JP2004526758A - 紫外線bにより誘導される皮膚損傷の予防法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
関連出願
本願は2001年4月13日に出願された米国特許仮出願第60/283,874号の恩典を主張するものであり、その内容はその全体にわたり参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
紫外線B(UVB)照射に対する慢性曝露が原因の光老化はとりわけ、しわの形成をもたらす。
【発明の開示】
【0003】
発明の概要
本発明は部分的には、皮膚の血管形成の阻害によりUVB誘導性の皮膚損傷、例えば長期(慢性)UVB誘導性の光老化、例えば哺乳動物、例えばヒトにおけるインビボしわ形成を予防できるという発見に基づいている。
【0004】
従って、本発明は患者において長期UVB誘導性の皮膚損傷、例えばしわを予防または治療する方法を特徴とする。その方法には患者皮膚における血管形成阻害が含まれる。好ましい態様として、血管形成はUVB曝露前またはUVB曝露時に阻害される。
【0005】
好ましい態様として、方法にはまた、長期UVB誘導性の皮膚損傷の危険性がある患者、例えば哺乳動物、例えばヒトまたはヒトでない哺乳動物の同定が含まれる。長期UVB誘導性の皮膚損傷、例えばしわの危険性がある患者は、例えばその患者により、医療介護提供者により、または化粧品提供者により同定され得る。血管形成は、例えばその患者により、医療介護提供者により、または化粧品提供者により阻害され得る。
【0006】
好ましい態様として、患者は少なくとも5歳である。好ましくは、患者は少なくとも10歳、15歳、20歳、25歳、30歳、35歳、40歳、45歳、50歳またはそれ以上の年齢である。
【0007】
好ましい態様として、しわ形成が予防または減少される。
【0008】
好ましい態様として、血管形成は1つまたは複数の抗血管形成因子の活性を増大させることにより、例えば患者においてTSP-2またはTSP-1のような生来分泌される抗血管形成タンパク質の活性を増大させることにより阻害され、その結果として、しわ形成が予防される。TSP-2活性を例えば、TSP-2活性を増大させる薬剤を投与することにより増大させることができる。好ましい態様として、TSP-2活性を増大させる薬剤は以下の1つまたは複数のものでもよい:TSP-2ポリペプチド、またはその生物学的に活性な断片若しくは類似体、例えばTSP-2由来ポリペプチドまたはそのレトロインベルソ(retro-inverso)ポリペプチド;TSP-2ポリペプチドをコードする核酸、またはその生物学的に活性な断片若しくは類似体;TSP-2作用物質、例えば抗体またはTSP-2活性を有する若しくは増大させる小分子;またはTSP-2核酸の発現を増加させる薬剤、例えばTSP-2のプロモーター領域に結合し且つ発現を増加させる小分子。
【0009】
好ましい態様として、TSP-2はTSP-2発現を誘導する薬剤、例えば小分子により増加する。TSP-2発現を誘導できる薬剤の実施例にはウシ胎児血清およびTGF-αが含まれる。好ましい態様として、TSP-2発現を誘導する薬剤が局所的に投与される。好ましい態様として、薬剤はUVB曝露時に抗血管形成効果が患者皮膚に存在するように、UVB曝露、例えば日光曝露の十分事前に患者に投与される。
【0010】
TSP-2活性を同様に、TSP-2核酸、またはTSP-2タンパク質、断片、若しくは類似体の患者に対する輸送制御により、増大させることができる。TSP-2核酸、タンパク質、断片、または類似体を放出制御手段、例えば生体適合性のポリマー、微粒子、または網状物と組み合わせて患者に投与できる。その手段により、TSP-2核酸、タンパク質、断片、または類似体の分解を減少でき、かつその放出を制御できる。そのようなTSP-2生体適合性の放出制御系を例えば、筋肉内に、皮下に、静脈内に、または器官、関節腔に、若しくは損傷部に、例えば、注射または移植により患者に投与できる。
【0011】
TSP-2レベルを同様に、内在性TSP-2活性を増大させることにより、増大させることができる。活性を、その遺伝子の発現量を増加させることにより、例えばTSP-2遺伝子の転写を増加させること;例えばmRNAの二次または三次構造を改変することによって、TSP-2 mRNAの安定性を増加させること;例えばTSP-2 mRNAの配列を改変することによって、TSP-2 mRNAの翻訳を増加させること;および/またはTSP-2タンパク質の安定性を増加させることにより、増加させることができる。TSP-2遺伝子の転写は例えば、内在性TSP-2遺伝子の調節配列を改変することにより、増加させることができる。1つの態様として、調節配列を:正の調節要素(例えばエンハンサーまたは転写アクチベーターに対するDNA結合部位)の付加;負の調節要素(例えば転写リプレッサーに対するDNA結合部位)の除去および/または内在性調節配列、若しくはその中の要素の、別の遺伝子のそれとの置換により改変でき、その結果、TSP-2遺伝子をより効果的に転写させられる。
【0012】
好ましい態様として、薬剤はTSP-2を誘導する化合物、例えば小分子である。
【0013】
TSP-1活性を例えば、TSP-1活性を増大させる薬剤を投与することにより、増大させることができる。好ましい態様として、TSP-1活性を増大させる薬剤は以下の1つまたは複数のものでもよい:TSP-1ポリペプチド、またはその生物学的に活性な断片若しくは類似体、例えばTSP-1由来ポリペプチドまたはそのレトロインベルソ(retro-inverso)ポリペプチド;TSP-1ポリペプチドをコードする核酸、またはその生物学的に活性な断片若しくは類似体;TSP-1作用物質、例えば抗体またはTSP-1活性を有する若しくは増大させる小分子;またはTSP-1核酸の発現を増加させる薬剤、例えばTSP-1のプロモーター領域に結合し且つ発現を増加させる小分子。
【0014】
好ましい態様として、TSP-1はTSP-1発現を誘導する薬剤、例えば小分子により増加する。TSP-1発現を誘導できる薬剤の実施例にはウシ胎児血清およびTGF-αが含まれる。好ましい態様として、TSP-1発現を誘導する薬剤が局所的に投与される。好ましい態様として、薬剤はUVB曝露時に抗血管形成効果が患者皮膚に存在するようにUVB曝露、例えば日光曝露の十分事前に患者に投与される。
【0015】
TSP-1活性を同様に、TSP-1核酸、またはTSP-1タンパク質、断片、若しくは類似体の患者に対する輸送制御により、増大させることができる。TSP-1核酸、タンパク質、断片、または類似体を放出制御手段、例えば生体適合性のポリマー、微粒子、または網状物と組み合わせて患者に投与できる。その手段により、TSP-1核酸、タンパク質、断片、または類似体の分解を減少でき、かつその放出を制御できる。そのようなTSP-1生体適合性の放出制御系を例えば、筋肉内に、皮下に、静脈内に、または器官、関節腔に、若しくは損傷部に、例えば、注射または移植により患者に投与できる。
【0016】
TSP-1レベルを同様に、内在性TSP-1活性を増大させることにより、増大させることができる。活性を、その遺伝子の発現量を増加させることにより、例えばTSP-1遺伝子の転写を増加させること;例えばmRNAの二次または三次構造を改変することによって、TSP-1 mRNAの安定性を増加させること;例えばTSP-1 mRNAの配列を改変することによって、TSP-1 mRNAの翻訳を増加させること;および/またはTSP-1タンパク質の安定性を増加させることにより、増加させることができる。TSP-1遺伝子の転写は例えば、内在性TSP-1遺伝子の調節配列を改変することにより、増加させることができる。1つの態様として、調節配列を:正の調節要素(例えばエンハンサーまたは転写アクチベーターに対するDNA結合部位)の付加;負の調節要素(例えば転写リプレッサーに対するDNA結合部位)の除去および/または内在性調節配列、若しくはその中の要素の、別の遺伝子のそれとの置換により改変でき、その結果、TSP-1遺伝子をより効果的に転写することができる。
【0017】
好ましい態様として、薬剤はTSP-1を誘導する化合物、例えば小分子である。
【0018】
好ましい態様として、例えば、TSP-2またはTSP-1のような生来分泌される抗血管形成タンパク質の活性を誘導することにより、1つまたは複数の抗血管形成因子の活性を増大させる薬剤は、例えば薬剤を局所投与することにより;薬剤を全身投与することにより;薬剤を経口投与することにより;または好ましくは経皮若しくは皮下に薬剤を注射することにより投与される。好ましい態様として、薬剤は適当な輸送媒体を用いて投与される。薬剤は局所的な使用を目的とした組成物中に含まれるのが好ましく、例えばその組成物はゲル、クリーム、または液体である。その組成物には、化粧品原料、例えば芳香剤または日焼け止め剤、例えばメトキシケイ皮酸オクチル、アミノ安息香酸、オキシベンゾン、パディメートO(padimate O)、ホモサレート、または二酸化チタンがさらに含まれる。その組成物はまた、植物抽出液、例えばアロエ抽出液、ブドウ抽出液を含むことができる。その組成物はまた、ビタミン、例えばビタミンA、例えばレチノール;ビタミンC、例えばL-アスコルビン酸またはL-アスコルビン酸パルミテート;ビタミンE、例えば酢酸トコフェロールを含むことができる。
【0019】
好ましい態様として、薬剤はUVB曝露時に抗血管形成効果が存在するように、UVB曝露、例えば日光曝露の十分事前に患者に投与される。
【0020】
その他の好ましい態様として、例えば、TSP-2またはTSP-1のような生来分泌される抗血管形成タンパク質の活性を誘導することにより、1つまたは複数の抗血管形成因子の活性を増大させる薬剤の投与を繰り返す、例えば少なくとも1回、2回、3回、5回、10回、20回またはそれ以上の回数を少なくともそれと同じ数の日数に渡って繰り返す。好ましい態様として、薬剤を長期に渡って投与する。好ましい態様として、薬剤を少なくとも1週間に1回、好ましくは少なくとも2週間の間、好ましくは少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、若しくは6ヶ月間、1週間または1日毎に2回、3回、4回、5回、投与する。例えば、薬剤を3〜12週に渡り定期的に投与する。例えば夏の初めから終わりまで投与する。好ましい態様として、薬剤を以下に投与し、以下の1つまたは複数に関して、しわが阻害されまたは予防される:患者の顔、首、胸、耳、手、頭皮の脱毛部分、またはUVB照射に曝されるその他の皮膚。
【0021】
好ましい態様として、患者は長期UVB照射に曝されてきたまたは曝されると思われる。
【0022】
好ましい態様として、患者は1つまたは複数の光老化の兆候、例えばしわ、線状のしわ(line)、たるみ、そばかす、日に焼けた肌、しみ、色素沈着過度、老人斑、例えば「肝斑」、皮膚の薄化(thinning of the skin)、白内障、表皮過形成、皮膚の弾性線維症(skin elastosis)、細胞外マトリクスの劣化、または前癌性若しくは癌性の皮膚増殖(光線角化症、日光角化症)を示す。
【0023】
好ましい態様として、血管形成は患者においてVEGF活性を減少させることにより、例えば患者において、VEGF受容体を介した、例えばKDRを介したシグナル伝達を阻害することにより;VEGFタンパク質のレベルを阻害することにより;VEGF遺伝子の発現量を減少させることにより;並びに/またはVEGFタンパク質の生成および/若しくは活性を減少させることにより阻害され、結果として、UVB誘導性の皮膚損傷、例えば長期UVB誘導性の皮膚損傷、例えばしわ形成が予防される。
【0024】
好ましい態様として、VEGFは、VEGF活性を阻害する薬剤を投与することにより阻害される。VEGF活性を阻害する薬剤は以下の1つまたは複数のものであることができる:例えばVEGFのその受容体への結合を阻害することによりまたはVEGF受容体シグナル伝達を阻害することにより、VEGF受容体を阻害する薬剤、例えば小分子;細胞のVEGF核酸配列、例えばmRNAに結合でき、かつそのタンパク質の発現を阻害できるVEGF核酸分子、例えばアンチセンス分子またはVEGFリボザイム;VEGFタンパク質に特異的に結合する抗体、例えばVEGFのその天然細胞標的との結合能を妨害する抗体;VEGF遺伝子発現を減少させる薬剤、例えばVEGFのプロモーターに結合する小分子。
【0025】
その他の好ましい態様として、VEGF活性は内在性VEGF遺伝子の発現レベルを減少させることにより、例えばVEGF遺伝子の転写を減少させることにより、阻害される。好ましい態様として、VEGF遺伝子の転写を内在性VEGF遺伝子の調節配列を改変することにより、例えば負の調節配列(例えば転写リプレッサーに対するDNA結合部位)の付加により、減少させることができる。
【0026】
その他の好ましい態様として、薬剤は、例えばVEGF受容体シグナル伝達を阻害することにより、または直接的若しくは間接的にVEGFプロモーターと相互作用することにより、VEGF活性を阻害する化合物、例えば小分子である。
【0027】
好ましい態様として、VEGF発現を阻害する薬剤は、例えば薬剤を局所投与することにより;薬剤を全身投与することにより;薬剤を経口投与することにより;または好ましくは経皮若しくは皮下に薬剤を注射することにより投与される。好ましい態様として、薬剤は適当な輸送媒体を用いて投与される。薬剤は局所的な使用を目的とした組成物中に含まれるのが好ましく、例えばその組成物はゲル、クリーム、または液体である。その組成物には、化粧品原料、例えば芳香剤または日焼け止め剤、例えばメトキシケイ皮酸オクチル、アミノ安息香酸、オキシベンゾン、パディメートO、ホモサレート、または二酸化チタンがさらに含まれる。その組成物はまた、植物抽出液、例えばアロエ抽出液、ブドウ抽出液を含むことができる。その組成物はまた、ビタミン、例えばビタミンA、例えばレチノール;ビタミンC、例えばL-アスコルビン酸またはL-アスコルビン酸パルミテート;ビタミンE、例えば酢酸トコフェロールを含むことができる。好ましい態様として、VEGF発現を阻害する薬剤は局所投与される。好ましい態様として、薬剤はUVB曝露時に抗血管形成効果が存在するように、UVB、例えば日光曝露の十分事前に適用される。
【0028】
その他の好ましい態様として、薬剤の投与を繰り返す、例えば少なくとも1回、2回、3回、5回、10回、20回またはそれ以上の回数を繰り返す。好ましい態様として、薬剤を長期に渡って適用する。好ましい態様として、薬剤を少なくとも1週間に1回、好ましくは少なくとも2週間の間、好ましくは少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、若しくは6ヶ月間、1週間または1日毎に2回、3回、4回、5回、適用する。例えば、薬剤を3〜12週に渡り定期的に投与する。例えば夏の初めから終わりまで投与する。好ましい態様として、以下のしわが阻害される:患者の顔、首、胸、手、またはUVB照射に曝されているその他の皮膚。
【0029】
好ましい態様として、方法にはTSP-2活性を増大させる薬剤、TSP-1活性を増大させる薬剤、またはVEGFを阻害する薬剤の1つまたは複数を投与することが含まれる。好ましい態様として、1つまたは複数の血管形成阻害因子、例えば抗血管形成阻害因子を誘導するまたは増加させる1つまたは複数の薬剤、が投与される。
【0030】
別の局面において、本発明は患者においてUVB誘導性の皮膚損傷、例えば長期UVB誘導性の皮膚損傷、例えばしわを予防または治療する方法を特徴とする。その方法には患者に対し、例えば局所的に、血管形成阻害因子を増加させる若しくは誘導する血管形成阻害因子、例えば薬剤、例えば小分子、または血管形成分子を阻害する薬剤、例えば小分子を含む組成物を、UVB誘導性の皮膚損傷、例えば長期UVB誘導性の皮膚損傷、例えばしわを減少させるまたは予防するのに十分量、投与することが含まれる。好ましい態様として、薬剤はUVB曝露時に抗血管形成効果が存在するように、UVB曝露、例えば日光曝露の十分事前に投与される。
【0031】
好ましい態様として、薬剤はTSP-2を誘導する化合物、例えば小分子である。
【0032】
好ましい態様として、薬剤はVEGFを阻害する化合物、例えば小分子である。
【0033】
好ましい態様として、薬剤は局所投与される。その薬剤は顔、胸、耳、首、手、頭皮の脱毛部分、および身体の他の部位に投与されることができる。その治療には2つ以上、例えば少なくとも2つ、3つ、または4つの血管形成阻害因子の投与を含めることができる。その治療にはまた、血管形成阻害因子の毎日の投与を含めることができる。
【0034】
好ましい態様として、血管形成阻害因子、例えば血管形成阻害因子を増加させるまたは誘導する薬剤は、無菌性組成物として与えられる。
【0035】
好ましい態様として、血管形成阻害因子はTSP-2である。
【0036】
好ましい態様として、血管形成阻害因子はTSP-1である。
【0037】
好ましい態様として、組成物には、化粧品原料、例えば芳香剤または日焼け止め剤、例えばメトキシケイ皮酸オクチル、アミノ安息香酸、オキシベンゾン、パディメートO、ホモサレート、または二酸化チタンがさらに含まれる。その組成物はまた、植物抽出液、例えばアロエ抽出液、ブドウ抽出液を含むことができる。その組成物はまた、ビタミン、例えばビタミンA、例えばレチノール;ビタミンC、例えばL-アスコルビン酸またはL-アスコルビン酸パルミテート;ビタミンE、例えば酢酸トコフェロールを含むことができる。
【0038】
好ましい態様として、組成物を長期に渡って投与する。好ましい態様として、その組成物を少なくとも1週間に1回、好ましくは少なくとも2週間の間、好ましくは少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、若しくは6ヶ月間、1週間または1日毎に2回、3回、4回、5回、適用する。例えば、その組成物を3〜12週に渡り、例えば夏の初めから終わりまで定期的に適用する。好ましい態様として、方法にはTSP-2活性を増大させる薬剤、TSP-1活性を増大させる薬剤、またはVEGFを阻害する薬剤の1つまたは複数を投与することが含まれる。好ましい態様として、1つまたは複数の血管形成阻害因子が投与される。
【0039】
別の局面において、本発明は患者においてUVB誘導性の皮膚損傷、例えば長期UVB誘導性の皮膚損傷、例えばしわを予防する方法を特徴とする。その方法にはUVB誘導性の皮膚損傷、例えば長期UVB誘導性の皮膚損傷の予防、例えばしわ形成の予防を必要とする患者を同定すること;血管形成阻害因子を増加させる若しくは誘導する血管形成阻害因子、例えば薬剤、例えば小分子、または血管形成分子を阻害する薬剤、例えば小分子を患者に投与すること;およびしわ形成に関する投与効果を評価することが含まれる。長期UVB誘導性の皮膚損傷、例えばしわの予防を必要とする患者は、例えばその患者により、医療介護提供者により、または化粧品提供者により同定され得る。血管形成阻害因子の投与およびしわ阻害に関する投与効果の評価は、例えばその患者により、医療介護提供者により、または化粧品提供者により実施され得る。
【0040】
好ましい態様として、血管形成阻害因子はTSP-2である。
【0041】
好ましい態様として、血管形成阻害因子はTSP-1である。
【0042】
好ましい態様として、血管形成分子はVEGFである。
【0043】
好ましい態様として、しわはUVB照射に対する曝露により引き起こされる。
【0044】
好ましい態様として、薬剤は局所投与される。好ましい態様として、薬剤はUVB曝露時に抗血管形成効果が存在するように、UVB曝露、例えば日光曝露の十分事前に投与される。
【0045】
好ましい態様として、薬剤を長期に渡って適用する。好ましい態様として、薬剤を少なくとも1週間に1回、好ましくは少なくとも2週間の間、好ましくは少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、若しくは6ヶ月間、1週間または1日毎に2回、3回、4回、5回、適用する。例えば、薬剤を3〜12週に渡り、例えば夏の初めから終わりまで定期的に適用する。
【0046】
好ましい態様として、血管形成阻害因子、例えば血管形成阻害因子を誘導する薬剤は、無菌性組成物として与えられる。
【0047】
好ましい態様として、方法にはTSP-2活性を増大させる薬剤、TSP-1活性を増大させる薬剤(TSP-1活性は、TSP-2活性を増大させるための本明細書に記載のものと類似の方法により増大され得る)、またはVEGFを阻害する薬剤の1つまたは複数を投与することが含まれる。好ましい態様として、1つまたは複数の血管形成阻害因子が投与される。
【0048】
別の局面において、本発明は抗血管形成タンパク質、例えばTSP-1またはTSP-2の発現を誘導する、例えばそれを皮膚で誘導する能力に関して試験化合物を評価する方法を特徴とする。その方法には以下の段階が含まれる:抗血管形成遺伝子、例えばTSP-1またはTSP-2の制御領域、例えばプロモーターに機能的に連結されたレポーター分子(そのレポーター分子は本来プロモーターと関連性のある遺伝子によりコードされる蛋白質以外のものである)をコードする核酸を含む導入遺伝子を有する細胞、例えば上皮細胞を供給する段階;その細胞を試験化合物と接触させる段階;およびレポーター分子により生成されるシグナル(その存在または強度は試験化合物による抗血管形成遺伝子の発現調節と相関する)を評価する段階。その試験化合物はタンパク質、ポリペプチド、小分子、例えば分子量2000ダルトン未満、好ましくは1000ダルトン未満の小分子でもよい。
【0049】
好ましい態様として、レポーターは蛍光シグナルを与えることができる分子である。レポーターは例えば、ルシフェラーゼ、GFP、またはBFPでもよい。その他の態様として、レポーターは酵素である。
【0050】
好ましい態様として、細胞は培養細胞、例えば不死化したヒト表皮角化細胞である。
【0051】
好ましい態様として、細胞は形質転換動物由来である。
【0052】
好ましい態様として、細胞は形質転換動物由来であり、試験化合物がその形質転換動物に投与される、例えば形質転換動物の皮膚に局所的に塗布される。
【0053】
好ましい態様として、方法にはさらに、例えば化合物を動物に投与すること、動物をUVBに曝露すること、および化合物の効果を評価することにより、ヒトまたはヒトでない動物に関してインビボで化合物を試験することが含まれる。
【0054】
別の局面において、本発明は血管形成タンパク質、例えばVEGFの発現を阻害する、例えばそれを皮膚で阻害する能力に関して試験化合物を評価する方法を特徴とする。その方法には以下の段階が含まれる:血管形成因子の遺伝子、例えばVEGFの制御領域、例えばプロモーターに機能的に連結されたレポーター分子(そのレポーター分子は本来プロモーターと関連性のある遺伝子によりコードされる蛋白質以外のものである)をコードする核酸を含む導入遺伝子を有する細胞、例えば上皮細胞を供給する段階;その細胞を試験化合物と接触させる段階;およびレポーター分子により産生されるシグナル(その存在または強度は試験化合物による血管形成遺伝子の発現調節と相関する)を評価する段階。その試験化合物はタンパク質、ポリペプチド、小分子、例えば分子量2000ダルトン未満、好ましくは1000ダルトン未満の小分子でもよい。その化合物はタンパク質、ポリペプチド、小分子、例えば分子量2000ダルトン未満、好ましくは1000ダルトン未満、より好ましくは500ダルトン未満の小分子でもよい。
【0055】
好ましい態様として、そのレポーターは蛍光シグナルを与えることができる分子である。レポーターは例えば、ルシフェラーゼ、GFP、またはBFPでもよい。その他の態様として、レポーターは酵素である。
【0056】
好ましい態様として、細胞は培養細胞、例えば不死化したヒト表皮角化細胞である。
【0057】
好ましい態様として、細胞は形質転換動物由来である。
【0058】
好ましい態様として、細胞は形質転換動物由来であるおよび試験化合物がその形質転換動物に投与される、例えば形質転換動物の皮膚に局所的に塗布される。
【0059】
好ましい態様として、その方法にはさらに、例えば化合物を動物に投与する、動物をUVBに曝露する、および化合物の効果を評価することにより、ヒトまたはヒトでない動物に関してインビボで化合物を試験することが含まれる。
【0060】
別の局面において、本発明はUVB誘導性の皮膚損傷、例えばしわを予防または治療するための組成物を特徴とする。組成物には血管形成阻害因子(例えばTSP-1若しくはTSP-2)、例えばTSP-1若しくはTSP-2を増加させるまたは誘導する薬剤、例えば小分子;または血管形成分子を阻害する薬剤(例えば小分子)、例えばVEGFを阻害する薬剤、および薬学的に許容される担体が含まれる。組成物は無菌であることが好ましい。
【0061】
好ましい態様として、薬剤はTSP-2を誘導する化合物、例えば小分子である。
【0062】
好ましい態様として、組成物は局所的に投与される。
【0063】
好ましい態様として、血管形成阻害因子はTSP-2である。
【0064】
好ましい態様として、血管形成阻害因子はTSP-1である。
【0065】
好ましい態様として、TSP-2活性を増大させる薬剤、TSP-1活性を増大させる薬剤、またはVEGF活性を阻害する薬剤の1つまたは複数が含まれる。好ましい態様として、1つまたは複数の血管形成阻害因子が含まれる。
【0066】
好ましい態様として、組成物にはまた、化粧品原料、例えば芳香剤、保湿剤、または日焼け止め剤、例えばメトキシケイ皮酸オクチル、アミノ安息香酸、オキシベンゾン、パディメートO、ホモサレート、または二酸化チタンが含まれる。その組成物はまた、植物抽出液、例えばアロエ抽出液、ブドウ抽出液を含むことができる。その組成物はまた、ビタミン、例えばビタミンA、例えばレチノール;ビタミンC、例えばL-アスコルビン酸またはL-アスコルビン酸パルミテート;ビタミンE、例えば酢酸トコフェロールを含むことができる。
【0067】
別の局面において、本発明は患者に対して、UVB誘導性の皮膚損傷、例えば長期UVB誘導性の皮膚損傷の予防、例えばしわ予防を提供する方法を特徴とする。その方法には患者に血管形成阻害因子、例えばTSP-2若しくはTSP-1を増加させるまたは誘導する血管形成阻害因子、例えば薬剤、例えば小分子;または血管形成分子を阻害する薬剤(例えば小分子)、例えばVEGFを阻害する薬剤を含む組成物を供給すること;および患者にUVB誘導性の皮膚損傷、例えば長期UVB誘導性の皮膚損傷、例えばしわを予防するまたは減少させるための組成物の使用に関する説明を提供することが含まれる。
【0068】
好ましい態様として、説明には日光曝露前または日光曝露時に組成物を皮膚に塗布する指示が含まれる。
【0069】
好ましい態様として、説明には長期的に組成物を適用する指示が含まれる。好ましい態様として、その説明には組成物を少なくとも1週間に1回、好ましくは少なくとも2週間の間、好ましくは少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、若しくは6ヶ月間、1週間または1日毎に2回、3回、4回、5回、適用する指示が含まれる。例えば、その説明には組成物を3〜12週に渡り、例えば夏の初めから終わりまで定期的に適用する説明を含むことができる。
【0070】
好ましい態様として、血管形成阻害因子はTSP-2である。
【0071】
好ましい態様として、血管形成阻害因子はTSP-1である。
【0072】
好ましい態様として、薬剤はTSP-2またはTSP-1を誘導する化合物、例えば小分子である。
【0073】
好ましい態様として、組成物にはさらに、化粧品原料、例えば芳香剤または日焼け止め剤、例えばメトキシケイ皮酸オクチル、アミノ安息香酸、オキシベンゾン、パディメートO、ホモサレート、または二酸化チタンが含まれる。その組成物はまた、植物抽出液、例えばアロエ抽出液、ブドウ抽出液を含むことができる。その組成物はまた、ビタミン、例えばビタミンA、例えばレチノール;ビタミンC、例えばL-アスコルビン酸またはL-アスコルビン酸パルミテート;ビタミンE、例えば酢酸トコフェロールを含むことができる。
【0074】
好ましい態様として、組成物にはTSP-2活性を増大させる薬剤、TSP-1活性を増大させる薬剤、またはVEGFを阻害する薬剤の1つまたは複数が含まれる。好ましい態様として、組成物には1つまたは複数の血管形成阻害因子が含まれる。
【0075】
別の局面において、本発明は患者においてUVB誘導性の皮膚損傷、例えば長期UVB誘導性の皮膚損傷、例えばしわを予防するためのキットを特徴とする。そのキットには血管形成阻害因子を増加させるまたは誘導する血管形成阻害因子、例えば薬剤、例えば小分子を含有する組成物;およびUVB誘導性の皮膚損傷、例えば長期UVB誘導性の皮膚損傷、例えばしわを予防するための組成物の使用説明が含まれる。
【0076】
好ましい態様として、薬剤はTSP-2を誘導する化合物、例えば小分子である。
【0077】
好ましい態様として、説明には日光曝露前および/または日光曝露時に組成物を皮膚に塗布する指示が含まれる。
【0078】
好ましい態様として、説明には長期的に組成物を適用する指示が含まれる。好ましい態様として、その説明には組成物を少なくとも1週間に1回、好ましくは少なくとも2週間の間、好ましくは少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、若しくは6ヶ月間、1週間または1日毎に2回、3回、4回、5回、適用する指示が含まれる。例えば、その説明には組成物を3〜12週に渡り、例えば夏の初めから終わりまで定期的に適用する説明を含むことができる。
【0079】
好ましい態様として、血管形成阻害因子はTSP-2である。
【0080】
好ましい態様として、血管形成阻害因子はTSP-1である。
【0081】
好ましい態様として、組成物にはまた、化粧品原料、例えば芳香剤、保湿剤または日焼け止め剤、例えばメトキシケイ皮酸オクチル、アミノ安息香酸、オキシベンゾン、パディメートO、ホモサレート、または二酸化チタンが含まれる。その組成物はまた、植物抽出液、例えばアロエ抽出液、ブドウ抽出液を含むことができる。その組成物はまた、ビタミン、例えばビタミンA、例えばレチノール;ビタミンC、例えばL-アスコルビン酸またはL-アスコルビン酸パルミテート;ビタミンE、例えば酢酸トコフェロールを含むことができる。
【0082】
好ましい態様として、説明には組成物を皮膚、例えば皮膚露出部、例えば顔、首、手、耳、胸、または頭皮の脱毛部分に塗布する指示が含まれる。その説明にはUVB、例えば日光曝露前および/または間に組成物を塗布する指示が含まれていることが好ましい。
【0083】
好ましい態様として、組成物にはTSP-2活性を増大させる薬剤、TSP-1活性を増大させる薬剤、またはVEGFを阻害する薬剤の1つまたは複数が含まれる。好ましい態様として、組成物には1つまたは複数の血管形成阻害因子が含まれる。
【0084】
本明細書では、しわは皮膚表面における構造変化である。それは組織学的水準での特有の構造変化であるまたはでない場合がある。Kligmanら(1985) Br J Derml 13:37-42の記載に従ってしわを分類することが可能であり、参照として本明細書に組み入れられる。Kligmanはしわを3種類:線状のしわ、縦溝状のしわ(glyphic wrinkles)、およびちりめんじわ(crinkle)に分類している。線状のしわは直線で、一般的に顔の皮膚に見られ、自然老化および紫外線に対する曝露により引き起こされる。縦溝状のしわは、はっきりと見える三角形または長方形のしわとして形成され、顔、手、および日光に曝露される首に見られ、紫外線に対する曝露または皮膚日射病(dermatoheliosis)により悪化する。ちりめんじわはたるんだ皮膚上の細かい、縮れじわであり、皮膚のどこにでも見られるが、典型的には手の甲およびまぶた周辺に見られる。しわには、次のように呼ばれることもあるが、線状のしわ、きめの細かいしわ、ちりめんじわ、目尻のしわ、またはたるみが含まれる。
【0085】
本明細書では「小分子」という語句には、ペプチド、ペプチド模倣体、または分子量が2000ダルトン未満、好ましくは1000ダルトン未満の有機分子のような、非ペプチド性化合物が含まれる。
【0086】
本明細書では、治療は全体的または部分的な、疾患の症状若しくは影響の軽減または除去を意味することができる。本明細書では、予防は疾患の症状または影響の、完全な予防、またはその発生の遅延を意味することができる。
【0087】
本明細書では、長期的な(または慢性的な)UVB照射に対する曝露は、自然光または人工的なUVB照射(例えばUVB太陽灯、例えば日焼けを目的として、または光線療法、例えば乾癬、アトピー性皮膚炎、または白斑の治療を目的として)に対する慢性的な曝露を意味する。例えば、慢性的な曝露は予め設定された期間の中での、UV指数3〜6、またはそれ以上の日光に対する、少なくとも10分間、少なくとも3、より好ましくは少なくとも5回、または少なくとも10回の、曝露でもよい。予め設定された期間は1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、または24ヶ月、例えば12ヶ月間の中での、累積5時間のUVB照射、例えば日光または人工的なUVB照射に対する曝露でもよい。長期UVB誘導性の損傷、例えばしわの危険性がある患者は、UV指数3〜6、若しくはそれ以上の日光に少なくとも10分、1年間に少なくとも10回、曝されてきた若しくは曝されると思われる患者、または1年間で累積5時間のUVB照射に曝されてきた若しくは曝されると思われる患者でもよい。患者は3年間、少なくとも30分のUVB照射に、少なくとも1年に20回、曝されていることが好ましい。患者は午前11時から午後3時の日光に曝されていること、または患者は夏の数ヶ月間の日光に曝されていること、または患者はUVB指標が高値から最高値の数日間の日光に曝されていることが好ましい。長期UVB誘導性の皮膚損傷、例えばしわの危険性がある患者には、例えば高地で生活する人、例えば少なくとも海抜1000フィートで生活する人;赤道付近、例えば赤道から1000マイル以内で生活する人;1年に少なくとも10回、屋外スポーツに参加する人、例えばジョギング、テニスのプレー、登山;スノースキー、またはウォータースキーに参加する人;UVB光線療法を受けているまたは受けた経験がある人が含まれる。
【0088】
詳細な説明
UVB 照射に対する曝露
UVB照射の主要源は自然光である。紫外線の強度は日時、季節、空の太陽の位置、海抜、赤道からの距離により変化する。これらの光線は夏の真昼の時間に最も強くなるが、それらは常にいつでも、冬の数ヶ月間でさえも存在する。海面からの距離および赤道からの距離を考慮することもまた、重要である。海抜が高くなるほど、UVB線の強度はそれだけ大きくなる。従って、登山家、スキーヤー、および高地で生活する人々は、長期UVB損傷の危険性がある。また、赤道に近くなるほど、UV照射はそれだけ強くなり、長期UVB損傷の危険性がそれだけ高くなる。
【0089】
雪、水、および砂は日光を反射し、皮膚に到達するUVB照射量を増幅する。雲が日光を覆い隠している時でさえ、UVBレベルは長期曝露による光老化、例えばしわを引き起こすのに依然として十分に高い可能性がある。
【0090】
UV指数(環境保護局により開発された)は、所定の日における日光のUV線の強さを示す。4つの分類上の区分がある-適度(UV指数が3未満)、高い(UV指数が3〜6)、非常に高い(UV指数が6〜10)および極めて高い(UV指数が10を越える)。適度なUV指数では皮膚を焼くのに1時間を越える時間が必要とされることを意味し、極めて高いレベルでは15分未満の時間が必要とされることを意味する。その指数は多くの場合天気予報に含まれている。臨床的には、UVB曝露はMED(最小紅斑量)として測定される。1 MEDは敏感肌において日焼けを起こすのに必要とされるUVB量である。UVB曝露の影響は累積的であるので、長期的または慢性的UVB誘導性のしわは、急性曝露により、紅斑または浮腫またはやけどを引き起こし得るUVBレベル以下(例えば、1 MED未満)のUVBレベルに対する長期的な曝露の結果として起こり得る。例えば、たとえ患者がUV指数の低いまたは適度な日の日光に曝されているのみであっても、もし患者が慢性的に日光に曝されている場合には、患者には長期UVB誘導性のしわの危険性がある。
【0091】
血管形成および長期 UVB 曝露
光老化皮膚は表皮過形成、真皮弾性線維症および細胞外マトリクスの劣化(5、38)により、並びに細静脈周囲のリンパ組織球性皮膚浸潤(perivenular lymphohistocytic dermal infiltrates)(23)の存在により特徴付けられる。本明細書に記載の結果により、皮膚への長期UVB照射が著しい皮膚血管形成および過形成性表皮(hyperplastic epidermis)におけるVEGF発現の増加と関連していること、並びにTSP-1による皮膚血管形成を標的とした阻害によりUVB誘導性の皮膚損傷およびしわ形成が予防されることが明らかとなる。
【0092】
慢性的光老化に関して確立された実験モデル(26)である、Skh-1ヘアレスマウスへの10週間のUVB照射後、本発明者らは著しいしわ形成、並びに真皮における破壊された弾性およびコラーゲン繊維の検出増加と関連した、表皮および真皮過形成に特徴的な組織学的所見を見出した。内皮細胞接合分子CD31(39)を染色した組織切片のコンピュータ支援による定量的画像解析(24)により、長期UVB照射後、血管密度および血管サイズの有意な増加を伴う、皮膚血管形成が著しく惹起されることを明らかとした。これらの血管の変化は、血管豊富な肉芽組織の形成に対して既存の血管からの萌出および血管拡張の両者が寄与(24)する、皮膚の創傷治癒の間に起こる血管形成の変化に匹敵していた。対照的に、乾癬のような慢性的な炎症性皮膚疾患は、主に皮膚微細血管の伸張および拡張を伴うが新たな血管萌出の形成を伴わない血管再構築を示す。これらの所見により皮膚への長期UVB照射が慢性的な組織修復反応を引き起こすことが示唆され、また血管形成がUVB誘導性の皮膚損傷の調節において重要な役割を演じている可能性があることを示唆している。
【0093】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、創傷治癒の新生表皮において(13、42)だけでなく、乾癬皮膚病変(12)および皮膚血管形成と関連した他の皮膚疾患(14、41)の過形成性表皮(hyperplastic epidermis)においても発現増加を伴う、角化細胞由来の主要な皮膚血管形成因子(40)として同定された。本明細書に記載の実験において、VEGF mRNA発現の著しい上方制御が慢性的にUVBを照射した皮膚の過形成性表皮(hyperplastic epidermis)において、基底上角化細胞(suprabasal keratinocytes)で優先的に認められた。これらの所見は急性UVB照射がインビトロ(43)(44)およびインビボ(7)においてヒト表皮角化細胞でVEGF発現を誘導したという以前の報告と一致している。
【0094】
血管形成および長期 UVB 誘導性のしわ
血管形成阻害因子TSP-1の皮膚特異的な過剰発現を伴う形質転換マウスを長期UVB照射に曝した。表皮角化細胞に対するTSP-1導入遺伝子発現を標的として、確立されたケラチン14(K14)プロモーター・カセットを用い、本発明者らは以前、表皮TSP-1発現レベルの増加、表皮および真皮の通常の厚さおよび形態、並びに皮膚の創傷治癒間における皮膚血管形成の潜在的阻害(24)を特徴とする、K14/TSP-1形質転換マウスを確立した。K14遺伝子発現は増殖角化細胞で大いに亢進されるので、K14プロモーターの使用により表皮過形成の条件の下で、導入遺伝子の高発現が確実となる。本明細書の実施例に記載の結果から、表皮でのTSP-1過剰発現により真皮の光損傷、並びにコラーゲンおよび弾性繊維の破壊が強力に阻害されることおよび同様に、皮膚のしわ形成が完全に阻害されることが明らかとなった。これは皮膚血管形成の潜在的阻害、内皮増殖速度の減少および内皮細胞のアポトーシスの増加と関連していた。総合すると、これらの結果により修復と関連したUVB誘導性の血管形成の阻害によってまた、しわ形成を含む表皮の光損傷が予防されることが示唆される。
【0095】
以前、TSP-1はそのI型反復配列内に特徴的な配列の、内皮細胞上のCD36受容体との特異的な相互作用により、内皮細胞のアポトーシス割合の増進を引き起こし、血管形成阻害を調節していることが示された(46)。最近の証拠により、関連分子TSP-2(47)に類似のTSP-1もまた、その抗血管形成効果と重要な関係がある、マトリックスメタロプロテアーゼ-2(MMP-2)の活性化を阻害できることが示唆されている(48、49)。これらの結果から、さらなる機構が同定され、それによりTSP-1はMMP-9活性化の阻害を介して、UVB照射により惹起される皮膚血管形成を減少させている可能性がある。MMP-9は細胞外マトリックスの構成成分を消化する分子の亜鉛プロテイナーゼ・ファミリーの一員であり、MMP-9発現および活性レベルの増加がUV照射されたヒトの皮膚で認められている(35、50、51)。
【0096】
逆に、TSP-2ノックアウトマウスは野生型マウスに比べ、長期UVB曝露に応じて、しわ形成の増加が示された。しかし、長期UVB照射の後、TSP-2ノックアウトマウスおよび野生型マウス間でMMP-2活性の大きな相違は検出されなかった。これらの結果から、皮膚血管形成の特異的阻害(MMP効果ではなく)が、皮膚に対する慢性的なUVB損傷、例えばしわの予防を目的とした有望な新規の研究手法になる可能性が示唆される。
【0097】
TSP 類似体
類似体は天然に存在するTSP-1またはTSP-2と、アミノ酸配列で若しくは配列に無関係な方法で、またその両方で異なり得る。非配列改変には、TSP-1またはTSP-2のインビボまたはインビトロ化学誘導体化が含まれる。非配列改変には、アセチル化、メチル化、リン酸化、カルボキシル化、またはグリコシル化における変化が含まれる。
【0098】
TSP-1およびTSP-2の配列、例えばヒトTSP-1およびTSP-2は当技術分野において周知である。好ましい類似体には、1つ若しくは複数の保存的アミノ酸置換により、またはTSP-1若しくはTSP-2生物活性がなくならないような、1つ若しくは複数の非保存アミノ酸の置換、欠失、若しくは挿入によりその配列が野生型配列とは異なる、TSP-1またはTSP-2(またはその生物学的に活性な断片)が含まれる。保存的置換には典型的に、同様な特性を有する別のアミノ酸への或るアミノ酸の置換;例えば以下の群内の置換が含まれる:バリン、グリシン;グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。その他の保存的置換は以下の表から選ぶことができる。
【0099】
(表1)保存的アミノ酸置換
【0100】
本発明の他の類似体はペプチド安定性を増加させる改変を伴うものである。そのような類似体には例えば、ペプチド配列中の1つまたは複数の(ペプチド結合を置換する)非ペプチド結合が含まれる場合がある。また、以下のものが含まれる:天然に存在するL-アミノ酸以外の残基を含む類似体、例えばD-アミノ酸または天然に存在しない若しくは合成によるアミノ酸、例えばβまたはγアミノ酸;および環状の類似体。
【0101】
断片および類似体の作製
断片の作製
タンパク質の断片はいくつかの方法で、例えば遺伝子組換えで、タンパク質の酵素消化により、または化学合成により生成できる。ポリペプチドの内部または末端断片は、ポリペプチドをコードする核酸の片端(末端断片に対して)または両端(内部断片に対して)から1つまたは複数のヌクレオチドを取り除くことにより生成できる。変異を起こさせたDNAの発現により、ポリペプチド断片が生成される。その後「末端を削る」エンドヌクレアーゼを用いた消化により、断片配列をコードするDNAが生成できる。タンパク質断片をコードするDNAはまた、ランダム剪断、制限消化または上述の方法を組み合わせることにより生成できる。
【0102】
断片はまた、従来のメリフィールドの固相f-Mocまたはt-Boc化学のような、当技術分野において周知の技術を用いて化学的に合成できる。例えば、本発明のペプチドは任意に、断片重複を伴わない所望の長さの断片に分割されてもまたは所望の長さの重複断片に分割されてもよい。
【0103】
類似体の生成 : ランダム法により改変した DNA またはペプチド配列の生成
タンパク質のアミノ酸配列変異体は、タンパク質またはタンパク質の特定のドメイン若しくは領域をコードするDNAのランダム変異導入法により調製できる。有用な方法にはPCR変異導入法および飽和変異導入法が含まれる。ランダムなアミノ酸配列変異体ライブラリーはまた、縮重オリゴヌクレオチド配列セットの合成により生成できる(変異体ライブラリーのタンパク質のスクリーニング法は、本明細書の別項である)。
【0104】
PCR 変異導入法
PCR変異導入法において、クローニングしたDNA断片にランダムに変異を導入するために、校正性を低下させたTaqポリメラーゼが使用される(Leungら、1989、Technique 1:11-15)。これはランダムに変異を導入する非常に強力且つ相対的に迅速な方法である。変異誘発されるDNA領域は、Taq DNAポリメラーゼによるDNA合成の校正性を低下させる条件の下で、例えばdGTP/dATP割合が5のものを用いて、かつPCR反応にMn2+を添加することにより、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて増幅される。ランダム変異ライブラリーを提供するため、増幅されたDNA断片プールを適当なクローニングベクターに挿入する。
【0105】
飽和変異導入法
飽和変異導入法はクローニングしたDNA断片への多数の一塩基置換の迅速導入を可能とする(Mayersら、1985、Science 229:242)。この技術には、例えばインビトロにおける化学的処理または一本鎖DNAへの照射による変異の誘発、および相補的DNA鎖の合成が含まれる。変異の頻度は処理の厳しさを調節することにより調節でき、かつ本質的に全ての可能な塩基置換を得ることができる。この手順には変異断片に対する遺伝的選択が含まれないので、機能を改変するものだけでなく、中立置換(neutral substitutions)のものの両方が得られる。点突然変異の分布は保存配列の構成要素に偏っていない。
【0106】
縮重オリゴヌクレオチド
相同体ライブラリーはまた、縮重オリゴヌクレオチド配列セットより作製できる。縮重配列の化学合成を自動DNA合成機で実行でき、かつ次いでその合成遺伝子を適当な発現ベクターに連結できる。縮重オリゴヌクレオチドの合成は当技術分野において周知である(例えば、Narang, SA (1983) Tetrahedron 39:3; Itakuraら(1981) Recombinant DNA, Proc 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules, ed. AG Walton、Amsterdam: Elsevier pp273-289; Itakuraら(1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323; Itakuraら(1984) Science 198:1056; Ikeら(1983) Nucleic Acid Res. 11:477を参照されたい)。そのような技術は他のタンパク質の定方向進化法(directed evolution)で使用されてきた(例えば、Scottら(1990) Science 249:386-390; Robertsら(1992) PNAS 89:2429-2433; Devlinら(1990) Science 249: 404-406; Cwirlaら(1990) PNAS 87:6378-6382;および米国特許第5,223,409号、米国特許第5,198,346号および米国特許第5,096,815号を参照されたい)。
【0107】
類似体の生成 : 定方向変異導入法により改変した DNA およびペプチド配列の生成
非ランダムまたは定方向変異導入技術を、特定領域において特定の配列または変異を与えるために使用することができる。これらの技術は例えば、タンパク質の公知のアミノ酸配列アミノ酸残基の欠失、挿入、または置換を含む変異体を作成するために使用することができる。変異部位は、例えば、まず保存アミノ酸に置換し、次いで達成された結果に応じてより急進的な選択物(アミノ酸)に置換すること(1)、標的残基を欠失させること(2)、またはその配置部位近傍の同一若しくは異なる種類の残基を挿入すること(3)により、または選択肢1〜3を組み合わせて、個別にまたは連続的に改変できる。
【0108】
アラニンスキャニング変異導入法
アラニンスキャニング変異導入法は、CunninghamおよびWells (Science 244:1081-1085、1989)による、変異導入に対して好ましい位置またはドメインとなる、所望のタンパク質のある残基または領域の同定を目的とした有益な方法である。アラニンスキャニングにおいては、標的残基のうちの1残基または1群を同定する(例えばアルギニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジンおよびグルタミン酸のような荷電残基)および中性または非電荷アミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)により置換する。アミノ酸置換により、細胞中のまたは細胞外の周囲の水性環境とのアミノ酸の相互作用に影響を与えることができる。次いで、さらなるまたは他の変異を、その置換部位にまたはその置換部位の間に導入することにより、置換に対して機能的感応性を示すそれらのドメインを絞り込む。このように、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定するが、変異によるその性質は本質的に、予め決定する必要はない。例えば、ある部位の変異による性能を最適化するために、標的コドンまたは領域でアラニンスキャニングまたはランダム変異導入法を実施してもよく、および発現した所望のタンパク質サブユニット変異体を所望の活性の最適な組み合わせに対してスクリーニングする。
【0109】
オリゴヌクレオチドによる変異導入法
オリゴヌクレオチドによる変異導入法は、DNAの置換、欠失、および挿入変異体を調製する有益な方法であり、例えばAdelmanら(DNA 2:183、1983)を参照されたい。簡潔に説明すると、DNA鋳型(その鋳型は所望のタンパク質の改変されていないまたは天然DNA配列を含有するプラスミドまたはバクテリオファージの一本鎖型である)に対し、変異をコードするオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせることにより所望のDNAが改変される。ハイブリダイゼーション後、鋳型の第二相補鎖の全体を合成するためにDNAポリメラーゼが使用され、従ってオリゴヌクレオチドプライマーが組み込まれ、および所望のタンパク質DNAの選択的改変がコードされる。一般的に、長さが少なくとも25ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドが使用される。最適なオリゴヌクレオチドは、変異をコードするヌクレオチドのどちらか一方側が鋳型に完全に相補的である12ヌクレオチドから15ヌクレオチドを有する。これによりオリゴヌクレオチドが一本鎖DNA鋳型分子に対して適切にハイブリダイズすることが確実となる。Creaら(Proc. Natl. Acad. Sci. (1978) USA、75:5765)により説明されているような当技術分野において周知の技術を用い、オリゴヌクレオチドは容易に合成される。
【0110】
カセット変異導入法
変異体を調製するための別法であるカセット変異導入法は、Wellsら(Gene (1985) 34:315)により説明された技術に基づいている。出発材料は変異させるタンパク質サブユニットのDNAを含む、プラスミド(または他のベクター)である。変異させるタンパク質サブユニットのDNA中のコドンを同定する。同定する変異部位の各側に独特な制限エンドヌクレアーゼ部位が存在するに相違ない。そのような制限部位が存在しない場合には、それらを所望のタンパク質サブユニットのDNA中の適当な位置に導入するため上述のオリゴヌクレオチドによる変異導入法を用い、それらを生成してもよい。制限部位をプラスミド中に導入後、それを線状にするためにプラスミドをこれらの部位で切断する。所望の変異を含有することを除いて、制限部位の間にそのDNA配列をコードする二本鎖オリゴヌクレオチドを、標準的方法を用いて合成する。その二本の鎖を別々に合成し、次いで標準的方法を用いて共にハイブリダイズする。この二本鎖オリゴヌクレオチドはカセットと呼ばれる。このカセットはプラスミドに直接的に連結できるように、線状プラスミドの末端に相当する3’および5’末端を有するように設計される。このプラスミドはもはや変異された所望のタンパク質サブユニットのDNA配列を含む。
【0111】
組み合わせ変異導入法
変異体を作製するために組み合わせ変異導入法を使用できる。例えば、好ましくは最高の相同可能性を促進するため相同体または他の関連タンパク質群に関するアミノ酸配列を整列させる。組み合わせ配列の縮重セットを作成するために、整列させた配列のある位置に現れる全アミノ酸を選択できる。変化に富んだ変異体ライブラリーは、組み合わせ変異導入法により核酸レベルで作製され、変化に富んだ遺伝子ライブラリーによりコードされる。例えば、可能な配列の縮重セットが個々のペプチドとして、または、縮重配列のセットを含む、より大きな融合タンパク質として発現できるように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的に連結してもよい。
【0112】
ペプチド断片または相同体ライブラリーのスクリーニングを目的とした一次ハイスループット法
作製された変異遺伝子産物をスクリーニングするための種々の技術が当技術分野において知られている。大規模な遺伝子ライブラリーをスクリーニングするための技術には多くの場合、複製可能な発現ベクターへの遺伝子ライブラリーのクローニング、適当な細胞をその結果としてできたベクターライブラリーで形質転換すること、および所望の活性、三量体分子へのアセンブリ、天然のリガンド、例えば受容体または基質に対する結合の検出により、その産物が検出された遺伝子をコードするベクターの比較的容易な単離が助長されるような条件の下で遺伝子を発現させることが含まれる。以下に記載の各技術は、例えばランダム変異導入法により作製された多数の配列のスクリーニングを目的としたハイスループット分析を適用できる。
【0113】
ツーハイブリッド系
VEGFと相互作用するタンパク質を同定するためにツーハイブリッド(相互作用トラップ)アッセイ法を使用することができる。これらには作用物質、超作用物質およびアンタゴニストが含まれる場合がある。(対象タンパク質およびそれと相互作用するタンパク質がベイトタンパク質およびフィッシュタンパク質として使用される)。これらのアッセイ法は、とのタンパク質-タンパク質相互作用により媒介される機能的な転写活性化因子の再構成の検出に基づいている。特に、これらのアッセイ法はハイブリッドタンパク質を発現するキメラ遺伝子を使用している。第一ハイブリッドにはベイトタンパク質、例えばTSP-1若しくはTSP-2分子またはその断片、と融合したDNA結合ドメインが含まれる。第二ハイブリッドタンパク質には「フィッシュ」タンパク質、例えば発現ライブラリー、と融合した転写活性化ドメインが含まれる。フィッシュおよびベイトタンパク質が相互作用できる場合、それらはDNA結合および転写活性化ドメインをかなり接近させる。この接近はDNA結合ドメインにより認識される転写調節部位に操作可能に連結されたレポーター遺伝子の転写を引き起こすのに十分であり、並びにそのマーカー遺伝子の発現を検出できおよびベイトタンパク質の他のタンパク質との相互作用を得るために使用できる。
【0114】
ディスプレイ・ライブラリー
スクリーニング法に対する1つのアプローチとして、候補ペプチドを細胞またはウイルス粒子の表面に提示し、その提示産物を介した、特定の細胞またはウイルス粒子の、適当な受容体タンパク質との結合能を「パニング法」で検出する。例えば、遺伝子ライブラリーを細菌細胞の表面膜タンパク質に対する遺伝子中にクローニングでき、および結果として生じた融合タンパク質をパニングにより検出できる(Ladnerら、国際公開公報第88/06630号;Fuchsら(1991) Bio/Technology 9:1370-1371;およびGowardら(1992) TIBS 18:136-140)。同様の方法で、潜在的な機能ペプチド相同体を得るために検出可能に標識されたリガンドを使用できる。リガンド-結合活性を保持している相同体を検出するために蛍光標識されたリガンド、例えば受容体を使用できる。蛍光標識されたリガンドの使用により、蛍光顕微鏡下での細胞の視覚的な検査および分離が可能となる、ここでまたは細胞形態により、蛍光活性化セルソーターによる分離が可能となる。
【0115】
遺伝子ライブラリーはウイルス粒子表面の融合タンパク質として発現できる。例えば、繊維状ファージ系において、外来ペプチド配列を感染性ファージ表面に発現でき、それによって2つの大きな恩典が与えられる。第一に、1ミリリットルあたり1013個のファージをはるかに上回る濃度で、これらのファージを親和性基質(affinity matrices)に加えられるので、一度に多数のファージを選別できる。第二に、各感染性ファージは1遺伝子産物をその表面に提示しているため、特定のファージが親和性基質(affinity matrices)から低収率で回収される場合、感染の再実施によりファージを増幅できる。殆ど同一の大腸菌繊維状ファージM13、fdおよびf1群がファージ・ディスプレイ・ライブラリーで最も頻繁に使用される。ウイルス粒子の最終的なパッケージングを妨害することなく、ファージgIIIまたはgVIIIコートタンパク質のどちらかを融合タンパク質を生成するために使用できる。外来性抗原決定基をpIIIのNH2末端に発現でき、およびこの抗原決定基を持っていない大過剰のファージからそのような抗原決定基を持つファージを回収できる(Ladnerら、国際公開公報第90/02909号; Garrardら、国際公開公報第92/09690号;Marksら(1992)J. Biol. Chem. 267:16007-16010; Griffithsら(1993) EMBO J 12:725-734; Clacksonら(1991) Nature 352:624-628;およびBarbasら(1992) PNAS 89:4457-4461)。
【0116】
共通の研究手法としては、大腸菌のマルトース受容体(外膜タンパク質、LamB)をペプチド融合の相手として使用する(Charbitら(1986) EMBO 5、3029-3037)。そのタンパク質の細胞外ループの1つに融合されたペプチドを生成するために、LamB遺伝子をコードするプラスミドにオリゴヌクレオチドを挿入する。これらのペプチドはリガンドと、例えば抗体との結合に用いることができ、およびその細胞が動物に投与された際の免疫応答を誘発できる。他の細胞表面タンパク質、例えばOmpA(Schorrら(1991) Vaccines 91、pp.387-392)、PhoE(Agterbergら(1990) Gene 88、37-45)、およびPAL(Fuchsら(1991) Bio/Tech 9、1369-1372)、ならびに大きな細菌表面構造体がペプチド・ディスプレイのための媒体として使用されてきた。細菌間の遺伝情報交換のための線毛の導管(pilus-a conduit)を形成する重合タンパク質である、ピリンにペプチドを融合できる(Thiryら(1989) Appl. Environ. Microbiol. 55、984-993)。他の細胞と相互作用する際のその役割ゆえ、線毛は細胞外環境へのペプチド提示に役立つ補助をする。ペプチド・ディスプレイのために使用されるその他の大きな表面構造体は、細菌の駆動器官、鞭毛である。そのサブユニットタンパク質であるフラジェリンとのペプチドの融合により、宿主細胞上に多数のペプチド複製物が緻密に配列される(Kuwajimaら(1988) Bio/Tech. 6、1080-1083)。その他の細菌種の表面タンパク質もまた、ペプチドの融合相手として使用されてきた。実施例にはブドウ球菌のプロテインAおよびナイセリア(Neisseria)外膜のIgAプロテアーゼが含まれる(Hanssonら(1992) J. Bacteriol. 174、4239-4245およびKlauserら(1990) EMBO J. 9、1991-1999)。
【0117】
上述の繊維状ファージ系およびLamB系において、ペプチドとそれをコードするDNA間の物理的連結は、ペプチドをその表面上に持つ粒子(細胞またはファージ)内部のDNAの封じ込めにより起こる。ペプチドの捕獲により、粒子およびその内部のDNAが捕獲される。別のスキームではペプチドとDNA間の結び付きを形成させるために、DNA-結合タンパク質LacIを使用する(Cullら(1992) PNAS USA 89:1865-1869)。この系ではその3’末端にオリゴヌクレオチドのクローニングサイトを有するLacI遺伝子を含むプラスミドを使用する。アラビノースによる制御誘導の下で、LacI-ペプチド融合タンパク質を生成する。この融合(タンパク質)はLacOオペレーターとして(LacO)として知られる短いDNA配列とのLacIの元々の結合能を保持している。発現プラスミド上に2コピーのLacOを導入することにより、LacI-ペプチド融合(タンパク質)はそれをコードするプラスミドに強固に結合する。各細胞中のプラスミドは単一のオリゴヌクレオチドを含むのみであり、各細胞は単一のペプチド配列を発現するのみであるので、ペプチドをその合成に向けられたDNA配列と特異的および安定的に関連付けられるようになる。ライブラリーの細胞を穏やかに溶解し、および活性ペプチドを含有する複合体を回収するためにペプチド-DNA複合体を固定化された受容体基質に曝す。次いで、ペプチドリガンドを同定するために増幅およびDNA塩基配列決定法を目的として、結合したプラスミドDNAを細胞に再導入する。その方法が実際に役立つ証明として、デカペプチド(10残基ペプチド)の大規模なランダム・ライブラリーを作製し、およびオピオイドペプチドであるジノルフィンBに対して作製したモノクローナル抗体で選別した。ペプチドのコホートが回収され、ジノルフィンBの6残基部位に相当する共通配列により全て関連付けられた(Cullら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:1865-1869)。
【0118】
このスキームは、時にはペプチド-オン-プラスミド(peptides-on-plasmids)と呼ばれるが、2つの重要な点でファージ・ディスプレイ法と異なっている。第一に、ペプチドは融合タンパク質のC末端に結合されており、結果としてライブラリー・メンバーは遊離C末端を有するペプチドとして提示される。繊維状ファージの両コートタンパク質、pIIIおよびpVIIIは、それらのC末端を介してファージに固定されており、およびゲストペプチドは外側に向かって伸びているN末端ドメインに位置付けられる。いくつかの設計において、ファージにより提示されるペプチドは、ちょうど融合タンパク質のアミノ末端に提示される(Cwirlaら(1990) Pro. Natl. Acad. Sci. U.S.A 87、6378-6382)。第二の相違はライブラリーに実際に存在しているペプチド集団に影響を与える生物学的バイアスの集合である。LacI融合分子は宿主細胞の細胞質の範囲内にとどまる。ファージのコート融合タンパク質は翻訳時、細胞質に一時的に曝される、しかし内膜を通過して周辺質区分中に急速に分泌されるが、ファージ粒子中へのアセンブリを待つ間、ペプチドを含むN末端はペリプラスムに突出した状態のまま、そのC末端疎水性ドメインにより膜中に固定され続ける。曝されるタンパク質分解活性が異なるため、LacI中のぺプチドおよびファージ・ライブラリー中のぺプチドは有意に異なる場合がある。ファージのコートタンパク質は、内膜を横断する輸送およびファージ中への組込みの準備としてのシグナルペプチダーゼによるプロセシングを必要とする。あるペプチドはこれらの過程に悪影響を及ぼすおよびライブラリー中での提示が不十分となる(Gallopら(1994) J. Med. Chem. 37(9):1233-1251)。これらの特定バイアスは、LacIディスプレイ系の要因ではない。
【0119】
組換え型ランダム・ライブラリーで使用可能な小ペプチド数は、莫大である。日常的に、独立クローンが107個から109個のライブラリーが調製される。組換え体1011個もの大規模なライブラリーが作製されているが、このサイズはほぼクローンライブラリーの実践上の限界に等しい。ライブラリーサイズのこの限界は、ランダム化断片を含むDNAを宿主細菌細胞中へ形質転換する段階で起こる。この限界を回避するために、ポリソーム複合体中の新生ペプチドの提示に基づくインビトロ系が最近、開発された。このディスプレイ・ライブラリー法は、現在使用可能なファージ/ファージミドまたはプラスミド・ライブラリーよりも3〜6桁大きなライブラリーを作製できる可能性がある。さらに、ライブラリーの構築、ペプチドの発現、およびスクリーニングが完全に無細胞形式で行われる。
【0120】
この方法(Gallopら(1994) J. Med. Chem. 37(9):1233-1251)の1つの適用として、デカペプチド(10残基ペプチド)1012個をコードする分子DNAライブラリーを構築し、およびそのライブラリーをインビトロ共役転写/翻訳系(in vitro coupled transcription/translation system)にて大腸菌S30中で発現させた。リボソームをmRNA上に引き止めておくための条件の選択により、結果としてポリソームに占めるRNAの実質的な割合が増加し、およびそれらのコードするRNAに依然として結合している新生ペプチドを含む複合体が生じた。従来の組換え型ペプチド・ディスプレイ・ライブラリーをスクリーニングするのとほぼ同様な方法において、ポリソームは固定化した受容体でアフィニティー精製するのに十分頑強である。結合した複合体からRNAを回収し、cDNAに変換し、並びに次の合成およびスクリーニングのラウンドのための鋳型を生成するためにPCRにより増幅する。ポリソーム・ディスプレイ法をファージ・ディスプレイ系と合わせてもよい。数ラウンドのスクリーニング後、ポリソームの濃縮プール由来cDNAをファージミドベクターにクローニングする。コートタンパク質に融合したペプチドを提示するペプチド発現ベクター、およびペプチド同定のためのDNA塩基配列決定用ベクターの双方として、このベクターを使用する。ポリソーム由来ペプチドをファージ上に発現させることにより、ある者はこの進め方でアフィニティー選択手順を継続できるまたはファージELISAにおける結合活性に関して、若しくは完全ファージELISA(completion phage ELISA)における結合活性に関して、個々のクローン上のペプチドをアッセイできる(Barretら(1992) Anal. Biochem 204、357-364)。活性ペプチドの配列を同定するために、ある者はファージミドホストにより生成されるDNAの配列決定を行う。
【0121】
二次スクリーニング
さらなる生物学的活性の同定のため(これにより例えば、当業者が作用物質とアンタゴニストを区別できると思われる)、上述のハイスループットアッセイ法に続けて二次スクリーニングを行うことができる。使用される二次スクリーニングの種類は、試験が必要とされる所望の生物活性に依存すると思われる。例えば、あるアッセイ法に発展させることが可能であり、そのアッセイ法では関心のあるタンパク質、例えばTSP1またはTSP2とリガンド間の相互作用の阻害能を、上述の一次スクリーニングのうちの1つにより単離されたペプチド断片群から作用物質またはアンタゴニストを同定するために使用できる。例えば、試験化合物の皮膚における血管形成阻害能は、当業者に周知の多くの方法により、例えば試験化合物または治療を被験者、例えば実験動物(例えば、マウス)の皮膚に適用すること;並びに化合物なしの場合の被験者皮膚における血管の数および/または大きさを化合物ありの場合と比較評価することにより試験できる。被験者皮膚における血管の数または大きさを減少させる化合物は、皮膚における血管形成を阻害する化合物と同定される。
【0122】
従って、断片および類似体を作製する並びにそれらの活性を試験する方法は、当技術分野において周知である。いったん関心のある中心配列が同定されれば、類似体および断片を得ること並びにそれらを所望の活性に関して試験することは、当業者にとって日常的作業である。
【0123】
ペプチド模倣体
本発明によりまた、模倣体、例えばペプチドまたは非ペプチド薬剤を作製するため、対象のTSP-1またはTSP-2ポリペプチドのタンパク質結合ドメインを縮小することが提供される。例えば、「Peptide inhibitors of human papillomavirus protein binding to retinoblastoma gene protein」欧州特許出願第0 412 762号および欧州特許出願第0 031 080号を参照されたい。
【0124】
決定的に重要な残基の加水分解性ペプチド類似体は、ベンゾジアゼピン(例えば、Freidingerら、Peptides: Chemistry and Biology、G.R. Marshall ed.、ESCOM Publisher : Leiden、Netherlands、1988を参照されたい)、アゼピン(例えば、Huffmanら、Peptides: Chemistry and Biology、G.R. Marshall ed.、ESCOM Publisher : Leiden、Netherlands、1988を参照されたい)、置換型γラクタム環(Garveyら、Peptides: Chemistry and Biology、G.R. Marshall ed.、ESCOM Publisher : Leiden、Netherlands、1988)、ケトメチレン擬似ペプチド(Ewensonら(1986) J Med Chem 29:295;およびEwensonら、Peptides: Structure and Function (Proceedings of the 9th American Peptide Symposium) Pierce Chemical Co. Rockland、IL、1985)、β-ターンジペプチド中心(Nagaiら(1985) Tetrahedron Lett 26:647;およびSatoら(1986) J Chem Soc Perkin Trans 1:1231)、並びにβ-アミノアルコール(Gordonら(1985) Biochem Biophys Res Commun 126:419;およびDannら(1986) Biochem Biophys Res Commun 134:71)を用いて、作製できる。
【0125】
融合タンパク質
TSP-1タンパク質レベルまたはTSP-2タンパク質レベルを調節するポリペプチドは、他のタンパク質またはその一部分と融合できる。例えば、溶解性を増進させるためTSP-1若しくはTSP-2タンパク質またはその一部分を他のポリペプチド部分に操作可能に連結できる。TSP-1若しくはTSP-2またはその一部分と融合できるタンパク質の実施例には、循環型VEGF半減期を改善できる、血漿タンパク質またはその断片が含まれる。例えば、融合タンパク質は、TSP-1またはTSP-2配列が免疫グロブリン・スーパーファミリー由来の配列と融合された、TSP-1またはTSP-2-免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質とすることができる。幾つかの可溶性融合タンパク質の構築物が開示されており、その中では細胞表面の糖蛋白質の細胞外ドメインが免疫グロブリンの定常領域(F(c))と融合されている。例えば、Caponら(1989) Nature 337(9):525-531により、CD4を免疫グロブリン(IgG1)と融合させることで、より長時間効果のあるCD4類似体を作製することに関する手引きが提供される。同様に、Caponら、米国特許第5,116,964号および米国特許第5,428,130号(CD4-IgG融合構築物); Linsleyら、米国特許第5,434,131号(CTLA4-IgG1およびB7-IgG1融合構築物); Linsleyら (1991) J. Exp. Med. 174:561-569(CTLA4-IgG1融合構築物);並びにLinsleyら (1991) J. Exp. Med 173:721-730(CD28-IgG1およびB7-IgG1融合構築物)を参照されたい。そのような融合タンパク質は、受容体-リガンド相互作用を調節し、かつインビボの炎症を緩和するのに有効であることが証明されている。例えば、細胞表面の腫瘍壊死因子受容体(TNFR)タンパク質の細胞外ドメインが免疫グロブリンの定常領域(F(c))と融合された、融合タンパク質がインビボで使用されている。例えば、Morelandら (1997) N. Engl. J. Med. 337(3):141-147;およびvan der Pollら (1997) Blood 89(10):3727-3734を参照されたい。
【0126】
アンチセンス核酸配列
正の血管形成因子、例えばVEGFをコードするヌクレオチドに対するアンチセンスである核酸分子を、本明細書に記載の方法における血管形成を阻害する薬剤として使用することができる。「アンチセンス」核酸には、正の血管形成因子、例えばVEGFをコードする「センス」核酸に相補的な、例えば二本鎖cDNA分子のコード鎖に相補的な、またはmRNA配列に相補的なヌクレオチド配列が含まれる。従って、アンチセンス核酸はセンス核酸と水素結合を形成できる。アンチセンス核酸はVEGFコード鎖全体と、またはその一部分のみと相補的であることができる。例えば、VEGFをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の「コード領域」に対してアンチセンスであるアンチセンス核酸分子を使用できる。
【0127】
VEGFをコードするコード鎖の配列は公知である。VEGFをコードするコード鎖配列があれば、アンチセンス核酸をWatsonとCrickの塩基対合則に従って設計できる。アンチセンス核酸分子はVEGF mRNAのコード領域全体と相補的にすることができるが、より好ましくはVEGF mRNAのコードまたは非コード領域の一部分のみに対してアンチセンスなオリゴヌクレオチドである。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドはVEGF mRNAの翻訳開始部位周辺の領域と相補的にすることができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは例えば、約5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個または50個のヌクレオチド長とすることができる。アンチセンス核酸は当技術分野において周知の方法を用い、化学合成および酵素連結反応によって構築できる。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に存在するヌクレオチドまたは分子の生物学的安定性を増加させるため若しくはアンチセンスとセンス核酸間で形成された二本鎖の物理学的安定性を増加させるため設計された種々の改変型ヌクレオチド、例えばホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを用いて、化学的に合成できる。アンチセンス核酸を作製するために使用できる改変型ヌクレオチドの実施例には、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジハイドロウラシル、β-D-ガラクトシルクエオシン(beta-D-galactosylqueosine)、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルクエオシン(beta-D-mannosylqueosine)、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、擬似ウラシル、クエオシン(queosine)、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6-ジアミノプリンが含まれる。または、アンチセンス核酸を核酸がアンチセンス方向にサブクローニングされた(即ち、挿入された核酸から転写されるRNAは、関心のある標的核酸に対してアンチセンス方向になると思われる)発現ベクターを用いて生物学的に生成できる。
【0128】
RNAi
本明細書に記載のIRシグナル伝達経路の成分、例えば本明細書に記載の成分、をコードする遺伝子をサイレンスできる二本鎖核酸分子をまた、IRシグナル伝達経路の成分の発現を阻害する薬剤として使用することができる。RNA干渉(RNAi)は転写後の遺伝子サイレンシングの機構であり、その機構では関心のある遺伝子(またはコード領域)に相当する二本鎖RNA(dsRNA)を細胞または生物に導入することにより、結果として対応するmRNAの分解が起こる。RNAiの効果は遺伝子発現が回復するまで多数の細胞分裂に対して持続する。RNAiは従って、RNAレベルで標的をノックアウトまたは「ノックダウン」するための極めて強力な方法である。RNAiはヒト胎児腎臓およびHeLa細胞を含む、ヒト細胞で奏効することが証明されている(Elbashirら Nature 2001 May 24;411(6836):494-8を参照されたい)。ある態様として、RNAヘアピンを内在的に発現させることにより、遺伝子サイレンシングを哺乳動物細胞で誘導できる(Paddisonら、2002、PNAS USA 99:1443-1448を参照されたい)。別の態様として、小さな(21〜23ヌクレオチド) dsRNAのトランスフェクションにより、遺伝子発現が特異的に阻害される(Caplen (2002) Trends in Biotechnology 20:49-51に概説されている)。
【0129】
簡潔に説明すると、RNAiは以下のように機能すると思われる。サイレンスされる遺伝子の一部分に対応するdsRNAを細胞に導入する。dsRNAは21〜23ヌクレオチドのsiRNA、または短い干渉RNAに消化される。siRNA二本鎖は、RNA誘導性サイレンシング複合体、またはRISCとして知られるものを形成するために、ヌクレアーゼ複合体に結合する。RISCはsiRNA鎖のうちの1つと内在性mRNA間の塩基対合性の相互作用により、相同転写産物を標的とする。次に、それはsiRNAの3’末端から12ヌクレオチドまでmRNAを切断する(Sharpら (2001) Genes Dev 15:485-490;およびHammondら (2001) Nature Rev Gen 2: 110-119に概説されている)。
【0130】
遺伝子サイレンシングにおけるRNAi技術では、標準的な分子生物学法が使用される。不活性化される標的遺伝子由来の配列に対応するdsRNAは、標準的な方法により、例えばT7 RNAポリメラーゼを用いた、鋳型DNA(標的配列に相当する)両鎖の同時転写により作製できる。RNAiで使用するdsRNAを作製するキットが、例えばNew England Biolabsから市販されている。dsRNAまたはdsRNAを作製するために遺伝子工学で作製されたプラスミドのトランスフェクション法は、当技術分野において日常的作業である。
【0131】
RNAiによるものと同等な遺伝子サイレンシング効果が、mRNA-cDNAハイブリッド構築物をトランスフェクションした哺乳動物細胞で報告されており(Linら、Biochem Biophys Res Commun 2001 Mar 2;281(3):639-44)、遺伝子サイレンシングに関してさらに別の戦略が提供される。
【0132】
投与
血管形成を調節する薬剤、例えば血管形成阻害因子、例えばTSP-1若しくはTSP-2、またはTSP-1若しくはTSP-2を調節する薬剤は、標準的な方法により被験者に投与できる。例えば、薬剤を静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、および経粘膜を含む多数の異なる経路のうちのいずれかにより投与できる。ある態様として、TSP-1若しくはTSP-2またはその調節薬剤を局所的に投与できる。
【0133】
TSP-1またはTSP-2タンパク質レベルを調節する薬剤、例えばTSP-1またはTSP-2核酸分子、TSP-1またはTSP-2ポリペプチド、断片または類似体、TSP-1またはTSP-2調節因子、および抗TSP-1抗体または抗TSP-2抗体(同様に本明細書で「活性成分」とも呼ばれる)を被験者、例えばヒトへの投与に適した薬学的組成物中に組み込むことができる。そのような組成物には典型的に、核酸分子、ポリペプチド、調節因子、または抗体および薬学的に許容される担体が含まれる。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語には、薬学的な投与に適合する、いずれかおよび全ての溶剤、分散媒、被覆剤、抗菌および抗真菌剤、等張並びに吸収遅延薬剤などが含まれることが意図される。薬学的に活性な物質に対するそのような媒体および薬剤の使用は、周知である。活性化合物と適合しない任意の従来の媒体または薬剤を除き、そのような媒体は本発明の組成物中に使用することができる。補助活性化合物もまた、組成物中に加えることができる。
【0134】
薬学的組成物はその意図する投与経路と適合するように製剤化することができる。非経口、皮内、または皮下投与に使用される溶液または懸濁液は、以下の組成物を含むことができる:注射用の水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒のような無菌賦形剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウムのような酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤;酢酸、クエン酸またはリン酸のような緩衝液および塩化ナトリウムまたはブドウ糖のような張性の調整剤。pHは塩酸または水酸化ナトリウムのような、酸または塩基で調整できる。非経口調製物はアンプル、使い捨て注射器またはガラス若しくはプラスチック製の用量バイアル中に封入できる。
【0135】
注射可能物質の使用に適した薬学的組成物には、滅菌水溶液(ここでは水溶性の)若しくは分散媒および無菌の注射可能溶液若しくは分散媒の即時調製のための無菌粉末が含まれる。静脈内投与のために、適した担体には生理食塩水、静菌性水、クレモフォア(Cremophor)EL(商標) (BASF、Parsippany、NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。全ての場合において、組成物を無菌とする必要があり、注射が容易となる程度まで流動性とすべきである。それは製造および保存条件下で安定でなければならない。並びに細菌および菌類のような微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体を、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコール液など)、およびその適当な混合物を含有する溶媒または分散媒とすることができる。適当な流動性は、例えば、レシチンのような被覆剤の使用により、分散に関しては必要とされる粒子サイズの維持によりおよび界面活性剤の使用により維持できる。微生物作用の防止は、種々の抗菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成できる。多くの場合、等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールのような多価アルコール、塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましいと思われる。注射可能な組成物の長期吸収は、組成物中に吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含有させることによりもたらすことができる。
【0136】
無菌の注射可能溶液は、上記に列挙される成分の1つまたは組み合わせを含む適当な溶媒中に、必要量の活性化合物(例えばTSP-1またはTSP-2ポリペプチド)を加えることにより調製でき、必要に応じて、ろ過滅菌を続けて行うことができる。一般的に、分散媒は基本分散媒および上記に列挙されるものからのその他必須成分を含有する無菌媒体中に、活性化合物を加えることにより調製される。無菌の注射可能溶液を調製するための無菌粉末の場合、その好ましい調製法は、既にろ過滅菌したその溶液から、任意の所望の追加成分を加えた活性成分の粉末を生成する真空乾燥および凍結乾燥である。
【0137】
経口組成物には一般的に、不活性賦形剤または食用媒体が含まれる。それらをゼラチンカプセル中に封入できるまたは錠剤中に圧縮できる。治療上の経口投与を目的として、活性化合物を賦形剤と混合でき、かつ錠剤、口内錠(トローチ剤)またはカプセルの形態で使用できる。同様にして、経口組成物をうがい薬としての使用を目的とした流動性担体を用いて調製でき、ここで流動性担体中の組成物を経口投与し、ビュッビュッと音を立ておよび吐き出すまたは飲み込む。薬学的に適合する結合剤および/または補助原料を組成物の一部として含有させることができる。錠剤、丸薬、カプセル、口内錠(トローチ剤)などは、任意の以下の成分、または性質の似た化合物を含むことができる:微結晶性セルロース、トラガカントガム若しくはゼラチンのような結合剤;でんぷん若しくは乳糖のような賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)若しくはトウモロコシでんぷんのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム若しくはステローテス(Sterotes)のような潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素のような流動促進剤;サッカロース若しくはサッカリンのような甘味剤;またはペパーミント、メチルサリチル酸若しくはオレンジ香味料のような香料添加剤。
【0138】
全身投与は同様に、経粘膜的または経皮的方法によるものとすることができる。経粘膜的または経皮的投与に関して、透過される障壁に適した浸透剤が製剤中に使用される。そのような浸透剤は一般的に公知であり、並びに例えば、経粘膜的投与に関しては、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜的投与はスプレー式点鼻薬または坐薬の使用によって達成できる。経皮的投与に関しては、活性化合物は当技術分野において一般的に知られるような軟膏、膏薬、ゲル、またはクリーム中に製剤化される。育毛を促進するまたは阻害するため、そのような経皮的製剤を皮膚に塗布できる。
【0139】
ある態様として、活性化合物はインプラントおよびマイクロカプセル輸送系を含む、放出制御製剤のような、体内からの急速な除去に対して化合物を保護する担体とともに調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような、生体分解性の、生体適合性ポリマーを使用できる。そのような製剤の調製方法は、当業者にとって明らかであると思われる。原料はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Incより商業的に入手可能である。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を備えた、感染させた細胞を標的としたリポソームを含む)はまた、薬学的に許容される担体として使用できる。これらは当業者に周知の方法に従って、例えば米国特許第4,522,811号に記載されているように、調製できる。
【0140】
本明細書に記載の核酸分子をベクターに挿入でき、かつ遺伝子治療用ベクターとして使用できる。遺伝子治療用ベクターを、例えば、静脈注射、局所投与(米国特許第5,328,470号を参照されたい)により、または定位固定注射(stereotactic injection)(例えばChenら、PNAS 91:3054-3057、1994を参照されたい)により患者に輸送できる。遺伝子治療用ベクターの医薬品には、許容される希釈剤中の遺伝子治療用ベクターを含むことができる、または遺伝子輸送媒体が埋め込まれた緩徐放出マトリックスを含むことができる。または、完全な遺伝子輸送ベクターが組換え細胞から原型を保ったまま生成され得る場合(例えばレトロウイルスベクター)、医薬品は遺伝子輸送系を作製する1つまたは複数の細胞を含むことができる。
【0141】
医薬組成物を投与説明書とともに容器、パック、または取り出し容器(ディスペンサー)中に含めることができる。
【0142】
血管形成のレベルを調製する薬剤、例えばTSP-1若しくはTSP-2ポリペプチドまたはその断片若しくは類似体を、局所的な投与、例えば局所投与により投与できる。薬剤を1回投与できるまたは継続的に投与できる、例えばTSP-1またはTSP-2タンパク質レベルへの効果を選択期間、例えば5日、10日、20日、30日、50日、90日、180日、365日またはそれ以上の間、維持するのに十分な頻度で薬剤を投与する。TSP-1またはTSP-2タンパク質、例えばTSP-1若しくはTSP-2ポリペプチドまたはその断片若しくは類似体のレベルを調製する、例えば増加させるまたは阻害する薬剤の投与を同様に、繰り返すことができる。
【0143】
遺伝子治療
本発明の遺伝子コンストラクトをまた、正または負の血管形成因子、例えば抗血管形成阻害因子、例えばTSP-1若しくはTSP-2ポリペプチドまたはその断片若しくは類似体のどちらかをコードする核酸を輸送させるための遺伝子治療プロトコールの一部として使用できる。本発明は、例えば表皮での血管形成を阻害するため、特定の細胞種、例えば上皮細胞におけるTSP-1またはTSP-2ポリペプチドのインビボトランスフェクションおよび発現のための発現ベクターを特徴とする。TSP-1またはTSP-2ポリペプチドの発現コンストラクトを、任意の生物学的に有効な担体、例えばインビボでTSP-1若しくはTSP-2遺伝子を細胞へ効果的に輸送できる任意の製剤または組成物にて投与してもよい。その手法には、組換え型レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、および単純ヘルペスウイルス-1を含むウイルスベクター、または組換え型の細菌プラスミド若しくは真核プラスミド中に対象遺伝子を挿入することが含まれる。ウイルスベクターを細胞に直接、トランスフェクトし、プラスミドDNAをインビボ実施による遺伝子コンストラクトの直接注入またはリン酸カルシウム沈殿だけでなく、例えば、陽イオンリポソーム(リポフェクチン)または誘導体化(例えば、抗体結合)、ポリリジン複合体、グラマシジンS(gramacidin S)、人工ウイルス・エンベロープ若しくは他のそのような細胞内担体の補助により輸送できる。
【0144】
細胞への核酸のインビボ導入に対する好ましい研究手法は、TSP-1またはTSP-2ポリペプチドをコードする核酸、例えばcDNA、またはVEGFアンチセンス核酸を含むウイルスベクターの使用によるものである。ウイルスベクターによる細胞感染は、標的細胞の大部分が核酸を得ることができるという利点がある。さらに、例えばウイルスベクターに含まれるcDNAにより、ウイルスベクター内にコードされた分子は、そのウイルスベクター核酸を取り込んだ細胞中で効果的に発現される。
【0145】
レトロウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターを、インビボ、特にヒトへの外来性遺伝子の輸送に対する組換え型遺伝子輸送系として使用できる。これらのベクターにより、遺伝子の細胞への効果的な輸送が提供され、輸送された核酸は宿主の染色体DNA中に安定的に挿入される。非複製型レトロウイルスのみを生成する特殊化した細胞株(「パッケージ細胞」と呼ばれる)の開発により、遺伝子治療に対するレトロウイルスの利用性が増し、および欠損性レトロウイルスは遺伝子治療を目的とした遺伝子輸送における使用を特徴とする(総説としてMiller, A.D. (1990) Blood 76:271を参照されたい)。ヘルパーウイルスを使用した、標準的な方法により標的細胞を感染させるために使用され得るビリオン中に非複製型レトロウイルスを詰め込むことができる。組換え型レトロウイルスの生成およびそのようなウイルスによりインビトロまたはインビボで細胞を感染するプロトコールを、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubel, F.M.ら(eds.) Greene Publishing Associates、(1989)、Sections 9.10-9.14および他の標準的な実験マニュアル中で見つけることができる。適したレトロウイルスの実施例には、当業者に周知のpLJ、pZIP、pWEおよびpEMが含まれる。狭宿主性および広宿主性レトロウイルス系の両方を調製するのに適したパッケージングウイルス細胞株の実施例には、ΨCrip、ΨCre、Ψ2およびΨAmが含まれる。インビトロおよび/またはインビボで、上皮細胞を含む多くの異なる細胞種に種々の遺伝子を導入するために、レトロウイルスが使用されてきた(例えば、Eglitisら(1985) Science 230:1395-1398; DanosおよびMulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:6460-6464; Wilsonら (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:3014-3018; Armentanoら(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6141-6145; Huberら (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8039-8043; Ferryら (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8377-8381; Chowdhuryら (1991) Science 254:1802-1805; van Beusechemら (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7640-7644; Kayら (1992) Human Gene Therapy 3:641-647; Daiら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10892-10895; Hwuら (1993) J. Immunol. 150:4104-4115; 米国特許第4,868,116号; 米国特許第4,980,286号; 国際公開公報第89/07136号; 国際公開公報第89/02468号; 国際公開公報第89/05345号; および国際公開公報第92/07573号を参照されたい)。
【0146】
本発明において有用な他のウイルス遺伝子輸送系は、アデノウイルス由来ベクターを使用するものである。アデノウイルスのゲノムを、これが関心のある遺伝子産物をコードし、発現するものの、正常なウイルス増殖サイクルにおけるその複製能という点に関して不活性化されるように、操作できる。例えば、Berknerら(1988) BioTechniques 6:616;Rosenfeldら(1991)Science 252:431-434; およびRosenfeldら(1992) Cell 68:143-155を参照されたい。アデノウイルス株Ad5型dl234または他のアデノウイルス株(例えば、Ad2、Ad3、Ad7等)由来の適当なアデノウイルスベクターは、当業者に周知である。組換え型アデノウイルスは、非分裂細胞に感染できないおよび上皮細胞を含む多種多様な細胞種に感染させるために使用できる(前記のRosenfeldら(1992))という点で、特定の環境において有利であり得る。さらに、ウイルス粒子は比較的安定であり並びに精製および濃縮しやすく、上記のように、感染範囲に影響が及ぶように改変できる。その上、導入されたアデノウイルスDNA(およびそこに含まれる外来DNA)は、宿主細胞のゲノム中に挿入されるのではなくエピソームのままであり、従って、導入されたDNAがホストゲノム中に挿入される(例えば、レトロウイルスDNA)原位置において挿入突然変異の結果として起こる可能性のある問題が回避される。さらに、アデノウイルスゲノムの外来DNAに対する輸送力は、他の遺伝子輸送ベクターに比べて大きい(最大8キロベースまで)(前記のBerknerら; Haj-Ahmand およびGraham (1986) J. Virol. 57:267)。
【0147】
対象遺伝子の輸送に有用な、さらに他のウイルスベクター系はアデノ随伴ウイルス(AAV)である。アデノ随伴ウイルスは、効果的な複製および増殖ライフサイクルのため、ヘルパーウイルスとして、アデノウイルスまたはヘルペスウイルスのような他のウイルスを必要とする天然に存在する欠損ウイルスである(総評として、Muzyczkaら (1992) Curr. Topics in Micro. and Immunol. 158:97-129を参照されたい)。それはまた、非分裂細胞中にそのDNAを挿入する可能性のある数少ないウイルスのうちの1つであり、および高頻度の安定的挿入を示す(例えば、Flotteら (1992) Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol. 7:349-356; Samulskiら(1989) J. Virol. 63:3822-3828;およびMcLaughlinら (1989) J. Virol. 62:1963-1973を参照されたい)。僅か300塩基対のAAVを含むベクターを詰め込むことができ、かつ統合できる。外来DNAに対する空間的余裕は、約4.5kbに限定される。細胞中へDNAを導入するために、Tratschinら (1985) Mol. Cell. Biol. 5:3251-3260に記載されるようなAAVベクターを使用できる。AAVベクターを用い、種々の核酸が種類の異なる細胞中に導入されてきた(例えば、Hermonatら(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6466-6470; Tratschinら (1985) Mol. Cell. Biol. 4:2072-2081; Wondisfordら (1988) Mol. Endocrinol. 2:32-39; Tratschinら (1984) J. Virol. 51:611-619;およびFlotteら (1993) J. Biol. Chem. 268:3781-3790を参照されたい)。
【0148】
ウイルス輸送法のほか、上記に説明されているもののように、動物組織中にTSP-1若しくはTSP-2ポリペプチド、断片、または類似体を発現させるため、同様にして非ウイルス法を使用できる。大部分の非ウイルス性遺伝子輸送法は、高分子の摂取および細胞内輸送に関して哺乳動物細胞により使用される通常の機構に依存している。好ましい態様として、本発明の非ウイルス性遺伝子輸送系は、標的細胞による対象となるTSP-1またはTSP-2遺伝子の摂取に関し、エンドサイトーシス経路に依存する。この種の例示的な遺伝子輸送系には、リポソーム由来の系、ポリリジン複合体、および人工ウイルス・エンベロープが含まれる。その他の態様には、Meuliら (2001) J Invest Dermatol. 116(1):131-135; Cohenら (2000) Gene Ther 7(22):1896-905;またはTamら (2000) Gene Ther 7(21): 1867-74に記載されているようなプラスミド注入系が含まれる。
【0149】
代表的な態様として、TSP-1若しくはTSP-2ポリペプチド、活性断片、または類似体をコードする遺伝子を、その表面に正電荷を有するリポソーム(例えば、リポフェクチン)および(選択的に)標的組織の細胞表面抗原に対する抗体で標識されたリポソーム中に取り込むことができる(Mizunoら (1992) No Shinkei Geka 20:547-551; 国際公開公報第91/06309号;日本国特許出願第1047381号;および欧州特許出願第EP-A-43075号)。
【0150】
臨床の場においては、治療のためのTSP-1またはTSP-2遺伝子の遺伝子輸送系を、それぞれの方法が当技術分野において周知である多くの方法のいずれかにより、患者に導入できる。例えば、遺伝子輸送系の医薬品を、例えば静脈注射により全身に導入でき、および遺伝子輸送媒体、その受容体遺伝子の発現を制御する転写調節配列による細胞種若しくは組織種発現、またはその組み合わせによって与えられるトランスフェクションの特異性から、標的細胞におけるタンパク質の特異的トランスフェクションが優位に起こる。その他の態様として、組換え遺伝子の初期輸送は、動物への導入をかなり局所的にすることで、より限定される。例えば、遺伝子輸送媒体はカテーテルにより(米国特許第5,328,470号を参照されたい)、または定位固定注射(stereotactic injection)により(例えばChenら (1994) PNAS 91:3054-3057)導入できる。
【0151】
遺伝子治療構築物の医薬品は、本質的に許容される賦形剤中の遺伝子輸送系から成ることができる、または遺伝子輸送媒体が埋め込まれた緩徐放出マトリックスを含むことができる。または、完全な遺伝子輸送系が遺伝子組換え細胞から原型を保ったまま作製され得る場合(例えばレトロウイルスベクター)、医薬品は遺伝子輸送系を作製する1つまたは複数の細胞を含むことができる。
【0152】
細胞治療
同様にして、細胞、例えば上皮細胞、例えば角化細胞に、TSP-1またはTSP-2の生成を調節するヌクレオチド配列、例えばTSP-1若しくはTSP-2ポリペプチドまたはその機能的断片若しくは類似体をコードするヌクレオチド配列、プロモーター配列、例えばTSP-1若しくはTSP-2遺伝子由来または他の遺伝子由来プロモーター配列;エンハンサー配列、例えば5’非翻訳領域(UTR)、例えばTSP-1若しくはTSP-2遺伝子由来または他の遺伝子由来5’UTR、3’UTR、例えばTSP-1若しくはTSP-2遺伝子由来または他の遺伝子由来3’UTR;ポリアデニル化部位;インスレーター配列;またはTSP-1若しくはTSP-2の発現を調節する他の配列を導入することにより、被験者のTSP-1またはTSP-2を増加させることができる。次に、細胞を被験者に導入できる。
【0153】
遺伝子操作された一次および二次細胞を種々の組織から得ることができ、およびこれには培養で増殖を維持できる細胞種が含まれる。例えば、一次および二次細胞には、繊維芽細胞、角化細胞、上皮細胞(例えば、乳房上皮細胞、腸上皮細胞)、内皮細胞、グリア細胞、神経細胞、血液の有形成分(例えば、リンパ球、骨髄細胞)、筋細胞(筋芽細胞)およびこれらの体細胞種の前駆体が含まれる。一次細胞は、遺伝子工学で作り変えられる一次および二次細胞を投与する個人から得ることが好ましい。しかし、一次細胞は同種の提供者(移植者以外)または他の種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、トリ、ヒツジ、ヤギ、ウマ)から得てもよい。
【0154】
「一次細胞」という語句には、脊椎動物の組織供給源から単離された細胞懸濁液に存在する(それらを培養基で培養する、即ち、培養皿または培養フラスコのような基質に付着する前の)細胞、組織(初めて培養基で培養される以前の細胞種、およびこれらの、これらの培養基で培養された細胞に由来する細胞懸濁液の両方)由来の移植片に存在する細胞が含まれる。「二次細胞」または「細胞株」という語句は、培養におけるその後の全段階にある細胞を示す。即ち、培養基で培養された一次細胞を培養基から初めて剥がし、および再び培養基で培養する(継代する)場合、これは本明細書では二次細胞として見なされ、その後に続く継代細胞も全て同様である。二次細胞は1回またはそれ以上の回数、継代された二次細胞から成る細胞株である。細胞株は以下の二次細胞から成る: 1) 1回またはそれ以上の回数、継代されている二次細胞; 2) 培養において有限回数の平均的集団倍化を示す二次細胞; 3) 接触阻害、足場依存的増殖(足場依存性は浮遊培養で増殖する細胞には当てはまらない)の特性を示す二次細胞;および4) 不死化されていない二次細胞。「クローン細胞株」は単一創始細胞由来の細胞株と定義される。「異種細胞株」は2つまたはそれ以上の創始細胞由来の細胞株と定義される。
【0155】
脊椎動物起源、特に哺乳動物由来の一次または二次細胞に、シグナルペプチドをコードする核酸配列を含む外来性核酸配列、および/または例えば、TSP-1若しくはTSP-2をコードする異種核酸配列でトランスフェクションでき、並びにコードされる産物を長期間に渡ってインビトロおよびインビボで、安定的におよび再現性よく生成できる。異種アミノ酸も同様にして、内在性TSP-1若しくはTSP-2配列を発現させる(例えば、誘導発現または上方制御)調節配列、例えばプロモーターとすることができる。外来性核酸配列を例えば、米国特許第5,641,670号に記載されているような相同組換えにより、一次または二次細胞中に導入でき、その内容は参照として本明細書に組み入れられる。
【0156】
トランスフェクトされた一次または二次細胞はまた、それらに選択可能な表現型を与え、同定および単離を容易とする選択マーカーをコードするDNAを含んでもよい。外来性合成DNAを安定的に発現するトランスフェクトされた一次および二次細胞、クローン細胞株並びにそのようなトランスフェクトされた細胞の異種細胞株を作製する方法、クローン異種細胞株(clonal heterogeneous cell strains)の作製方法、並びにトランスフェクトされた一次または二次細胞集団の使用による異常なまたは望ましくない状況の対処または予防方法は、本発明の一部である。
【0157】
一次細胞またはクローン性若しくは異種細胞株からなる二次細胞のトランスフェクション
パンチ生検のような標準的方法または関心のある一次細胞種の組織供給源を得る他の外科的方法により、脊椎動物の組織を得ることができる。例えば、繊維芽細胞または角化細胞の供給源として皮膚を得るために、パンチ生検が使用される。酵素消化または外移植のような周知の方法を用いて、組織から一次細胞混合物を得ることができる。酵素消化を使用する場合、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、ディスパーゼ、プロナーゼ、トリプシン、エラスターゼおよびキモトリプシンのような酵素を使用できる。
【0158】
結果として得られた一次細胞混合物に直接的にトランスフェクトできるまたはトランスフェクションを実行する前に、それを最初に培養し、培養基から剥がし、および再懸濁することができる。一次細胞または二次細胞を外来性核酸配列と、例えば、そのゲノム中への安定的な組み込みのために混合し、トランスフェクションを達成するために処理する。外来性核酸配列は選択的に選択マーカーをコードするDNAを含むことができる。外来性核酸配列および選択マーカーをコードするDNAは、別々のコンストラクトに存在してもまたは単一コンストラクトに存在してもよい。外来性DNAを含みおよび適切に発現している安定的にトランスフェクトされた細胞が少なくとも1つ作り出されることを確実とするため、適当量のDNAを使用する。一般的に、DNA約0.1〜500μgを使用する。
【0159】
本明細書では「トランスフェクション」という用語には、リン酸カルシウム若しくは塩化カルシウム沈殿法、マイクロインジェクション法、DEAE-デキストリン媒介のトランスフェクション法、リポフェクション法またはエレクトロポレーション法を含む、細胞中に外来性核酸を導入するための種々の方法が含まれる。
【0160】
エレクトロポレーションは、一次または二次細胞中にDNAコンストラクトを結果的に入れられるように、適当な電圧および電気容量(および対応時定数)にて実行される。広範囲の電圧(例えば、50〜2000ボルト)および対応する電気容量に渡って、エレクトロポレーションを実行できる。一般的に、総DNA約0.1〜500μgを使用する。
【0161】
細胞にトランスフェクトするため、リン酸カルシウム沈殿法、改変型リン酸カルシウム沈殿およびポリブレン沈殿法、リポソーム融合法並びに受容体媒介性遺伝子輸送法のような方法を使用できる。同様にして、マイクロインジェクションを用いて一次または二次細胞をトランスフェクトすることができる。次いで、安定的にトランスフェクトされた細胞を単離および培養できる並びに安定的にトランスフェクトされた二次細胞を増殖させ、トランスフェクトされた二次細胞のクローン細胞株を形成させる培養条件の下および十分な時間、継代培養できる。または、トランスフェクトされた2つ以上の細胞を培養および継代培養することにより、結果として異種細胞株が形成される。
【0162】
個人に効果的な量の治療タンパク質を提供するのに十分な大きさのクローン細胞株または異種細胞株のいずれかを形成させるのに十分な回数、トランスフェクトされた一次または二次細胞を倍化させる。一般的に、例えば、皮膚0.1cm2が生検材料でありおよび細胞1,000,000個が含まれると推測され、細胞1個がクローン細胞株を形成させるために使用されおよびトランスフェクトされた二次細胞1億個を形成させるために約27回倍化させる。異種細胞株がもともとトランスフェクトされた細胞集団約1,000,000個から形成される場合、トランスフェクトされた細胞1億個を形成させるのに必要とされる倍化は10回のみである。
【0163】
トランスフェクトされたクローン異種細胞株(clonal heterogeneous cell strains)において必要とされる細胞数は可変であり、トランスフェクト細胞の使用、トランスフェクトされた細胞中の外来性DNAの機能レベル、トランスフェクトされた細胞の移植部位(例えば、使用できる細胞数は移植の解剖学的部位により制限される)、および年齢、表面積、並びに患者の病態、に限定されないがこれらを含む、種々の要因に依存する。これらの要因を大局的に見ると、成長ホルモン単独欠損症を患うもののその他は健全な10kgの患者において、治療レベルのヒト成長ホルモンを輸送するために、トランスフェクトされた繊維芽細胞約1〜5億個が必要とされると思われる(これらの細胞容積は、ほぼ患者親指のちょうどその先端部の容積である)。
【0164】
トランスフェクトされた二次細胞のクローン細胞株または異種細胞株の移植
トランスフェクトされた細胞、例えば本明細書の記載の通り作製された細胞を、それが輸送される必要のある個人に導入できる。次いで、クローン細胞株または異種細胞株を個人に導入する。種々の投与経路および種々の部位(例えば、腎臓被膜下、皮下、中枢神経系(鞘内を含め)、血管内、肝内、内臓内(intrasplanchnic)、腹腔内(網嚢内(intraomental)を含め)、筋肉内移植)を使用できる。個人に移植されると、トランスフェクトされた細胞は異種DNAによりコードされる産物を生成するまたはそれ自身が異種DNAによる影響を受ける。例えば、脱毛症で苦しむ人がTSP-1またはTSP-2生成細胞の移植候補者である。
【0165】
その個人は小皮膚生検(small skin biopsy)を実施してもらうことができる。これは外来患者として実施してもらうことができる簡単な方法である。皮膚小片は、例えば、腕の下から得られ、および取り去るのに約1分必要とされる。その試料を処理し、結果として患者細胞(例えば、繊維芽細胞)が単離され、およびTSP-1若しくはTSP-2またはTSP-1若しくはTSP-2の生成を誘導する他のタンパク質若しくは分子を生成するように遺伝的に改変される。年齢、体重、患者の病態に基づき、必要とされる細胞数は大規模培養にて増やされる。全過程には4〜6週が必要となり、その終わりに、遺伝的に作り変えられた適当数の細胞を再度、外来患者としてその個人に導入する(例えば、それらを患者皮膚(例えば頭皮または顔の)下に、注入し戻すことにより)。その患者はもうしわを予防または減少させることが可能なTSP-1またはTSP-2を生成できる。
【0166】
ある者に対しては、この処置は1回であると思われおよび、他の者に対しては、細胞治療による処置は複数回必要とされると思われる。
【0167】
この実施例により示される通り、使用される細胞は一般的に患者特有の遺伝的に作り変えられた細胞である。しかし、同種の別の個人からまたは異なる種から細胞を得ることが可能である。そのような細胞の使用により、免疫抑制剤の投与、組織適合抗原の改変、または移植細胞の拒絶を防ぐための防護手段の使用が必要とされる場合がある。
【0168】
トランスフェクトされた一次または二次細胞を単独でまたはその細胞に対する免疫反応を抑制する防護壁若しくは薬剤と組み合わせ、移植患者に投与できる。例えば、患者の正常反応を抑制するまたは妨げるために、免疫抑制剤を患者に投与できる。免疫抑制剤は患者のT細胞/またはB細胞活性を抑制する免疫抑制剤であることが好ましい。そのような免疫抑制剤の実例は、商業的に入手可能である(例えば、サイクロスポリンAがSandoz Corp. East Hanover、NJから市販されている)。
【0169】
免疫抑制剤、例えば薬剤を所望の治療効果(例えば、細胞拒絶の抑制)を達成するのに十分な投薬量で患者に投与できる。免疫抑制剤の投薬量の範囲は、当技術分野において周知である(例えば、Freedら(1992) N. Engl. J. Med. 327:1549; Spencerら(1992) N. Engl. J. Med. 327:1541; Widnerら(1992) N. Engl. J. Med. 327:1556を参照されたい)。投薬量の数値は、個人の病態、年齢、性別、および体重のような要因に応じて変化する場合がある。
【0170】
患者のT細胞活性を阻害するために使用できるその他の薬剤は、抗体、またはその誘導体の断片である。インビボでT細胞を減少させるまたは一時差し押さえることができる抗体は、当技術分野において周知である。ポリクローナル抗血清、例えば、抗リンパ球血清を使用できる。または、1つまたは複数のモノクローナル抗体を使用できる。T細胞を減少させる好ましい抗体には、細胞表面上のCD2、CD3、CD4、CD8、CD40リガンドに結合するモノクローナル抗体が含まれる。そのような抗体は当技術分野において周知であり、および例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)から市販されている。ヒトT細胞上のCD3に結合する好ましい抗体は、OKT3(ATCC CRL 8001)である。
【0171】
移植患者内のT細胞を減少させる、一時差し押さえるまたは阻害する抗体を、移植における細胞拒絶を適当な時間、阻害する投与量で投与できる。抗体は薬学的に許容される希釈担体(例えば、食塩水)中にて静脈内投与されることが好ましい。
【0172】
被移植者の細胞に対する免疫反応を妨げるまたは抑制する他の方法は、免疫防護壁(immunobarrier)を使用するものである。本明細書で「免疫防護壁」は、投与細胞および患者の免疫反応に関連する細胞間の防護壁としての機能を果たす装置を指す。例えば、細胞を埋め込み型装置中にて投与できる。埋め込み型装置は、半透性防護壁(即ち、栄養素および産物を防護壁の内外に拡散させるが、より大きな免疫系成分、例えば抗体または補体の進入を防ぐもの)内に収容された細胞を含むことができる。埋め込み型装置には典型的に、基質、例えばヒドロゲル、生体適合性網状物、またはコア(その中に細胞が配置される)が含まれる。選択的に、半透性被覆剤によりゲルを封入できる。ゲル・コア内に配置する場合、投与細胞は免疫系細胞から隔離すべきである並びに宿主の細胞および細胞傷害性抗体から覆い隠すべきである。PLLまたはPLOのような選択性透過被覆剤を使用するのが好ましい。被覆剤は多くの場合、被移植者の免疫系成分が埋め込み型装置内の細胞に進入して破壊するのを防ぐ、孔を有する。
【0173】
多くの細胞封入法が当技術分野において周知である。例えば、生成細胞を封入するため、半透性の不水溶性ゲルを得るための水溶性増粘剤を用いた封入およびその他の封入法が米国特許第4,352,883号に開示されている。使用可能なその他の埋め込み型装置は、米国特許第5,084,350号、米国特許第5,427,935号、1995年7月27に公開された国際公開公報第95/19743号、米国特許第5,545,423号、米国特許第4,409,331号、米国特許第4,663,286号、および欧州特許第301,777号に開示されている。
【0174】
トランスフェクトされたまたは二次細胞を使用する利点は、個人に導入する細胞数を制御することにより、体内に輸送されるタンパク質量を制御できることである。さらに、多くの場合、もはやその産物の必要性がないトランスフェクトされた細胞を除去することが可能である。本発明のトランスフェクトされた一次または二次細胞の使用による治療のさらなる利点は、例えば、亜鉛、ステロイド、またはタンパク質、産物若しくは核酸産物の転写に影響を与えるまたは核酸産物の安定性に影響を与える物質の投与により、治療産物の生成を調節できることである。
【0175】
実施例
実施例1:長期UVB照射後の皮膚血管形成の亢進
UVB照射の10週後(累積照射量:5.65J/cm2)、皮膚損傷の程度に対するパラメーターとして皮膚表面の起伏(relief)を評価するために、UVB照射および非照射マウスの背中の皮膚からレプリカを得た。UVB照射マウスでは顕著なしわ形成が観察されたが、非照射対照マウスでは目に見えるしわは検出されなかった。皮膚裏面の顕微鏡検査により、UVB照射マウスにおいて、血管拡張および血管分岐を伴う皮下血管形成の増加が証明された。
【0176】
組織学的分析により、UVB照射マウスにおいて、真皮上部における炎症細胞の蓄積を伴う表皮、真皮および脂腺(36)の肥厚が示された。さらに、本発明者らは非照射対照皮膚で観察された規則正しい模様と比較して、UVB照射皮膚において断片化および低組織化コラーゲン繊維および弾性繊維を発見した。CD31に対する免疫染色により、非処理対照と比較して、UVB照射マウスの真皮における拡張血管数の増加が明らかとなった。これらの変化は乳頭真皮における、表皮直下の領域で最も顕著であった。増殖マーカーKi67および内皮結合分子CD31を識別化する免疫蛍光染色により、UVB照射皮膚における拡張血管中の増殖性内皮細胞数が大いに増加していることが明らかとなったが、対照皮膚では増殖性内皮細胞は殆ど検出されなかった。内皮細胞の最大増殖速度は、UVB照射皮膚の真皮上部で観察された。非照射表皮では、増殖性表皮角化細胞は基底層において選択的に検出された。対照的に、UVB照射後、非常に多くの増殖性角化細胞が過形成表皮の最上層に見出された。
【0177】
CD31を染色した組織切片を用いて、皮膚血管密度および大きさの、コンピュータ支援による定量的形態計測解析を実施した。長期UVB照射により、非照射対照に比べ、結果的に血管密度が有意(p<0.001)に増加した。UVB照射皮膚の血管はまた、その大きさが67%増加して有意(p<0.001)に大きくなり、血管により覆われる皮膚領域は130%を超えて増加(p<0.001)していた。
【0178】
実施例2:長期UVB照射後の表皮VEGF発現の亢進
長期UVB照射による皮膚のVEGF mRNA発現への影響を調べた。インサイチュー・ハイブリダイゼーションにより、長期UVB照射後、最上層の表皮角化細胞においてVEGF mRNA発現は有意に上昇しているが、UVB非照射マウスの皮膚ではVEGF mRNA発現は殆どまたは全く検出されないことが分かった。
【0179】
実施例3:TSP-1の過剰発現によりUVB誘導性皮膚損傷、しわ形成および血管形成が阻止される
長期UVB照射の影響に対する皮膚血管形成の生物学的重要性を特徴付けるため、内在性血管形成阻害因子TSP-1を皮膚特異的に過剰発現する形質転換マウスを、同じUVB照射計画にかけた。これらのマウスは以前に、詳細な特性が明らかにされており、強力な誘導性血管形成阻害を示す(24)。UVB照射の10週後(累積UVB照射量:6.52J/cm2)、野生型マウスでは全て、背側の皮膚においてしわ形成の増加
が示された。対照的に、TSP-1を過剰発現している形質転換マウスではしわ形成が殆どまたは全く観察されなかった。肉眼的には、K14/TSP-1形質転換マウスではまた、野生型同腹子に比べて、皮膚血管形成の減少が示された。
【0180】
組織学的分析により、野生型マウスに比べ、K14/TSP-1形質転換マウスではUVB誘導性の真皮および皮下組織の肥厚(しかし表皮のものではない)は、あまり顕著ではないことが明らかとなった。野生型マウスに比べ、K14/TSP-1形質転換マウスの真皮においては、炎症細胞の浸潤が付随して減少することもまた見出され、およびより規則的なコラーゲン繊維の整列および構造が見出された。さらに、皮膚血管形成はK14/TSP-1形質転換マウスではかなり減少していた。CD31染色皮膚切片の形態計測解析により、TSP-1形質転換マウスにおいて血管サイズの55%を超えるの減少(p<0.001)および血管により覆われる皮膚領域の有意な減少(p<0.001)が明らかとなった。TSP-1形質転換マウスでは血管密度の有意な減少は検出されなかった。CD31およびKi-67に対する二重免疫蛍光染色により、UVB照射された野生型同腹子に比べて、UVB照射されたTSP-1形質転換マウスの真皮において、増殖性内皮細胞数の著しい減少が証明された。さらに、CD31染色と組み合わせた、TUNELアッセイ法により、野生型同腹子に比べて、TSP-1形質転換マウスの皮膚においてアポトーシスを起こした内皮細胞数の増加が明らかとなった。
【0181】
実施例4:TSP-1の過剰発現によりUVB誘導性のMMP-9活性化が抑制される
マトリックスメタロプロテアーゼ-9(MMP-9)は、UVB誘導性の細胞外マトリクス成分の分解の調節に関与するとされ(35)、MMP-9活性はVEGFの生体内使用を制御することにより、血管形成に重要な役割を演じていることが最近、示唆されている(37)。野生型およびTSP-1形質転換マウスを背中の皮膚への単回UVB照射(126mJ/cm2)にかけ、およびゼラチン酵素電気泳動法により皮膚溶解物中のMMP-9活性を測定した。野生型マウスへの単回UVB照射により、24時間後に皮下血管形成が著しく亢進される結果となり、これはTSP-1形質転換マウスではあまり顕著ではなかった。ゼラチン酵素電気泳動法により、野生型およびTSP-1形質転換マウスの通常の皮膚におけるMMP-9活性レベルは等しいことが証明された。しかし、UVB照射後の24時間で、野生型マウスの皮膚ではMMP-9活性はかなり増加していたが、TSP-1形質転換マウスでは減少していた。
【0182】
実施例5:TSP-2ノックアウトマウスはしわ形成の増加を示す
長期UVB照射(累積UVB照射量:7.23J/cm2)により、野生型マウスに比べて、TSP-2欠損マウスでは著しいしわ形成が引き起こされる。野生型同腹子に比べて、長期UVB照射後のTSP-2欠損マウスでは皮下の血管拡張および血管分岐の亢進が見られた。
【0183】
ヘマトキシリン-エオシン染色により、野生型対照皮膚に比べて、長期UVB照射後のTSP-2欠損マウスの皮膚では表皮および真皮の肥厚が明らかとなった。トリクロム染色により、野生型マウスに比べて、長期UVB照射後のTSP-2欠損(マウス)の乳頭真皮におけるコラーゲン繊維組織の不規則性が証明された。CAE染色により、野生型マウスに比べて、TSP-2欠損マウスでは炎症細胞の浸潤増加が明らかとなった。
【0184】
CD31に対する免疫染色により、野生型同腹子に比べて、長期UVB照射後のTSP-2欠損マウスの全(真皮+皮下組織)皮膚においておよび真皮上部において、血管がより多くなりおよび拡張していることが明らかとなった。CD31染色切片のコンピュータ支援による画像解析により、野生型同腹子に比べて、長期UVB照射後のTSP-2欠損マウスの全皮膚において、血管サイズおよび血管密度が有意に増加していることが明らかとなった。長期UVB照射後のTSP-2欠損マウスにおいて、全皮膚における血管形成と同様に、表皮-真皮境界からの距離100μm内の、真皮上部において血管形成はまた、有意に増加していた。
【0185】
CD31およびBrdUに対する二重免疫蛍光染色により、野生型マウスに比べて、TSP-2欠損マウスの皮膚の真皮上部および真皮下部における増殖性内皮細胞(矢印)の数が著しく増加していることが明らかとなった。
【0186】
VEGFに対するインサイチュー・ハイブリダイゼーションにより、野生型の表皮ではVEGF mRNA発現は殆どないまたは全くないのに比べて、長期UVB照射後のTSP-2欠損マウスでは過形成表皮の基底部より上の角化細胞においてVEGF mRNA発現の亢進が示された。
【0187】
ゼラチン酵素電気泳動法により、非照射野生型マウスに比べて、UVB照射野生型マウスの皮膚においてMMP-9活性が強力に誘導されることが明らかである。長期UVB照射後のTSP-2欠損マウスおよび野生型マウス間でMMP-9活性の大きな相違は検出されなかった。
【0188】
実施例6:方法および材料
UVB 照射計画
最初の実験では、並列した4つの等間隔の蛍光ランプ(Elder Pharmaceuticals、Bryan、OH)を用いて、8週齢のメスの無毛Skh-1マウス(群あたりn=7)をUVB照射に曝した(25)。マウスの背側皮膚表面に0.35mW/cm2が供給されるように、ランプの高さを調整した。マウスに10週の間、毎週2回、0.5最小紅斑量(20mJ/cm2)の開始照射量から4.5 MEDの最大照射量まで0.5 MEDの増加量で徐々に増加させながら、UVBを照射した(26)。総累積UVB照射量は5.62J/cm2であった。急性の日焼け反応は観察されなかった。対照マウスに偽照射(sham-irradiated)した。さらなる実験では、8週齢のメスのK14/TSP-1形質転換マウス(24)またはFVB野生型対照(群あたりn=7)を合計12週間、上述のようにUVB照射処理した(累積UVB照射量6.52J/cm2)。12週間後、マウスを解剖し、および(27)に記載されているように、シリコン・ゴム(SILFLO; Flexico Developments Ltd、U.K.)を用いて皮膚レプリカを得た。背中の皮膚試料を(28)に記載されているように、液体窒素中で急速凍結(snap-frozen)するかまたは10%ホルムアルデヒドで固定した。全ての動物実験は研究用動物の取り扱いに関するマサチューセッツ総合病院分科委員会(Massachusetts General Hospital Subcommittee on Research Animal Care)
による承認を得た。
【0189】
CD31 に対する免疫組織化学および皮膚血管のコンピュータ支援による形態計測解析
ラット抗マウスCD31モノクローナル抗体(Pharmingen、San Diego、CA)を用い、(24)に記載されているように免疫組織化学染色を7μmの凍結切片で実施した。代表切片を5匹のUVB照射マウスからおよび5匹の同齢の非UVB照射対照マウスから得て、次いでニコン(Nikon)E-600顕微鏡(Nikon; Melville、NY)を用いて解析した。画像はスポットデジタルカメラ(Diagnostic Instruments、Sterling Heights、MI)により記録した、および形態計測解析は(24)に記載されているように、IP-LABソフトウェア(Scanalytics Inc、Fairfax、VA)を用いて実施した。各切片の異なる3視野を倍率60倍で調べ、表皮-真皮接合部からの距離100μm内の領域中の、真皮における1mm2あたりの血管数、平均血管サイズおよび血管により占められる相対領域を決定した。微細血管密度および血管サイズの相違を解析するために、両側独立スチューデントt検定を使用した。さらに、同じマウスの皮膚からパラフィン切片を得て、日常的に行われるヘマトキシリン-エオシン、ベルホエフの弾性(Verhoeff's elastic)およびワイゲルトのレゾルシン・フクシン(Weigert's resorcin fuchsin)染色を(29)に記載されているように実施した。
【0190】
増殖およびアポトーシスアッセイ法
内皮細胞の増殖を解析するために、ラット抗マウスCD31モノクローナル抗体およびウサギ抗Ki-67ポリクローナル抗体(Novocastra Laboratories、Burlingame、CA)を用い、内皮細胞マーカーCD31および増殖マーカーKi-67(30、31)に対する二重免疫蛍光染色を7μmの凍結切片で実施した。二次抗体として、FITC結合抗ラットIgG抗体およびテキサスレッド(Texas-Red)結合抗ウサギIgG抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories、West Grove、PA)を使用した(32)。代表切片を各実験群に対して5匹のマウスから得て、次いでNikon E-600顕微鏡を用いて解析した。同一視野で、CD31およびKi-67染色のデジタル画像を得て、次いで増殖性内皮細胞を明らかにするために重ね合わせた。アポトーシスを起こした内皮細胞を蛍光フラッグEL DNA断片化検出キット(Fluorescence-FragEL DNA fragmentation detection kit)(Oncogene、Cambridge、MA)および(24)に記載されているように、抗マウスCD31抗体をテキサスレッド結合抗ラットIgG抗体とともに用い、二重免疫蛍光法により検出した。
【0191】
インサイチュー・ハイブリダイゼーション
インサイチュー・ハイブリダイゼーションを(19)に記載されているように、パラフィン切片にて実施した。簡単に言えば、パラフィンを除去するためにスライドをキシレンに通して処理し、次に順次、段階的アルコール; 0.2M HCl; プロテイナーゼK(3μg/ml)を添加したトリス/EDTA; 0.2%グリシン; リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中の4%パラホルムアルデヒド溶液; 1/200(vol/vol)無水酢酸を含有する0.1Mトリエタノールアミン;および2×SSCに通して処理した。スライドを以下の混合物中で35S標識リボプローブとともに52℃にて一晩ハイブリダイズした; 0.3M NaCl、0.01M トリス(pH7.6)、5mM EDTA、50%ホルムアミド、10%硫酸デキストラン、0.1mg/ml酵母tRNA、および0.01Mジチオスレイトール。ハイブリダイゼーション後の洗浄には、65℃での2×SSC/50%ホルムアミド/10mMジチオスレイトールおよび2×SSCが含まれた。次いで、0.3M酢酸アンモニウムを含有する段階的アルコールに通してスライドを脱水し、乾燥させ、コダック(Kodak)NTB2乳剤で表面を覆い、および4℃の暗所に2週間保管する。乳剤をコダック19現像液で現像し、およびスライドをヘマトキシリンで対比染色した。VEGFに対するアンチセンスおよびセンス一本鎖35S標識RNAプローブを393塩基対のラットVEGF cDNA断片(12)から調製し、pGEM-3Z(Promega)にクローニングした。
【0192】
ゼラチン酵素電気泳動法
野生型FVBマウスおよび形質転換マウス(1群あたりn=4)の毛を剃った背中の皮膚を、単回UVB照射(126mJ/cm2)に曝した。24時間後、マウスを解剖し、背中の皮膚試料を切除しおよび抽出緩衝液(0.05M トリス/pH7.5、0.2M NaCl、5mM CaCl2、0.1% トライトン(Triton)X-100)中で均質化した。遠心分離後、ゼラチン酵素電気泳動法のため上清を回収した。酵素電気泳動法は、小さな改変を加えつつ(33、34)に記載されているように実施した。簡単に言えば、皮膚溶解物を非還元性4×SDSサンプル緩衝液(0.5M トリス-HCl/pH6.8、0.02%ブロモフェノールブルー、40%(v/v)グリセロール、3% SDS)に再懸濁させ、および0.1%ブタ皮膚ゼラチン(SIGMA)を含有するSDSポリアクリルアミドゲルに負荷した。各タンパク質溶解物20μgをSDS-PAGEにかけた。SDSを除去するために、ゲルを2.5% トライトン X-100でインキュベートし、次いでインキュベーション緩衝液(0.05M トリス-HCl/pH8.0、5mM CaCl2、5uM ZnCl)で一晩、インキュベートした。次に、ゲルを0.5%クマシー・ブリリアント・ブルーR-250/30%メタノール/10%酢酸溶液で染色し、引き続き30%メタノール/10%酢酸溶液を用いて脱色した。MMP-9活性は分子量92kDaのバンドとして検出された(35)。
【0193】
【0194】
その他の態様
本発明をその詳細な説明とともに説明してきたが、前述の説明および実施例は本発明を説明することを意図するものであって、本発明の範囲を限定するものではなく、それは付記された特許請求の範囲により定義されるものと理解されるべきである。その他の側面、利点、および変更は特許請求の範囲内である。
【0195】
本明細書に引用される特許および文献は全て、参照としてその全体において本明細書に組み入れられる。その他の態様は特許請求の範囲内である。
Claims (22)
- 以下の段階を含む、患者における長期UVB誘導性のしわの予防法:
しわの予防を必要とする患者を同定する段階;および
患者皮膚における血管形成を阻害することにより、患者における長期UVB誘導性のしわを予防する段階。 - 患者における血管形成がTSP-2またはTSP-1活性の増大により阻害される、請求項1記載の方法。
- 抗血管形成因子を誘導する化合物を患者に投与することにより血管形成が阻害される、請求項1記載の方法。
- 抗血管形成因子がTSP-1またはTSP-2である、請求項3記載の方法。
- 血管形成阻害因子またはしわを減少させる若しくは予防するのに十分量の血管形成阻害因子を誘導する薬剤を含有する組成物を患者に投与することを含む、患者における長期UVB誘導性のしわの予防または治療法。
- しわが自然光に対する曝露により引き起こされる、請求項5記載の方法。
- 血管形成阻害因子が局所的に投与される、請求項5記載の方法。
- 血管形成阻害因子が無菌性組成物として与えられる、請求項5記載の方法。
- 血管形成阻害因子がTSP-2またはTSP-1である、請求項5記載の方法。
- 血管形成阻害因子または血管形成阻害因子を誘導する薬剤を含有する長期UVB誘導性のしわを予防または治療するための組成物;および薬学的に許容される担体。
- 血管形成阻害因子がTSP-2またはTSP-1である、請求項10記載の組成物。
- 化粧品原料がさらに含まれる、請求項10記載の組成物。
- 化粧品原料が芳香剤である、請求項12記載の組成物。
- 化粧品原料が日焼け止め剤である、請求項12記載の組成物。
- 以下の段階を含む、患者に対する長期UVB誘導性のしわの予防法:
患者に血管形成阻害因子または血管形成阻害因子を誘導する薬剤を含有する組成物を供給する段階;および
患者にしわを予防するための組成物の使用説明を提供する段階。 - 血管形成阻害因子がTSP-2またはTSP-1である、請求項15記載の方法。
- 日光曝露前に組成物を皮膚に塗布する指示が説明に含まれる、請求項15記載の方法。
- 組成物に化粧品原料がさらに含まれる、請求項15記載の方法。
- 患者における長期UVB誘導性のしわを予防するためのキットであって、以下を含むキット:
血管形成阻害因子または血管形成阻害因子を誘導する薬剤を含有する組成物;および
しわを予防するための組成物の使用説明。 - 血管形成阻害因子がTSP-1またはTSP-2である、請求項19記載のキット。
- 組成物に化粧品原料がさらに含まれる、請求項19記載のキット。
- 日光曝露前若しくは日光曝露時に組成物を皮膚に塗布する指示が説明に含まれる、請求項19記載のキット。
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