JP2005002240A - 粘着テープ用基材および粘着シート - Google Patents

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JP2005002240A JP2003168166A JP2003168166A JP2005002240A JP 2005002240 A JP2005002240 A JP 2005002240A JP 2003168166 A JP2003168166 A JP 2003168166A JP 2003168166 A JP2003168166 A JP 2003168166A JP 2005002240 A JP2005002240 A JP 2005002240A
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Abstract

【課題】本発明が解決しようとする課題は、均一拡張性に優れており、適度な引張強度を有し、柔軟性、透明性有する粘着テープ用基材および粘着シートの提供を目的とする。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂30〜90重量%および以下の水素添加ブロック共重合体10〜70重量%からなる。ポリプロピレン系樹脂は、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンとを含有し、沸騰ヘプタン可溶性のアタクチックポリプロピレンを樹脂全体の10重量%以上含み、かつ示差走査熱量計(DSC)による熱分析においてDSC曲線の融解ピーク温度が145℃以上、融解熱量が20〜100J/gである。水素添加ブロック共重合体は、 ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックAと、水素添加されたブタジエン単量体単位を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックBから構成される。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイシングテープ、表面保護フィルム、マスキングフィルム、テーブルクロス、建築基材フィルム、ストレッチフィルム、医療用テープ原反に用いることができる粘着テープ用基材及び粘着シートに関する。特に、均一延伸性に優れており、半導体ウエハをダイシングによりチップ化する際に、ウエハを粘着固定し使用する、ダイシングテープ用基材及びダイシングテープとして好適に使用される粘着テープ用基材及び粘着シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開平6−927号公報
【特許文献2】
特開平7−300548号公報
シリコン等の半導体ウエハは、大径の状態で製造され、その後、小片にダイシングされ、更にマウント工程に移される。この際、半導体ウエハは粘着シートに貼付され保持した状態でダイシング、洗浄、エキスパンド、ピックアップ、マウントの各工程が施される。前記粘着シートとしては、プラスチックフィルムからなる基材上に粘着剤が塗布されてなるものが用いられている。
【0003】前記ダイシング工程においては、回転する丸刃によってウエハの切断が行われるが、かかるウエハの切断は、ウエハを保持する粘着シートの内部まで切り込みを行なう切断方法が主流となってきている。
このダイシング工程に用いられるダイシングフィルム基材の性能としては、均一な延伸性を有すると共に、その延伸性が優れていることが要求される。すなわち、ダイシングフィルムの均一延伸性が優れていると、フィルムを延伸させた場合に、各チップ間に均等な隙間を形成することができ、したがって、チップのピックアップの作業性が極めて良好なものとなる。
【0004】
そのような性能を有するフィルムとして、塩化ビニル系樹脂フィルムを基材に使用したダイシングフィルムが提案されているが、該ダイシング用フィルムは、塩化ビニル系樹脂フィルムを使用していることから、塩素イオンによるウエハの腐食の問題がある。さらに柔軟性をもたせるため、フィルム中に大量の可塑剤が含まれており、該可塑剤がウエハに移行してウエハを汚染したり、粘着剤に移行して粘着力を低下させ、ダイシング時にチップが飛散したりする問題があった。そこで、塩化ビニル系樹脂フィルムに代わる軟質のフィルム基材として、焼却時に有害ガスを発生することの無いポリオレフィン系フィルム基材として、ポリプロピレン、ポリエチレン、などが挙げられる。
【0005】
しかし、従来のポリオレフィン系フィルム基材では、軟質ポリ塩化ビニルフィルムに比べると多くの点で劣っていた。例えば、ポリプロピレンを主体とするフィルムは結晶性が高く、柔軟性、延伸性に劣るなどの課題があり、又、ポリエチレンを主体とするフィルムでも、その機械的強度に課題があった。そこで、これら課題の改善のため、各種のオレフィン系材料を組合せたブレンド組成物からなるフィルムや積層フィルムなどが提案されている。
特許文献1には、プロピレン及び/又はブテン−1の含有率が50重量%以上の非晶性ポリオレフィンを主成分とする樹脂組成物からなる層とポリエチレンからなる層とを構成層とする積層フィルムが提案されている。
しかし、この積層フィルムは繰返し折り曲げられた場合や、延伸された場合、非晶性ポリオレフィンを主成分とする層とポリエチレン層とが界面で容易に剥離することがある。又、軟質のポリ塩化ビニルフィルムに比べて、均一な延伸性は不十分であった。
【0006】
さらに、特許文献2では、ポリプロピレンとポリプロピレン−エチレンランダム共重合体を主成分とするブロック共重合体とのブレンド組成物からなるフィルムが開示されている。又、ポリプロピレンにスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体やエチレンプロピレンゴムなどの熱可塑性エラストマーをブレンドして、柔軟性を賦与したフィルムの提案もある。これらのフィルムは柔軟性が改善されているが、ポリプロピレンとブレンドされる材料との相溶性の関係から透明性が不十分であったり、軟質のポリ塩化ビニルフィルムに比べると、やはり引伸ばされた際の均一な延伸性では不十分であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、均一拡張性に優れており、適度な引張強度を有し、柔軟性、透明性を有する粘着テープ用基材および粘着テープの提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の粘着テープ用基材は、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンとを含有するポリプロピレン系樹脂であって、沸騰ヘプタン可溶性のアタクチックポリプロピレンを樹脂全体の10重量%以上含み、かつ示差走査熱量計(DSC)による熱分析においてDSC曲線の融解ピーク温度が145℃以上、融解熱量が20〜100J/gであるポリプロピレン系樹脂(1)を30〜90重量%と少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする水素添加された重合体ブロックBとからなる水素添加ブロック共重合体(2)10〜70重量%からなり、アイソタクチックホモポリプロピレンの結晶化開始温度(Tc1)と該水素添加ブロック共重合体(2)を添加した場合の結晶化開始温度(Tc2)の差ΔTc(Tc1−Tc2)が1.5℃以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明1記載の粘着テープ用基材は、以下のポリプロピレン系樹脂(1)30〜90重量%および以下の水素添加ブロック共重合体(2)10〜70重量%からなる。
【0010】
ポリプロピレン系樹脂(1)は、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンとを含有する。ポリプロピレン系樹脂(1)は、沸騰ヘプタン可溶性のアタクチックポリプロピレンを樹脂全体の10重量%以上含み、かつ示差走査熱量計(DSC)による熱分析においてDSC曲線の融解ピーク温度が145℃以上、融解熱量が20〜100J/gである。
【0011】
上記水素添加ブロック共重合体(2)は、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする水素添加された重合体ブロックBとからなる水素添加ブロック共重合体である。
【0012】
かかる構成要素を有する粘着テープ用基材とすることにより、例えば、半導体ウエハを貼付し、カットを行った後フィルムを延伸し、その切断したチップを取り出すのに充分なフィルムの抗張力が得られ。その伸び率も適度な範囲にある。
【0013】
以下、本発明1に関して詳細に述べる。
本発明では、用いられるポリプロピレン樹脂(1)とは、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンとを含有し、かつ沸騰ヘプタン可溶性のアタクチックポリプロピレンを樹脂全体の10重量%以上含むものである。 10重量%未満であると、テープとして延伸したときに、柔軟性が不足し、応力緩和性も不十分となるため均一な延伸性が得られない。アイソタクチックポリプロピレン成分は、プロピレン単独重合体、又は立体規則性を有するプロピレンモノマーと他のα−オレフィンモノマーとの共重合体であってもよい。また、アタクチックポリプロピレン成分も、プロピレン単独重合体、又は立体規則性を有するプロピレンモノマーと他のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。
【0014】
沸騰ヘプタン可溶性のアタクチックポリプロピレンを10重量%以上含むポリプロピレン系樹脂は、一般に、非晶性ポリプロピレン(非晶性PP)と略称され、その市販品としては、例えば、出光石油化学(株)製 商品名:IDEMITU TPO等を挙げることができる。
【0015】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(1)は、示差走査熱量計(DSC)による熱分析においてDSC曲線の融解ピーク温度が145℃以上、融解熱量が20〜100J/gの物性を有するものである。
【0016】
本発明における示差走査熱量計(DSC)による熱分析は、JIS K 7121及びJIS K 7122に記載の方法に準拠したものである。具体的には、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温し、その温度で5分間保持し、完全に溶融させた後、10℃/分の速度で25℃まで冷却し、その後、昇温速度10℃/分で昇温したときに得られるDSC曲線より求める。
【0017】
融解ピーク温度が145℃未満であると、粘着テープとするときの熱処理時に耐熱性が不足する。融解熱量が20J/g未満であると、粘着テープとしたときにテープ強度が不足し、100J/gを超えると、粘着テープとしたときに柔軟性が不足する。
【0018】
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(1)の製造方法としては特に制限はなく、汎用の方法を用いることができる。また、市販品を適宜混合して用いてもよい。
【0019】
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(1)には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の通常オレフィン系樹脂に用いられる添加剤や、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等の通常オレフィン系樹脂に用いられる無機充填剤を添加してもよいし、顔料、染料等で着色してもよい。
【0020】
水素添加ブロック共重合体(2)は、少なくとも1個のビニル芳香族単量体を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックAと、水素添加されたブタジエン単量体単位を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックBから構成されことが好ましく、ビニル芳香族単量体の割合が、10重量%を越え25重量%未満、水素添加前のブタジエン部の1、2結合が62モル%以上99モル%未満、該ブタジエン部のオレフィン性不飽和二重結合のうち、90%以上が水素添加され、少なくとも1個の末端が重合体ブロックB、末端にある重合体ブロックBの量が、0.1重量%以上9.1重量%未満であることが好ましい。
【0021】
水素添加ブロック共重合体(2)おける、にビニル芳香族炭化水素化合物の水素添加ブロック共重合体中で占める割合が、12重量%以上25重量%未満であることが好ましい。
【0022】
水素添加ブロック共重合体(2)おいて、そのアイソタクチックホモポリプロピレンの結晶化開始温度(Tc1)と該水素添加ブロック共重合体を添加した場合の結晶化開始温度(Tc2)の差ΔTc(Tc1−Tc2)が2.0℃以上であることが好ましい。
【0023】
水素添加ブロック共重合体(2)おける、末端にある重合体ブロックBの水素添加ブロック共重合体中で占める割合が、0.5重量%を越え5.0重量%未満であることが好ましい。
【0024】
ビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−ターシャルブチルスチレン等のアルキルスチレン、パラメトキシスチレン、ビニルナフタレン等のうちから1種、または2種以上が選ばれ、中でもスチレンが好ましい。
【0025】
上記ブロック共重合体におけるビニル芳香族化合物量は10重量%を越え25重量%未満であり、フィルムの耐ブロッキング性、柔軟性、透明性等から12重量%以上25重量%未満であることが好ましい。10重量%以下であるとフィルムブロッキング性が悪化し、25重量%以上であると柔軟性、透明性が悪化する。ビニル芳香族化合物単量体単位含量は核磁気共鳴装置(NMR)、紫外分光光度計(UV)などにより測定できる。
【0026】
上記重合体ブロックAには、ビニル芳香族化合物量と共重合可能な他の単量体が含有されていて良く、これら共重合可能な他の単量体としては、共役ジエン化合物単量体、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、シクロヘキサジエン、カプロラクトン等をあげることができる。共重合の形態としては、ランダム、交互、テーパー等いかなる形態でも良く、複数個ある重合体ブロックAはそれぞれその組成、分子量などが異なっても構わない。
【0027】
本発明における水素添加前のブタジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックBの1、2結合量の平均は62モル%以上99モル%未満であり、65モル%以上99モル%未満であることが好ましく、70モル%以上99モル%以下であることがさらに好ましい。62モル%未満の場合、均一延伸性が劣る。結合構造は核磁気共鳴装置(NMR)により測定できる。
【0028】
上記重合体ブロックBには、ブタジエン単量体と共重合可能な他の単量体が含有されていて良く、これら共重合可能な他の単量体としては、ビニル芳香族化合物単量体、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、シクロヘキサジエン、カプロラクトン等をあげることができる。共重合の形態としては、ランダム、交互、テーパー等いかなる形態でも良く、複数個ある重合体ブロックBはそれぞれその組成、分子量などが異なっても構わない。
【0029】
また、本明細書中で使用される「主体とする」という言葉は該当単量体単位が重合体ブロックにおいて、少なくとも50モル%を越え、好ましくは70モル%以上を占めることを意味する。
【0030】
本発明で用いられる水素添加ブロック共重合体(2)は、水素添加される前の重合体ブロックB中のオレフィン性不飽和二重結合のうち90%以上が水素添加されたものが好ましい。90%未満であると、熱、光などにより劣化をおこし熱可塑性が低下する。また、ブロックA中のビニル芳香族化合物のベンゼン環の不飽和二重結合は、ビニル芳香族化合物全体において20%までは水素添加されていても良い。これらの水素添加率は核磁気共鳴装置(NMR)によって測定できる。
【0031】
また、水素添加ブロック共重合体のJIS K7210に準拠し温度230℃、荷重2.16Kgの条件で求めたメルトフローレート値(MFR)は、0.01g/10分以上50g/10分未満の範囲にあることが好ましく、1.0g/10分以上14g/10分以下であることがさらに好ましく、2.0g/10分以上6.0g/10分以下であることがとりわけ好ましい。0.01g/10分未満であると組成物の流動性が悪化し好ましくなく、50g/10分以上であるとフィルムの耐ブロッキング性が低下するため好ましくない。
【0032】
本発明において水素添加ブロック共重合体の構造は、例えば線状、分岐状、放射状、櫛形状などいかなる形態をとっても構わない。
【0033】
また、好ましい構造としてはA−B−A−B、B−A−B−A−B、(B−A−B)n−Xがあげられる(ここでnは2以上の整数、Xはカップリング剤残基を、A,B,はそれぞれブロックA,ブロックBを示す)。また、各ブロックの境界がランダム共重合をしている場合、その組成が徐々に変わっていくテーパー構造も含まれる。末端にある重合体ブロックBは、それぞれ水素添加ブロック共重合体中で占める割合が、0.1重量%以上9.1重量%未満であり、柔軟性、応力緩和性、フィルム耐ブロッキング性の点から好ましくは0.3重量%以上7.5重量%以下であり、更に好ましくは0.5重量%を越え5.0重量%未満である。0.1重量%未満であると、柔軟性、応力緩和性が悪化し、9.1重量%以上であるとフィルム耐ブロッキング性が悪化する。例えばA−B−A−Bの構造をとる場合、末端にある重合体ブロックBが全体に占める割合は0.1重量%以上9.1重量%未満の範囲にあり、例えばB1−A−B2−A−B3(B1、B2、B3:水素添加されたブタジエン単量体を主体とする重合体ブロック)の構造をとる場合、末端にある重合体ブロックB1が全体に占める割合は0.1重量%以上9.1重量%未満の範囲になければならず、また他方の末端にある重合体ブロックB3も全体に占める割合は0.1重量%以上9.1重量%未満の範囲になければならない。
【0034】
水素添加ブロック共重合体(2)は例えば特公昭36−19286号公報、特公昭43−14979号公報、特公昭49−36957号公報などに記載された方法で本発明の範囲になるように製造することができる。これらは炭化水素溶剤中でアニオン重合開始剤として有機リチウム化合物等を用い、ビニル化剤としてジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、ジオキサン等のエーテル化合物、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の第3級アミン、必要に応じカップリング剤としてエポキシ化ダイズ油、四塩化ケイ素、ジメチルジクロルシラン、安息香酸エチル、安息香酸フェニル等の多官能性化合物を用い、ビニル芳香族単量体とブタジエン単量体をブロック共重合する方法であり、直鎖状、分岐状、あるいは放射状の構造を有するブロック共重合体として得られる。
【0035】
上記のブロック共重合体を、公知の方法、例えば、特公昭42−87045号公報に記載の方法で水素添加することにより、本発明で用いられる水素添加ブロック共重合体(2)は得られる。本発明で用いる水素添加ブロック共重合体(2)は、不飽和カルボン酸またはその誘導体との付加反応により変性させ、官能基を含有したものを1部、または全部含んでいてもかまわない。また、組成が異なる他の水素添加ブロック共重合体(2)、またはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などのオレフィン系エラストマーと併用してもかまわない。
【0036】
本発明で用いられる水素添加ブロック共重合体(2)は必要に応じて、好ましくはそのペレットに、ペレットブロッキングの防止を目的としてペレットブロッキング防止剤を配合する事ができる。ペレットブロッキング防止剤としてはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、エチレンビスステアリルアミド、タルク、アモルファスシリカ、金属石鹸等があげられる。
【0037】
本発明で用いられるアイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンとを含有するポリプロピレン系樹脂(1)は、適度は柔軟性をもつ熱可塑性樹脂であるが、本樹脂のみを用いて、例えば単層のダイシング用フィルムとした場合には、フィルムを伸展させた場合に、延伸性が悪く、降伏してしまうため均一な拡張性が得られ難い。したがって本発明にあっては、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンとを含有するポリプロピレン系樹脂(1)と該上記水素添加ブロック共重合体(2)を、ポリプロピレン系樹脂(1)30〜90重量%、水素添加ブロック共重合体(2)10〜70重量%の割合で混合させることにより、ダイシングフィルム全体の延伸性・テープとしての抗張力を良くした点に特徴を有するものである。
【0038】
アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンとを含有するポリプロピレン系樹脂(1)の配合量が多い場合、延伸性の優れた均一な基材フィルムが得られ難く、また、水素添加ブロック共重合体(2)がこの範囲より多い場合、均一なフィルムを得ることが難しい。
【0039】
本発明において、アイソタクチックホモポリプロピレンの結晶化開始温度(Tc1)と本発明の水素添加ブロック共重合体を添加した場合の結晶化開始温度(Tc2)の差ΔTc(Tc1−Tc2)が少なくとも1.5℃以上でなければならない。 ΔTcは2℃以上であることが好ましく、2.5℃以上であることがさらに好ましく、3.0℃以上であることがとりわけ好ましい。ΔTcが1.5℃未満であると応力緩和性に劣る。
【0040】
本発明が提供するダイシング用フィルム基材にあっては、少なくとも一方の表層を梨地調にエンボス加工しておくこともできる。本発明によるダイシングフィルム基材は、チップがダイシングされた後エキスパンダーリングに押し当てられて延伸される。その際、フィルムとエキスパンダーリングとの滑りにより、フィルムが局部的に延伸されることが生じる場合もあるため、本発明のフィルムにあっては、一方の表面を梨地エンボス加工することにより、エキスパンダーリングとの滑りを均一にさせることが可能である。
【0041】
本発明が提供する粘着テープ基材の成形方法としては、好ましくは、製造工程が簡略である共押出法や、カレンダー法、共押出インフレーション法を使用して成形するのがよい。
【0042】
本発明が提供するダイシング用フィルム又はシート基材にあっては、少なくとも一方の表層を梨地調にエンボス加工しておくこともできる。本発明によるダイシングフィルム基材は、チップがダイシングされた後エキスパンダーリングに押し当てられて延伸される。その際、フィルムとエキスパンダーリングとの滑りにより、フィルムが局部的に延伸されることが生じる場合もあるため、本発明の粘着テープ基材、粘着シート基材またはフィルムの製造にあっては、一方の表面を梨地エンボス加工することにより、エキスパンダーリングとの滑りを均一にさせることが可能である。
【0043】
本発明6記載の粘着シートは、前記発明1〜5に記載のフィルム基材に、粘着剤層を設けられた粘着シートとするものである。
【0044】
該粘着剤層は、公知もしくは慣用の粘着剤を使用することができ、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等の各種の粘着剤が用いられる。
【0045】
前記粘着剤としてはアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤のベースポリマーであるアクリル系ポリマーは、通常、(メタ)アクリル酸アルキルエステル{(メタ)アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルをいう。以降(メタ)とは同様の意味である。}の重合体又は共重合性モノマーとの共重合体が用いられる。アクリル系ポリマーの主モノマーとしては、そのホモポリマーのガラス転移温度が−50℃以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0046】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキルエステルとしては、たとえば、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、オクチルエステル、イソノニルエステル等があげられる。また、前記共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(例えば、ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシブチルエステル、ヒドロキシヘキシルエステル等)、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシメチルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート等)、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0047】
また、粘着剤としては、紫外線、電子線等により硬化する放射線硬化型粘着剤や加熱発泡型粘着剤を用いることもできる。さらには、ダイシング・ダイボンド兼用可能な粘着剤であってもよい。本発明のダイシング用粘着テープにおいては、放射線硬化型粘着剤、特に紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。
【0048】
なお、粘着剤として放射線硬化型粘着剤を用いる場合には、ダイシング工程の前又は後に粘着剤層に放射線が照射されるため、前記基材フィルムは十分な放射線透過性を有しているものが好ましい。
【0049】
放射線硬化型粘着剤は、例えば、前記ベースポリマー(アクリル系ポリマー)と、放射線硬化成分を含有してなる。放射線硬化成分は、分子中に炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合により硬化可能なモノマー、オリゴマーまたはポリマーを特に制限なく使用できる。放射線硬化成分としては、たとえば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレ−ト、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物;エステルアクリレートオリゴマー;2−プロペニルジ−3−ブテニルシアヌレート、2−ヒドロキシエチルビス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート又はイソシアヌレート化合物などがあげられる。
【0050】
また、放射線硬化型粘着剤は、ベースポリマー(アクリル系ポリマー)として、ポリマー側鎖に炭素−炭素二重結合を有する放射線硬化型ポリマーを使用することもでき、この場合においては、特に上記放射線硬化成分を加える必要はない。
【0051】
放射線硬化型粘着剤を紫外線により硬化させる場合には、光重合開始剤が必要であり、放射線硬化型粘着剤には、さらには必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、充填剤、老化防止剤、着色剤等の慣用の添加剤を含有させることができる。
【0052】
前記重合開始剤としてはベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの芳香族ケトン類;ベンジルジメチルケタールなどの芳香族ケタール類;ポリビニルベンゾフェノン;クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン類などが挙げられる。前記架橋剤には、例えば、ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、アジリジン化合物、エポキシ樹脂、無水化合物、ポリアミン、カルボキシルキ含有ポリノマーなどがあげられる。
【0053】
粘着剤層の厚さは、粘着剤の種類により適宜に決定することができるが、通常は1〜100μm、好ましくは3〜50μm程度である。
【0054】
粘着剤層塗工の際に、セパレータを用いることがある。このセパレータは、ラベル加工のため、または粘着剤層を平滑にする目的のために、必要に応じて設けられる。セパレータの構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム等があげられる。セパレータの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理な剥離処理が施されていても良い。セパレータの厚みは、通常10〜200μm、好ましくは25〜100μm程度である。
【0055】
【実施例】
以下に本発明を具体的実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、以下にあげる実施例に限定されるものではない。
(実施例1、比較例1,2)
DSC分析による融解ピークが160.1℃、融解熱量が66.8J/gであり、沸騰ヘプタン可溶性のアタクチックポリプロピレン成分がポリプロピレン系樹脂全体の10重量%であるポリプロピレン系樹脂(1)と
水素添加されたブタジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B1)−スチレンブロック(A1)−水素添加されたブタジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B2)−スチレンブロック(A2)の構造を有し、1個の末端重合体ブロック(B1)が4.8重量%、スチレン量が14.1%、MFRが3.0g/分、1,2結合量が73.1重量モル%、水添率が99.7%であり、ΔTcが3.4℃である水素添加ブロック共重合体(2)を用い、表1に示す配合量に配合し、Tダイを取りつけた押出機で押出して片面にコロナ処理を施した厚み100μmのフィルムに製膜し、エキスパンド性を評価した。
【0056】
(エキスパンド性)
基材フィルムの直交する2方向についてJIS K 7127に準拠して引っ張り試験を行い100%伸長時応力を測定し、その比を求めてエキスパンド性の指標とした。比が1に近いほど均一性が良く、0.8〜1.2の範囲であれば問題無い。
一方、得られた粘着シートを半導体ウエハを貼り付け、ダイシング、エキスパンド、ピックアップを行い下記基準で評価を行った。結果を表1に示した。
○:全く問題無し
×:エキスパンドが不均一でピックアップ時にトラブル発生。
【0057】
上記フィルムを粘着テープ基材として、粘着剤として、アクリル酸ブチル95重量部及びアクリル酸5重量部を酢酸エチル中で常法により共重合させて得られた重量平均分子量80万のアクリル系共重合体を含有する溶液に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名「カヤラッドDPHA」、日本化薬株式会社製)60重量部、ラジカル重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティーケミカルズ製)3重量部、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン製)5重量部を加えて、アクリル系紫外線硬化型粘着剤溶液を調製し、該粘着剤溶液を、上記で得られた基材フィルムのコロナ処理面に塗布し、80℃で10分間加熱架橋して、厚さ10μmの紫外線硬化型粘着剤層を形成した。次いで、当該粘着剤層面にセパレータを貼り合せて紫外線硬化型半導体用粘着シートを作製し、エキスパンド性を評価した。
【0058】
(実施例2)
ポリプロピレン系樹脂(1)として、DSC分析による融解ピークが158.9℃、融解熱量が63.0J/gであり、沸騰ヘプタン可溶性のアタクチックポリプロピレン成分がポリプロピレン系樹脂(1)全体の15重量%であるポリプロピレン系樹脂(1)を用いた以外は、実施例1と同様にして紫外線硬化型半導体用粘着シートを作製し、エキスパンド性を評価した。
【0059】
(比較例3)
プロピレン−エチレンのランダム共重合体(サンアロマーPF631S)90重量部と実施例1と同様の水素添加ブロック共重合体を10重量部を配合し、Tダイを取り付けた押出機で押出して片面にコロナ処理を施した厚み100μmのフィルムに製膜した以外は、実施例1と同様にして、紫外線硬化型半導体用粘着シートを作製し、エキスパンド性を評価した。
【0060】
(比較例4)
基材フィルムとして、ランダムポリプロピレン樹脂(MFR=3、エチレン含量1.5%)のみの単層であるフィルムを用いて実施例1と同様にして粘着シートを作製し、エキスパンド性を評価したが、硬く、伸び率が低く、エキスパンド時に降伏してしまし均一な延伸ができず、ダイシング用フィルムとしての機能を発揮することはできないものであった。
(比較例5)
これに対して、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:25重量%)のみのからなるフィルムを用いて実施例1と同様にして粘着シートを作製し、エキスパンド性を評価したが、軟らかすぎて強度的が低くエキスパンド時に裂けてしまい、ダイシング用フィルムとしての機能を発揮することはできないものであった。
【0061】
【表1】
Figure 2005002240
【0062】
【発明の効果】
本発明が提供する粘着テープ用基材および粘着シートは、特定の構造および性質を有するアイソタクチックホモポリプロピレンを含有するポリプロピレン系樹脂(1)に対しそのプロピレン樹脂と組成物をなす水素添加ブロック共重合体(2)が、アイソタクチックホモポリプロピレンの結晶化開始温度(Tc1)と該水素添加ブロック共重合体を添加した場合の結晶化温度(Tc2)の差ΔTc(Tc1−Tc2)をある特定範囲し、さらにそのブロック構造がある特定の構造を満たしているので、均一な延伸性に優れ、適度な引張り強さを有するので、ダイシング用基材フィルムおよびダイシングテープとして極めて優れたものが提供される。

Claims (6)

  1. アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンとを含有するポリプロピレン系樹脂であって、沸騰ヘプタン可溶性のアタクチックポリプロピレンを樹脂全体の10重量%以上含み、かつ示差走査熱量計(DSC)による熱分析においてDSC曲線の融解ピーク温度が145℃以上、融解熱量が20〜100J/gであるポリプロピレン系樹脂(1)を30〜90重量%と、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと、少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする水素添加された重合体ブロックBとからなる水素添加ブロック共重合体(2)10〜70重量%からなり、アイソタクチックホモポリプロピレンの結晶化開始温度(Tc1)と該水素添加ブロック共重合体(2)を添加した場合の結晶化開始温度(Tc2)の差ΔTc(Tc1−Tc2)が1.5℃以上であることを特徴とする粘着テープ用基材。
  2. 水素添加ブロック共重合体(2)が、少なくとも1個のビニル芳香族単量体を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックAと、水素添加されたブタジエン単量体単位を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックBから構成され、ビニル芳香族単量体の割合が、10重量%を越え25重量%未満であり、水素添加前のブタジエン部の1、2結合が62モル%以上99モル%未満であり、該ブタジエン部のオレフィン性不飽和二重結合のうち、90%以上が水素添加され、少なくとも1個の末端が重合体ブロックBであり、末端にある重合体ブロックBの量が、0.1重量%以上9.1重量%未満であることを特徴とする請求項1記載の粘着テープ用基材。
  3. 水素添加ブロック共重合体(2)おける、にビニル芳香族炭化水素化合物の水素添加ブロック共重合体中で占める割合が、12重量%以上25重量%未満である請求項2記載の粘着テープ用基材。
  4. 水素添加ブロック共重合体(2)おいて、そのアイソタクチックホモポリプロピレンの結晶化開始温度(Tc1)と該水素添加ブロック共重合体を添加した場合の結晶化開始温度(Tc2)の差ΔTc(Tc1−Tc2)が2.0℃以上である請求項1記載の粘着テープ用基材。
  5. 水素添加ブロック共重合体(2)おける、末端にある重合体ブロックBの水素添加ブロック共重合体中で占める割合が、0.5重量%を越え5.0重量%未満である請求項1に記載の粘着テープ用基材。
  6. 請求項1,2,3,4,5のいずれか1項に記載のテープ用基材上に粘着剤層が設けられたことを特徴とする粘着シート。
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