JP2005009041A - ポリエステル系合成繊維用難燃剤 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル系合成繊維、特にカチオン染料可染性ポリエステル系合成繊維用の難燃剤および難燃加工されたポリエステル系合成繊維品、特にカチオン染料可染性ポリエステル系合成繊維に関する。詳しくは、ポリエステル系合成繊維品、特にカチオン染料可染性ポリエステル系合成繊維布帛を後加工することによって、初期だけでなく、洗濯後あるいはドライクリーニング後でも低下しない耐久性のある難燃性を付与することのできる難燃剤および難燃加工したポリエステル系合成繊維品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリエステル系合成繊維の難燃加工用処理剤としては、ヘキサブロモシクロドデカンの水性分散液が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭57−137377号公報
【0004】
しかし、このようなハロゲン化合物を付与したポリエステル系合成繊維を燃焼させた際発生するハロゲン化ガスが、環境に有害な影響を及ぼすとの観点からハロゲン化合物の使用は問題となってきており、非ハロゲン系の難燃加工剤が求められている。
【0005】
そこで、ハロゲン化合物の代わりにリン酸エステル系化合物を用いることにより、ポリエステル系合成繊維を難燃化する方法が提案されている(例えば特許文献2)。
【0006】
【特許文献2】
特開2000−328445号
特開2001−254268号
特開2002−88368号
【0007】
しかし、これらの化合物は、難燃剤を水分散させるために大量の乳化剤が必要であり、これを難燃加工後のポリエステル系合成繊維から完全に除去できないため難燃性が充分でない。さらにカチオン染料可染性ポリエステルに対しては、難燃化に必要な量の難燃剤を繊維に吸尽できないため、難燃性を付与できなかった。
【0008】
また、ホスフィン酸誘導体からなるジカルボン酸をジカルボン酸成分単位として含むポリエステルがハロゲンを含まない難燃剤として提案されている(例えば特許文献3)。
【0009】
【特許文献3】
特開2000−154465号
【0010】
しかし、このポリエステルは分子量が高いため、このポリエステルを用いてポリエステル系合成繊維布帛を処理した場合、風合いが粗硬になったり、チョークマークが発生するなどの問題があった。
【0011】
また、▲1▼アルキルホスホリックトリアミドと、▲2▼テトラキスヒドロキシメチルホスホニウム塩又はトリスヒドロキシメチルホスフィン酸化物と、▲3▼ホルマリンと反応しうる多官能化合物の水溶液を反応させて作られる縮合物を用いてポリエステル系合成繊維を難燃化する方法が提案されている(例えば特許文献4)。
【0012】
【特許文献4】
特開昭49−6299号
特開昭49−14797号
【0013】
しかし、この縮合物を用いてポリエステル系合成繊維布帛を処理した場合、風合いが粗硬になったり、チョークマークが発生するなどの問題があった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ハロゲン原子を含まない化合物を用いてポリエステル系合成繊維に良好な風合いで、チョークマーク発生することなく、特に従来難燃化できていなかったカチオン可染性ポリエステル系合成繊維に対し初期だけでなく洗濯後およびドライクリーニング後の耐久性のある難燃性を付与することのできるポリエステル系合成繊維に難燃性を後加工で簡易に付与できる難燃剤を提案することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、下記一般式(1)で示されるホスホニウム塩(A)を必須成分とするポリエステル系合成繊維用難燃剤、難燃加工されたポリエステル系合成繊維の製造方法、および難燃加工されたポリエステル系合成繊維品である。
【0016】
【化2】
【0017】
[式中、R1 はそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、または炭素数1〜4のアルキのレン基で置換されたアリールアルキル基を表し、これら炭化水素基の水素原子の一部は水酸基、メルカプト基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基またはハロゲン原子で置換されていてもかまわない。さらにR1 同士が互いに結合して環を形成していてもよい。Xはアニオンを示す。]
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明において、上記一般式(1)中のR1は、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、または炭素数1〜4のアルキのレン基で置換されたアリールアルキル基を表す。これら炭化水素基の水素原子の一部は水酸基、メルカプト基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基またはハロゲン原子で置換されていてもかまわない。さらにR1 同士が互いに結合して環を形成していてもよい
【0019】
置換基R1 のアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基であり、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、3−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−イコシル基が挙げられ、リン含量の観点から、それらのうち、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0020】
アルケニル基としては炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニル基であり、たとえばビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプペニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基が挙げられ、リン含量の観点からそれらのうち炭素数2〜6のアルケニル基が好ましい。
【0021】
シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基である。
アリール基としては炭素数6〜14のアリール基であり、たとえばフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、オクチルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、が挙げられ、フェニル基、ビフェニリル基が好ましい。
【0022】
アリールアルキル基としては炭素数1〜4のアルキレン基で置換されたアリールアルキル基であり、ベンジル基、フェネチル基が好ましい。
【0023】
これらの炭化水素基のうち、好ましいのは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基であり、さらに好ましいのは、メチル基 、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、フェニル基、ベンジル基である。
【0024】
また、置換基R1の水素原子の一部は水酸基、メルカプト基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、ハロゲン原子で置換されていてもかまわない。
置換されたR1として例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシフェニル基、メルカプトメチル基、メルカプトエチル基、メルカプトプロピル基、メルカプトフェニル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシフェニル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシフェニル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシフェニル基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノフェニル基、塩化メチル基、塩化エチル基、塩化プロピル基、塩化フェニル基、臭化メチル基、臭化エチル基、臭化プロピル基、臭化フェニル基などが挙げられる。このうち、リン含量の観点からヒドロキシメチル基、メルカプトメチル基、メトキシメチル基、カルボキシメチル基、アミノメチル基が好ましく、ヒドロキシメチル基が最も好ましい。
【0025】
一般式(1)中のXはアニオンを示し、特に制限はないが、具体的には以下のものが挙げられる。
(a)リン原子含有アニオン:リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、チオリン酸イオン、チオ亜リン酸イオン、チオ次亜リン酸イオン、ジチオリン酸イオン、ジチオ亜リン酸イオン、ジチオ次亜リン酸イオン;及びこれらと脂肪族アルコール、芳香族フェノールとのエステル化物イオン(モノアルキルリン酸エステルイオン、ジアルキルジチオリン酸イオンなど)
(b)窒素原子含有複素環アニオン:ベンゾトリアゾレート、フタルイミド、など
(c)ヒドロキシアニオン
(d)硫酸イオン
(e)ハロゲン原子アニオン:塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオンなど
(f)ホウ素含有アニオン:テトラフルオロボレートイオン、テトラフェニルボレートイオンなど
(g)亜硫酸イオン
(h)硝酸イオン
(i)亜硝酸イオン
(j)カルボン酸イオン:蟻酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、シュウ酸イオン、マレイン酸イオン
(k)炭酸イオン
(l)青酸イオン
(m)チオシアン酸イオン
などが挙げられる。
このうち、難燃性および加工性の観点から、(a)〜(f)が好ましく、(a)〜(e)がさらに好ましい。
【0026】
これらのホスホニウム塩は、特開平2−40389、特開平3−74395、特開2002−97182、技報堂社「現代有機合成シリーズ5 有機リン化合物」などに公開されている公知の技術により合成することができる。
例えば、上記技報堂社「現代有機合成シリーズ5 有機リン化合物」P.105によると、ホスフィン、ホルムアルデヒド、塩酸を反応させることにより、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロライドが得られる。また、特開2002−97182には、市販のホスホニウムハロゲン化物とベンゾトリアゾールをアルカリ存在下、水中で60〜80℃加熱することにより塩交換を行い、ホスホニウムベンゾトリアゾレートを得る方法が公開されている。
【0027】
本発明において、ホスホニウム塩(A)を必須成分とする難燃剤はポリエステル系合成繊維に対して通常0.1〜10質量%付着させる。難燃性および耐光性の観点から、0.1〜3質量%付着させるのがさらに好ましい。0.1質量%以上付着させると難燃効果が高く、10質量%以下であれば、耐光性が充分である。
【0028】
紡糸後のポリエステル系合成繊維に難燃剤を付着させるためには、ホスホニウム塩(A)を媒体中に溶解または分散させた液を調製する必要がある。媒体としては、有機溶剤または水が挙げられるが、取り扱い上の観点から、水が好ましい。
【0029】
本発明の難燃剤は、ホスホニウム塩(A)を必須成分とし、それ以外に、必要により界面活性剤を含有する。例えば、ホスホニウム塩(A)は通常水に溶解するが、溶解しない場合は、たとえば(A)と非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤などの界面活性剤と、さらに必要に応じて有機溶剤とを配合して均一に溶解し、徐々に水を加えて乳化分散させる方法が用いられる。
【0030】
非イオン界面活性剤としては、アルキレンオキシド付加型非イオン界面活性剤、多価アルコール型非イオン界面活性剤などが挙げられる。
アルキレンオキシド付加型非イオン界面活性としては、▲1▼高級アルコール(炭素数8〜18)、高級脂肪酸(炭素数12〜24)または高級アルキルアミン(炭素数8〜24)などに炭素数2〜4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど;およびこれらの2種以上の併用、以下同じ)を付加させたもの(数平均分子量158〜200,000);▲2▼グリコールにアルキレンオキシドを付加させて得られるポリアルキレングリコール(Mw150〜6,000)に高級脂肪酸などを反応させたもの;▲3▼多価(2価〜8価またはそれ以上)アルコール(炭素数8〜60、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン)に高級脂肪酸(炭素数12〜24、たとえばラウリン酸、ステアリン酸)を反応させて得られたエステル化物にアルキレンオキシドを付加させたもの(Mw250〜30,000);▲4▼高級脂肪酸アミドにアルキレンオキシドを付加させたもの(Mw200〜30,000);▲5▼多価(2価〜8価またはそれ以上)アルコールアルキル(炭素数8〜60)エーテルにアルキレンオキシドを付加させたもの(Mw120〜30,000)などが挙げられる。
多価アルコール型非イオン界面活性剤としては、▲1▼2価〜8価またはそれ以上の多価アルコール(炭素数7〜60)と脂肪酸(炭素数8〜60)とのエステル;▲2▼多価アルコールアルキル(炭素数7〜60)エーテル;▲3▼脂肪酸(炭素数8〜60)アルカノールアミドなどが挙げられる。
【0031】
アニオン界面活性剤としては、▲1▼カルボン酸(炭素数8〜22の飽和または不飽和脂肪酸)またはその塩(ナトリウム、カリウム、アンモニウム、アルカノールアミンなどの塩)、▲2▼カルボキシメチル化物の塩(炭素数8〜16の脂肪族アルコールおよび/またはそのエチレンオキシド(1〜10モル)付加物などのカルボキシメチル化物の塩など)、▲3▼硫酸エステル塩[高級アルコール硫酸エステル塩(炭素数8〜18の脂肪酸アルコールの硫酸エステル塩など)]、▲4▼高級アルキルエーテル硫酸エステル塩[炭素数8〜18の脂肪酸アルコールのエチレンオキシド(1〜10モル)付加物の硫酸エステル塩]、▲5▼硫酸化油(天然の不飽和油脂または不飽和のロウをそのまま硫酸化して中和したもの)、▲6▼硫酸化脂肪酸エステル(不飽和脂肪酸の低級アルコールエステルを硫酸化して中和したもの)、▲7▼硫酸化オレフィン(炭素数12〜18のオレフィンを硫酸化して中和したもの)、▲8▼スルホン酸塩[アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジエステル型、α−オレフィン(炭素数12〜18)スルホン酸塩、イゲポンT型など]、▲9▼リン酸エステル塩[高級アルコール(炭素数8〜60)リン酸エステル塩、高級アルコール(炭素数8〜60)エチレンオキシド付加物リン酸エステル塩、アルキル(炭素数8〜60)フェノールエチレンオキシド付加物リン酸エステル塩など]などが挙げられる。
【0032】
これら界面活性剤の配合量は、ホスホニウム塩(A)100部に対して、好ましくは0.001〜50質量部であり、さらに好ましくは0.05〜35質量部である。
0.001質量部以上配合すれば、(A)の水中での分散安定性が良好であり、50質量部以下であれば、(A)からなる処理液により処理した繊維または繊維製品の洗濯後およびドライクリーニング後の難燃性が特に良好となる。
【0033】
有機溶剤としては、トルエン,キシレン,アルキルナフタレンなどの芳香族炭化水素類;アセトン,メチルエチルケトンなどのケトン類;ジオキサン,エチルセロソルブなどのエ−テル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類およびこれらの二種以上の混合物があげられる。
【0034】
これら有機溶剤の配合量は、ホスホニウム塩(A)100部に対して、好ましくは1〜100質量部であり、さらに好ましくは10〜90質量部である。1質量部以上配合すれば、(A)の水中での分散安定性が良好であり、100質量部以下であれば、(A)からなる処理液により処理した繊維の難燃性が良好である。
【0035】
本発明においてホスホニウム塩(A)からなる処理液中の固形分濃度は、60質量%以下が好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
【0036】
このようにして調製したホスホニウム塩(A)からなる処理液を用いてポリエステル系合成繊維を公知の技術に処理することができる。
例えば、ポリエステル系合成繊維またはポリエステル系合成繊維布帛を液流染色機を用いて染色する際、該処理液を染浴に添加し、ポリエステル系合成繊維またはポリエステル系合成繊維布帛を浸漬して、80℃から130℃の温度で数分から60分程度の範疇で処理を行う。その後必要により遠心脱水機などを用いて脱水した後、テンターなどにより、120℃から180℃の温度で数分程度熱処理を行う。
このような染浴同浴処理により、ホスホニウム塩(A)は、特にカチオン染料可染性ポリエステル系合成繊維またはカチオン染料可染性ポリエステル系合成繊維布帛に効率よく吸尽され、高い難燃性能を発現する。
【0037】
ホスホニウム塩の別な処理法としては、ホスホニウム塩(A)からなる処理液にポリエステル系合成繊維またはポリエステル系合成繊維布帛を浸漬し、乾燥させるパッド−ドライ法、該処理液をポリエステル系合成繊維またはポリエステル系合成繊維布帛に吹きつけるスプレー法などが挙げられるが、洗濯後およびドライクリーニング後の難燃性の観点から、染浴同浴処理法が好ましい。
【0038】
本発明のホスホニウム塩(A)は、その他の難燃剤と併用しても構わない。このような難燃剤として、特開2000−328445に公開されているようなリン酸エステル系難燃剤;特開平2002−275473に公開されているようなホスファフェナントレン骨格を有する化合物;特許2969259に公開されているようなホスフィン酸誘導体を共重合成分とするポリエステル系難燃剤;特開2001−354821のリン化合物(II)として公開されている難燃剤などが挙げられる。
【0039】
ホスホニウム塩(A)とこれらの難燃剤を併用する場合の質量比は、ホスホニウム塩(A)/他の難燃剤=10/90〜99/1であり、ホスホニウム塩(A)/他の難燃剤=10/90〜99/1が好ましい。ホスホニウム塩が10質量%以上であれば、カチオン染料可染性ポリエステル系合成繊維に対し、難燃効果が高く、99質量%以下であれば耐光性が良好である。
【0040】
併用する方法としては、例えばホスホニウム塩(A)と同時に染浴で処理する方法、ホスホニウム塩(A)を染浴で処理した後、これらの難燃剤を液流染色機を用いて使用する方法、ホスホニウム塩(A)を染浴で処理した後、これらの難燃剤をパッド−ドライで処理する方法などが挙げられる。
【0041】
また、本発明において難燃剤は、その他の繊維加工剤、安定剤と併用しても構わない。このような繊維加工剤、安定剤としては、柔軟剤(シリコーン系エマルション、たとえば三洋化成工業製サファノールN−750)、吸水加工剤(ポリエステル系樹脂エマルション、たとえば三洋化成工業製パーマリンMR−100)、帯電防止剤(リン酸エステル塩系界面活性剤、たとえば三洋化成工業製サンスタットKT−600)、撥水撥油剤(パラフィン系ワックス、たとえば三洋化成工業製アイソトールH)、スリップ防止剤(コロイダルシリカ、たとえば三洋化成工業製パーマリンSCC−A)、硬仕上剤、風合い調整剤、防腐剤、酸化防止剤、PH調整剤などが挙げられ、本発明を阻害しない範囲で同浴でも別浴でも使用可能である。
同浴または別浴で用いる場合の上記その他の繊維加工剤の使用量は、本発明のホスホニウム塩(A)の質量に対して、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0042】
本発明において適用するポリエステル系合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレ−ト,ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレ−ト/イソフタレ−ト、ポリエチレンテレフタレート/5−ソジオスルホイソフタレート、ポリエチレン/ポリオキシベンゾイルテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト/イソフタレートなどのポリエステル繊維からなる綿、糸、トウ、トップ、カセ、編織物、不織布などがあげられる。
【0043】
特に、カチオン染料可染性ポリエステル系合成繊維は、繊維そのものが燃えやすく、従来の難燃剤は吸尽されにくいため、従来の難燃剤を適用しても、十分な難燃性を付与できないという問題があったが、本発明の難燃剤は、特にカチオン染料可染性ポリエステル系合成繊維に吸尽されやすいため、十分な難燃性を発揮する。
このようなカチオン染料可染性ポリエステル系合成繊維とは、ポリエチレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレートであり、通常のポリエステル繊維であるポリエチレンテレフタレートのテレフタル酸の一部を5−ナトリウムスルホイソフタル酸に置き換えたものである。
【0044】
さらに上記の異なる組成のポリエステル系合成繊維との混紡、交織織物、または上記ポリエステル繊維と他の天然(綿、麻、羊毛など),半合成(レーヨン、アセテートなど),合成(ナイロン、アクリルなど),無機(炭素、ガラス、セラミックス、アスベスト、金属など)繊維との混紡,交織織物等があげられる。
【0045】
本発明の難燃剤で処理された物品の用途としては、自動車、鉄道、船舶、航空機などの交通機関用、劇場、病院、ホテルなどの公共施設用、または家庭用のシート、シートカバー、カーテン、ロールカーテン、壁クロス、天井クロス、障子紙、カーペット、どん帳、建築用養生シート、防護用ネット、帆布、テントなどの繊維または繊維製品があげられる。
【0046】
【実施例】
以下の実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例中の部は質量部、%は質量%、比は質量比を示し、特性の評価は以下の測定法により行った。
(1)難燃性
JIS L 1091D法(接炎試験)に準じて評価した。
(2)洗濯方法
JIS L 1042法に従い実施した。
(3)ドライクリーニング法
JIS L 1018法に従い実施した。
(4)チョークマーク
テープカッターで布表面を引っ掻き、チョークマークの発生有無を目視判定した。チョークマークの発生の無いものを○、発生したものを×とした。
(5)風合い(曲げ剛性)
試料(加工布)を、温度20℃、湿度65%で24時間調整後、純曲げ試験機〔カトーテック社製、KES−FB−2〕にて、曲げ剛性を測定した。
【0047】
合成例1(実施例2、比較例1で使用するポリエステル系難燃剤)
ジメチルテレフタレ−ト65部、エチレングリコ−ル290部および一般式(2)で示されるホスフィン酸誘導体125部、触媒としてジメチルテレフタレートおよびホスフィン酸誘導体に対し0.1%の酢酸マンガン、0.5%の酢酸リチウムおよび0.03%の三酸化アンチモンを混合し、常圧で160〜220℃で3時間加熱してエステル交換反応を行い、ほぼ理論量のメタノ−ルを留去し、次いで系の温度を250℃とし、圧力を徐々に減じ1Torr以下にし、6時間反応させて重量平均分子量9,000、リン含有量5.5%のポリエステルを得た。
このポリエステルを分散液にするため、ポリエステル150部、ジメチルホルムアミド100部、ラウリルアルコールエチレンオキサイド15モル付加物50部を、80℃で均一に溶解し、80℃の湯700部を徐々に加えて粒子化し、常温まで冷却後、ビスコミルで連続的に30分間粉砕し、乳白色の分散液である、ポリエステル系難燃剤1,000部を得た。主成分の化学構造は下記式で表される。
【0048】
【化3】
【0049】
合成例2(比較例2で使用するリン酸エステル系難燃剤)
レゾルシノールビスジフェニルホスフェート500部、トリスチレン化フェノールポリオキシエチレン20モル付加物100部を60℃で混合均一化し、これに水400部を徐々に加え乳化させ、リン酸エステル系難燃剤1000部を得た。
【0050】
実施例1、2、比較例1、2
本発明のホスホニウム塩(A)としてテトラ−n−ブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート水溶液(日本化学工業株式会社製ヒシコーリンPX−4BT)、ホスフィン酸誘導体を共重合成分とするポリエステル系難燃剤として合成例1で作成した難燃剤分散液、リン酸エステル系難燃剤として合成例2の難燃剤を用いた。
これらの難燃剤を、表1に示す割合で混合し、各難燃加工処理浴を得た。
【0051】
【表1】
【0052】
難燃加工処理は、表2中に示した交織率のポリエステル系合成繊維織布に対し、浴比1:20、各難燃剤の純分が5%o.w.f.となるようにし、130℃で60分間処理した。なお、カチオン染料可染性PETの組成は、ポリエチレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレートである。
比較例2については、この処理後、ハイドロサルファイト1g/L、ソーダ灰2g/L、洗浄剤(三洋化成工業製 グランアップUS−30)2g/Lで浴比1:20、80℃×30分の還元洗浄を行った。
【0053】
【表2】
【0054】
この後、各加工布を乾燥(100℃×5分)し、乾熱処理(180℃×1分)し、各加工布の特性を測定した結果を表3に示した。
【0055】
【表3】
【0056】
【発明の効果】
本発明の難燃加工剤は、ポリエステル系合成繊維品、特にカチオン染料可染性ポリエステル系合成繊維布帛に後加工することによって、処理することにより、従来のものに比較して、チョークマーク発生することなく、ハロゲン原子を含まない化合物を用いて後加工で耐久性に優れた難燃性を付与することができる。したがって、ポリエステル系合成繊維用後加工難燃剤として極めて有用である。
Claims (4)
- 上記Xが、リン原子含有アニオン、窒素原子含有複素環アニオン、ヒドロキシアニオン、硫酸アニオン、ハロゲン原子アニオンおよびホウ素含有アニオンからなる群から選ばれる1種である請求項1記載のポリエステル系合成繊維用難燃剤。
- ポリエステル系合成繊維に対して請求項1または2記載のポリエステル系合成繊維用難燃剤を0.1〜10質量%付着させることを特徴とする難燃加工されたポリエステル系合成繊維の製造方法。
- 請求項3記載の方法により得られたポリエステル系合成繊維を用いてなるシート、シートカバー、カーテン、ロールカーテン、壁・天井クロス、障子紙、カーペット、どん帳、建築用養生シート、防護用ネット、帆布またはテント。
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