JP2004508047A - スプライシングアクセプターを含む遺伝子組換え細胞性非翻訳配列を有する高効率レトロウイルスベクター - Google Patents
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Abstract
Description
発明の分野
本発明は、変異した異種スプライシングアクセプター(mutated heterologous splicing acceptor)を含み、マウス白血病ウイルス(MLV)コード配列を欠くMLVに由来する、高効率の安全な遺伝子治療用レトロウイルスベクターに関する。
【0002】
発明の背景
マウス白血病ウイルス(murine leukemia virus,MLV)に由来するレトロウイルスベクターは、全世界的に許可を受けて行われる遺伝子治療の臨床試験において50%以上用いられている(Wiley−The Journal of Gene Medicine Website; http://www.wiley.co.uk/genetherapy)。しかし、このようなレトロウイルスベクターのより広範囲な使用を制限する主な要因の一つは、遺伝子の発現の強度が治療効果が明かである程度まで達していないことである。本発明者は、ウイルス由来のコード配列を含まずに細胞由来または他のウイルス遺伝子由来の異種スプライシングアクセプター配列を含むレトロウイルスベクターを既に製作している(韓国特許公開第2000−6334号公報)。前記ベクターのうち一つは、ヒトEF1α遺伝子に由来するスプライシングアクセプターを含む。このベクターは、このようなスプライシングアクセプター配列を欠いている対照群ベクターに比べて非常に高い遺伝子発現強度を示す。しかし、前記ベクターはウイルスの力価が、用いられるパッケージング菌株(packaging line)によって異なるという問題を有している。たとえば、NIH3T3−由来PG13菌株を使用する場合は、ウイルスの力価が約10倍程度減少する。HT1080細胞由来FLYA13菌株を使用する場合は、3倍程度減少したウイルス力価を示す。RNA分析結果は、このような低いウイルス力価がパッケージングシグナル配列(packaging signal sequence)を含むゲノムサイズの転写体(transcript)が高効率でスプライシングされることに基づくことを示している。
【0003】
本発明は、このようなレトロウイルスベクターのスプライシングアクセプターの周辺領域に突然変異を導入することにより、さらに改善されたレトロウイルスベクターに関する。このような突然変異の導入はレトロウイルスベクターが対照群ベクターのウイルス力価と同等な水準のウイルス力価を示し、かつ高水準で遺伝子を発現させる。したがって、本発明のレトロウイルスベクターは遺伝子治療に用いられる他のレトロウイルスベクターより遥かに効果的である。
【0004】
発明の要約
したがって、本発明の目的は、PCR生産による危険性がほとんどなく、外来遺伝子を効率的に発現できる高効率で安全な遺伝子治療用レトロウイルスベクターを提供することである。
【0005】
本発明の一実施態様によって、本発明では、
1)多重クローニング部位(multi−cloning site)の上流に異種遺伝子由来の非翻訳配列として伸長因子EF1αの非翻訳配列(non−coding sequence)部位;および
2)EF1αの非翻訳配列内のスプライシングアクセプターの下流に導入された突然変異を含む、
マウス白血病ウイルス(MLV)由来のレトロウイルスベクターが提供される。
【0006】
発明の詳細な記載
本発明は、いずれのウイルス−コード配列も含まないが、スプライシングアクセプターを提供するために多重クローニング部位の上流に伸長因子EF1αの非翻訳配列の一部を含み、前記EF1αの非翻訳配列内のスプライシングアクセプター(splicing acceptor)の下流に突然変異が導入されたことを特徴とするMLV由来のレトロウイルスベクターを提供する。
【0007】
本発明において、「非翻訳配列(non−coding sequence)」とは、イントロンおよび翻訳されないが転写され得るエクソン部位を含む遺伝子部位をいう。
【0008】
具体的に、本発明のレトロウイルスベクターにおいてEF1αの非翻訳配列は、ヒト細胞に由来し、イントロンおよびエクソン2の一部塩基配列、好ましくはエクソン2の翻訳開始コドン直前までの塩基配列であり、さらに好ましくはヒトEF1α遺伝子のイントロン3’末端からエクソン2の翻訳開始直前までの塩基配列に相当する配列番号1の塩基配列(EF1α遺伝子の転写開始地点を+1としたとき、+773〜+1006の配列に相当)であることが好ましい。
【0009】
また、本発明のレトロウイルスベクターは、遺伝子発現、スプライシングおよび翻訳効率間の最適の均衡を得るために異種遺伝子由来の非翻訳配列内に突然変異が導入されることを特徴とする。
【0010】
前記突然変異はスプライシングアクセプターの下流に、特にスプライシングアクセプター直後の配列に導入されることが好ましい。本発明の結果は、スプライシングアクセプター周辺の配列、特にスプライシングアクセプターに隣接したエクソン部位の配列がスプライシングの効率に影響を及ぼすことを示すもので、スプライシングの効率に重要な役割を果たすことを示す。たとえば、前記突然変異は配列番号1の塩基配列において205番目と206番目(各々+977および+978の位置に相当)のGT(guanine−thymine)塩基対がCC(cytosine−cytosine)塩基対で置換されたものが好ましい。
【0011】
さらに、本発明のレトロウイルスベクターは2種以上の外来遺伝子を効率的に発現させるために多重クローニング部位の下流に異種プロモーターまたはIRES(internal ribosomal entry site:内部リボソーム挿入部位)をさらに含み得る。
【0012】
また、本発明のレトロウイルスベクターのMLV由来の5’LTRにおいて、U3またはその一部は異種プロモーターで置換され得るが、前記異種プロモーターとしてはHCMV IE(human cytomegalovirus immediately−early)プロモーターであることが好ましい。
【0013】
その他にも、前記レトロウイルスベクターはさらにNEO(neomycin resistance:ネオマイシン耐性)またはMDR(multidrug resistance:多剤耐性)遺伝子のような選別標識遺伝子(selectable marker gene)を含み得る。選別標識遺伝子としてヒトMDR遺伝子を用いる場合、生産細胞株の製造が容易であり、CTL(cytotoxic T lymphocytes:細胞毒性Tリンパ球)反応のような副作用を防止できるという長所がある。
【0014】
本発明において「野生型(wile−type)」または「野生型ベクター(wile−type vector)」とは、突然変異が導入された本発明のレトロウイルスベクターと対比される対照群のことである。前記野生型ベクターは、スプライシング能力を提供することにより、遺伝子発現効率を増加させるために多重クローニング部位の上流に変形されていないEF1α非翻訳配列の一部を含む。本発明では、図1に示す配列を有する野生型MT4を対照群として用いた。
【0015】
本発明において提供されるレトロウイルスベクターの好ましい例の一つは、
1)MLVベクター由来の5’LTR、gag遺伝子の上流にスプライシング供与体を含む最少パッケージング配列(minimal packaging sequence)、ポリプリントラック(poly−purine track)および3’LTRをコードする塩基配列;
2)多重クローニング部位;
3)前記最少パッケージング配列と多重クローニング部位の間に位置したEF1αのイントロン3’末端からエクソン2の翻訳開始コドン直前までの塩基配列;および
4)2番目の目的遺伝子発現が要求される場合には、多重クローニング部位の下流にSV40最少プロモーターまたは内部リボソーム挿入部位(IRES)
を含んで構成されることを特徴とする。
【0016】
より好ましくは、本発明は、
1)MLVベクター由来の5’LTR、gag遺伝子の上流にスプライシング供与体を含む最少パッケージング配列、ポリプリントラックおよび3’LTRをコードする塩基配列;
2)多重クローニング部位;
3)前記最少パッケージング配列と多重クローニング部位の間に挿入されたEF1αのイントロン3’末端からエクソン2の翻訳開始コドン直前までの塩基配列の一部分;
4)多重クローニング部位の下流に位置する内部リボソーム挿入部位(IRES);および
5)スプライシングアクセプターの下流+977〜+978位置のGT塩基対を置換して存在するCC塩基対
であることを特徴とする、レトロウイルスベクターMT5を提供する。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
1 . ウイルスコード配列の全てが除去され、ヒトEF1α遺伝子の非翻訳配列を含むMLV−由来レトロウイルスベクターMIN−EIの製造
本発明に用いられるgag、polおよびenv遺伝子配列が全て除去されたMLV−由来のレトロウイルスベクターMINの製造方法、および前記MINベクターの多重クローニング部位の上流にヒトEF1α遺伝子の非翻訳配列を含むMIN−EIの製造方法は、本発明者らの韓国特許公開第2000−6334号公報に詳細に記載されている。
【0018】
前記MINベクターとMIN−EIベクターの構造上の特徴は各々次の通りである:
MINベクターは、1)MLVゲノムの5’LTRとスプライシングアクセプターを含むgagコード領域直前までの非翻訳配列;2)多重クローニング部位;3)IRES−neoカセットおよび4)MLVゲノムの3’非解読領域;ポリプリントラックおよび3’LTRをこの順番で含んでいる。
【0019】
一方、MIN−EIベクターは、前記MINベクターの多重クローニング部位の上流にヒトEF1α遺伝子のイントロンとエクソン2の翻訳開始コドン直前までの配列に相当する配列番号1の塩基配列を含んでいる。
【0020】
2 . 種々のパッケージング細胞におけるEF1α遺伝子の非翻訳配列を有するレトロウイルスベクターの効率
最適のレトロウイルスベクターを製造するためには、目的とする細胞内で治療遺伝子の効率的な発現のための外来遺伝子の転写とスプライシング間の適切な均衡が要求される。Phoenix、293T、FlyA13、およびPG13のようなパッケージング細胞株におけるレトロウイルスベクターMIN−EI遺伝子の発現強度(level of gene expression)はMINベクター(韓国特許公開公報第2000−6364号)の発現強度より3〜5倍高い。しかし、MIN−EIベクターはFlyA13またはPG13細胞株において低いウイルス力価を示すが、これはスプライシング効率は高く保持されるが、FlyA13またはPG13細胞株の全般的な転写活性が低下するためであると判断される。したがって、高い遺伝子発現強度と向上したウイルス力価を示すレトロウイルスベクターの開発が望まれていた。
【0021】
3 . 変異したEF1α遺伝子の非翻訳配列を含むレトロウイルスベクターの構築
前記の要求を満たすために、本発明者らはMIN−EIのEF1α遺伝子のイントロンおよびスプライシングアクセプターの周辺に突然変異を導入することにより、変異レトロウイルスベクターを構築した。
【0022】
本発明で構築された5つの突然変異体ベクターは
スプライシングアクセプターに突然変異が導入されず、EF1αのエクソン2に相当する部位が除去されたMT1;
スプライシングアクセプターの下流に突然変異が導入され、EF1αのエクソン2に相当する部位が除去されたMT2;
スプライシングアクセプターの上流に突然変異が導入され、EF1αのエクソン2に相当する部位が除去されたMT3;
スプライシングアクセプターに突然変異のない野生型のMT4;および
スプライシングアクセプターの下流に突然変異が導入されたMT5である。
【0023】
レポーター遺伝子としてルシフェラーゼ(luciferase)遺伝子を使用する場合、変異ベクターMT1、2および3は野生型MT4ベクターに比べて低いウイルス力価を示すが、一方、MT5ベクターは野生型MT4ベクターより2〜3倍高いウイルス力価を示す。ベクターMT5のスプライシング効率は野生型MT4ベクターよりやや、約70〜80%程度低いが、向上したウイルス力価のため発現された遺伝子の総量は増加した。総形質導入効率におけるこのような増加はレポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子の代りにヒトインターロイキン−1受容体拮抗剤(interleukin−1 receptor antagonist,IL−1ra)を含むベクターMT5からも観察された。
【0024】
したがって、本発明のベクターMT5は高いウイルス力価だけでなく、高い水準の遺伝子発現を提供する、新規で安全なベクターであることが判明した。前記ベクターMT5で形質転換された大腸菌菌株JM109を、MT5(JM)と命名し、韓国微生物培養センター(Korean Culture Center of Microorganisms,KCCM)に2002年7月28日付で寄託した(寄託番号:KCCM−10205)。
【0025】
4 . 変異したEF1α非翻訳配列とMDR選別標識遺伝子を含むベクター MTM 5の構築
選別標識遺伝子としてヒトMDR遺伝子を含むベクターを構築し、これをベクターMTM5と命名した。前記ベクターMTM5は向上したウイルス力価のため優れた形質導入効率を示す。
【0026】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。
但し、下記実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明はこれに限定されない。
【0027】
実施例1:種々のパッケージング細胞株におけるベクター MIN−EI の効率
種々のパッケージング細胞株においてEF1α遺伝子のイントロンと非翻訳塩基配列を含むMIN−EIベクターの効率を調査するために、遺伝子発現強度とウイルス力価を通常用いられているパッケージング細胞株であるPhoenix (ATCC SD3443, MD, USA)、FlyA13 (Cosset et al., J. Virol. 69: 7430−7436, 1995)、およびPG13 (ATCC CRL10686, MD, USA)細胞株を用いて調査した。
【0028】
MIN−CATとMFG−CAT (Byun et al., Gene Ther. 3: 780−788, 1996)を対照群として用いた。MIN−EI−CATとMIN−CATベクターはCAT (chloramphenicol acetyltransferase)遺伝子を含むプラスミドpCRII−CAT (韓国特許出願第1998−24478号)のBamHI切片を前記MIN−EIおよびMINベクターのBamHI部位に挿入して構築した。MFG−CATベクターはpCRII−CATのNcoI−BamHI切片をMFGベクター(Byun et al., Gene Ther. 3: 780−788, 1996)のNcoI−BamHI部位に挿入して構築した。
【0029】
Phoenix細胞とFlyA13細胞にベクターMIN−EI−CAT、MIN−CATまたはMFG−CATを各々形質移入(transfection)させ、48時間培養した後、細胞から抽出したタンパク質を回収して遺伝子発現強度の測定に用いた。無細胞ウイルス(cell−free virus)は細胞培養上澄液を0.45μmの濾紙で濾過して製造した。2セットのNIH3T3細胞を前記無細胞ウイルス上澄液で形質導入(transduction)し、48時間培養した後、1セットのNIH3T3細胞をCAT活性の測定に用いた。残りの1セットのNIH3T3細胞はG418耐性コロニーの数を数えることにより、ウイルス力価と形質導入効率を決定するのに用いた(表1および2参照)。
【0030】
PG13細胞の場合、一時的形質移入方法を用いて高いウイルス力価を有するウイルスを製造することが不可能なため、生産細胞株を製造した。すなわち、Phoenix細胞を用いて得られた無細胞ウイルス約0.1m.o.iをPG13細胞に感染させ、G418で2週間処理してG418耐性細胞株を選別した。これから製造された無細胞ウイルス上澄液で2セットのHT1080細胞を形質導入し、48時間培養した後、各々の細胞をCAT活性とウイルス力価の測定に用いた(表3参照)。
【0031】
CAT活性は次のような方法で測定した:まず、形質導入細胞を回収してPBS(phosphate−buffered saline)1mlで1回洗浄した後、0.25M Tris緩衝溶液(pH7.5)に懸濁させた。前記懸濁液をドライアイスで冷凍、37℃水浴で解凍の手順を3回繰り返して細胞を破壊した。次いで、細胞抽出物を60℃で7分間熱処理して脱アセチル酵素(deacetylase)を不活性化した後、12,000rpmで10分間遠心分離して上澄液のみを取った。抽出した溶液はブラッドフォード(Bradford)らの方法を用いてタンパク質濃度を定量した。以後、実験群別に同量のタンパク質を1μlの14Cで標識されたクロラムフェニコール(14C−chloroamphenicol;60 mCi/mmol, 0.1 mCi/ml)、2μlのアセチル・コエンザイムA(acetyl−coenzyme A,40 mM)、および適量の0.25M Tris緩衝溶液(pH7.5)と混合した後、37℃でインキュベートした。反応後酢酸エチルでクロラムフェニコールを抽出した後、減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチル15μlに懸濁させた後、薄膜クロマトグラフィー(TLC)板にかけ、TLC展開溶媒(95%クロロホルム、5%メタノール)で展開した。展開後TLC板を乾燥した後X線フィルムにさらすか、ホスホイメージ分析器(phosphoimage analyzer)にかけ、クロラムフェニコールのアセチル化度を測定した。CAT活性を全クロラムフェニコールに対するアセチル化されたクロラムフェニコールの放射活性を算出することにより測定した。
【0032】
【表1】
Phoenix細胞におけるレトロウイルスベクターの効率比較
*: MINベクターのCAT活性度(アセチル化クロラムフェニコールの放射活性/
クロラムフェニコールの放射活性)を基準とする。
【0033】
前記表1から分かるように、Phoenix細胞をパッケージング細胞株として用いた場合には、MIN−EIのCAT活性がMINまたはMFGに比べて3〜4倍高かった。このような結果は、MIN−EIの遺伝子発現効率が他のベクターより優れていることを示す。ウイルス力価はこれらのベクターのいずれにおいても大きな変化はなく、したがって、形質導入されたNIH3T3細胞から測定されたCAT活性は遺伝子発現効率をそのまま反映するとみられる。
【0034】
【表2】
FlyA13細胞におけるレトロウイルスベクターの効率比較
【0035】
【表3】
PG13細胞におけるレトロウイルスベクターの効率比較
【0036】
しかし、FlyA13(表2)またはPG13(表3)細胞をパッケージング細胞株として用いた場合は、MIN−EIのウイルス力価が非常に低く、MINまたはMFGの1/3〜1/10程度に大きく低下したことを観察した。
【0037】
実施例2: MIN−EI のウイルス生産性
パッケージング細胞株によってウイルス力価が多様に変化する理由を検討するためにノーザンブロット分析を行った。まず、MFGとMIN−EIで形質移入されたPhoenix細胞とMFGおよびMIN−EIを各々生産するPG13細胞株から下記のようなグアニジンチオシアネート−セシウム(Guanidine thiocyanate−cesium)方法を用いて細胞質RNAを抽出した:100mm皿で培養した細胞をPBSで2回洗浄した後、グアニジン緩衝液3mlを添加した。添加した溶液が透明になってから混合液を注射器を用いて均質化し、均質化した溶液を5.7M CsCl2溶液2mlを含むポリアロマチューブ(polyaloma tube,Beckman)に入れた後、20℃で29,000rpmで16時間超遠心分離してRNAペレットを得た。前記RNAペレットをDEPCを含む蒸留水150μlに溶解し、エタノール沈殿によってRNA溶液50μlを得た。
【0038】
前記方法で得られたRNA20μgにホルムアミド20μl、37%ホルムアルデヒド10μlおよび10xMOPS 10μlを添加した。この混合溶液を70℃で10分間加熱し、ホルムアルデヒド−アガロースゲル上で50mAの条件で電気泳動した。次いで、ゲルを50mM NaOH、10mM NaCl溶液に10分間、次いで20倍のSSC溶液(3M NaCl, 0.3 M sodium citrate)に45分間浸漬した。このように処理したRNAを分離し、ニトロセルロース膜に毛細管作用を用いて移動させた後、80℃で1時間固定した。前記のニトロセルロース膜をハイブリダイゼーション溶液(ExpressHyb hybridization solution, Clontech, USA)と65℃で30分間プレハイブリダイゼーションさせた後、同位元素で標識されたCAT DAN切片を用いてハイブリダイゼーション反応を行った。その後、ニトロセルロース膜を緩衝溶液で2回洗浄した後、X線フィルムにさらしてRNAサイズの差によってゲノムRNAとサブゲノムRNAが区分されて現れたバンドをホスホイメージ分析器を用いて定量化した。
【0039】
【表4】
パッケージング細胞株によるRNA組成比較
*: ( )中は全RNA量に対して各々のゲノムRNAとサブゲノムRNAが占める比率を示す。
【0040】
前記表4から分かるように、MIN−EIのスプライシング効率は細胞株によって大差がない。Phoenix細胞株の場合、MIN−EIはMFGに比べて相当多量のサブゲノムRNAを合成し、一般的に高い転写強度を示した。このような結果は、MIN−EIが高い遺伝子発現強度を示す理由を説明してくれる。しかし、PG13細胞の場合には、MIN−EIの転写活性がかなり減少したが、一方、スプライシング効率はPhoenix細胞とほとんど同程度であった。したがって、ゲノムRNAの絶対量の減少がウイルス力価の減少をもたらしたことが分かる。
【0041】
すなわち、Phoenix細胞株の場合、EF1α遺伝子のイントロンと非翻訳塩基配列の作用によって効率的なスプライシングが起こり、ゲノムRNAよりサブゲノムRNAが多く合成されて遺伝子発現強度が増加する。さらに、高い転写活性によってゲノムRNAの合成が容易になるので、ウイルス力価もまた高く維持される。しかし、FlyA13およびPG13細胞株の場合には、スプライシングが効率的に進行し、相対的に多量のサブゲノムRNAを生産するが、ゲノムRNAの総量は著しく減少し、その結果低いウイルス力価を示す。
【0042】
実施例3:EF 1 α遺伝子のイントロンと非翻訳塩基配列の両方に突然変異が導入されたレトロウイルスベクターの構築
ウイルス力価が減少することなく高い水準の遺伝子発現を示す、改良されたレトロウイルスベクターを開発するために、突然変異を導入してスプライシング効率とウイルス力価の間に微妙な均衡を保持したレトロウイルスベクターを製造した。MIN−EIのEF1α遺伝子のイントロンとスプライシングアクセプターの周辺に突然変異を導入することにより次の5つの突然変異体を構築した(図1)。
【0043】
スプライシングアクセプターに突然変異が導入されず、EF1αのエクソン2に相当する部位が除去されたMT1;
スプライシングアクセプターの下流に突然変異が導入され、EF1αのエクソン2に相当する部位が除去されたMT2;
スプライシングアクセプターの上流に突然変異が導入され、EF1αのエクソン2に相当する部位が除去されたMT3;
スプライシングアクセプターに突然変異のない野生型のMT4;および
スプライシングアクセプターの下流に突然変異が導入されたMT5。
【0044】
( 3−1 ) MT1の構築
MT1を製造するために、pMIN−EI (韓国特許出願第1999−23398号)をPCRの鋳型として用い、配列番号2(EI5’)と配列番号3(EI3’−1s)の合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCRを行った。
【0045】
前記PCRは200ngの鋳型プラスミドDNAと1μlずつのプライマー(10 pmol/μl)のPCR溶液100μlで、94℃で1分(変性)、50℃で1分(アニーリング)、72℃で1分30秒間(重合)反応させるPCR増幅反応サイクルを30回繰り返した。
【0046】
EF1αイントロンの増幅された切片をpGEM T easy(Promega, WI, USA)ベクターにクローニングした後、MluI−BamHI切片を切断し、pMINのMluI−BamHI部位に挿入してMT1ベクターを製造した(図2)。
【0047】
( 3−2 ) MT2の構築
MT2は、pMIN−EIプラスミドをPCR鋳型として用い、配列番号2(EI5’)と配列番号4(EI3’−2s)の合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて前記実施例(3−1)と同様な方法でPCRを行って構築した。
【0048】
スプライシングアクセプターの下流に突然変異が導入されたEF1αイントロンのPCR増幅された切片をpGEM T easy(Promega, WI, USA)ベクターにクローニングした後、MluI−BamHI切片を切断し、これをpMINのMluI−BamHI部位に挿入してMT2ベクターを製造した(図3)。
【0049】
( 3−3 ) MT3の構築
MT3は、pMIN−EIプラスミドをPCR鋳型として用い、、配列番号5(EI5’m)と配列番号3(EI3’−1s)の合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて前記実施例(3−1)と同様な方法でPCRを行って構築した。
【0050】
スプライシングアクセプターの下流に突然変異が導入されたEF1αイントロンのPCR増幅された切片をpGEM T easy(Promega, WI, USA)ベクターにクローニングした後、MluI−BamHI切片を切断し、これをpMINのMluI−BamHI部位に挿入してMT3ベクターを製造した(図4)。
【0051】
( 3−4 ) MT4の製造
野生型ベクターMT4は、pMIN−EIプラスミドをPCR鋳型として用い、配列番号2(EI5’)と配列番号6(EI3’−11)の合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて前記実施例(3−1)と同様な方法でPCRを行って構築した。
【0052】
EF1αイントロンのPCR増幅切片をpGEM T easy(Promega, WI, USA)ベクターにクローニングした後、MluI−HincII切片を切断し、これをpMIN−EIのMluI−PmeI部位に挿入してMT4ベクターを製造した(図5)。
【0053】
( 3−5 ) MT5の製造
MT5は、pMIN−EIプラスミドをPCR鋳型として用い、配列番号2(EI5’)と配列番号7(EI3’−21)の合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて前記実施例(3−1)と同様な方法でPCRを行って構築した。
【0054】
EF1αイントロンのPCR増幅切片をpGEM T easy(Promega, WI, USA)ベクターにクローニングした後、MluI−SacII切片を切断し、これをpMIN−EIのMluI−PmeI部位に挿入してMT5ベクターを製造した(図6)。
【0055】
実施例4:ルシフェラーゼ遺伝子を含むベクターの効率
( 4−1 ) ルシフェラーゼ (Luc) 遺伝子のクローニング
Luc遺伝子は、pGL2 controlベクター(Promega, WI, USA)を鋳型として用い、配列番号8(Luc 5’)と配列番号9(Luc 3’)の二つの合成ヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRによって増幅した。前記増幅された切片をpGEM T easy(Promega, WI, USA)ベクターに挿入してpGEM T easy−Lucベクターを製造した(図7)。pGEM T easyベクターをBamHI/BglIIで処理して得られたルシフェラーゼ遺伝子を含む切片を各々実施例3で製造されたベクターのBamHI部位に挿入して図7に示すルシフェラーゼ発現ベクターを製造した。
【0056】
( 4−2 ) ルシフェラーゼの活性測定
ルシフェラーゼ遺伝子を含むMT1、2、3、4および5ベクターを各々パッケージング細胞株であるPhoenixに形質移入させ、48時間培養した。前記細胞培養液から得られた無細胞ウイルス上澄液をNIH3T3細胞の形質導入に用いた。形質移入された細胞と形質導入された細胞の各々のルシフェラーゼ活性を測定した。また、G418耐性を有する安定な細胞株のルシフェラーゼ活性とウイルス力価を測定した(表5)。表5に示すように、各レトロウイルスベクターのルシフェラーゼ活性は野生型ベクターであるMT4ベクターの活性に基づいて相対的な数値として示した。
【0057】
ルシフェラーゼ活性は次のような方法で測定した:収穫した細胞をPBS 1mlで洗浄した。PBSを完全に除去した後、細胞を適量の1xレポーター加水分解緩衝液(reporter lysis buffer;Promega, WL, USA)に懸濁させた後、室温で5分間反応させた。反応混合物を12,000rpmで1分間遠心分離し、上澄液のみを分離した。抽出物中のタンパク質濃度はブラッドフォード(Bradford)の方法を用いて定量した。その後、実験群別に同量のタンパク質をルシフェラーゼ分析試薬(Promega, WI, USA)100μlとよく混合した後、反応溶液を96ウェルプレートに入れ、照度計(luminometer)を用いてLuc活性を測定した(表5)。
【0058】
【表5】
突然変異ベクターの効率比較
【0059】
前記表5から分かるように、MT1、2および3の遺伝子発現強度とウイルス力価はすべて野生型のEF1αイントロンとスプライシングアクセプター塩基配列を含む対照群MT4より低かった。Phoenix細胞株においてMT5の遺伝子発現強度はMT4の50〜70%水準であったが、ウイルス力価は約2倍増加し、形質導入されたNIH3T3細胞におけるルシフェラーゼ活性も増加した。すなわち、MT5のスプライシング効率がMT4の場合よりやや減少するにつれてサブゲノムRNAの量が減少した。したがって、MT5の遺伝子発現はやや低くなるが、相対的にウイルス力価はかえって高くなり、その全体的な形質導入効率は増加する。このような結果はスプライシングアクセプターの下流に導入された突然変異がスプライシング効率と遺伝子発現強度間の均衡を最適化する役割を果たすことを示す。
【0060】
実施例5: IL−1ra 遺伝子を含むベクターの効率およびRNA組成分析
( 5−1 )IL−1ra 遺伝子を用いたベクターの効率比較
前記実施例4で観察したMT5ベクターの改善された活性が他の外来遺伝子にも適用できる一般的な現象であるかを調査するために、Luc遺伝子の代りにヒトIL−1ra遺伝子を用いて実施例4と同様の実験を行った(表6)。
【0061】
IL−1ra遺伝子は正常人の末梢血液リンパ球からクローニングした。まず、正常人の血液からFicoll−hypaqueを用いて末梢血液リンパ球を得た後、RNAを抽出し、抽出したRNAから逆転写酵素PCRによってcDNAを得た。前記cDNAを鋳型として用い、配列番号10(IRAP 5’)と配列番号11(IRAP 3’)と記載される二つの合成ヌクレオチドをプライマーとして用いてIL−1ra遺伝子を含む切片をPCRで増幅した。増幅したPCR産物をpGEM T easy(Promega, WI, USA)ベクターに挿入してpGEM T easy−IL−1raベクターを製造した。BamHI/BglIIで処理して得られたIL−1ra遺伝子を含む切片を各々実施例3で製造されたMT4とMT5ベクターのBamHI位置に挿入してIL−1ra発現ベクターを製造した。前記IL−1ra発現ベクターをMFG−IL−1raベクター(Yu et al., Gene Ther. 7:797−804, 2000)と比べた。
【0062】
前記IL−1ra遺伝子を含むMT4、MT5およびMFGベクターを各々パッケージング細胞株であるPhoenix細胞に形質移入させ、48時間培養した。前記細胞培養液から得られた無細胞ウイルス上澄液をNIH3T3細胞に形質導入した。形質移入された細胞と形質導入された細胞各々の培養上澄液中に分泌されたIL−1raの量をヒトIL−1ra ELISAキット(R&D system, USA)を用いて測定し、ウイルス力価はG418耐性細胞の数を数えて決定した(表6)。
【0063】
【表6】
IL−1ra遺伝子を用いたベクターの効率比較
【0064】
表6の結果は、MT5ベクターの形質導入効率とウイルス生産性もまたIL−1ra遺伝子をレポーター遺伝子として用いた場合にも増加することを証明している。
【0065】
( 5−2 ) 細胞質RNA
前記実施例(5−1)で得られた結果がスプライシング効率の変化によるものであるか否かを調査するために、ノーザンブロット分析で細胞質RNAを分析した。すなわち、形質移入されたPhoenix細胞から細胞質RNAを抽出した後、ゲノムRNAとサブゲノムRNAの量を分析するためにIL−1ra遺伝子をプローブとして用いてハイブリダイゼーション反応を行った。ハイブリダイゼーションしたRNAバンドの強さをホスホイメージ分析器を用いて定量した(表7)。
【0066】
【表7】
Phoenix細胞におけるRNA組成比較
【0067】
その結果、MT4のサブゲノムRNAは全RNAの95%を占め、MT5サブゲノムRNAの相対的な比率はMT4に比べて約94%程度であった。一方、MT5から観察されたゲノムRNAの量はサブゲノムRNAの量より遥かに小さいが、MT4から観察されたゲノムRNAの量より2倍程度高かった。このような結果はMT5がMT4に比べて高いウイルス力価を示す理由を説明してくれる。
【0068】
( 5−3 )PG13 細胞株におけるベクターの効率
実際の臨床実験に用いられる生産細胞株であるPG13細胞株において本発明のレトロウイルス効率を測定した。MFG(対照群)ウイルスだけでなく、Phoenix細胞から得られた無細胞ウイルス培養液を各々PG13細胞に形質移入した後G418で2週間選別して各々のウイルスを生産する生産細胞株を得た。このPG13生産細胞株から得られたウイルス上澄液をHT1080細胞に形質導入し、形質導入された細胞のIL−1ra活性とウイルス力価を測定した(表8)。
【0069】
【表8】
PG13細胞におけるベクターの効率比較
【0070】
前記表8から分かるように、PG13細胞株を用いる場合MT5のウイルス力価がMT4に比べて3〜4倍程高かった。
【0071】
実施例6:MDRを含むベクターの構築
MT5ベクターと同じく変異したEF1αイントロンと非翻訳塩基配列構造を有するが、選別マーカーとしてヒトMDR遺伝子を有するベクターを構築し、これをMTM5ベクターと命名した。
【0072】
( 6−1 ) IRES遺伝子のクローニング
IRES(internal ribosomal entry site)の遺伝子切片を製造するために、鋳型としてIRESを含むプラスミドpCBIN(韓国特許出願第1997−48095号)を用い、5’プライマーとしてBamHI、NotIの制限酵素認識配列を有する配列番号12のオリゴヌクレオチドを、3’プライマーとしてStuI、ClaI、BglIIの制限酵素認識配列を有する配列番号13のオリゴヌクレオチドを用いてPCRを行った。
【0073】
前記で得られたPCR産物をpCRIIベクター(Invitrogen, CA, USA)にクローニングした後、BamHI/BglII切片を製造し、これをMSN(韓国特許出願第1999−23398号)のBamHI位置に挿入してMSN−IRESプラスミドを製造した(図8)。
【0074】
( 6−2 ) MDR遺伝子のクローニングとMTMプラスミドの製造
MDRの遺伝子断片を製造するために、鋳型としてスギモト博士(Cancer Chemotherapy center, Japanese Foundation for Cancer Research, Tokyo 170, Japan)から分譲されたMDRを含むプラスミドを用い、5’プライマーとしてBamHI、ClaIの制限酵素認識配列を有する配列番号14のオリゴヌクレオチドを、3’プライマーとしてSalIおよびBamHIの制限酵素認識配列を有する配列番号15のオリゴヌクレオチドを用いてPCRを行った。
【0075】
前記PCR産物をpCRII(Invitrogen, CA, USA)にクローニングしてpCR−MDRを製造し、塩基配列分析を通じてMDR遺伝子が適切に挿入されたことを確認した。pCR−MDRベクターからBamHI/BgIII切片を切断し、MSN−IRESプラスミドからClaI/XhoI切片を除去した後MSN−IRESプラスミドに挿入してMTMプラスミドを製造した(図9)。
【0076】
( 6−3 )MTM4 および MTM 5ベクターの構築
MT4およびMT5ベクターから変異非翻訳配列を含むMluI/BamHI DNA切片を得、各々MTMベクターのMluI/BamHI部位に挿入してMTM4およびMTM5プラスミドを製造した(図10)。したがって、MTM4およびMTM5ベクターからMDR遺伝子の発現はスプライシングされたmRNAから誘導される。
【0077】
実施例7:MTMベクターの効率
前記実施例6で製作されたMTM、MTM4およびMTM5ベクターの効率を検査するために、これらのベクターのBamHI位置にIL−1ra遺伝子を各々挿入してMTM−IL−1ra、MTM−IL−1ra、およびMTM−IL−1raベクターを各々製造した。これらのベクターを各々293T細胞にgag/pol、env発現ベクターとともに形質移入させた後48時間培養した。前記細胞培養液から得られた無細胞ウイルス上澄液をNIH3T3細胞に形質導入させ、48時間培養した。その後、形質移入された細胞培養液と形質導入された細胞培養液におけるIL−1ra活性を測定し、ビンクリスチン(vincristine)に対して抵抗性を示す細胞の数を数えてウイルス力価を測定した。
【0078】
【表9】
【0079】
その結果、前記表9から分かるように、MTM5の遺伝子発現強度は野生型であるMTM4の30%程度であったが、MTMの場合よりは3倍程度高かった。また、MTM5のウイルス力価はMTMのウイルス力価より非常に高いので、MTM4、MTM5は全体的な形質導入効率において最も優れている。
【0080】
さらに、PG13細胞におけるレトロウイルスベクターの性能を比較するために、前記293Tから得られた無細胞ウイルス培養液を各々PG13細胞に形質導入した後25ng/mlのビンクリスチンで2週間選別して各々のウイルスを生産する生産細胞株を得た。このPG13生産細胞株から得られたウイルス上澄液をHT1080細胞に形質導入し、IL−1ra活性とウイルス力価を測定した。
【0081】
【表10】
【0082】
前記表10の結果から分かるように、MTM5のウイルス力価はMTMおよびMTM4のウイルス力価に比べて大きく増加し、これによりMTM5の全体的な形質導入効率も優れていることが確認できた。
【0083】
産業上利用可能性
以上、述べたように、本発明は、遺伝子治療に有用である高効率で安全なレトロウイルスベクターを提供する。本発明のレトロウイルスベクターは次のような特徴を有する:
【0084】
1.すべてのレトロウイルス由来のコード配列(MLVのgag、polおよびenv遺伝子)が完全に除去され、相同組換えによって自立複製可能なレトロウイルス(replication−competent retrovirus:RCR)の産生可能性が非常に低い。
【0085】
2.異種イントロンを挿入して多重クローニング部位の上流に挿入されたスプライシングアクセプターおよび/または非翻訳配列の存在により、レトロウイルスベクター中の外来遺伝子が高効率で発現される。
【0086】
3.異種スプライシングアクセプターの周辺に適当な突然変異を導入することによりスプライシング効率およびウイルス力価の間の適切な均衡が保持できる。
【0087】
4.5’LTRのU3部位が特にヒト細胞において強力な転写活性を誘導する異種プロモーターで置換されたので、本発明のレトロウイルスベクターで形質移入されたヒト細胞由来のパッケージング細胞株は著しく増大したウイルス力価を示す。
【0088】
IRESまたは異種プロモーターが二つ以上の外来遺伝子を高効率で発現させるために本発明のレトロウイルスベクターに導入され得る。このような場合、最少プロモーターが異種内部プロモーターによる干渉を最小化し、より大きなサイズの外来遺伝子をクローニングするために挿入され得る。
【0089】
特許手続上の微生物寄託の国際的承認に関するブダペスト条約
国際様式
下記国際寄託機関で定めた規則7.1に基づいて発行された原寄託に関する受託証
受領人:キム ソンヨン
140−724大韓民国ソウル龍山区二村洞ハンガンAtp.18−302
【図面の簡単な説明】
【図1】pMIN−EIベクターに挿入されたヒトEF1α遺伝子のイントロンとエクソン2の一部配列を含む非翻訳配列内に突然変異が導入されたMT1、2、3、4および5ベクターの相当部位塩基配列である。
【図2】MT1を製造する過程を示す模式図である。
【図3】MT2を製造する過程を示す模式図である。
【図4】MT3を製造する過程を示す模式図である。
【図5】野生型MT4を製造する過程を示す模式図である。
【図6】MT5を製造する過程を示す模式図である。
【図7】ルシフェラーゼ(Luc)遺伝子を含むベクターを製造する過程を示す模式図である。
【図8】IRES遺伝子をクローニングする過程を示す模式図である。
【図9】選別標識遺伝子としてMDR遺伝子を有するMTMベクターを製造する過程を示す模式図である。
【図10】選別標識遺伝子としてMDR遺伝子を有し、変異EF1α非翻訳配列を有するMTM4およびMTM5ベクターを製造する過程を示す模式図である。
Claims (11)
- マウス白血病ウイルス(MLV)由来のレトロウイルスベクターであって、
1)多重クローニング部位の上流に異種遺伝子由来の非翻訳配列として伸長因子EF1αの非翻訳配列の一部;および
2)前記EF1αの非翻訳配列内のスプライシングアクセプターの下流に導入された突然変異
を含み、ウイルスコード配列を欠いていることを特徴とするレトロウイルスベクター。 - EF1αの非翻訳配列が、ヒトEF1αのイントロンおよびエクソン2の翻訳開始コドン直前までの塩基配列である、請求項1記載のレトロウイルスベクター。
- EF1αの非翻訳配列が、配列番号1で表される塩基配列を有する、請求項2記載のレトロウイルスベクター。
- 前記突然変異が、スプライシングアクセプターの下流に配列番号1の塩基配列において205番目と206番目のGT(guanine−thymine)塩基対の位置に導入されている、請求項1記載のレトロウイルスベクター。
- 前記GT塩基対が、CC(cytosine−cytosine)塩基対で置換されている、請求項4記載のレトロウイルスベクター。
- 1)5’LTR、gag遺伝子の上流にスプライシング供与体を含む最少パッケージング配列、ポリプリントラックおよび3’LTRをコードするMLV由来の塩基配列;
2)多重クローニング部位;
3)前記最少パッケージング配列と多重クローニング部位の間に挿入されたEF1αの一部であって、イントロン3’末端からエクソン2の翻訳開始コドン直前までの塩基配列の部分;および
4)多重クローニング部位の下流にSV40最少プロモーターまたは内部リボソーム挿入部位
を含む、請求項1記載のレトロウイルスベクター。 - MLVベクター由来の5’LTRにおけるU3またはその一部が、異種プロモーターとしてのHCMV IEプロモーターで置換されている、請求項1〜6のいずれか1項記載のレトロウイルスベクター。
- 選別標識遺伝子として、NEOまたはMDR遺伝子をさらに含む、請求項6記載のレトロウイルスベクター。
- ベクターMT5であって、
1)5’LTR、gag遺伝子の上流にスプライシング供与体を含む最少パッケージング配列、ポリプリントラックおよび3’LTRをコードするMLV由来の塩基配列;
2)多重クローニング部位;
3)前記最少パッケージング配列と多重クローニング部位の間に挿入されたEF1αの一部であって、イントロン3’末端からエクソン2の翻訳開始コドン直前までの塩基配列の部分;
4)多重クローニング部位の下流に位置する内部リボソーム挿入部位(IRES);および
5)スプライシングアクセプターの下流+977〜+978位置のGT塩基対を置換したCC塩基対
を含む、請求項1記載のレトロウイルスベクター。 - 請求項9に記載のレトロウイルスベクターMT5で形質転換された大腸菌菌株MT5(JM)(寄託番号:KCCM−10205)。
- ベクターMTM5であって、
1)5’LTR、gag遺伝子の上流にスプライシング供与体を含む最少パッケージング配列、ポリプリントラックおよび3’LTRをコードするMLV由来の塩基配列;
2)多重クローニング部位;
3)前記最少パッケージング配列と多重クローニング部位の間に挿入されたEF1αの一部であって、イントロン3’末端からエクソン2の翻訳開始コドン直前までの塩基配列の一部分;
4)多重クローニング部位の下流に位置する内部リボソーム挿入部位(IRES);
5)スプライシングアクセプターの下流+977〜+978位置のGT塩基対を置換したCC塩基対;および
6)選別標識遺伝子としてMDR遺伝子
を含む、請求項8記載のレトロウイルスベクター。
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