JP5969468B2 - siRNA発現レトロウイルスベクター - Google Patents

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Description

本発明は、哺乳動物細胞内でRNA干渉を誘導するsiRNAを生成し、かつ所望の遺伝子を発現するレトロウイルスベクター、及び当該ベクターを用いた遺伝子導入細胞の生産方法、遺伝子導入細胞に関する。
RNA干渉(RNA interference、RNAi)は、標的遺伝子のmRNAと相同な配列からなるセンスRNAとこれと相補的な配列からなるアンチセンスRNAとからなる二本鎖RNA(以下、「dsRNA」とする)を細胞等に導入することにより、標的遺伝子のmRNAの破壊を誘導し、標的遺伝子の発現を抑制し得る現象である。RNA干渉は、簡易な遺伝子機能の阻害方法として、又は遺伝子治療への応用可能な方法として注目を集めている。RNA干渉は、当初、線虫において発見された現象であるが(非特許文献1参照)、現在では、植物、原生動物、昆虫、哺乳動物などの種々の生物において観察されている。RNA干渉による遺伝子発現の抑制は遺伝子ノックダウンと呼ばれている。
その後の研究により、ダイサーとして知られるRNaseIIIによりdsRNAが切断されて20塩基前後のsiRNA(short interfering RNA)が生成すること、siRNAは標的とするRNAの切断に関与することが示された。またsiRNAが二本鎖を形成した状態でsiRNAの3’末端が2又は3塩基突出することが、効率的な標的RNAの切断にとって重要であることが明らかになった(非特許文献2参照)。これらのsiRNAは、RISC(RNA induced silencing complex)と呼ばれるタンパク質複合体と結合し、siRNAの結合したRISCは配列特異的に標的遺伝子のmRNAを切断する。siRNAはこのようなプロセスで標的遺伝子の発現を抑制すると考えられている。
また、ステム−ループ構造を形成する一本鎖のショートヘアピン(short hairpin:以下、「sh」とする)RNAからsiRNAが生成され、RNA干渉の誘導において有効であることが報告された(非特許文献3)。この結果から、現在、shRNAを発現するベクターはRNA干渉の解析及びその利用のための重要なツールとなっている。
ネイチャー(Nature)、第391巻、第806−811頁(1998) ジーンズ デベロップメント(Genes Dev.)、第15巻、第188−200頁(2001) ネイチャー バイオテクノロジー(Nat.Biotechnol.)、第23巻、第227−231頁(2005)
本発明の目的は、細胞に外来性の遺伝子を導入して発現させ、更に細胞内でRNA干渉を誘導するRNAを転写して特定の内在性遺伝子の発現を抑制するためのレトロウイルスベクターを提供することにある。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、導入された遺伝子の発現とRNA干渉による内在性遺伝子の発現抑制を両立できるレトロウイルスベクターを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明を概説すれば、
[1] 5’末端から順に、
(a)レトロウイルス由来の5’LTR(Long Terminal Repeat)配列、
(b)スプライスドナー(SD)配列、
(c)レトロウイルス由来のパッケージングシグナル配列(ψ)、
(d)少なくとも1つのステム−ループ構造を形成し、哺乳動物細胞内でRNA干渉を誘導するRNAが転写されるsiRNA生成配列、
(e)スプライスアクセプター(SA)配列、
(f)所望の遺伝子の配列、
(g)レトロウイルス由来の3’LTR配列、
の各配列の核酸を含むレトロウイルスベクター、
[2] 所望の遺伝子がT細胞受容体(TCR)をコードする遺伝子である[1]記載のレトロウイルスベクター、
[3] 所望の遺伝子がポリシストロニックに連結したTCRα鎖及びTCRβ鎖をコードする遺伝子である[2]記載のレトロウイルスベクター、
[4] siRNA生成配列が野生型TCRの定常領域をコードするmRNAに作用して発現を抑制するsiRNAを生成する配列であり、所望の遺伝子が定常領域の塩基配列に変異を導入したTCRをコードする遺伝子であり、前記変異を導入したTCRをコードする遺伝子は前記siRNAにより発現の抑制を受けない、[2]記載のレトロウイルスベクター、
[5] レトロウイルスがオンコレトロウイルス又はレンチウイルスである[1]記載のレトロウイルスベクター、
[6] SA配列がLTRと異種のウイルス由来又は哺乳動物由来の配列である[1]記載のレトロウイルスベクター、
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載のレトロウイルスベクターを細胞に導入する工程を含む遺伝子導入細胞の製造方法、
[8] 細胞がT細胞又はT細胞を含有する細胞集団である[7]記載の遺伝子導入細胞の製造方法、
[9] 請求項[1]〜[6]のいずれかに記載のレトロウイルスベクターが導入された遺伝子導入細胞、
[10] 細胞がT細胞又はT細胞を含有する細胞集団である[9]記載の遺伝子導入細胞、に関する。
本発明により、効率よく所望の遺伝子が発現し、かつ効率よく特定の遺伝子の発現を抑制する能力を有するレトロウイルスベクター、当該ベクターを使用する遺伝子導入細胞の製造方法、当該ベクターが導入された細胞が提供される。これらのレトロウイルスベクター、遺伝子導入細胞の製造方法及び遺伝子導入細胞は、タンパク質の製造、細胞医療による疾患の治療及びそのための研究、試験に極めて有用である。
実施例のレトロウイルスベクターの作製方法を示す図である。 実施例のレトロウイルスベクターの作製方法を示す図である。 TCR遺伝子の発現量を示す図である。 MAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示す図である。 MAGE−A4テトラマー平均蛍光強度を示す図である。 ウイルスのコピー数に対するテトラマー陽性細胞率を示す図である。 ウイルスのコピー数に対するテトラマー平均蛍光強度を示す図である。 実施例で作製したレトロウイルスベクターの構造を示す図である。 ウイルスのコピー数に対するテトラマー陽性細胞率を示す図である。 ウイルスのコピー数に対するテトラマー平均蛍光強度を示す図である。 実施例のレトロウイルスベクターの作製方法を示す図である。 実施例のレトロウイルスベクターの作製方法を示す図である。 実施例で作製したレトロウイルスベクターの構造を示す図である。 ウイルスのコピー数に対するテトラマー陽性細胞率またはテトラマー平均蛍光強度を示す図である。 ウイルスのコピー数に対するテトラマー陽性細胞率またはテトラマー平均蛍光強度を示す図である。 ウイルスのコピー数に対するテトラマー陽性細胞率またはテトラマー平均蛍光強度を示す図である。 ウイルスのコピー数に対するテトラマー陽性細胞率またはテトラマー平均蛍光強度を示す図である。
本明細書において「LTR(Long Terminal Repeat)」とは、レトロウイルス、レトロトランスポゾンなどのプロウイルスDNAの両端に繰り返されている100〜1000塩基対からなる配列をいう。LTRは、ウイルス遺伝子の転写、ウイルスゲノムからの逆転写、逆転写を経て合成された二本鎖DNAの宿主DNAへの組み込みに関わるU3、R及びU5の各領域から構成される。プロウイルス5’末端及び3’末端にあるIR配列(inverted repeat region=逆方向反復)は4〜20塩基対の長さである。U3には転写のエンハンサー配列及びプロモーター配列が含まれる。
本明細書において「パッケージングシグナル配列」は、「プサイ(psi)配列」又は「ψ配列」とも表記され、ウイルス粒子の形成においてレトロウイルスRNA鎖のキャプシド形成及びウイルス粒子へのパッケージングに必要な、非コード性のシス作用性の配列を意味する。例えば、主要なスプライスドナー(SD)部位の3’側からgag開始コドンまでの領域、又はSD部位の3’側からgagの一部を含む領域である。
本明細書において「スプライスアクセプター(SA)配列」は、RNA中に存在するイントロンを除去し、その前後のエキソンを再結合するRNAプロセシング反応において、イントロンとエキソンの境界部位であるスプライス部位のうち、イントロンの3’末端側に存在するスプライス部位を意味する。例えば、核に存在するRNA前駆体のイントロンの3’末端にはAGのコンセンサス配列が存在し、AG配列の3’末端側がSA配列である。反対に、「スプライスドナー(SD)配列」は、イントロンの5’末端に存在するスプライス部位を意味する。例えば、核に存在するRNA前駆体のイントロンの5’末端にGUのコンセンサス配列が存在し、GU配列の5’末端側がSD配列である。真核細胞のmRNA前駆体に含まれるイントロンのSA配列及びSD配列のコンセンサス配列の特徴は、GU−AG則と呼ばれている。コンセンサス配列に変異を導入したSA配列又はSD配列も、RNAプロセシング反応において機能すれば本明細書のSA配列又はSD配列に含まれる。
本明細書において「所望の遺伝子(gene of interest)」とは、細胞(例えば、細胞の核ゲノムや細胞質)中に一時的もしくは永続的のいずれかで人工的に(人為的な操作により)挿入されることが望まれる外来性の遺伝子を意味する。このような遺伝子には、導入する細胞に対して完全に異種由来又は部分的に異種由来である遺伝子が含まれ、また、任意の変異を有する遺伝子も含まれる。また、その細胞が天然に有している内在性遺伝子と同一の遺伝子でありうる。ここで「天然に」とは、人為的な操作が加えられていない自然の状態であることを意味する。
本明細書において「野生型」とは、天然に存在する供給源から単離されたその遺伝子又は遺伝子産物のうち、集団において最も高頻度で観察されるものを意味する。これは、天然に存在するか、又は組換体として産生させ得る。一方、「変異型」とは、野生型遺伝子又は遺伝子産物と比較した場合に、配列及び/又は機能的特性が改変された遺伝子又は遺伝子産物を指す。変異型遺伝子は、自然に変異が生じることにより、又は人為的に遺伝子を修飾して配列を変異させることにより産生される。
本明細書において「T細胞」とは、Tリンパ球とも呼ばれ、免疫応答に関与するリンパ球のうち胸腺に由来する細胞を意味する。T細胞には、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、制御性T細胞、CTL、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、α鎖とβ鎖のTCRを発現するαβT細胞、γ鎖とδ鎖のTCRを発現するγδT細胞が含まれる。「T細胞を含有する細胞集団」としては、血液(末梢血、臍帯血など)、骨髄液の他、これらより採取、単離、精製、誘導された末梢血単核細胞(PBMC)、血球系細胞、造血幹細胞、臍帯血単核球などを含む細胞集団が例示される。また、T細胞を含有する血球系細胞由来の種々の細胞集団を本発明に使用できる。これらの細胞は抗CD3抗体やIL−2などのサイトカインにより生体内(イン・ビボ)や生体外(エクス・ビボ)で活性化されていても良い。これらの細胞は生体から採取されたもの、あるいは生体外での培養を経て得られたもの、例えば本発明の方法により得られたT細胞集団をそのままもしくは凍結保存したもののいずれも使用することができる。
本明細書において「発現の抑制」とは、ポリペプチドをコードする遺伝子からの転写及び/又は翻訳を妨げることにより、最終的なポリペプチドの生成を抑制すること、すなわち、生成物としてのポリペプチド量が減少することを意味する。従って、ポリペプチドをコードする遺伝子からの転写反応が抑制されない場合でも、転写産物(mRNA)が速やかに分解され、タンパク質の生成が抑制されていれば「発現の抑制」に含まれる。発現が抑制された状態は、抑制しない場合と比較して発現量が20%以上、40%以上、60%以上、80%以上又は100%、すなわち完全に抑制された状態である。
以下、本発明を具体的に説明する。
(1)本発明のレトロウイルスベクター
本発明のレトロウイルスベクターは、5’末端から順に、
(a)レトロウイルス由来の5’LTR配列、
(b)SD配列、
(c)レトロウイルス由来のパッケージングシグナル配列(ψ)、
(d)少なくとも1つのステム−ループ構造を形成し、哺乳動物細胞内でRNA干渉を誘導するRNAが転写されるsiRNA生成配列、
(e)SA配列、
(f)所望の遺伝子の配列、
(g)レトロウイルス由来の3’LTR配列、
の各配列の核酸を含む核酸構築物である。本発明は、1つのベクターを細胞に導入することにより、当該細胞における特定の遺伝子の発現抑制、及び導入された所望の遺伝子の発現を可能とする。本発明のベクターは、siRNAの生成効率及び/又は所望の遺伝子の発現効率が高い。従って、変異型遺伝子の発現を抑制し野生型遺伝子を発現させるなど、細胞内で発現する遺伝子の機能を新たに導入する別の遺伝子により代替する目的で使用することができる。
レトロウイルスは一本鎖RNAウイルスであり、ウイルスゲノムには主要な要素として、その5’末端より5’LTR配列、SD配列、パッケージングシグナル配列、gag遺伝子、pol遺伝子、SA配列、env遺伝子、3’LTR配列が存在している。後述するレンチウイルスの場合にはこれらの要素に加えて複数のアクセサリー遺伝子が含まれている。このうち、レトロウイルスベクターによる遺伝子導入システムにおいて、レトロウイルスベクターに必須であるのは5’LTR配列、パッケージングシグナル配列、3’LTR配列である。その他のgag、pol、env等の遺伝子産物は、これらの遺伝子を保持させたパッケージング細胞より供給され得る。通常、所望の遺伝子はレトロウイルスベクターのパッケージングシグナル配列の3’側、SA配列を有する場合はパッケージングシグナル配列及びSA配列の3’側に配置される。
本発明のベクターに含まれる(a)5’LTR配列、(g)3’LTR配列及び(c)パッケージングシグナル配列は、レトロウイルス由来の配列で哺乳動物細胞に遺伝子を導入することが可能な配列であればいずれも使用することができる。レトロウイルスは、オンコレトロウイルスとレンチウイルスのサブクラスを含み、いずれのクラスのウイルス由来の配列も本発明に使用できる。これらの配列は同一のウイルス由来の配列であってもよいが、適切なパッケージング細胞との組合せによりウイルス粒子の形成や導入細胞ゲノムへの組み込みが可能な範囲で異なるウイルス由来の配列を組み合わせて使用してもよい。
本発明で使用するLTR配列及びパッケージングシグナル配列には、例えば、オンコレトロウイルスに属するモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、マウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、脾限局巣形成ウイルス(SFFV)由来の配列が使用できる。オンコレトロウイルス由来のウイルスベクターは、高効率で遺伝子導入可能であるが、ベクターの導入の際に細胞が活発に細胞分裂を行っている必要がある。これらのオンコレトロウイルスベクターは多数の文献で説明されている[例えば米国特許第5,219,740号公報、米国特許第6,207,453号公報、米国特許第5,219,740号公報、バイオテクニークス(BioTechniques)第7巻、第980−990頁(1989)、ヒューマン ジーン セラピー(Human Gene Therapy)、第1巻、第5−14頁(1990)、ヴイロロジー(Virology)、第180巻、第849−852頁(1991)、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、第90巻、第8033−8037頁(1993)、ならびにカレント オピニオン イン ジェネティックス アンド デベロップメント(Cur.Opin.Genet.Develop.)、第3巻、第102−109頁(1993)]。
また、本発明で使用するLTR配列及びパッケージングシグナル配列には、例えば、レンチウイルスに属するヒト免疫不全ウイルス(HIV−1、HIV−2)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)由来の配列が使用できる。レンチウイルスベクターは、遺伝子を導入する細胞の有糸分裂に関係なく核内のゲノムに遺伝子を導入ことができる。レンチウイルスベクターも多数の文献で説明されている[例えば、ジャーナル オブ ヴイロロジー(J.Virology)、第72巻、第8463−8471頁(1998)]。スプマウイルス属(例えば、泡沫状ウイルス)のような他のレトロウイルスのグループも、分裂していない細胞に効率的に形質導入することができる。
本発明のベクターには、配列を変異させたLTR配列を使用することもできる。LTRは機能的に5’末端よりU3、R、U5の3つの領域に区分される。U3領域にはエンハンサー/プロモーター活性があり、宿主細胞のRNAポリメラーゼIIによって、ウイルスゲノムは5’LTR配列のR領域から3’LTR配列のR領域までが転写される。3’LTR配列及び/又は5’LTR配列のU3領域を、そのLTR配列が由来するウイルス以外に由来するエンハンサー/プロモーターに置換したLTR配列も本発明に使用できる。置換する外来性のエンハンサー/プロモーターは、ウイルス又は哺乳動物由来の配列を使用することができ、構成的、誘導性又は組織特異的なエンハンサー/プロモーターが使用できる。例えばヒトサイトメガロウイルス(HCMV) immediate early、モロニーマウス肉腫ウイルス(MMSV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)等のウイルス由来エンハンサー/プロモーターや、βアクチン、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン及びインスリン遺伝子の哺乳動物由来エンハンサー/プロモーターが使用できる。
本発明のベクターに含まれる(b)SD配列及び(e)SA配列は、使用するLTR配列又はパッケージングシグナル配列が由来するウイルスが天然に有するSD配列及びSA配列をそのまま使用することができる。また、外来性のSD配列及びSA配列、すなわち使用するLTR配列又はパッケージングシグナル配列が由来するウイルスとは異なるウイルス(すなわち、異種のウイルス)や、哺乳動物遺伝子のイントロンに由来するSD配列及びSA配列が使用できる。例えば、simian virus(SV)40の16S RNA、HCMVのimmediate early RNA、ヒトのhEF1α遺伝子由来のSD配列及びSA配列が使用できる[米国科学アカデミー紀要、第95巻、第1号、第219−223頁(1998)]。また、コンセンサス配列に変異を導入しSD配列又はSA配列も本発明のベクターに使用できる。
本発明のベクターに含まれる(d)のsiRNA生成配列は、少なくとも1つのステム−ループ構造を形成し、哺乳動物細胞内でRNA干渉を誘導し得るRNAが転写される配列である。本発明におけるRNA干渉は、ベクターを導入する細胞が天然に発現する特定の内在性遺伝子の発現を選択的に抑制することを目的としている。RNA干渉は、発現を抑制することが望まれる遺伝子(以下、標的遺伝子と記載する)から転写されるmRNAの塩基配列に相同的なRNA分子及び相補的なRNA分子がアニールしたsiRNAにより誘導される。
本発明に使用されるsiRNA生成配列には、標的遺伝子から転写されるmRNAのある領域の塩基配列に相同的な配列(センス配列)と相補的な配列(アンチセンス配列)とが直列に並んで配置されている。siRNA生成配列から転写された一本のRNA鎖は、分子内でセンス配列とアンチセンス配列がアニールして二本鎖構造を形成し、形成された二本鎖RNA部分をステム領域とし、センス配列とアンチセンス配列の間に配置される任意の配列をループ領域とするステム−ループ構造を形成する。細胞内では、このステム領域からRNaseIII(ダイサー)の作用によりsiRNAが生成される。siRNA生成配列におけるステム領域に相当する部分の鎖長は、哺乳動物細胞におけるインターフェロン応答抑制の観点から、例えば13〜29塩基、好ましくは15〜25塩基、更に好ましくは19〜25塩基が例示される。また、ループ領域は任意の配列でよく、1〜30塩基の鎖長の配列が例示されるが、好ましくは1〜25塩基、更に好ましくは5〜22塩基の配列が使用される。
ここで、本発明により細胞内で生成されるsiRNAは標的遺伝子から転写されるmRNAの特定塩基配列に相同な配列のRNAと相補的な配列のRNAから構成されるが、各RNAは前記のmRNAの特定塩基配列と完全に相同もしくは相補的であることを要しない。標的遺伝子の発現抑制という機能が発揮される範囲で実質的に相同なRNA及び実質的に相補的な配列のRNAからなるsiRNAの生成配列を使用してもよい。また、本発明に使用されるsiRNA生成配列は、1種の遺伝子を標的とする1種類のsiRNAを転写するものの他、1種の標的遺伝子の異なる領域の塩基配列に対応する複数のsiRNAを転写するものや、複数の標的遺伝子に対応する複数のsiRNAを転写するものであっても良い。例えば、本発明に使用されるsiRNA生成配列から生成されるsiRNAの数は、1〜10個、1〜6個、1〜4個、複数個又は数個である。
本発明のベクターに含まれる(f)の所望の遺伝子配列は、ベクターを導入する細胞で発現させたい遺伝子配列である。当該遺伝子配列には、例えばタンパク質をコードする配列、tRNAやmiRNA等の細胞内で機能するRNAをコードする配列が含まれる。本発明のベクターを、配列(f)を連結するための制限酵素認識配列を複数個並べた配列(マルチクローニングサイト)を配列(f)の代わりにベクターに配置したベクターとして製造し、その後マルチクローニングサイトを利用して配列(f)を挿入しても良い。配列(f)の代わりにマルチクローニングサイトを有するベクターも本発明のベクターに含まれる。
本発明のベクターの配列(d)から生成するsiRNAが配列(f)の遺伝子配列を標的として当該配列からの遺伝子発現を抑制することがある。このような現象が予想される場合、これを防ぐために、所望の遺伝子配列に変異を導入し、siRNAの作用を受けない配列に改変することができる。
遺伝子上でアミノ酸を指定するコドン(3つの塩基の組み合わせ)はアミノ酸の種類ごとに1〜6種類ずつが存在することが知られている。適切なコドンの選択により、コードされるアミノ酸配列には変化を与えずに、塩基を変換(サイレント変異と呼ばれる)することができる。サイレント変異は、コドンの3番目の塩基を変換する場合が多い。所望の遺伝子が配列(d)から生成されるsiRNAに対応する標的遺伝子上の領域と同じ塩基配列を有するものであった場合、siRNAはその本来の標的遺伝子、導入された所望の遺伝子の両方の発現を抑制する。所望の遺伝子にこのサイレント変異を導入してsiRNAの配列との相同性/相補性を消失させると、siRNAは所望の遺伝子から転写されるRNAに作用せず、その発現の抑制が低減される。これにより、siRNAが作用する領域において、所望の遺伝子とsiRNAの標的である内在性遺伝子がコードするポリペプチドのアミノ酸配列が同一であるにも関わらず、内在性遺伝子の発現を選択的に抑制することができる。
更に、所望の遺伝子の塩基配列を変異させる別の態様として、前記siRNAが作用するRNAがコードするアミノ酸配列について、所望の遺伝子がコードするポリペプチドの機能を損なわない範囲において、他のアミノ酸の置換、例えば類似するアミノ酸への置換によってアミノ酸配列を変化させても良い。類似するアミノ酸とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr)、脂肪族アミノ酸(Ala、Leu、Ile、Val)、極性アミノ酸(Gln、Asn)、塩基性アミノ酸(Lys、Arg、His)、酸性アミノ酸(Glu、Asp)、水酸基を有するアミノ酸(Ser、Thr)、側鎖の小さいアミノ酸(Gly、Ala、Ser、Thr、Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換はポリペプチドの表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら、Science、第247巻、第1306−1310頁(1990)を参照)。所望の遺伝子にこの保存的アミノ酸置換変異を導入すると、配列(d)から生成するsiRNAが、所望の遺伝子から転写されるRNAに作用せず、発現の抑制が低減される。これにより、siRNAが作用する領域において、所望の遺伝子と内在性ポリペプチドのアミノ酸配列が類似するにも関わらず、内在性ポリペプチドの発現を選択的に抑制することができる。
以下、本明細書において、前記のようにサイレント変異又は保存的アミノ酸置換変異を導入した遺伝子を「コドン変換型」遺伝子と呼ぶことがある。上記の塩基配列の変換に際しては、特に本発明を限定するものではないが、使用される宿主において使用頻度の高いコドンや翻訳効率を上昇させる配列を選択して塩基配列を変換することにより、所望の遺伝子の発現効率の向上が期待される。
本発明の一態様として、本発明のベクターの所望の遺伝子はオリゴマータンパク質をコードする配列である。オリゴマータンパク質には、構造タンパク質、酵素、転写因子、レセプター、抗体が含まれる。また、本発明において、オリゴマータンパク質は細胞表面タンパク質(膜タンパク質)であってもよく、実施例に例示された抗原認識レセプター、例えばT細胞レセプター(T細胞受容体:TCR)をコードする配列が所望の遺伝子として好適である。
TCRは、α鎖とβ鎖からなるヘテロダイマー(ヘテロ二量体)、γ鎖とδ鎖からなるヘテロダイマーの2種類が存在する。TCRの各鎖とも可変(V)領域、結合(J)領域、定常(C)領域からなる。TCRのV領域の多様性は、DNAの再編成によるV領域をコードする遺伝子セグメントの組み合わせと再編成結合部位のずれ、及び結合部位へのN配列の挿入によって生じる。α鎖とβ鎖のV領域には、アミノ酸配列の変異が特に高い超可変領域(CDR)が認められる。本発明のベクターの一態様として、TCRのヘテロダイマーを構成する2つのポリペプチドをコードする遺伝子をポリシストロニックに連結した配列を所望の遺伝子とすることができる。前記2つの遺伝子は、自己切断ペプチドをコードする配列及びIRES(internal ribosomal entry site:内部リボソーム進入部位)配列から選択される配列を介して相互に接続させることが可能である。2つの遺伝子の順はどちらでもよく、例えば5’末端からTCRα鎖−TCRβ鎖の順、又はTCRβ鎖−TCRα鎖の順のポリシストロニックな配列が使用できる。
自己切断ペプチドは、ウイルスの2Aペプチド又はそれと同等の機能を有する2A様ペプチドから得ることが可能である。例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)由来の2Aペプチド(F2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)由来の2Aペプチド(E2A)、Porcine teschovirus(PTV−1)由来の2Aペプチド(P2A)及びThosea asigna virus(TaV)由来の2Aペプチド(T2A)から成る群から選択することができる。例えば、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するT2Aを使用することができる。2Aペプチドは、エキスパート オピニオン オン バイオロジカル セラピー(Expert Opin Biol Ther)、第5巻、627−638頁(2005)に総説されている。
IRES配列は、リボソームがシストロン(タンパク質コード領域)の開始コドン、例えばAUGへ直接的に進入することを促進し、それによって、遺伝子のキャップ非依存的な翻訳を開始させるエレメントをいう[トレンズ イン バイオケミカル サイエンス(Trends Biochem Sci)、第15巻、第12号、第477−83頁(1990)]。IRES配列により連結された複数のシストロンを有する単一のmRNAから、複数のポリペプチドが翻訳される。
例えば、所望の抗原を認識する外来性のTCRをT細胞に導入する場合、T細胞が天然に発現している内在性TCRと外来性TCRが競合し、外来性TCRの発現が低下する可能性がある。更に、内在性TCRと外来性TCRがミスペアリングしたTCRによる移植片対宿主病(GVHD)などの副作用が発生する可能性がある。従って、内在性TCRの発現を抑制することが重要である。内在性TCRのV領域は個々のTCRによって異なるのに対し、C領域は個々のTCRに共通の配列で同じ塩基配列の遺伝子にコードされているため、配列(d)が生成するsiRNAが標的とする配列に好適である。更に、このsiRNAが導入した外来性TCR遺伝子の発現を抑制するのを防ぐため、当該遺伝子におけるC領域をコードする塩基配列に前記のサイレント変異の導入を実施することができる。こうして、外来性TCRの発現を効率よく行うことができる。
例えば、内在性TCRの発現を抑制する場合、特に限定はされないがTCRをコードする遺伝子のC領域のうち、内在性TCRα鎖の塩基配列AGTAAGGATTCTGATGTGTAT(配列番号19)を、外来性TCRα鎖では塩基配列AGCAAGGACAGCGACGTGTAC(配列番号20)にコドン変換すれば良い。上記2つの塩基配列がコードするアミノ酸配列は、SKDSDVY(配列番号21)で共通であるが、配列番号10に記載される人工遺伝子が転写されて生成するsiRNAにより、内在性TCRのα鎖が選択的に抑制される。コドン変換を実施例に記載する表1に例示する。
(2)本発明の遺伝子導入細胞の製造方法
本発明の遺伝子細胞の製造方法は、前記(1)に記載する本発明のレトロウイルスベクターを細胞に導入する工程を包含することを特徴とする。当該工程は体外で実施される。
本発明の方法は、哺乳動物、例えばヒト由来の細胞又はサル、マウス、ラット、ブタ、ウシ、イヌ等の非ヒト哺乳動物由来の細胞が使用できる。本発明の方法に使用される細胞に特に限定はなく、任意の細胞を使用することができる。例えば、血液(末梢血、臍帯血など)、骨髄などの体液、組織又は器官より採取、単離、精製、誘導された末梢血単核細胞(PBMC)、血球系細胞、造血幹細胞、臍帯血単核球、線維芽細胞、前駆脂肪細胞、肝細胞、血球細胞、皮膚角化細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、脂肪幹細胞、各種癌細胞株、歯周靭帯線維芽細胞又は神経幹細胞を使用することができる。前記の細胞は生体より採取されたもの、又は細胞株として樹立されたもののどちらでもよい。製造された遺伝子導入細胞もしくは当該細胞より分化させた細胞を生体に移植することが望まれる場合には、その生体自身又は同種の生体から採取された細胞より遺伝子導入細胞を製造することが好ましい。
本発明の方法において、本発明のベクターを細胞に導入する工程は、ベクターが有しているLTR配列及びパッケージングシグナル配列に基づいて適切なパッケージング細胞を選択し、これを使用してレトロウイルス粒子を調製して実施することができる。例えばPG13(ATCC CRL−10686)、PA317(ATCC CRL−9078)、GP+E−86やGP+envAm−12(米国特許第5,278,056号公報)、Psi−Crip[米国科学アカデミー紀要、第85巻、第6460−6464頁(1988)]のパッケージング細胞が例示される。また、トランスフェクション効率の高い293細胞や293T細胞を用いてレトロウイルス粒子を作製することもできる。多くの種類のレトロウイルスを基に製造されたレトロウイルスベクター及び当該ベクターのパッケージングに使用可能なパッケージング細胞は、各社より広く市販されている。これらのレトロウイルスベクターから、本発明のベクターの(a)〜(g)の配列を有するDNA断片を調製することが可能である。また、これらのパッケージング細胞を本発明の方法に使用することができる。
本発明には、当該レトロウイルスベクターのゲノムが由来するものとは異種のウイルス由来のエンベロープを有する、シュードタイプ(pseudotyped)パッケージングによって作製されたレトロウイルスも使用することができる。例えばMMLV、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、ネコ内在性ウイルス(feline endogenous virus)由来のエンベロープやエンベロープとして機能しうるタンパク質を有するシュードタイプレトロウイルスを使用することができる。更に、糖鎖合成に関与する酵素遺伝子などを導入したパッケージング細胞を使用し、糖鎖修飾を受けたタンパクをその表面に有するレトロウイルスベクター粒子を調製することができる。
本発明のベクターを細胞に導入する工程で、導入効率を向上させる機能性物質を用いることもできる(例えば、国際公開第95/26200号パンフレット、国際公開第00/01836号パンフレット)。導入効率を向上させる物質としては、ウイルスベクターに結合する活性を有する物質、例えばフィブロネクチン又はフィブロネクチンフラグメントなどの物質が挙げられる。好適には、ヘパリン結合部位を有するフィブロネクチンフラグメント、例えばレトロネクチン(RetroNectin、登録商標、CH−296、タカラバイオ社製)として市販されているフラグメントを用いることができる。また、レトロウイルスの細胞への感染効率を向上させる作用を有する合成ポリカチオンであるポリブレン、線維芽細胞増殖因子、V型コラーゲン、ポリリジン又はDEAE−デキストランを使用することができる。
本発明の好適な態様において、前記の機能性物質は適切な固相、例えば細胞培養に使用される容器(プレート、シャーレ、フラスコもしくはバッグ等)又は担体(マイクロビーズ等)に固定化された状態で使用することができる。
(3)本発明の遺伝子導入細胞
本発明の遺伝子導入細胞は、前記(2)の製造方法により、前記(1)のレトロウイルスベクターが導入された細胞である。本発明の遺伝子導入細胞は、外来性の所望の遺伝子を発現し、特定の内在性遺伝子の発現が抑制されている。
本発明の一態様として、特定の抗原を認識する外来性TCRを導入した遺伝子導入細胞が挙げられる。外来性TCRが導入されたT細胞が投与される疾患としては、当該T細胞に感受性を示す疾患であればよく特に限定はないが、例えば、がん(白血病、固形腫瘍など)、肝炎や、インフルエンザ、HIVなどのウイルス、細菌、真菌が原因となる感染性疾患、例えば結核、MRSA、VRE、深在性真菌症が例示される。また、本発明の細胞は、骨髄移植や放射線照射後の感染症予防、再発白血病の寛解を目的としたドナーリンパ球輸注などにも利用できる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
また、本明細書に記載の操作のうち、基本的な操作については2001年、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行、T.マニアティス(T.Maniatis)ら編集、モレキュラー クローニング:ア ラボラトリー マニュアル第3版(Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3rd ed.)に記載の方法によった。
実施例1 コドン変換型ヒトT細胞受容体α及びβ遺伝子の作製
国際公開第2008/153029号パンフレット(出典明示により、本明細書の一部とする)に記載の方法に従い、コドン変換型のヒト抗MAGE−A4 TCRα鎖遺伝子を、野生型の遺伝子の一部を変換して作製した。この遺伝子を含む核酸断片を、pPCR−Script(Stratagene社)の制限酵素KpnI−XhoIサイトにクローニングした。
同様に、コドン変換型のヒト抗MAGE−A4 TCRβ鎖遺伝子を、野生型の遺伝子の一部を変換して作製した。この遺伝子を含む核酸断片を、pPCR−Scriptの制限酵素KpnI−XhoIサイトにクローニングした。
実施例2 コドン変換型TCR発現レトロウイルスベクターの作製
まず、pMSCVneo(Clontech社製)を鋳型に配列番号1記載の3MSCV5プライマー及び配列番号2記載の3MSCV3プライマーでPCRを行い、MSCV3’LTR部位を増幅し、制限酵素XhoIとEcoRIで切断し、pMTベクター[ジーン セラピー(Gene Ther)、第11巻、第94−99頁(2004)に記載されているpMTベクター]のXhoI−EcoRIサイトにクローニングし、pMS−MCを作製した。更に、pMEI−5ベクター(タカラバイオ社製)を制限酵素MluIとXhoIにて切断し、pMS−MCのMluI−XhoIサイトへ挿入し、pMS3−MCを作製した。pMS3−MCは、5’末端から順にMMLV由来の5’LTR、MMLV由来のSD配列、MMLV由来のψ、変異を導入したヒトEF1α遺伝子由来のSA配列、U3領域はMSCV由来で残りの領域はMMLV由来の3’LTRを含む。
図1に示すように、pMS3−MCに挿入するDNA断片を調製した。コドン変換型のヒト抗MAGE−A4 TCRα鎖をコードするDNA(図1中、TCRαと表記する)を配列番号3記載のMAGE−AFプライマー及び配列番号4記載のMAGE−ARプライマーを用いてPCRにて増幅した。同様にコドン変換型のヒト抗MAGE−A4 TCRβ鎖をコードするDNA(図1中、TCRβと表記する)を配列番号5記載のMAGE−BFプライマー及び配列番号6記載のMAGE−BRプライマーを用いてPCRにて増幅した。前記の2種のDNAの増幅には実施例1で作製された組換えプラスミドを鋳型に用いた。更に、配列番号7に示すT2Aペプチド配列を含む人工合成遺伝子(図1中、T2Aと表記する)を鋳型として配列番号8記載のT2A−Fプライマー及び配列番号9記載のT2A−Rプライマーを用いてPCRにて増幅した。これらの増幅産物を、NotI−XhoIにて消化したpMS3−MCベクターにIn−Fusion Advantage PCR Cloning Kit(クロンテック社製)を使用してクローニングし、pMS3−MAGE−A4−b2Aaベクターを作製した。
実施例3 コドン変換型TCR及びsiRNA発現レトロウイルスベクターの作製
配列番号10に示す人工遺伝子(図2中、siRNA生成配列と表記する)を合成した。この人工遺伝子は、4種類のステム−ループ構造を形成する一本鎖RNAを転写し、野生型TCRα及び野生型TCRβに対するsiRNA各2種類合計4種類を生成する。この人工合成遺伝子を鋳型とし、配列番号11に示すloop−Mlu−Fプライマーと配列番号12に示すloop−Mlu−Rプライマーを用いたPCRを行って増幅DNA断片を得た。図2に示すように、このDNA断片をpMS3−MAGE−A4−b2AaベクターのMluI消化物へ、In−Fusion Advantage PCR Cloning Kit(クロンテック社製)を使用してクローニングし、pMu1−MAGE−A4−b2Aaベクターを作製した。
実施例4 レトロウイルス溶液の作製
プラスミドベクターpMS3−MAGE−A4−b2Aa及びpMu1−MAGE−A4−b2Aaにより大腸菌JM109をそれぞれ形質転換し、形質転換体を得た。これら形質転換体の保持するプラスミドDNAをQIAGEN Plasmid Midi Kit(キアゲン社製)を用いてそれぞれ精製し、トランスフェクション用DNAとして以下の操作に供した。
調製したpMS3−MAGE−A4−b2Aa及びpMu1−MAGE−A4−b2Aaプラスミドを293T細胞にそれぞれトランスフェクトした。この操作にはRetorovirus Packaging Kit Eco(タカラバイオ社製)をその製品プロトコールに従って使用した。得られた形質導入細胞より各種エコトロピックウイルスを含有する上清液を獲得し、0.45μmフィルター(Milex HV、ミリポア社製)にてろ過した。この上清を用いて、ポリブレンを使用する方法によりPG13細胞(ATCC CRL−10686)細胞にエコトロピックウイルスを感染させた。得られた細胞の培養上清を回収し、0.45μmフィルターによりろ過し、コドン変換型TCR発現レトロウイルス溶液(MS3−MAGE−A4−b2Aa)及びコドン変換型TCR−siRNA共発現レトロウイルス溶液(Mu1−MAGE−A4−b2Aa)とした。
実施例5 ヒトPBMCへのコドン変換型TCR及びコドン変換型TCR−siRNA共発現レトロウイルスベクターの感染1
インフォームドコンセントの得られたヒト末梢血より分離した末梢血単核球(PBMC)に、実施例4で作製したコドン変換型TCR発現レトロウイルス溶液(MS3−MAGE−A4−b2Aa)及びコドン変換型TCR−siRNA共発現レトロウイルス溶液(Mu1−MAGE−A4−b2Aa)を、レトロネクチン(登録商標、タカラバイオ社製)を用いた標準的な方法で2回感染を行い、コドン変換型TCR導入PBMC及びコドン変換型TCR導入−siRNA共発現PBMCをそれぞれ作製した。2回目のウイルス感染3日後に細胞を回収し、QIAGEN RNeasy Mini Kit(キアゲン社製)にて全RNAの抽出及びDNaseI処理を行った。得られた全RNAを鋳型とし、PrimeScript RT reagent Kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)を用いたcDNA合成を行った。更に、このcDNAを鋳型とし、SYBR Premix Ex Taq II(タカラバイオ社製)及び配列番号13、14の野生型TCRα増幅用プライマー、配列番号15、16の野生型TCRβ増幅用プライマーを用いたリアルタイムPCRを行い、野生型TCRα、野生型TCRβ遺伝子発現量を測定してその相対値を算出した。全RNA量の補正は配列番号17、18のGAPDH遺伝子増幅用プライマーを用いた同様のリアルタイムPCRで測定したGAPDH遺伝子発現量に基づいて行った。
ネガティブコントロールとしてベクターを導入しなかったPBMCを用意して前記同様に遺伝子発現量を測定し、当該細胞における野生型TCRα、野生型TCRβ遺伝子発現の相対値に対する各実験群での発現の相対値の割合を算出することによって野生型TCR遺伝子の抑制効果を評価した。図3に結果を示す。図中、縦軸は遺伝子の発現量についてベクターを導入しなかったネガティブコントロールを100とした時の相対値で示す。横軸は、導入したレトロウイルスを示す。図3に示されるように、コドン変換型TCR導入PBMC(MS3−MAGE−A4−b2Aa)において、野生型TCRα及びβ遺伝子の発現は抑制されないが、コドン変換型TCR導入−siRNA共発現PBMC(Mu1−MAGE−A4−b2Aa)において、野生型TCRα及びβ遺伝子発現は抑制された。
実施例6 ヒトPBMCへのコドン変換型TCR及びコドン変換型TCR−siRNA共発現レトロウイルスベクターの感染2
実施例5と同様に、コドン変換型TCR導入PBMC及びコドン変換型TCR導入−siRNA共発現PBMCを作製した。2回目のウイルス感染3日後に細胞を回収し、HLA−A2402 MAGE−A4 テトラマー−PE(MBL社製)及びFITC標識抗Human CD8 抗体(べクトンディッキンソン社製)により染色した。フローサイトメーターを使用し、染色後の細胞について、CD8陽性であって、かつテトラマー陽性である細胞の割合及びPEの平均蛍光強度を測定した。図4にMAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示し、図5にMAGE−A4テトラマー陽性細胞に由来するフィコエリスリン(PE)の平均蛍光強度を示す。横軸は、導入したレトロウイルス及び希釈率を示し、縦軸はMAGE−A4テトラマー陽性細胞率(図4)及びMAGE−A4テトラマー陽性細胞由来のPEの平均蛍光強度(図5)を示す。なお、図5の平均蛍光強度はMAGE−A4テトラマー陽性細胞における、抗MAGE−A4 TCRの発現量を反映している。図4及び5に示されるように、コドン変換型TCR導入−siRNA共発現PBMC(Mu1−MAGE−A4−b2Aa)は、野生型TCRα及びβの発現が抑制されたことにより、導入されたコドン変換型TCRのα/β複合タンパクの発現率及び発現強度の増強が見られた。
また、2回目のウイルス感染3日後に細胞を回収し、FastPure DNA kit(タカラバイオ社製)を用いてゲノムDNAを抽出し、Provirus Copy Number Detection Primer Set,Human(タカラバイオ社製)とCycleavePCR Core Kit(タカラバイオ社製)を用いて、ゲノムに組み込まれたウイルスコピー数の測定を行った。図6及び図7に結果を示す。図中、横軸はウイルスコピー数を示し、縦軸は、MAGE−A4テトラマー陽性細胞率(図6)及びMAGE−A4テトラマー陽性細胞の平均蛍光強度(図7)を示す。図6及び図7に示すように、コドン変換型TCR導入−siRNA共発現PBMC(Mu1−MAGE−A4−b2Aa)は、野生型TCRα及びβの発現が抑制されたことにより、コドン変換型TCR導入PBMC(MS3−MAGE−A4−b2Aa)と比べて、より低いウイルスコピー数でより高いMAGE−A4テトラマー陽性細胞率が得られ、また、前記テトラマー陽性細胞由来の蛍光の平均強度も高かった。すなわち、siRNA発現ユニットを導入した細胞においてコドン変換型TCRのα/β複合タンパク質の発現率及び発現強度の増強が見られた。
実施例7 コドン変換型ヒトT細胞受容体α及びβ遺伝子の作製
An Jら、インターナショナル ジャーナル オブ ヘマトロジー(Int.J.Hematol.)、第93巻、第176−185頁(2011)(出典明示により、本明細書の一部とする)の記載に従い、腫瘍抗原WT1の235−243のペプチドを認識するTCRα鎖遺伝子又はTCRβ鎖遺伝子を含む核酸断片をそれぞれ調製した。TCRα鎖及びTCRβ鎖をコードする遺伝子のC領域に対し、野生型のTCRの塩基配列を、コドン変換型TCRとする表1に示すそれぞれ2個所の変異を、変異導入プライマーとPCRにより導入した。野生型とコドン変換型の塩基配列がコードするアミノ酸配列は共通であるが、コドン変換型TCRの塩基配列には変異が導入されているので、実際例3記載のDNAより転写される二本鎖siRNAによりコドン変換型TCRの発現は抑制されない。
Figure 0005969468
実施例8 コドン変換型TCR発現レトロウイルスベクターの作製
実施例7で作製したコドン変換型のヒト抗WT1 TCRα鎖遺伝子及びTCRβ鎖遺伝子を含む核酸断片を鋳型としてPCRにより増幅した増幅産物、実施例2に記載するT2Aペプチド配列をコードする人工遺伝子の増幅産物を、ApaI−XhoIにて消化した実施例2のpMS3−MCベクターにIn−Fusion Advantage PCR Cloning Kit(クロンテック社製)を使用してクローニングし、pMS3−WT1−a2Abベクター(ベクターA)を作製した。
実施例9 コドン変換型TCR及びsiRNA発現レトロウイルスベクターの作製
実施例3で合成した4種類のsiRNAを生成する人工遺伝子の増幅産物を、図8に示すように、pMS3−WT1−a2Abベクター(ベクターA)の各部位に挿入した。すなわち、TCR遺伝子と3’LTRの間に挿入したpMS3−WT1−a2Ab−loop−siTCR(ベクターB)、SA配列とTCR遺伝子の間に挿入したpMS3−loop−WT1−a2Ab−siTCR(ベクターC)、SD配列とSA配列の間に挿入したpMu1−WT1−a2Ab−siTCR(ベクターD、以下「pMu1−WT1−a2Ab」と称する場合もある)を作製した。
実施例10 コドン変換型TCR−siRNA共発現レトロウイルスベクターの比較
実施例8及び実施例9で調製した各ベクターから、実施例4と同様の方法でレトロウイルス溶液を作製した。実施例6と同様の方法でヒトPBMCに各ベクターを導入し、2回目のウイルス感染3日後に細胞を回収して、WT1テトラマー陽性細胞率、WT1テトラマー陽性細胞の平均蛍光強度、及びゲノムに組み込まれたウイルスコピー数の測定を行った。図9及び図10に結果を示す。図中、横軸はウイルスコピー数を示し、縦軸は、WT1テトラマー陽性細胞率(図9)及びWT1テトラマー陽性細胞の平均蛍光強度(図10)を示す。図9及び図10に示すように、ベクターDが導入された細胞はベクターA〜Cが導入された細胞と比べて、より低いウイルスコピー数でより高いWT1テトラマー陽性細胞率と平均蛍光強度が得られ、導入したコドン変換型抗TCRのα/β複合タンパク質の発現率及び発現強度の増強が見られた。
実施例11 コドン変換型TCR発現レトロウイルスベクターの作製
図11に示すように、実施例2にて作製したpMS3−MCに挿入するDNA断片を調製した。コドン変換型のヒト抗MAGE−A4 TCRα鎖をコードするDNA(図11中、TCRαと表記する)を配列番号31記載のMAGE−AF2プライマー及び配列番号32記載のMAGE−AR2プライマーを用いてPCRにて増幅した。同様にコドン変換型のヒト抗MAGE−A4 TCRβ鎖をコードするDNA(図11中、TCRβと表記する)を配列番号33記載のMAGE−BF2プライマー及び配列番号34記載のMAGE−BR2プライマーを用いてPCRにて増幅した。前記の2種のDNAの増幅には実施例1で作製された組換えプラスミドを鋳型に用いた。更に、配列番号7に示すT2Aペプチド配列を含む人工合成遺伝子(図11中、T2Aと表記する)を鋳型として配列番号8記載のT2A−Fプライマー及び配列番号9記載のT2A−Rプライマーを用いてPCRにて増幅した。これらの増幅産物を、NotI−XhoIにて消化したpMS3−MCベクターにIn−Fusion Advantage PCR Cloning Kitを使用してクローニングし、pMS3−MAGE−A4−a2Abベクターを作製した。
実施例12 コドン変換型TCR及びsiRNA発現レトロウイルスベクターの作製
実施例3と同様にして、siRNA生成配列を含むDNA断片を、MluIにて消化した実施例11のpMS3−MAGE−A4−a2Abベクターへクローニングし、pMu1−MAGE−A4−a2Abベクターを作製した(図12)。
実施例13 コドン変換型TCR発現レトロウイルスベクターの作製
実施例7で作製したコドン変換型のヒト抗WT1 TCRα鎖遺伝子及びTCRβ鎖遺伝子を含む核酸断片を鋳型としてPCRにより増幅した増幅産物、実施例2に記載するT2Aペプチド配列をコードする人工遺伝子の増幅産物を、ApaI−XhoIにて消化した実施例2のpMS3−MCベクターにクローニングし、pMS3−WT1−b2Aaベクター(ベクターE)を作製した(図13)。
実施例14 コドン変換型TCR及びsiRNA発現レトロウイルスベクターの作製
実施例3で合成した4種類のsiRNAを生成する人工遺伝子の増幅産物を、実施例13のpMS3−WT1−b2Aaベクター(ベクターE)のSD配列とSA配列の間に挿入し、pMu1−WT1−b2Aa(ベクターF)を作製した(図13)。
実施例15 コドン変換型TCR発現レトロウイルスベクター及びコドン変換型TCR−siRNA共発現レトロウイルスベクターの比較
実施例2、3、11、12で調製した各ベクター(pMS3−MAGE−A4−b2Aa、pMu1−MAGE−A4−b2Aa、pMS3−MAGE−A4−a2Ab、pMu1−MAGE−A4−a2Ab)を用いて実施例4と同様の方法でレトロウイルス溶液を作製した。実施例6と同様の方法でヒトPBMCに各ベクターを導入し、2回目のウイルス感染3日後に細胞を回収して、MAGE−A4テトラマー陽性細胞率、MAGE−A4テトラマー陽性細胞の平均蛍光強度、及びゲノムに組み込まれたウイルスコピー数の測定を行った。図14にpMS3−MAGE−A4−b2AaとpMS3−MAGE−A4−a2Abの結果を示す。図15にpMu1−MAGE−A4−b2AaとpMu1−MAGE−A4−a2Abの結果を示す。図中、横軸はウイルスコピー数を示し、縦軸は、MAGE−A4テトラマー陽性細胞率(図14左、図15左)及びMAGE−A4テトラマー陽性細胞の平均蛍光強度(図14右、15右)を示す。図14及び図15に示すように、MS3−MAGE−A4−b2Aaベクターが導入された細胞はMS3−MAGE−A4−a2Abベクターが導入された細胞と比べて、より低いウイルスコピー数でより高いMAGE−A4テトラマー陽性細胞率と平均蛍光強度が得られ、また、Mu1−MAGE−A4−b2Aaベクターが導入された細胞はMu1−MAGE−A4−a2Abベクターが導入された細胞と比べて、より低いウイルスコピー数でより高いMAGE−A4テトラマー陽性細胞率と平均蛍光強度が得られ、導入したコドン変換型抗TCRのα/β複合タンパク質の発現率及び発現強度の増強が見られた。
また、実施例8、9、13、14で調製した各ベクター(pMS3−WT1−a2Ab、pMu1−WT1−a2Ab、pMS3−WT1−b2Aa、pMu1−WT1−b2Aa)を用いて実施例4と同様の方法でレトロウイルス溶液を作製した。実施例6と同様の方法でヒトPBMCに各ベクターを導入し、2回目のウイルス感染3日後に細胞を回収して、WT1テトラマー陽性細胞率、WT1テトラマー陽性細胞の平均蛍光強度、及びゲノムに組み込まれたウイルスコピー数の測定を行った。図16にpMS3−WT1−a2AbとpMS3−WT1−b2Aaの結果を示す。図17にpMu1−WT1−a2AbとpMu1−WT1−b2Aaの結果を示す。図中、横軸はウイルスコピー数を示し、縦軸は、WT1テトラマー陽性細胞率(図16左、図17左)及びWT1テトラマー陽性細胞の平均蛍光強度(図16右、図17右)を示す。図16及び図17に示すように、MS3−WT1−b2Aaベクターが導入された細胞はMS3−MAGE−A4−a2Abベクターが導入された細胞と比べて、より低いウイルスコピー数でより高いWT1テトラマー陽性細胞率と平均蛍光強度が得られ、また、Mu1−WT1−b2Aaベクターが導入された細胞はMu1−WT1−a2Abベクターが導入された細胞と比べて、より低いウイルスコピー数でより高いWT1テトラマー陽性細胞率と平均蛍光強度が得られ、導入したコドン変換型抗TCRのα/β複合タンパク質の発現率及び発現強度の増強が見られた。
本発明は、効率よく所望の遺伝子が発現し、かつ効率よく特定の遺伝子の発現を抑制する能力を有するレトロウイルスベクター、当該ベクターを使用する遺伝子導入細胞の製造方法、当該ベクターが導入された細胞である。これらのレトロウイルスベクター、遺伝子導入細胞の製造方法及び遺伝子導入細胞は、タンパク質の製造、細胞医療による疾患の治療及びそのための研究、試験に極めて有用である。
SEQ ID NO:1: 3MSCV5 primer
SEQ ID NO:2: 3MSCV3 primer
SEQ ID NO:3: MAGE-AF primer
SEQ ID NO:4: MAGE-AR primer
SEQ ID NO:5: MAGE-BF primer
SEQ ID NO:6: MAGE-BR primer
SEQ ID NO:7: T2A peptide coding sequence
SEQ ID NO:8: T2A-F primer
SEQ ID NO:9: T2A-R primer
SEQ ID NO:10: siRNA generating sequence for wild type TCR genes
SEQ ID NO:11: loop-Mlu-F primer
SEQ ID NO:12: Loop-Mlu-R primer
SEQ ID NO:13: wild type TCR alpha chain amplification primer F
SEQ ID NO:14: wild type TCR alpha chain amplification primer R
SEQ ID NO:15: wild type TCR beta chain amplification primer F
SEQ ID NO:16: wild type TCR beta chain amplification primer R
SEQ ID NO:17: GAPDH amplification primer F
SEQ ID NO:18: GAPDH amplification primer R
SEQ ID NO:19: A part of wild type TCR alpha chain coding sequence
SEQ ID NO:20: A part of codon modified TCR alpha chain coding sequence
SEQ ID NO:21: A part of TCR alpha chain amino acid sequence
SEQ ID NO:22: A part of wild type TCR alpha chain coding sequence
SEQ ID NO:23: A part of codon modified TCR alpha chain coding sequence
SEQ ID NO:24: A part of TCR alpha chain amino acid sequence
SEQ ID NO:25: A part of wild type TCR beta chain coding sequence
SEQ ID NO:26: A part of codon modified TCR beta chain coding sequence
SEQ ID NO:27: A part of TCR beta chain amino acid sequence
SEQ ID NO:28: A part of wild type TCR beta chain coding sequence
SEQ ID NO:29: A part of codon modified TCR beta chain coding sequence
SEQ ID NO:30: A part of TCR beta chain amino acid sequence
SEQ ID NO:31: MAGE-AF2 primer
SEQ ID NO:32: MAGE-AR2 primer
SEQ ID NO:33: MAGE-BF2 primer
SEQ ID NO:34: MAGE-BR2 primer

Claims (8)

  1. 5’末端から順に、
    (a)レトロウイルス由来の5’LTR(Long Terminal Repeat)配列、
    (b)スプライスドナー(SD)配列、
    (c)レトロウイルス由来のパッケージングシグナル配列(ψ)、
    (d)少なくとも1つのステム−ループ構造を形成し、哺乳動物細胞内でRNA干渉を誘導するRNAが転写されるsiRNA生成配列、
    (e)スプライスアクセプター(SA)配列、
    (f)所望の遺伝子の配列、
    (g)レトロウイルス由来の3’LTR配列、
    の各配列の核酸を含むレトロウイルスベクターであって、所望の遺伝子がポリシストロニックに連結したTCRα鎖及びTCRβ鎖をコードする遺伝子である前記ベクター
  2. siRNA生成配列が野生型TCRの定常領域をコードするmRNAに作用して発現を抑制するsiRNAを生成する配列であり、所望の遺伝子が定常領域の塩基配列に変異を導入したTCRをコードする遺伝子であり、前記変異を導入したTCRをコードする遺伝子は前記siRNAにより発現の抑制を受けない、請求項記載のレトロウイルスベクター。
  3. レトロウイルスがオンコレトロウイルス又はレンチウイルスである請求項1記載のレトロウイルスベクター。
  4. SA配列がLTRと異種のウイルス由来又は哺乳動物由来の配列である請求項1記載のレトロウイルスベクター。
  5. 請求項1〜のいずれか1項記載のレトロウイルスベクターを細胞に導入する工程を含む遺伝子導入細胞の製造方法。
  6. 細胞がT細胞又はT細胞を含有する細胞集団である請求項記載の遺伝子導入細胞の製造方法。
  7. 請求項1〜のいずれか1項記載のレトロウイルスベクターが導入された遺伝子導入細胞。
  8. 細胞がT細胞又はT細胞を含有する細胞集団である請求項記載の遺伝子導入細胞。
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