLと10重量%のサッカロース水溶液12μLとを混合して得られた混合液を、吸水性基材上の所定の位置にライン状(幅4mm×長さ2mm)に1μL塗布した。次いで37℃で12時間乾燥し、吸水性基材上に標識相を形成した。
【0074】
4)試験片の作製
第1捕捉相、第2捕捉相及び標識相を設けた吸水性基材の上流側の末端部に不織布(厚さ2mm×幅4mm×長さ10mm)を適宜接着して被検試料液滴下部を、また、下流側の末端部に濾紙(厚さ2mm×幅4mm×長さ10mm)を適宜接着して吸水パッドを形成し、試験片を得た。
【0075】
実施例2 免疫測定試験
ヒト血清でヒトCRP抗原を種々の濃度に希釈した被検試料液10μLを実施例1の試験片の被検試料液滴下部に滴下して展開し、10分後、第1捕捉相及び第2捕捉相における発色をクロマトスキャナーCS9000(島津製作所製)を用いて測定した。測定条件は以下の通りである。なお、測定では、測定値が4000以上であるものを有効数値とみなした。
【0076】
【0077】
図2に測定結果を示す。縦軸は測定値(任意単位)を、横軸はヒトCRP抗原の濃度(CRP濃度)を示す。
【0078】
比較例1 免疫測定試験
第1捕捉相を形成しないこと以外は実施例1と同様にして試験片を得た。当該試験片を用いて、実施例2と同様にして免疫測定試験を行った。結果を図2に示す。
【0079】
図2に示すように、実施例2ではCRP濃度30mg/dL程度まで(具体的には0.7〜30mg/dLの範囲)測定値はCRP濃度に比例したが、比較例1ではCRP濃度10mg/dL程度まで(具体的には1.3〜12.4mg/dLの範囲)しか測定値はCRP濃度に比例しなかった。このことから、本発明の免疫測定法によれば、従来に比し、被検試料中の被検物質を広い濃度範囲に渡って解析可能であることが分かる。
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、被検試料中の被検物質を広い濃度範囲に渡って解析することができる免疫測定法用の試験片、及び該試験片を使用する免疫測定法を提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の試験片の一例を示す概略図である。上は表面図、下は側面図である。
【図2】図2は、免疫測定試験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
A 吸水性基材
1 被検試料液滴下部
2 第1捕捉相
3 第2捕捉相
4 標識相
5 吸水パッド部
Claims (4)
- 被検物質を含む被検試料と、該被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質と標識物質とを含有してなる標識複合体とを接触させ、被検物質と標識複合体により免疫複合体を形成させ、該免疫複合体を吸水性基材上で捕捉し、捕捉された免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルを検出し、該シグナルが検出された場合に被検試料中に被検物質が存在すると判定する免疫測定法用の試験片であって、吸水性基材上に、免疫複合体を、物理的吸着により捕捉しうる第1捕捉相と、免疫学的吸着により捕捉しうる第2捕捉相とを設けてなる試験片。
- 吸水性基材上、第1捕捉相が第2捕捉相よりも上流側にある請求項1記載の試験片。
- 第2捕捉相が、被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質を吸水性基材上に直接的に又は間接的に固定化してなるものである、請求項1又は2記載の試験片。
- 請求項1〜3いずれかに記載の試験片を使用する免疫測定法であって、
(1)被検試料液と、被検試料中の被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質と標識物質とを含有してなる標識複合体とを接触させる工程、
(2)工程(1)により形成される、被検物質と標識複合体とからなる免疫複合体を、第1捕捉相及び/又は第2捕捉相で捕捉する工程、並びに
(3)捕捉された免疫複合体中の標識物質に由来するシグナルを検出する工程、を含み、該シグナルが検出された場合に被検試料中に被検物質が存在すると判定する免疫測定法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|---|
JP2010256309A (ja) * | 2009-04-28 | 2010-11-11 | Asahi Kasei Fibers Corp | コンジュゲートパッドおよび体外診断薬 |
JPWO2012043746A1 (ja) * | 2010-09-30 | 2014-02-24 | 積水メディカル株式会社 | イムノクロマトグラフィー用テストストリップおよびその製造方法 |
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2003
- 2003-06-18 JP JP2003174035A patent/JP2005010001A/ja active Pending
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US10539562B2 (en) | 2016-12-20 | 2020-01-21 | Ricoh Company, Ltd. | Testing device and method for producing same, and testing kit, transfer medium for testing device, and testing method |
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