JP2004510736A - アルコール中毒治療における神経ペプチドy拮抗物質の使用 - Google Patents
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Abstract
本発明は、治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を投与することを含む、哺乳類でアルコール中毒およびアルコール乱用を治療する方法を提供する。本発明はまた、前記NPYレセプター拮抗物質を含有する医薬組成物を目的とする。
Description
【0001】
序論
発明の技術分野
本発明は、哺乳類におけるアルコール中毒およびアルコール乱用の治療を目的とする組成物および方法に関する。
背景
アルコール中毒は現代社会における最も重要な問題の1つである。米国予防衛生研究所によれば、アルコール乱用は、毎年の全自動車事故死亡者数(20000人を超える)の45%の原因となっており、短期入院総数のほぼ44%が含まれる。その他に25000人がアルコール付随肝硬変で死亡している(NIH報告No.97−4017、(1997))。法務省(Justice Department)の報告によれば、アルコールは、1998年の全凶悪犯罪のほぼ40%に深く関わっている。合衆国でアルコール乱用の結果生じる経済コストは、毎年ほぼ1500億ドルと概算される。
【0002】
ジスルフィラム[アンタビュース(Antabuse)(登録商標)]およびナルトレキソン[トレキサン(Trexan)(登録商標)]は、アルコール乱用治療で補助的に使用される現在入手できるFDAが承認した唯一の製品である。ジスルフィラムは、体内でのアルコールの中間代謝を阻止し、アセトアルデヒドの蓄積をひき起こすことによって機能する。前記アセトアルデヒドは続いて顕著な行動上のおよび生理学的副作用をもたらす。前記薬剤を服用することに対する患者の協力は上記の副作用のために少ない(以下の文献を参照されたい:T.W. Rall, ”Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, A.G. Gilman et a., 8th Edition, Chap. 17, pp.378−379)。ナルトレキソンは周知の麻薬拮抗物質であり、内因性オピエート褒賞系の活性化を阻止することによって機能すると考えられる(前記系はアルコール消費によって活性化される)。実際、ナルトレキソンは比較的作用時間が短いため穏やかな作用を有するのみであり、薬剤が何らかの効果を発揮するためには、通常患者は行動療法による同時治療を必要とする(J.R. Volpicelli et al., Arch. Gen. Psychiatry, 1992, 49:876−880)。したがって、哺乳類のアルコール中毒およびアルコール乱用の治療に有用な新規な方法および組成物を開発することは重要である。
【0003】
アルコールが脳に作用する神経生物学的メカニズムおよび中毒をひき起こす行動プロセスの性状は完全には明らかにされていない。他の過剰消費性行動(例えば肥満)の研究は、視床下部を主要な中枢神経系の調節系と特定した(例えば以下の文献を参照されたい:J.E. Blundell, Appetite, 1986, 7:39−56; S.P. Kalra et al., Endocr. Rev., 1999, 20:68−100)。最近得られた証拠は、アルコールおよび食物の摂取は視床下部伝達系によって調節されることを示唆している。副脳室核(PVN)へのセロトニン(5−HT)の注射はノルエピネフリン誘発炭水化物摂取を抑制する(S.F. Leibowitz and G. Shor−Posner, Appetite, 1986, 7:Suppl.1−14)。同様に、PVNへの部位特異的ノルエピネフリン輸液はまたアルコールの自己摂取の増加をもたらし、5−HTの同時輸液によって完全に阻止される(C.W. Hodge et al., Alcohol Clin. Exp. Res., 1996, 20:1669−1674)。その結果によって、摂食行動およびアルコール希求行動は、共通の視床下部メカニズムによって調節されるかもしれないということが提唱される(H.H. Samson and C.W. Hodge, ”Neurobehavioral regulation of ethanol intake”, in ”Pharmacological Effects of Ethanol on the Nervous System,” R.A. Deitrich and V.G. Erwin, eds., pp.203−226, CRC Press, Boca Raton, 1996)。
【0004】
神経ペプチドY(NPY)(36アミノ酸残基ペプチド)は、これまでに知られている摂食行動のもっとも強力な刺激因子である。脳室内または視床下部核内へのNPYの輸液(B.G. Stanley et al., Peptide, 1995, 6:1205−1211; B.G. Stanley et al., Brain Res., 1993, 604:304−317)は、食物摂取を亢進し(B.G. Stanley and S.F. Leibowitz, Life Sci., 1994, 35:2635−2642)、さらに反復注射は過食症および肥満をもたらす(B.G. Stanley et al., Peptide, 1996,7:1189−1192)。NPYの多くの脳領域への注射は食物摂取を亢進するが、PVNがその主要作用部位である(B.G. Stanley et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1985, 82:3940−3943; Stanley et al., 1993)。NPYレセプターは種々のサブタイプとして存在することが判明している(前記サブタイプはサブタイプ選択的拮抗物質と反応する)(A. Balasubramanian, Peptide, 1997, 18:445−457)。多大な注意が、NPYの食物希求作用および食欲促進作用を仲介するレセプターサブタイプに向けられた(C. Gerald et al., Nature, 1996, 382:168−171; D. O’Shea et al., Endocrinology, 1997, 138:196−202; Y.H. Hu et al., J. Biol. Chem., 1996, 271:26315−26319)。Y1レセプターは最初は、Y1作動薬[Pro34]−NPYが摂食を刺激するので、前記作用に必要なレセプターとして提唱された。しかしながら、強力な食欲促進作用はまた、Y1レセプターで低い能力をもつN末端切断NPYフラグメント(NPY2−36)によっても惹起される。これは、新規な“Y1様”レセプターが前記作用を仲介するかもしれないという考えをもたらした(G.Stanley et al., Peptides, 1992, 13:581−587)。さらに、[Pro34]−NPYは、NPYの注射後に認められる食物摂取の約50%を刺激し、Y1レセプターは、NPYの食欲促進作用のある程度の部分について重要であるかもしれないことを示唆した(O’Shea et al., 1997)。
【0005】
非ペプチド性NPYのY1レセプター選択的拮抗物質が知られている。Y1選択的BIBP3226のデザイン、選択性および心脈管系特性が報告された(H.N. Doods et al. Regul. Pept., 1996, 65:71−77)。米国特許第5,616,620号明細書は、心脈管系疾患、肥満および糖尿病の治療で有用なものとしてBIBP3226およびその類似体を開示している。BIBO3304は、Y1レセプターサブタイプに対してナノモル以下で親和性を示す非ペプチド性拮抗物質である。これは、NPYの適用によって、または飢餓によって誘発されるラットの食物摂取を顕著に抑制する(H.A. Wieland et al., Br. J. Pharmacol., 1998, 125:549−55)。米国特許第6,114,390号明細書は、多くの疾患および異常(高血圧、心脈管系疾患、肥満および糖尿病を含む)の治療で有用であるとしてBIBO3304およびその類似体を開示している。非ペプチド性NPYY5レセプター選択的拮抗物質もまた摂食行動に影響を与えることが判明している(Kanatani et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 2000, 272:169−173)。
【0006】
関連文献
いくつかの実験で、エタノールの生化学的、生理学的作用および行動における作用に対するNPYの関与が示唆された。選別的に交配したアルコール嗜好性(P)ラットでは、海馬、扁桃、前頭皮質でNPY様免疫反応性レベルがアルコール非嗜好性(NP)ラットと比較して低い(C.L. Ehlers et al., Alcohol Clin. Exp. Res., 1998a, 22:1778−1782)。しかしながら、Pラットは、NPラットよりもPVNおよび弓状核でより強いNPY免疫反応性を示す(B.H. Hwang et al., Alcohol Clin. Exp. Res., 1999, 23(6):1023−1030)。同様に、6%エタノール含有飼料を長期間供給することによって、PVNのNPY含有量が増加し、ロング=エバンスラットの摂食パターンに変化が生じた(J.T. Clark et al., 1998, Regul. Pept., 75−76:335−345)。PおよびNPラットの遺伝的連関分析によって、NPY遺伝子を含む染色体領域に顕著な定量的形質遺伝子座が特定された(L.G. Carr et al., Alcohol Clin. Exp. Res., 1998, 22:884−887)。NPYを欠く変異マウスとNPYを過剰発現する遺伝子導入マウスとの比較によって、エタノール摂取および急性感受性は、脳内のNPY総レベルと反比例することが示された(T.E. Thiele et al., Nature, 1998, 396:366−369)。
【0007】
選別交配したアルコール高摂取(HAD)ラットは、アルコール低摂取(LAD)ラットよりもPVNにおけるNPY免疫反応性が低い(Hwang et al., 1999)。さらに、NPYを欠くヌル変異体マウスは野生型のコントロールマウスよりも多量のエタノールを飲み、さらにNPYを過剰発現する遺伝子導入マウスは野生型コントロールマウスよりもエタノールを少ししか飲まない(Thiele et al., 1998)。これらのデータを総合すれば、NPYレベルの低下はエタノールの自己摂取の増加と結びついている。しかしながら、HADラットはまた、LADラットと比較して中枢扁桃のNPYレベルが低く(Hwang et al., 1999)、他の脳領域におけるNPYレベルの変化が、前記特別なラットのエタノール自己摂取に影響を与える可能性を示唆している。さらに、NPYヌル変異体および遺伝子導入マウスの行動は、全体的なNPYの変化だけでなく関連ペプチド作動系における潜在的な発育代償によっても影響を受ける可能性があり、このことは、エタノールの自己摂取における視床下部の役割に関して上記の研究から特定の結論を引き出すことを困難にしている。
【0008】
発明の概要
本発明は、哺乳類のアルコール中毒およびアルコール乱用の治療方法を提供する。前記方法は治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を投与することを含む。本発明はまた、前記物質を含有する医薬組成物を目的とする。
本発明の一観点において、PVN内のNPYレセプターとNPY(または他のリガンド)の結合によるNPYレセプターの活性化が、NPYレセプター拮抗物質の投与によって防止または低下させられる。ある態様では、本発明は、アルコール中毒の患者によるアルコールの自己摂取を減少させる方法を提供する。別の態様では、本発明は、アルコール中毒患者のアルコール希求行動を減少させる方法を提供する。さらに別の態様では、本発明は、回復中のアルコール中毒患者の飲酒再発の発生を防止または減少させる方法を提供する。これらの観点は、治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を投与することによって達成される。所望される目的に応じ、治療的に有効な量は、アルコール中毒患者のアルコールの自己摂取およびアルコール嗜好を減少させるために十分であり、アルコール中毒患者のアルコール希求行動を低下させるために十分であり、または回復中のアルコール中毒患者の飲酒再発の発生を減少させるために十分であり、それによってアルコール中毒およびアルコール乱用が治療される。本発明は、アルコール中毒、アルコール依存症またはアルコール乱用の治療において、アルコールの渇望を減少させ、アルコール希求衝動を抑制し、さらに個々人が遺伝的にアルコール中毒またはアルコール乱用の傾向があるか否かにかかわらず、前記個々人のアルコール消費を制限するために有用である。
本発明の他の目的は、以下の説明および請求の範囲を通読することによって当業者には明白となろう。
【0009】
具体的な態様の説明
本発明は、治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を投与することを含む哺乳類でアルコール中毒またはアルコール乱用を治療する方法を提供する。本発明のある態様では、PVN内のNPYレセプターが治療的に有効量のNPYレセプター拮抗物質によって遮断される。治療的に有効な量は、罹患哺乳類のエタノール自己摂取および嗜好性を減少させるために十分で、それによって過剰なアルコール消費を医学的に管理してアルコール依存およびアルコール乱用を治療する。関連する観点において本発明は以下の方法を提供する:アルコール中毒患者に治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を投与し、さらに前記投与の前後に前記患者のアルコール自己摂取レベルを測定することを含む、アルコール中毒患者でアルコールの自己摂取を減少させる方法、アルコール中毒患者に治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を投与し、さらに前記投与の前後に前記患者のアルコール希求行動レベルを測定することを含むアルコール中毒患者のアルコール希求行動を減少させる方法、および回復中のアルコール中毒患者に治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を前記患者に投与し、さらに前記投与の前後に前記患者の飲酒再発の発生頻度を測定することを含む飲酒の再発発生を防止または減少させる方法。前記観点は全てアルコール中毒およびアルコール乱用の一般的および最終的目標に関連する。
【0010】
ヒトのアルコール依存およびアルコール乱用は下記の症状のいずれかを特徴とする:(1)顕著な耐性(これは、酩酊または所望の効果を得るために顕著に増加したアルコール量(少なくとも50%増加)を必要とする)または同量のアルコールの持続的使用による効果の顕著な低下;(2)特徴的なアルコールの禁断症状;(3)禁断症状の緩和または回避のための頻繁なアルコール摂取;(4)断酒または飲酒のコントロールに対する持続的要求または1回もしくは2回以上の試みの失敗;(5)意図したものより大量または長時間のアルコール消費;(6)アルコール消費による重要な社会活動、職業活動または余暇活動の断念または低下;(7)アルコール入手のため、飲酒のため、またはアルコールの作用から回復するために必要な活動に費やされる時間が長い;(8)職場、学校または家庭で主要な役割または義務を果たすように期待されているときにしばしば酩酊しているか、禁断症状がある;(9)アルコールの使用によって惹起されるかまたは悪化する社会的、精神的または身体的問題の持続的存在または再発を認識しているにもかかわらず持続的に飲酒している。典型的には、前記症状は少なくとも1ヶ月持続するか、または長期間にわたって繰返し発生している。アルコール乱用は、12ヶ月以内に下記の1つまたは2つ以上の出来事によって示される、特に臨床的に顕著な障害または窮迫を特徴とする:(1)職場、学校または家庭で主要な役割または義務を果たすことできない飲酒の繰返し;(2)身体的に危険な状態での飲酒の繰返し;(3)アルコール関連の法律上の問題の繰返し;または(4)アルコールの作用によって惹起される持続的または繰り返される社会的または対人的問題にもかかわらずアルコール使用が持続する。
【0011】
本発明の別の態様では、アルコール中毒の哺乳類ホストでNPYの作用を遮断し、さらにアルコールに対する渇望を減少させるために十分な量のNPYレセプター拮抗物質が投与される。本発明は、回復中のアルコール中毒患者で飲酒再発の防止に有用である。脳内のNPYレベルの上昇は、アルコール希求行動の急激な増加およびアルコールに対する強い渇望と相関する。NPYレセプターでNPYの作用を遮断することによって、前記渇望が低下し、さらに飲酒再発の可能性が減少する。
【0012】
本発明では、“NPYレセプター拮抗物質”または“NPY拮抗物質”は、脳内または末梢のNPYレセプター上で内因性または外因性神経ペプチド−Y(NPY)の作用を遮断し、アルコールの自己摂取が減少するように機能する化合物または組成物を指す。好ましくは、NPY拮抗物質は、アルコール渇望およびアルコールの自己摂取を減少させ、さらに通常の食物または水の消費には悪影響を与えない。非選択的なNPY拮抗物質は、Y1および/またはY5レセプターサブタイプを含む多数のNPYレセプターサブタイプと結合する拮抗物質である。本発明で使用できる非選択的NPY拮抗物質の例は、[D−Tyr27,36,D−Thr32]神経ペプチドY(27−36)(D−NPYと略す)である。D−NPY(拮抗特性によりNPYY1、Y2、Y4およびY5レセプターサブタイプと結合する)は、Meyersらの報告(R.D. Meyers et al., Brain Res. Bull., 1995, 37:237−245)(前記文献は本明細書に含まれるものとする)にしたがって得ることができる。本発明で使用できる別の選択的NPY拮抗物質はBW1229U91である。これはY1およびY4レセプターに対してナノモルの高い親和性を示し、Y5レセプターに対しては中等度の親和性を示すが、Y2レセプターに対してははるかに低い親和性を有する。BW1220U91は、Widdowsonらの報告(P.S. Widdowson et al., Peptides, 1999, 20:367−372)(前記文献は本明細書に含まれるものとする)にしたがって得ることができる。
【0013】
好ましい態様では、NPYレセプター拮抗物質はNPYY1レセプターサブタイプに対して選択的である。本発明で有用なY1選択的拮抗物質の例は、(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−D−アルギニンアミド(BIBP3226としても知られている)である。BIBP3226は、米国特許第5,616,620号明細書およびDoodsらの文献(H.N. Doods et al., Regulatory Peptides, 1996, 65:71−77)(両文献は本明細書に含まれるものとする)の記載にしたがって得ることができる。他の有用なY1選択的拮抗物質には、例えば以下のBIBP3226の類似体並びに医薬的に許容できるその塩および水和物が含まれる:
(R)−N2−[ビス(4−ブロモフェニル)アセチル]−N−[(4−ヒドロキシフェニル)−メチル]−アルギニンアミド
(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−メチル]−アルギニンアミド
(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−アルギニンアミド
(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[[4−(ヒドロキシメチル)フェニル]−メチル]−アルギニンアミド
N2−(ジフェニルアセチル)−N−[4−ヒドロキ−3−メチルフェニル]−メチル]アルギニンアミド
(R,S)−3−[3−(アミノイミノメチル)フェニル]−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−アラニンアミド
(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−N−メチル−アルギニンアミド
(R,S)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−N5−(1H−イミダゾール−2−イル)−オルニチンアミド
N−[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−N2−(ジフェニルアセチル)−アルギニンアミド
N2−(ジフェニルアセチル)−N−[(4−メトキシフェニル)メチル]−アルギニンアミド、および
(R)−N−[[4−[(4,5−ジヒドロ−5,5−ジメチル−2,4(3H)−ジオキソ−1H−イミダゾール−3−イル)メチル]フェニル]メチル]−N2−(ジフェニルアセチル)−アルギニンアミド。
【0014】
本発明で有用なNPYY1レセプター拮抗物質のさらに別の例は、(R)−N−[[4−(アミノカルボニルアミノメチル)−フェニル]メチル]−N2−(ジフェニルアセチル)−アルギニンアミドトリフルオロアセテート(BIBO3304としても知られている)である。BIBO3304は、米国特許第6,114,390号明細書およびWielandらの報告(H.A. Wieland et al., Br. J. Pharmacol., 1998, 125:549−55)(両文献は本明細書に含まれるものとする)に記載された方法にしたがって得ることができる。
【0015】
他の有用なY1選択的拮抗物質には、例えば以下のBIBO3304の類似体並びに医薬的に許容できるその塩および水和物が含まれる:
(R)−N−[[4−(アミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−N2−(ジフェニルアセチル)−アルギニンアミド、
(R,S)−N5−(アミノイミノメチル)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−N5−メチル−オルニチンアミド、
(R)−N−[[4−(アミノカルボニルメチル)フェニル]メチル]−N2−(ジフェニルアセチル)−アルギニンアミド、
(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[[4−(メチルアミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−アルギニンアミド、
(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[[4−(エチルアミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−アルギニンアミド、
(R)−N−[[4−(アミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−N2−[ビス−(4−メトキシフェニル)アセチル]−アルギニンアミド、
(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[[4−(エトキシカルボニルメチルアミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−アルギニンアミド、
(R)−N−[[4−(アミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−N2−[ビス−(4−フルオロフェニル)アセチル]−アルギニンアミド、
(R)−N−[[4−(アミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−N2−[ビス−(4−クロロフェニル)アセチル]−アルギニンアミド、
(R)−N−[[4−(アミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−N2−[ビス−(4−ヒドロキシフェニル)アセチル]−アルギニンアミド、
(R)−N−[[4−(アミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−N2−[ビス−[4−(メトキシカルボニルメトキシ)フェニル]アセチル]−アルギニンアミド、および
(R)−N−[[4−(アミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−N2−[ビス−[4−(ヒドロキシカルボニルメトキシ)フェニル]アセチル]−アルギニンアミド。
【0016】
他の有用な選択的NPYY1レセプター拮抗物質の例は、米国特許第5,962,530号明細書および第6,040,289号明細書に開示されている(両文献は本明細書に含まれるものとする)。
本発明の別の態様では、NPYレセプター拮抗物質はNPYY5レセプターサブタイプに対して選択的である。本発明で有用なY5選択的拮抗物質の例は、(2−(3,3−ジメチル−1−オキソ−4H−1H−キサンテン−9−イル)−5,5−ジメチル−シクロヘキサン−1,3ジオン)であり、これはL−152804としても知られている。L−152804は、Kanataniらの報告(Kanatani et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 2000, 272:169−173)(前記文献は本明細書に含まれるものとする)にしたがって得ることができる。
【0017】
本明細書でNPYレセプター拮抗物質またはNPY拮抗物質という用語が用いられるときは、ヒトおよび他の哺乳類でNPYレセプター拮抗物質特性を有する医薬的に許容できる全ての塩がその中に含まれると解されるべきである。前記塩には例えば以下の無機酸または有機酸による塩が含まれる:酢酸、ギ酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、またはマレイン酸。さらに、NPY拮抗物質がカルボキシ基を含む場合、無機および有機塩基を用いて医薬的に許容できる付加塩に変換することができる。適切な塩基の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンが含まれる。
【0018】
NPY拮抗物質および医薬的に許容できる担体または賦形剤を含む医薬組成物は、アルコール中毒の治療で有効な薬剤であり、したがって本発明の別の特徴を提供する。本発明の別の態様は、NPYY1選択的またはNPYY5選択的拮抗物質を含有する医薬組成物を含む。NPYY1選択的拮抗物質を含む医薬組成物が好ましい。好ましい全身投与用組成物は、投与されたとき血液脳関門を通過するか、または生理学的に活性な形態のNPYY1またはNPYY5拮抗物質を含む。
本発明を実施する場合、NPY拮抗物質は、NPYがそのレセプターと作用する部位で前記拮抗物質が機能できることを条件に全身的または局所的に投与することができる。好ましくは、前記拮抗物質は、全身的に(例えば非経口的、経口的または腹腔内に)投与される。局所適用およびエアゾルの吸入もまた包含される。
【0019】
1日当たり体重1kgにつき約0.001mgから約100mgのオーダーのNPY拮抗物質の投与レベルがアルコール中毒の治療で有用である。単回投与製剤を製造するために担体物質と結合させることができる活性物質の量は、治療の対象者および個々の投与態様に応じて変動するであろう。ユニット製剤は一般に約1mgから約500mgの有効成分を含むであろう。
個々の個体に固有の用量レベルは、NPY拮抗物質の活性、年齢、体重、一般的な身体的および精神的健康状態、遺伝的素因、環境的な影響、性別、食事、投与期間、投与ルート、排出速度、および治療される個々の問題の重篤度を含む種々の要因によって左右されるであろう。例えば、アルコール中毒症状の治療に有用な用量レベルは、それぞれのアルコール乱用問題の重大度にしたがって個体間で変動するであろう。同様に、アルコール渇望を抑制するための用量レベルは、各個体のアルコール中毒症状の重篤度に応じて個体間で変動するであろう。当業者は、当技術分野で周知の方法を用い日常的な検査によって本明細書に記載したパラメータ内での適切な投与量を容易に決定できよう。
【0020】
有効成分だけを投与することもできるが、前記有効成分を製剤として提供することが好ましい。経口投与に適した本発明の製剤は、別々に分離させたユニット形(例えばカプセル、カシェー(cachet)、錠剤またはロゼンジで、各々が予め定められた量の有効成分を含むもの);粉末または顆粒形;水性液または非水性液中の溶液または懸濁液;または水中油乳濁液もしくは油中水乳濁液であろう。
有効成分はまたボラス、エレキシルまたはペースト形でもよい。
錠剤は、場合によって1つまたは2つ以上の補助成分とともに有効成分を圧縮または鋳型成形することによって製造できる。圧縮錠剤は、場合によって結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、表面活性剤または調剤物質と混合した自由流動形状(例えば粉末または顆粒)の有効成分を、適切な機械で圧縮することによって製造できる。湿製錠剤は、粉末の有効成分および不活性な希釈液で湿らせた適切な担体の混合物を適切な機械で鋳型成形することによって製造できる。
【0021】
非経口投与に適した製剤は、便利には有効成分の滅菌水性調製物を含み、好ましくは服用者の血液と等張である。
鼻腔または口腔内投与に適した製剤(例えば以下に記載する自噴式粉末製剤)は、0.1から20%w/w、例えば2%w/wの活性製剤を含むことができる。
ヒトの治療で使用する本発明の製剤は、有効成分のための医薬的に許容できる担体および場合によって他の治療成分と一緒に有効成分を含む。前記担体は、製剤の他の成分と適合するという意味で“許容可能”でなければならず、さらにその服用者にとって有害であってはならない。
【0022】
本発明の薬理学的に活性な化合物は、前記化合物の有効量を経口的または非経口的な適用に適した賦形剤または担体と結合または混合された状態で含む医薬組成物の製造に有用である。好ましいものは、以下の1つまたは2つ以上のものと一緒に前記有効成分を含む錠剤およびゼラチンカプセルである:(a)希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、シュクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、グリシンなど;(b)潤滑剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウム塩もしくはカルシウム塩、ポリエチレングリコールなど;錠剤の場合にはまた;(c)結合剤、例えば珪酸マグネシウムアルミニウム、澱粉ペースト、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはポリビニルピロリドンなど;さらに所望する場合は(d)崩壊剤、例えば沸騰散混合物など;および(e)吸収剤、着色剤、香料および甘味料など。注射可能な組成物は好ましくは水性等張溶液または懸濁液であり、座薬は有利には脂肪性乳液または懸濁液から製造される。前記医薬組成物は滅菌するか、および/または補助剤、例えば保存料、殺菌剤、湿潤剤または乳化剤、可溶化促進剤、浸透圧調節用の塩および/または緩衝剤を含むことができる。さらに、前記医薬組成物はまた、他の治療的に有益な物質を含むことができる。前記組成物は、それぞれ通常の混合方法、顆粒化方法または被覆方法にしたがって製造され、約0.1から75%、好ましくは約1から50%の有効成分を含む。
【0023】
前記製剤は便利にはユニット製剤として提供され、製薬分野で周知の任意の方法によって製造できる。いずれの方法も、有効成分を1つまたは2つ以上の補助成分を構成する担体と結合させる工程を含む。一般に、前記製剤は、均一にかつ緊密に前記有効成分を液状担体または微細分割固形担体またはその両方と結合され、さらに必要な場合には所望の製剤に生成物を成形することによって製造される。
【0024】
その目的の使用に対するNPY拮抗物質の有効性は多様な方法で決定できる。例えば、本発明の方法で有用な化合物は、in vitroおよび/またはin vivo動物モデルで得られたデータに基づいてさらに検査して選択することができる。例えば、化合物は、当業者に公知のin vitroバイオアッセイによりNPYレセプターとの結合親和性について検定することができる。例えば、カナタニらの方法(Biochem. Biophys. Res. Commun., 2000, 272:169−173)は、NPYレセプターサブタイプ(Y1、Y2、Y4およびY5)を個々に発現することが知られている種々の哺乳類細胞を使用する。その結合親和性(Ki)が、放射能標識NPYとの競合的結合アッセイでナノモルの範囲内にあれば、テスト化合物は特定のレセプターサブタイプの選択的競合物質であると考えられる。
【0025】
化合物がNPY拮抗物質であるか否かを決定する別の方法は、細胞内Ca2+濃度のNPY誘発増加を抑制するテスト化合物の能力を測定するものである。前記アッセイは、上記と同じ細胞を用い、テスト化合物の存在下または非存在下およびNPYの存在下または非存在下で実施される。細胞内Ca2+を増加させるNPYの能力をナノモルの範囲内のIC50で抑制するテスト化合物は拮抗物質であると考えられる。テスト化合物がただ1つのNPYレセプターサブタイプの拮抗物質である場合は、前記化合物は選択的拮抗物質であると考えられる。非選択的NPYレセプター拮抗物質は、2つまたは3つ以上のレセプターサブタイプで適切な結合親和性を示す。
【0026】
公知のNPYレセプター拮抗物質およびNPYY1選択的またはY5選択的レセプター拮抗物質のアルコール渇望減少およびアルコール自己摂取減少における有効性は、実験動物モデルで検査することができる。簡単に記せば、ロングエバンスラットを実験室の環境に対して条件付けし、Hodgeら(Alcohol, 1993, 10:191−196)が記載したように、シュクロース減衰方法(sucrose−fading procedure; H.H. Samson, Alcohol Clin. Exp. Res., 1986, 10:436−442)を用いて水と一緒に置かれているエタノール(10%v/v)を自己摂取するように訓練した。定位手術を実施して、PVNに向けてインジェクターガイドカニューレを移植した。前記条件付けしたラットのPVNに、NPYとともにまたはNPY無しでテスト化合物の微量注入を実施する。前記ラットに直ちに水またはエタノール(10%v/v)のどちらかを自己摂取する機会を与える。消費したエタノールまたは水を測定する。エタノールの摂取は、消費したミリリットルからグラム/キログラム体重に変換する。相対的エタノール摂取(嗜好性)は、全摂取液体(エタノール+水(mg))で割った消費エタノール(mg)として算出する。薬剤の投与効果は平方偏差の一方向繰返し測定値分析(one−way repeated measures analysis of variance)(ANOVA)によって解析する。薬剤投与と賦形剤コントロールとの間のpost−hoc比較は、ペアード(paired)t検定または適切な場合にはダンネットの(Dunnett’s)t検定を用いて実施する(SigmaStat, Jandel, San Rafael, CA)。テスト化合物が、アルコール自己摂取のNPY誘発増加においてまたは基準自己摂取において統計的に有意な減少を生じたとき、前記テスト化合物は有効であると考えられる。
【0027】
NPY拮抗物質の有効性をテストする別の適切な動物モデルは、Oliveら(Eur.J. Neurosci. 2000, 12:4131−4140)の記載にしたがってアルコール強化レバー押し(alcohol−reinforced lever pressing)行動を用いる。前記モデルは、アルコール希求行動を防止もしくは遅らせるNPY拮抗物質、または回復中のアルコール中毒者の飲酒再発を防止もしくは減少させるNPY拮抗物質の特定に特に有用である。
一般的に認められている動物モデルでの一般的毒性プロフィルおよび所望の投与ルートによる生体利用性もまた、アルコール中毒治療での使用に適したNPY拮抗物質の選別で考慮される。
【0028】
アルコール中毒治療における本発明の方法および組成物の効能はまた、場合によって、適切な基準および倫理的ガイドラインの下で実施されるヒトの臨床試験で標準的な方法を用いて評価することができる。例えば、二重盲検、プラセボ対照実験を文献の記載(Volpicelle et al., Arch. Gen. Psychiatry, 1992, 49:876−880)にしたがって実施することができる。簡単に記せば、アルコール依存についてDSM−IV診断基準(アルコール禁断の生理的症状を含む)に適合する対象者を、標準的な解毒治療の後で4つの治療群に分ける:(1)テスト化合物を投与;(2)プラセボ化合物を投与;(3)テスト化合物および行動療法を実施;(4)プラセボ化合物および行動療法を実施。3ヶ月間、全対象者は検査技師によって週単位で検査を受ける。前記検査技師は、体内アルコール検出検査を実施し、さらにアルコール渇望、アルコール希求、アルコール消費および気分を調べる。得られたデータは標準的な統計技術によって解析される。テスト化合物は、アルコール自己摂取、アルコール希求行動または飲酒再発において統計的に有意な減少をもたらすとき有効であると考えられる。いずれの特別な患者についても、前記方法の有効性は類似の態様で決定することができる。
以下の実施例は制限としてではなく例示として提供する。
【0029】
【実施例】
実施例
方法
動物:36匹のロングエバンスラットの雄(Harlan, Indianapolis, IN)を1匹ずつプレキシグラスのケージに収容した。水へのアクセスは行動訓練の第一日目は制限したが、実験の残りについては常に利用可能な状態であった。飼料は常にホームケージで摂取できる状態であった。実験チャンバーでは、エタノール(10%v/v)および水が日中(M−F)セッション中は同時に利用できる状態であった。動物のコロニールームは、6:30に点燈し12L:12Dサイクルで維持した。実験セッションは前記サイクルの点燈部分で実行した。全ての実験手順は研究所ガイドラインおよびNIHガイドラインにしたがって実施した。
【0030】
装置:実験セッションは、防音小部屋(MED Associates, モデルENV016M, Lafayette, IN)に静置したプレキシガラスチャンバー(27×37×21cm)で実施した。チャンバーには外部の騒音を遮断した排気送風機が装備されていた。各チャンバーの右側の壁には2つの50mLの飲料ボトルがあった。薬剤溶液はステンレススチールの注入装置(Plastics One, Roanoke, VA)から双方に投与された。前記注入装置はプラスチックチューブで2つの1.0μLの注射筒(Hamilton, Reno, NV)に連結されていた。注射筒には微量輸液ポンプ(Harvard Apparatus, モデル22, Natick, MA)が搭載され、0.5μL/分/注射筒を輸液できるように設定されていた。
【0031】
自己摂取手順:実験室の飼育条件に2週間順応させた後、飲料へのアクセスを1日1時間(2日間のみ)制限し、さらに2群のラット(N=12/群)を、1回のオーバーナイトセッション中にシュクロース(10%v/v)と水に一晩中アクセスできるようにして実験チャンバー内のボトルから飲むように訓練した。続いて、シュクロース(10%v/v)と水がともに摂取できる日中の1時間セッションを実施した。シュクロースおよび水の溶液の位置(すなわちチャンバーの左または右側)は毎日交換した。シュクロースと水の摂取パターンが安定したら、シュクロース減衰法(H.H. Samson, Alcohol Clin. Exp. Res., 1986, 10:436−442)を以前に報告(例えば、Hodge et al., 1993)されたように用いて一緒に置かれたエタノール(10%v/v)と水を自己摂取するようにラットを訓練した。簡単に記せば、エタノールを前記シュクロース溶液に徐々に添加し、ラットが10%エタノール対水を自己摂取するまで前記溶液からシュクロースを徐々に減少させた。2ヶ月間のシュクロース減衰法の実施中に、エタノール/シュクロース溶液および水の位置を毎日交換した。全動物が水よりもエタノール/シュクロース溶液を好んだ(データは示されていない)。シュクロースが消失した後、1週間につき5日間、4ヶ月の間ラットにエタノール(10%v/v)対水を自己摂取させ、長期のエタノール自己摂取歴を確立させた。4ヶ月の基準手順の最後に、前記動物に定位手術を実施した。続いて、前記動物に微量注入法を実施する前にさらに3ヶ月間エタノールを自己摂取させた。
【0032】
NPYは消費性(consummatory)行動に対して強力な作用を有するので、PVN内にNPYを輸液することによって、エタノールの薬理作用に関する経験とは無関係のメカニズムを介してエタノールの摂取を変化させることができるかもしれない。したがって、消費に対するNPYの非特異的作用のコントロールとして、エタノールの自己摂取の長期歴をもたない別のラット群(n=12)でNPYの作用を調べた。実験に使用されたことが無いラットを1週間実験室に順応させた。続いて、前記動物にPVNに誘導される両側性ガイドカニューレを移植した。回復のために術後1週間してから実験セッションを開始した。日中の60分セッションの間に、エタノール(10%v/v)対水が同時に摂取できる状態にある自己摂取チャンバーにラットを入れた。1週間の間エタノールおよび水の基準摂取レベルを測定した。続いて微量注入法を実施した。
【0033】
定位手術:エタノールと水の摂取が安定化したとき、PVNへ誘導される両側性ステンレススチールガイドカニューレ(26ゲージ)を外科手術により移植した。ラットをアトロピン(0.4mg/kg、腹腔内)を併用しながらペントバルビタールで麻酔し(60mg/kg、腹腔内)、定位装置(David Kopf Instruments, Tujunga, CA)に置いた。注入カニューレ(Plastics One, Roanoke, VA)をPVNの背側1mmで終わるように移植し、頭蓋用ネジおよび歯科用セメントで頭蓋骨に固定した。除去可能なワイア栓子をガイドカニューレの全長に挿入し、組織による閉塞および外部破片による夾雑を制限した。PVNのために用いた定位座標は、ブレグマより−1.8mm、中線から側方へ+1.0mm、さらに垂直面に対して側方に5°で皮質表面から下方に−6.5mmであった(Paxinos & Watson, 1982)。全ての測定値は平坦な頭蓋から得た。手術後、全ラットに術後痛管理のためにブプレノルフィン(0.2mg/kg、皮下)を投与した。日中セッションは術後1週間して開始した。
【0034】
微量注入法:エタノールと水の摂取が再び安定したら、週に1回微量注入を実施した。麻酔していないラットをプラスチック容器(15×30×深さ15cm)に入れ移動を少なくした。栓子を取り除き、無菌的な33ゲージの注入装置をガイドカニューレの末端を越えて1mmの深さに両側に挿入した。蒸留水を賦形剤として薬剤溶液を総容積1μL(片側0.5μL)で輸液した。注入装置をさらに30秒そのまま維持し薬剤を拡散させた。前記溶液の正確な流れを各注入の前後に確認し、化合物の送達を担保した。自己摂取セッションは微量注入後直ちに開始した。無菌的栓子を行動試験セッションの終了時に再び挿入した。同時投与の場合は、D−NPYまたはBIBP3226はNPYの15分前に輸液した。賦形剤注入もまた実施して、輸液によって生じる局所圧または浸透圧の変化のためのコントロールとした。薬剤試験の前の1ヶ月間、動物を手で扱い、プラスチックタブに入れて、その後の薬剤作用に対する操作上の変化の影響を最小限にした。これらのセッションのデータは分析に用いなかった。微量注入プロトコルの完了時に、ラットを殺し、注射部位の組織学的証明のためにその脳を取り出した。
【0035】
薬剤および投与量:中枢投与に用いた本実験の薬剤は以下のNPYであった:非選択的NPY拮抗物質、[D−Tyr27,36,D−Thr32]神経ペプチドY(27−36)(D−NPY)およびY1選択的拮抗物質、(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−D−アルギニンアミド(BIBP3226)。全ての薬剤は、リサーチ・ケミカル・インターナショナル(Research Chemicals International, Natick, MA)から入手した。いずれの薬剤も中枢投与のために滅菌蒸留水に溶解した。薬剤溶液は投与の直前に調製し、総容積1μL(0.5μL/片側/分)で両側に輸液した。薬剤は用量を知らされている実験者によって任意の順序で投与された。自己摂取用エタノール(95%)は水道水で希釈した。
【0036】
組織学:実験終了後、ラットに致死量のペントバルビタールナトリウム(200mg/kg、腹腔内)を投与し、0.9%のNaCl、続いて10%のホルムアミドを心臓を介して灌流させた。脳を取り出し、10%ホルマリン/30%シュクロース溶液に最小限10日間保存した。固定した脳を凍結し、切片(40μm)を作製し、クレシルバイオレットで染色して光学顕微鏡下で調べて注入位置を決定した。PVNで両側性に終わる明瞭に範囲が限定された注入装置の跡が確認されたラットのデータだけを用いた。
【0037】
データの解析および統計学:消費されたエタノールと水の容積は、各1時間セッションの終わりに0.5ミリリットルまで測定した。エタノール摂取は、消費されたmLからg/kg体重に換算した。相対的エタノール摂取(嗜好性)は、(消費エタノールのmL)÷全液体摂取(エタノール+水のmL)として算出した。薬剤の投与効果は、平方偏差の一方向繰返し測定値分析(ANOVA)によって解析した。薬剤投与と賦形剤コントロールとの間のpost−hoc比較は、ペアードt検定または適切な場合にはダンネットのt検定を用いて実施した(SigmaStat, Jandel, San Rafael, CA)。
【0038】
結果
行動訓練の結果大半の動物で安定なエタノールの自己摂取を得た。微量注入手順の前の25日の間の平均エタノール摂取は0.44±0.05g/kgであった。NPYおよびBIBP3226を投与された群の3匹のラットから得られたデータは、基準自己摂取の実施不良のために除外した。
組織学:冠状脳切片の組織学的検査の分析によって、シュクロース減衰の後でNPYおよびD−NPYを輸液された12匹のうち11匹の動物が、PVNに両側性の注入を受けたことが示された。シュクロース減衰の後でNPYおよびBIBP3226を輸液されたラットの脳切片の検査によって、9匹のうち9匹の動物が、PVNに注入を受けたことが示された。12匹のコントロール動物のうち10匹がPVNに両側注入を受けていた。前記注入手順によって、PVN内に極めてわずかのグリオーシスと組織の損傷が生じた。PVNで両側性の注入を受けた動物のデータのみを提示する。
【0039】
エタノール摂取および嗜好性に対するNPYの作用:PVNへのNPY輸液の結果は図1に示されている。反復測定ANOVAによって、NPYはエタノール摂取を有意に高めることが示された[F(3,30)=7.6、p<0.001]。post−hocダンネットの比較は、NPYのいずれの投与量も、賦形剤コントロールと比較したときエタノール摂取を有意に高めることを示した(図1A)。個々のラットのデータを精査したところ、テストした11匹のラットは全て、NPYのいずれの投与量でもエタノール摂取(g/kg)の増加を示した。基準エタノール嗜好性は高いが(>70%)、PVN内へのNPYの投与もまた、エタノール嗜好性を用量依存態様で優位に増加させた[F(3,30)=3.3,p<0.05](図1B)。テストした最も高い2つの用量では、日中セッション中の液体消費の90%以上がエタノールで占められていた(p<0.05;図1B)。エタノール摂取および嗜好性は、実験セッション中の水の摂取の顕著な全体的減少を伴っていた[F(3,30)=5.4、p<0.01](図1C)。post−hoc比較によって、NPYは用量依存態様で水の摂取を減少させることが示された(p<0.05)。
【0040】
非選択的NPYレセプター拮抗物質D−NPYは、部分的であるが有意なエタノール摂取の低下をもたらした(図1A、右)。NPY(10fmol)と同時投与したとき、D−NPYはエタノールおよび水の摂取に対するNPYの作用を完全に遮断した(図1Aおよび1C、右)。嗜好性のデータにはその傾向はあったが、D−NPYはNPY誘発エタノール嗜好性増加を有意には変化させなかった(P<0.09、図1B)。したがって、前記データは、PVNへの外因性NPYの輸液は、ラットで強力にエタノール摂取およびエタノール嗜好性を高めることを示している。非選択的NPY拮抗物質D−NPYは部分的には基準エタノール摂取を減少させ、NPYによって生じるエタノール摂取の増加を完全に遮断した。
【0041】
表1は、エタノールの長期自己摂取歴をもたない、シュクロース減衰法を受けたラットのPVNへのNPY輸液の影響を示す。データの値は平均±SEMとして提示されている。これらの条件下では、テストしたいずれの用量のNPYもエタノール摂取、エタノール嗜好性または水の摂取に変化をもたらさなかった。
【0042】
炭水化物およびアルコール摂取の類似作用は少し前から知られていた(C.P. Richter, Q. J. Stud. Alcohol, 1953, 14:525−539; P.J. Kulkosky, Neurosci. Biobehav. Rev., 1985, 9:179−190)。アルコール摂取は、ラットのタンパク質または脂肪消費を変化させることなく、栄養物特異的態様で炭水化物摂取を減少させる(O.A. Forsander, Alcohol, 1988, 23:143−149)。したがって、ヒトの実験では甘味物質の摂取はアルコール消費に反比例することを示している(G.A. Colditz et al., Am. J. Clin. Nutr., 1991, 54:49−55)。他の実験では、低炭水化物食はアルコール摂取を高めるが、高炭水化物食は飲酒を低下させることが示された(R.V. Brown et al., Q. J. Stud. Alcohol, 1973, 34:758−763; L. Pekkanen et al., Br. J. Nutr., 1978, 40:103−113; O.A. Forsander et al., Alcohol, 1988, 5:233−238)。単純炭水化物はアルコール中毒者の再発を遅らせることが報告された(M.E. Farcas et al., J. Nutr. Education, 1984, 16:123−124)。さらにまた、回復中のアルコール中毒の女性は、強いアルコール渇望期に甘い食品をより多く食べることが報告された(S. Rosenfield, Res. Nurs. Health, 1988, 11:165−174)。したがって、自己摂取行動の発達中に、エタノールと炭水化物(例えばシュクロース)とを対にすることによって、食物摂取を仲介する恒常性維持神経系(すなわち視床下部)との密接な連動が生じるかもしれない。また別には、シュクロースで訓練した動物によるより高レベルのエタノール摂取がNPYの作用に影響を与えた可能性もある。
【0043】
ホームケージでの飼料および水の消費に対するNPYの影響:PVNへのNPY輸液は、ホームケージで測定したとき体重(図2A)または食物消費(図2B)には全く影響を与えなかった。しかしながら、前記用量のNPYは、ホームケージで測定したとき水の摂取を有意に[F(1,10)=9.625、p<0.05]減少させた(図2C)。単独またはNPYと併用して投与したD−NPYは、体重に対して全く影響をもたらさなかった(図2A、右)。NPYはまたシュクロース処理を受けていない動物のホームケージでの体重、食物摂取または水の摂取にも影響を及ぼさなかった。
【0044】
食物摂取および体重に対してNPY関連作用が認められないことは、いくつかの要因によって説明することができる。第一に、本実験で使用したNPYの濃度はfmolの範囲であり、これは、摂食に典型的に用いられる濃度(pmolからnmolの範囲である)より極めて低かった(例えば以下の文献を参照されたい:Stanley and Leibowitz, 1985)。したがって、エタノール自己摂取行動は、NPYレベルの変化に対して摂食よりもはるかに鋭敏であるかもしれない。第二に、PVNにおけるNPYレベルの上昇は、環境内のもっとも関連する物質の消費を直ちに増加させるかもしれない。NPYはシュクロース非依存的方法で訓練したラットではエタノール摂取に影響を与えなかったので、これは本実験の事例ではないように思われる。
【0045】
NPYは、エタノール自己摂取セッションで水の摂取を有意に減少させ、エタノール嗜好性の増加の一因となった。我々はまた、PVNへのNPYの輸液後に、比較的小さいが有意である、ホームケージでの24時間水摂取の減少を観察した。非選択的NPY拮抗物質、D−NPYは、エタノール自己摂取セッションでNPY誘発水摂取減少を有意に逆転させ、Y1選択的拮抗物質は水摂取減少傾向を逆転させた。総合すれば、前記データは、NPYはエタノール経験をもつラットとエタノール未経験ラットで水摂取に対して異なる作用を有することを示唆している。
【0046】
エタノール摂取および嗜好性のNPY誘発変化に対するY1拮抗物質の影響:図3は、NPYおよびNPYY1選択的拮抗物質(BIBP3226)のPVN内輸液の結果を示している。PVNへのBIBP3226の単独輸液(10.6μM)は、エタノール摂取もしくは嗜好性または水の摂取に対して有意な影響をもたらさなかった(図3A、BおよびC)。NPY(10fmol)はコントロールの値よりもエタノール摂取を有意に増加させた(図3A)。BIBP3226をNPYとPVN内に一緒に投与することによって、エタノール摂取を増加させるこのNPY用量の能力は完全に遮断された(図3A)。したがって、これらのデータは、NPY(PVN内のY1レセプターで作用する)はアルコールの自己摂取の強力な刺激薬であること、およびY1レセプター特異的拮抗物質はこの刺激を完全に遮断できることを示している。
【0047】
扁桃内へのNPYY1拮抗物質の微量注入:アルコール希求行動におけるNPYレセプターの役割をさらに解明するために、文献(Kelley et al., 2001, Peptides 22:515−522)の記載にしたがって、エタノール対水を自己摂取するように訓練にしたラットの扁桃の中枢核(CeA)内にNPYY1ペプチド拮抗物質BIBP3226を注入した。前記CeAは、視床下部に加えてこの脳領域は顕著な数のNPYレセプターを含んでいるので、さらに追加のテスト領域として選択した。前記拮抗物質は水の摂取に影響をあたえなかった。反復測定ANOVAによって、BIBP3226はしかしながら自己摂取エタノール量を有意に変化させることを示した[F(3,23)=5.9、p<0.01]。追跡統計分析で、有意な主要作用は、最高用量のBIBP3226の輸液後のエタノール自己摂取の低下によるものであることが示された(図4)。これらのデータは、CeAのNPYY1レセプターの遮断はエタノールの強化能力を減少させることを示している。エタノール自己摂取の進行における前記減少は、Y1は、アルコール乱用およびアルコール中毒に付随する問題(例えば制御のきかない飲酒)の医学的管理における有用な治療薬であることを示唆している。
【0048】
非ペプチド性NPYY5拮抗物質、L152804の全身注射:我々の研究室で得られた証拠は、NPYの微量注入はアルコールの自己摂取を高めることを示した。前記作用は、非選択的NPY拮抗物質(D−NPY)またはBIBP3226のどちらかを視床下部に輸液することによって遮断された。上記で示した証拠は、CeA内に投与されたY1拮抗物質BIBP3226がアルコールの自己摂取を有意に減少させることを示すことによって前記発見を敷衍した。これらのデータは、アルコール乱用およびアルコール中毒の医学的管理における治療薬としてのNPY拮抗物質の潜在的効能を示している。しかしながら、これらの発見の普遍性は、前記化合物が特定の脳領域に直接投与されたという事実によっていくぶん限定される。これらの発見の妥当性を拡大するために、最近報告された(Kanatani et al., 2000)選択的非ペプチドNPYY5拮抗物質L152804を合成し、アルコール希求行動についてテストした。化合物の効能に関する厳密なテストとして、アルコールを大量摂取する遺伝的素因を有するC57BL/6JマウスでY5拮抗物質をテストした。
【0049】
方法
雄のC57BL/6Jマウスを標準的なプレキシガラスケージ(n=4/ケージ)に収容し、飼料(Harlan, Indianapolis, IN)と水は常時供給した。マウスは20週齢(体重28−35g)で全ての検査の開始時に薬剤処置に対して未使用であった。自己摂取オペラント訓練中は、固形飼料(オーバーナイトセッションにつき15g)はオペラントチャンバーに置き、水は固定比1(FR−1)強化スケジュールの下で利用できた。
【0050】
テストセッションは、寸法が15.9×14×12.7cmでステンレススチールの格子床を有する8つのプレキシガラスのオペラントチャンバー(Med Associates, Lafayette, IN)で実施した。換気を提供しさらに外部のノイズの遮断を助けるハウスファンが設置されている防音小部屋に各チャンバーを置いた。各オペラントチャンバーの左および右の壁に高感度ステンレススチールレスポンスレバーおよび液体分配システムを設置した。プログラム可能ポンプ(PHM−100, Med Associates)に据え付けた60mLの注射筒内に液体溶液(エタノールまたは水)を維持した。前記ポンプは、連結されたレスポンスレバーの左に配置されているステンレススチールのコップに活性化1回につき0.01mLを供給した。各チャンバーはまた、ハウスライト(16:00−18:00から06:00−08:00の間点燈される)とともに各レバーの上に配置された刺激ライト(レバーが押されるたびに活性化される)を有していた。チャンバーはIBM互換性PCとのインターフェースを有し、全てのレベー押しおよび液体の供給を記録するようにプログラムされた。
【0051】
マウスは漸近法の強化(10%シュクロースw/v)を用いてレバーを押すように訓練した。最初の行動形成セッションの後、16時間のオーバーナイト(16:00から08:00)訓練セッションの間マウスを自由に歩きまわらせた。前記トレーニングセッションの間、両方の反応レバーは、強化因子として提供された10%シュクロース対水による共存固定比1(CONC FR1FR1)のスケジュールで有効であった。各溶液の位置(左または右)は各動物について固定されていたが、副次的な好みを制御するために動物間でバランスをとった。4日後、マウスで使用するために適応させたシュクロース置換法を用いてエタノール(10%V/V)対水を経口的に自己摂取するように訓練した(Olieve et al., 2000, Eur. J. Neurosci. 12:4131−4140)。簡単に記せば、エタノール(2、4、8または10%v/v)を毎日濃度を増加させながら4日間でシュクロース(10%w/v)にだんだんと添加した。続いて、シュクロース(10、5、2%w/v)を毎日濃度を減少させながら4日間でエタノール含有溶液からだんだんと消失させた。シュクロース置換訓練の後、全てのマウスは、強化因子として提供されたエタノール(10%V/V)対水による強化のCONC FR1 FR1スケジュールで信頼できる態様で反応した。
【0052】
アルコール希求行動に対するL152804の影響:L152804(10、30および60mg/kg)の全身投与は、16時間セッションの間水の摂取に全く影響を与えなかった。コントロールのアルコール自己摂取の仕方を分析することによって、行動はセッション全体を通して発生するが、アクセス後4から5時間でピークに達することが示された(図5、白丸)。2つの低用量のL152804の投与はエタノールの自己摂取を有意には変化させなかった。しかしながら、L152804(60mg/kg)は、前記ピーク期間の間のアルコール希求行動(例えばアルコールのためのレバー押し)を有意に低下させた。自己摂取の代償性増加はアクセスから13時間目に生じた。これは、Y5拮抗物質の薬理動態と一致するかもしれない。これらのデータは、L152804は高刺激期間の間アルコール希求行動を減少させることを示唆している。
【0053】
アルコール希求行動の開始に対するL152804の影響:各日中セッションは、動物からしばらくエタノールをとりあげ、エタノールを捜し求めるか否かの刺激誘発(多分に刺激誘発された自己摂取再発行為)(すなわち実験環)状況を具現している。本実験では、とりあげる時間は毎日8:00から16:00であった。したがって、エタノールを自己摂取する(および自己摂取を再発させる)ための誘因に対するL152804の潜在的作用を示すために、我々は、各セッションの間に反応が開始する時間を分析した。L152804は最初の反応までの潜伏時間を有意に引き延ばした(図6)。これらのデータは、NPYY5拮抗物質がエタノール希求行動の開始を遅らせることを示している。動物モデルをヒトのアルコール中毒症状に敷衍することによって、これらのデータは、NPYY5拮抗物質は、アルコール中毒者の再発を遅らせてアルコール希求の回避に役立つ可能性を示唆している。
【0054】
本明細書で述べた全ての刊行物および特許出願は本明細書に含まれるものとする。別に規定されないかぎり、本明細書で用いられる全ての技術用語および学術用語は、本発明が属する技術分野で一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
本発明はこれで完全に説明し終えたが、添付の請求の範囲から離れることなく多くの変更および改変が可能であることは当業者には明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、1時間のテストセッションの直前にPVN内に輸液したNPYまたはNPY+D−NPYのエタノール摂取(A)、エタノール嗜好性(B)および水の摂取に対する影響を示している。投薬は任意の順序で実施した。データは、11匹のラットの平均±SEMとして表されている。(*)は、賦形剤コントロールと有意差があることを示している(ダンネット(Dunnett)p<0.05)。(†)は、NPY単独とは有意差があることを示している(ペアードt検定p<0.05)。
【図2】
図2は、PVN内に輸液したNPYまたはNPY+D−NPYの体重(A)、食物摂取(B)および水の摂取に対する影響を、輸液後24時間してホームケージで測定したものを示している。投薬は任意の順序で実施した。測定は、図1に示したデータと同じ日に実施した。データは、11匹のラットの平均±SEMとして表されている。(*)は、賦形剤コントロールと有意差があることを示している(ダンネット(Dunnett)p<0.05)。
【図3】
図3は、1時間のテストセッションの直前にPVN内に輸液したNPY、BIBP3226またはNPY+BIBP3226のエタノール摂取(A)、エタノール嗜好性(B)および水の摂取に対する影響を示している。投薬は任意の順序で実施した。データは、9匹のラットの平均±SEMとして表されている。(*)は、賦形剤コントロールと有意差があることを示している(ペアードt検定p<0.05)。
【図4】
図4は、扁桃の中枢核内のNPY−Y1拮抗物質、BIBP3226の作用を示すドースレスポンス曲線を示す。BIBP3226は、1時間のセッション中に自己摂取されるアルコール量を顕著に減少させた。(*)は、賦形剤(veh)と有意差があることを示している(ターキー検査(p<0.05)、N=9匹のラット)。
【図5】
図5は、訓練したC57BL/6Jマウスを用いた行動試験セッションの時間の関数として表したエタノール強化レバー押しの総回数を示す。60mg/kgのL152804(白丸)または食塩水溶液(黒丸)の投与を比較した。アルコールの自己摂取は開始から4時間目および5時間目の間に最高に達した。L152804は、アルコール希求行動におけるこのピークを阻止した。(*)は対応する時点で食塩水コントロールと有意差があることを示している。
【図6】
図6は、L152804の用量の関数として表した反応潜伏時間(すなわち最初のアルコールレバー押しまでの時間の遅れ)を示す。L152804の用量に依存して反応の開始が遅くなった。(*)は、注射無し(ni)および食塩水(sal)コントロールと有意差があることを示している(ターキーテスト、p<0.05)。最高用量では2つのデータ−数値の変動性のために有意差が得られなかった(前記数値は平均値からほぼ2標準偏差多かった)。前記は、これら2匹のマウスで非常に強力な作用を示している。
序論
発明の技術分野
本発明は、哺乳類におけるアルコール中毒およびアルコール乱用の治療を目的とする組成物および方法に関する。
背景
アルコール中毒は現代社会における最も重要な問題の1つである。米国予防衛生研究所によれば、アルコール乱用は、毎年の全自動車事故死亡者数(20000人を超える)の45%の原因となっており、短期入院総数のほぼ44%が含まれる。その他に25000人がアルコール付随肝硬変で死亡している(NIH報告No.97−4017、(1997))。法務省(Justice Department)の報告によれば、アルコールは、1998年の全凶悪犯罪のほぼ40%に深く関わっている。合衆国でアルコール乱用の結果生じる経済コストは、毎年ほぼ1500億ドルと概算される。
【0002】
ジスルフィラム[アンタビュース(Antabuse)(登録商標)]およびナルトレキソン[トレキサン(Trexan)(登録商標)]は、アルコール乱用治療で補助的に使用される現在入手できるFDAが承認した唯一の製品である。ジスルフィラムは、体内でのアルコールの中間代謝を阻止し、アセトアルデヒドの蓄積をひき起こすことによって機能する。前記アセトアルデヒドは続いて顕著な行動上のおよび生理学的副作用をもたらす。前記薬剤を服用することに対する患者の協力は上記の副作用のために少ない(以下の文献を参照されたい:T.W. Rall, ”Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, A.G. Gilman et a., 8th Edition, Chap. 17, pp.378−379)。ナルトレキソンは周知の麻薬拮抗物質であり、内因性オピエート褒賞系の活性化を阻止することによって機能すると考えられる(前記系はアルコール消費によって活性化される)。実際、ナルトレキソンは比較的作用時間が短いため穏やかな作用を有するのみであり、薬剤が何らかの効果を発揮するためには、通常患者は行動療法による同時治療を必要とする(J.R. Volpicelli et al., Arch. Gen. Psychiatry, 1992, 49:876−880)。したがって、哺乳類のアルコール中毒およびアルコール乱用の治療に有用な新規な方法および組成物を開発することは重要である。
【0003】
アルコールが脳に作用する神経生物学的メカニズムおよび中毒をひき起こす行動プロセスの性状は完全には明らかにされていない。他の過剰消費性行動(例えば肥満)の研究は、視床下部を主要な中枢神経系の調節系と特定した(例えば以下の文献を参照されたい:J.E. Blundell, Appetite, 1986, 7:39−56; S.P. Kalra et al., Endocr. Rev., 1999, 20:68−100)。最近得られた証拠は、アルコールおよび食物の摂取は視床下部伝達系によって調節されることを示唆している。副脳室核(PVN)へのセロトニン(5−HT)の注射はノルエピネフリン誘発炭水化物摂取を抑制する(S.F. Leibowitz and G. Shor−Posner, Appetite, 1986, 7:Suppl.1−14)。同様に、PVNへの部位特異的ノルエピネフリン輸液はまたアルコールの自己摂取の増加をもたらし、5−HTの同時輸液によって完全に阻止される(C.W. Hodge et al., Alcohol Clin. Exp. Res., 1996, 20:1669−1674)。その結果によって、摂食行動およびアルコール希求行動は、共通の視床下部メカニズムによって調節されるかもしれないということが提唱される(H.H. Samson and C.W. Hodge, ”Neurobehavioral regulation of ethanol intake”, in ”Pharmacological Effects of Ethanol on the Nervous System,” R.A. Deitrich and V.G. Erwin, eds., pp.203−226, CRC Press, Boca Raton, 1996)。
【0004】
神経ペプチドY(NPY)(36アミノ酸残基ペプチド)は、これまでに知られている摂食行動のもっとも強力な刺激因子である。脳室内または視床下部核内へのNPYの輸液(B.G. Stanley et al., Peptide, 1995, 6:1205−1211; B.G. Stanley et al., Brain Res., 1993, 604:304−317)は、食物摂取を亢進し(B.G. Stanley and S.F. Leibowitz, Life Sci., 1994, 35:2635−2642)、さらに反復注射は過食症および肥満をもたらす(B.G. Stanley et al., Peptide, 1996,7:1189−1192)。NPYの多くの脳領域への注射は食物摂取を亢進するが、PVNがその主要作用部位である(B.G. Stanley et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1985, 82:3940−3943; Stanley et al., 1993)。NPYレセプターは種々のサブタイプとして存在することが判明している(前記サブタイプはサブタイプ選択的拮抗物質と反応する)(A. Balasubramanian, Peptide, 1997, 18:445−457)。多大な注意が、NPYの食物希求作用および食欲促進作用を仲介するレセプターサブタイプに向けられた(C. Gerald et al., Nature, 1996, 382:168−171; D. O’Shea et al., Endocrinology, 1997, 138:196−202; Y.H. Hu et al., J. Biol. Chem., 1996, 271:26315−26319)。Y1レセプターは最初は、Y1作動薬[Pro34]−NPYが摂食を刺激するので、前記作用に必要なレセプターとして提唱された。しかしながら、強力な食欲促進作用はまた、Y1レセプターで低い能力をもつN末端切断NPYフラグメント(NPY2−36)によっても惹起される。これは、新規な“Y1様”レセプターが前記作用を仲介するかもしれないという考えをもたらした(G.Stanley et al., Peptides, 1992, 13:581−587)。さらに、[Pro34]−NPYは、NPYの注射後に認められる食物摂取の約50%を刺激し、Y1レセプターは、NPYの食欲促進作用のある程度の部分について重要であるかもしれないことを示唆した(O’Shea et al., 1997)。
【0005】
非ペプチド性NPYのY1レセプター選択的拮抗物質が知られている。Y1選択的BIBP3226のデザイン、選択性および心脈管系特性が報告された(H.N. Doods et al. Regul. Pept., 1996, 65:71−77)。米国特許第5,616,620号明細書は、心脈管系疾患、肥満および糖尿病の治療で有用なものとしてBIBP3226およびその類似体を開示している。BIBO3304は、Y1レセプターサブタイプに対してナノモル以下で親和性を示す非ペプチド性拮抗物質である。これは、NPYの適用によって、または飢餓によって誘発されるラットの食物摂取を顕著に抑制する(H.A. Wieland et al., Br. J. Pharmacol., 1998, 125:549−55)。米国特許第6,114,390号明細書は、多くの疾患および異常(高血圧、心脈管系疾患、肥満および糖尿病を含む)の治療で有用であるとしてBIBO3304およびその類似体を開示している。非ペプチド性NPYY5レセプター選択的拮抗物質もまた摂食行動に影響を与えることが判明している(Kanatani et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 2000, 272:169−173)。
【0006】
関連文献
いくつかの実験で、エタノールの生化学的、生理学的作用および行動における作用に対するNPYの関与が示唆された。選別的に交配したアルコール嗜好性(P)ラットでは、海馬、扁桃、前頭皮質でNPY様免疫反応性レベルがアルコール非嗜好性(NP)ラットと比較して低い(C.L. Ehlers et al., Alcohol Clin. Exp. Res., 1998a, 22:1778−1782)。しかしながら、Pラットは、NPラットよりもPVNおよび弓状核でより強いNPY免疫反応性を示す(B.H. Hwang et al., Alcohol Clin. Exp. Res., 1999, 23(6):1023−1030)。同様に、6%エタノール含有飼料を長期間供給することによって、PVNのNPY含有量が増加し、ロング=エバンスラットの摂食パターンに変化が生じた(J.T. Clark et al., 1998, Regul. Pept., 75−76:335−345)。PおよびNPラットの遺伝的連関分析によって、NPY遺伝子を含む染色体領域に顕著な定量的形質遺伝子座が特定された(L.G. Carr et al., Alcohol Clin. Exp. Res., 1998, 22:884−887)。NPYを欠く変異マウスとNPYを過剰発現する遺伝子導入マウスとの比較によって、エタノール摂取および急性感受性は、脳内のNPY総レベルと反比例することが示された(T.E. Thiele et al., Nature, 1998, 396:366−369)。
【0007】
選別交配したアルコール高摂取(HAD)ラットは、アルコール低摂取(LAD)ラットよりもPVNにおけるNPY免疫反応性が低い(Hwang et al., 1999)。さらに、NPYを欠くヌル変異体マウスは野生型のコントロールマウスよりも多量のエタノールを飲み、さらにNPYを過剰発現する遺伝子導入マウスは野生型コントロールマウスよりもエタノールを少ししか飲まない(Thiele et al., 1998)。これらのデータを総合すれば、NPYレベルの低下はエタノールの自己摂取の増加と結びついている。しかしながら、HADラットはまた、LADラットと比較して中枢扁桃のNPYレベルが低く(Hwang et al., 1999)、他の脳領域におけるNPYレベルの変化が、前記特別なラットのエタノール自己摂取に影響を与える可能性を示唆している。さらに、NPYヌル変異体および遺伝子導入マウスの行動は、全体的なNPYの変化だけでなく関連ペプチド作動系における潜在的な発育代償によっても影響を受ける可能性があり、このことは、エタノールの自己摂取における視床下部の役割に関して上記の研究から特定の結論を引き出すことを困難にしている。
【0008】
発明の概要
本発明は、哺乳類のアルコール中毒およびアルコール乱用の治療方法を提供する。前記方法は治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を投与することを含む。本発明はまた、前記物質を含有する医薬組成物を目的とする。
本発明の一観点において、PVN内のNPYレセプターとNPY(または他のリガンド)の結合によるNPYレセプターの活性化が、NPYレセプター拮抗物質の投与によって防止または低下させられる。ある態様では、本発明は、アルコール中毒の患者によるアルコールの自己摂取を減少させる方法を提供する。別の態様では、本発明は、アルコール中毒患者のアルコール希求行動を減少させる方法を提供する。さらに別の態様では、本発明は、回復中のアルコール中毒患者の飲酒再発の発生を防止または減少させる方法を提供する。これらの観点は、治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を投与することによって達成される。所望される目的に応じ、治療的に有効な量は、アルコール中毒患者のアルコールの自己摂取およびアルコール嗜好を減少させるために十分であり、アルコール中毒患者のアルコール希求行動を低下させるために十分であり、または回復中のアルコール中毒患者の飲酒再発の発生を減少させるために十分であり、それによってアルコール中毒およびアルコール乱用が治療される。本発明は、アルコール中毒、アルコール依存症またはアルコール乱用の治療において、アルコールの渇望を減少させ、アルコール希求衝動を抑制し、さらに個々人が遺伝的にアルコール中毒またはアルコール乱用の傾向があるか否かにかかわらず、前記個々人のアルコール消費を制限するために有用である。
本発明の他の目的は、以下の説明および請求の範囲を通読することによって当業者には明白となろう。
【0009】
具体的な態様の説明
本発明は、治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を投与することを含む哺乳類でアルコール中毒またはアルコール乱用を治療する方法を提供する。本発明のある態様では、PVN内のNPYレセプターが治療的に有効量のNPYレセプター拮抗物質によって遮断される。治療的に有効な量は、罹患哺乳類のエタノール自己摂取および嗜好性を減少させるために十分で、それによって過剰なアルコール消費を医学的に管理してアルコール依存およびアルコール乱用を治療する。関連する観点において本発明は以下の方法を提供する:アルコール中毒患者に治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を投与し、さらに前記投与の前後に前記患者のアルコール自己摂取レベルを測定することを含む、アルコール中毒患者でアルコールの自己摂取を減少させる方法、アルコール中毒患者に治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を投与し、さらに前記投与の前後に前記患者のアルコール希求行動レベルを測定することを含むアルコール中毒患者のアルコール希求行動を減少させる方法、および回復中のアルコール中毒患者に治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を前記患者に投与し、さらに前記投与の前後に前記患者の飲酒再発の発生頻度を測定することを含む飲酒の再発発生を防止または減少させる方法。前記観点は全てアルコール中毒およびアルコール乱用の一般的および最終的目標に関連する。
【0010】
ヒトのアルコール依存およびアルコール乱用は下記の症状のいずれかを特徴とする:(1)顕著な耐性(これは、酩酊または所望の効果を得るために顕著に増加したアルコール量(少なくとも50%増加)を必要とする)または同量のアルコールの持続的使用による効果の顕著な低下;(2)特徴的なアルコールの禁断症状;(3)禁断症状の緩和または回避のための頻繁なアルコール摂取;(4)断酒または飲酒のコントロールに対する持続的要求または1回もしくは2回以上の試みの失敗;(5)意図したものより大量または長時間のアルコール消費;(6)アルコール消費による重要な社会活動、職業活動または余暇活動の断念または低下;(7)アルコール入手のため、飲酒のため、またはアルコールの作用から回復するために必要な活動に費やされる時間が長い;(8)職場、学校または家庭で主要な役割または義務を果たすように期待されているときにしばしば酩酊しているか、禁断症状がある;(9)アルコールの使用によって惹起されるかまたは悪化する社会的、精神的または身体的問題の持続的存在または再発を認識しているにもかかわらず持続的に飲酒している。典型的には、前記症状は少なくとも1ヶ月持続するか、または長期間にわたって繰返し発生している。アルコール乱用は、12ヶ月以内に下記の1つまたは2つ以上の出来事によって示される、特に臨床的に顕著な障害または窮迫を特徴とする:(1)職場、学校または家庭で主要な役割または義務を果たすことできない飲酒の繰返し;(2)身体的に危険な状態での飲酒の繰返し;(3)アルコール関連の法律上の問題の繰返し;または(4)アルコールの作用によって惹起される持続的または繰り返される社会的または対人的問題にもかかわらずアルコール使用が持続する。
【0011】
本発明の別の態様では、アルコール中毒の哺乳類ホストでNPYの作用を遮断し、さらにアルコールに対する渇望を減少させるために十分な量のNPYレセプター拮抗物質が投与される。本発明は、回復中のアルコール中毒患者で飲酒再発の防止に有用である。脳内のNPYレベルの上昇は、アルコール希求行動の急激な増加およびアルコールに対する強い渇望と相関する。NPYレセプターでNPYの作用を遮断することによって、前記渇望が低下し、さらに飲酒再発の可能性が減少する。
【0012】
本発明では、“NPYレセプター拮抗物質”または“NPY拮抗物質”は、脳内または末梢のNPYレセプター上で内因性または外因性神経ペプチド−Y(NPY)の作用を遮断し、アルコールの自己摂取が減少するように機能する化合物または組成物を指す。好ましくは、NPY拮抗物質は、アルコール渇望およびアルコールの自己摂取を減少させ、さらに通常の食物または水の消費には悪影響を与えない。非選択的なNPY拮抗物質は、Y1および/またはY5レセプターサブタイプを含む多数のNPYレセプターサブタイプと結合する拮抗物質である。本発明で使用できる非選択的NPY拮抗物質の例は、[D−Tyr27,36,D−Thr32]神経ペプチドY(27−36)(D−NPYと略す)である。D−NPY(拮抗特性によりNPYY1、Y2、Y4およびY5レセプターサブタイプと結合する)は、Meyersらの報告(R.D. Meyers et al., Brain Res. Bull., 1995, 37:237−245)(前記文献は本明細書に含まれるものとする)にしたがって得ることができる。本発明で使用できる別の選択的NPY拮抗物質はBW1229U91である。これはY1およびY4レセプターに対してナノモルの高い親和性を示し、Y5レセプターに対しては中等度の親和性を示すが、Y2レセプターに対してははるかに低い親和性を有する。BW1220U91は、Widdowsonらの報告(P.S. Widdowson et al., Peptides, 1999, 20:367−372)(前記文献は本明細書に含まれるものとする)にしたがって得ることができる。
【0013】
好ましい態様では、NPYレセプター拮抗物質はNPYY1レセプターサブタイプに対して選択的である。本発明で有用なY1選択的拮抗物質の例は、(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−D−アルギニンアミド(BIBP3226としても知られている)である。BIBP3226は、米国特許第5,616,620号明細書およびDoodsらの文献(H.N. Doods et al., Regulatory Peptides, 1996, 65:71−77)(両文献は本明細書に含まれるものとする)の記載にしたがって得ることができる。他の有用なY1選択的拮抗物質には、例えば以下のBIBP3226の類似体並びに医薬的に許容できるその塩および水和物が含まれる:
(R)−N2−[ビス(4−ブロモフェニル)アセチル]−N−[(4−ヒドロキシフェニル)−メチル]−アルギニンアミド
(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−メチル]−アルギニンアミド
(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−アルギニンアミド
(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[[4−(ヒドロキシメチル)フェニル]−メチル]−アルギニンアミド
N2−(ジフェニルアセチル)−N−[4−ヒドロキ−3−メチルフェニル]−メチル]アルギニンアミド
(R,S)−3−[3−(アミノイミノメチル)フェニル]−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−アラニンアミド
(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−N−メチル−アルギニンアミド
(R,S)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−N5−(1H−イミダゾール−2−イル)−オルニチンアミド
N−[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−N2−(ジフェニルアセチル)−アルギニンアミド
N2−(ジフェニルアセチル)−N−[(4−メトキシフェニル)メチル]−アルギニンアミド、および
(R)−N−[[4−[(4,5−ジヒドロ−5,5−ジメチル−2,4(3H)−ジオキソ−1H−イミダゾール−3−イル)メチル]フェニル]メチル]−N2−(ジフェニルアセチル)−アルギニンアミド。
【0014】
本発明で有用なNPYY1レセプター拮抗物質のさらに別の例は、(R)−N−[[4−(アミノカルボニルアミノメチル)−フェニル]メチル]−N2−(ジフェニルアセチル)−アルギニンアミドトリフルオロアセテート(BIBO3304としても知られている)である。BIBO3304は、米国特許第6,114,390号明細書およびWielandらの報告(H.A. Wieland et al., Br. J. Pharmacol., 1998, 125:549−55)(両文献は本明細書に含まれるものとする)に記載された方法にしたがって得ることができる。
【0015】
他の有用なY1選択的拮抗物質には、例えば以下のBIBO3304の類似体並びに医薬的に許容できるその塩および水和物が含まれる:
(R)−N−[[4−(アミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−N2−(ジフェニルアセチル)−アルギニンアミド、
(R,S)−N5−(アミノイミノメチル)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−N5−メチル−オルニチンアミド、
(R)−N−[[4−(アミノカルボニルメチル)フェニル]メチル]−N2−(ジフェニルアセチル)−アルギニンアミド、
(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[[4−(メチルアミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−アルギニンアミド、
(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[[4−(エチルアミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−アルギニンアミド、
(R)−N−[[4−(アミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−N2−[ビス−(4−メトキシフェニル)アセチル]−アルギニンアミド、
(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[[4−(エトキシカルボニルメチルアミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−アルギニンアミド、
(R)−N−[[4−(アミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−N2−[ビス−(4−フルオロフェニル)アセチル]−アルギニンアミド、
(R)−N−[[4−(アミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−N2−[ビス−(4−クロロフェニル)アセチル]−アルギニンアミド、
(R)−N−[[4−(アミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−N2−[ビス−(4−ヒドロキシフェニル)アセチル]−アルギニンアミド、
(R)−N−[[4−(アミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−N2−[ビス−[4−(メトキシカルボニルメトキシ)フェニル]アセチル]−アルギニンアミド、および
(R)−N−[[4−(アミノカルボニルアミノメチル)フェニル]メチル]−N2−[ビス−[4−(ヒドロキシカルボニルメトキシ)フェニル]アセチル]−アルギニンアミド。
【0016】
他の有用な選択的NPYY1レセプター拮抗物質の例は、米国特許第5,962,530号明細書および第6,040,289号明細書に開示されている(両文献は本明細書に含まれるものとする)。
本発明の別の態様では、NPYレセプター拮抗物質はNPYY5レセプターサブタイプに対して選択的である。本発明で有用なY5選択的拮抗物質の例は、(2−(3,3−ジメチル−1−オキソ−4H−1H−キサンテン−9−イル)−5,5−ジメチル−シクロヘキサン−1,3ジオン)であり、これはL−152804としても知られている。L−152804は、Kanataniらの報告(Kanatani et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 2000, 272:169−173)(前記文献は本明細書に含まれるものとする)にしたがって得ることができる。
【0017】
本明細書でNPYレセプター拮抗物質またはNPY拮抗物質という用語が用いられるときは、ヒトおよび他の哺乳類でNPYレセプター拮抗物質特性を有する医薬的に許容できる全ての塩がその中に含まれると解されるべきである。前記塩には例えば以下の無機酸または有機酸による塩が含まれる:酢酸、ギ酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、またはマレイン酸。さらに、NPY拮抗物質がカルボキシ基を含む場合、無機および有機塩基を用いて医薬的に許容できる付加塩に変換することができる。適切な塩基の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンが含まれる。
【0018】
NPY拮抗物質および医薬的に許容できる担体または賦形剤を含む医薬組成物は、アルコール中毒の治療で有効な薬剤であり、したがって本発明の別の特徴を提供する。本発明の別の態様は、NPYY1選択的またはNPYY5選択的拮抗物質を含有する医薬組成物を含む。NPYY1選択的拮抗物質を含む医薬組成物が好ましい。好ましい全身投与用組成物は、投与されたとき血液脳関門を通過するか、または生理学的に活性な形態のNPYY1またはNPYY5拮抗物質を含む。
本発明を実施する場合、NPY拮抗物質は、NPYがそのレセプターと作用する部位で前記拮抗物質が機能できることを条件に全身的または局所的に投与することができる。好ましくは、前記拮抗物質は、全身的に(例えば非経口的、経口的または腹腔内に)投与される。局所適用およびエアゾルの吸入もまた包含される。
【0019】
1日当たり体重1kgにつき約0.001mgから約100mgのオーダーのNPY拮抗物質の投与レベルがアルコール中毒の治療で有用である。単回投与製剤を製造するために担体物質と結合させることができる活性物質の量は、治療の対象者および個々の投与態様に応じて変動するであろう。ユニット製剤は一般に約1mgから約500mgの有効成分を含むであろう。
個々の個体に固有の用量レベルは、NPY拮抗物質の活性、年齢、体重、一般的な身体的および精神的健康状態、遺伝的素因、環境的な影響、性別、食事、投与期間、投与ルート、排出速度、および治療される個々の問題の重篤度を含む種々の要因によって左右されるであろう。例えば、アルコール中毒症状の治療に有用な用量レベルは、それぞれのアルコール乱用問題の重大度にしたがって個体間で変動するであろう。同様に、アルコール渇望を抑制するための用量レベルは、各個体のアルコール中毒症状の重篤度に応じて個体間で変動するであろう。当業者は、当技術分野で周知の方法を用い日常的な検査によって本明細書に記載したパラメータ内での適切な投与量を容易に決定できよう。
【0020】
有効成分だけを投与することもできるが、前記有効成分を製剤として提供することが好ましい。経口投与に適した本発明の製剤は、別々に分離させたユニット形(例えばカプセル、カシェー(cachet)、錠剤またはロゼンジで、各々が予め定められた量の有効成分を含むもの);粉末または顆粒形;水性液または非水性液中の溶液または懸濁液;または水中油乳濁液もしくは油中水乳濁液であろう。
有効成分はまたボラス、エレキシルまたはペースト形でもよい。
錠剤は、場合によって1つまたは2つ以上の補助成分とともに有効成分を圧縮または鋳型成形することによって製造できる。圧縮錠剤は、場合によって結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、表面活性剤または調剤物質と混合した自由流動形状(例えば粉末または顆粒)の有効成分を、適切な機械で圧縮することによって製造できる。湿製錠剤は、粉末の有効成分および不活性な希釈液で湿らせた適切な担体の混合物を適切な機械で鋳型成形することによって製造できる。
【0021】
非経口投与に適した製剤は、便利には有効成分の滅菌水性調製物を含み、好ましくは服用者の血液と等張である。
鼻腔または口腔内投与に適した製剤(例えば以下に記載する自噴式粉末製剤)は、0.1から20%w/w、例えば2%w/wの活性製剤を含むことができる。
ヒトの治療で使用する本発明の製剤は、有効成分のための医薬的に許容できる担体および場合によって他の治療成分と一緒に有効成分を含む。前記担体は、製剤の他の成分と適合するという意味で“許容可能”でなければならず、さらにその服用者にとって有害であってはならない。
【0022】
本発明の薬理学的に活性な化合物は、前記化合物の有効量を経口的または非経口的な適用に適した賦形剤または担体と結合または混合された状態で含む医薬組成物の製造に有用である。好ましいものは、以下の1つまたは2つ以上のものと一緒に前記有効成分を含む錠剤およびゼラチンカプセルである:(a)希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、シュクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、グリシンなど;(b)潤滑剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウム塩もしくはカルシウム塩、ポリエチレングリコールなど;錠剤の場合にはまた;(c)結合剤、例えば珪酸マグネシウムアルミニウム、澱粉ペースト、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはポリビニルピロリドンなど;さらに所望する場合は(d)崩壊剤、例えば沸騰散混合物など;および(e)吸収剤、着色剤、香料および甘味料など。注射可能な組成物は好ましくは水性等張溶液または懸濁液であり、座薬は有利には脂肪性乳液または懸濁液から製造される。前記医薬組成物は滅菌するか、および/または補助剤、例えば保存料、殺菌剤、湿潤剤または乳化剤、可溶化促進剤、浸透圧調節用の塩および/または緩衝剤を含むことができる。さらに、前記医薬組成物はまた、他の治療的に有益な物質を含むことができる。前記組成物は、それぞれ通常の混合方法、顆粒化方法または被覆方法にしたがって製造され、約0.1から75%、好ましくは約1から50%の有効成分を含む。
【0023】
前記製剤は便利にはユニット製剤として提供され、製薬分野で周知の任意の方法によって製造できる。いずれの方法も、有効成分を1つまたは2つ以上の補助成分を構成する担体と結合させる工程を含む。一般に、前記製剤は、均一にかつ緊密に前記有効成分を液状担体または微細分割固形担体またはその両方と結合され、さらに必要な場合には所望の製剤に生成物を成形することによって製造される。
【0024】
その目的の使用に対するNPY拮抗物質の有効性は多様な方法で決定できる。例えば、本発明の方法で有用な化合物は、in vitroおよび/またはin vivo動物モデルで得られたデータに基づいてさらに検査して選択することができる。例えば、化合物は、当業者に公知のin vitroバイオアッセイによりNPYレセプターとの結合親和性について検定することができる。例えば、カナタニらの方法(Biochem. Biophys. Res. Commun., 2000, 272:169−173)は、NPYレセプターサブタイプ(Y1、Y2、Y4およびY5)を個々に発現することが知られている種々の哺乳類細胞を使用する。その結合親和性(Ki)が、放射能標識NPYとの競合的結合アッセイでナノモルの範囲内にあれば、テスト化合物は特定のレセプターサブタイプの選択的競合物質であると考えられる。
【0025】
化合物がNPY拮抗物質であるか否かを決定する別の方法は、細胞内Ca2+濃度のNPY誘発増加を抑制するテスト化合物の能力を測定するものである。前記アッセイは、上記と同じ細胞を用い、テスト化合物の存在下または非存在下およびNPYの存在下または非存在下で実施される。細胞内Ca2+を増加させるNPYの能力をナノモルの範囲内のIC50で抑制するテスト化合物は拮抗物質であると考えられる。テスト化合物がただ1つのNPYレセプターサブタイプの拮抗物質である場合は、前記化合物は選択的拮抗物質であると考えられる。非選択的NPYレセプター拮抗物質は、2つまたは3つ以上のレセプターサブタイプで適切な結合親和性を示す。
【0026】
公知のNPYレセプター拮抗物質およびNPYY1選択的またはY5選択的レセプター拮抗物質のアルコール渇望減少およびアルコール自己摂取減少における有効性は、実験動物モデルで検査することができる。簡単に記せば、ロングエバンスラットを実験室の環境に対して条件付けし、Hodgeら(Alcohol, 1993, 10:191−196)が記載したように、シュクロース減衰方法(sucrose−fading procedure; H.H. Samson, Alcohol Clin. Exp. Res., 1986, 10:436−442)を用いて水と一緒に置かれているエタノール(10%v/v)を自己摂取するように訓練した。定位手術を実施して、PVNに向けてインジェクターガイドカニューレを移植した。前記条件付けしたラットのPVNに、NPYとともにまたはNPY無しでテスト化合物の微量注入を実施する。前記ラットに直ちに水またはエタノール(10%v/v)のどちらかを自己摂取する機会を与える。消費したエタノールまたは水を測定する。エタノールの摂取は、消費したミリリットルからグラム/キログラム体重に変換する。相対的エタノール摂取(嗜好性)は、全摂取液体(エタノール+水(mg))で割った消費エタノール(mg)として算出する。薬剤の投与効果は平方偏差の一方向繰返し測定値分析(one−way repeated measures analysis of variance)(ANOVA)によって解析する。薬剤投与と賦形剤コントロールとの間のpost−hoc比較は、ペアード(paired)t検定または適切な場合にはダンネットの(Dunnett’s)t検定を用いて実施する(SigmaStat, Jandel, San Rafael, CA)。テスト化合物が、アルコール自己摂取のNPY誘発増加においてまたは基準自己摂取において統計的に有意な減少を生じたとき、前記テスト化合物は有効であると考えられる。
【0027】
NPY拮抗物質の有効性をテストする別の適切な動物モデルは、Oliveら(Eur.J. Neurosci. 2000, 12:4131−4140)の記載にしたがってアルコール強化レバー押し(alcohol−reinforced lever pressing)行動を用いる。前記モデルは、アルコール希求行動を防止もしくは遅らせるNPY拮抗物質、または回復中のアルコール中毒者の飲酒再発を防止もしくは減少させるNPY拮抗物質の特定に特に有用である。
一般的に認められている動物モデルでの一般的毒性プロフィルおよび所望の投与ルートによる生体利用性もまた、アルコール中毒治療での使用に適したNPY拮抗物質の選別で考慮される。
【0028】
アルコール中毒治療における本発明の方法および組成物の効能はまた、場合によって、適切な基準および倫理的ガイドラインの下で実施されるヒトの臨床試験で標準的な方法を用いて評価することができる。例えば、二重盲検、プラセボ対照実験を文献の記載(Volpicelle et al., Arch. Gen. Psychiatry, 1992, 49:876−880)にしたがって実施することができる。簡単に記せば、アルコール依存についてDSM−IV診断基準(アルコール禁断の生理的症状を含む)に適合する対象者を、標準的な解毒治療の後で4つの治療群に分ける:(1)テスト化合物を投与;(2)プラセボ化合物を投与;(3)テスト化合物および行動療法を実施;(4)プラセボ化合物および行動療法を実施。3ヶ月間、全対象者は検査技師によって週単位で検査を受ける。前記検査技師は、体内アルコール検出検査を実施し、さらにアルコール渇望、アルコール希求、アルコール消費および気分を調べる。得られたデータは標準的な統計技術によって解析される。テスト化合物は、アルコール自己摂取、アルコール希求行動または飲酒再発において統計的に有意な減少をもたらすとき有効であると考えられる。いずれの特別な患者についても、前記方法の有効性は類似の態様で決定することができる。
以下の実施例は制限としてではなく例示として提供する。
【0029】
【実施例】
実施例
方法
動物:36匹のロングエバンスラットの雄(Harlan, Indianapolis, IN)を1匹ずつプレキシグラスのケージに収容した。水へのアクセスは行動訓練の第一日目は制限したが、実験の残りについては常に利用可能な状態であった。飼料は常にホームケージで摂取できる状態であった。実験チャンバーでは、エタノール(10%v/v)および水が日中(M−F)セッション中は同時に利用できる状態であった。動物のコロニールームは、6:30に点燈し12L:12Dサイクルで維持した。実験セッションは前記サイクルの点燈部分で実行した。全ての実験手順は研究所ガイドラインおよびNIHガイドラインにしたがって実施した。
【0030】
装置:実験セッションは、防音小部屋(MED Associates, モデルENV016M, Lafayette, IN)に静置したプレキシガラスチャンバー(27×37×21cm)で実施した。チャンバーには外部の騒音を遮断した排気送風機が装備されていた。各チャンバーの右側の壁には2つの50mLの飲料ボトルがあった。薬剤溶液はステンレススチールの注入装置(Plastics One, Roanoke, VA)から双方に投与された。前記注入装置はプラスチックチューブで2つの1.0μLの注射筒(Hamilton, Reno, NV)に連結されていた。注射筒には微量輸液ポンプ(Harvard Apparatus, モデル22, Natick, MA)が搭載され、0.5μL/分/注射筒を輸液できるように設定されていた。
【0031】
自己摂取手順:実験室の飼育条件に2週間順応させた後、飲料へのアクセスを1日1時間(2日間のみ)制限し、さらに2群のラット(N=12/群)を、1回のオーバーナイトセッション中にシュクロース(10%v/v)と水に一晩中アクセスできるようにして実験チャンバー内のボトルから飲むように訓練した。続いて、シュクロース(10%v/v)と水がともに摂取できる日中の1時間セッションを実施した。シュクロースおよび水の溶液の位置(すなわちチャンバーの左または右側)は毎日交換した。シュクロースと水の摂取パターンが安定したら、シュクロース減衰法(H.H. Samson, Alcohol Clin. Exp. Res., 1986, 10:436−442)を以前に報告(例えば、Hodge et al., 1993)されたように用いて一緒に置かれたエタノール(10%v/v)と水を自己摂取するようにラットを訓練した。簡単に記せば、エタノールを前記シュクロース溶液に徐々に添加し、ラットが10%エタノール対水を自己摂取するまで前記溶液からシュクロースを徐々に減少させた。2ヶ月間のシュクロース減衰法の実施中に、エタノール/シュクロース溶液および水の位置を毎日交換した。全動物が水よりもエタノール/シュクロース溶液を好んだ(データは示されていない)。シュクロースが消失した後、1週間につき5日間、4ヶ月の間ラットにエタノール(10%v/v)対水を自己摂取させ、長期のエタノール自己摂取歴を確立させた。4ヶ月の基準手順の最後に、前記動物に定位手術を実施した。続いて、前記動物に微量注入法を実施する前にさらに3ヶ月間エタノールを自己摂取させた。
【0032】
NPYは消費性(consummatory)行動に対して強力な作用を有するので、PVN内にNPYを輸液することによって、エタノールの薬理作用に関する経験とは無関係のメカニズムを介してエタノールの摂取を変化させることができるかもしれない。したがって、消費に対するNPYの非特異的作用のコントロールとして、エタノールの自己摂取の長期歴をもたない別のラット群(n=12)でNPYの作用を調べた。実験に使用されたことが無いラットを1週間実験室に順応させた。続いて、前記動物にPVNに誘導される両側性ガイドカニューレを移植した。回復のために術後1週間してから実験セッションを開始した。日中の60分セッションの間に、エタノール(10%v/v)対水が同時に摂取できる状態にある自己摂取チャンバーにラットを入れた。1週間の間エタノールおよび水の基準摂取レベルを測定した。続いて微量注入法を実施した。
【0033】
定位手術:エタノールと水の摂取が安定化したとき、PVNへ誘導される両側性ステンレススチールガイドカニューレ(26ゲージ)を外科手術により移植した。ラットをアトロピン(0.4mg/kg、腹腔内)を併用しながらペントバルビタールで麻酔し(60mg/kg、腹腔内)、定位装置(David Kopf Instruments, Tujunga, CA)に置いた。注入カニューレ(Plastics One, Roanoke, VA)をPVNの背側1mmで終わるように移植し、頭蓋用ネジおよび歯科用セメントで頭蓋骨に固定した。除去可能なワイア栓子をガイドカニューレの全長に挿入し、組織による閉塞および外部破片による夾雑を制限した。PVNのために用いた定位座標は、ブレグマより−1.8mm、中線から側方へ+1.0mm、さらに垂直面に対して側方に5°で皮質表面から下方に−6.5mmであった(Paxinos & Watson, 1982)。全ての測定値は平坦な頭蓋から得た。手術後、全ラットに術後痛管理のためにブプレノルフィン(0.2mg/kg、皮下)を投与した。日中セッションは術後1週間して開始した。
【0034】
微量注入法:エタノールと水の摂取が再び安定したら、週に1回微量注入を実施した。麻酔していないラットをプラスチック容器(15×30×深さ15cm)に入れ移動を少なくした。栓子を取り除き、無菌的な33ゲージの注入装置をガイドカニューレの末端を越えて1mmの深さに両側に挿入した。蒸留水を賦形剤として薬剤溶液を総容積1μL(片側0.5μL)で輸液した。注入装置をさらに30秒そのまま維持し薬剤を拡散させた。前記溶液の正確な流れを各注入の前後に確認し、化合物の送達を担保した。自己摂取セッションは微量注入後直ちに開始した。無菌的栓子を行動試験セッションの終了時に再び挿入した。同時投与の場合は、D−NPYまたはBIBP3226はNPYの15分前に輸液した。賦形剤注入もまた実施して、輸液によって生じる局所圧または浸透圧の変化のためのコントロールとした。薬剤試験の前の1ヶ月間、動物を手で扱い、プラスチックタブに入れて、その後の薬剤作用に対する操作上の変化の影響を最小限にした。これらのセッションのデータは分析に用いなかった。微量注入プロトコルの完了時に、ラットを殺し、注射部位の組織学的証明のためにその脳を取り出した。
【0035】
薬剤および投与量:中枢投与に用いた本実験の薬剤は以下のNPYであった:非選択的NPY拮抗物質、[D−Tyr27,36,D−Thr32]神経ペプチドY(27−36)(D−NPY)およびY1選択的拮抗物質、(R)−N2−(ジフェニルアセチル)−N−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−D−アルギニンアミド(BIBP3226)。全ての薬剤は、リサーチ・ケミカル・インターナショナル(Research Chemicals International, Natick, MA)から入手した。いずれの薬剤も中枢投与のために滅菌蒸留水に溶解した。薬剤溶液は投与の直前に調製し、総容積1μL(0.5μL/片側/分)で両側に輸液した。薬剤は用量を知らされている実験者によって任意の順序で投与された。自己摂取用エタノール(95%)は水道水で希釈した。
【0036】
組織学:実験終了後、ラットに致死量のペントバルビタールナトリウム(200mg/kg、腹腔内)を投与し、0.9%のNaCl、続いて10%のホルムアミドを心臓を介して灌流させた。脳を取り出し、10%ホルマリン/30%シュクロース溶液に最小限10日間保存した。固定した脳を凍結し、切片(40μm)を作製し、クレシルバイオレットで染色して光学顕微鏡下で調べて注入位置を決定した。PVNで両側性に終わる明瞭に範囲が限定された注入装置の跡が確認されたラットのデータだけを用いた。
【0037】
データの解析および統計学:消費されたエタノールと水の容積は、各1時間セッションの終わりに0.5ミリリットルまで測定した。エタノール摂取は、消費されたmLからg/kg体重に換算した。相対的エタノール摂取(嗜好性)は、(消費エタノールのmL)÷全液体摂取(エタノール+水のmL)として算出した。薬剤の投与効果は、平方偏差の一方向繰返し測定値分析(ANOVA)によって解析した。薬剤投与と賦形剤コントロールとの間のpost−hoc比較は、ペアードt検定または適切な場合にはダンネットのt検定を用いて実施した(SigmaStat, Jandel, San Rafael, CA)。
【0038】
結果
行動訓練の結果大半の動物で安定なエタノールの自己摂取を得た。微量注入手順の前の25日の間の平均エタノール摂取は0.44±0.05g/kgであった。NPYおよびBIBP3226を投与された群の3匹のラットから得られたデータは、基準自己摂取の実施不良のために除外した。
組織学:冠状脳切片の組織学的検査の分析によって、シュクロース減衰の後でNPYおよびD−NPYを輸液された12匹のうち11匹の動物が、PVNに両側性の注入を受けたことが示された。シュクロース減衰の後でNPYおよびBIBP3226を輸液されたラットの脳切片の検査によって、9匹のうち9匹の動物が、PVNに注入を受けたことが示された。12匹のコントロール動物のうち10匹がPVNに両側注入を受けていた。前記注入手順によって、PVN内に極めてわずかのグリオーシスと組織の損傷が生じた。PVNで両側性の注入を受けた動物のデータのみを提示する。
【0039】
エタノール摂取および嗜好性に対するNPYの作用:PVNへのNPY輸液の結果は図1に示されている。反復測定ANOVAによって、NPYはエタノール摂取を有意に高めることが示された[F(3,30)=7.6、p<0.001]。post−hocダンネットの比較は、NPYのいずれの投与量も、賦形剤コントロールと比較したときエタノール摂取を有意に高めることを示した(図1A)。個々のラットのデータを精査したところ、テストした11匹のラットは全て、NPYのいずれの投与量でもエタノール摂取(g/kg)の増加を示した。基準エタノール嗜好性は高いが(>70%)、PVN内へのNPYの投与もまた、エタノール嗜好性を用量依存態様で優位に増加させた[F(3,30)=3.3,p<0.05](図1B)。テストした最も高い2つの用量では、日中セッション中の液体消費の90%以上がエタノールで占められていた(p<0.05;図1B)。エタノール摂取および嗜好性は、実験セッション中の水の摂取の顕著な全体的減少を伴っていた[F(3,30)=5.4、p<0.01](図1C)。post−hoc比較によって、NPYは用量依存態様で水の摂取を減少させることが示された(p<0.05)。
【0040】
非選択的NPYレセプター拮抗物質D−NPYは、部分的であるが有意なエタノール摂取の低下をもたらした(図1A、右)。NPY(10fmol)と同時投与したとき、D−NPYはエタノールおよび水の摂取に対するNPYの作用を完全に遮断した(図1Aおよび1C、右)。嗜好性のデータにはその傾向はあったが、D−NPYはNPY誘発エタノール嗜好性増加を有意には変化させなかった(P<0.09、図1B)。したがって、前記データは、PVNへの外因性NPYの輸液は、ラットで強力にエタノール摂取およびエタノール嗜好性を高めることを示している。非選択的NPY拮抗物質D−NPYは部分的には基準エタノール摂取を減少させ、NPYによって生じるエタノール摂取の増加を完全に遮断した。
【0041】
表1は、エタノールの長期自己摂取歴をもたない、シュクロース減衰法を受けたラットのPVNへのNPY輸液の影響を示す。データの値は平均±SEMとして提示されている。これらの条件下では、テストしたいずれの用量のNPYもエタノール摂取、エタノール嗜好性または水の摂取に変化をもたらさなかった。
【0042】
炭水化物およびアルコール摂取の類似作用は少し前から知られていた(C.P. Richter, Q. J. Stud. Alcohol, 1953, 14:525−539; P.J. Kulkosky, Neurosci. Biobehav. Rev., 1985, 9:179−190)。アルコール摂取は、ラットのタンパク質または脂肪消費を変化させることなく、栄養物特異的態様で炭水化物摂取を減少させる(O.A. Forsander, Alcohol, 1988, 23:143−149)。したがって、ヒトの実験では甘味物質の摂取はアルコール消費に反比例することを示している(G.A. Colditz et al., Am. J. Clin. Nutr., 1991, 54:49−55)。他の実験では、低炭水化物食はアルコール摂取を高めるが、高炭水化物食は飲酒を低下させることが示された(R.V. Brown et al., Q. J. Stud. Alcohol, 1973, 34:758−763; L. Pekkanen et al., Br. J. Nutr., 1978, 40:103−113; O.A. Forsander et al., Alcohol, 1988, 5:233−238)。単純炭水化物はアルコール中毒者の再発を遅らせることが報告された(M.E. Farcas et al., J. Nutr. Education, 1984, 16:123−124)。さらにまた、回復中のアルコール中毒の女性は、強いアルコール渇望期に甘い食品をより多く食べることが報告された(S. Rosenfield, Res. Nurs. Health, 1988, 11:165−174)。したがって、自己摂取行動の発達中に、エタノールと炭水化物(例えばシュクロース)とを対にすることによって、食物摂取を仲介する恒常性維持神経系(すなわち視床下部)との密接な連動が生じるかもしれない。また別には、シュクロースで訓練した動物によるより高レベルのエタノール摂取がNPYの作用に影響を与えた可能性もある。
【0043】
ホームケージでの飼料および水の消費に対するNPYの影響:PVNへのNPY輸液は、ホームケージで測定したとき体重(図2A)または食物消費(図2B)には全く影響を与えなかった。しかしながら、前記用量のNPYは、ホームケージで測定したとき水の摂取を有意に[F(1,10)=9.625、p<0.05]減少させた(図2C)。単独またはNPYと併用して投与したD−NPYは、体重に対して全く影響をもたらさなかった(図2A、右)。NPYはまたシュクロース処理を受けていない動物のホームケージでの体重、食物摂取または水の摂取にも影響を及ぼさなかった。
【0044】
食物摂取および体重に対してNPY関連作用が認められないことは、いくつかの要因によって説明することができる。第一に、本実験で使用したNPYの濃度はfmolの範囲であり、これは、摂食に典型的に用いられる濃度(pmolからnmolの範囲である)より極めて低かった(例えば以下の文献を参照されたい:Stanley and Leibowitz, 1985)。したがって、エタノール自己摂取行動は、NPYレベルの変化に対して摂食よりもはるかに鋭敏であるかもしれない。第二に、PVNにおけるNPYレベルの上昇は、環境内のもっとも関連する物質の消費を直ちに増加させるかもしれない。NPYはシュクロース非依存的方法で訓練したラットではエタノール摂取に影響を与えなかったので、これは本実験の事例ではないように思われる。
【0045】
NPYは、エタノール自己摂取セッションで水の摂取を有意に減少させ、エタノール嗜好性の増加の一因となった。我々はまた、PVNへのNPYの輸液後に、比較的小さいが有意である、ホームケージでの24時間水摂取の減少を観察した。非選択的NPY拮抗物質、D−NPYは、エタノール自己摂取セッションでNPY誘発水摂取減少を有意に逆転させ、Y1選択的拮抗物質は水摂取減少傾向を逆転させた。総合すれば、前記データは、NPYはエタノール経験をもつラットとエタノール未経験ラットで水摂取に対して異なる作用を有することを示唆している。
【0046】
エタノール摂取および嗜好性のNPY誘発変化に対するY1拮抗物質の影響:図3は、NPYおよびNPYY1選択的拮抗物質(BIBP3226)のPVN内輸液の結果を示している。PVNへのBIBP3226の単独輸液(10.6μM)は、エタノール摂取もしくは嗜好性または水の摂取に対して有意な影響をもたらさなかった(図3A、BおよびC)。NPY(10fmol)はコントロールの値よりもエタノール摂取を有意に増加させた(図3A)。BIBP3226をNPYとPVN内に一緒に投与することによって、エタノール摂取を増加させるこのNPY用量の能力は完全に遮断された(図3A)。したがって、これらのデータは、NPY(PVN内のY1レセプターで作用する)はアルコールの自己摂取の強力な刺激薬であること、およびY1レセプター特異的拮抗物質はこの刺激を完全に遮断できることを示している。
【0047】
扁桃内へのNPYY1拮抗物質の微量注入:アルコール希求行動におけるNPYレセプターの役割をさらに解明するために、文献(Kelley et al., 2001, Peptides 22:515−522)の記載にしたがって、エタノール対水を自己摂取するように訓練にしたラットの扁桃の中枢核(CeA)内にNPYY1ペプチド拮抗物質BIBP3226を注入した。前記CeAは、視床下部に加えてこの脳領域は顕著な数のNPYレセプターを含んでいるので、さらに追加のテスト領域として選択した。前記拮抗物質は水の摂取に影響をあたえなかった。反復測定ANOVAによって、BIBP3226はしかしながら自己摂取エタノール量を有意に変化させることを示した[F(3,23)=5.9、p<0.01]。追跡統計分析で、有意な主要作用は、最高用量のBIBP3226の輸液後のエタノール自己摂取の低下によるものであることが示された(図4)。これらのデータは、CeAのNPYY1レセプターの遮断はエタノールの強化能力を減少させることを示している。エタノール自己摂取の進行における前記減少は、Y1は、アルコール乱用およびアルコール中毒に付随する問題(例えば制御のきかない飲酒)の医学的管理における有用な治療薬であることを示唆している。
【0048】
非ペプチド性NPYY5拮抗物質、L152804の全身注射:我々の研究室で得られた証拠は、NPYの微量注入はアルコールの自己摂取を高めることを示した。前記作用は、非選択的NPY拮抗物質(D−NPY)またはBIBP3226のどちらかを視床下部に輸液することによって遮断された。上記で示した証拠は、CeA内に投与されたY1拮抗物質BIBP3226がアルコールの自己摂取を有意に減少させることを示すことによって前記発見を敷衍した。これらのデータは、アルコール乱用およびアルコール中毒の医学的管理における治療薬としてのNPY拮抗物質の潜在的効能を示している。しかしながら、これらの発見の普遍性は、前記化合物が特定の脳領域に直接投与されたという事実によっていくぶん限定される。これらの発見の妥当性を拡大するために、最近報告された(Kanatani et al., 2000)選択的非ペプチドNPYY5拮抗物質L152804を合成し、アルコール希求行動についてテストした。化合物の効能に関する厳密なテストとして、アルコールを大量摂取する遺伝的素因を有するC57BL/6JマウスでY5拮抗物質をテストした。
【0049】
方法
雄のC57BL/6Jマウスを標準的なプレキシガラスケージ(n=4/ケージ)に収容し、飼料(Harlan, Indianapolis, IN)と水は常時供給した。マウスは20週齢(体重28−35g)で全ての検査の開始時に薬剤処置に対して未使用であった。自己摂取オペラント訓練中は、固形飼料(オーバーナイトセッションにつき15g)はオペラントチャンバーに置き、水は固定比1(FR−1)強化スケジュールの下で利用できた。
【0050】
テストセッションは、寸法が15.9×14×12.7cmでステンレススチールの格子床を有する8つのプレキシガラスのオペラントチャンバー(Med Associates, Lafayette, IN)で実施した。換気を提供しさらに外部のノイズの遮断を助けるハウスファンが設置されている防音小部屋に各チャンバーを置いた。各オペラントチャンバーの左および右の壁に高感度ステンレススチールレスポンスレバーおよび液体分配システムを設置した。プログラム可能ポンプ(PHM−100, Med Associates)に据え付けた60mLの注射筒内に液体溶液(エタノールまたは水)を維持した。前記ポンプは、連結されたレスポンスレバーの左に配置されているステンレススチールのコップに活性化1回につき0.01mLを供給した。各チャンバーはまた、ハウスライト(16:00−18:00から06:00−08:00の間点燈される)とともに各レバーの上に配置された刺激ライト(レバーが押されるたびに活性化される)を有していた。チャンバーはIBM互換性PCとのインターフェースを有し、全てのレベー押しおよび液体の供給を記録するようにプログラムされた。
【0051】
マウスは漸近法の強化(10%シュクロースw/v)を用いてレバーを押すように訓練した。最初の行動形成セッションの後、16時間のオーバーナイト(16:00から08:00)訓練セッションの間マウスを自由に歩きまわらせた。前記トレーニングセッションの間、両方の反応レバーは、強化因子として提供された10%シュクロース対水による共存固定比1(CONC FR1FR1)のスケジュールで有効であった。各溶液の位置(左または右)は各動物について固定されていたが、副次的な好みを制御するために動物間でバランスをとった。4日後、マウスで使用するために適応させたシュクロース置換法を用いてエタノール(10%V/V)対水を経口的に自己摂取するように訓練した(Olieve et al., 2000, Eur. J. Neurosci. 12:4131−4140)。簡単に記せば、エタノール(2、4、8または10%v/v)を毎日濃度を増加させながら4日間でシュクロース(10%w/v)にだんだんと添加した。続いて、シュクロース(10、5、2%w/v)を毎日濃度を減少させながら4日間でエタノール含有溶液からだんだんと消失させた。シュクロース置換訓練の後、全てのマウスは、強化因子として提供されたエタノール(10%V/V)対水による強化のCONC FR1 FR1スケジュールで信頼できる態様で反応した。
【0052】
アルコール希求行動に対するL152804の影響:L152804(10、30および60mg/kg)の全身投与は、16時間セッションの間水の摂取に全く影響を与えなかった。コントロールのアルコール自己摂取の仕方を分析することによって、行動はセッション全体を通して発生するが、アクセス後4から5時間でピークに達することが示された(図5、白丸)。2つの低用量のL152804の投与はエタノールの自己摂取を有意には変化させなかった。しかしながら、L152804(60mg/kg)は、前記ピーク期間の間のアルコール希求行動(例えばアルコールのためのレバー押し)を有意に低下させた。自己摂取の代償性増加はアクセスから13時間目に生じた。これは、Y5拮抗物質の薬理動態と一致するかもしれない。これらのデータは、L152804は高刺激期間の間アルコール希求行動を減少させることを示唆している。
【0053】
アルコール希求行動の開始に対するL152804の影響:各日中セッションは、動物からしばらくエタノールをとりあげ、エタノールを捜し求めるか否かの刺激誘発(多分に刺激誘発された自己摂取再発行為)(すなわち実験環)状況を具現している。本実験では、とりあげる時間は毎日8:00から16:00であった。したがって、エタノールを自己摂取する(および自己摂取を再発させる)ための誘因に対するL152804の潜在的作用を示すために、我々は、各セッションの間に反応が開始する時間を分析した。L152804は最初の反応までの潜伏時間を有意に引き延ばした(図6)。これらのデータは、NPYY5拮抗物質がエタノール希求行動の開始を遅らせることを示している。動物モデルをヒトのアルコール中毒症状に敷衍することによって、これらのデータは、NPYY5拮抗物質は、アルコール中毒者の再発を遅らせてアルコール希求の回避に役立つ可能性を示唆している。
【0054】
本明細書で述べた全ての刊行物および特許出願は本明細書に含まれるものとする。別に規定されないかぎり、本明細書で用いられる全ての技術用語および学術用語は、本発明が属する技術分野で一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
本発明はこれで完全に説明し終えたが、添付の請求の範囲から離れることなく多くの変更および改変が可能であることは当業者には明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、1時間のテストセッションの直前にPVN内に輸液したNPYまたはNPY+D−NPYのエタノール摂取(A)、エタノール嗜好性(B)および水の摂取に対する影響を示している。投薬は任意の順序で実施した。データは、11匹のラットの平均±SEMとして表されている。(*)は、賦形剤コントロールと有意差があることを示している(ダンネット(Dunnett)p<0.05)。(†)は、NPY単独とは有意差があることを示している(ペアードt検定p<0.05)。
【図2】
図2は、PVN内に輸液したNPYまたはNPY+D−NPYの体重(A)、食物摂取(B)および水の摂取に対する影響を、輸液後24時間してホームケージで測定したものを示している。投薬は任意の順序で実施した。測定は、図1に示したデータと同じ日に実施した。データは、11匹のラットの平均±SEMとして表されている。(*)は、賦形剤コントロールと有意差があることを示している(ダンネット(Dunnett)p<0.05)。
【図3】
図3は、1時間のテストセッションの直前にPVN内に輸液したNPY、BIBP3226またはNPY+BIBP3226のエタノール摂取(A)、エタノール嗜好性(B)および水の摂取に対する影響を示している。投薬は任意の順序で実施した。データは、9匹のラットの平均±SEMとして表されている。(*)は、賦形剤コントロールと有意差があることを示している(ペアードt検定p<0.05)。
【図4】
図4は、扁桃の中枢核内のNPY−Y1拮抗物質、BIBP3226の作用を示すドースレスポンス曲線を示す。BIBP3226は、1時間のセッション中に自己摂取されるアルコール量を顕著に減少させた。(*)は、賦形剤(veh)と有意差があることを示している(ターキー検査(p<0.05)、N=9匹のラット)。
【図5】
図5は、訓練したC57BL/6Jマウスを用いた行動試験セッションの時間の関数として表したエタノール強化レバー押しの総回数を示す。60mg/kgのL152804(白丸)または食塩水溶液(黒丸)の投与を比較した。アルコールの自己摂取は開始から4時間目および5時間目の間に最高に達した。L152804は、アルコール希求行動におけるこのピークを阻止した。(*)は対応する時点で食塩水コントロールと有意差があることを示している。
【図6】
図6は、L152804の用量の関数として表した反応潜伏時間(すなわち最初のアルコールレバー押しまでの時間の遅れ)を示す。L152804の用量に依存して反応の開始が遅くなった。(*)は、注射無し(ni)および食塩水(sal)コントロールと有意差があることを示している(ターキーテスト、p<0.05)。最高用量では2つのデータ−数値の変動性のために有意差が得られなかった(前記数値は平均値からほぼ2標準偏差多かった)。前記は、これら2匹のマウスで非常に強力な作用を示している。
Claims (16)
- アルコール中毒患者のアルコールの自己摂取を減少させる方法であって、治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を前記患者に投与し、前記投与の前後に前記患者のアルコール自己摂取レベルを測定することを含む前記アルコール自己摂取を減少させる方法。
- 前記NPYレセプター拮抗物質が選択的NPYY1レセプター拮抗物質である請求項1に記載の方法。
- 前記選択的NPYY1レセプター拮抗物質がBIBP3226である請求項2に記載の方法。
- 前記NPYレセプター拮抗物質が選択的NPYY5レセプター拮抗物質である請求項1の方法。
- 前記NPYレセプター拮抗物質が2−(3,3−ジメチル−1−オキソ−4H−1H−キサンテン−9−イル)−5,5−ジメチル−シクロヘキサン−1,3−ジオンまたは医薬的に許容できるその塩もしくは水和物である請求項4に記載の方法。
- アルコール中毒患者のアルコール希求行動を減少させる方法であって、治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を前記患者に投与し、前記投与の前後に前記患者のアルコール希求行動レベルを測定することを含む前記アルコール希求行動を減少させる方法。
- 前記NPYレセプター拮抗物質が選択的NPYY1レセプター拮抗物質である請求項6に記載の方法。
- 前記選択的NPYY1レセプター拮抗物質がBIBP3226である請求項7に記載の方法。
- 前記NPYレセプター拮抗物質が選択的NPYY5レセプター拮抗物質である請求項6の方法。
- 前記NPYレセプター拮抗物質が2−(3,3−ジメチル−1−オキソ−4H−1H−キサンテン−9−イル)−5,5−ジメチル−シクロヘキサン−1,3−ジオンまたは医薬的に許容できるその塩もしくは水和物である請求項9に記載の方法。
- 回復中のアルコール中毒患者の飲酒の再発発生を減少させる方法であって、治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を前記患者に投与し、前記投与の前後に前記患者の飲酒再発の発生頻度を測定することを含む前記飲酒再発発生を減少させる方法。
- 前記NPYレセプター拮抗物質が選択的NPYY1レセプター拮抗物質である請求項11に記載の方法。
- 前記選択的NPYY1レセプター拮抗物質がBIBP3226である請求項12に記載の方法。
- 前記NPYレセプター拮抗物質が選択的NPYY5レセプター拮抗物質である請求項11の方法。
- 前記NPYレセプター拮抗物質が2−(3,3−ジメチル−1−オキソ−4H−1H−キサンテン−9−イル)−5,5−ジメチル−シクロヘキサン−1,3−ジオンまたは医薬的に許容できるその塩もしくは水和物である請求項14に記載の方法。
- 治療的に有効な量のNPYレセプター拮抗物質を含む、アルコール中毒に冒されている哺乳類のアルコール中毒治療用医薬組成物。
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