JP2004507441A - G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質とn−ホルミルペプチド受容体との複合体 - Google Patents
G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質とn−ホルミルペプチド受容体との複合体 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004507441A JP2004507441A JP2001531867A JP2001531867A JP2004507441A JP 2004507441 A JP2004507441 A JP 2004507441A JP 2001531867 A JP2001531867 A JP 2001531867A JP 2001531867 A JP2001531867 A JP 2001531867A JP 2004507441 A JP2004507441 A JP 2004507441A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cells
- protein
- pro
- inflammatory
- kinase
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K38/00—Medicinal preparations containing peptides
- A61K38/16—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K5/00—Peptides containing up to four amino acids in a fully defined sequence; Derivatives thereof
- C07K5/04—Peptides containing up to four amino acids in a fully defined sequence; Derivatives thereof containing only normal peptide links
- C07K5/10—Tetrapeptides
- C07K5/1002—Tetrapeptides with the first amino acid being neutral
- C07K5/1005—Tetrapeptides with the first amino acid being neutral and aliphatic
- C07K5/1013—Tetrapeptides with the first amino acid being neutral and aliphatic the side chain containing O or S as heteroatoms, e.g. Cys, Ser
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K38/00—Medicinal preparations containing peptides
- A61K38/04—Peptides having up to 20 amino acids in a fully defined sequence; Derivatives thereof
- A61K38/05—Dipeptides
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K38/00—Medicinal preparations containing peptides
- A61K38/04—Peptides having up to 20 amino acids in a fully defined sequence; Derivatives thereof
- A61K38/07—Tetrapeptides
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P37/00—Drugs for immunological or allergic disorders
- A61P37/02—Immunomodulators
- A61P37/06—Immunosuppressants, e.g. drugs for graft rejection
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K14/00—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
- C07K14/435—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
- C07K14/705—Receptors; Cell surface antigens; Cell surface determinants
- C07K14/72—Receptors; Cell surface antigens; Cell surface determinants for hormones
- C07K14/723—G protein coupled receptor, e.g. TSHR-thyrotropin-receptor, LH/hCG receptor, FSH receptor
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K5/00—Peptides containing up to four amino acids in a fully defined sequence; Derivatives thereof
- C07K5/04—Peptides containing up to four amino acids in a fully defined sequence; Derivatives thereof containing only normal peptide links
- C07K5/08—Tripeptides
- C07K5/0802—Tripeptides with the first amino acid being neutral
- C07K5/0804—Tripeptides with the first amino acid being neutral and aliphatic
- C07K5/081—Tripeptides with the first amino acid being neutral and aliphatic the side chain containing O or S as heteroatoms, e.g. Cys, Ser
Landscapes
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Immunology (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
- Veterinary Medicine (AREA)
- Animal Behavior & Ethology (AREA)
- Public Health (AREA)
- Pharmacology & Pharmacy (AREA)
- Gastroenterology & Hepatology (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- Molecular Biology (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
- Biophysics (AREA)
- Epidemiology (AREA)
- Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
- Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
- Toxicology (AREA)
- Zoology (AREA)
- Endocrinology (AREA)
- Transplantation (AREA)
- General Chemical & Material Sciences (AREA)
- Cell Biology (AREA)
- Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
- Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
- Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
- Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
- Peptides Or Proteins (AREA)
Abstract
Description
発明の分野
本発明は、末梢血細胞の表面上に見られるN−ホルミルペプチド受容体に関しており、特にこのような受容体とG蛋白質シグナル伝達経路を変更するか、または中断する薬剤、特にある種のN−ホルミルペプチドとの複合体、および炎症誘発物質による共同刺激によってシグナル伝達を変更する方法に関している。
【0002】
発明の背景
人体は、細菌が産生するN−ホルミルメチオニンペプチドを食細胞、特に好中球および単球の化学誘因物質として使用した防御機構を発達させるように進化してきた。N−ホルミルペプチドの中でも、f−Met−Leu−Phe(FMLP)は、好中球を活性化し、好中球からのリソソーム酵素の放出を促進する能力が最も高いことが確認された(Showell他、J.Exp.Med.143:1154〜1169、1976)。その後、合成したテトラペプチド、特にf−Met−Ile−Phe−Leuおよびf−Met−Leu−Phe−Ileはまた、好中球応答を誘発することが示された(Rot他、Proc.Natl.Acad.Scie.USA 84:7967〜7971、1987)。これらのペプチドの能力は、当初は(1)N末端のホルミル基、(2)メチオニン側鎖、および(3)ロイシンおよびフェニルアラニン側鎖によるものとされた。
【0003】
N−ホルミルペプチド受容体(FPR)cDNAのクローニングに続いてFPR蛋白質の1次構造が明らかにされたことによって、N−ホルミルペプチドの作用機構が躍進的に理解された(Boulay他、Biochemistry 29:11123〜11133、1990;Boulay他、Biochem.Biophys.Res.Commun.168:1103〜1109、1990)。FPRは好中球および単球上で最初に発見されたが、その後ヒト脳、肝細胞、樹状細胞、および星状細胞でも発現していることが示された(Lacy他、J.Neuroimmunol.61:71〜78、1995;Sozzani他、J.Immunol.155:3292〜3295、1995)。その後、さらに2種のFPR遺伝子、FPR2(FPRL1およびFPRH1としても知られる)(Boa他、Genomics 13:437〜440、1992;Murphy他、J.Biol.Chem.267:7637〜7643、1992;Ye他、Biochem.Biophys.Res.Commun.184:582〜589、1992)およびFPRL2(Bao他、前述)が単離された。FPRL1は、351個のアミノ酸から成り、FPRと70%が同一であるが、FMLPに対する親和性が最初のFPRの400倍であることが発見された(Kd=1nM)。FPRL2はFPRと56%同一で、FPRL1とは83%同一である。しかし、単球と好中球の両者に発現するFPRL1とは異なり、FPRL2は単球では発見されたが好中球では発見されなかった(Durstin他、Biochem.Biophys.Res.Commun.210:174〜179、1994)。
【0004】
FPRには、原形質膜に広がり、細胞外空間または細胞内空間のいずれかに暴露した親水性配列が結合した7個の疎水性ドメインが含まれている(Murphy、Annu.Rev.Immunol.12:593〜633、1994)。第1および第3の細胞内ループは比較的小さくて、それぞれ5個および16個のアミノ酸から成る。カルボキシ末端は細胞内空間にさらされており、一方N末端は細胞外空間にさらされている。細胞内配列にはさらに、G蛋白質結合ドメイン(以下に論じる様な受容体の機能に必須なドメイン)およびリン酸化を行うドメインが含まれる。
【0005】
FMLP結合ドメインは、FPRの第1および第3の細胞外ドメインに位置するようである(Quehenberger他、J.Biol.Chem.268:18167〜18175、1993)。さらに、FMLP結合に対する結合状態が高親和性と低親和性で交互するといったFPR状態の相互変換性が指摘されている(Kermode他、Biochem.J.276:715〜723、1991)。G蛋白質は、このような相互交換状態を調節するものと考えられる。G蛋白質の関与なしで、FPRだけでは親和性の状態は低く、一方FPRがG蛋白質に結合すると高い親和性の状態が示される。様々なペプチドに認められる様々な効果を説明するために、さらにG蛋白質結合FPRを3種の異なる状態にモデル分けした。状態Iは、FPRはG蛋白質とは関与せず、親和性の低い状態であるが、G蛋白質と結合することによって親和性の高い状態、状態IIに変換することができる。状態IIIは受容体がリガンドと結合しながら、G蛋白質のGαサブユニットを遊離する親和性の高い中間的な状態である。状態IVは一時的に親和性の低い状態で、残存するG蛋白質サブユニット(GβおよびGγ)が受容体から分離する。G蛋白質Gαサブユニットの分離によって、G蛋白質のエフェクター機能が引き起こされ、細胞活性化が生じる。同様のモデルがSklar他(J.Biol.Chem.264:8483〜8486、1989)によっても提案された。
【0006】
前記モデルでは、ペプチドの効果は状態IIIでの滞留時間によって決定される(Kermode他、前述)。著者等は、fMet−Leu−Phe−PheおよびfMet−Leu−Phe−NHBzlなどの最も効果の高いホルミルペプチドが状態IIIを一時的に安定化して維持すると直ちに脱顆粒応答の引き金となるが、この状態IIIの期間では走化応答のシグナルが持続して、最大限の移動が可能になることを提案した。効果の低いホルミルペプチドによっては、高親和性の状態IIIから低親和性の状態IVへの変換が迅速に媒介される。状態IIIでの初期脱顆粒応答は影響を受けないが、走化性シグナリング能は最小限になり、したがって細胞移動は制限される。したがって、一般に、高い効果のリガンドは高い親和性状態のFPRと結合することによって走化性応答をもたらし、低い効果のリガンドは親和性の低いFPRと結合することによって脱顆粒応答をもたらすと言うことができる。
【0007】
アゴニスト活性およびアンタゴニスト活性はまた、このモデルを使用して定義することができる。アゴニストは活性化した受容体の状態IIIを安定化して、安定化の程度はその効果によって変わる。一方、アンタゴニストは受容体に結合するが、活性化した状態IIIを不安定にし、受容体を不活性化する。このようなモデルはFPRに限定されるものではない。
【0008】
さらに、脱顆粒はリガンドが受容体に結合したときに起こると言われており、同一または異なる受容体は同一または異なるリガンドによるその後の刺激に対して耐性になる。このような脱感作状態が通常の細胞活性化過程で受容体が占有された後に生じると、状態IIIの不安定化が起こり、または受容体占有前に生じると状態IIIは達成されない。無反応性状態または受容体不活性が1刺激物によって誘導され、複数のリガンドが結合していない受容体にも影響が及ぼされる場合、この状態を異種脱感作と呼ぶ。
【0009】
最もよく研究されているN−ホルミルペプチドはf−Met−Leu−Phe(FMLPまたはfMLP)である。しかし、より能力のあるペプチド、特にfMet−Leu−Phe−Phe、fMet−Leu−Phe−NHBzl(fMet−Leu−Pheベンジルアミド)、およびNle−Leu−Phe−Tyr(N−ホルミル−L−ノルロイシル−Leu−Phe−Tyr)(Kermode他、前述)は、in vitroにおいてウサギの好中球上に受容体があることが特徴である。これらは、最大の移動度(20〜35μmの程度)および脱顆粒(10−10から10−11の程度のED50)を示す。ごく最近の研究では、ホルミル化されていないペプチドもまたFPRに結合することが可能で、好中球機能の効果的な活性化剤として作用できることが指摘された。たとえば、Met−Met−Trp−Leu−Leuは効果的なペンタペプチドで、FMLPに匹敵する活性を有する(Chen他、J.Biol.Chem.270:23398〜23401、1995)。ペンタペプチドをN−ホルミル型へ変換するとその効果は100〜500倍に増大し、厳密に言えば生物学的活性はN−ホルミル化によって決定されないようであるが、N−ホルミル化がまだペプチドの効果に重要な役割を果たしていることが示された。
【0010】
その他の変更をペプチドに与えることによって、ペプチドの中には効果的なFPRのアゴニストに変換できるものがあることが示された(Derian他、Biochemistry 35:1265〜1269、1996;Higgins他、J.Med.Chem.39:1013〜1017、1996)。このような変更には、アミノ末端基のウレア置換およびカルバメート修飾が含まれる。さらに、スーパーオキシドアニオン放出および好中球の血管内皮への付着によって測定すると、MLFペプチドのアミノ酸組成を変更することによって、FPRのアゴニストがアンタゴニストに変換することも示された。
【0011】
好中球のFPRを介したN−ホルミルペプチドによって刺激される走化性はよく研究されている。N−ホルミルペプチドによって刺激される前であっても、好中球は一時的に内皮細胞に発現したP−セレクチンに結合する。炎症部位で発生するN−ホルミルペプチドによって媒介される好中球の活性化によって、この部位に好中球の蓄積が引き起こされる。N−ホルミルペプチドは好中球上のL−セレクチンを促進させ、好中球を内皮上でローリングさせ、続いて好中球の表面上でインテグリンを促進させる。インテグリンは、細胞−細胞および細胞−細胞外マトリックス相互反応を媒介し、ラミニン、フィブロネクチン、ビクトロネクチン、並びにICAM(細胞内細胞接着分子)および内皮上に認められるVCAM(血管細胞接着分子)と結合する。インテグリンとICAMおよびVCAMが結合すると、細胞骨格との相互反応によって好中球の内部にシグナルが伝達される。次いで、好中球はL−セレクチンを発現し、内皮に沿って広がり始める。次いで、内皮細胞上でE−セレクチンおよびICAM−1が促進されると、好中球が内皮を横断して移動する(Luscinskas他、J.Immunol.146:1617〜1625、1991)。内皮バリアを突破すると、好中球はN−ホルミルペプチドの濃度勾配を感知して炎症部位に向かって移動する。高いペプチド濃度を含む最終目的地に到達すると、好中球は好細菌作用を一気に解き放つ。
【0012】
刺激された好中球は迅速にレスピラトリーバーストオキシダーゼを活性化し、スーパーオキシドラジカルO2 −の発生を触媒する。スーパーオキシドラジカルは他の分子と反応して、過酸化水素および次亜塩素酸を生じ、この両者は反応性の高い物質で、したがって効果的に微生物機能を妨害する。脱顆粒はまた、外来微生物の破壊に効果的な手段である。しかし、脱顆粒はまた、宿主の組織に損傷を与える。食作用は、外来微生物を排除する好中球の別の機構である。これらの機能の多くは、第2メッセンジャーとしてホスホリパーゼを使用したG蛋白質によって誘発され、3種類のホスホリパーゼが特徴付けられている。
【0013】
ホスホリパーゼC、PLCβ2は2個の第2メッセンジャー、1,4,5−イノシトール三リン酸(IP3)およびジアシルグリセロール(DG)を発生する。FPR活性化中に発生したG蛋白質のβγサブユニットは、PLCβ2を活性化する。IP3はある種のカルシウムチャンネルに結合して、細胞内貯蔵所からのカルシウムの放出を促進し、化学誘引物質による刺激の最中に観察される細胞質ゾル中のカルシウム濃度の増加をもたらす。カルシウムの放出と相まって、DGは蛋白質キナーゼ(PKC)を活性化する。最近、G蛋白質活性化PLCキナーゼが、Ca2+増加に関連したラットの腹膜細胞のin vitroにおける肥満細胞脱顆粒の主要な経路であるとして文献で報告された(Beaven他、J.of Immunology 160:5136〜5144、1998)。
【0014】
ホスホリパーゼA2(PLA2)は、原形質膜の内面のリン脂質からアラキドン酸を生じさせる。アラキドン酸は、ロイコトリエンおよびプロスタグランジンなどの炎症伝達物質の前駆体を形成する。PLA2はマイトジェン活性化蛋白質(MAP)キナーゼによるリン酸化で活性化される。
【0015】
第3のホスホリパーゼはホスホリパーゼD(PLD)で、ホスファチジルコリンからホスファチジン酸およびコリンを生成する。ホスファチジン酸はPKCを活性化するDGを産生する役割に加えて、レスピラトリーバーストオキシダーゼの活性化に関与することが可能である。しかし、PLDの活性化にはカルシウムが必要で、FMLPはカルシウム喪失細胞ではPLDを刺激することができない(Kessels他、J.Biol.Chem.266:23152〜23156、1991)。さらに、G蛋白質ArfおよびG蛋白質RhoはPLD活性を調節するようである(Brown他、Cell 75:1137〜1144、1993;Cockcroft他、Science 263:523〜526、1994;Singer他、J.Biol.Chem.270:14944〜14950、1995)。
【0016】
蛋白質リン酸化は、FMLPによって開始するシグナル伝達で中心的な役割を果たす。FMLP刺激の結果、3種の主要なキナーゼが蛋白質のリン酸化に関与する。
【0017】
前述のように、PKCはPLCによって産生されたDGによって活性化される。PKCはセリンおよびトレオニン残基をリン酸化するように作用する。PKCは、6個の異なるアイソフォームから成り、そのうち3種(α、βおよびγ型)は細胞内カルシウムに感受性で、3種(δ、εおよびζ型)は非感受性である。好中球には、α、βおよびζ型が含まれるが、γ型は含まれない。カルシウム依存性およびDG依存性PKC(PKC−β)は、細胞質ゾルから膜に移動することによってFMLPおよびホルボールエステル刺激に応答する。次いで、レスピラトリーバーストオキシダーゼ系に関与するものなどのいくつかの細胞質ゾル蛋白質をリン酸化する。FMLPはまた、カルシウム依存性、DG依存性およびホスファチジルセリン依存性PKC型を活性化することができるが、その機能は明らかではない。
【0018】
MAPキナーゼ(MAPK)はRasおよびRafの活性によるGタンパク質のβγサブユニットによって活性化される。最近の文献で、高強度のRasシグナリングがアポトーシス(Bar−Sagi他、J.Mol.Cell Biol.19(9):5892〜901、1999)並びに内皮細胞接着の促進(Finkel他、........)と関連があることが示唆された。Rafは、細胞の生存、増殖および分化を含めた増殖シグナルにおいて中心的な役割を担うことが今や明らかになった(Rapp他、........)。このキナーゼの経路はまた、C5aおよびIL−8によって誘発される(Buhl他、J.Biol.Chem.270:19828〜19832、1995;Knall他、J.Biol.Chem.271:2832〜2838、1996)。MAPキナーゼはいくつかの調節蛋白質、たとえば細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)−1のチロシンリン酸化を誘導する。最近の文献で、MAPK経路はサイトカインの産生に深く関わっていることが示唆されている。しかし、TH−1およびTH−2サイトカイン両者、並びにその他の炎症誘発分子、たとえばC5a、IL−8およびFMLPの活性化は、G蛋白質3量体のシグナル伝達に左右される。
【0019】
ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)は、FMLPによる刺激時に観察されるPI三リン酸(PIP3)の形成に重要である。PIP3濃度の上昇は、明らかにレスピラトリーバーストオキシダーゼ系の活性化および好中球のアクチン重合化に関与しており、細胞骨格の変化および細胞移動の調節に重要であると考えられる。最近の文献で(Rankin他、J.Exp.Med.188(9):1621〜32、1998)、PI3キナーゼ濃度が上昇するとまた、G蛋白質のシグナリングに基づくIL−5の活性化に基づいて、好酸球の脱顆粒が促進される可能性があることが報告された。さらに、Sagi−Eisenberg他、Eur.J.Immunol、1998.28:3468〜3478は、G蛋白質シグナリングは、PKCおよびPI3キナーゼの中間経路を使用して、IgEによるFCεR受容体を活性化することが可能で、ヒスタミンおよびアレルギー性気道過敏に関与するその他の炎症誘発性サイトカインを放出させることを示唆した。Uckun他、J.of Biolog.Chemistry、Vol.274、No.38、Sep.、1999、pp.27028〜27038は、IgE/FCεR1の架橋結合を介して、肥満細胞の脱顆粒を導くJAK3キナーゼ経路におけるG蛋白質シグナリングを報告している。Beaven他、J.of Immunology、1998、160:5136〜5144は、G蛋白質シグナリングはまた、PKCを活性化させ、Ca2+の取り込みをもたらして、肥満細胞の分泌および脱顆粒を導くことを報告している。したがって、G蛋白質は、IgE抗原攻撃によるFCεR1の下流標的の活性化に必須である可能性があり、G蛋白質シグナリングを妨害する対応能力は、FCεR受容体活性化の下流阻害の重要な基盤となることが可能である。
【0020】
ウサギ好中球FPRのいくつかのアンタゴニストが同定されているが、分子がアンタゴニストであることを明確にする特性はまだ明らかになっていない。FMLPのある種のブトキシカルボニル類縁体は、走化性ペプチド誘導細胞活性化と競合阻害することが示され、中でもBocPLPLPが最も効果が高いことが発見された(Schiffman他、FEBS Lett.117:1、1980;Freer他、Biochemistry 19:2404、1980;Kanaho他、J.Leukocyte Biol.47:420、1990)。サイクロスポリンH、環状ウンデカペプチドおよびサイクロスポリンAはまた、ホルミルペプチド受容体のアンタゴニストとしての活性を有することが示された(Wenzel−Seifert他、J.Immunol.150:4591〜4599、1993)。天然に生じるホルミルペプチド受容体アンタゴニストもまた同定されており、レトロウイルス由来ヘキサペプチドがある(Oostendorp他、J.Immunol.149:1010、1992)。しかし、これらのアンタゴニストはいずれも高親和性ではホルミルペプチド受容体に結合せず、したがって研究手段または抗炎症剤として実際的には使用されない。
【0021】
興味深いことに、N−ホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニンによって肥満細胞の脱顆粒が阻害されることがInflammation、Vol.5、No.1、pp.13〜16(1981)で報告された。そこでは、2種の構造的に異なる走化性ペプチド、すなわちペプスタチンおよびN−ホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニンが、40/80、好ラットIgE血清、またはウシ肺から単離された高分子アニオン透過性因子を皮下注射することによって生じたラット皮膚の血管透過性の増加を阻害することが報告された。これらのペプチドは直接肥満細胞に作用するようであることが報告された。FPRは肥満細胞上で発現することは報告されていないので、このような阻害の機構は明らかではない。
【0022】
FPRの機能および機構に関して回答されていない疑問がたくさんあることは明らかである。さらに、FPRが非白血球細胞、たとえば脳細胞および樹状細胞で発現していることが発見されたことによって、FPRがその他の細胞種においてさらに解明されるべき新規の機能を遂行している可能性がある。したがって、細胞の炎症誘発応答を阻害する他の薬剤が、細胞の炎症誘発応答を研究する方法と共に必要とされている。
【0023】
発明の概要
ここでは、ヒト末梢血単核細胞または多核白血球、または固定組織細胞を、炎症誘発物質(pro−inflammatory agent)でこのような細胞を刺激した後にG蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質で処理すると、通常の炎症誘発応答、特に炎症誘発物質、たとえばC5a、FMLP、IL−4、IL−6、IL−8、IL−10、IL−13およびTNFαまたはFCε受容体によって誘導される下流の炎症誘発応答(pro−inflammatory response)が阻害されることが発見された。G蛋白質の細胞産生が変化すると、G蛋白質によって媒介される炎症応答シグナル伝達経路が阻害される。特に有用なG蛋白質キナーゼ伝達経路変更剤は、式f−Met−Leu Xを有するN−ホルミル−メチオニル−ロイシル(「f−Met−Leu」)ペプチドであって、式中、XはTyr、Tyr−Phe、Phe−PheおよびPhe−Tyrから成る群から選択されたペプチド、最も好ましくはf−Met−Leu−Phe−Pheである。
【0024】
ヒト末梢血単核細胞または多核白血球または固定した組織細胞は、リンパ球および顆粒球、好ましくは好酸球、好塩基球、および活性化したT細胞、および肥満細胞であることが可能である。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路修飾剤は、炎症誘発物質が存在するとG蛋白質サブユニットγのリン酸化を阻害する、これらの細胞に存在する細胞表面受容体、好ましくはホルミルペプチド受容体(「FPR」)との複合体を形成する。さらに、G蛋白質の下流リン酸化を阻害またはブロックすることによって、3量体G蛋白質成分に依存した様々な経路が細胞の炎症誘発物質に対する応答をブロックまたは抑制する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、ある濃度のFCε受容体(FCεR)では、IgEが存在すると、このG蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質がIgEによるFCεRの活性化を阻害する。
【0027】
本発明では、ヒト末梢血単核細胞または多核白血球または固定組織細胞の刺激に使用する炎症誘発物質は、サイトカイン、ケモタキシン、またはマイトジェンであることが好ましい。特に好ましい炎症誘発物質は、FMLPなどのN−ホルミルペプチド、活性化した補体断片(C5a)、ロイコトリエンB4(LTB4)、血小板活性化因子(PAF)、およびTNFα、IL−4、IL−6、IL−8、IL−10、およびIL−13などのサイトカイン、および抗原を架橋結合したIgE、IgGまたはIgAである。
【0028】
本発明の他の実施形態では、ヒト末梢血単核細胞または多核白血球細胞の炎症誘発応答を阻害する方法が提供され、この方法には細胞をG蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質とを接触させること、およびこの薬剤を細胞の受容体に結合させることが含まれる。炎症誘発媒介細胞は、リンパ球または顆粒球であることが可能である。この細胞はまず前述のような炎症誘発物質によって刺激されていることが好ましい。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、リガンド結合受容体は、ホルミルペプチド受容体である。FCεR受容体のG蛋白質活性化の下流をブロックすることによって同様の治療上の利益がもたらされる。
【0030】
本発明はさらに、G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質の同定方法を提供し、この方法には、
a)活性化Tリンパ球、肥満細胞、好酸球および好塩基球から成る群から選択された炎症誘発媒介細胞を、サイトカイン、ケモタキシン、およびマイトジェンから成る群から選択された公知の炎症誘発媒介物と接触させて炎症誘発応答を惹起する段階、
b)段階a)にG蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質候補を添加する段階、および
c)G蛋白質キナーゼの量の減少またはG蛋白質キナーゼの失活を検出して、(i)同時に前記候補薬剤および前記炎症誘発媒介物と接触した炎症誘発細胞を(ii)前記炎症誘発媒介物とのみ接触した炎症誘発細胞と比較して分離する段階が含まれる。
【0031】
好ましいG蛋白質キナーゼはG蛋白質γキナーゼである。
【0032】
本発明の他の実施形態では、G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質と複合した受容体は、炎症誘発媒介細胞とG蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質とを接触させ、それによって炎症誘発応答を阻害することによって、活性化Tリンパ球、肥満細胞、好酸球および好塩基球から成る群から選択された炎症誘発媒介細胞の表面上に表れる。
【0033】
本発明のさらに他の実施形態では、G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質の同定方法には、
活性化Tリンパ球、肥満細胞、好酸球および好塩基球から成る群から選択された炎症誘発媒介細胞を、G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質候補物質と接触させる段階、および
前記細胞によって産生した蛋白質キナーゼの分配であって、G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質候補と接触していない細胞とを比較すると、PLCγ、Pp60 Src、およびERK−1の量変化がなく、PI3(102Kd)およびPI3(83Kd)の量が増加しており、Raf、Ras、G蛋白質αキナーゼおよびG蛋白質βキナーゼの量が減少している分配を決定する段階が含まれる。
【0034】
したがって、本発明はまた細胞表面受容体およびG蛋白質シグナル伝達経路変更物質を含むヒト末梢血単核細胞または多核白血球細胞の新規受容体複合体であって、前記受容体複合体を表していない細胞と比較して、細胞における蛋白質キナーゼの分配が、PLCγ、Pp60 Src、およびERK−1の量変化がなく、PI3(102Kd)およびPI3(83Kd)の量が増加しており、Raf、Ras、G蛋白質αキナーゼおよびG蛋白質βキナーゼの量が減少しているようになっている新規複合体を提供する。細胞表面受容体は、FPR受容体であることが好ましい。FCεR受容体のG蛋白質活性化の2次ブロックもまた好ましい。
【0035】
G蛋白質シグナル伝達経路変更物質と複合した細胞表面受容体を有するヒト末梢血単核細胞または多核白血球のIL−4による刺激によって、前記受容体複合体を表していない刺激された細胞と比較して、PLCγ、PI3(102Kd)およびPI3(83Kd)の量が増加しており、RasおよびG蛋白質γキナーゼの量が減少している前記細胞によって産生された蛋白質キナーゼの分配がもたらされる。
【0036】
G蛋白質シグナル伝達経路変更物質と複合した細胞表面受容体を有するヒト末梢血単核細胞または多核白血球のIL−6による刺激によって、前記受容体複合体を表していない刺激された細胞と比較して、PLCγ、PI3(102Kd)、Raf、Pp60 Src、ERK−1およびG蛋白質αキナーゼの量が増加しており、PI3(83Kd)、G蛋白質βキナーゼおよびG蛋白質γキナーゼの量が減少している前記細胞によって産生された蛋白質キナーゼの分配がもたらされる。
【0037】
G蛋白質シグナル伝達経路変更物質と複合した細胞表面受容体を有するヒト末梢血単核細胞または多核白血球のIL−10による刺激によって、前記受容体複合体を表していない刺激された細胞と比較して、PI3(102Kd)、ERK−1およびG蛋白質γの量が増加しており、PLCγ、PI3(83Kd)、Rasおよびキナーゼの量が減少している前記細胞によって産生された蛋白質キナーゼの分配がもたらされる。
【0038】
G蛋白質シグナル伝達経路変更物質と複合した細胞表面受容体を有するヒト末梢血単核細胞または多核白血球の炎症誘発物質、IL−13による刺激によって、前記受容体複合体を表していない刺激された細胞と比較して、PLCγ、PI3(102Kd)、PI3(83Kd)、ERK−1およびRafの量が増加しており、Ras、Pp60 Src、G蛋白質αキナーゼ、G蛋白質βキナーゼおよびG蛋白質γキナーゼの量が減少している前記細胞によって産生された蛋白質キナーゼの分配がもたらされる。
【0039】
G蛋白質シグナル伝達経路変更物質と複合した細胞表面受容体を有するヒト末梢血単核細胞または多核白血球の炎症誘発物質、C5aによる刺激によって、前記受容体複合体を表していない刺激された細胞と比較して、Pp60 SrcおよびRafが増加しており、PLCγ、PI3(102Kd)、G蛋白質αキナーゼ、G蛋白質βキナーゼおよびG蛋白質γキナーゼの量が減少している前記細胞によって産生された蛋白質キナーゼの分配がもたらされる。
【0040】
G蛋白質シグナル伝達経路変更物質と複合した細胞表面受容体を有するヒト末梢血単核細胞または多核白血球の炎症誘発物質、TNFαによる刺激によって、前記受容体複合体を表していない刺激された細胞と比較して、Raf、Ras、およびPp60 Srcが増加しており、PLCγ、PI3(83Kd)、G蛋白質αキナーゼ、G蛋白質βキナーゼおよびG蛋白質γキナーゼの量が減少している前記細胞によって産生された蛋白質キナーゼの分配がもたらされる。
【0041】
図面の簡単な説明
図1は、ヒト末梢血有核細胞に対するFITC標識HK−X(f−Met−Leu−Phe−Phe)の結合を示すグラフである。
【0042】
図2A〜図2Cは、活性化リンパ球に対するFITC標識HK−X結合の点プロットである。図2Aは、100nMFITC標識HK−Xを添加して、培養24時間後の6μgのコンカナバリンA(ConA)で刺激化されたリンパ球を示す。図2Bは、FITC標識HK−Xなしで、培養120時間後の6μgConAで刺激化されたリンパ球を示す。図2Cは、100nMFITC標識HK−Xを添加して、培養120時間後の6μgConAで刺激化されたリンパ球を示す。
【0043】
図3A〜図3Bは、図2A〜図2Cのリンパ球のDNA含量ヒストグラムである。図3Aは、図2Aの細胞のヒストグラムである。図3Bは、図2Bと図2Cの細胞のヒストグラムである。
【0044】
図4は、全ヒト好中球ライゼートから回収された35S−メチオニン標識化蛋白質と種々の樹脂とのオートラジオグラフである。
【0045】
図5A〜図5Bは、媒体(0.3%DMSO)で処理した単核細胞内のリン酸化蛋白質の存在を、ホスホチロシンに対するモノクロ−ナル抗体によって検出したものを示す。図5Aは、正常細胞のSDS−PAGEのデンシトメトリーであり、図5Bは、媒体(DMSO)のみで処理した正常細胞のSDS−PAGEゲルの写真である。
【0046】
図6A〜図6Bは、HK−Xで処理した単核細胞内のリン酸化蛋白質の存在を、ホスホチロシンに対するモノクロ−ナル抗体によって検出したものを示す。図6Aは、HK−X処理細胞のSDS−PAGEのデンシトメトリーであり、図6Bは、HK−Xのみで処理した正常細胞のSDS−PAGEの写真である。
【0047】
図7A〜図7Bは、IL−8で処理した単核細胞内のリン酸化蛋白質の存在を、ホスホチロシンに対するモノクロ−ナル抗体によって検出したものを示す。図7AはIL−8処理細胞のSDS−PAGEのデンシトメトリーであり、図7Bは、IL−8のみで処理した正常細胞のSDS−PAGEの写真である。
【0048】
図8A〜図8Bは、HK−XおよびIL−Aで処理した単核細胞内のリン酸化蛋白質の存在を、ホスホチロシンに対するモノクロ−ナル抗体によって検出したものを示す。図8Aは、HK−XおよびIL−A処理細胞のSDS−PAGEのデンシトメトリーであり、図8Bは、HK−XおよびIL−8で処理したで処理した正常細胞のSDS−PAGEの写真である。
【0049】
図9A〜図9Bは、末梢血から新たに採取した単核細胞内のリン酸化蛋白質の存在を、ホスホチロシンに対するモノクロ−ナル抗体によって検出したものを示す。図9Aは、新たに採取した細胞のSDS−PAGEのデンシトメトリーであり、図9Bは、新たに採取した細胞のSDS−PAGEゲルの写真である。
【0050】
発明の詳細な説明
本発明によれば、G−蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質は、炎症誘発物質または分子により刺激されたヒト末梢血細胞のある種の炎症誘発性反応を不活化することが見出された。
【0051】
本発明による好ましいG−蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質は、リンパ球、特に活性化T細胞、好酸球、好塩基球などの顆粒細胞、肥満細胞などの固定組織細胞などの炎症誘発性媒介細胞上に見られるレセプターに結合することができる。
【0052】
G−蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質がそのレセプターに結合すると、炎症誘発性反応が阻害される。本発明の好ましい実施形態により、G蛋白質のサブユニット、α、β、γが修飾され、これらのサブユニットのリン酸化もまた阻害される。薬剤−レセプター複合体により阻害され得る炎症誘発性反応は、レセプターを保持している細胞の分泌、脱顆粒、移動および他の炎症誘発性分子の合成および分泌である。
【0053】
本発明のG−蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質は、炎症誘発性分子によって前もって刺激されたレセプターを不活化することができ、刺激されていない細胞には作用を及ぼさないことが好ましい。細胞刺激に有用な炎症誘発性物質の例としては、IL−8、N−ホルミルペプチド類、活性化補体断片(C5a)、ロイコトリエンB4(LTB4)および血小板活性化因子(PAF)がある。本発明の薬剤−レセプター複合体は、同一の炎症誘発性剤による、または異なった炎症誘発性剤によるさらなる刺激からレセプターを脱感作することもできることが好ましい。
【0054】
レセプター保持細胞に及ぼすG−蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質−レセプター複合体に認められる作用を、G−蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質の同定に用いることができる。このような薬剤のスクリーニングは、炎症誘発性媒介細胞を知られた炎症誘発性媒介物質と接触させることによって、炎症誘発性反応を誘導し、その後、候補となる薬剤を加え、候補となる薬剤と炎症誘発性分子とに同時に接触させた炎症誘発性細胞内のG蛋白質キナーゼ量の減少を、炎症誘発性分子のみと接触させた炎症誘発性媒介細胞内のその量と比較して検出することにより実施することができる。
【0055】
特に有用なG−蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質は、f−Met−Leu−Phe−Pheである。他の有用な薬剤は、上記手順の1つを用いて、慣例的な試験により同定することができる。
【0056】
本明細書で用いられている炎症誘発性反応は、炎症誘発性媒介細胞の分泌または脱顆粒およびロイコトリエン類、ヒスタミン類および他のサイトカインの放出を含む。このような反応はまた、リンパ球、好酸球、好塩基球、肥満細胞および好中球の走化性吸着、移動および凝集結果としての好酸球、好塩基球および肥満細胞の炎症組織への湿潤を含む。炎症部位の血管透過性とIgE、IgG、IgAの産生亢進、およびそれら各々のFCレセプターもまた、炎症誘発性反応に関与し得る。
【0057】
このように炎症誘発性反応の阻害は、本発明によるペプチド−レセプター結合に引き続いての炎症誘発性媒介細胞による脱顆粒化およびロイコトリエン、ヒスタミンおよびその他のサイトカイン類放出の減少、または好ましい実施形態においては完全な停止を含む。炎症誘発性媒介細胞の湿潤および移動もまた、大きく減少または完全に阻害され得る。炎症部位における血管透過性およびIgE濃度もまた減少し得る。
【0058】
本明細書に説明された本発明をさらに十分に理解できるように、以下に実施例を挙げる。これらの実施例は説明の目的のためであって、いかなる様式においても本発明を限定するように解釈すべきでないことを理解する必要がある。
【0059】
実施例1:末梢血有核細胞に対する標識HK−Xの結合
末梢血有核細胞上のHK−X(「f−Met−Leu−Phe−Phe」)のKdおよびBmax(飽和結合)を測定した。密度勾配遠心分離により調製した種々のフラクション(単球、リンパ球、顆粒球)の100μl溶液中2×105細胞を0.1%アジ化ナトリウムを含有する1%BSA−PBS中で予め洗浄した。FITC標識したHK−X(1%BSA−PBS溶液中)の下記のモル濃度100μlを表1によるチューブの各セットに加えた。
【0060】
【表1】
【0061】
チューブを混合し、30秒間混和させた。次にチューブを4〜8℃で30分間保持した。次に100μlのCal−Lyseを加え、5分間温置または500μlの1%ホルムアルデヒドを加えた。Cal−Lyseを加えた場合は、1mlの水を加えてさらに5分間温置した。次に細胞をフローサイトメーター(Coulter Epics Elite)上で分析した。結合結果を図1に示す。Bmaxは47.66、Kd=1.674×10−10Mと決定した。したがって、これらの結果は、単球、リンパ球、顆粒球などの末梢血有核細胞に対してHK−Xが結合していることを示している。
【0062】
同様な方法によって、H−KXは、は、好中球に対する知られた結合と同様、活性化T細胞、肥満細胞、好酸球、好塩基球に対して結合していることも確認された。
【0063】
実施例2:活性化レセプターに対するHK−Xの結合
末梢血リンパ球は、培養24時間後、または120時間後にマイトジェンのコンカナバリンA(CoA)によって刺激した。次に細胞を100nM FITC標識HK−Xに曝露したか、または曝露しなかった。また、細胞を細胞サイクル期決定のため、DAPIで染色した。次に細胞をフローサイトメトリーにより分析した。
【0064】
図2A〜図2Cは、ConAにより活性化したリンパ球と、FITC標識HK−Xの結合部位の発現との関係を示している。この4つの4分画区分は以下の特徴を表している:
左上の4分画区分は、DNA含量が1nより高く、図1のプロフィルを用いて確立されたバックグラウンド濃度よりもFITC HK−X結合濃度が上昇している細胞を表している;
右上の4分画区分は、DNA含量が1nより高く、バックグラウンドより大きなFITC−リガンド結合を有した細胞を表している;
右下の4分画区分は、DNA含量が1nよりも低いが、FITC−リガンド結合はバックグラウンドより上である細胞を含んでいる;および
左下の4分画区分は、DNA含量が1nでFITC−リガンドがバックグラウンド濃度である細胞を含んでいる。
【0065】
図2Bと図2Cの検討から明らかなように、植物レクチンまたはマイトジェンに対する曝露は、細胞を刺激して細胞サイクルに入らせ、FITC標識HK−Xに対する結合部位を発現する。より長い120時間の培養時間によって、細胞の大部分が細胞サイクルに入ることが可能となった(図2Aと比較して)。内在性蛍光バックグラウンド濃度の最も正確な測定は、ConAと共に培養し、FITC標識HK−Xで染色しなかった細胞(図2Bを参照)を用いて閾(四分画)を設定することにより得られた。
【0066】
統計解析により、点プロットの検討により供された四分画の観察結果が確証された。図2Cの細胞のおよそ25%がDNA含量1n以上を含有し、FITC−リガンド結合は、バックグラウンド濃度以上であった。これは図2Aおよび2Bそれぞれの右上画分にある細胞数と著しく対照的である。
【0067】
細胞サイクルの種々の期における細胞分配のさらに本格的な検討は、Phoenix Software社(アリゾナ州フェニックス)によるソフトウェアパッケージ「Multi Cycle」を用いて得られた。このソフトウェアは、DNAヒストグラムを巻き戻し、成分の適合度と有意性を統計的に解析する。
【0068】
図3Aは、図2Aに含まれる同一のサンプルを示し、図3Bは、図2Bと図2Cに含まれる同一のサンプルを示す。二倍体(DNA含量>1n)である細胞のパーセンテージの検討から明らかなように、フラクションは、図2Aの2.2%から図2Bと図2Cの29%へと上昇した。
【0069】
このように、ヒト末梢血リンパ球のマイトジェンによる刺激は、それらのDNA複製を開始させ、この過程と同時にFITC標識HK−Xに対する結合部位の発現を開始させると思われる。DNA含量が1nである細胞、すなわち細胞サイクルがG0/G1期にある細胞フラクションのみがリガンドに対する結合部位の発現増加を示す。これと対照的に、二倍体DNAの含量(>1n)を有する全ての細胞は、リガンドに対する結合部位を含有する。
【0070】
実施例3:HK−Xレセプターの同定および特性化
HK−Xおよび他のN−ホルミルペプチドに結合するレセプターを、マウス腹膜肥満細胞、ヒト多核白血球および単核細胞個体群より単離し特性化した。さらに、PKC、PI3の増加、およびCa2+移動の下流での結果としてのFCεRレセプターのG蛋白活性化により、FCεレセプターはG蛋白質を妨げる下流エフェクターのレセプターとなる。
【0071】
HK−Xに結合する細胞としては、HK−Xへの曝露後に変化した生物学的反応性により、また蛍光または放射能標識HK−X結合により立証されたように、肥満細胞、好塩基球、好酸球が挙げられる。HK−Xに対するレセプター類は同定されていない。それに対し、好中球はその表面にホルミルペプチドレセプターを発現する。しかし、血液のリンパ球および単球とHK−Xとの結合は、好中球の場合よりも少ないようである。
【0072】
材料および方法の詳細:
1.細胞の単離−麻酔ラットの腹腔内へ35mlのタイロード液の注入によりラットの腹膜肥満細胞を単離した。その後、過剰麻酔剤の注入によりラットを殺処理した。腹膜細胞を採取し、15ml遠心管に入れた。細胞を室温で10分間、250×gでの遠心分離によりペレット化した。
【0073】
ヒト末梢血の単核細胞および多核白血球を、正常ドナーから得た末梢血より単離した。血液はヘパリン中で採取した。Ficoll−Hypaque上、室温、500×gで遠心分離により種々の細胞種を単離した。各フラクションを採取し、別々にプールし、抗生物質を加えたRPMI1640中で1回洗浄した。
【0074】
2.35S−メチオニンによる細胞の代謝的標識 − 細胞を、10μCiの35S−メチオニンを含有するメチオニンの少ないRPMI1640培地の1mlにつき1×107に調整し、5%CO2存在下、37℃で一晩保持した。
【0075】
3.細胞の採取および粗製膜の調製−細胞をPBS中で3回洗浄し、続いて0.3%NP40とプロテイナーゼ阻害剤反応混液を含有するpH7.2のHepes緩衝液中、音波処理によりライゼートした。その結果生じた細胞調製液を600×gで10分間遠心分離し、さらに分析するために上澄み液を採取した。
【0076】
4.種々の細胞蛋白質のセファロースおよびサファロースHK−Xクロマトグラフィ分離−セファロース未置換樹脂またはセファロースHK−X樹脂のカラムに細胞調製液を通過させ、AとBの2つの部分に分けた。
【0077】
アリコートAは、HK−X置換セファロースカラムを通過した。カラムを洗浄し、次にHK−X(5mg/ml)、次いで0.1Mグリシンを含有する緩衝液pH2.5で溶出した。
【0078】
アリコートBは、溶解性HK−Xの存在下、HK−X置換カラムに結合させ、蛋白質を溶出した。各フラクションを濃縮し、凍結乾燥した。
【0079】
本ステップで試みられた方法は、HK−Xをセファロース樹脂に結合してHK−X置換樹脂を作製することを含む。HK−X置換樹脂に曝露する前に、標識された細胞蛋白質混合物を、HK−Xに置換されていない樹脂上を通して、天然樹脂と反応させ、いかなる蛋白質種をも除去した。したがって、レセプター蛋白質を含む細胞蛋白質を、適切なイオン環境下、HK−X置換樹脂を通すと、他の蛋白質の中でレセプター蛋白質(HK−Xレセプターに関する)が、HK−Xと堅固に結合した。樹脂を、中性pHでリン酸緩衝液のような緩和剤と共に洗浄して、いかなる低親和性結合蛋白質をも除去した。引き続いて、樹脂を、過剰量の遊離HK−Xに曝露し、樹脂に結合したレセプター蛋白質を競合的に溶出した。これらの各ステップで遊離された放射活性蛋白質を濃縮して、次のステップに詳述する12%SDS−PAGEシステムにより分析した。
【0080】
5.12%SDS−PAGE−250cpmから2000cpmの放射活性を含む放射活性細胞調製物の25μLをゲルの各レーンに塗布した。着色標準品の良好な分解能が得られるまで、このゲルを30mA、90Vで作動させた。標準品は、ホスホリラーゼb(分子量=94,000);ウシ血清アルブミン(分子量=68,000);オボアルブミン(分子量=43,000);炭酸脱水酵素(分子量=30,000);および大豆トリプシン阻害剤(分子量=21,000)である。
【0081】
6.分解放射活性蛋白質の推定分子量−相対移動度は、標準品、およびゲル上に見られる各々区別される分子量種に対して計算した。標準品の分子量の対数プロットを各標準品の相対移動度に対してプロットした。このデータをPRISMソフトウェアに入力し、未知蛋白質の分子量を標準カーブプログラムから予測した。これらの結果を、文献(Goetzl他、Biochemistry20:5717−5722、1981)に公表されたFPRレセプター蛋白質と比較した。
【0082】
図4は代表的な実験の結果を示す。細胞ライゼートに存在する全ての蛋白質がAレーンに示される。Bレーンでは、HK−Xの置換なしのセファロースカラムからの非結合物質が、全細胞ライゼートと同様の蛋白質バンド分配パターンを示す。Cレーンは溶出前の物質を含む。Dレーンはブランクレーンである。Eレーンでは、カラムを1mgのHK−X(競合品)の存在下で溶出すると3本の蛋白質バンドを見ることができる。分子量は、それぞれ〜94,000、〜68,000および〜40,000Doltonと推定される。この実験条件は、結合の特異性を確証した。
【0083】
本実験条件で溶出されたバンドのGoetzl他によって報告されたものに対する相対存在率の比較により、興味深い相違が明らかにされた(表2を参照)。レセプター類の標準化比率の検討により、FMLPカラム(Goetzl)およびHK−Xカラム(本実施例)から回収された3種の分配における本質的な相違が明らかにされる。68Kd種は、FMLP親和性カラムからGoetzl他により回収された優性種であったが、一方、40Kd種はHK−X親和性カラムから回収された優性種であった。
【0084】
【表2】
【0085】
1mgのHK−Xの添加によりラット腹膜肥満細胞から溶出された3種の分子種があることが、図4におけるラジオオートグラフから明白である。これらの蛋白質の計算された分子量は、Goetzl他によって報告された分子サイズと一致する。HK−Xとの競合後回収された蛋白質、またはラット腹膜肥満細胞および好中球からの酸の分子量は、ヒト好中球に関してGoetzlにより報告されたものと同じであった。
【0086】
40Kd分子におけるメチオニンの全平均残基数は5.1個であるが、1分子につきそれぞれ11個および14個の残基を含む68,000および94,000種のいずれよりも強いラジオグラフ画像を有する。本実施例において、回収された各蛋白質種の相対存在率は、35S−メチオニンにより生合成的放射標識により決定された。親和性クロマトグラフィから回収された相対比率は、オートラジオグラフからの曲線下面積の積分により決定された。Goetzlは、化学的方法による蛋白質の決定により各蛋白質の相対存在率を測定した。したがって、2つの研究において回収された蛋白質分配をより正確に比較するために、分配値を、各々の種の相対存在率をメチオニン残基数で割ることにより標準化した。この比率は、方法論における差による値の潜在的変化を修正する。この修正比率により、Goetzlにより報告された値と本実施例において得られた値との間の結合および/または回収プロフィルの大きな差が明らかにされた。1つの可能性は、界面活性剤で解離されたレセプター複合体が、HK−X置換セファロースのものと異なる選択的な様式でFMLP置換セファロースに結合することである。
【0087】
要約すると、本実施例におけるHK−Xは、蛋白質をin vitroで35S−メチオニンにより蛋白質標識後回収された細胞ライゼートにおける結合蛋白質を選択的に回収するために使用された。FMLPレセプター複合体と会合したペプチドのサイズに関する以前の報告と一致する3種の分子量種が単離された。
【0088】
また、HK−Xは、ヒト多形核白血球および単核細胞、特に活性化T細胞、肥満細胞、好酸球および好塩基球のレセプターに結合することが、本実施例に使用される方法により示された。
【0089】
実施例4:シグナル伝達および作用メカニズム
白血球は、大多数の化学誘引物質および他の炎症誘発媒介物質に応答する。幾つかの媒介物質は、化学走化性、酵素系の活性化および病理学上重要な媒介物質の遊離を引き起こす。典型的なN−ホルミルペプチド類(原型体−FMLP)、活性化補体断片(C5a)、ロイコトリエンB4(LTB4)、血小板活性化因子(PAF)および幾つかの走化性サイトカイン類(IL−8など)は、よく認識された走化性および炎症誘発物質である。これらの物質は、G蛋白結合レセプター類(GPCR)に結合し、引き続いて蛋白質キナーゼ系により媒介された複数のシグナル伝達の発生となる。最初の事象の結果生じるカスケードは、複雑且つ相互に関連付けられており、さらにすべての有核細胞の挙動全体に関与している。プログラム化細胞死(アポトーシス)、免疫応答の発生、自己認識T細胞の除去および細胞外マトリクス合成の制御は、シグナル伝達経路作用におけるわずかに少数の例である。
【0090】
蛋白質キナーゼ類は、リン酸塩基をリン酸塩ドナーから蛋白質内に位置付けされたアクセプターアミノ酸上に移動する能力により同定された。通常は、ATPのγリン酸塩がドナーである。蛋白質内の3種の主要アクセプターアミノ酸残基は、チロシン、セリンおよびスレオニンである。1999年時点で、115種以上の蛋白質キナーゼが同定されており、文献に記載されている。
【0091】
FMLPによる刺激に応答する細胞挙動は、文献(Prosnitz他、Pharmacol.Ther.74:73−102,1997)に記述されている。貪食細胞に結合するFMLPは、細胞外機能に関連するリン酸化を刺激する。FMLPおよび他の化学誘引物質は、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(P13K)を刺激し、次々に蛋白質キナーゼ類(PKC)を活性化する。好中球において、FMLP結合は、マイトジェン活性化蛋白質キナーゼ類(MAPキナーゼ類)と称されるキナーゼ類一般ファミリーに属する細胞外の調節化されたキナーゼ、(ERK−1)のリン酸化を開始する。MAPキナーゼファミリーのうちのメンバーには、Raf−1およびRasがある。
【0092】
MAPキナーゼファミリーのメンバーは通常、SDS−PAGE法により1種ずつ分解できる程度に分子量が異なる。さらに、ホスホチロシン蛋白質は、ホスホチンエピトープのみを認識するモノクローナル抗体による細胞内蛋白質の全質量から検出できる(Ross他、Nature(ロンドン))294:654,1981;Frackleton他、Mol.Cell Biol.3:1343,1983)。
【0093】
ヒト末梢血単核細胞および多核白血球に対するHK−Xの付加により媒介された蛋白質キナーゼ類における変化を、HK−Xの作用メカニズムを解明するために分析した。HK−Xを単独でおよび知られた走化性および炎症誘発性物質であるFMLPまたはIL−8と共に付加させた。
【0094】
物質および方法の詳細:
1.細胞の単離−ヒトの末梢血単核細胞および多形核白血球を、正常ドナーから得られた末梢血から単離した。種々の細胞種を、室温で60分間500−x9でFicoll−Hypaque上の遠心分離により単離した。各フラクションを回収し、別々にプールし、抗生物質を有するRPMI1640中で1回洗浄した。
【0095】
2.細胞の培養と処理−培地1mlにつき107細胞を、細胞をリン酸化蛋白質プール内に定常状態に到達させるために、刺激剤の付加前に、37℃で30分間保持した。次に以下の刺激物を細胞の各々のmlに加えた。
【0096】
A.100μLの媒体(培地中0.3%DMSO溶液)。
【0097】
B.100μLのHK−は、20μgのHK−Xを含んだ。
【0098】
C.100μLのFMLPは、0.1μgのFMLPを含んだ。
【0099】
D.100μLのIL−8は、0.1μgのIL−8(組換え型ヒトIL−8)
E.100μLのHK−Xは、20μgのHK−Xを含み、プラス100μLのFMLPは0.1μgのFMLPを含んだ。
【0100】
F.100μLのHK−Xは、20μgのHK−X含み、プラス100μLのIL−8は0.1μgのIL−8を含んだ。
【0101】
G.いかなる刺激剤もない細胞培養培地。
【0102】
細胞を5%CO2中37℃でさらに30分間温置した。
【0103】
3.細胞の回収およびSDS−PAG分析−細胞を室温で5分間250×gでペレットにした。上澄液を除き、25μLの2XSDS−PAGE出発緩衝液を加えた。ペレットを15分間沸騰させて、10,000×gで5分間遠心分離する。小サンプルを、12%アクリルアミドゲル上のゲルの電気泳動用に除いた。
【0104】
4.リン蛋白質の免疫ブロット検出−一蛋白質を13Vで30分間ナイロン膜に移し、続いて1%BSAにより12時間ブロックした。0.3%BSA中HRPにより共役した抗体を60分間加えた。膜を洗浄し、固定し、写真撮影した。
【0105】
5.データ解析−写真は専門的実験室にて撮られ、ネガコピーを、極めて高いコントラストの低粒子フィルムを用いて各ゲルから作製した。次の写真を600dpiでスキャンし、デンシトメトリー分析は、画像プロプラス(Image Pro Plus)ソフトウェア、SPSSを用いて実施した。分子量を各バンドごとに計算した。
【0106】
SDS−PAGEの各レーンに塗布した細胞蛋白質量を標準化するために、同数の細胞を各処理に用いて、ほぼ同容量のサンプルを各レーンに塗布した。図5から図9を通して、モノクローナル抗ホスホチロシン抗体により検出されたリン蛋白質の化学発光パターンを示す。化学発光画像のネガは、バンドの高解像度およびそれらの対応する化学発光強度を得るために、専門写真家により作製された。例えば、図5Aでは、媒体に30分間曝された細胞に存在する蛋白キナーゼは、ゲルのデンシトメトリー分析におけるピークにより示されるように9種の異なる蛋白種を明らかにした。明瞭にするために、デンシトメトリー分析にピークを矢印で示し、ゲル中の対応する分子種もまた、同じ矢印で示されている。(ゲル由来のものは、より大きな分子量種が位置付けされるゲルの右側にある)。
【0107】
図6において、HK−Xに対する蛋白キナーゼ応答が示される。およそ83Kdの分子量種における明らかな増加が検出され、それは他の処理において観察されなかった。著しい相違が、細胞の20μg HK−Xおよび0.1μg IL−8、並びに20μg 1HK−Xおよび0.1μg FMLPとの同時処理後に見られた(データは示していない)。より小さな分子量種は大きく減少して現れた(ゲルの左の大部分)。この減少は、ピーク面積により定量的に反映される。デンシトメトリーの追跡におけるこの面積を水平の2重頭矢により示す。蛋白キナーゼ含有量および新鮮な単核細胞の分配を図9に示す。これらの細胞のキナーゼ分配は、媒体処理細胞(図5)およびHK−X処理細胞(図6)のものと著しく類似する。FMLP刺激単独およびHK−XプラスFMLP刺激に対するキナーゼ応答パターンは示していない。しかしながら、これらの各パターンは、それぞれIL−8単独およびHK−XプラスIL−8により観察されたものと実質的に一致した。
【0108】
末梢血多核白血球に係る蛋白キナーゼのパターンと分配は、単核細胞のものと本質的に同一であった。2種の細胞種間の主要な相違は、単核細胞が多核白血球よりも代謝的に活性であることであった。
【0109】
デンシトメトリー分析法を用いて、各分子量種のピーク下面積を計算した。このように、各キナーゼの定量評価を全キナーゼ含有量のパーセントとし計算した。さらに、知られたキナーゼ類の分子量を、本実験における相対移動(Rf)計算から計算されたものと比較した。このようにして、本試験におけるキナーゼ類が同定できた。
【0110】
表3は、HK−Xに対する曝露後のヒト末梢血細胞からの蛋白キナーゼ類の分配における定量的変化を示す。
【0111】
【表3】
【0112】
表4は、以前の定量データを確認し拡張した種々の実験におけるG蛋白質γキナーゼ定量を示す。各処理に同一細胞を用い、また回収された細胞内蛋白質のおよそ同一量を各レーンに塗布することを試みたが、キナーゼ類の全量は観察された面積に見られるように異なっていた。
【0113】
【表4】
【0114】
表5は、(1)HK−Xおよび(2)fMLPまたはIL−8に対する共刺激曝露と比較してHK−Xに対する曝露後のヒト末梢血細胞からの蛋白キナーゼ分配における変化を示す他の実験結果を示す。
【0115】
表6および表7は、1)HK−Xおよび(2)Ca5、TNFα、IL−4、IL−6、IL−10またはIL−13に対する共刺激曝露と比較してHK−Xに対する曝露後のヒト末梢血細胞からの蛋白キナーゼ分配における変化を示したさらなる実験結果を示す。
【0116】
【表5】
【0117】
【表6】
【0118】
【表7】
【0119】
多くの重要な事象が、ホルミルペプチドに係るレセプターを保持する細胞の刺激中に起こる。これらは以下のことを含む:
A.FMLPまたは他の類縁物質を結合する際、FPRは、LTB4およびC5aレセプターなどの他の化学誘引物質レセプター類に共通するG蛋白プールと相互作用する(Jacobs他、J.Leukoc.Biol.57:679−686,1995;McLeish他、Mol.Pharm.36:384−390)。
【0120】
B.FMLPまたは他の化学誘引物質による刺激後、細胞は、同一または他の化学誘引物質に対し、さらなるまたは引き続く応答に対して御しにくくなる。この御しにくい状態すなわちレセプターの不活化が、1種の刺激剤により誘導され、複数の未結合レセプターに影響をあたえる場合、この状態は異種の脱感作である。脱感作のこの形態は、FCεRレセプターとのように、下流活性化キナーゼによる未結合レセプター類のリン酸化から生じ得ると推測されている。
【0121】
C.IL−8、C5aおよびFMLPは、各々他のレセプターを脱感作した。これらの研究は、PAFおよびLTB4レセプター類などに拡張された。この過程が開始され得るメカニズムは、PKCによるレセプターリン酸化に関与していると思われる。しかしながら、FPRは、PKCによりリン酸化できる細胞内ドメインを含まないが、他のキナーゼが原因となっているようである。
【0122】
D.下流FPR応答の脱感作は、FPRリン酸化の欠いた状態に生じる。
【0123】
HK−X単独処理は、キナーゼ類を特異的にダウンレギュレーションをしない。HK−XおよびIL−8による、またはHK−XおよびFMLPによる単核細胞の同時刺激後、選択的かつ有意にG蛋白γキナーゼは減少した。これらの観察は、次のHK−Xの作用メカニズムを示唆するが、それを以下に説明する。
【0124】
HK−XおよびIL−8およびFMLPなどの潜在的な炎症誘発性分子は、共に存在できる。トリマーG蛋白複合体の中の1種のダウンレギュレーションがある。特異的に、G蛋白γリン酸化は定常状態下で減少した。したがって、IL−8またはFMLP存在下、HK−Xは、G蛋白γサブユニットのリン酸化を直接または間接的に阻害するレセプターの脱感作を開始すると思われる。
【0125】
本明細書に提示されたデータおよび以前に報告のデータから引き出すことができる多くの結論があるがそれらは以下のことである。
【0126】
1.HK−Xは、特異的炎症誘発性レセプター類により媒介される炎症誘発性刺激に対応できる細胞特異性を明示する。
【0127】
2.HK−Xが炎症事象中、系に維持される場合、HK−Xは、潜在的な応答細胞の脱感作を維持するはずである。
【0128】
3.本報告書に記載されるin vitro培養系を用いると、他の細胞標的および他の炎症誘発性媒介物質を、HK−Xの作用に対する感受性に関してスクリーンできる。したがって、簡便なアッセイが、潜在的治療の有効性に関して迅速にスクリーンするために、および治療予測性を確立するために使用できる。
【0129】
ある程度、HK−Xは、炎症誘発性媒介物レセプターの脱感作を介して治療有効性を実現すると思われる。この事象から下流で、炎症細胞の不活化がG蛋白γサブユニットのリン酸化阻害を介して直接または間接的に媒介され維持される。
【0130】
本発明を、その好ましい実施形態を含んで詳細に記載した。しかしながら、当業者は、請求項に記載された本発明の意図と範囲内で変更または改善し得ることを理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヒト末梢血有核細胞に対するFITC標識HK−X(f−Met−Leu−Phe−Phe)の結合を示すグラフである。
【図2A】活性化リンパ球に対するFITC標識HK−X結合の点プロットである。図2Aは、100nMFITC標識HK−Xを添加して、培養24時間後の6μgのコンカナバリンA(ConA)で刺激化されたリンパ球を示す。図2Bは、FITC標識HK−Xなしで、培養120時間後の6μgConAで刺激化されたリンパ球を示す。図2Cは、100nMFITC標識HK−Xを添加して、培養120時間後の6μgConAで刺激化されたリンパ球を示す。
【図2B】活性化リンパ球に対するFITC標識HK−X結合の点プロットである。図2Aは、100nMFITC標識HK−Xを添加して、培養24時間後の6μgのコンカナバリンA(ConA)で刺激化されたリンパ球を示す。図2Bは、FITC標識HK−Xなしで、培養120時間後の6μgConAで刺激化されたリンパ球を示す。図2Cは、100nMFITC標識HK−Xを添加して、培養120時間後の6μgConAで刺激化されたリンパ球を示す。
【図2C】活性化リンパ球に対するFITC標識HK−X結合の点プロットである。図2Aは、100nMFITC標識HK−Xを添加して、培養24時間後の6μgのコンカナバリンA(ConA)で刺激化されたリンパ球を示す。図2Bは、FITC標識HK−Xなしで、培養120時間後の6μgConAで刺激化されたリンパ球を示す。図2Cは、100nMFITC標識HK−Xを添加して、培養120時間後の6μgConAで刺激化されたリンパ球を示す。
【図3A】図2A〜図2Cのリンパ球のDNA含量ヒストグラムである。図3Aは、図2Aの細胞のヒストグラムである。図3Bは、図2Bと図2Cの細胞のヒストグラムである。
【図3B】図2A〜図2Cのリンパ球のDNA含量ヒストグラムである。図3Aは、図2Aの細胞のヒストグラムである。図3Bは、図2Bと図2Cの細胞のヒストグラムである。
【図4】全ヒト好中球ライゼートから回収された35S−メチオニン標識化蛋白質と種々の樹脂とのオートラジオグラフである。
【図5A】媒体で(0.3%DMSO)で処理した単核細胞内のリン酸化蛋白質の存在を、ホスホチロシンに対するモノクロ−ナル抗体によって検出したものを示す。図5Aは、正常細胞のSDS−PAGEのデンシトメトリーであり、図5Bは、媒体(DMSO)のみで処理した正常細胞のSDS−PAGEゲルの写真である。
【図5B】媒体で(0.3%DMSO)で処理した単核細胞内のリン酸化蛋白質の存在を、ホスホチロシンに対するモノクロ−ナル抗体によって検出したものを示す。図5Aは、正常細胞のSDS−PAGEのデンシトメトリーであり、図5Bは、媒体(DMSO)のみで処理した正常細胞のSDS−PAGEゲルの写真である。
【図6A】HK−Xで処理した単核細胞内のリン酸化蛋白質の存在を、ホスホチロシンに対するモノクロ−ナル抗体によって検出したものを示す。図6Aは、HK−X処理細胞のSDS−PAGEのデンシトメトリーであり、図6Bは、HK−Xのみで処理した正常細胞のSDS−PAGEの写真である。
【図6B】HK−Xで処理した単核細胞内のリン酸化蛋白質の存在を、ホスホチロシンに対するモノクロ−ナル抗体によって検出したものを示す。図6Aは、HK−X処理細胞のSDS−PAGEのデンシトメトリーであり、図6Bは、HK−Xのみで処理した正常細胞のSDS−PAGEの写真である。
【図7A】IL−8で処理した単核細胞内のリン酸化蛋白質の存在を、ホスホチロシンに対するモノクロ−ナル抗体によって検出したものを示す。図7AはIL−8処理細胞のSDS−PAGEのデンシトメトリーであり、図7Bは、IL−8のみで処理した正常細胞のSDS−PAGEの写真である。
【図7B】IL−8で処理した単核細胞内のリン酸化蛋白質の存在を、ホスホチロシンに対するモノクロ−ナル抗体によって検出したものを示す。図7AはIL−8処理細胞のSDS−PAGEのデンシトメトリーであり、図7Bは、IL−8のみで処理した正常細胞のSDS−PAGEの写真である。
【図8A】HK−XおよびIL−Aで処理した単核細胞内のリン酸化蛋白質の存在を、ホスホチロシンに対するモノクロ−ナル抗体によって検出したものを示す。図8Aは、HK−XおよびIL−A処理細胞のSDS−PAGEのデンシトメトリーであり、図8Bは、HK−XおよびIL−8で処理したで処理した正常細胞のSDS−PAGEの写真である。
【図8B】HK−XおよびIL−Aで処理した単核細胞内のリン酸化蛋白質の存在を、ホスホチロシンに対するモノクロ−ナル抗体によって検出したものを示す。図8Aは、HK−XおよびIL−A処理細胞のSDS−PAGEのデンシトメトリーであり、図8Bは、HK−XおよびIL−8で処理したで処理した正常細胞のSDS−PAGEの写真である。
【図9A】末梢血から新たに採取した単核細胞内のリン酸化蛋白質の存在を、ホスホチロシンに対するモノクロ−ナル抗体によって検出したものを示す。図9Aは、新たに採取した細胞のSDS−PAGEのデンシトメトリーであり、図9Bは、新たに採取した細胞のSDS−PAGEゲルの写真である。
【図9B】末梢血から新たに採取した単核細胞内のリン酸化蛋白質の存在を、ホスホチロシンに対するモノクロ−ナル抗体によって検出したものを示す。図9Aは、新たに採取した細胞のSDS−PAGEのデンシトメトリーであり、図9Bは、新たに採取した細胞のSDS−PAGEゲルの写真である。
Claims (35)
- 炎症誘発物質と接触したとき、ヒト末梢血単核細胞または多核白血球、または固定組織細胞の炎症誘発応答を阻害する方法であって、前記細胞をG蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質と接触させ、それによってG蛋白質によって媒介される炎症応答シグナル伝達経路を阻害することを含む方法。
- 前記ヒト末梢血単核細胞がリンパ球および単球、または顆粒球から選択された多核白血球から選択される請求項1に記載の方法。
- 前記ヒト末梢血単核細胞または多核白血球が好酸球、好塩基球、および活性化したT細胞から選択される請求項1に記載の方法。
- 前記固定組織細胞が肥満細胞、樹状細胞、星状細胞またはマクロファージから選択される請求項1に記載の方法。
- 前記炎症誘発物質がサイトカイン、ケモタキシンおよびマイトジェンから選択された請求項1に記載の方法。
- 前記炎症誘発物質がfMLP、活性化した補体断片、ロイコトリエンB4、血小板活性化因子、IL−4、IL−6、IL−8、IL−10、IL−13およびTNFαから選択された請求項1に記載の方法。
- 前記G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質がf−Met−Leuペプチドである請求項1に記載の方法。
- 前記G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質がf−Met−Leu−Phe−Pheである請求項1に記載の方法。
- 炎症誘発物質と接触したとき、ヒト末梢血単核細胞若しくは多核白血球または固定組織細胞の炎症誘発応答を阻害する方法であって、細胞表面受容体とG蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質との複合体を形成し、それによって炎症誘発応答を阻害することを含む方法。
- 前記細胞表面受容体がホルミルペプチド受容体である請求項9に記載の方法。
- 前記炎症誘発応答が下流受容体を阻害することを含み、該下流受容体がイムノグロブリン、IL−4、IL−6、IL−8、IL−10、IL−13およびTNFαから成る群から選択されたサイトカイン、またはC5a、FMLP、PAF、LTB4から成る群から選択されたケモカインから選択された物質の受容体である請求項9に記載の方法。
- 前記ヒト末梢血単核細胞がリンパ球および単球または好酸球および好塩基球から選択された多核白血球から選択される請求項9に記載の方法。
- 前記ヒト末梢血単核細胞または多核白血球が好酸球、好塩基球、および活性化したT細胞から選択される請求項9に記載の方法。
- 前記固定組織細胞が肥満細胞、樹状細胞、星状細胞またはマクロファージから選択される請求項9に記載の方法。
- 前記炎症誘発物質がサイトカイン、ケモカイン、ケモタキシンおよびマイトジェンから選択される請求項9に記載の方法。
- 前記炎症誘発物質がfMLP、活性化した補体断片、ロイコトリエンB4、血小板活性化因子、IL−4、IL−6、IL−8、IL−10、IL−13およびTNFαから選択される請求項9に記載の方法。
- 前記G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質がf−Met−Leuペプチドである請求項9に記載の方法。
- 前記G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質がf−Met−Leu−Phe−Pheである請求項9に記載の方法。
- G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質および炎症誘発物質によって刺激されたヒト末梢血単核細胞若しくは多核白血球、または固定した組織細胞の細胞表面受容体を含む受容体複合体。
- 前記ヒト末梢血細胞がリンパ球および単球から選択された単核細胞または好酸球および好塩基球から選択された多核白血球である請求項19に記載の方法。
- 前記固定組織細胞が肥満細胞、樹状細胞、星状細胞およびマクロファージから選択された請求項19に記載の方法。
- 前記G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質がf−Met−Leuペプチドである請求項19に記載の方法。
- 前記G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質がf−Met−Leu−Phe−Pheである請求項19に記載の方法。
- 前記炎症誘発物質がサイトカイン、ケモカイン、ケモタキシンおよびマイトジェンから選択される請求項19に記載の方法。
- 前記炎症誘発物質がfMLP、活性化した補体断片、ロイコトリエンB4、血小板活性化因子またはIL−4、IL−6、IL−8、IL−10、IL−13およびTNFαから選択される請求項19に記載の方法。
- G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質の同定方法であって、
a)活性化Tリンパ球、肥満細胞、好酸球および好塩基球から成る群から選択された炎症誘発媒介細胞を、サイトカイン、ケモカイン、ケモタキシン、およびマイトジェンから成る群から選択された公知の炎症誘発媒介物と接触させて炎症誘発応答を惹起する段階、
b)段階a)にG蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質の候補物質を添加する段階、および
c)(i)前記候補アンタゴニストおよび前記炎症誘発媒介物と同時に接触した炎症誘発細胞と(ii)前記炎症誘発媒介物とのみ接触した炎症誘発細胞とを比較して調節G蛋白質キナーゼの増減を検出する段階を含む前記方法。 - 前記炎症誘発媒介物質がfMLP、活性化した補体断片、ロイコトリエンB4、および血小板活性化因子、またはIL−4、IL−6、IL−8、IL−10、IL−13およびTNFαから選択される請求項26に記載の方法。
- 活性化Tリンパ球、肥満細胞、好酸球および好塩基球から成る群から選択された炎症誘発媒介細胞の表面上の受容体と結合したG蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質を含む細胞表面受容体複合体であって、それによって炎症誘発物質に対する炎症誘発細胞応答の阻害を提供する複合体。
- G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質の同定方法であって、前記方法が、
活性化Tリンパ球、肥満細胞、好酸球および好塩基球から成る群から選択された炎症誘発媒介細胞を、三量体G蛋白質シグナル伝達経路変更物質候補と接触させる段階、および
G蛋白質シグナル伝達経路変更物質候補と接触していない細胞と比較してPLCγ、Pp60 Src、およびERK−1の量変化がなく、PI3(102Kd)およびPI3(83Kd)の量が増加しており、Ref、Ras、G蛋白質αキナーゼおよびG蛋白質βキナーゼの量が減少している前記細胞によって産生された蛋白質キナーゼの分配を決定する段階を含む方法。 - ヒト末梢血単核細胞または多核白血球の細胞表面受容体および
G蛋白質シグナル伝達経路変更物質を含む細胞表面受容体複合体であって、
前記細胞表面受容体複合体を表さない細胞と比較して、前記細胞における蛋白質キナーゼの分配がPLCγ、Pp60 Src、およびERK−1の量に変化がなく、PI3(113Kd)およびPI3(83Kd)の量が増加しており、Raf、Ras、G蛋白質αキナーゼおよびG蛋白質βキナーゼの量が減少しているようになっている細胞表面受容体複合体。 - 前記細胞表面受容体がFPR受容体である請求項30に記載の細胞表面受容体複合体。
- 前記ヒト末梢血単核細胞または多核白血球のIL−4による刺激によって、前記細胞によって産生された蛋白質キナーゼの分配が、前記受容体複合体を表さない刺激された細胞と比較して、PLCγ、PI3(102Kd)およびPI3(83Kd)の量が増加しており、RasおよびG蛋白質γキナーゼの量が減少している請求項30に記載の細胞表面受容体複合体。
- 前記ヒト末梢血単核細胞または前記多核白血球の炎症誘発物質、IL−13による刺激によって、前記細胞によって産生された蛋白質キナーゼの分配が、前記受容体複合体を表さない刺激された細胞と比較して、PLCγ、PI3(113Kd)およびPI3(83Kd)の量が増加しており、Raf、Ras、Pp60 Src、G蛋白質αキナーゼおよびG蛋白質βキナーゼの量が減少している請求項30に記載の細胞表面受容体複合体。
- 前記ヒト末梢血単核細胞または前記多核白血球の炎症誘発物質、C5aによる刺激によって、前記細胞によって産生された蛋白質キナーゼの分配が、前記受容体複合体を表さない刺激された細胞と比較して、PI3(83Kd)およびRafの量が増加しており、PLCγ、PI3(113Kd)、G蛋白質αキナーゼおよびG蛋白質βキナーゼの量が減少している請求項30に記載の細胞表面受容体複合体。
- 前記ヒト末梢血単核細胞または前記多核白血球の炎症誘発物質、TNFαによる刺激によって、前記細胞によって産生された蛋白質キナーゼの分配が、前記受容体複合体を表さない刺激された細胞と比較して、Raf、ERK−1、Ras、G蛋白質αキナーゼ、G蛋白質βキナーゼおよびG蛋白質γキナーゼの量が増加しており、PLCγ、PI3(113Kd)、およびPp60 Srcキナーゼの量が減少している請求項30に記載の細胞表面受容体複合体。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US15967799P | 1999-10-15 | 1999-10-15 | |
PCT/US2000/028183 WO2001029069A1 (en) | 1999-10-15 | 2000-10-12 | N-formyl peptide receptor complex with a g-protein kinase signal pathway modification agent |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004507441A true JP2004507441A (ja) | 2004-03-11 |
Family
ID=22573520
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001531867A Pending JP2004507441A (ja) | 1999-10-15 | 2000-10-12 | G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質とn−ホルミルペプチド受容体との複合体 |
Country Status (16)
Country | Link |
---|---|
EP (1) | EP1222199A4 (ja) |
JP (1) | JP2004507441A (ja) |
KR (1) | KR20020057972A (ja) |
CN (1) | CN100497374C (ja) |
AU (1) | AU8014200A (ja) |
BR (1) | BR0014742A (ja) |
CA (1) | CA2387559A1 (ja) |
CZ (1) | CZ20021342A3 (ja) |
EA (1) | EA200200451A1 (ja) |
HU (1) | HUP0203688A2 (ja) |
IL (1) | IL149125A0 (ja) |
MX (1) | MXPA02003782A (ja) |
NO (1) | NO20021732L (ja) |
PL (1) | PL356096A1 (ja) |
WO (1) | WO2001029069A1 (ja) |
ZA (1) | ZA200202937B (ja) |
Families Citing this family (12)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP1138692A1 (en) | 2000-03-29 | 2001-10-04 | Erasmus Universiteit Rotterdam | Fragments of human chorionic gonadotropin (hcg) as immunoregulator |
US8680059B2 (en) | 1998-05-20 | 2014-03-25 | Biotempt B.V. | Oligopeptide acetate and formulations thereof |
US6844315B2 (en) | 1998-05-20 | 2005-01-18 | Erasmus Universiteit Rotterdam | Immunoregulator |
US20030220258A1 (en) | 2001-12-21 | 2003-11-27 | Robbert Benner | Treatment of ischemic events |
US7358330B2 (en) | 2001-03-29 | 2008-04-15 | Biotempt B.V. | Immunoregulatory compositions |
EP1300418A1 (en) * | 2001-10-04 | 2003-04-09 | Erasmus Universiteit Rotterdam | Gene regulation by oligopeptides |
USRE43279E1 (en) | 2000-03-29 | 2012-03-27 | Biotemp B.V. | Compositions capable of reducing elevated blood urea concentration |
US7786084B2 (en) | 2001-12-21 | 2010-08-31 | Biotempt B.V. | Treatment of burns |
WO2004100978A1 (en) * | 2003-05-13 | 2004-11-25 | Medvet Science Pty. Ltd. | A method of modulating cellular transmigration and agents for use therein |
WO2007004869A2 (en) | 2005-07-05 | 2007-01-11 | Biotempt B.V. | Treatment of tumors |
EP1864692A1 (en) | 2006-06-07 | 2007-12-12 | Biotempt B.V. | Use of peptides for the control of radiation injury |
US20110082091A1 (en) * | 2009-09-28 | 2011-04-07 | Theramab Gmbh | Method for Preclinical Testing of Immunomodulatory Drugs |
Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO1999025372A1 (en) * | 1997-11-13 | 1999-05-27 | Histatek, Llc | Small peptides and methods for treatment of asthma and inflammation |
-
2000
- 2000-10-12 CA CA002387559A patent/CA2387559A1/en not_active Abandoned
- 2000-10-12 WO PCT/US2000/028183 patent/WO2001029069A1/en active Application Filing
- 2000-10-12 BR BR0014742-7A patent/BR0014742A/pt not_active IP Right Cessation
- 2000-10-12 MX MXPA02003782A patent/MXPA02003782A/es not_active Application Discontinuation
- 2000-10-12 AU AU80142/00A patent/AU8014200A/en not_active Abandoned
- 2000-10-12 PL PL00356096A patent/PL356096A1/xx not_active Application Discontinuation
- 2000-10-12 HU HU0203688A patent/HUP0203688A2/hu unknown
- 2000-10-12 EP EP00970817A patent/EP1222199A4/en not_active Withdrawn
- 2000-10-12 EA EA200200451A patent/EA200200451A1/ru unknown
- 2000-10-12 CN CNB008156867A patent/CN100497374C/zh not_active Expired - Fee Related
- 2000-10-12 KR KR1020027004714A patent/KR20020057972A/ko not_active Application Discontinuation
- 2000-10-12 JP JP2001531867A patent/JP2004507441A/ja active Pending
- 2000-10-12 CZ CZ20021342A patent/CZ20021342A3/cs unknown
- 2000-10-12 IL IL14912500A patent/IL149125A0/xx unknown
-
2002
- 2002-04-12 NO NO20021732A patent/NO20021732L/no not_active Application Discontinuation
- 2002-04-15 ZA ZA200202937A patent/ZA200202937B/xx unknown
Patent Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO1999025372A1 (en) * | 1997-11-13 | 1999-05-27 | Histatek, Llc | Small peptides and methods for treatment of asthma and inflammation |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
EA200200451A1 (ru) | 2002-10-31 |
PL356096A1 (en) | 2004-06-14 |
NO20021732L (no) | 2002-06-12 |
NO20021732D0 (no) | 2002-04-12 |
BR0014742A (pt) | 2002-08-27 |
MXPA02003782A (es) | 2002-12-13 |
WO2001029069A1 (en) | 2001-04-26 |
CA2387559A1 (en) | 2001-04-26 |
ZA200202937B (en) | 2003-09-23 |
IL149125A0 (en) | 2002-11-10 |
CN100497374C (zh) | 2009-06-10 |
EP1222199A1 (en) | 2002-07-17 |
EP1222199A4 (en) | 2003-03-12 |
CN1633447A (zh) | 2005-06-29 |
KR20020057972A (ko) | 2002-07-12 |
AU8014200A (en) | 2001-04-30 |
CZ20021342A3 (cs) | 2003-01-15 |
HUP0203688A2 (hu) | 2003-02-28 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Pert et al. | Bombesin: receptor distribution in brain and effects on nociception and locomotor activity | |
JP5232091B2 (ja) | ペプチド、ペプチドの混合物、ヌクレオチド、ヌクレオチドの混合物、及びベクター | |
Gintzler et al. | Antibodies as a means of isolating and characterizing biologically active substances: presence of a non-peptide, morphine-like compound in the central nervous system. | |
Cheong et al. | Etanercept attenuates traumatic brain injury in rats by reducing brain TNF-α contents and by stimulating newly formed neurogenesis | |
US6136786A (en) | Method for enhancing analgesia | |
EP1042365A1 (en) | Compounds and methods for modulating occludin related tissue permeability | |
JP2004507441A (ja) | G蛋白質キナーゼシグナル伝達経路変更物質とn−ホルミルペプチド受容体との複合体 | |
Offermanns et al. | Gq and G11 are concurrently activated by bombesin and vasopressin in Swiss 3T3 cells | |
US20090226403A1 (en) | Olfactory and pheromones G-protein coupled receptors | |
EP2286836A1 (en) | Immunostimulating agent | |
Chahdi et al. | Drugs interacting with G protein α subunits: selectivity and perspectives | |
JP2006212029A (ja) | ヒスタミン分泌能を有する欠失型IgE依存的ヒスタミン放出因子、HRF結合ペプチドおよびその利用方法 | |
US7569229B2 (en) | Monocyte locomotion inhibitory factor | |
JP2003522186A (ja) | 病原体に対する宿主免疫応答を誘導するか、またはhiv感染を抑制するfprクラス受容体に対するリガンド | |
AU781780B2 (en) | Chemokine receptor CCR3 antagonists | |
EP1340979A2 (en) | Neuropeptide receptor and uses thereof | |
US6498139B1 (en) | Remedies for diseases caused by insulin resistance | |
AU2001264892B2 (en) | Modulaton of alpha-6 integrin-mediated responses | |
Xu et al. | The effects of intrathecal galanin message-associated peptide (GMAP) on the flexor reflex in rats | |
Rita et al. | Effects of synthetic peptides on the inflammatory response and their therapeutic potential | |
JP3503978B2 (ja) | グルタミン酸遊離阻害活性及びカルシウムチャネル阻害活性を有するペプチド | |
JP2002509080A (ja) | グラモストラ・スパチュラタの毒から得られる鎮痛性ペプチドおよびその使用 | |
Redman et al. | α-Bag cell peptide inhibits bag cell adenylate cyclase via a GTP-dependent mechanism | |
US20030171293A1 (en) | Neuropeptide receptor and uses thereof | |
Ponomarev et al. | Experimental Approach to Differentiation of the Effects Mediated by Imidazole Receptors and α 2-Adrenoceptors on Platelets |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20071003 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20100629 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20100927 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20101004 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20101025 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20101101 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20101125 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20101202 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20110301 |