JP2005008361A - 耐熱性コンベアベルト及び接合方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ベルト基材11の両端は、縦糸部分のみを露出した状態で縦糸部分がベルト基材11の幅方向に沿ってオーバーラップするように第1の溶融ふっ素樹脂フィルム13aを介して積層され、ベルト基材11の表面側には縦糸側から順に第2の溶融ふっ素樹脂フィルム13b、表面材14、第3の溶融ふっ素樹脂フィルム13cが夫々縦糸部分を覆うように順次積層され、ベルト基材11の裏面側には縦糸側から順に第4の溶融ふっ素樹脂フィルム11d,裏面材15が夫々縦糸部分を覆うように順次積層され、表面材がその基材横糸方向に対して90°未満の角度で裁断されたものであることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に粘着性を持つ物品を搬送し、熱処理等の工程を行う際に使用される耐熱性コンベアベルト及びその接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知の如く、ガラス織布にふっ素樹脂を被覆してなるエンドレス状のコンベアベルトが知られている。このベルトは、長尺なベルト基材の両端を接合して構成されるが、用途に応じて種々の接合方法が提案されている。図8は、ベルト基材1の先端部分をベルト基材1の幅方向にオーバーラップさせて接合させるオーバーラップ接合法を示す。また、図9は、ベルト基材1の先端部分を突き合わせ、裏面側に板状部材2をベルト基材1の幅方向に沿って配置させたバット接合法を示す。
【0003】
ところで、ベルト上で熱処理される材料がそのまま製品となる、例えばキャスティング・フィルムは、ベルト接合部の状態が製品に転写する為、ベルト接合部の平滑性が要求される。そこで、表面平滑性を備えた接合方法の一つとして、図10に示すラップレス・ジョイント法が知られている。
【0004】
ベルト基材1は、縦糸3aと横糸3bからなるガラス織布3を一構成材料としている。このガラス織布3に例えば四ふっ化エチレン樹脂ディスパージョンを含浸し、焼き付けて被覆することにより所定の厚さのベルト基材1が構成されている。長尺なベルト基材1の一端側と他端側のふっ素樹脂部分は剥ぎ取られて、縦糸部分のみが露出してベルト基材1の幅方向に沿って互いにオーバーラップするように上下に位置している。前記ベルト基材1の一端側の縦糸3aと他端側の縦糸3a間には、第1の溶融ふっ素樹脂フィルム4aが配置されている。
【0005】
前記ベルト基材1の表面側には、表面側寄りの縦糸側から順に第2の溶融ふっ素樹脂フィルム4b、表面材5、及び第3の溶融ふっ素樹脂フィルム4cが夫々縦糸部分を覆うように順次積層されている。ここで、表面材5は、図3(A)に示すように、表面材用基材20の縦糸方向に沿って裁断した材料を用いている。前記表面材5は、ベルト接合部の強度を担うとともに、縦糸3aの割れを防止する役目を果たしている。表面材5の材料としては、ベルト表面の平滑性を保つために薄く、且つ強度の大きいアラミド織布に四ふっ化エチレン樹脂を被覆した材料が使用される。
【0006】
前記ベルト基材1の裏面側には、裏面側寄りの縦糸側から順に第4の溶融ふっ素樹脂フィルム4d及び裏面材6が夫々縦糸部分を覆うように順次積層されている。前記裏面材6は、ベルト接合部の強度を補助する役目を担っており、ベルト基材1と同種類、即ちガラス織布に四ふっ化エチレン樹脂を被覆した材料が使用されている。
【0007】
長尺なベルト基材1の接合は次のようにして行う。まず、長尺なベルト基材1の被覆材であるふっ素樹脂を所定の長さ引き剥がし、その結果露出されたガラス織布3の横糸3bを抜きとる。次に、図10に示すように、縦糸3a間に第1の溶融ふっ素樹脂フィルム4aを、前記ベルト基材1の表面側に第2の溶融ふっ素樹脂フィルム4b、表面材5、第3の溶融ふっ素樹脂フィルム4cを夫々縦糸部分を覆うように順次積層し、更に前記ベルト基材1の裏面側に第4の溶融ふっ素樹脂フィルム4d及び裏面材6が夫々縦糸部分を覆うように順次積層させる。つづいて、ベルト基材1の接合部分の溶融ふっ素樹脂フィルム4a〜4d等を所定の温度、圧力で溶融させてベルト基材1の接合を行い、エンドレス状のコンベアベルト7を得る。
【0008】
上記ラップレス・ジョイント法は、図8や図9の接合方法と比べ、平滑性の点で優れている。
【0009】
特許文献1には、帯状のベルト本体の両端部に、該ベルト本体の幅方向に沿った係止孔を有する継手部が夫々形成され、両継手部が互に近接するようにベルト本体をループ状にした状態で、両継手部の係止孔に係止ピンが挿通されているコンベアベルトについて開示されている。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−44026号公報(段落[0015]〜[0018]、図1及び図2)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図11(A),(B)に示すようにコンベアベルト7をローラー8を用いて走行させる際、ベルト表面部の伸びの繰り返しにより、特にコンベアベルト7のローラー8に対する屈曲応力が大きい箇所Xで屈曲疲労により縦糸3a部分とベルト基材1の境界で縦糸3a部分が割れる傾向があり、その結果表面材5にも割れを生じ、ベルト上の搬送物もしくは熱処理物に悪影響を及ぼす。なお、図11(B)は図11(A)の箇所Xを部分的に拡大して示した略図である。
【0012】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、ラップレス・ジョイント法によるベルト基材の割れを回避して搬送物もしくは熱処理物への悪影響を防止するとともに、使用寿命を延長して低コストの耐熱性コンベアベルトを提供することを目的とする。
また、本発明は、上述した効果を有する耐熱性コンベアベルトの接合方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
1)本発明に係る耐熱性コンベアベルトは、縦糸及び横糸で織られたガラス織布にふっ素樹脂を被覆した長尺なベルト基材の両端同士を接合して得られるループ状の耐熱性コンベアベルトであり、
前記ベルト基材の両端は、縦糸部分のみを露出した状態でかつ縦糸部分が前記ベルト基材の幅方向に沿ってオーバーラップするように第1の溶融ふっ素樹脂フィルムを介して積層され、前記ベルト基材の表面側には、表面側寄りの縦糸側から順に第2の溶融ふっ素樹脂フィルム、表面材、及び第3の溶融ふっ素樹脂フィルムが夫々縦糸部分を覆うように順次積層され、前記ベルト基材の裏面側には、裏面側寄りの縦糸側から順に第4の溶融ふっ素樹脂フィルム及び裏面材が夫々縦糸部分を覆うように順次積層され、前記表面材が、縦糸及び横糸で織られたガラス織布にふっ素樹脂を被覆した表面材用基材から該表面用基材の横糸方向に対して90度未満の角度で裁断されたことを特徴とする(請求項1記載)。
【0014】
2)また、本発明に係る耐熱性コンベアベルトは、上記1)で前記縦糸部分のオーバーラップ部分をずらし、そのずらした上下縦糸部分の付け根部分に、夫々融着用溶融ふっ素樹脂フィルムをベルト基材の幅方向に沿って配置したことを特徴とする(請求項2記載)。
【0015】
3)更に、本発明に係る耐熱性コンベアベルトは、上記1)で前記縦糸部分のオーバーラップ部分をずらし、そのずらした上下縦糸部分の先端部分に、夫々融着用溶融ふっ素樹脂フィルムをベルト基材の幅方向に沿って配置したことを特徴とする(請求項3記載)。
【0016】
4)また、本発明の耐熱性コンベアベルトの接合方法は、縦糸及び横糸で織られたガラス織布にふっ素樹脂を被覆した長尺なベルト基材の両端同士を接合して得られるループ状の耐熱性コンベアベルトの接合方法であり、
前記ベルト基材の両端を、縦糸部分のみを露出した状態でかつ縦糸部分が前記ベルト基材の幅方向に沿ってオーバーラップするように第1の溶融ふっ素樹脂フィルムを介して積層する工程と、前記ベルト基材の表面側に、表面側寄りの縦糸側から順に第2の溶融ふっ素樹脂フィルム、表面材、及び第3の溶融ふっ素樹脂フィルムが夫々縦糸部分を覆うように順次積層するとともに、前記ベルト基材の裏面側に、裏面側寄りの縦糸側から順に第4の溶融ふっ素樹脂フィルム及び裏面材が夫々縦糸部分を覆うように順次積層する工程と、前記ベルト基材、溶融ふっ素樹脂フィルム及び表面材を加熱加圧する工程とを具備し、前記表面材が、縦糸及び横糸で織られたガラス織布にふっ素樹脂を被覆した表面材用基材から該表面用基材の横糸方向に対して90度未満の角度で裁断されたことを特徴とする(請求項4記載)。
【0017】
5)また、本発明に係る耐熱性コンベアベルトの接合方法は、上記4)で前記縦糸部分のオーバーラップ部分をずらし、そのずらした上下縦糸部分の付け根部分に、夫々融着用溶融ふっ素樹脂フィルムをベルト基材の幅方向に沿って配置したことを特徴とする(請求項5記載)。
【0018】
6)更に、本発明に係る耐熱性コンベアベルトの接合方法は、上記4)で前記縦糸部分のオーバーラップ部分をずらし、そのずらした上下縦糸部分の先端部分に、夫々融着用溶融ふっ素樹脂フィルムをベルト基材の幅方向に沿って配置したことを特徴とする(請求項6記載)。
【0019】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明において、ベルト基材の一構成であるガラス織布の被覆材料としては、例えば四ふっ化エチレン樹脂が挙げられるが、これに限定されない。前記ベルト基材は、例えばガラス織布に例えば四ふっ化エチレン樹脂ディスパージョンを含浸し、焼き付けて被覆することにより得ることができる。
【0020】
本発明において、表面材をその表面材用基材から裁断する角度(以下、バイアス角と呼ぶ)を表面材用基材の横糸方向に対して90°未満とする理由は、バイアス角が90°即ち表面材用基材の縦糸方向で裁断した場合よりも伸び率の大きい表面材が得られるからである。当然のことであるが、バイアス角が45°の場合に伸び率が最大の表面材が得られる。また、表面材は、ベルト接合部の強度を担うとともに、縦糸の割れを防止する機能を有し、かつベルト表面の平滑性を保つために強度が大きく可能な限り薄い材料が好ましい。更に、限定するものではないが、例えばアラミド織布に四ふっ化エチレン樹脂を被覆した表面材が使用可能である。
【0021】
本発明において、溶融ふっ素樹脂フィルムの材料としては、例えば四ふっ化エチレンと六ふっ化プロピレンの共重合樹脂(PFEP樹脂)、あるいは四ふっ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA樹脂)が挙げられ、目的に応じて適宜選択される。
【0022】
本発明において、裏面材は、ベルト接合部の強度を補助する役目を担っており、ベルト基材と同種類、例えばガラス織布に四ふっ化エチレン樹脂を被覆した材料が使用されるが、これに限定されない。
【0023】
本発明において、オーバーラップする上下縦糸部分のオーバーラップ部分をずらし、そのずらした上下縦糸部分の付け根部分に、夫々融着用溶融ふっ素樹脂フィルムをベルト基材の幅方向に沿って配置することが好ましい(図4、5参照)。また、上下縦糸部分のオーバーラップ部分をずらし、ぞのずらした上下縦糸部分の先端部分に、夫々融着用溶融ふっ素樹脂フィルムをベルト基材の幅方向に沿って配置することが好ましい(図6、7参照)。こうした構成にすることにより、90°未満のバイアス角で裁断した表面材のみを用いた場合と比べ、一層屈曲により生ずる応力が分散され、割れの発生を防止することができる。
【0024】
本発明において、ベルト基材の接合部分の溶融ふっ素樹脂フィルム等を融着する際には、温度400℃、圧力5MPaまでの能力を有する熱プレスが使用される。
【0025】
本発明において、後述する実施例の接合部の比較走行試験は、図12に示すように、駆動ローラー(φ210mm)31、従動ローラー(φ210mm)32、支持ローラー(φ75mm)33,34及び可動ローラー(φ150mm)35で構成されるベルト走行試験機を使用し、その試験機にコンベアベルト16を懸架させるとともに、可動ローラー35に錘36を吊るし、更にコンベアベルト16を加熱ヒーター37により加熱することより行った。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態1〜4及び従来例について説明する。但し、本発明の権利範囲がこれらによって限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1(A),(B)、図2及び図3(A),(B)を参照する。ここで、図1(A)は実施の形態1に係る耐熱性コンベアベルトの概略的な斜視図を示し、図1(B)は図1(A)のX−X線に沿う断面図、図2は図1の展開図を示す。また、図3は図1の耐熱性コンベアベルトの一構成である表面材用基材の裁断に関する説明図で、図3(A)は表面材用基材の平面図、図3(B)は図3(A)に示す如く裁断された一部を示す拡大平面図である。
【0027】
ベルト基材11は、縦糸12aと横糸12bからなるガラス織布12を一構成材料としている。このガラス織布12に例えば四ふっ化エチレン樹脂ディスパージョンを含浸し、焼き付けて被覆することによりベルト基材11が構成される。長尺なベルト基材11の一端側と他端側のふっ素樹脂部分は剥ぎ取られて、縦糸部分のみが露出してベルト基材11の幅方向に沿って互いにオーバーラップするように上下に位置している。前記ベルト基材11の一端側の縦糸12aと他端側の縦糸12a間には、第1の溶融ふっ素樹脂フィルム(以下、第1のフィルムと呼ぶ)13aが配置されている。ここで、第1のフィルム13aとしては、厚さ25μmのPFA樹脂フィルムを使用した。
【0028】
前記ベルト基材11の表面側には、表面側寄りの縦糸側から順に第2の溶融ふっ素樹脂フィルム(以下、第2のフィルムと呼ぶ)13b、表面材14、及び第3の溶融ふっ素樹脂フィルム(以下、第3のフィルムと呼ぶ)13cが夫々縦糸部分を覆うように順次積層されている。ここで、表面材14は、図3(A)に示すように、表面材用基材20の横糸方向に対して表面材裁断方向のなす角度(以下、バイアス角度と呼ぶ)θが60°を持って裁断されたものを使用した。図3(B)は、その裁断された表面材14を拡大したもので、ベルト基材11の幅方向に対して縦糸12aは60°、横糸12bは120°傾斜して互いにクロスしている。
【0029】
前記表面材14は、ベルト接合部の強度を担うとともに、オーバーラップした上下縦糸12a部分の割れを防止する役目を果たしている。表面材14の材料としては、上記機能に加えて、ベルト表面の平滑性を保つ為可能な限り薄いことが要求されることから、薄くて強度のある0.08mm厚さのアラミド織布に四ふっ化エチレン樹脂を被覆した材料を使用した。前記第2のフィルム13b及び第3のフィルム13cとしては、ともに厚さ25μmのPFA樹脂フィルムを使用した。
【0030】
前記ベルト基材11の裏面側には、裏面側寄りの縦糸側から順に第4の溶融ふっ素樹脂フィルム(以下、第4のフィルムと呼ぶ)13d及び厚さ0.15mm程度の裏面材15が夫々縦糸部分を覆うように順次積層されている。前記第4のフィルム13dとしては、厚さ25μmのPFA樹脂フィルムを使用した。前記裏面材15は、ベルト接合部の強度を補助する役目を担っており、ベルト基材と同種類、即ちガラス織布に四ふっ化エチレン樹脂を被覆した材料を使用した。
【0031】
長尺なベルト基材11の両端部の接合は、次のようにして行う。まず、長尺なベルト基材11の被覆材であるふっ素樹脂を所定の長さ引き剥がし、その結果露出されたガラス織布12の横糸12bを抜きとる。次に、図2に示すように、オーバーラップする縦糸12a間に第1のフィルム13aを、前記ベルト基材11の表面側に第2のフィルム13b、表面材14、第3のフィルム13cを夫々縦糸部分を覆うように順次積層し、更に前記ベルト基材11の裏面側に第4のフィルム13d及び裏面材15が夫々縦糸部分を覆うように順次積層させる。つづいて、ベルト基材11の接合部分の前記フィルム13a〜13d等を温度400℃、圧力5MPaまでの能力を有する熱プレスにて前記フィルム13a〜13dを溶融させてベルト基材11の接合を行い、エンドレス状のコンベアベルト16を得る。
【0032】
実施の形態1によれば、表面材14として、表面材用基材20の横糸方向に対してバイアス角60°の材料を用いることにより、従来のように表面材用基材縦糸方向に沿って裁断した場合と比較して、縦糸及び横糸による伸縮性が良好となり、図11のようにローラーにコンベアベルトを使用して搬送物を搬送する際、屈曲により生ずる応力が分散され、縦糸部分の割れの発生を軽減することができる。
【0033】
(実施の形態2)
実施の形態2は、図示しないが、実施の形態1と比べ、バイアス角度が45°である点を除いて同じ構成としたことを特徴とする。
実施の形態2の場合には、最大伸び率が得られるバイアス角度が45°の表面材を使用していることから、実施の形態1よりも接合部縦糸部分の割れ防止に対する効果が更に改善することが後述の走行試験によって確認された。
【0034】
(実施の形態3)
図4(A)、(B)及び図5を参照する。ここで、図4(A)は実施の形態3に係る耐熱性コンベアベルトの概略的な斜視図を示し、図4(B)は図4(A)のX−X線に沿う断面図、図5は図4の展開図を示す。なお、図1及び図2と同部材は同符番を付して説明を省略する。
【0035】
図中の符番21,22は、夫々オーバーラップする前記上下縦糸12a部分を縦糸の長手方向で且つ互に離間する方向にずらし、そのずらした縦糸12aの付け根部分に配置された融着用溶融ふっ素樹脂フィルム(以下、融着用フィルムと呼ぶ)を示す。この融着用フィルム21,22は、夫々厚さ250μm、幅5mmで、例えばPFA樹脂からなる。融着用フィルム21,22間には、第1のフィルム13aが配置されている。
【0036】
実施の形態3における長尺なベルト基材の両端部の接合は、次のように行う。まず、長尺なベルト基材11の被覆材であるふっ素樹脂を所定の長さ引き剥がし、その結果露出されたガラス織布12の横糸12bを抜きとる。次に、図5に示すように、オーバーラップする縦糸12a間に第1のフィルム13aを配置するとともに、ずれて露出する前記上下縦糸12aの付け根部分に夫々融着用フィルム21,22を配置し、前記ベルト基材11の表面側に第2のフィルム13b、表面材14、第3のフィルム13cを夫々縦糸部分を覆うように順次積層し、更に前記ベルト基材11の裏面側に第4のフィルム13d及び裏面材15が夫々縦糸部分を覆うように順次積層させる。つづいて、ベルト基材11の接合部分の前記フィルム13a〜13c等を温度400℃、圧力5MPaまでの能力を有する熱プレスにて熱融着させてベルト基材11の接合を行い、エンドレス状のコンベアベルト16を得る。
【0037】
実施の形態3によれば、実施の形態1と同様にバイアス角60°の表面材14を用いる他、オーバーラップする縦糸12a間に第1のフィルム13a、及び融着用フィルム21,22を配置して熱融着することにより、実施の形態1と比べて一層屈曲により生ずる応力が分散され、割れの発生防止効果を増大することができる。
【0038】
(実施の形態4)
図6(A)、(B)及び図7を参照する。ここで、図6(A)は実施の形態4に係る耐熱性コンベアベルトの概略的な斜視図を示し、図6(B)は図6(A)のX−X線に沿う断面図、図7は図6の展開図を示す。なお、図1及び図2と同部材は同符番を付して説明を省略する。
【0039】
実施の形態4では、前記縦糸部分のオーバーラップ部分をずらし、そのずらした縦糸先端部分に夫々融着用溶融ふっ素樹脂フィルム(以下、融着用フィルムと呼ぶ)23,24をベルト基材11の幅方向に沿って配置した構成となっている。前記融着用フィルム23,24は厚さ250μm、幅は5mmのPFAフィルムである。ここで、図6,7のオーバーラップする縦糸12aをずらした長さは5mmであり、融着用フィルム23,24の幅(5mm)に相当する。
【0040】
実施の形態4における長尺なベルト基材の両端部の接合は、次のように行う。まず、長尺なベルト基材11の被覆材であるふっ素樹脂を所定の長さ引き剥がし、その結果露出されたガラス織布12の横糸12bを抜きとる。次に、図7に示すように、オーバーラップする縦糸12a間に第1のフィルム13aを配置するとともに重なりをずらした上下縦糸12aの夫々の先端部分に融着用フィルム23,24を配置し、前記ベルト基材11の表面側に第2のフィルム13b、表面材14、第3のフィルム13cを夫々縦糸部分を覆うように順次積層し、更に前記ベルト基材11の裏面側に第4のフィルム13d及び裏面材15が夫々縦糸部分を覆うように順次積層させる。つづいて、ベルト基材11の接合部分を温度400℃、圧力5MPaまでの能力を有する熱プレスにて前記フィルム13a〜13dを溶融させてベルト基材11の接合を行い、エンドレス状のコンベアベルト16を得る。
【0041】
実施の形態4によれば、実施の形態1と同様にバイアス角60°の表面材14を用いる他、前記縦糸部分のオーバーラップをずらし、そのずらした先端部分に夫々融着用溶フィルム23,24をベルト基材11の幅方向に沿って配置して熱融着することにより、実施の形態1と比べて一層屈曲により生ずる応力が分散され、割れの発生を防止することができる。
【0042】
なお、上記実施の形態3及び4において、オーバーラップする縦糸部分の長さは、露出する縦糸部分の長さを変更することによって加減することが可能であり、その長さは用途に応じて決定されるが、通常は15mm程度が採用される。
【0043】
(従来例)
従来例は、図示しないが、バイアス角度θが90°、即ち、表面材用基材の縦糸方向に沿って裁断した表面材を用いている点を除いて実施の形態1及び実施の形態2と同じ構成である。
【0044】
下記表1は、実施の形態1〜4及び従来例に係るコンベアベルトの各構成要素の材料、厚み、幅等を記載にしたものである。何れの例もラッププレス・ジョイント接合法により作製したものである。
【0045】
【表1】
【0046】
また、実施の形態1〜4及び従来例に係るコンベアベルトを、図12の走行試験機を用いて以下の条件で走行試験を実施した。
走行速度:3.6m/min
加熱温度:210℃
走行時間:160時間(約80000回の屈曲)
ベルト張力:9.8N/cm
走行試験後、5種類のコンベアベルトにおける接合部の引張試験(室温及び250℃)の測定並びに割れの発生の状態を観察した。その結果は下記表2及び表3に示す通りである。ここで、引張強度の測定は、JIS L 1096のカットストリップに準じて実施した。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
表3において、初期強度RTは、接合部の破壊はなく、全て基材破壊であった。
【0050】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0051】
【発明の効果】
以上詳述した如く本発明によれば、上記事情を考慮してなされたもので、ラップレス・ジョイント法によるベルト基材の割れを回避して搬送物もしくは熱処理物への悪影響を防止するとともに、ベルトの使用寿命を延長してコストパフォーマンスのよい耐熱性コンベアベルト及び接合方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る耐熱性コンベアベルトの説明図。
【図2】図1の耐熱性コンベアベルトの展開図。
【図3】図1の耐熱性コンベアベルトの一構成である表面材の説明図。
【図4】本発明の実施の形態3に係る耐熱性コンベアベルトの説明図。
【図5】図4の耐熱性コンベアベルトの展開図。
【図6】本発明の実施の形態4に係る耐熱性コンベアベルトの説明図
【図7】図4の耐熱性コンベアベルトの展開図。
【図8】従来のオーバーラップ接合の説明図。
【図9】従来のバット接合の説明図。
【図10】従来の耐熱性コンベアベルトの展開図。
【図11】従来の耐熱性コンベアベルトによる割れ発生の説明図。
【図12】ベルト走行試験機の説明図。
【符号の説明】
11…ベルト基材、 12…ガラス織布、 12a…縦糸、
12b…横糸、 13a〜13d…フィルム、 14…表面材、
15…裏面材、 16…コンベアベルト、 20…表面材用基材、
21〜24…融着用フィルム。
Claims (6)
- 縦糸及び横糸で織られたガラス織布にふっ素樹脂を被覆した長尺なベルト基材の両端同士を接合して得られるループ状の耐熱性コンベアベルトであり、前記ベルト基材の両端は、縦糸部分のみを露出した状態でかつ縦糸部分が前記ベルト基材の幅方向に沿ってオーバーラップするように第1の溶融ふっ素樹脂フィルムを介して積層され、
前記ベルト基材の表面側には、表面側寄りの縦糸側から順に第2の溶融ふっ素樹脂フィルム、表面材、及び第3の溶融ふっ素樹脂フィルムが夫々縦糸部分を覆うように順次積層され、
前記ベルト基材の裏面側には、裏面側寄りの縦糸側から順に第4の溶融ふっ素樹脂フィルム及び裏面材が夫々縦糸部分を覆うように順次積層され、
前記表面材が、縦糸及び横糸で織られたガラス織布にふっ素樹脂を被覆した表面材用基材から該表面用基材の横糸方向に対して90度未満の角度で裁断されたことを特徴とする耐熱性コンベアベルト。 - 前記縦糸部分のオーバーラップ部分をずらし、そのずらした上下縦糸部分の付け根部分に、夫々融着用溶融ふっ素樹脂フィルムをベルト基材の幅方向に沿って配置したことを特徴とする請求項1記載の耐熱性コンベアベルト。
- 前記縦糸部分のオーバーラップ部分をずらし、そのずらした上下縦糸部分の先端部分に、夫々融着用溶融ふっ素樹脂フィルムをベルト基材の幅方向に沿って配置したことを特徴とする請求項1記載の耐熱性コンベアベルト。
- 縦糸及び横糸で織られたガラス織布にふっ素樹脂を被覆した長尺なベルト基材の両端同士を接合して得られるループ状の耐熱性コンベアベルトの接合方法であり、
前記ベルト基材の両端を、縦糸部分のみを露出した状態でかつ縦糸部分が前記ベルト基材の幅方向に沿ってオーバーラップするように第1の溶融ふっ素樹脂フィルムを介して積層する工程と、
前記ベルト基材の表面側に、表面側寄りの縦糸側から順に第2の溶融ふっ素樹脂フィルム、表面材、及び第3の溶融ふっ素樹脂フィルムが夫々縦糸部分を覆うように順次積層するとともに、前記ベルト基材の裏面側に、裏面側寄りの縦糸側から順に第4の溶融ふっ素樹脂フィルム及び裏面材が夫々縦糸部分を覆うように順次積層する工程と、
前記ベルト基材、溶融ふっ素樹脂フィルム及び表面材を加熱加圧する工程とを具備し、
前記表面材が、縦糸及び横糸で織られたガラス織布にふっ素樹脂を被覆した表面材用基材から該表面用基材の横糸方向に対して90度未満の角度で裁断されたことを特徴とする耐熱性コンベアベルトの接合方法。 - 前記縦糸部分のオーバーラップ部分をずらし、そのずらした上下縦糸部分の付け根部分に、夫々融着用溶融ふっ素樹脂フィルムをベルト基材の幅方向に沿って配置したことを特徴とする請求項4記載の耐熱性コンベアベルトの接合方法。
- 前記縦糸部分のオーバーラップ部分をずらし、そのずらした上下縦糸部分の先端部分に、夫々融着用溶融ふっ素樹脂フィルムをベルト基材の幅方向に沿って配置したことを特徴とする請求項4記載の耐熱性コンベアベルトの接合方法。
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