JP2004517827A - 新規なカルバメート置換ピラゾロピリジン誘導体 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
本発明は、可溶性グアニル酸シクラーゼを刺激する新規化合物、その製造方法、および薬剤(特に、心血管疾患の治療のための薬剤)としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物細胞における最も重要な細胞伝達系の1つは、サイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)である。内皮から放出され、ホルモン性および機械性信号を伝達する一酸化窒素(NO)と共に、それはNO/cGMP系を形成する。グアニル酸シクラーゼは、グアノシン三リン酸(GTP)からのcGMPの生合成を触媒する。現在までに示されているこのファミリーの代表例は、構造的特徴およびリガンドのタイプの両方によって、2つのグループに分けることができる。即ち、ナトリウム排泄増加性ペプチドによって刺激されうる粒子状グアニル酸シクラーゼならびにNOによって刺激されうる可溶性グアニル酸シクラーゼである。可溶性グアニル酸シクラーゼは、2つのサブユニットからなり、調節部位の一部であるヘテロダイマー1個につきヘム1個を含有する可能性が極めて高い。後者は、活性化メカニズムに中心的重要性を有する。NOは、ヘムの鉄原子に結合することができ、それによって酵素の活性を顕著に増加させる。これに対して、ヘム不含の調製物は、NOによって刺激されえない。COも、ヘムの中心鉄原子に結合しうるが、COによる刺激はNOによる刺激より顕著に低い。
【0003】
cGMPの産生、ならびに、それから生じるホスホジエステラーゼ、イオンチャンネルおよびプロテインキナーゼの調節によって、グアニル酸シクラーゼは、種々の生理学的過程において、特に平滑筋細胞の弛緩および増殖、血小板凝集および付着、およびニューロン信号伝達、および前記過程の障害によって引き起こされる疾患において、重要な役割を担う。病態生理学的条件下に、NO/cGMP系が抑制される場合があり、それによって、例えば、高血圧、血小板活性化、細胞増殖の増加、内皮機能不全、アテローム性動脈硬化症、狭心症、心不全、血栓症、脳卒中および心筋梗塞が導かれることがある。
【0004】
NOに依存せず、生物におけるcGMP信号経路に影響を与えることを目的とする、前記疾患の可能な治療法は、高い有効性およびごくわずかの副作用が予測される故に、有望な方法である。
【0005】
現在まで、有機硝酸塩のような化合物(その作用はNOに基づく)が、専ら可溶性グアニル酸シクラーゼの治療的刺激に使用されてきた。NOは、生物変換によって産生され、ヘムの中心鉄原子に結合することによって可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化する。副作用に加えて、耐性の発生が、この治療法の重大な欠点の1つである。
【0006】
可溶性グアニル酸シクラーゼを直接的に(即ち、NOの前放出なしに)刺激するいくつかの物質が、最近になって示されている。これらは、例えば、3−(5´−ヒドロキシメチル−2´−フリル)−1−ベンジルインダゾール[YC−1、Wuら、Blood 84 (1994)、4226;Muelschら、Brit.J.Pharmacol.120 (1997)、681]、脂肪酸[Goldbergら、J.Biol.Chem.252 (1977)、1279]、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート[Pettiboneら、Eur.J.Pharmacol.116(1985)、307]、イソリキリチゲニン[Yuら、Brit.J.Pharmacol.114 (1995)、1587]および種々の置換ピラゾール誘導体(国際特許出願公開WO98/16223)である。
【0007】
さらに、国際特許出願公開WO98/16507、WO98/23619、WO00/06567、WO00/06568、WO00/06569およびWO00/21954は、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激物質としてピラゾロピリジン誘導体を開示している。これらの特許出願において、特に、3位にピリミジン残基を有するピラゾロピリジンも開示されている。この種の化合物は、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激に関して、極めて高いインビトロ活性を有する。しかし、これらの化合物は、それらのインビボ特性、例えば、肝臓におけるそれらの挙動、それらの薬物速度論挙動、それらの用量と反応の関係またはそれらの代謝経路に関して、いくつかの欠点を有することがわかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激物質として作用するが、先行技術の化合物の前記欠点を有さない他のピラゾロピリジン誘導体を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本発明に従い、請求項1に記載した化合物によって達成される。この新規な群のピラゾロピリジン誘導体は、3位にピリミジン残基を有することによって区別され、該残基は、特定の置換パターン、即ち、ピリミジン環の5位におけるカルバメートまたはチオカルバメート残基、ならびに、ピリミジン環の4位におけるアミノ基またはジアルキルアミド基を有する。
【0010】
具体的には、本発明は、以下の式(I)で示される化合物ならびにその塩、異性体および水和物に関する:
【化1】
[式中、
R1は、水素またはジ−C1−6−アルキルアミノカルボニル基であり、
R2は、式−O−CX−NR3R4の基であり、
Xは、OまたはSであり、
R3およびR4は、互いに同一または異なっていてよく、H、所望により置換されたC1−6−アルキル、所望により置換されたC1−6−アルコキシ−C1−6−アルキル、所望により置換されたヒドロキシ−C1−6−アルキル、所望により置換されたC2−6−アルケニル、所望により置換されたC1−6−アルキルカルボニルオキシ−C1−6−アルキル、所望により置換されたC1−6−アルコキシカルボニル−C1−6−アルキル、所望により置換されたヒドロキシカルボニル−C1−6−アルキル、C1−6−アルキル基によって所望により置換されたフェニル、C1−6−アルキル基を介して窒素原子に所望により結合した5〜7員の飽和複素環、または所望により置換されたC3−8−シクロアルキルからなる群から選択される基であって、R3およびR4が同時にHであることができないか、
あるいは
R3およびR4は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5〜7員の飽和複素環を形成し、該複素環は、N、O、Sからなる群から選択されるさらなるヘテロ原子を所望により含有することができ、そして/または所望によりフェニル環に融合または置換されていることもある]。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において好ましいのは、式(I)において、
R1が、水素またはジ−C1−6−アルキルアミノカルボニル基であり、
R2が、式−O−CX−NR3R4の基であり、
Xが、OまたはSであり、
R3およびR4が、同一または異なっていてよく、H、所望によりCNまたはハロゲン置換基を有するC1−6−アルキル、C1−6−アルコキシ−C1−6−アルキル、ヒドロキシ−C1−6−アルキル、C2−6−アルケニル、C1−6−アルキルカルボニルオキシ−C1−6−アルキル、C1−6−アルコキシカルボニル−C1−6−アルキル、ヒドロキシカルボニル−C1−6−アルキル、フェニル、p−トリル、C1−6−アルカンジイル基を介して窒素原子に結合し、2個までの酸素原子を有する5〜7員の飽和複素環、または所望により置換されたC3−8−シクロアルキルからなる群から選択される基であって、R3およびR4が同時にHであることができないか、
あるいは
R3およびR4が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5〜7員の飽和複素環を形成し、該複素環が、N、O、Sからなる群から選択されるさらなるヘテロ原子を所望により含有することができ、そして/または所望によりフェニル環に融合または置換されていることもある、
化合物ならびにその塩、異性体および水和物である。
【0012】
本発明において特に好ましいのは、式(I)において、
R1が、水素またはジエチルアミノカルボニル基であり、
R2が、式−O−CX−NR3R4の基であり、
Xが、OまたはSであり、
R3およびR4が、同一または異なっていてよく、H、メチル、エチル、イソプロピル、ブタン−2−イル、メトキシエチル、2−メトキシ−1−メチルエチル、1−シアノ−1−メチルエチル、2−シアノエチル、2−クロロエチル、エトキシカルボニルメチル、ヒドロキシカルボニルメチル、2−プロペニル、フェニル、p−トリル、1,3−ジオキソラン−2−メチル、シクロヘキシルまたはシクロペンチルからなる群から選択される基であって、R3およびR4が同時にHであることができないか、
あるいは
R3およびR4が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5または6員の飽和複素環を形成し、該複素環が、N、Oからなる群から選択されるさらなるヘテロ原子を所望により含有することができ、そして/またはメチルカルボニル、エトキシカルボニルまたはt−ブトキシカルボニルからなる群から選択される置換基を所望により含有することができるか、または一緒になって1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−N−イルである、
化合物ならびにその塩、異性体および水和物である。
【0013】
一般式(I)で示される本発明の化合物は、その塩の形態にあることもできる。通常は、有機または無機の塩基または酸との塩を挙げることができる。
【0014】
生理学的に許容される塩が本発明の目的のために好ましい。本発明の化合物の生理学的に許容される塩は、本発明の物質と、無機酸、カルボン酸またはスルホン酸との塩であってよい。特に好ましい例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、燐酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸または安息香酸との塩である。
【0015】
また、生理学的に許容される塩は、遊離カルボキシル基を有する本発明の化合物の金属塩またはアンモニウム塩であってもよい。特に好ましい例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウム塩、ならびに、アンモニアまたは有機アミン、例えば、エチルアミン、ジまたはトリエチルアミン、ジまたはトリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、アルギニン、リシンまたはエチレンジアミンから誘導されるアンモニウム塩である。
【0016】
本発明の化合物は、像と鏡像の関係にある(エナンチオマー)か、または像と鏡像の関係にない(ジアステレオマー)、立体異性体の形態で存在することができる。本発明は、エナンチオマーまたはジアステレオマー、これらそれぞれの混合物の両方に関する。ラセミ形態は、ジアステレオマーと同様に、既知の方法で、例えばクロマトグラフィー分離によって、立体異性体的に純粋な成分に分離することができる。本発明の化合物に存在する二重結合は、シスまたはトランス配置(ZまたはE形)であることができる。
【0017】
さらに、ある種の化合物は互変異性形態で存在することもできる。これは当業者に既知であり、本発明は、そのような化合物をも包含する。
また、本発明の化合物は、それらの水和物の形態で存在することもでき、分子に結合している水分子の数は、本発明の特定の化合物に依存する。
【0018】
他に記すことがなければ、本発明の目的のために、置換基は下記の意味を一般に有する。
「アルキル」は、一般に、炭素原子1〜20個を有する直鎖または分岐鎖の炭化水素基である。その例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチル、ノニル、デシル、ドデイル、エイコシルである。
【0019】
「アルキレン」は、一般に、炭素原子1〜20個を有する直鎖または分岐鎖の炭化水素架橋である。その例は、メチレン、エチレン、プロピレン、α−メチルエチレン、β−メチルエチレン、α−エチルエチレン、β−エチルエチレン、ブチレン、α−メチルプロピレン、β−メチルプロピレン、γ−メチルプロピレン、α−エチルプロピレン、β−エチルプロピレン、γ−エチルプロピレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ドデイレンおよびエイコシレンである。
【0020】
「アルケニル」は、一般に、炭素原子2〜20個を有し、1つまたはそれ以上、好ましくは1つまたは2つの二重結合を有する直鎖または分岐鎖の炭化水素基である。その例は、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、イソヘキセニル、ヘプテニル、イソヘプテニル、オクテニル、イソオクテニルである。
【0021】
「アルキニル」は、一般に、炭素原子2〜20個を有し、1つまたはそれ以上、好ましくは1つまたは2つの三重結合を有する直鎖または分岐鎖の炭化水素基である。その例は、エチニル、2−ブチニル、2−ペンチニルおよび2−ヘキシニルである。
【0022】
「アシル」は、一般に、カルボニル基を介して結合している炭素原子1〜9個を有する直鎖または分岐鎖の低級アルキルである。その例は、アセチル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、ブチルカルボニルおよびイソブチルカルボニルである。
【0023】
「アルコキシ」は、一般に、酸素原子を介して結合している炭素原子1〜14個を有する直鎖または分岐鎖の炭化水素基である。その例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、ヘキソキシ、イソヘキソキシ、ヘプトキシ、イソヘプトキシ、オクトキシまたはイソオクトキシである。「アルコキシ」および「アルキルオキシ」は同意語として使用される。
【0024】
「アルコキシアルキル」は、一般に、8個までの炭素原子を有するアルコキシ基によって置換された、8個までの炭素原子を有するアルキル基である。
「アルコキシカルボニル」は、例えば、式:
【化2】
によって示すことができる。この場合、アルキル(Alkyl)は、一般に、炭素原子1〜13個を有する直鎖または分岐鎖の炭化水素基である。その例は、次のアルコキシカルボニル基である:メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニルまたはイソブトキシカルボニル。
【0025】
「シクロアルキル」は、一般に、炭素原子3〜8個を有する環状炭化水素基である。シクロプロピル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが好ましい。例は、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルである。
「シクロアルコキシ」は、本発明の目的のためには、その炭化水素基がシクロアルキル基であるアルコキシ基である。シクロアルキル基は、一般に8個までの炭素原子を有する。その例は、シクロプロピルオキシおよびシクロヘキシルオキシである。「シクロアルコキシ」および「シクロアルキルオキシ」という用語は同意語として使用される。
【0026】
「アリール」は、一般に、炭素原子6〜10個を有する芳香族基である。好ましいアリール基は、フェニルおよびナフチルである。
「ハロゲン」は、本発明の目的のためには、弗素、塩素、臭素および沃素である。
【0027】
「複素環」は、本発明の目的のためには、一般に、飽和、不飽和または芳香族の3〜10員(例えば5または6員)の複素環であり、該複素環は、S、Nおよび/またはOからなる群からのヘテロ原子3個までを含有していてもよく、窒素原子の場合は、これを介して結合していてもよい。その例は、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、チエニル、フリル、ピロリル、ピロリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、1,2,3−トリアゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、モルホリニルまたはピペリジルである。チアゾリル、フリル、オキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニルおよびテトラヒドロピラニルが好ましい。「ヘテロアリール」(または「ヘトアリール」)という用語は、芳香族複素環式基を意味する。
【0028】
式(I)で示される本発明の化合物は、下記のように製造することができる:
以下の式(II):
【化3】
で示される化合物を、以下の式(III):
【化4】
で示される化合物と、有機溶媒中、塩基の存在下に加熱しながら反応させ、次に、エーテル基を遊離ヒドロキシル基に変換して、以下の式(IV):
【化5】
で示される化合物を得、次に、式:X−CO−NR3R4 [式中、Xはハロゲン基またはアルコキシ基であり、R3およびR4は前記に定義した通りである]で示される化合物と、有機溶媒中、適切であれば塩基の存在下に反応させ、適切であれば次に保護基を除去して、式(I)で示される化合物を得る。
【0029】
式(II)で示される化合物は、下記の反応式に示すように製造することができる:
【化6】
【0030】
式(II)で示される化合物は、文献[BorscheおよびManteuffel、Liebigs.Ann.Chem.1934、512、97)から既知のシアノピルビン酸エチルのナトリウム塩からの多段階合成によって得ることができる。それと2−フルオロベンジルヒドラジンとを、不活性溶媒(ジオキサンなど)中で保護ガス雰囲気下に加熱しながら反応させて、5−アミノ−1−(2−フルオロベンジル)ピラゾール−3−カルボン酸エチルを得る。これを、酸性媒体中、保護ガス雰囲気下に加熱しながら、ジメチルアミノアクロレインまたは1,1,3,3−テトラメトキシプロパンと反応させて、対応するピリジン誘導体に環化する。このピリジン誘導体 1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−カルボン酸エチルを、アンモニアを使用するエステルから対応するアミドへの変換、脱水剤(無水トリフルオロ酢酸など)を使用する対応するニトリル誘導体への脱水、ニトリル誘導体とナトリウムエトキシドとの反応、および最後の塩化アンモニウムとの反応からなる多段階法によって、式(II)で示される化合物に変換する。
【0031】
式(III)で示される化合物は、購入可能(例えばAldrichから可能)な化合物であるt−ブトキシビス(ジメチルアミノ)メタンおよびメトキシアセトニトリルから、これらの反応物質を好ましくは等モル量で、適切であれば不活性な有機溶媒(例えば環状エーテル、好ましくはジオキサン)中、好ましくは大気圧において反応させ、反応溶液を、数時間(例えば12時間)にわたり高温(例えば60〜110℃、好ましくは70〜90℃、特に80℃)で撹拌することによって製造することができる。
【0032】
式(IV)で示される化合物を得るための、式(II)および(III)で示される化合物の反応は、これら反応物質を等モル量で、または式(III)で示される化合物をわずかに過剰量で、有機溶媒(例えばアルコール、好ましくはイソアミルアルコール)中、少量の塩基(例えば有機アミン、特にピペリジン)の存在下に、好ましくは大気圧下で使用し、反応溶液を数時間(例えば12時間)にわたり高温(例えば60〜130℃、好ましくは80〜120℃、特に110℃)で撹拌し、次に、このようにして得た化合物を好ましくは等モル量のチオール(例えばチオフェノールなど)と、少量の塩基(例えばアルカリ金属塩基、例えばアルカリ金属炭酸塩、好ましくは炭酸カリウム)の存在下、有機溶媒(例えば1−メチル−2−ピロリドンなど)中、好ましくは大気圧下で反応させ、反応溶液を数時間(例えば1時間)にわたり高温(例えば100〜200℃、好ましくは150〜200℃)で撹拌することによって行うことができる。
【0033】
式(IV)で示される化合物を、式:X−CO−NR3R4 [式中、X、R3およびR4は前記に定義した通りである]で示される化合物と反応させて、式(I)で示される本発明の化合物を得ることができる。前記のカルバモイル誘導体は、購入可能であるか、または当業者に既知である方法によって得ることができる。ここで、適当な第二アミンとホスゲンまたはホスゲン代替物[例えばクロロ蟻酸トリクロロメチル(ジホスゲン)または炭酸ビス(トリクロロメチル)(トリホスゲン)]との反応を、例示のために挙げることができる(J.March、Advanced Organic Synthesis、第3版、Wiley編、1985、370、D.Hoppe、Synthesis、1996、149−154を参照)。この反応に必要な第二アミンは、購入可能であるか、または当業者に既知である方法によって得ることができる。即ち、例えば、第一アミンと適当なアルデヒドまたはケトンとを、このような反応に一般的に使用される還元剤(例えば金属水素化物コンプレックス、好ましくはアルカリ金属水素化物コンプレックス、例えば水素化シアノホウ素ナトリウム)を用いて、反応させることによって得ることができる(「還元的アミノ化」)(K.−L.Yu、J.Ostrowski、P.Reczek、M.M.Mansuri、J.E.Starrett Jr.、Synthetic Communication、1995、25、2819−2827を参照)。
【0034】
式(I)で示される本発明の化合物を得るための、式(IV)で示される化合物と式:X−CO−NR3R4 [式中、X、R3およびR4は前記に定義した通りである]で示される化合物との反応は、好ましくは、このような反応に一般的に使用される有機溶媒[例えば環状エーテル、特にテトラヒドロフラン(THF)]中、等モル量またはわずかに過剰量の塩基(好ましくはアルカリ金属塩基、好ましくはアルカリ金属水素化物、特に好ましくは水素化ナトリウム)の存在下、好ましくは大気圧下で、反応溶液を数時間(例えば12時間)にわたり室温で撹拌することによって行う。このとき、反応物質は、等モル量で、またはカルバモイル誘導体のわずかに過剰量で使用する。また、反応を、ピリジン中で別の塩基を使用することなく、好ましくは大気圧下で、反応溶液を数時間(例えば2時間)にわたり高温(60〜130℃、好ましくは80〜120℃、特に110℃)で撹拌することによって行うこともできる。
【0035】
対応するカルバメートを得るための、式(IV)で示される化合物とチオカルバモイルクロリドとの反応も、同じように行うことができる。ピリジン中での反応が好ましい。本発明に従って使用したチオカルバモイルクロリドは購入することができる。
【0036】
次に、適切であれば分子上に存在する保護基を、当業者に既知である方法によって除去することができる。これに関連して、可能な保護基および標的化合物からのその除去については、例えば、T.W.Greene、P.G.M.Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第2版、ニューヨーク、1991を参照することができる。
【0037】
一般式(I)で示される本発明の化合物は、予期されなかった有効な薬理作用を示す。
一般式(I)で示される本発明の化合物は、血管弛緩および血小板凝集の阻害を導き、血圧の低下および冠状動脈血流の増加を導く。これらの作用は、可溶性グアニル酸シクラーゼの直接刺激およびcGMPの細胞内増加によって媒介される。さらに、一般式(I)で示される本発明の化合物は、cGMPレベルを増加させる物質、例えばEDRF(内皮由来の弛緩因子)、NO供与体、プロトポルフィリンIX、アラキドン酸またはフェニルヒドラジン誘導体の作用を増強する。
【0038】
従って、これら化合物は、心血管障害の治療、例えば、高血圧および心不全、安定および不安定狭心症、末梢および心臓血管障害、不整脈の治療;血栓塞栓性障害および虚血、例えば、心筋梗塞、脳卒中、一過性および虚血性発作、末梢血流障害の治療;血栓崩壊療法、経皮経管動脈形成術(PTA)、経皮経管冠状動脈形成術(PTCA)、バイパス後の再狭窄の予防;および、動脈硬化症、喘息性障害および泌尿生殖器系の疾患、例えば、前立腺肥大、勃起機能障害、女性性機能障害、骨粗鬆症、胃不全麻痺および失禁の治療;のための薬剤において使用することができる。
【0039】
また、一般式(I)で示される本発明の化合物は、NO/cGMP系の障害を特徴とする中枢神経系疾患を制御するための活性物質である。これら化合物は、中度認知障害、加齢性の学習および記憶障害、加齢性の記憶喪失、血管性痴呆、頭蓋脳外傷、脳卒中、脳卒中後に起こる痴呆(脳卒中後痴呆)、後外傷性脳障害、全般的集中障害、学習および記憶困難を有する小児集中障害、アルツハイマー病、血管性痴呆、レヴィー小体痴呆、前頭葉の変性を有する痴呆、例えばピック症候群、パーキンソン病、進行性核性麻痺、大脳皮質基底核変性を有する痴呆、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、多発性硬化症、視床変性、クロイツフェルト−ヤーコブ痴呆、HIV痴呆、痴呆を伴う精神分裂病またはコルサコフ精神病のような状態/疾患/症候群に特に関連して発生する認知障害後の、知覚、集中、学習または記憶を向上させるのに特に好適である。これら化合物は、中枢神経系障害、例えば、不安、緊張および抑鬱状態、CNS関連の性機能障害および睡眠障害の治療に、ならびに、食物、刺激物質および依存性物質の摂取の病理学的障害の制御にも好適である。
【0040】
該活性成分は、脳の血流を制御するのにも好適であり、従って、偏頭痛を制御するための有効物質である。
該成分は、脳卒中、脳虚血および頭蓋脳外傷のような脳梗塞の後遺症の予防および抑制にも好適である。一般式(I)で示される本発明の化合物は、疼痛状態の抑制にも使用することができる。
さらに、本発明の化合物は、抗炎症作用を有し、従って、抗炎症物質としても使用することができる。
【0041】
さらに、本発明は、一般式(I)で示される本発明の化合物と、有機硝酸塩およびNO供与体との組合せも包含する。
本発明の目的のために、有機硝酸塩およびNO供与体とは、一般に、NOまたはNO種の放出によってそれらの治療効果を示す物質である。ニトロプルシドナトリウム、ニトログリセリン、イソソルビドジニトレート、イソソルビドモノニトレート、モルシドミンおよびSIN−1が好ましい。
【0042】
さらに、本発明は、サイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)の分解を阻害する化合物との組合せも包含する。これらは、特に、ホスホジエステラーゼ1、2および5[BeavoおよびReifsnyder (1990)、TiPS 11、p.150−155の命名法]の阻害物質である。これらの阻害物質は、本発明の化合物の作用を増強し、所望の薬理作用を増加させる。
【0043】
生物学的試験
インビトロにおける血管弛緩作用
首の後に一撃を加えてウサギを気絶させ、放血させる。大動脈を取り出し、付着組織を除去し、1.5mm幅の輪に分割し、これを、以下の組成(mM):NaCl(119)、KCl(4.8)、CaCl2x2H2O(1)、MgSO4x7H2O(1.4)、KH2PO4(1.2)、NaHCO3(25)、グルコース(10)を有する、37℃のカルボゲン(carbogen)ガス処理したKrebs−Henseleit溶液を含有する器官浴5mL中で、1つずつ緊張状態におく。収縮力をStatham UC2セルで検出し、A/D変換器(DAS−1802 HC、Keithley Instruments Munich)で増幅し、数値化し、並行してチャートレコーダーに記録する。フェニレフリンを、増加する濃度で漸増的に浴に添加することによって、収縮を発生させる。数回の対照サイクル後に、被験物質を、それぞれの後続ランにおいて、各場合に増加する用量で試験し、収縮の高さを、直前のランで到達した収縮の高さと比較する。対照値の高さを50%減少させるのに必要な濃度(IC50)をこれから算出する。標準適用容量は5μlであり、浴溶液中のDMSO含量は0.1%に相当する。結果を下記の表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
インビトロにおける肝臓クリアランスの測定
ラットを麻酔し、ヘパリン投与し、門脈を介して肝臓を原位置で灌流する。次に、一次ラット肝細胞を、コラゲナーゼ溶液を使用して肝臓からインビトロで得る。2・106肝細胞/mLを、それぞれの場合に同濃度の被験化合物を使用して、37℃でインキュベートした。経時的な被験物質の減少を、生物学的分析(HPLC/UV、HPLC/蛍光またはLC/MSMS)によって、インキュベートの開始から0〜15分の時間内に、各場合に5つの時点で測定した。これから、細胞数および肝臓重量によってクリアランスを算出した。
【0046】
インビボにおける血漿クリアランスの測定
被験物質を、ラットの尾静脈に、溶液として静脈内投与する。所定の時点にラットから採血し、ヘパリン処理し、これから常法により血漿を得る。被験物質を、生物学的分析によって、血漿において定量する。この目的に使用される通常の非分画法(non−compartmental method)を使用してこのように求めた血漿濃度/時間の推移から、薬物速度論パラメーターを算出した。
【0047】
本発明は、非毒性かつ不活性な薬学的に適する担体に加えて、一般式(I)で示される本発明の化合物を含んでなる医薬調製物、および該調製物の製造方法を包含する。
活性成分は、適切であれば、1つまたはそれ以上の前記担体中にマイクロカプセル封入形態で存在することもできる。
【0048】
治療に有効な一般式(I)で示される化合物は、全混合物の約0.1〜99.5重量%、好ましくは約0.5〜95重量%の濃度で、前記の医薬調製物中に存在すべきである。
前記の医薬調製物は、一般式(I)で示される本発明の化合物の他に、他の活性医薬成分も含んでいてもよい。
【0049】
ヒトおよび獣医学の両方において、本発明の活性成分を、24時間につき約0.01〜約700mg/kg体重、好ましくは0.01〜100mg/kg体重の合計量で、適切であれば複数の単一用量の形態で投与して、所望の結果を得るのが有利であることが一般にわかっている。単一用量は、本発明の活性成分を、好ましくは約0.1〜約80mg/kg体重、特に0.1〜30mg/kg体重の量で含んでなる。
【実施例】
【0050】
下記の限定のためのものではない好ましい実施例によって、本発明をさらに詳しく説明する。他に記すことがなければ、全ての量データは重量%である。
略語
RT:室温
EA:酢酸エチル
MCPBA:m−クロロペルオキシ安息香酸
BABA:酢酸n−ブチル/n−ブタノール/氷酢酸/リン酸塩緩衝液pH6(50:9:25.15;有機相)
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
【0051】
薄層クロマトグラフィーのための移動相
T1E1:トルエン/酢酸エチル(1:1)
T1EtOH1:トルエン/メタノール(1:1)
C1E1:シクロヘキサン/酢酸エチル(1:1)
C1E2:シクロヘキサン/酢酸エチル(1:2)
【0052】
HPLC保持時間を測定する方法
方法A ( HPLC − MS ):
溶離剤:A=CH3CN B=0.6g 30%HCl/L H2O
流量:0.6mL/分
カラムオーブン:50℃
カラム:Symmetry C18 2.1*150mm
勾配:
【表2】
【0053】
方法B ( HPLC ):
溶離剤:A=5mL HClO4/L H2O、B=CH3CN
流量:0.75mL/分
L−R温度:30.00℃ 29.99℃
カラム:Kromasil C18 60*2mm
勾配:
【表3】
【0054】
方法C ( HPLC ):
溶離剤:A=H3PO4 0.01モル/L、B=CH3CN
流量:0.75mL/分
L−R温度:30.01℃ 29.98℃
カラム:Kromasil C18 60*2mm
勾配:
【表4】
【0055】
方法D ( キラルHPLC ):
溶離剤:50%イソヘキサン、50%エタノール
流量:1.00mL/分
温度:40℃
カラム:250*4.6mm、Chiralcel ODを装填、10μm
【0056】
方法E ( HPLC − MS ):
溶離剤:A=CH3CN B=0.3g 30%HCl/L H2O
流量:0.9mL/分
カラムオーブン:50℃
カラム:Symmetry C18 2.1*150mm
勾配:
【表5】
【0057】
方法F:
溶離剤:A=CH3CN+0.1%HCOOH B=H2O+0.1%HCOOH
カラムオーブン:40℃
カラム:Symmetry C18 2.1*150mm
勾配:
【表6】
【0058】
出発化合物
I.3 , 3 − ビス ( ジメチルアミノ )− 2 − メトキシプロピオニトリルの合成
【化7】
ter−ブトキシビス(ジメチルアミノ)メタン40.0g(229.5mモル)およびメトキシアセトニトリル16.3g(229.5mモル)を80℃で一晩撹拌した。後処理のために、揮発性物質を回転蒸発器でストリッピングし、残留物を、クーゲルロアー(kugelrohr)で高真空下に140℃で蒸留した。NMRスペクトル(300MHz、D6−DMSO)は、生成物が、ジメチルアミンの脱離によって得られたE/Z混合物としてエナミンを含有していることを示した。生成物混合物を、さらに精製せずに次の反応に使用した。
収量:24.7g(60%)
【0059】
II.1 −( 2 − フルオロベンジル )− 1H − ピラゾロ [ 3 , 4 − b ] ピリジン − 3 − カルボキサミジンの合成
2A:5−アミノ−1−(2−フルオロベンジル)ピラゾール−3−カルボン酸エチル
【化8】
トリフルオロ酢酸111.75g(75mL、0.98モル)を、ジオキサン2.5L中のシアノピルビン酸エチルのナトリウム塩(BorscheおよびManteuffel、Liebigs Ann.1934、512、97に類似した方法で製造)100g(0.613mモル)に、アルゴン下に室温で効果的に撹拌しながら添加し、混合物を10分間撹拌した。その間に大部分の前駆体が溶解した。次に、2−フルオロベンジルヒドラジン85.93g(0.613モル)を添加し、混合物を一晩沸騰させた。冷却した後、分離したトリフルオロ酢酸ナトリウムの結晶を吸引濾過し、ジオキサンで洗浄し、粗溶液をさらに反応させた。
【0060】
2B:1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−カルボン酸エチル
【化9】
実施例2Aで得た溶液を、ジメチルアミノアクロレイン61.25mL(60.77g、0.613mモル)およびトリフルオロ酢酸56.28mL(83.88g、0.736モル)と混合し、アルゴン下に3日間沸騰させた。次に、溶媒を真空蒸発させ、残留物を水2Lに添加し、酢酸エチル各1Lで3回抽出した。合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、回転蒸発器で濃縮した。シリカゲル2.5kgのクロマトグラフィーにかけ、トルエン/トルエン−酢酸エチル=4:1の勾配で溶離した。
収量:91.6g(2段階で理論量の49.9%)。
融点:85℃
Rf(SiO2、T1E1):0.83
【0061】
2C:1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−カルボキサミド
【化10】
実施例2Bで得たエステル10.18g(34mモル)を、アンモニアで飽和したメタノール150mLに0〜10℃で導入した。室温で2日間撹拌し、次に、真空濃縮した。
Rf(SiO2、T1E1):0.33
【0062】
2D:3−シアノ−1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン
【化11】
実施例2Cの1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−カルボキサミド36.1g(133mモル)を、THF330mLに溶解し、ピリジン27g(341mモル)を添加した。次に、無水トリフルオロ酢酸47.76mL(71.66g、341mモル)を10分間で添加した。その間に温度が40℃に上昇した。混合物を室温で一晩撹拌した。次に、これを水1Lに添加し、酢酸エチル各0.5Lで3回抽出した。有機相を炭酸水素ナトリウム飽和溶液および1N HClで洗浄し、MgSO4で乾燥し、回転蒸発器で濃縮した。
収量:33.7g(理論量の100%)
融点:81℃
Rf(SiO2、T1E1):0.74
【0063】
2E:(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−カルボキシイミド酸メチル
【化12】
ナトリウムメトキシド30.37g(562mモル)をメタノール1.5Lに溶解し、3−シアノ−1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン(実施例2Dより)36.45g(144.5mモル)を添加した。室温で2時間撹拌した後に得られた溶液を、次の段階に直接使用した。
【0064】
2F:1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−カルボキサミジン
【化13】
氷酢酸33.76g(32.19mL、562mモル)および塩化アンモニウム9.28g(173mモル)を、実施例2Eで得られたメタノール中の(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−カルボキシイミド酸メチルの溶液に添加し、混合物を還流下に一晩撹拌した。溶媒を真空蒸発させ、残留物をアセトンで徹底的にトリチュレーションし、沈殿した固形物を吸引濾過した。
1H−NMR(d6−DMSO、200MHz):δ=5.93(s、2H)、7.1−7.5(m、4H)、7.55(dd、1H)、8.12(dd、1H)、8.30(dd、1H)、9.5(bs、4H−交換可能)ppm。
ME(EI):m/z=270.2(M−HCl)。
【0065】
III.2 −[ 1 −( 2 − フルオロベンジル )− 1H − ピラゾロ [ 3 , 4 − b ] ピリジン − 3 − イル ]− 5 − メトキシ − 4 − ピリミジニルアミンの合成
【化14】
実施例IIの1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−カルボキシイミドアミド46.8g(134.8mモル)を、イソアミルアルコールに溶解した。これに、実施例Iの3,3−ビス(ジメチルアミノ)−2−メトキシプロピオニトリル24.7g(144.2mモル)およびピペリジン1.15g(1.33mL、13.5mモル)を添加し、混合物を110℃で3日間撹拌した。後処理のために、これを0℃まで冷却し、沈殿した生成物を吸引濾過し、冷ジエチルエーテルで徹底的に洗浄し、50℃の真空オーブンで乾燥した。
収量:25.4g(52.7%)。
Rf:0.34(ジクロロメタン/メタノール 20:1)。
1H−NMR:(400MHz、D6−DMSO)、δ=3.89(2、3H、OCH3)、5.79(s、2H、CH2)、6.93(br.s、2H、NH2)、7.10−7.26(m、3H、Ar−H)、7.31−7.39(m、2H、Ar−H)、7.98(s、1H、ピリミジンH)、8.61(dd、1H、ピリジンH)、8.92(dd、1H、ピリジンH)。
ME(EI):(ESI pos.)、m/z=350.9([M+H]+)、700.8([2M+H]+)。
【0066】
IV.4 − アミノ − 2 −[ 1 −( 2 − フルオロベンジル )− 1H − ピラゾロ [ 3 , 4 − b ] ピリジン − 3 − イル ]− 5 − ピリミジノールの合成
【化15】
実施例IIIの2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−メトキシ−4−ピリミジニルアミン25.3g(72.2mモル)を、1−メチル−2−ピロリドン500mLに溶解した。これに、チオフェノール7.96g(7.42mL、72.2mモル)および炭酸カリウム2.50g(18.1mモル)を添加し、混合物を190℃で約1時間撹拌した。後処理のために、溶媒を凝縮によって除去し、残留物を半濃縮(half−conc.)塩化アンモニウム溶液と混合し、酢酸エチルで3回抽出した。大部分の生成物がこの間に沈殿した。これを吸引濾過し、50℃の真空オーブンで乾燥した。
収量:18.1g(72.3%)。
Rf:0.44(ジクロロメタン/メタノール 10:1)。
1H−NMR:(300MHz、D6−DMSO)、δ=5.78(s、2H、CH2)、6.66(br.s、2H、NH2)、7.09−7.38(m、5H、Ar−H)、7.82(s、1H、ピリミジンH)、8.60(dd、1H、ピリジンH)、8.92(dd、1H、ピリジンH)、9.4−10.2(br.s、1H、OH)。
MS:(ESI pos.)、m/z=337.3([M+H]+)、673.3([2M+H]+)。
【0067】
V.3 , 4 − ジメトキシベンジル ( メチル ) カルバモイルクロリドの合成
【化16】
3,4−ジメトキシベンジル−N−メチルアミン(3,4−ジメトキシベンズアルデヒドから還元的アミノ化によって得られる)1.00g(5.52mモル)を、無水ピリジン20mLに溶解した。クロロ蟻酸トリクロロメチル(「ジホスゲン」)0.60g(0.37mモル、3.04mモル)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。この溶液を、後処理を行わずに次の段階に直接使用した。
【0068】
VI.4 − アミノ − 2 −[ 1 −( 2 − フルオロベンジル )− 1H − ピラゾロ [ 3 , 4 − b ] ピリジン − 3 − イル ]− 5 − ピリミジニル ] 3 , 4 − ジメトキシベンジル ( メチル ) カルバメート
【化17】
実施例IVの4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジノール1.38g(4.10mモル)を、無水ピリジン100mLに懸濁し、110℃に加熱する。これに、無水ピリジン20mL中の実施例Vの3,4−ジメトキシベンジル(メチル)カルバモイルクロリド1.20g(4.92mモル)の溶液(前記反応より得られる)を添加し、混合物を110℃で約5時間撹拌した。後処理のために、反応溶液を回転蒸発器で濃縮し、残留物を、ジクロロメタン/メタノール(初めは100:1、次に50:1)を使用してシリカゲルクロマトグラフィーにかける。NMRスペクトルによれば、生成物は未知の不純物を含有しているが、これをさらに精製せずに使用した。
Rf:0.90(ジクロロメタン/メタノール 10:1)
【0069】
VII.アリル ( シクロペンチル ) カルバモイルクロリドの合成
【化18】
蟻酸トリクロロメチル(「ジホスゲン」)790mg(0.48mL、3.99mモル)をジクロロメタン15mLに溶解し、0℃まで冷却した。これに、アリル(シクロペンチル)アミン1.00g(1.17mL、7.986mモル)およびトリエチルアミン1.21g(1.67mL、12.0mモル)をゆっくり滴下し、混合物を室温で一晩撹拌した。後処理のために、反応溶液を氷水に注ぎ、ジクロロメタンで3回抽出し、MgSO4で乾燥し、濃縮した。この粗生成物を、次の段階に直接使用した。
MS:(EI)、m/z(%)=187(12、[M]+、Cl)、152(30、[M−Cl]+)、120(45)、69(50)、41(100)。
【0070】
VIII.4 − メトキシベンジル ( 2 − メトキシエチル ) カルバモイルクロリド
【化19】
クロロ蟻酸トリクロロメチル(「ジホスゲン」)0.51g(0.31mL、2.56mモル)をジクロロメタン15mLに溶解し、4−メトキシベンジル(2−メトキシエチル)アミン1.00g(5.12mモル)およびトリエチルアミン0.78g(7.68mモル)をゆっくり添加した。室温で一晩撹拌した後、混合物を氷水に注ぎ、ジクロロメタンで3回抽出し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、回転蒸発器で濃縮乾固した。この粗生成物を、後処理を行わずに次の段階に直接使用した。
【0071】
IX.4 − アミノ − 2 −[ 1 −( 2 − フルオロベンジル )− 1H − ピラゾロ [ 3 , 4 − b ] ピリジン − 3 − イル ]− 5 − ピリミジニル 4 − メトキシベンジル ( 2 − メトキシエチル ) カルバメート
【化20】
実施例IVの4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジノール100mg(0.30mモル)を無水ピリジン15mLに懸濁し、110℃に加熱する。これに、実施例VIIIの4−メトキシベンジル(2−メトキシエチル)カルバモイルクロリド92.0mg(0.36mモル)を添加し、混合物を110℃で約2時間撹拌した。後処理のために、反応溶液を回転蒸発器で濃縮し、残留物をジクロロメタンに取り、塩化アンモニウム飽和溶液および塩化ナトリウム飽和溶液で洗浄し、有機相を分離し、回転蒸発器で濃縮した。残留物を、ジクロロメタン/メタノール(100:1)を使用してシリカゲルクロマトグラフィーにかけて、純度57%の生成物を得た。これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
Rf:0.86(ジクロロメタン/メタノール 10:1)
【0072】
実施例
テトラヒドロフラン(THF)中で水素化ナトリウムを使用するか、または溶媒としてのピリジン中で他の塩基を使用せずに、カルバメートを製造した。2つの反応経路のそれぞれについて、例示のための実施例を下記に示す。
【0073】
実施例1:4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル 1−ピロリジンカルボキシレート
【化21】
水素化ナトリウム3.5mg(0.15mモル)を、RTでTHF2mL中の実施例IVの4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジノール50.0mg(0.15mモル)の懸濁液に添加した。混合物をRTで30分間撹拌した後、1−ピロリジンカルボニルクロリド21.8mg(0.16mモル)を添加し、混合物をRTで一晩撹拌した。生成物を薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2/MeOH 10:1)によって精製した。
収量:50.4g(78.2%)。
1H−NMR:(400MHz、DMSO−d6):δ=1.81−1.93(m、4H)、3.22(t、J=6.5Hz、2H)、3.57(t、J=6.5Hz、2H)、5.81(s、2H)、7.05−7.30(m、5H)、7.31−7.44(m、2H)、8.12(s、1H)、8.63(d、J=4.4Hz、1H)、8.92(d、J=7.9Hz、1H)。
MS:(ESI pos.)、m/z=434.4([M+H]+)。
【0074】
下記の化合物を同様の方法で得た。
【表7】
【0075】
実施例3:4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル ジエチルカルバメート
【化22】
実施例IVの4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジノール100g(0.297mモル)を無水ピリジン15mLに懸濁し、110℃に加熱した。これに、N,N−ジエチルカルバモイルクロリド48.4mg(0.357mモル)を添加し、混合物を110℃で2時間撹拌した。次に、反応溶液を回転蒸発器で濃縮した。残留物を、ジクロロメタン/メタノール 100:1を使用してシリカゲルクロマトグラフィーにかけた。
収量:90.5g(69.9%)。
Rf:0.86(ジクロロメタン/メタノール 10:1)。
1H−NMR:(200MHz、d6−DMSO)、δ=1.07−1.28(m、6H、CH3CH2)、3.22−3.53(m、4H、CH3CH2)、5.83(s、2H、CH2)、7.10−7.42(m、7H、Ar−HおよびNH2)、8.09(s、1H、ピリミジンH)、8.63(dd、1H、ピリジンH)、8.94(dd、1H、ピリジンH)。
MS:(ESI pos.)、m/z=436.2([M+H]+)、871.0([2M+H]+)。
【0076】
下記の化合物を同様の方法で製造した。
実施例4:1−{4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル} tert−ブチル−1,4−ピペラジンジカルボキシレート
【化23】
収率:36.4%。
Rf:0.77(ジクロロメタン/メタノール 10:1)。
1H−NMR:(200MHz、d6−DMSO)(スペクトルはカルバメート基のE/Z回転異性を示す)、δ=1.39および1.42(2s、9H、C(CH3)3)、3.09−3.14(m、1H、ピペラジンH)、3.26−3.34(m、1H、ピペラジンH)、3.36−3.48(br.s、6H、ピペラジンH)、3.52−3.64(br.s、2H、ピペラジンH)、5.81(s、2H、CH2)、7.10−7.27(m、5H、ArHおよびNH2)、7.30−7.40(m、2H、Ar−H)、8.12(s、1H、ピリミジンH)、8.63(dd、1H、ピリジンH)、8.94(dd、1H、ピリジンH)。
MS:(ESI pos.)、m/z=549.1([M+H]+)。
【0077】
下記の化合物を同様の方法で得た。
【表8】
【0078】
【表9】
【0079】
【表10】
【0080】
【表11】
【0081】
【表12】
【0082】
【表13】
【0083】
実施例24:4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル 2−メトキシエチルカルバメート
【化24】
実施例IXの4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル 4−メトキシベンジル(2−メトキシエチル)カルバメート160.3mg(0.29mモル)を、トリフルオロ酢酸3mLに溶解し、60℃で6時間撹拌した。後処理のために、反応溶液を氷水に注ぎ、炭酸水素ナトリウムで注意深く中和し、ジクロロメタンで3回抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残留物を、ジクロロメタン/メタノール(30:1)を使用してシリカゲルクロマトグラフィーにかけた。
収量:28.3g(22.5%)。
Rf:0.88(ジクロロメタン/メタノール 10:1)。
1H−NMR:(200MHz、CDCl3)、δ=3.39(s、3H、OCH3)、3.43−3.58(m、4H、CH2CH2)、5.15−5.28(br.s、2H、NH2)、5.50−5.63(m、1H、NH)、5.93(s、2H、CH2)、6.86−7.30(m、5H、Ar−H)、8.37(s、1H、Ar−H)、8.59(dd、1H、Ar−H)、8.92(dd、1H、Ar−H)。
MS:(ESI pos.)、m/z=438.2[M+H]+。
【0084】
実施例25:4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル 1−ピペラジンカルボキシレート
【化25】
実施例4の1−{4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル} 4−tert−ブチル−1,4−ピペラジンジカルボキシレート214.2mg(0.390mモル)を、ジクロロメタン5mLに溶解し、トリフルオロ酢酸5mLを添加した。混合物を室温で1時間撹拌した。後処理のために、これを、1Nの水酸化ナトリウム溶液で中和し、ジクロロメタンで3回抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、回転蒸発器で濃縮した。
収量:123.1mg(64.0%)。
Rf:0.16(ジクロロメタン/メタノール 10:1)。
1H−NMR:(200MHz、D6−DMSO)、δ=2.67−2.81(br.s、4H、ピペラジンH)、3.21−3.41(br.s、2H、ピペラジンH、H2Oシグナルと一致)、3.42−3.59(br.s、2H、ピペラジンH)、5.81(s、2H、CH2)、7.08−7.41(m、7H、Ar−HおよびNH2)、8.10(s、1H、ピリミジンH)、8.63(dd、1H、ピリジンH)、8.92(dd、1H、ピリジンH)。
MS:(ESI pos.)、m/z=449.2([M+H]+)。
【0085】
実施例26:4−{[(ジエチルアミノ)カルボニル]アミノ}−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル ジエチルカルバメート
【化26】
実施例IVの4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジノール100mg(0.297mモル)を、無水THF5mLに懸濁し、水素化ナトリウム(95%)7.51mg(0.297mモル)を添加した。混合物を室温で30分間撹拌した。次に、N,N−ジエチルカルバモイルクロリド44.35mg(0.327mモル)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。水を注意深く添加し、混合物を酢酸エチルで3回抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、回転蒸発器で濃縮した。残留物を、ジクロロメタン/メタノール 100:1を使用してシリカゲルクロマトグラフィーにかけ、次に、分取HPLC(カラム:Kromasil 100 C 18、5μm、250x20mm、No.101132R、流量:25mL/分、温度50℃、水−アセトニトリル 50/50)にかけた。
収量:29.9g(18.8%)。
Rf:0.88(ジクロロメタン/メタノール 10:1)。
1H−NMR:(400MHz、D6−DMSO)、δ=1.07−1.19(m、12H、CH3CH2)、3.26−3.41(m、8H、CH3CH2)、5.85(s、2H、CH2)、7.11−7.44(m、5H、Ar−H)、8.52(s、1H、ピリミジンH)、8.68(dd、1H、ピリジンH)、9.02(dd、1H、ピリジンH)、9.39(br.s、1H、NH)。
【0086】
実施例27:4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル メチルカルバメート
【化27】
実施例VIの4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル 3,4−ジメトキシベンジル(メチル)カルバメート562.5mg(1.04mモル)を、トリフルオロ酢酸10mLに溶解し、60℃で4時間撹拌した。後処理のために、反応溶液を氷水に注ぎ、炭酸水素ナトリウムで注意深く中和し、ジクロロメタンで3回抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残留物を、ジクロロメタン/メタノール(初めは100:1、次に30:1)を使用してシリカゲルクロマトグラフィーにかけた。
収量:123.8g(2段階で30.4%)。
MS(MALDI pos.):m/z=394.18([M+H]+)、416.15([M+Na]+)。
Rf:0.67(ジクロロメタン/メタノール 10:1)。
1H−NMR:(200MHz、D6−DMSO)(スペクトルはカルバメート基のE/Z回転異性を示す;下記は、主要ロータマーのシグナルだけを示す)、δ=2.70(d、3H、CH3)、5.81(s、2H、CH2)、7.07−7.41(m、7H、Ar−HおよびNH2)、7.62(br.q、1H、NH)、8.11(s、1H、ピリミジンH)、8.62(dd、1H、ピリジンH)、8.93(dd、1H、ピリジンH)。
【0087】
実施例28:4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル アリル(シクロペンチル)カルバメート
【化28】
実施例IVの4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジノール100mg(0.297mモル)を、無水ピリジン15mLに懸濁し、110℃に加熱した。これに、実施例VIIのアリル(シクロペンチル)カルバモイルクロリド67.0mg(0.357mモル)を少しずつ添加し、混合物を110℃で2時間撹拌した。後処理のために、反応溶液を濃縮し、残留物を、ジクロロメタンに取り、塩化アンモニウム飽和溶液で1回およびNaCl飽和溶液で1回抽出し、有機相をNa2SO4で乾燥し、回転蒸発器で濃縮した。残留物を、ジクロロメタン/メタノール 100:1を使用してシリカゲルクロマトグラフィーにかけた。
収量:105mg(72%)。
Rf:0.92(ジクロロメタン/メタノール 10:1)。
1H−NMR:(200MHz、D6−DMSO)、δ=1.37−1.98(br.m、8H、シクロペンチル−CH2)、3.80−4.05(br.m、2H、アリル−CH2N)、4.22−4.53(br.m、1H、シクロペンチルCHN)、5.07−5.29(br.m、2H、2H、オレフィンアリルCH2)、5.80−6.10(br.m、1H、オレフィンアリルCH)、5.81(s、2H、CH2)によって重複、7.04−7.41(m、7H、Ar−HおよびNH2)、8.08(s、1H、ピリミジンH)、8.64(dd、1H、ピリジンH)、8.92(dd、2H、ピリジンH)。
MS:(ESI pos.)、m/z=488([M+H]+)、975([2M+H]+)。
【0088】
実施例29:N−[({4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル}オキシ)カルボニル]−N−(sec−ブチル)グリシン
【化29】
実施例20のN−[({4−アミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル}オキシ)カルボニル]−N−(sec−ブチル)グリシンエチルエステル73.5mg(0.141mモル)を、3mLのTHF/水/メタノール(1:1:1)に溶解した。これに、水酸化リチウム一水化物5.1mg(0.12mモル)を添加し、混合物をRTで1時間撹拌した。後処理は、CH2Cl2各10mLで3回およびNaCl飽和溶液で1回の抽出、Na2SO4での乾燥、および回転蒸発器での濃縮乾固を含む。残留物を、分取HPLC(カラム:Cromsil 120 ODS、C−18、10μm、250x30mm、流量50mL/分、室温、勾配:水/アセトニトリル 0分において90:10、28分において5:95)によって精製した。
Rf:0.25(CH2Cl2/CH3OH 10:1)
HPLC保持時間:3.55(方法F)
MS−ESI pos.:(m/z)=494.3[M+H]+、987.3[2M+H]+
Claims (16)
- 以下の式(I)で示される化合物ならびにその塩、異性体および水和物:
R1は、水素またはジ−C1−6−アルキルアミノカルボニル基であり、
R2は、式−O−CX−NR3R4の基であり、
Xは、OまたはSであり、
R3およびR4は、互いに同一または異なっていてよく、H、所望により置換されたC1−6−アルキル、所望により置換されたC1−6−アルコキシ−C1−6−アルキル、所望により置換されたヒドロキシ−C1−6−アルキル、所望により置換されたC2−6−アルケニル、所望により置換されたC1−6−アルキルカルボニルオキシ−C1−6−アルキル、所望により置換されたC1−6−アルコキシカルボニル−C1−6−アルキル、所望により置換されたヒドロキシカルボニル−C1−6−アルキル、C1−6−アルキル基によって所望により置換されたフェニル、C1−6−アルキル基を介して窒素原子に所望により結合した5〜7員の飽和複素環、または所望により置換されたC3−8−シクロアルキルからなる群から選択される基であって、R3およびR4が同時にHであることができないか、
あるいは
R3およびR4は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5〜7員の飽和複素環を形成し、該複素環は、N、O、Sからなる群から選択されるさらなるヘテロ原子を所望により含有することができ、そして/または所望によりフェニル環に融合または置換されていることもある]。 - 式(I)において、
R1が、水素またはジ−C1−6−アルキルアミノカルボニル基であり、
R2が、式−O−CX−NR3R4の基であり、
Xが、OまたはSであり、
R3およびR4が、同一または異なっていてよく、H、所望によりCNまたはハロゲン置換基を有するC1−6−アルキル、C1−6−アルコキシ−C1−6−アルキル、ヒドロキシ−C1−6−アルキル、C2−6−アルケニル、C1−6−アルキルカルボニルオキシ−C1−6−アルキル、C1−6−アルコキシカルボニル−C1−6−アルキル、ヒドロキシカルボニル−C1−6−アルキル、フェニル、p−トリル、C1−6−アルカンジイル基を介して窒素原子に結合し、2個までの酸素原子を有する5〜7員の飽和複素環、または所望により置換されたC3−8−シクロアルキルからなる群から選択される基であって、R3およびR4が同時にHであることができないか、
あるいは
R3およびR4が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5または6員の飽和複素環を形成し、該複素環が、N、O、Sからなる群から選択されるさらなるヘテロ原子を所望により含有することができ、そして/またはアルキルカルボニルまたはアルコキシカルボニル置換基を所望により含有することができる、
請求項1に記載の化合物ならびにその塩、異性体および水和物。 - 式(I)において、
R1が、水素またはジエチルアミノカルボニル基であり、
R2が、式−O−CX−NR3R4の基であり、
Xが、OまたはSであり、
R3およびR4が、同一または異なっていてよく、H、メチル、エチル、イソプロピル、ブタン−2−イル、メトキシエチル、2−メトキシ−1−メチルエチル、1−シアノ−1−メチルエチル、2−シアノエチル、2−クロロエチル、エトキシカルボニルメチル、ヒドロキシカルボニルメチル、2−プロペニル、フェニル、p−トリル、1,3−ジオキソラン−2−メチル、シクロヘキシルまたはシクロペンチルからなる群から選択される基であって、R3およびR4が同時にHであることができないか、
あるいは
R3およびR4が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5または6員の飽和複素環を形成し、該複素環が、N、Oからなる群から選択されるさらなるヘテロ原子を所望により含有することができ、そして/またはメチルカルボニル、エトキシカルボニルまたはt−ブトキシカルボニルからなる群から選択される置換基を所望により含有することができるか、または一緒になって1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−N−イルである、
請求項1に記載の化合物ならびにその塩、異性体および水和物。 - 疾患治療用の式(I)で示される化合物。
- 少なくとも1つの請求項1に記載の式(I)の化合物を含んでなる薬剤。
- 少なくとも1つの請求項1に記載の式(I)の化合物を、適切であれば一般的な賦形剤および添加剤を使用して、好適な投与形態に変換することを含んでなる薬剤の製造方法。
- 少なくとも1つの請求項1に記載の式(I)の化合物を、有機硝酸塩またはNO供与体と組合せて含んでなる薬剤。
- 少なくとも1つの請求項1に記載の式(I)の化合物を、サイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)の分解を阻害する化合物と組合せて含んでなる薬剤。
- 心血管疾患の治療のための薬剤の製造における、請求項1に記載の式(I)で示される化合物の使用。
- 高血圧症の治療のための薬剤の製造における、請求項1に記載の式(I)で示される化合物の使用。
- 血栓塞栓性疾患および虚血の治療のための薬剤の製造における、請求項1に記載の式(I)で示される化合物の使用。
- 性機能障害の治療のための薬剤の製造における、請求項1に記載の式(I)で示される化合物の使用。
- 抗炎症特性を有する薬剤の製造における、請求項1に記載の式(I)で示される化合物の使用。
- 中枢神経系疾患の治療のための薬剤の製造における、請求項1に記載の式(I)で示される化合物の使用。
- 請求項1に記載の式(I)で示される化合物を、有機硝酸塩またはNO供与体と組合せるか、またはサイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)の分解を阻害する化合物と組合せて使用する請求項10〜15のいずれかに記載の使用。
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