JP2004515583A - 超分子ポリマーを形成するポリマー - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、超分子ポリマーを形成することができるポリマー、このようなポリマーの製造、および形成された超分子ポリマーを使用することに関する。
【0002】
数年前から公知となっているように、超分子ポリマーとは、モノマーの少なくとも一部が水素ブリッジを介して互いに結合しているポリマーである。
【0003】
モノマー単位の分子量が低い場合、モノマー単位は、低温において剛性で寸法安定性の良いポリマーを形成する。しかしながら、より高い温度においては、水素ブリッジがかなり弱くなるので、本質的にモノマー単位だけが存在するようになり、容易に処理できるようになる。
【0004】
国際特許出願番号WO97/46607は、互いに水素ブリッジを形成しているモノマー単位を含んだ超分子ポリマーを開示しており、このとき水素ブリッジを形成しているモノマー単位は、2つ一組になって互いに少なくとも4つの水素ブリッジを形成している。水素ブリッジを形成するモノマー単位としては、置換ウレイド−ピリミドンと置換ウレイド−ピリミジンが使用された。該国際特許出願の実施例XIIとXIIIには、それぞれ4−ベンジルオキシ−6−(3−ブテニル)−2−ブチルウレイドピリミジンと6−(3−ブテニル)−2−ブチルウレイド−4−ピリミドンによるポリジメチルトリシロキサンの末端キャッピングが説明されている。
【0005】
R.P.Sijbesma, H.B.Beijer, L.Brunsveld, B.J.B.Folmer, J.H.K.Ky Hirschberg, R.F.M.Lange, J.K.L.Lowe, およびE.W.Meijerによる“Reversible Polymers Formed from Self−Complementary Monomers Using Quadruple Hydrogen Bonding”(「Science, Vol.278, 28 November 1997」に掲載)の図2に、6−トリデシルイソシトシンとヘキサンジイソシアネートとを反応させて可逆性ポリマーを形成する二官能性化合物(2a)を得ることが開示されている。該文献の図6にはさらに、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの三官能性コポリマーをジイソシアネートで官能化し、次いでメチルイソシトシンと反応させて、可逆性のポリマーネットワークを形成する能力をもつ化合物(7)を得ることが開示されている。これらの化合物(2a)と(7)は、ホットメルト接着剤やホットメルト塗料に使用できるようなポリマーネットワークの形成が可能であるとされている。しかしながら、該文献中に示されているように、化合物(2a)は結晶化しやすく、化合物(7)は機械的性質が良くない。
【0006】
Brigitte J.B.Folmerによる「“New Polymers Based on the Quadruple Hydrogen Bonding Motif”, p.91−108, PhD Thesis, Technische Universiteit Eindhoven, 2000」には、メチルイソシトシンと1,6−ヘキサンジイソシアネートとの反応で得られる反応性シントンによるヒドロキシ末端ポリマーの末端キャッピングが開示されている(特に96ページを参照)。ヒドロキシ末端ポリマーは、水素化ポリブタジエン、ポリエーテル、ポリカーボネート、およびポリエステルである。
【0007】
しかしながら、これら物質の機械的強度は比較的低く、また一般には比較的低温にて物質の軟化が起こり、このため実用性が限定されることがある。
【0008】
従って本発明の目的は、超分子ポリマーを形成できるポリマーを提供することにある。本ポリマーは、下記の一般式
【0009】
【化3】
【0010】
(式中、PUは、少なくとも1つのポリウレタン鎖を含むポリマー鎖であり; nは0〜8であり; そしてX、Y、およびZは、同一もしくは異なっていて、水素結合性部位である)を有する。
【0011】
本発明の他の目的は、少なくとも本発明のポリマーから形成される超分子ポリマーを提供することにある。このような超分子ポリマーは、互いに水素ブリッジを形成する構造単位を含み、このときこれら構造単位の少なくとも1つが上記のポリマーである。
【0012】
このような超分子ポリマーは、優れた機械的性質(例えば、伸び、降伏応力、および低い溶融粘度)を併せ持つ。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、上記ポリマーの製造法を提供することにある。本発明の製造法は、少なくとも1つのポリウレタン鎖と少なくとも2つの遊離−NCO基とを含むポリマーと、−NCO基と反応できる少なくとも1つの基と少なくとも1つの水素結合性部位とを有する少なくとも1種の化合物Aとを反応させる工程を含む。
【0014】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の説明を参照すればより明確になるであろう。
【0015】
本発明のポリマーは、下記の一般式
【0016】
【化4】
【0017】
(式中、PUは、少なくとも1つのポリウレタン鎖を含むポリマー鎖であり; nは0〜8であり; そしてX、Y、およびZは、同一もしくは異なっていて、水素結合性部位である)を有する。
【0018】
ポリウレタン鎖 PU
本発明によれば、ポリマー鎖PUは、少なくとも1つのポリウレタン鎖を含む。
【0019】
1つの態様によれば、PUは熱可塑性および/または弾性である。
他の実施態様によれば、ポリウレタン鎖は、少なくとも1つのソフトブロックと少なくとも2つのハードブロックを含むのが好ましい。ここで言うソフトブロックとハードブロックは、当業界における一般的な周知の事実に従っている。
【0020】
ポリウレタン鎖は、広い範囲にわたる分子量(MWn)を有してよい。分子量は、ドライアッド・プロ・モデル(Dryadd Pro medel)(1998, オックスフォード・マテリアルズ社, 英国)に従って算出する。ポリウレタン鎖は一般に、低い平均分子量(すなわち、50000未満の平均分子量)を有する。平均分子量は、2000〜50000の範囲であるのが好ましい。平均分子量は、5000〜40000の範囲であるのがさらに好ましい。
【0021】
PU鎖は、当業界に公知の従来の方法によって得られる(例えば、“Polyurethanes Handbook 第2版, G.Oertel, 1994”を参照)。PU鎖は特に、イソシアネート、イソシアネート反応性化合物(ポリオール)、および連鎖延長剤の反応によって得られる。
【0022】
例えば、本発明の方法において使用するための適切な有機ポリイソシアネートは、ポリウレタンを製造する上で当業界に公知の有機ポリイソシアネートを含み、特に、2,4’−異性体、2,2’−異性体、4,4’−異性体、およびこれらの混合物の形態のジフェニルメタンジイソシアネート; ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と、2より大きいイソシアネート官能価を有する“クルード”MDIまたはポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)として当業界に公知の、ジフェニルメタンジイソシアネートのオリゴマーとの混合物(但し、これらは好ましくない); 2,4−異性体、2,6−異性体、およびこれらの混合物の形態のトルエンジイソシアネート; 1,5−ナフタレンジイソシアネート; ならびに1,4−ジイソシアナートベンゼン; 等の芳香族ポリイソシアネートがある。挙げることのできる他の有機ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、1,6−ジイソシアナートヘキサン、および4,4’−ジイソシアナート−ジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジイソシアネートがある。好ましいのは、TDIもしくはMDI、IPDI、HMDI、および他の脂肪族イソシアネートである。最も好ましいのはMDI、特に4,4’−MDIである。官能価は2であるのが好ましい。混合物も使用することができる。
【0023】
本発明の方法において使用する適切なイソシアネート反応性化合物は、ポリウレタンの製造に対して当業界に公知のいかなるイソシアネート反応性化合物も含む。特に重要なのは、20〜300mgKOH/g(特に25〜150mgKOH/g)の平均ヒドロキシル価、1.5〜3(特に1.8〜2.2)のヒドロキシル官能価、および一般には750〜6000のMWを有するポリオールとポリオール混合物である。適切なポリオールは従来技術において詳細に説明されており、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド)と、1分子当たり2〜8個の活性水素原子を含有する開始剤との反応生成物がある。適切な開始剤としては、ポリオール(例えばグリセロール、トリロチロールプロパン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびスクロース); ポリアミン〔例えばエチレンジアミン、トリレンジアミン(TDA)、ジアミノジフェニルメタン(DADPM)、およびポリメチレンポリフェニレンポリアミン〕; アミノアルコール(例えば、エタノールアミンやジエタノールアミン); 及びこのような開始剤の混合物; などがある。他の適切な高分子量ポリオールとしては、適切な割合のグリコール及びより高い官能価のポリオールと、ジカルボン酸もしくはポリカルボン酸との縮合反応によって得られるポリエステルがある。さらに他の適切な高分子量ポリオールとしては、ヒドロキシル末端のポリチオエーテル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリオレフィン、およびポリシロキサンなどがある。イソシアネート反応性化合物はポリオールであるのが好ましく、このポリオールは、ポリエーテル、ポリエステル、またはこれらの混合物であるのが好ましい。混合物も使用することができる。
【0024】
連鎖延長剤は従来の仕方で使用され、通常は低分子量のポリオールであって、典型的にはジオールである。MWは一般に62〜750の範囲であり、官能化は一般に1.9〜2.1の範囲である。適切なジオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、2−ヒドロキシエチル−2’−ヒドロキシプロピルエーテル、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、プリポール(Pripol)(登録商標)(ユニケマ社, ゴーダ, NL)、ジプロピルグリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ビス−2−ヒドロキシプロピルサルファイド、ビス−2−ヒドロキシアルキルカーボネート、p−キシレングリコール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジメチルフェノール、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、および1,4−ジヒドロキシベンゼンなどがある。PEG、PPG(例えば200)、およびPTHF(PTMGとしても公知)(例えば400)も使用することができる。混合物も使用することができる。
【0025】
任意の三官能連鎖延長剤(例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、およびそのアルコキシル化誘導体)を、二官能連鎖延長剤と組み合わせて使用することができる。
【0026】
ポリイソシアネート組成物の量、多官能イソシアネート反応性組成物の量、および反応させようとする連鎖延長剤の量(末端キャップモノマーが存在しない場合)は、得ようとするポリウレタンの性質に依存し、当業者によって容易に決定される。イソシアネートインデックスは、広い範囲内(例えば80〜400)で変わってよい。
【0027】
水素結合性基
本発明によれば、ポリマー鎖PUは、水素結合性基であるX、Y、そして所望によりZを有しており、これらは、同一であっても異なっていてもよい。XとYは、同一であって、ポリマー鎖PUの末端基であるのが好ましい。
【0028】
一般には、水素結合性基XとY(およびZ)は、水素供与体の能力を有する少なくとも2つの部位と、水素受容体の能力を有する少なくとも2つの部位とを有する(これら2つの部位は、完全に反応しなくてもよい)。
【0029】
水素供与体部位は、当業者によく知られている水素供与体基であってよい。このような水素供与体基は、−NH基、−OH基、または−SH基を含んでよい。
【0030】
水素受容体部位は、当業者によく知られている水素受容体部位であってよい。このような水素受容体部位は、O、N、またはSのような原子を含んでよい。
【0031】
本発明の好ましい実施態様によれば、XとY(およびZ)が基−NH−CO−NH−を含む。
極めて好ましい実施態様によれば、XとYが、末端イソシアネート基と、式H2N−R1R2(式中、R1とR2は、互いに独立的にC1−C6アルキルもしくはC3−C6シクロアルキルであるか、あるいは一緒になって1つ又は2つのサイクルを有する環を形成することができ、このときR1とR2の一方もしくは両方に、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子が介在していてもよい)の化合物とを反応させることによって得られる。
【0032】
アミンは、式H2N−C(R3)=N−R4(式中、R3とR4は、互いに独立的にC1−C6アルキル基またはC3−C6シクロアルキル基であるか、あるいは一緒になって1つ又は2つのサイクルを有する環を形成することができ、R3とR4の一方もしくは両方に、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子が介在していてもよい)で示されるアミンであってもよい。
【0033】
R1とR2の少なくとも一方、またはR3とR4の少なくとも一方に、1つ以上のヘテロ原子が介在しているのが好ましい。
【0034】
アミンは、式
【0035】
【化5】
【0036】
(式中、曲線は、1つ又は2つのサイクルを有する環であり、N、O、およびSから選択される1つ又は2つのヘテロ原子が介在していてもよい)で示されるアミンであるのが好ましい。分子量は400未満であるのが好ましい。−NCO基と反応する化合物Aの水素結合性部位は、ポリマーの−NCO基と反応する基に隣接しているのが好ましい。
【0037】
アミンは、2−アミノピリミジン、イソシトシン、6−アルキルイソシトシン(例えば6−メチルイソシトシン)、2−アミノピリジン、5−アミノ−ウラシル、6−トリデシルイソシトシン、6−フェニル−イソシトシン、2−アミノ−6−(3−ブテニル)−4−ピリミドン、p−ジ−(2−アミノ−6−エチル−4−ピリミドン)ベンゼン、2−アミノ−4−ピリドン、4−ピリミドン、6−メチル−2−アミノ−4−ピリミドン、6−エチル−2−アミノ−4−ピリミドン、6−フェニル−2−アミノ−4−ピリミドン、6−(p−ニトロフェニル)イソシトシン、6−(トリフルオロメチル)イソシトシン、およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0038】
このような化合物の例としては、2−アミノピリミジン、5−アミノ−ウラシル、イソシトシン、および6−アルキルイソシトシン(例えば6−メチルイソシトシン)がある。
【0039】
好ましいアミンは、2−アミノピリミジンと6−アルキルイソシトシン(例えば6−メチルイソシトシン)である。
【0040】
基XとYの重量%は、本発明のポリマー全体の重量を基準として一般には0.05〜20%の範囲であり、好ましくは0.1〜5%の範囲である。
【0041】
例えば、アミン化合物として下記のような化合物を挙げることができる:
2−アミノピリミジン(AP):
【0042】
【化6】
【0043】
イソシトシン:
【0044】
【化7】
【0045】
6−メチルイソシトシン(Melso):
【0046】
【化8】
【0047】
本発明の方法
本発明のポリマーは、少なくとも1つのポリウレタン鎖と少なくとも2つの遊離−NCO基とを含むポリマーと、−NCO基と反応できる少なくとも1つの基と少なくとも1つの水素結合性部位とを有する少なくとも1種の化合物Aとを反応させる工程を含む方法に従って製造することができる。
【0048】
この化合物Aについては、前述した通りである。
2−アミノピリミジンは、融点がかなり低いので好ましい反応物の1つである。この点は、製造上の観点から興味深い。なぜなら、本発明のポリマーを低めの温度で製造することが可能になるからである。
【0049】
6−アルキルイソシトシン(例えば6−メチルイソシトシン)は、強力な作用〔すなわち、得られる(超)ポリマー((supra)polymer)は、機械的性質が優れていて、溶融粘度が低い〕をもたらすので好ましい反応物の1つである。
【0050】
好ましい方法は、官能価が2のポリイソシアネート(1)、750〜6000の分子量と1.9〜2.5の官能価を有するポリオール(2)、62〜750の分子量と1.9〜2.1の官能価を有するポリオール(3)、および式H2N−C(R3)=N−R4(式中、R3とR4は、互いに独立的にC1−C6アルキル基またはC3−C6シクロアルキル基であるか、あるいは一緒になって1つ又は2つのサイクルを有する環を形成することができ、いずれもN、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子が介在していてもよく、400未満のMWを有する)のアミン化合物(4)を反応させることによってポリマーが得られ、このときイソシアネート(1)、ポリオール(2)、ポリオール(3)、およびアミン(4)の量が、イソシアネート(1)、ポリオール(2)、ポリオール(3)、およびアミン(4)の100重量部当たり、それぞれ10〜50重量部、35〜90重量部、1〜30重量部、および0.5〜20重量部であり、前記反応が90〜200(好ましくは95〜150、特に98〜102)のイソシアネートインデックスにて行われる、という方法である。
【0051】
上記のイソシアネートインデックスは、ポリイソシアネート組成物、多官能イソシアネート反応性組成物、連鎖延長剤、および末端キャップモノマー(あるいは化合物A)の反応を含む全ての一般的な方法に適用することができる。
【0052】
ポリマーは、溶液反応法でも、あるいはバルク反応法でも合成することができる。どちらの場合も、所望の生成物を得るために、適切な触媒の存在下にて一段法で重合させることができる。これとは別に、イソシアネート(1)とポリオール(2)とを予備重合させ、次いでポリオール(3)とアミン(4)とのブレンドと共反応させて前記生成物を得ることもできる。このポリマー製造経路はさらに、多量のポリオール(3)を使用して本発明のポリマーを製造することができる。このようなポリマーは、ホットメルト接着剤タイプの用途に対して特に有用である。望ましくない共有結合鎖の延長や架橋(アミン(4)の第一アミン基の数に依存する)を起こすことなくこうした合成上の多用性に対応するためには、アミン(4)が単一の第一アミン基を含んでいることが必須である。第一アミン基を1つだけ含んだアミンを使用することにより、ポリマーの構造とポリマーの分子量を正確に制御することが可能となる。
【0053】
好ましい実施態様においては、ポリマーは、機械的剪断力の存在下(例えば、バンバリーRTMタイプミキサーまたは二軸スクリュー押出機のチャンバー内)における成分の塊状重合によって得られる。塊状重合においては、速やかで効率的な反応を起こし易くするために、粉末状アミン(4)を小さい適切な粒径に粉砕するのが好ましい。
【0054】
本発明の超分子ポリマー
水素結合性基XとYによって、本発明のポリマーは、室温での超分子ポリマーの形成を可能にする能力を有する。
【0055】
これについて、イソシトシンを例として以下に説明する。点線は水素結合を表わしている。
【0056】
【化9】
【0057】
従って本発明の目的はさらに、互いに水素ブリッジを形成する構造単位を含んでいて、これら構造単位の少なくとも1つが、上記の本発明によるポリマーである、という超分子ポリマーを提供することにある。
【0058】
残りの構造単位は、異なった構造単位(例えば、前記の国際特許出願番号WO97/46607に記載の構造単位)であってよい。構造単位は同一であるのが好ましい。
【0059】
本発明のポリマーにおいては、基XとYが、水素結合相互作用による熱可逆性の直鎖延長をもたらす。
【0060】
従って構造単位は、水素結合相互作用による連鎖末端相互作用によって自己連鎖延長する能力を有する。
【0061】
水素結合は低温において熱可逆性であるので、水素結合相互作用は強力であり、超分子ポリマーは、見かけ上の高い分子量を有する。高温においては、水素結合相互作用はもはや存在しないか又は弱く、超分子ポリマーは主としてそのモノマー単位に分解し、低分子量ポリマーとして挙動する。
【0062】
言い換えると、加熱すると水素結合が壊れ、低粘度の物質が得られる。従って超分子ポリマーは、室温においては見かけ上の高分子量特性を有するが、溶融状態においては低分子量特性を有する。
【0063】
理論に拘束されるつもりはないが、本発明のポリマーにおいて溶融移行が起こる温度はハードブロックの設計によって制御できる、と考えられる。この移行温度は、連鎖末端間の水素結合相互作用のほとんどが解離される温度と等しいか、あるいはそれ以上であってよい。一般には、末端基水素結合相互作用の解離温度は80℃より高く、またハードブロックの溶融温度は100℃より高い。ポリマー中のハードブロックの設計とハードブロック物質の重量パーセントによってポリマーの溶融温度を意図的に制御できることは、本発明のポリマーのさらなる利点である。
【0064】
本発明の超分子ポリマーの用途
本発明の超分子ポリマーは一般に、PU(例えば、PU鎖を形成するもの)が使用されるあらゆる用途に使用することができる。
【0065】
ホットメルト接着剤は、好ましい用途の1つである。この場合、本発明の超分子ポリマーのユニークな特徴は、未反応のNCO基をもたない接着剤が得られるということである(この点は、完全に硬化するのに水を必要とする反応性ホットメルト接着剤とは異なる)。この点はさらに、安全性と取り扱いの見地から利点となる。本発明の超分子ポリマーにおける他のユニークな特徴は、溶媒を含んだ公知のTPU接着剤とは異なって溶媒を必要としない、という点である。
【0066】
本発明の超分子ポリマーによって得られる他の利点は、最終的な機械的性質に達するのに水分を必要としない、という点である。従って、Al−Al接合のような水分不透過性基板の接着用途に使用することができる。
【0067】
他の用途は回転成形および/またはスラッシュ成形である。なぜなら、使用条件下において流動性がかなり高いので、金型中での良好な広がりが確実に得られるからである。さらに他の用途は、TPUフォームの射出成形と製造である。
【0068】
超分子ポリマーの大きな利点は、末端キャップされていないポリマー(超分子ポリマーを形成しない)より溶融粘度が低いということである。このため加工がより簡単になると共に、室温にて良好な機械的性質が保持される。有効性を評価するため、機械的性質を溶融粘度に対してプロットした。溶融粘度の増大が分子量の増大に対応しているからである。
【0069】
実施例
実施例 1
2の公称官能価と2000の公称MWを有する73pbwのポリプロピレンオキシド(PPG2000)と、27pbwの“スプラセク(Suprasec)(登録商標)MPR”(2,4’MDI異性体を2%未満含む4,4’MDI)との混合物を、窒素雰囲気下にて87℃で3時間撹拌することによって、プレポリマー1を製造した。冷却後、プレポリマーを窒素雰囲気下にてマスターバッチとして貯蔵した。
【0070】
既知量の、上記プレポリマーの50重量%ジメチルアセトアミド溶液に、予め算出しておいた量の1,4−ブタンジオールBD(ジメチルアセトアミド中50重量%溶液)を、撹拌しながら窒素雰囲気下にて87℃で20分で滴下し、加熱/撹拌をさらに3時間保持した。末端キャップ用の所望化合物のジメチルアセトアミド溶液を、撹拌しながら反応混合物に87℃で加え、反応条件をさらに3時間保持した。冷却後、減圧オーブン中にて50℃でキャストすることによって、あるいは30重量%のジメチルアセトアミド溶液を、質量が4倍過剰の非溶媒(80容量%の水/20容量%のエタノール)中に沈殿させることによってポリマーを単離した。得られたポリマーの配合処方を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
引張試験は、タイプS2の圧縮成形試験片に対し、周囲温度にて100mm/分のクロスヘッド速度で行った(norm DIN53504; 厚さ2mm)。これらの試験の結果を表2に示す(周囲温度にて)。
【0073】
【表2】
【0074】
レオロジー
TPUのレオロジー性能を、レオメトリックス(Rheometrics)RMS800レオメーターを使用する回転動的剪断(Rotational Dynamic Shear)(RDS)実験によって評価した。
【0075】
さらに詳細には、RDSレオメトリーを使用して、TPUの溶融挙動、および溶融状態におけるTPUの粘弾性挙動を調べた。
【0076】
実験は下記のように行った。
先ず最初に、各TPUをDMAc中に溶解して約25重量%の溶液を得ることによって、溶液流延フィルム(a solvent casting)(厚さ0.5mm)を作製した。160gの溶液を脱気し、低温オーブン中のフラットなガラスモールド中に注入した。キャスティングをオーブン中80℃にて24時間放置することによって溶媒を除去した。
【0077】
溶液流延フィルムから直径25mmのディスクを2枚切り取り、わずかな常用圧力下で直径25mmの2枚の平行プレート間に挿入して1mm厚さの試験片を得た。
【0078】
下記の値を使用して、各実験に対してプログラムを作成した。
半径: 12.5mm
周波数: 10.0ラジアン/秒
初期温度: 40℃
最終温度: 250℃
段階サイズ: 5℃/分
歪み: 5%
ランプ等級: 5
測定時間: 30秒
180℃と200℃での溶融状態におけるポリマーの粘度を表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
実施例 2
実施例1に記載の手順に従ってプレポリマー1を製造した。プレポリマー1の50重量%ジメチルアセトアミド溶液に、予め算出しておいた量のスプラセクMPR(表3)の50重量%溶液を、撹拌しながら窒素雰囲気下にて87℃で加え、反応を3時間続けた。
【0081】
ポリマー2Aの場合は、6−メチルイソシトシンのジメチルアセトアミド溶液を加え、撹拌しながら反応混合物を87℃で3時間加熱した。冷却後、減圧にて50℃でキャストすることによってポリマーを単離した。
【0082】
下記の表4は重量組成を示している。
【0083】
【表4】
【0084】
実施例 3
78.6pbwのエチレングリコール/1,4−ブタンジオールアジペートポリエステル(2種のグリコールのモル比は1:1であり、ポリエステルのヒドロキシル価は50mgKOH/gである)と21.4pbwの“スプラセクMPR”との混合物を、窒素雰囲気下にて87℃で3時間撹拌することによってプレポリマー3を製造した。冷却後、プレポリマーを窒素雰囲気下にてマスターバッチとして貯蔵した。
【0085】
既知量の、上記プレポリマーの50重量%ジメチルアセトアミド溶液に、予め算出しておいた量の1,4−ブタンジオール(ジメチルアセトアミド中50重量%溶液)を、撹拌しながら窒素雰囲気下にて87℃で20分で滴下し、加熱/撹拌をさらに3時間保持した。末端キャップ用の所望化合物のジメチルアセトアミド溶液を、撹拌しながら反応混合物に87℃で加え、反応条件をさらに3時間保持した。冷却後、オーブン中にて80℃でキャストすることによってポリマーを単離した。得られたポリマーの配合処方を表5に示す。
【0086】
【表5】
【0087】
溶液流延によるタイプS2の引張試験片(norm DIN53504; 厚さ0.5mm)に対し、周囲温度および100mm/分のクロスヘッド速度にて引張試験を行った。試験の結果を表6に示す。
【0088】
【表6】
【0089】
溶液流延ディスク(半径12.5mm; 厚さ1mm)に対し、実施例1に記載の条件に従った温度掃引モードにて回転動的剪断(RDS)レオメトリーを行った。170℃、180℃、および200℃での溶融状態のポリマーの粘度を表7に示す。
【0090】
【表7】
【0091】
実施例 4
実施例1のポリマーの幾つかと新たな例4つ(4F1〜4I1)を、鋼と鋼を接合するための接着剤として試験した。このため、ラップシェア試験片を下記のように作製した。マテリアルタイプ1.4301のステンレス鋼試験プレート(寸法100×25×1.5mm)を、ドイツMoosbrunnのロシェルGmbHから入手した。使用する前に、試験プレートをアセトンで脱脂した。試験プレートを、50℃〜150℃の温度を有するホットプレート上に少なくとも2分置いて、試験プレートの温度を上昇させた。平均時間にて、幾つかのポリマーをその流動点より高い温度に加熱した。約10gのポリマーを125mlのガラス・ジャー中に置き、油浴を使用して60℃〜200℃の温度で少なくとも15分加熱した。12.5×25×0.3mmの接合ジョイントをやや過剰に充填するように、金属スパチュラを使用して、充分な量の溶融ポリマーを試験プレート上に施した。ジョイントは、12.5mmのオーバーラップにて試験プレートを位置決めすることによって組み立てた。次いで、試験プレートを一緒にしてやや押しつけ、ユニバーサル・ダブルクリップを使用して約15分クランプ止めした。それぞれのポリマーに対して、6個の試験片を作製した。物理学的試験にかける前に、ラップジョイント試験片を実験室中にて少なくとも2週間状態調整した。50mm/分のクロスヘッド速度で引張強さを測定し、引張力の測定値をオーバーラップ面積で割ることにより引張強さを算出した。それぞれの系列に関し、引張強さの平均値、その標準偏差、および破損モードを表8に示す。新たな例4つは、以下のように作製した:
使用したポリオールは、51mgKOH/gのヒドロキシル価を有する1,4−ブタンジオールアジペートポリエステル(ポリエステルA)と30mgKOH/gのヒドロキシル価を有する1,6−ヘキサンジオールアジペートポリエステル(ポリエステルB)であった。使用した連鎖延長剤(CE)は、トリプロピレングリコール(TPG)、1,4−ブタンジオール(BD)、および1,6−ヘキサンジオール(HD)であった。使用したイソシアネートは‘スプラセク’MPRであった。アミンは、微粉砕処理した6−メチルイソシトシン(典型的なd50=1.45ミクロン; d97 10ミクロン)であった。酸化防止剤としては‘イルガノックス(IRGANOX)(商標)’1010(チバガイギー社から市販)を使用した。ポリエステルとイソシアネートは、使用前に80℃に加熱した。連鎖延長剤は60℃に加熱した。
【0092】
必要量のポリエステル、連鎖延長剤、イソシアネート、アミン、および酸化防止剤を紙コップ中に計量し、‘ハイドルフ(Heidolph)(商標)’メカニカルミキサーを使用して4000rpmにて1分間混合した。いずれの場合も、酸化防止剤を除いた成分の総重量は70gであった。混合物中の‘イルガノックス’1010の重量は常に、反応混合物70g当たり0.2gであった。逆回転スクリューを取り付けたブラベンダー・プラスチコード密閉式混合機(a Brabender Plasticord internal mixer)のミキシングチャンバー中に約50gの反応混合物を入れ、180℃にて等温的に加熱した。ミキサー中の混合物が180℃の温度に達したら、0.05gの‘ダブコ(DABCO)(商標)’S(エア・プロダクツ社から市販の触媒)を反応混合物に加えた。重合を完全に進行させ(一般には2分)、冷却後、得られたポリマーをミキサーから取り出し、試験に供した。ミキサー中の混合物の滞留時間は、決して3分を越えないようにした。種々のポリマーに対する反応物の重量を下記の表に示す。
【0093】
【表8】
【0094】
結果:
【0095】
【表9】
【0096】
【表10】
【0097】
実施例 5
本実験においては、本発明によらない一連のポリマーについて試験した。これらのポリマーを、実施例4に記載の方法と同じ方法で適用して、鋼/鋼ラップジョイントを作製した。結果を表10に示す。
【0098】
【表11】
【0099】
実施例 6
本実験においては、本発明によらないポリマーを取り上げた。ポリマー2Aを、実施例4に記載の方法と同じ方法で適用して、鋼/鋼ラップジョイントを作製した。結果を表10に示す。このようにして作製したラップジョイントは機械的強度をもたず、長時間経過後に、重力下にて試験プレートがバラバラになった。
Claims (23)
- nがゼロであり、XとYとが同一であってポリマーの末端キャップである、請求項1記載のポリマー。
- X、Y、およびZ基が、水素供与体の能力を有する少なくとも2つの部位と、水素受容体の能力を有する少なくとも2つの部位とを有する、請求項1または2に記載のポリマー。
- 水素供与体部位が、−NH、−OH、または−SH基からなる群において選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー。
- 水素受容体部位がO、N、またはS原子を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー。
- X、Y、およびZが−NH−CO−NH−基を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマー。
- XとYが、末端イソシアネート基と式H2N−R1R2(式中、R1とR2は、互いに独立的にC1−C6アルキル基またはC3−C6シクロアルキル基であるか、あるいは一緒になって1つ又は2つのサイクルを有する環を形成することができ、R1とR2の一方もしくは両方に、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子が介在していてもよい)の化合物との反応によって得られる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマー。
- XとYが、末端イソシアネート基と式H2N−C(R3)=N−R4(式中、R3とR4は、互いに独立的にC1−C6アルキル基またはC3−C6シクロアルキル基であるか、あるいは一緒になって1つ又は2つのサイクルを有する環を形成することができ、R3とR4の一方もしくは両方に、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子が介在していてもよい)の化合物との反応によって得られる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリマー。
- XとYが、末端イソシアネート基と、400未満の分子量を有する化合物との反応によって得られる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリマー。
- XとYが、2−アミノピリミジン、イソシトシン、6−アルキルイソシトシン、好ましくは6−メチルイソシトシン、2−アミノピリジン、5−アミノ−ウラシル、6−トリデシルイソシトシン、6−フェニルイソシトシン、2−アミノ−6−(3−ブテニル)−4−ピリミドン、p−ジ−(2−アミノ−6−エチル−4−ピリミドン)ベンゼン、2−アミノ−4−ピリドン、4−ピリミドン、6−メチル−2−アミノ−4−ピリミドン、6−エチル−2−アミノ−4−ピリミドン、6−フェニル−2−アミノ−4−ピリミドン、6−(p−ニトロフェニル)イソシトシン、6−(トリフルオロメチル)イソシトシン、およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物と末端イソシアネート基との反応によって得られる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリマー。
- XとYが、2−アミノピリジンまたは6−アルキルイソシトシン、好ましくは6−メチルイソシトシンと、末端イソシアネート基との反応によって得られる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリマー。
- XとY、そして所望によりZが、ポリマーの重量を基準として0.05〜20%、好ましくは0.1〜5%を構成する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリマー。
- PUが熱可塑性ポリウレタンおよび/または弾性ポリウレタンである、請求項1〜13のいずれか一項に記載のポリマー。
- PU鎖が、少なくとも1つのソフト鎖セグメントと少なくとも2つのハード鎖セグメントとを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリマー。
- 前記ポリウレタン鎖が、2000〜50000の範囲の、好ましくは5000〜40000の範囲の平均分子量を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のポリマー。
- 互いに水素結合を形成する構造単位を含んでいて、これら構造単位の少なくとも1つが請求項1〜16のいずれか一項に記載のポリマーである、超分子ポリマー。
- 請求項17記載の超分子ポリマーの、ホットメルト接着剤としての使用。
- 回転成形またはスラッシュ成形における、請求項17記載の超分子ポリマーの使用。
- 射出成形における、請求項17記載の超分子ポリマーの使用。
- TPUフォームの製造における、請求項17記載の超分子ポリマーの使用。
- 少なくとも1つのポリウレタン鎖と少なくとも2つの遊離−NCO基とを含んだポリマーと、−NCO基と反応できる少なくとも1つの基と少なくとも1つの水素結合性部位を有する少なくとも1種の化合物Eとを反応させることを含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載のポリマーの製造法。
- 官能価が2のポリイソシアネート(1)、750〜6000の分子量と1.9〜2.5の官能価を有するポリオール(2)、62〜750の分子量と1.9〜2.1の官能価を有するポリオール(3)、および式H2N−C(R3)=N−R4(式中、R3とR4は、互いに独立的にC1−C6アルキル基またはC3−C6シクロアルキル基であるか、あるいは一緒になって1つ又は2つのサイクルを有する環を形成することができ、いずれもN、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子が介在していてもよく、400未満のMWを有する)のアミン化合物(4)を反応させることを含み、このときイソシアネート(1)、ポリオール(2)、ポリオール(3)、およびアミン(4)の量が、イソシアネート(1)、ポリオール(2)、ポリオール(3)、およびアミン(4)の100重量部当たり、それぞれ10〜50重量部、35〜90重量部、1〜30重量部、および0.5〜20重量部であり、前記反応が90〜200のイソシアネートインデックスにて行われる、請求項20記載の製造法。
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