JP2005008106A - フェールセーフ制御機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】条件に応じてしきい値と異常判定時間とを可変にすることで、実際の走行状況に応じた適切なフェールセーフ制御をすることができるフェールセーフ制御機構を提供することである。
【解決手段】制御手段Cは、アシスト手段へ出力するアシスト信号を特定する出力部11と、異常を判断する異常検出部12とを備え、上記異常検出部12は、操舵トルクセンサ9と車速センサ10からの信号に基づいて危険度を特定するテーブルTとを記憶し、その危険度に応じて異常を判断するためのしきい値と異常判定時間とを設定するとともに、上記出力部11が特定したアシスト信号と制御手段Cにフィードバックされる信号との差を算出し、その差の絶対値が、上記異常判定時間以上継続してしきい値を超えたときに異常と判断する機能を備えたことを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】制御手段Cは、アシスト手段へ出力するアシスト信号を特定する出力部11と、異常を判断する異常検出部12とを備え、上記異常検出部12は、操舵トルクセンサ9と車速センサ10からの信号に基づいて危険度を特定するテーブルTとを記憶し、その危険度に応じて異常を判断するためのしきい値と異常判定時間とを設定するとともに、上記出力部11が特定したアシスト信号と制御手段Cにフィードバックされる信号との差を算出し、その差の絶対値が、上記異常判定時間以上継続してしきい値を超えたときに異常と判断する機能を備えたことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、パワーステアリング装置に用いるフェールセーフ制御機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5は、従来の電動パワーステアリング装置の全体構成図である。
図5に示すように、ハンドル1には入力軸2を連結し、この入力軸2と出力軸3とをトーションバ4によって連結している。上記出力軸3の先端にはピニオン5を設け、このピニオン5をラック6にかみ合わせている。ラック6は、ロッド7に形成したものであり、このロッド7の両端には、車輪A,Aを連係している。
【0003】
また、上記ラック6には、電動モータMの出力軸に固定したピニオン8をかみ合わせている。上記電動モータMは、制御手段cによって制御されるが、この制御手段cには、操舵トルクセンサ9と、車速センサ10と、駆動手段Dとを接続している。
上記操舵トルクセンサ9は、トーションバ4のねじれ量から操舵トルクを検出するものであり、上記車速センサ10は、車両の速度を検出するものである。また、上記駆動手段Dは、制御手段cから出力される信号に応じた電流を駆動モータMに出力するものである。
【0004】
上記ハンドル1を回すと、そのときに生じる操舵トルクを操舵トルクセンサ9が検出し、その操舵トルクの大きさに応じたトルク信号を制御手段cに出力する。また、車両の車速を車速センサ10が検出し、その車速信号も上記制御手段cに出力する。
上記制御手段cは、入力したトルク信号と車速信号とから、アシスト信号を特定し、その信号を駆動手段Dに出力する。
制御手段cからアシスト信号を入力した駆動手段Dは、その信号に応じた電流を電動モータMに出力する。電動モータMは、その電流に応じて駆動し、ピニオン8を回転させる。ピニオン8が回転すると、ラック6とともにロッド7が移動し、車輪A,Aが転舵する。
【0005】
図6は、上記制御手段cの回路のブロック図である。
上記制御手段cには、出力部11と異常検出部12とを備え、上記出力部11は、トルク信号と車速信号とからアシスト信号を特定し、その信号を駆動手段Dに出力するものである。
また、上記異常検出部12は、出力部11が出力したアシスト信号と、駆動手段Dが出力し、フィードバックされた電流値との差を同じ物理量で算出し、その差が異常か否かを判断するものである。異常か否かを判断するために、異常検出部12は、予め設定したしきい値と異常判定時間とを記憶しており、上記算出した差の絶対値が、上記異常判定時間以上継続してしきい値を超えると異常と判断する。
【0006】
上記異常検出部12は、上記のように異常と判断すると、異常信号を出力部11に出力する。異常信号を入力した出力部11は、所定の信号を駆動手段Dに出力する。信号を入力した駆動手段Dは、電動モータMへの通電をストップする。通電がストップされると、電動モータMは駆動しないので、マニュアルステアリングに切り換わる。
以上のように、マニュアルステアリングに切り換えることにより、フェールセーフ状態になる。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−270823号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の装置は、異常か否かをしきい値と異常判定時間とに基づいて判断していたが、これらしきい値と異常判定時間とは、固定的に設定されていた。このように、しきい値と異常判定時間とを固定的にしていると、走行状況に応じた適切なフェールセーフ制御が必ずしもできないという問題があった。
例えば、しきい値が小さめに設定されていると、上記異常検出部12が算出した差の絶対値が少し大きくなっただけでも、設定したしきい値を超えてしまうことがある。そして、この状態が異常判定時間以上継続すれば、異常検出部12は異常と判断して、フェールセーフ状態に切り換えてしまう。
しかし、車両が止まっていれば、車輪が勝手に転舵したとしても、それほど危険ではない。つまり、しきい値を基準に判断すれば異常ではあるが、上記のような走行状況を考慮すると、必ずしもフェールセーフ状態に切り換える必要はないことがある。
【0009】
反対に、しきい値が大きめに設定されていると、上記算出した差の絶対値が大きくなっても、設定したしきい値を超えないことがある。この場合、異常検出部12は正常と判断するので、通常の制御が行われる。
しかし、高速走行中では、車輪が少し転舵しただけで車両が大きく曲がってしまうので、異常な信号によって車輪がドライバーの意志に反して転舵してしまうと、走行上問題が生じることがある。つまり、しきい値を基準にして判断すれば異常ではないが、上記のような走行状況を考慮すると、必ずフェールセーフ状態に切り換わって欲しいことがある。
【0010】
また、異常判定時間が短めに設定されていると、異常検出部12が算出した差の絶対値が短時間しきい値を超えただけでも、その継続した時間が設定した異常判定時間以上になってしまうことがある。この場合には、異常検出部12は異常と判断して、フェールセーフ状態に切り換えてしまう。
しかし、車両が止まっている場合、車輪が勝手に転舵した状態が続いたとしても、それほど危険ではない。つまり、異常判定時間を基準にすれば異常ではあるが、上記のような走行状況を考慮すると、必ずしもフェールセーフ状態に切り換える必要はないことがある。
【0011】
反対に、異常判定時間が長めに設定されていると、上記算出した差の絶対値が長時間継続してしきい値を超えたとしても、その継続した時間が設定した異常判定時間以上にならないことがある。この場合には、異常検出部12は正常と判断するので、通常の制御が行われる。
しかし、高速走行中では、車輪が少し転舵しただけで車両が大きく曲がってしまうので、異常な信号が継続することによって車輪がドライバーの意志に反して転舵してしまうと、走行上問題が生じることがある。つまり、異常判定時間を基準に判断すれば異常ではないが、上記のような走行状況を考慮すると、必ずフェールセーフ状態に切り換わって欲しいことがある。
【0012】
このようなことから、しきい値の大きさや、異常判定時間の長さをどのくらいにするかということは非常に重要であるが、いろいろな走行状況を考慮すると、しきい値や異常判定時間をどのくらいに設定するかが難しく、なかなか適切なしきい値や異常判定時間を設定できなかった。
【0013】
以上のように、従来の装置では、しきい値と異常判定時間とを固定的に設定していたために、上記のような不都合が生じてしまうという問題があった。
この発明の目的は、条件に応じてしきい値と異常判定時間とを可変にすることで、実際の走行状況に応じた適切なフェールセーフ制御をすることができるフェールセーフ制御機構を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、操舵トルクを検出する操舵トルクセンサと、車速を検出する車速センサと、これら操舵トルクセンサと車速センサとからの信号に基づいて、アシスト手段を制御する制御手段とを備えたパワーステアリング装置において、上記制御手段は、アシスト手段へ出力するアシスト信号を特定する出力部と、異常を判断する異常検出部とを備え、上記異常検出部は、操舵トルクセンサと車速センサからの信号に基づいて危険度を特定するテーブルとを記憶し、その危険度に応じて異常を判断するためのしきい値と異常判定時間とを設定するとともに、上記出力部が特定したアシスト信号と制御手段にフィードバックされる信号との差を算出し、その差の絶対値が、上記異常判定時間以上継続してしきい値を超えたときに異常と判断する機能を備えたことを特徴とする。
【0015】
第2の発明は、異常検出部は、車速が低く操舵トルクが大きいほど危険度を低く特定し、車速が高く操舵トルクが小さいほど危険度を高く特定するテーブルを記憶するとともに、上記危険度が低いほどしきい値を大きく、かつ、異常判定時間を長く設定し、危険度が高いほどしきい値を小さく、かつ、異常判定時間を短く設定することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1〜図4にこの発明の一実施形態を示す。
なお、この実施形態の電動パワーステアリング装置の基本的な構造は、前期従来例と同じなので、従来例と同一の構成要素には同一の符号を付す。
図1は、この実施形態の装置の全体構成図である。
図1に示すように、ハンドル1には入力軸2を連結し、この入力軸2と出力軸3とをトーションバ4によって連結している。上記出力軸3の先端にはピニオン5を設け、このピニオン5をラック6にかみ合わせている。ラック6は、ロッド7に形成したものであり、このロッド7の両端には、車輪A,Aを連係している。
【0017】
また、上記ラック6には、電動モータMの出力軸に固定したピニオン8をかみ合わせている。上記電動モータMは、制御手段Cによって制御されるが、この制御手段Cには、操舵トルクセンサ9と、車速センサ10と、駆動手段Dとを接続している。
上記操舵トルクセンサ9は、トーションバ4のねじれ量から操舵トルクを検出するものであり、上記車速センサ10は、車両の速度を検出するものである。また、上記駆動手段Dは、制御手段Cから出力される信号に応じた電流を駆動モータMに出力するものである。
なお、この実施形態においては、上記電動モータMと駆動手段Dとで、この発明のアシスト手段を構成している。
【0018】
上記ハンドル1を回すと、そのときに生じる操舵トルクを操舵トルクセンサ9が検出し、その操舵トルクの大きさに応じたトルク信号を制御手段Cに出力する。また、車両の車速を車速センサ10が検出し、その車速信号も上記制御手段Cに出力する。
上記制御手段Cは、入力したトルク信号と車速信号とから、アシスト信号を特定し、その信号を駆動手段Dに出力する。
制御手段Cからアシスト信号を入力した駆動手段Dは、その信号に応じた電流を電動モータMに出力する。電動モータMは、その電流に応じて駆動し、ピニオン8を回転させる。ピニオン8が回転すると、ラック6とともにロッド7が移動し、車輪A,Aが転舵する。
【0019】
図2は、上記制御手段Cの回路のブロック図である。
上記制御手段Cには、出力部11と異常検出部12とを備え、上記出力部11は、トルク信号と車速信号とからアシスト信号を特定し、その信号を駆動手段Dに出力するものである。
上記異常検出部12は、出力部11が出力したアシスト信号と、駆動手段Dが出力し、フィードバックされた電流値との差を算出し、その差が異常か否かを判断するものである。異常か否かを判断するために、異常検出部12は、変更可能なしきい値と異常判定時間とを記憶しており、上記算出した差の絶対値が、上記異常判定時間以上継続してしきい値を超えると異常と判断する。
【0020】
また、上記異常検出部12は、図3に示すテーブルTを記憶している。
上記テーブルTは、図3に示すように、トルク信号欄13、車速信号欄14、危険度欄15から構成されている。
トルク信号欄13は、操舵トルクの大きさに応じてトルク信号を「小」「中」「大」の3段階に分けている。
また、車速信号欄14は、車速に応じて、車速信号を「0」「低速」「中速」「高速」の4段階に分けている。この実施形態においては、「0」とは0km/hを表し、「低速」とは1〜20km/hの速度を表している。また、「中速」とは21〜50km/hを表し、「高速」とは51km/h〜の速度を表している。なお、上記速度は、任意に変更することができる。
【0021】
危険度欄15は、トルク信号と車速信号に基づいて危険度を特定している。
なお、この実施形態においては、危険度を「低」「中」「高」の3段階に分け、その危険度を以下のように特定している。
車速信号が「0」の場合、トルク信号の大きさに関係なく、危険度を「低」にしている。車速が0km/hであれば、車輪が勝手に転舵したとしても、車両が止まっているので危険度が低いと考えられるからである。
【0022】
車速信号が「低速」、すなわち、速度が1〜20km/hの場合において、トルク信号が「小」のときは、危険度を「中」にしている。トルク信号が「小」のときは、ドライバーの意志に反して車輪が勝手に転舵されてしまう危険があると考えられるからである。すなわち、トルク信号が「小」の場合というのは、ドライバーの操舵トルクが小さいために、駆動手段Dが出力する異常な信号に基づいて電動モータMが異常なアシスト力を発揮してしまうと、そのアシスト力がドライバーの操舵トルクを上回ることが多い。そして、異常なアシスト力がドライバーの操舵トルクを上回った場合には、車輪が勝手に転舵されることになり、危険と考えられる。このような理由により、トルク信号が「小」のときは、危険度を「中」にしている。
【0023】
また、トルク信号が「中」及び「大」のときは、危険度を「低」にしている。トルク信号が「中」または「大」のときは、そのときのドライバーの腕力によって、車輪が勝手に転舵してしまうのを抑えることができると考えられるからである。すなわち、トルク信号が「中」または「大」の場合というのは、ドライバーの操舵トルクが大きいために、駆動手段Dが出力する異常な信号に基づいて電動モータMが異常なアシスト力を発揮しても、そのアシスト力をドライバーの操舵トルクが上回ることが多い。そして、異常なアシスト力をドライバーの操舵トルクが上回った場合には、車輪が勝手に転舵するのを抑えることができると考えられる。このような理由により、トルク信号が「中」または「大」のときは、危険度を「低」にしている。
【0024】
車速信号が「中速」、すなわち、速度が21〜50km/hの場合、トルク信号が「小」のときは、危険度を「高」にしている。中速走行中では、低速走行中よりもドライバーの意志に反して車輪が勝手に転舵してしまったときの危険度が高いと考えられるからである。
また、トルク信号が「中」のときは、危険度を「中」にしている。トルク信号が「小」のときと同様に、中速走行中では、低速走行中よりも車輪が勝手に転舵してしまったときの危険度が高いと考えられるからである。
さらに、トルク信号が「大」のときは、危険度を「低」にしている。トルク信号が「大」のときは、車速信号が「低速」の場合と同様に、ドライバーの操舵しているときの腕力によって、車輪が勝手に転舵してしまうのを抑えることができると考えられるからである。
【0025】
車速信号が「高速」、すなわち、速度が51km/h〜の場合、トルク信号が「小」及び「中」のときは、危険度を「高」にしている。高速走行中では、少し車輪が転舵しただけで車両が大きく曲がってしまうので、中速走行中よりもさらに危険度が高いと考えられるからである。
また、トルク信号が「大」のときは、危険度を「中」にしている。高速走行中では、トルク信号が「小」及び「中」のときと同様に、少し車輪が転舵しただけで車両が大きく曲がってしまうので、中速走行中よりも危険度が高いと考えられるからである。
【0026】
上記のようにして特定した危険度に応じて、上記異常検出部12は、しきい値と異常判定時間とを以下のように設定する。
危険度が「中」のときは、しきい値と異常判定時間とをある基準に基づいて設定する。なお、ある基準とは、いろいろな走行状況を想定した実験等に基づいて定められたものである。例えば、決められた車線幅の直線やカーブにおいて、走行中に突然故障が発生しても、通常のドライバーが、上記車線幅の内側を走行し続けられる時間である。
また、危険度が「低」のときは、危険度「中」のときよりも、しきい値を大きめに、異常判定時間を長めに設定する。しきい値を大きめに設定すれば、異常検出部12が算出した差の絶対値が、相対的に判断して多少大きくても、しきい値を超えないのでフェールセーフ状態に切り換わらない。また、異常判定時間を長めに設定すれば、上記算出した差の絶対値が、相対的に判断して、長時間継続してしきい値を超えたとしても、フェールセーフ状態に切り換わらない。
【0027】
そして、危険度が「高」のときは、危険度「中」のときよりも、しきい値を小さめに、異常判定時間を短めに設定する。しきい値を小さめに設定すれば、異常検出部12が算出した差の絶対値が、相対的に判断して小さくても、しきい値を超えるのでフェールセーフ状態に切り換わる。また、異常判定時間を短めに設定すれば、上記算出した差の絶対値が、相対的に判断して、短時間しかしきい値を超えなかったとしても、フェールセーフ状態に切り換わる。
【0028】
次に、上記異常検出部12の検出手順を、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
異常検出部12は、ステップ1でトルク信号と車速信号とを入力すると、ステップ2で入力したトルク信号と車速信号とに基づいて、テーブルTから危険度を設定する。危険度を設定すると、ステップ3で、その危険度に応じてしきい値を設定する。また、ステップ4で、危険度に応じて異常判定時間を設定する。
一方、ステップ5で、出力部11が出力したアシスト信号と、駆動手段Dが出力し、フィードバックされた電流値とを入力する。アシスト信号とフィードバックされた電流値を入力すると、ステップ6で、入力したアシスト信号とフィードバックされた電流値との差を同じ物理量で算出し、ステップ7に進む。
【0029】
ステップ7で、ステップ3で設定したしきい値と上記算出した差の絶対値とを比較する。比較した結果、上記差の絶対値がしきい値を超えているとステップ8に進む。
反対に、上記差の絶対値がしきい値を超えていないときは、正常と判断し、ステップ10で出力部11が特定したアシスト信号による通常制御が行われる。
【0030】
ステップ8に進むと、上記算出した差の絶対値が、ステップ4で設定した異常判定時間以上継続してしきい値を超えたかどうかを計測する。計測した結果、しきい値を超えた時間が異常判定時間以上のときは、異常と判断して、ステップ9で出力部11に異常信号を出力する。
反対に、上記差の絶対値が、しきい値を超えた時間が異常判定時間以下のときは、正常と判断して、ステップ10で出力部11が特定したアシスト信号による通常制御が行われる。
【0031】
上記異常検出部12が算出した差を異常と判断すると、ステップ9で異常信号を出力部11に出力する。異常信号を入力した出力部11は、所定の信号を駆動手段Dに出力する。信号を入力した駆動手段Dは、電動モータMへの通電をストップする。通電がストップされると、電動モータMは駆動しないので、マニュアルステアリングに切り換わる。
なお、この実施形態では、しきい値を設定した後に異常判定時間を設定するようにしているが、しきい値よりも先に異常判定時間を設定してもよいし、しきい値と異常判定時間とを同時に設定するようにしてもよい。
また、この実施形態では、ステップ7でしきい値と算出した差の絶対値とを比較して、その結果、差の絶対値がしきい値を超えているとステップ8に進み、上記差の絶対値が異常判定時間以上継続してしきい値を超えたかどうかを計測するようにしている。しかし、実際には、差の絶対値がしきい値を超えると同時にステップ8の行程に移行しているので、ステップ7とステップ8との間にはほとんど時間差はなく、同時に行われることになる。
【0032】
以上のようにマニュアルステアリングに切り換えることにより、フェールセーフ状態になるので、ドライバーの意志に反した操舵が行われることのない、高い信頼性を有した電動パワーステアリング装置を実現することができる。
なお、この実施形態では、駆動手段Dが電動モータMに出力する電流値をフィードバックするようにしているが、例えば、出力部11が駆動手段Dに出力した信号をフィードバックするようにしてもよい。すなわち、制御手段Cの出力部11が出力した信号であれば、どこの信号をフィードバックするようにしてもかまわない。
【0033】
上記実施形態によれば、異常検出部12は、入力されるトルク信号と車速信号に基づいて、テーブルTから危険度を設定し、その危険度に応じてしきい値と異常判定時間とを設定する。したがって、従来のように、フェールセーフ状態に切り換わる必要のないときに切り換わってしまったり、逆に、切り換わって欲しいときに切り換わらなかったりすることを防止しやすくなる。すなわち、実際の走行状況に応じた適切なフェールセーフ制御をすることができるようになる。
【0034】
なお、上記実施形態のテーブルT、しきい値及び異常判定時間は一例であり、以下に説明するような傾向になっていればよい。
車速が低く、操舵トルクが大きいほど危険度は低く特定され、この危険度に応じてしきい値は大きめに、異常判定時間は長めに設定される。反対に、車速が高く、操舵トルクが小さいほど危険度は高く特定され、この危険度に応じてしきい値は小さめに、異常判定時間は短めに設定される。すなわち、上記のような傾向になっていればよく、その具体的な値は問わない。
【0035】
また、上記実施形態では、テーブルTの危険度を「低」「中」「高」の3段階に分けているが、より細かく分けてもよい。危険度を細かく分ければ、それに応じて、より細かくしきい値と異常判定時間とを設定することができる。したがって、さらに走行状況に応じた適切なフェールセーフ制御をすることができる。
さらに、上記実施形態では、異常検出部12が異常と判断したときにはフェールセーフ状態に切り換えているが、ドライバーに対して異常と判断したことを知らせるようにしてもよい。例えば、フェールセーフ状態に切り換えると同時に、警報を鳴らしたり、警告ランプを点滅させるようにしてもよい。
【0036】
そして、上記実施形態の電動パワーステアリング装置は、入力軸2側と電動モータMの出力軸とが各々ラック6にかみ合わせている2ピニオン型だが、他の型式の電動パワーステアリング装置でもよい。例えば、入力軸2側の出力軸3を電動モータMで直接回転させる1ピニオン型の電動パワーステアリング装置に本発明のフェールセーフ制御機構を適用してもよい。
また、この発明のフェールセーフ制御機構は、上記実施形態のようにパワーステアリング装置に限るものではなく、条件に応じてしきい値と異常判定時間とを可変にしてフェールセーフ状態に切り換える必要がある装置の故障検出器公然パンに採用することができる。
【0037】
【発明の効果】
第1、第2の発明によれば、条件に応じてしきい値と異常判定時間とを可変にしたので、実際の状況に応じた適切なフェールセーフ制御をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明における実施形態の電動パワーステアリング装置の全体構成図である。
【図2】制御手段のブロック図である。
【図3】異常検出部が記憶しているテーブルを示す図である。
【図4】異常検出部の検出手順を示すフローチャートである。
【図5】従来の電動パワーステアリング装置の全体構成図である。
【図6】従来の制御手段のブロック図である。
【符号の説明】
9 操舵トルクセンサ
10 車速センサ
11 出力部
12 異常検出部
C 制御手段
D 駆動手段
M 電動モータ
T テーブル
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、パワーステアリング装置に用いるフェールセーフ制御機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5は、従来の電動パワーステアリング装置の全体構成図である。
図5に示すように、ハンドル1には入力軸2を連結し、この入力軸2と出力軸3とをトーションバ4によって連結している。上記出力軸3の先端にはピニオン5を設け、このピニオン5をラック6にかみ合わせている。ラック6は、ロッド7に形成したものであり、このロッド7の両端には、車輪A,Aを連係している。
【0003】
また、上記ラック6には、電動モータMの出力軸に固定したピニオン8をかみ合わせている。上記電動モータMは、制御手段cによって制御されるが、この制御手段cには、操舵トルクセンサ9と、車速センサ10と、駆動手段Dとを接続している。
上記操舵トルクセンサ9は、トーションバ4のねじれ量から操舵トルクを検出するものであり、上記車速センサ10は、車両の速度を検出するものである。また、上記駆動手段Dは、制御手段cから出力される信号に応じた電流を駆動モータMに出力するものである。
【0004】
上記ハンドル1を回すと、そのときに生じる操舵トルクを操舵トルクセンサ9が検出し、その操舵トルクの大きさに応じたトルク信号を制御手段cに出力する。また、車両の車速を車速センサ10が検出し、その車速信号も上記制御手段cに出力する。
上記制御手段cは、入力したトルク信号と車速信号とから、アシスト信号を特定し、その信号を駆動手段Dに出力する。
制御手段cからアシスト信号を入力した駆動手段Dは、その信号に応じた電流を電動モータMに出力する。電動モータMは、その電流に応じて駆動し、ピニオン8を回転させる。ピニオン8が回転すると、ラック6とともにロッド7が移動し、車輪A,Aが転舵する。
【0005】
図6は、上記制御手段cの回路のブロック図である。
上記制御手段cには、出力部11と異常検出部12とを備え、上記出力部11は、トルク信号と車速信号とからアシスト信号を特定し、その信号を駆動手段Dに出力するものである。
また、上記異常検出部12は、出力部11が出力したアシスト信号と、駆動手段Dが出力し、フィードバックされた電流値との差を同じ物理量で算出し、その差が異常か否かを判断するものである。異常か否かを判断するために、異常検出部12は、予め設定したしきい値と異常判定時間とを記憶しており、上記算出した差の絶対値が、上記異常判定時間以上継続してしきい値を超えると異常と判断する。
【0006】
上記異常検出部12は、上記のように異常と判断すると、異常信号を出力部11に出力する。異常信号を入力した出力部11は、所定の信号を駆動手段Dに出力する。信号を入力した駆動手段Dは、電動モータMへの通電をストップする。通電がストップされると、電動モータMは駆動しないので、マニュアルステアリングに切り換わる。
以上のように、マニュアルステアリングに切り換えることにより、フェールセーフ状態になる。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−270823号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の装置は、異常か否かをしきい値と異常判定時間とに基づいて判断していたが、これらしきい値と異常判定時間とは、固定的に設定されていた。このように、しきい値と異常判定時間とを固定的にしていると、走行状況に応じた適切なフェールセーフ制御が必ずしもできないという問題があった。
例えば、しきい値が小さめに設定されていると、上記異常検出部12が算出した差の絶対値が少し大きくなっただけでも、設定したしきい値を超えてしまうことがある。そして、この状態が異常判定時間以上継続すれば、異常検出部12は異常と判断して、フェールセーフ状態に切り換えてしまう。
しかし、車両が止まっていれば、車輪が勝手に転舵したとしても、それほど危険ではない。つまり、しきい値を基準に判断すれば異常ではあるが、上記のような走行状況を考慮すると、必ずしもフェールセーフ状態に切り換える必要はないことがある。
【0009】
反対に、しきい値が大きめに設定されていると、上記算出した差の絶対値が大きくなっても、設定したしきい値を超えないことがある。この場合、異常検出部12は正常と判断するので、通常の制御が行われる。
しかし、高速走行中では、車輪が少し転舵しただけで車両が大きく曲がってしまうので、異常な信号によって車輪がドライバーの意志に反して転舵してしまうと、走行上問題が生じることがある。つまり、しきい値を基準にして判断すれば異常ではないが、上記のような走行状況を考慮すると、必ずフェールセーフ状態に切り換わって欲しいことがある。
【0010】
また、異常判定時間が短めに設定されていると、異常検出部12が算出した差の絶対値が短時間しきい値を超えただけでも、その継続した時間が設定した異常判定時間以上になってしまうことがある。この場合には、異常検出部12は異常と判断して、フェールセーフ状態に切り換えてしまう。
しかし、車両が止まっている場合、車輪が勝手に転舵した状態が続いたとしても、それほど危険ではない。つまり、異常判定時間を基準にすれば異常ではあるが、上記のような走行状況を考慮すると、必ずしもフェールセーフ状態に切り換える必要はないことがある。
【0011】
反対に、異常判定時間が長めに設定されていると、上記算出した差の絶対値が長時間継続してしきい値を超えたとしても、その継続した時間が設定した異常判定時間以上にならないことがある。この場合には、異常検出部12は正常と判断するので、通常の制御が行われる。
しかし、高速走行中では、車輪が少し転舵しただけで車両が大きく曲がってしまうので、異常な信号が継続することによって車輪がドライバーの意志に反して転舵してしまうと、走行上問題が生じることがある。つまり、異常判定時間を基準に判断すれば異常ではないが、上記のような走行状況を考慮すると、必ずフェールセーフ状態に切り換わって欲しいことがある。
【0012】
このようなことから、しきい値の大きさや、異常判定時間の長さをどのくらいにするかということは非常に重要であるが、いろいろな走行状況を考慮すると、しきい値や異常判定時間をどのくらいに設定するかが難しく、なかなか適切なしきい値や異常判定時間を設定できなかった。
【0013】
以上のように、従来の装置では、しきい値と異常判定時間とを固定的に設定していたために、上記のような不都合が生じてしまうという問題があった。
この発明の目的は、条件に応じてしきい値と異常判定時間とを可変にすることで、実際の走行状況に応じた適切なフェールセーフ制御をすることができるフェールセーフ制御機構を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、操舵トルクを検出する操舵トルクセンサと、車速を検出する車速センサと、これら操舵トルクセンサと車速センサとからの信号に基づいて、アシスト手段を制御する制御手段とを備えたパワーステアリング装置において、上記制御手段は、アシスト手段へ出力するアシスト信号を特定する出力部と、異常を判断する異常検出部とを備え、上記異常検出部は、操舵トルクセンサと車速センサからの信号に基づいて危険度を特定するテーブルとを記憶し、その危険度に応じて異常を判断するためのしきい値と異常判定時間とを設定するとともに、上記出力部が特定したアシスト信号と制御手段にフィードバックされる信号との差を算出し、その差の絶対値が、上記異常判定時間以上継続してしきい値を超えたときに異常と判断する機能を備えたことを特徴とする。
【0015】
第2の発明は、異常検出部は、車速が低く操舵トルクが大きいほど危険度を低く特定し、車速が高く操舵トルクが小さいほど危険度を高く特定するテーブルを記憶するとともに、上記危険度が低いほどしきい値を大きく、かつ、異常判定時間を長く設定し、危険度が高いほどしきい値を小さく、かつ、異常判定時間を短く設定することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1〜図4にこの発明の一実施形態を示す。
なお、この実施形態の電動パワーステアリング装置の基本的な構造は、前期従来例と同じなので、従来例と同一の構成要素には同一の符号を付す。
図1は、この実施形態の装置の全体構成図である。
図1に示すように、ハンドル1には入力軸2を連結し、この入力軸2と出力軸3とをトーションバ4によって連結している。上記出力軸3の先端にはピニオン5を設け、このピニオン5をラック6にかみ合わせている。ラック6は、ロッド7に形成したものであり、このロッド7の両端には、車輪A,Aを連係している。
【0017】
また、上記ラック6には、電動モータMの出力軸に固定したピニオン8をかみ合わせている。上記電動モータMは、制御手段Cによって制御されるが、この制御手段Cには、操舵トルクセンサ9と、車速センサ10と、駆動手段Dとを接続している。
上記操舵トルクセンサ9は、トーションバ4のねじれ量から操舵トルクを検出するものであり、上記車速センサ10は、車両の速度を検出するものである。また、上記駆動手段Dは、制御手段Cから出力される信号に応じた電流を駆動モータMに出力するものである。
なお、この実施形態においては、上記電動モータMと駆動手段Dとで、この発明のアシスト手段を構成している。
【0018】
上記ハンドル1を回すと、そのときに生じる操舵トルクを操舵トルクセンサ9が検出し、その操舵トルクの大きさに応じたトルク信号を制御手段Cに出力する。また、車両の車速を車速センサ10が検出し、その車速信号も上記制御手段Cに出力する。
上記制御手段Cは、入力したトルク信号と車速信号とから、アシスト信号を特定し、その信号を駆動手段Dに出力する。
制御手段Cからアシスト信号を入力した駆動手段Dは、その信号に応じた電流を電動モータMに出力する。電動モータMは、その電流に応じて駆動し、ピニオン8を回転させる。ピニオン8が回転すると、ラック6とともにロッド7が移動し、車輪A,Aが転舵する。
【0019】
図2は、上記制御手段Cの回路のブロック図である。
上記制御手段Cには、出力部11と異常検出部12とを備え、上記出力部11は、トルク信号と車速信号とからアシスト信号を特定し、その信号を駆動手段Dに出力するものである。
上記異常検出部12は、出力部11が出力したアシスト信号と、駆動手段Dが出力し、フィードバックされた電流値との差を算出し、その差が異常か否かを判断するものである。異常か否かを判断するために、異常検出部12は、変更可能なしきい値と異常判定時間とを記憶しており、上記算出した差の絶対値が、上記異常判定時間以上継続してしきい値を超えると異常と判断する。
【0020】
また、上記異常検出部12は、図3に示すテーブルTを記憶している。
上記テーブルTは、図3に示すように、トルク信号欄13、車速信号欄14、危険度欄15から構成されている。
トルク信号欄13は、操舵トルクの大きさに応じてトルク信号を「小」「中」「大」の3段階に分けている。
また、車速信号欄14は、車速に応じて、車速信号を「0」「低速」「中速」「高速」の4段階に分けている。この実施形態においては、「0」とは0km/hを表し、「低速」とは1〜20km/hの速度を表している。また、「中速」とは21〜50km/hを表し、「高速」とは51km/h〜の速度を表している。なお、上記速度は、任意に変更することができる。
【0021】
危険度欄15は、トルク信号と車速信号に基づいて危険度を特定している。
なお、この実施形態においては、危険度を「低」「中」「高」の3段階に分け、その危険度を以下のように特定している。
車速信号が「0」の場合、トルク信号の大きさに関係なく、危険度を「低」にしている。車速が0km/hであれば、車輪が勝手に転舵したとしても、車両が止まっているので危険度が低いと考えられるからである。
【0022】
車速信号が「低速」、すなわち、速度が1〜20km/hの場合において、トルク信号が「小」のときは、危険度を「中」にしている。トルク信号が「小」のときは、ドライバーの意志に反して車輪が勝手に転舵されてしまう危険があると考えられるからである。すなわち、トルク信号が「小」の場合というのは、ドライバーの操舵トルクが小さいために、駆動手段Dが出力する異常な信号に基づいて電動モータMが異常なアシスト力を発揮してしまうと、そのアシスト力がドライバーの操舵トルクを上回ることが多い。そして、異常なアシスト力がドライバーの操舵トルクを上回った場合には、車輪が勝手に転舵されることになり、危険と考えられる。このような理由により、トルク信号が「小」のときは、危険度を「中」にしている。
【0023】
また、トルク信号が「中」及び「大」のときは、危険度を「低」にしている。トルク信号が「中」または「大」のときは、そのときのドライバーの腕力によって、車輪が勝手に転舵してしまうのを抑えることができると考えられるからである。すなわち、トルク信号が「中」または「大」の場合というのは、ドライバーの操舵トルクが大きいために、駆動手段Dが出力する異常な信号に基づいて電動モータMが異常なアシスト力を発揮しても、そのアシスト力をドライバーの操舵トルクが上回ることが多い。そして、異常なアシスト力をドライバーの操舵トルクが上回った場合には、車輪が勝手に転舵するのを抑えることができると考えられる。このような理由により、トルク信号が「中」または「大」のときは、危険度を「低」にしている。
【0024】
車速信号が「中速」、すなわち、速度が21〜50km/hの場合、トルク信号が「小」のときは、危険度を「高」にしている。中速走行中では、低速走行中よりもドライバーの意志に反して車輪が勝手に転舵してしまったときの危険度が高いと考えられるからである。
また、トルク信号が「中」のときは、危険度を「中」にしている。トルク信号が「小」のときと同様に、中速走行中では、低速走行中よりも車輪が勝手に転舵してしまったときの危険度が高いと考えられるからである。
さらに、トルク信号が「大」のときは、危険度を「低」にしている。トルク信号が「大」のときは、車速信号が「低速」の場合と同様に、ドライバーの操舵しているときの腕力によって、車輪が勝手に転舵してしまうのを抑えることができると考えられるからである。
【0025】
車速信号が「高速」、すなわち、速度が51km/h〜の場合、トルク信号が「小」及び「中」のときは、危険度を「高」にしている。高速走行中では、少し車輪が転舵しただけで車両が大きく曲がってしまうので、中速走行中よりもさらに危険度が高いと考えられるからである。
また、トルク信号が「大」のときは、危険度を「中」にしている。高速走行中では、トルク信号が「小」及び「中」のときと同様に、少し車輪が転舵しただけで車両が大きく曲がってしまうので、中速走行中よりも危険度が高いと考えられるからである。
【0026】
上記のようにして特定した危険度に応じて、上記異常検出部12は、しきい値と異常判定時間とを以下のように設定する。
危険度が「中」のときは、しきい値と異常判定時間とをある基準に基づいて設定する。なお、ある基準とは、いろいろな走行状況を想定した実験等に基づいて定められたものである。例えば、決められた車線幅の直線やカーブにおいて、走行中に突然故障が発生しても、通常のドライバーが、上記車線幅の内側を走行し続けられる時間である。
また、危険度が「低」のときは、危険度「中」のときよりも、しきい値を大きめに、異常判定時間を長めに設定する。しきい値を大きめに設定すれば、異常検出部12が算出した差の絶対値が、相対的に判断して多少大きくても、しきい値を超えないのでフェールセーフ状態に切り換わらない。また、異常判定時間を長めに設定すれば、上記算出した差の絶対値が、相対的に判断して、長時間継続してしきい値を超えたとしても、フェールセーフ状態に切り換わらない。
【0027】
そして、危険度が「高」のときは、危険度「中」のときよりも、しきい値を小さめに、異常判定時間を短めに設定する。しきい値を小さめに設定すれば、異常検出部12が算出した差の絶対値が、相対的に判断して小さくても、しきい値を超えるのでフェールセーフ状態に切り換わる。また、異常判定時間を短めに設定すれば、上記算出した差の絶対値が、相対的に判断して、短時間しかしきい値を超えなかったとしても、フェールセーフ状態に切り換わる。
【0028】
次に、上記異常検出部12の検出手順を、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
異常検出部12は、ステップ1でトルク信号と車速信号とを入力すると、ステップ2で入力したトルク信号と車速信号とに基づいて、テーブルTから危険度を設定する。危険度を設定すると、ステップ3で、その危険度に応じてしきい値を設定する。また、ステップ4で、危険度に応じて異常判定時間を設定する。
一方、ステップ5で、出力部11が出力したアシスト信号と、駆動手段Dが出力し、フィードバックされた電流値とを入力する。アシスト信号とフィードバックされた電流値を入力すると、ステップ6で、入力したアシスト信号とフィードバックされた電流値との差を同じ物理量で算出し、ステップ7に進む。
【0029】
ステップ7で、ステップ3で設定したしきい値と上記算出した差の絶対値とを比較する。比較した結果、上記差の絶対値がしきい値を超えているとステップ8に進む。
反対に、上記差の絶対値がしきい値を超えていないときは、正常と判断し、ステップ10で出力部11が特定したアシスト信号による通常制御が行われる。
【0030】
ステップ8に進むと、上記算出した差の絶対値が、ステップ4で設定した異常判定時間以上継続してしきい値を超えたかどうかを計測する。計測した結果、しきい値を超えた時間が異常判定時間以上のときは、異常と判断して、ステップ9で出力部11に異常信号を出力する。
反対に、上記差の絶対値が、しきい値を超えた時間が異常判定時間以下のときは、正常と判断して、ステップ10で出力部11が特定したアシスト信号による通常制御が行われる。
【0031】
上記異常検出部12が算出した差を異常と判断すると、ステップ9で異常信号を出力部11に出力する。異常信号を入力した出力部11は、所定の信号を駆動手段Dに出力する。信号を入力した駆動手段Dは、電動モータMへの通電をストップする。通電がストップされると、電動モータMは駆動しないので、マニュアルステアリングに切り換わる。
なお、この実施形態では、しきい値を設定した後に異常判定時間を設定するようにしているが、しきい値よりも先に異常判定時間を設定してもよいし、しきい値と異常判定時間とを同時に設定するようにしてもよい。
また、この実施形態では、ステップ7でしきい値と算出した差の絶対値とを比較して、その結果、差の絶対値がしきい値を超えているとステップ8に進み、上記差の絶対値が異常判定時間以上継続してしきい値を超えたかどうかを計測するようにしている。しかし、実際には、差の絶対値がしきい値を超えると同時にステップ8の行程に移行しているので、ステップ7とステップ8との間にはほとんど時間差はなく、同時に行われることになる。
【0032】
以上のようにマニュアルステアリングに切り換えることにより、フェールセーフ状態になるので、ドライバーの意志に反した操舵が行われることのない、高い信頼性を有した電動パワーステアリング装置を実現することができる。
なお、この実施形態では、駆動手段Dが電動モータMに出力する電流値をフィードバックするようにしているが、例えば、出力部11が駆動手段Dに出力した信号をフィードバックするようにしてもよい。すなわち、制御手段Cの出力部11が出力した信号であれば、どこの信号をフィードバックするようにしてもかまわない。
【0033】
上記実施形態によれば、異常検出部12は、入力されるトルク信号と車速信号に基づいて、テーブルTから危険度を設定し、その危険度に応じてしきい値と異常判定時間とを設定する。したがって、従来のように、フェールセーフ状態に切り換わる必要のないときに切り換わってしまったり、逆に、切り換わって欲しいときに切り換わらなかったりすることを防止しやすくなる。すなわち、実際の走行状況に応じた適切なフェールセーフ制御をすることができるようになる。
【0034】
なお、上記実施形態のテーブルT、しきい値及び異常判定時間は一例であり、以下に説明するような傾向になっていればよい。
車速が低く、操舵トルクが大きいほど危険度は低く特定され、この危険度に応じてしきい値は大きめに、異常判定時間は長めに設定される。反対に、車速が高く、操舵トルクが小さいほど危険度は高く特定され、この危険度に応じてしきい値は小さめに、異常判定時間は短めに設定される。すなわち、上記のような傾向になっていればよく、その具体的な値は問わない。
【0035】
また、上記実施形態では、テーブルTの危険度を「低」「中」「高」の3段階に分けているが、より細かく分けてもよい。危険度を細かく分ければ、それに応じて、より細かくしきい値と異常判定時間とを設定することができる。したがって、さらに走行状況に応じた適切なフェールセーフ制御をすることができる。
さらに、上記実施形態では、異常検出部12が異常と判断したときにはフェールセーフ状態に切り換えているが、ドライバーに対して異常と判断したことを知らせるようにしてもよい。例えば、フェールセーフ状態に切り換えると同時に、警報を鳴らしたり、警告ランプを点滅させるようにしてもよい。
【0036】
そして、上記実施形態の電動パワーステアリング装置は、入力軸2側と電動モータMの出力軸とが各々ラック6にかみ合わせている2ピニオン型だが、他の型式の電動パワーステアリング装置でもよい。例えば、入力軸2側の出力軸3を電動モータMで直接回転させる1ピニオン型の電動パワーステアリング装置に本発明のフェールセーフ制御機構を適用してもよい。
また、この発明のフェールセーフ制御機構は、上記実施形態のようにパワーステアリング装置に限るものではなく、条件に応じてしきい値と異常判定時間とを可変にしてフェールセーフ状態に切り換える必要がある装置の故障検出器公然パンに採用することができる。
【0037】
【発明の効果】
第1、第2の発明によれば、条件に応じてしきい値と異常判定時間とを可変にしたので、実際の状況に応じた適切なフェールセーフ制御をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明における実施形態の電動パワーステアリング装置の全体構成図である。
【図2】制御手段のブロック図である。
【図3】異常検出部が記憶しているテーブルを示す図である。
【図4】異常検出部の検出手順を示すフローチャートである。
【図5】従来の電動パワーステアリング装置の全体構成図である。
【図6】従来の制御手段のブロック図である。
【符号の説明】
9 操舵トルクセンサ
10 車速センサ
11 出力部
12 異常検出部
C 制御手段
D 駆動手段
M 電動モータ
T テーブル
Claims (2)
- 操舵トルクを検出する操舵トルクセンサと、車速を検出する車速センサと、これら操舵トルクセンサと車速センサとからの信号に基づいて、アシスト手段を制御する制御手段とを備えたパワーステアリング装置において、上記制御手段は、アシスト手段へ出力するアシスト信号を特定する出力部と、異常を判断する異常検出部とを備え、上記異常検出部は、操舵トルクセンサと車速センサとからの信号に基づいて危険度を特定するテーブルを記憶し、その危険度に応じて異常を判断するためのしきい値と異常判定時間とを設定するとともに、上記出力部が特定したアシスト信号と制御手段にフィードバックされる信号との差を算出し、その差の絶対値が、上記異常判定時間以上継続してしきい値を超えたときに異常と判断する機能を備えたことを特徴とするフェールセーフ制御機構。
- 異常検出部は、車速が低く操舵トルクが大きいほど危険度を低く特定し、車速が高く操舵トルクが小さいほど危険度を高く特定するテーブルを記憶するとともに、上記危険度が低いほどしきい値を大きく、かつ、異常判定時間を長く設定し、危険度が高いほどしきい値を小さく、かつ、異常判定時間を短く設定することを特徴とする請求項1記載のフェールセーフ制御機構。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003176245A JP2005008106A (ja) | 2003-06-20 | 2003-06-20 | フェールセーフ制御機構 |
Applications Claiming Priority (1)
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2005349908A (ja) * | 2004-06-09 | 2005-12-22 | Honda Motor Co Ltd | 車両の電子制御システムの故障検知方法 |
JP2014136525A (ja) * | 2013-01-17 | 2014-07-28 | Omron Automotive Electronics Co Ltd | ステアリング制御装置 |
-
2003
- 2003-06-20 JP JP2003176245A patent/JP2005008106A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2005349908A (ja) * | 2004-06-09 | 2005-12-22 | Honda Motor Co Ltd | 車両の電子制御システムの故障検知方法 |
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JP2014136525A (ja) * | 2013-01-17 | 2014-07-28 | Omron Automotive Electronics Co Ltd | ステアリング制御装置 |
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