JP2005000971A - 衝撃特性にすぐれた溶接部を与えるフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤおよび溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フェライト系ステンレス鋼の溶接において、溶接金属の結晶組織が巨大に成長しやすいという問題を解決し、すぐれた衝撃特性を有する溶接部を実現する溶接ワイヤと、それを使用した溶接方法を提供すること。
【解決手段】重量%で、C:0.015%以下、Si:0.5〜1.5%、Mn:1.0%以下、Cr:9.0〜25.0%、Nb:0.1〜0.5%、Ti:0.05〜0.20%およびN:0.04〜0.20%、ならびに、Mg:0.01〜0.05%、Ce:0.01〜0.05%およびBe:0.01〜0.05%の1種または2種以上を含有し、P:0.03%以下、S:0.01%以下およびCa:0.002%以下であって、残部がFeおよび不可避の不純物からなる合金組成を有するフェライト系ステンレス鋼で製造した溶接ワイヤ。この溶接ワイヤは、Ar+O2を主成分とするシールドガスを使用した、MIG溶接またはTIG溶接として実施する。
【選択図】 なし
【解決手段】重量%で、C:0.015%以下、Si:0.5〜1.5%、Mn:1.0%以下、Cr:9.0〜25.0%、Nb:0.1〜0.5%、Ti:0.05〜0.20%およびN:0.04〜0.20%、ならびに、Mg:0.01〜0.05%、Ce:0.01〜0.05%およびBe:0.01〜0.05%の1種または2種以上を含有し、P:0.03%以下、S:0.01%以下およびCa:0.002%以下であって、残部がFeおよび不可避の不純物からなる合金組成を有するフェライト系ステンレス鋼で製造した溶接ワイヤ。この溶接ワイヤは、Ar+O2を主成分とするシールドガスを使用した、MIG溶接またはTIG溶接として実施する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェライト系ステンレス鋼の溶接技術の改良に関し、詳しくは、衝撃特性にすぐれた溶接部を与えるフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤと、それを使用したフェライト系ステンレス鋼の溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェライト系ステンレス鋼の溶接部は結晶粒径が非常に大きく、したがって溶接割れが生じやすいということが、よく知られている。溶接時の割れが避けられたとしても、応力が反復して加わると溶接部が割れやすく、疲労特性が低い。この問題に対処するには、いうまでもなく、溶接部の結晶粒子をできるだけ微細にすることである。これまでに提案された対策には、次のようなものがある。
【0003】
出願人は、フェライト系ステンレス鋼の溶接に用いる溶接ワイヤに対し、適量のTi、AlおよびNを複合添加し、溶接金属中にある程度の大きさのTiおよびAlの酸化物・窒化物を所定の密度で発生させることにより、溶接金属の等軸晶化および細粒化をはかることにより、溶接部の延性および靱性が向上することを見出し、改善された溶接方法として、すでに提案した(特開平13−999999)。その後の研究の結果、O量を極力少なくすることによって、溶接金属中に小さな窒化物を密に発生させると、従来から得られていた効果である耐割れ性に加えて、高温での引張り特性が改善されるという事実を見出した。この溶接技術も、すでに開示した(特開2002−336990)。
【0004】
O量を低減するには、脱酸剤としてAlを添加することが効果的である。そこで、上掲の特開2002−336990の技術では、溶接ワイヤのAl量として0.01〜0.20%を選択した。ところが、その後さらに研究を重ねた結果、Al量が多すぎると、かえって溶接部の衝撃特性が悪くなるという現象に遭遇した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、フェライト系ステンレス鋼の溶接にともなって来た課題、すなわち溶接金属の結晶組織が巨大に成長するという問題を解決し、すぐれた衝撃特性を有する溶接部を実現するための対策としてすでに提案した、特開2002−336990の技術を一歩進めて、多量のAlが引き起こすことのある、溶接金属の衝撃特性の低下を防止し、常に良好な衝撃特性を有する溶接部を確保することができる溶接用ワイヤを提供することにある。そのような溶接部を与える溶接法方を提供することもまた、本発明の目的に含まれる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明の溶接ワイヤは、フェライト系ステンレス鋼の溶接に使用したときに衝撃特性にすぐれた溶接部を与えるワイヤであって、重量%で、C:0.015%以下、Si:0.5〜1.5%、Mn:1.0%以下、Cr:9.0〜25.0%、Nb:0.1〜0.5%、Ti:0.05〜0.20%およびN:0.04〜0.20%、ならびに、Mg:0.01〜0.05%、Ce:0.01〜0.05%およびBe:0.01〜0.05%の1種または2種以上を含有し、P:0.03%以下、S:0.01%以下およびCa:0.002%以下であって、残部がFeおよび不可避の不純物からなる合金組成を有することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施形態】
本発明のフェライト系ステンレス鋼の溶接方法は、上記の基本的な合金組成または変更態様の合金組成のいずれかを有する溶接ワイヤを使用し、Ar+O2を主成分とし、場合によりそれにCO2,N2およびHeの1種または2種以上を混合したシールドガスを使用して、TIG溶接またはMIG溶接を実施することからなる。
【0008】
つぎに、本発明の溶接ワイヤの合金組成を上記のように選択した理由を、必須合金元素および任意添加元素の両方について説明する。
【0009】
C:0.015%以下
Cは溶接部の強度を向上させる作用を有するものの、その量が多すぎるとマルテンサイトを生成して硬さが高すぎるようになり、溶接割れを発生するおそれがあるので、比較的少量の0.015%以下の含有量とする。
【0010】
Si:0.5〜1.5%
Siは、ステンレス鋼の溶製時に脱酸剤として役立つ成分であり、この観点から、0.5%以上のSiを添加すべきである。耐溶接割れ性の向上にとっても有効であって、その効果は、より高い含有量たとえば0.9%またはそれ以上で確実になり、1.0%を超える含有量が好ましいが、一方で高すぎるSi量は靭性を低くするので、1.5%までの添加に止める。
【0011】
Mn:1.0%以下
Mnも脱酸剤として作用するので、脱酸に有効な量を存在させることが望ましい。多量にすぎると耐食性や耐酸化性を低下させるので、そのような問題のない1.0%以下を添加する。
【0012】
Cr:9.0〜25.0%
Crはフェライト系ステンレス鋼の基本成分であり、溶接部の強度を高めるとともに耐食性および耐酸化性を確保する上で、重要な元素である。このため、9.0%以上のCrを添加する必要である。しかし、あまり多く添加しても効果の向上はさほど得られず、かえって歩留まりが低下してコストの上昇をもたらす。適切な添加量の限度は、25.0%である。
【0013】
Nb:0.1〜0.5%
Nbは溶接金属の結晶粒を微細化する元素であり、この効果を得るために0.1%以上の添加をする。過剰に添加しても、ある限度以上の効果の向上は望めないから、1.0%を上限値とする。
【0014】
Ti:0.05〜0.20%
Tiは、溶接金属の結晶粒を微細するために必要な元素である。その効果は0.05%以上の添加で得られる。過剰に添加すると、溶接の作業性を著しく損なうにもかかわらず、それ以上の結晶粒微細化効果が得られない。そこで、0.20%を添加量の限界とする。
【0015】
N:0.04〜0.20%
さきの発明に続き、本発明においても、溶接金属に適当な大きさの窒化物を十分な密度で存在させることにより、衝撃特性を高める。この目的にとって役立つためには、溶接金属に0.04%以上のNが存在する必要がある。一方、多量のNは、窒化物の凝集が起こって結晶粒微細化効果を低減するだけでなく、溶接金属の靱性を損なうおそれがある。そのような問題のない含有量の上限として、0.2%を定めた。
【0016】
Mg:0.01〜0.05%、Ce:0.01〜0.05%およびBe:0.01〜0.05%の1種または2種以上
前述のように、Alの多量の添加が引き起こすことのある衝撃特性の低下を避けるため、本発明ではAlを実質上添加せず、その含有量を0.03%以下に抑える。そこで脱酸は、AlでなくMgに頼ることになる。その意味で、Mgは重要な成分である。Mgはまた、ごく少量で溶接金属の結晶粒を微細化することが可能な元素でもある。これらの効果は、Mg添加量0.01%以上で得られる。過剰な添加が衝撃特性に悪影響を与えるという事実に関しては、MgもAlと本質的には変わらないが、結晶粒微細化の効果が飽和するMg:0.05%程度までは、その弊害はあまり問題にならない。そこで、0.05%を上限値とした。CeおよびBeは、Mgの代替成分として使用することができる。
【0017】
P:0.03%以下、S:0.01%以下
PもSも不純物として入ってくるが、溶接割れを生じやするとともに、溶接部の靭性を劣化させる成分である。Sは、これに加えて耐食性の低下をも引き起こす。そこで、Pは0.03%、Sは0.01%という許容限度以下の含有量にしなければならない。
【0018】
Ca:0.002%以下
Caは、溶製時に原料を吟味しないと混入する可能性があり、その量が多いとアーク安定性を損なう。0.002%という限度までの存在は問題ない。
【0019】
【実施例】
表1に示す合金組成をもつ溶接ワイヤ合金を溶製し、熱間加工に続く冷間加工(伸線)を行なって、直径1.2mmの溶接ワイヤにした。比較例は、本発明の合金組成の要件を満たしていないものである。
【0020】
この溶接ワイヤ(実施例No.1〜7および比較例No.1〜6)を使用し、表2に示す合金組成(A〜M)のフェライト系ステンレス鋼板(厚さ12mm)を、ガスシールドアーク溶接により、Vカット突き合わせタイプで溶接した。鋼板A〜Gに対しては、溶接ワイヤとして実施例No.1〜7を使用し、鋼板H〜Mに対しては、溶接ワイヤとして比較例No.1〜6を使用した。
【0021】
溶接条件は、下記のとおりである。
溶接電流: 200A
アーク電圧: 23V
溶接速度: 60cm/min
パルス間温度:150〜250℃
【0022】
シールドガス組成は、表3に示すとおりである。溶接時のスパッタ発生量(g/分)、溶接金属の結晶粒度番号およびシャルピー衝撃値(J/cm2)を、表3にあわせて示す。表3のデータから、本発明の実施例においては、溶接部の組織が結晶粒度番号5以上の微細組織であり、かつその衝撃特性がすぐれていることがわかる。溶接ワイヤ中のAlの量が過剰であった比較例No.5および6の溶接部は、結晶粒度番号に関する限りは微細であるかのようにみえるが、衝撃特性は低い。
【0023】
【0024】
【0025】
表3 シールドガス組成および溶接部の特性
【0026】
【発明の効果】
本発明の溶接ワイヤを使用してフェライト系ステンレス鋼板のガスシールドアーク溶接を行なえば、溶接ワイヤの合金組成がもたらすTiの窒化物の発生によって、溶接金属の結晶粒が微細なものになり、従って溶接部の衝撃特性がすぐれたものとなる。窒化物を形成する目的でAlを添加した場合に生じることのある組織の粗大化は、Alを実質上添加せず、かつその存在量を低く抑え、Alに代えてMgの適量を添加した合金組成を採択したことにより、回避可能になった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェライト系ステンレス鋼の溶接技術の改良に関し、詳しくは、衝撃特性にすぐれた溶接部を与えるフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤと、それを使用したフェライト系ステンレス鋼の溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェライト系ステンレス鋼の溶接部は結晶粒径が非常に大きく、したがって溶接割れが生じやすいということが、よく知られている。溶接時の割れが避けられたとしても、応力が反復して加わると溶接部が割れやすく、疲労特性が低い。この問題に対処するには、いうまでもなく、溶接部の結晶粒子をできるだけ微細にすることである。これまでに提案された対策には、次のようなものがある。
【0003】
出願人は、フェライト系ステンレス鋼の溶接に用いる溶接ワイヤに対し、適量のTi、AlおよびNを複合添加し、溶接金属中にある程度の大きさのTiおよびAlの酸化物・窒化物を所定の密度で発生させることにより、溶接金属の等軸晶化および細粒化をはかることにより、溶接部の延性および靱性が向上することを見出し、改善された溶接方法として、すでに提案した(特開平13−999999)。その後の研究の結果、O量を極力少なくすることによって、溶接金属中に小さな窒化物を密に発生させると、従来から得られていた効果である耐割れ性に加えて、高温での引張り特性が改善されるという事実を見出した。この溶接技術も、すでに開示した(特開2002−336990)。
【0004】
O量を低減するには、脱酸剤としてAlを添加することが効果的である。そこで、上掲の特開2002−336990の技術では、溶接ワイヤのAl量として0.01〜0.20%を選択した。ところが、その後さらに研究を重ねた結果、Al量が多すぎると、かえって溶接部の衝撃特性が悪くなるという現象に遭遇した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、フェライト系ステンレス鋼の溶接にともなって来た課題、すなわち溶接金属の結晶組織が巨大に成長するという問題を解決し、すぐれた衝撃特性を有する溶接部を実現するための対策としてすでに提案した、特開2002−336990の技術を一歩進めて、多量のAlが引き起こすことのある、溶接金属の衝撃特性の低下を防止し、常に良好な衝撃特性を有する溶接部を確保することができる溶接用ワイヤを提供することにある。そのような溶接部を与える溶接法方を提供することもまた、本発明の目的に含まれる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明の溶接ワイヤは、フェライト系ステンレス鋼の溶接に使用したときに衝撃特性にすぐれた溶接部を与えるワイヤであって、重量%で、C:0.015%以下、Si:0.5〜1.5%、Mn:1.0%以下、Cr:9.0〜25.0%、Nb:0.1〜0.5%、Ti:0.05〜0.20%およびN:0.04〜0.20%、ならびに、Mg:0.01〜0.05%、Ce:0.01〜0.05%およびBe:0.01〜0.05%の1種または2種以上を含有し、P:0.03%以下、S:0.01%以下およびCa:0.002%以下であって、残部がFeおよび不可避の不純物からなる合金組成を有することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施形態】
本発明のフェライト系ステンレス鋼の溶接方法は、上記の基本的な合金組成または変更態様の合金組成のいずれかを有する溶接ワイヤを使用し、Ar+O2を主成分とし、場合によりそれにCO2,N2およびHeの1種または2種以上を混合したシールドガスを使用して、TIG溶接またはMIG溶接を実施することからなる。
【0008】
つぎに、本発明の溶接ワイヤの合金組成を上記のように選択した理由を、必須合金元素および任意添加元素の両方について説明する。
【0009】
C:0.015%以下
Cは溶接部の強度を向上させる作用を有するものの、その量が多すぎるとマルテンサイトを生成して硬さが高すぎるようになり、溶接割れを発生するおそれがあるので、比較的少量の0.015%以下の含有量とする。
【0010】
Si:0.5〜1.5%
Siは、ステンレス鋼の溶製時に脱酸剤として役立つ成分であり、この観点から、0.5%以上のSiを添加すべきである。耐溶接割れ性の向上にとっても有効であって、その効果は、より高い含有量たとえば0.9%またはそれ以上で確実になり、1.0%を超える含有量が好ましいが、一方で高すぎるSi量は靭性を低くするので、1.5%までの添加に止める。
【0011】
Mn:1.0%以下
Mnも脱酸剤として作用するので、脱酸に有効な量を存在させることが望ましい。多量にすぎると耐食性や耐酸化性を低下させるので、そのような問題のない1.0%以下を添加する。
【0012】
Cr:9.0〜25.0%
Crはフェライト系ステンレス鋼の基本成分であり、溶接部の強度を高めるとともに耐食性および耐酸化性を確保する上で、重要な元素である。このため、9.0%以上のCrを添加する必要である。しかし、あまり多く添加しても効果の向上はさほど得られず、かえって歩留まりが低下してコストの上昇をもたらす。適切な添加量の限度は、25.0%である。
【0013】
Nb:0.1〜0.5%
Nbは溶接金属の結晶粒を微細化する元素であり、この効果を得るために0.1%以上の添加をする。過剰に添加しても、ある限度以上の効果の向上は望めないから、1.0%を上限値とする。
【0014】
Ti:0.05〜0.20%
Tiは、溶接金属の結晶粒を微細するために必要な元素である。その効果は0.05%以上の添加で得られる。過剰に添加すると、溶接の作業性を著しく損なうにもかかわらず、それ以上の結晶粒微細化効果が得られない。そこで、0.20%を添加量の限界とする。
【0015】
N:0.04〜0.20%
さきの発明に続き、本発明においても、溶接金属に適当な大きさの窒化物を十分な密度で存在させることにより、衝撃特性を高める。この目的にとって役立つためには、溶接金属に0.04%以上のNが存在する必要がある。一方、多量のNは、窒化物の凝集が起こって結晶粒微細化効果を低減するだけでなく、溶接金属の靱性を損なうおそれがある。そのような問題のない含有量の上限として、0.2%を定めた。
【0016】
Mg:0.01〜0.05%、Ce:0.01〜0.05%およびBe:0.01〜0.05%の1種または2種以上
前述のように、Alの多量の添加が引き起こすことのある衝撃特性の低下を避けるため、本発明ではAlを実質上添加せず、その含有量を0.03%以下に抑える。そこで脱酸は、AlでなくMgに頼ることになる。その意味で、Mgは重要な成分である。Mgはまた、ごく少量で溶接金属の結晶粒を微細化することが可能な元素でもある。これらの効果は、Mg添加量0.01%以上で得られる。過剰な添加が衝撃特性に悪影響を与えるという事実に関しては、MgもAlと本質的には変わらないが、結晶粒微細化の効果が飽和するMg:0.05%程度までは、その弊害はあまり問題にならない。そこで、0.05%を上限値とした。CeおよびBeは、Mgの代替成分として使用することができる。
【0017】
P:0.03%以下、S:0.01%以下
PもSも不純物として入ってくるが、溶接割れを生じやするとともに、溶接部の靭性を劣化させる成分である。Sは、これに加えて耐食性の低下をも引き起こす。そこで、Pは0.03%、Sは0.01%という許容限度以下の含有量にしなければならない。
【0018】
Ca:0.002%以下
Caは、溶製時に原料を吟味しないと混入する可能性があり、その量が多いとアーク安定性を損なう。0.002%という限度までの存在は問題ない。
【0019】
【実施例】
表1に示す合金組成をもつ溶接ワイヤ合金を溶製し、熱間加工に続く冷間加工(伸線)を行なって、直径1.2mmの溶接ワイヤにした。比較例は、本発明の合金組成の要件を満たしていないものである。
【0020】
この溶接ワイヤ(実施例No.1〜7および比較例No.1〜6)を使用し、表2に示す合金組成(A〜M)のフェライト系ステンレス鋼板(厚さ12mm)を、ガスシールドアーク溶接により、Vカット突き合わせタイプで溶接した。鋼板A〜Gに対しては、溶接ワイヤとして実施例No.1〜7を使用し、鋼板H〜Mに対しては、溶接ワイヤとして比較例No.1〜6を使用した。
【0021】
溶接条件は、下記のとおりである。
溶接電流: 200A
アーク電圧: 23V
溶接速度: 60cm/min
パルス間温度:150〜250℃
【0022】
シールドガス組成は、表3に示すとおりである。溶接時のスパッタ発生量(g/分)、溶接金属の結晶粒度番号およびシャルピー衝撃値(J/cm2)を、表3にあわせて示す。表3のデータから、本発明の実施例においては、溶接部の組織が結晶粒度番号5以上の微細組織であり、かつその衝撃特性がすぐれていることがわかる。溶接ワイヤ中のAlの量が過剰であった比較例No.5および6の溶接部は、結晶粒度番号に関する限りは微細であるかのようにみえるが、衝撃特性は低い。
【0023】
【0024】
【0025】
表3 シールドガス組成および溶接部の特性
【0026】
【発明の効果】
本発明の溶接ワイヤを使用してフェライト系ステンレス鋼板のガスシールドアーク溶接を行なえば、溶接ワイヤの合金組成がもたらすTiの窒化物の発生によって、溶接金属の結晶粒が微細なものになり、従って溶接部の衝撃特性がすぐれたものとなる。窒化物を形成する目的でAlを添加した場合に生じることのある組織の粗大化は、Alを実質上添加せず、かつその存在量を低く抑え、Alに代えてMgの適量を添加した合金組成を採択したことにより、回避可能になった。
Claims (2)
- 重量%で、C:0.015%以下、Si:0.5〜1.5%、Mn:1.0%以下、Cr:9.0〜25.0%、Nb:0.1〜0.5%、Ti:0.05〜0.20%およびN:0.04〜0.20%、ならびに、Mg:0.01〜0.05%、Ce:0.01〜0.05%およびBe:0.01〜0.05%の1種または2種以上を含有し、P:0.03%以下、S:0.01%以下およびCa:0.002%以下であって、残部がFeおよび不可避の不純物からなる合金組成を有する、衝撃特性にすぐれた溶接部を与えるフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤ。
- フェライト系ステンレス鋼母材を溶接する方法であって、請求項1に記載の溶接ワイヤを使用し、Ar+O2を主成分とし、場合によりそれにCO2,N2およびHeの1種または2種以上を混合したシールドガスを使用して、TIG溶接またはMIG溶接を実施することからなるフェライト系ステンレス鋼の溶接方法。
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JP2003169358A JP2005000971A (ja) | 2003-06-13 | 2003-06-13 | 衝撃特性にすぐれた溶接部を与えるフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤおよび溶接方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7732733B2 (en) | 2005-01-26 | 2010-06-08 | Nippon Welding Rod Co., Ltd. | Ferritic stainless steel welding wire and manufacturing method thereof |
CN104028916A (zh) * | 2014-06-26 | 2014-09-10 | 宝山钢铁股份有限公司 | 一种超纯铁素体不锈钢用焊丝及焊接方法 |
WO2018079665A1 (ja) * | 2016-10-27 | 2018-05-03 | 京セラ株式会社 | セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収納装置 |
-
2003
- 2003-06-13 JP JP2003169358A patent/JP2005000971A/ja not_active Withdrawn
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN109845013A (zh) * | 2016-10-27 | 2019-06-04 | 京瓷株式会社 | 单元堆装置、模块及模块容纳装置 |
JPWO2018079665A1 (ja) * | 2016-10-27 | 2019-06-24 | 京セラ株式会社 | セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収納装置 |
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US11742510B2 (en) | 2016-10-27 | 2023-08-29 | Kyocera Corporation | Cell stack device, module, and module housing device |
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Legal Events
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 Effective date: 20070107 |