JP2005001810A - シート状物の搬送ロール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面が略円柱状であり、シート状物を接して搬送するロールにおいて、搬送されるシート状物の全幅よりも幅狭の表面中央部と、それに連なる表面端部とを設け、表面中央部の径を、中央ほど小さく、表面端部に近づくに連れて大きくなるように拡径形成すると共に、表面端部の径を、表面中央部における拡径度合より小さく形成する。表面端部の径を均一にし、また、表面端部の摩擦係数を、表面中央部の摩擦係数より小さくしてもよい。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルムや織物、不織布、紙などのシート状物を、皺や蛇行を発生させることなく円滑に搬送するロール、並びに、そのロールを用いた搬送方法と装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シート状物に発生しうる皺を伸ばしながら搬送する手段として、図1に示すエキスパンダロールや、図2に示すらせん溝付のロールが知られている。また、図3に示すように、ロール表面の両端部の径をその中央部の径より大きく形成した鼓状の逆クラウンロールを用いる手段も、例えば、
【特許文献1】特開平11−310652号
などで公知である。
【0003】
エキスパンダロールは、表面にゴムが装填されたロールで、伸縮するゴムとの接離に基づいてシート状物に拡幅力を与え、皺を除去するものである。
らせん溝付のロールは、表面にらせん溝が設けられたロールで、シート状物とロールを滑らせ、溝のエッジとの接触を利用してシート状物に拡幅力を与え、皺を除去するものである。
また、逆クラウンロールは、表面中央部に対する表面両端部の相対速度が大きいことによって、シート状物に拡幅力を与え、皺を除去するものである。
【0004】
しかし、エキスパンダロールは構造が複雑であるため、従動ロールであれば、シート状物を搬送する際のメカロスが大きく、大きな張力を必要とし、駆動ロールであれば、駆動系や速度調整機構が大掛かりになり、調整が容易でなく扱いにくく、安定性や再現性が芳しくない。
らせん溝付のロールは、シート状物に拡幅力を与えるためには、従動ロールであれば、溝エッジを抵抗として機能させ、駆動ロールであれば、溝エッジで能動的に牽引させる必要がある。このため、シート状物を搬送する際に、エキスパンダロールと同じく大きな張力を必要とすると共に、溝エッジとの接触によって、シート状物にダメージを与える危惧が伴う。
【0005】
逆クラウンロールは、大きな張力を必要とせずにシート状物に拡幅力を与えることができる。
しかし、シート状物の搬送時に、微小でもシート状物の中央がロールの中央からずれると、シート状物の両側端における拡幅力に差違が生じてしまう。そのため、シート状物が蛇行しやすい問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、シート状物を搬送するに当たって、皺や蛇行を発生させることなく、かつ低コストでシート状物を円滑に搬送できるロールと、そのロールを用いた搬送方法と装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、搬送されるシート状物の全幅よりも幅狭の表面中央部と、それに連なる表面端部とを備えたロールを用い、表面中央部と表面端部の径や摩擦係数を調整することで、皺や蛇行を発生させることなくシート状物を搬送できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
本発明の搬送ロールは、表面が略円柱状であり、シート状物を接して搬送するロールであって、搬送されるシート状物の全幅よりも幅狭の表面中央部と、それに連なる表面端部とを備え、表面中央部の径が、中央ほど小さく、表面端部に近づくに連れて大きくなるように拡径形成されると共に、表面端部の径が、表面中央部における拡径度合より小さく形成されることを特徴とする。
【0009】
ここで、表面端部の径を均一にして、構成の簡素化に寄与させてもよい。
【0010】
表面端部の摩擦係数を、表面中央部の摩擦係数より小さくして、搬送中にシート状物がずれても安定搬送できるように寄与させてもよい。
【0011】
本発明の搬送方法は、前記の搬送ロールを用い、シート状物の両側端が、搬送ロールの表面端部に接するように、シート状物を搬送ロールに配置して搬送することを特徴とする。
【0012】
本発明の搬送装置は、前記の搬送ロールと、その搬送ロールの軸部を回転自在に支持するロール支持手段と、シート状物の両側端が、搬送ロールの表面端部に接するように、シート状物を搬送ロールに供給するガイドとを、少なくとも備えることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図4は、本発明による搬送ロールの要部を示す正面図である。
搬送ロール(10)は、表面が略円柱状であり、端部に軸部(11)が備わる。
シート状物(20)が接触可能でその搬送に供される搬送ロール(10)の全長Wは、当然ながら、搬送されるシート状物(20)の全幅Wmよりも長く設定される。
【0014】
搬送ロール(10)の表面部分は、シート状物(20)の全幅Wmよりも幅広で、長さW1を有する表面中央部(12)と、それに連なり長さW2を有する表面端部(13)とから成る。
【0015】
表面中央部(12)の径は、中央(12a)ほど小さく、表面端部(13)に近づくに連れて大きくなるように拡径形成される。
その拡径形態は、曲率が一定な弧状や曲率が変化する弧状など連続的なものであっても、また、段差などを含む不連続的なものであってもよい。
本実施例では、鼓状に湾曲する逆クラウン形状が用いられている。
【0016】
表面端部(13)の径は、表面中央部(12)における拡径度合より小さく形成される。すなわち、端(13a)に近づくに連れて拡径する場合は、表面中央部(12)の拡径度合より小さい割合で拡径し、逆に端(13a)に近づくに連れて小径に形成してもよい。
本実施例では、表面端部(13)の径は、均一に形成されている。
【0017】
このような表面中央部(12)及び表面端部(13)において、径の変容程度や変容形態、また、それぞれの長さW1・W2は、搬送されるシート状物(20)の材質や、厚さ、幅などに対応して適宜設定される。
【0018】
搬送ロール(10)は、少なくとも一方の軸部(11)に軸受などを介して搬送装置などに設置される。搬送ロール(10)は、従動ロールとして用いても、シート状物(20)を搬送する駆動力を付与される駆動ロールとして用いてもよい。そのような設置条件は、シート状物(20)の状況や、ライン張力などの状況に対応して設定される。
【0019】
本発明による搬送ロール(10)は、表面中央部(12)では、その中央(12a)から離れるほど径が大きくなっているので、中央(12a)より端寄り(12b)の周速度が大きくなる。この相対速度によって、シート状物(20)に拡幅力を与えることができる。
【0020】
ここで、搬送ロール(10)の表面中央部(12)の長さW1が、搬送されるシート状物(20)の全幅Wmよりも短く形成されていることも、本発明の特徴である。
図3に示した従来技術のように、表面中央部(12)と同様の形状の逆クラウン部(12’)がシート状物(20)の全幅Wmよりも長いと、シート状物(20)がロール(10’)の幅方向に対しそのセンターから微小でもずれると、シート状物(20)にかかる左右の拡幅力の合計F1・F2が、幅方向左右で異なってしまう。このため、シート状物(20)は蛇行を始め、いったん蛇行を始めると、左右の拡幅力の合計差(F1−F2)はますます大きくなるため、蛇行は加速する。
【0021】
それに対し、本発明では、表面中央部(12)の長さW1を、シート状物(20)の全幅Wmよりも短く形成することで、シート状物(20)の側端(21)(22)を表面端部(13)に配置させている。そして、表面端部(13)の径を、表面中央部(12)における拡径度合より小さく形成しているので、シート状物(20)が搬送ロール(10)の幅方向にずれた場合でも、シート状物(20)にかかる左右の拡幅力の合計F1・F2に、有意な程度の差が生じることはなく、蛇行が防止される。
【0022】
本実施例では、表面端部(13)の摩擦係数を、表面中央部(12)の摩擦係数より小さく構成している。
表面端部(13)及び表面中央部(12)を前記の構成にすることで、シート状物(20)の蛇行を防止できるが、表面端部(13)の径が、均一かまたは端(13a)に近づくに連れて小径に形成されている場合などでは、シート状物(20)に対する拡幅力が皆無のことがある。その場合、表面端部(13)とシート状物(20)との間の摩擦が大きいと、表面中央部(12)で拡幅されたシート状物(20)が表面端部(13)を滑って移動することが困難になり、皺を発生させかねない。
そこで、表面端部(13)の摩擦係数を小さく、好ましくは表面中央部(12)の摩擦係数より小さくすることによって、表面中央部(12)で拡幅されたシート状物(20)が表面端部(13)を円滑に滑っていくようにして、皺も蛇行も生じることなく、安定して搬送されるようにした。
【0023】
表面端部(13)と表面中央部(12)の摩擦係数を相違させる手段としては、テフロン(登録商標)やポリエチレン等の合成樹脂やゴムなどを用いて、搬送ロール(10)の表面材質を変えたり、同一の材質を用いても表面性状を変えるなど、従来公知の手段が適宜利用できる。
表面性状を変えて摩擦係数を相違させる手段としては、例えば、鏡面仕上げと梨地仕上げとを組み合わせたり、また、溝を設けたり、凹凸の高さや配向を変えたり、テープ類を巻きつけるなど付加物を添着する手段であってもよい。
このような搬送ロール(10)の材質や表面性状は、搬送されるシート状物(20)の材質や厚さなどに対応して適宜設定される。
【0024】
表面中央部(12)の長さW1や表面端部(13)の長さW2は、搬送されるシート状物(20)の材質や厚さなどに対応して適宜設定される。
表面中央部(12)の長さW1は、シート状物(20)の全幅Wmの50〜95%程度が好ましい。
表面端部(13)の長さW2は、蛇行防止を主眼とした場合、5mm以上あることが望まれる。
【0025】
本発明は、フィルムや織物、不織布、紙、膜など任意のシート状物(20)を搬送対象とすることができる。また、シート状物(20)は搬送工程において、その面方向に膨潤するようなものであってもよい。例えば、フッ素系イオン交換膜を製造する際には、その工程で膜が水を吸収することで、面方向に膨潤が発生するが、このように搬送工程でシート状物(20)の寸法変化を伴う場合であっても、本発明は有効に適用できる。
【0026】
実施例:
図5は、本発明による搬送ロール(10)を用いたシート状物(20)の搬送装置の1例を示す側面説明図である。
シート状物(20)としては、CF2CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)2−SO2Fとのフルオロカーボン共重合体からなるフッ素系イオン交換樹脂前駆体を、溶融押出成膜した50μm厚の膜を用いた。
本搬送装置は、当該前駆体膜を用いてフッ素系イオン交換膜を製造する際の1工程に用いたものであり、多段に配置された搬送ロール(10)で構成される膜浸漬装置である。水槽(30)に充填された浸漬液(31)は、水酸化カリウムとジメチルスルオキシドを含有する水溶液である。全幅Wm=330mmの前駆体膜(20)を、加温した浸漬液(31)に数分間浸漬した。
【0027】
この搬送装置の一部に、図4に示した搬送ロール(10)を用いた。搬送ロール(10)は従動ロールとした。
なお、図示しないが、搬送ロール(10)の軸部(11)を回転自在に支持するロール支持手段と、シート状物(20)の両側端(21)(22)が、搬送ロール(20)の表面端部(13)に接するようにシート状物(20)を搬送ロール(10)に供給するガイド等が備わっている。
搬送ロール(10)の全長Wは490mmであり、逆クラウン状の表面中央部(12)の長さW1は310mmであり、均一な径の両表面端部(13)(13)の長さW2は90mmである。表面中央部(12)の中央(12a)の径D1は31mm、両表面端部(13)の径D2は32mmである。
また、表面中央部(12)の材質としては、SUS304にテフロンコートを施したものを用いた。テフロンコートは、下地処理したプライマー層に、FEP及びPFAを多層塗りすることで行った。
表面端部(13)の材質は、SUS304の鏡面仕上げとした。
【0028】
テフロンコートを施した表面中央部(12)は、浸漬液(31)をはじいて濡れないため、結果として表面中央部(12)では前駆体膜(20)と搬送ロール(10)の摩擦は大きくなる。一方、鏡面仕上げされたSUS304の表面端部(13)は、前駆体膜(20)によって取り込まれた浸漬液が付着して濡れた状態となる。浸漬液と前駆体膜(20)とは滑りやすいため、結果として表面端部(13)では前駆体膜(20)と搬送ロール(10)の摩擦は小さくなる。
本実施例の前駆体膜(20)は、浸漬液中で幅方向(搬送方向に対し垂直な方向)に10%以上膨潤する性質がある。しかし、このようにシート状物(20)が寸法変化するにもかかわらず、皺も蛇行も発生することなく安定して搬送することができた。
【0029】
比較例:
図3に示した搬送ロール(10’)を使用した以外は全て、前記実施例と同様の条件にして搬送装置を構成した。
図3の搬送ロール(10’)の全長Wも490mmであり、その全長にわたって、搬送ロール(10)の表面中央部(12)と同様に、逆クラウン状に形成されている。搬送ロール(10’)径は、中央部がD1=31mm、端部がD2=32mmである。搬送ロール(10’)の材質は、全長にわたってテフロンコートされたSUS304である。
この搬送装置で、当該前駆体膜(20)を搬送したら、蛇行が発生した。
【0030】
【発明の効果】
本発明は、上述の構成を備えることによって次の効果を奏する。
すなわち、請求項1に記載の搬送ロールによると、搬送されるシート状物の全幅よりも幅狭の表面中央部と、それに連なる表面端部とを備え、表面中央部が、端部に近づくに連れて拡径形成されているので、皺や蛇行を発生させることなく、シート状物を拡幅して安定搬送することができる。シート状物がその面方向に膨潤し寸法変化する場合にも有効である。
【0031】
請求項2に記載の搬送ロールによると、表面端部の径が均一であるので、簡素な構成により低コスト化できる。
【0032】
請求項3に記載の搬送ロールによると、表面端部の摩擦係数が、表面中央部の摩擦係数より小さいので、搬送中にシート状物がずれても皺を生じることなく安定搬送できる。
【0033】
請求項4に記載の搬送方法によると、シート状物の両側端を前記搬送ロールの表面端部に接するように配置して搬送するので、皺や蛇行を発生させることなく、シート状物を拡幅して安定搬送することができる。
【0034】
請求項5に記載の搬送装置によると、シート状物の両側端が前記搬送ロールの表面端部に接するように配置されて搬送されるので、皺や蛇行を発生させることなく、シート状物を拡幅して安定搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エキスパンダロールの正面説明図
【図2】らせん溝付のロールの正面説明図
【図3】鼓状の逆クラウンロールの正面図
【図4】本発明による搬送ロールの要部正面図
【図5】本発明による搬送装置の側面説明図
【符号の説明】
10 搬送ロール
12 表面中央部
13 表面端部
20 シート状物
Claims (5)
- 表面が略円柱状であり、シート状物を接して搬送するロールであって、
搬送されるシート状物の全幅よりも幅狭の表面中央部と、それに連なる表面端部とを備え、
表面中央部の径が、中央ほど小さく、表面端部に近づくに連れて大きくなるように拡径形成されると共に、
表面端部の径が、表面中央部における拡径度合より小さく形成される
ことを特徴とするシート状物の搬送ロール。 - 表面端部の径が、均一である
請求項1に記載のシート状物の搬送ロール。 - 表面端部の摩擦係数が、表面中央部の摩擦係数より小さい
請求項1または2に記載のシート状物の搬送ロール。 - 請求項1ないし3のいずれかに記載の搬送ロールを用い、
シート状物の両側端が、搬送ロールの表面端部に接するように、シート状物を搬送ロールに配置して搬送する
ことを特徴とするシート状物の搬送方法。 - 請求項1ないし3のいずれかに記載の搬送ロールと、
その搬送ロールの軸部を回転自在に支持するロール支持手段と、
シート状物の両側端が、搬送ロールの表面端部に接するように、シート状物を搬送ロールに供給するガイドとを、少なくとも備える
ことを特徴とするシート状物の搬送装置。
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JP2003166783A JP4210159B2 (ja) | 2003-06-11 | 2003-06-11 | 膜搬送ロール及び膜搬送装置 |
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JP2008063150A (ja) * | 2007-12-14 | 2008-03-21 | Hirano Tecseed Co Ltd | ウエブの蛇行修正装置 |
JP2008062238A (ja) * | 2007-12-14 | 2008-03-21 | Hirano Tecseed Co Ltd | ガイドロール |
JP2009298496A (ja) * | 2008-06-10 | 2009-12-24 | Toyota Motor Corp | 搬送ローラおよび膜電極接合体の製造装置、製造方法 |
JP2010082854A (ja) * | 2008-09-30 | 2010-04-15 | Fujifilm Corp | フィルム延伸装置及び方法 |
JP2013129464A (ja) * | 2011-12-20 | 2013-07-04 | Nitto Denko Corp | ガイドローラ |
JP2015104904A (ja) * | 2013-12-02 | 2015-06-08 | 株式会社カネカ | 透明積層体フィルム及びそれを用いた透明電極付き基板並びにその製造方法 |
-
2003
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