JP2004521650A - ミルクおよびカゼイン塩からカゼイン分画を抽出する方法、および新規生成物の製造方法 - Google Patents

ミルクおよびカゼイン塩からカゼイン分画を抽出する方法、および新規生成物の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004521650A
JP2004521650A JP2003509871A JP2003509871A JP2004521650A JP 2004521650 A JP2004521650 A JP 2004521650A JP 2003509871 A JP2003509871 A JP 2003509871A JP 2003509871 A JP2003509871 A JP 2003509871A JP 2004521650 A JP2004521650 A JP 2004521650A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
casein
fraction
milk
solution
purified protein
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003509871A
Other languages
English (en)
Inventor
ロー,アンドルー
リーバー,ジェフ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hannah Research Institute
Original Assignee
Hannah Research Institute
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hannah Research Institute filed Critical Hannah Research Institute
Publication of JP2004521650A publication Critical patent/JP2004521650A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23JPROTEIN COMPOSITIONS FOR FOODSTUFFS; WORKING-UP PROTEINS FOR FOODSTUFFS; PHOSPHATIDE COMPOSITIONS FOR FOODSTUFFS
    • A23J1/00Obtaining protein compositions for foodstuffs; Bulk opening of eggs and separation of yolks from whites
    • A23J1/20Obtaining protein compositions for foodstuffs; Bulk opening of eggs and separation of yolks from whites from milk, e.g. casein; from whey
    • A23J1/202Casein or caseinates
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23JPROTEIN COMPOSITIONS FOR FOODSTUFFS; WORKING-UP PROTEINS FOR FOODSTUFFS; PHOSPHATIDE COMPOSITIONS FOR FOODSTUFFS
    • A23J1/00Obtaining protein compositions for foodstuffs; Bulk opening of eggs and separation of yolks from whites
    • A23J1/20Obtaining protein compositions for foodstuffs; Bulk opening of eggs and separation of yolks from whites from milk, e.g. casein; from whey
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23JPROTEIN COMPOSITIONS FOR FOODSTUFFS; WORKING-UP PROTEINS FOR FOODSTUFFS; PHOSPHATIDE COMPOSITIONS FOR FOODSTUFFS
    • A23J3/00Working-up of proteins for foodstuffs
    • A23J3/04Animal proteins
    • A23J3/08Dairy proteins
    • A23J3/10Casein
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23LFOODS, FOODSTUFFS, OR NON-ALCOHOLIC BEVERAGES, NOT COVERED BY SUBCLASSES A21D OR A23B-A23J; THEIR PREPARATION OR TREATMENT, e.g. COOKING, MODIFICATION OF NUTRITIVE QUALITIES, PHYSICAL TREATMENT; PRESERVATION OF FOODS OR FOODSTUFFS, IN GENERAL
    • A23L33/00Modifying nutritive qualities of foods; Dietetic products; Preparation or treatment thereof
    • A23L33/10Modifying nutritive qualities of foods; Dietetic products; Preparation or treatment thereof using additives
    • A23L33/17Amino acids, peptides or proteins
    • A23L33/19Dairy proteins
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P3/00Drugs for disorders of the metabolism

Abstract

【課題】アルカリpH域においてカルシウム塩を添加することによりスキムミルクまたはカゼイン塩からカゼイン分画を選択的に沈殿させるための方法。
【解決手段】カゼインを分画して、αS−カゼインとβ−カゼインの分画を生成する、またκ−カゼイン高濃縮生成物を調整する。κ−カゼインをさらに加工してカゼイノマクロペプチド(CMP)を生成することができる。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明はアルカリpH域でカルシウム塩を添加することにより、スキムミルクまたはカゼイン塩よりカゼイン分画を選択的に沈殿させるための新規方法に関する。
【0002】
具体的には、本発明はα−カゼインおよびβ−カゼインの精製分画の調製方法、および初のκ−カゼイン高濃縮分画の調製方法に関する。この生成物は食品への使用または新規食品材料の調製に好適であり、この方法は工業規模で使用できる。
【背景技術】
【0003】
精製カゼイン分画には独特の性質があり、乳化剤や気泡の安定化、フェニールケトン尿症(PKU)などの代謝性疾患患者への使用に好適な特殊調製粉乳および調剤、ならびに食用コーティングや生分解性プラスチックの製造を含む、広い利用範囲を有する。
【0004】
また分画は、新しい味のチーズ、栄養補助食品および広範な生理活性ペプチドを製造する、タンパク質限定加水分解を含む各種処理の出発原料として特に好適である。生成物としてはリンペプチドおよび抗菌薬、降圧剤、免疫調節、抗血栓剤およびオピオイドなどの各機能を有するその他生理活性ペプチドが挙げられる。
【0005】
乳製品はヒトの食物の重要な一部であり、1998年の世界全体の牛乳生産量は約5700万トンである。ミルク自体は比較的複雑な混合物で、その主要成分は脂肪、ミネラル、糖(乳糖)およびタンパク質である。ミルク内のタンパク質は約35g/Lの濃度で含まれており、便宜的に2つの主要部類、すなわちチーズ製造の過程に於いて凝乳内に保持されるカゼインと残留液体の中に存在する乳精タンパク質とに分けることができる。
【0006】
カゼインはミルクに含まれるタンパク質の80%を占め、多量のカルシウムおよびリン酸塩と共にミクロン以下の大きさのコロイド状粒子となるが、これはカゼインミセルと呼ばれている。ミルクの外見が、独特の白色なのは、カゼインミセルが光を散乱させるためである。ミルクの安定性にはカゼインミセルの完全性が極めて重要であり、ミルクから作られる製品の性質は、ある程度ミセルの特性に左右される。例えばチーズの硬さは、原料となるミルクのミセルの平均直径と直接相関関係にあることが知られている。1998年の世界全体のチーズ生産量は約1500万トンと推定されている。乳タンパク質は液体乳としてだけではなく、様々な程度の加工製品の成分としてますます消費されるようになっている。加工の度合は酸性化によりミセルを誘導し凝集させるヨーグルトやコテージチーズ製造から、乳タンパク質分画をソースやスプレッドの中に取り込ませるものまで様々である。
【0007】
ミルクをpH4.6まで酸性化すると、リン酸カルシウムがカゼインミセルから溶け出してミセル構造が破壊され、カゼインの凝集および沈殿が起こる。この方法はカゼインナトリウムの製造に用いられるが、カゼインナトリウムは水酸化ナトリウムを添加してpHを約7.0にし、水溶液に沈殿した酸カゼインを再懸濁してから乾燥することで調製される。
【0008】
複数種の特性を持った、カゼインカルシウムまたはカゼイン酸アンモニウムなどの他のカゼイン塩は、適切なカルシウムまたは水酸化アンモニウムを使用してカゼインをpH7.0に調製することで得られる。カゼインおよびカゼイン塩の世界全体の年間生産量はおおよそ25万トンである。カゼイン塩はそれらの優れた発泡、乳化および水結合特性を利用して各種加工食品の製造に用いられている。
【0009】
牛乳のカゼインは4種類の異なるタンパク質、即ちκ−、β−、αs1−およびαs2−カゼインから成る。全カゼインの構成は、平均的にはκ−、11.0%;β−、35.0%;αS −、36.0%およびαs2−、10.0%であり、残りは主要カゼインの分解産物である。各種カゼインは極めて類似した分子量と等電点を有しており、Ca2+および無機リン酸に対し強い親和力があるが、それらの持つアミノ酸配列と特性は全く異なっている。
【0010】
生合成後、全てのカゼインは特徴的なトリペプチド配列の−Ser/Thr−X−A内のセリンアミノ酸残基および時としてスレオニンアミノ酸残基位置でリン酸化されるが、この場合のXは任意のアミノ酸残基を表し、AはAsp、Glu、SerPまたはThrPなどの酸性アミノ酸残基を表している。これらリン酸塩の中心は重要であり、それらはリン酸カルシウムとの結合およびカゼインミセル構造の維持に関与している。このように、栄養素に重要なタンパク質とリン酸タンパク質は、ミルク内で安定した高濃度で維持される。αs1−およびαs2−カゼインは、その構造内に最も多くのリン酸セリン基を有しており、アルカリpH域に於ける正味負電荷が最も高く、Ca2+に対し最も強い親和性を有している。β-カゼインはこれらの点では中間的であり、一方κ−カゼインはセリンリン酸基を1個しか持たず、負電荷が最も低く、そしてCa2+に対する親和性は最も弱い。
グループとしてのカゼインは極めて疎水性が強く、ミセル構造が破壊された場合には水溶液中で凝集する傾向が強く、最も疎水性が強いのはβ−カゼインで、αs1−およびαs2−カゼインは中間であり、そしてκ−カゼインの疎水性が最も弱い。κ−カゼインはまたミルク中に於いて1つに繋がったジスルフィド結合ポリマーになるという点でも他のカゼインと異なり、さらに炭水化物側鎖も含んでいる。
【0011】
カゼインは開放構造を有しているためタンパク質分解を受けやすいが、様々なタンパク質分解酵素に対し異なる感受性を示す。例えばβ−およびαS −カゼインは他のカゼインに比べ、ミルク中に存在するプラスミンの作用を受けやすい。κ−カゼインはまたキモシンの特異的タンパク質分解も受けやすいが、これがチーズ製造中に生じるレンネット処理の基礎となっている。ミセル表面から突出し、通常ミセルの安定性を維持しているκ−カゼインの親水性部分を分離すると、残ったカゼインが凝集して凝乳を形成することができる。乳精中に分断されたκ−カゼインの断片−カゼイノマクロペプチド(CMP)−は独特の特徴を有しており、芳香族アミノ酸を含まないことから遺伝性代謝障害であるフェニールケトン尿症(PKU)患者向けの食用タンパク質として有用である。
【0012】
特にκ−カゼイン分画は、酵素であるキモシンにより特異な方法で明確に画定される2つの部分、即ちパラκ−カゼインとCMPに分解される点で例外的なカゼイン種である。CMPには有益な薬理学的特性があると報告されている。具体的には、CMPは芳香族アミノ酸を含まず、とりわけフェニルアラニンを含まない。このことは、CMPがPKU患者向け必須タンパク質の発生源であることから、特に重要である。PKUは、患者が芳香族アミノ酸であるフェニルアラニンを代謝できない病気である。この病気は、フェニルアラニンを摂取すると、そのフェニルアラニンが血流や脳組織内に蓄積して最終的に重症の精神障害を起こすことがある。この病気は重篤であり、英国では全ての新生児に対して、生後間もなくこの病気を発見することで、食生活を変更しフェニルアラニンを排除する処置のためのスクリーニングが日常的に行なわれている。しかし、このアミノ酸を全く含まないことが確認されている天然タンパク質は殆ど無い。その結果、PKU患者の栄養所要量は特殊な酵素処理によりフェニルアラニンを除去したアミノ酸混合物によってまかなわれている。これら混合物は栄養素としては相対的に有効であるが、製造コストが高く、味も悪い。
【0013】
しかしCMPをここに記載するκ−カゼイン分画よって製造すれば、フェニルアラニンを摂取する付随的危険性の無い、実用的な必須アミノ酸の代替供給源となる必須アミノ酸代替供給源となる。
【0014】
カゼイン製造の従来技術
4種類のカゼイン、即ちκ−、β−、αS −およびαS −カゼインは、ミルクの中でリン酸カルシウムの微粒子と密に結合してミセルを形成している。カゼインを分画するには、酸性化、レネット処理、冷却またはキレート剤の添加の組み合わせによって、少なくともこのミセル構造の一部を破壊しなければならない。カゼインは元来疎水性が強いため、ミセルから一度分離したら、カオトロピック剤を添加するか冷却して再凝集を防ぐ必要がある。その結果、各種カゼインをそれぞれの正味負電荷、Caに対する親和性、または疎水性の差に基づいて分離することができる。
これら4種類の主要カゼインを分離するために、ラボスケールで最も広く用いられている技術が、陰イオン交換クロマトグラフィである。各種カゼインの分離は、主にアルカリpH域に於けるタンパク質の正味負電荷と正の電荷を持つカラム媒体に対する親和性に依存する。分離する全ての場合において、高濃度(>3.3M)の尿素などのカオトロピック媒体中においてカゼインが分離していること、および2−メルカプトエターノールのような還元剤を介在させて、一連のκ−カゼインポリマー中のジスルフィド結合を還元することが求められる(JOURNAL OFDAIRY SCIENCE、49巻、1966年、792〜795頁。Thompson、M.P.「2−メルカプトエタノール存在下でのカゼインのDEAE−セルロース−尿素クロマトグラフィ(DEAE−Cellulose−urea Chromatography of casein in the presence of 2−mercaptoethanol)」。カラム媒体の分離および流れ特性は長年に亘り改良されてきたが、この技術を高めることは容易ではない。
【0015】
更に、分画を徹底的に透析した場合でも有害物質が一部残留するため、このカゼイン分画の食物への使用は好適ではない。
【0016】
ラボスケールでの全カゼインからの主要カゼインの分離は、酸性pH域に於けるカゼインの正味陽電荷と負電荷のカラム媒体へのそれらの結合に基づく陽イオン交換クロマトグラフィを使用しても達成できる(JOURNAL OF DAIRY RESEARCH、36巻、1969年、259〜268頁Annan、W.D.とManson、W。「牛乳のα−カゼイン複合体の分画化(A fractionation of the αs−casein complex of cows’milik)」;JOURNAL OF DAIRY RESEARCH 59巻、1992年、557〜561頁。Beaver、J.とLaw、AJR。「陽イオン交換樹脂によるウシカゼインの分取スケール精製(Preparative−scale purification of bovine caseins on a cation−exchange resin)」。
【0017】
陽イオン交換クロマトグラフィの改良は容易ではなく、高濃度(>3.3M)の尿素のような解離剤の存在および2−メルカプトエタノールのような物質での前処理を必要とする。従ってこのカゼイン分画は人間への使用に適していない。
【0018】
カゼインの部分分画に使用されることがある他の実験室方式は、全カゼインにカオトロピック剤として高濃度尿素を添加し各種カゼインを分離させる方法を包む。続いて尿素中の溶解度の違いに基づいてα−、β−およびκ−カゼイン成分の粗分離が得られる(JOURNAL OF DAIRY CHEMISTRY 46巻、1963年、1183〜1188頁。Zittle、CA.とCuster、J.H。「α−カゼインおよびκ−カゼインの精製と特性(Purification and some properties of α−casein and κ−casein)」。
【0019】
カゼインの分離に極めて高濃度の尿素(6.6M)が必要なことから、これらの分離を経済的に大規模に行うことは現実的でなく、またその生成物は食品材料として適切ではない。
【0020】
主要カゼインの粗分画化はまた、各種塩存在下でのそれらのエタノール溶解性によって得ることもできる(JOURNAL OF DAIRY SCIENCE 35巻、1952年、272〜281頁。Hipp、N.J.、Groves、M.L.、Custer、J.M.およびMcMeekin、T.L。「α−、β−およびγ−カゼインの分離(Separation of α−、β−and γ−casein)」。
【0021】
α−およびβ−カゼインを含む混合物からκ−カゼインの精製分画を得るために、この方法の改良法が用いられてきた。(BIOCHIMICA BIOPHYSICA ACTA 47巻、1961年、240〜242頁。McKenzie、H.A.とWake、R.G。「κ−カゼイン分離に関する改良法(An improved method for the isolation of κ−casein)」、BIOCHEMISTRY 9巻、1970年、2807〜2813頁。Talbot、BとWaugh、D.F。「モノマー型および共有結合ポリマー型κ−カゼインのミセル形成特性(Micelle−forming characteristics of monomeric and covalent polymeric κ−caseins)」。これらの方法は高濃度のエタノールを必要とし、使用する塩の大部分は有毒である。
【0022】
β−カゼインは他の主要カゼインに比べより疎水性が強く、疎水的相互作用が弱い場合には、その等電点においてでも低温で解離する傾向がある。
【0023】
従ってβ−カゼインはpH4.5および2℃で他のカゼインを等電点沈殿させ、そして20℃に温めることで上清からβ−カゼインを沈殿させることにより、カゼインナトリウム液から調製できる(JOURNAL OF AMERICAN CHEMICAL SOCIETY 67巻、1944年、1725〜1731頁。Warner、RC。
【0024】
「α−およびβ−カゼインの分離(Separation of α− and β−cassein)」。
ミルクを冷却すると、特に酸性pH域で冷却すると、一部のカゼイン、特にβ−カゼインがミセルから分離する。そうすることでβ−カゼインに富む液相を他のβ−カゼイン−固相から分離することができる。このレンネットカゼイン(チーズ製造の第1段階で得られる固体)から出発するβ−カゼインの低温誘導可溶化は、すでに公表されている(特許番号WO9406306、「β−カゼイン強化製品の製造方法(A process for producing beta−enriched products)」。Ram、S.、Loh、DW.、Love、DC.とDudley、EP。;特許番号US5397577「ベータカゼインを得る方法’Method for obtaining beta casein)」 Le Magnen、C.とMaugas J−J。)。
【0025】
特許WO9406306は、pH4から5に酸性化し、−2から10℃に冷却することでレンネットカゼイン懸濁液または溶液からβ−カゼインを抽出する方法を記載している。2種類の相が形成されるが、そのうち液相はβ−カゼインを含んでおり、固相はその他のαS1−およびκ−カゼインの混合体であり、β−カゼインは実質的に含んでいない。
【0026】
特許WO9406306はカゼイン供給原料のスラリーをpH3.5〜8.0の間で適切な時間低温で保ち、このスラリーをβ−カゼインの含有量が少ない固相とβ−カゼインに富む液相の2相に分離することでβ−カゼインの部分抽出を行う方法を記載している。
【0027】
特許FR2592769(「ベータカゼインに富む物質の製造方法、この方法を実行するための装置、およびこの方法で得た生成物の食品および医薬品産業での食品材料、補助食品または添加物としての応用(Process for producing a material enriched in beta−casein, apparatus for implementing this process, and application of the products obtained by this process as foodstuffs, food supplements or additives in the food and pharmaceutical industries) 」Terre、E.、Maubois、J−L.、Brule、G.とAlice、P。)はミルクをカルシウム錯化剤で処理するか、またはカゼイン全てを重合させる作用物質でカゼイン塩溶液を処理してから0℃から−7℃に冷却し、そして材料を接線流のもとで無機膜でマイクロフィルトレーションすることによってβカゼインの濃縮分画と、これに対応する低含有分画を製造する方法を記載している。マイクロフィルトレーション物質ではβ−カゼインが濃縮され、保持液含有量は激減している。
【0028】
低温でのマイクロフィルトレーションは非常に遅いため、この方法を工業利用する魅力は少ない。
【0029】
カゼインの部分的分離は中性pH域にて塩化カルシウムをミルクまたはカゼイン塩に添加することにより、ラボスケールでは得ることができる(JOURNALOF AMERICAN CHEMICAL SOCIETY 78巻、1956年、4576〜4582頁。Waugh、DFとvon Hippel、PH。「κ−カゼインおよびカゼインミセルの安定化(κ−Casein and the stabilization of casein micelles);BIOCHIMICA BIOPHYSICA ACTA 47巻、1961年、240〜242頁。McKenzie、HAとWake、RG。「κ−カゼイン分離の改良法(An improved method for the isolation of κ−casein)」。いずれの方法もα−およびβ−カゼインの沈殿とκ−、α−およびβ−カゼインの混合体を含む上清を生じる。これらの方法には、上清から微小沈殿物を分離するために高速遠心分離が、そしてκ−カゼイン濃縮分画から過剰の塩化カルシウムを取り除くために透析が必要であるという欠点があり、そのため容易に改良することができない。高濃度の塩化カルシウムを使用すると、κ−カゼイン濃縮分画の回収が困難になるが、これはカゼインが通常の等電点沈殿をしないからである。また、過剰のカルシウムを除くために有毒であるシュウ酸カリウムを添加すると、食品材料として分画を使用する妨げとなる。
【0030】
従って、選択的カルシウム沈殿を含む従来のカゼイン分画法は中性pH域で実施されてきた(JOURNAL OF AMERICAN CHEMICAL SOCIETY 78巻、1956年、4576〜4582頁。Waugh、DFとvon Hippel、PH.「κ−カゼインおよびカゼインミセルの安定化(κ−Casein and the stabilization of casein micelles);BIOCHIM.
【0031】
BIOPHYS.ACTA 47巻、1961年、240〜242頁。McKenzie、HAとWake、RG。「κ−カゼイン分離の改良法(An improved method for the isolation of κ−casein)」。これらの方法は、ミルクまたはカゼイン塩にそれぞれ7.0近くで塩化カルシウムを加えてκ−カゼインを得る部分的分離法を記載している。いずれの方法も本アルカリ沈殿法(0.059〜0.071M)に比べ高濃度(0.25〜0.36M)の塩化カルシウムを必要とし、そしてα−およびβ−カゼインが容易に沈殿しないために高速遠心分離が必要であった。
【0032】
また上清に高濃度の塩化カルシウムが含まれるため、次のκ−カゼイン分画の酸沈殿を妨害し、そのためタンパク質の回収前にカルシウムをキレート化するためにシュウ酸を添加し透析する必要があった。従って、この方法を改良することは不可能であり、その生成物はヒトが摂取するのには不適であった。
【0033】
各カゼイン成分は疎水性が強いため、各タンパク質には食品および医薬品産業が関心を示すような固有の機能特性があるものの、大規模にカゼインを分画することは困難である(PROCEEDINGS OF THE 25th INTERNATIONAL DAIRYCONGRESS、1998年、74〜86頁。Moubois、J.−L.「ミルクタンパク質の分画(Fractionation of milk proteins)」。そのため現在では、カゼインは個別の成分別ではなくむしろ4種類のタンパク質の混合物として用いられることが多い。このタンパク質混合体を簡単で安価に分画できる方法があれば、現在高価であるためにラボスケール以外での使用が妨げられている成分を食品および医薬品製造者が利用可能になるので、有益である。本発明の目的は、精製された各カゼイン分画が食品もしくは新規食品に、または機能性食品、リンペプチドおよびその他生理活性ペプチドの調製に使用するのに好適な形に工業規模で製造できる方法を提供することである。
【0034】
本発明はミルクまたはカゼイン塩にアルカリpH域にて塩化カルシウムを添加することにより、カゼインを分画することを含む。アルカリpH域にて選択的沈殿を行うことの利点は、カルシウム感受性の強いα−およびβ−カゼインがより容易に沈殿し、高速遠心分離を経ずに得ることができることである。また、アルカリpH域で必要とされるカルシウム塩の濃度がより低く、そして有毒なキレート剤を使用することなく、あるいは透析を行うことなしに酸沈殿によりκ−カゼイン濃縮分画を得ることができる。本発明の方法は、中性pH域で行う方法と異なり工業規模で実施することが可能であり、その生成物は食品および新規食品材料への使用に好適であり、そして機能性食品、リンペプチドおよび様々な生理活性ペプチドを調製するための出発材料として好適である。
【0035】
更に、本明細書記載の方法により乳精タンパク質、カゼインおよびミルクや乳精中にあるプロテオースペプトンの混合物からCMPを効率的実用的かつ安価に分離することができる。従来のCMP製造法は多くの不純物を含むκ−カゼイン調製物を使用している。例えばスキムミルクから製造されるκ−カゼイン調製物は、変性した低温のβ−ラクトグロブリンを含む。一方、κ−カゼイン調製物が全カゼイン(典型的にはナトリウムまたはカリウム塩)から作られたのであれば、その調製物は少量のα−およびβ−カゼインを含んでいる。
【0036】
キモシンを用いてκ−カゼインを加水分解してCMPを形成している間には、制限タンパク分解汚染物が発生することがある。その結果、最終調整物がフェニルアラニンを含むペプチドによって汚染され、その為にPKU患者によるこの調製物の摂取が不適切になる危険性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
従って本発明の目的としては:
ミルクから精製カゼイン分画およびβ−ラクトグロブリンを抽出し、タンパク質分画だけでなくβ−ラクトグロブリンを部分的に除去した酸性乳精を得る新規の方法を考案すること。この方法は工業規模での使用が可能で、得られたタンパク質分画および酸性乳精は食品内での使用に、または母乳化乳幼児用調製粉乳、チーズ、フレーバー乳化剤、食用コーティング剤および機能性食品といった新規食品材料の調製に関し好適である。
【0038】
精製分画はまた生体分解性プラスチック、リンペプチドおよび、その他生理活性ペプチドの製造に使用できる。
【0039】
カゼイン塩より精製カゼイン分画を抽出する新規方法を考案すること。この方法は工業規模での使用が可能で、そのカゼイン分画は上記の食品、新規食品、機能性食品および生物医学的応用に好適である。
【0040】
代謝性疾患であるフェニールケトン尿症患者への使用に好適なCMPを製造する新規方法を考案すること。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本書に於いては、カゼインミセル、カゼイン、カゼイン塩およびミルクのその他の成分という場合には、特段の事情がない限りこれら成分に関係する全ての種間および種内変異体をも含むものとする。例えばβ−カゼインは哺乳動物の種が異なると1次構造が若干異なる;発明がこれら全ての変異体に適用されることは当業者にとって自明である。αs−カゼインという用語は、αs1−およびαs2−カゼインの混合体を表す。
【0042】
本発明の第1の側面によれば、次のステップを含む、ミルクから精製タンパク質分画を得る方法が提供される:
i)ミルクのpHを上げるステップ;
ii)塩化カルシウムを加え精製タンパク質分画を沈殿させるステップ;
iii)pHを下げるステップ;および
iv)遠心分離または濾過を行い、この分画を分離するステップ。
【0043】
分画はα−、β−およびκ−カゼインであることが好ましい。
【0044】
通常は、ミルクはスキムミルクである。
【0045】
遠心分離は低速度で実施されるのが好ましい。
【0046】
この方法は更にステップ(iv)での遠心分離または濾過により得た上清を酸性pH域で沈殿させ、κ−カゼインがより濃縮された分画を得るステップを含んでもよい。
【0047】
上清を酸性pH域に調整してκ−カゼイン濃縮分画を得るステップに於いて、好適なpHは3.8である。通常は、κ−カゼイン含有量は約60%であり、β−ラクトグロブリン含有量は約20%である。
【0048】
この方法はαS−およびβ−カゼイン成分を水に再溶解するステップおよび主にα−カゼインを含む分画を得るために、低温かつ酸性pH域でαS−カゼインの選択的等電点沈殿を再度行うステップを含んでもよい。
【0049】
α−およびβ−カゼイン沈殿物を水に再溶解するステップでは、水はpH7.0、20℃であることが好ましい。
【0050】
α−およびβ−カゼイン溶液は、水に再溶解後、好適には2℃に冷却し、酸性pH域、好適にはpH4.5に調整してもよい。
【0051】
再溶解および再沈殿のステップは、好ましくは更に2回繰り返し、主にα−カゼインを(85%より多く)含む分画と主にβ−カゼインを(95%より多く)含む分画とを得てもよい。
【0052】
更に、選択的等電点沈殿より得た上清を加温するステップおよび主にβ−カゼインを含む分画を回収する酸性沈殿を行うステップを含んでも良い。上清の酸性乳精からは一部のβ−ラクトグロブリンが除去されるが、その他全ての乳精タンパク質は未変性の形で含んでおり、カルシウムに富んでいる。
【0053】
好適には、上清は35℃まで加温する。
【0054】
好適には、ミルクのpHはアルカリ溶液の添加により上げ、酸性溶液の添加により下げる。
【0055】
ミルクのpHを上げるステップでは、pHは11まで上げるのが好ましい。
【0056】
ミルクのpHを上げるステップでは、水酸化ナトリウムを加えることが好ましい。
【0057】
アルカリ溶液添加時のミルク温度は30℃であることが好ましい。
【0058】
アルカリ液添加後、ミルクは随意に数分間放置してもよい。ミルクの放置時間は5分未満であることが好ましい。
【0059】
アルカリカゼイン塩液内の塩化カルシウムの最終濃度は0.059Mであることが好ましい。
【0060】
pHは、1またはそれ以上の鉱酸を加えて下げてもよい。
【0061】
この方法はκ−カゼイン高濃縮分画のpHを上げてから限外濾過を行い、カゼイン、乳精タンパク質およびカゼイノマクロペプチド(caseinomacropeptide)から低分子量物質を分離するステップを含んでも良い。
【0062】
通常は、pHは中性値まで上げられる。
【0063】
好ましくは、限外濾過は25kD未満、且つ12kDより大きい細孔径を持つ膜を用いて行う。
【0064】
更に、この方法はκ−カゼイン高濃縮分画のpHを下げてから限外濾過を行い、カゼイノマクロペプチドから乳精タンパク質を分離するステップを含んでも良い。
【0065】
通常は、この時pHはpH4〜pH5の範囲まで下げられる。
【0066】
好ましくは、pHはpH4.6まで下げられる。
【0067】
限外濾過は7kDより大きく、20kDより小さい細孔径を持つ膜を用いて行うことが好ましい。
【0068】
本発明の第2の側面は、第1の側面の方法により得た精製タンパク質分画を提供することである。
【0069】
精製タンパク質分画はα−カゼインでもよい。
【0070】
精製タンパク質分画はβ−カゼインでもよい。
【0071】
精製タンパク質分画はκ−カゼインに非常に富むと同時にβ−ラクトグロブリン並びに少量のα−およびβ−カゼインを含んでも良い。
【0072】
典型的にはκ−カゼイン含有量は約60%であり、β−ラクトグロブリン含有量は約20%である。
【0073】
本発明の第3の側面は、次のステップを含む、カゼインナトリウム溶液から精製タンパク質分画を得る方法を提供することである:
i)カゼインナトリウム液のpHを上げるステップ;
iii)塩化カルシウムを加えて分画を選択的に沈殿させるステップ;
iv)pHを下げるステップ;
v)遠心分離または濾過を行い、分画を分離するステップ。
【0074】
好ましくは、分画はα−、β−およびκ−カゼインである。
【0075】
遠心分離は低速で行うことが好ましい。
【0076】
この方法はまたステップ(iv)での遠心分離または濾過で得た上清を酸性pH域で沈殿させて、κ−カゼイン高濃縮分画を得るステップを含んでも良い。
【0077】
上清を酸性pH域に調整してκ−カゼイン濃縮分画を得るステップでは、pHは3.8であることが好ましい。この分画のκ−カゼイン含有量は通常30%より多くなる。
【0078】
κ−カゼイン濃縮分画は、任意にエタノールから選択的沈殿によりさらに濃縮してもよい。κ−カゼイン分画はpH7の水に再溶解し、pH4.6で再沈殿してから、少量の2MのNaClを加えた50%のエタノールからpH7.0、25℃にて選択的に沈殿させもよい。κ−カゼインは容易に沈殿を形成するので濾過または低速遠心分離により取り出すことができる(BIOCHEMISTRY 9巻、1970年、2807〜2813頁。Talbot,B.とWaugh、D.F.
【0079】
「モノマーおよび共有重合性κ−カゼインのミセル形成特性(Micelle−forming characteristics of monomeric and covalent polymeric κ−caseins)」。この分画のκ−カゼイン含有量は一般的に約65%である。
【0080】
この方法はさらにα−およびβ−カゼイン成分を水に再溶解してからα−カゼインを酸性pH域の低温で選択的等電点沈殿を繰り返し、主にα−カゼインを含む分画を得るステップを含んでも良い。
【0081】
α−およびβ−カゼイン沈殿物を水に再溶解するステップでは、水はpH7.0で20℃であることが好ましい。
【0082】
前記α−およびβ−カゼイン溶液は冷却、好ましくは2℃に冷却し、酸性pH域,好適にはpH4.5に調整するのが好ましい。
【0083】
好適には、この方法はさらに選択的等電点沈殿で得た上清を温めて酸沈殿を行い主にβカゼインを含む分画を回収するステップを含んでも良い。β−カゼインは上清より、好ましくは35℃まで加温して再沈殿させてもよい。
【0084】
再溶解および再沈殿の手順を、好適にはさらに2回繰り返すことで主にα−カゼイン(85%より多い)を含む分画と主にβ−カゼイン(95%より多い)を含む分画とが得られる。
【0085】
カゼインナトリウム溶液のpHは、アルカリ溶液を加えることにより上げ、酸溶液を加えることにより下げるのが好ましい。
【0086】
カゼインナトリウム溶液のpHを上げるステップでは、水酸化ナトリウムの添加によりpHを11まで上げるのが、より好ましい。アルカリ溶液添加時のカゼインナトリウム溶液の温度は30℃であるのが好ましい。
【0087】
カゼインナトリウム溶液のpHは数分間、好ましくは5分より短く上昇させることができる。
【0088】
アルカリ性カゼインナトリウム溶液中の塩化カルシウムの最終濃度は0.071Mであるのが好ましい。
【0089】
pHは1またはそれ以上の鉱酸の添加により7.0に引き下げても良い。
【0090】
方法はさらにκ‐カゼイン高濃縮分画のpHを引き上げてから限外濾過を行い、カゼイン、乳清タンパク質およびカゼインマクロペプチドより低分子物質を分離するステップを含んでも良い。
【0091】
前述のpHは典型的には中性値まで上げられる。
【0092】
前述の限外濾過は25kD未満であるが、12kDより大きな孔径を持つ膜を用い行うことが好ましい。
【0093】
更には、方法はκ‐カゼイン高濃縮分画のpHを引き下げてから限外濾過を行い、乳精タンパク質をカゼインマクロペプチドから分離するステップを含んでも良い。
【0094】
前述のpHは、典型的にはpH4からpH5の間まで引き下げられる。
【0095】
pHはpH4.6まで引き下げられるのが好ましい。
【0096】
前述の限外濾過は7kDより大きいが20kDより小さい孔径の膜を用い行われる。
【0097】
カゼインマクロペプチドは濃縮し、乾燥してもよい。
【0098】
典型的には、この作業は凍結噴霧乾燥法により行われる。
【0099】
本発明の第4の側面は、第1側面の方法により得られた精製タンパク質分画を提供することである。
【0100】
前述の精製タンパク質分画はα‐カゼインでもよい。
【0101】
前述の精製タンパク質分画はβ‐カゼインでもよい。
【0102】
前述の精製タンパク質分画を、少量のα‐およびβ‐カゼインを含むκ‐カゼインについて高濃縮してもよい。
【0103】
本発明の第5の側面では、第1または第3の側面の方法により得た、フェニールケトン尿症患者の栄養として好適であるカゼインマクロペプチド調製体が提供される。
【0104】
前述のカゼインマクロペプチドは濃縮し、乾燥してもよい。
【0105】
典型的には、この作業は凍結噴霧乾燥法により行われる。
【0106】
前述の調製体は、食品材料中に取り込ませてもよい。本調製体はまた食品材料として、あるいはそれ単独で与えても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0107】
以下、本発明を以下の図面を参考に記載する:
図1は、スキムミルク中のカゼインをα−カゼイン、β‐カゼインならびに若干のα‐およびβ‐カゼインを含む、κ‐カゼインおよびβ‐ラクトグロブリン(β‐Lg)濃縮分画の分画化に包含されるステップを例示する図面である。本法はまた、実施例1に詳述する様に、β‐ラクトグロブリンが中から部分的に取り除いた酸性乳清も生ずる。
図2は実施例2記載のカゼインナトリウムをα‐カゼイン、β‐カゼインならびにα‐およびβ‐カゼインを含むκ‐濃縮分画の分画化に包含されるステップを例示した図面である。
図3はスキムミルク中の原型カゼインおよび実施例1記載で得た分画の陰イオン交換高速タンパク質液体クロマトグラフィのプロフィールを示す。分析はJOURNAL OFDAIRY RESEARCH、54巻、1987年、369〜376項、Davies、D.T.とLaw、A.J.R。
「高速液体クロマトグラフィによるカゼイン混合物の定量的分画化(Quantitative fractionation of casein mixtures by fast protein chromatography)」に記載の如くに実施した;
【0108】
図4は原型スキムミルク(――)および塩化カルシウム添加後にκ‐カゼイン濃縮分画を酸沈殿させて得た上清中の乳清タンパク質のゲル透過プロフィールを示している。図はアルカリ変性と、それに続く酸性pHでの沈殿によるβ‐ラクトグロブリン除去を示す。分析はMILCHWISSENCHAFT、48巻、1993年、663〜666項、Law、A.J.R.、Leaver、J.、Banks、J.M.およびHorne、D.S.「ゲル透過FPLCによる乳清タンパク質の定量的分画化(Quantitative fractionation of whey proteins by gel permeation FPLC)」記載の如くに実施した。(Ig、イムノグロブリン;SA/Lf、血清アルブミンおよびラクトフェリン、β−Lg、β−ラクトグロブリン;α−La、α−ラクトアルブミン);
図5は原型カゼインナトリウムおよびこれより実施例2記載の如くにして得た分画の陰イオン交換高速タンパク質液体クロマトグラフィのプロフィールを示している。分析は図3の場合と同様にして行われた;
図6は原型カゼインナトリウム(−−−)およびそれより実施例2の如くにして得た後さらにエタノール沈殿法により精製したκ‐カゼイン分画(__)の陰イオン交換高速タンパク質液体クロマトグラフィのプロフィールを示している。分析は図3の場合と同様にして行われた;
図7は原型カゼインナトリウム(上)および30℃、pH11.0に5.0分間置いた後のカゼインナトリウムの陰イオン交換高速タンパク質液体クロマトグラフィプロフィールを示している。分析は図3の場合と同様にして行われた;
図8は原型カゼインナトリウム(上)および30℃、pH11.0に5.0分間置いた後のカゼインナトリウムについて得られたキャピラリー電気泳動パターンを示している。分析はJOURNAL OF CHROMATOGRAPHY、652巻、1993年、207〜213項、de Jong、N.、Visser、S.とOlieman、C.「キャピラリー電気泳動によるミルクタンパク質の決定(Determination of milk proteins by capillary electrophoresis)」の方法に実質従った;
【0109】
図9は原型カゼインナトリウム(上)および30℃、pH11.0に15.0分間置いた後のカゼインナトリウムの陽イオン交換高速タンパク質液体クロマトグラフィプロフィールを示している。分析はJOURNAL OF DAIRY SCIENCE、74巻、1991年、2403〜2409項、Hollar、C.M.、Law、A.J.R.、Dalgleish、D.G.とBrown、R.J.「陽イオン交換高速タンパク質液体クロマトグラフィによる主要カゼイン分画の分離(Separation of major casein fractions using cation−exchange fast protein liquid chromatography)」の方法に従い行われた;そして
図10は実施例1および2(それぞれ図1および2)に記載の選択的カルシウム沈殿によりスキムミルクまたはカゼイン塩から得た精製分画の使用を例示している図面である。
【0110】
本発明はアルカリpHに於いてカルシウム塩を加えることでスキムミルクまたはカゼイン塩よりカゼイン分画を選択的に沈殿させる新規の方法に関する。
【0111】
具体的には、本発明はα‐カゼインおよびβ‐カゼインの純粋分画、ならびにκ‐カゼイン高濃縮分画の調製に関する。本方法は工業規模で使用でき、生成物は食品内への使用、新規食品材料、生体分解性プラスチック、機能性食品および生理活性ペプチドの調製に好適である(図10)。
【0112】
選択的カルシウム沈殿法を含む従来のカゼイン分画法は、中性pHで行われており、またα‐およびβ‐カゼインの沈殿が容易に起こらないために高速遠心分離が必要である。高濃度の塩化カルシウムはその後のκ‐カゼイン分画の酸沈殿を妨害するため、タンパク質を回収するには塩化カルシウムにシュウ酸を添加し、透析する必要があった。そためにこの方法を大規模化することは不可能であり、その生成物はヒトでの消費に不適であった。
【0113】
本発明の方法では、カゼインの分画化はアルカリpHでの選択的カルシウム沈殿により行われる。スキムミルクのpHを約11.0にまで上げると、負に荷電したカゼイン上の電荷、特にリン酸基上の電荷が増して、カゼインはミセルから解離する。α‐カゼインはβ‐カゼインに比べ強く帯電しており、そしてκカゼインの帯電が最も小さい。塩化カルシウムの様な塩を加えると、αs1‐およびβ‐カゼインはκ‐カゼインより強くCa2+と結合するため、容易に沈殿するようになり、結果としてκ‐カゼインに富む上清が生じる。アルカリpHでは、ミルク中のβ‐ラクトグロブリンの一部が変性する(JOURNALOF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY 81巻、1959年、4032〜4036項、Tanford、C.、Bunville、L.G.、Nozaki、Y.「pH7.5でのβ‐ラクトグロブリンの可逆的トランス形成(The reversible transformation of β‐lactoglobulin at pH7.5)」)。
【0114】
変性したβ‐ラクトグロブリンはκ‐カゼイン濃縮上清中に残っている。引き続いてpHを約3.8まで下げると、κ‐カゼインが濃縮された沈殿が、変性β‐ラクトグロブリンならびに若干のα‐およびβ‐カゼインと一緒になった形で直ちに形成される(図3)。酸性上清はβ‐ラクトグロブリン中で一部失われているが(図4)、その他の全ての乳清タンパク質と加えられた塩化カルシウムを含んでおり、食品への使用に好適である。
【0115】
中性pHの代わりにアルカリpHで選択的カルシウム沈殿を行うことには幾つか利点がある。アルカリpHではカゼインミセルは破壊されるため、カゼインは有毒なカオトロピック剤またはキレート剤を必要とせずに解離する。カゼインはまた高い正味負電荷を有しており、塩化カルシウムを加えた時それらはより多くのCa2+を結合する。
【0116】
従って中性pHで必要とされるものより低い塩化カルシウム濃度でカゼインを選択的に沈殿できる。アルカリpHでは塩化カルシウムを加えるとα‐およびβ‐カゼイン沈殿は簡単に安定化するので、濾過または低速遠心分離により容易に分離される。濃縮κ‐カゼイン中の上清分画も同様に、塩化カルシウム濃度が低い時には酸性pHでは容易に沈殿し、濾過又は低速遠心分離を用いる事で容易に分離する。いずれの分画も続いて、必要に応じ工業規模で精製することができる。
【0117】
例えばκ‐カゼイン分画からカゼインマクロペプチド(CMP)を分離するために、追加処理を行っても良い。CMPはモノマーの形状では約6、500ダルトンの分子量を有しているが、しかしCMPは酸性pH値、例えばpH4、でのみモノマー形状を採る。中性pHでは、CMPはテトラマーの形を取り、25,000ダルトンの有効分子量を持つ。従って、pHを操作することでCMPをβ−ラクトグロブリンの様な乳清タンパク質に匹敵する大きさの分子として振る舞わせる、または小ペプチドの様に振る舞わせることができる。この特徴を利用して、いずれかの陰性の乳清タンパク質(スキムミルクから作られたκ−カゼイン調製体)との混合体、またはその他ペプチド(例えばスキムミルク中のプロテオースペプトン若しくはその他カゼイン分画の非特異的分解で生じたペプチド)からCMPを効果的に分離することができる。各種分画の特性を以下に示す:
【0118】
【表1】
Figure 2004521650
上記の性質の違いはあらゆる純粋状態のCMPの製造に活用でき、フェノイルアラニメを含む汚染物を無くすことができる。このようにして、前述の方法で生じたκ‐カゼイン分画は超純粋なCMPを精製することができる。典型的にはCMPをそのテトラマー型に変換するために、κ‐カゼイン分画のpHは中性pHに引き上げられるだろう。それから適当な孔径―典型的には25kDより小さいが12kDよりは大きい孔径―を持つ膜を用いた限外濾過処理により、カゼイン、乳清タンパク質およびCMPから全ての低分子量物質を分離する。
【0119】
pHを4.6に酸性化すると、CMPがモノマー型に戻る変換が起こり、その他の分画は沈殿する。この場合、適当な孔径―典型的には7kDより大きいが20kDより小さい孔径を持った膜を用いた限外濾過処理により、CMPから乳清タンパク質が分離される。CMPは適宜、典型的には凍結または噴霧乾燥法で濃縮、乾燥してもよい。上記ステップは多くの好適実施態様の一例にしか過ぎず、―好適実施例の幾つかはpH調製の順番が逆である―単に例示を目的として示したものである。
【0120】
CMP精製の原理の応用はスキムミルク由来の物質に限定されたものではなく、例えばこのステップはチーズまたはレンネット乳清からのCMPの分離および精製にも応用できる。この様な場合、遠心分離および/またはミクロフィルトレーション(典型的にはカットオフが1.8μの膜を使用する)による前処理を用いて粗粒子、残留脂肪や細菌といった汚染物を除去するのに適当である。本前処理後、上記原理を利用してpHAを含まず、PKU患者の栄養として好適であるCMPを作ることができる。
【0121】
β‐カゼインは低温に於いては、その等電点では溶けた状態のままであるために、2℃、pH4.6で沈殿させることにより共存するα‐カゼインから分離することができる(JOURNAL OF AMERICAN CHEMICAL SOCIETY 67巻、1944年、1725〜1731項。Warner、R.C.「α−およびβ−カゼインの分離(Separation of α‐ and β‐casein)」。 次に35℃で上清から沈殿させてβ‐カゼインを回収する。この操作を全てのβ‐カゼインがα‐カゼインから抽出されるまで繰り返し、α‐およびβ‐カゼインの精製分画を得る(図3)。
【0122】
カゼイン塩溶液から精製カゼイン分画を選択的に沈殿する方法は、塩化カルシウム添加時に上清がκ‐、βおよび会α‐カゼインのみ含むことを除いてはスキムミルクについて記載の方法と原則同一である(図5)。 前述の如く、カゼインはそれらの持つエタノールに対する溶解性に基づいて部分精製することができる(BIOCHEMISTRY 9巻、1970年、2807〜2813項。Talbot、B.とWaugh、D.F.「モノマーおよび共有結合型重合κカゼインのミセル形成特性(Micelle‐forming characteristics of monomeric and covalent polymeric κ‐caseines)」。この方法を用いてκ‐カゼイン分画を精製できる。初期κ‐カゼイン分画を再沈殿して残存カルシウムを除き、エタノール溶液から上清中に残っているαs1‐およびβ‐カゼインを選択的に沈殿させる。この沈殿は直ぐに形成され、低速遠心分離により除くことができ、κ‐カゼイン濃縮分画を得る(図6)。
【0123】
スキムミルクで見られたように、高pHでのカゼインナトリウムの分画化には、有害物質を含まず、従って食品材料としての使用に好適である3種類全てのカゼイン分画が得られるという中性pHでのカルシウム沈殿、またはカオトロピック剤存在下での分離を含む従来法にない利点がある。アルカリpHで必要なカルシウム濃度はより低いため、有害なキレート剤の添加や大規模での実施が容易でない透析を必要することなく、κ‐カゼイン濃縮分画を連続的に回収できるようになる。同様に、κ‐カゼイン上清からα‐およびβ‐カゼインをアルカリpHで分離するという改善により高速遠心分離を必要としなくなるため、本法を食品等級材料製造に向けスケールアップすることが容易になる。
【0124】
アルカリpHでの長時間の処理、特に高温での処理によりカゼインを脱リン酸化できる(JOURNAL OF DAIRY RESEARCH、39巻、1972年、189〜194項。Manson、W.とCarolan、T。「β‐カゼインからのアルカリによるリン酸基除去(The alkali‐induced elimination of phosphate from β‐casein)。
【0125】
脱リン酸化により生じた、およびカゼインからの−SH基除去により生じることもあるカゼイン中のデヒドロアラニンはリジン残基のε−アミノ基と反応し、リシノアラニル基を形成する。この反応は栄養として利用可能なリジンの量を減らし、カゼイン中の架橋を増やして消化性を低下させる。ミルクを加熱した場合にも同様の反応が起こり、そして動物研究では大量に摂取した場合にはリジノルアニンが有害になることもあることが実証されている(JOURNAL OFNUTRITION、98巻、1969年、45−56項、De Groot、A.P.およびSlump、P。「タンパク質への強アルカリ処理がアミノ酸組成物および栄養価に及ぼす影響(Effects of severe alkali treatment of proteins on amino acid composition and nutritive value)」。熱またはアルカリ処理された乳タンパク質を食することの健康人へのリスクは小さいと信じられている(JOURNAL OF DAIRY RESEARCH、49巻、725−736項。de Koning、P.J.とヴァンRooijen、P.J.「ミルクおよび乳製品於けるリジノアラニン形成についての考察(Aspects of the formation of lysinoalanine in milk and milk products)」。
しかし本研究に於いて我々は、陰イオン‐および陽イオン交換高速タンパク質液体クロマトグラフィおよびキャピラリー電気泳動を用い、アルカリ処理が乳タンパク質に及ぼす影響を注意深く研究した。これら技術はこれまでも加熱によりタンパク質内に起こる同様の変化を検出するのに用いられ、成功している(MILCHWISSENSCHAFT、49巻、1994年、125〜129項。Law、A.J.R.、Horne、D.S.、Banks、J.M.およびLeaver、J.「乳清タンパク質およびカゼインに於ける熱誘導変化(Heat‐induced changes in the whey proteins and caseins)」。JOUNAL OF CHROMATOGRAPHY、 652巻、1993年、207‐213頁、De Jong、N。Visser、SとOlieman、C。「キャピラリー電気泳動による乳タンパク質の決定(Determination of milk proteins by capillary electrophoresis)」
【0126】
脱リン酸化、‐SH基および炭水化物基(シアル酸)除去の様な強アルカリ処理時にじる変化はいずれもタンパク質の陰性電荷を減らすが、この変化は加熱によっても生じ、そして陰イオン交換高速タンパク質液体クロマトグラフィ(FPLC)によって検出できる。同様に長時間のアルカリpH処理時に起こるε−アミノLysおよびArg残基の脱アミノ化はタンパク質の正電荷を失わせるが、この変化は陽イオン‐交換FPLCおよび酸性pHでのキャピラリー電気泳動により決定できる。
【0127】
これら技術を用いて、スキムミルクまたはカゼインナトリウムからのカゼイン分画の選択的沈殿に求められるアルカリ条件下に置かれたカゼインについて試験した。陰イオン交換FPLCの結果(図7)は、ミルク中のカゼインミセル解離達成に必要な短い時間(5分)の間には各種カゼインのプロフィールまたは相対ピーク面積に目立った変化は認められないことを示している。この分離は正味の陰荷電に基づいているため、各種カゼインの変化に評価可能な変化はなく、そして具体的には脱リン酸化は起こっていないと思われる。キャピラリー電気泳動(図8)および陽イオン交換FPLC(図9)の結果も同様に、5分間のアルカリ処理によってもカゼインのプロフィールまたは相対ピーク面積に目立った変化はないことを示している。両技術は酸性pHで行われ、そして分離が正味の正荷電に基づくことから、短時間のアルカリ処理はカゼイン中のLysやArgといった正に帯電した基には影響を及ぼさないことが示された。これら結果は総合的に、スキムミルクまたはカゼインナトリウムの選択的沈殿に必要なアルカリ条件の短時間処理は、タンパク質に化学的損傷を与えないことを示している。
【0128】
スキムミルクのアルカリ処理中に、β−ラクトグロブリンは構造変化を起し、
その結果等電点において不溶性になる(JOURNALOF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY 81巻、1959年、4032−4036項。Tanford、C.、Bunville、L.G,とNozaki、Y。「pH7.5でのβ−ラクトグロブリンの可逆的トランス形成(The revesible transformation of β‐lactoglobulin at pH .5)」。カゼインの選択的カルシウム沈殿に求められるアルカリ条件下では、一部のβ‐ラクトグロブリンは変性されるが、他の乳清タンパク質は、ゲル透過FPLCにより示されるように(図4)、変性されず、それぞれの等電点において可溶性を保っていた。アルカリpHに短時間置かれたスキムミルクタンパク質の逆相HPLC、キャピラリー電気泳動およびトリプシン消化に基づく従来の結果からは、タンパク質の化学特性に大きな変化が無いことが示されている(特許出願、2001年、Leaver、J.とLaw、A.J.R.「ミルクおよび乳製品からβ‐ラクトグロブリンおよびカゼインを抽出する方法を含むミルクおよびチーズ抽出ステップ、およびそれにより生成された新規生成物(Milk and cheese extraction process、including methods of extracting β‐lactoglobulin and caseins from milk and milk products、and novel products hereby produced)」)。
【実施例1】
【0129】
スキムミルクを30℃に温め、5Mの水酸化ナトリウムを攪拌しながら加えてpHを直ぐに11.0に調整した。
【0130】
攪拌を続けながら0.5Mの塩化カルシウム溶液を加え、添加した塩化カルシウムの総量はスキムミルク液1リットル当たり133mlであり、また最終濃度は0.059Mであった。次にスキムミルクのpHを7.0に下げるために、塩酸(5M)を攪拌しながら加えた。沈殿(A)が形成され、これを遠心分離または静置させた後に濾過して集めた。この沈殿はα‐およびβ‐カゼインを多く含んでおり、κ‐カゼインは殆ど含んでいない。上清に1MのHClを攪拌しながら加えて、そのpHを3.8まで下げた。第2沈殿(B)が形成され、これを沈殿Aと同じ方法で集めた。沈殿Bはκ‐カゼイン(60%)とβ‐ラクトグロブリン(20%)、ならびに少量のα‐およびβ‐カゼインを含んでいた(図3)。酸性乳精の上清はβラクトグロブリン中で一部失われた(図4)。
【0131】
沈殿Aを、1MのHClを加えてpHを連続的に7.0に調整しながら、20℃で激しく攪拌してカゼイン塩原料とほぼ同一濃度に水に再懸濁した。完全に溶解した後、溶液を2℃まで冷却し、攪拌しながら1MのHClを加えてpHを4.5に調整した。沈殿物(C)を形成させ、2℃で15分間攪拌した後、2℃で濾過または遠心分離してこの沈殿を上清(D)から集めた。この沈殿物は非常にα‐カゼインに富むものであったが、一部β‐カゼインも含んでいた。この分画のβ‐カゼイン含有量は、沈殿物を水に再溶解して、2℃での沈殿を更に2回繰り返すことで減少した。分析から85%を越えるタンパク質がα‐カゼインであることが示された(図3)。
【0132】
上清Dを35℃まで温めてから攪拌しながら少量の1MのHClを加えてpHを4.6に調整した。形成した沈殿物(E)を沈殿物Aと同じ方法で遠心分離または濾過し集めた。分析から、95%を越えるタンパク質がβ‐カゼインであることが分かった(図3)。
【実施例2】
【0133】
カゼインナトリウムを約37℃で10分間攪拌して27g/Lの濃度に水に溶解した(図4)。この溶液を30℃に冷却してから、直ぐに攪拌しながら5Mの水酸化ナトリウムを加えてpHを11.0に調整した。攪拌継続中に塩化カルシウムの0.5M溶液を加えたが、塩化カルシウムの添加総量はカゼイン塩溶液1リットル当たり166ml、最終濃度は0.071Mであった。
【0134】
次にカゼイン塩溶液のpHを7.0に下げるために塩酸(5M)を攪拌しながら加えた。沈殿物(A)を形成させ、これを遠心分離または静置後濾過し取り出すことで集めた。この沈殿はα‐およびβ‐カゼインに富み、κ‐カゼインは殆ど含まないか、全く含んでいなかった。上清のpHを攪拌しながら1MのHClを加えることで3.8に下げた。第2沈殿物(B)を形成させ、これを沈殿物Aと同じ方法で集めた。沈殿物Bはκ‐カゼインを多量に含み、ほぼ同量のα‐、β‐及びκ‐カゼインを含んでいた(図4)。沈殿物Bは、pH7.0で水に溶解してからpH4.6で再沈殿させてカルシウム塩含有量を下げることで更に精製することができた。沈殿物をpH7.0で再溶解し、少量の2M塩化ナトリウム50%エタノール液を加えて、大部分のαs1‐およびβ‐カゼインを上清中に残したまま、50%エタノール溶液からκ‐カゼインを選択的に沈殿させた。沈殿は直ぐに形成され、低速遠心分離または濾過により分離できた。この分画は約65%κ−カゼインであり(図6)、有害物質を含まないため食品材料として好適であった。
【0135】
沈殿物Aを、20℃で強く攪拌してカゼイン材料と同一濃度になるように水に再溶解し、1MのHClを加えてpHを7.0に調整した。完全に溶解した後、この溶液を2℃まで冷却し、攪拌しながら1M HClを加えてpHを4.5に調整した。沈殿物(C)が形成されるので、15分間、2℃で攪拌した後2℃で濾過または遠心分離を行い上清(D)から集めた。この沈殿物は非常にα‐に富んでいたいが、若干のβ‐カゼインを含んでいた。この分画のβ‐カゼイン含有量を、沈殿物を水に再溶解し、沈殿を2℃でさらに2回繰り返すことで下げた。分析からは85%を越えるタンパク質がα‐カゼインであることが示された(図5)。
【0136】
上清Dを35℃に温め、攪拌しながら少量の1MのHClを加えてpHを4.6に調整した。形成した沈殿物(E)は沈殿物Aと同じ方法で遠心分離または濾過により集めた。分析から95%を越えるタンパク質がβ‐カゼインであることが示された(図5)。
[精製カゼイン分画の応用]
【0137】
精製カゼイン分画は大規模に、有害物質を含まない形で調製でき、食品への添加や新規食品の製造に使用できる。各種カゼインは異なる構造と性質を持っており、従って選択により目的にあった最適な機能特性を与えることができる。例えばβ‐カゼインは他のカゼインに比べエタノール中に於いてより親水性であり、可溶性であるが、一方κ‐カゼインは疎水性でありエタノール溶液から容易に沈殿する。同様に、α‐カゼインはリン酸基に富んでおり、2価イオンと容易に結合し、リン酸基を1個しか持たないκ‐カゼインに比べカルシウム濃度に対し非常に敏感である。κ‐カゼインはまた、ジスルフィド結合重合体の連続体として存在すること、疎水性炭水化物側鎖が存在すること、および水溶液中に於いて他のカゼインを安定化する能力を持つことによる特有な性質も有している。カゼイン分画はまた各種酵素に対し異なる感受性を示し、そして以下記載する様に広範囲のペプチドの調製にとって好適な原材料である。
【0138】
チーズ熟成中にカゼインはタンパク質分解を起こし、成熟チーズの風味にとって重要な役割を果たすペプチドおよびアミノ酸を生ずる。熟成の初期段階では、キモシンおよびプラスミンが大型および中型ペプチドのタンパク質分解を起こし、後期段階ではその他のタンパク質分解酵素が短いペプチドと最終的にはアミノ酸を産生する。しかし成熟はゆっくりとしたステップであるため、単離されたカゼインを迅速にタンパク質分解してチーズ風味を発生させることは相当な可能性がある。
【0139】
このステップ中、苦みを持った親水性ペプチドが、特にβ−カゼインから生成されることがある。ここに記載の精製カゼイン分画は形成されるペプチドや発生する風味のタイプについてより制御可能な原材料として用いることができる。
【0140】
酸またはアルカリ条件、あるいは限定酵素タンパク質分解によるカゼインの制御された加水分解からは、高い発泡能力を持ったペプチド、親のカゼインに比べてより素早く界面まで拡散できる小分子が生じる。カゼイン由来のペプチドには熱に対し安定であり、アレルギー原性が低く、そしてカルシウム結合を促進するという利点がある。さらに特定の加水分解物は、ヨーグルト加工での発酵速度の最適化や、特定の生理活性細菌株の細胞数を増やすのにも用いられている。本法で得られた精製分画の有用性は、必要とされる性質を持った広範囲のペプチドの製造を容易にする。
【0141】
多くの代替乳児食が牛乳をベースにしているが、母乳中の総タンパク質濃度はこれに比べ低く、個々のタンパク質の相対比も牛乳と大きく異なっている。具体的には母乳はβ‐ラクトグロブリンを含まず、α‐カゼインの相対比は極めて低い。これに対し、母乳ではα‐ラクトアルブミン、ラクトフェリンならびにκ‐およびβ‐カゼインの相対比は高い。
【0142】
また母乳において総カゼインの約60%を占めるβ‐カゼインは、異なるリン酸化を受けたポリペプチド群として存在しており、そのリン酸化の程度は牛乳のものに比べ低い。この組成の違いは、牛乳を与えられた乳児に起こる問題の幾つかに関係していると信じられている。例えば、牛乳のアレルギー原性はβ‐ラクトグロブリンの存在と一部関係付けられている。同様に消化の困難さは、ミルク中のリン酸化β‐カゼインの含有量が少なく、高リン酸化α‐カゼイン含有量が高い場合には、酸性pHで胃の中に形成された凝乳のテキスチャーが硬い事に拠っているのだろう。最近、乳児食メーカーでは母乳に近い製品を製造しようとする方向にかわりつつある。ここに記したように、部分的にβ‐ラクトグロブリンを除いた各種カゼイン分画および乳清を大規模に製造することが、この目的の達成に役立つ。精製β−カゼインはホスファターゼの作用によって部分的に脱リン酸化することができ、これを再びκ−カゼインおよび乳清と組み合わせてタンパク質組成が母乳により近いミルクを得ることができる。
【0143】
多くの長鎖型の天然または合成分子と同じく、カゼインは架橋し、一般には熱と高圧を加え、さらにホルマリンを処理することで重合体を形成することができる(In CASEIN AND ITS INDUSTRIAL APPLICATIONS、1939年、181〜232項、Reinhold Publishing Corporation、New York、Brother、G.H.「カゼインプラスチック(Casein Plastics)」)。このステップは広く用いられ満足できるテキスチャーと色を持つ様々なプラスチックが製造されたが、原料のコストとホルマリンの危険性から合成ポリマーを用いる方法に替わられている。しかし、食用食品コーティングおよび生物分解性プラスチックについては市場があること、そしてアルカリpHでのカルシウム添加を含むより穏やかな架橋技術を用いることにより、本明細書に記した各種カゼイン分画を用いて好適な性質を有する各種軟質プラスチックを生成することができる。
最近、ミルク中のまたは消化中のカゼインのタンパク質分解による分解により特殊な生理機能を持った生理活性ペプチドが生まれることが分かった。生理活性ペプチドとしてはホスホペプチド、および抗菌機能、抗高血圧機能、免疫変調機能、抗血栓機能およびオピオイド機能を持つペプチドが挙げられる(JOURNAL OF DAIRY SCIENCE、83巻、2000年、1187〜1195項。Clare、D.A.とSwaisgood、H.E。「生理活性ミルクペプチド:展望(Bioactive milk peptides:A prospectus)」)。
【0144】
カゼインホスホペプチドは各種カゼインをトリプシン切断した後に認められるが、ホスホセリン残基の分類が特徴的であることとリン酸塩中心が持つ強い負電荷から、各種ミネラル、特にカルシウムのキャリアーとして機能すると信じられている(PROCEEDINGS OF 25th INTERNATIONAL DAIRYCONGRESS、1998年、200〜208項。Holt、C。「カゼイン構造とカゼイン−リン酸カルシウム相互作用(Casein structure and casein−calcium phosphate interactions)」。カゼインホスホペプチドは胃内での酵素によるタンパク質分解に対し最も耐性であり、通常はリン酸カルシウムと複合体を形成している。この複合体の形成により溶解性が増し、骨石灰化に必要なカルシウムの吸収を高める。カゼインホスホペプチドはまた歯のエナメル質のカルシウム再沈着を助けてう食傷害を阻止し、そして歯科疾患治療への応用が進められている。各カゼイン種はそれぞれ異なるホスホペプチドを生じるが、そのうちの幾つかは、それらがFeやZn、Cuと結合する能力を持つことから既に食品補助物や医薬品として応用されており、ここに記載の精製カゼイン分画の有用性はその調製を促進する。
【0145】
αs‐カゼイン由来のカソシジンIやαs1‐カゼインB由来のイスラシジンを含め、ミルク中に存在する抗菌特性を持った複数のカゼインペプチドが同定されている。イスラシジンはヒツジとヤギに於いて転移を効果的に防いでおり、このタイプの特異的抗生物質が更に開発される可能性が高い。
【0146】
カゼイン由来の様々なペプチドがアンジオテンシン変換酵素を阻害し、それによって血圧を低下させるよう働いている。これら生理活性ペプチドのうち、一つはαs1−カゼインの断片(αs1−カソキニン−5)であり、二種類のものがβ−カゼインから得られている(β−カソキニン−7と抗高血圧ペプチド)。
【0147】
カゼイン断片が免疫系と関連細胞の増殖反応に影響することも判明している。これら生理活性ペプチドの内、κ−カゼインのトリペプチドとβ−カゼインのペプチドは末梢血リンパ細胞の増殖を高めることが示されている。
【0148】
カゼイン由来の複数のペプチドが抗血栓特性を有しており、血液凝固中に血小板の特異的受容体を遮断することで機能している。これらペプチドとしては、グリコマクロファージペプチド、およびカゾプラテリンとトロンビン阻害ペプチドをそれぞれ生ずるκ−カゼインの2種類の小型断片が挙げられる。
【0149】
様々な研究から、カゼインの断片の一部、オピオイドペプチドにモルヒネ様特性があることが示されている。
【0150】
主要なオピオイドペプチドはβ−カゼインの断片であるが、これらはαs1−カゼインをペプシン加水分解しても得ることができる。β−カソモルフィンは消化酵素に対し耐性であり、それらの成人での生理作用は胃腸管内に限定されており、腸移行時間、アミノ酸の取込、および水バランスに重要な影響を与える。しかし新生児では、β−カソモルフィンは血流内に入ることができ、乳児では鎮静と睡眠を促進する。一部のペプチド、オピオイド拮抗剤は、β−カソモルフィンとは逆の作用を及ぼし、エンケファリンの活性を抑制して機能する。そのような3種類ペプチド、カソキシン類はκ−カゼインのペプチドである。κ−カゼインのカゼインマクロペプチドは胃腸管に対し直接作用も及ぼし、胃酸分泌を阻害する。カゼイン由来の生理活性ペプチドの役割は拡大中の研究分野であり、現在特に分子レベルでの生物学的プロセスが詳しく分かるようになった。本方法による精製カゼインの調製法により、純粋な形の各種ペプチドの製造が容易になる。
【0151】
本発明の新規方法によって、極めて低コストに、そして潜在的に有害な試薬を使用することなしに、これまで達成不可能な純度でカゼインを分画化できるようになる。具体的には、本発明が初めてκ−カゼイン高濃縮物質の調製を可能にしている。
【0152】
その他の変更および改良は、本発明の範囲から逸脱することなしに組み込まれるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】スキムミルク中のカゼインをα−カゼイン、β‐カゼインならびに若干のα‐およびβ‐カゼインを含む、κ‐カゼインおよびβ‐ラクトグロブリン(β‐Lg)濃縮分画の分画化に包含されるステップを例示する図である。
【図2】実施例2記載のカゼインナトリウムをα‐カゼイン、β‐カゼインならびにα‐およびβ‐カゼインを含むκ‐濃縮分画の分画化に包含されるステップを例示した図である。
【図3】スキムミルク中の原型カゼインおよび実施例1記載で得た分画の陰イオン交換高速タンパク質液体クロマトグラフィのプロフィールを示す図面である。
【図4】原型スキムミルク(――)および塩化カルシウム添加後にκ‐カゼイン濃縮分画を酸沈殿させて得た上清中の乳清タンパク質のゲル透過プロフィールを示す図である。
【図5】原型カゼインナトリウムおよびこれより実施例2記載の如くにして得た分画の陰イオン交換高速タンパク質液体クロマトグラフィのプロフィールを示す図である。
【図6】原型カゼインナトリウム(−−−)およびそれより実施例2の如くにして得た後さらにエタノール沈殿法により精製したκ‐カゼイン分画(__)の陰イオン交換高速タンパク質液体クロマトグラフィのプロフィールを示す図である。
【図7】原型カゼインナトリウム(上)および30℃、pH11.0に5.0分間置いた後のカゼインナトリウムの陰イオン交換高速タンパク質液体クロマトグラフィプロフィールを示す図である。
【図8】原型カゼインナトリウム(上)および30℃、pH11.0に5.0分間置いた後のカゼインナトリウムについて得られたキャピラリー電気泳動パターンを示す図である。
【図9】原型カゼインナトリウム(上)および30℃、pH11.0に15.0分間置いた後のカゼインナトリウムの陽イオン交換高速タンパク質液体クロマトグラフィプロフィールを示す図面である。
【図10】実施例1および2(それぞれ図1および2)に記載の選択的カルシウム沈殿によりスキムミルクまたはカゼイン塩から得た精製分画の使用を例示している図面である。

Claims (71)

  1. i)ミルクのpHを挙げるステップと、
    ii)塩化カルシウムを加えて前記分画を沈殿するステップと、
    iii)pHを引き下げるステップと、
    iv)分画を分離するステップとを含むミルクから精製タンパク質分画を得る方法。
  2. 分画がα‐、β‐およびκ‐カゼインである、請求項1記載の方法。
  3. 分画を遠心分離により分離する、請求項1から2に記載の方法。
  4. 分画を濾過により分離する、請求項1から2に記載の方法。
  5. ミルクがスキムミルクである、先行請求項のいずれかに記載の方法。
  6. 遠心分離が低速度で行われる、請求項3記載の方法。
  7. 遠心分離または濾過で得た上清を酸性pHにて沈殿させ、κ−カゼインが高濃縮された分画を得るステップを更に含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
  8. pHが3.8である、請求項7記載の方法。
  9. α‐およびβ‐カゼイン成分を水に再溶解するステップと、酸性pHおよび低温で選択的等電点沈殿を繰り返し行うステップと、α‐カゼインを主に含む分画を得るステップと、を更に含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
  10. 水のpHが7.0および温度が20℃である、請求項9記載の方法。
  11. 水に再溶解した後にα‐とβ‐カゼインの溶液を冷却し、酸性pHに調整する、請求項9から10に記載の方法。
  12. α‐とβ‐カゼインの溶液を2℃に冷却し、pH4.5に調整する、請求項11記載の方法。
  13. 再溶解および再沈殿の操作を繰り返して、α‐カゼインを主に含む分画とβ‐カゼインを主に含む分画を得る、請求項9から12に記載の方法。
  14. 選択的等電点沈殿で得た上清を温めてから酸沈殿し、β−カゼインを主に含む分画を回収する、請求項13記載の方法。
  15. 上清を35℃に温める、請求項14記載の方法。
  16. ミルクのpHを、アルカリ溶液添加により引き上げ、酸溶液添加により引き下げる、先行請求項のいずれかに記載の方法。
  17. ミルクのpHをpH11に引き上げる、先行請求項のいずれかに記載の方法。
  18. ミルクのpHを水酸化ナトリウム添加により引き上げる、先行請求項のいずれかに記載の方法。
  19. アルカリ溶液添加時のミルクの温度が30℃である、先行請求項のいずれかに記載の方法。
  20. ミルクのpHを引き上げるステップの後で、溶液を最長5分まで放置する、先行請求項のいずれかに記載の方法。
  21. 溶液の塩化カルシウムの最終濃度が0.059Mである、先行請求項のいずれかに記載の方法。
  22. pHを1またはそれ以上の鉱酸を加えて引き下げる、先行請求項のいずれかに記載の方法。
  23. κ‐カゼイン高濃縮分画のpHを引き上げてから限外濾過を行い、ミルク中のカゼイン、乳清タンパク質およびカゼインマクロペプチドから低分子物質を分離するステップを更に含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
  24. pHを中性値まで引き上げる、請求項23記載の方法。
  25. 限外濾過を25kDより小さく、12kDより大きい孔径を持つ膜を用いて実施する、請求項23から24に記載の方法。
  26. κ‐カゼイン高濃縮分画のpHを引き下げてから限外濾過を行い、カゼインマクロペプチドから乳清タンパク質を分離するステップを更に含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
  27. pHをpH4からpH5の間まで引き下げる、請求項26記載の方法。
  28. 限外濾過を7kDより大きく、20kD未満の孔径を持つ膜を用いて実施する、請求項26または27に記載の方法。
  29. 請求項1から28のいずれかに記載の方法により得ることができる精製タンパク質分画。
  30. 請求項1から28のいずれかに記載の方法により得た精製タンパク質分画。
  31. 請求項29または30のいずれかに記載され、α‐カゼインである精製タンパク質分画。
  32. 請求項29または30のいずれかに記載され、β‐カゼインである精製タンパク質分画。
  33. 請求項29または30のいずれかに記載され、κ‐カゼインが高濃縮されている精製タンパク質分画。
  34. β‐ラクトグロブリンならびに少量のα‐およびβ‐カゼインも含む、請求項33記載の精製タンパク質分画。
  35. κ‐カゼインの含有量が約60%であり、β‐ラクトグロブリンの含有量が約20%である、請求項33から34に記載の精製タンパク質分画。
  36. i)カゼインナトリウム溶液のpHを引き上げるステップと、
    ii) 塩化ナトリウムを加えて分画を選択的に沈殿するステップと、
    iii)pHを引き下げるステップと、
    iv)分画を分離するステップと、を含む、カゼインナトリウム溶液から精製タンパク質分画を得る方法。
  37. 分画がα−、β−およびκ−カゼインである、請求項36記載の方法。
  38. 遠心分離により分画を分離する、請求項36から37に記載の方法。
  39. 濾過により分画を分離する、請求項36から37に記載の方法。
  40. 遠心分離を低速度で行う、請求項38に記載の方法。
  41. 遠心分離または濾過により得た上清を酸性pHで沈殿し、κ‐カゼイン高濃縮分画を得るステップをさらに含む、請求個36から40に記載の方法。
  42. pHが3.8である、請求項41記載の方法。
  43. κ−カゼイン濃縮分画をエタノールから選択的に沈殿し、そのκ−カゼインをさらに濃縮する、請求項36から42に記載の方法。
  44. κ−カゼイン高濃縮分画をpH7で水中に再溶解した後、pH4.6で再沈殿し、次に少量の2NaClの50%エタノール溶液を加えてpH7、25℃で50%エタノールより選択的に沈殿する、請求項43記載の方法。
  45. α‐およびβ‐カゼイン成分を水に再溶解するステップと、酸性pH、低温で選択的等電点沈殿を繰り返し行って、主にα‐カゼインを含む分画を得るステップとを更に含む、請求項36から44に記載の方法。
  46. 水のpHおよび温度がpH7.0と20℃である、請求項45記載の方法。
  47. α‐およびβ‐カゼインの溶液を2℃まで冷却し、酸性pHに調整する、請求項45から46に記載の方法。
  48. α‐およびβ‐カゼインの溶液を2℃まで冷却し、pH4.5に調整する、請求項47記載の方法。
  49. 選択的等電点沈殿で得た上清を温め、酸沈殿処理によりβ‐カゼインを主に含む分画を回収する、請求項45から48に記載の方法。
  50. 再溶解と再沈殿のステップを繰り返し、α‐カゼインを主に含む分画とβ‐カゼインを主に含む分画を得る、請求項45から49に記載の方法。
  51. カゼインナトリウム溶液のpHをアルカリ溶液の添加により引き上げ、酸溶液の添加により引き下げる、請求項36から50のいずれかに記載の方法。
  52. カゼインナトリウム溶液を水酸化ナトリウムの添加によりpH11まで引き上げる、請求項36から50のいずれかに記載の方法。
  53. アルカリ溶液添加時のカゼインナトリウム溶液の温度が30℃である、請求項36から52のいずれかに記載の方法。
  54. カゼインナトリウム溶液のpHを引き上げるステップの後で溶液を最長5分まで静置する、請求項36から52のいずれかに記載の方法。
  55. アルカリ性カゼインナトリウム溶液中の塩化カルシウムの最終濃度が0.071Mである、請求項36から54のいずれかに記載の方法。
  56. pHを1またはそれ以上の鉱酸の添加によりpH7.0まで引き下げる、請求項36から55のいずれかに記載の方法。
  57. κ−カゼイン高濃縮分画のpHを引き上げてから限界濾過を行いカゼインナトリウム溶液中のカゼイン、乳清タンパク質およびカゼインマクロペプチドから低分子量物質を分離するステップも含む、請求項36から55のいずれかに記載の方法。
  58. pHを中性値まで引き上げる、請求項57記載の方法。
  59. 限外濾過を25kD未満であって12kDより大きい孔径の膜を用いて行う、請求項57から58に記載の方法。
  60. κ‐カゼイン高濃縮分画のpHを下げて、限外濾過を行いカゼインマクロペプチドから乳清タンパク質を分離するステップも含む、請求項36から59のいずれかに記載の方法。
  61. pHをpH4からpH5の間に引き下げる、請求項60記載の方法。
  62. 限外濾過を7kDより大きく、20kDより小さい孔径の膜を用いて行う、請求項60から61に記載の方法。
  63. 請求項36から62に記載の方法により得ることができる精製タンパク質分画。
  64. 請求項36から62に記載の方法により得た精製タンパク質分画。
  65. 請求項63または64のいずれかに記載された、α‐カゼインである精製タンパク質分画。
  66. 請求項63または64のいずれかに記載された、β‐カゼインである精製タンパク質分画。
  67. 請求項63または64のいずれかに記載された、少量のα‐およびβ‐カゼインを含むκ‐カゼイン高濃縮分画である精製タンパク質分画。
  68. 請求項1から28に記載の方法で得る事のできる、フェニールケトン尿症患者の栄養に好適であるカゼインマクロペプチド調整物。
  69. 請求項1から28に記載の方法で得られた、フェニールケトン尿症患者の栄養に好適であるカゼインマクロペプチド調整物。
  70. 請求項36から62に記載の方法で得ることができる、フェニールケトン尿症患者の栄養に好適であるカゼインマクロペプチド調製物。
  71. 請求項36から62に記載の方法で得た、フェニールケトン尿症患者の栄養に好適なカゼインマクロペプチド調製物。
JP2003509871A 2001-07-06 2002-07-05 ミルクおよびカゼイン塩からカゼイン分画を抽出する方法、および新規生成物の製造方法 Pending JP2004521650A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
GBGB0116509.1A GB0116509D0 (en) 2001-07-06 2001-07-06 Methods of extracting casein fractions from milk and caseinates and production of novel products
PCT/GB2002/003098 WO2003003847A1 (en) 2001-07-06 2002-07-05 Methods of extracting casein fractions from milk and caseinates and production of novel products

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004521650A true JP2004521650A (ja) 2004-07-22

Family

ID=9918018

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003509871A Pending JP2004521650A (ja) 2001-07-06 2002-07-05 ミルクおよびカゼイン塩からカゼイン分画を抽出する方法、および新規生成物の製造方法

Country Status (8)

Country Link
US (1) US20040234666A1 (ja)
EP (1) EP1406507B1 (ja)
JP (1) JP2004521650A (ja)
AT (1) ATE349903T1 (ja)
DE (1) DE60217347T2 (ja)
ES (1) ES2282431T3 (ja)
GB (1) GB0116509D0 (ja)
WO (1) WO2003003847A1 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007037413A1 (ja) * 2005-09-30 2007-04-05 Morinaga Milk Industry Co., Ltd. グルカゴン様ペプチド-1分泌促進剤、グルカゴン様ペプチド-1分泌促進用飲食品、食後血糖値上昇抑制剤および食後血糖値上昇抑制用飲食品
JP2009190980A (ja) * 2008-02-12 2009-08-27 Snow Brand Milk Prod Co Ltd 内臓脂肪蓄積抑制剤
KR101837461B1 (ko) 2017-05-30 2018-03-12 류정하 카제인플라스틱 제조방법 및 이 방법에 의한 카제인플라스틱으로 만들어진 유아놀이용품

Families Citing this family (30)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
NZ574520A (en) * 2002-11-27 2011-02-25 Dmi Biosciences Inc Use of casein which is at least 10% dephosphorylated for the treatment of diseases and conditions mediated by increased phosphorylation
US7951410B2 (en) 2003-04-14 2011-05-31 Mead Johnson Nutrition Company Enteral compositions containing caseinoglycomacropeptide having an enhanced concentration of sialic acid
US7867541B2 (en) 2003-04-14 2011-01-11 Mead Johnson Nutrition Company Compositions and methods of formulation for enteral formulas containing sialic acid
TW200740373A (en) * 2005-06-30 2007-11-01 Fonterra Co Operative Group Dairy product and process
FR2901796A1 (fr) * 2006-05-31 2007-12-07 Lab Francais Du Fractionnement Procede d'extraction d'une ou de plusieurs proteines presentes dans du lait
JP4394155B2 (ja) * 2006-06-09 2010-01-06 森永乳業株式会社 脂質代謝改善剤
WO2008145183A1 (en) * 2007-05-30 2008-12-04 Nestec S.A. Oil-in-water emulsion and its use for the delayed release of active elements
US8871276B2 (en) * 2008-02-11 2014-10-28 Technion Research And Development Foundation Ltd. Beta-casein assemblies for mucosal delivery of therapeutic bioactive agents
US8865223B2 (en) * 2008-02-11 2014-10-21 Technion Research And Development Foundation Ltd. Beta-casein assemblies for mucosal delivery of therapeutic bioactive agents
WO2009101612A2 (en) * 2008-02-11 2009-08-20 Technion Research And Development Foundation Ltd. Beta-casein assemblies for enrichment of food and beverages and methods of preparation thereof
US20110045092A1 (en) * 2008-02-11 2011-02-24 Livney Yoav D Casein particles encapsulating therapeutically active agents and uses thereof
NZ566358A (en) * 2008-02-29 2010-11-26 Fonterra Co Operative Group Dairy product and process
PT2674037E (pt) * 2009-01-26 2016-02-03 Burcon Nutrascience Mb Corp Produção de produto de proteína de soja solúvel a partir de massa micelar de proteína de soja (s200ca)
WO2013083754A1 (en) * 2011-12-09 2013-06-13 Sietze Sietzema Method for detection of bacteria in milk
CN102675448B (zh) * 2012-06-08 2014-07-02 广西大学 一种分离水牛奶中酪蛋白组分的方法
CN103792298B (zh) * 2012-11-02 2015-02-25 内蒙古伊利实业集团股份有限公司 一种乳制品中酪蛋白磷酸肽含量的检测方法
WO2014182166A1 (en) * 2013-05-08 2014-11-13 Friesland Brands B.V. Method for the preparation of a dairy gel by means of a high pressure treatment
CN106198692B (zh) * 2016-08-31 2017-12-01 内蒙古蒙牛乳业(集团)股份有限公司 检测牛乳中A1β‑酪蛋白及A2β‑酪蛋白的方法
US10980269B2 (en) * 2016-12-12 2021-04-20 Mead Johnson Nutrition Company Protein hydrolysates and methods of making same
CN108567045B (zh) * 2017-03-14 2021-03-26 中国农业大学 一种以曲拉为原料梯度pH值分级生产干酪素的方法
US20190208807A1 (en) 2018-01-05 2019-07-11 Mead Johnson Nutrition Company Nutritional compositions containing milk-derived peptides and uses thereof
CN108191967A (zh) * 2018-01-23 2018-06-22 新希望双喜乳业(苏州)有限公司 一种牛奶中A2-β-酪蛋白的分离方法
AU2019243464A1 (en) * 2018-03-30 2020-11-05 Megmilk Snow Brand Co., Ltd. Method for producing composition containing kappa-casein glycomacropeptide
CN110973345B (zh) * 2019-12-26 2022-02-25 吉林大学 一种初乳中功能性乳蛋白连续分离制备的方法
CN111303269B (zh) * 2020-03-17 2023-03-28 新希望乳业股份有限公司 一种提取牛奶中κ-酪蛋白的方法及其产品
WO2021210539A1 (ja) * 2020-04-13 2021-10-21 合同酒精株式会社 発酵乳及びその製造方法、並びに脱リン酸乳
CN113061173B (zh) * 2021-03-18 2022-11-04 江南大学 一种分离αs1-酪蛋白的方法
EP4098128A1 (en) 2021-06-01 2022-12-07 Baio Method for producing casein and uses thereof
IL308700A (en) 2021-06-01 2024-01-01 Standing Ovation A method for the production of casein and its uses
CN115989846B (zh) * 2023-03-21 2023-05-30 中国农业大学 一种曲拉酪蛋白分级制备方法

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
NL8204923A (nl) * 1982-12-21 1984-07-16 Stichting Nl I Zuivelonderzoek Werkwijze voor het bereiden van een precipitaat van caseine en wei-eiwit alsmede aldus bereid precipitaat.
FR2592769B1 (fr) * 1986-01-10 1990-10-12 Agronomique Inst Nat Rech Procede d'obtention d'une matiere enrichie en caseine beta, appareillage pour la mise en oeuvre de ce procede, et application des produits obtenus par ce procede comme aliments, complements alimentaires ou additifs en industrie alimentaire et pharmaceutique ou dans la preparation de peptides a activite physiologique
JP2673828B2 (ja) * 1989-04-19 1997-11-05 雪印乳業株式会社 κ―カゼイングリコマクロペプチドの製造法
CH681543A5 (ja) * 1990-04-27 1993-04-15 Nestle Sa
FR2663637B1 (fr) * 1990-06-25 1992-09-18 Eurial Procede et dispositif pour l'obtention de caseine beta.
AU677230B2 (en) * 1992-09-22 1997-04-17 New Zealand Dairy Board A process for producing beta-casein enriched products
DK2193D0 (ja) * 1993-01-08 1993-01-08 Novo Nordisk As
JP2000517180A (ja) * 1996-08-30 2000-12-26 ソシエテ デ プロデユイ ネツスル ソシエテ アノニム フェニルケトン尿症患者用の栄養配合物
EP0963163A4 (en) * 1996-10-01 2004-09-08 Univ Massey PROCESS FOR ISOLATING GLYCOMACROPEPTIDE FROM DAIRY PRODUCTS, WITH A PHENYLALANINE IMPURE OF 0.5% BY WEIGHT

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007037413A1 (ja) * 2005-09-30 2007-04-05 Morinaga Milk Industry Co., Ltd. グルカゴン様ペプチド-1分泌促進剤、グルカゴン様ペプチド-1分泌促進用飲食品、食後血糖値上昇抑制剤および食後血糖値上昇抑制用飲食品
US8114837B2 (en) 2005-09-30 2012-02-14 Morinaga Milk Industry Co., Ltd. Method for inhibiting postprandial rise in blood glucose by administering κ-casein
US8367608B2 (en) 2005-09-30 2013-02-05 Morinaga Milk Industry Co., Ltd. Method for promoting secretion of glucagon-like peptide-1 by administering κ-casein
JP2009190980A (ja) * 2008-02-12 2009-08-27 Snow Brand Milk Prod Co Ltd 内臓脂肪蓄積抑制剤
KR101837461B1 (ko) 2017-05-30 2018-03-12 류정하 카제인플라스틱 제조방법 및 이 방법에 의한 카제인플라스틱으로 만들어진 유아놀이용품

Also Published As

Publication number Publication date
ATE349903T1 (de) 2007-01-15
EP1406507B1 (en) 2007-01-03
US20040234666A1 (en) 2004-11-25
ES2282431T3 (es) 2007-10-16
DE60217347D1 (de) 2007-02-15
DE60217347T2 (de) 2007-10-04
GB0116509D0 (en) 2001-08-29
EP1406507A1 (en) 2004-04-14
WO2003003847A1 (en) 2003-01-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1406507B1 (en) Methods of extracting casein fractions from milk and caseinates and production of novel products
US4358465A (en) Phosphopeptides from casein-based material
FI68503C (fi) Foerfarande foer framstaellning av enzymatiskt totalhydrolysatav vassleproteiner
FI67654C (fi) Foerfarande foer framstaellning av en rikligt alfa-lakta-albumin innehaollande produkt
JP2881044B2 (ja) κ−カゼイノ−グリコマクロペプチドの製造方法
US5436020A (en) Method for producing a formulated milk for infants analogous to human milk
Bonnaillie et al. Whey protein fractionation
US5750183A (en) Process for producing proteinaceous microparticles
Pearce Whey protein recovery and whey protein fractionation
JP3261429B2 (ja) 人乳に類似した育児用調製乳
EP2098122A1 (en) Proteose Peptone Fraction
US20030078392A1 (en) Milk and cheese modification process, including methods of extracting beta-lactoglobulin and caseins from milk and milk products, and novel products thereby produced
JP3225080B2 (ja) κ−カゼイングリコマクロペプチド含有量の高い組成物の製造方法
US5436014A (en) Removing lipids from cheese whey using chitosan
US5334408A (en) Nutrient composition containing non-phosphorylated peptides from casin-based material
US5216123A (en) Non-phosphorylated peptides from casein-based material
AU2019252178B2 (en) Method for separation of proteins naturally occurring in mammalian milk
CN117069824A (zh) 羊乳中的功能性乳蛋白和多肽及其从羊乳中连续分离的方法和应用
JPH0150385B2 (ja)
IE920012A1 (en) Process for the separation of whey proteins and products¹obtained
Rodrigues et al. Milk proteins
Mulvihill FOOD CHEMISTRY DEPARTMENT, UNIVERSITY COLLEGE, CORK, IRELAND
MOHAMED ISOLATION OF β-LACTOGLOBULIN AND α-LACTALBUMIN FROM WHEY