JP2004514649A - Nurrサブファミリーの核転写因子の抑制による疾患に対する治療アプローチ - Google Patents
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Abstract
滑膜CRHは、慢性関節リウマチおよび乾癬性関節炎滑膜の両方の炎症細胞において豊富に発現される、核転写因子NURR1を誘導するパラクリン様式で機能する。この融合は、グルココルチコイドによって抑制される。本発明は、CRH−レセプターサブタイプR1αを介した、末梢のCRHおよびCRH媒介シグナル伝達の調節において(特に、ヒトの関節炎における炎症プロセスにおいて)NURRサブファミリーの転写因子が果たす中心的役割に関する。
Description
【0001】
(発明の分野)
本発明は一般に、複数の炎症性シグナルを媒介する際の、NURRサブファミリーの転写因子の中心的役割に関する。より詳細には、本発明は、核レセプターNURR1、NUR77およびNOR1、ならびに末梢のCRHおよびCRH媒介性シグナル伝達(これは、例えば、ヒトの関節炎において、炎症プロセスの重要な成分である)の調節におけるそれらの役割に関する。
【0002】
(発明の背景)
脊椎動物の発生、分化およびホメオスタシスの多くの局面は、核レセプターへの結合を介したリガンド依存性様式で遺伝子の発現を制御する、低分子ホルモンおよびシグナル伝達分子によって調節される。これらの分子としては、性ステロイド、コルチコステロイド、甲状腺ホルモンおよびビタミンD3が挙げられ、これらの多くはクローニングされている。リガンドおよび生物学的機能における多様性にもかかわらず、これらのレセプターは、構造的および遺伝的に関連した核レセプタースーパーファミリーに属する。このスーパーファミリーの共通の構造的特徴は、以下からなる三部構成のドメイン構造である:トランス活性化機能に寄与する超可変N末端;DNA認識および二量体形成を担う、高度に保存されたDNA結合ドメイン;ならびに保存されたC末端(これは、サブドメインIIおよびIIIを含み、核局在化、リガンド結合、レセプター二量体形成、サイレンシングおよびトランス活性化に関与する)(例えば、Evans,1988;O’Malley,1990;Beato,1991;ならびにTsaiおよびO’Malley,1994を参照のこと)。このスーパーファミリーの最も保存された特徴は、65〜68アミノ酸残基を含むDNA結合ドメイン(DBD)である。9つの非可変システインのうちの8つは、2つのII型ジンクモジュールを形成する。DBDの任意のメンバーにおける、残りのファミリーに対する配列同一性は、40%〜99%の範囲に及ぶ。このセグメントが高度に保存されることによって、より構造的に関連した多くのレセプターが近年見出され、これらは、リガンドの正体および生理学的機能が未知であるので、オーファンレセプターと称される(例えば、O’Malle,1988;Beato,1991;Laudetら,1992;O’MalleyおよびConneely,1992を参照のこと)。
【0003】
オーファンレセプターは、人工的に分類されたとはいえ、核スーパーファミリーの重要なサブファミリーを形成する。これらの大多数は、既にクローニングされたメンバーに対する、DBD領域における相同性に基づいて同定された。DBD全体をプローブとして使用して、低下したストリンジェンシーでcDNAライブラリーをスクリーニングすること(Giguereら,1988;およびLawら,1992)またはDBD中で最も保存された領域をコードする縮重プライマーを用いたRT−PCR増幅(Schmidtら,1992;Andreら,1993)またはDBDコンセンサス配列に対応する縮重オリゴヌクレオチドを用いてライブラリーをスクリーニングすること(IssemannおよびGreen,1990;ChangおよびKokontis,1988)を含む、いくつかのストラテジーを適用して、新規なメンバーについて検索した。
【0004】
いくつかの系統の証拠は、NURRサブファミリーのメンバーが、HPA軸の全てのレベルで重要な座標調節役割を果たすことを示す(Wilsonら,1993;MurphyおよびConneely 1997;Philipsら,1997)。NURRサブファミリーは、種々の発生プロセスおよび生理学的プロセスを制御する、構造的に関連した転写因子のスーパーファミリーに属する。このファミリーは、ステロイドホルモン、ビタミンおよび甲状腺ホルモンについてのレセプター、ならびに同族リガンド(存在する場合)が未だ同定されていないオーファンレセプターを含む(Evans,1998;O’MalleyおよびConneely,1992)。NURR1(Nur関連因子1;RNR−1およびNOTとも呼ばれる)は、中枢神経系で主に発現される、このスーパーファミリーのオーファンメンバーである(Lawら,1992;Scearceら,1993;Magesら,1994)。このタンパク質は、オーファンレセプターNUR77(NGFI−β/N10/NAKとも呼ばれる)(Hazelら,1988;Milbrant,1998;Ryseckら,1989;Nakaiら,1990)およびNOR−1(MINOR/−TECとも呼ばれる)(Ohkuraら,1994;Maruyamaら,1995;HedvatおよびIrving,1995)に対する密接な構造的関連を示す。これらの3つのタンパク質は、同じシス作用性コンセンサス配列(NBRE)に結合して標的遺伝子発現を調節する、NURRサブファミリーを構成する(Ohkuraら,1994,Wilsonら,1991;Murphyら,1995)。大部分の核レセプターとは異なり、NURRサブファミリーは、種々の細胞外刺激(増殖因子(Hazelら,1998;Milbrandt,1998)、神経伝達物質(WatsonおよびMilbrandt,1989)およびポリペプチドホルモン(Wilsonら,1993;MurphyおよびConneely,1997;DavisおよびLau,1994)を含む)に応じて発現が示差的に誘導され得る、前初期遺伝子の産物である。NURR1およびNUR77は、それらの近位プロモーター領域において特異的シス作用性配列と相互作用することによって、CRH遺伝子およびPOMC遺伝子の発現を調節し得る。NURR1およびNUR77は、初代下垂体細胞においてCRHによって迅速に誘導されて、POMCの合成の増加をもたらす(MurphyおよびConneely,1997)。POMC遺伝子のグルココルチコイド抑制は、NURR1およびNUR77によるPOMC遺伝子の活性化のグルココルチコイドレセプター依存性阻害によって媒介される(Evans,1998;Philipsら,1997)。NOR−1は、同一のDNA結合ドメインを保有し、そしてオーファンレセプターをNURRサブファミリーに構造的に分類する同じシス作用性コンセンサス配列を結合し得る。それゆえ、NURRサブファミリーの転写因子の異なるメンバーの密接な構造的関係、同一のシス作用性コンセンサス配列およびNURRサブファミリーの転写因子の異なるメンバーが互いに機能的に補完する能力は、NURRサブファミリーのメンバーが機能の重複性を有するという強い指標である。
【0005】
コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)(視床下部下垂体軸(HPA)の主な調節因子)は、主にグルココルチコイドの免疫抑制作用を介して顕著な抗炎症効果を発揮する(Valeら 1989;CatoおよびWade,1996)。活性化された免疫系の産物(IL−1β、IL−6およびTNFαを含む)は、直接的および間接的に作用して、視床下部CRHの合成および分泌を刺激する(TurnballおよびRivier,1999)。CRHは、サイクリックAMP(cAMP)経路(これは、プロオピオメラノコルチコトロピン(pro−opiomelanocorticotropin;POMC)の合成を強く刺激する)のレセプター媒介活性化を介してその機能を発揮する(Aguileraら,1982)。POMCは、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)(これは、下垂体から放出され、そして副腎グルココルチコイドの合成を調節する)を含むいくつかの神経ペプチドの前駆体分子である。ホメオスタシスを維持するために、グルココルチコイドは、CRHおよびPOMCの合成および分泌を視床下部および下垂体のレベルで阻害する。
【0006】
一連のデータが増えつつあるので、現在、免疫応答の調節における視床下部外CRHまたは免疫CRHの直接的関与を支持する。局在化した炎症応答の媒介における免疫CRHについての役割は、CRHが産生されかつ局所的に活性である、急性炎症のインビボラットモデルにおいて支持されている(Karalisら,1991)。このラットモデルでは、末梢CRHは、その間接的免疫抑制効果とは対照的に、局所炎症誘発性(pro−inflammatory)オートクライン/パラクリン役割と関連する。抗CRH抗体を用いたこの局在化CRH合成の免疫中和(immunoneutralization)は、炎症応答の特異的抑制を引き起こす(Karalisら,1991)。最も重要なことに、CRHを欠くマウスの構築は、末梢CRHがインビボでの炎症応答の誘導のために必要とされることを確証する(Karalisら,1999)。しかし、CRHが、全身的免疫系活性化の間の炎症反応の重要なメディエーターであるという証拠にもかかわらず、末梢CRHの作用調節および作用形態は確立されていない。増大した免疫反応性CRHがRA滑膜組織(Croffordら,1993;Nishiokaら,1996)および炎症性関節疾患のいくつかの動物モデル(Croffordら,1992;Websterら,1998)において見出されるという知見は、炎症性関節炎の病因における末梢CRHの潜在的関与を強調する。視床下部CRHの機能を媒介する際のNURR転写因子の重要性(Murphyら,1993)を考慮すると、CRHならびに炎症誘発性メディエーターおよび抗炎症性メディエーターに応じた、滑膜外植片におけるNURR1、NUR77およびNOR1の遺伝子発現の調節は、本明細書中で実証される。
【0007】
オーファンレセプターの研究は、本発明者らのスーパーファミリーの見解を広げた。この研究は、新たなリガンドの発見を容易にし、例えば、9−シス−レチノイン酸(9−cis−retionic acid)は、RXR(レチノイド−xレセプター)についてのリガンドとして同定された(Mangelsdorfら,1990;Levinら,1992;Heymanら,1992)。オーファンレセプターNUR77およびCOUP−TFについての膜レセプター活性化リン酸化経路を含む、代替のリガンド依存性活性化経路が見出されている(Hazelら,1991;Powerら,1991)。個々のホルモン機能に対して多様性を付加するレセプターアイソフォームが、このスーパーファミリーにおいて非常に普通に見出されている(Mangelsdorfら,1990;Levinら,1992;Heymanら,1992;Hazelら,1991;Powerら,1991;Chenら,1993)。オーファンレセプターはまた、不飽和脂肪酸に応じたペルオキシソームの脂肪酸β酸化系の重要な酵素であるアシル−CoAオキシダーゼ遺伝子を調節することによって、代謝機能(例えば、PPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(peroxisome proliferator−activated receptor)サブファミリー)に対して寄与し得る(Dreyerら,1992)。それゆえ、オーファンレセプターのクローニングおよび特徴付けは、新たなシグナル伝達経路およびトランス活性化機構の発見において重要な役割を果たしてきた。
【0008】
IL−1βおよびTNFαは、NF−κBを介して転写カップリングを媒介し、一方、PGE2は、CREB依存性経路の活性化によってシグナルを伝達することが充分に立証されている。さらに、CRHは、CREB依存性経路の活性化によってシグナル伝達することが充分に立証されている。しかし、CREB依存性経路およびNF−κB経路の媒介においてCRHレセプターが果たす役割は、規定されていない。CRHレセプターの2つの異なるサブタイプCRH−R1およびCRH−R2が単離され、そして特徴付けられており(Aguileraら,1987;Perrinら,1995)、そして両方とも、薬理学的に異なっており、脳および末梢組織におけるそれらの発現パターンが独特である。健常マウスでは、CRH−R1は、脳幹、小脳、大脳皮質、ならびに内側中隔(medial septum)および下垂体を含む、脳の領域に主に制限される。この局在化のため、CRH−R1が欠損したマウスが構築され、CRH−R1が出生後の発達において果たす特異的役割を研究するために用いられた(2000年11月14日発行の米国特許6,147,275号)。CRH−R1の5’非翻訳領域における開始コドンの存在が、mRNA翻訳の阻害と関連しており、そして上流の開始コドンが、CRH−R1レセプターの翻訳を調節する際に役割を果たすことを示唆する(Xuら,2001)。CRH−R2は、心臓、骨格筋、胃腸管および精巣上体を含め、いくつかの末梢組織において発現され、そして脳における発現は、外側中隔領域および視床下部領域に集中している。CRH−R1の部分的アゴニストは、ストレス関連障害の処置について記載されている(2000年10月3日に発行された米国特許第6,127,399号)。
【0009】
炎症性免疫疾患に関与する詳細な生化学的プロセスを解明する情報は増加し続けており、そしてこのような疾患の病理的結果は充分に証明されている。リウマチは、複数の関節における腫脹および疼痛、ならびに他の身体器官における倦怠感、虚弱、体重減少、微熱および食欲不振を引き起こす、慢性の全身性炎症性自己免疫疾患である。リウマチの分類についての診断基準としては、朝のこわばり、3以上の関節領域の関節炎、手の関節の関節炎、全身性関節炎、X線写真的変化、血清リウマチ因子およびリウマチ小節が挙げられる。当該分野では、患者がこれらの7つの診断基準のうちの少なくとも4つ満たした場合、この患者はリウマチを有すると考えられる。コルチコステロイドは、非常に重要な抗炎症剤であり、炎症のいくつかのメディエーターおよび関節軟骨分解酵素の形成を抑制し、そのようにして、外傷性関節疾患に関連した炎症および疼痛を効果的に減少させる。慢性関節リウマチ(RA)は、一種の関節炎であり、そして障害の通常の原因である。12年間の疾患の後では、RAを有する80%より多くの患者は、部分的に不能になり、そして16%は完全に不能になり、そして平均余命は、男性で平均7年および女性で平均3年短縮される(Matteson,2000)。RAに関連した、平均余命の減少の最も一般的な原因は、脈管炎、血管の炎症;薬物の副作用(例えば、胃潰瘍からの出血);および必要とされる薬物による免疫系抑制の結果である、感染の危険性の増大である。治療目標は、疼痛を軽減し、炎症を制御し、そして関節破壊を予防することであり、そして疾患改変抗リウマチ薬物(DMARD)(例えば、金、メトトレキサートまたは腫瘍壊死因子(TNF)アンタゴニスト)を含む。近年、Food and Drug AdministrationおよびEuropean Medicine Evaluation Agencyは、可溶性TNFα II型レセプター−IgG1融合タンパク質であるエタナールセプト(etanercept)およびTNFαに対するキメラモノクローナル抗体であるインフリキシマブ(infliximab)承認した。これらの薬物の開発は、炎症誘発性メディエーターが慢性関節リウマチにおいて果たす役割の理解の増大からもたらされた。しかし、これらの複雑な細胞性相互作用の詳細な機構は、未知のままである。さらに、遺伝子治療による炎症誘発性メディエーターのアンタゴニストの送達は、慢性関節リウマチについての潜在的な治療ツールを提示する(Choyら,2001)。
【0010】
滑膜の炎症および過形成は、慢性関節リウマチの顕著な特徴である。正常な滑膜は、関節包の内側を覆う繊細な組織である;しかし、RAでは、滑膜は、パンヌスと呼ばれる攻撃的な腫瘍様構造体へとトランスフォームされる。滑膜内の滑膜細胞(線維芽細胞)およびマクロファージは、サイトカイン(すなわち、IL1β、TNFαおよびIL6)のオートクライン作用/パラクリン作用を介して自己永続化炎症性応答を組み合わせる。罹患した軟骨近傍の増殖中の滑膜細胞は、マトリックス分解分子(マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を含む)を産生し、そして増殖因子および接着分子を発現する。関節の侵食を最終的にもたらすのは、持続性の侵襲性かつ破壊性の滑膜組織の増殖である。RAに関連している炎症性サイトカインおよびMMPの多くは、誘導性転写因子によって調節される。転写因子(例えば、NFkB、AP1およびCREB)は、炎症性応答の中枢的な調節因子である。いくつかの独立研究は、RA滑膜における細胞増殖、サイトカイン産生およびMMP産生を調節することが公知の遺伝子発現の調節におけるこれらの転写因子の異常発現に関連した。
【0011】
活性な炎症性パンヌスの形成は、関節の破壊をもたらすびらん性疾患の中心となると考えられる。新たな血管の形成である血管新生は、慢性関節リウマチにおける最も早期の組織病理学的知見の一つであり、そしてパンヌスの発達のために必要とされるようである。新たな結果は、サイトカインおよびプロテアーゼ活性の主な供給源として、関節炎疾患の開始および維持において重要な要因であると考えられる。
【0012】
(発明の要旨)
本発明の1つの実施形態では、配列番号1、配列番号47および配列番号76からなる群より選択されるNURRサブファミリーの核酸配列の発現を減少させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、NURRサブファミリーの核酸配列の発現を減少させる工程は、配列番号1の核酸配列の合成を阻害することを含む。別の特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。さらなる特定の実施形態では、この炎症性関節疾患は関節炎である。さらなる特定の実施形態では、この関節炎は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される。
【0013】
本発明の1つの実施形態では、配列番号33、配列番号64および配列番号91からなる群より選択されるNURRサブファミリーのアミノ酸配列を含むポリペプチドのレベルを低下させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、ポリペプチドを低下させる工程は、配列番号33を含む配列のアミノ酸合成を阻害することを含む。別の特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。さらなる特定の実施形態では、この炎症性関節疾患は関節炎である。さらなる特定の実施形態では、この関節炎は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される。
【0014】
本発明の別の実施形態では、配列番号33、配列番号64および配列番号91からなる群より選択される配列の転写活性を阻害する工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、この配列は配列番号33である。別の特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。さらなる特定の実施形態では、この炎症性関節疾患は関節炎である。さらなる特定の実施形態では、この関節炎は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される。
【0015】
本発明のさらなる実施形態では、ポリペプチドの転写活性を阻害するためのアンタゴニストが存在し、ここで、このポリペプチドは、NURRサブファミリーのアミノ酸配列(例えば、配列番号33、配列番号64および配列番号91からなる群より選択されるアミノ酸配列)を含み、ここで、このポリペプチドは核レセプターである。特定の実施形態では、このポリペプチドはステロイドレセプターである。特定の実施形態では、このポリペプチドはホルモンレセプターである。特定の実施形態では、このポリペプチドはビタミンレセプターである。特定の実施形態では、このアンタゴニストは関節炎を阻害する。別の特定の実施形態では、このアンタゴニストは関節の炎症を阻害する。
【0016】
本発明のさらなる実施形態では、ポリペプチドの転写活性を阻害するためのアンタゴニストが存在し、ここで、このポリペプチドは、配列番号33のNURR1アミノ酸配列を含み、ここで、このポリペプチドは核レセプターである。特定の実施形態では、このアンタゴニストは関節炎を阻害する。別の特定の実施形態では、このアンタゴニストは関節の炎症を阻害する。
【0017】
別の実施形態では、NURRサブファミリーポリペプチドとリガンドとの相互作用を妨害する化合物についてスクリーニングする方法が存在し、この方法は、細胞に試験因子を導入する工程であって、ここで、この細胞は、マーカー配列を含み、このマーカー配列の発現は、このNURRサブファミリーのメンバーによって調節される、工程;およびこのマーカー配列の発現レベルを測定する工程であって、ここで、このマーカー配列のこの発現が、この導入後に減少した場合、この試験因子は、このNURRサブファミリーポリペプチドとリガンドとの相互作用を妨害する化合物である、工程を包含する。特定の実施形態は、組成物としての、NURRサブファミリーポリペプチドとリガンドとの相互作用を妨害する化合物についてのスクリーニングによって同定された化合物である。さらなる特定の実施形態では、このNURRサブファミリーポリペプチドは、配列番号33、配列番号64および配列番号91からなる群より選択される配列である。別の特定の実施形態では、このNURRサブファミリーポリペプチドは、配列番号33の配列である。
【0018】
本発明の別の実施形態では、炎症性免疫疾患の処置のための化合物を同定する方法が存在し、この方法は、細胞に試験因子を導入する工程であって、ここで、この細胞は、マーカー配列を含み、このマーカー配列の発現は、このNURRサブファミリーのメンバーによって調節される、工程;およびこのマーカー配列の発現レベルを測定する工程であって、ここで、このマーカー配列の発現が、この試験因子の導入後に減少した場合、この試験因子は、この炎症性免疫疾患の処置のための化合物である、工程を包含する。特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、関節内に存在する。
【0019】
本発明の別の実施形態では、薬理学的に受容可能な組成物が存在し、この組成物は、炎症性免疫疾患の処置のために同定された化合物および薬学的キャリアを含む。特定の実施形態では、炎症性疾患の処置のための化合物は、薬学的キャリア中に分散され、そしてキャリア中、この化合物の治療有効量で、炎症性免疫疾患を有する個体へと投与される。
【0020】
本発明の別の実施形態では、ポリペプチドの転写活性のアゴニストが存在し、ここで、このポリペプチドは、配列番号33、配列番号64および配列番号91からなる群より選択されるNURRサブファミリーのアミノ酸配列を含み、ここで、このポリペプチドは核レセプターである。特定の実施形態では、このアゴニストはステロイドレセプターである。特定の実施形態では、このアゴニストはホルモンレセプターである。特定の実施形態では、このアゴニストはビタミンレセプターである。
【0021】
本発明のさらなる実施形態では、ポリペプチドの転写活性のアゴニストが存在し、ここで、このポリペプチドは、配列番号33のNURR1アミノ酸配列を含み、ここで、このポリペプチドは核レセプターである。
【0022】
本発明の特定の実施形態では、CRHレセプターの核酸配列の発現を減少させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。さらなる特定の実施形態では、CRHレセプターの発現を減少させる工程は、配列番号104の核酸配列の合成を阻害することを含む。本発明の別の特定の実施形態では、CRHレセプターのアミノ酸配列のレベルを低下させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。さらなる特定の実施形態では、CRHレセプターのアミノ酸レベルを低下させる工程は、アミノ酸合成を阻害すること、CRHレセプターのアミノ酸分解を増加させることを含むか、または治療有効レベルの、配列番号124を含む配列のCRHレセプターポリペプチドに対する抗体を投与することを含む。特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、関節炎、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。別の特定の実施形態では、この炎症性関節疾患は関節炎である。さらなる特定の実施形態では、この関節炎は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される。
【0023】
他の目的、特徴および利点、ならびにさらなる目的、特徴および利点は、以下の明細書を読むことによって、および明細書の一部を形成する添付の図面を参照することによって、明らかであり、そして最終的により容易に理解されるか、または本発明の現在好ましい実施形態の任意の例は、開示の目的のために与えられる。
【0024】
(発明の説明)
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかである。しかし、詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示しているとはいえ、例示のためにのみ与えられており、なぜなら、本発明の趣旨および範囲内の種々の変更および改変は、この詳細な説明から当業者には明らかであることが理解されるべきである。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「a」または「an」は、1以上を意味し得る。特許請求の範囲で使用される場合、用語「を含む」に関連して使用される場合、用語「a」または「an」は、1または1より多くを意味し得る。本明細書中で使用される場合、「別の」は、少なくとも二番目以上を意味する。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「アゴニスト」は、別の生物学的実体の活性または機能を促進する、促す、または増強する因子と定義される。特定の実施形態では、これは、NURRサブファミリーポリペプチドの転写活性のアゴニストである。別の特定の実施形態では、これは、NURRアミノ酸配列をコードするポリペプチドのアゴニストであり、ここで、このポリペプチドは核レセプターである。このアゴニストは、アミノ酸配列、核酸配列、脂質、糖、糖質またはそれらの組合せであり得る。特定の実施形態では、このアゴニストは、炎症に関連する。例としては、IL1β、TNFα、IL−6およびPGE2が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書中で使用される同じ因子についての他の用語は、メディエーターおよびサイトカインである。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「アンタゴニスト」は、別の生物学的実体の活性、機能または効果を妨害する、中和するまたは妨害する因子と規定される。特定の実施形態では、このアンタゴニストは、NURRサブファミリーポリペプチドの転写活性を阻害する。別の特定の実施形態では、これは、NURR1アミノ酸配列をコードするポリペプチドのアンタゴニストであり、ここで、このポリペプチドは核レセプターである。このアンタゴニストは、アミノ酸配列、核酸配列、脂質、糖、合成化学分子、ハプテン、糖質またはそれらの組合せであり得る。この因子は、NURR1活性を部分的または完全に妨害し得る。特定の実施形態では、このアンタゴニストリガンドはNURR1転写活性を阻害する。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「抗サイトカイン」は、サイトカインの合成、活性または機能を妨害する生物学的因子と定義される。この生物学的因子は、アミノ酸、核酸、脂質、糖、糖質またはそれらの組合せであり得る。サイトカインの妨害は、直接的相互作用または間接的相互作用を含み得る。抗サイトカインは、内因性または合成によって誘導され得る。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「関節炎」は、関節の炎症と定義される。特定の実施形態では、関節は、肩、膝、肘、中手指節関節、指(finer)、膝距腿関節部、頸部または股関節部の関節である。別の特定の実施形態では、複数の関節が罹患している。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「サイトカイン」は、標的細胞に対してリンホカインと同じ効果(炎症を引き起こすことを含む)を引き起こす能力を有する、リンパ系細胞または非リンパ系細胞によって産生される可溶性の物質と定義される。リンホカインは、抗原侵襲に応じてリンパ芽球によって放出される、生物学的に活性な可溶性因子と本明細書中で定義される。サイトカインの例としては、IL1β、TNFα、IL−6およびPGE2が挙げられるがこれらに限定されない。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞」、「細胞株」および「細胞培養」は、交換可能に使用され得る。これらの用語の全てはまた、任意の全てのその後の世代である、それらの子孫を含む。すべての子孫が、意図的な変異または偶然の変異に起因して、同一というわけではないかもしれないことが理解される。異種核酸配列を発現する状況では、「宿主細胞」は、原核生物細胞または真核生物細胞をいい、宿主細胞は、ベクターを複製し得るおよび/またはベクターによってコードされる異種遺伝子を発現し得る、任意の形質転換可能な生物体を含む。宿主細胞は、ベクターについてのレシピエントとして使用され得、そして使用されている。宿主細胞は、「トランスフェクト」または「形質転換」され得、トランスフェクトまたは形質転換とは、外因性核酸が宿主細胞へと移入または導入されるプロセスをいう。形質転換細胞としては、初代の対象細胞およびその子孫が挙げられる。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「炎症性免疫疾患」は、生物体の免疫系に罹り、身体の特定領域の炎症を引き起こす疾患と定義される。特定の実施形態では、炎症の領域としては、関節、結腸および甲状腺の滑液が挙げられる。炎症は、この疾患の原発症状であり得るか、またはこの疾患に間接的に関連し得る。特定の実施形態では、この炎症は、低いレベルのグレードの炎症(例えば、変形性関節症を含め、変性形態の関節炎に伴う炎症)であり得る。炎症性免疫疾患の例としては、関節炎(例えば、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎)、変形性関節症、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎が挙げられる。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「妨害する」は、作用を遅延させるか、緩慢にするかまたは妨げて、望ましくない結果を予防することとして定義される。妨害は、完全であってもよく、または部分的であってもよい。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「阻害する」は、作用をブロックするか、遅延させるか、または妨げて、所望でない結果を予防することと定義される。阻害は、完全であってもよく、または部分的であってもよい。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「リガンド」は、別の分子に結合する分子と定義される。特定の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーに結合するリガンドが好ましい。当業者は、リガンドが、リガンド全体、NURRサブファミリーのメンバーに結合し得るままである、その任意の部分および任意の変異体を含むことを認識する。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「NURRサブファミリー」は、構成的に活性な転写因子として機能し、かつNURR1(Nur関連因子I)に関連する(ここで、この関係は構造的および機能的である)、核に局在する転写因子のグループと定義される。特定の実施形態では、このサブファミリーは、異なるメンバーが互いに機能的に補完する能力によって特徴付けられる。別の特定の実施形態では、このサブファミリーは、DNA結合ドメインの同一の配列を有し、ここで、この配列同一性は、約40%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約45%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約50%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約55%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約60%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約65%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約70%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約75%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約80%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約85%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約90%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約95%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約99%である。このファミリーは、NURR1、NOR1(ニューロン由来オーファンレセプター)およびNUR77を含む。このサブファミリーの考察については、本明細書中に参考として援用される、Maruyamaら,1995および各メンバーの別名に関するその中の表1を参照のこと。当業者は、このグループが核レセプタースーパーファミリーのNGFI−Bサブファミリーともいわれ得ることを認識する。特徴としては、2つの高度に保存されたジンクフィンガーモチーフ(Berg,1989;KlugおよびSchwabe,1995)を含む中心のDNA結合ドメイン、カルボキシル末端における8〜9個の疎水性アミノ酸のヘプタッド反復を含むリガンド結合ドメインおよび可変アミノ末端領域が挙げられ得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「オーファンレセプター」は、既知のレセプターに構造的に関連している分子であって、ここで、リガンドの正体および生理学的機能が未知である分子をいう。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、1より多くのアミノ酸サブユニットを含む、分子と定義される。ポリペプチドは、タンパク質全体であってもよく、またはポリペプチドは、タンパク質のフラグメント(例えば、ペプチドまたはオリゴペプチド)であってもよい。ポリペプチドはまた、アミノ酸サブユニットに対する変更(例えば、メチル化またはアセチル化)を含み得る。特定の実施形態では、ポリペプチドは、核局在化配列を有する。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「レセプター」は、NURRサブファミリーのアミノ酸配列と会合するかまたはNURRサブファミリーのアミノ酸配列である、生物学的実体と定義される。レセプターは、アミノ酸配列、核酸配列、脂質、糖、糖質またはそれらの組合せであり得る。特定の実施形態では、レセプターはアミノ酸配列である。レセプターは、膜、核または細胞質に位置し得る。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「治療的に有効」は、疾患に関連した何らかの症状を改善するために必要な化合物量と定義される。例えば、炎症性免疫疾患(例えば、関節炎)の処置において、この疾患の任意の症状を減少、妨害、遅延または停止させる化合物は、治療的に有効である。治療有効量の化合物は、疾患を治癒させるために必要とされるわけではなく、疾患についての処置を提供する。投与される量が生理学的に重要である場合、化合物は、治療有効量で投与される。化合物の存在が、レシピエント生物体の生理機能における技術的変化をもたらす場合、その化合物は、生理学的に有意である。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「転写される」は、デオキシリボ核酸テンプレートからのリボ核酸の作製をいう。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「処置」は、医学的手段または外科的手段を介した患者の管理と定義される。処置は、医学的状態または医学的疾患の少なくとも1つの症状を改善または緩和し、そして治癒を提供するためには必要とされない。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「血管疾患」は、血管(動脈、静脈および毛細管)の直径が制限される、任意の疾患と定義される。血管疾患は、血管透過性または血管拡張における変化(例えば、血管新生)を含み得る。制限された血管は、疾患または医学的状態(例えば、心臓病)の主症状であり得る。
【0044】
本発明の1つの実施形態では、配列番号2のNURRサブファミリーのアミノ酸配列を含むポリペプチドのレベルを低下させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、レベルを低下させる工程は、このポリペプチドに対する、治療的に有効なレベルのアンタゴニストを投与することを含む。別の特定の実施形態では、このアンタゴニストは、アミノ酸、核酸、脂質、有機合成分子、ハプテン、糖、糖質またはそれらの組合せからなる群より選択される。さらなる特定の実施形態では、このアンタゴニストはアミノ酸である。
【0045】
本発明の別の実施形態では、ポリペプチドのレベルを低下させる工程は、NURRサブファミリーのアミノ酸合成を阻害すること、NURRサブファミリーのアミノ酸分解を増大させることを含むか、または治療的に有効なレベルの、NURRサブファミリーポリペプチドに対する抗体を投与することを含む。特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、関節炎、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。別の特定の実施形態では、この炎症性関節疾患は関節炎である。さらなる特定の実施形態では、この関節炎は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される。別の実施形態では、抗サイトカインを投与する工程を包含する、炎症性免疫疾患を処置するための方法が存在する。特定の実施形態では、この抗サイトカインは、IL1β、TNFα、IL−6またはPGE2を妨害する。特定の実施形態では、この抗サイトカインは、グルココルチコイドである。さらなる実施形態では、NURRサブファミリーのポリペプチドのレベルを低下させる工程は、コルチコトロピン放出ホルモン、プロオピオメラノコルチコトロピン、コラゲナーゼ(MMP−1)、血清アミロイドAおよびPGE2のアミノ酸またはリボ核酸のレベルを低下させることを含む。
【0046】
本発明のさらなる実施形態では、NURRサブファミリー(例えば、配列番号1のNURR1核酸配列)から転写されるNURRサブファミリーのリボ核酸配列のレベルを低下させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、この低下させる工程は、NURRサブファミリーの核酸合成を阻害すること、NURRサブファミリーの核酸配列の治療的に有効なレベルのアンチセンス配列を投与すること、または治療的に有効なレベルの抗サイトカインを投与することを含む。別の特定の実施形態では、この抗サイトカインは、IL1β、TNFα、IL−6およびPGE2からなる群より選択されるサイトカインを妨害する。特定の実施形態では、この抗サイトカインはグルココルチコイドである。さらなる実施形態では、NURRサブファミリーの核酸配列のレベルを低下させる工程は、コルチコトロピン放出ホルモン、プロオピオメラノコルチコトロピン、コラゲナーゼ(MMP−1)および血清アミロイドAのアミノ酸またはリボ核酸のレベルを低下させることを含む。特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、関節炎、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。別の特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は関節炎である。さらなる特定の実施形態では、この関節炎は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される。
【0047】
本発明の別の実施形態では、NURRサブファミリー(例えば、配列番号33のアミノ酸配列)を含むポリペプチドの、核酸への結合を妨害する工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、この妨害する工程は、NURRサブファミリーのポリペプチドに対するアンタゴニストの治療的に有効なレベルを投与すること、NURRサブファミリーのポリペプチドに対する抗体の治療的に有効なレベルを投与すること、またはNURRサブファミリーのメンバーを結合する、レセプターもしくは核酸のレベルを治療有効量まで増大させることを含む。別の特定の実施形態では、このアンタゴニストは、アミノ酸、核酸、脂質、糖、糖質またはそれらの組合せからなる群より選択される。さらなる特定の実施形態では、このアンタゴニストはアミノ酸である。特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、関節炎、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。別の特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は関節炎である。さらなる特定の実施形態では、この関節炎は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される。
【0048】
本発明のさらなる実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーの治療有効量の核酸配列を生物体に投与する工程を包含する、血管疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、投与する工程は、ベクターを含む。さらなる特定の実施形態では、このベクターは、核酸、アミノ酸、脂質、リポソーム、糖、糖質またはそれらの組合せである。別の特定の実施形態では、この核酸ベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスまたはレトロウイルスである。
【0049】
特定の実施形態では、配列番号1のNURR1核酸配列から転写されるリボ核酸のレベルを低下させる工程を包含し、ここで、このNURR1核酸配列が血管拡張剤をコードする、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、NURR1のリボ核酸のレベルを低下させる工程は、NURR1核酸配列のアンチセンス配列の治療的に有効なレベルを投与することを含む。さらなる特定の実施形態では、この核酸配列はベクターを含む。別の特定の実施形態では、このベクターは、核酸、アミノ酸、脂質、リポソーム、糖、糖質およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。さらなる特定の実施形態では、この核酸ベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレトロウイルスである。
【0050】
本発明の別の実施形態では、NURRサブファミリーのアミノ酸配列を含むポリペプチドのレベルを低下させる工程を包含し、ここで、このNURRサブファミリーポリペプチドが血管拡張剤として作用する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、配列番号33のNURRサブファミリーのアミノ酸配列を含むポリペプチドの治療的に有効なレベルを、生物体に投与する工程を包含する、血管疾患について生物体を処置する方法が存在する。さらなる実施形態では、アミノ酸配列を投与する工程は、タンパク質形質導入ドメインを含む。さらなる特定の実施形態では、このタンパク質形質導入ドメインは、HIV TATタンパク質形質導入ドメインである。
【0051】
本発明の別の実施形態では、NURRサブファミリーの核酸配列(例えば、配列番号1を含む配列)から転写されるリボ核酸のレベルを低下させる工程を包含する、生物体における炎症性免疫疾患を予防する方法が存在する。
【0052】
本発明のさらなる実施形態では、NURRサブファミリーのアミノ酸配列(例えば、配列番号33を含む配列)を含むポリペプチドのレベルを低下させる工程を包含する、生物体における炎症性免疫疾患を予防する方法が存在する。
【0053】
本発明のさらなる実施形態では、ポリペプチドのアンタゴニストが存在し、ここで、このポリペプチドは、NURRサブファミリーのアミノ酸配列(例えば、配列番号33の配列)を含み、ここで、このポリペプチドは、核レセプターである。特定の実施形態では、このアンタゴニストはアミノ酸である。他の特定の実施形態では、このポリペプチドは、ステロイドレセプター、ホルモンレセプターまたはビタミンレセプターである。
【0054】
本発明のさらなる実施形態では、ポリペプチドのアゴニストが存在し、ここで、このポリペプチドはNURRサブファミリーのアミノ酸配列(例えば、配列番号33を含むNURR1配列)を含み、ここで、このポリペプチドは核レセプターである。特定の実施形態では、このアゴニストはアミノ酸である。他の特定の実施形態では、このポリペプチドは、ステロイドレセプター、ホルモンレセプターまたはビタミンレセプターである。
【0055】
本発明の1つの実施形態では、生物体における炎症性免疫疾患の処置のための化合物が存在し、ここで、この化合物は、NURRサブファミリーのアミノ酸配列(例えば、配列番号33を含む配列)を含むポリペプチドのアンタゴニストであり、ここで、このポリペプチドは核レセプターである。特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、関節炎、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。別の特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は関節炎である。
【0056】
本発明のさらなる実施形態では、生物体における炎症性免疫疾患の処置のための化合物が存在し、ここで、この化合物は、NURRサブファミリーのアミノ酸配列(例えば、配列番号33を含むNURRサブファミリーのアミノ酸配列)を含むポリペプチドのアゴニストであり、そしてここで、このポリペプチドは核レセプターである。特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、関節炎、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。別の特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は関節炎である。
【0057】
本発明の特定の実施形態では、CRHレセプターの核酸配列の発現を減少させる工程を包含する、炎症性免疫疾患についての生物体を処置する方法が存在する。さらなる特定の実施形態では、CRHレセプターの発現を低下させる工程は、配列番号104の核酸配列の合成を阻害することを含む。本発明の別の特定の実施形態では、CRHレセプターのアミノ酸配列のレベルを減少させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。さらなる特定の実施形態では、CRHレセプターのアミノ酸のレベルを低下させる工程は、アミノ酸合成を阻害すること、CRHレセプターのアミノ酸分解を増大させることを含むか、または配列番号124を含む配列のCRHレセプターのポリペプチドに対する抗体の治療的に有効なレベルを投与することを含む。特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、関節炎、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。別の特定の実施形態では、この炎症性関節疾患は関節炎である。さらなる特定の実施形態では、この関節炎は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される。
【0058】
本発明の目的は、核レセプタースーパーファミリーのメンバー(上記の通りのNURR1、NOR1およびNUR77を含む)は構造的および遺伝的に顕著な関連した冗長性があるので、NURRサブファミリーの全てのメンバーに対する、処置方法、予防方法、アンタゴニスト、アゴニストおよび化合物に関する。当業者は、本発明の範囲内でNURR1配列が利用されることを認識する。核酸NURR1配列、続いてGenbank登録番号の例としては、以下が挙げられる:配列番号1(AB017586)、配列番号2(NT005151)、配列番号3(AJ278700)、配列番号4(NM013613)、配列番号5(NM006186)、配列番号6(BB539587)、配列番号7(BB536225)、配列番号8(BB432168)、配列番号9(BB424269)、配列番号10(BB345745)、配列番号11(BB322941)、配列番号12(BB023391)、配列番号13(BB023355)、配列番号14(AB019433)、配列番号15(XM002441)、配列番号16(AV3566519)、配列番号17(AV356512)、配列番号18(AV382234)、配列番号19(AV368035)、配列番号20(AV352127)、配列番号21(AV341553)、配列番号22(AV245724)、配列番号23(AV221665)、配列番号24(AB014889)、配列番号25(U72345)、配列番号26(U86783)、配列番号27(U67738)、配列番号28(U93471)、配列番号29(U93429)、配列番号30(S53744)、配列番号31(R35928)および配列番号32(R25908)。アミノ酸NURR1配列の例としては、以下が挙げられる:配列番号33(548390)、配列番号34(XP002441)、配列番号35(CAC27783)、配列番号36(A46225)、配列番号37(NP038641)、配列番号38(NP006177)、配列番号39(BAA77328)、配列番号40(BAA75666)、配列番号41(Q07917)、配列番号42(P43354)、配列番号43(Q04913)、配列番号44(AAB68748)、配列番号45(AAB68706)および配列番号46(AAB25138)。当業者は、本発明の範囲内でNOR−1配列が利用されることを認識する。核酸NOR−1配列の例としては、以下が挙げられる:配列番号47(1651190)、配列番号48(D38530)、配列番号49(AF050223)、配列番号50(X75871)、配列番号51(L2781)、配列番号52(BG235965)、配列番号53(BE656711)、配列番号54(BE188095)、配列番号55(BE187931)、配列番号56(AJ011768)、配列番号57(E14965)、配列番号58(AJ011767)、配列番号59(D85244)、配列番号60(D85243)、配列番号61(D85242)、配列番号62(D85241)および配列番号63(NM015743)。アミノ酸NOR1配列の例としては、配列番号64(7441771)、配列番号65(Q92570)、配列番号66(BAA11419)、配列番号67(JC2493)、配列番号68(NP056558)、配列番号69(P51179)、配列番号70(CAA09764)、配列番号71(CAA09763)、配列番号72(BAA31221)、配列番号73(BAA28608)、配列番号74(BAA07535)および配列番号75(AAA32685)が挙げられる。当業者は、本発明の範囲内でNUR77配列が利用されることを理解する。核酸NUR77配列の例としては、以下が挙げられる:配列番号76(1339917)、配列番号76(12662548)、配列番号77(BF937382)、配列番号78(NM006981)、配列番号79(AR085655)、配列番号80(AR085654)、配列番号81(AR085653)、配列番号82(AR085654)、配列番号83(AR085652)、配列番号84(BE198460)、配列番号85(BE047656)、配列番号86(BE047651)、配列番号87(AW988827)、配列番号88(AA461422)、配列番号89(D49728)および配列番号90(S77154)。アミノ酸NUR77配列の例としては、以下が挙げられる:配列番号76(127819)、配列番号91(128911)、配列番号92(P22829)、配列番号93(NP034574)、配列番号94(AAB33999)、配列番号95(NP008912)、配列番号96(AAA42058)および配列番号97(A37251)。当業者は、National Center for Biotechnology Genbankデータベースまたは市販のデータベース(例えば、Celeraによる遺伝子データベース)から配列をどのようにして検索するかがわかる。
【0059】
本発明では、この方法は、炎症性免疫疾患(例えば、関節炎)を処置するため、またはこのような疾患を予防するためのいずれかに使用される。処置における使用の例は、その発症後の炎症性免疫疾患の改善のための使用、またはその症状を軽減するのを助ける際の使用である。この炎症性免疫疾患は、少なくとも1つの症状が緩和された場合、改善されたと考えられ、ここで、緩和は、部分的または完全であり得る。予防のための処置についての使用の例は、滑膜または滑液の炎症を予防するための、従って、関節炎の発症を予防または遅延させるための、関節炎の発症前の使用である。
【0060】
本発明の1つの特定の実施形態は、NURRサブファミリーのメンバーの核酸レベルを低下させる工程を包含する、関節炎を処置する方法である。特定の実施形態では、NURR1核酸が低下される。本発明の別の特定の実施形態は、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸レベルを低下させる工程を包含する、関節炎を処置する方法を含む。特定の実施形態では、NURR1アミノ酸のレベルが低下される。当業者は、NURR1の核酸レベルまたはアミノ酸レベルを低下させる種々の方法が存在することを認識する。
【0061】
(スクリーニングアッセイ−アミノ酸アンタゴニスト)
本発明の特定の実施形態では、NURRサブファミリーのアミノ酸配列に対するアンタゴニストを投与する方法が存在する。別の実施形態では、CRHレセプターのアミノ酸配列に対するアンタゴニストを投与する本発明の方法が存在する。当業者は、1つの実施形態におけるアンタゴニストが、NURRサブファミリーのメンバーへと結合することによって、NURR転写活性を妨害することを認識する。別の実施形態では、このアンタゴニストの作用は、NURRサブファミリーのメンバーの発現の減少をもたらす。当業者は、標準的な方法を利用して、NURRサブファミリーのアミノ酸配列またはCRHレセプターのアミノ酸配列に対するアンタゴニストとして阻害または作用する化合物についてスクリーニングすることを知っている。化合物バンクまたはオリゴペプチドライブラリーは、特定の実施形態で、当該分野で周知の方法によってスクリーニングされる。このアンタゴニストは、アミノ酸、核酸、脂質、リポソーム、糖質、糖またはそれらの組合せであり得る。好ましい実施形態では、このアンタゴニストはアミノ酸である。
【0062】
本発明の別の実施形態は、NURRサブファミリーのメンバーに対する抗体を投与して、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸配列を、入手可能なプールから隔離することによって、NURRサブファミリーのメンバーのレベルを低下させることを含む。本発明の別のさらなる実施形態は、CRHレセプターに対する抗体を投与して、CRHレセプターのアミノ酸配列を、入手可能なプールから隔離することによって、CRHレセプターのレベルを低下させることを含む。抗体誘導のためのNURRサブファミリーのアミノ酸配列およびCRHレセプターのアミノ酸配列は、生物学的活性を必要としない;しかし、タンパク質フラグメントまたはオリゴペプチドは、抗原性でなければならない。特異抗体を誘導するために用いられるペプチドは、少なくとも約4アミノ酸、好ましくは少なくとも約10アミノ酸からなるアミノ酸配列を有し得る。これらは、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部分を模倣すべきであり、そして天然に存在する低分子のアミノ酸配列全体を含み得る。当該分野で周知の手順は、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸配列に対する抗体の産生のために、またはCRHレセプターのアミノ酸配列に対する抗体の産生のために用いられ得る。
【0063】
抗体の産生について、種々の宿主(ヤギ、ウサギ、ラット、マウスなどを含む)は、NURRサブファミリーのメンバーのタンパク質もしくはCRHレセプターのタンパク質、または免疫原性特性を保持する、それらの任意の部分、フラグメントもしくはオリゴペプチドを用いた注射によって免疫され得る。宿主の種に依存して、種々のアジュバントを用いて、免疫学的応答を増大させ得る。このようなアジュバントとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:Freundアジュバント、鉱物ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)および界面活性剤(例えば、リゾレシチン)、プルーロニックポリオール(pluronic polyol)、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁物、キーホールリンペットヘモシアニンおよびジニトロフェノール。BCG(カルメットゲラン桿菌)およびCorynebacterium parvumは、潜在的に有用なヒトアジュバントである。NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターに対するモノクローナル抗体は、培養中の連続細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技術を用いて調製される。抗原結合部位を保持する、抗体およびフラグメントの誘導体もまた、本発明に含まれる。
【0064】
特定の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸配列またはCRHレセプターのアミノ酸配列のレベルは、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸合成またはCRHレセプターのアミノ酸合成を阻害することによって低下される。これは、NURR1配列またはCRHレセプター配列の翻訳の妨害または停止だけでなく、翻訳後プロセシングおよび適切な細胞内(subcellular)局在への輸送をも含む。
【0065】
別の実施形態では、NURRサブファミリーのアミノ酸配列またはCRHレセプターのアミノ酸配列のレベルは、それぞれ、NURRサブファミリーのアミノ酸分解またはCRHレセプター分解を増大させることによって低下される。これは、アミノ酸配列を分解についての標的とする、NURRサブファミリーのアミノ酸配列またはCRHレセプターのアミノ酸配列に対する改変(ユビキチン付加(ubiquitination))を含む。
【0066】
さらなる実施形態では、NURRサブファミリーのアミノ酸のレベルは、CRHの核酸またはアミノ酸のレベルを低下させることによって低下される。実施例において実証されるように、CRHは、NURR1の発現を誘導する。それゆえ、特定の実施形態で、NURR1抑制について類似の意味で本明細書中で記載される、レベルを低下させることはまた、NURR1のアミノ酸レベルを低下させる。類似の方法で、他のNURRサブファミリーのメンバーは、CRHレベルを低下させることによって低減される。
【0067】
好ましい実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸配列のアミノ酸レベルを低下させることは、コラゲナーゼまたは血清アミロイドA(RA炎症機構および関節破壊と関連付けられている、その調節領域にNURR1コンセンサス結合部位を有する遺伝子の2つの例)の核酸またはアミノ酸の配列を減少させることをさらに含む。NURR1によって調節され、かつ免疫疾患に関連した炎症に関連している他の核酸配列は、本発明の範囲内にある。コラゲナーゼの核酸配列は、本明細書中で配列番号141(13639671)によって表され、そしてコラゲナーゼのアミノ酸配列は本明細書中で配列番号142(13639672)によって表される。血清アミロイドAの核酸配列は本明細書中で配列番号98(178868)によって表され、そして血清アミロイドAのアミノ酸配列は配列番号99(13540475)である。コンセンサス結合部位をその調節領域に含む遺伝子の他の例は、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)およびプロオピオメラノコルチコトロピン(POMC)である。CRHの核酸は配列番号100(12803538)を含み、そしてCRHのアミノ酸配列は配列番号101(AAH02599)を含む。POMCの核酸配列は配列番号102(11429780)によって表され、そしてPOMCのアミノ酸配列は配列番号103(13637253)によって表される。
【0068】
好ましい実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸配列のアミノ酸レベルを低下させることは、CRHレセプターサブタイプR1の核酸またはアミノ酸の配列を低下させることをさらに含む。当業者は、本発明の範囲内でCRH−R1配列が利用されることを認識する。核酸CRH−R1配列の例として、以下が挙げられる:配列番号104(5815472)、配列番号105(登録番号NM030999)、配列番号106(登録番号AB055434)、配列番号107(登録番号NM007762)、配列番号108(登録番号NM004382)、配列番号109(登録番号BB523399)、配列番号110(登録番号BB520290)、配列番号111(登録番号BB517689)、配列番号112(登録番号BB477388)、配列番号113(登録番号BB475687)、配列番号114(登録番号AF180301)、配列番号115(登録番号BB239486)、配列番号116(登録番号BB237761)、配列番号117(登録番号BB169114)、配列番号118(登録番号AV332164)、配列番号119(登録番号AI561856)、配列番号120(登録番号U19939)、配列番号121(登録番号AF077185)、配列番号122(登録番号AA543299)および配列番号123(登録番号BB009745)。CRH−R1のアミノ酸配列の例として、以下が挙げられる:配列番号124(5815473)、配列番号125(登録番号062772)、042602)、配列番号126(登録番号Q90812)、配列番号127(登録番号P35353)、配列番号128(登録番号P35347)、配列番号129(登録番号P34998)、配列番号130(登録番号NP112261)、配列番号131(登録番号BAB21864)、配列番号132(登録番号I38879)、配列番号133(登録番号A48260)、配列番号134(登録番号S39535)、配列番号135(登録番号NP0031788)、配列番号136(登録番号AAD52688)、配列番号137(登録番号AAC52243)、配列番号138(登録番号AAC50073)、配列番号139(登録番号AAC27320)および配列番号140(登録番号NP004373)。
【0069】
さらなる実施形態では、抗サイトカインの投与をさらに包含する、炎症性免疫疾患についての処置が存在する。この抗サイトカインは、サイトカインを、直接的または間接的のいずれかで妨害する。特定の実施形態では、妨害の標的であるサイトカインは、IL1β、TNFα、IL−6またはPGE2である。
【0070】
本発明の1つの実施形態では、NURRサブファミリーの核酸配列またはCRHレセプターの核酸配列のレベルを低下させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。NURRサブファミリーまたはCRHレセプターの核酸配列のレベルを低下させる工程は、当該分野で標準的な方法によって行われ得る。これは、機能的核酸配列のレベルを低下させることを含み、そして転写後プロセシング、5’mRNAキャップの適用、スプライシングおよびポリアデニル化に影響を与えることを含み得る。特定の実施形態では、NURRサブファミリーの核酸配列は、適切な細胞内位置にもはや局在しない。別の実施形態では、NURRサブファミリーの核酸配列またはCRHレセプターの核酸配列のレベルは、上流の因子(例えば、NURRサブファミリーの核酸配列の発現を調節する転写因子)に影響を与えることによって低下される。さらなる実施形態では、CRHレセプターの核酸配列のレベルは、上流の因子(例えば、CRHレセプターの核酸配列の発現を調節する転写因子)に影響を与えることによって低下される。
【0071】
(スクリーニングアッセイ−核酸アンタゴニスト)
本発明の1つの実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーの核酸レベルを低下させる方法が存在する。本明細書中に提示される例は、NURRサブファミリーのメンバーが低下したレベルの発現を有する条件下でのみ現れる、容易に検出可能な表現型をその組換え宿主に付与するためにレポーター遺伝子が用いられる、細胞全体アッセイ、インビボ分析または形質転換細胞株もしくは不死細胞株に基づく候補物質のスクリーニング方法を提供する。一例として、レポーター遺伝子は、分析(例えば、色素形成分析、蛍光比色分析、放射性同位体分析または分光光度分析)によって検出可能である、他の場合にはその宿主細胞によって産生されないポリペプチドをコードする。特定の実施形態では、このアミノ酸配列をコードするNURRサブファミリーの核酸配列は、β−ガラクトシダーゼで置換されている。
【0072】
本発明のスクリーニングアッセイの別の例は、本明細書中に提示される。NURRサブファミリーのメンバーを発現する細胞は、マイクロタイターウェル中で増殖され、その後、一連のウェルに連続モル濃度比率の候補が添加され、そして化合物を再懸濁または溶解するために用いられたビヒクルと共に単独でインキュベートしたコントロールにおける発現を実証するに充分であるインキュベーション期間後にシグナルレベルが決定される。次いで、種々の比率の候補を含有するウェルは、シグナル活性化について評価される。次いで、レポーター遺伝子の転写または発現の用量関連減少を実証する候補は、臨床治療剤としてのさらなる評価のために選択される。
【0073】
代替の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーの配列(例えば、配列番号1)のアンチセンス配列で細胞をトランスフェクトすることによって、NURRサブファミリーのメンバーの核酸レベルを低下させるための方法が存在する。細胞への核酸のトランスフェクションについての送達系は、ウイルス法または非ウイルス法のいずれかを利用し得る。非ウイルス形態のDNAまたはRNAについての標的化系は、以下の4つの成分を必要とする:1)目的のDNAまたはRNA;2)細胞表面レセプターまたは抗原を認識しかつ結合する部分;3)DNA結合部分;ならびに4)細胞表面から細胞質への複合体の輸送を可能にする溶解部分。さらに、リポソームおよびカチオン性脂質を用いて、治療遺伝子の組合せを送達して、同じ効果を達成し得る。潜在的ウイルスベクターとしては、ウイルス(例えば、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルスおよびウシパピローマウイルス)から誘導される発現ベクターが挙げられる。さらに、エピソーム性ベクターが用いられ得る。他のDNAベクターおよび輸送体系は、当該分野で公知である。
【0074】
当業者は、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスもしくはワクシニアウイルス、または種々の細菌性プラスミドから誘導された発現ベクターが、標的とされた器官、組織または細胞集団へのヌクレオチド配列の送達のために用いられ得ることを認識する。当業者に周知である方法を用いて、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターをコードする遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを発現する組換えベクターを構築し得る。この遺伝子は、高レベルの所望の遺伝子コードフラグメントを発現する発現ベクターで細胞または組織をトランスフェクトすることによって、オフにされ得る。このような構築物は、翻訳できないセンス配列またはアンチセンス配列を細胞にあふれさせ得る。DNAの組込みの非存在下でさえ、このようなベクターは、全てのコピーが内因性ヌクレアーゼによって無効にされるまで、RNA分子を転写するのに寄与し得る。一過性発現は、非複製性ベクターについて一ヶ月以上、そして適切な複製エレメントがこのベクター系の一部である場合はさらに長く、持続し得る。
【0075】
さらに、当業者は、遺伝子発現の改変が、NURRサブファミリーのメンバーの核酸配列の制御領域(すなわち、プロモーター、エンハンサーおよびイントロン)に対するアンチセンス分子を設計することによって得られ得ることを認識する。転写開始部位(例えば、リーダー配列の−10領域と+10領域との間)から誘導されるオリゴヌクレオチドが好ましい。アンチセンス分子はまた、転写産物がリボソームに結合するのを妨害することによってmRNAの翻訳をブロックするためにも、設計され得る。同様に、阻害は、「三重らせん」塩基対合方法論を用いることによって達成され得る。三重らせん対合は、二重らせんがポリメラーゼ、転写因子または調節分子の結合のために充分に開く能力を損なう。
【0076】
リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒し得る酵素的RNA分子である。リボザイムの作用機構は、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーション、続いてヌクレオチド内分解性(endonucleolytic)切断を含む。本発明の範囲内には、NURRサブファミリーのメンバーをコードする配列のヌクレオチド内分解性切断を特異的かつ効率的に触媒し得る、操作されたハンマーヘッド型モチーフのリボザイム分子が存在する。別の実施形態では、リボザイムは、Tetrahymena型リボザイムである。
【0077】
本発明のアンチセンス分子およびリボザイムは、RNA分子の合成について当該分野で公知の任意の方法(オリゴヌクレオチドを化学的に合成するための技術を含む)によって調製され得る。あるいは、RNA分子は、NURRサブファミリーのメンバーまたはNURRサブファミリーのメンバーのレセプターをコードするDNA配列のインビトロおよびインビボでの転写によって作製され得る。このようなDNA配列は、適切なRNAポリメラーゼプロモーター(例えば、T7またはSP6)を有する広範な種々のベクター中に組み込まれ得る。あるいは、アンチセンスRNAを構成的または誘導的に合成するアンチセンスcDNA構築物は、細胞株、細胞または組織に導入され得る。
【0078】
特定の実施形態では、核酸のトランスフェクションは、Subramanianら(1999)に記載されるように、輸送タンパク質によって促進される。手短には、ペプチドM9は、キャリア分子としてカチオン性ペプチドに化学的に結合される。カチオン性複合体は、負に荷電した目的の核酸を結合し、続いて核輸送タンパク質(例えば、トランスポルチン(transportin))へとM9が結合する。
【0079】
本発明の1つの実施形態は、遊離のNURRサブファミリーのメンバーに結合する、NURRサブファミリーのメンバーのレセプターの合成を増大させることによって、NURRサブファミリーのメンバーのレベルを低下させることである。
【0080】
本発明の1つの実施形態では、治療的に有効なレベルの抗サイトカインを投与する工程を包含する、NURRサブファミリーのメンバーの核酸レベルを低下させる方法が存在する。特定の実施形態では、この抗サイトカインは、例えば、IL1β、TNFα、IL−6またはPGE2を妨害する。
【0081】
本発明のさらなる実施形態では、炎症性免疫疾患に関連した核酸配列(例えば、コラゲナーゼ、血清アミロイドA、CRHまたはPOMC)の核酸レベルを低下させる工程をさらに包含する、NURRサブファミリーのメンバー(例えば、NURR1)の核酸レベルにおける低下が存在する。特定の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーの核酸レベルにおける低下は、NURRサブファミリーのメンバーの結合部位を調節領域に有する核酸配列を減少させる。
【0082】
本発明の1つの特定の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸配列を結合して、その生物学的活性または免疫学的活性をブロック、妨害または調節し、それによって、NURRサブファミリーのメンバーのレセプターに対する作用をそのアミノ酸配列が生じることができないようにする因子を投与するための方法である。このアンタゴニストとしては、NURRサブファミリーのメンバーのレセプターに結合する、タンパク質、ペプチド、可溶性レセプター、核酸、糖質、脂質、糖または他の分子が挙げられ得る。
【0083】
本発明の1つの実施形態は、NURRサブファミリーのメンバーに対する抗体を投与して、それによって、このメンバーがNURRサブファミリーのメンバーのレセプターに結合するのを妨害する方法である。
【0084】
特定の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーのレセプターのレベルを治療有効量まで増大させることによって、レセプターへのNURRサブファミリーのメンバーの結合を妨害する方法が存在する。当該分野で公知であり、そして本明細書中に考察される遺伝子治療によって、または当該分野で標準的であり、そしてまた本明細書中に考察されるNURRサブファミリーのメンバーのレセプターのアミノ酸レベルを投与することによって、このような方法は達成され得る。
【0085】
本発明の1つの実施形態は、NURRサブファミリーのメンバーのレセプター構造に影響を与える化合物を投与する方法である。このような化合物は、結合したらNURRサブファミリーのメンバーのレセプター構造を変更させ、それによってこのレセプター構造をその活性に無効にする、タンパク質、ペプチド、核酸、糖質または他の分子を含み得るがこれらに限定されない。
【0086】
本発明の1つの実施形態は、NURRサブファミリーのメンバーのレセプター機能に影響を与える化合物を投与する方法である。このような化合物は、結合したらNURRサブファミリーのメンバーのレセプターの機能を阻害または抑制する、タンパク質、核酸、糖質または他の分子を含み得るがこれらに限定されない。
【0087】
特定の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸または核酸配列の治療的に有効なレベルを生物体に投与する工程を包含する、血管疾患を有する生物体を処置する方法が存在する。
【0088】
特定の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーの核酸のレベルを低下させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在し、ここで、このNURRサブファミリーのメンバーは、血管拡張剤として作用する。慢性関節リウマチでは、血管は、重要な役割を果たし、そして実施例において示した、血管系におけるNURR1とCRHとの会合は、この疾患についての最初の引き金であると考えられる。それゆえ、NURRサブファミリーのメンバーおよびCRHのレベルをこの疾患プロセスの初期段階で低下させることは、処置のための明らかでかつ有益なストラテジーである。特定の実施形態では、アンチセンスNURRサブファミリーのメンバー(例えば、NURR1)は、生物体に、血管収縮を促進するために投与される。
【0089】
別の実施形態では、生物体における炎症性免疫疾患についての処置は、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸レベルを低下させる工程を包含し、ここで、NURRサブファミリーのメンバーは血管拡張剤である。
【0090】
別の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーの核酸配列またはアミノ酸配列のレベルを低下させる工程を包含する、生物体における炎症性免疫疾患を予防する方法が存在する。投与は、この炎症性免疫疾患の発症の徴候を示さないかまたはこの疾患の初期の徴候を有する生物体に対してであり得る。好ましい実施形態では、この生物体は、この炎症性免疫疾患に対して感受性であるか、またはこの疾患を有することへの遺伝的素因を示す。
【0091】
特定の実施形態では、本明細書中に記載される方法および処置は、他の抗炎症性治療(当該分野で公知の抗サイトカイン処置を含む)と共に用いられる。
【0092】
好ましい実施形態では、処置されるまたは予防方法に供されると本明細書中に記載される生物体はヒトである。
【0093】
本明細書中に記載される方法および処置は、炎症性疾患に関する。特定の実施形態では、この疾患は全身性であり、そして治療は、患者に対して全身的に投与される。しかし、代替的な実施形態では、この治療は、直接適用によって(例えば、注射によって)、炎症を起こした身体領域(例えば、関節)へと投与され得る。
【0094】
(投薬量および処方)
本発明の化合物(活性成分)は、炎症性免疫疾患を処置するために処方され、そして脊椎動物の身体中での活性成分と薬剤作用部位との接触を生じる任意の手段によって、投与され得る。本発明の化合物は、個々の治療活性成分として、または治療活性成分の組合せでのいずれかで薬剤と関連して使用するために利用可能な任意の従来の手段によって投与され得る。本発明の化合物は、単独で投与され得るが、一般には、選択された投与経路および標準的な薬学的手法に基づいて選択された薬学的キャリアと共に投与される。
【0095】
投与される投薬量は、治療有効量の活性成分であり、そしてもちろん、既知の要因(例えば、特定の活性成分ならびにその投与形態および投与経路の薬力学的特徴;レシピエントの年齢、性別、健康および体重;症状の性質および程度;併存処置の種類、処置頻度ならびに所望の効果)に依存して変動する。
【0096】
活性成分は、固体投薬形態(例えば、カプセル剤、錠剤および散剤)において、または液体投薬形態(例えば、エリキシル剤、シロップ剤、乳剤および懸濁剤)において、経口投与され得る。活性成分はまた、注射、迅速な注入、鼻咽頭吸収または皮膚吸収による非経口投与のために処方され得る。この薬剤は、筋肉内に、静脈内に、皮下に、経皮に投与されるかまたは坐剤として投与され得る。化合物を投与する際に、この化合物は、全身的に与えられ得る。全身的な効果を回避する必要がある化合物については、好ましい実施形態は、髄腔内投与である。本発明の好ましい実施形態では、この化合物は、関節炎の処置のために関節間に投与される。
【0097】
ゼラチンカプセルは、活性成分および粉末化キャリア(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸など)を含む。同様の希釈剤は、圧縮錠剤を作製するために使用され得る。錠剤およびカプセルは両方とも、長期にわたる薬物の連続放出を提供するために、持続放出製品として製造され得る。圧縮錠剤は、任意の不愉快な味をマスクし、かつ錠剤を空気から保護するために糖衣またはフィルムコーティングされ得るか、または胃腸管中での選択的崩壊のために腸溶性コーティングされ得る。
【0098】
経口投与のための液体投薬量形態は、患者の容認を増すために着色剤および矯味矯臭剤を含み得る。
【0099】
一般に、水、適切なオイル、生理食塩水、デキストロース(グルコース)水溶液、および関連の糖溶液、ならびにグリコール(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)は、非経口溶液のために適切なキャリアである。非経口投与のための溶液は好ましくは、活性成分の水溶性塩、適切な安定剤、および必要に応じて緩衝物質を含む。単独かまたは組み合わされたかのいずれかの、抗酸化剤(例えば、重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸)は、適切な安定剤である。クエン酸およびその塩、ならびにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)ナトリウムもまた使用される。さらに、非経口溶液は、保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、メチル−またはプロピル−パラベンおよびクロロブタノール)を含み得る。適切な薬学的キャリアは、この分野における標準的な参考書であるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載される。
【0100】
さらに、標準的な薬学的方法を用いて、作用の持続時間を制御し得る。これらは、当該分野で周知であり、そして制御放出調製物を含み、そして適切な高分子(例えば、ポリマー、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレンビニルアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたは硫酸プロタミン)を含み得る。高分子の濃度ならびに取り込みの方法は、放出を制御するために調整され得る。さらに、この薬剤は、ポリマー材料(例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)またはエチレンビニルアセテートコポリマー)の粒子中に取り込まれ得る。取り込まれることに加えて、これらの薬剤を用いて、マイクロカプセル中に化合物を捕捉し得る。
【0101】
本発明の化合物の投与のために有用な薬学的投薬量形態は、以下の通りに例示され得る。活性成分についての薬理学的範囲は、当該分野で周知の方法を用いて、当業者によって決定され得る。活性成分についての例示の範囲は、以下の通りである:400μg/日と4mg/日との間のフォレートの範囲;250mg(合計)と2g〜3gまでの毎日100mg/kg/日という高い値との間のメチオニンの範囲;100mgと2gとの間のコリン範囲;1ヶ月あたり経口で約100mgまたは筋肉内で1mgのビタミンB12;1日当たり6gまでのベタインの範囲;25mgと50mgとの間の亜鉛の範囲;および1日あたり20gまでのフェニル酪酸ナトリウムの範囲。
【0102】
カプセル剤:カプセル剤は、標準的なツーピース式硬質ゼラチンカプセル剤の各々に、粉末化活性成分、175mgのラクトース、24mgのタルクおよび6mgステアリン酸マグネシウムを充填することによって調製される。
【0103】
軟質ゼラチンカプセル剤:ダイズ油中の活性成分の混合物を調製し、そして容量型ポンプ(positive displacement pump)によってゼラチン中に注入して、活性成分を含有する軟質ゼラチンカプセル剤を形成する。次いで、このカプセル剤は、洗浄および乾燥される。
【0104】
錠剤:錠剤は、投薬量単位が、示唆される量の活性成分、0.2mgのコロイド状二酸化ケイ素、5mgのステアリン酸マグネシウム、275mgの微結晶性セルロース、11mgのトウモロコシデンプンおよび98.8mgのラクトースを含むように、従来の手順によって調製される。適切なコーティングは、嗜好性を増大させるためまたは吸収を遅延させるために適用され得る。
【0105】
注射可能物:注射のために投与のために適切な非経口組成物は、1.5重量%の活性成分を10容量%のプロピレングリコールおよび水中に攪拌することによって調製される。溶液は、塩化ナトリウムを用いて等張性にされ、そして滅菌される。
【0106】
懸濁物:水性懸濁物は、各々5mlが、示唆される量の、微細分割活性成分、200mgのカルボキシメチルセルロースナトリウム、5mgの安息香酸ナトリウム、1.0gのソルビトール溶液(U.S.P.)および0.025mgのバニリンを含むように、経口投与のために調製される。
【0107】
従って、本発明の薬学的組成物は、種々の経路を介して、そして身体中の種々の部位へと送達されて、特定の効果を達成し得る。当業者は、1より多くの経路が投与のために用いられ得るが、特定の経路は、別の経路よりもより即座でかつより有効な反応を提供し得ることを認識する。局所送達または全身性送達は、体腔への処方物の適用もしくは点滴注入、エアゾールの吸入もしくはガス注入を含む投与によって、または筋肉内投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、皮内投与、ならびに局所投与を含む非経口導入によって達成され得る。
【0108】
本発明の組成物は、単位投薬量形態で提供され得、ここで、各単位投薬量単位(例えば、茶匙1杯、錠剤、液剤または坐剤)は、所定量の組成物を、単独で、または他の活性薬剤との適切な組合せで含む。本明細書中で使用される場合、用語「単位投薬量形態」は、ヒト被験体および動物被験体の単位投薬量として適切な、物理的に別個の単位であって、各単位が、所望の効果を生じるに充分な量に算出された所定量の本発明の組成物を、単独でまたは他の活性な薬剤との組合せで、適切な場合は、薬学的に受容可能な希釈剤、キャリアまたはビヒクルと関連して含む単位をいう。本発明の単位投薬量形態についての詳細は、達成されるべき特定の効果および特定の宿主における薬学的組成物と関連した特定の薬力学依存する。
【0109】
本明細書中に記載されるこれらの方法は、決して包括的ではなく、そしてさらに特定の適用に適切にする方法は、当業者に明らかである。さらに、組成物の有効量は、所望の効果を発揮することが既知の化合物に対する類似性を通してさらに概算され得る。
【0110】
特定の実施形態では、薬物は、Kehayovaら,1999に記載されるように、極性基(例えば、カルボキシル基)を含むカルボニックアンヒドラーゼインヒビター(CAI)を利用することによって、標的へと輸送され得る。このカルボキシル基は、この組成物を水溶性にするが、しかし、光に暴露されると、CAIをカルボキシルマスクへと連結している結合が切断され、残りの部分が疎水性環境中で可溶性になるようにする。
【0111】
特定の実施形態では、脂質処方物および/またはナノカプセルの使用は、アンタゴニスト、アゴニスト、配列番号33のNURR1のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号1のNURR1の核酸配列を含む核酸、配列番号64のNOR1のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号47のNOR1の核酸配列を含む核酸、配列番号91のNUR77のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号76のNUR77の核酸配列を含む核酸、またはそれらの薬学的に受容可能な塩、ポリペプチド、ペプチドおよび/または因子、および/または遺伝子治療ベクター(野生型ベクターおよび/またはアンチセンスベクターの両方を含む)の、宿主細胞への導入のために意図される。
【0112】
ナノカプセルは一般に、安定した方法および/または再現可能な方法において化合物を封入し得る。細胞内ポリマー過剰負荷に起因する副作用を回避するために、インビボで分解され得るポリマーを用いてこのような超微細粒子(約0.1μmの大きさ)が設計されるべきである。これらの必要要件を満たす生分解性ポリアルキル−シアノアクリレートナノ粒子は、本発明における使用が意図され、そして/またはこのような粒子は、容易に作製され得る。
【0113】
本発明の好ましい実施形態では、この薬学的組成物は、脂質と会合し得る。脂質と会合した薬学的組成物は、リポソームの水性内部にカプセル化され得、リポソームの脂質二重層内に散在し得、リポソームおよびオリゴヌクレオチドの両方に会合した連結分子を介してリポソームへと結合し得、リポソーム内に封入され得、リポソームと複合体化され得、脂質を含有する溶液中に散在し得、脂質と混合され得、脂質と合わされ得、脂質中の懸濁物として含まれ得、ミセル中に含まれ得もしくはミセルと複合体化され得、さもなければ脂質と会合し得る。本発明の脂質または脂質/薬学的組成物関連組成物は、溶液中の任意の特定の構造に限定されない。例えば、これらは、二重層構造で、ミセルとして、または「折り畳まれた」構造を伴って、存在し得る。これらはまた、大きさまたは形状のいずれかが均質でない凝集物をおそらく形成して、溶液中に単に散在し得る。
【0114】
脂質は、天然に存在する脂質であっても合成脂質であってもよい、脂肪物質である。例えば、脂質としては、細胞質中に天然に存在する脂肪滴ならびに長鎖脂肪族炭化水素およびそれらの誘導体(例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコールおよびアルデヒド)を含む、当業者に周知である化合物のクラスが挙げられる。
【0115】
リン脂質は、本発明に従ってリポソームを調製するために用いられ得、そして正味の正電荷、負電荷または中性電荷を保有し得る。ジアセチルホスフェートはリポソームに負電荷を付与するために用いられ得、そしてステアリルアミン(stearylamine)はリポソームに正電荷を付与するために用いられ得る。リポソームは、1以上のリン脂質から作製され得る。
【0116】
中性荷電脂質は、電荷のない脂質、実質的に非荷電の脂質、または等しい数の正電荷および負電荷を有する脂質混合物を含み得る。適切なリン脂質としては、ホスファチジルコリンおよび当業者に周知である他のリン脂質が挙げられる。
【0117】
本発明に従った使用のために適切な脂質は、商業的供給源から入手され得る。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」) は、Sigma Chemical Co.から入手され得、ジセチルホスフェート(「DCP」)は、K & K Laboratories(Plainview,NY)から入手され;コレステロール(「Chol」)は、Calbiochem−Behringから入手され;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)および他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,Ala.)から入手され得る。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は、約−20℃で保存され得る。好ましくは、クロロホルムは、唯一の溶媒として使用される。なぜなら、クロロホルムはメタノールよりも容易にエバポレートされるからである。
【0118】
天然の供給源由来のリン脂質(例えば、卵またはダイズのホスファチジルコリン、脳のホスファチジン酸、脳または植物のホスファチジルイノシトール、心臓のカルジオリピンおよび植物または細菌のホスファチジルエタノールアミン)は好ましくは、主な(すなわち、ホスファチド組成物全体の50%以上を構成する)ホスファチドとしては使用されない。なぜなら、得られるリポソームが不安定かつ漏出性であるからである。
【0119】
「リポソーム」は、閉じた脂質二重層または凝集物の作製によって形成される、種々の一層脂質ビヒクルおよび多層脂質ビヒクルを包含する包括的用語である。リポソームは、リン脂質二重層膜および内部の水性媒体を有する小胞構造を有すると特徴付けられ得る。多層リポソームは、水性媒体によって隔てられた複数の脂質層を有する。これらは、リン脂質を過剰の水溶液中に懸濁した場合に自然に形成する。脂質成分は、閉じた構造の形成前に再配置を経て、そして水および溶解した溶質を脂質二重層の間に捕獲する(GhoshおよびBachhawat,1991)。しかし、本発明はまた、溶液中で通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物を包含する。例えば、この脂質は、ミセル構造をとり得るか、または単に脂質分子の不均質凝集物として存在し得る。リポフェクトアミン(lipofectamine)−核酸複合体もまた意図される。
【0120】
リン脂質は、脂質の水に対するモル比に依存して、水中に分散された場合、リポソーム以外の種々の構造を形成し得る。低い比では、リポソームが好ましい構造である。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度および/または二価カチオンの存在に依存する。リポソームは、イオン性物質および/または極性物質に対して低透過性を示し得るが、高温では、相転移を経て、これは、その透過性を顕著に変更する。相転移は、ゲル状態として公知の、びっしり詰まった規則正しい構造から、流体状態として公知の、ゆるく詰まった、それほど規則的でない構造への変化を含む。これは、特有の相転移温度で生じ、そして/またはイオン、糖および/または薬物に対する透過性の増大をもたらす。
【0121】
リポソームは、以下の4つの異なる機構を介して細胞と相互作用する:細網内皮系の食作用細胞(例えば、マクロファージおよび/または好中球)によるエンドサイトーシス;非特異的な弱い疎水性および/もしくは静電力、ならびに/または細胞表面成分との特異的相互作用のいずれかによる、細胞表面への吸着;リポソーム内容物の細胞質への同時放出を伴う、原形質膜へのリポソームの脂質二重層の挿入による、形質細胞膜との融合;ならびに/あるいはリポソーム内容物の何の会合も伴わない、細胞膜および/もしくは細胞内膜および/またはその逆の、リポソーム脂質の移入。リポソーム処方を変動させることは、どの機構が作動するかを変更し得るが、1より多くが同時に作動し得る。
【0122】
インビトロでの外来DNAのリポソーム媒介オリゴヌクレオチド送達および発現は、非常に好結果であった。Wongら(1980)は、培養したニワトリ胚、HeLa細胞および肝細胞癌細胞における外来DNAのリポソーム媒介送達および発現の実行可能性を実証した。Nicolauら(1987)は、静脈内注射後のラットにおける好首尾のリポソーム媒介遺伝子移入を達成した。
【0123】
本発明の特定の実施形態では、脂質は、血球凝集ウイルス(HVJ)と会合し得る。このことは、細胞膜との融合を容易にし、そしてリポソームカプセル化DNAの細胞侵入を促進することが示されている(Kanedaら,1989)。他の実施形態では、脂質は、核の非ヒストン染色体タンパク質(HMG−1)と共に複合体化または使用され得る(Katoら,1991)。なおさらなる実施形態では、脂質は、HVJおよびHMG−1の両方と共に複合体化または使用され得る。インビトロおよびインビボでのオリゴヌクレオチドの移入および発現においてこのような発現ベクターは好首尾に用いられているので、これらは本発明に適用可能である。細菌性プロモーターはDNA構築物において用いられる場合、適切な細菌性ポリメラーゼをリポソーム内に含むこともまた望ましい。
【0124】
本発明に従って用いられるリポソームは、異なる方法によって作製され得る。リポソームの大きさは、合成方法に依存して変動し得る。水溶液中に懸濁されたリポソームは一般に、脂質二重層分子の1以上の同心円状層を有する球状小胞の形状である。各層は、式XYによって表される分子の平行アレイからなり、ここで、Xは親水性部分であり、そしてYは疎水性部分である。水性懸濁物では、この同心円状の層は、親水性部分が水相と接触したままである傾向があり、疎水性領域が自己会合する傾向があるように配置される。例えば、水相が、リポソーム内およびリポソーム外の両方に存在する場合、脂質分子は、配置XY−YXの、ラメラとして公知の二重層を形成し得る。1より多くの脂質分子の親水性部分および疎水性部分が互いに会合した場合、脂質の凝集物が形成され得る。これらの凝集物の大きさおよび形状は、多くの異なる変動要因(例えば、溶媒の性質および溶液中の他の化合物の存在)に依存する。
【0125】
本発明の範囲内のリポソームは、既知の実験室技術に従って調製され得る。1つの好ましい実施形態では、リポソームは、リポソーム脂質を、容器(例えば、ガラス製のナシ型フラスコ)中の溶媒中で混合することによって調製される。この容器は、期待されるリポソーム懸濁物溶液の容積よりも10倍大きな容積を有するはずである。ロータリーエバポレーターを用いて、この溶媒は、陰圧下で約40℃にて除去される。溶媒は通常、リポソームの所望の溶液に依存して、約5分〜2時間以内に除去される。この組成物は、デシケーター中で減圧下でさらに乾燥され得る。乾燥した脂質は一般に、時間経過に伴って劣化する傾向があるので、約1週間後に廃棄される。
【0126】
乾燥させた脂質は、全ての脂質膜が再懸濁されるまで振盪することによって、発熱物質を含まない滅菌水中で約25mM〜約50mMリン脂質にて水和され得る。次いで、水性リポソームは、アリコートに分けられ得、アリコートの各々は、バイアル中に配置され、凍結乾燥され得、そして減圧下でシールされ得る。
【0127】
代替物において、リポソームは、以下の他の公知の実験室手順に従って調製され得る:その内容が本明細書中に参考として援用される、Banghamら(1965)の方法;その内容が本明細書中に参考として援用される、DRUG CARRIERS IN BIOLOGY AND MEDICINE,G.Gregoriadis編(1979)287−341頁に記載される通りの、Gregoriadisの方法;その内容が本明細書中に参考として援用される、DeamerおよびUster(1983)の方法;ならびにSzokaおよびPapahadjopoulos(1978)によって記載される通りの逆相エバポレーション法。上記の方法は、水性物質を捕捉するそれらのそれぞれの能力、およびそれらのそれぞれの水性空間の、脂質に対する比が異なる。
【0128】
上記の通りに調製された、乾燥した脂質または凍結乾燥したリポソームは、阻害性ペプチドの溶液中で水和および再構成され得、そして適切な溶媒(例えば、DPBS)で適切な濃度へと希釈され得る。次いで、この混合物は、ボルテックスミキサー中で激しく振盪される。カプセル化されていない核酸は、29,000×gでの遠心分離によって除去され、そしてリポソームペレットは洗浄される。洗浄されたリポソームは、適切な総リン脂質濃度(例えば、約50mM〜約200mM)で再懸濁される。カプセル化された核酸の量は、標準的な方法に従って決定され得る。リポソーム調製物中にカプセル化された核酸の量の決定後、このリポソームは、適切な濃度へと希釈され得、そして使用するまで4℃で保存され得る。
【0129】
このリポソームを含む薬学的組成物は通常、無菌の薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤(例えば、水または生理食塩水溶液)を含む。
【0130】
(遺伝子治療の施術)
遺伝子治療に関して、当業者は、利用されるべきベクターが、プロモーターに作動可能に連結された目的の遺伝子を含まなければならないことを認識する。アンチセンス遺伝子治療に関して、目的の遺伝子のアンチセンス配列は、プロモーターに作動可能に連結される。当業者は、特定の例において、目的の遺伝子を発現する際に、他の配列(例えば、3’UTR調節配列)が有用であることを認識する。適切な場合、遺伝子治療ベクターは、固体、半固体、液体またはガスの形態の調製物へと、それらのそれぞれの投与経路について当該分野で公知の方法において処方され得る。当該分野で公知の手段を利用して、この組成物が標的器官に到達するまでこの組成物の放出および吸収を妨害し得るか、またはこの組成物の徐放性(timed−release)を確実にし得る。本発明の組成物を無効にしない、薬学的に受容可能な形態が用いられるべきである。薬学的投薬形態では、この組成物は、単独で、または適切に会合して、ならびに薬学的に活性な他の化合物と組み合わせて用いられ得る。治療核酸配列を含む充分な量のベクターは、薬理学的に有効な用量の遺伝子産物を提供するように投与されなければならない。
【0131】
当業者は、細胞中にベクターを投与するために種々の送達方法が利用され得ることを認識する。例としては以下が挙げられる:(1)物理的手段(例えば、エレクトロポレーション(電気)、遺伝子銃(物理的力)を利用する方法または大きな体積の液体(圧力)を適用する方法;ならびに(2)ベクターが別の実体(例えば、リポソームまたは輸送体分子)へと複合体化する方法。
【0132】
従って、本発明は、治療遺伝子を宿主へと移入する方法を提供し、この方法は、本発明のベクターを、上記の投与経路のいずれかまたは当業者に公知でかつ特定の適用について適切である代替的な経路を用いて、好ましくは組成物の一部として投与する工程を包含する。宿主細胞への、本発明による宿主細胞へのベクターの有効な遺伝子移入は、治療効果(例えば、処置されるべき特定の疾患に関連したいくつかの症状の緩和)に関して、またはさらに、宿主中の移入された遺伝子もしくは遺伝子の発現の証拠(例えば、配列決定、ノーザンハイブリダイゼーションもしくはサザンハイブリダイゼーション、または宿主細胞中の核酸を検出する転写アッセイと共にポリメラーゼ連鎖反応を用いて、あるいは免疫ブロット分析、抗体媒介検出、mRNAもしくはタンパク質の半減期の研究、または移入された核酸によってコードされるタンパク質もしくはポリペプチド、またはこのような移入に起因してレベルもしくは機能において影響を受けたタンパク質もしくはポリペプチドを検出するために特化されたアッセイを用いる)によって、モニタリングされ得る。
【0133】
本明細書中に記載されるこれらの方法は、決して包括的というわけではなく、そしてさらに特定の適用に適切にする方法は、当業者に明らかである。さらに、組成物の有効量は、所望の効果を発揮することが既知の化合物に対する類似性を通してさらに概算され得る。
【0134】
さらに、実際の用量およびスケジュールは、組成物が他の薬学的組成物と組み合わせて投与されるか否かに依存して、または薬物動態学、薬物の性質および代謝における個体間の相違に依存して、変動し得る。同様に、量は、利用される特定の細胞株に依存してインビトロでの適用において変動し得る(例えば、細胞表面に存在するベクターレセプターの数または遺伝子移入のために用いられた特定のベクターがその細胞株において複製する能力に基づく)。さらに、1細胞あたりに添加されるベクターの量は、ベクター中に挿入された治療遺伝子の長さおよび安定性ならびにまた、アミノ酸の性質に伴って変動するようであり、そして特に、経験的に決定される必要があるパラメーターであり、そして本発明の方法に固有ではない要因(例えば、合成に関連するコスト)に起因して変更され得る。当業者は、特定の状況の緊急性に従って任意の必要な調整を容易に行い得る。
【0135】
治療遺伝子を含む細胞がまた、自殺遺伝子(すなわち、細胞を破壊するために用いられ得る産物(例えば、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ)をコードする遺伝子を含み得ることは可能である。多くの遺伝子治療状況では、宿主細胞中で治療目的のための遺伝子を発現し得るが、一旦治療が完了したら、または、制御不能になるか、または予測可能な結果も望ましい結果ももたらさなくなったら、宿主細胞を破壊する能力をも有することが望ましい。従って、宿主細胞中での治療遺伝子の発現は、プロモーターによって駆動され得るが、自殺遺伝子の産物は、プロドラッグの非存在下では無害なままである。一旦治療が完了したら、またはもはや所望されず必要ともされなくなったら、プロドラッグの投与は、自殺遺伝子産物を引き起こし、細胞に対して致死的となる。使用され得る自殺遺伝子/プロドラッグの組合せの例は、以下である:単純疱疹ウイルス−チミジンチミジンキナーゼ(HSV−tk)およびガンシクロビル、アシクロビルまたはFIAU;オキシドレダクターゼおよびシクロヘキシミド;シトシンデアミナーゼおよび5−フルオロシトシン;チミジンキナーゼチミジレートキナーゼ(Tdk::Tmk)およびAZT;ならびにデオキシシチジンキナーゼおよびシトシンアラビノシド。
【0136】
細胞治療の方法は、当該分野で公知の方法によって用いられ得、ここで、NURR1タンパク質をコードする非欠損NURR1核酸配列を含む培養細胞が導入される。
【0137】
別の実施形態では、生物学的に活性な分子(例えば、遺伝子治療についてのベクター)は、脂質ポリ−L−グルタミン酸(PGA)複合体の「ピンチ(pinched)」領域の間の大きな水和ドメインに組み込まれ、ここで、PGAおよびカチオン性脂質ジドデシルジメチルアンモニウムブロミドは会合して、送達適用のための局在化されたピンチ領域を形成する(Subramaniamら,2000)。
【0138】
代替の実施形態では、アミノ酸配列は、小胞体において凝集物として蓄積させるように設計され、続いて、組成物が投与されてタンパク質の脱凝集が誘導され、迅速かつ一過性の分泌がもたらされる(Riveraら,2000)。
【0139】
HIV由来のペプチド(11アミノ酸配列)は、全長タンパク質に融合され、そしてマウスに注射された場合に、身体の全ての細胞の核への迅速な分散を可能にすることが近年記載された(Schwarzeら,1999)。Schwarzeらは、15kDa〜120kDaの大きさの範囲の、Tatに対する融合タンパク質を作製した。かれらは、動物全体の細胞の核への融合タンパク質の迅速な取り込みを実証し、そしてこのタンパク質の機能的活性は維持された。
【0140】
本発明の1つの実施形態では、NURRサブファミリーの核酸配列に作動可能に連結された、TatまたはTat−HAの核酸配列を含む構築物が存在する。このベクターは、細菌培養物において発現され、そして融合タンパク質は精製される。この精製されたTat−HA−NURRサブファミリーのタンパク質またはTat−NURRサブファミリーのタンパク質は、炎症部位、関節へのTat送達系の効率を決定するために、または融合タンパク質を全身的に送達することによって、動物へと注射される。分析は、炎症の減少または任意の関節炎症状の緩和におけるTat−HA−NURRサブファミリーのタンパク質またはTat−NURRサブファミリーのタンパク質の能力を決定するために行われる。これは、独立してまたは他の方法、処置または遺伝子と関連して実行可能な治療アプローチである。
【0141】
(ウイルス性ベクターを用いるDNA送達)
特定のウイルスがレセプター媒介エンドサイトーシスを介して細胞に感染してウイルス遺伝子を安定かつ効率的に宿主細胞ゲノム中へ組み込み、そして発現する能力によって、これらは、哺乳動物細胞への外来遺伝子の移入についての魅力的な候補になっている。本発明の好ましい遺伝子治療ベクターは一般に、ウイルス性ベクターである。
【0142】
外来遺伝物質を受け入れ得るいくつかのウイルスは、収容し得るヌクレオチド数および感染する細胞の範囲が制限されているが、これらのウイルスは、遺伝子発現を好首尾にもたらすことが実証されている。しかし、アデノウイルスは、それらの遺伝物質を宿主ゲノム中に組み込まず、それゆえ、遺伝子発現のために宿主の複製を必要とせず、これらを、迅速で効率的な異種遺伝子発現に理想的に適切にしている。複製欠損感染性ウイルスの調製のための技術は、当該分野で周知である。
【0143】
もちろん、ウイルス送達系を用いる際には、ビリオンを充分に精製して、ベクター構築物を受ける細胞、動物または個体に何の不都合な反応も引き起こさないように、望ましくない夾雑物(例えば、欠損性の妨害ウイルス粒子、エンドトキシンおよび他の発熱物質)を本質的に含まないようにすることを所望する。ベクターを精製する好ましい手段は、浮遊密度勾配(例えば、塩化セシウム勾配遠心分離)の使用を含む。
【0144】
(a.アデノウイルスベクター)
発現構築物の特定の送達方法は、アデノウイルス発現ベクターの使用を含む。アデノウイルスベクターはゲノムDNAへの低い取り込み能力を有することが公知であるが、この特徴は、これらのベクターによって得られる高い遺伝子移入効率によって相殺される。「アデノウイルスベクター」は、(a)構築物のパッケージングの支持のために充分でかつ(b)その中にクローニングされた組織または細胞に特異的な構築物を最終的に発現するに充分な、アデノウイルス配列を含む構築物を含むことを意味する。
【0145】
この発現ベクターは、遺伝子操作された形態のアデノウイルスを含む。アデノウイルスの遺伝的構成(36kbの直鎖状二本鎖DNAウイルス)の知識は、アデノウイルスDNAの大きな片の、7kbまでの外来配列での置換を可能にする(Grunhausおよび/またはHorwitz,1992)。レトロウイルスとは対照的に、宿主細胞のアデノウイルス感染は、染色体組込みをもたらさない。なぜなら、アデノウイルスDNAは、潜在的な遺伝毒性(genotoxicity)を伴わずにエピソーム様式で複製し得るからである。また、アデノウイルスは、構造的に安定であり、そして多数の増幅後、ゲノムの再配置は検出されなかった。
【0146】
アデノウイルスは、その中間の大きさのゲノム、操作の容易性、高い力価、広範な標的細胞域および高い感染性により、遺伝子移入ベクターとしての使用のために特に適切である。このウイルスのゲノムの両方の末端は、100〜200塩基対の逆方向反復(ITR)を含む。ITRは、ウイルスDNAの複製およびパッケージングのために必要なシスエレメントである。ゲノムの初期(E)領域および後期(L)領域は、ウイルスDNA複製の開始によって分けられる、異なる転写単位を含む。E1領域(E1AおよびE1B)は、ウイルスゲノムの転写調節を担うタンパク質およびいくつかの細胞性遺伝子をコードする。E2領域(E2AおよびE2B)の発現は、ウイルスDNA複製のためのタンパク質合成をもたらす。これらのタンパク質は、DNA複製、後期遺伝子発現および宿主細胞遮断に関与する(Renan,1990)。この後期遺伝子の産物(ウイルスキャプシドタンパク質の大多数を含む)は、主要後期プロモーター(MLP)によって生じる、単一の一次転写産物の顕著なプロセシングの後にのみ発現される。MLP(16.8m.u.に位置する)は、感染後期の間に特に効率的であり、そしてこのプロモーターから生じた全てのmRNAは、これらを翻訳のために好ましいmRNAとする5’−三部構成のリーダー(TPL)配列を保有する。
【0147】
現在の系では、組換えアデノウイルスは、シャトルベクターとプロウイルスベクターとの間の相同組換えから作製される。2つのプロウイルスベクターの間でのあり得る組換えに起因して、野生型アデノウイルスがこのプロセスから作製され得る。それゆえ、個々のプラークからウイルスの単一クローンを単離し、そしてそのゲノム構造を調べることは重要である。
【0148】
複製欠損である現行のアデノウイルスベクターの作製および/または増殖は、Ad5 DNAフラグメントによって胚性腎臓細胞から形質転換された、そしてE1タンパク質(E1Aおよび/またはE1B;Grahamら,1977)を構成的に発現する、293と称される独特の細胞株に依存する。E3領域はアデノウイルスゲノムには必要でない(JonesおよびShenk,1978)ので、293細胞の助けを借りた現行のアデノウイルスベクターは、外来DNAをE1領域、D3領域または両方の領域のいずれかに保有する(GrahamおよびPrevec,1991)。近年、E4領域に欠損を含むアデノウイルスベクターが記載されている(本明細書中に参考として援用される、米国特許5,670,488)。
【0149】
天然では、アデノウイルスは、野生型ゲノムの約105%をパッケージングし得(Ghosh−Choudhuryら,1987)、約2kb余分なDNAについての収容力を提供する。E1領域および/またはE3領域中の置換可能である約5.5kbのDNAと合わせて、現行のアデノウイルスベクターの最大収容力は7.5kb未満であり、そして/またはこのベクターの全長の約15%未満である。デノウイルスのウイルスゲノムの80%より多くが、このベクター骨格中に残っている。
【0150】
ヘルパー細胞株は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト胚性腎臓細胞、筋細胞、造血細胞および他のヒト胚性間葉細胞または上皮細胞)から誘導され得る。あるいは、ヘルパー細胞は、アデノウイルスについて許容性である他の哺乳動物種の細胞から誘導され得る。このような細胞としては、例えば、Vero細胞ならびに/または他のサル胚性間葉細胞および/もしくは上皮が挙げられる。上記で述べたように、好ましいヘルパー細胞株は293である。
【0151】
近年、Racherら(1995)は、アデノウイルスを増殖させる改善された方法を開示した。1つの形式では、天然の細胞凝集物は、100ml〜200mlの培地を含む1リットルのシリコン処理スピナーフラスコ(Techne,Cambridge,UK)中に個々の細胞を接種することによって増殖される。40rpmでの攪拌後、細胞生存率は、トリパンブルーを用いて評価される。別の形式では、Fibra−Celマイクロキャリア(Bibby Sterlin,Stone,UK)(5g/l)は、以下の通りに用いられる。5mlの培地中に再懸濁された細胞接種物は、250mlの三角フラスコ中のキャリア(50ml)に添加され、そして/または時々攪拌しながら1〜4時間にわたって静置される。次いで、この培地は50mlの新鮮培地で置換され、そして/または振盪が開始される。ウイルス産生に関して、細胞は、約80%コンフルエンスになるまで増殖され、その後、培地が(最終容積の25%まで)置換されるか、および/またはアデノウイルスが0.05のMOIで添加される。培養物は、一晩静置され、その後、その容積は100%まで増加され、そして/または振盪がさらに72時間にわたって開始される。
【0152】
アデノウイルスベクターが複製欠損であるかまたは少なくとも条件的に欠損であるという必要条件以外に、アデノウイルスベクターの性質は、本発明の好首尾の実施に対して重大であるとは考えられない。このアデノウイルスは、42の異なる既知の血清型およびサブグループA〜Fのうちの任意のアデノウイルスであり得る。サブグループCのアデノウイルス5型は、本発明における使用のための条件的複製欠損アデノウイルスベクターを得るために好ましい出発材料である。これは、アデノウイルス5型が、たくさんの生化学的および遺伝的情報が既知であるアデノウイルスであり、そしてこれがアデノウイルスをベクターとして用いる大部分の構築のために歴史的に用いられているからである。
【0153】
上記で言及したように、本発明による代表的なベクターは、複製欠損であり、そしてアデノウイルスE1領域を有さない。従って、これは、形質転換構築物を、E1コード配列が除去された位置で導入するために最も便利である。しかし、アデノウイルス配列中での構築物の挿入位置は、本発明に重要ではない。NURRサブファミリーのメンバーをコードするポリヌクレオチドもまた、Karlssonら(1986)によって記載されたように、E3置換ベクター中の欠失したE3領域の代わりに、またはE4領域(ここで、ヘルパー細胞株またはヘルパーウイルスはE4欠損を補完する)中に挿入され得る。
【0154】
アデノウイルスの増殖および操作は、当業者に公知であり、そしてインビトロおよびインビボで広範な宿主域を示す。このグループのウイルスは、高い力価(例えば、1mlあたり109〜1011プラーク形成単位)で入手され得、そしてこれらは高度に感染性である。アデノウイルスの生活環は、宿主細胞ゲノムへの組込みを必要としない。アデノウイルスベクターによって送達される外来遺伝子はエピソーム性であり、それゆえ、宿主細胞に対して低い遺伝子毒性を有する。野生型アデノウイルスを用いたワクチン接種の研究において副作用は報告されておらず(Couchら,1963;Topら,1971)、このことは、インビボでの遺伝子移入ベクターとしてのこれらの安全性および治療可能性を実証する。
【0155】
アデノウイルスベクターは、真核生物遺伝子発現(Levreroら,1991;Gomez−Foixら,1992)およびワクチン開発(Grunhausおよび/またはHorwitz,1992;Grahamおよび/またはPrevec,1992)において用いられている。近年、動物研究は、組換えアデノウイルスが遺伝子治療のために使用され得ることを示唆した(Stratford−Perricaudetおよび/またはPerricaudet,1991a;Stratford−Perricaudetら,1991b;Richら,1993)。組換えアデノウイルスを異なる組織に投与する際の研究としては、気管点滴注入(Rosenfeldら,1991;Rosenfeldら,1992)、筋肉注射(Ragotら,1993)、末梢静脈内注射(Herzおよび/またはGerard,1993)および脳への定位接種(Le Gal La Salleら,1993)が挙げられる。組換えアデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス(以下を参照のこと)は、分裂していない哺乳動物初代細胞を感染および形質導入し得る。
【0156】
(b.アデノ随伴ウイルスベクター)
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、本発明の細胞形質導入において使用するための魅力的なベクター系である。なぜなら、AAVは、高い組込み頻度を有し、そしてAAVは分裂していない細胞を感染し得、それゆえ、AAVを、例えば、組織培養中(Muzyczka,1992)およびインビボでの、哺乳動物細胞への遺伝子の送達のために有用にしているからである。AAVは、感染性についての広い宿主域を有する(Tratschinら,1984;Laughlinら,1986;Lebkowskiら,1988;McLaughlinら,1988)。rAAVベクターの作製および使用に関する詳細は、各々本明細書中に参考として援用される、米国特許第5,139,941号および米国特許第4,797,368号に記載される。
【0157】
遺伝子送達におけるAAVの使用を実証する研究としては、LaFaceら(1988);Zhouら(1993);Flotteら(1993);およびWalshら(1994)が挙げられる。組換えAAVベクターは、マーカー遺伝子(Kaplittら,1994;Lebkowskiら,1988;Samulskiら,1989;Yoderら,1994;Zhouら,1994;Hermonatおよび/またはMuzyczka,1984;Tratschinら,1985;McLaughlinら,1988)または哺乳動物疾患に関与する遺伝子(Flotteら,1992;Luoら,1994;Ohiら,1990;Walshら,1994;Weiら,1994)のインビトロおよびインビボでの形質導入に好首尾に用いられている。近年、AAVベクターは、嚢胞性線維症の処置について第I相試験が承認された。
【0158】
AAVは、培養細胞において生産的感染を経るために別のウイルス(アデノウイルスまたはヘルペスウイルスファミリーのメンバーのいずれか)との同時感染を必要とする(Muzyczka,1992)という点で、依存性パルボウイルスである。ヘルパーウイルスでの同時感染が無ければ、野生型AAVゲノムは、その末端を介して第19染色体へと組み込まれ、ここで、このゲノムは、プロウイルスとして潜伏状態で存在する(Kotinら,1990;Samulskiら,1991)。しかし、rAAVは、AAV Repタンパク質もまた発現されるのでなければ、組込みは第19染色体に制限されない(ShellingおよびSmith,1994)。AAVプロウイルスを保有する細胞にヘルパーウイルスを重感染させた場合、AAVゲノムは、この染色体または組換えプラスミドから「レスキュー」され、そして正常な生産性感染が確立される(Samulskiら,1989;McLaughlinら,1988;Kotinら,1990;Muzyczka,1992)。
【0159】
代表的に、組換えAAV(rAAV)ウイルスは、2つのAAV末端反復配列が隣接している目的の遺伝子を含むプラスミド(McLaughlinら,1988;Samulskiら,1989;各々本明細書中に参考として援用される)および末端反復配列を含まない野生型AAVコード配列を含む発現プラスミド(例えば、pIM45(McCartyら,1991;本明細書中に参考として援用される))を同時トランスフェクトすることによって作製される。これらの細胞はまた、アデノウイルスまたはAAVヘルパー機能に必要とされるアデノウイルス遺伝子を保有するプラスミドでトランスフェクトされる。このような様式で作製されるrAAVウイルスストックは、rAAV粒子から(例えば、塩化セシウム密度勾配遠心によって)物理的に分離されなければならないアデノウイルスで汚染される。あるいは、AAVコード領域を含むアデノウイルスベクター、またはAAVコード領域およびアデノウイルスヘルパー遺伝子のいくつかもしくは全てを含む細胞株が使用され得る(Yangら,1994;Clarkら,1995)。組み込まれたプロウイルスとしてrAAV DNAを保有する細胞株もまた使用され得る(Flotteら,1995)。
【0160】
(c.レトロウイルスベクター)
レトロウイルスは、その遺伝子を宿主ゲノム中に組み込み、大量の外来遺伝物質を移入し、広範な範囲の種および細胞型に感染し、そして特別な細胞株にパッケージングされる能力に起因して、遺伝子送達ベクターとしての見込みがある(Miller,1992)。
【0161】
レトロウイルスは、逆転写のプロセスによって感染細胞においてそのRNAを二本鎖DNAへと変換する能力によって特徴付けられる、一本鎖RNAウイルスの群である(Coffin,1990)。次いで、得られたDNAは、細胞の染色体にプロウイルスとして安定に組み込まれ、そしてウイルスタンパク質の合成を指向する。この組込みは、レシピエント細胞およびその子孫においてウイルス遺伝子配列の保持をもたらす。このレトロウイルスゲノムは、キャプシドタンパク質、ポリメラーゼ酵素およびエンベロープ成分をそれぞれコードする3つの遺伝子(gag、polおよびenv)を含む。gag遺伝子の上流に見出される配列は、ビリオンへのゲノムのパッケージングのためのシグナルを含む。2つの長末端反復(LTR)配列は、ウイルスゲノムの5’末端および3’末端に存在する。これらは、強力なプロモーター配列およびエンハンサー配列を含み、そしてまた、宿主細胞ゲノムへの組込みのために必要とされる(Coffin,1990)。
【0162】
レトロウイルスベクターを構築するために、目的の遺伝子をコードする核酸は、特定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノムに挿入されて、複製欠損であるウイルスが得られる。ビリオンを産生するために、gag遺伝子、pol遺伝子およびenv遺伝子を含むがLTRおよびパッケージング成分を含まないパッケージング細胞株が構築される(Mannら,1983)。レトロウイルスのLTR配列およびパッケージング配列と一緒にcDNAを含む組換えプラスミドは、この細胞株に(例えば、リン酸カルシウム沈澱によって)導入され、このパッケージング配列は、組換えプラスミドのRNA転写産物がウイルス粒子中にパッケージングされるのを可能にし、次いでこのウイルス粒子は、培養培地中に分泌される(Nicolasおよび/またはRubenstein,1988;Temin,1986;Mannら,1983)。次いで、組換えレトロウイルスを含む培地が収集され、必要に応じて濃縮され、そして遺伝子移入のために用いられる。レトロウイルスベクターは、広範な種々の細胞型に感染し得る。しかし、組込みおよび安定な発現は、宿主細胞の分裂を必要とする(Paskindら,1975)。
【0163】
欠損レトロウイルスベクターの使用に関する懸念は、パッケージング細胞における、複製能力のある野生型ウイルスの出現の可能性である。これは、組換えウイルス由来のインタクトな配列が、宿主細胞のゲノムに組み込まれているgag配列、pol配列およびenv配列の上流に挿入される組換え事象から生じ得る。しかし、組換えの確率を大いに減少させるはずである、新たなパッケージング細胞株は現在入手可能である(Markowitzら,1988;Hersdorfferら,1990)。
【0164】
第二世代のレトロウイルスベクターを用いた遺伝子送達が報告されている。Kasaharaら(1994)は、ウイルスが、エリスロポイエチン(EPO)レセプターを保有する哺乳動物細胞に特異的に結合し、そして感染するようにエンベロープタンパク質を改変した、モロニーマウス白血病ウイルス(これは通常、マウス細胞にのみ感染する)の操作された改変体を調製した。これは、EPO配列の一部をエンベロープタンパク質に挿入して、新たな結合特異性を有するキメラタンパク質を作製することによって達成された。
【0165】
(d.他のウイルスベクター)
他のウイルスベクターは、本発明において発現構築物として用いられ得る。ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス(Ridgeway,1988;Baichwalおよび/またはSugden,1986;Couparら,1988)、シンドビスウイルス、サイトメガロウイルスおよび 単純疱疹ウイルス)由来のベクターが用いられ得る。これらは、種々の哺乳動物細胞についてのいくつかの魅力的な特徴を提供する(Friedmann,1989;Ridgeway,1988;Baichwalおよび/またはSugden,1986;Couparら,1988;Horwichら,1990)。
【0166】
欠損B型肝炎ウイルスの認識に関して、異なるウイルス配列の構造−機能の関係についての新たな洞察が得られた。インビトロ研究は、ウイルスは、そのゲノムの80%までの欠失にもかかわらず、ヘルパー依存性パッケージングおよび逆転写についての能力を保持し得ることを示した(Horwichら,1990)。これは、このゲノムの大きな部分が、外来遺伝物質で置換され得ることを示唆した。Changらは近年、アヒルB型肝炎ウイルスゲノム中で、ポリメラーゼコード配列、表面コード配列およびプレ表面(pre−surface)コード配列の場所に、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子を導入した。これを、野生型ウイルスと共にトリ肝細胞癌細胞株中に同時トランスフェクトした。高力価の組換えウイルスを含む培養培地を用いて、初代仔アヒル肝細胞に感染させた。安定なCAT遺伝子発現が、トランスフェクション後少なくとも24日間にわたって検出された(Changら,1991)。
【0167】
特定のさらなる実施形態では、この遺伝子治療ベクターは、HSVである。HSVを魅力的なベクターとする要因は、大きさおよびゲノム構成である。HSVは大きいので、複数の遺伝子または発現カセットの取り込みは、より小さな他のウイルス系においてよりも、問題が少ない。さらに、種々の性能(時間的、強度など)を有する異なるウイルス制御配列の入手可能性は、他の系においてよりも高い程度に発現を制御することを可能にする。このウイルスが比較的少ないスプライスメッセージを有し、遺伝子操作をさらに容易にすることもまた有利である。HSVはまた、操作するのが比較的容易であり、そしてより高い力価まで増殖され得る。従って、送達は、充分なMOIを得るために必要な容積および反復投薬の必要性の低下の両方に関して問題がより少ない。
【0168】
(e.改変ウイルス)
本発明のなおさらなる実施形態では、送達されるべき核酸は、特異的結合リガンドを発現するように操作された感染性ウイルス内に収容される。従って、このウイルス粒子は、標的細胞の同族レセプターに特異的に結合し、そしてその内容物をその細胞へと送達する。レトロウイルスベクターの特異的標的化を可能にするように設計された新規なアプローチは、ウイルスエンベロープへのラクトース残基の化学的付加によるレトロウイルスの化学的改変に基づいて近年開発された。この改変は、シアロ糖タンパク質レセプターを介した肝細胞の特異的感染を可能にし得る。
【0169】
レトロウイルスエンベロープタンパク質に対するビオチン化抗体または特異的細胞レセプターに対するビオチン化抗体が用いられる、組換えレトロウイルスの標的化に対する別のアプローチが設計された。この抗体は、ストレプトアビジンを用いることによって、ビオチン成分を介してカップリングされた(Rouxら,1989)。主要組織適合遺伝子複合体のクラスI抗原およびクラスII抗原に対する抗体を用いて、彼らは、インビトロでエコトロピックウイルスでの、これらの表面抗原を保有する種々の哺乳動物細胞の感染を実証した(Rouxら,1989)。
【0170】
(抗体調製)
本発明の特定の局面では、発現されたNURRサブファミリーのメンバーおよびCRHレセプターに対する1以上の抗体が、産生され得る。これらの抗体は、本明細書中以下に記載される、種々の診断適用または治療適用において用いられ得る。
【0171】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、任意の免疫学的結合因子(例えば、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE)を広範にいうことを意図する。一般に、IgGおよび/またはIgMが好ましい。なぜなら、これらは生理学的状況において最も普通の抗体であり、そしてこれらは実験室環境において最も容易に作製されるからである。
【0172】
用語「抗体」は、抗原結合領域を有する任意の抗体様分子をいうように用いられ、そして抗体フラグメント(例えば、Fab’、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、scFv(単鎖Fv)などを含む。種々の抗体ベースの構築物およびフラグメントを調製および使用するための技術は、当該分野で周知である。抗体を調製および特徴付けするための手段もまた、当該分野で周知である(例えば、本明細書中に参考として援用される、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照のこと)。
【0173】
モノクローナル抗体(MAb)は、特定の利点(例えば、再現性および大規模)産生を有すると認識され、そしてそれらの使用は一般に好ましい。従って、本発明は、ヒト、マウス、サル、ラット、ハムスター、ウサギおよびさらにニワトリ起源のモノクローナル抗体を提供する。調製の容易さおよび試薬の入手し易さに起因して、マウスモノクローナル抗体はしばしば好ましい。
【0174】
しかし、「ヒト化」抗体もまた意図され、ヒトの定常領域ドメインおよび/または可変領域ドメインを保有する、マウス、ラットまたは他の種由来のキメラ抗体、二重特異性抗体、組換えおよび操作された抗体、ならびにそれらのフラグメントも同様である。
【0175】
(a.ポリクローナル抗体)
NURRサブファミリーのメンバーに対するポリクローナル抗体およびCRHレセプターに対するポリクローナル抗体は一般に、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターおよびアジュバントの複数の皮下(sc)注射または腹腔内(ip)注射によって、動物において惹起される。二官能性因子または誘導体化因子(例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(シスチン残基を通した結合体化)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を通す)、グルタルアルデヒド(glytaraldehyde)、無水コハク酸、SOCl2またはR1N=C=NR(ここで、RおよびR1は異なるアルキル基である)を用いて、NURRサブファミリーのメンバーもしくはCRHレセプター、または標的アミノ酸配列を含むフラグメントを、免疫されるべき種において免疫原性であるタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリンまたはダイズトリプシンインヒビター)に対して結合体化することは有用であり得る。
【0176】
動物は、1mgまたは1μgの結合体(それぞれ、ウサギまたはマウスについて)を3容量のFreud完全アジュバントと合わせ、そしてこの溶液を複数部位で皮内注射することによって、免疫原性結合体または免疫原性誘導体に対して免疫される。1ヵ月後、この動物は、複数部位での皮下注射によってFreud完全アジュバント中の結合体(元の量の1/5〜1/10)でブーストされる。7日後〜14日後、この動物は採血され、そして血清は、抗NURR抗CRHレセプター抗体力価についてアッセイされる。動物は、力価がプラトーに達するまでブーストされる。好ましくは、この動物は、同じNURRサブファミリーのメンバーの結合体または同じCRHレセプターの結合体であるが、異なるタンパク質へと、または異なる架橋連結試薬を通して結合体化されている結合体でブーストされる。結合体はまた、組換え細胞培養においてタンパク質融合体として作製され得る。また、凝集剤(例えば、ミョウバン)は、免疫応答を増強するために用いられる。
【0177】
(b.モノクローナル抗体)
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の集団(すなわち、集団を構成する個々の抗体が、微量に存在し得る、あり得る天然に存在する変異以外は同一である)から入手される。従って、修飾語「モノクローナル」は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。例えば、本発明の抗NURRモノクローナル抗体または抗CRHレセプターモノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein,1975によって最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製され得るか、または組換えDNA方法(Cabillyら,米国特許第4,816,567号)によって作製され得る。ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物(例えば、ハムスター)が、本明細書中上記のように免疫されて、免疫のために用いられたタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するかまたはこの抗体を産生し得るリンパ球が惹起される。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫され得る。次いで、リンパ球は、適切な融合剤(例えば、ポリエチレングリコール)を用いてミエローマ細胞と融合されて、ハイブリドーマ細胞が形成される(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,59−103頁(Academic Press,1986))。このようにして調製されたハイブリドーマ細胞は、好ましくは、融合していない親ミエローマ細胞の増殖または生存を阻害する1以上の物質を含む適切な培養培地中に播種され、そして増殖される。例えば、親ミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマについての培養培地は代表的に、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(HAT培地)を含み、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の増殖を妨害する。
【0178】
好ましいミエローマ細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの発現を支持し、そしてHAT培地のような培地に感受性である、ミエローマ細胞である。とりわけ、好ましいミエローマ細胞株は、マウスミエローマ株(例えば、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,Calif.USAから入手可能な、MOPC−21マウス腫瘍およびMPC−11マウス腫瘍から誘導されたミエローマ細胞、ならびにAmerican Type Culture Collection,Rockville,Md.USAから入手可能なSP−2細胞)である。ハイブリドーマ細胞が増殖される培養培地は、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターに対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合アッセイ(例えば、放射免疫アッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))によって決定される。このモノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、MunsonおよびPollard,1980のScatchard分析によって決定され得る。所望の特異性、親和性および活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンは限界希釈手順によってサブクローニングされ得、そして標準的な方法によって増殖され得る。この目的のために適切な培養培地としては、例えば、Dulbecco’s Modified Eagle’s MediumまたはRPMI−1640培地が挙げられる。さらに、ハイブリドーマ細胞は、動物中の腹水腫瘍としてインビボで増殖され得る。
【0179】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、培養培地、腹水または血清から、従来の免疫グロブリン精製手順(例えば、プロテインA−Sepharose、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーなど)によって適切に分離される。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離および配列決定される。本発明のハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として役立つ。一旦単離されると、このDNAは、発現ベクター中に配置され得、次いでこの発現ベクターは、他の場合には免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞(例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはミエローマ細胞)中にトランスフェクトされて、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成が得られる。このDNAはまた、例えば、相同なマウス配列の代わりに、ヒトの重鎖および軽鎖の定常ドメインについてのコード配列で置換することによって(Morrisonら,1984)、または免疫グロブリンコード配列に対して、非免疫グロブリンポリペプチドについてのコード配列の全てもしくは一部を共有結合的に連結することによって、改変され得る。このような様式で、本明細書中の抗NURRレセプターモノクローナル抗体または抗CRHレセプターモノクローナル抗体の結合特異性を有する、「キメラ」抗体または「ハイブリッド」抗体が調製される。代表的に、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインを置換するか、またはこれらは、本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインを置換して、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターについての特異性を有する1つの抗原結合部位、および異なる抗原についての特異性を有する別の抗原結合部位を含む、キメラ二価抗体を作製する。
【0180】
キメラ抗体またはハイブリッド抗体もまた、合成タンパク質化学において公知の方法(架橋剤を含む方法を含む)を用いて、インビトロで調製され得る。例えば、免疫毒素(immunotoxin)は、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成することによって、構築され得る。この目的のための適切な試薬の例としては、イミノチオレート(iminothiolate)およびメチル−4−メルカプトブチルイミデートが挙げられる。診断適用については、本発明の抗体は代表的に、検出可能な部分で標識される。この検出可能な部分は、直接的または間接的のいずれかで、検出可能なシグナルを産生し得る、任意の部分であり得る。例えば、この検出可能な部分は、放射性同位体(例えば、3H、14C、32P、35Sまたは125I)、蛍光化合物もしくは化学発光化合物(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミンまたはルシフェリン);ビオチン;放射性同位体標識(例えば、例えば、125I、32P、14Cまたは3H)または酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ)であり得る。抗体を検出可能な部分に対して別々に結合体化するための当該分野で公知の任意の方法(Hunterら,1962;Davidら,1974;Painら,1981;およびNygren,1982によって記載される方法を含む)が用いられ得る。
【0181】
本発明の抗体は、任意の公知のアッセイ方法(例えば、競合結合アッセイ、直接的および間接的なサンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイ)において用いられ得る。Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,147−158頁(CRC Press,Inc.,1987)。競合結合アッセイは、標識された標準物質(これは、NURRサブファミリーのメンバーもしくはCRHレセプターまたはこれらの免疫学的反応性部分であり得る)が、制限された量の抗体との結合について試験サンプル分析物(NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプター)と競合する能力に頼る。試験サンプルにおけるNURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターの量は、この抗体と結合した標準物質の量と逆に比例する。結合した標準物質の量を決定することを容易にするために、この抗体は一般的に、この抗体に結合した標準的物質および分析物が、結合していないままの標準物質および分析物から便利に分離され得るように、競合の前または後で不溶化される。サンドイッチアッセイは、2つの抗体(各々、検出されるべきタンパク質の異なる免疫原性部分(すなわち、エピトープ)に結合し得る)の使用を含む。サンドイッチアッセイでは、試験サンプル分析物は、固体支持体上に固定化された第一抗体によって結合されており、その後、第二抗体が分析物を結合し、従って、不溶性の三部複合体を形成する。DavidおよびGreene,米国特許第4,376,110号。第二抗体は、検出可能な部分でそれ自体標識され得る(直接的サンドイッチアッセイ)か、または検出可能な部分で標識された抗免疫グロブリン抗体を用いて測定され得る(間接的サンドイッチアッセイ)。例えば、1つの型のサンドイッチアッセイはELISAアッセイであり、この場合、検出可能な部分は酵素である。
【0182】
((iii)ヒト化抗体)
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基はしばしば、「輸入(import)」残基といわれ、輸入残基は代表的に、「輸入」可変ドメインから採取される。ヒト化は、Winterおよび共同実験者ら(Jonesら,1986);Riechmannら,1988;Verhoeyenら,1988の方法に従って、齧歯類のCDRまたはCDR配列で、ヒト抗体の対応する配列を置換することによって、本質的に行われ得る。従って、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(Cabilly,前出)であり、ここで、インタクトなヒト可変ドメインよりも実質的に小さいドメインが、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている。実際問題として、ヒト化抗体は代表的に、いくつかのCDR残基およびおそらくいくつかのFR残基が、齧歯類抗体における類似の部位由来の残基によって置換されているヒト抗体である。
【0183】
抗体が、抗原に対する高い親和性および他の好ましい生物学的特性を保持しながらヒト化されることが重要である。この目的を達成するために、好ましい方法に従って、ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを用いて、親配列および種々の概念的ヒト化産物の分析プロセスによって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、当業者にとって通常入手可能であり、そして当業者はこれに精通している。選択された候補免疫グロブリン配列のありそうな三次元コンホメーション構造を例示および提示する、コンピュータプログラムが入手可能である。これらのディスプレーの検査は、候補免疫グロブリンアミノ酸の機能における残基の、ありそうな役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を与える残基の分析を可能にする。このようにして、FR残基は、所望の抗体特徴(例えば、標的抗原についての親和性の増大)が達成されるように、コンセンサス配列および輸入配列から選択され得、そして組み合わされ得る。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に直接的かつ最も実質的に関与する。さらなる詳細については、1998年10月13日に出願された米国特許5,821,337を参照のこと。
【0184】
(d.ヒト抗体)
ヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法によって作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒトミエローマ株およびマウス−ヒトへテロミエローマ細胞株は、例えば、Kozbor,J.Immunol.(1984)およびBrodeurら,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51−63頁(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)によって記載されている。現在、免疫されると、内在性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体のレパートリーを産生し得るトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが可能である。例えば、キメラでおよび生殖系列変異体マウスにおける抗体の重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失は、内在性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移入は、抗原チャレンジされると、ヒト抗体の産生をもたらす。例えば、Jakobovitsら,1993;Jakobovitsら,1993を参照のこと。あるいは、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら,1990)を用いて、非免疫ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、ヒト抗体および抗体フラグメントをインビトロで産生し得る。この技術に従って、抗体Vドメイン遺伝子は、糸状バクテリオファージ(例えば、M13またはfd)の主要コートタンパク質遺伝子またはマイナーコートタンパク質のいずれかに対してインフレームでクローニングされ、そしてファージ粒子の表面上で機能的抗体フラグメントとして提示される。糸状粒子はこのファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むので、抗体の機能的特性に基づく選択もまた、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択をもたらす。従って、このファージは、B細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレーは、種々の形式で行われ得る;これらの概説については、例えば、Johnson,Kevin S.およびChiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology 3,564−571(1993)を参照のこと。V遺伝子セグメントのいくつかの供給源は、ファージディスプレイのために用いられ得る。Clacksonら,Nature 352,624−628(1991)は、免疫したマウスの脾臓由来のV遺伝子の小さなランダムコンビナトリアルライブラリーから抗オキサゾロン(oxazolone)抗体の多様なアレイを単離した。免疫していないヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーが構築され得、そして多様なアレイの抗原(自己抗原を含む)に対する抗体は、Marksら,1991またはGriffithら,1993に記載される技術に本質的に従って単離され得る。
【0185】
天然の免疫応答では、抗体遺伝子は、変異を高い割合で蓄積する(体細胞超変異)。導入された変化のいくつかは、高い親和性を与え、そして高親和性表面免疫グロブリンを提示するB細胞は、その後の抗原チャレンジの間に優先的に複製され、そして分化する。この天然のプロセスは、「鎖シャッフリング」(Marksら,1992)として公知の技術を用いることによって模倣され得る。この方法では、ファージディスプレーによって得られた「一次」ヒト抗体の親和性は、重鎖および軽鎖のV領域の遺伝子を、免疫していないドナーから得られたVドメイン遺伝子の天然に存在する改変体(レパートリー)のレパートリーで順次置換することによって改善され得る。この技術は、nMの範囲の親和性を有する抗体および抗体フラグメントの産生を可能にする。非常に大きなファージ抗体レパートリー(「全てのライブラリーの母(mother−of−all libraries)」としても公知)を作製するためのストラテジーは、Waterhouseら,1993によって記載されており、そして高親和性ヒト抗体は、既に報告されたような大きなファージライブラリーから直接単離され得る。遺伝子シャッフリングをまた用いて、齧歯類抗体からヒト抗体を誘導し得、ここで、ヒト抗体は、出発齧歯類抗体に対して類似の親和性および特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法に従って、ファージディスプレイ技術によって得られる齧歯類抗体の重鎖または軽鎖のVドメイン遺伝子は、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置換されて、齧歯類−ヒトキメラが作製される。抗原についての選択は、機能的抗原結合部位を保有し得る、すなわち、エピトープがパートナーの選択を支配する(インプリントする)、ヒト可変部の単離をもたらす。残りの齧歯類Vドメインを置換するためにこのプロセスが繰り返される場合、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日に公開されたPCT特許出願WO 93/06213を参照のこと)。CDRグラフト化による齧歯類抗体の伝統的なヒト化とは異なり、この技術は、齧歯類起源のフレームワーク残基もCDR残基も有さない、ヒト抗体を完全に提供する。
【0186】
(e.二重特異性抗体)
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原についての特異性を有する、モノクローナル(好ましくはヒトまたはヒト化)抗体である。本発明の場合、結合特異性のうちの一方は、NURRサブファミリーのメンバーについてまたはCRHレセプターについてであり、他方は任意の他の抗原についてであり、そして好ましくは別のレセプターまたはレセプターサブユニットについてである。例えば、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターおよび神経栄養因子を特異的に結合するか、または2つの異なるNURRサブファミリーのメンバーもしくは2つの異なるCRHレセプターを特異的に結合する二重特異性抗体は、本発明の範囲内にある。二重特異性抗体を作製するための方法は当該分野で公知である。伝統的に、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリンの重鎖−軽鎖対の同時発現に基づき、ここで、2つの重鎖は、異なる特異性を有する(MillsteinおよびCuello,1983)。免疫グロブリンのランダムな一組の重鎖および軽鎖に起因して、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の潜在的混合物を産生し、このうち、1つのみが正確な二重特異性構造を有する。正確な分子の精製(これは通常、アフィニティークロマトグラフィー工程によって行われる)はかなり扱いにくく、そして産物の収率は低い。同様の手順は、PCT出願公開番号WO 93/08829(1993年5月13日公開)およびTrauneckerら,1991に開示される。
【0187】
異なりかつより好ましいアプローチに従って、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリンの定常ドメイン配列に融合される。融合は好ましくは、ヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリンの重鎖定常ドメインとである。融合物の少なくとも1つに存在する、軽鎖の結合のために必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリンの重鎖融合物をコードするDNAおよび所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別々の発現ベクター中に挿入され、そして適切な宿主生物体へと同時トランスフェクトされる。これは、構築において用いられる等しくない比の3つのポリペプチド鎖が最適な収率を提供する実施形態において、3つのポリペプチドフラグメントの相互の比率を調整する際に大きな融通性を提供する。しかし、等しい比の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高い収率をもたらす場合、またはこの比が何の特別な重要性も無い場合、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖についてのコード配列を、1つの発現ベクター中に挿入することが可能である。このアプローチの好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームにおいて第一の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および他方のアームにおけるハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)から構成される。この非対称構造が、所望の二重特異性化合物の、望ましくない免疫グロブリン鎖の組合せからの分離を容易にすることが見出された。二重特異性分子の一方のみにおける免疫グロブリン軽鎖の存在が、容易な分離方法を提供する。このアプローチは、1992年8月17日に出願した同時係属中の出願第07/931,811号に開示される。二重特異性抗体を作製するさらなる詳細については、例えば、Sureshら,1986を参照のこと。
【0188】
(f.ヘテロ結合体抗体)
ヘテロ結合体抗体もまた、本発明の範囲内にある。ヘテロ結合体抗体は、共有結合的に連結された2つの抗体から構成される。このような抗体は、例えば、望ましくない細胞に対して免疫系細胞を標的化するために(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染の処置について(PCT出願公開番号WO 91/00360および同WO 92/200373;EP 03089)提唱されている。ヘテロ結合体抗体は、任意の便利な架橋方法を用いて作製され得る。適切な架橋剤は当該分野で周知であり、そして多数の架橋技術と共に米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0189】
(免疫検出方法)
なおさらなる実施形態では、本発明は、生物学的成分(例えば、NURRサブファミリーのメンバーおよびCRHレセプターサブタイプのタンパク質成分)を結合、精製、除去、定量およびさもなければ一般的に検出するための、免疫検出方法に関する。本発明に従って調製される、NURRサブファミリーのメンバーおよびCRHレセプターサブタイプの抗体を用いて、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドが検出され得る。本出願を通して記載されるように、NURRサブファミリーのメンバーおよびCRHレセプターサブタイプに特異的な抗体の使用が意図される。いくつかの免疫検出方法としては、いくつか言及すると、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、免疫放射定量アッセイ、蛍光免疫アッセイ、化学発光アッセイ、生物発光アッセイおよびウェスタンブロットが挙げられる。種々の有用な免疫検出方法の工程は、科学文献(各々本明細書中に参考として援用される、例えば、Doolittle MEおよびBen−Zeev O,1999;Gulbis BおよびGaland P,1993;De Jager Rら,1993;ならびにNakamuraら,1987)に記載されている。
【0190】
一般に、免疫結合方法は、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含む疑いのあるサンプルを得る工程、およびこのサンプルを、本発明に従って、第一の抗NURR抗体または抗CRH抗体と、場合によっては条件下で、免疫複合体の形成を可能にするに有効な条件下で接触させる工程を含む。
【0191】
これらの方法としては、NURRサブファミリーのメンバーおよびCRHレセプターのタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドを患者のサンプルから精製する際に用いられ得るように、NURRサブファミリーのメンバーおよびCRHレセプターのタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドを精製するための方法、ならびに組換え発現されたNURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドを精製するための方法が挙げられる。これらの例では、この抗体は、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターサブタイプのタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの抗原性成分をサンプルから除去する。この抗体は好ましくは、固体支持体(例えば、カラムマトリックスの形態で)連結され、そしてNURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質の抗原性成分を含む疑いのあるサンプルは、固定された抗体に適用される。望ましくない成分はカラムから洗浄され、固定された抗体に免疫複合体化した抗原が残され、次いで、このNURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質抗原は、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質またはペプチドをカラムから取り出すことによって収集される。
【0192】
免疫結合方法はまた、サンプル中の、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質と反応性の成分の量を検出および定量するための方法、ならびに結合プロセスの間に形成された任意の免疫複合体の検出および定量を包含する。ここで、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターサブタイプのタンパク質またはペプチドを含む疑いのあるサンプルを得、そしてこのサンプルを、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターサブタイプに対する抗体と接触させ、次いで、特定の条件下で形成された免疫複合体の量を検出および定量する。
【0193】
抗原検出に関して、分析される生物学的サンプルは、NURRサブファミリーのメンバーおよび/またはCRHレセプターサブタイプのタンパク質に特異的な抗原を含む疑いのある任意のサンプル(例えば、炎症性滑膜組織の切片または標本、ホモジナイズした炎症性滑膜組織抽出物、炎症性滑膜の細胞、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質を含有する組成物の上記のいずれかの分離および精製された形態またはさらには炎症性滑膜組織と接触する任意の生物学的流体(例えば、滑液)であり得るが、組織サンプルまたは抽出物が好ましい。NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質に特異的な抗原を含む疑いのあり得る炎症性免疫疾患としては、慢性炎症性関節疾患、潰瘍性大腸炎、甲状腺炎、関節炎、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎として分類される状態のコレクションが挙げられるがこれらに限定されない。
【0194】
選択された生物学的サンプルを、免疫複合体(一次免疫複合体)の形成を可能にするに有効な条件下でかつそれに充分な期間にわたって抗体と接触させることは一般に、抗体組成物をサンプルに単に添加し、そして抗体が、存在する任意のNURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプタータンパク質抗原と免疫複合体を形成する、すなわち、結合するに充分に長い期間にわたって混合物をインキュベートする問題である。この時間の後、サンプル−抗体組成物(例えば、組織切片、ELISAプレート、ドットブロットまたはウェスタンブロット)は一般に洗浄されて、あらゆる非特異的に結合した抗体種が除去され、一次免疫複合体中に特異的に結合された抗体のみが検出されるのを可能にする。
【0195】
一般に、免疫複合体形成の検出は、当該分野で周知であり、そして多数のアプローチの適用を通して達成され得る。これらの方法は一般に、標識またはマーカー(例えば、放射性タグ、蛍光タグ、生物学的タグおよび酵素的タグのいずれか)の検出に基づく。このような標識の使用に関する米国特許としては、各々本明細書中に参考として援用される、3,817,837;3,850,752;3,939,350;3,996,345;4,277,437;4,275,149および4,366,241が挙げられる。もちろん、当該分野で公知であるように、二次結合リガンド(例えば、第二の抗体またはビオチン/アビジンリガンド結合配置)の使用を通してさらなる利点を見出し得る。
【0196】
検出において用いられるNURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターの抗体は、それ自体、検出可能な標識に連結され得、次いで、この標識を単に検出し、それによって組成物中の一次免疫複合体の量が決定されるのを可能にする。あるいは、一次免疫複合体中に結合された第一の抗体は、この抗体についての結合親和性を有する二次結合リガンドによって検出され得る。これらの場合、第二の結合リガンドは、検出可能な標識に対して連結され得る。第二の結合リガンドはしばしば、それ自体抗体であり、従ってこのリガンドは、「二次」抗体と呼ばれ得る。一次免疫複合体を、標識された二次結合リガンド(すなわち、抗体)と、二次免疫複合体の形成を可能にするに有効な条件下でかつそれに充分な期間にわたって接触させる。次いで、二次免疫複合体は一般に洗浄されて、非特異的に結合したあらゆる標識二次抗体またはリガンドが除去され、次いで、二次免疫複合体中の残りの標識が検出される。
【0197】
さらなる方法は、二工程アプローチによる一次免疫複合体の検出を含む。抗体についての結合親和性を有する第二の結合リガンド(例えば、抗体)は、上記のような、二次免疫複合体を形成するために用いられる。洗浄後、二次免疫複合体を、第二の抗体についての結合親和性を有する第三のリガンドまたは抗体と、再度、免疫複合体(三次免疫複合体)の形成を可能にするに有効な条件下でかつそれに充分な期間にわたって接触させる。第三のリガンドまたは抗体は、検出可能な標識へと連結されて、このようにして形成された三次免疫複合体の検出を可能にする。この系は、シグナル増幅が所望される場合、シグナル増幅を提供し得る。
【0198】
Charles Cantorによって設計された免疫検出の1つの方法は、2つの異なる抗体を使用する。第一の工程のビオチン化モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて標的抗原が検出され、次いで第二工程の抗体を用いて、複合体化したビオチンに結合したビオチンが検出される。この方法では、試験されるべきサンプルは、第一工程抗体を含む溶液中で最初にインキュベートされる。標的抗原が存在する場合、抗体のうちのいくつかは抗原に結合して、ビオチン化抗体/抗原複合体を形成する。次いで、抗体/抗原複合体は、ストレプトアビジン(またはアビジン)、ビオチン化DNAおよび相補的ビオチン化DNAの連続溶液中でのインキュベーションによって増幅され、各工程は、さらなるビオチン部位を抗体/抗原複合体に添加する。この増幅工程は、適切な増幅レベルが達成されるまで繰り返され、これが達成された時点で、サンプルは、ビオチンに対する第二工程抗体を含む溶液中でインキュベートされる。この第二工程抗体は、例えば、色素原基質を用いた組織酵素学によって抗体/抗原複合体の存在を検出するために用いられ得る酵素を用いてのように、標識される。適切な増幅を用いて、巨視的に見える結合体が産生され得る。
【0199】
別の公知の免疫検出方法は、免疫−PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)方法論を利用する。このPCR方法は、ビオチン化DNAとのインキュベーションまではCantor法に類似するが、複数回のストレプトアビジンおよびビオチン化DNAインキュベーションを用いる代わりに、DNA/ビオチン/ストレプトアビジン/抗体複合体は、この抗体を放出させる低いpHまたは高塩緩衝液を用いて洗浄される。次いで、得られた洗浄溶液は、適切なコントロールと共に適切なプライマーを用いてPCR反応を実施するために用いられる。少なくとも理論的には、PCRの莫大な増幅能力および特異性を利用して、単一抗原分子を検出し得る。
【0200】
本発明の免疫検出方法は、種々の形態の炎症性免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ)のような状態の診断および予後において明らかな有用性を有する。ここで、野生型または変異体のNURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたは変異体を含む疑いのある生物学的サンプルまたは臨床的サンプルが用いられる。しかし、これらの実施形態はまた、(例えば、例えば、ハイブリドーマの選択において、抗原または抗体のサンプルの力価測定において)非臨床サンプルに対する適用を有する。
【0201】
種々の形態の炎症性免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ)を有する患者の臨床診断および/またはモニタリングにおいて、NURRサブファミリーのメンバーおよびCRHレセプターのタンパク質、ポリペプチド、ペプチドもしくは変異体の検出、または正常被験体由来の、対応する生物学的サンプルにおいて観察されたレベルと比較した、NURRサブファミリーのメンバーおよびCRHレセプターのレベルにおける変更は、特定の実施形態では、炎症性免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ)を有する患者の指標である。しかし、当業者に公知のように、このような臨床診断は、かならずしも、孤立してこの方法に基づいてなされるわけではない。当業者は、生体マーカーの種類および量における顕著な差を識別することに非常に精通しており、これは、正の同定を表すか、または生体マーカーの低レベルおよびバックグラウンドの変化を表す。実際、バックグラウンドの発現レベルはしばしば、「カットオフ」を形成するために用いられ、カットオフよりも上の増大した検出は、顕著でかつポジティブとスコア付けされる。
【0202】
(a.免疫組織化学)
本発明の抗体はまた、免疫組織化学(IHC)による研究のために調製された、新鮮に凍結されたパラフィン包埋された組織ブロック、およびホルマリン固定されパラフィン包埋された組織ブロックの両方に関連して用いられ得る。標本から組織ブロックを調製する方法は、種々の予後因子の以前のIHC研究において好首尾に用いられており、そして当業者に周知である(Brownら,1990;Abbondanzoら,1990;Allredら,1990)。
【0203】
手短に述べると、凍結切片は、50ngの凍結した「粉末化」組織を、小さなプラスチックカプセル中のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中で室温で再水和し;遠心分離によって粒子をペレット化し;粘着性の包埋媒体(OCT)中にこれらを再懸濁し;カプセルを反転し、そして遠心分離によって再度ペレット化し;−70℃のイソペンタン中で急速凍結し;プラスチックカプセルを切断し、そして組織の凍結円柱を除去し;組織円柱をクリスタットミクロトームチャック上に固定し;そして25〜50個の連続切片を切断することによって調製され得る。
【0204】
永続切片は、プラスチック製の微量遠心管中での50mgのサンプルを再水和し;ペレット化し;4時間の固定のために10%ホルマリン中で再懸濁し;洗浄/ペレット化し;温めた2.5%寒天中に再懸濁し;ペレット化し;氷水中で冷却して寒天を固くし;組織/寒天ブロックをこの管から取り出し;このブロックをパラフィン中に浸潤または包埋し;そして50個までの連続永久切片を切断することを含む類似の方法によって調製され得る。
【0205】
(非タンパク質発現配列)
特定の実施形態では、NURRサブファミリーの核酸配列またはCRHレセプターは、翻訳されないメッセージを発現し得る。DNAは、表現型に影響を与えるように作用するがタンパク質には翻訳されないRNA転写産物を発現する目的のために生物体中に導入され得る。2つの例は、アンチセンスRNAおよびリボザイム活性を有するRNAである。両方とも、ネイティブな遺伝子または導入された遺伝子の発現を低減または排除する際に、可能な機能を果たし得る。しかし、以下に詳述されるように、DNAは、生物体の表現型をもたらすために発現される必要がない。
【0206】
(a.アンチセンスRNA)
特定の局面では、NURRサブファミリーの核酸配列またはCRHレセプターは、アンチセンスメッセージを発現し得る。転写された場合に、標的とされるメッセンジャーRNAの全てまたは一部に相補的であるアンチセンスRNAを産生する核酸(特に、遺伝子由来の核酸)が構築または単離され得る。このアンチセンスRNAは、このメッセンジャーRNAのポリペプチド産物の産生を低減する。このポリペプチド産物は、細胞のゲノムによってコードされる任意のタンパク質であり得る。上記の遺伝子は、アンチセンス遺伝子と呼ばれる。従って、アンチセンス遺伝子は、形質転換方法によって細胞へと導入されて、選択された目的のタンパク質の発現が低減した新規なトランスジェニック細胞または生物体が産生され得る。例えば、このタンパク質は、細胞または生物体中の反応を触媒する酵素であり得る。酵素活性の低減は、細胞または生物体中で任意の酵素的に合成された化合物(例えば、脂肪酸、アミノ酸、糖質、核酸など)を含む反応の産物を低減または排除し得る。
【0207】
以下の実施例は、例示として提供され、本発明の範囲をどのようにも限定することは意図されない。
【0208】
(実施例1:ヒト炎症性滑膜組織におけるCRH mRNAの産生)
CRH mRNAがヒト炎症性滑膜において末梢的に発現されるか否かを調べるために、RT−PCRを用いて、RAを有する患者の関節(n=6、1.80+/−0.87)、PsAを有する患者の関節(n=6、0.81+/−0.6)、SAを有する患者の関節(n=2、1.20+/−0.4)から得た滑膜組織および正常滑膜(n=2)中のCRH mRNAレベルを比較した。全ての疾患群は、正常滑膜と比較した場合、有意に上昇したCRH mRNAレベル(P<0.01)を有していた(図1Aおよび図1B)。ハウスキーピング遺伝子であるグルタルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)の発現レベルは、全ての患者において類似していた。
【0209】
総RNAを、ヒトCRHおよびGAPDHに対するプライマーを用いるRT−PCRによって分析した。(図1A)正常ヒト滑膜(Nor)、乾癬性関節炎と診断された患者(PsA)、慢性関節リウマチと診断された患者(RA)およびサルコイド関節炎と診断された患者(SA)。(図1B)示した値は、平均+/−SEである。*は、正常滑膜と比較してP<0.01を示す。
【0210】
(実施例2:初代ヒト滑膜細胞におけるCRHの発現)
CRHを発現する細胞の起源を同定するために、単離された初代ヒト滑膜細胞におけるCRH mRNAの発現を調査した。滑膜細胞は、炎症性滑膜組織中のIL−1β、TNFαおよびPGE2の作用についての重要な供給源かつ標的細胞である(Bucalaら,1991)。さらに、これらの炎症誘発性因子は、ヒト滑膜の過形成および軟骨破壊の病因における重要なメディエーターである(MacNaulら,1990)。RT−PCR分析は、CRH mRNAがRAおよびPsAの両方の初代滑膜細胞において構成的に発現されることを実証した。(図1C)炎症誘発性メディエーターによって刺激された後の初代滑膜細胞を図1Dに示す。正常条件下で維持された(Con)、または10ng/mlのIL−1β、IL−6、TNFα、1μMのPGE2、MoCMまたは25μMのフォルスコリン(FOR)に6時間にわたって暴露された滑膜細胞を用いて作製されたPCR産物の代表例。結果は、RA細胞株およびPsA細胞株の両方を用いて、3つの別々の実験から得られた。示した値は、平均+/−SEである。記号*は、コントロールと比較してP<0.01を示す。作製されたPCR産物を、ヒトCRHおよびGAPDHについてのcDNAプローブを用いたサザンブロット分析によって確認した。
【0211】
(実施例3:CRH発現に対するフォルスコリンおよび炎症誘発性アゴニストの効果)
アデニル酸シクラーゼ/プロテインキナーゼAシグナル伝達経路の活性化による視床下部CRH遺伝子の発現調節は既に確証されている(Guardiola−diazら,1994)。アデニル酸シクラーゼ活性化因子であるフォルスコリン(FOR)の能力を、初代滑膜細胞におけるCRH遺伝子発現に対する刺激効果について試験した。フォルスコリンは、刺激の2時間後という早期に内在性CRH mRNAレベルを誘導し、レベルは6時間後にピークに達した(図1Cおよび図1D)。末梢CRH発現の調節シグナルを決定するために、炎症誘発性アゴニストの内在性CRH mRNA調節能力を試験した。インビボサイトカイン濃度を正確に反映することが報告された(Uhlarら,1997)炎症性メディエーターの複雑な組合せである単球馴化培地(MoCM)で刺激した滑膜細胞は、フォルスコリン処理に匹敵するレベルまで、CRH mRNA発現を強力に(4.64+/−2.5倍)刺激した。次いで、個々の炎症誘発性メディエーターがCRH mRNAを誘導する能力の比較を行った。TNFα(3.6+/−2.0倍)、IL−1β(2.3+/−1.0倍)およびPGE2(3.85+/−1.5倍)はCRH mRNAを有意にアップレギュレートした(P<0.01)が、IL−6は、試験したどの濃度でも、これらの細胞におけるCRH mRNAレベルに対して効果をほとんど有さなかった(1.5+/−1.2倍)。GAPDH mRNAのレベルは、試験した全ての条件下で比較的一定のままであった(図1D)。
【0212】
(実施例4:炎症性メディエーターは、初代滑膜細胞におけるヒトCRHプロモーターの転写活性を増強する)
炎症性メディエーターがヒトCRHプロモーターの発現を調節し得るか否かを決定するために、ヒトCRH遺伝子の近位プロモーター領域(−666/+111)(配列番号143)を、プロモーターのないpBL3−クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)プラスミド中へクローニングして、hCRH−CATを作製することによってレポーター構築物を作製した。hCRHプロモーターの転写調節を、初代ヒト滑膜細胞における一過性トランスフェクションによって測定した。β−ガラクトシダーゼ活性についてトランスフェクトした細胞のインサイチュ染色は、95%を超える高いトランスフェクション効率を示した(図2A)。3つの個々のRA滑膜細胞株およびPsA滑膜細胞株を、CRHプロモーター活性をモニタリングするために3μgの−666/+111hCRH−CATレポータープラスミドで一過性トランスフェクトし、正常条件下で維持した(Con)か、または10ng/mlのIL−1β、IL−6、TNFα、1μMのPGE2、MoCMもしくは25μMのFORに12時間暴露した。RT−PCR分析の結果と一貫して、TNFα(15.6+/−1.9倍)、IL−1β(17.1+/−3.1倍)、PGE2(28.8+/−1.7倍)およびMoCM(40.8+/−2.1倍)は、hCRHプロモーターの転写活性を有意に(P<0.01)増強した。IL−6処理(10〜100ng/ml)のトランスフェクトした細胞は、CAT産生を有意には増大させなかった(3.2+/−1.9倍)。このことは、IL−6が、これらの細胞におけるCRHプロモーター活性に対してほとんど効果を有さないことを示唆する。炎症誘発性アゴニストでの処理に対する個々のPsA滑膜細胞株およびRA滑膜細胞株の応答は、有意差を示さなかった。トランスフェクトされた細胞によって産生される代表的なCATレベルを、図2Bに例示する。
【0213】
図2Aおよび図2Bに示す結果は、RAおよびPsAの個々の3つの細胞株からの結果の代表である。各データバーは、2つのデータ点を表す。
【0214】
(実施例5:CRHレセプターは、炎症性滑膜において発現される)
炎症性ヒト滑膜におけるCRHについての末梢での生物学的役割をさらに確証するために、CRHレセプターの存在を分析した。CRHレセプターについての特異的免疫組織化学的染色は、試験した全てのRA組織(n=6)およびPsA組織(n=6)において見られた。CRHレセプターは、滑膜の血管系(血管の内皮細胞および平滑筋層を含む)に存在した(図3)。レセプター染色は、RAの滑膜の血管系(図3A)と比較して、PsAの滑膜の血管系(図3Bおよび図3C)において一貫してより濃かった。ポジティブ細胞は、褐色がかった黒色の染色によって示される。LLは滑膜の管壁層(lining layer)を示し、一方、SLは管壁下(sublining)の滑膜支質を示す。もともとの倍率は以下の通りである:×200(A、B);×450(C、D)。対照的に、いくつかの指定されたていない単核細胞がポジティブに染色させて出現しているが、滑膜の管壁層、滑膜下滑膜細胞および炎症性浸潤は、主にCRHレセプター陰性であった。染色の特異性を、過剰の抗原と共に予めインキュベートした、CRHレセプター抗体で処理した連続切片に染色が見られないことによって確認した(図3D)。
【0215】
ポジティブ細胞は、褐色がかった黒色の染色によって示される。滑膜の管壁層(LL)および管壁下滑膜支質(SL)が示される。元々の倍率:×200(A、B);×450(C、D)。RA(A)およびPsA(B、CおよびD)の滑膜組織を、CRHレセプター1型および2型に対する抗体(C−20)で染色した。PsA滑膜組織(D)(Cにおける切片に対する連続切片)を、C−20特異的ブロッキングペプチドで予め吸収したC−20で染色した。
【0216】
(実施例6:滑膜組織におけるNURR1およびNUR77のmRNAの発現)
NURRサブファミリーが病理的状況におけるCRHシグナル伝達に寄与するか否かを決定するために、新たに切り出したRA(図4A)およびPsAの滑膜外植片を、CRH(10−8M)と共にインキュベートし、そしてNURR1およびNUR77の転写産物の発現を誘導する能力について調べた。ノーザンブロット分析によって、NURR1およびNUR77の両方が、CRHによって1時間以内に迅速に誘導され、そして3時間以内に基底レベルまで減少することが確認された(図4A)。さらに、滑膜外植片の分析は、NUR77転写産物のレベルと比較してより高い、内在性およびCRH誘導性のNURR1 mRNAを示す。
【0217】
プロテインキナーゼA経路およびプロテインキナーゼC経路による遺伝子発現の調節は、RA滑膜細胞における重要なシグナル伝達事象を表す(Ben−Avら,1995;Croffordら,1994;FiresteinおよびManning,1999)。NURR1およびNUR77のmRNAレベルにおける迅速な上昇は、これらの細胞においてプロテインキナーゼA経路のフォルスコリン活性化後に観察された(図4B)。NURR調節におけるプロテインキナーゼCシグナル伝達経路の関与を調査するために、滑膜細胞を、酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)で処理した。PMAは、NUR77 mRNAを中程度にアップレギュレートしたが、NURR1 mRNAレベルに対しては何の刺激効果も有さなかった。グルココルチコイド(デキサメタゾン10−8M)での滑膜細胞の前処理は、フォルスコリン誘導性NURR1発現を劇的に抑制した(図4B)。対照的に、デキサメタゾンは、フォルスコリン誘導性NUR77レベルにもPMA誘導性NUR77レベルにも、効果をほとんど有さなかった。滑膜細胞が膜CRHレセプターを発現しないことを示唆する本発明者らの免疫組織化学的データと一貫して、CRHによるNURR1またはNUR77の誘導は、初代滑膜細胞株において観察されなかった。この観察は、CRHレセプターの存在が、NURR1発現に対する、観察されたCRH誘導性応答にとって重要であることを示す。
【0218】
図4では、総RNAを抽出し、そしてノーザンブロット分析を行った。フィルターを、NURR1またはNUR77についてのcDNAと、そしてまたローディングおよび転写を制御するためにGAPDHとハイブリダイズさせた。滑膜の外植片を未処理のままにしたか[C]または示された時間にわたって10−8MのCRHと共にインキュベートした(図4A)。初代滑膜細胞のコンフルエントな単層を未処理のままにした[C]かまたは10−8Mのデキサメタゾン(DEX)で2時間前処理し、その後、25μMのフォルスコリン(FOR)または20ng/mlの酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)を添加した(図4B)。
【0219】
(実施例7:ヒト滑膜組織におけるNURR1の免疫組織化学的局在化)
滑膜のNURR発現を誘導するというCRHの実証された能力は、ヒト炎症性関節炎におけるNURR転写因子についての調節役割を示唆する。この仮説を試験するために、NURR1発現を、RAおよびPsAの両方の滑膜組織において免疫組織化学的染色によって調べた。NURR1についての特異的染色は、RA(n=5)およびPsA(n=5)の試験した全ての組織において見られた。ポジティブなNURR1染色は、主に核に存在し、そして褐色がかった黒色の染色によって示された。
【0220】
染色は、主に核局在を示し、滑膜細胞およびマクロファージ細胞から主に構成される領域である、滑膜管壁細胞および滑膜下領域の細胞におけるいくらかの細胞質NURR1局在を示した(図5A)。同様に、RA滑液における顕著な単核細胞浸潤はNURR1ポジティブであった。滑膜の血管系(内皮細胞を含む)もまた、NURR1発現についての部位であり、より強い染色が、PsA滑膜血管において観察された(図5C)。RAおよびPsAの培養された初代滑膜細胞におけるNURR1発現の免疫組織化学研究は、インビボで見られた染色パターンと類似の染色パターンを示した(図5D)。NURR1染色の特異性は、NURR1抗体を過剰の抗原と共にプレインキュベートした場合に見られる染色が存在しないことによって確認された(図5B)。
【0221】
滑膜組織切片は、RA滑膜管壁層および管壁下層(図5Aおよび図5B)、ならびにPsA滑膜の血管系(図5C)および培養したPsA滑膜細胞(図5D)を表す。RA滑膜組織(B)(Aにおける切片の連続切片)を、NURR1特異的ブロッキングペプチドで予め吸収させた抗NURR1免疫血清で染色した。滑膜管壁層(LL)、管壁下滑膜支質(SL)および炎症性浸潤(II)を示す。元々の倍率は、以下の通りである:×200(図5Aおよび図5B);×1000(図Cおよび図D)。
【0222】
(実施例8:炎症性アゴニストおよび炎症性アンタゴニストによるNURR1遺伝子の発現調節)
RAおよびPsAの滑膜組織、ならびにCRHレセプターを発現しない細胞において観察された広範囲にわたるNURR1染色は、メディエーターもまた、NURR1発現の調節に関与することを示唆する。それゆえ、炎症性関節疾患におけるNURR転写因子の病理的重要性を、炎症誘発性アゴニストが初代滑膜細胞および滑膜外植片組織におけるNURRの転写産物のレベルを調節する能力を決定することによってさらに調べた(図6)。TNFα、IL−1β、IL−6およびPGE2での処理は、内在性NURR1のmRNAレベルにおける迅速かつ顕著な上昇を誘導した(図6A〜図6D)。一貫して、PGE2(図6D)は、これらの細胞においてNURR1 mRNAを刺激する際に最も強力かつ持続した効果を有した。単離された滑膜外植片におけるNURR1発現に対するIL−6の刺激効果とは対照的に、滑膜細胞のIL−6処理は、NURR1 mRNAを顕著には誘導しなかった(図6C)。
【0223】
デキサメタゾン(10−8M)は、滑膜細胞におけるTNFα、IL−1β(図6Aおよび図6B)ならびにPGE2刺激性NURR1 mRNA、ならびに滑膜外植片におけるCRH誘導性NURR1発現を阻害した。対照的に、デキサメタゾンは、基底NURR1発現(図6A)に対して何の効果も有さなかった。IL−1β誘導性NURR1 mRNAは、シクロオキシゲナーゼインヒビターインドメタシンによってブロックされず、オートクラインPGE2作用の改善を妨げた(図6B)(Ben−Avら,1994)。シクロヘキシミドは、内在性NURR1の転写産物のレベルを上昇させ、そしてフォルスコリン、PGE2(図6E)、IL−1βおよびTNFαのNURR1 mRNA刺激を強く増強した。このことは、デノボタンパク質合成が、ヒト滑膜細胞におけるNURR1 mRNAのサイトカイン媒介性誘導に必要でないことを意味する。図6に示す各ノーザンブロットについて、NUR77 mRNAレベルもまた分析した。しかし、NURR1 mRNAレベルにおける有意な変更とは対照的に、NUR77転写産物レベルは、試験した炎症性アゴニストおよび/または炎症性アンタゴニストの各々によって中程度にしか調節されなかった。著しいことに、滑膜のNURR1、NUR77およびNOR−1の示差的遺伝子発現が観察され、その結果、内在性mRNAの相対的レベルはNURR1>>>NUR77>>NOR−1であった。
【0224】
図6について、各メンブレンを、GAPDH cDNAを用いて再度プロービングして、ローディングおよび転写について制御した。NURR1 mRNAレベルを、以下から抽出した総RNAを用いてノーザン分析によって測定した:(A)10−8Mデキサメタゾン(DEX)での前処理の存在下または非存在下での、未処理のままの滑膜細胞[C]または示した時間にわたってTNFα(10ng/ml)と共に培養した滑膜細胞;(B)2μMインドメタシン(INDO)または10−8M DEXの前処理の存在下または非存在下での、未処理のままの滑膜細胞[C]または示した時間にわたってIL−1β(10ng/ml)と共に培養した滑膜細胞;(C)未処理のままの滑膜細胞[C]またはIL−6(10ng/ml)と共に培養した滑膜細胞もしくは滑膜の外植片;(D)1μM PGE2;(E)5μg/mlシクロヘキシミド(CHX)の非存在下または存在下での、未処理のままの滑膜細胞[C]または1時間にわたって25μMフォルスコリン(FOR)もしくは1μM PGE2と共に培養した滑膜細胞。
【0225】
(実施例9:サイトカイン処理後のCRH NBREに対する増加した核NURR1結合)
NURR1遺伝子発現に対する炎症誘発性サイトカインの刺激効果は、この転写因子の調節におけるサイトカインの重要な役割を実証する。NURR1のDNA結合能に対するサイトカインの効果を分析するために、EMSAを行って、ヒトCRHプロモーターにおけるコンセンサス配列(NBRE)に対するNURR1の結合特性を調べた。25μMフォルスコリン、10ng/ml TNFα(図7)、IL−1βまたはPGE2での滑膜細胞の刺激は、CRH NBREとの2つのタンパク質複合体の有意に増加した結合をもたらした。より大きなタンパク質複合体の結合は、50倍モル過剰(複合体がより小さくなるほどより低い程度まで)の非標識相同オリゴヌクレオチドによって阻害された。より大きなタンパク質複合体は、NURR1によるDNA結合を阻害することが既に示されている(MurphyおよびConneely,1997)NURR1特異的抗血清によって選択的にブロックされた。このことは、NURR1 mRNAにおけるサイトカイン誘導性増加が、CRH NBREコンセンサス配列に対するNURR1タンパク質の特異的結合と相関することを確認する(図7)。
【0226】
未処理の滑膜細胞由来の核抽出物、25μMフォルスコリン(FOR)処理(1時間)滑膜細胞由来の核抽出物、または10ng/ml TNFα処理(1時間)滑膜細胞由来の核抽出物を、α32 P標識CRH NBREに対する増加した結合について比較した。DNA−タンパク質相互作用を、50倍モル過剰の相同オリゴヌクレオチドまたはNURR1特異的抗血清(NURR1 Ab)の存在下でアッセイした。
【0227】
(実施例10:炎症プロセスにおける滑膜CRHの役割)
これらの実施例は、滑膜のCRH産生の調節が、ヒト炎症性関節疾患と関連した炎症プロセスの重要な要素であるという結論を支持する実質的な証拠を提供した。このデータは、最近発症したRAおよび他の慢性の炎症性関節症(PsAおよびSAを含む)を有する患者由来の滑膜組織におけるCRH mRNAの増加を実証する。末梢CRH遺伝子発現の基礎となる調節機構を解明するために、関節の炎症および破壊と関連した炎症誘発性メディエーターが滑膜のCRH合成を刺激する能力を試験した。CRH mRNAの内在性発現を、RAおよびPsAの培養滑膜細胞のインビトロでの研究によって確認した。これらの細胞は、ヒト炎症性関節炎において観察される軟骨破壊となる、滑膜過形成特性および滑膜の腫瘍様侵襲特性に関連している(Bucalaら,1991;MacNaulら,1990)。初代滑膜細胞における定常状態のCRH mRNA発現がIL1β、TNFαおよびPGE2によって増大することおよびこのヒトCRHプロモーターがこれらの同じ免疫学的刺激に内在性CRH発現の応答と類似の様式で応答することもまた本明細書中で実証される。1より多くの細胞型がCRH mRNAを滑液中で産生することが可能である。ラットの脾臓および胸腺の免疫細胞、マウスTリンパ球およびヒト末梢血リンパ球は、CRH mRNAを産生することが報告されており(Websterら,1998)、従って、炎症性滑液中の浸潤性マクロファージおよびリンパ球もまたCRH mRNAを発現する。しかし、滑膜細胞によるCRH mRNA発現の顕著な誘導の観察は、滑膜細胞がCRH mRNA発現の主な供給源であるという仮説を支持する。滑膜におけるCRHレセプターの免疫組織化学局在は、滑膜CRHがパラクリンレセプター媒介応答において局所的に機能することを示す。さらに、CRHが核転写因子NURR1およびNUR77を滑膜外植片組織において誘導するという実証は、滑膜CRHの細胞内効果を媒介する際のNURRサブファミリーについての顕著な役割を支持する。まとめて考えると、これらのデータは、炎症性滑膜における末梢CRHについての局所的な生理学的役割を支持する証拠を提供する。
【0228】
(実施例11:複数の炎症シグナルを媒介する際のNURR1の重要性)
いくつかの独立した研究は、RA滑膜において細胞性増殖を調節する(Firesteinら,1999)ことが公知の遺伝子発現の調節における核前初期遺伝子(例えば、c−fosおよびc−jun)の異常な発現に関連していた。本明細書中で提示される実施例は、炎症性滑膜組織におけるNURR発現を初めて実証し、そしてこれらの転写因子がこの疾患の病理的プロセスに寄与することを示唆する。RA滑膜、PsA滑膜および増殖中の滑膜細胞において、内在性NURR1の遺伝子およびタンパク質の発現が検出された。前初期応答遺伝子の特徴である、IL−1β、TNFα、IL−6およびPGE2によるNURR1の誘導は、デノボのタンパク質合成とは独立した迅速な代謝回転速度を示した。CRHがNURR1を調節する能力は、確立された炎症誘発性メディエーターによるNURR1誘導と類似し、CRHについての末梢的役割をさらに強調する。滑膜由来CRHは、CRHレセプター保有細胞におけるNURR1発現を誘導する。しかし、CRHレセプターを発現しない、いくつかの滑膜細胞集団における豊富なNURR1発現は、炎症性関節に存在する炎症性メディエーターの環境によるこの転写因子の調節についての実質的な役割をさらに支持する。ヒトNURR1近位プロモーターにおけるNF−κBおよびCREBの結合についてのコンセンサス配列は、本明細書で研究した免疫学的刺激による滑膜におけるNURR1発現の誘導と一貫する。初代滑膜細胞におけるNURR発現の調査は、IL−1β誘導性誘導性NURR1転写およびTNFα誘導性NURR1転写の両方を媒介する際のNFκBについての役割を示す。CRHおよびPGE2がcAMP/CREB依存性経路の活性化によってシグナル伝達をするという以前の証明(Labrie F.ら,1982;Murphy and Conneely,1997;Ben−Avら,1995)と共に、これらの観察は、NURR1誘導が、少なくとも2つの異なる炎症誘発性シグナル伝達経路の収束点および複数の炎症シグナルを媒介する際のNURR1についての重要な共通の役割を表すことを示唆する。
【0229】
(実施例12:炎症性関節疾患におけるNURR転写因子の病理的重要性)
炎症性関節疾患におけるNURR転写因子の病理的重要性を、RAにおいて局所的に産生される炎症誘発性アゴニストが、初代ヒト滑膜細胞および滑膜外植片組織におけるNURR転写産物レベルを調節する能力を決定することによって調べた。本明細書中に実証されるように、TNFα、IL−1β、IL−6およびPGE2での処理は、内在性NURR1 mRNAレベルにおける迅速かつ顕著な上昇を誘導した。一貫して、PGE2は、これらの細胞においてNURR1 mRNAを刺激する際に最も強力および持続した効果を有した。IL−1βおよびTNFαがNF−κBを介して転写カップリングを媒介し、一方、PGE2がCREB依存性経路の活性化によってシグナル伝達することが充分に確立される(5)。ヒトNURR1近位プロモーターにおけるNF−κBおよびCREBの両方の結合についての潜在的コンセンサス配列が同定された(図9A)。電気泳動移動度シフト分析(EMSA)を実施して、NFκBタンパク質がNURR1プロモーターのサイトカイン誘導性複合体中に存在することを確認した(図9Bおよび9D)。NURR1 NFκBコンセンサス部位に結合するタンパク質複合体の正体を確認するために、NFκBメンバーに特異的な抗体(p50およびp65)を用いてスーパーシフトアッセイを行った(図9B)。同様に、NURR1コンセンサス部位に結合するタンパク質複合体の正体を確認するために、CREBメンバーに特異的な抗体(CREB−1およびATF−2)を用いてスーパーシフトアッセイを行った(図9D)。これらのデータは、炎症促進性誘導性NURR1転写産物を媒介する際のNFκBおよびCREBについての新規な役割を示唆する。初代RA滑膜細胞をCMV−β−ガラクトシダーゼレポーターでトランスフェクトし、そしてβ−ガラクトシダーゼ活性について染色して、トランスフェクション効率を決定した(図9C)。
【0230】
未処理の培養滑膜細胞(c)、10ng/mlのTNFαもしくはIL1βで1時間にわたって処理された培養滑膜細胞、またはCRHで1.5時間にわたって処理された培養滑膜細胞由来の核抽出物(図9)を調製し、そしてNURR1プロモーターのNFκB結合配列に対応するオリゴヌクレオチド(図9B)またはNURR1プロモーターのCREB結合配列に対応するオリゴヌクレオチド(図9D)を用いるEMSAにおいて用いた。DNA−タンパク質相互作用を、NFκBサブユニットp50およびp65に対する特異抗体(図9B)またはCREB−1およびATF−2に対する特異抗体(図9D)の存在下でアッセイした。
【0231】
(実施例13:NURR転写活性は、滑膜過形成に寄与する)
証拠は、RA滑膜細胞の部分的形質転換が、変形性関節症(OA)と比較してRA滑膜の侵襲性の可能性を増大させることを示唆する。この独特のリウマチ様表現型は、転写因子の機能および下流の標的遺伝子発現におけるサイトカイン調節性変化に起因する。以前の研究は、滑膜細胞による吸収性因子(例えば、MMPおよびPGE2)のサイトカイン刺激性放出が、線維芽細胞様形態から星状形態への変化と関連して生じることを報告した。本発明者らの分析は、NURR1のサイトカイン誘導もまた、線維芽細胞様形状から星状形状への滑膜細胞のトランスフォーメーションと並行して生じることを示す(図10Aおよび図10B)。免疫組織化学的染色は、未処理のままの初代PsA滑膜細胞(A)またはTNFαで刺激された初代PsA滑膜細胞(B)においてもたらされ、線維芽細胞様形状(A)から星状形状(B)へのトランスフォーメーションおよび関連したNURR1核局在化が例示された。図10Cおよび図10Dは、NURRの優勢な核局在化もまた示す、抗NURR1免疫血清を用いた正常な滑膜(C)およびPsA滑膜組織(D)の類似した染色を例示する。まとめて考えると、これらの結果は、NURR1の重要なインビボでの転写調節役割を強調する。滑膜細胞によるIL6、MMPおよびPGE2のサイトカイン刺激放出を阻害する因子であるデキサメタゾンもまた、NURR1誘導およびサイトカイン刺激性形態学的トランスフォーメーションを阻害する。これらの知見は、NURR1遺伝子発現の増加が、滑膜細胞が活性化されて骨吸収の誘導性炎症誘発性メディエーターを分泌する場合に生じる、遺伝子発現におけるプログラムされた変化の要因であることを示唆する。
【0232】
(実施例14:CRHレセプター)
慢性滑膜炎における重要なプロセスは、局所的に産生されたサイトカインが、滑膜血管内皮における変化を活性化して、血管新生、血管拡張および血漿溢出の増大をもたらす能力である。レセプター媒介応答におけるCRHは、局所血管新生を増強することに関連しており(Arbiserら,1999)、そして炎症部位の血管透過性を増大させて強力な血管拡張剤として作用する(Theoharidesら,1998)。CRHレセプターが滑膜の血管内皮および血管平滑筋の両方に存在するという本明細書中に提示される知見は、CRHが炎症性滑液に関連した血管プロセスに関与することを示唆する。2つの別個のサブタイプのCRHレセプター(CRH−R1およびCRH−R2)が単離され、そして特徴付けられている(Aguilera G.ら,1987;Perrinら,1995)。本明細書中の観察は、滑膜におけるCRH R1発現の優位性を実証し、このことは、CRH R1が、滑膜CRHの効果を媒介する際にCRH R2よりも重要であることを示す。内皮血管系におけるCRHレセプターとNURR1との共存は、滑膜CRH応答を媒介する際のこの転写因子についての役割をさらに例示する。CRHレセプターおよびNURR1の発現は、PsA滑膜の血管系において一貫してより高く、このことは、血管の変化が、PsAにおいて、RAと比較してより明白であるという理論を支持する(Vealeら 1993)。
【0233】
(実施例15:炎症性関節炎の媒介におけるCRH R1αの役割)
CRHレセプターは、推定の7回膜貫通ドメインを含み、そしてカルシトニン/血管作用性腸成長ホルモン放出ホルモンサブファミリーのGタンパク質共役レセプターに属する(Aguileraら,1987)。2つの別個のサブタイプのCRHレセプター(CRH−R1およびCRH−R2)がヒト中枢神経系において単離されており、そして特徴付けられており、そして68%相同である。各サブタイプは、薬理学的かつ機能的に別個のアイソフォーム(αおよびβ)を提示する、選択的にスプライシングされた2つの改変体を示し、そして別個の中枢組織特異的発現パターンおよび末梢組織特異的発現パターンを示す。本明細書中で報告されたデータは、CRHレセプター媒介効果が炎症性疾患の病因に寄与することを示す。それにもかかわらず、病理的炎症性病巣におけるCRHレセプターの状態に関する情報はほとんど利用可能でない。CRHレセプター媒介応答が、初期ヒト関節炎における炎症の病態生理に寄与するか否かを決定するために、RA滑膜組織(n=5)およびPsA滑膜組織(n=9)におけるCRHレセプターの発現および局在を調べた(図11)。
【0234】
免疫組織化学分析を、CRHレセプターサブタイプCRH−R1およびCRH−R2の両方と反応する免疫血清を用いて行った(図11)。CRHレセプターのかなり増強された発現は、全ての炎症性関節炎患者由来の内皮細胞を含む滑膜血管系において観察され、そして中程度の発現は、全ての炎症性関節炎患者由来の血管周囲領域において観察された(図11Aおよび図11B)。滑膜管壁層、滑膜下滑膜細胞および炎症性浸潤は、一貫してCRHレセプターネガティブであった。CRHレセプター発現は一貫して、RAの滑膜血管系と比較して、PsAの滑膜血管系においてより強かった。正常な滑膜は、いずれのレセプターサブタイプも発現しなかった。
【0235】
(実施例16:ヒト滑膜組織におけるCRHレセプターサブタイプの発現の免疫組織化学)
初期炎症性関節炎患者コホート(RA、n=5およびPsA、n=9)由来の滑膜生検サンプルをさらに評価して、観察されたレセプター発現がCRH−R1レセプターサブタイプまたはCRH−R2レセプターサブタイプに起因するか否かを決定した。全体的なCRH−R1およびCRH−R2の発現パターン(図11Aおよび図11B)と同様に、明確なCRH−R1染色が、血管内皮および他の別個の血管周囲細胞に観察された(図11D)。対照的に、特異的CRH−R2免疫血清は、CRH−R1についてポジティブである同じ患者コホートの滑膜組織においてCRH−R2発現を検出できなかった(図11E)。CRHレセプター染色の特異性は、過剰の特異的抗原と共に予めインキュベートされたCRHレセプター抗体で処理された連続切片に見出された染色が顕著に存在しないことによって確実にされた(図11F)。アイソタイプが一致した非免疫ヤギIgGを用いた免疫染色は、調べた全てのRA滑膜組織およびPsA滑膜組織においてネガティブであった。組織学的に正常な滑膜組織は、CRH−R1レセプターサブタイプまたはCRH−R2レセプターサブタイプのいずれも発現しなかった(n=2)。
【0236】
(実施例17:肥満細胞トリプターゼ(tryptase)およびCRH−R1の二重免疫局在決定)
免疫反応性CRH−R1を発現する血管周囲細胞を同定するために、滑膜の生検切片を、二重抗体染色法を用いて抗肥満細胞トリプターゼ抗体および抗CRH−R1抗体で免疫染色した(図12)。抗CRH−R1抗体での染色は、血管内皮および別個の血管周囲細胞で検出された強い赤色蛍光を示した(図12A)。同じ切片を抗肥満細胞トリプターゼ抗体で染色することにより、明確な緑色蛍光が示された(図12B)。図12Cは、炎症性PsA滑膜組織中の血管周囲細胞上のCRH−R1レセプターを用いたMCトリプターゼの二重免疫局在決定を例示し、これによって、CRH−R1が炎症性滑膜組織中の血管周囲の肥満細胞に局在することが確立される。同様の発現パターンが、RA滑膜において検出された。
【0237】
(実施例18:滑膜組織におけるCRHレセプターサブタイプmRNA発現の特徴付け)
RT−PCR分析を用いて、ヒト炎症性関節症のコホート(RA、n=5およびPsA、n=8)において、CRHレセプターサブタイプmRNAの発現を特徴付けした(図13)。CRH−R1レセプターサブタイプおよびCRH−R2レセプターサブタイプの両方ならびにそれらのそれぞれのアイソフォームの発現を調べた。CRH−R1プライマーでのcDNAの増幅によって、CRH−R1αを表す333塩基対長のフラグメントおよびCRH−R1βアイソフォームを表す420塩基対長のフラグメントが予測された。CRH−R1αは、逆転写されたmRNAの増幅後に炎症性滑膜組織において、全ての炎症性関節炎患者において検出された。対照的に、これらのプライマーは、同じ患者コホート由来の滑膜組織においてCRH−R1βアイソフォームを検出しなかった。RAおよびPsAの全ての滑膜組織サンプルは、正常滑膜と比較した場合、上昇したCRH−R1α mRNAレベルを有した(p<0.05)(図13A)。免疫組織化学分析に従って、CRH−R1 mRNAレベルは一般に、RAを有する患者と比較して、PsAを有する患者においてより高く、そしてより広範に分布していた。図13Bは、2人のRA患者および2人のPsA患者由来の滑膜組織を用いて、CRH−R1αレセプターmRNAについて作製された代表的なRT−PCR産物を示す。組織学的に正常な滑膜は、どちらのCRH−R1レセプターアイソフォームをも発現しなかった。
【0238】
CRH−R2サブタイプ発現を、関節炎を有する患者の同じコホート(RA、n=5およびPsA、n=8)において調査した。特異的CRH−R2プライマーは、炎症性滑膜組織および正常滑膜組織の両方においてCRH−R2 mRNAを増幅できなかった。CRH−R2プライマー対の効力を確実にするために、ヒト大脳皮質cDNAをポジティブコントロールとして役立てた。ヒト大脳皮質mRNAの逆転写後、予測された781bpのcDNA産物が、特異的CRH−R2プライマーを用いて増幅された(図13B)。ハウスキーピング遺伝子であるグルタルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)の発現レベルは、全ての患者において同様であった(図13B)。
【0239】
単離された滑膜細胞集団におけるCRHレセプターサブタイプ発現は、インビボで見られた染色パターンと同様の染色パターンを示した。豊富なCRH−R1タンパク質は、初代滑膜内皮細胞中に局在した(図13C)。対照的に、いずれのCRHレセプターサブタイプも、RA滑膜細胞またはPsA滑膜細胞の初代培養物で発現されなかった。免疫局在決定データと一貫して、初代滑膜内皮細胞(SMEC)において高レベルのCRH−R1α mRNAが存在したが、RAおよびPsAの初代滑膜細胞(n=3)でも正常なヒト微小血管内皮細胞でも検出不可能であった(図13D)。CRH R2 mRNAの発現は、調査した全ての細胞型において検出不可能であった。
【0240】
滑膜内皮細胞によるCRH−R1α(mRNAおよびタンパク質)発現の顕著な誘導の観察は、血管内皮がCRH作用の主な標的であるという仮説を支持し、そしてCRHが、RAにおける滑膜の炎症と関連した血管の変化に関与することをさらに示唆する。ヒトRA滑膜組織からの微小血管内皮細胞(SMEC)の単離のための迅速かつ効率的なプロトコルは、実施例25に記載される。初代SMECは、1つの微小血管プロセスである血管新生についての研究についてこれらを理想的にする微小血管内皮細胞である。初代SMECにおけるCRHレセプターサブタイプの発現の最初の研究は、インビボで見られる染色パターンと同様の染色パターンを示す。
【0241】
(実施例19:転写因子としてのNURR1の役割)
インビボでの滑膜NURR1の優勢な核局在化は、NURR1の重要な転写調節役割を強調する。局所産生されたサイトカインによって直接的に調節される滑膜のNURR1は、滑膜CRH発現を増大させることによって炎症応答を増幅するために役立つ、オートクライン調節炎症性カスケードの一般的メディエーターである(図8)。滑膜管壁層、滑膜下滑膜細胞および浸潤性単核細胞におけるNURR1の免疫組織化学的局在化は、NURR1が、免疫反応性CRHを発現することが以前に示されたのと同じ滑膜部位で産生されることを確認する(Croffordら,1993)。CRH遺伝子の近位プロモーターは、NBREコンセンサス配列を含み、そしてインビトロでの結果は、サイトカインによって刺激されたNURR1 mRNAレベルが、このコンセンサス配列に対するNURR1タンパク質の核結合の増大と相関することを確認する。Evidence that POMC切断産物およびPOMC切断産物(ACTHおよびβ−エンドルフィン)が、NURR1およびNUR77を産生する同じ細胞において炎症性滑液中に発現されるという証拠は、NURRサブファミリーが滑液におけるPOMC発現を調節するようであるということを示唆する(Fearonら,1998)。これらの観察は、下垂体POMCのCRH誘導がNURR1およびNUR77の転写活性を通して媒介されるという、以前の知見と一貫している(MurphyおよびConneely,1997)。さらに、サイトカイン応答性遺伝子であるコラゲナーゼ(Angel P.,Baumann I.,Stein B.Deliusら,1987)および血清アミロイドA(Uhlarら,1997)は、ヒト滑膜細胞において発現され、そしてRA炎症機構および関節破壊に関連付けられており、NBREコンセンサス部位をその近位プロモーター領域に含む。これらの知見は、NURR1およびNUR77が、炎症性関節疾患の病因におけるCRHおよび炎症誘発性サイトカイン応答の両方の重要な転写メディエーターであるという理論に対するさらなる支持を導く。しかし、滑膜のNURR1およびNUR77の示差的遺伝子発現は、個々のNURRタンパク質の転写の役割を詳細に分析するさらなる研究についての必要性を明らかにする(Murphyら,1995)。
【0242】
RAの炎症は、グルココルチコイドに極めて感受性であり、グルココルチコイドは、リウマチ様滑膜炎の処置において有効に用いられる。従って、デキサメタゾンがサイトカイン誘導性NURR1発現を阻害するという、本明細書中に報告された知見は、デキサメタゾンが、誘導された関節炎の動物モデルにおける、増大した末梢CRHの免疫反応性レベルを顕著に低減させたという以前に報告された証明(Croffordら,1992)とともに、滑膜組織におけるこれらのタンパク質の病理的重要性をさらに強調する。CRHが局所的にシグナル伝達する能力は、滑膜CRHがパラクリン調節ループに関与して、滑膜細胞、内皮細胞および単核細胞の間の連絡を容易にすることを示唆する。インビボでの末梢の炎症性部位でのCRHの免疫中和は、炎症を顕著に阻害し、そしてTNFα抗体を用いて観察された抗炎症性効果に類似する(Karalisら,1991)。炎症性関節炎疾患活性の処置における、TNFブロッキングストラテジーおよび他の抗サイトカイン因子の可能性を評価する、臨床試験および動物研究は、サイトカインカスケード内の複数の因子を標的化して、疾患の進行および関節の破壊が予防されることを示唆する。本明細書中に提示されるデータは、CRH誘導がTNFαおよびIL−1βに対して下流で生じ、それゆえ、ヒト炎症性関節炎における抗サイトカイン治療についてのさらなる標的であることを実証する。CRH R1アンタゴニストであるアンタラルミン(antalarmin)のインビボでの評価は、これが臨床的に有効なCRHアンタゴニストを炎症部位で提供し、そして炎症性関節炎のような、病態生理がCRHの過剰分泌を含む疾患において局所炎症を制御する際に治療的見込みを有することを示す(Websterら,1998)。
【0243】
(実施例20:炎症性関節炎におけるCRHおよびNURR1の役割のまとめ)
まとめると、本研究において提供されるデータは、局所産生されたCRHの調節が、ヒト炎症性関節炎におけるサイトカインネットワークの重要な要素であることを示す。炎症性関節炎の重要なメディエーターは、CRHプロモーター転写活性を増強し、そして軟骨および骨を直接的に侵す滑膜細胞におけるCRH遺伝子発現の増大した産生を刺激する。炎症性滑膜におけるCRHレセプターの存在は、末梢CRH機能を局所的に示す。核レセプターNURR1およびNUR77は、ヒト滑膜組織における末梢CRHシグナル伝達に寄与する。炎症部位での末梢のCRH媒介経路およびCRH媒介経路についての潜在的な病態生理学的役割は、ヒト炎症性関節炎における治療因子としてのCRHのアンタゴニスト性アナログの調査をさらに支持する。
【0244】
さらに、NURRサブファミリーの調節は、炎症性関節疾患に関連した経路を調節する重要な機構であり、そして観察は、複数の炎症応答を媒介する際のNURR1についての中心的役割を示唆する。炎症および細胞トランスフォーメーションに関与するシグナル伝達経路、ならびにリウマチ病に対するそれらの関係は、比較的調査されていない研究領域である。転写因子活性の異常な機能は、正常な炎症性応答または免疫応答を慢性状態へと変換するのを助ける。RAでは、炎症はより多くの炎症へと増殖し、そして永続化を妨害する治療アプローチは、ホメオスタシスを再度確立する機会を提供し得る。NURRサブファミリーによって調節される分子シグナル伝達経路の同定は、この転写因子を薬物治療の分子標的として用いた介入のための新たなアプローチを提供する。医療における薬物標的としてのNURR1ファミリーのメンバーの大きな可能性は、エストロゲンレセプターおよびアンドロゲンレセプターの場合、既に証明されている。炎症性関節炎の疾患活性の処置におけるTNFαブロッキングストラテジーおよび他の抗サイトカイン因子の可能性を評価する、臨床試験および動物での研究は、サイトカインカスケード中の複数の因子が、疾患の進行および関節の破壊を予防するために標的化される必要があることを示唆する。これらのデータは、本明細書中で、NURR1誘導がTNFαおよびIL−1βに対して下流で生じ、それゆえ、ヒト炎症性関節炎における抗サイトカイン治療にとってより効果的な標的であることを実証した。
【0245】
(実施例21:NURR1プロモーターに結合している、NFκBおよびCREB)
未処理の初代滑膜細胞またはPGE2処理初代滑膜細胞由来の核抽出物を用いて行われる、NURR1 CREBコンセンサス(consenus)部位を用いる、同様のEMSAおよびスーパーシフトアッセイを行う。さらに、変形性関節症(OA)滑膜と比較した、RA滑膜およびPsA滑膜の両方の由来の核抽出物におけるNURR1プロモーターに結合するNFκBおよびCREBのインビボでのレベルを測定する。NURR1プロモーターに結合しているNFκBおよびCREBが疾患活性と関連するか否かを決定するために、滑膜組織におけるEMSA NFkB活性およびCREB活性の相対密度と、疾患活性の臨床的尺度との間の関係を評価する。
【0246】
サイトカイン媒介性NURR1転写カップリングに対するコンセンサス部位の相対的寄与を分析するため、およびさらにこれらの伝達経路に関与する機構を解明するために、β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子に融合された600bpの近位ヒトNURR1プロモーター領域を含む標的遺伝子構築物を作製した(図9A)。用いられたNURR−1プロモーターフラグメントは、トランスジェニック動物において発現される場合にβ−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子の正確な発現に必要であることが公知の全ての配列を含む。NURR1プロモーター中のNFκBおよびCREBのコンセンサス部位の個々の変異分析は、これらのコンセンサス部位がNURR1発現において果たす役割の評価を可能にする。野生型および変異型のプロモーター構築物を、RAおよびPsAの初代滑膜細胞に個々にトランスフェクトし、そして適切なサイトカインで刺激して、NURR1転写活性をモニタリングする。実施例11に記載されるデータは、抗炎症剤(例えば、デキサメタゾン)がサイトカイン誘導性NURR1 mRNAのレベルを劇的に抑制し得ることを示す。従って、転写調節研究は、デキサメタゾンがNURR1転写のサイトカイン誘導を抑制する能力を試験することまで広げられる。このトランスフェクションアッセイ系は、EMSAと共に、RAの処置において用いられるこのような薬物の作用機構を同定する際に必須である。
【0247】
(実施例22:NURR1は、滑膜細胞の増殖を媒介する)
滑膜細胞の増殖のNURR1媒介を、RAおよびPsAの初代滑膜細胞におけるNURR1の一過性過剰発現の結果を観察し、そしてヒト滑膜細胞K41細胞株を用いて安定なNURR1発現トランスフェクタントを確立することによって評価する。全長NURR1タンパク質をコードするヒトNURR1 cDNAを、哺乳動物細胞における組換えタンパク質の過剰産生のために設計されたpUV6/V5−His Aベクター(Invitrogen)中にサブクローニングする。pUB6/V5−Hisベクターは、安定な細胞株の選択を可能にするためのブラスチシジン耐性遺伝子を含む。滑膜細胞の増殖を、標準的なCellTiter Assay(Promega)を用いて測定する。
【0248】
実験アプローチはNURR1の遺伝子調節役割を扱い、そして滑膜組織においてこの転写因子によって調節される標的遺伝子を同定する。サイトカイン応答性遺伝子であるMMP−1および血清アミロイドA(SAA)は、RA炎症性および破壊機構に関連付けられており、推定のNURR1コンセンサス結合部位(NBRE)をそれらの近位プロモーター領域に含む。これらの知見は、NURR1が、炎症性関節疾患の病因に関与する炎症誘発性サイトカイン応答の重要な転写メディエーターであるという理論に対してさらなる支持を与える。EMSAおよび細胞ベースのトランス活性化アッセイを用いた同様の実験アプローチを調べて、特異的NBRE配列と相互作用することによる、MMP−1およびSAAの滑膜発現のNURR1調節を決定する。
【0249】
証拠は、NURR1がオートクライン様式で作用して、炎症誘発性メディエーターの産生を刺激することを示唆する。NURR1転写活性によって調節される病態生理学的経路をさらに同定するために、細胞ベースのNURR1トランスフェクションアッセイ系を用いて、炎症性メディエーター(IL1αおよびTNFβ)および骨破壊のエフェクターメディエーター(PGE2、IL6およびMMP)の誘導におけるNURR1の関与を決定する。NURR1トランスフェクト一次滑膜細胞によって産生されるこれらのメディエーターのレベルを、PsAおよびRAの個々の滑膜細胞株を用いて測定する。このようなデータは、類似するが臨床的に異なるこれらの慢性炎症性関節症についてさらなる洞察を提供する。
【0250】
(実施例23:炎症誘発性メディエーターによって誘導されるNOR1発現) 炎症性関節疾患におけるNURR転写因子の病理的重要性を、炎症誘発性アゴニストが、初代滑膜細胞におけるNOR1転写産物のレベルを調節する能力を決定することによって、さらに調べた(図14)。NOR1およびNURR1のmRNAの発現レベルは、TNFαでの処理されると、未処理の滑膜細胞と比較して上昇した。しかし、PGE2は、NURR1 mRNAをこれらの細胞において刺激する際に最も強力かつ持続した効果を有したが、NOR1は、mRNA発現レベルにおいて中程度の上昇しか提示しなかった。
【0251】
未処理(レーン1)またはTNFα(レーン2)、IL−1β(レーン3)およびPGE2(レーン4)で1時間処理した初代RA滑膜細胞のノーザン分析。TNFαおよびIL−1βを10ng/mLの濃度で用い、そしてPGE2を10−6Mの濃度で用いた。
【0252】
(実施例24:組織収集のための方法)
滑膜を、RA、乾癬性関節炎(PsA)またはサルコイド関節炎(SA)と診断された患者からのインフォームドコンセントに従って関節鏡検査によって膝から得た。生検時に、全ての患者は、最近(<12ヶ月)発症した活動性疾患を有していた。全ての患者は、St.Vincent’s University Hospital,Dublin,IrelandのEarly Arthritis Clinicにかかっていた。患者が疾患改変薬物で処置されていた場合または患者が疾患改変薬物をこれまでに摂取したことがある場合、その患者を排除した。組織学的に正常な滑膜を、下肢切断を受ける患者から得た。CRH−R1 mRNAを発現するヒト子宮筋層組織を子宮摘出を受ける閉経前患者から獲得し、一方、正常なヒト大脳皮質cDNA(Geneプール、Invitrogen,Groningen,The Netherlands)をCRH−R2についてのコントロールとして役立てた。
【0253】
(実施例25:滑膜細胞の培養および一過性トランスフェクションのための方法)
滑膜組織を、37℃で5% CO2中、RPMI中1mg/mlコラゲナーゼ(I型;Worthington Biochemical,Freehold,NJ)で4時間にわたって処理した。解離した細胞を、10%ウシ胎仔血清(GibcoBRL,Paisley,UK)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100U/ml)およびフンギゾン(0.25μg/ml)を補充したRPMI中にプレーティングした。滑膜細胞は形態学的に均質な線維芽細胞様細胞であることが見いだされ、そしてこれらを、3回目の継代と7回目の継代との間で用いた(Ben−Avら,1995)。トランスフェクションの24時間前に、1×106個の滑膜細胞を25cm2ディッシュにプレーティングし、そして付着させた。内毒素を含まないDNA(3μg CMV−β−ガラクトシダーゼまたは3μg −666/+111 hCRH CAT(MurphyおよびConneely,1997)を900μlの容量のRPMI(無血清)中の35μlのリポタキシ(lipotaxi)試薬(Stratagene,Cambridge,UK)に添加し、そして室温で30分間インキュベートした。RPMI(1.5ml)をこのトランスフェクション混合物に添加し、細胞上に移し、そして6時間にわたって37℃で5% CO2中でインキュベートした。等しい容量の培地を添加し、そして細胞を一晩、37℃で5% CO2中でインキュベートした。DNA−リポタキシ含有培地を交換し、そして細胞を未処理のままにしたか、または10ng/mlのIL−1β、IL−6、TNFα、1μMのPGE2もしくはMoCMで処理し、そしてさらに24時間インキュベートした。クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)レベルを、CAT ELISA(Boehringer Mannheim,Germany)を用いて測定した。タンパク質濃度を、Bradfordアッセイ(BioRad,Richmond,CA)によって決定した。β−ガラクトシダーゼアッセイについては、細胞を、冷リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄し、冷0.5%グルタルアルデヒドで固定し、そしてPBSで2回洗浄し、その後、染色溶液(1M MgCl2、5M NaCl、0.5M HEPES(pH7.3)、30mMフェリシアン化カリウム、30mMフェロシアン化カリウムおよび2% 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド)と共に12時間にわたって37℃でインキュベートした。
【0254】
(実施例26:滑膜内皮細胞(SMEC)の単離および培養)
初代SMECは、微小血管内皮細胞であり、これは、これらを、1つの微小血管プロセスである血管新生についての研究のために理想的にする。膝滑膜全体を関節形成術時に得て、そして上記の通りに処理した。罹患した組織を50メッシュの細胞解離篩(Sigma Chemical Company,St.Louis,MO)に通過させ、そして500μlの冷PBS/0.1% BSA中に再懸濁した。1×107個のCD31(PECAM−1:9G11)でコーティングしたDynabeads(Dynal A.S.Oslo,Norway)を、このサンプルに45分間にわたって添加し、そして磁性粒子濃縮器中に配置した。単離された内皮細胞を改変EBM−2MV培地(Biowhittaker Inc.Clonetics Products,San Diego,CA)中で直接培養した。内皮細胞を、形態学的に、ならびに第VIII因子およびCD31の発現によって同定した。
【0255】
(実施例27:逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR))
総RNAを、新たに得られた滑膜生検または培養した滑膜細胞から単離した(RNeasy,Qiagen,UK)。相補的DNA(cDNA)を、200U Superscript II(GibcoBRL,Paisley,UK)、100mMジチオトレイトール、40U RNasin、各々1.25mMのdNTPおよび120ngランダムヘキサマーを37℃で1時間にわたって用いた1μgの各RNAサンプルの逆転写によって調製した。PCRを、2μlのcDNA反応混合物、各々1.25mMのdNTP、各々100ngのプライマー、2mM MgCl2および2.5U AmpliTaq−Gold(Perkin Elmer,Brachburg,NJ)を含む50μlの容量で行った。PCR増幅について、プライマー対(センス5’−CAATCGAGCTGTCAAGAGAGC−3’(配列番号144)およびアンチセンス5’−GGAAGAAATCCAAGGGCTGAG−3’(配列番号145))を用いて、ヒトCRHを増幅した。プライマー対(センス5’−CCACCCATGGCAAATTCCATGGCA−3’(配列番号146)およびアンチセンス5’−TCTAGACGGCAGGTCAGGTCCACC−3’(配列番号147))を用いてGAPDHを増幅した。両方のプライマー対は、介在配列に隣接していた。増幅のための条件は、97℃で1分間、60℃で1分間および72℃で1分間であった。CRHについて35サイクルおよびGAPDHプライマー対について25サイクルが、PCR反応が増幅のプラトー期に達していないことを確実にすることが確認された。PCR産物は、サザン分析によって確認された。オートラジオグラフィーの強度を、イメージング濃度計を用いて定量した。
【0256】
ヒトCRH−R1についてのプライマーを設計して、αアイソフォームとβアイソフォームとを区別した。CRH−R1βは、87塩基対の挿入物を5’領域に含み、CRH−R1αについての333bp産物またはCRH−R1βに対応する420bp産物を生じるプライマーをもたらす。プライマー対は介在配列に隣接し、そして以下の通りに設計した:CRH−R1αについて、それぞれ、235位〜255位および549位〜568位に対応するか、またはCRH−R1βについて、それぞれ198位〜219位および599位〜618位に対応する、センスプライマー5’−GCC CTG CCC TGC CTT TTT CTA−3’(配列番号148)およびアンチセンスプライマー5’−GCT CAT GGT TAG CTG GAC CA−3’(配列番号149)。以下のヒトCRH−R2についてのプライマーを用いて、レセプターアイソフォームαおよびβを同定する781bpの産物を増幅した:それぞれ、149位〜169位および911位〜930位に対応する、センスプライマー5’−GCT GGC CCC GCA GCG CTG CC−3’(配列番号150)およびアンチセンスプライマー5’−CCT CAC TGC CTT CCT GTA CT−3’(配列番号151)。GAPDHプライマーを設計して、635bpの産物を産生した:センスプライマー5’−CCACCCATGGCAAATTCCATGGCA−3’(配列番号146)およびアンチセンスプライマー5’−TCTAGACGGCAGGTCAGGTCCACC−3’(配列番号147)。PCRを、2μlのcDNA、各々1.25mMのdNTP、1×PCR緩衝液IIを伴う2.5U AmpliTaq Gold(Perkin Elmer,Brachburg,NJ)、1.0mM MgCl2(CRH−R1,GAPDH)、1.5mM MgCl2(CRH−R2)、200ngのセンスプライマーおよびアンチセンスプライマー(CRH−R1)、ならびに100ngのセンスプライマーおよびアンチセンスプライマー(CRH−R2、GAPDH)を含む、50μl容積において行った。増幅についての条件は、94℃にて1分間の変性、62℃〜58℃で1分間(CRH−R1αおよびGAPDH)および64℃〜60℃で1分間(CRH−R2)のプライマーアニーリング、ならびに72℃で1分間の伸長であった。各PCRサンプルは、反応が増幅のプラトー期に達していないことが確実にされた、35サイクルの増幅を受けた。作製されたPCR産物を1.5%アガロースゲルで電気泳動し、そして可視化した。PCR産物の正体を、配列決定によって確認した。
【0257】
(実施例28:ノーザンブロット分析のための方法)
総RNAを、培養した初代滑膜細胞または滑膜の外植片から単離した。RNAをUV吸収によって定量し、そして10μgの総RNAを標準的なノーザンゲルで電気泳動し、そしてナイロンメンブレン(BioRad,Richmond,CA)に転写した。クロスハイブリダイゼーションを回避するためのアミノ末端領域にわたるNURR1およびNUR77のcDNAプローブ(MurphyおよびConneely,1997)を、[α−32P]dCTPおよびランダムプライマー標識系(Promega,Madison,WI)を用いて高い比活性になるまで放射標識した。ブロットを、増感スクリーンを用いて−80℃でフィルムに暴露し、そしてオートラジオグラフィーの強度を、イメージング濃度計を用いて定量した。
【0258】
(実施例29:免疫組織化学のための方法)
滑膜組織切片(6μm)を、2%アミノプロピル−トリエトキシ−シランまたは1%パラホルムアルデヒドでコーティングしたスライドグラスに配置した。無発熱性ガラスカバースリップ上で増殖させた滑膜細胞を、メタノールで15分間処理した後、染色した。NURR1についての一次抗体(1:100希釈)(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)を、ヒトおよびラットのNURR1のアミノ末端にマッピングされるウサギポリクローナル抗体であった。CRHレセプターIについての一次抗体(1:75希釈)(C−20)は、ヒトCRH−レセプター1型(CRH−R1)のカルボキシ末端にマッピングされるペプチドに対して惹起されたヤギポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)であった。C−20は、CRH−R1およびCRH−R2と称される第二のCRHレセプターサブタイプの両方と反応する。抗体を過剰のCRH−R2特異的合成ペプチド(N−20−P、100μg/0.5ml;Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)で予め吸収させることによってC−20のCRH−R2活性を排除することによって特異的CRH−R1染色が達成された。CRH−R2(N−20)についての一次抗体は、CRH−R2のアミノ末端に対応するペプチドに対して惹起されたポリクローナル抗体(200μg/ml,Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)であった。一次抗体を0.6M NaCl中に1:100希釈し、そして切片上で37℃でインキュベートした。一次抗体との2時間のインキュベーション後、ビオチン化二次抗体(1:500;Vector laboratories,Burlingame,CA)を切片上にスポッティングし、続いてアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体(ABCキット,Vectastain,Burlingame,CA)をスポッティングした。ネガティブコントロールについて、各一次抗体を、その特異的合成ペプチド(200μg/ml;Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)で予め吸収した。
【0259】
(実施例30:核抽出物の調製および電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA))
核タンパク質抽出物を、既に(MurphyおよびConneely,1997)記載された通りに調製した。EMSAについて、1μgの核抽出物を、20mM Hepes(pH7.9)、5mM MgCl2、20%グリセロール、100mM KCl、0.2mM EDTA、8% Ficoll、600mM KCl、500ng/μlポリ(デオキシイノシン酸−デオキシシチジン酸)、50mM ジチオトレイトール(DTT)および[α−32P]−dCTP標識二本鎖オリゴヌクレオチドの存在下で20分間インキュベートした。スーパーシフト実験のために、NURR1に対する抗体(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)を、最初の20分間のインキュベーション後に添加し、次いでさらに20分間インキュベートした。サンプルを、0.5×Tris−Borate−EDTA(TBE)緩衝液中で5.5%非変性ポリアクリルアミドゲルを通して電気泳動した。競合研究のために、反応を、示された濃度の非標識プローブを用いて、記載される通りに行った。オリゴヌクレオチドCRH NBRE 5’−GATGGTAAGAAGGTCAACGG−3’(配列番号152)を、移動度シフトアッセイにおいて用いた。
【0260】
(実施例31:統計分析のための方法)
データを、平均値+/−SEとして表す。正常な滑膜と、RA、PsAまたはSAと診断された患者から得られた滑膜との間の比較を、独立した値についてStudent t検定を用いて行った。処理の間の比較を、対の値についてStudent t検定を用いて行った。
【0261】
(実施例32:二重標識免疫蛍光のための方法)
組織切片または単離された細胞培養物を、希釈した正常なウサギ血清(Vector Laboratories,Burlingame,CA,USA)中でインキュベートした。CRH−R1(C−20)ポリクローナル抗体を、10%正常なヒト血清中で1:10希釈し、続いてビオチン化抗ヤギ二次抗体(1:500、Vector Laboratories,Burlingame,CA)を添加した。切片を、希釈した正常なヤギ血清中でインキュベートし、そして第二の一次抗体であるモノクローナル肥満細胞マーカー:マウス抗ヒトトリプターゼ(AA1,Accurate Chemical Scientific Corp.Westbury,NY,USA)の1:10希釈物中でインキュベートした。ヤギ抗マウスIgG1 FITC結合体化抗体(1:50、1mg/ml、Southern Biotechnology Associates,Inc.Birmingham AL,USA)を添加し、続いてCy3蛍光色素結合体化モノクローナルマウスである抗ビオチン抗体(BN−34、1:100、Sigma Chemical Company,St.Louis,MO,USA)を添加した。スライドを、DAKO(登録商標)蛍光マウント媒体(Dako Corporation,Carpinteria,CA,USA)中にマウントした。アイソタイプが一致した非免疫IgGを、各々の一次抗体についてのコントロールとして含め、そして一次抗体を順次省略して、各々についての特異的染色を確実にした。類似のプロトコルを、単離したSMECの第VIII因子(1:50、F8/86、Dako Corporation,CA,USA)染色について用いた。
【0262】
(実施例33:NURRサブファミリーのメンバーのアンタゴニストについてスクリーニングするための方法)
転写アッセイを、試験因子の存在下および非存在下で実施する。プロモーターに作動可能に連結されたNURRサブファミリーのメンバーおよびマーカー配列を保有する細胞(ここで、このプロモーターは、NURRサブファミリーのメンバーによって直接的または間接的に調節される)を試験因子に投与する。この因子の非存在下でのマーカー配列の発現と比較した、この因子の存在下でのマーカー配列の発現における減少は、この因子が、NURRサブファミリーのメンバー/リガンドの相互作用を妨害することを示す。この妨害は、直接的または間接的であり得る。当業者は、このマーカー配列が、その発現レベルを間接的または直接的に反映する任意のマーカー配列であることを認識する。さらに、このマーカー配列の発現によって産生される転写産物またはこの発現の遺伝子産物が検出される。マーカー配列の例は、当該分野で周知であり、そしてクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼなどを含む。本明細書中の実施例に提供されるように、デキサメタゾンは、NURR1の炎症誘発性メディエーターの発現を低減させ、従って、炎症誘発性メディエーターの存在下でNURRサブファミリーのメンバーのアンタゴニストとして作用する。
【0263】
従って、NURRサブファミリーポリペプチドとリガンドとの相互作用を妨害する化合物についてのスクリーニングの方法が存在し、この方法は、細胞に試験因子を導入する工程(ここで、この細胞は、マーカー配列を含み、ここで、このマーカー配列の発現は、このNURRサブファミリーのメンバーによって調節される);およびこのマーカー配列の発現レベルを測定する工程(ここで、このマーカー配列の発現がこの導入後に低減した場合、この試験因子は、NURRサブファミリーポリペプチドとこのリガンドとの相互作用を妨害する化合物である)を包含する。
【0264】
別の特定の実施形態では、この方法は、炎症性免疫疾患の処置についての化合物を同定し、この方法は、細胞に試験因子を導入する工程(ここで、この細胞は、マーカー配列を含み、ここで、このマーカー配列の発現は、このNURRサブファミリーのメンバーによって調節される);およびこのマーカー配列の発現レベルを測定する工程(ここで、このマーカー配列の発現がこの導入後に低減された場合、この試験因子はこの炎症性免疫疾患の処置についての化合物である)を包含する。
【0265】
(特許)
米国3,817,837
米国3,850,752
米国3,939,350
米国3,996,345
米国特許4,277,437
米国特許4,275,149
米国特許4,366,241
米国特許3,376,110
米国特許4,676,980
米国特許4,797,368
米国特許4,816,567
米国特許5,139,941
米国特許5,662,298
米国特許5,662,299
米国特許5,670,488
米国特許6,147,275
米国特許6,127,399
米国特許5,821,337
WO 91/00360
WO 92/200373
EP 03089。
【0266】
(刊行物)
明細書において言及した全ての特許および刊行物は、本発明が関連する分野の当業者の技術水準を示す。全ての特許および刊行物は、各々の個々の刊行物が具体的かつ個々に、参考として援用されると示されたのと同じ程度に、本明細書中に参考として援用される。
【0267】
【表1】
当業者は、目的を実行するため、そして上記の結果および利点ならびにその固有の結果および利点を得るために本発明が充分に適合されることを容易に認識する。本明細書中に記載される配列、方法、処理、薬学的組成物、手順および技術は、好ましい実施形態の現在の代表であり、例示であることが意図され、そして範囲を限定するとは意図されない。本発明の趣旨に包含されるかまたは係属中の特許請求の範囲によって規定される、これらにおける変更および他の用途は、当業者に考え付く。
【図面の簡単な説明】
【図1A】
図1Aは、ヒトの滑膜組織および初代滑膜細胞におけるCRH mRNA発現を説明する。
【図1B】
図1Bは、ヒトの滑膜組織および初代滑膜細胞におけるCRH mRNA発現を説明する。
【図1C】
図1Cは、ヒトの滑膜組織および初代滑膜細胞におけるCRH mRNA発現を説明する。
【図1D】
図1Dは、ヒトの滑膜組織および初代滑膜細胞におけるCRH mRNA発現を説明する。
【図2A】
図2Aは、炎症誘発性メディエーターが、培養滑膜細胞中でhCRHプロモーターからの転写を活性化することを説明する。
【図2B】
図2Bは、炎症誘発性メディエーターが、培養滑膜細胞中でhCRHプロモーターからの転写を活性化することを説明する。
【図3A】
図3Aは、炎症性滑膜中でのCRHレセプターについての免疫組織化学的染色を示す。
【図3B】
図3Bは、炎症性滑膜中でのCRHレセプターについての免疫組織化学的染色を示す。
【図3C】
図3Cは、炎症性滑膜中でのCRHレセプターについての免疫組織化学的染色を示す。
【図3D】
図3Dは、炎症性滑膜中でのCRHレセプターについての免疫組織化学的染色を示す。
【図4A】
図4Aは、RA滑膜外植片および培養初代滑膜細胞中でのNURR1およびNUR77のmRNAのノーザン分析を説明する。
【図4B】
図4Bは、RA滑膜外植片および培養初代滑膜細胞中でのNURR1およびNUR77のmRNAのノーザン分析を説明する。
【図5A】
図5Aは、抗NURR1免疫血清を用いた滑膜組織および培養滑膜細胞の免疫組織化学的染色を示す。
【図5B】
図5Bは、抗NURR1免疫血清を用いた滑膜組織および培養滑膜細胞の免疫組織化学的染色を示す。
【図5C】
図5Cは、抗NURR1免疫血清を用いた滑膜組織および培養滑膜細胞の免疫組織化学的染色を示す。
【図5D】
図5Dは、抗NURR1免疫血清を用いた滑膜組織および培養滑膜細胞の免疫組織化学的染色を示す。
【図6A】
図6Aは、滑膜細胞中のNURR1 mRNA発現に対する、炎症誘発性メディエーターであるデキサメタゾン、インドメタシンおよびシクロヘキシミドの効果を示す。
【図6B】
図6Bは、滑膜細胞中のNURR1 mRNA発現に対する、炎症誘発性メディエーターであるデキサメタゾン、インドメタシンおよびシクロヘキシミドの効果を示す。
【図6C】
図6Cは、滑膜細胞中のNURR1 mRNA発現に対する、炎症誘発性メディエーターであるデキサメタゾン、インドメタシンおよびシクロヘキシミドの効果を示す。
【図6D】
図6Dは、滑膜細胞中のNURR1 mRNA発現に対する、炎症誘発性メディエーターであるデキサメタゾン、インドメタシンおよびシクロヘキシミドの効果を示す。
【図6E】
図6Eは、滑膜細胞中のNURR1 mRNA発現に対する、炎症誘発性メディエーターであるデキサメタゾン、インドメタシンおよびシクロヘキシミドの効果を示す。
【図7】
図7は、初代滑膜細胞由来の核抽出物の電気泳動移動度シフト分析(EMSA)を説明する。
【図8】
図8は、局所産生されたCRH(これは、ヒト炎症性関節炎におけるサイトカインネットワークの成分である)の調節を例示する。炎症性関節炎に関連した炎症誘発性メディエーターは、滑膜のCRH産生を増大させる。滑膜のCRHは、CRHレセプターを保有する内皮細胞およびいくつかの単核細胞において核転写因子NURR1を誘導する。NURR1は、サイトカイン媒介シグナル伝達に寄与し、そしてオートクライン炎症性カスケードの一般的なメディエーターであり、これはさらに、CRH発現を増大させることによって炎症応答を増幅するために役立つ。デキサメタゾン(DEX)は、サイトカイン誘導性NURR1 mRNA発現およびCRH誘導性NURR1 mRNA発現の両方を阻害することによって機能する。
【図9A】
図9Aは、β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子に融合されたヒトNURR1プロモーターの、NFκB結合配列に対応するオリゴヌクレオチドへの、結合を説明する。
【図9B】
図9Bは、β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子に融合されたヒトNURR1プロモーターの、NFκB結合配列に対応するオリゴヌクレオチドへの、結合を説明する。
【図9C】
図9Cは、このレポーターでトランスフェクトされた初代RA滑膜細胞および滑膜組織におけるβ−ガラクトシダーゼ活性を示す。
【図9D】
図9Dは、β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子に融合されたヒトNURR1プロモーターの、CREB結合配列に対応するオリゴヌクレオチドへの結合を説明する。
【図10A】
図10Aは、抗NURR1免疫血清を用いた、培養滑膜細胞の免疫組織化学的染色を例示する。
【図10B】
図10Bは、抗NURR1免疫血清を用いた、培養滑膜細胞の免疫組織化学的染色を例示する。
【図10C】
図10Cは、抗NURR1免疫血清を用いた、培養滑膜細胞の免疫組織化学的染色を例示する。
【図10D】
図10Dは、抗NURR1免疫血清を用いた、培養滑膜細胞の免疫組織化学的染色を例示する。
【図11A】
図11Aは、CRH−R1レセプターサブタイプおよびCRH−R2レセプターサブタイプの発現を決定するための、滑膜組織の免疫組織化学的染色を示す。
【図11B】
図11Bは、CRH−R1レセプターサブタイプおよびCRH−R2レセプターサブタイプの発現を決定するための、滑膜組織の免疫組織化学的染色を示す。
【図11C】
図11Cは、CRH−R1レセプターサブタイプおよびCRH−R2レセプターサブタイプの発現を決定するための、滑膜組織の免疫組織化学的染色を示す。
【図11D】
図11Dは、CRH−R1レセプターサブタイプおよびCRH−R2レセプターサブタイプの発現を決定するための、滑膜組織の免疫組織化学的染色を示す。
【図11E】
図11Eは、CRH−R1レセプターサブタイプおよびCRH−R2レセプターサブタイプの発現を決定するための、滑膜組織の免疫組織化学的染色を示す。
【図11F】
図11Fは、CRH−R1レセプターサブタイプおよびCRH−R2レセプターサブタイプの発現を決定するための、滑膜組織の免疫組織化学的染色を示す。
【図12A】
図12Aは、二重抗体染色法を用いた、肥満細胞トリプターゼおよびCRH−R1の免疫局在決定(immunolocalization)を示す。
【図12B】
図12Bは、二重抗体染色法を用いた、肥満細胞トリプターゼおよびCRH−R1の免疫局在決定を示す。
【図12C】
図12Cは、二重抗体染色法を用いた、肥満細胞トリプターゼおよびCRH−R1の免疫局在決定を示す。
【図13A】
図13Aは、滑膜組織におけるCRHレセプターサブタイプmRNAの発現を特徴付ける。
【図13B】
図13Bは、滑膜組織におけるCRHレセプターサブタイプmRNAの発現を特徴付ける。
【図13C】
図13Cは、滑膜組織におけるCRHレセプターサブタイプmRNAの発現を特徴付ける。
【図13D】
図13Dは、滑膜組織におけるCRHレセプターサブタイプmRNAの発現を特徴付ける。
【図14】
図14は、ノーザン分析による、初代RA滑膜細胞におけるNOR1およびNURR1の発現を例示する。
(発明の分野)
本発明は一般に、複数の炎症性シグナルを媒介する際の、NURRサブファミリーの転写因子の中心的役割に関する。より詳細には、本発明は、核レセプターNURR1、NUR77およびNOR1、ならびに末梢のCRHおよびCRH媒介性シグナル伝達(これは、例えば、ヒトの関節炎において、炎症プロセスの重要な成分である)の調節におけるそれらの役割に関する。
【0002】
(発明の背景)
脊椎動物の発生、分化およびホメオスタシスの多くの局面は、核レセプターへの結合を介したリガンド依存性様式で遺伝子の発現を制御する、低分子ホルモンおよびシグナル伝達分子によって調節される。これらの分子としては、性ステロイド、コルチコステロイド、甲状腺ホルモンおよびビタミンD3が挙げられ、これらの多くはクローニングされている。リガンドおよび生物学的機能における多様性にもかかわらず、これらのレセプターは、構造的および遺伝的に関連した核レセプタースーパーファミリーに属する。このスーパーファミリーの共通の構造的特徴は、以下からなる三部構成のドメイン構造である:トランス活性化機能に寄与する超可変N末端;DNA認識および二量体形成を担う、高度に保存されたDNA結合ドメイン;ならびに保存されたC末端(これは、サブドメインIIおよびIIIを含み、核局在化、リガンド結合、レセプター二量体形成、サイレンシングおよびトランス活性化に関与する)(例えば、Evans,1988;O’Malley,1990;Beato,1991;ならびにTsaiおよびO’Malley,1994を参照のこと)。このスーパーファミリーの最も保存された特徴は、65〜68アミノ酸残基を含むDNA結合ドメイン(DBD)である。9つの非可変システインのうちの8つは、2つのII型ジンクモジュールを形成する。DBDの任意のメンバーにおける、残りのファミリーに対する配列同一性は、40%〜99%の範囲に及ぶ。このセグメントが高度に保存されることによって、より構造的に関連した多くのレセプターが近年見出され、これらは、リガンドの正体および生理学的機能が未知であるので、オーファンレセプターと称される(例えば、O’Malle,1988;Beato,1991;Laudetら,1992;O’MalleyおよびConneely,1992を参照のこと)。
【0003】
オーファンレセプターは、人工的に分類されたとはいえ、核スーパーファミリーの重要なサブファミリーを形成する。これらの大多数は、既にクローニングされたメンバーに対する、DBD領域における相同性に基づいて同定された。DBD全体をプローブとして使用して、低下したストリンジェンシーでcDNAライブラリーをスクリーニングすること(Giguereら,1988;およびLawら,1992)またはDBD中で最も保存された領域をコードする縮重プライマーを用いたRT−PCR増幅(Schmidtら,1992;Andreら,1993)またはDBDコンセンサス配列に対応する縮重オリゴヌクレオチドを用いてライブラリーをスクリーニングすること(IssemannおよびGreen,1990;ChangおよびKokontis,1988)を含む、いくつかのストラテジーを適用して、新規なメンバーについて検索した。
【0004】
いくつかの系統の証拠は、NURRサブファミリーのメンバーが、HPA軸の全てのレベルで重要な座標調節役割を果たすことを示す(Wilsonら,1993;MurphyおよびConneely 1997;Philipsら,1997)。NURRサブファミリーは、種々の発生プロセスおよび生理学的プロセスを制御する、構造的に関連した転写因子のスーパーファミリーに属する。このファミリーは、ステロイドホルモン、ビタミンおよび甲状腺ホルモンについてのレセプター、ならびに同族リガンド(存在する場合)が未だ同定されていないオーファンレセプターを含む(Evans,1998;O’MalleyおよびConneely,1992)。NURR1(Nur関連因子1;RNR−1およびNOTとも呼ばれる)は、中枢神経系で主に発現される、このスーパーファミリーのオーファンメンバーである(Lawら,1992;Scearceら,1993;Magesら,1994)。このタンパク質は、オーファンレセプターNUR77(NGFI−β/N10/NAKとも呼ばれる)(Hazelら,1988;Milbrant,1998;Ryseckら,1989;Nakaiら,1990)およびNOR−1(MINOR/−TECとも呼ばれる)(Ohkuraら,1994;Maruyamaら,1995;HedvatおよびIrving,1995)に対する密接な構造的関連を示す。これらの3つのタンパク質は、同じシス作用性コンセンサス配列(NBRE)に結合して標的遺伝子発現を調節する、NURRサブファミリーを構成する(Ohkuraら,1994,Wilsonら,1991;Murphyら,1995)。大部分の核レセプターとは異なり、NURRサブファミリーは、種々の細胞外刺激(増殖因子(Hazelら,1998;Milbrandt,1998)、神経伝達物質(WatsonおよびMilbrandt,1989)およびポリペプチドホルモン(Wilsonら,1993;MurphyおよびConneely,1997;DavisおよびLau,1994)を含む)に応じて発現が示差的に誘導され得る、前初期遺伝子の産物である。NURR1およびNUR77は、それらの近位プロモーター領域において特異的シス作用性配列と相互作用することによって、CRH遺伝子およびPOMC遺伝子の発現を調節し得る。NURR1およびNUR77は、初代下垂体細胞においてCRHによって迅速に誘導されて、POMCの合成の増加をもたらす(MurphyおよびConneely,1997)。POMC遺伝子のグルココルチコイド抑制は、NURR1およびNUR77によるPOMC遺伝子の活性化のグルココルチコイドレセプター依存性阻害によって媒介される(Evans,1998;Philipsら,1997)。NOR−1は、同一のDNA結合ドメインを保有し、そしてオーファンレセプターをNURRサブファミリーに構造的に分類する同じシス作用性コンセンサス配列を結合し得る。それゆえ、NURRサブファミリーの転写因子の異なるメンバーの密接な構造的関係、同一のシス作用性コンセンサス配列およびNURRサブファミリーの転写因子の異なるメンバーが互いに機能的に補完する能力は、NURRサブファミリーのメンバーが機能の重複性を有するという強い指標である。
【0005】
コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)(視床下部下垂体軸(HPA)の主な調節因子)は、主にグルココルチコイドの免疫抑制作用を介して顕著な抗炎症効果を発揮する(Valeら 1989;CatoおよびWade,1996)。活性化された免疫系の産物(IL−1β、IL−6およびTNFαを含む)は、直接的および間接的に作用して、視床下部CRHの合成および分泌を刺激する(TurnballおよびRivier,1999)。CRHは、サイクリックAMP(cAMP)経路(これは、プロオピオメラノコルチコトロピン(pro−opiomelanocorticotropin;POMC)の合成を強く刺激する)のレセプター媒介活性化を介してその機能を発揮する(Aguileraら,1982)。POMCは、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)(これは、下垂体から放出され、そして副腎グルココルチコイドの合成を調節する)を含むいくつかの神経ペプチドの前駆体分子である。ホメオスタシスを維持するために、グルココルチコイドは、CRHおよびPOMCの合成および分泌を視床下部および下垂体のレベルで阻害する。
【0006】
一連のデータが増えつつあるので、現在、免疫応答の調節における視床下部外CRHまたは免疫CRHの直接的関与を支持する。局在化した炎症応答の媒介における免疫CRHについての役割は、CRHが産生されかつ局所的に活性である、急性炎症のインビボラットモデルにおいて支持されている(Karalisら,1991)。このラットモデルでは、末梢CRHは、その間接的免疫抑制効果とは対照的に、局所炎症誘発性(pro−inflammatory)オートクライン/パラクリン役割と関連する。抗CRH抗体を用いたこの局在化CRH合成の免疫中和(immunoneutralization)は、炎症応答の特異的抑制を引き起こす(Karalisら,1991)。最も重要なことに、CRHを欠くマウスの構築は、末梢CRHがインビボでの炎症応答の誘導のために必要とされることを確証する(Karalisら,1999)。しかし、CRHが、全身的免疫系活性化の間の炎症反応の重要なメディエーターであるという証拠にもかかわらず、末梢CRHの作用調節および作用形態は確立されていない。増大した免疫反応性CRHがRA滑膜組織(Croffordら,1993;Nishiokaら,1996)および炎症性関節疾患のいくつかの動物モデル(Croffordら,1992;Websterら,1998)において見出されるという知見は、炎症性関節炎の病因における末梢CRHの潜在的関与を強調する。視床下部CRHの機能を媒介する際のNURR転写因子の重要性(Murphyら,1993)を考慮すると、CRHならびに炎症誘発性メディエーターおよび抗炎症性メディエーターに応じた、滑膜外植片におけるNURR1、NUR77およびNOR1の遺伝子発現の調節は、本明細書中で実証される。
【0007】
オーファンレセプターの研究は、本発明者らのスーパーファミリーの見解を広げた。この研究は、新たなリガンドの発見を容易にし、例えば、9−シス−レチノイン酸(9−cis−retionic acid)は、RXR(レチノイド−xレセプター)についてのリガンドとして同定された(Mangelsdorfら,1990;Levinら,1992;Heymanら,1992)。オーファンレセプターNUR77およびCOUP−TFについての膜レセプター活性化リン酸化経路を含む、代替のリガンド依存性活性化経路が見出されている(Hazelら,1991;Powerら,1991)。個々のホルモン機能に対して多様性を付加するレセプターアイソフォームが、このスーパーファミリーにおいて非常に普通に見出されている(Mangelsdorfら,1990;Levinら,1992;Heymanら,1992;Hazelら,1991;Powerら,1991;Chenら,1993)。オーファンレセプターはまた、不飽和脂肪酸に応じたペルオキシソームの脂肪酸β酸化系の重要な酵素であるアシル−CoAオキシダーゼ遺伝子を調節することによって、代謝機能(例えば、PPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(peroxisome proliferator−activated receptor)サブファミリー)に対して寄与し得る(Dreyerら,1992)。それゆえ、オーファンレセプターのクローニングおよび特徴付けは、新たなシグナル伝達経路およびトランス活性化機構の発見において重要な役割を果たしてきた。
【0008】
IL−1βおよびTNFαは、NF−κBを介して転写カップリングを媒介し、一方、PGE2は、CREB依存性経路の活性化によってシグナルを伝達することが充分に立証されている。さらに、CRHは、CREB依存性経路の活性化によってシグナル伝達することが充分に立証されている。しかし、CREB依存性経路およびNF−κB経路の媒介においてCRHレセプターが果たす役割は、規定されていない。CRHレセプターの2つの異なるサブタイプCRH−R1およびCRH−R2が単離され、そして特徴付けられており(Aguileraら,1987;Perrinら,1995)、そして両方とも、薬理学的に異なっており、脳および末梢組織におけるそれらの発現パターンが独特である。健常マウスでは、CRH−R1は、脳幹、小脳、大脳皮質、ならびに内側中隔(medial septum)および下垂体を含む、脳の領域に主に制限される。この局在化のため、CRH−R1が欠損したマウスが構築され、CRH−R1が出生後の発達において果たす特異的役割を研究するために用いられた(2000年11月14日発行の米国特許6,147,275号)。CRH−R1の5’非翻訳領域における開始コドンの存在が、mRNA翻訳の阻害と関連しており、そして上流の開始コドンが、CRH−R1レセプターの翻訳を調節する際に役割を果たすことを示唆する(Xuら,2001)。CRH−R2は、心臓、骨格筋、胃腸管および精巣上体を含め、いくつかの末梢組織において発現され、そして脳における発現は、外側中隔領域および視床下部領域に集中している。CRH−R1の部分的アゴニストは、ストレス関連障害の処置について記載されている(2000年10月3日に発行された米国特許第6,127,399号)。
【0009】
炎症性免疫疾患に関与する詳細な生化学的プロセスを解明する情報は増加し続けており、そしてこのような疾患の病理的結果は充分に証明されている。リウマチは、複数の関節における腫脹および疼痛、ならびに他の身体器官における倦怠感、虚弱、体重減少、微熱および食欲不振を引き起こす、慢性の全身性炎症性自己免疫疾患である。リウマチの分類についての診断基準としては、朝のこわばり、3以上の関節領域の関節炎、手の関節の関節炎、全身性関節炎、X線写真的変化、血清リウマチ因子およびリウマチ小節が挙げられる。当該分野では、患者がこれらの7つの診断基準のうちの少なくとも4つ満たした場合、この患者はリウマチを有すると考えられる。コルチコステロイドは、非常に重要な抗炎症剤であり、炎症のいくつかのメディエーターおよび関節軟骨分解酵素の形成を抑制し、そのようにして、外傷性関節疾患に関連した炎症および疼痛を効果的に減少させる。慢性関節リウマチ(RA)は、一種の関節炎であり、そして障害の通常の原因である。12年間の疾患の後では、RAを有する80%より多くの患者は、部分的に不能になり、そして16%は完全に不能になり、そして平均余命は、男性で平均7年および女性で平均3年短縮される(Matteson,2000)。RAに関連した、平均余命の減少の最も一般的な原因は、脈管炎、血管の炎症;薬物の副作用(例えば、胃潰瘍からの出血);および必要とされる薬物による免疫系抑制の結果である、感染の危険性の増大である。治療目標は、疼痛を軽減し、炎症を制御し、そして関節破壊を予防することであり、そして疾患改変抗リウマチ薬物(DMARD)(例えば、金、メトトレキサートまたは腫瘍壊死因子(TNF)アンタゴニスト)を含む。近年、Food and Drug AdministrationおよびEuropean Medicine Evaluation Agencyは、可溶性TNFα II型レセプター−IgG1融合タンパク質であるエタナールセプト(etanercept)およびTNFαに対するキメラモノクローナル抗体であるインフリキシマブ(infliximab)承認した。これらの薬物の開発は、炎症誘発性メディエーターが慢性関節リウマチにおいて果たす役割の理解の増大からもたらされた。しかし、これらの複雑な細胞性相互作用の詳細な機構は、未知のままである。さらに、遺伝子治療による炎症誘発性メディエーターのアンタゴニストの送達は、慢性関節リウマチについての潜在的な治療ツールを提示する(Choyら,2001)。
【0010】
滑膜の炎症および過形成は、慢性関節リウマチの顕著な特徴である。正常な滑膜は、関節包の内側を覆う繊細な組織である;しかし、RAでは、滑膜は、パンヌスと呼ばれる攻撃的な腫瘍様構造体へとトランスフォームされる。滑膜内の滑膜細胞(線維芽細胞)およびマクロファージは、サイトカイン(すなわち、IL1β、TNFαおよびIL6)のオートクライン作用/パラクリン作用を介して自己永続化炎症性応答を組み合わせる。罹患した軟骨近傍の増殖中の滑膜細胞は、マトリックス分解分子(マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を含む)を産生し、そして増殖因子および接着分子を発現する。関節の侵食を最終的にもたらすのは、持続性の侵襲性かつ破壊性の滑膜組織の増殖である。RAに関連している炎症性サイトカインおよびMMPの多くは、誘導性転写因子によって調節される。転写因子(例えば、NFkB、AP1およびCREB)は、炎症性応答の中枢的な調節因子である。いくつかの独立研究は、RA滑膜における細胞増殖、サイトカイン産生およびMMP産生を調節することが公知の遺伝子発現の調節におけるこれらの転写因子の異常発現に関連した。
【0011】
活性な炎症性パンヌスの形成は、関節の破壊をもたらすびらん性疾患の中心となると考えられる。新たな血管の形成である血管新生は、慢性関節リウマチにおける最も早期の組織病理学的知見の一つであり、そしてパンヌスの発達のために必要とされるようである。新たな結果は、サイトカインおよびプロテアーゼ活性の主な供給源として、関節炎疾患の開始および維持において重要な要因であると考えられる。
【0012】
(発明の要旨)
本発明の1つの実施形態では、配列番号1、配列番号47および配列番号76からなる群より選択されるNURRサブファミリーの核酸配列の発現を減少させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、NURRサブファミリーの核酸配列の発現を減少させる工程は、配列番号1の核酸配列の合成を阻害することを含む。別の特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。さらなる特定の実施形態では、この炎症性関節疾患は関節炎である。さらなる特定の実施形態では、この関節炎は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される。
【0013】
本発明の1つの実施形態では、配列番号33、配列番号64および配列番号91からなる群より選択されるNURRサブファミリーのアミノ酸配列を含むポリペプチドのレベルを低下させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、ポリペプチドを低下させる工程は、配列番号33を含む配列のアミノ酸合成を阻害することを含む。別の特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。さらなる特定の実施形態では、この炎症性関節疾患は関節炎である。さらなる特定の実施形態では、この関節炎は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される。
【0014】
本発明の別の実施形態では、配列番号33、配列番号64および配列番号91からなる群より選択される配列の転写活性を阻害する工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、この配列は配列番号33である。別の特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。さらなる特定の実施形態では、この炎症性関節疾患は関節炎である。さらなる特定の実施形態では、この関節炎は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される。
【0015】
本発明のさらなる実施形態では、ポリペプチドの転写活性を阻害するためのアンタゴニストが存在し、ここで、このポリペプチドは、NURRサブファミリーのアミノ酸配列(例えば、配列番号33、配列番号64および配列番号91からなる群より選択されるアミノ酸配列)を含み、ここで、このポリペプチドは核レセプターである。特定の実施形態では、このポリペプチドはステロイドレセプターである。特定の実施形態では、このポリペプチドはホルモンレセプターである。特定の実施形態では、このポリペプチドはビタミンレセプターである。特定の実施形態では、このアンタゴニストは関節炎を阻害する。別の特定の実施形態では、このアンタゴニストは関節の炎症を阻害する。
【0016】
本発明のさらなる実施形態では、ポリペプチドの転写活性を阻害するためのアンタゴニストが存在し、ここで、このポリペプチドは、配列番号33のNURR1アミノ酸配列を含み、ここで、このポリペプチドは核レセプターである。特定の実施形態では、このアンタゴニストは関節炎を阻害する。別の特定の実施形態では、このアンタゴニストは関節の炎症を阻害する。
【0017】
別の実施形態では、NURRサブファミリーポリペプチドとリガンドとの相互作用を妨害する化合物についてスクリーニングする方法が存在し、この方法は、細胞に試験因子を導入する工程であって、ここで、この細胞は、マーカー配列を含み、このマーカー配列の発現は、このNURRサブファミリーのメンバーによって調節される、工程;およびこのマーカー配列の発現レベルを測定する工程であって、ここで、このマーカー配列のこの発現が、この導入後に減少した場合、この試験因子は、このNURRサブファミリーポリペプチドとリガンドとの相互作用を妨害する化合物である、工程を包含する。特定の実施形態は、組成物としての、NURRサブファミリーポリペプチドとリガンドとの相互作用を妨害する化合物についてのスクリーニングによって同定された化合物である。さらなる特定の実施形態では、このNURRサブファミリーポリペプチドは、配列番号33、配列番号64および配列番号91からなる群より選択される配列である。別の特定の実施形態では、このNURRサブファミリーポリペプチドは、配列番号33の配列である。
【0018】
本発明の別の実施形態では、炎症性免疫疾患の処置のための化合物を同定する方法が存在し、この方法は、細胞に試験因子を導入する工程であって、ここで、この細胞は、マーカー配列を含み、このマーカー配列の発現は、このNURRサブファミリーのメンバーによって調節される、工程;およびこのマーカー配列の発現レベルを測定する工程であって、ここで、このマーカー配列の発現が、この試験因子の導入後に減少した場合、この試験因子は、この炎症性免疫疾患の処置のための化合物である、工程を包含する。特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、関節内に存在する。
【0019】
本発明の別の実施形態では、薬理学的に受容可能な組成物が存在し、この組成物は、炎症性免疫疾患の処置のために同定された化合物および薬学的キャリアを含む。特定の実施形態では、炎症性疾患の処置のための化合物は、薬学的キャリア中に分散され、そしてキャリア中、この化合物の治療有効量で、炎症性免疫疾患を有する個体へと投与される。
【0020】
本発明の別の実施形態では、ポリペプチドの転写活性のアゴニストが存在し、ここで、このポリペプチドは、配列番号33、配列番号64および配列番号91からなる群より選択されるNURRサブファミリーのアミノ酸配列を含み、ここで、このポリペプチドは核レセプターである。特定の実施形態では、このアゴニストはステロイドレセプターである。特定の実施形態では、このアゴニストはホルモンレセプターである。特定の実施形態では、このアゴニストはビタミンレセプターである。
【0021】
本発明のさらなる実施形態では、ポリペプチドの転写活性のアゴニストが存在し、ここで、このポリペプチドは、配列番号33のNURR1アミノ酸配列を含み、ここで、このポリペプチドは核レセプターである。
【0022】
本発明の特定の実施形態では、CRHレセプターの核酸配列の発現を減少させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。さらなる特定の実施形態では、CRHレセプターの発現を減少させる工程は、配列番号104の核酸配列の合成を阻害することを含む。本発明の別の特定の実施形態では、CRHレセプターのアミノ酸配列のレベルを低下させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。さらなる特定の実施形態では、CRHレセプターのアミノ酸レベルを低下させる工程は、アミノ酸合成を阻害すること、CRHレセプターのアミノ酸分解を増加させることを含むか、または治療有効レベルの、配列番号124を含む配列のCRHレセプターポリペプチドに対する抗体を投与することを含む。特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、関節炎、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。別の特定の実施形態では、この炎症性関節疾患は関節炎である。さらなる特定の実施形態では、この関節炎は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される。
【0023】
他の目的、特徴および利点、ならびにさらなる目的、特徴および利点は、以下の明細書を読むことによって、および明細書の一部を形成する添付の図面を参照することによって、明らかであり、そして最終的により容易に理解されるか、または本発明の現在好ましい実施形態の任意の例は、開示の目的のために与えられる。
【0024】
(発明の説明)
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかである。しかし、詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示しているとはいえ、例示のためにのみ与えられており、なぜなら、本発明の趣旨および範囲内の種々の変更および改変は、この詳細な説明から当業者には明らかであることが理解されるべきである。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「a」または「an」は、1以上を意味し得る。特許請求の範囲で使用される場合、用語「を含む」に関連して使用される場合、用語「a」または「an」は、1または1より多くを意味し得る。本明細書中で使用される場合、「別の」は、少なくとも二番目以上を意味する。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「アゴニスト」は、別の生物学的実体の活性または機能を促進する、促す、または増強する因子と定義される。特定の実施形態では、これは、NURRサブファミリーポリペプチドの転写活性のアゴニストである。別の特定の実施形態では、これは、NURRアミノ酸配列をコードするポリペプチドのアゴニストであり、ここで、このポリペプチドは核レセプターである。このアゴニストは、アミノ酸配列、核酸配列、脂質、糖、糖質またはそれらの組合せであり得る。特定の実施形態では、このアゴニストは、炎症に関連する。例としては、IL1β、TNFα、IL−6およびPGE2が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書中で使用される同じ因子についての他の用語は、メディエーターおよびサイトカインである。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「アンタゴニスト」は、別の生物学的実体の活性、機能または効果を妨害する、中和するまたは妨害する因子と規定される。特定の実施形態では、このアンタゴニストは、NURRサブファミリーポリペプチドの転写活性を阻害する。別の特定の実施形態では、これは、NURR1アミノ酸配列をコードするポリペプチドのアンタゴニストであり、ここで、このポリペプチドは核レセプターである。このアンタゴニストは、アミノ酸配列、核酸配列、脂質、糖、合成化学分子、ハプテン、糖質またはそれらの組合せであり得る。この因子は、NURR1活性を部分的または完全に妨害し得る。特定の実施形態では、このアンタゴニストリガンドはNURR1転写活性を阻害する。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「抗サイトカイン」は、サイトカインの合成、活性または機能を妨害する生物学的因子と定義される。この生物学的因子は、アミノ酸、核酸、脂質、糖、糖質またはそれらの組合せであり得る。サイトカインの妨害は、直接的相互作用または間接的相互作用を含み得る。抗サイトカインは、内因性または合成によって誘導され得る。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「関節炎」は、関節の炎症と定義される。特定の実施形態では、関節は、肩、膝、肘、中手指節関節、指(finer)、膝距腿関節部、頸部または股関節部の関節である。別の特定の実施形態では、複数の関節が罹患している。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「サイトカイン」は、標的細胞に対してリンホカインと同じ効果(炎症を引き起こすことを含む)を引き起こす能力を有する、リンパ系細胞または非リンパ系細胞によって産生される可溶性の物質と定義される。リンホカインは、抗原侵襲に応じてリンパ芽球によって放出される、生物学的に活性な可溶性因子と本明細書中で定義される。サイトカインの例としては、IL1β、TNFα、IL−6およびPGE2が挙げられるがこれらに限定されない。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞」、「細胞株」および「細胞培養」は、交換可能に使用され得る。これらの用語の全てはまた、任意の全てのその後の世代である、それらの子孫を含む。すべての子孫が、意図的な変異または偶然の変異に起因して、同一というわけではないかもしれないことが理解される。異種核酸配列を発現する状況では、「宿主細胞」は、原核生物細胞または真核生物細胞をいい、宿主細胞は、ベクターを複製し得るおよび/またはベクターによってコードされる異種遺伝子を発現し得る、任意の形質転換可能な生物体を含む。宿主細胞は、ベクターについてのレシピエントとして使用され得、そして使用されている。宿主細胞は、「トランスフェクト」または「形質転換」され得、トランスフェクトまたは形質転換とは、外因性核酸が宿主細胞へと移入または導入されるプロセスをいう。形質転換細胞としては、初代の対象細胞およびその子孫が挙げられる。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「炎症性免疫疾患」は、生物体の免疫系に罹り、身体の特定領域の炎症を引き起こす疾患と定義される。特定の実施形態では、炎症の領域としては、関節、結腸および甲状腺の滑液が挙げられる。炎症は、この疾患の原発症状であり得るか、またはこの疾患に間接的に関連し得る。特定の実施形態では、この炎症は、低いレベルのグレードの炎症(例えば、変形性関節症を含め、変性形態の関節炎に伴う炎症)であり得る。炎症性免疫疾患の例としては、関節炎(例えば、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎)、変形性関節症、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎が挙げられる。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「妨害する」は、作用を遅延させるか、緩慢にするかまたは妨げて、望ましくない結果を予防することとして定義される。妨害は、完全であってもよく、または部分的であってもよい。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「阻害する」は、作用をブロックするか、遅延させるか、または妨げて、所望でない結果を予防することと定義される。阻害は、完全であってもよく、または部分的であってもよい。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「リガンド」は、別の分子に結合する分子と定義される。特定の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーに結合するリガンドが好ましい。当業者は、リガンドが、リガンド全体、NURRサブファミリーのメンバーに結合し得るままである、その任意の部分および任意の変異体を含むことを認識する。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「NURRサブファミリー」は、構成的に活性な転写因子として機能し、かつNURR1(Nur関連因子I)に関連する(ここで、この関係は構造的および機能的である)、核に局在する転写因子のグループと定義される。特定の実施形態では、このサブファミリーは、異なるメンバーが互いに機能的に補完する能力によって特徴付けられる。別の特定の実施形態では、このサブファミリーは、DNA結合ドメインの同一の配列を有し、ここで、この配列同一性は、約40%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約45%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約50%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約55%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約60%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約65%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約70%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約75%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約80%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約85%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約90%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約95%である。さらに別の特定の実施形態では、この配列同一性は約99%である。このファミリーは、NURR1、NOR1(ニューロン由来オーファンレセプター)およびNUR77を含む。このサブファミリーの考察については、本明細書中に参考として援用される、Maruyamaら,1995および各メンバーの別名に関するその中の表1を参照のこと。当業者は、このグループが核レセプタースーパーファミリーのNGFI−Bサブファミリーともいわれ得ることを認識する。特徴としては、2つの高度に保存されたジンクフィンガーモチーフ(Berg,1989;KlugおよびSchwabe,1995)を含む中心のDNA結合ドメイン、カルボキシル末端における8〜9個の疎水性アミノ酸のヘプタッド反復を含むリガンド結合ドメインおよび可変アミノ末端領域が挙げられ得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「オーファンレセプター」は、既知のレセプターに構造的に関連している分子であって、ここで、リガンドの正体および生理学的機能が未知である分子をいう。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、1より多くのアミノ酸サブユニットを含む、分子と定義される。ポリペプチドは、タンパク質全体であってもよく、またはポリペプチドは、タンパク質のフラグメント(例えば、ペプチドまたはオリゴペプチド)であってもよい。ポリペプチドはまた、アミノ酸サブユニットに対する変更(例えば、メチル化またはアセチル化)を含み得る。特定の実施形態では、ポリペプチドは、核局在化配列を有する。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「レセプター」は、NURRサブファミリーのアミノ酸配列と会合するかまたはNURRサブファミリーのアミノ酸配列である、生物学的実体と定義される。レセプターは、アミノ酸配列、核酸配列、脂質、糖、糖質またはそれらの組合せであり得る。特定の実施形態では、レセプターはアミノ酸配列である。レセプターは、膜、核または細胞質に位置し得る。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「治療的に有効」は、疾患に関連した何らかの症状を改善するために必要な化合物量と定義される。例えば、炎症性免疫疾患(例えば、関節炎)の処置において、この疾患の任意の症状を減少、妨害、遅延または停止させる化合物は、治療的に有効である。治療有効量の化合物は、疾患を治癒させるために必要とされるわけではなく、疾患についての処置を提供する。投与される量が生理学的に重要である場合、化合物は、治療有効量で投与される。化合物の存在が、レシピエント生物体の生理機能における技術的変化をもたらす場合、その化合物は、生理学的に有意である。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「転写される」は、デオキシリボ核酸テンプレートからのリボ核酸の作製をいう。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「処置」は、医学的手段または外科的手段を介した患者の管理と定義される。処置は、医学的状態または医学的疾患の少なくとも1つの症状を改善または緩和し、そして治癒を提供するためには必要とされない。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「血管疾患」は、血管(動脈、静脈および毛細管)の直径が制限される、任意の疾患と定義される。血管疾患は、血管透過性または血管拡張における変化(例えば、血管新生)を含み得る。制限された血管は、疾患または医学的状態(例えば、心臓病)の主症状であり得る。
【0044】
本発明の1つの実施形態では、配列番号2のNURRサブファミリーのアミノ酸配列を含むポリペプチドのレベルを低下させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、レベルを低下させる工程は、このポリペプチドに対する、治療的に有効なレベルのアンタゴニストを投与することを含む。別の特定の実施形態では、このアンタゴニストは、アミノ酸、核酸、脂質、有機合成分子、ハプテン、糖、糖質またはそれらの組合せからなる群より選択される。さらなる特定の実施形態では、このアンタゴニストはアミノ酸である。
【0045】
本発明の別の実施形態では、ポリペプチドのレベルを低下させる工程は、NURRサブファミリーのアミノ酸合成を阻害すること、NURRサブファミリーのアミノ酸分解を増大させることを含むか、または治療的に有効なレベルの、NURRサブファミリーポリペプチドに対する抗体を投与することを含む。特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、関節炎、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。別の特定の実施形態では、この炎症性関節疾患は関節炎である。さらなる特定の実施形態では、この関節炎は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される。別の実施形態では、抗サイトカインを投与する工程を包含する、炎症性免疫疾患を処置するための方法が存在する。特定の実施形態では、この抗サイトカインは、IL1β、TNFα、IL−6またはPGE2を妨害する。特定の実施形態では、この抗サイトカインは、グルココルチコイドである。さらなる実施形態では、NURRサブファミリーのポリペプチドのレベルを低下させる工程は、コルチコトロピン放出ホルモン、プロオピオメラノコルチコトロピン、コラゲナーゼ(MMP−1)、血清アミロイドAおよびPGE2のアミノ酸またはリボ核酸のレベルを低下させることを含む。
【0046】
本発明のさらなる実施形態では、NURRサブファミリー(例えば、配列番号1のNURR1核酸配列)から転写されるNURRサブファミリーのリボ核酸配列のレベルを低下させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、この低下させる工程は、NURRサブファミリーの核酸合成を阻害すること、NURRサブファミリーの核酸配列の治療的に有効なレベルのアンチセンス配列を投与すること、または治療的に有効なレベルの抗サイトカインを投与することを含む。別の特定の実施形態では、この抗サイトカインは、IL1β、TNFα、IL−6およびPGE2からなる群より選択されるサイトカインを妨害する。特定の実施形態では、この抗サイトカインはグルココルチコイドである。さらなる実施形態では、NURRサブファミリーの核酸配列のレベルを低下させる工程は、コルチコトロピン放出ホルモン、プロオピオメラノコルチコトロピン、コラゲナーゼ(MMP−1)および血清アミロイドAのアミノ酸またはリボ核酸のレベルを低下させることを含む。特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、関節炎、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。別の特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は関節炎である。さらなる特定の実施形態では、この関節炎は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される。
【0047】
本発明の別の実施形態では、NURRサブファミリー(例えば、配列番号33のアミノ酸配列)を含むポリペプチドの、核酸への結合を妨害する工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、この妨害する工程は、NURRサブファミリーのポリペプチドに対するアンタゴニストの治療的に有効なレベルを投与すること、NURRサブファミリーのポリペプチドに対する抗体の治療的に有効なレベルを投与すること、またはNURRサブファミリーのメンバーを結合する、レセプターもしくは核酸のレベルを治療有効量まで増大させることを含む。別の特定の実施形態では、このアンタゴニストは、アミノ酸、核酸、脂質、糖、糖質またはそれらの組合せからなる群より選択される。さらなる特定の実施形態では、このアンタゴニストはアミノ酸である。特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、関節炎、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。別の特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は関節炎である。さらなる特定の実施形態では、この関節炎は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される。
【0048】
本発明のさらなる実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーの治療有効量の核酸配列を生物体に投与する工程を包含する、血管疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、投与する工程は、ベクターを含む。さらなる特定の実施形態では、このベクターは、核酸、アミノ酸、脂質、リポソーム、糖、糖質またはそれらの組合せである。別の特定の実施形態では、この核酸ベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスまたはレトロウイルスである。
【0049】
特定の実施形態では、配列番号1のNURR1核酸配列から転写されるリボ核酸のレベルを低下させる工程を包含し、ここで、このNURR1核酸配列が血管拡張剤をコードする、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、NURR1のリボ核酸のレベルを低下させる工程は、NURR1核酸配列のアンチセンス配列の治療的に有効なレベルを投与することを含む。さらなる特定の実施形態では、この核酸配列はベクターを含む。別の特定の実施形態では、このベクターは、核酸、アミノ酸、脂質、リポソーム、糖、糖質およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。さらなる特定の実施形態では、この核酸ベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレトロウイルスである。
【0050】
本発明の別の実施形態では、NURRサブファミリーのアミノ酸配列を含むポリペプチドのレベルを低下させる工程を包含し、ここで、このNURRサブファミリーポリペプチドが血管拡張剤として作用する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。特定の実施形態では、配列番号33のNURRサブファミリーのアミノ酸配列を含むポリペプチドの治療的に有効なレベルを、生物体に投与する工程を包含する、血管疾患について生物体を処置する方法が存在する。さらなる実施形態では、アミノ酸配列を投与する工程は、タンパク質形質導入ドメインを含む。さらなる特定の実施形態では、このタンパク質形質導入ドメインは、HIV TATタンパク質形質導入ドメインである。
【0051】
本発明の別の実施形態では、NURRサブファミリーの核酸配列(例えば、配列番号1を含む配列)から転写されるリボ核酸のレベルを低下させる工程を包含する、生物体における炎症性免疫疾患を予防する方法が存在する。
【0052】
本発明のさらなる実施形態では、NURRサブファミリーのアミノ酸配列(例えば、配列番号33を含む配列)を含むポリペプチドのレベルを低下させる工程を包含する、生物体における炎症性免疫疾患を予防する方法が存在する。
【0053】
本発明のさらなる実施形態では、ポリペプチドのアンタゴニストが存在し、ここで、このポリペプチドは、NURRサブファミリーのアミノ酸配列(例えば、配列番号33の配列)を含み、ここで、このポリペプチドは、核レセプターである。特定の実施形態では、このアンタゴニストはアミノ酸である。他の特定の実施形態では、このポリペプチドは、ステロイドレセプター、ホルモンレセプターまたはビタミンレセプターである。
【0054】
本発明のさらなる実施形態では、ポリペプチドのアゴニストが存在し、ここで、このポリペプチドはNURRサブファミリーのアミノ酸配列(例えば、配列番号33を含むNURR1配列)を含み、ここで、このポリペプチドは核レセプターである。特定の実施形態では、このアゴニストはアミノ酸である。他の特定の実施形態では、このポリペプチドは、ステロイドレセプター、ホルモンレセプターまたはビタミンレセプターである。
【0055】
本発明の1つの実施形態では、生物体における炎症性免疫疾患の処置のための化合物が存在し、ここで、この化合物は、NURRサブファミリーのアミノ酸配列(例えば、配列番号33を含む配列)を含むポリペプチドのアンタゴニストであり、ここで、このポリペプチドは核レセプターである。特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、関節炎、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。別の特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は関節炎である。
【0056】
本発明のさらなる実施形態では、生物体における炎症性免疫疾患の処置のための化合物が存在し、ここで、この化合物は、NURRサブファミリーのアミノ酸配列(例えば、配列番号33を含むNURRサブファミリーのアミノ酸配列)を含むポリペプチドのアゴニストであり、そしてここで、このポリペプチドは核レセプターである。特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、関節炎、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。別の特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は関節炎である。
【0057】
本発明の特定の実施形態では、CRHレセプターの核酸配列の発現を減少させる工程を包含する、炎症性免疫疾患についての生物体を処置する方法が存在する。さらなる特定の実施形態では、CRHレセプターの発現を低下させる工程は、配列番号104の核酸配列の合成を阻害することを含む。本発明の別の特定の実施形態では、CRHレセプターのアミノ酸配列のレベルを減少させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。さらなる特定の実施形態では、CRHレセプターのアミノ酸のレベルを低下させる工程は、アミノ酸合成を阻害すること、CRHレセプターのアミノ酸分解を増大させることを含むか、または配列番号124を含む配列のCRHレセプターのポリペプチドに対する抗体の治療的に有効なレベルを投与することを含む。特定の実施形態では、この炎症性免疫疾患は、慢性炎症性関節疾患、関節炎、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される。別の特定の実施形態では、この炎症性関節疾患は関節炎である。さらなる特定の実施形態では、この関節炎は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される。
【0058】
本発明の目的は、核レセプタースーパーファミリーのメンバー(上記の通りのNURR1、NOR1およびNUR77を含む)は構造的および遺伝的に顕著な関連した冗長性があるので、NURRサブファミリーの全てのメンバーに対する、処置方法、予防方法、アンタゴニスト、アゴニストおよび化合物に関する。当業者は、本発明の範囲内でNURR1配列が利用されることを認識する。核酸NURR1配列、続いてGenbank登録番号の例としては、以下が挙げられる:配列番号1(AB017586)、配列番号2(NT005151)、配列番号3(AJ278700)、配列番号4(NM013613)、配列番号5(NM006186)、配列番号6(BB539587)、配列番号7(BB536225)、配列番号8(BB432168)、配列番号9(BB424269)、配列番号10(BB345745)、配列番号11(BB322941)、配列番号12(BB023391)、配列番号13(BB023355)、配列番号14(AB019433)、配列番号15(XM002441)、配列番号16(AV3566519)、配列番号17(AV356512)、配列番号18(AV382234)、配列番号19(AV368035)、配列番号20(AV352127)、配列番号21(AV341553)、配列番号22(AV245724)、配列番号23(AV221665)、配列番号24(AB014889)、配列番号25(U72345)、配列番号26(U86783)、配列番号27(U67738)、配列番号28(U93471)、配列番号29(U93429)、配列番号30(S53744)、配列番号31(R35928)および配列番号32(R25908)。アミノ酸NURR1配列の例としては、以下が挙げられる:配列番号33(548390)、配列番号34(XP002441)、配列番号35(CAC27783)、配列番号36(A46225)、配列番号37(NP038641)、配列番号38(NP006177)、配列番号39(BAA77328)、配列番号40(BAA75666)、配列番号41(Q07917)、配列番号42(P43354)、配列番号43(Q04913)、配列番号44(AAB68748)、配列番号45(AAB68706)および配列番号46(AAB25138)。当業者は、本発明の範囲内でNOR−1配列が利用されることを認識する。核酸NOR−1配列の例としては、以下が挙げられる:配列番号47(1651190)、配列番号48(D38530)、配列番号49(AF050223)、配列番号50(X75871)、配列番号51(L2781)、配列番号52(BG235965)、配列番号53(BE656711)、配列番号54(BE188095)、配列番号55(BE187931)、配列番号56(AJ011768)、配列番号57(E14965)、配列番号58(AJ011767)、配列番号59(D85244)、配列番号60(D85243)、配列番号61(D85242)、配列番号62(D85241)および配列番号63(NM015743)。アミノ酸NOR1配列の例としては、配列番号64(7441771)、配列番号65(Q92570)、配列番号66(BAA11419)、配列番号67(JC2493)、配列番号68(NP056558)、配列番号69(P51179)、配列番号70(CAA09764)、配列番号71(CAA09763)、配列番号72(BAA31221)、配列番号73(BAA28608)、配列番号74(BAA07535)および配列番号75(AAA32685)が挙げられる。当業者は、本発明の範囲内でNUR77配列が利用されることを理解する。核酸NUR77配列の例としては、以下が挙げられる:配列番号76(1339917)、配列番号76(12662548)、配列番号77(BF937382)、配列番号78(NM006981)、配列番号79(AR085655)、配列番号80(AR085654)、配列番号81(AR085653)、配列番号82(AR085654)、配列番号83(AR085652)、配列番号84(BE198460)、配列番号85(BE047656)、配列番号86(BE047651)、配列番号87(AW988827)、配列番号88(AA461422)、配列番号89(D49728)および配列番号90(S77154)。アミノ酸NUR77配列の例としては、以下が挙げられる:配列番号76(127819)、配列番号91(128911)、配列番号92(P22829)、配列番号93(NP034574)、配列番号94(AAB33999)、配列番号95(NP008912)、配列番号96(AAA42058)および配列番号97(A37251)。当業者は、National Center for Biotechnology Genbankデータベースまたは市販のデータベース(例えば、Celeraによる遺伝子データベース)から配列をどのようにして検索するかがわかる。
【0059】
本発明では、この方法は、炎症性免疫疾患(例えば、関節炎)を処置するため、またはこのような疾患を予防するためのいずれかに使用される。処置における使用の例は、その発症後の炎症性免疫疾患の改善のための使用、またはその症状を軽減するのを助ける際の使用である。この炎症性免疫疾患は、少なくとも1つの症状が緩和された場合、改善されたと考えられ、ここで、緩和は、部分的または完全であり得る。予防のための処置についての使用の例は、滑膜または滑液の炎症を予防するための、従って、関節炎の発症を予防または遅延させるための、関節炎の発症前の使用である。
【0060】
本発明の1つの特定の実施形態は、NURRサブファミリーのメンバーの核酸レベルを低下させる工程を包含する、関節炎を処置する方法である。特定の実施形態では、NURR1核酸が低下される。本発明の別の特定の実施形態は、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸レベルを低下させる工程を包含する、関節炎を処置する方法を含む。特定の実施形態では、NURR1アミノ酸のレベルが低下される。当業者は、NURR1の核酸レベルまたはアミノ酸レベルを低下させる種々の方法が存在することを認識する。
【0061】
(スクリーニングアッセイ−アミノ酸アンタゴニスト)
本発明の特定の実施形態では、NURRサブファミリーのアミノ酸配列に対するアンタゴニストを投与する方法が存在する。別の実施形態では、CRHレセプターのアミノ酸配列に対するアンタゴニストを投与する本発明の方法が存在する。当業者は、1つの実施形態におけるアンタゴニストが、NURRサブファミリーのメンバーへと結合することによって、NURR転写活性を妨害することを認識する。別の実施形態では、このアンタゴニストの作用は、NURRサブファミリーのメンバーの発現の減少をもたらす。当業者は、標準的な方法を利用して、NURRサブファミリーのアミノ酸配列またはCRHレセプターのアミノ酸配列に対するアンタゴニストとして阻害または作用する化合物についてスクリーニングすることを知っている。化合物バンクまたはオリゴペプチドライブラリーは、特定の実施形態で、当該分野で周知の方法によってスクリーニングされる。このアンタゴニストは、アミノ酸、核酸、脂質、リポソーム、糖質、糖またはそれらの組合せであり得る。好ましい実施形態では、このアンタゴニストはアミノ酸である。
【0062】
本発明の別の実施形態は、NURRサブファミリーのメンバーに対する抗体を投与して、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸配列を、入手可能なプールから隔離することによって、NURRサブファミリーのメンバーのレベルを低下させることを含む。本発明の別のさらなる実施形態は、CRHレセプターに対する抗体を投与して、CRHレセプターのアミノ酸配列を、入手可能なプールから隔離することによって、CRHレセプターのレベルを低下させることを含む。抗体誘導のためのNURRサブファミリーのアミノ酸配列およびCRHレセプターのアミノ酸配列は、生物学的活性を必要としない;しかし、タンパク質フラグメントまたはオリゴペプチドは、抗原性でなければならない。特異抗体を誘導するために用いられるペプチドは、少なくとも約4アミノ酸、好ましくは少なくとも約10アミノ酸からなるアミノ酸配列を有し得る。これらは、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部分を模倣すべきであり、そして天然に存在する低分子のアミノ酸配列全体を含み得る。当該分野で周知の手順は、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸配列に対する抗体の産生のために、またはCRHレセプターのアミノ酸配列に対する抗体の産生のために用いられ得る。
【0063】
抗体の産生について、種々の宿主(ヤギ、ウサギ、ラット、マウスなどを含む)は、NURRサブファミリーのメンバーのタンパク質もしくはCRHレセプターのタンパク質、または免疫原性特性を保持する、それらの任意の部分、フラグメントもしくはオリゴペプチドを用いた注射によって免疫され得る。宿主の種に依存して、種々のアジュバントを用いて、免疫学的応答を増大させ得る。このようなアジュバントとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:Freundアジュバント、鉱物ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)および界面活性剤(例えば、リゾレシチン)、プルーロニックポリオール(pluronic polyol)、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁物、キーホールリンペットヘモシアニンおよびジニトロフェノール。BCG(カルメットゲラン桿菌)およびCorynebacterium parvumは、潜在的に有用なヒトアジュバントである。NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターに対するモノクローナル抗体は、培養中の連続細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技術を用いて調製される。抗原結合部位を保持する、抗体およびフラグメントの誘導体もまた、本発明に含まれる。
【0064】
特定の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸配列またはCRHレセプターのアミノ酸配列のレベルは、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸合成またはCRHレセプターのアミノ酸合成を阻害することによって低下される。これは、NURR1配列またはCRHレセプター配列の翻訳の妨害または停止だけでなく、翻訳後プロセシングおよび適切な細胞内(subcellular)局在への輸送をも含む。
【0065】
別の実施形態では、NURRサブファミリーのアミノ酸配列またはCRHレセプターのアミノ酸配列のレベルは、それぞれ、NURRサブファミリーのアミノ酸分解またはCRHレセプター分解を増大させることによって低下される。これは、アミノ酸配列を分解についての標的とする、NURRサブファミリーのアミノ酸配列またはCRHレセプターのアミノ酸配列に対する改変(ユビキチン付加(ubiquitination))を含む。
【0066】
さらなる実施形態では、NURRサブファミリーのアミノ酸のレベルは、CRHの核酸またはアミノ酸のレベルを低下させることによって低下される。実施例において実証されるように、CRHは、NURR1の発現を誘導する。それゆえ、特定の実施形態で、NURR1抑制について類似の意味で本明細書中で記載される、レベルを低下させることはまた、NURR1のアミノ酸レベルを低下させる。類似の方法で、他のNURRサブファミリーのメンバーは、CRHレベルを低下させることによって低減される。
【0067】
好ましい実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸配列のアミノ酸レベルを低下させることは、コラゲナーゼまたは血清アミロイドA(RA炎症機構および関節破壊と関連付けられている、その調節領域にNURR1コンセンサス結合部位を有する遺伝子の2つの例)の核酸またはアミノ酸の配列を減少させることをさらに含む。NURR1によって調節され、かつ免疫疾患に関連した炎症に関連している他の核酸配列は、本発明の範囲内にある。コラゲナーゼの核酸配列は、本明細書中で配列番号141(13639671)によって表され、そしてコラゲナーゼのアミノ酸配列は本明細書中で配列番号142(13639672)によって表される。血清アミロイドAの核酸配列は本明細書中で配列番号98(178868)によって表され、そして血清アミロイドAのアミノ酸配列は配列番号99(13540475)である。コンセンサス結合部位をその調節領域に含む遺伝子の他の例は、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)およびプロオピオメラノコルチコトロピン(POMC)である。CRHの核酸は配列番号100(12803538)を含み、そしてCRHのアミノ酸配列は配列番号101(AAH02599)を含む。POMCの核酸配列は配列番号102(11429780)によって表され、そしてPOMCのアミノ酸配列は配列番号103(13637253)によって表される。
【0068】
好ましい実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸配列のアミノ酸レベルを低下させることは、CRHレセプターサブタイプR1の核酸またはアミノ酸の配列を低下させることをさらに含む。当業者は、本発明の範囲内でCRH−R1配列が利用されることを認識する。核酸CRH−R1配列の例として、以下が挙げられる:配列番号104(5815472)、配列番号105(登録番号NM030999)、配列番号106(登録番号AB055434)、配列番号107(登録番号NM007762)、配列番号108(登録番号NM004382)、配列番号109(登録番号BB523399)、配列番号110(登録番号BB520290)、配列番号111(登録番号BB517689)、配列番号112(登録番号BB477388)、配列番号113(登録番号BB475687)、配列番号114(登録番号AF180301)、配列番号115(登録番号BB239486)、配列番号116(登録番号BB237761)、配列番号117(登録番号BB169114)、配列番号118(登録番号AV332164)、配列番号119(登録番号AI561856)、配列番号120(登録番号U19939)、配列番号121(登録番号AF077185)、配列番号122(登録番号AA543299)および配列番号123(登録番号BB009745)。CRH−R1のアミノ酸配列の例として、以下が挙げられる:配列番号124(5815473)、配列番号125(登録番号062772)、042602)、配列番号126(登録番号Q90812)、配列番号127(登録番号P35353)、配列番号128(登録番号P35347)、配列番号129(登録番号P34998)、配列番号130(登録番号NP112261)、配列番号131(登録番号BAB21864)、配列番号132(登録番号I38879)、配列番号133(登録番号A48260)、配列番号134(登録番号S39535)、配列番号135(登録番号NP0031788)、配列番号136(登録番号AAD52688)、配列番号137(登録番号AAC52243)、配列番号138(登録番号AAC50073)、配列番号139(登録番号AAC27320)および配列番号140(登録番号NP004373)。
【0069】
さらなる実施形態では、抗サイトカインの投与をさらに包含する、炎症性免疫疾患についての処置が存在する。この抗サイトカインは、サイトカインを、直接的または間接的のいずれかで妨害する。特定の実施形態では、妨害の標的であるサイトカインは、IL1β、TNFα、IL−6またはPGE2である。
【0070】
本発明の1つの実施形態では、NURRサブファミリーの核酸配列またはCRHレセプターの核酸配列のレベルを低下させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在する。NURRサブファミリーまたはCRHレセプターの核酸配列のレベルを低下させる工程は、当該分野で標準的な方法によって行われ得る。これは、機能的核酸配列のレベルを低下させることを含み、そして転写後プロセシング、5’mRNAキャップの適用、スプライシングおよびポリアデニル化に影響を与えることを含み得る。特定の実施形態では、NURRサブファミリーの核酸配列は、適切な細胞内位置にもはや局在しない。別の実施形態では、NURRサブファミリーの核酸配列またはCRHレセプターの核酸配列のレベルは、上流の因子(例えば、NURRサブファミリーの核酸配列の発現を調節する転写因子)に影響を与えることによって低下される。さらなる実施形態では、CRHレセプターの核酸配列のレベルは、上流の因子(例えば、CRHレセプターの核酸配列の発現を調節する転写因子)に影響を与えることによって低下される。
【0071】
(スクリーニングアッセイ−核酸アンタゴニスト)
本発明の1つの実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーの核酸レベルを低下させる方法が存在する。本明細書中に提示される例は、NURRサブファミリーのメンバーが低下したレベルの発現を有する条件下でのみ現れる、容易に検出可能な表現型をその組換え宿主に付与するためにレポーター遺伝子が用いられる、細胞全体アッセイ、インビボ分析または形質転換細胞株もしくは不死細胞株に基づく候補物質のスクリーニング方法を提供する。一例として、レポーター遺伝子は、分析(例えば、色素形成分析、蛍光比色分析、放射性同位体分析または分光光度分析)によって検出可能である、他の場合にはその宿主細胞によって産生されないポリペプチドをコードする。特定の実施形態では、このアミノ酸配列をコードするNURRサブファミリーの核酸配列は、β−ガラクトシダーゼで置換されている。
【0072】
本発明のスクリーニングアッセイの別の例は、本明細書中に提示される。NURRサブファミリーのメンバーを発現する細胞は、マイクロタイターウェル中で増殖され、その後、一連のウェルに連続モル濃度比率の候補が添加され、そして化合物を再懸濁または溶解するために用いられたビヒクルと共に単独でインキュベートしたコントロールにおける発現を実証するに充分であるインキュベーション期間後にシグナルレベルが決定される。次いで、種々の比率の候補を含有するウェルは、シグナル活性化について評価される。次いで、レポーター遺伝子の転写または発現の用量関連減少を実証する候補は、臨床治療剤としてのさらなる評価のために選択される。
【0073】
代替の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーの配列(例えば、配列番号1)のアンチセンス配列で細胞をトランスフェクトすることによって、NURRサブファミリーのメンバーの核酸レベルを低下させるための方法が存在する。細胞への核酸のトランスフェクションについての送達系は、ウイルス法または非ウイルス法のいずれかを利用し得る。非ウイルス形態のDNAまたはRNAについての標的化系は、以下の4つの成分を必要とする:1)目的のDNAまたはRNA;2)細胞表面レセプターまたは抗原を認識しかつ結合する部分;3)DNA結合部分;ならびに4)細胞表面から細胞質への複合体の輸送を可能にする溶解部分。さらに、リポソームおよびカチオン性脂質を用いて、治療遺伝子の組合せを送達して、同じ効果を達成し得る。潜在的ウイルスベクターとしては、ウイルス(例えば、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルスおよびウシパピローマウイルス)から誘導される発現ベクターが挙げられる。さらに、エピソーム性ベクターが用いられ得る。他のDNAベクターおよび輸送体系は、当該分野で公知である。
【0074】
当業者は、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスもしくはワクシニアウイルス、または種々の細菌性プラスミドから誘導された発現ベクターが、標的とされた器官、組織または細胞集団へのヌクレオチド配列の送達のために用いられ得ることを認識する。当業者に周知である方法を用いて、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターをコードする遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを発現する組換えベクターを構築し得る。この遺伝子は、高レベルの所望の遺伝子コードフラグメントを発現する発現ベクターで細胞または組織をトランスフェクトすることによって、オフにされ得る。このような構築物は、翻訳できないセンス配列またはアンチセンス配列を細胞にあふれさせ得る。DNAの組込みの非存在下でさえ、このようなベクターは、全てのコピーが内因性ヌクレアーゼによって無効にされるまで、RNA分子を転写するのに寄与し得る。一過性発現は、非複製性ベクターについて一ヶ月以上、そして適切な複製エレメントがこのベクター系の一部である場合はさらに長く、持続し得る。
【0075】
さらに、当業者は、遺伝子発現の改変が、NURRサブファミリーのメンバーの核酸配列の制御領域(すなわち、プロモーター、エンハンサーおよびイントロン)に対するアンチセンス分子を設計することによって得られ得ることを認識する。転写開始部位(例えば、リーダー配列の−10領域と+10領域との間)から誘導されるオリゴヌクレオチドが好ましい。アンチセンス分子はまた、転写産物がリボソームに結合するのを妨害することによってmRNAの翻訳をブロックするためにも、設計され得る。同様に、阻害は、「三重らせん」塩基対合方法論を用いることによって達成され得る。三重らせん対合は、二重らせんがポリメラーゼ、転写因子または調節分子の結合のために充分に開く能力を損なう。
【0076】
リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒し得る酵素的RNA分子である。リボザイムの作用機構は、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーション、続いてヌクレオチド内分解性(endonucleolytic)切断を含む。本発明の範囲内には、NURRサブファミリーのメンバーをコードする配列のヌクレオチド内分解性切断を特異的かつ効率的に触媒し得る、操作されたハンマーヘッド型モチーフのリボザイム分子が存在する。別の実施形態では、リボザイムは、Tetrahymena型リボザイムである。
【0077】
本発明のアンチセンス分子およびリボザイムは、RNA分子の合成について当該分野で公知の任意の方法(オリゴヌクレオチドを化学的に合成するための技術を含む)によって調製され得る。あるいは、RNA分子は、NURRサブファミリーのメンバーまたはNURRサブファミリーのメンバーのレセプターをコードするDNA配列のインビトロおよびインビボでの転写によって作製され得る。このようなDNA配列は、適切なRNAポリメラーゼプロモーター(例えば、T7またはSP6)を有する広範な種々のベクター中に組み込まれ得る。あるいは、アンチセンスRNAを構成的または誘導的に合成するアンチセンスcDNA構築物は、細胞株、細胞または組織に導入され得る。
【0078】
特定の実施形態では、核酸のトランスフェクションは、Subramanianら(1999)に記載されるように、輸送タンパク質によって促進される。手短には、ペプチドM9は、キャリア分子としてカチオン性ペプチドに化学的に結合される。カチオン性複合体は、負に荷電した目的の核酸を結合し、続いて核輸送タンパク質(例えば、トランスポルチン(transportin))へとM9が結合する。
【0079】
本発明の1つの実施形態は、遊離のNURRサブファミリーのメンバーに結合する、NURRサブファミリーのメンバーのレセプターの合成を増大させることによって、NURRサブファミリーのメンバーのレベルを低下させることである。
【0080】
本発明の1つの実施形態では、治療的に有効なレベルの抗サイトカインを投与する工程を包含する、NURRサブファミリーのメンバーの核酸レベルを低下させる方法が存在する。特定の実施形態では、この抗サイトカインは、例えば、IL1β、TNFα、IL−6またはPGE2を妨害する。
【0081】
本発明のさらなる実施形態では、炎症性免疫疾患に関連した核酸配列(例えば、コラゲナーゼ、血清アミロイドA、CRHまたはPOMC)の核酸レベルを低下させる工程をさらに包含する、NURRサブファミリーのメンバー(例えば、NURR1)の核酸レベルにおける低下が存在する。特定の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーの核酸レベルにおける低下は、NURRサブファミリーのメンバーの結合部位を調節領域に有する核酸配列を減少させる。
【0082】
本発明の1つの特定の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸配列を結合して、その生物学的活性または免疫学的活性をブロック、妨害または調節し、それによって、NURRサブファミリーのメンバーのレセプターに対する作用をそのアミノ酸配列が生じることができないようにする因子を投与するための方法である。このアンタゴニストとしては、NURRサブファミリーのメンバーのレセプターに結合する、タンパク質、ペプチド、可溶性レセプター、核酸、糖質、脂質、糖または他の分子が挙げられ得る。
【0083】
本発明の1つの実施形態は、NURRサブファミリーのメンバーに対する抗体を投与して、それによって、このメンバーがNURRサブファミリーのメンバーのレセプターに結合するのを妨害する方法である。
【0084】
特定の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーのレセプターのレベルを治療有効量まで増大させることによって、レセプターへのNURRサブファミリーのメンバーの結合を妨害する方法が存在する。当該分野で公知であり、そして本明細書中に考察される遺伝子治療によって、または当該分野で標準的であり、そしてまた本明細書中に考察されるNURRサブファミリーのメンバーのレセプターのアミノ酸レベルを投与することによって、このような方法は達成され得る。
【0085】
本発明の1つの実施形態は、NURRサブファミリーのメンバーのレセプター構造に影響を与える化合物を投与する方法である。このような化合物は、結合したらNURRサブファミリーのメンバーのレセプター構造を変更させ、それによってこのレセプター構造をその活性に無効にする、タンパク質、ペプチド、核酸、糖質または他の分子を含み得るがこれらに限定されない。
【0086】
本発明の1つの実施形態は、NURRサブファミリーのメンバーのレセプター機能に影響を与える化合物を投与する方法である。このような化合物は、結合したらNURRサブファミリーのメンバーのレセプターの機能を阻害または抑制する、タンパク質、核酸、糖質または他の分子を含み得るがこれらに限定されない。
【0087】
特定の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸または核酸配列の治療的に有効なレベルを生物体に投与する工程を包含する、血管疾患を有する生物体を処置する方法が存在する。
【0088】
特定の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーの核酸のレベルを低下させる工程を包含する、炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法が存在し、ここで、このNURRサブファミリーのメンバーは、血管拡張剤として作用する。慢性関節リウマチでは、血管は、重要な役割を果たし、そして実施例において示した、血管系におけるNURR1とCRHとの会合は、この疾患についての最初の引き金であると考えられる。それゆえ、NURRサブファミリーのメンバーおよびCRHのレベルをこの疾患プロセスの初期段階で低下させることは、処置のための明らかでかつ有益なストラテジーである。特定の実施形態では、アンチセンスNURRサブファミリーのメンバー(例えば、NURR1)は、生物体に、血管収縮を促進するために投与される。
【0089】
別の実施形態では、生物体における炎症性免疫疾患についての処置は、NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸レベルを低下させる工程を包含し、ここで、NURRサブファミリーのメンバーは血管拡張剤である。
【0090】
別の実施形態では、NURRサブファミリーのメンバーの核酸配列またはアミノ酸配列のレベルを低下させる工程を包含する、生物体における炎症性免疫疾患を予防する方法が存在する。投与は、この炎症性免疫疾患の発症の徴候を示さないかまたはこの疾患の初期の徴候を有する生物体に対してであり得る。好ましい実施形態では、この生物体は、この炎症性免疫疾患に対して感受性であるか、またはこの疾患を有することへの遺伝的素因を示す。
【0091】
特定の実施形態では、本明細書中に記載される方法および処置は、他の抗炎症性治療(当該分野で公知の抗サイトカイン処置を含む)と共に用いられる。
【0092】
好ましい実施形態では、処置されるまたは予防方法に供されると本明細書中に記載される生物体はヒトである。
【0093】
本明細書中に記載される方法および処置は、炎症性疾患に関する。特定の実施形態では、この疾患は全身性であり、そして治療は、患者に対して全身的に投与される。しかし、代替的な実施形態では、この治療は、直接適用によって(例えば、注射によって)、炎症を起こした身体領域(例えば、関節)へと投与され得る。
【0094】
(投薬量および処方)
本発明の化合物(活性成分)は、炎症性免疫疾患を処置するために処方され、そして脊椎動物の身体中での活性成分と薬剤作用部位との接触を生じる任意の手段によって、投与され得る。本発明の化合物は、個々の治療活性成分として、または治療活性成分の組合せでのいずれかで薬剤と関連して使用するために利用可能な任意の従来の手段によって投与され得る。本発明の化合物は、単独で投与され得るが、一般には、選択された投与経路および標準的な薬学的手法に基づいて選択された薬学的キャリアと共に投与される。
【0095】
投与される投薬量は、治療有効量の活性成分であり、そしてもちろん、既知の要因(例えば、特定の活性成分ならびにその投与形態および投与経路の薬力学的特徴;レシピエントの年齢、性別、健康および体重;症状の性質および程度;併存処置の種類、処置頻度ならびに所望の効果)に依存して変動する。
【0096】
活性成分は、固体投薬形態(例えば、カプセル剤、錠剤および散剤)において、または液体投薬形態(例えば、エリキシル剤、シロップ剤、乳剤および懸濁剤)において、経口投与され得る。活性成分はまた、注射、迅速な注入、鼻咽頭吸収または皮膚吸収による非経口投与のために処方され得る。この薬剤は、筋肉内に、静脈内に、皮下に、経皮に投与されるかまたは坐剤として投与され得る。化合物を投与する際に、この化合物は、全身的に与えられ得る。全身的な効果を回避する必要がある化合物については、好ましい実施形態は、髄腔内投与である。本発明の好ましい実施形態では、この化合物は、関節炎の処置のために関節間に投与される。
【0097】
ゼラチンカプセルは、活性成分および粉末化キャリア(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸など)を含む。同様の希釈剤は、圧縮錠剤を作製するために使用され得る。錠剤およびカプセルは両方とも、長期にわたる薬物の連続放出を提供するために、持続放出製品として製造され得る。圧縮錠剤は、任意の不愉快な味をマスクし、かつ錠剤を空気から保護するために糖衣またはフィルムコーティングされ得るか、または胃腸管中での選択的崩壊のために腸溶性コーティングされ得る。
【0098】
経口投与のための液体投薬量形態は、患者の容認を増すために着色剤および矯味矯臭剤を含み得る。
【0099】
一般に、水、適切なオイル、生理食塩水、デキストロース(グルコース)水溶液、および関連の糖溶液、ならびにグリコール(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)は、非経口溶液のために適切なキャリアである。非経口投与のための溶液は好ましくは、活性成分の水溶性塩、適切な安定剤、および必要に応じて緩衝物質を含む。単独かまたは組み合わされたかのいずれかの、抗酸化剤(例えば、重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸)は、適切な安定剤である。クエン酸およびその塩、ならびにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)ナトリウムもまた使用される。さらに、非経口溶液は、保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、メチル−またはプロピル−パラベンおよびクロロブタノール)を含み得る。適切な薬学的キャリアは、この分野における標準的な参考書であるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載される。
【0100】
さらに、標準的な薬学的方法を用いて、作用の持続時間を制御し得る。これらは、当該分野で周知であり、そして制御放出調製物を含み、そして適切な高分子(例えば、ポリマー、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレンビニルアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたは硫酸プロタミン)を含み得る。高分子の濃度ならびに取り込みの方法は、放出を制御するために調整され得る。さらに、この薬剤は、ポリマー材料(例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)またはエチレンビニルアセテートコポリマー)の粒子中に取り込まれ得る。取り込まれることに加えて、これらの薬剤を用いて、マイクロカプセル中に化合物を捕捉し得る。
【0101】
本発明の化合物の投与のために有用な薬学的投薬量形態は、以下の通りに例示され得る。活性成分についての薬理学的範囲は、当該分野で周知の方法を用いて、当業者によって決定され得る。活性成分についての例示の範囲は、以下の通りである:400μg/日と4mg/日との間のフォレートの範囲;250mg(合計)と2g〜3gまでの毎日100mg/kg/日という高い値との間のメチオニンの範囲;100mgと2gとの間のコリン範囲;1ヶ月あたり経口で約100mgまたは筋肉内で1mgのビタミンB12;1日当たり6gまでのベタインの範囲;25mgと50mgとの間の亜鉛の範囲;および1日あたり20gまでのフェニル酪酸ナトリウムの範囲。
【0102】
カプセル剤:カプセル剤は、標準的なツーピース式硬質ゼラチンカプセル剤の各々に、粉末化活性成分、175mgのラクトース、24mgのタルクおよび6mgステアリン酸マグネシウムを充填することによって調製される。
【0103】
軟質ゼラチンカプセル剤:ダイズ油中の活性成分の混合物を調製し、そして容量型ポンプ(positive displacement pump)によってゼラチン中に注入して、活性成分を含有する軟質ゼラチンカプセル剤を形成する。次いで、このカプセル剤は、洗浄および乾燥される。
【0104】
錠剤:錠剤は、投薬量単位が、示唆される量の活性成分、0.2mgのコロイド状二酸化ケイ素、5mgのステアリン酸マグネシウム、275mgの微結晶性セルロース、11mgのトウモロコシデンプンおよび98.8mgのラクトースを含むように、従来の手順によって調製される。適切なコーティングは、嗜好性を増大させるためまたは吸収を遅延させるために適用され得る。
【0105】
注射可能物:注射のために投与のために適切な非経口組成物は、1.5重量%の活性成分を10容量%のプロピレングリコールおよび水中に攪拌することによって調製される。溶液は、塩化ナトリウムを用いて等張性にされ、そして滅菌される。
【0106】
懸濁物:水性懸濁物は、各々5mlが、示唆される量の、微細分割活性成分、200mgのカルボキシメチルセルロースナトリウム、5mgの安息香酸ナトリウム、1.0gのソルビトール溶液(U.S.P.)および0.025mgのバニリンを含むように、経口投与のために調製される。
【0107】
従って、本発明の薬学的組成物は、種々の経路を介して、そして身体中の種々の部位へと送達されて、特定の効果を達成し得る。当業者は、1より多くの経路が投与のために用いられ得るが、特定の経路は、別の経路よりもより即座でかつより有効な反応を提供し得ることを認識する。局所送達または全身性送達は、体腔への処方物の適用もしくは点滴注入、エアゾールの吸入もしくはガス注入を含む投与によって、または筋肉内投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、皮内投与、ならびに局所投与を含む非経口導入によって達成され得る。
【0108】
本発明の組成物は、単位投薬量形態で提供され得、ここで、各単位投薬量単位(例えば、茶匙1杯、錠剤、液剤または坐剤)は、所定量の組成物を、単独で、または他の活性薬剤との適切な組合せで含む。本明細書中で使用される場合、用語「単位投薬量形態」は、ヒト被験体および動物被験体の単位投薬量として適切な、物理的に別個の単位であって、各単位が、所望の効果を生じるに充分な量に算出された所定量の本発明の組成物を、単独でまたは他の活性な薬剤との組合せで、適切な場合は、薬学的に受容可能な希釈剤、キャリアまたはビヒクルと関連して含む単位をいう。本発明の単位投薬量形態についての詳細は、達成されるべき特定の効果および特定の宿主における薬学的組成物と関連した特定の薬力学依存する。
【0109】
本明細書中に記載されるこれらの方法は、決して包括的ではなく、そしてさらに特定の適用に適切にする方法は、当業者に明らかである。さらに、組成物の有効量は、所望の効果を発揮することが既知の化合物に対する類似性を通してさらに概算され得る。
【0110】
特定の実施形態では、薬物は、Kehayovaら,1999に記載されるように、極性基(例えば、カルボキシル基)を含むカルボニックアンヒドラーゼインヒビター(CAI)を利用することによって、標的へと輸送され得る。このカルボキシル基は、この組成物を水溶性にするが、しかし、光に暴露されると、CAIをカルボキシルマスクへと連結している結合が切断され、残りの部分が疎水性環境中で可溶性になるようにする。
【0111】
特定の実施形態では、脂質処方物および/またはナノカプセルの使用は、アンタゴニスト、アゴニスト、配列番号33のNURR1のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号1のNURR1の核酸配列を含む核酸、配列番号64のNOR1のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号47のNOR1の核酸配列を含む核酸、配列番号91のNUR77のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号76のNUR77の核酸配列を含む核酸、またはそれらの薬学的に受容可能な塩、ポリペプチド、ペプチドおよび/または因子、および/または遺伝子治療ベクター(野生型ベクターおよび/またはアンチセンスベクターの両方を含む)の、宿主細胞への導入のために意図される。
【0112】
ナノカプセルは一般に、安定した方法および/または再現可能な方法において化合物を封入し得る。細胞内ポリマー過剰負荷に起因する副作用を回避するために、インビボで分解され得るポリマーを用いてこのような超微細粒子(約0.1μmの大きさ)が設計されるべきである。これらの必要要件を満たす生分解性ポリアルキル−シアノアクリレートナノ粒子は、本発明における使用が意図され、そして/またはこのような粒子は、容易に作製され得る。
【0113】
本発明の好ましい実施形態では、この薬学的組成物は、脂質と会合し得る。脂質と会合した薬学的組成物は、リポソームの水性内部にカプセル化され得、リポソームの脂質二重層内に散在し得、リポソームおよびオリゴヌクレオチドの両方に会合した連結分子を介してリポソームへと結合し得、リポソーム内に封入され得、リポソームと複合体化され得、脂質を含有する溶液中に散在し得、脂質と混合され得、脂質と合わされ得、脂質中の懸濁物として含まれ得、ミセル中に含まれ得もしくはミセルと複合体化され得、さもなければ脂質と会合し得る。本発明の脂質または脂質/薬学的組成物関連組成物は、溶液中の任意の特定の構造に限定されない。例えば、これらは、二重層構造で、ミセルとして、または「折り畳まれた」構造を伴って、存在し得る。これらはまた、大きさまたは形状のいずれかが均質でない凝集物をおそらく形成して、溶液中に単に散在し得る。
【0114】
脂質は、天然に存在する脂質であっても合成脂質であってもよい、脂肪物質である。例えば、脂質としては、細胞質中に天然に存在する脂肪滴ならびに長鎖脂肪族炭化水素およびそれらの誘導体(例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコールおよびアルデヒド)を含む、当業者に周知である化合物のクラスが挙げられる。
【0115】
リン脂質は、本発明に従ってリポソームを調製するために用いられ得、そして正味の正電荷、負電荷または中性電荷を保有し得る。ジアセチルホスフェートはリポソームに負電荷を付与するために用いられ得、そしてステアリルアミン(stearylamine)はリポソームに正電荷を付与するために用いられ得る。リポソームは、1以上のリン脂質から作製され得る。
【0116】
中性荷電脂質は、電荷のない脂質、実質的に非荷電の脂質、または等しい数の正電荷および負電荷を有する脂質混合物を含み得る。適切なリン脂質としては、ホスファチジルコリンおよび当業者に周知である他のリン脂質が挙げられる。
【0117】
本発明に従った使用のために適切な脂質は、商業的供給源から入手され得る。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」) は、Sigma Chemical Co.から入手され得、ジセチルホスフェート(「DCP」)は、K & K Laboratories(Plainview,NY)から入手され;コレステロール(「Chol」)は、Calbiochem−Behringから入手され;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)および他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,Ala.)から入手され得る。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は、約−20℃で保存され得る。好ましくは、クロロホルムは、唯一の溶媒として使用される。なぜなら、クロロホルムはメタノールよりも容易にエバポレートされるからである。
【0118】
天然の供給源由来のリン脂質(例えば、卵またはダイズのホスファチジルコリン、脳のホスファチジン酸、脳または植物のホスファチジルイノシトール、心臓のカルジオリピンおよび植物または細菌のホスファチジルエタノールアミン)は好ましくは、主な(すなわち、ホスファチド組成物全体の50%以上を構成する)ホスファチドとしては使用されない。なぜなら、得られるリポソームが不安定かつ漏出性であるからである。
【0119】
「リポソーム」は、閉じた脂質二重層または凝集物の作製によって形成される、種々の一層脂質ビヒクルおよび多層脂質ビヒクルを包含する包括的用語である。リポソームは、リン脂質二重層膜および内部の水性媒体を有する小胞構造を有すると特徴付けられ得る。多層リポソームは、水性媒体によって隔てられた複数の脂質層を有する。これらは、リン脂質を過剰の水溶液中に懸濁した場合に自然に形成する。脂質成分は、閉じた構造の形成前に再配置を経て、そして水および溶解した溶質を脂質二重層の間に捕獲する(GhoshおよびBachhawat,1991)。しかし、本発明はまた、溶液中で通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物を包含する。例えば、この脂質は、ミセル構造をとり得るか、または単に脂質分子の不均質凝集物として存在し得る。リポフェクトアミン(lipofectamine)−核酸複合体もまた意図される。
【0120】
リン脂質は、脂質の水に対するモル比に依存して、水中に分散された場合、リポソーム以外の種々の構造を形成し得る。低い比では、リポソームが好ましい構造である。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度および/または二価カチオンの存在に依存する。リポソームは、イオン性物質および/または極性物質に対して低透過性を示し得るが、高温では、相転移を経て、これは、その透過性を顕著に変更する。相転移は、ゲル状態として公知の、びっしり詰まった規則正しい構造から、流体状態として公知の、ゆるく詰まった、それほど規則的でない構造への変化を含む。これは、特有の相転移温度で生じ、そして/またはイオン、糖および/または薬物に対する透過性の増大をもたらす。
【0121】
リポソームは、以下の4つの異なる機構を介して細胞と相互作用する:細網内皮系の食作用細胞(例えば、マクロファージおよび/または好中球)によるエンドサイトーシス;非特異的な弱い疎水性および/もしくは静電力、ならびに/または細胞表面成分との特異的相互作用のいずれかによる、細胞表面への吸着;リポソーム内容物の細胞質への同時放出を伴う、原形質膜へのリポソームの脂質二重層の挿入による、形質細胞膜との融合;ならびに/あるいはリポソーム内容物の何の会合も伴わない、細胞膜および/もしくは細胞内膜および/またはその逆の、リポソーム脂質の移入。リポソーム処方を変動させることは、どの機構が作動するかを変更し得るが、1より多くが同時に作動し得る。
【0122】
インビトロでの外来DNAのリポソーム媒介オリゴヌクレオチド送達および発現は、非常に好結果であった。Wongら(1980)は、培養したニワトリ胚、HeLa細胞および肝細胞癌細胞における外来DNAのリポソーム媒介送達および発現の実行可能性を実証した。Nicolauら(1987)は、静脈内注射後のラットにおける好首尾のリポソーム媒介遺伝子移入を達成した。
【0123】
本発明の特定の実施形態では、脂質は、血球凝集ウイルス(HVJ)と会合し得る。このことは、細胞膜との融合を容易にし、そしてリポソームカプセル化DNAの細胞侵入を促進することが示されている(Kanedaら,1989)。他の実施形態では、脂質は、核の非ヒストン染色体タンパク質(HMG−1)と共に複合体化または使用され得る(Katoら,1991)。なおさらなる実施形態では、脂質は、HVJおよびHMG−1の両方と共に複合体化または使用され得る。インビトロおよびインビボでのオリゴヌクレオチドの移入および発現においてこのような発現ベクターは好首尾に用いられているので、これらは本発明に適用可能である。細菌性プロモーターはDNA構築物において用いられる場合、適切な細菌性ポリメラーゼをリポソーム内に含むこともまた望ましい。
【0124】
本発明に従って用いられるリポソームは、異なる方法によって作製され得る。リポソームの大きさは、合成方法に依存して変動し得る。水溶液中に懸濁されたリポソームは一般に、脂質二重層分子の1以上の同心円状層を有する球状小胞の形状である。各層は、式XYによって表される分子の平行アレイからなり、ここで、Xは親水性部分であり、そしてYは疎水性部分である。水性懸濁物では、この同心円状の層は、親水性部分が水相と接触したままである傾向があり、疎水性領域が自己会合する傾向があるように配置される。例えば、水相が、リポソーム内およびリポソーム外の両方に存在する場合、脂質分子は、配置XY−YXの、ラメラとして公知の二重層を形成し得る。1より多くの脂質分子の親水性部分および疎水性部分が互いに会合した場合、脂質の凝集物が形成され得る。これらの凝集物の大きさおよび形状は、多くの異なる変動要因(例えば、溶媒の性質および溶液中の他の化合物の存在)に依存する。
【0125】
本発明の範囲内のリポソームは、既知の実験室技術に従って調製され得る。1つの好ましい実施形態では、リポソームは、リポソーム脂質を、容器(例えば、ガラス製のナシ型フラスコ)中の溶媒中で混合することによって調製される。この容器は、期待されるリポソーム懸濁物溶液の容積よりも10倍大きな容積を有するはずである。ロータリーエバポレーターを用いて、この溶媒は、陰圧下で約40℃にて除去される。溶媒は通常、リポソームの所望の溶液に依存して、約5分〜2時間以内に除去される。この組成物は、デシケーター中で減圧下でさらに乾燥され得る。乾燥した脂質は一般に、時間経過に伴って劣化する傾向があるので、約1週間後に廃棄される。
【0126】
乾燥させた脂質は、全ての脂質膜が再懸濁されるまで振盪することによって、発熱物質を含まない滅菌水中で約25mM〜約50mMリン脂質にて水和され得る。次いで、水性リポソームは、アリコートに分けられ得、アリコートの各々は、バイアル中に配置され、凍結乾燥され得、そして減圧下でシールされ得る。
【0127】
代替物において、リポソームは、以下の他の公知の実験室手順に従って調製され得る:その内容が本明細書中に参考として援用される、Banghamら(1965)の方法;その内容が本明細書中に参考として援用される、DRUG CARRIERS IN BIOLOGY AND MEDICINE,G.Gregoriadis編(1979)287−341頁に記載される通りの、Gregoriadisの方法;その内容が本明細書中に参考として援用される、DeamerおよびUster(1983)の方法;ならびにSzokaおよびPapahadjopoulos(1978)によって記載される通りの逆相エバポレーション法。上記の方法は、水性物質を捕捉するそれらのそれぞれの能力、およびそれらのそれぞれの水性空間の、脂質に対する比が異なる。
【0128】
上記の通りに調製された、乾燥した脂質または凍結乾燥したリポソームは、阻害性ペプチドの溶液中で水和および再構成され得、そして適切な溶媒(例えば、DPBS)で適切な濃度へと希釈され得る。次いで、この混合物は、ボルテックスミキサー中で激しく振盪される。カプセル化されていない核酸は、29,000×gでの遠心分離によって除去され、そしてリポソームペレットは洗浄される。洗浄されたリポソームは、適切な総リン脂質濃度(例えば、約50mM〜約200mM)で再懸濁される。カプセル化された核酸の量は、標準的な方法に従って決定され得る。リポソーム調製物中にカプセル化された核酸の量の決定後、このリポソームは、適切な濃度へと希釈され得、そして使用するまで4℃で保存され得る。
【0129】
このリポソームを含む薬学的組成物は通常、無菌の薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤(例えば、水または生理食塩水溶液)を含む。
【0130】
(遺伝子治療の施術)
遺伝子治療に関して、当業者は、利用されるべきベクターが、プロモーターに作動可能に連結された目的の遺伝子を含まなければならないことを認識する。アンチセンス遺伝子治療に関して、目的の遺伝子のアンチセンス配列は、プロモーターに作動可能に連結される。当業者は、特定の例において、目的の遺伝子を発現する際に、他の配列(例えば、3’UTR調節配列)が有用であることを認識する。適切な場合、遺伝子治療ベクターは、固体、半固体、液体またはガスの形態の調製物へと、それらのそれぞれの投与経路について当該分野で公知の方法において処方され得る。当該分野で公知の手段を利用して、この組成物が標的器官に到達するまでこの組成物の放出および吸収を妨害し得るか、またはこの組成物の徐放性(timed−release)を確実にし得る。本発明の組成物を無効にしない、薬学的に受容可能な形態が用いられるべきである。薬学的投薬形態では、この組成物は、単独で、または適切に会合して、ならびに薬学的に活性な他の化合物と組み合わせて用いられ得る。治療核酸配列を含む充分な量のベクターは、薬理学的に有効な用量の遺伝子産物を提供するように投与されなければならない。
【0131】
当業者は、細胞中にベクターを投与するために種々の送達方法が利用され得ることを認識する。例としては以下が挙げられる:(1)物理的手段(例えば、エレクトロポレーション(電気)、遺伝子銃(物理的力)を利用する方法または大きな体積の液体(圧力)を適用する方法;ならびに(2)ベクターが別の実体(例えば、リポソームまたは輸送体分子)へと複合体化する方法。
【0132】
従って、本発明は、治療遺伝子を宿主へと移入する方法を提供し、この方法は、本発明のベクターを、上記の投与経路のいずれかまたは当業者に公知でかつ特定の適用について適切である代替的な経路を用いて、好ましくは組成物の一部として投与する工程を包含する。宿主細胞への、本発明による宿主細胞へのベクターの有効な遺伝子移入は、治療効果(例えば、処置されるべき特定の疾患に関連したいくつかの症状の緩和)に関して、またはさらに、宿主中の移入された遺伝子もしくは遺伝子の発現の証拠(例えば、配列決定、ノーザンハイブリダイゼーションもしくはサザンハイブリダイゼーション、または宿主細胞中の核酸を検出する転写アッセイと共にポリメラーゼ連鎖反応を用いて、あるいは免疫ブロット分析、抗体媒介検出、mRNAもしくはタンパク質の半減期の研究、または移入された核酸によってコードされるタンパク質もしくはポリペプチド、またはこのような移入に起因してレベルもしくは機能において影響を受けたタンパク質もしくはポリペプチドを検出するために特化されたアッセイを用いる)によって、モニタリングされ得る。
【0133】
本明細書中に記載されるこれらの方法は、決して包括的というわけではなく、そしてさらに特定の適用に適切にする方法は、当業者に明らかである。さらに、組成物の有効量は、所望の効果を発揮することが既知の化合物に対する類似性を通してさらに概算され得る。
【0134】
さらに、実際の用量およびスケジュールは、組成物が他の薬学的組成物と組み合わせて投与されるか否かに依存して、または薬物動態学、薬物の性質および代謝における個体間の相違に依存して、変動し得る。同様に、量は、利用される特定の細胞株に依存してインビトロでの適用において変動し得る(例えば、細胞表面に存在するベクターレセプターの数または遺伝子移入のために用いられた特定のベクターがその細胞株において複製する能力に基づく)。さらに、1細胞あたりに添加されるベクターの量は、ベクター中に挿入された治療遺伝子の長さおよび安定性ならびにまた、アミノ酸の性質に伴って変動するようであり、そして特に、経験的に決定される必要があるパラメーターであり、そして本発明の方法に固有ではない要因(例えば、合成に関連するコスト)に起因して変更され得る。当業者は、特定の状況の緊急性に従って任意の必要な調整を容易に行い得る。
【0135】
治療遺伝子を含む細胞がまた、自殺遺伝子(すなわち、細胞を破壊するために用いられ得る産物(例えば、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ)をコードする遺伝子を含み得ることは可能である。多くの遺伝子治療状況では、宿主細胞中で治療目的のための遺伝子を発現し得るが、一旦治療が完了したら、または、制御不能になるか、または予測可能な結果も望ましい結果ももたらさなくなったら、宿主細胞を破壊する能力をも有することが望ましい。従って、宿主細胞中での治療遺伝子の発現は、プロモーターによって駆動され得るが、自殺遺伝子の産物は、プロドラッグの非存在下では無害なままである。一旦治療が完了したら、またはもはや所望されず必要ともされなくなったら、プロドラッグの投与は、自殺遺伝子産物を引き起こし、細胞に対して致死的となる。使用され得る自殺遺伝子/プロドラッグの組合せの例は、以下である:単純疱疹ウイルス−チミジンチミジンキナーゼ(HSV−tk)およびガンシクロビル、アシクロビルまたはFIAU;オキシドレダクターゼおよびシクロヘキシミド;シトシンデアミナーゼおよび5−フルオロシトシン;チミジンキナーゼチミジレートキナーゼ(Tdk::Tmk)およびAZT;ならびにデオキシシチジンキナーゼおよびシトシンアラビノシド。
【0136】
細胞治療の方法は、当該分野で公知の方法によって用いられ得、ここで、NURR1タンパク質をコードする非欠損NURR1核酸配列を含む培養細胞が導入される。
【0137】
別の実施形態では、生物学的に活性な分子(例えば、遺伝子治療についてのベクター)は、脂質ポリ−L−グルタミン酸(PGA)複合体の「ピンチ(pinched)」領域の間の大きな水和ドメインに組み込まれ、ここで、PGAおよびカチオン性脂質ジドデシルジメチルアンモニウムブロミドは会合して、送達適用のための局在化されたピンチ領域を形成する(Subramaniamら,2000)。
【0138】
代替の実施形態では、アミノ酸配列は、小胞体において凝集物として蓄積させるように設計され、続いて、組成物が投与されてタンパク質の脱凝集が誘導され、迅速かつ一過性の分泌がもたらされる(Riveraら,2000)。
【0139】
HIV由来のペプチド(11アミノ酸配列)は、全長タンパク質に融合され、そしてマウスに注射された場合に、身体の全ての細胞の核への迅速な分散を可能にすることが近年記載された(Schwarzeら,1999)。Schwarzeらは、15kDa〜120kDaの大きさの範囲の、Tatに対する融合タンパク質を作製した。かれらは、動物全体の細胞の核への融合タンパク質の迅速な取り込みを実証し、そしてこのタンパク質の機能的活性は維持された。
【0140】
本発明の1つの実施形態では、NURRサブファミリーの核酸配列に作動可能に連結された、TatまたはTat−HAの核酸配列を含む構築物が存在する。このベクターは、細菌培養物において発現され、そして融合タンパク質は精製される。この精製されたTat−HA−NURRサブファミリーのタンパク質またはTat−NURRサブファミリーのタンパク質は、炎症部位、関節へのTat送達系の効率を決定するために、または融合タンパク質を全身的に送達することによって、動物へと注射される。分析は、炎症の減少または任意の関節炎症状の緩和におけるTat−HA−NURRサブファミリーのタンパク質またはTat−NURRサブファミリーのタンパク質の能力を決定するために行われる。これは、独立してまたは他の方法、処置または遺伝子と関連して実行可能な治療アプローチである。
【0141】
(ウイルス性ベクターを用いるDNA送達)
特定のウイルスがレセプター媒介エンドサイトーシスを介して細胞に感染してウイルス遺伝子を安定かつ効率的に宿主細胞ゲノム中へ組み込み、そして発現する能力によって、これらは、哺乳動物細胞への外来遺伝子の移入についての魅力的な候補になっている。本発明の好ましい遺伝子治療ベクターは一般に、ウイルス性ベクターである。
【0142】
外来遺伝物質を受け入れ得るいくつかのウイルスは、収容し得るヌクレオチド数および感染する細胞の範囲が制限されているが、これらのウイルスは、遺伝子発現を好首尾にもたらすことが実証されている。しかし、アデノウイルスは、それらの遺伝物質を宿主ゲノム中に組み込まず、それゆえ、遺伝子発現のために宿主の複製を必要とせず、これらを、迅速で効率的な異種遺伝子発現に理想的に適切にしている。複製欠損感染性ウイルスの調製のための技術は、当該分野で周知である。
【0143】
もちろん、ウイルス送達系を用いる際には、ビリオンを充分に精製して、ベクター構築物を受ける細胞、動物または個体に何の不都合な反応も引き起こさないように、望ましくない夾雑物(例えば、欠損性の妨害ウイルス粒子、エンドトキシンおよび他の発熱物質)を本質的に含まないようにすることを所望する。ベクターを精製する好ましい手段は、浮遊密度勾配(例えば、塩化セシウム勾配遠心分離)の使用を含む。
【0144】
(a.アデノウイルスベクター)
発現構築物の特定の送達方法は、アデノウイルス発現ベクターの使用を含む。アデノウイルスベクターはゲノムDNAへの低い取り込み能力を有することが公知であるが、この特徴は、これらのベクターによって得られる高い遺伝子移入効率によって相殺される。「アデノウイルスベクター」は、(a)構築物のパッケージングの支持のために充分でかつ(b)その中にクローニングされた組織または細胞に特異的な構築物を最終的に発現するに充分な、アデノウイルス配列を含む構築物を含むことを意味する。
【0145】
この発現ベクターは、遺伝子操作された形態のアデノウイルスを含む。アデノウイルスの遺伝的構成(36kbの直鎖状二本鎖DNAウイルス)の知識は、アデノウイルスDNAの大きな片の、7kbまでの外来配列での置換を可能にする(Grunhausおよび/またはHorwitz,1992)。レトロウイルスとは対照的に、宿主細胞のアデノウイルス感染は、染色体組込みをもたらさない。なぜなら、アデノウイルスDNAは、潜在的な遺伝毒性(genotoxicity)を伴わずにエピソーム様式で複製し得るからである。また、アデノウイルスは、構造的に安定であり、そして多数の増幅後、ゲノムの再配置は検出されなかった。
【0146】
アデノウイルスは、その中間の大きさのゲノム、操作の容易性、高い力価、広範な標的細胞域および高い感染性により、遺伝子移入ベクターとしての使用のために特に適切である。このウイルスのゲノムの両方の末端は、100〜200塩基対の逆方向反復(ITR)を含む。ITRは、ウイルスDNAの複製およびパッケージングのために必要なシスエレメントである。ゲノムの初期(E)領域および後期(L)領域は、ウイルスDNA複製の開始によって分けられる、異なる転写単位を含む。E1領域(E1AおよびE1B)は、ウイルスゲノムの転写調節を担うタンパク質およびいくつかの細胞性遺伝子をコードする。E2領域(E2AおよびE2B)の発現は、ウイルスDNA複製のためのタンパク質合成をもたらす。これらのタンパク質は、DNA複製、後期遺伝子発現および宿主細胞遮断に関与する(Renan,1990)。この後期遺伝子の産物(ウイルスキャプシドタンパク質の大多数を含む)は、主要後期プロモーター(MLP)によって生じる、単一の一次転写産物の顕著なプロセシングの後にのみ発現される。MLP(16.8m.u.に位置する)は、感染後期の間に特に効率的であり、そしてこのプロモーターから生じた全てのmRNAは、これらを翻訳のために好ましいmRNAとする5’−三部構成のリーダー(TPL)配列を保有する。
【0147】
現在の系では、組換えアデノウイルスは、シャトルベクターとプロウイルスベクターとの間の相同組換えから作製される。2つのプロウイルスベクターの間でのあり得る組換えに起因して、野生型アデノウイルスがこのプロセスから作製され得る。それゆえ、個々のプラークからウイルスの単一クローンを単離し、そしてそのゲノム構造を調べることは重要である。
【0148】
複製欠損である現行のアデノウイルスベクターの作製および/または増殖は、Ad5 DNAフラグメントによって胚性腎臓細胞から形質転換された、そしてE1タンパク質(E1Aおよび/またはE1B;Grahamら,1977)を構成的に発現する、293と称される独特の細胞株に依存する。E3領域はアデノウイルスゲノムには必要でない(JonesおよびShenk,1978)ので、293細胞の助けを借りた現行のアデノウイルスベクターは、外来DNAをE1領域、D3領域または両方の領域のいずれかに保有する(GrahamおよびPrevec,1991)。近年、E4領域に欠損を含むアデノウイルスベクターが記載されている(本明細書中に参考として援用される、米国特許5,670,488)。
【0149】
天然では、アデノウイルスは、野生型ゲノムの約105%をパッケージングし得(Ghosh−Choudhuryら,1987)、約2kb余分なDNAについての収容力を提供する。E1領域および/またはE3領域中の置換可能である約5.5kbのDNAと合わせて、現行のアデノウイルスベクターの最大収容力は7.5kb未満であり、そして/またはこのベクターの全長の約15%未満である。デノウイルスのウイルスゲノムの80%より多くが、このベクター骨格中に残っている。
【0150】
ヘルパー細胞株は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト胚性腎臓細胞、筋細胞、造血細胞および他のヒト胚性間葉細胞または上皮細胞)から誘導され得る。あるいは、ヘルパー細胞は、アデノウイルスについて許容性である他の哺乳動物種の細胞から誘導され得る。このような細胞としては、例えば、Vero細胞ならびに/または他のサル胚性間葉細胞および/もしくは上皮が挙げられる。上記で述べたように、好ましいヘルパー細胞株は293である。
【0151】
近年、Racherら(1995)は、アデノウイルスを増殖させる改善された方法を開示した。1つの形式では、天然の細胞凝集物は、100ml〜200mlの培地を含む1リットルのシリコン処理スピナーフラスコ(Techne,Cambridge,UK)中に個々の細胞を接種することによって増殖される。40rpmでの攪拌後、細胞生存率は、トリパンブルーを用いて評価される。別の形式では、Fibra−Celマイクロキャリア(Bibby Sterlin,Stone,UK)(5g/l)は、以下の通りに用いられる。5mlの培地中に再懸濁された細胞接種物は、250mlの三角フラスコ中のキャリア(50ml)に添加され、そして/または時々攪拌しながら1〜4時間にわたって静置される。次いで、この培地は50mlの新鮮培地で置換され、そして/または振盪が開始される。ウイルス産生に関して、細胞は、約80%コンフルエンスになるまで増殖され、その後、培地が(最終容積の25%まで)置換されるか、および/またはアデノウイルスが0.05のMOIで添加される。培養物は、一晩静置され、その後、その容積は100%まで増加され、そして/または振盪がさらに72時間にわたって開始される。
【0152】
アデノウイルスベクターが複製欠損であるかまたは少なくとも条件的に欠損であるという必要条件以外に、アデノウイルスベクターの性質は、本発明の好首尾の実施に対して重大であるとは考えられない。このアデノウイルスは、42の異なる既知の血清型およびサブグループA〜Fのうちの任意のアデノウイルスであり得る。サブグループCのアデノウイルス5型は、本発明における使用のための条件的複製欠損アデノウイルスベクターを得るために好ましい出発材料である。これは、アデノウイルス5型が、たくさんの生化学的および遺伝的情報が既知であるアデノウイルスであり、そしてこれがアデノウイルスをベクターとして用いる大部分の構築のために歴史的に用いられているからである。
【0153】
上記で言及したように、本発明による代表的なベクターは、複製欠損であり、そしてアデノウイルスE1領域を有さない。従って、これは、形質転換構築物を、E1コード配列が除去された位置で導入するために最も便利である。しかし、アデノウイルス配列中での構築物の挿入位置は、本発明に重要ではない。NURRサブファミリーのメンバーをコードするポリヌクレオチドもまた、Karlssonら(1986)によって記載されたように、E3置換ベクター中の欠失したE3領域の代わりに、またはE4領域(ここで、ヘルパー細胞株またはヘルパーウイルスはE4欠損を補完する)中に挿入され得る。
【0154】
アデノウイルスの増殖および操作は、当業者に公知であり、そしてインビトロおよびインビボで広範な宿主域を示す。このグループのウイルスは、高い力価(例えば、1mlあたり109〜1011プラーク形成単位)で入手され得、そしてこれらは高度に感染性である。アデノウイルスの生活環は、宿主細胞ゲノムへの組込みを必要としない。アデノウイルスベクターによって送達される外来遺伝子はエピソーム性であり、それゆえ、宿主細胞に対して低い遺伝子毒性を有する。野生型アデノウイルスを用いたワクチン接種の研究において副作用は報告されておらず(Couchら,1963;Topら,1971)、このことは、インビボでの遺伝子移入ベクターとしてのこれらの安全性および治療可能性を実証する。
【0155】
アデノウイルスベクターは、真核生物遺伝子発現(Levreroら,1991;Gomez−Foixら,1992)およびワクチン開発(Grunhausおよび/またはHorwitz,1992;Grahamおよび/またはPrevec,1992)において用いられている。近年、動物研究は、組換えアデノウイルスが遺伝子治療のために使用され得ることを示唆した(Stratford−Perricaudetおよび/またはPerricaudet,1991a;Stratford−Perricaudetら,1991b;Richら,1993)。組換えアデノウイルスを異なる組織に投与する際の研究としては、気管点滴注入(Rosenfeldら,1991;Rosenfeldら,1992)、筋肉注射(Ragotら,1993)、末梢静脈内注射(Herzおよび/またはGerard,1993)および脳への定位接種(Le Gal La Salleら,1993)が挙げられる。組換えアデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス(以下を参照のこと)は、分裂していない哺乳動物初代細胞を感染および形質導入し得る。
【0156】
(b.アデノ随伴ウイルスベクター)
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、本発明の細胞形質導入において使用するための魅力的なベクター系である。なぜなら、AAVは、高い組込み頻度を有し、そしてAAVは分裂していない細胞を感染し得、それゆえ、AAVを、例えば、組織培養中(Muzyczka,1992)およびインビボでの、哺乳動物細胞への遺伝子の送達のために有用にしているからである。AAVは、感染性についての広い宿主域を有する(Tratschinら,1984;Laughlinら,1986;Lebkowskiら,1988;McLaughlinら,1988)。rAAVベクターの作製および使用に関する詳細は、各々本明細書中に参考として援用される、米国特許第5,139,941号および米国特許第4,797,368号に記載される。
【0157】
遺伝子送達におけるAAVの使用を実証する研究としては、LaFaceら(1988);Zhouら(1993);Flotteら(1993);およびWalshら(1994)が挙げられる。組換えAAVベクターは、マーカー遺伝子(Kaplittら,1994;Lebkowskiら,1988;Samulskiら,1989;Yoderら,1994;Zhouら,1994;Hermonatおよび/またはMuzyczka,1984;Tratschinら,1985;McLaughlinら,1988)または哺乳動物疾患に関与する遺伝子(Flotteら,1992;Luoら,1994;Ohiら,1990;Walshら,1994;Weiら,1994)のインビトロおよびインビボでの形質導入に好首尾に用いられている。近年、AAVベクターは、嚢胞性線維症の処置について第I相試験が承認された。
【0158】
AAVは、培養細胞において生産的感染を経るために別のウイルス(アデノウイルスまたはヘルペスウイルスファミリーのメンバーのいずれか)との同時感染を必要とする(Muzyczka,1992)という点で、依存性パルボウイルスである。ヘルパーウイルスでの同時感染が無ければ、野生型AAVゲノムは、その末端を介して第19染色体へと組み込まれ、ここで、このゲノムは、プロウイルスとして潜伏状態で存在する(Kotinら,1990;Samulskiら,1991)。しかし、rAAVは、AAV Repタンパク質もまた発現されるのでなければ、組込みは第19染色体に制限されない(ShellingおよびSmith,1994)。AAVプロウイルスを保有する細胞にヘルパーウイルスを重感染させた場合、AAVゲノムは、この染色体または組換えプラスミドから「レスキュー」され、そして正常な生産性感染が確立される(Samulskiら,1989;McLaughlinら,1988;Kotinら,1990;Muzyczka,1992)。
【0159】
代表的に、組換えAAV(rAAV)ウイルスは、2つのAAV末端反復配列が隣接している目的の遺伝子を含むプラスミド(McLaughlinら,1988;Samulskiら,1989;各々本明細書中に参考として援用される)および末端反復配列を含まない野生型AAVコード配列を含む発現プラスミド(例えば、pIM45(McCartyら,1991;本明細書中に参考として援用される))を同時トランスフェクトすることによって作製される。これらの細胞はまた、アデノウイルスまたはAAVヘルパー機能に必要とされるアデノウイルス遺伝子を保有するプラスミドでトランスフェクトされる。このような様式で作製されるrAAVウイルスストックは、rAAV粒子から(例えば、塩化セシウム密度勾配遠心によって)物理的に分離されなければならないアデノウイルスで汚染される。あるいは、AAVコード領域を含むアデノウイルスベクター、またはAAVコード領域およびアデノウイルスヘルパー遺伝子のいくつかもしくは全てを含む細胞株が使用され得る(Yangら,1994;Clarkら,1995)。組み込まれたプロウイルスとしてrAAV DNAを保有する細胞株もまた使用され得る(Flotteら,1995)。
【0160】
(c.レトロウイルスベクター)
レトロウイルスは、その遺伝子を宿主ゲノム中に組み込み、大量の外来遺伝物質を移入し、広範な範囲の種および細胞型に感染し、そして特別な細胞株にパッケージングされる能力に起因して、遺伝子送達ベクターとしての見込みがある(Miller,1992)。
【0161】
レトロウイルスは、逆転写のプロセスによって感染細胞においてそのRNAを二本鎖DNAへと変換する能力によって特徴付けられる、一本鎖RNAウイルスの群である(Coffin,1990)。次いで、得られたDNAは、細胞の染色体にプロウイルスとして安定に組み込まれ、そしてウイルスタンパク質の合成を指向する。この組込みは、レシピエント細胞およびその子孫においてウイルス遺伝子配列の保持をもたらす。このレトロウイルスゲノムは、キャプシドタンパク質、ポリメラーゼ酵素およびエンベロープ成分をそれぞれコードする3つの遺伝子(gag、polおよびenv)を含む。gag遺伝子の上流に見出される配列は、ビリオンへのゲノムのパッケージングのためのシグナルを含む。2つの長末端反復(LTR)配列は、ウイルスゲノムの5’末端および3’末端に存在する。これらは、強力なプロモーター配列およびエンハンサー配列を含み、そしてまた、宿主細胞ゲノムへの組込みのために必要とされる(Coffin,1990)。
【0162】
レトロウイルスベクターを構築するために、目的の遺伝子をコードする核酸は、特定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノムに挿入されて、複製欠損であるウイルスが得られる。ビリオンを産生するために、gag遺伝子、pol遺伝子およびenv遺伝子を含むがLTRおよびパッケージング成分を含まないパッケージング細胞株が構築される(Mannら,1983)。レトロウイルスのLTR配列およびパッケージング配列と一緒にcDNAを含む組換えプラスミドは、この細胞株に(例えば、リン酸カルシウム沈澱によって)導入され、このパッケージング配列は、組換えプラスミドのRNA転写産物がウイルス粒子中にパッケージングされるのを可能にし、次いでこのウイルス粒子は、培養培地中に分泌される(Nicolasおよび/またはRubenstein,1988;Temin,1986;Mannら,1983)。次いで、組換えレトロウイルスを含む培地が収集され、必要に応じて濃縮され、そして遺伝子移入のために用いられる。レトロウイルスベクターは、広範な種々の細胞型に感染し得る。しかし、組込みおよび安定な発現は、宿主細胞の分裂を必要とする(Paskindら,1975)。
【0163】
欠損レトロウイルスベクターの使用に関する懸念は、パッケージング細胞における、複製能力のある野生型ウイルスの出現の可能性である。これは、組換えウイルス由来のインタクトな配列が、宿主細胞のゲノムに組み込まれているgag配列、pol配列およびenv配列の上流に挿入される組換え事象から生じ得る。しかし、組換えの確率を大いに減少させるはずである、新たなパッケージング細胞株は現在入手可能である(Markowitzら,1988;Hersdorfferら,1990)。
【0164】
第二世代のレトロウイルスベクターを用いた遺伝子送達が報告されている。Kasaharaら(1994)は、ウイルスが、エリスロポイエチン(EPO)レセプターを保有する哺乳動物細胞に特異的に結合し、そして感染するようにエンベロープタンパク質を改変した、モロニーマウス白血病ウイルス(これは通常、マウス細胞にのみ感染する)の操作された改変体を調製した。これは、EPO配列の一部をエンベロープタンパク質に挿入して、新たな結合特異性を有するキメラタンパク質を作製することによって達成された。
【0165】
(d.他のウイルスベクター)
他のウイルスベクターは、本発明において発現構築物として用いられ得る。ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス(Ridgeway,1988;Baichwalおよび/またはSugden,1986;Couparら,1988)、シンドビスウイルス、サイトメガロウイルスおよび 単純疱疹ウイルス)由来のベクターが用いられ得る。これらは、種々の哺乳動物細胞についてのいくつかの魅力的な特徴を提供する(Friedmann,1989;Ridgeway,1988;Baichwalおよび/またはSugden,1986;Couparら,1988;Horwichら,1990)。
【0166】
欠損B型肝炎ウイルスの認識に関して、異なるウイルス配列の構造−機能の関係についての新たな洞察が得られた。インビトロ研究は、ウイルスは、そのゲノムの80%までの欠失にもかかわらず、ヘルパー依存性パッケージングおよび逆転写についての能力を保持し得ることを示した(Horwichら,1990)。これは、このゲノムの大きな部分が、外来遺伝物質で置換され得ることを示唆した。Changらは近年、アヒルB型肝炎ウイルスゲノム中で、ポリメラーゼコード配列、表面コード配列およびプレ表面(pre−surface)コード配列の場所に、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子を導入した。これを、野生型ウイルスと共にトリ肝細胞癌細胞株中に同時トランスフェクトした。高力価の組換えウイルスを含む培養培地を用いて、初代仔アヒル肝細胞に感染させた。安定なCAT遺伝子発現が、トランスフェクション後少なくとも24日間にわたって検出された(Changら,1991)。
【0167】
特定のさらなる実施形態では、この遺伝子治療ベクターは、HSVである。HSVを魅力的なベクターとする要因は、大きさおよびゲノム構成である。HSVは大きいので、複数の遺伝子または発現カセットの取り込みは、より小さな他のウイルス系においてよりも、問題が少ない。さらに、種々の性能(時間的、強度など)を有する異なるウイルス制御配列の入手可能性は、他の系においてよりも高い程度に発現を制御することを可能にする。このウイルスが比較的少ないスプライスメッセージを有し、遺伝子操作をさらに容易にすることもまた有利である。HSVはまた、操作するのが比較的容易であり、そしてより高い力価まで増殖され得る。従って、送達は、充分なMOIを得るために必要な容積および反復投薬の必要性の低下の両方に関して問題がより少ない。
【0168】
(e.改変ウイルス)
本発明のなおさらなる実施形態では、送達されるべき核酸は、特異的結合リガンドを発現するように操作された感染性ウイルス内に収容される。従って、このウイルス粒子は、標的細胞の同族レセプターに特異的に結合し、そしてその内容物をその細胞へと送達する。レトロウイルスベクターの特異的標的化を可能にするように設計された新規なアプローチは、ウイルスエンベロープへのラクトース残基の化学的付加によるレトロウイルスの化学的改変に基づいて近年開発された。この改変は、シアロ糖タンパク質レセプターを介した肝細胞の特異的感染を可能にし得る。
【0169】
レトロウイルスエンベロープタンパク質に対するビオチン化抗体または特異的細胞レセプターに対するビオチン化抗体が用いられる、組換えレトロウイルスの標的化に対する別のアプローチが設計された。この抗体は、ストレプトアビジンを用いることによって、ビオチン成分を介してカップリングされた(Rouxら,1989)。主要組織適合遺伝子複合体のクラスI抗原およびクラスII抗原に対する抗体を用いて、彼らは、インビトロでエコトロピックウイルスでの、これらの表面抗原を保有する種々の哺乳動物細胞の感染を実証した(Rouxら,1989)。
【0170】
(抗体調製)
本発明の特定の局面では、発現されたNURRサブファミリーのメンバーおよびCRHレセプターに対する1以上の抗体が、産生され得る。これらの抗体は、本明細書中以下に記載される、種々の診断適用または治療適用において用いられ得る。
【0171】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、任意の免疫学的結合因子(例えば、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE)を広範にいうことを意図する。一般に、IgGおよび/またはIgMが好ましい。なぜなら、これらは生理学的状況において最も普通の抗体であり、そしてこれらは実験室環境において最も容易に作製されるからである。
【0172】
用語「抗体」は、抗原結合領域を有する任意の抗体様分子をいうように用いられ、そして抗体フラグメント(例えば、Fab’、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、scFv(単鎖Fv)などを含む。種々の抗体ベースの構築物およびフラグメントを調製および使用するための技術は、当該分野で周知である。抗体を調製および特徴付けするための手段もまた、当該分野で周知である(例えば、本明細書中に参考として援用される、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照のこと)。
【0173】
モノクローナル抗体(MAb)は、特定の利点(例えば、再現性および大規模)産生を有すると認識され、そしてそれらの使用は一般に好ましい。従って、本発明は、ヒト、マウス、サル、ラット、ハムスター、ウサギおよびさらにニワトリ起源のモノクローナル抗体を提供する。調製の容易さおよび試薬の入手し易さに起因して、マウスモノクローナル抗体はしばしば好ましい。
【0174】
しかし、「ヒト化」抗体もまた意図され、ヒトの定常領域ドメインおよび/または可変領域ドメインを保有する、マウス、ラットまたは他の種由来のキメラ抗体、二重特異性抗体、組換えおよび操作された抗体、ならびにそれらのフラグメントも同様である。
【0175】
(a.ポリクローナル抗体)
NURRサブファミリーのメンバーに対するポリクローナル抗体およびCRHレセプターに対するポリクローナル抗体は一般に、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターおよびアジュバントの複数の皮下(sc)注射または腹腔内(ip)注射によって、動物において惹起される。二官能性因子または誘導体化因子(例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(シスチン残基を通した結合体化)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を通す)、グルタルアルデヒド(glytaraldehyde)、無水コハク酸、SOCl2またはR1N=C=NR(ここで、RおよびR1は異なるアルキル基である)を用いて、NURRサブファミリーのメンバーもしくはCRHレセプター、または標的アミノ酸配列を含むフラグメントを、免疫されるべき種において免疫原性であるタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリンまたはダイズトリプシンインヒビター)に対して結合体化することは有用であり得る。
【0176】
動物は、1mgまたは1μgの結合体(それぞれ、ウサギまたはマウスについて)を3容量のFreud完全アジュバントと合わせ、そしてこの溶液を複数部位で皮内注射することによって、免疫原性結合体または免疫原性誘導体に対して免疫される。1ヵ月後、この動物は、複数部位での皮下注射によってFreud完全アジュバント中の結合体(元の量の1/5〜1/10)でブーストされる。7日後〜14日後、この動物は採血され、そして血清は、抗NURR抗CRHレセプター抗体力価についてアッセイされる。動物は、力価がプラトーに達するまでブーストされる。好ましくは、この動物は、同じNURRサブファミリーのメンバーの結合体または同じCRHレセプターの結合体であるが、異なるタンパク質へと、または異なる架橋連結試薬を通して結合体化されている結合体でブーストされる。結合体はまた、組換え細胞培養においてタンパク質融合体として作製され得る。また、凝集剤(例えば、ミョウバン)は、免疫応答を増強するために用いられる。
【0177】
(b.モノクローナル抗体)
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の集団(すなわち、集団を構成する個々の抗体が、微量に存在し得る、あり得る天然に存在する変異以外は同一である)から入手される。従って、修飾語「モノクローナル」は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。例えば、本発明の抗NURRモノクローナル抗体または抗CRHレセプターモノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein,1975によって最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製され得るか、または組換えDNA方法(Cabillyら,米国特許第4,816,567号)によって作製され得る。ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物(例えば、ハムスター)が、本明細書中上記のように免疫されて、免疫のために用いられたタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するかまたはこの抗体を産生し得るリンパ球が惹起される。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫され得る。次いで、リンパ球は、適切な融合剤(例えば、ポリエチレングリコール)を用いてミエローマ細胞と融合されて、ハイブリドーマ細胞が形成される(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,59−103頁(Academic Press,1986))。このようにして調製されたハイブリドーマ細胞は、好ましくは、融合していない親ミエローマ細胞の増殖または生存を阻害する1以上の物質を含む適切な培養培地中に播種され、そして増殖される。例えば、親ミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマについての培養培地は代表的に、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(HAT培地)を含み、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の増殖を妨害する。
【0178】
好ましいミエローマ細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの発現を支持し、そしてHAT培地のような培地に感受性である、ミエローマ細胞である。とりわけ、好ましいミエローマ細胞株は、マウスミエローマ株(例えば、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,Calif.USAから入手可能な、MOPC−21マウス腫瘍およびMPC−11マウス腫瘍から誘導されたミエローマ細胞、ならびにAmerican Type Culture Collection,Rockville,Md.USAから入手可能なSP−2細胞)である。ハイブリドーマ細胞が増殖される培養培地は、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターに対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合アッセイ(例えば、放射免疫アッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))によって決定される。このモノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、MunsonおよびPollard,1980のScatchard分析によって決定され得る。所望の特異性、親和性および活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンは限界希釈手順によってサブクローニングされ得、そして標準的な方法によって増殖され得る。この目的のために適切な培養培地としては、例えば、Dulbecco’s Modified Eagle’s MediumまたはRPMI−1640培地が挙げられる。さらに、ハイブリドーマ細胞は、動物中の腹水腫瘍としてインビボで増殖され得る。
【0179】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、培養培地、腹水または血清から、従来の免疫グロブリン精製手順(例えば、プロテインA−Sepharose、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーなど)によって適切に分離される。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離および配列決定される。本発明のハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として役立つ。一旦単離されると、このDNAは、発現ベクター中に配置され得、次いでこの発現ベクターは、他の場合には免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞(例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはミエローマ細胞)中にトランスフェクトされて、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成が得られる。このDNAはまた、例えば、相同なマウス配列の代わりに、ヒトの重鎖および軽鎖の定常ドメインについてのコード配列で置換することによって(Morrisonら,1984)、または免疫グロブリンコード配列に対して、非免疫グロブリンポリペプチドについてのコード配列の全てもしくは一部を共有結合的に連結することによって、改変され得る。このような様式で、本明細書中の抗NURRレセプターモノクローナル抗体または抗CRHレセプターモノクローナル抗体の結合特異性を有する、「キメラ」抗体または「ハイブリッド」抗体が調製される。代表的に、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインを置換するか、またはこれらは、本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインを置換して、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターについての特異性を有する1つの抗原結合部位、および異なる抗原についての特異性を有する別の抗原結合部位を含む、キメラ二価抗体を作製する。
【0180】
キメラ抗体またはハイブリッド抗体もまた、合成タンパク質化学において公知の方法(架橋剤を含む方法を含む)を用いて、インビトロで調製され得る。例えば、免疫毒素(immunotoxin)は、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成することによって、構築され得る。この目的のための適切な試薬の例としては、イミノチオレート(iminothiolate)およびメチル−4−メルカプトブチルイミデートが挙げられる。診断適用については、本発明の抗体は代表的に、検出可能な部分で標識される。この検出可能な部分は、直接的または間接的のいずれかで、検出可能なシグナルを産生し得る、任意の部分であり得る。例えば、この検出可能な部分は、放射性同位体(例えば、3H、14C、32P、35Sまたは125I)、蛍光化合物もしくは化学発光化合物(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミンまたはルシフェリン);ビオチン;放射性同位体標識(例えば、例えば、125I、32P、14Cまたは3H)または酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ)であり得る。抗体を検出可能な部分に対して別々に結合体化するための当該分野で公知の任意の方法(Hunterら,1962;Davidら,1974;Painら,1981;およびNygren,1982によって記載される方法を含む)が用いられ得る。
【0181】
本発明の抗体は、任意の公知のアッセイ方法(例えば、競合結合アッセイ、直接的および間接的なサンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイ)において用いられ得る。Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,147−158頁(CRC Press,Inc.,1987)。競合結合アッセイは、標識された標準物質(これは、NURRサブファミリーのメンバーもしくはCRHレセプターまたはこれらの免疫学的反応性部分であり得る)が、制限された量の抗体との結合について試験サンプル分析物(NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプター)と競合する能力に頼る。試験サンプルにおけるNURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターの量は、この抗体と結合した標準物質の量と逆に比例する。結合した標準物質の量を決定することを容易にするために、この抗体は一般的に、この抗体に結合した標準的物質および分析物が、結合していないままの標準物質および分析物から便利に分離され得るように、競合の前または後で不溶化される。サンドイッチアッセイは、2つの抗体(各々、検出されるべきタンパク質の異なる免疫原性部分(すなわち、エピトープ)に結合し得る)の使用を含む。サンドイッチアッセイでは、試験サンプル分析物は、固体支持体上に固定化された第一抗体によって結合されており、その後、第二抗体が分析物を結合し、従って、不溶性の三部複合体を形成する。DavidおよびGreene,米国特許第4,376,110号。第二抗体は、検出可能な部分でそれ自体標識され得る(直接的サンドイッチアッセイ)か、または検出可能な部分で標識された抗免疫グロブリン抗体を用いて測定され得る(間接的サンドイッチアッセイ)。例えば、1つの型のサンドイッチアッセイはELISAアッセイであり、この場合、検出可能な部分は酵素である。
【0182】
((iii)ヒト化抗体)
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基はしばしば、「輸入(import)」残基といわれ、輸入残基は代表的に、「輸入」可変ドメインから採取される。ヒト化は、Winterおよび共同実験者ら(Jonesら,1986);Riechmannら,1988;Verhoeyenら,1988の方法に従って、齧歯類のCDRまたはCDR配列で、ヒト抗体の対応する配列を置換することによって、本質的に行われ得る。従って、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(Cabilly,前出)であり、ここで、インタクトなヒト可変ドメインよりも実質的に小さいドメインが、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている。実際問題として、ヒト化抗体は代表的に、いくつかのCDR残基およびおそらくいくつかのFR残基が、齧歯類抗体における類似の部位由来の残基によって置換されているヒト抗体である。
【0183】
抗体が、抗原に対する高い親和性および他の好ましい生物学的特性を保持しながらヒト化されることが重要である。この目的を達成するために、好ましい方法に従って、ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを用いて、親配列および種々の概念的ヒト化産物の分析プロセスによって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、当業者にとって通常入手可能であり、そして当業者はこれに精通している。選択された候補免疫グロブリン配列のありそうな三次元コンホメーション構造を例示および提示する、コンピュータプログラムが入手可能である。これらのディスプレーの検査は、候補免疫グロブリンアミノ酸の機能における残基の、ありそうな役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を与える残基の分析を可能にする。このようにして、FR残基は、所望の抗体特徴(例えば、標的抗原についての親和性の増大)が達成されるように、コンセンサス配列および輸入配列から選択され得、そして組み合わされ得る。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に直接的かつ最も実質的に関与する。さらなる詳細については、1998年10月13日に出願された米国特許5,821,337を参照のこと。
【0184】
(d.ヒト抗体)
ヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法によって作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒトミエローマ株およびマウス−ヒトへテロミエローマ細胞株は、例えば、Kozbor,J.Immunol.(1984)およびBrodeurら,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51−63頁(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)によって記載されている。現在、免疫されると、内在性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体のレパートリーを産生し得るトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが可能である。例えば、キメラでおよび生殖系列変異体マウスにおける抗体の重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失は、内在性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移入は、抗原チャレンジされると、ヒト抗体の産生をもたらす。例えば、Jakobovitsら,1993;Jakobovitsら,1993を参照のこと。あるいは、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら,1990)を用いて、非免疫ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、ヒト抗体および抗体フラグメントをインビトロで産生し得る。この技術に従って、抗体Vドメイン遺伝子は、糸状バクテリオファージ(例えば、M13またはfd)の主要コートタンパク質遺伝子またはマイナーコートタンパク質のいずれかに対してインフレームでクローニングされ、そしてファージ粒子の表面上で機能的抗体フラグメントとして提示される。糸状粒子はこのファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むので、抗体の機能的特性に基づく選択もまた、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択をもたらす。従って、このファージは、B細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレーは、種々の形式で行われ得る;これらの概説については、例えば、Johnson,Kevin S.およびChiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology 3,564−571(1993)を参照のこと。V遺伝子セグメントのいくつかの供給源は、ファージディスプレイのために用いられ得る。Clacksonら,Nature 352,624−628(1991)は、免疫したマウスの脾臓由来のV遺伝子の小さなランダムコンビナトリアルライブラリーから抗オキサゾロン(oxazolone)抗体の多様なアレイを単離した。免疫していないヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーが構築され得、そして多様なアレイの抗原(自己抗原を含む)に対する抗体は、Marksら,1991またはGriffithら,1993に記載される技術に本質的に従って単離され得る。
【0185】
天然の免疫応答では、抗体遺伝子は、変異を高い割合で蓄積する(体細胞超変異)。導入された変化のいくつかは、高い親和性を与え、そして高親和性表面免疫グロブリンを提示するB細胞は、その後の抗原チャレンジの間に優先的に複製され、そして分化する。この天然のプロセスは、「鎖シャッフリング」(Marksら,1992)として公知の技術を用いることによって模倣され得る。この方法では、ファージディスプレーによって得られた「一次」ヒト抗体の親和性は、重鎖および軽鎖のV領域の遺伝子を、免疫していないドナーから得られたVドメイン遺伝子の天然に存在する改変体(レパートリー)のレパートリーで順次置換することによって改善され得る。この技術は、nMの範囲の親和性を有する抗体および抗体フラグメントの産生を可能にする。非常に大きなファージ抗体レパートリー(「全てのライブラリーの母(mother−of−all libraries)」としても公知)を作製するためのストラテジーは、Waterhouseら,1993によって記載されており、そして高親和性ヒト抗体は、既に報告されたような大きなファージライブラリーから直接単離され得る。遺伝子シャッフリングをまた用いて、齧歯類抗体からヒト抗体を誘導し得、ここで、ヒト抗体は、出発齧歯類抗体に対して類似の親和性および特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法に従って、ファージディスプレイ技術によって得られる齧歯類抗体の重鎖または軽鎖のVドメイン遺伝子は、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置換されて、齧歯類−ヒトキメラが作製される。抗原についての選択は、機能的抗原結合部位を保有し得る、すなわち、エピトープがパートナーの選択を支配する(インプリントする)、ヒト可変部の単離をもたらす。残りの齧歯類Vドメインを置換するためにこのプロセスが繰り返される場合、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日に公開されたPCT特許出願WO 93/06213を参照のこと)。CDRグラフト化による齧歯類抗体の伝統的なヒト化とは異なり、この技術は、齧歯類起源のフレームワーク残基もCDR残基も有さない、ヒト抗体を完全に提供する。
【0186】
(e.二重特異性抗体)
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原についての特異性を有する、モノクローナル(好ましくはヒトまたはヒト化)抗体である。本発明の場合、結合特異性のうちの一方は、NURRサブファミリーのメンバーについてまたはCRHレセプターについてであり、他方は任意の他の抗原についてであり、そして好ましくは別のレセプターまたはレセプターサブユニットについてである。例えば、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターおよび神経栄養因子を特異的に結合するか、または2つの異なるNURRサブファミリーのメンバーもしくは2つの異なるCRHレセプターを特異的に結合する二重特異性抗体は、本発明の範囲内にある。二重特異性抗体を作製するための方法は当該分野で公知である。伝統的に、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリンの重鎖−軽鎖対の同時発現に基づき、ここで、2つの重鎖は、異なる特異性を有する(MillsteinおよびCuello,1983)。免疫グロブリンのランダムな一組の重鎖および軽鎖に起因して、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の潜在的混合物を産生し、このうち、1つのみが正確な二重特異性構造を有する。正確な分子の精製(これは通常、アフィニティークロマトグラフィー工程によって行われる)はかなり扱いにくく、そして産物の収率は低い。同様の手順は、PCT出願公開番号WO 93/08829(1993年5月13日公開)およびTrauneckerら,1991に開示される。
【0187】
異なりかつより好ましいアプローチに従って、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリンの定常ドメイン配列に融合される。融合は好ましくは、ヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリンの重鎖定常ドメインとである。融合物の少なくとも1つに存在する、軽鎖の結合のために必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリンの重鎖融合物をコードするDNAおよび所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別々の発現ベクター中に挿入され、そして適切な宿主生物体へと同時トランスフェクトされる。これは、構築において用いられる等しくない比の3つのポリペプチド鎖が最適な収率を提供する実施形態において、3つのポリペプチドフラグメントの相互の比率を調整する際に大きな融通性を提供する。しかし、等しい比の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高い収率をもたらす場合、またはこの比が何の特別な重要性も無い場合、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖についてのコード配列を、1つの発現ベクター中に挿入することが可能である。このアプローチの好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームにおいて第一の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および他方のアームにおけるハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)から構成される。この非対称構造が、所望の二重特異性化合物の、望ましくない免疫グロブリン鎖の組合せからの分離を容易にすることが見出された。二重特異性分子の一方のみにおける免疫グロブリン軽鎖の存在が、容易な分離方法を提供する。このアプローチは、1992年8月17日に出願した同時係属中の出願第07/931,811号に開示される。二重特異性抗体を作製するさらなる詳細については、例えば、Sureshら,1986を参照のこと。
【0188】
(f.ヘテロ結合体抗体)
ヘテロ結合体抗体もまた、本発明の範囲内にある。ヘテロ結合体抗体は、共有結合的に連結された2つの抗体から構成される。このような抗体は、例えば、望ましくない細胞に対して免疫系細胞を標的化するために(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染の処置について(PCT出願公開番号WO 91/00360および同WO 92/200373;EP 03089)提唱されている。ヘテロ結合体抗体は、任意の便利な架橋方法を用いて作製され得る。適切な架橋剤は当該分野で周知であり、そして多数の架橋技術と共に米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0189】
(免疫検出方法)
なおさらなる実施形態では、本発明は、生物学的成分(例えば、NURRサブファミリーのメンバーおよびCRHレセプターサブタイプのタンパク質成分)を結合、精製、除去、定量およびさもなければ一般的に検出するための、免疫検出方法に関する。本発明に従って調製される、NURRサブファミリーのメンバーおよびCRHレセプターサブタイプの抗体を用いて、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドが検出され得る。本出願を通して記載されるように、NURRサブファミリーのメンバーおよびCRHレセプターサブタイプに特異的な抗体の使用が意図される。いくつかの免疫検出方法としては、いくつか言及すると、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、免疫放射定量アッセイ、蛍光免疫アッセイ、化学発光アッセイ、生物発光アッセイおよびウェスタンブロットが挙げられる。種々の有用な免疫検出方法の工程は、科学文献(各々本明細書中に参考として援用される、例えば、Doolittle MEおよびBen−Zeev O,1999;Gulbis BおよびGaland P,1993;De Jager Rら,1993;ならびにNakamuraら,1987)に記載されている。
【0190】
一般に、免疫結合方法は、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含む疑いのあるサンプルを得る工程、およびこのサンプルを、本発明に従って、第一の抗NURR抗体または抗CRH抗体と、場合によっては条件下で、免疫複合体の形成を可能にするに有効な条件下で接触させる工程を含む。
【0191】
これらの方法としては、NURRサブファミリーのメンバーおよびCRHレセプターのタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドを患者のサンプルから精製する際に用いられ得るように、NURRサブファミリーのメンバーおよびCRHレセプターのタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドを精製するための方法、ならびに組換え発現されたNURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドを精製するための方法が挙げられる。これらの例では、この抗体は、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターサブタイプのタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの抗原性成分をサンプルから除去する。この抗体は好ましくは、固体支持体(例えば、カラムマトリックスの形態で)連結され、そしてNURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質の抗原性成分を含む疑いのあるサンプルは、固定された抗体に適用される。望ましくない成分はカラムから洗浄され、固定された抗体に免疫複合体化した抗原が残され、次いで、このNURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質抗原は、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質またはペプチドをカラムから取り出すことによって収集される。
【0192】
免疫結合方法はまた、サンプル中の、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質と反応性の成分の量を検出および定量するための方法、ならびに結合プロセスの間に形成された任意の免疫複合体の検出および定量を包含する。ここで、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターサブタイプのタンパク質またはペプチドを含む疑いのあるサンプルを得、そしてこのサンプルを、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターサブタイプに対する抗体と接触させ、次いで、特定の条件下で形成された免疫複合体の量を検出および定量する。
【0193】
抗原検出に関して、分析される生物学的サンプルは、NURRサブファミリーのメンバーおよび/またはCRHレセプターサブタイプのタンパク質に特異的な抗原を含む疑いのある任意のサンプル(例えば、炎症性滑膜組織の切片または標本、ホモジナイズした炎症性滑膜組織抽出物、炎症性滑膜の細胞、NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質を含有する組成物の上記のいずれかの分離および精製された形態またはさらには炎症性滑膜組織と接触する任意の生物学的流体(例えば、滑液)であり得るが、組織サンプルまたは抽出物が好ましい。NURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質に特異的な抗原を含む疑いのあり得る炎症性免疫疾患としては、慢性炎症性関節疾患、潰瘍性大腸炎、甲状腺炎、関節炎、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎として分類される状態のコレクションが挙げられるがこれらに限定されない。
【0194】
選択された生物学的サンプルを、免疫複合体(一次免疫複合体)の形成を可能にするに有効な条件下でかつそれに充分な期間にわたって抗体と接触させることは一般に、抗体組成物をサンプルに単に添加し、そして抗体が、存在する任意のNURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプタータンパク質抗原と免疫複合体を形成する、すなわち、結合するに充分に長い期間にわたって混合物をインキュベートする問題である。この時間の後、サンプル−抗体組成物(例えば、組織切片、ELISAプレート、ドットブロットまたはウェスタンブロット)は一般に洗浄されて、あらゆる非特異的に結合した抗体種が除去され、一次免疫複合体中に特異的に結合された抗体のみが検出されるのを可能にする。
【0195】
一般に、免疫複合体形成の検出は、当該分野で周知であり、そして多数のアプローチの適用を通して達成され得る。これらの方法は一般に、標識またはマーカー(例えば、放射性タグ、蛍光タグ、生物学的タグおよび酵素的タグのいずれか)の検出に基づく。このような標識の使用に関する米国特許としては、各々本明細書中に参考として援用される、3,817,837;3,850,752;3,939,350;3,996,345;4,277,437;4,275,149および4,366,241が挙げられる。もちろん、当該分野で公知であるように、二次結合リガンド(例えば、第二の抗体またはビオチン/アビジンリガンド結合配置)の使用を通してさらなる利点を見出し得る。
【0196】
検出において用いられるNURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターの抗体は、それ自体、検出可能な標識に連結され得、次いで、この標識を単に検出し、それによって組成物中の一次免疫複合体の量が決定されるのを可能にする。あるいは、一次免疫複合体中に結合された第一の抗体は、この抗体についての結合親和性を有する二次結合リガンドによって検出され得る。これらの場合、第二の結合リガンドは、検出可能な標識に対して連結され得る。第二の結合リガンドはしばしば、それ自体抗体であり、従ってこのリガンドは、「二次」抗体と呼ばれ得る。一次免疫複合体を、標識された二次結合リガンド(すなわち、抗体)と、二次免疫複合体の形成を可能にするに有効な条件下でかつそれに充分な期間にわたって接触させる。次いで、二次免疫複合体は一般に洗浄されて、非特異的に結合したあらゆる標識二次抗体またはリガンドが除去され、次いで、二次免疫複合体中の残りの標識が検出される。
【0197】
さらなる方法は、二工程アプローチによる一次免疫複合体の検出を含む。抗体についての結合親和性を有する第二の結合リガンド(例えば、抗体)は、上記のような、二次免疫複合体を形成するために用いられる。洗浄後、二次免疫複合体を、第二の抗体についての結合親和性を有する第三のリガンドまたは抗体と、再度、免疫複合体(三次免疫複合体)の形成を可能にするに有効な条件下でかつそれに充分な期間にわたって接触させる。第三のリガンドまたは抗体は、検出可能な標識へと連結されて、このようにして形成された三次免疫複合体の検出を可能にする。この系は、シグナル増幅が所望される場合、シグナル増幅を提供し得る。
【0198】
Charles Cantorによって設計された免疫検出の1つの方法は、2つの異なる抗体を使用する。第一の工程のビオチン化モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて標的抗原が検出され、次いで第二工程の抗体を用いて、複合体化したビオチンに結合したビオチンが検出される。この方法では、試験されるべきサンプルは、第一工程抗体を含む溶液中で最初にインキュベートされる。標的抗原が存在する場合、抗体のうちのいくつかは抗原に結合して、ビオチン化抗体/抗原複合体を形成する。次いで、抗体/抗原複合体は、ストレプトアビジン(またはアビジン)、ビオチン化DNAおよび相補的ビオチン化DNAの連続溶液中でのインキュベーションによって増幅され、各工程は、さらなるビオチン部位を抗体/抗原複合体に添加する。この増幅工程は、適切な増幅レベルが達成されるまで繰り返され、これが達成された時点で、サンプルは、ビオチンに対する第二工程抗体を含む溶液中でインキュベートされる。この第二工程抗体は、例えば、色素原基質を用いた組織酵素学によって抗体/抗原複合体の存在を検出するために用いられ得る酵素を用いてのように、標識される。適切な増幅を用いて、巨視的に見える結合体が産生され得る。
【0199】
別の公知の免疫検出方法は、免疫−PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)方法論を利用する。このPCR方法は、ビオチン化DNAとのインキュベーションまではCantor法に類似するが、複数回のストレプトアビジンおよびビオチン化DNAインキュベーションを用いる代わりに、DNA/ビオチン/ストレプトアビジン/抗体複合体は、この抗体を放出させる低いpHまたは高塩緩衝液を用いて洗浄される。次いで、得られた洗浄溶液は、適切なコントロールと共に適切なプライマーを用いてPCR反応を実施するために用いられる。少なくとも理論的には、PCRの莫大な増幅能力および特異性を利用して、単一抗原分子を検出し得る。
【0200】
本発明の免疫検出方法は、種々の形態の炎症性免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ)のような状態の診断および予後において明らかな有用性を有する。ここで、野生型または変異体のNURRサブファミリーのメンバーまたはCRHレセプターのタンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたは変異体を含む疑いのある生物学的サンプルまたは臨床的サンプルが用いられる。しかし、これらの実施形態はまた、(例えば、例えば、ハイブリドーマの選択において、抗原または抗体のサンプルの力価測定において)非臨床サンプルに対する適用を有する。
【0201】
種々の形態の炎症性免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ)を有する患者の臨床診断および/またはモニタリングにおいて、NURRサブファミリーのメンバーおよびCRHレセプターのタンパク質、ポリペプチド、ペプチドもしくは変異体の検出、または正常被験体由来の、対応する生物学的サンプルにおいて観察されたレベルと比較した、NURRサブファミリーのメンバーおよびCRHレセプターのレベルにおける変更は、特定の実施形態では、炎症性免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ)を有する患者の指標である。しかし、当業者に公知のように、このような臨床診断は、かならずしも、孤立してこの方法に基づいてなされるわけではない。当業者は、生体マーカーの種類および量における顕著な差を識別することに非常に精通しており、これは、正の同定を表すか、または生体マーカーの低レベルおよびバックグラウンドの変化を表す。実際、バックグラウンドの発現レベルはしばしば、「カットオフ」を形成するために用いられ、カットオフよりも上の増大した検出は、顕著でかつポジティブとスコア付けされる。
【0202】
(a.免疫組織化学)
本発明の抗体はまた、免疫組織化学(IHC)による研究のために調製された、新鮮に凍結されたパラフィン包埋された組織ブロック、およびホルマリン固定されパラフィン包埋された組織ブロックの両方に関連して用いられ得る。標本から組織ブロックを調製する方法は、種々の予後因子の以前のIHC研究において好首尾に用いられており、そして当業者に周知である(Brownら,1990;Abbondanzoら,1990;Allredら,1990)。
【0203】
手短に述べると、凍結切片は、50ngの凍結した「粉末化」組織を、小さなプラスチックカプセル中のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中で室温で再水和し;遠心分離によって粒子をペレット化し;粘着性の包埋媒体(OCT)中にこれらを再懸濁し;カプセルを反転し、そして遠心分離によって再度ペレット化し;−70℃のイソペンタン中で急速凍結し;プラスチックカプセルを切断し、そして組織の凍結円柱を除去し;組織円柱をクリスタットミクロトームチャック上に固定し;そして25〜50個の連続切片を切断することによって調製され得る。
【0204】
永続切片は、プラスチック製の微量遠心管中での50mgのサンプルを再水和し;ペレット化し;4時間の固定のために10%ホルマリン中で再懸濁し;洗浄/ペレット化し;温めた2.5%寒天中に再懸濁し;ペレット化し;氷水中で冷却して寒天を固くし;組織/寒天ブロックをこの管から取り出し;このブロックをパラフィン中に浸潤または包埋し;そして50個までの連続永久切片を切断することを含む類似の方法によって調製され得る。
【0205】
(非タンパク質発現配列)
特定の実施形態では、NURRサブファミリーの核酸配列またはCRHレセプターは、翻訳されないメッセージを発現し得る。DNAは、表現型に影響を与えるように作用するがタンパク質には翻訳されないRNA転写産物を発現する目的のために生物体中に導入され得る。2つの例は、アンチセンスRNAおよびリボザイム活性を有するRNAである。両方とも、ネイティブな遺伝子または導入された遺伝子の発現を低減または排除する際に、可能な機能を果たし得る。しかし、以下に詳述されるように、DNAは、生物体の表現型をもたらすために発現される必要がない。
【0206】
(a.アンチセンスRNA)
特定の局面では、NURRサブファミリーの核酸配列またはCRHレセプターは、アンチセンスメッセージを発現し得る。転写された場合に、標的とされるメッセンジャーRNAの全てまたは一部に相補的であるアンチセンスRNAを産生する核酸(特に、遺伝子由来の核酸)が構築または単離され得る。このアンチセンスRNAは、このメッセンジャーRNAのポリペプチド産物の産生を低減する。このポリペプチド産物は、細胞のゲノムによってコードされる任意のタンパク質であり得る。上記の遺伝子は、アンチセンス遺伝子と呼ばれる。従って、アンチセンス遺伝子は、形質転換方法によって細胞へと導入されて、選択された目的のタンパク質の発現が低減した新規なトランスジェニック細胞または生物体が産生され得る。例えば、このタンパク質は、細胞または生物体中の反応を触媒する酵素であり得る。酵素活性の低減は、細胞または生物体中で任意の酵素的に合成された化合物(例えば、脂肪酸、アミノ酸、糖質、核酸など)を含む反応の産物を低減または排除し得る。
【0207】
以下の実施例は、例示として提供され、本発明の範囲をどのようにも限定することは意図されない。
【0208】
(実施例1:ヒト炎症性滑膜組織におけるCRH mRNAの産生)
CRH mRNAがヒト炎症性滑膜において末梢的に発現されるか否かを調べるために、RT−PCRを用いて、RAを有する患者の関節(n=6、1.80+/−0.87)、PsAを有する患者の関節(n=6、0.81+/−0.6)、SAを有する患者の関節(n=2、1.20+/−0.4)から得た滑膜組織および正常滑膜(n=2)中のCRH mRNAレベルを比較した。全ての疾患群は、正常滑膜と比較した場合、有意に上昇したCRH mRNAレベル(P<0.01)を有していた(図1Aおよび図1B)。ハウスキーピング遺伝子であるグルタルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)の発現レベルは、全ての患者において類似していた。
【0209】
総RNAを、ヒトCRHおよびGAPDHに対するプライマーを用いるRT−PCRによって分析した。(図1A)正常ヒト滑膜(Nor)、乾癬性関節炎と診断された患者(PsA)、慢性関節リウマチと診断された患者(RA)およびサルコイド関節炎と診断された患者(SA)。(図1B)示した値は、平均+/−SEである。*は、正常滑膜と比較してP<0.01を示す。
【0210】
(実施例2:初代ヒト滑膜細胞におけるCRHの発現)
CRHを発現する細胞の起源を同定するために、単離された初代ヒト滑膜細胞におけるCRH mRNAの発現を調査した。滑膜細胞は、炎症性滑膜組織中のIL−1β、TNFαおよびPGE2の作用についての重要な供給源かつ標的細胞である(Bucalaら,1991)。さらに、これらの炎症誘発性因子は、ヒト滑膜の過形成および軟骨破壊の病因における重要なメディエーターである(MacNaulら,1990)。RT−PCR分析は、CRH mRNAがRAおよびPsAの両方の初代滑膜細胞において構成的に発現されることを実証した。(図1C)炎症誘発性メディエーターによって刺激された後の初代滑膜細胞を図1Dに示す。正常条件下で維持された(Con)、または10ng/mlのIL−1β、IL−6、TNFα、1μMのPGE2、MoCMまたは25μMのフォルスコリン(FOR)に6時間にわたって暴露された滑膜細胞を用いて作製されたPCR産物の代表例。結果は、RA細胞株およびPsA細胞株の両方を用いて、3つの別々の実験から得られた。示した値は、平均+/−SEである。記号*は、コントロールと比較してP<0.01を示す。作製されたPCR産物を、ヒトCRHおよびGAPDHについてのcDNAプローブを用いたサザンブロット分析によって確認した。
【0211】
(実施例3:CRH発現に対するフォルスコリンおよび炎症誘発性アゴニストの効果)
アデニル酸シクラーゼ/プロテインキナーゼAシグナル伝達経路の活性化による視床下部CRH遺伝子の発現調節は既に確証されている(Guardiola−diazら,1994)。アデニル酸シクラーゼ活性化因子であるフォルスコリン(FOR)の能力を、初代滑膜細胞におけるCRH遺伝子発現に対する刺激効果について試験した。フォルスコリンは、刺激の2時間後という早期に内在性CRH mRNAレベルを誘導し、レベルは6時間後にピークに達した(図1Cおよび図1D)。末梢CRH発現の調節シグナルを決定するために、炎症誘発性アゴニストの内在性CRH mRNA調節能力を試験した。インビボサイトカイン濃度を正確に反映することが報告された(Uhlarら,1997)炎症性メディエーターの複雑な組合せである単球馴化培地(MoCM)で刺激した滑膜細胞は、フォルスコリン処理に匹敵するレベルまで、CRH mRNA発現を強力に(4.64+/−2.5倍)刺激した。次いで、個々の炎症誘発性メディエーターがCRH mRNAを誘導する能力の比較を行った。TNFα(3.6+/−2.0倍)、IL−1β(2.3+/−1.0倍)およびPGE2(3.85+/−1.5倍)はCRH mRNAを有意にアップレギュレートした(P<0.01)が、IL−6は、試験したどの濃度でも、これらの細胞におけるCRH mRNAレベルに対して効果をほとんど有さなかった(1.5+/−1.2倍)。GAPDH mRNAのレベルは、試験した全ての条件下で比較的一定のままであった(図1D)。
【0212】
(実施例4:炎症性メディエーターは、初代滑膜細胞におけるヒトCRHプロモーターの転写活性を増強する)
炎症性メディエーターがヒトCRHプロモーターの発現を調節し得るか否かを決定するために、ヒトCRH遺伝子の近位プロモーター領域(−666/+111)(配列番号143)を、プロモーターのないpBL3−クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)プラスミド中へクローニングして、hCRH−CATを作製することによってレポーター構築物を作製した。hCRHプロモーターの転写調節を、初代ヒト滑膜細胞における一過性トランスフェクションによって測定した。β−ガラクトシダーゼ活性についてトランスフェクトした細胞のインサイチュ染色は、95%を超える高いトランスフェクション効率を示した(図2A)。3つの個々のRA滑膜細胞株およびPsA滑膜細胞株を、CRHプロモーター活性をモニタリングするために3μgの−666/+111hCRH−CATレポータープラスミドで一過性トランスフェクトし、正常条件下で維持した(Con)か、または10ng/mlのIL−1β、IL−6、TNFα、1μMのPGE2、MoCMもしくは25μMのFORに12時間暴露した。RT−PCR分析の結果と一貫して、TNFα(15.6+/−1.9倍)、IL−1β(17.1+/−3.1倍)、PGE2(28.8+/−1.7倍)およびMoCM(40.8+/−2.1倍)は、hCRHプロモーターの転写活性を有意に(P<0.01)増強した。IL−6処理(10〜100ng/ml)のトランスフェクトした細胞は、CAT産生を有意には増大させなかった(3.2+/−1.9倍)。このことは、IL−6が、これらの細胞におけるCRHプロモーター活性に対してほとんど効果を有さないことを示唆する。炎症誘発性アゴニストでの処理に対する個々のPsA滑膜細胞株およびRA滑膜細胞株の応答は、有意差を示さなかった。トランスフェクトされた細胞によって産生される代表的なCATレベルを、図2Bに例示する。
【0213】
図2Aおよび図2Bに示す結果は、RAおよびPsAの個々の3つの細胞株からの結果の代表である。各データバーは、2つのデータ点を表す。
【0214】
(実施例5:CRHレセプターは、炎症性滑膜において発現される)
炎症性ヒト滑膜におけるCRHについての末梢での生物学的役割をさらに確証するために、CRHレセプターの存在を分析した。CRHレセプターについての特異的免疫組織化学的染色は、試験した全てのRA組織(n=6)およびPsA組織(n=6)において見られた。CRHレセプターは、滑膜の血管系(血管の内皮細胞および平滑筋層を含む)に存在した(図3)。レセプター染色は、RAの滑膜の血管系(図3A)と比較して、PsAの滑膜の血管系(図3Bおよび図3C)において一貫してより濃かった。ポジティブ細胞は、褐色がかった黒色の染色によって示される。LLは滑膜の管壁層(lining layer)を示し、一方、SLは管壁下(sublining)の滑膜支質を示す。もともとの倍率は以下の通りである:×200(A、B);×450(C、D)。対照的に、いくつかの指定されたていない単核細胞がポジティブに染色させて出現しているが、滑膜の管壁層、滑膜下滑膜細胞および炎症性浸潤は、主にCRHレセプター陰性であった。染色の特異性を、過剰の抗原と共に予めインキュベートした、CRHレセプター抗体で処理した連続切片に染色が見られないことによって確認した(図3D)。
【0215】
ポジティブ細胞は、褐色がかった黒色の染色によって示される。滑膜の管壁層(LL)および管壁下滑膜支質(SL)が示される。元々の倍率:×200(A、B);×450(C、D)。RA(A)およびPsA(B、CおよびD)の滑膜組織を、CRHレセプター1型および2型に対する抗体(C−20)で染色した。PsA滑膜組織(D)(Cにおける切片に対する連続切片)を、C−20特異的ブロッキングペプチドで予め吸収したC−20で染色した。
【0216】
(実施例6:滑膜組織におけるNURR1およびNUR77のmRNAの発現)
NURRサブファミリーが病理的状況におけるCRHシグナル伝達に寄与するか否かを決定するために、新たに切り出したRA(図4A)およびPsAの滑膜外植片を、CRH(10−8M)と共にインキュベートし、そしてNURR1およびNUR77の転写産物の発現を誘導する能力について調べた。ノーザンブロット分析によって、NURR1およびNUR77の両方が、CRHによって1時間以内に迅速に誘導され、そして3時間以内に基底レベルまで減少することが確認された(図4A)。さらに、滑膜外植片の分析は、NUR77転写産物のレベルと比較してより高い、内在性およびCRH誘導性のNURR1 mRNAを示す。
【0217】
プロテインキナーゼA経路およびプロテインキナーゼC経路による遺伝子発現の調節は、RA滑膜細胞における重要なシグナル伝達事象を表す(Ben−Avら,1995;Croffordら,1994;FiresteinおよびManning,1999)。NURR1およびNUR77のmRNAレベルにおける迅速な上昇は、これらの細胞においてプロテインキナーゼA経路のフォルスコリン活性化後に観察された(図4B)。NURR調節におけるプロテインキナーゼCシグナル伝達経路の関与を調査するために、滑膜細胞を、酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)で処理した。PMAは、NUR77 mRNAを中程度にアップレギュレートしたが、NURR1 mRNAレベルに対しては何の刺激効果も有さなかった。グルココルチコイド(デキサメタゾン10−8M)での滑膜細胞の前処理は、フォルスコリン誘導性NURR1発現を劇的に抑制した(図4B)。対照的に、デキサメタゾンは、フォルスコリン誘導性NUR77レベルにもPMA誘導性NUR77レベルにも、効果をほとんど有さなかった。滑膜細胞が膜CRHレセプターを発現しないことを示唆する本発明者らの免疫組織化学的データと一貫して、CRHによるNURR1またはNUR77の誘導は、初代滑膜細胞株において観察されなかった。この観察は、CRHレセプターの存在が、NURR1発現に対する、観察されたCRH誘導性応答にとって重要であることを示す。
【0218】
図4では、総RNAを抽出し、そしてノーザンブロット分析を行った。フィルターを、NURR1またはNUR77についてのcDNAと、そしてまたローディングおよび転写を制御するためにGAPDHとハイブリダイズさせた。滑膜の外植片を未処理のままにしたか[C]または示された時間にわたって10−8MのCRHと共にインキュベートした(図4A)。初代滑膜細胞のコンフルエントな単層を未処理のままにした[C]かまたは10−8Mのデキサメタゾン(DEX)で2時間前処理し、その後、25μMのフォルスコリン(FOR)または20ng/mlの酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)を添加した(図4B)。
【0219】
(実施例7:ヒト滑膜組織におけるNURR1の免疫組織化学的局在化)
滑膜のNURR発現を誘導するというCRHの実証された能力は、ヒト炎症性関節炎におけるNURR転写因子についての調節役割を示唆する。この仮説を試験するために、NURR1発現を、RAおよびPsAの両方の滑膜組織において免疫組織化学的染色によって調べた。NURR1についての特異的染色は、RA(n=5)およびPsA(n=5)の試験した全ての組織において見られた。ポジティブなNURR1染色は、主に核に存在し、そして褐色がかった黒色の染色によって示された。
【0220】
染色は、主に核局在を示し、滑膜細胞およびマクロファージ細胞から主に構成される領域である、滑膜管壁細胞および滑膜下領域の細胞におけるいくらかの細胞質NURR1局在を示した(図5A)。同様に、RA滑液における顕著な単核細胞浸潤はNURR1ポジティブであった。滑膜の血管系(内皮細胞を含む)もまた、NURR1発現についての部位であり、より強い染色が、PsA滑膜血管において観察された(図5C)。RAおよびPsAの培養された初代滑膜細胞におけるNURR1発現の免疫組織化学研究は、インビボで見られた染色パターンと類似の染色パターンを示した(図5D)。NURR1染色の特異性は、NURR1抗体を過剰の抗原と共にプレインキュベートした場合に見られる染色が存在しないことによって確認された(図5B)。
【0221】
滑膜組織切片は、RA滑膜管壁層および管壁下層(図5Aおよび図5B)、ならびにPsA滑膜の血管系(図5C)および培養したPsA滑膜細胞(図5D)を表す。RA滑膜組織(B)(Aにおける切片の連続切片)を、NURR1特異的ブロッキングペプチドで予め吸収させた抗NURR1免疫血清で染色した。滑膜管壁層(LL)、管壁下滑膜支質(SL)および炎症性浸潤(II)を示す。元々の倍率は、以下の通りである:×200(図5Aおよび図5B);×1000(図Cおよび図D)。
【0222】
(実施例8:炎症性アゴニストおよび炎症性アンタゴニストによるNURR1遺伝子の発現調節)
RAおよびPsAの滑膜組織、ならびにCRHレセプターを発現しない細胞において観察された広範囲にわたるNURR1染色は、メディエーターもまた、NURR1発現の調節に関与することを示唆する。それゆえ、炎症性関節疾患におけるNURR転写因子の病理的重要性を、炎症誘発性アゴニストが初代滑膜細胞および滑膜外植片組織におけるNURRの転写産物のレベルを調節する能力を決定することによってさらに調べた(図6)。TNFα、IL−1β、IL−6およびPGE2での処理は、内在性NURR1のmRNAレベルにおける迅速かつ顕著な上昇を誘導した(図6A〜図6D)。一貫して、PGE2(図6D)は、これらの細胞においてNURR1 mRNAを刺激する際に最も強力かつ持続した効果を有した。単離された滑膜外植片におけるNURR1発現に対するIL−6の刺激効果とは対照的に、滑膜細胞のIL−6処理は、NURR1 mRNAを顕著には誘導しなかった(図6C)。
【0223】
デキサメタゾン(10−8M)は、滑膜細胞におけるTNFα、IL−1β(図6Aおよび図6B)ならびにPGE2刺激性NURR1 mRNA、ならびに滑膜外植片におけるCRH誘導性NURR1発現を阻害した。対照的に、デキサメタゾンは、基底NURR1発現(図6A)に対して何の効果も有さなかった。IL−1β誘導性NURR1 mRNAは、シクロオキシゲナーゼインヒビターインドメタシンによってブロックされず、オートクラインPGE2作用の改善を妨げた(図6B)(Ben−Avら,1994)。シクロヘキシミドは、内在性NURR1の転写産物のレベルを上昇させ、そしてフォルスコリン、PGE2(図6E)、IL−1βおよびTNFαのNURR1 mRNA刺激を強く増強した。このことは、デノボタンパク質合成が、ヒト滑膜細胞におけるNURR1 mRNAのサイトカイン媒介性誘導に必要でないことを意味する。図6に示す各ノーザンブロットについて、NUR77 mRNAレベルもまた分析した。しかし、NURR1 mRNAレベルにおける有意な変更とは対照的に、NUR77転写産物レベルは、試験した炎症性アゴニストおよび/または炎症性アンタゴニストの各々によって中程度にしか調節されなかった。著しいことに、滑膜のNURR1、NUR77およびNOR−1の示差的遺伝子発現が観察され、その結果、内在性mRNAの相対的レベルはNURR1>>>NUR77>>NOR−1であった。
【0224】
図6について、各メンブレンを、GAPDH cDNAを用いて再度プロービングして、ローディングおよび転写について制御した。NURR1 mRNAレベルを、以下から抽出した総RNAを用いてノーザン分析によって測定した:(A)10−8Mデキサメタゾン(DEX)での前処理の存在下または非存在下での、未処理のままの滑膜細胞[C]または示した時間にわたってTNFα(10ng/ml)と共に培養した滑膜細胞;(B)2μMインドメタシン(INDO)または10−8M DEXの前処理の存在下または非存在下での、未処理のままの滑膜細胞[C]または示した時間にわたってIL−1β(10ng/ml)と共に培養した滑膜細胞;(C)未処理のままの滑膜細胞[C]またはIL−6(10ng/ml)と共に培養した滑膜細胞もしくは滑膜の外植片;(D)1μM PGE2;(E)5μg/mlシクロヘキシミド(CHX)の非存在下または存在下での、未処理のままの滑膜細胞[C]または1時間にわたって25μMフォルスコリン(FOR)もしくは1μM PGE2と共に培養した滑膜細胞。
【0225】
(実施例9:サイトカイン処理後のCRH NBREに対する増加した核NURR1結合)
NURR1遺伝子発現に対する炎症誘発性サイトカインの刺激効果は、この転写因子の調節におけるサイトカインの重要な役割を実証する。NURR1のDNA結合能に対するサイトカインの効果を分析するために、EMSAを行って、ヒトCRHプロモーターにおけるコンセンサス配列(NBRE)に対するNURR1の結合特性を調べた。25μMフォルスコリン、10ng/ml TNFα(図7)、IL−1βまたはPGE2での滑膜細胞の刺激は、CRH NBREとの2つのタンパク質複合体の有意に増加した結合をもたらした。より大きなタンパク質複合体の結合は、50倍モル過剰(複合体がより小さくなるほどより低い程度まで)の非標識相同オリゴヌクレオチドによって阻害された。より大きなタンパク質複合体は、NURR1によるDNA結合を阻害することが既に示されている(MurphyおよびConneely,1997)NURR1特異的抗血清によって選択的にブロックされた。このことは、NURR1 mRNAにおけるサイトカイン誘導性増加が、CRH NBREコンセンサス配列に対するNURR1タンパク質の特異的結合と相関することを確認する(図7)。
【0226】
未処理の滑膜細胞由来の核抽出物、25μMフォルスコリン(FOR)処理(1時間)滑膜細胞由来の核抽出物、または10ng/ml TNFα処理(1時間)滑膜細胞由来の核抽出物を、α32 P標識CRH NBREに対する増加した結合について比較した。DNA−タンパク質相互作用を、50倍モル過剰の相同オリゴヌクレオチドまたはNURR1特異的抗血清(NURR1 Ab)の存在下でアッセイした。
【0227】
(実施例10:炎症プロセスにおける滑膜CRHの役割)
これらの実施例は、滑膜のCRH産生の調節が、ヒト炎症性関節疾患と関連した炎症プロセスの重要な要素であるという結論を支持する実質的な証拠を提供した。このデータは、最近発症したRAおよび他の慢性の炎症性関節症(PsAおよびSAを含む)を有する患者由来の滑膜組織におけるCRH mRNAの増加を実証する。末梢CRH遺伝子発現の基礎となる調節機構を解明するために、関節の炎症および破壊と関連した炎症誘発性メディエーターが滑膜のCRH合成を刺激する能力を試験した。CRH mRNAの内在性発現を、RAおよびPsAの培養滑膜細胞のインビトロでの研究によって確認した。これらの細胞は、ヒト炎症性関節炎において観察される軟骨破壊となる、滑膜過形成特性および滑膜の腫瘍様侵襲特性に関連している(Bucalaら,1991;MacNaulら,1990)。初代滑膜細胞における定常状態のCRH mRNA発現がIL1β、TNFαおよびPGE2によって増大することおよびこのヒトCRHプロモーターがこれらの同じ免疫学的刺激に内在性CRH発現の応答と類似の様式で応答することもまた本明細書中で実証される。1より多くの細胞型がCRH mRNAを滑液中で産生することが可能である。ラットの脾臓および胸腺の免疫細胞、マウスTリンパ球およびヒト末梢血リンパ球は、CRH mRNAを産生することが報告されており(Websterら,1998)、従って、炎症性滑液中の浸潤性マクロファージおよびリンパ球もまたCRH mRNAを発現する。しかし、滑膜細胞によるCRH mRNA発現の顕著な誘導の観察は、滑膜細胞がCRH mRNA発現の主な供給源であるという仮説を支持する。滑膜におけるCRHレセプターの免疫組織化学局在は、滑膜CRHがパラクリンレセプター媒介応答において局所的に機能することを示す。さらに、CRHが核転写因子NURR1およびNUR77を滑膜外植片組織において誘導するという実証は、滑膜CRHの細胞内効果を媒介する際のNURRサブファミリーについての顕著な役割を支持する。まとめて考えると、これらのデータは、炎症性滑膜における末梢CRHについての局所的な生理学的役割を支持する証拠を提供する。
【0228】
(実施例11:複数の炎症シグナルを媒介する際のNURR1の重要性)
いくつかの独立した研究は、RA滑膜において細胞性増殖を調節する(Firesteinら,1999)ことが公知の遺伝子発現の調節における核前初期遺伝子(例えば、c−fosおよびc−jun)の異常な発現に関連していた。本明細書中で提示される実施例は、炎症性滑膜組織におけるNURR発現を初めて実証し、そしてこれらの転写因子がこの疾患の病理的プロセスに寄与することを示唆する。RA滑膜、PsA滑膜および増殖中の滑膜細胞において、内在性NURR1の遺伝子およびタンパク質の発現が検出された。前初期応答遺伝子の特徴である、IL−1β、TNFα、IL−6およびPGE2によるNURR1の誘導は、デノボのタンパク質合成とは独立した迅速な代謝回転速度を示した。CRHがNURR1を調節する能力は、確立された炎症誘発性メディエーターによるNURR1誘導と類似し、CRHについての末梢的役割をさらに強調する。滑膜由来CRHは、CRHレセプター保有細胞におけるNURR1発現を誘導する。しかし、CRHレセプターを発現しない、いくつかの滑膜細胞集団における豊富なNURR1発現は、炎症性関節に存在する炎症性メディエーターの環境によるこの転写因子の調節についての実質的な役割をさらに支持する。ヒトNURR1近位プロモーターにおけるNF−κBおよびCREBの結合についてのコンセンサス配列は、本明細書で研究した免疫学的刺激による滑膜におけるNURR1発現の誘導と一貫する。初代滑膜細胞におけるNURR発現の調査は、IL−1β誘導性誘導性NURR1転写およびTNFα誘導性NURR1転写の両方を媒介する際のNFκBについての役割を示す。CRHおよびPGE2がcAMP/CREB依存性経路の活性化によってシグナル伝達をするという以前の証明(Labrie F.ら,1982;Murphy and Conneely,1997;Ben−Avら,1995)と共に、これらの観察は、NURR1誘導が、少なくとも2つの異なる炎症誘発性シグナル伝達経路の収束点および複数の炎症シグナルを媒介する際のNURR1についての重要な共通の役割を表すことを示唆する。
【0229】
(実施例12:炎症性関節疾患におけるNURR転写因子の病理的重要性)
炎症性関節疾患におけるNURR転写因子の病理的重要性を、RAにおいて局所的に産生される炎症誘発性アゴニストが、初代ヒト滑膜細胞および滑膜外植片組織におけるNURR転写産物レベルを調節する能力を決定することによって調べた。本明細書中に実証されるように、TNFα、IL−1β、IL−6およびPGE2での処理は、内在性NURR1 mRNAレベルにおける迅速かつ顕著な上昇を誘導した。一貫して、PGE2は、これらの細胞においてNURR1 mRNAを刺激する際に最も強力および持続した効果を有した。IL−1βおよびTNFαがNF−κBを介して転写カップリングを媒介し、一方、PGE2がCREB依存性経路の活性化によってシグナル伝達することが充分に確立される(5)。ヒトNURR1近位プロモーターにおけるNF−κBおよびCREBの両方の結合についての潜在的コンセンサス配列が同定された(図9A)。電気泳動移動度シフト分析(EMSA)を実施して、NFκBタンパク質がNURR1プロモーターのサイトカイン誘導性複合体中に存在することを確認した(図9Bおよび9D)。NURR1 NFκBコンセンサス部位に結合するタンパク質複合体の正体を確認するために、NFκBメンバーに特異的な抗体(p50およびp65)を用いてスーパーシフトアッセイを行った(図9B)。同様に、NURR1コンセンサス部位に結合するタンパク質複合体の正体を確認するために、CREBメンバーに特異的な抗体(CREB−1およびATF−2)を用いてスーパーシフトアッセイを行った(図9D)。これらのデータは、炎症促進性誘導性NURR1転写産物を媒介する際のNFκBおよびCREBについての新規な役割を示唆する。初代RA滑膜細胞をCMV−β−ガラクトシダーゼレポーターでトランスフェクトし、そしてβ−ガラクトシダーゼ活性について染色して、トランスフェクション効率を決定した(図9C)。
【0230】
未処理の培養滑膜細胞(c)、10ng/mlのTNFαもしくはIL1βで1時間にわたって処理された培養滑膜細胞、またはCRHで1.5時間にわたって処理された培養滑膜細胞由来の核抽出物(図9)を調製し、そしてNURR1プロモーターのNFκB結合配列に対応するオリゴヌクレオチド(図9B)またはNURR1プロモーターのCREB結合配列に対応するオリゴヌクレオチド(図9D)を用いるEMSAにおいて用いた。DNA−タンパク質相互作用を、NFκBサブユニットp50およびp65に対する特異抗体(図9B)またはCREB−1およびATF−2に対する特異抗体(図9D)の存在下でアッセイした。
【0231】
(実施例13:NURR転写活性は、滑膜過形成に寄与する)
証拠は、RA滑膜細胞の部分的形質転換が、変形性関節症(OA)と比較してRA滑膜の侵襲性の可能性を増大させることを示唆する。この独特のリウマチ様表現型は、転写因子の機能および下流の標的遺伝子発現におけるサイトカイン調節性変化に起因する。以前の研究は、滑膜細胞による吸収性因子(例えば、MMPおよびPGE2)のサイトカイン刺激性放出が、線維芽細胞様形態から星状形態への変化と関連して生じることを報告した。本発明者らの分析は、NURR1のサイトカイン誘導もまた、線維芽細胞様形状から星状形状への滑膜細胞のトランスフォーメーションと並行して生じることを示す(図10Aおよび図10B)。免疫組織化学的染色は、未処理のままの初代PsA滑膜細胞(A)またはTNFαで刺激された初代PsA滑膜細胞(B)においてもたらされ、線維芽細胞様形状(A)から星状形状(B)へのトランスフォーメーションおよび関連したNURR1核局在化が例示された。図10Cおよび図10Dは、NURRの優勢な核局在化もまた示す、抗NURR1免疫血清を用いた正常な滑膜(C)およびPsA滑膜組織(D)の類似した染色を例示する。まとめて考えると、これらの結果は、NURR1の重要なインビボでの転写調節役割を強調する。滑膜細胞によるIL6、MMPおよびPGE2のサイトカイン刺激放出を阻害する因子であるデキサメタゾンもまた、NURR1誘導およびサイトカイン刺激性形態学的トランスフォーメーションを阻害する。これらの知見は、NURR1遺伝子発現の増加が、滑膜細胞が活性化されて骨吸収の誘導性炎症誘発性メディエーターを分泌する場合に生じる、遺伝子発現におけるプログラムされた変化の要因であることを示唆する。
【0232】
(実施例14:CRHレセプター)
慢性滑膜炎における重要なプロセスは、局所的に産生されたサイトカインが、滑膜血管内皮における変化を活性化して、血管新生、血管拡張および血漿溢出の増大をもたらす能力である。レセプター媒介応答におけるCRHは、局所血管新生を増強することに関連しており(Arbiserら,1999)、そして炎症部位の血管透過性を増大させて強力な血管拡張剤として作用する(Theoharidesら,1998)。CRHレセプターが滑膜の血管内皮および血管平滑筋の両方に存在するという本明細書中に提示される知見は、CRHが炎症性滑液に関連した血管プロセスに関与することを示唆する。2つの別個のサブタイプのCRHレセプター(CRH−R1およびCRH−R2)が単離され、そして特徴付けられている(Aguilera G.ら,1987;Perrinら,1995)。本明細書中の観察は、滑膜におけるCRH R1発現の優位性を実証し、このことは、CRH R1が、滑膜CRHの効果を媒介する際にCRH R2よりも重要であることを示す。内皮血管系におけるCRHレセプターとNURR1との共存は、滑膜CRH応答を媒介する際のこの転写因子についての役割をさらに例示する。CRHレセプターおよびNURR1の発現は、PsA滑膜の血管系において一貫してより高く、このことは、血管の変化が、PsAにおいて、RAと比較してより明白であるという理論を支持する(Vealeら 1993)。
【0233】
(実施例15:炎症性関節炎の媒介におけるCRH R1αの役割)
CRHレセプターは、推定の7回膜貫通ドメインを含み、そしてカルシトニン/血管作用性腸成長ホルモン放出ホルモンサブファミリーのGタンパク質共役レセプターに属する(Aguileraら,1987)。2つの別個のサブタイプのCRHレセプター(CRH−R1およびCRH−R2)がヒト中枢神経系において単離されており、そして特徴付けられており、そして68%相同である。各サブタイプは、薬理学的かつ機能的に別個のアイソフォーム(αおよびβ)を提示する、選択的にスプライシングされた2つの改変体を示し、そして別個の中枢組織特異的発現パターンおよび末梢組織特異的発現パターンを示す。本明細書中で報告されたデータは、CRHレセプター媒介効果が炎症性疾患の病因に寄与することを示す。それにもかかわらず、病理的炎症性病巣におけるCRHレセプターの状態に関する情報はほとんど利用可能でない。CRHレセプター媒介応答が、初期ヒト関節炎における炎症の病態生理に寄与するか否かを決定するために、RA滑膜組織(n=5)およびPsA滑膜組織(n=9)におけるCRHレセプターの発現および局在を調べた(図11)。
【0234】
免疫組織化学分析を、CRHレセプターサブタイプCRH−R1およびCRH−R2の両方と反応する免疫血清を用いて行った(図11)。CRHレセプターのかなり増強された発現は、全ての炎症性関節炎患者由来の内皮細胞を含む滑膜血管系において観察され、そして中程度の発現は、全ての炎症性関節炎患者由来の血管周囲領域において観察された(図11Aおよび図11B)。滑膜管壁層、滑膜下滑膜細胞および炎症性浸潤は、一貫してCRHレセプターネガティブであった。CRHレセプター発現は一貫して、RAの滑膜血管系と比較して、PsAの滑膜血管系においてより強かった。正常な滑膜は、いずれのレセプターサブタイプも発現しなかった。
【0235】
(実施例16:ヒト滑膜組織におけるCRHレセプターサブタイプの発現の免疫組織化学)
初期炎症性関節炎患者コホート(RA、n=5およびPsA、n=9)由来の滑膜生検サンプルをさらに評価して、観察されたレセプター発現がCRH−R1レセプターサブタイプまたはCRH−R2レセプターサブタイプに起因するか否かを決定した。全体的なCRH−R1およびCRH−R2の発現パターン(図11Aおよび図11B)と同様に、明確なCRH−R1染色が、血管内皮および他の別個の血管周囲細胞に観察された(図11D)。対照的に、特異的CRH−R2免疫血清は、CRH−R1についてポジティブである同じ患者コホートの滑膜組織においてCRH−R2発現を検出できなかった(図11E)。CRHレセプター染色の特異性は、過剰の特異的抗原と共に予めインキュベートされたCRHレセプター抗体で処理された連続切片に見出された染色が顕著に存在しないことによって確実にされた(図11F)。アイソタイプが一致した非免疫ヤギIgGを用いた免疫染色は、調べた全てのRA滑膜組織およびPsA滑膜組織においてネガティブであった。組織学的に正常な滑膜組織は、CRH−R1レセプターサブタイプまたはCRH−R2レセプターサブタイプのいずれも発現しなかった(n=2)。
【0236】
(実施例17:肥満細胞トリプターゼ(tryptase)およびCRH−R1の二重免疫局在決定)
免疫反応性CRH−R1を発現する血管周囲細胞を同定するために、滑膜の生検切片を、二重抗体染色法を用いて抗肥満細胞トリプターゼ抗体および抗CRH−R1抗体で免疫染色した(図12)。抗CRH−R1抗体での染色は、血管内皮および別個の血管周囲細胞で検出された強い赤色蛍光を示した(図12A)。同じ切片を抗肥満細胞トリプターゼ抗体で染色することにより、明確な緑色蛍光が示された(図12B)。図12Cは、炎症性PsA滑膜組織中の血管周囲細胞上のCRH−R1レセプターを用いたMCトリプターゼの二重免疫局在決定を例示し、これによって、CRH−R1が炎症性滑膜組織中の血管周囲の肥満細胞に局在することが確立される。同様の発現パターンが、RA滑膜において検出された。
【0237】
(実施例18:滑膜組織におけるCRHレセプターサブタイプmRNA発現の特徴付け)
RT−PCR分析を用いて、ヒト炎症性関節症のコホート(RA、n=5およびPsA、n=8)において、CRHレセプターサブタイプmRNAの発現を特徴付けした(図13)。CRH−R1レセプターサブタイプおよびCRH−R2レセプターサブタイプの両方ならびにそれらのそれぞれのアイソフォームの発現を調べた。CRH−R1プライマーでのcDNAの増幅によって、CRH−R1αを表す333塩基対長のフラグメントおよびCRH−R1βアイソフォームを表す420塩基対長のフラグメントが予測された。CRH−R1αは、逆転写されたmRNAの増幅後に炎症性滑膜組織において、全ての炎症性関節炎患者において検出された。対照的に、これらのプライマーは、同じ患者コホート由来の滑膜組織においてCRH−R1βアイソフォームを検出しなかった。RAおよびPsAの全ての滑膜組織サンプルは、正常滑膜と比較した場合、上昇したCRH−R1α mRNAレベルを有した(p<0.05)(図13A)。免疫組織化学分析に従って、CRH−R1 mRNAレベルは一般に、RAを有する患者と比較して、PsAを有する患者においてより高く、そしてより広範に分布していた。図13Bは、2人のRA患者および2人のPsA患者由来の滑膜組織を用いて、CRH−R1αレセプターmRNAについて作製された代表的なRT−PCR産物を示す。組織学的に正常な滑膜は、どちらのCRH−R1レセプターアイソフォームをも発現しなかった。
【0238】
CRH−R2サブタイプ発現を、関節炎を有する患者の同じコホート(RA、n=5およびPsA、n=8)において調査した。特異的CRH−R2プライマーは、炎症性滑膜組織および正常滑膜組織の両方においてCRH−R2 mRNAを増幅できなかった。CRH−R2プライマー対の効力を確実にするために、ヒト大脳皮質cDNAをポジティブコントロールとして役立てた。ヒト大脳皮質mRNAの逆転写後、予測された781bpのcDNA産物が、特異的CRH−R2プライマーを用いて増幅された(図13B)。ハウスキーピング遺伝子であるグルタルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)の発現レベルは、全ての患者において同様であった(図13B)。
【0239】
単離された滑膜細胞集団におけるCRHレセプターサブタイプ発現は、インビボで見られた染色パターンと同様の染色パターンを示した。豊富なCRH−R1タンパク質は、初代滑膜内皮細胞中に局在した(図13C)。対照的に、いずれのCRHレセプターサブタイプも、RA滑膜細胞またはPsA滑膜細胞の初代培養物で発現されなかった。免疫局在決定データと一貫して、初代滑膜内皮細胞(SMEC)において高レベルのCRH−R1α mRNAが存在したが、RAおよびPsAの初代滑膜細胞(n=3)でも正常なヒト微小血管内皮細胞でも検出不可能であった(図13D)。CRH R2 mRNAの発現は、調査した全ての細胞型において検出不可能であった。
【0240】
滑膜内皮細胞によるCRH−R1α(mRNAおよびタンパク質)発現の顕著な誘導の観察は、血管内皮がCRH作用の主な標的であるという仮説を支持し、そしてCRHが、RAにおける滑膜の炎症と関連した血管の変化に関与することをさらに示唆する。ヒトRA滑膜組織からの微小血管内皮細胞(SMEC)の単離のための迅速かつ効率的なプロトコルは、実施例25に記載される。初代SMECは、1つの微小血管プロセスである血管新生についての研究についてこれらを理想的にする微小血管内皮細胞である。初代SMECにおけるCRHレセプターサブタイプの発現の最初の研究は、インビボで見られる染色パターンと同様の染色パターンを示す。
【0241】
(実施例19:転写因子としてのNURR1の役割)
インビボでの滑膜NURR1の優勢な核局在化は、NURR1の重要な転写調節役割を強調する。局所産生されたサイトカインによって直接的に調節される滑膜のNURR1は、滑膜CRH発現を増大させることによって炎症応答を増幅するために役立つ、オートクライン調節炎症性カスケードの一般的メディエーターである(図8)。滑膜管壁層、滑膜下滑膜細胞および浸潤性単核細胞におけるNURR1の免疫組織化学的局在化は、NURR1が、免疫反応性CRHを発現することが以前に示されたのと同じ滑膜部位で産生されることを確認する(Croffordら,1993)。CRH遺伝子の近位プロモーターは、NBREコンセンサス配列を含み、そしてインビトロでの結果は、サイトカインによって刺激されたNURR1 mRNAレベルが、このコンセンサス配列に対するNURR1タンパク質の核結合の増大と相関することを確認する。Evidence that POMC切断産物およびPOMC切断産物(ACTHおよびβ−エンドルフィン)が、NURR1およびNUR77を産生する同じ細胞において炎症性滑液中に発現されるという証拠は、NURRサブファミリーが滑液におけるPOMC発現を調節するようであるということを示唆する(Fearonら,1998)。これらの観察は、下垂体POMCのCRH誘導がNURR1およびNUR77の転写活性を通して媒介されるという、以前の知見と一貫している(MurphyおよびConneely,1997)。さらに、サイトカイン応答性遺伝子であるコラゲナーゼ(Angel P.,Baumann I.,Stein B.Deliusら,1987)および血清アミロイドA(Uhlarら,1997)は、ヒト滑膜細胞において発現され、そしてRA炎症機構および関節破壊に関連付けられており、NBREコンセンサス部位をその近位プロモーター領域に含む。これらの知見は、NURR1およびNUR77が、炎症性関節疾患の病因におけるCRHおよび炎症誘発性サイトカイン応答の両方の重要な転写メディエーターであるという理論に対するさらなる支持を導く。しかし、滑膜のNURR1およびNUR77の示差的遺伝子発現は、個々のNURRタンパク質の転写の役割を詳細に分析するさらなる研究についての必要性を明らかにする(Murphyら,1995)。
【0242】
RAの炎症は、グルココルチコイドに極めて感受性であり、グルココルチコイドは、リウマチ様滑膜炎の処置において有効に用いられる。従って、デキサメタゾンがサイトカイン誘導性NURR1発現を阻害するという、本明細書中に報告された知見は、デキサメタゾンが、誘導された関節炎の動物モデルにおける、増大した末梢CRHの免疫反応性レベルを顕著に低減させたという以前に報告された証明(Croffordら,1992)とともに、滑膜組織におけるこれらのタンパク質の病理的重要性をさらに強調する。CRHが局所的にシグナル伝達する能力は、滑膜CRHがパラクリン調節ループに関与して、滑膜細胞、内皮細胞および単核細胞の間の連絡を容易にすることを示唆する。インビボでの末梢の炎症性部位でのCRHの免疫中和は、炎症を顕著に阻害し、そしてTNFα抗体を用いて観察された抗炎症性効果に類似する(Karalisら,1991)。炎症性関節炎疾患活性の処置における、TNFブロッキングストラテジーおよび他の抗サイトカイン因子の可能性を評価する、臨床試験および動物研究は、サイトカインカスケード内の複数の因子を標的化して、疾患の進行および関節の破壊が予防されることを示唆する。本明細書中に提示されるデータは、CRH誘導がTNFαおよびIL−1βに対して下流で生じ、それゆえ、ヒト炎症性関節炎における抗サイトカイン治療についてのさらなる標的であることを実証する。CRH R1アンタゴニストであるアンタラルミン(antalarmin)のインビボでの評価は、これが臨床的に有効なCRHアンタゴニストを炎症部位で提供し、そして炎症性関節炎のような、病態生理がCRHの過剰分泌を含む疾患において局所炎症を制御する際に治療的見込みを有することを示す(Websterら,1998)。
【0243】
(実施例20:炎症性関節炎におけるCRHおよびNURR1の役割のまとめ)
まとめると、本研究において提供されるデータは、局所産生されたCRHの調節が、ヒト炎症性関節炎におけるサイトカインネットワークの重要な要素であることを示す。炎症性関節炎の重要なメディエーターは、CRHプロモーター転写活性を増強し、そして軟骨および骨を直接的に侵す滑膜細胞におけるCRH遺伝子発現の増大した産生を刺激する。炎症性滑膜におけるCRHレセプターの存在は、末梢CRH機能を局所的に示す。核レセプターNURR1およびNUR77は、ヒト滑膜組織における末梢CRHシグナル伝達に寄与する。炎症部位での末梢のCRH媒介経路およびCRH媒介経路についての潜在的な病態生理学的役割は、ヒト炎症性関節炎における治療因子としてのCRHのアンタゴニスト性アナログの調査をさらに支持する。
【0244】
さらに、NURRサブファミリーの調節は、炎症性関節疾患に関連した経路を調節する重要な機構であり、そして観察は、複数の炎症応答を媒介する際のNURR1についての中心的役割を示唆する。炎症および細胞トランスフォーメーションに関与するシグナル伝達経路、ならびにリウマチ病に対するそれらの関係は、比較的調査されていない研究領域である。転写因子活性の異常な機能は、正常な炎症性応答または免疫応答を慢性状態へと変換するのを助ける。RAでは、炎症はより多くの炎症へと増殖し、そして永続化を妨害する治療アプローチは、ホメオスタシスを再度確立する機会を提供し得る。NURRサブファミリーによって調節される分子シグナル伝達経路の同定は、この転写因子を薬物治療の分子標的として用いた介入のための新たなアプローチを提供する。医療における薬物標的としてのNURR1ファミリーのメンバーの大きな可能性は、エストロゲンレセプターおよびアンドロゲンレセプターの場合、既に証明されている。炎症性関節炎の疾患活性の処置におけるTNFαブロッキングストラテジーおよび他の抗サイトカイン因子の可能性を評価する、臨床試験および動物での研究は、サイトカインカスケード中の複数の因子が、疾患の進行および関節の破壊を予防するために標的化される必要があることを示唆する。これらのデータは、本明細書中で、NURR1誘導がTNFαおよびIL−1βに対して下流で生じ、それゆえ、ヒト炎症性関節炎における抗サイトカイン治療にとってより効果的な標的であることを実証した。
【0245】
(実施例21:NURR1プロモーターに結合している、NFκBおよびCREB)
未処理の初代滑膜細胞またはPGE2処理初代滑膜細胞由来の核抽出物を用いて行われる、NURR1 CREBコンセンサス(consenus)部位を用いる、同様のEMSAおよびスーパーシフトアッセイを行う。さらに、変形性関節症(OA)滑膜と比較した、RA滑膜およびPsA滑膜の両方の由来の核抽出物におけるNURR1プロモーターに結合するNFκBおよびCREBのインビボでのレベルを測定する。NURR1プロモーターに結合しているNFκBおよびCREBが疾患活性と関連するか否かを決定するために、滑膜組織におけるEMSA NFkB活性およびCREB活性の相対密度と、疾患活性の臨床的尺度との間の関係を評価する。
【0246】
サイトカイン媒介性NURR1転写カップリングに対するコンセンサス部位の相対的寄与を分析するため、およびさらにこれらの伝達経路に関与する機構を解明するために、β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子に融合された600bpの近位ヒトNURR1プロモーター領域を含む標的遺伝子構築物を作製した(図9A)。用いられたNURR−1プロモーターフラグメントは、トランスジェニック動物において発現される場合にβ−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子の正確な発現に必要であることが公知の全ての配列を含む。NURR1プロモーター中のNFκBおよびCREBのコンセンサス部位の個々の変異分析は、これらのコンセンサス部位がNURR1発現において果たす役割の評価を可能にする。野生型および変異型のプロモーター構築物を、RAおよびPsAの初代滑膜細胞に個々にトランスフェクトし、そして適切なサイトカインで刺激して、NURR1転写活性をモニタリングする。実施例11に記載されるデータは、抗炎症剤(例えば、デキサメタゾン)がサイトカイン誘導性NURR1 mRNAのレベルを劇的に抑制し得ることを示す。従って、転写調節研究は、デキサメタゾンがNURR1転写のサイトカイン誘導を抑制する能力を試験することまで広げられる。このトランスフェクションアッセイ系は、EMSAと共に、RAの処置において用いられるこのような薬物の作用機構を同定する際に必須である。
【0247】
(実施例22:NURR1は、滑膜細胞の増殖を媒介する)
滑膜細胞の増殖のNURR1媒介を、RAおよびPsAの初代滑膜細胞におけるNURR1の一過性過剰発現の結果を観察し、そしてヒト滑膜細胞K41細胞株を用いて安定なNURR1発現トランスフェクタントを確立することによって評価する。全長NURR1タンパク質をコードするヒトNURR1 cDNAを、哺乳動物細胞における組換えタンパク質の過剰産生のために設計されたpUV6/V5−His Aベクター(Invitrogen)中にサブクローニングする。pUB6/V5−Hisベクターは、安定な細胞株の選択を可能にするためのブラスチシジン耐性遺伝子を含む。滑膜細胞の増殖を、標準的なCellTiter Assay(Promega)を用いて測定する。
【0248】
実験アプローチはNURR1の遺伝子調節役割を扱い、そして滑膜組織においてこの転写因子によって調節される標的遺伝子を同定する。サイトカイン応答性遺伝子であるMMP−1および血清アミロイドA(SAA)は、RA炎症性および破壊機構に関連付けられており、推定のNURR1コンセンサス結合部位(NBRE)をそれらの近位プロモーター領域に含む。これらの知見は、NURR1が、炎症性関節疾患の病因に関与する炎症誘発性サイトカイン応答の重要な転写メディエーターであるという理論に対してさらなる支持を与える。EMSAおよび細胞ベースのトランス活性化アッセイを用いた同様の実験アプローチを調べて、特異的NBRE配列と相互作用することによる、MMP−1およびSAAの滑膜発現のNURR1調節を決定する。
【0249】
証拠は、NURR1がオートクライン様式で作用して、炎症誘発性メディエーターの産生を刺激することを示唆する。NURR1転写活性によって調節される病態生理学的経路をさらに同定するために、細胞ベースのNURR1トランスフェクションアッセイ系を用いて、炎症性メディエーター(IL1αおよびTNFβ)および骨破壊のエフェクターメディエーター(PGE2、IL6およびMMP)の誘導におけるNURR1の関与を決定する。NURR1トランスフェクト一次滑膜細胞によって産生されるこれらのメディエーターのレベルを、PsAおよびRAの個々の滑膜細胞株を用いて測定する。このようなデータは、類似するが臨床的に異なるこれらの慢性炎症性関節症についてさらなる洞察を提供する。
【0250】
(実施例23:炎症誘発性メディエーターによって誘導されるNOR1発現) 炎症性関節疾患におけるNURR転写因子の病理的重要性を、炎症誘発性アゴニストが、初代滑膜細胞におけるNOR1転写産物のレベルを調節する能力を決定することによって、さらに調べた(図14)。NOR1およびNURR1のmRNAの発現レベルは、TNFαでの処理されると、未処理の滑膜細胞と比較して上昇した。しかし、PGE2は、NURR1 mRNAをこれらの細胞において刺激する際に最も強力かつ持続した効果を有したが、NOR1は、mRNA発現レベルにおいて中程度の上昇しか提示しなかった。
【0251】
未処理(レーン1)またはTNFα(レーン2)、IL−1β(レーン3)およびPGE2(レーン4)で1時間処理した初代RA滑膜細胞のノーザン分析。TNFαおよびIL−1βを10ng/mLの濃度で用い、そしてPGE2を10−6Mの濃度で用いた。
【0252】
(実施例24:組織収集のための方法)
滑膜を、RA、乾癬性関節炎(PsA)またはサルコイド関節炎(SA)と診断された患者からのインフォームドコンセントに従って関節鏡検査によって膝から得た。生検時に、全ての患者は、最近(<12ヶ月)発症した活動性疾患を有していた。全ての患者は、St.Vincent’s University Hospital,Dublin,IrelandのEarly Arthritis Clinicにかかっていた。患者が疾患改変薬物で処置されていた場合または患者が疾患改変薬物をこれまでに摂取したことがある場合、その患者を排除した。組織学的に正常な滑膜を、下肢切断を受ける患者から得た。CRH−R1 mRNAを発現するヒト子宮筋層組織を子宮摘出を受ける閉経前患者から獲得し、一方、正常なヒト大脳皮質cDNA(Geneプール、Invitrogen,Groningen,The Netherlands)をCRH−R2についてのコントロールとして役立てた。
【0253】
(実施例25:滑膜細胞の培養および一過性トランスフェクションのための方法)
滑膜組織を、37℃で5% CO2中、RPMI中1mg/mlコラゲナーゼ(I型;Worthington Biochemical,Freehold,NJ)で4時間にわたって処理した。解離した細胞を、10%ウシ胎仔血清(GibcoBRL,Paisley,UK)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100U/ml)およびフンギゾン(0.25μg/ml)を補充したRPMI中にプレーティングした。滑膜細胞は形態学的に均質な線維芽細胞様細胞であることが見いだされ、そしてこれらを、3回目の継代と7回目の継代との間で用いた(Ben−Avら,1995)。トランスフェクションの24時間前に、1×106個の滑膜細胞を25cm2ディッシュにプレーティングし、そして付着させた。内毒素を含まないDNA(3μg CMV−β−ガラクトシダーゼまたは3μg −666/+111 hCRH CAT(MurphyおよびConneely,1997)を900μlの容量のRPMI(無血清)中の35μlのリポタキシ(lipotaxi)試薬(Stratagene,Cambridge,UK)に添加し、そして室温で30分間インキュベートした。RPMI(1.5ml)をこのトランスフェクション混合物に添加し、細胞上に移し、そして6時間にわたって37℃で5% CO2中でインキュベートした。等しい容量の培地を添加し、そして細胞を一晩、37℃で5% CO2中でインキュベートした。DNA−リポタキシ含有培地を交換し、そして細胞を未処理のままにしたか、または10ng/mlのIL−1β、IL−6、TNFα、1μMのPGE2もしくはMoCMで処理し、そしてさらに24時間インキュベートした。クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)レベルを、CAT ELISA(Boehringer Mannheim,Germany)を用いて測定した。タンパク質濃度を、Bradfordアッセイ(BioRad,Richmond,CA)によって決定した。β−ガラクトシダーゼアッセイについては、細胞を、冷リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄し、冷0.5%グルタルアルデヒドで固定し、そしてPBSで2回洗浄し、その後、染色溶液(1M MgCl2、5M NaCl、0.5M HEPES(pH7.3)、30mMフェリシアン化カリウム、30mMフェロシアン化カリウムおよび2% 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド)と共に12時間にわたって37℃でインキュベートした。
【0254】
(実施例26:滑膜内皮細胞(SMEC)の単離および培養)
初代SMECは、微小血管内皮細胞であり、これは、これらを、1つの微小血管プロセスである血管新生についての研究のために理想的にする。膝滑膜全体を関節形成術時に得て、そして上記の通りに処理した。罹患した組織を50メッシュの細胞解離篩(Sigma Chemical Company,St.Louis,MO)に通過させ、そして500μlの冷PBS/0.1% BSA中に再懸濁した。1×107個のCD31(PECAM−1:9G11)でコーティングしたDynabeads(Dynal A.S.Oslo,Norway)を、このサンプルに45分間にわたって添加し、そして磁性粒子濃縮器中に配置した。単離された内皮細胞を改変EBM−2MV培地(Biowhittaker Inc.Clonetics Products,San Diego,CA)中で直接培養した。内皮細胞を、形態学的に、ならびに第VIII因子およびCD31の発現によって同定した。
【0255】
(実施例27:逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR))
総RNAを、新たに得られた滑膜生検または培養した滑膜細胞から単離した(RNeasy,Qiagen,UK)。相補的DNA(cDNA)を、200U Superscript II(GibcoBRL,Paisley,UK)、100mMジチオトレイトール、40U RNasin、各々1.25mMのdNTPおよび120ngランダムヘキサマーを37℃で1時間にわたって用いた1μgの各RNAサンプルの逆転写によって調製した。PCRを、2μlのcDNA反応混合物、各々1.25mMのdNTP、各々100ngのプライマー、2mM MgCl2および2.5U AmpliTaq−Gold(Perkin Elmer,Brachburg,NJ)を含む50μlの容量で行った。PCR増幅について、プライマー対(センス5’−CAATCGAGCTGTCAAGAGAGC−3’(配列番号144)およびアンチセンス5’−GGAAGAAATCCAAGGGCTGAG−3’(配列番号145))を用いて、ヒトCRHを増幅した。プライマー対(センス5’−CCACCCATGGCAAATTCCATGGCA−3’(配列番号146)およびアンチセンス5’−TCTAGACGGCAGGTCAGGTCCACC−3’(配列番号147))を用いてGAPDHを増幅した。両方のプライマー対は、介在配列に隣接していた。増幅のための条件は、97℃で1分間、60℃で1分間および72℃で1分間であった。CRHについて35サイクルおよびGAPDHプライマー対について25サイクルが、PCR反応が増幅のプラトー期に達していないことを確実にすることが確認された。PCR産物は、サザン分析によって確認された。オートラジオグラフィーの強度を、イメージング濃度計を用いて定量した。
【0256】
ヒトCRH−R1についてのプライマーを設計して、αアイソフォームとβアイソフォームとを区別した。CRH−R1βは、87塩基対の挿入物を5’領域に含み、CRH−R1αについての333bp産物またはCRH−R1βに対応する420bp産物を生じるプライマーをもたらす。プライマー対は介在配列に隣接し、そして以下の通りに設計した:CRH−R1αについて、それぞれ、235位〜255位および549位〜568位に対応するか、またはCRH−R1βについて、それぞれ198位〜219位および599位〜618位に対応する、センスプライマー5’−GCC CTG CCC TGC CTT TTT CTA−3’(配列番号148)およびアンチセンスプライマー5’−GCT CAT GGT TAG CTG GAC CA−3’(配列番号149)。以下のヒトCRH−R2についてのプライマーを用いて、レセプターアイソフォームαおよびβを同定する781bpの産物を増幅した:それぞれ、149位〜169位および911位〜930位に対応する、センスプライマー5’−GCT GGC CCC GCA GCG CTG CC−3’(配列番号150)およびアンチセンスプライマー5’−CCT CAC TGC CTT CCT GTA CT−3’(配列番号151)。GAPDHプライマーを設計して、635bpの産物を産生した:センスプライマー5’−CCACCCATGGCAAATTCCATGGCA−3’(配列番号146)およびアンチセンスプライマー5’−TCTAGACGGCAGGTCAGGTCCACC−3’(配列番号147)。PCRを、2μlのcDNA、各々1.25mMのdNTP、1×PCR緩衝液IIを伴う2.5U AmpliTaq Gold(Perkin Elmer,Brachburg,NJ)、1.0mM MgCl2(CRH−R1,GAPDH)、1.5mM MgCl2(CRH−R2)、200ngのセンスプライマーおよびアンチセンスプライマー(CRH−R1)、ならびに100ngのセンスプライマーおよびアンチセンスプライマー(CRH−R2、GAPDH)を含む、50μl容積において行った。増幅についての条件は、94℃にて1分間の変性、62℃〜58℃で1分間(CRH−R1αおよびGAPDH)および64℃〜60℃で1分間(CRH−R2)のプライマーアニーリング、ならびに72℃で1分間の伸長であった。各PCRサンプルは、反応が増幅のプラトー期に達していないことが確実にされた、35サイクルの増幅を受けた。作製されたPCR産物を1.5%アガロースゲルで電気泳動し、そして可視化した。PCR産物の正体を、配列決定によって確認した。
【0257】
(実施例28:ノーザンブロット分析のための方法)
総RNAを、培養した初代滑膜細胞または滑膜の外植片から単離した。RNAをUV吸収によって定量し、そして10μgの総RNAを標準的なノーザンゲルで電気泳動し、そしてナイロンメンブレン(BioRad,Richmond,CA)に転写した。クロスハイブリダイゼーションを回避するためのアミノ末端領域にわたるNURR1およびNUR77のcDNAプローブ(MurphyおよびConneely,1997)を、[α−32P]dCTPおよびランダムプライマー標識系(Promega,Madison,WI)を用いて高い比活性になるまで放射標識した。ブロットを、増感スクリーンを用いて−80℃でフィルムに暴露し、そしてオートラジオグラフィーの強度を、イメージング濃度計を用いて定量した。
【0258】
(実施例29:免疫組織化学のための方法)
滑膜組織切片(6μm)を、2%アミノプロピル−トリエトキシ−シランまたは1%パラホルムアルデヒドでコーティングしたスライドグラスに配置した。無発熱性ガラスカバースリップ上で増殖させた滑膜細胞を、メタノールで15分間処理した後、染色した。NURR1についての一次抗体(1:100希釈)(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)を、ヒトおよびラットのNURR1のアミノ末端にマッピングされるウサギポリクローナル抗体であった。CRHレセプターIについての一次抗体(1:75希釈)(C−20)は、ヒトCRH−レセプター1型(CRH−R1)のカルボキシ末端にマッピングされるペプチドに対して惹起されたヤギポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)であった。C−20は、CRH−R1およびCRH−R2と称される第二のCRHレセプターサブタイプの両方と反応する。抗体を過剰のCRH−R2特異的合成ペプチド(N−20−P、100μg/0.5ml;Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)で予め吸収させることによってC−20のCRH−R2活性を排除することによって特異的CRH−R1染色が達成された。CRH−R2(N−20)についての一次抗体は、CRH−R2のアミノ末端に対応するペプチドに対して惹起されたポリクローナル抗体(200μg/ml,Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)であった。一次抗体を0.6M NaCl中に1:100希釈し、そして切片上で37℃でインキュベートした。一次抗体との2時間のインキュベーション後、ビオチン化二次抗体(1:500;Vector laboratories,Burlingame,CA)を切片上にスポッティングし、続いてアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体(ABCキット,Vectastain,Burlingame,CA)をスポッティングした。ネガティブコントロールについて、各一次抗体を、その特異的合成ペプチド(200μg/ml;Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)で予め吸収した。
【0259】
(実施例30:核抽出物の調製および電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA))
核タンパク質抽出物を、既に(MurphyおよびConneely,1997)記載された通りに調製した。EMSAについて、1μgの核抽出物を、20mM Hepes(pH7.9)、5mM MgCl2、20%グリセロール、100mM KCl、0.2mM EDTA、8% Ficoll、600mM KCl、500ng/μlポリ(デオキシイノシン酸−デオキシシチジン酸)、50mM ジチオトレイトール(DTT)および[α−32P]−dCTP標識二本鎖オリゴヌクレオチドの存在下で20分間インキュベートした。スーパーシフト実験のために、NURR1に対する抗体(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)を、最初の20分間のインキュベーション後に添加し、次いでさらに20分間インキュベートした。サンプルを、0.5×Tris−Borate−EDTA(TBE)緩衝液中で5.5%非変性ポリアクリルアミドゲルを通して電気泳動した。競合研究のために、反応を、示された濃度の非標識プローブを用いて、記載される通りに行った。オリゴヌクレオチドCRH NBRE 5’−GATGGTAAGAAGGTCAACGG−3’(配列番号152)を、移動度シフトアッセイにおいて用いた。
【0260】
(実施例31:統計分析のための方法)
データを、平均値+/−SEとして表す。正常な滑膜と、RA、PsAまたはSAと診断された患者から得られた滑膜との間の比較を、独立した値についてStudent t検定を用いて行った。処理の間の比較を、対の値についてStudent t検定を用いて行った。
【0261】
(実施例32:二重標識免疫蛍光のための方法)
組織切片または単離された細胞培養物を、希釈した正常なウサギ血清(Vector Laboratories,Burlingame,CA,USA)中でインキュベートした。CRH−R1(C−20)ポリクローナル抗体を、10%正常なヒト血清中で1:10希釈し、続いてビオチン化抗ヤギ二次抗体(1:500、Vector Laboratories,Burlingame,CA)を添加した。切片を、希釈した正常なヤギ血清中でインキュベートし、そして第二の一次抗体であるモノクローナル肥満細胞マーカー:マウス抗ヒトトリプターゼ(AA1,Accurate Chemical Scientific Corp.Westbury,NY,USA)の1:10希釈物中でインキュベートした。ヤギ抗マウスIgG1 FITC結合体化抗体(1:50、1mg/ml、Southern Biotechnology Associates,Inc.Birmingham AL,USA)を添加し、続いてCy3蛍光色素結合体化モノクローナルマウスである抗ビオチン抗体(BN−34、1:100、Sigma Chemical Company,St.Louis,MO,USA)を添加した。スライドを、DAKO(登録商標)蛍光マウント媒体(Dako Corporation,Carpinteria,CA,USA)中にマウントした。アイソタイプが一致した非免疫IgGを、各々の一次抗体についてのコントロールとして含め、そして一次抗体を順次省略して、各々についての特異的染色を確実にした。類似のプロトコルを、単離したSMECの第VIII因子(1:50、F8/86、Dako Corporation,CA,USA)染色について用いた。
【0262】
(実施例33:NURRサブファミリーのメンバーのアンタゴニストについてスクリーニングするための方法)
転写アッセイを、試験因子の存在下および非存在下で実施する。プロモーターに作動可能に連結されたNURRサブファミリーのメンバーおよびマーカー配列を保有する細胞(ここで、このプロモーターは、NURRサブファミリーのメンバーによって直接的または間接的に調節される)を試験因子に投与する。この因子の非存在下でのマーカー配列の発現と比較した、この因子の存在下でのマーカー配列の発現における減少は、この因子が、NURRサブファミリーのメンバー/リガンドの相互作用を妨害することを示す。この妨害は、直接的または間接的であり得る。当業者は、このマーカー配列が、その発現レベルを間接的または直接的に反映する任意のマーカー配列であることを認識する。さらに、このマーカー配列の発現によって産生される転写産物またはこの発現の遺伝子産物が検出される。マーカー配列の例は、当該分野で周知であり、そしてクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼなどを含む。本明細書中の実施例に提供されるように、デキサメタゾンは、NURR1の炎症誘発性メディエーターの発現を低減させ、従って、炎症誘発性メディエーターの存在下でNURRサブファミリーのメンバーのアンタゴニストとして作用する。
【0263】
従って、NURRサブファミリーポリペプチドとリガンドとの相互作用を妨害する化合物についてのスクリーニングの方法が存在し、この方法は、細胞に試験因子を導入する工程(ここで、この細胞は、マーカー配列を含み、ここで、このマーカー配列の発現は、このNURRサブファミリーのメンバーによって調節される);およびこのマーカー配列の発現レベルを測定する工程(ここで、このマーカー配列の発現がこの導入後に低減した場合、この試験因子は、NURRサブファミリーポリペプチドとこのリガンドとの相互作用を妨害する化合物である)を包含する。
【0264】
別の特定の実施形態では、この方法は、炎症性免疫疾患の処置についての化合物を同定し、この方法は、細胞に試験因子を導入する工程(ここで、この細胞は、マーカー配列を含み、ここで、このマーカー配列の発現は、このNURRサブファミリーのメンバーによって調節される);およびこのマーカー配列の発現レベルを測定する工程(ここで、このマーカー配列の発現がこの導入後に低減された場合、この試験因子はこの炎症性免疫疾患の処置についての化合物である)を包含する。
【0265】
(特許)
米国3,817,837
米国3,850,752
米国3,939,350
米国3,996,345
米国特許4,277,437
米国特許4,275,149
米国特許4,366,241
米国特許3,376,110
米国特許4,676,980
米国特許4,797,368
米国特許4,816,567
米国特許5,139,941
米国特許5,662,298
米国特許5,662,299
米国特許5,670,488
米国特許6,147,275
米国特許6,127,399
米国特許5,821,337
WO 91/00360
WO 92/200373
EP 03089。
【0266】
(刊行物)
明細書において言及した全ての特許および刊行物は、本発明が関連する分野の当業者の技術水準を示す。全ての特許および刊行物は、各々の個々の刊行物が具体的かつ個々に、参考として援用されると示されたのと同じ程度に、本明細書中に参考として援用される。
【0267】
【表1】
当業者は、目的を実行するため、そして上記の結果および利点ならびにその固有の結果および利点を得るために本発明が充分に適合されることを容易に認識する。本明細書中に記載される配列、方法、処理、薬学的組成物、手順および技術は、好ましい実施形態の現在の代表であり、例示であることが意図され、そして範囲を限定するとは意図されない。本発明の趣旨に包含されるかまたは係属中の特許請求の範囲によって規定される、これらにおける変更および他の用途は、当業者に考え付く。
【図面の簡単な説明】
【図1A】
図1Aは、ヒトの滑膜組織および初代滑膜細胞におけるCRH mRNA発現を説明する。
【図1B】
図1Bは、ヒトの滑膜組織および初代滑膜細胞におけるCRH mRNA発現を説明する。
【図1C】
図1Cは、ヒトの滑膜組織および初代滑膜細胞におけるCRH mRNA発現を説明する。
【図1D】
図1Dは、ヒトの滑膜組織および初代滑膜細胞におけるCRH mRNA発現を説明する。
【図2A】
図2Aは、炎症誘発性メディエーターが、培養滑膜細胞中でhCRHプロモーターからの転写を活性化することを説明する。
【図2B】
図2Bは、炎症誘発性メディエーターが、培養滑膜細胞中でhCRHプロモーターからの転写を活性化することを説明する。
【図3A】
図3Aは、炎症性滑膜中でのCRHレセプターについての免疫組織化学的染色を示す。
【図3B】
図3Bは、炎症性滑膜中でのCRHレセプターについての免疫組織化学的染色を示す。
【図3C】
図3Cは、炎症性滑膜中でのCRHレセプターについての免疫組織化学的染色を示す。
【図3D】
図3Dは、炎症性滑膜中でのCRHレセプターについての免疫組織化学的染色を示す。
【図4A】
図4Aは、RA滑膜外植片および培養初代滑膜細胞中でのNURR1およびNUR77のmRNAのノーザン分析を説明する。
【図4B】
図4Bは、RA滑膜外植片および培養初代滑膜細胞中でのNURR1およびNUR77のmRNAのノーザン分析を説明する。
【図5A】
図5Aは、抗NURR1免疫血清を用いた滑膜組織および培養滑膜細胞の免疫組織化学的染色を示す。
【図5B】
図5Bは、抗NURR1免疫血清を用いた滑膜組織および培養滑膜細胞の免疫組織化学的染色を示す。
【図5C】
図5Cは、抗NURR1免疫血清を用いた滑膜組織および培養滑膜細胞の免疫組織化学的染色を示す。
【図5D】
図5Dは、抗NURR1免疫血清を用いた滑膜組織および培養滑膜細胞の免疫組織化学的染色を示す。
【図6A】
図6Aは、滑膜細胞中のNURR1 mRNA発現に対する、炎症誘発性メディエーターであるデキサメタゾン、インドメタシンおよびシクロヘキシミドの効果を示す。
【図6B】
図6Bは、滑膜細胞中のNURR1 mRNA発現に対する、炎症誘発性メディエーターであるデキサメタゾン、インドメタシンおよびシクロヘキシミドの効果を示す。
【図6C】
図6Cは、滑膜細胞中のNURR1 mRNA発現に対する、炎症誘発性メディエーターであるデキサメタゾン、インドメタシンおよびシクロヘキシミドの効果を示す。
【図6D】
図6Dは、滑膜細胞中のNURR1 mRNA発現に対する、炎症誘発性メディエーターであるデキサメタゾン、インドメタシンおよびシクロヘキシミドの効果を示す。
【図6E】
図6Eは、滑膜細胞中のNURR1 mRNA発現に対する、炎症誘発性メディエーターであるデキサメタゾン、インドメタシンおよびシクロヘキシミドの効果を示す。
【図7】
図7は、初代滑膜細胞由来の核抽出物の電気泳動移動度シフト分析(EMSA)を説明する。
【図8】
図8は、局所産生されたCRH(これは、ヒト炎症性関節炎におけるサイトカインネットワークの成分である)の調節を例示する。炎症性関節炎に関連した炎症誘発性メディエーターは、滑膜のCRH産生を増大させる。滑膜のCRHは、CRHレセプターを保有する内皮細胞およびいくつかの単核細胞において核転写因子NURR1を誘導する。NURR1は、サイトカイン媒介シグナル伝達に寄与し、そしてオートクライン炎症性カスケードの一般的なメディエーターであり、これはさらに、CRH発現を増大させることによって炎症応答を増幅するために役立つ。デキサメタゾン(DEX)は、サイトカイン誘導性NURR1 mRNA発現およびCRH誘導性NURR1 mRNA発現の両方を阻害することによって機能する。
【図9A】
図9Aは、β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子に融合されたヒトNURR1プロモーターの、NFκB結合配列に対応するオリゴヌクレオチドへの、結合を説明する。
【図9B】
図9Bは、β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子に融合されたヒトNURR1プロモーターの、NFκB結合配列に対応するオリゴヌクレオチドへの、結合を説明する。
【図9C】
図9Cは、このレポーターでトランスフェクトされた初代RA滑膜細胞および滑膜組織におけるβ−ガラクトシダーゼ活性を示す。
【図9D】
図9Dは、β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子に融合されたヒトNURR1プロモーターの、CREB結合配列に対応するオリゴヌクレオチドへの結合を説明する。
【図10A】
図10Aは、抗NURR1免疫血清を用いた、培養滑膜細胞の免疫組織化学的染色を例示する。
【図10B】
図10Bは、抗NURR1免疫血清を用いた、培養滑膜細胞の免疫組織化学的染色を例示する。
【図10C】
図10Cは、抗NURR1免疫血清を用いた、培養滑膜細胞の免疫組織化学的染色を例示する。
【図10D】
図10Dは、抗NURR1免疫血清を用いた、培養滑膜細胞の免疫組織化学的染色を例示する。
【図11A】
図11Aは、CRH−R1レセプターサブタイプおよびCRH−R2レセプターサブタイプの発現を決定するための、滑膜組織の免疫組織化学的染色を示す。
【図11B】
図11Bは、CRH−R1レセプターサブタイプおよびCRH−R2レセプターサブタイプの発現を決定するための、滑膜組織の免疫組織化学的染色を示す。
【図11C】
図11Cは、CRH−R1レセプターサブタイプおよびCRH−R2レセプターサブタイプの発現を決定するための、滑膜組織の免疫組織化学的染色を示す。
【図11D】
図11Dは、CRH−R1レセプターサブタイプおよびCRH−R2レセプターサブタイプの発現を決定するための、滑膜組織の免疫組織化学的染色を示す。
【図11E】
図11Eは、CRH−R1レセプターサブタイプおよびCRH−R2レセプターサブタイプの発現を決定するための、滑膜組織の免疫組織化学的染色を示す。
【図11F】
図11Fは、CRH−R1レセプターサブタイプおよびCRH−R2レセプターサブタイプの発現を決定するための、滑膜組織の免疫組織化学的染色を示す。
【図12A】
図12Aは、二重抗体染色法を用いた、肥満細胞トリプターゼおよびCRH−R1の免疫局在決定(immunolocalization)を示す。
【図12B】
図12Bは、二重抗体染色法を用いた、肥満細胞トリプターゼおよびCRH−R1の免疫局在決定を示す。
【図12C】
図12Cは、二重抗体染色法を用いた、肥満細胞トリプターゼおよびCRH−R1の免疫局在決定を示す。
【図13A】
図13Aは、滑膜組織におけるCRHレセプターサブタイプmRNAの発現を特徴付ける。
【図13B】
図13Bは、滑膜組織におけるCRHレセプターサブタイプmRNAの発現を特徴付ける。
【図13C】
図13Cは、滑膜組織におけるCRHレセプターサブタイプmRNAの発現を特徴付ける。
【図13D】
図13Dは、滑膜組織におけるCRHレセプターサブタイプmRNAの発現を特徴付ける。
【図14】
図14は、ノーザン分析による、初代RA滑膜細胞におけるNOR1およびNURR1の発現を例示する。
Claims (42)
- 核レセプターポリペプチドの転写活性を阻害するためのアンタゴニストであって、該ポリペプチドは、NURRサブファミリーのアミノ酸配列を含む、アンタゴニスト。
- 前記NURRサブファミリーのアミノ酸配列が、配列番号33、配列番号64および配列番号91からなる群より選択される、請求項1に記載のアンタゴニスト。
- 前記アンタゴニストが、関節炎を阻害する、請求項1に記載のアンタゴニスト。
- 前記アンタゴニストが、関節の炎症を阻害する、請求項1に記載のアンタゴニスト。
- 核レセプターポリペプチドの転写活性を阻害するのためのアンタゴニストであって、該ポリペプチドは、NURR1アミノ酸配列を含む、アンタゴニスト。
- 前記NURR1アミノ酸配列が、配列番号33である、請求項5に記載のアンタゴニスト。
- 前記アンタゴニストが、関節炎を阻害する、請求項5に記載のアンタゴニスト。
- 前記アンタゴニストが、関節の炎症を阻害する、請求項5に記載のアンタゴニスト。
- 炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法であって、NURRサブファミリーの核酸配列の発現を減少させる工程を包含する、方法。
- 前記NURRサブファミリーの核酸配列が、配列番号1、配列番号47および配列番号76からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
- 炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法であって、配列番号1のNURRサブファミリーの核酸配列の発現を減少させる工程を包含する、方法。
- 前記炎症性免疫疾患が、慢性炎症性関節疾患、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
- 前記慢性炎症性関節疾患が、関節炎である、請求項10に記載の方法。
- 前記関節炎が、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
- 炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法であって、NURRサブファミリーのアミノ酸配列を含むポリペプチドのレベルを低下させる工程を包含する、方法。
- 前記NURRサブファミリーのアミノ酸配列が、配列番号33、配列番号64および配列番号91からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
- 前記NURRサブファミリーのアミノ酸配列が、配列番号33である、請求項15に記載の方法。
- 前記ポリペプチドを低下させる工程が、配列番号33を含む配列のアミノ酸合成を阻害することを含む、請求項15に記載の方法。
- 前記炎症性免疫疾患が、慢性炎症性関節疾患、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
- 前記慢性炎症性関節疾患が、関節炎である、請求項19に記載の方法。
- 前記関節炎が、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
- 炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法であって、NURRサブファミリーのメンバーの転写活性を阻害する工程を包含する、方法。
- 前記NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸配列が、配列番号33、配列番号64および配列番号91からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
- 前記NURRサブファミリーのメンバーのアミノ酸配列が、配列番号33である、請求項22に記載の方法。
- 前記炎症性免疫疾患が、慢性炎症性関節疾患、潰瘍性大腸炎および甲状腺炎からなる群より選択される、請求項22に記載方法。
- 前記慢性炎症性関節疾患が、関節炎である、請求項25に記載の方法。
- 前記関節炎が、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎およびサルコイド関節炎からなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
- NURRサブファミリーポリペプチドとリガンドとの相互作用を妨害する化合物についてスクリーニングする方法であって、以下の工程:
細胞に試験因子を導入する工程であって、ここで、該細胞は、マーカー配列を含み、該マーカー配列の発現は、該NURRサブファミリーのメンバーによって調節される、工程;および
該マーカー配列の発現レベルを測定する工程であって、ここで、該マーカー配列の該発現が、該導入後に減少した場合、該試験因子は、該NURRサブファミリーポリペプチドと該リガンドとの相互作用を妨害する化合物である、工程
を包含する、方法。 - 請求項28に記載の方法によって得られた化合物を含む、組成物。
- 前記NURRサブファミリーポリペプチドが、配列番号33、配列番号64および配列番号91からなる群より選択される配列である、請求項28に記載の方法。
- 前記NURRサブファミリーポリペプチドが、配列番号33の配列である、請求項28に記載の方法。
- 炎症性免疫疾患の処置のための化合物を同定する方法であって、以下の工程:
細胞に試験因子を導入する工程であって、ここで、該細胞は、マーカー配列を含み、該マーカー配列の発現は、該NURRサブファミリーのメンバーによって調節される、工程;および
該マーカー配列の発現レベルを測定する工程であって、ここで、該マーカー配列の該発現が、該導入後に減少した場合、該試験因子は、該炎症性免疫疾患の処置のための化合物である、工程
を包含する、方法。 - 薬学的に受容可能な組成物であって、
請求項32に記載の方法によって得られた化合物;および
薬学的キャリア
を含む、組成物。 - 前記化合物を薬学的キャリア中に分散させる工程;および
該キャリア中の治療有効量の該化合物を、前記炎症性免疫疾患を有する個体に投与する工程
をさらに包含する、請求項32に記載の方法。 - 前記前記炎症性免疫疾患が、関節中に存在する、請求項32に記載の方法。
- 炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法であって、コルチコトロピン放出ホルモンレセプターの核酸配列の発現を減少させる工程を包含する、方法。
- 前記コルチコトロピン放出ホルモンレセプターの発現を減少させる工程が、配列番号104の核酸配列の合成を阻害することを含む、請求項36に記載の方法。
- 炎症性免疫疾患について生物体を処置する方法であって、コルチコトロピン放出ホルモンレセプターのアミノ酸配列のレベルを低下させる工程を包含する、方法。
- 前記コルチコトロピン放出ホルモンレセプターのアミノ酸レベルを低下させる工程が、配列番号124を含む配列のアミノ酸合成を阻害することを包含する、請求項38に記載の方法。
- 炎症性免疫疾患について生物体を処置するための方法であって、配列番号124の配列の転写活性を阻害する工程を包含する、方法。
- NURRサブファミリーのメンバーの発現を減少させるためのアンタゴニスト。
- 前記アンタゴニストが、デキサメタゾンである、請求項41に記載のアンタゴニスト。
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